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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/07/13 02:23 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_ouC

―――現在は、最終章です―――


最終章:「Chrono Crisis」

激しい戦いの末、歴史是正機構に打ち勝った時空防衛連盟。晴れて時空を護り抜くことに成功したかに思われた矢先、それは始まりを告げた。

まるで世界そのものが崩壊するかの如く、ひび割れていく空。その向こうから現れしは、正しき歴史を紡ぐ使者。

彼らは、人類の捻じ曲げた歴史を修正するべく、この世へと降臨した。これこそが、時空断裂。積み重なった歪みが、限界に達した瞬間であった。

改変に改変を重ねた今の世界が正史に塗り潰されれば、そこに生きる者達は"もしも"の存在と化してしまい、歴史の闇へと葬り去られてしまう。

それは即ち、世界の崩壊といっても過言ではないだろう。時空断裂による時間の連続性消失を防ぐためには、彼らに戦いを挑み、勝利するしかない。

人類が罪を犯したのは、疑いようのない事実。歴史を変えるなどという禁忌を犯した種族には、当然の報いであるかも知れないが……そんな人類も、生きている。

生けとし生ける者、全ての願いは、今日を、明日を生きること。黙って死を受け入れるなどということが、出来るはずがない。生きたい、と願う限り。

これは、明日を手に入れるための戦い。自らの存在を世界線に、時空に刻み付けるため、時空防衛連盟は次元を超える。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

最終章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-286#a


・現在イベントのあるロケーション

狭間世界:最終決戦

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リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/無限廊下/"常山蛇勢"レプティラ】


死を終着点とするならば、生とは破滅へ向かう自壊の旅でしかない。死を全の通過点とするならば、生とは繋ぎ遺していくものだろう。どちらが正しいとは言い難い、前者はあまりにも救いがなく、後者はあまりにも効率が悪い。
結局は生と死など見る物が違えば変わってしまえばその価値を大きく変える、ニアが無価値と称したそれに価値を与えられないほどの稀少さを見出すものもいる、ニアが分からないと称したそれを尊く思う者がいる。
そしてこの場ではニアが無価値と、分からないと称した物が是とされただけの事。それが間違っているなどと口が裂けても言うまい、ニアが何を思い感じたなど推測は出来ども推測でしかない、その想いはニアだけの物で、誰がどう言えたものではない。
それと同じくして、彼女も命をこの場で投げ捨ててでも討つべきだと思った。夢の箱舟は彼女が描いたものを運ぶと信じている、その先にいる魔族が笑顔であることも信じて疑わない。故に、この想いは否定されるべきではなく尊重されるべきだと。
そう、互いに分からないのだ。ニアが何を想ったのか、至る経緯は予想できようと心情まで読めるはずもない。そして同じように、ニアも彼女やブロヴァンスの様に目の前にない物を信じて命を賭せる理由が、少なくとも今のニアでは理解できない。
だから僅かに奮い立った精神を以て、ニアの問いへと答える。少しばかり取り戻せたとて万全ではなく、これ以降削られたそれが戻ることはない。だがそれでも、これは彼女の本心であるし言葉に偽りもない。

「ニア、私も貴方が"分かりません"。理解した振りならきっと出来ます、ですがそんな児戯はもう必要ありません。」
「そして、私は選びました。それで、もう十分でしょう。」

レオンハルトの連撃、そこに彼女の尾撃を合わせたそれを避け、ニアは倍を上回る剣戟で凌ごうとする。しかし苛烈な炎熱の斬撃は確かにニアへと届き、そして仕切り直さんと飛びのくことを想定した致死の咢が迫る。
しかし詠唱を破棄した魔術による方向転換、満身創痍ながらもニアに諦める選択肢はないだろう。必要と判断し、それを突き進んでいた存在がこの程度で止まる筈がない。だからこそ、サシャが動いた時点で何を獲るのかが彼女には予想できてしまった。
方向転換と同時に長き体躯を利用し宙を突き進む、身体全体での移動速度こそ劣るものの身体の伸縮にまで影響は出ない。元々長いその身体の一部を伸ばす程度なら素早く、そして距離も問題ない。故に、間に合うのだ。
時に、彼女は平穏という理想を掲げ、生きる意味を魔族の平穏の為として、その為に行動したという軌跡を残した。確かに彼女個人として見れば何も残せてはいない、魔将軍と名を受けた一人の魔族でしかない。ここで死せば掲げた平穏は彼女の手によって成されない、死した彼女の意志を図るものは物はいない。
だが、彼女を傍で見ていたものがそれを良しとして己も掲げればそれは彼女が残したものとも言えるだろう、夢、想い、それらは形には残らない。だが人の中に根付くものである、生物はただそこに在るだけで影響を与える物、それが何かをしようとしたならば痕跡は必ず残る。
死を許容できないサシャを見る、まだ若いながらもニアに速度で迫るその強さはまだ成長の余地があるだろう。しかし、既に生とは犠牲の上にあるものだと分からなければならない。それを犠牲だと済ませず、遺したものをしっかりと受け継げる魔族になってほしいと。ニアの様に、理解できたかもしれないのに錆びてしまったものはもう戻れない。死をただの死と思わず、どう死したかよりどう生きたかを見て欲しいと。
僅かに遅れながらにも追うレオンハルトを見る、未来からの乱入者でありながらサシャを即座に信用した人間。このような人間がいるならば和平もきっと心配はないだろう、最初こそ上手くいかないかもしれないが魔帝とヴァンレッドなら大丈夫だ。そう、犠牲はこれ以上は必要はない。ニアと彼女、その犠牲が最後であればいい。レオンハルトの様な人間をこの目で見れて良かったとそう思う、人間との和平など彼女は考えてはいなかった。だが、あのような人間がいるならば魔族の平穏も共に目指せるのではないかと、希望を見せて貰った。
既に塵と消えたブロヴァンスを見る、胸中全てを理解できたわけではない、だがそれでも何のために命を賭したのか、何を伝えたかったのは確かに繋がっている。魔帝の言葉を聞いた時、こうすべきだと思い至ったのだろう。あの死は誰にも笑わせない、誰にも汚させはしない。自らの天敵との和平、その先まで見たからこその意志を踏み躙って良いはずがない。だからこそ、彼女も繋ぐ、それが一番の弔いであるから。
そして、視線の先に映るニア。サシャの爪撃を受け、尚致命だけを避ける。光る旋風に剣を持たぬ腕を容易く差し出し、光の残滓を身に受けようとも進む。ニアへと語る言葉はない、想うべきものも既に無い。もう言葉で済むときはとうに過ぎていて、想いでどうにかなる時間は元よりなかった。僅かに盛り返した精神は感傷による軋みをあげる、だがそんなものは決断した時から彼女を曲げるには至らない。ただ、心の痛みを感じながらも、必要だからとニアを討つ。それだけでしかない。
ニアがサシャへ放つは、比べるべくもなく早く短い刺突。攻撃の隙に重ねられたそれは例え強者であっても回避は難しい、それを受けるが強大な力を持ち得ているサシャであっても同じだろう、むしろこれまで戦闘を嫌っていることから経験不足がここに出る可能性も高い。
信じる、それは重くも軽い言葉だと彼女は思う。容易く相手を受け入れる様に扱う者もいれば、限定した瞬間でしか他者を認めないものもいる。彼女は前者ではある、その言葉で安心してくれるのなら幾らでも吐こうとすら思っている。だが、この場でサシャを信じるのは彼女の気性上不可能であった。
もし、信じた結果死んでしまったら信じた自分を呪い続ける。例えこの場で朽ちる事を覚悟していようと、あくまで命尽きるのを容認できているのは己だけでしかない。だからこそ、サシャを信じるからこそその僅かな隙間に割り込む、既に死への門は開かれている。
視界の半分が暗転する、左眼に激しい痛みを感じる。いや正確には左眼より上部からその信号は発せられている、突きの後に首を撥ねるために振り上げられた細剣は骨など容易く裂き、脳天まで裂傷を刻んでいた。
だが右目さえ残っていれば、例え……いえ、外れることは想定しない。この一撃でニアを討つと、そう決めねば決して届きはしない。だから捨て身とも言い換えられよう、だがそれは最後の勝負を仕掛けたニアにとってはこの上ない障害物となろう。

「―――私の身なら幾らでも。」

サシャの一つでも渡してなるものか、この場で渡せるのは彼女自身の身のみ。命だろうと、目だろうと、首だろうと、幾らでも渡そう。だがレオンハルトも、サシャもどちらからも渡させはしない。
流石の魔族と言えどもこれだけの重傷を負えば痛みで動けなくともおかしくはなく、致命傷に至る部分にまで傷が及べば尚更だ。だが彼女は必要ないと切り捨てる、痛みを感じる暇があるならば討つべき相手へ牙を突き立てろと、そうでもしなければニアには追い付けないと。
だから次に映る行動は単純だ、同じく隙を晒したニアへと食らい付くだけ。サシャへニアが行った事と同じ、速度こそ劣るもののそれを補って余りある大口は回避の選択肢を狭める、隙に合わせて食らったならば完全な回避は不可能に等しい。
響く業炎、ニアへと襲い掛かる烈火はレオンハルトのもの。回避の場を潰すそれはこの状況の追い風、さらに行けとまで言われてしまえば元より怯むつもりもないがその決心をさらに固めるには十分であった。
ニアに迫るは大蛇の大口、死へと誘う大門。口内に見える鋭き牙は断頭台の刃のよう、突き刺されば確実に命を奪う魂魄の簒奪者。最速最短の突きを放った僅かな隙へ、左眼を失おうとも勢いなど僅かなれども失いはしない。
その咢は、閉じられた。

―――私の全てを差し上げます。だからニア、貴方の命を貰います。

この場に余計な雑念は必要ない、あるのは只討つべきと思った決意、命尽きても繋ぐ想い、そして夢。
多くの渦があれど、今この瞬間だけはただ一つだけでいい。
ニア、貴方を討つ。それが、必要な事だから。

>>ニア サシャ レオンハルト・ローゼンクランツ

7ヶ月前 No.801

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/魔将軍の間/エスト(残魔具4327個 残魂数9)】


艶っぽい声が響く、彼女の頭痛はそれに呼応するように酷くなる。加えて言うならばそう言った趣味もない、彼女は前衛の獲物を加味して攻撃を狙いやすい魔術を選択しているだけである。恐らく、そこまで含めての言葉だろうが思惑に乗ってそういった類の魔術を使用したくなくなる。
即座に魔法障壁を張れる時点でやはり強者であることには間違いはない、間違いはないのだが彼女の勢いを乱す。そも少女の姿で痛みに悶えるのに僅かばかり罪悪感が浮かぶ上に、そういった事をよっぽど好きと言われるのはやはり抵抗があろう。
彼女は決して戦いを楽しむ存在ではない、敵対者にはそれなりに容赦がないだけであって特別人を傷つけるのを好む訳でもない。縛って喜ぶなんて考えたことすらない、戦闘面での相性はまだしも性質的にこの少女と彼女は相性が悪い。
その少女は翼を広げ跳躍する、男性からも距離を取る以上大剣の攻撃は脅威と見ているのだろう。またもや銃による攻撃を行うかと思えば武器の説明をし始める、攻撃をする前に解説をするなど手を明かす不利益しか生まないだろう。
考えられるのは全て虚偽か、重要な事実のみを隠しているか、はたまた本当に説明をしているだけか。どれにしても鵜呑みに出来る内容ではない、そも攻撃自体が説明を聞く限りでは受けたくない。一般的な女性ならば凡そそう思うだろう。
粘液まみれの蔦で拘束され、絞め殺されたり溶かされるのは御免被りたい。そうこうしている内に種は周囲へと散らばり、芽吹きだす。無論、迎撃を行う。今回も援護と防御を同時に行える魔術を選択する、記録書を捲り頁をなぞる。

「……うーん?そういった趣味はないと、言った筈なんだがな。」

植物であるならば選ぶは炎、土で封じ込めるのも風で吹き飛ばすのも、はたまた水で腐らせるのも雷で焼くのも良い。しかし植物であるならば大概燃やせば何とかなる、先に戦闘した巨大芋虫が炎に強いのは驚いたがあの様な特別な植物ではないだろう。
光る頁に呼応して周囲から熱量を伴って出現するは炎の鞭、魔力操作によって自在に操れるそれは捕食対象を見つけた植物たちを焼き、叩き潰し、炭化させていく。潰した瞬間に粘液が飛び散るが、大本の植物を燃やす以上付着した所で問題はない。
ああいった植物は絡みつくこと、その上で対象に何らかの影響を与えるのが脅威であって絡ませなければ消化粘液程度大した脅威ではない。痛みで止まるほど活き活きとはしておらず、溶けた服は新しく繕えばいい。
周囲の植物を大方叩き、焼き尽くす。思わぬ成長速度によって鞭を倍に増やしたが、薙ぎと叩きつけが飛び交う炎熱の檻では植物がどれだけ成長しようとも灼ける方が先。少し粘液を被ったが、まあ肩口辺りが溶けた程度。
さて、この炎の鞭は勿論相手の動きを阻害するために使用する。倍に増やしたことで二十に至った炎の鞭、それは様々な軌道を描きながら少女を縛り、焼かんと迫る。何故ああいった物言いを嫌悪するのにやめないのかと問われれば、単にそれ以上の援護となると大規模になるからだ。
凡そ彼女の魔術は大規模なものが多い、これまで使ったような小技もあれど大体は召喚や広範囲殲滅用の大魔術が多く占める。これは前衛が必要な場合や多数を相手にするときに真価を発揮するが、逆に前衛が既にいるならば巻き込んでしまうのみ。
だからこそ相手の援護に回ったほうが良いと判断したために捕縛を主としている、前衛が任せるに値する実力を持っていることもあってその傾向が強い。仮に頼りない前衛であれば下がらせて彼女が前に出るだろう。

「うーん?迂闊に話さなければまだ効果はあっただろうに、種を明かすには少し早いだろう。」

男性の爆炎から逃れようとすることを仮定し、逃げるであろう先に炎の鞭を向かわせる。手足の如き繊細さで操作される炎の鞭、内半分は少女を縛る為に四肢を狙い、残る半分は滾る灼熱で焼かんと胴へと迫る。
この炎の鞭の利点は縛ろうと叩こうと焼くことが出来る事、そして鞭という形状ゆえに自在で不規則な軌道を描くことにある。例え正面に魔法障壁を展開しようと、しなる長い鞭は障壁を裏回り打撃を与えるだろう。
対処は回避が一番である、しかしここで男性の広範囲の爆炎が邪魔をするだろう。逃れようとすれば鞭が迫り、鞭を避けようとすれば爆炎へと向かわねばならぬように操作をしている。
魔力量こそ少ないものの、多くの魔術を生み出し魔力操作においては最上級の実力を持つ彼女。真価こそ発揮できていないが、その援護は的確であり前衛の補助という点で見れば最上だろう。
尤も、それが捕縛に寄っていて、対象が少女の見た目でなければさらに良かったのだろうが。

>>シャル・ド・ノブリージュ フィラッサ

7ヶ月前 No.802

メンヘラ @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_Ao2

【王都ロンカリア/飯店/ラヴィ】

イアンはラヴィの両腕の傷を、他人に負わされたものだと誤解しているようだ。しかし、それは結果としてよかったかもしれない。そもそも彼女は病むという表現を理解しているかどうかわからないが、少なくとも偏見を持って接することはなくなるからだ。力を振り絞って立ち上がったイアンが、銀狼の姿に変わる。何をするのかと思えば、客が残していった料理を食べているではないか。盗み食いだというツッコミはさておき、腹を満たした彼女は戦える力を取り戻し、亜人の姿へ戻る。

放たれた強烈なオーラが、ラヴィへ襲いかかる。フラフラとした足取りながらも、それを感じさせない動きで攻撃を回避するラヴィ。少しだけかすめたものの、威力が抑えられているのかあまり支障は出なかった。

「ほんとぉですかぁ……? ほんとぉに私を受け入れてくれるんですかぁ?……」

友達になってやる、と言い切ったイアンに、またラヴィが近づいていく。先程と同じく、どす黒いオーラを撒き散らしながら。もし、相手がこれを受け入れるというのであれば、ラヴィも反抗はしないだろう。しかし、彼女と友達になるということは、依存されるという覚悟が必要になる。途中で投げ出すようなことがあれば、たどる結末は今までの人間たちと変わりないものになってしまうからだ。果たしてイアンには、その覚悟があるのか。重要なのは、そこだ。

>>イアン

【おまたせしてすみませんでした】

7ヶ月前 No.803

大飯喰らいで役に立つ @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【王都ロンカリア/飯店/イアン・ガグンラーズ】

ラヴィを制するのではなく、友達になることで戦いを終わらせようと試みるイアン。頭の作りのせいで誤解に誤解を重ねた結果だが、こうして精神を病んでしまっている者を救えるのは、案外彼女のような裏表のないバカなのかもしれない。
相手もその提案に異論はないらしく、またもフラフラとだが歩み寄ってくる。ただし身辺には例のドス黒いオーラが発生し、それを見たイアンは思わず半歩後退してしまう。
だがここで引けば彼女は悪い道から抜け出せない。自分はユーフォリア達にそこから引き揚げてもらったのだから、今度は自分が助けてやる番ではないか。
そんな賢くはないが道徳的には正しい覚悟の下、しゃんと胸を張って彼女を見据える。また空腹にされてしまったが、今は胃袋より彼女のことが大事だ。

「もちろんさ。だけどこれだけは約束して。もう皆に怖がられるようなことはしちゃダメだ。

あとその黒いのもやめよう。いいね」

自分を受け入れてくれるのかと反芻するラヴィに対し、優しい言葉を選びながらも厳しい口調で諭す。相変わらず彼女の素性に関しては誤解したままだが、今になってようやくわかってきたことがある。
それは彼女が無意識に人々を苦しめてしまっているということ。この溢れ出るオーラ然り、どこか異様で異常性を感じさせる振る舞い然り、人々が彼女を恐れて逃げていくのもうなずける。
反面、短い間だがここまでの戦いで、彼女から悪意という悪意を感じたことはなかった。少なくとも暴力的な振る舞いは一度たりともしてこなかったし、汚い言葉を吐くようなこともなかったはず。
言ってしまえば勿体ないのだ。先述の欠点さえなければ、今頃多くの友達に囲まれていただろう。正直なところ不安は多いが、それでも彼女を信じて受け入れる。友達になる。
リスクを背負うことになったとしても、人として間違っているはずはない。

現にユーフォリアは、こんな自分を受け入れてくれたのだから。

「友達ってさ、なんかこう、イイんだよ。ずっと構ってくれるわけじゃないし時々ケンカもしちゃうけど、一緒にいられてよかったって思えるんだ。

自分のことばっかじゃダメで、相手のことも考えないといけない。とってもタイヘンだけど、とっても楽しい。つまり…えーと、えーとね…



うん!わかんない!」

イアンなりに自分の考える"友達"というものをラヴィに向けて語る。その内容はあまりに月並みで、具体性を大きく欠いたものだが、偶然にもラヴィが抱える問題の核心をついていた。
友達というのは依存する相手ではなく、互いに困ったときは素直に頼り、助け合っていくもの。良いことばかりではないし、時には揉めてしまうことだってある。
それでも互いに思いやる心を忘れなければ、一人でいるより何億倍も楽しい時間を過ごすことができる。むしろ喧嘩も友達がいるからこそ出来るのだ。
それらを上手くまとめて〆にしようとするが、肝心なところでピッタリ当てはまる表現が思い浮かばない。空腹も手伝って答えに辿り着けそうにないと感じたイアンは、それ以上考えるのをやめ、代わりに右手を差し出し握手を求めた。
無邪気で太陽のように明るい笑顔。どこか抜けているからこそ、傷ついた心を包み込める可能性のあるイアン。果たしてラヴィに届くのだろうか…?

>>ラヴィ

7ヶ月前 No.804

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

 寄せる期待に龍狩りは見事に応え。総数十二に渡る剣閃が炸裂するよりも疾く、彼女は疾駆を開始して剣戟を躱し、得物である大剣を手元に戻して反撃に転ずる。空を薙ぎ、次に魔剣士を薙ぎ、幾度と無く転輪する同胞の姿。計、七度目に達した刹那に生じる真空の刃は敵のみならず味方である己にまで届き。
 されどその威力、我が身を傷つけるには及ばず。緋色の長髪を僅かに揺らめかせるだけで、人肌に紅き筋を刻むには至らない。黒猫へと迸らせる剣舞は、滞りを見せる事無く放たれる。断頭の三閃、心臓への二突、四肢分割の四閃、十文字の二閃――総数十一に渡る紅き剣閃が、一瞬の内に煌き。

「ほう……面白い。お前の全力、それが顕わとなる瞬間を待ち遠しく感じるぞ、魔剣士よ」

 黒猫を挟んでの逆方向、対峙する魔剣士が獲物を喰らう最中に耽るは一時の戯れ。此方の加減に合わせてでの彼女の剣戟は正しく鏡写し。総ての剣閃が黒猫を葬り去る事に集約しながらも、紅き剣閃と打ち合う形となる様に仕向けられている。一切の遅れ無く、同刻に放たれる両者の剣舞。斬撃が織り成す包囲網に囚われた黒猫は、足掻く様にして必死に避け続けるが。
 龍狩りの焔撃が、彼女の体勢を完膚無きまでに崩し。其処へ炸裂する一閃が尾を捉え、紅き飛沫と共に地へと落とさせた。猫族としての個性を奪い去ったの手柄、果たして此方か、或いは魔剣士の物か。全く持って見当がつかないが、それはどうでもいい事だ。その程度で、互いに向ける認識が覆る訳でもあるまい。

「……期待外れだ、駄猫。かの塵殺剣は利用すべき者を誤ったとしか言い様がないな」

 部下の報告を受けた黒猫が吐き捨てる、共謀者への暴言。自らの策略の完璧さを疑わぬ彼女は、失敗したのは塵殺剣の方だと断言している様だが、とてもそうであるとは思えない。あれはこの駄猫よりも遥かに聡明であり、詰めを誤る様な真似は決してしない筈だ。恐らく失敗の原因は、杜撰な策謀を企てたこの駄猫の方にある。塵殺剣も、よりによってこんな駄猫と手を組んでしまったのが運の尽きと言った所か。

「賭けに出るか。だが、全力を出すにはもう遅い――既に命運は断たれている事を自認しろ、莫迦駄猫」

 平衡感覚を乱され、膝をつく黒猫。逃げる事は能わず、倒す事でしか道は開けないと判断した彼女は、漸くこの瞬間になって全力を出して賭けに出る。渦潮の如く荒れ狂い、戦場一帯を洗い流す強力な一撃。だが、それが此の場の全員を襲うよりも疾く、空いた左手に燃え盛る焔を帯びさせ。それを振り翳すと共に放出される灼熱の渦が、水の全てを刹那に蒸発させる。焔を司る龍王に、生半可な水では通用しないという事だ。
 既に機動力を喪った黒猫に勝ち目は無く、即座に引導を渡せる自信は大いにあり。疾駆を開始し、瞬く間に黒猫の前へと躍り出ると、その心臓を目掛けて神速無音の一突きを放つ。そしてその結果を確認するまでも無く、後方へと退くと魔剣士へと視線を向ける。仕留め損なっていなければ、ここからが本当の戦いの始まりとなるだろう。

>"災いを呼ぶ黒猫"チェル アーケオルニ 魔剣士

7ヶ月前 No.805

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL

【魔帝城/深淵の間/ハザマ】

 拍子抜け。
 小さく氷魔像が呟いた言葉も、むべなるかな。
 ハザマとて攻撃を外すつもりで撃ったわけではない。だが、あれらは全て“追い詰める”ためのものだ。
 動揺を誘い、混乱を誘い、只管に時間を掛けて嬲り殺す。そうした攻撃時間の長さから、勇者や氷魔像(最も先程からの連携効率の良さを見るに、期待していたのは氷魔像の方だが)との意図しない連携の発生と、それによる手傷を期待していたのだ。
 だがそうではない。あれは確かに動揺を覚えていた。自分の言葉ではない。微かな動揺こそ誘ったが、本心から思うところありとしたのは勇者本人の言葉だ。人と魔の調和を願い、前に進んで来た少女の言葉だ。自分に出来なかった、諦観していたことを、こうも容易く言ってのける相手への小さな羨望と期待。それこそが攻撃の布石となったわけだ。

  ・・・
「(まさか)」

 興味がない? 冗談ではない、その逆だ。
 私はお前にこそ興味があった。この中世とやらで“観測”るならお前だと確信していた。

 ハザマは含むように小さく笑いながら着地する。

 同時に展開したウロボロスが壁や天井に食い付き、それを伝った三次元機動を繰り返す。
 降り注ぐ雷霆はさながら鉄槌の如く、あらゆる全てを叩き潰す無慈悲な洗礼だが、これも彼女の全力とは言い難いだろう。動揺とは裏腹の出来ではある、回避に追い付くほどの魔力と詠唱速度は見事と賞賛しようとも。
 だが―――全力ではないのだ。受けて一発、それもハザマの肉体をダメージと言えるほど焦がすものではない。
 展開された魔素障壁、こと対術式性能の高いそれは、かつて狂機クラスターの攻撃を凌いだ時よりも明確に、的確に、そのダメージを軽減している。もちろん無傷ではないが………彼方と同様だ、死ななければ対したものでもない。


「………ラガルデール? 王国?」
「―――ははあ。なるほど、なるほど」


   ―――そして、ピースは全て嵌った。

 すべての内容がかちりと嵌った。
 手加減していたように見えた一連の動作は全て、彼女が魔族のフリをした人間だからだ。
 人の殲滅を考えないその精神性、敵対種の長としてはあまりに平穏なその思考回路。
 すべて、すべて、すべて―――平穏ではなく、ひとつの国の為だと思えば理解が及ぶ。

「いやあ! 誤解していました、魔帝ヴェルメイユ」
「貴女のことは改変前の歴史に乗っていなかったものでして………」

   、    、   、   、 ・・・・・・・
   、  種明かしは終わった。では此処からが本番ということだ。


「あ、でもあんまりそれ、関係ないんですけどね」


 だから。
 ・・・・・・・・・
 微塵の躊躇いもなく、毒蛇を模したその鎖はヴェルメイユを殺しに掛かった。

 突き刺しに掛かったかと思えば、幾つもの鎖に別たれたアイスソードの捕縛攻撃を視た瞬間。
 これ以上ないほど、本人の意思を徐に踏み躙るように利用して、鎖を束ねて魔素を収束させ、形成された巨大な三体の毒蛇が次々とヴェルメイユへ噛み付き、吹き飛ばすべく襲い掛かったのだ。
 肉体と精神の双方を食い千切る、ソウルイーターの真髄、その一片である。

 ………それだけならば“まだ”対処のしようがあるからと、ご丁寧に一体は明らかに時間を遅らせて。
    その二体を仮に勇者と魔王が同時に止めたとしても、ピンポイントで一体が彼女に食い付くように。

 吹き飛ばす先にあるものは魔帝軍のシンボル、深淵の間が玉座の背後。
 今の発言でとっくの疾うに確信に至ったが、それを実際に仄めかすならこれでいいだろう。
 威力に加減はない。死なれても困るが、易々と防がれても困る。

 此処に来て“付き合え”という言葉を全て無視し、流れを断ち切るような動きに入った。
 それはある一つことに、ハザマが確信を懐いたからだ。
 彼はそもそも、あらゆる陣営から掛け離れた立ち位置にいる。あらゆる目的と意思の全てに糞を投げつけて呵々大笑しながら、究極的なまでに唯我独尊の思考を張り巡らせて行動を行っていた。ハザマは最初から、あることだけが知りたかったのだ。


「あー………説明、もう1回した方がいいですかね?」


 糸のような細い瞳。金色のそれが、小さく開かれる。
 表情は変わらずの貼り付いたような柔和さで―――この期に及んで変わらない表情は、彼の狂気を示していた。

 それ以外は、何もいらなかった。
 それ以外は、心底からどうでも良かった。
 どんな尊い感情だろうが、どんな素晴らしい願いだろうが。

 ―――自分の、命だろうが。関係ない。


「魔帝ヴェルメイユ。貴女にね、生きていてもらうと困るんですよ」


 だから、待っていたのだ。
 それを聞きたかったから、私/僕は此処までやって来たのだ。

「貴女の生存が歴史の死に関わるのです。………あ、そういや説明してませんねこの辺!
 ではかいつまんで行きましょう」

「時空断裂というのですがね。あまりにも大規模な改変が行われると起きる現象です。
 断裂が起きた先の未来と過去には一切のアクセスが不能になる―――こう言ったら分かります?」

 ・・ ・・ ・・  ・・・・・・・・・・・・・
「過去、現在、未来! 全ての人間の歴史が消滅するのですよ!
 ひとつ残らず欠片も無くなり、人理は凍結され、その果てに灰塵と帰す! 残るものなどはなく、続くものなどなく、託されるものなど存在しない! すべて、すべて、すべて―――あらゆるものに意味などない!

 この時代から遥か未来の愚かな人間が造った、
 歴史の価値を塵に還す糞のようなシステムの弊害だ!」


 大手を振り、芝居がかった態度で語るその内容など単純だ。
 口にして居る言葉が仰々しく丁寧なだけで、隠そうともしない嬲るような悪意が滲み出ている。

 つまりは、そうだ。


「この時代の終わりは、争いの終わりで成し遂げられる。
 ・・・・・・・・  ・・・・・・・・・
 勇者アンナローズが、魔帝をその手で討つことで、歴史の駒が次へと進み、過去が保障される」

「結末を外した瞬間すべては変わるのです。その瞬間にすべては消える。
 ラガルデール王国も、この先の時代も、先程言った“時空断裂”の弊害で全てが消える―――」


 ―――おまえはどういう結末だろうが生きられない。

 ―――おまえはどういう結果になろうが、望みを叶えられない。


 たったひとつ魔帝が零した言葉に対して、
 彼は慈悲をかけることなく、これ以上ないほど的確に軟な脇腹を突き刺しに掛かったのだ。

 ―――彼女か、それ以外の誰かが。ある感情を露にしてくれることを期待して。


 ところで。
 ハザマの言葉は9割以上は正しいが、1割ほど嘘が混じっている。
 時空断裂のシステムこそ全く間違っていないが、魔帝を討つことが絶対条件だと確定した覚えはない。それが何であるのか、分かるとしたら、そんなものは神様だけだ。

 ―――だが。幸いなことに、実に幸いなことに。
    この場にこれらの要素を理解し、習熟している人間はハザマしかいない。

 第一気付かれても別にどうでもよかった。
 失敗すればそれまでだからだ。他にも手立ては用意しているが、すべてはそのためだ。
 ハレの日の愉しみ方とは、何故ならそういうものだろう?


「嘆きなさい、聡明なれど愚かなる指導者よ」

「―――お前の願いは、最早叶わない」


 毒蛇が、すべてを永遠の絶望に叩き落とす言葉を囁く。
 たった一つ事を求めるために。“止める”ために行動したギラードとはあまりにも対照的に。

     、   、    スベテ
    ―――さあ、おまえの叫喚を聞かせておくれ、魔帝ヴェルメイユ。
   、   私/僕はそれが知りたかった。

   、   すべてを掛けた願いがどうあっても叶わない時の、悲痛な■■を見せておくれ!


>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード、アンナローズ

7ヶ月前 No.806

どうぶつの森(閉園) @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL


【マロニス城/ホール(城前)/エクスデス】

 無の力、窮極の破壊。
 全方位へと広がっていくその波動は、飲み込んだもの全てを破壊する暴食の牙だ。
 あらゆる魔法とは別のベクトルに存在する『アルマゲスト』の暴力から逃れ得るものはない。事実、エクスデスは隙という多大なリスクを考慮しても、その攻撃で得られるリターンを大きなものだと確信していた。だからこそだ。
 だが何よりも、彼は街から感じる静寂から、戦いの終わりを感じ取っていた。
 ………エクスデスは闘い、踏み潰し、蹂躙しに来たのではない。彼はあくまでも力の実験のため、そして新たな力を得るため、そのピースを求めて王城にやって来たのだ。ただのお飾りではないのならば、高貴なる者の血と魔導士としての力は貴重なリソースになるだろう。その為にこそ彼は踏み込んで、短期決戦と電撃戦のためにやって来たはずだったのだ。


「(………もしや、時間を掛け過ぎたか?)」
「手古摺らせおって………」


 だから。もはや彼は、指揮官と魔弾使い、そして射手の三人を打ち倒したと疑わないが。
 その上でも戦略的には敗北も良いところだ。採算は全くというほどに合っていない。
 忌々し気に彼は零して、次元の扉を開けて帰還しようとし、その時に―――。


 ―――もうひとつ、致命的なミスを犯した。
    彼は絶対の力を持ち、その過程で詰めを誤るような類ではない。

    だが、ヴァイスハイトが見せた一撃が全ての計算を打ち崩した。
    あの瞬間に微かに崩れた歯車が、暗黒魔導士に慢心という致命の乱れを招いていた。


「何だと!? 死んでおらなんだか!」
「だが温いッ―――!」


 最悪の瞬間だった。
『アルマゲスト』の広範囲攻撃が止んだ瞬間に撃ち放たれた弾丸が、
 何よりそれに注意を引かせ、辺り一帯を焼き払い、溶かし切る虹の極光が彼を包む。
 驚愕もそこそこに、彼は二面からの攻撃を凌ぐに最も適切な手段を反射的に選び取った。先程も見せた白魔法中級位階『ウォール』による全方位防御だ。僅かに宙へ浮き、展開された金色の多重障壁は文字通り干渉を阻む絶対防御。

 なによりユーフォリアが導き出した一撃を凌ぎ切るには。
 その魔力の殆どを自己防御に回す必要があった。

 反撃の手間などありはしない。ヴァイスハイトの射撃からユーフォリアの魔法陣のすべてを凌ぎ切るならば、そこに余計な行動は挟めない。結果として、その一撃が彼の本体を焼き払うことはなかった―――正確には、弾丸と魔力の波動が障壁のすべてを叩き割り、吹きあがる虹の残光が彼の鎧を再び傷つけるだけに留まった。

 ―――しかし忘れるなかれ。
    暗黒魔導士は単騎であれど、彼方は三騎だ。

 最後の一人に注意を割かなかった。
 ………割けなかった。一度の計算外が、鋭利な暗黒魔導士の思考を徹底的に乱した!
 ………割けなかった。一度の計算外が、
    彼女の攻撃に対して“立ち止まって防ぐ”以外の手段を選ばせなかった!

 ―――ならば。
    失墜《おち》る流星、駆け抜ける自身という銃弾を放った魔弾使いを止める術はない!


「ぬぅッ! ―――ぐ、お、ぉ、」


 着弾、直撃。
 ………如何に生態として完全な魔物、人間の世界に生きるものでないとしても。
 その突撃、その刃は圧倒的な精度で彼を撃ち貫いた。その時点で致命傷だ。
 何よりも、彼が精製した毒薬は完全な効果こそ得られずとも。それが本来致死の効果を発揮する、樹木に似通う構造の部分に対して効果がないのかと言われると………。


「―――ぉおおおおおおおおお………ッ!!!!」


 否だ。
 完全なる魔性ゆえに即死には至らずとも。
 樹木より出ずるエクスデスの肉体に、それがどれほど大きなダメージを与えたのかは想像に難くない。すぐに治癒を行わねば肉体が崩壊する。切除・再生を行わねば内部から破壊される。
 ―――もはやリスクとリターンが全くと言っていいほど噛み合っていない。であるに、次の行動は決まっていた。


「わしが、こうも簡単に敗れるのか………!」
「覚えておれ! 貴様たちがその勝利とやらを勝ち取り続けることが出来れば、の話だがな………!」


 つまりは、撤退だ。
 開きかけていた次元の扉にすぐさま飛び込み、彼は姿を消した。

 ………元よりエクスデスは、あくまでも“利害一致”から成る協力者だ。
    結果が見え始めた中世のこの戦況に、もう付き合う義理などない。

>ユーフォリア、ダグラス、ヴァイスハイト


【お相手ありがとうございました! m(._.)m】

7ヶ月前 No.807

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL

【大統領官邸/庭園/ストライフ・ロスチャイルド】

     どうして、あなたたちは私の魂に言うのか。鳥のように、山へ逃げよ
「In the LORD put I my trust: how say ye to my soul, Flee as a bird to your mountain〜♪」


 大統領官邸の広大な敷地に、歌声が響く。
 女の声だ。澄んだソプラノ、分類としては少女のそれに近しい。
 上機嫌な鼻歌にも近いようで、どことなく芝居がかったような態度。
 麗しい少女の矮躯から紡がれる声と言い、踊るような身のこなしといい、これで噴水か何処かに居れば紛れもなく妖精《セイレーン》という類の生き物と間違えられてもおかしくはなかっただろう。
 ちょっぴり悪戯じみた少女にも見える。ただの微笑ましい様子にも見えただろう。
 その人物が庭園の官僚専用区画に足を踏み入れていなければ。

 ………その上で。彼女を知っている人間からすれば、そんなことは断じてない。
    もっと正確に言うと。彼女の“本性”を知っている人間からすれば、だ。


 ほら見なさい 悪党が弓を張り、矢を番え、暗闇から心の良いものを射貫こうとしています
「For, lo, the wicked bend their bow, they make ready their arrow upon the string,
 that they may privily shoot at the upright in heart〜♪」


 歌っている内容は、聞けば分かる通りの讃美歌だ。
 旧約聖書の唄―――で、あるが。優雅に踊り、上機嫌なさまで歌う様子からは敬う意思など感じられない。彼女はそもそもクリスチャンでもなんでもないし、ところどころ勝手に内容を改変する奔放さは紛れもなく悪童のそれだ。

 実態はこうだ。適当に思いついたから、特に意味など考えず歌っているだけ。
 気晴らしに、あるいはこれから起こることを憐れむように、けたけた笑っているだけ。
 神を讃える気持など微塵もない。むしろ、そんな存在しないものなどこんな程度の、適当に思いついたから気晴らしで歌う鼻歌レベルの扱いで十分だ―――という類の、その手の人間が聞けば憤怒に狂うだろう傲岸不遜さが見て取れる。

 その紫髪を靡かせて歌う少女は、外見年齢15歳ほど。
 とある名家の官僚の娘―――ということになっている現議員、ストライフ・ロストチャイルドその人だ。


  拠り所の壊された正しいものに、いったい何が出来ますか
「If the foundations be destroyed, what can the righteous do〜………」

「―――どーん! いえいリルちゃん、相変わらずかったい面だねー!
 出来る女で売るのもいいけど、女は愛嬌男も愛嬌っていう名台詞を知らないの? あ、度胸だっけ? まあいいや」


 電話中の彼女が、丁度電話を終えるタイミング。
 リコルヌ・エルヴェシウスの背後に回り、耳元から驚かせるように第一声。
 続いては人の神経を逆撫でするように捲し立ててけたけた笑う。
 子供の悪戯で済ませることも出来ようが、議員としての悪辣な彼女を知る人間からはそうも見えない。兎に角敵を創りやすい立ち振る舞いをするのがストライフという人物で、だからこそ、リコルヌに対する態度も良く言えば気安く、悪く言えば無礼だった。

 ………しかし、彼女は基本として必要のないことはしないタイプだ。
    ただ彼女の“勤勉さ”をからかいに来たのかと言われると、答えは違って来る。

 ・・・・・
「やっといたよ〜」


 ほんの少し口元を緩め、囁くように声を発する。
 それが意味するところは“彼女に靡かない少数派”の処理が終わったということだ。

 リコルヌ・エルヴェシウスをはじめとした一部議員は、歴史是正機構と癒着している。
 それぞれ意図ありきのものであり、共通した感情があるわけではない。
 例えば彼女は新しい秩序のため、例えばある男は“英雄譚が見たい”という傍迷惑な理由のため。

 ………では、この少女は? ストライフ・ロスチャイルドは?

 ―――彼女が歴史是正機構の行動を援助する理由など、決まっている。
    そっちの方が金になるから。取引相手として、歴史是正機構の方が効率が良いからだ。

 態度とは裏腹に、女の腹のうちは酷く単純で、尚且つ醒めた回答しかない。
 リコルヌ・エルヴェシウスの人柄に一切触れることなく、
 交渉相手として接する態度からもそれは良く現れていた。
 人柄だの、感情論だの、そうしたものは基本どうでも良かった。今この女にどれほどの価値があるか、どれほどのリターンがあるか、外面上愛くるしい笑顔の裏側で彼女の思考はそうした方向へと音を立てて渦を巻いている。


「おじさんたちにね、ちょーっとお願いをしに行ったのだけどね?
 あらまびっくり! 熱心な警備員さんたちは急用でおやすみだそうなのでした〜。怖いね」

「気になるなら聞いてみる? はい電話番号」


 白々しい物言いの裏は、つまり“言うことを聞かせた”という事実に他ならない。
 彼女が具体的にそれをどうやったのか、とか。その手口に何を使ったのか、とか。
 そういう内容は語らない。れっきとした証拠として、警備員や一部のシステムの担当から約束を取り付けたという事実を話すだけだ。

 ………そして、彼女が“お願いをした”対象は、ただの一度だって約束を破らない。
    議員時代からの不気味な話だ。
    どんな誠実な議員だろうが、この女に深く接触した次の日には何かがおかしくなるという。

 誠実な人間が一点、汚職塗れの犯罪者に早変わりだ。
 そしてそれは、今回の“少数派”たちも例外ではない。
      ・・・・
 あるいは、破れないのかも知れないが―――そのカラクリを知る人間など此処には居なかった。

 ………閑話休題。
    大統領の警備員に関する相談はそんなところで終わりだ。

 彼女は、ここぞとばかりに本題に入った。


「というわけで報告完了ォ。ホウレンソウって大事だよねえ。お姉ちゃんとの約束だぞ☆」

「あ、で本題なんだけどさ―――ユリちゃんのことどうするか考えてる?
 更迭らしいけど? 万が一のことって? 結構あるわけじゃない?」

 ・・・・
 共通の敵の………ユーフォリア・インテグラーレの話である。

>リコルヌ


【よろしければ〜】

7ヶ月前 No.808

王国の騎士 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

厄介極まりない性質を以て戦場を掻きまわす幽鬼…血に喘ぐ怪物にして、一騎当千。百戦錬磨。そんな魔剣士が最初に喰らうと心に決めたのは、謀略の夢破れた魔大将・チェルであった。
これは戦力が三対一の圧倒的有利に傾くことを意味している。事実、彼女による妨害等のために均衡を保っていた戦況が、あれよあれよという間にアーケオルニ達の側に傾いていくではないか。
魔剣士の明確な敵対化。部下にもたらされる反乱の報らせ。埋めがたい龍炎公との実力差。積み重なった負の要素が、魔大将の精神的余裕を瞬く間に奪っていく。
言動こそ尊大で如何にも大御所らしいが、浮かび上がる焦りの色は一目瞭然。年端もいかない少女のアーケオルニとて、これが見抜けないような未熟者ではない。
今こそ中世を巡る戦いに決着をつける時。一気呵成、外堀を埋められた黒猫に引導を渡してやるのだ。その後で魔剣士の標的が自分か龍炎公に切り替わる可能性は大いにあるが、その時はその時。今は目の前に広がる戦場に全てを注ぎ込む。

「アタシとお揃いだな。似合ってるぜ、裸の大将」

息の合ったタイミングで繰り出される、龍炎公と魔剣士の剣舞。まるで以前から共闘していたかのようなシンクロ具合には、歴戦の竜狩りとて息をのまざるを得ない。
さらに輪入道と化したアーケオルニの火炎が魔大将の計算を狂わせ、続く二人の斬撃によって―――なんと猫の生命線と言っても過言ではない尻尾を切り落とすに至った。
通常、尾というのは動物にとってなくてはならない部位である。例えば魚はこれを用いて水中を移動するし、犬に関しては同種間での社会的シグナルの役割まで担っている。
猫は更に重大だ。猫の尻尾は一見細く愛らしさを醸し出すだけに見えるが、実のところ内面は複雑な構成が成されており、機能面を言えばバランスの維持にまで利用されている。
そんなものを切り落とされた魔大将の心中は察するに余りあるというもの。このことによる悪影響は彼女の挙動を見れば手に取るようにわかるだろう。
戦い初めの時の機動力はどこへやら、立っていることすらままならない。そんな状態では魔術も行使すること能わず、敵に襲われた際の回避も困難を極めることだろう。
邂逅時に喪失した片腕に言及されたことを思い出したアーケオルニは、肘から先がない左腕をわざとらしく掲げて煽るような文言を口にする。思えば彼女が戦場で無駄口を叩くのも非常に珍しい。
ここ数時間で起こった出来事の数々が、彼女の心境に変化を及ぼしているのだろうか?少なくとも龍炎公に切っ先を突き付けた時のような暴走機関車ぶりは鳴りを潜めている。
高潔な騎士に似つかわしくない無粋な煽動には違いないが。

しかしそんな態度を戒めるかのように押し寄せる大波…追い詰められたことで出し惜しみをやめた魔大将の本気。この空間ごと深淵に引きずり込まんとするソレは、紛うことなき生命への冒頭である。
今のアーケオルニにそれを堰き止める術はなく、床に突き立てた剣に必死にすがりつく。押し流されないようにするので精一杯。これでは反撃もままならないが、またも彼女を救ったのは龍炎公であった。
魔大将の間を覆いつくす奔流、それを上から嘗め尽くす火炎。湖が干上がるかのような熾烈さには魔大将の全力ですら力及ばず、結果として彼女が攻勢を取り戻すことはなかった。

「魔大将、アタシもアンタと同じことを考えてた。共存なんか有り得ない、人間と魔族は食うか食われるかだって。

でも今は違う。一人でも多くの命が助かる方を選びたい。



そしてアタシは、そこへの道のりに命を懸ける」

追い込まれているのはアーケオルニも同じだというのに、毅然とした態度で言い放つ。根源にあるのは、誉れ高き王国騎士団の一員としての魂。自分たちが真に成すべきは民の保護。
戦争はその一手段に過ぎず、多くの犠牲を伴う最後の手段だということを忘れてはならない。魔族にも同じことが言えるだろう。魔族の繁栄を望むのは何も悪くない。
しかし人間を滅ぼした上での繁栄となれば話は別。その代償を憂い、よりよい選択肢を導き出したこと。それこそが魔帝と魔大将の白と黒を別った要素に他ならない。

この場に居合わせる唯一の人間として想いを吐露し終えると、何を考えたか鎧をその場に脱ぎ捨てる。水を多分に吸った衣服は重く、その上に鎧となると機動性を損なうも甚だしいのだ。
さらに床に刺さった剣を蹴り上げるという奇行に走るアーケオルニ。先程から投げたり蹴ったりと、騎士の命である剣の扱いがぞんざいと言わざるを得ないが、全ては勝利のため。

宙を舞う煌黒の剛刃。それを視界にとらえるや否や、闇属性魔法によって形成された漆黒の翼を生やし、床を蹴って飛び上がる。体力の消耗が激しいとはいえ、人間の身で大それた動きを実現するには仕方のないこと。
空中で愛剣と再会を果たして間も無く、繰り出されるは頭上からの急降下からなる一閃。またも単純だが速度と破壊力共に申し分なく、無骨な巨剣に相応しい一撃。こと俊敏性を欠いた今の魔大将には痛打となるだろう。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド、魔剣士

7ヶ月前 No.809

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/魔大将の間/魔剣士】


飛ぶ鮮血は黒猫が負傷したことを表していた、ただでさえ龍と魔剣士の両名の斬撃に辛うじて避けていた所に人間の火炎、体勢を崩した黒猫に迫る斬撃を避け切る術はなく、自慢らしい尾が繊維の千切れる音と共に宙へ舞う。
付着する血、紛れもなく魔剣士が求めていた血。しかし笑みが深まるどころか傷を負った黒猫に向ける表情は消えていた、失望とも、驚愕とも、決して良い感情を窺えない冷え切った瞳。瞳が語るのは、まさかその程度ではないだろうと。
龍との児戯は中々の悦ではあった、だがそれを掻き消すほどの黒猫の無様な負傷は火照った熱を一気に冷ます。笑みと共に龍へ喰らいがいがあると語るつもりではあった、そんな気など失せた。

「……ああ、龍よ。貴様の全力、それは好いものだと期待している。」

冷え切った口調で放たれたそれ、龍はこうも失望させてくれるなよと言外に伝える。ふらつき無様を晒し続ける黒猫に、一歩、また一歩と距離を詰めていく。先の様な音など置き去りにする速度ではない、獲物を追い詰める獣のように着実に距離を詰めていく。
黒猫の全力の足掻き、この間ごと流さんとする濁流の渦。しかしその中であっても僅かのずれなく黒猫への歩みを進める、濁流など有って無きもの。一歩、また一歩、歩みの速度は変わらずに進み続ける。
龍から放たれるはこの濁流を蒸発させる灼熱の渦、水が周囲を曇らせる蒸気へ変わろうとも炎の勢いは止まらず。その炎熱を浴びようとも歩みは止まらず、その肉体を焦がすこともない。業炎に揺れる金糸に一片の翳りなく、炎を浴び更に煌めく。
烈火を背から浴び、黒猫へと迫るその姿は死神では飽き足らず、冥界の断罪人のよう。濃密な死を孕む気を漂わせ、その小さき身からは考えられぬ威圧感を放つ。見下げているはずなのに、自身が下であると理解させられる。
黒猫の喚きに耳を傾ける必要もない、あの程度で傷を負うのであればそれだけの事。だが、喰らうに値すると見定めた以上このまま死ぬのでは余りに詰らぬ。だからこそ、歩みを以て死が近付くことを教唆しなければならない。

「黒猫、貴様はその程度であったか?喰らうに値する、私はそう称したはずだが。」

その言葉は抗えと示していた、先の凪ではなくさらに強力な何かを持ち得ているだろうと。あれが全力であると、言うはずがあるまい。魔剣士は黒猫を冷えた瞳で射貫く、何故ならばまだ死んでいないだろうと。
一歩、また一歩と黒猫との距離は縮まっていく。既に長剣を振るえば剣気のみで首を撥ねようと、胴を断とうと容易い距離。だがそれではただ殺すことと変わりはしない、あくまで魔剣士が求めるのは強者の血を浴びる事。

「貴様の爪は何故ある?私の首を撥ねる為だろう?どうした、髪の一房すら断ち得ていない。」

魔剣士は諦めて死ぬことを許しはしない、当人にとって全力であろうとも死に瀕すればどの生物であろうと生き足掻く。黒猫はまだその域に居ない、喰らうに値するとはその生命の危機に呼応した実力を含めての事。
一歩、また一歩と重圧を纏いて進む。長剣を振るえば刀身で臓物を引き摺り出すことも、周囲を赤く染める事も出来よう。だが黒猫はまだ生きているだけだ、尾を失い機動力が損なわれた?まだ手足も残っているだろう、牙もある、ほら殺せるだろう?

「貴様の水は何故扱える?私の心の臓を穿つ為だろう?鎧すら貫けぬ鈍らではあるまい、まだ私は生きている。」

龍の神速無音の突き、人間の黒翼を伴った上空からの一撃。何方も練度は素晴らしく、喰らう時が待ち遠しい程。だがそれだけだ、平衡感覚がなくとも手足は動くだろう。恥も外聞も投げ捨てて無様に身を投げれば、逃れられよう。
まだ黒猫は生き切っていない、たかが身体の一部を失った程度で死なぬ、生を費やしたとも言えぬ。死を眼前にして、抗い、足掻き、自壊するほどの力を引き出してこそ、そこで潰えるべきだ。その血こそ魔剣士が求める、強者の血。
魔剣士に圧されるならば黒猫は避けるだろう、避けて貰わねば困る。ただ疾く音無き突きとただの振り下ろし、避けられぬ道理がない。だからこそ、避けることを信じ魔剣士は歩みを進める。

「貴様も生きているだろう?その手があれば絞め殺せよう、その足があれば蹴り殺せよう、その牙があれば噛み殺せよう。貴様は、死んではいない。」

黒猫の眼前で歩みを止める、剣を携え佇んでいるだけ。それだけだが僅かな隙も感じられぬ、何処に剣を放とうと弾かれ己が両断されることを嫌でも理解させられる風貌。死の気配、魔剣士の周囲に漂うそれは黒猫を包もうとしていた。
笑みはない、あるのは蒼く澄んだ、それでいながら親しみなど一切感じない冥府の冷気の如き視線。その瞳は語る、生きているのならば屍と化すまで足掻き続けろと。まだ死んではいないだろうと。
魔剣士は剣を持たぬ手を黒猫へと伸ばす、伸ばす先は胴。狙うは臓物、その手が触れれば表面の柔肉など容易く貫き赤へと染めるだろう。だが今望んでいるのはそうではない、その腕を弾き生き足掻くことを魔剣士は何よりも期待する。

「足掻け、抗え、身体はまだ動くだろう。迫る死を振り払い、私を悦へと導いて見せよ。」

そう、諦めるならばこの腕を受け入れればいい。身に仕舞われた臓物を外気へ晒し、黒猫を中心とした深紅の華を咲かすだろう。だがそれでは悦楽も快楽も程遠い、唯の有象無象の血を浴びるだけならば事足りている。
腕を払い、首筋へ噛みつけばいい。若しくは腕を折る勢いで蹴りを放てばいい。それとも腕で絞め殺しにかかるか、それも好いだろう。何れにしても命を使い果たすのであれば方法は問わない、強者へ至るとはそういう事だ。
龍も、死に瀕すれば今以上の力を引き出そう。人間も、あの様子であれば追い込まれればさらに熟れる。だからこそ喰らいがいがあると言った、黒猫も甘いながらにも自身の生にしがみ付くだろう、であれば死に時はここではあるまい。
さあ、愉快な黒猫さん。尻尾が切れてさあ大変、迫る死神さんから命からがら抗いましょう。諦めて死ぬことは許されません、だって死神さんは精一杯生きている子が大好きだからです。頑張れ黒猫さん、まだ生きてる。
その剣は、まだ血を求める。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ

7ヶ月前 No.810

Futo・Volde @nonoji2002 ★gLBoRrfVfo_sgc

【ディンカ/海底洞窟入口/アーチ上/魔獣ヴァグネル】

戦い方には多種多様な物がある。例えばヴァグネルの居る中世なら剣と弓がその代表的な物と言えるだろう。剣と盾を用いて、剣を振るい、盾で守る。弓ならば、弓を射って矢を射出し、相手を貫く。とまぁ、そんな具合だ。ヴァグネルは両方を選んだ。だが、彼が基本的に愛用するのは剣。彼の手にしっくりくるのだろう。とは言え彼は“魔獣”だ。剣などなくとも、彼は己の身体1つで戦える。

何故、彼がそうしないのか。それは彼が持つこの剣に理由がある。真の姿となったその剣はまさしく“地獄の門番”に相応しい佇まいの者が持つに相応しい。そして彼は“門番”だ。

「実に面白い人間だ。我の前でどれだけ踏ん張れるか、見物だな」

アンリエットの志は真っ直ぐな物。それは歪みに歪んだヴァグネルとは正反対かもしれない。
――否、ヴァグネルも望むべくして歪んだ志を持つことになったわけではない。だが、もう彼は後戻りできない。彼の心はすっかり闇に呑みこまれてしまったのだから。

「ぐあっっ!」

青い閃光と共に、距離を詰められる。召還したインプを置き去りにし、ユリエルズ・エッジから放たれた火球を喰らいながらも、アンリエットは間合いを詰めれば、ヴァグネルに叩き込むように、何度も何度も拳を振るう。
防ごうと思えば防げたのかもしれない。だが、ヴァグネルは人間を見下していた。
故に、アンリエットがこのような行為に及ぶことを全く予想していなかったのだ。ユリエルズ・エッジを盾代わりにすることも出来ず、一発一発がある程度の威力を持つ拳を喰らうヴァグネル。一発受けるたびにうぐっ、と呻きながらも、この攻撃を防ごうともがくも、相手には一切の隙がみえない。
――だが、彼は“獣”だ。痛みを伴うことなど何度も経験してきた。それに体力も普通の人間や魔族よりもかなり高い。確かに、攻撃を受けてはいるまだまだ力を削ぐことは出来ていないのだ。

ヴァグネルは片足を上げて、そのまま地面を蹴るようにして大きく踏み込む。
と、彼が地面を踏み込むと同時に強い衝撃波が起こり、彼の足を中心に辺りの地面は大きくひび割れ、衝撃波で辺りの物を吹き飛ばす。
“ストンプ”。ヴァグネルはそう呼んでいる。

「まだまだ序の口だ」

相手から距離を取ったヴァグネルはユリエルズ・エッジを一度腰に携え、変わりと言わんばかりに弓矢を取り出す。銀色に光り輝く弓は、ユリエルズ・エッジの炎を映し出して赤く燃え上がっているかのように見せる。そしてヴァグネルは矢を射る。それも1本ずつではない。一度に5本。そんな器用な事が出来るのも、彼が手練れである証だろう。数度に分けて放たれた矢は散弾銃のように四方八方に広がりながら、アンリエット目がけて飛んでゆく。
同時に、撃ち溢したいくつかの矢が刺さる先は凍りつく。そう、この矢はただの矢ではない。彼の魔術がかけられたこの矢は刺さるとそこを中心に徐々に凍ってゆく。つまり、刺さってしまえばその矢を引き抜かない限り、徐々に体をむしばむように凍ってゆくと言う事だ。

>アンリエット・エクレール


【描写的に一部確定ロルになってしまう点はご了承ください】

7ヶ月前 No.811

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【魔帝城/無限廊下/サシャ】

押し黙ったまま、ニアとレオンハルト、レプティラ両名の問答を聞き届けるサシャ。彼女達に比べて頭脳の劣る自分が、口を出すべき状況ではないと思った。
難しい話だ。それでも、彼女はレオンハルトの返答に、強い共感を示す。誰一人として、無駄な命はない。生けとし生ける者は皆、その生涯の中で、何かを歴史に刻み込んでいくのだ。
それは、大勢の人にとっては関係のないことかも知れない。後世では誰も覚えていないことかも知れない。たとえそうだとしても、近しい人達の、友人達の、家族の記憶には深く刻み込まれる。
ニアがそれすらも無駄だというのなら、サシャは堂々と否定の言葉を発するだろう。一人一人の小さな営みまでをも無意味と称する権利など、彼女も、この世の誰も、持ち合わせていないのだから。

「っ……! あたしのために死のうとなんてしないで、レプティラっ!」

サシャの放った光が、ニアの身体を焼き焦がす。しかし、敵はそのような状況にも関わらず、ただこちらの命を獲るためだけに、右腕を、全身を棄てて、突貫してくる。
彼女の狙いは、最初から"それ"だったのだ。今までサシャを狙わなかったのは、不必要であると断じていたからではない。ただ、機会を待っていただけ。
獲物が自ら飛び出してくる瞬間を、静かに待ち続けていた狩人。攻撃を終えた直後の隙に付け込まれた以上、回避は容易ではないが、今の速度を持ってすれば、間に合わないこともない。
……だったのだが、そうなる前に、襲い掛かってきた刺突をレプティラが受け止めていた。どうして、どうしてその身を犠牲にしてまで、自分を護ろうとするのだ。
意味がない、それで彼女自身が死んでしまったら、何の意味もない。それこそ、ニアのいう無駄な死そのものだ。だから、サシャはそれよりも早く動いた。レプティラに犠牲を払わせたくないという一心で。

刺突を腹に受け、痛みと共に猛烈な喪失感に襲われるサシャ。レプティラの自己犠牲が、却って彼女を傷付ける結果となったのだ。だが、それでもサシャは立ち上がる。
心配を掛ける訳にはいかない。自分は一人でも大丈夫だと証明するために、この戦いを乗り切ってみせる。守られる側ではなく、守る側として、全員で生き抜くのだ。

「あたしは生きたい! みんなと一緒に!」

本心からの叫びを轟かせると共に、再びサシャは光をまとう。塵殺剣に匹敵する超速で接近し、目にも留まらぬ四連撃を放つ。直後に後方へ離脱した彼女は、今度は魔法の詠唱を始める。
機動力を活かした接近戦を得意とするサシャは、魔法の扱いにおいても優れた資質を持っている人物だ。ただ、自分のスタイルにあうのがそちらであるというだけで、決して遠距離戦が不得手という訳ではない。
空中に描き出される魔法陣。無数に展開されたそれから、彼女はニアに向かって雨のようにレーザーを降り注がせる。まだ、死にたくはない。自分を信じてくれた二人と、魔族のみんなと生きるため、自分は戦おう。
そして、ニアの言っていたことが間違いだと、この手で証明してみせる。人間と魔族が笑い合える未来がいつかやって来るであろうことを信じ、サシャは前へと進む。

>"塵殺剣"のニア、レオンハルト・ローゼンクランツ、"常山蛇勢"レプティラ

7ヶ月前 No.812

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【時空防衛連盟/休憩室/ザーシャ】


目が覚めたのは結構前だ、気が付いたら懐かしい……っても大して覚えてはいないが生まれた時代の景色が嫌でも目に入った。まあ察することは出来た、海のどっかが未来に繋がってるとか言う与太話の様な事がなければ予想は合っているだろう。
血塗れでボロボロだった服も綺麗になっている、どれくらい意識を飛ばしていたかは分からねえが傷も完治している。そして、何故か置かれていたこの時代の保存食。認められた、ってことで良いんだろうなあ。
嬉しい、そんな感情もあるがちょっとばかり複雑だな。あん時は戦闘していたってことで舞い上がってもいたが、今思えば顔から火が出るほど恥ずかしい事ばかり言っていた気もする。だが、それもひっくるめて認めてくれたんなら本当に嬉しい。

「……まあ、未来に来たおかげで面倒な手続きが待ってたんだけどなあ。」

俺の立場は中世から来た協力者って形になっている、そもそも俺の素性を話せばスパイ認定間違いなしだ。ちょっと報告書をさっき見てみたら糞親の報告も上がっていやがる、危ねえところだったなあ。
ま、本当はあの人と一緒に居たいけどな。だけどあの人の作品であることが前提だが、俺も考えを持ってはいる。あの朱い槍の兄ちゃんの言葉に頷いた以上、俺は誇りある戦士として戦う事は決めた。
とはいえだ、ああいった手続きは面倒に変わりはねえ。協力するからと言ってはいそうですかといかねえのは分かるんだけどなあ、あの人と糞親の件を話さないで説明となると結構面倒だった。
今はそれが終わって休憩室とかいう場所でくつろいでる、保存食片手にな。……まあ、世辞にも美味いとはいえねえけどな。味が分かんねえ以上食感が俺の味覚だ、保存するに適してはいるんだろうが食いにくい。
でも残すことはしねえ、あの人から命を貰って、認めて貰って、三番目に貰ったものがこれだ。意外とすくねえなとは思ったが、貰った物には違いねえ。味は感じねえがしっかり味わって食す。

「さて、後は糞親ぶっ飛ばして歴史是正機構もぶっ飛ばす。まあ、やれるだけはやってやるよ。」

独り言を呟きながら俺は適当なベッドに腰掛ける、まだ中世で戦ってんのか空きは多い。何でここに居るかと聞かれりゃ人が少ないからだと答えるしかねえな。一応、見た目があれだからな。
隠してはいるが俺の右腕は控えめに言っても異形だ、ここの連中は然程気にしねえ気質かもしれねえが俺が気にする。好奇の視線も慣れたもんだが、人と違うってことはそれだけ違う側も気をつけなきゃなんねえ。
何かの拍子で見えてみろ、大半の奴は驚くだろうよ。それでここの気の良い連中は傷付けねえように気にしない風を装う、そっちの方が辛いわ阿呆。気を遣わせる方が嫌に決まってんだろ、気持ち悪いだのはっきり言われた方が幾分かはマシだ。
まあ、そんな訳で人の少ない場所にいる訳だ。人の出入りは少なくはねえが大半が疲れて寝に来る奴ばっかだ、挨拶はしても深入りはしてこねえから気が楽だ。疲れていても挨拶を忘れねえのはすげえと思うけどな。
俺は寝なくても平気だからなあ、ここに居ても座ってるくらいしかやることはねえ。何か書物だの娯楽用の何かが置かれちゃあいるが、文字も読めなきゃ使い方も分からねえ。言葉だけなら知識だけは詰まってる頭でどうにかなるが、文字となると範囲外だ。
この機会に覚えんのも悪くはねえが、遊んでられる場合でもねえからな。そんなもんは後でいい、出撃の命が出るのもそんな遠くねえだろうからな。身体が動くのは確認した、万全と言われりゃあそうだなあ。
だからあの人に認められた喜びでも噛み締めながら休んでいるとするかねえ、傷も食事も服までも直してもらった……おいまて、服?いや、うん、深くは考えない。考えるとまた顔から火が出そうだ、うん、やめだやめ。休む、そうする。

>>ALL


【四章プロローグという事で投下です】

7ヶ月前 No.813

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

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7ヶ月前 No.814

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【大統領官邸/公邸/イルグナー・シュタウンハウゼン】


「……おかしいデスね、余りも警備が少なすぎデス。あの大統領に限って、保身を疎かにする筈がないのデスが……」

幾度も時空防衛連盟へ送り込まれ、その聴取に応じ続けるが故に気が付いた異変。先日の彼女と老人たちが招かれた会議、その時と比べると圧倒的に警備の人数が少ない。むしろ、居ないとまで言っても良い。
嫌でも知っている大統領の人柄から判断すれば間違っても警備を手薄にするような人間ではない、むしろ何か起こるたびに警備を厳重にして身の安全を図る人種である。ならば、この事態は異常であり何かが起こる前兆と見た方がいいだろう。
これは報告会議どころの話ではなくなる、そう予感した彼女はだからと言って動き始める訳ではない。こうした場合下手に動けば標的が変わる、幾らハウゼン運輸に関しての引継ぎは問題ないとはいえ迂闊に死地に飛び込むのは賢くはない。
不利益なく動く、それが政界にまで足を踏み入れ運輸界を総締めする一大企業が成長した訳だ。徹底して敵を作らず、不利益を被らない。ある種腐敗の象徴である行動を取ってきた、故に自身が為したい事と違えど不利益がある以上見過ごしてきた。
だからこそ、この事態で一番重要なのはこうすることで何が、誰が利益を得るかだ。意味もなくするような相手であれば対策のしようがない、だが警備員を外すという事は短絡的ではなく確固とした目的故に起こすことだ。
大統領が邪魔な組織、時空防衛連盟が真っ先に上がるが部下の暴走でなければまず有り得ない、ユーフォリアはこういった手段で反抗する人物ではなく、部下の暴走にしては計画が上手く行き過ぎている。
となれば、大統領が反感を得た組織となるが、多すぎて絞れない。警備を外せるほどの影響力を持つならば、それほどの重鎮が背景に着くと考えるのも自然ではある。だがそういった官僚は凡そ大統領と共に甘い汁を吸っている、排除する理由が見当たらない。

「探偵の真似事はボクには無理デスね、……まあ消えるには潮時、と言う事デスか。」

ここまで準備が整っているならば、起きてからの対処でしか行動は起こせない。幸い、大統領の執務室で何か起これば能力を経て一秒も掛からずに移動は可能だ。そこで御対面、最悪死にはする。
大統領以下彼女含めた腐敗した官僚が何時までも上にのさばり続ける、その状況は決して良くはない。ただで死ぬつもりはさらさらない、だがここまで周到に準備するくらいだ、大した戦闘訓練もしていない彼女が勝てる見込みはない。
大統領を庇う、腐敗した官僚。消えるには最高の状況だと皮肉気に笑う、そんな自分に酔っている自覚はある。また出発前に呑んだワインで悪酔いでもしたかと茶化す、どうせ今の立場が捨てられないのは大統領も彼女も変わりはしない。
そこに想うところがあろうとも、他から見れば同じ程度でしかない。腐敗を理解していながらも、保身に走った己もとうに腐っている。どんな思惑であれ、一掃しようというならば一緒に掃除されるべきだろう。

「まあ、何もないことに越したことはないデスけど。……こんなことなら、少し早めに来るべきではなかったデスね。」

損得勘定を何処かでし始めた自身に嫌気がさしながらも、ソファーに深く腰掛け時間まで待つことにする。普段ならば能力も有って五分程度前に来るのだが、虫の知らせと言うべきか早く来るべきだと感じて一時間前に来てみればこの有様。
酒の一つでも浴びたいなどと、能力を使えばすぐに出来る事を呟きながら時間を待つ。こんな事酔ってないとやっていられないなど考えながらも、思考は別へと移る。帰ったらどの酒を飲もうか、とふざけたことにだ。
たまにはきつい酒を飲んで死んだように眠るのも悪くない、楽しい事を考えないと悪い方向にしか思考が向かなくなる。こうした時にこそ落ち着いて、何が起きても対処できるようにしなければ。
そう、風見鶏はくるくる回っていればいいのだ、どちらかに向き続けるときは壊れた時だけで十分だ。

>>ALL


【プロローグの為に、配置です】

7ヶ月前 No.815

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【歴史是正機構/丞相室/フォルトゥナ・インテグラーレ】


事務的な挨拶と共にその部屋へと踏み入る、雑多な印象を受ける部屋ではあるがそれを指摘するほどこの部屋の主と親しいわけではない。ヘルガ・アポザンスキー、彼女をこの歴史是正機構へと引き抜いた張本人。
面会を申請した理由は他ならぬ彼女の目的の為であり、歴史是正機構へ引き抜かれた理由でもある。ユーフォリア・インテグラーレ、時空防衛連盟総統の行動の阻止。それが彼女が只管に鍛錬を積む理由であり、生きる理由。
その為だけに歴史是正機構に所属し、この時まで飾りの立場に座り続けて来た。将官の立場は丞相自ら指示を下す為の物、相応の権限も同様に付与されたがその大部分を一切使用しなかった。それは正に、この為だけであることを証明していた。

「……古代での敗走、中世の戦況。双方を取っても未だ歴史改変は為されていません、このままでは中世も敗走となるでしょう。」

立場を弁え、口調こそ変えている物の敬意は感じられない。この言葉はあくまで確認、要件を話す前の地固め。何故訪れたか、何故必要になったか、それを説明せずとも伝える為の物。
実際、古代では歴史改変を成し遂げられず、中世も思わぬ好転があったが現在は劣勢と言う他ない。得られるものが何もない訳ではない、将官の立場故に入る情報で何を行っていたかも知っている。だが、これはあくまで前置きでしかない。
目的達成のための理由付け、待てば何時かは命令は下されるだろう。だがそれでは遅いと彼女は憎悪と憤怒と滾らせる、あの総統は止めねばなるまい。そしてそれ以上に、抑えが効かなくなる。

「中でも総統、ユーフォリア・インテグラーレ。あれは古代、中世共に本拠地まで攻め入った強大な力を持つ協力者を討っています。」

強大、と言うのはデータ上の話ではある。しかしそれを見た限りでは歴史是正機構に所属する精鋭と比べても見劣りするどころか、それ以上の力を持っていた。古代、中世、その双方がだ。
それを現地の戦力、時空防衛連盟の職員と共にとは言え古代は討伐し、中世は撤退まで追い込んでいる。その力は見過ごせるものではない、そういった建前だ。動きを阻止するために必要な命令を得るための、建前。
丞相の立場で知らぬ訳ではない、だがそれでも虚偽にならぬ範囲でその脅威を幾分か増して伝える。戯れ、そう言っても過言ではない。どちらも必要であると知り、建前の為に言葉を飾るだけ。

「私はかの総統を止めるために招かれた者、止めるには遅かれどまだ間に合わない訳ではないでしょう。」

今、中世へと送り込もうと無駄でしかない。話しているのはこの先の話、陰謀を巡らせているようではあるが彼女には関係がない。戦場は何れこの時代へと移る、古代や中世と違い本拠地が落とされればそれで終い。
しかしそれは相手も変わらぬこと、時空防衛連盟本部を落とせば後は容易い。そしてこれまでからして本拠地の防衛に当たるであろう総統、例えそうでなくとも最大戦力ともいえる存在を足止めする役目は必要だろう。
その役目を担うために居るのが彼女だ、総統を足止めするに足る実力を持っているのは間違いない。そして彼女は与り知らぬ所、丞相が策を巡らせた箇所でもあるが彼女を総統に宛がう事こそに意味がある。

「命令を、丞相。私は何時でも。」

この言葉の為だけの言葉遊び、互いに理解していることを態々口に出し明確にした。仮に所属している組織ではあるが、所属する以上彼女はその場の規則に従おう。それが丞相からの指示を必要とするならば、受け取る為に手を尽くそう。
形だけの礼を伴って命を受ける準備は出来た、後は只命令が下るのを待つのみ。命が下り次第、最後の調整を行い戦場へと歩みを進めるだろう。彼女の目的がそれであるならば、止まる理由はない。
さあ、丞相。貴方は命令を下すだけでいい、そうすれば後は彼女が手を下す。

>>ヘルガ・アポザンスキー


【許可を得た上で、対象を限定したプロローグを行わせて頂きます。】

7ヶ月前 No.816

"混沌" @kyouzin ★XC6leNwSoH_7ig

【魔王城/魔将軍の間/フィラッサ】

「一固体で戦闘能力が完結しないなんて不完全な生命体だね、人間は。 そこが可愛いんだってのは不死公も言ってたし、私もそう思うってのは事実だけどね」

前衛が踏み込めるのは後衛、つまりあの魔術師に対する信頼があるからだと語る、それに対してフィラッサは嘲笑を向けながら、一固体で戦闘能力が完結しない、つまり一固体だけだとまともに戦闘能力を発揮できないとは、なんと不完全な生命体なんだろうと言い始めた。
だが同時に、そういう所が『上位生命体の自分たち』が『下等生命体の人間に対してペットとして可愛いと思う』部分なのだとも付け加える。

そう、フィラッサという魔族は極端なまでに自己完結している、それっぽい素振りこそ見せるものの、本質的には誰にも影響されない孤独を極めたような魔族だ。
玩具で遊ぶ事はある、だが、その玩具にはあまり思いいれが無いので壊されても文句を言わない、新しい玩具を探すだけ、仮に彼女に"フロレ"の死を伝えた所で、彼女は怒ったフリこそするだろうが、内心ほとんど感情を動かさないだろう。
最初から壊れるだろうな、壊れてもいいや、と思って遊んでいた玩具が破損したところで、思いつく感想など「あーあー」で終わりなのだから。

そしてその性質は、戦闘時にも発揮される。 味方を確実に巻き込むような広域攻撃の連射、本人の連携への意識の低さが代表例だ。
先ほど撃ち込んだ植物弾だって、味方が居れば、味方を栄養にしようと襲い掛かったシロモノなのだから。

それはさておき、フィラッサの放った弾丸は、敵の攻撃によって大した戦果もあげられず燃やし尽くされる。

「あっははは、有言実行お見事。 趣味が無いって言っても次に使うのも鞭じゃあ説得力が無いよ、お姉さん」

燃やし尽くす、そう発言したシャルに対しては有言実行お見事と、わざとらしく褒め、エストに対しては説得力が無いと指摘する。
さて、次にしてくるのは何か、と思えば、剣を地面に叩き付けて、爆炎を引き起こした、まるで魔法のようだとフィラッサは内心興味を抱くが、同時に障壁で防いでしまえばそれだけの攻撃だと認識する。

が、ここに良いタイミングで炎の鞭がくる。
今度の拘束具は、拘束されるだけではなく、炎でダメージまで食らうハメになるような物だ。
どうせ狙ってくるのは手足だと、フィラッサは裏に回ってくることも想定して腕を魔法障壁で守るが……相手が拘束のみに重きを置いていると思っていたために、胴への警戒が薄く、そこに鞭の一撃が直撃する。

服が焼け、その奥にある皮膚も中々な音を立てて焼ける。 流石に痛みを感じたか、フィラッサも声にならない叫びを一瞬あげた。
そして、その瞬間、魔法障壁などで適当にいなそうと思っていた敵の炎への対処方法が変更となった、もう、終わらせてしまおう。

胴に鞭が絡みつくが、腕さえ守れれば問題ないと、足や羽に鞭が絡みつくのも気にせず、フィラッサは拳銃の弾丸を変更して、襲い来る炎に向ける。

「残念だけど遊びはここまで。 いい加減私にも苛立ちとかそういうのが出てきたからね、死んでもらうよ。 アルティメット・カノン」

銃口の熱量が一気に跳ね上がり、眩い光が漏れ始める。
使うのは、先ほど突っ込んできたシャルに使おうとしていた、防御すら貫通する大火力砲撃。

フィラッサがトリガーを引けば、極光と共に青白いエネルギー弾が発射され、圧倒的な熱量で絡み付いている鞭や周囲の物、炎を消し飛ばしながらシャルへと向かってゆく。
だが、これも"一発目"に過ぎない、フィラッサは二挺拳銃使いであり……つまりは。

「それなりに楽しかったよ、お姉さんのほうは趣味が私好みだったから生かしてあげようと思ったけど、ま、最悪不死公辺りに頼めばいいしね」

二発目も存在するということだ。
フィラッサは鞭の束縛から逃れ、天井付近まで上昇して、さらに追加の一発を、今度は斜め上の角度から発射する。

>シャル・ド・ノブリージュ エスト

7ヶ月前 No.817

ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_t5r

【 マロニス城→逃亡/厨房→逃亡/ガドン・バルザック 】

 ふざけた固有魔術だが――ガドン・バルザックの固有魔術は嫌らしく、粘着質にその効果を発揮する。
 その効果は実に単純である。ガドン・バルザックを必ず視界の中心に納めなければならないというもの。
 対峙する相手の全てにこの術式は作用し、性別超越生命体の圧倒的存在感に飲み込まれれば最後、彼から目をそらせなくなる。
 これが引き起こすものはなにか。
 レーヴもミコルナも直感的に理解しているだろう。死角から迫られればそれこそ回避のしようがないと。
 死角から常に不意打ちを受け続けるという間抜けきわまりなく、しかし凶悪な状況に全ての人間を貶める。
 それが、ガドン・バルザックの筋肉――否、固有魔術。

「アァーーハッハハハハ!! 逃げないと」
「串・刺・し、よぉぉぉぉ!?」

 嵌まった――!
 それを確信した時から、ガドン・バルザックに再びオンナの心が戻ってきているとでもいえばいいのか。
 高温領域にもかかわらず、どう考えても男が発しているかのような声音。
 それに併せて闇の杭が噴出。噴出。噴出――レーヴとミコルナを貫きにかからんと襲いかかる。
 そしてミコルナの一矢も、今の彼女(哲学)にとっては何てことはない。
 全てこちらにしか降り注がないというのなら、対処は単純。

「ほらほらほらほらほらぁ!!!」

 詠唱破棄、詠唱破棄、詠唱破棄、――《乙女の激昂》。手より無数の灼熱の砲弾の射出。
 数百の矢も、同質量の火炎をぶつければ何も問題はない。マナの矢とてこちらが押し切ればそれまでだ。
 故に彼女は有頂天であった。
 このまま勝利はいただき。アタシの勝ちは揺るがない。イイ男もこのまま――。

「――あ?」

 何かがおかしい。
 何かがおかしい、何かが。
 そう、不規則かつ大量に展開される杭を相手にその全てを回避することなど実質不可能に近い。
 よく見ていれば回避は出来る。たとえば、射出地点にほんの一瞬だけ起きるマナの波紋を見るとか。
 だがそれも、自分の固有魔術で封じたはずだ――その視覚以上の物事が出来ないようにしているはずなのに。
 何故。

「ま、待て、待て待て待て待て待ちなさぁぁぁぁい!?」

 ――レーヴはこちらへの接近を果たしている?

 あり得ない、あり得ないのだ。これはあり得ないとしか言いようがない。
 噴出する闇の槍を難なくかいくぐるトリック。
 よく考えればミコルナの指示によるものだろうとすぐ気づけるが――己に絶対の自信を持つバルザックに思考は及ばない。
 故に。

「――、――決めたワ! 撤退よぉぉぉぉぉ!!!」

 かなうはずがないと結論づけた。
 愚かしくも賢い男の選択。手に出現させた闇煙幕――詠唱破棄、《乙女の退散》が放つは周囲を闇に鎖す煙幕の放出。

「おーーほっほっほ!!!!
 また会ったらけちょんけちょんのぎったんぎったんのぼっこぼこにしてやるわ小僧共!!!
 じゃああねぇぇぇ!!!」

 風邪のように窓を突き破って。
 超越生命体は、風のように消えていく。

 行け、ガドン・バルザック。
 飛べ、ガドン・バルザック!
 君の夢は終わらない!

>レーヴ ミコルナ

【移行期間が近づいているのでこれにて絡みを終わらせていただきます。お相手、ありがとうございました】

7ヶ月前 No.818

北極星の魔銃師 @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

【ディンカ/小屋/ラシアナ】

 双銃の硝煙が霞む。青年は周囲の魔族を片付け終えたのを確認すると、次の行動を思案する。このままここで暗い海を眺めているのも悪くはないが、そろそろ戦場も煮詰まってくる頃だろう。たむろするよりはいよいよ本陣へ攻めに行った方が良いだろうか。敵もだいぶまばらになってきた。
 青年は移動を決めたが、それをすぐには実行に移さない。というよりは、予定の割り込みがあって移せなくなったと言った方が正しい。
 その来訪者に対しての驚きがないわけではないが、青年は彼を見て眉根ひとつ動かす様子もない。一応、周囲への注意は払っていたはずだが、とにかく接近されていたらしい。鼻下と顎に髭を蓄えたその中年の男は、少なくともこちらの味方といった雰囲気ではないようだ。戦いぶりを見ていたというのなら、それはおおよそ品定めだろう。自分が勝てる相手と踏んでやって来たに違いない。それはそう、明らかに強そうな相手に自分から突っ込んでいくことは普通されない。だが……ちょっと見ただけで力量を察せるというのなら、それは大きな間違いだ。

「見てるうちに倒せばよかったのにね?」

 青年が男の宣戦布告を聞いて臆する様子はない。ただ彼の行動を嘲るばかりだ。それは周囲の雑兵に紛れて襲えばまだ勝算はあったと……一対一での勝ち目はないと告げているに等しい。その態度は男が仰々しい装甲服に身を包んだ後も変わらない。相手の戦法がどうであれ、自分が倒すべき敵であることに曇りはないのだから。
 二つの銃口が眉間を狙う。青年と男が互いの銃を構えたのは殆ど同時であった。

「ボクにはあるよ。だって、キャラが被るじゃない」

 自らの銃を記号とみるのならばそうも言える。青年はあくまでも軽薄な姿勢を崩さない。人を食ったような微笑みをたたえ、男の目を見つめている。
 バイザー越しでは、男がたたえる目の光は窺い知れない。何故、自分を狙うのか? 単に行きがけの駄賃なのか。見た限りでは自分と同じ、別の世界から来た人間だ。歴史是正機構に従う理由は何だ。自分の世界へ帰るだけなのか、それとももっと別の目的があるのか。
 青年の銃が火を吹いた。魔力行使によって発砲された弾丸は予め向けられた銃口に従い、男の眉間へと一直線に飛んでいく。
 目的が何なのかわからないのはお互い様だ。この時代も救うこと。歴史是正機構の目論見を潰し、この世界の時間軸すべてを救うこと。途上に敵が現れるなら倒すだけ。今はそれでいいんだ。

>>ナイトローグ


【お待たせして申し訳ありません……】

7ヶ月前 No.819

退廃的世界論 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【大統領官邸/庭園/リコルヌ・エルヴェシウス】

根回しは完了した。世界政府防衛大臣からの要請、しかも賄賂が上乗せされているとあっては、断ろうなどという気概を持つ人間は少なく、買収はすんなり成功した。
勿論、受け入れない少数派も出てくるだろうが、それに関しても対策は講じてあるので問題ない。策略とは、常に不測の事態を想定し、練っておくものなのだ。
とはいえ、まだやるべきことは残っている。リコルヌが無表情のまま、次なる連絡先に電話を掛けようとしたその時、不意に耳元から大声が響き渡ってきた。
それが誰のものであるのかは、わざわざ顔を見なくとも分かる。名家の娘であり、15歳という若さにも関わらず、特例で議員となることを許された存在。ストライフ・ロスチャイルドだ。
リコルヌが彼女の無礼な態度について、特別物申すことはない。それに割く労力が無駄であると感じているのか、あるいは別の理由なのかは定かでないが、一応は黙認していると捉えてもよいだろう。
仕事の邪魔でもしにきたのか、という考えが一瞬頭の中を過るが、すぐにそうではないということが判明する。なるほど、彼女も彼女で動いていたという訳か。

「感謝します」

ただそれだけ。一言感謝を告げ、再びリコルヌは視線をスマートフォンへと向ける。ストライフが手を回してくれたのであれば、ここについての問題はもうないと考えていいだろう。
残るは、官邸までの移動ルートの確保だ。襲撃を掛ける際に一斉に歴史是正機構の面々が押しかけては市民の目につくし、証拠を隠滅することも難しくなってくる。
あくまで、大統領は謎の人物によって殺されたことにしなくてはならない。そして、リコルヌやストライフといった世界政府の官僚が関与したことを疑われてはならないのだ。
念には念を。リコルヌは、どこまでも怠りがない。陸路か、空路か。あるいは地下を掘り進むか。そんなことを考えていると、ストライフが無視することの出来ない一言を言い放つ。

「……彼女には、いずれ退場してもらわなければならないと考えています。まずは大統領の排除が最優先ですが、それが済み次第、丞相の矛先は自然とそちらへ向くでしょう」

リコルヌにとってもストライフにとってもユーフォリアは共通の敵だ。どちらの目指す世界にとっても彼女は不要であり、いずれ排除しなければならない存在。
今のところは大統領が更迭を画策しているのだが、彼はこの後歴史是正機構の手によって亡き者となる都合上、それが実行されないままになる可能性が高い。
となれば、ユーフォリアに手を下すのは、歴史是正機構に所属する誰かとなるだろう。ヘルガの指示次第ではあるが、その役目を任されると思われるのは、あの総統の妹。
よくも、そのような人物を味方につけることが出来たものだと感心するが、彼女の人心掌握術は素直に評価に値するものだ。しっかりと、才能が発揮された結果ということだろう。
まだ、自分達が動くべき時ではない。そんなニュアンスの返答をリコルヌは返し、再び視線を画面へと戻す。着々と進む大統領暗殺計画。既に官邸の警備は、歴史是正機構の手に落ちている。

>ストライフ・ロスチャイルド
【絡みありがとうございます〜】

7ヶ月前 No.820

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【時空防衛連盟本部/訓練施設/橋川 清太郎】

バーニアを吹かし施設内を駆け巡る。前かがみの状態で緩やかな姿勢制御を行いつつ、高速機動で回避。一瞬前に自分がいた地点へ爆炎、氷塊、雷電が無秩序に巻き起こる。

「推進系は問題なし、と」

バイザーのHUDからスーツの好調を確認し少しだけ気を緩ませる。
先程の戦闘で装甲と一部の武装が大破したため、半ばオーバーホールに近い形で修理。そして不具合がないかを確かめるという目的で訓練施設を使用している。

「ThunderLeo転送」

今回設定したターゲットは魔法剣士タイプ三体。近接では剣術、遠隔では魔法を使う標準的なものである。
回避運動を継続しながら、転送されたアサルトライフル型武装ThunderLeoを腰だめに構えた。そしてすかさずフルオートで掃射、一気に疑似ターゲットを2体破壊する。残りの1体は辛うじて土魔法の壁で防いだようだが、とても次の攻勢に耐えられそうにない。

「慣らしはもうこれくらいでいいかな」

言うが早いか、更に加速し疑似ターゲットへ直進を始める。瞬く間に距離が詰まり土壁を粉砕、遠慮なく顔面に文字通りの鉄拳を叩き込んだ。

「ふぅー……」

戦闘不能判定となり、質量ホログラムが霧散していく。
この特製の訓練施設は装備開発の面でも大きな意味を持つ。何故なら試作段階の装備を様々な状況で試せるという点は、開発者の立場からすれば実に魅力的なのだ。無論実戦に勝るデータは存在しないが、それでもこの施設の有無は雲泥の差がつくだろう。

「そろそろ、白兵武装の開発も実行段階に移そうかなぁ」

現時点でのGAWNDの兵装は銃火器に傾倒している。今はそれで大きな問題もなく戦果を上げられているが、やはり近接戦闘のバリエーションを増やしておいて損はないはずだ。M.R.Sのモーションプログラム追加などやるべきことは多くなるだろう、しかし相応の対費用効果を望める。

「今度、開発費の増加を打診してみよう」

とりあえずの方針は決まった。流石に即時即決とまではいかないものの、任務の合間にでも行動を重ねていけばいい。

>>対象なし

7ヶ月前 No.821

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

   、   、   、  、 Boys, be ambitious.
「かの古きクラーク博士曰く――"少年よ、大志を抱け"だそうだ」

 警備が少ない? 知ったことではない。
 たまたまふらっと歩いていた一般人を捕まえて「毎日が革命だ!」と吹き込んでスラム街に離したことも知らない。
 今頃スラム街ではちょっとした騒動になっているのだろうし、それを知ったリコルヌが頭を抱えるまでが日常茶飯事だ。
 何故なら彼女にとっては目の上のたんこぶでしかない労働者階級の反乱を、彼は面白いからと唆すのだから。

 例えば、道を歩いていた浮浪者がいたとする。彼はこの世の全てに絶望しきっていて、明日の食べ物にも困っている。
 そこへ彼は駆けつけて耳元で、「楽しい!!!革命のお時間だ!!!!」と怒鳴りつけてやる。
 すると浮浪者はたちまち勤勉な王へと早変わり。あとは運が悪ければ集団リンチにあってそのまま死ぬ。
 適当に捕まえた人材では面白くない。何故なら、歴史にすら名を残せない端役は大抵がゴミのように死ぬ。

「これは伝えられているような素晴らしい意味ではないとされる。
 クラーク博士はあくまで少し背中を押す程度で言ったのだそうだが――人類にとってはそれで十分だ。
 断崖絶壁、下は見えず、何が起きるかもわからない! そんな場所から人間を押してそいつがどうするのかこそが真理!」

 彼は言う。
 人が大空へ羽ばたくためのほんの少しのエッセンスこそ、人生にとっては最良の酒であるのだと。
 ご大層なものや言葉はいらない。ただ一言――「お国のために死ね」と告げれば彼らは喜んで死ぬのだ。
 そう、それこそ、一代で大企業を築き上げた暴食の主<リヴァイアサン>。

「さあ、お前はどう行動する!?
 未来は動乱の内に落ちるだろう。俺の予感は当たるのだ。
 そのような世界で、人は明日を目指せと簡単にいうが羽ばたけない。何故なら現実の壁は高い!」
「だが俺は信じている。このような状況でこそ立ち向かい輝き続けるのが人類であるのだから!」

 極論、彼にとっては世界政府などどうでもいい。
 巨大な組織に適当にぶら下がり人をもてあそび、用が済めば叩きつぶす玩具にする。
 適当に見つけた存在と会話を楽しみ、最終的には人間の限界を超えてもらう。
 歴史是正機構も、時空防衛連盟も、世界政府も、全てが人生を楽しませるエッセンス――。

「――お前の答えを聞かせてもらおう。イルグナー・シュタウンハウゼン」

 ――それが、"人類悪/黄金王/暴食者/人理への冒涜"ダン・マッケーニ・バビロンの見解<しゅみ>だった。

>イルグナー ALL

7ヶ月前 No.822

プライドへの大災厄 @kyouzin ★XC6leNwSoH_7ig

【歴史是正機構本部/個室/キラー・テンタクラー】

キラー・テンタクラーはシエンタの家庭の事情を全くと言って良いほど知らない。
彼はシエンタが触れて欲しくない所なのだろうと認識しており、また彼にとって価値がある情報ではないからだ。
過去などキラーは採算に含めていない。 ただシエンタが寂しいと感じているならば、それにただ応える、それがからかうような何時もの皮肉っぽい言い回しか、今回のような優しさかは日によるが、少なくともシエンタの過去がどうだからと必要以上に甘やかす事もなければ、責める事も無い。

それがキラーにとっての自然な形、シエンタにとっては同級生や家族であっても、キラーにとっては価値の無い"数字"でしかない。
数分が経ち、シエンタが自分から離れて、プリンを自分にくれると言ってきた。

普段なら喜んで受け取るキラーであるが、今回ばかりはそうも行かない、勝手に名前を付けられた事ではなく、もっと別の事に彼は怒った。

「馬鹿が! 私の名前にキズを付けるつもりか!? そもそも今日買ってきたスイーツは、お前と仲直りするために買ってきたのだ……譲渡して半分ずつだ!!」

あくまで自分はシエンタと仲直りするために今日スイーツを買ってきたと言うのに、それを全部自分が食ってしまっているのに、結果は仲直りと言うのはキラーのプライドが許さなかった。
譲渡して半分ずつだ、お前が食べないなら自分も食べんぞ、と言うかのように、キラーはふらふらと立ち上がって冷蔵庫からプリンを引っ張り出して、シエンタの分のスプーンも用意してテーブルの上へと荒々しく置く。
そして、初めて人間の嗅覚で嗅ぐスイーツの甘い匂いに、キラーは思わず心を躍らせるが、いかんいかんと頭を振って、椅子をばんばんと叩いて「お前もだ」と叫ぶように、キッとイマイチ迫力に掛ける見た目でシエンタを睨む。

……それでも食べない、全て自分が食えと言うならば、こうだ。

「早く席について食べろ馬鹿! アイシス姉さんからの絶対的命令だぞ!!」

それだけ言って、キラーはプリンのパッケージのあけ方を一瞬戸惑うが、すぐにドローンウィルスの一つを引っ掴んで刃物へと変えて無理やり開けて、慣れていなさそうな、ぴくぴくと震える手に持ったスプーンでプリンをそっとすくい、口に運ぶ。

ぱぁぁぁぁと言うような音が鳴りそうな表情をキラーが浮かべる。
何せ、キラーは今まで、非人間的なボディで、解析と言う形で食事に近い事を行っていたが、ちゃんとした人間の味覚と嗅覚を得た上で食事をしたのはこれが初めてだ。
本当に、心底幸せそうな表情を浮かべるキラーは、これから開始される作戦を完全に忘却し、一方優秀な彼の配下であるドローンウィルスはシエンタが思い出せば何時でもハッキングをサポートできるように全てが電脳化してファイアーウォールやデータ破壊に備える。

>シエンタ・カムリ

7ヶ月前 No.823

ガン=カタ @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【マロニス城/ホール(城前)/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

互いに一歩も譲らぬ全霊の戦い。魔人が圧倒的な力を振り翳し、皆がそれを意思の力で跳ね除ける。正しくそれは決戦と呼ぶに相応しい。
ユーフォリアが膨大な力の奔流に真っ向から立ち向かう。血を吐いて尚立ち上がるその姿は酷く痛ましく、しかしその眼差しには確固たる意志の炎が宿っていた。
ヴァイスハイトの号令に合わせて解き放たれるは無限の虹光。生半な防御では凌ぐ事すら敵わない必殺の意思が籠った一撃。それに重ねられる正確無比な射撃は全霊の一撃を放った魔人の不意を突き、その判断力を殺ぐ。半端な判断を許さない無限の虹光が、冷静さを欠いた魔人に後手の対応に終始させる。
間違いなく意識の外から放たれたであろう銃撃と虹光の二つは――しかし、魔人へと届かない。多大な魔力を投入して構築される魔力障壁が、それらを押し留める。相手もまたさる者、″二つ″への最善手を刹那の間に見つけ出し、選び取ったのだ。結果、それらは魔人の鎧へと僅かに傷付けるに留まる。

――だが、忘れてはならない。もう一人、決意を以て此処に並び立つ者の存在を。

裂帛の咆哮と共に繰り出されるその一撃は流星が如く。二つへの防御に終始していたが故に、魔人はそれへの対応する手を持たない。
故に、″それ″は勝負を決定付ける一打となる。防ぎよう、避けようの無い絶対的な威力の一撃。その突撃だけで、魔人にとっても痛打であったろう。その上に課されるのは、魔人の肉体を構成する物体への″特効薬″。
完璧に効いた訳では無いものの、それでも魔人への致命打となったのは奴の苦悶の呻きで分かる。崩壊を始める魔人の肉体。全身までは枯死させまいと持ち堪えながら、忌々しげに捨て台詞を吐いて魔人は次元の扉へと飛び込み去った。間もなくそれは閉じられ、後には激戦の爪痕と、勝者である三人だけが残された。

「なんとか退却はさせた、か……。やれやれ、まさか俺の初陣があんな怪物相手になるとはな」

知らず知らずの内に掻いていた額の汗を拭い、ヴァイスハイトは安堵したように一息吐く。それから周囲への警戒を始めるが、自分達以外には誰もいない事を把握すると直ぐ様疲弊し片膝を着いたユーフォリアの元へと駆け寄っていく。

「全く、お前は何時も無茶をして……そんなに俺に小言を言われるのが好きか? 早速お説教と行きたいが、先ずはお前の治療を優先しよう。立てるか? いいか、無理はするなよ。辛かったら肩を貸す」

呆れた様な、心配している様な声色でユーフォリアへと声を掛ける。さっと見る分には大怪我はしていない様だが、それでもあれだけの衝撃を受けていたのだから内臓にダメージが無いかとヴァイスハイトは気に掛ける。血縁なのになんで男の俺よりずっと硬いんだろうな、等と軽口を叩きながらも、言葉の端々に彼女への心配が滲み出ている。
ユーフォリアの無事を確認し、彼女が立ち上がるのを助けながら、彼はもう一人の共闘者へと視線を向ける。


「……ダグラス。お前が何を思って″此方″に就いたかは分からん。だが、ユフィがお前を信頼し、お前はその信頼に応えた。だから、俺もお前を信じよう。他の連中には、俺から話を通しておく」

ダグラス・マクファーデン。ヴァイスハイトは彼の思想を知らない。何処に本心があるのかも理解してはいない。しかし、戦いの中で彼が命を賭したのを見た。その眼差しに嘘偽りが無い事を知った。ユーフォリアが受け入れたからではなく、彼を見て、自分自身が納得したからこそ、彼を受け入れると決めた。
ふ、と笑みを浮かべ握手を求めてダグラスへ右手を伸ばす。それはヴァイスハイトが、彼を本当の仲間と認めた証だった。

>>ユーフォリア、ダグラス

7ヶ月前 No.824

災いを呼ぶ黒猫 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【魔帝城/魔大将の間/チェル】

今やチェルは、魔大将の間で起きている死闘からは完全に蚊帳の外となっていた。彼女自身の戦闘能力は、別段低いという訳ではない。むしろ魔大将を名乗るくらいなのだから、高くて当たり前。
ただ、ヴァンレッドや魔剣士がその更に上を行っていた。それだけのことだ。単純に、相手が悪かった。実力差を見極められなかったと言われれば、それまでだが。
チェルの思考は、とにかくこの場を生き抜くことに集約されていた。もはや勝利が望めぬと分かった以上、意味のない戦いを続ける必要はない。この身体でも、脱出くらいなら出来るはずだ。
目眩ましとして、あるいは賭けとして放たれた一撃も、ヴァンレッドの前には塵に過ぎず。一瞬で視界が晴れた先に立っている龍炎公の姿に、彼女は生まれて初めて恐怖の感情を抱いた。

「あり得ない……こんなことは絶対にっ……!」

あれだけの力を解放してもなお、一人足りとも命を落としていない。一番弱いと見くびっていたはずの人間ですらも。何故こうなったのかを理解出来ないチェルは、完全に冷静さを欠いている。
魔剣士が歩み寄ってくる。それを見た彼女は、「ひぃっ……」といった声を上げながら一歩、また一歩と後ずさる。殺されるという恐怖が、脳内を支配していた。
死神がにじり寄ってくる音が聞こえる。もはや、これまでというのか。命運は尽きたというのか。いくら必死に抗ったところで、光明は見えず。行動する度に、終わりが近付く。
周りの声は届いていない。この期に及んでもあくまで生にすがるチェルであったが、もう打てる手は全て打った後であり、彼女に出来ることは、逃れようのない死の運命を受け入れることのみであった。

「よくもこの私を――――ニアァァァァァァァァッッッッ!!!」

……あろうことか、最期に残した言葉は、手を結んだはずのニアに対する怨嗟の声。彼女は、自分の敗北を認めることが出来ず、この戦闘の結果をニアが仕組んだものだと信じ込んだ。
なんと、なんと傲慢で救いようないことだろう。一瞬の内に眼前へと躍り出たヴァンレッドの突きが、心臓を貫く。頭上からの一閃が、その肉体を真っ二つに斬り裂く。伸ばされた魔剣士の手が、チェルという個体の存在を無に帰す。
ここに、災いを呼ぶ黒猫の生涯は幕を閉じた。悪辣なる己の策略に溺れ、自らを省みることを忘れた彼女は、最後の決戦において、"敵に一度すらも傷を付けることすら出来ず"、死を迎えたのである。

>>チェル(Chrono Crisis オリジナル)@魔大将の間にて起きた決戦にて、ヴァンレッド、アーケオルニ、魔剣士の三名に"実力の違い"を見せ付けられてもなお、自らの敗北を認めず、全ての責任をニアに押し付けた上で存在を抹消され、死亡。


>"龍炎公"ヴァンレッド、アーケオルニ・ランドグリーズ、魔剣士
【お相手ありがとうございました。最高にかっこ悪くなるように頑張りました まる】

7ヶ月前 No.825

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【マロニス城/厨房/ミコルナ】


放つ矢は姐さんの掌から放出された業炎に包まれ焼け落ちる、精神体に作用すると言えども魔力によって相殺されてしまえばその鏃が届くことはない。何処か少女らしさを取り戻した姐さんは有頂天、余裕綽々で対処する。
対する彼女は漆黒の杭を避けるので精一杯、視界は姐さんに固定され左脚と右腕の負傷も相まって飛ぶ軌道は不安定。どうにか貫くことは避けている物の、白く柔らかい肢体は緋色に染まっていく。
そこに聞こえてきたのは聞きなれたレーヴの声、彼女が飛ばした指示を聞き、姐さんへ向かう途中に掛けたその言葉は安全地帯への道標。彼女が知る由はないが、彼女が理解し咄嗟に動けるよう彼女視点になっている。
その通りに、左、後、右、右、後、左、後へと飛行する。ふらつきながらも指示通りに宙を駆ける、最後に後退すれば闇の魔力の圏外へと抜けだすことに成功する、不規則に突き出る闇の杭を眺めながらぺたんと座り込む。
レーヴの言葉に軽快な返事すら返せないほど痛み、運が良かったのはこれが魔力によるものであったこと。鉄製の杭などであれば貫き、引き抜かねばならず傷口は凄惨なものになっていただろう。魔力と言う性質上、霧散したため貫かれた傷しかない。
とは言え魔族から見ても、人間から見ても幼い彼女にとって耐えうる痛みではない。腿の傷を左腕で抑え、右腕の負傷は骨が砕けた以上下手に動かせば激痛が走る為、痛みが襲わない位置に置くことで安静にする。
そうし始めた頃だろうか、姐さんの大慌ての声が聞こえたかと思えば黒煙が周囲を包み込む。撤退と言う言葉と共に何かが割れる音と、超越生命体の遠吠えを残して嵐のように去っていった。レーヴが姐さんを追い払ったのだ。

「ふーん!また会ってもレーヴとあたしで追い返すからねー!今度は絶対に参ったって言わせるんだからー!またねー!」

過ぎ行った嵐へ大声で語り掛ける、喜びのあまり宙へと踊り出す。急に動いたせいで痛みが走り、墜落しそうになるがくるっと一回転し再び宙へと浮く。その時にまた痛みが生じたのだが、今度はちょっとふらつくだけで済んだ。
そう、レーヴと彼女はあの色々と超越した漢女を撃退したのだ。その代償として厨房は焦げ付いていたり、杭に貫かれた調理器具やら机やらが散乱し、二種のシチューの香り漂う空間になっているのだが、まあ襲撃があったとなれば仕方ないだろう。
現に彼女は厨房の惨状の一部を自身が生み出したことをすっかりと忘れている、そもそもこれだけ荒れている訳も姐さんと戦ったからとしか認識していない。もし責任を問われてもレーヴと一緒に謝ればいいとすら考えている。
すっかり黒煙は晴れ、突き破られた窓から明かりが照らす。温かな光はここで戦っていた戦士を癒す様に、はたまた称える様にその柔らかな日差しを惜しげもなく注ぎ続ける、一通り嵐へ声を掛け終わった彼女はレーヴへ振り向く。
日に照らされる藍色の美しき糸、気の流れすら表すかのような髪が宙へ舞う。いつも通りの悪戯好きな笑み、白く輝く八重歯が彼女の特徴。紅く飛び散った液体がなければいつも通りの彼女であっただろう、しかしそんなこと関係なく彼女はいつも通りになる。
翼をはためかせ、尻尾をご機嫌に大きく揺らし、向かうはお気に入りのレーヴの下。先に戦闘があったことなど周囲の惨状と彼女の怪我以外分からぬような無邪気さ、変わらずレーヴに飛び込む。

「レーヴ!勝ったね!姐さん、強くて綺麗だったね!」

何時もの様に首へと腕を回そうとする、怪我の痛みもあるだろうにそんなことはお構いなしにレーヴへと抱き着く。耳元に囁くような、ちょっと小悪魔な喋り方ではなく、子供の様にレーヴを視線の中央に捉え楽しげに話し始める。
姐さんの奇妙な技で視線を奪われようとも、結局彼女が視線に収め続けるのはレーヴしかいないのだ。いつまでも飽きない、それでいて色々な事を教えてくれる、他とは違う彼女のお気に入り。
言葉を費やさずともに伝わるほどの関係にまでいつの間にかなってしまっていた、気が付けばレーヴばかり呼んでいるような気さえする。だけれども彼女はまだそんな気持ちには気が付かない、少し幼過ぎるのだ。
だからこうやって抱き着いて、綺麗だったね、強かったね、など他愛のない感想を吐き出す。ただ自分が思った事を共有したい、自分が見たものを伝えたい、幼子と全く変わらない行動原理。
怪我をしていようとも笑顔、レーヴが元気ならそれでいい、楽しく話を聞いてくれればそれでいい、構ってくれればそれでいい、お気に入りが傷ついてしまう方がよっぽど不安だったのだろう。
さあレーヴよ、厨房の件や彼女の傷の手当てで忙しくなるだろう。頑張るのだ、この後すぐに痛みを我慢できずに叫び出すだろうが頑張るのだ。お気に入りにされてしまった以上、彼女を見守れるのは君しかいない。
負けるなレーヴ、頑張れレーヴ。

>>レーヴ・カストリス(ガドン・バルザック)


【お相手ありがとうございました!】

7ヶ月前 No.826

人類昇華への道 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【歴史是正機構本部/丞相室/ヘルガ・アポザンスキー】

歴史是正機構と時空防衛連盟の熾烈な争い。歴史改変のために様々な策を巡らせてはいるものの、敵の必死の抵抗により、中世においてもそれは失敗に終わることが濃厚だ。
ヘルガ自身、こうなることはある程度想定してはいたのだが、実際に起きてしまうとなかなかに気分が悪いものだ。どちらかは取れると踏んでいた人員も多いだけに、士気の低下も著しくなる。
敵は後手後手の対応しか出来ない以上、優位性を失うような事態にはならないだろうが、相手の戦意を向上させることにも繋がるので、可能ならば避けたいものである。
しかし、彼女が過去への時間遡行を行うのには、もう一つの理由があった。それは、時空防衛連盟の目を、現在……つまりは未来世界から遠ざけることである。
勿論、改変が成功すればこれ以上のことはないのだが、主目的はこちらだ。人類昇華を達成するために最も変えなくてはならないのは、今。世界政府による一括統治にて腐敗が進むこの世界なのだから。

「失敗ははじめから計算の内だ。我々の真の目的は、これからこの時代で起きる事象によって達成される」

だからこそ、ヘルガはフォルトゥナの言葉に対しても動じることなく答える。既に、手筈は整えた。今頃は、協力者達が着々と準備を進めていることだろう。
大統領は袋の鼠も同然。生殺与奪権は、完全に歴史是正機構が握っている。元より、あれに戦闘能力はない。その気になれば、いつでも殺せると思っていい存在だ。
むしろ問題は、そう。彼女の言う通り、時空防衛連盟の総統を務めるユーフォリア・インテグラーレ。奴の力を侮ってはならない。古代、中世。いずれの時代においても、多大なる戦果を挙げている。
統率能力も見事なもので、彼らは同じ目的の下に一致団結している。対する歴史是正機構は新戦力こそ確保しながらも離反者を出すなど安定しておらず、状況はよいとはいえない。
フォルトゥナを迎え入れたのは、確実にユーフォリアを足止めし、目標達成を容易とするため。そして、今こそその時はやって来た。彼女には、是非とも本領を発揮してもらわなければならないだろう。

「一つだけ、忠告しておこう。あれはもはや、命を奪うことでしか止まらん。姉を救いたいと心から思うのなら……鬼になれ。奴を殺す覚悟を決めろ」

真っ赤な嘘。だが、ヘルガの表情には、そうだとは感じさせない迫真さが籠もっていた。こいつの本心は何となく察している。故に、殺せと命令を下すのだ。
恐らく、フォルトゥナはまだどこかで姉と共に暮らす可能性を模索しているだろう。だが、それでは困る。ヘルガにとって、ユーフォリアは絶対に消えてもらわなくてはならない人物だ。
更に付け加えるならば、それを実行した時点で、彼女は後戻り出来なくなる。そして……より、忠実となるだろう。これほどの能力を持った駒はそうそういない。扱いやすく調整を行うのは、当然のことだろう。
ヘルガは真っ直ぐとした視線で、フォルトゥナを見据える。実行出来ぬとは言わせない。お前はこのために雇われたのだ。ならば、確実に、役目を果たしてみせろ。

>フォルトゥナ・インテグラーレ

7ヶ月前 No.827

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【大統領官邸/公邸/イルグナー・シュタウンハウゼン】


そろそろ酒の一つでも呷ろうか、そんな下らない思考を脳が認可しそうになった時だ。世界政府官僚の中でも出来る限り関わりを持ちたくない人物が彼女へと近付いていく、ダン・マッケーニ=バビロン上院議員だ。
世界政府官僚で良い噂を聞く方が少ないが、バビロンに関わりたくはないと彼女が思う理由はそこではない。上手く立ち回る為の情報収集、その中で見つけたバビロンの行動の不可解さ、それが関わりたくないと思う理由であった。
そもそも、世界政府官僚は凡そ何らかの目的が見つけやすい人間が多い。大統領ならば保身、ロスチャイルド議員ならば利益、彼女ならば現状維持、方向性こそ違えど名立たる人物は見当がつきやすい。
だがその中でバビロンだけが幾ら情報を集めようとも見えない、勿論敵対とみられるまでの深入りはしていない、だがスラム街への出入りやインテグラーレ関連からは人物像が想像できない、何故そうしたのかが一向に見えない。
しかもこの異常な事態に出くわすとなれば要らぬ考えも生み出すもの、そんな此方の考えを知ってか知らずか嘗ての偉人の言葉を吐きながら自身の考え方だろうことを言葉にしていく、そして最後にはどう思うかとまで来たものだ。
何かを知っている、それは間違いないと思っていいだろう。だがここで知りたがる素振りを見せるのは危険だ、だからここはあくまでも普段の様に振舞うのが良いとそう判断した。

「……そうデスねえ、ボクはあまり気にしませんが年配には敬称をつけると面倒事は少なくなるデスよ?大臣でも、議員でも、無いよりはマシデスね。」

肩を竦めながらの適当なお茶濁し、実際バビロンの権力からしてみれば年配に気を遣う必要もなければ、同格と言ってもおかしくない彼女相手に敬称をつける必要もない。この手の冗談に乗るかどうかは別として、緩衝材程度は期待しよう。
さて、バビロンが言いたい事はさっぱりである。言葉をそのまま受け取るのであれば、未来が大きく変動する時にどう動くかを問うているのだろう。若しくは先の見えない今をどう生きるか、どちらにしても彼女の答えは決まっている。
特例がない限り現状維持、今の大臣と言う立場、ハウゼン運輸の立場、それが揺らがぬように立ち回るだけ。格差に思うところあれど、腐敗に思うところあれど、損得抜きで動けるような若さは彼女にはなかった。
だが特例、もし若い風が腐敗を一掃したいのであればその為に動くだろう。そして最後には自信も腐敗の一部として消えるとしよう、現状維持に拘ると言っても権力を失うだけ。余程の事がなければ、自らが育て上げたハウゼン運輸が大きく傾くことはない。
そう思っていようとも、口に出せば他の善良であった議員と同じ末路を辿るだろう。だからこそ彼女は風見鶏、都合のいい風のみを受け取ってそれ以外を受け流し続けるだけ。

「まあ、冗談はこれくらいにしておくデスよ。バビロン議員に合わせるなら、……大志を抱くのは少年の特権、としておくデスよ。」

権力の中で雁字搦めにされた老いぼれの背を押したところで抜け出せるわけではない、希望を持って万進するのは若き者たち、背を押すならばそちらの方がいい。現状では背を押されても、叩き潰されているのが残念で仕方がない。
理想を掲げても、今安定している物から抜け出せる人間は少ない。大統領が保身に走る気持ちも理解できる、だがそれと同時にユーフォリアの様な輝かしい光もまた羨ましい。でも輝くには年を重ね過ぎている。
彼女の根底にあるのは諦観、そして未来への願望。自らがそうでなくなってしまった、だが若き光には憧れを抱かずにはいられない。でも動くには縛られ過ぎてしまっている、だから外部からの浄化を望み、それと共に消えることを渇望する。

「自由に、希望に溢れて進めるのは若いからデス。ボクの様な老いぼれが動けるようなことはもうないデスよ、輝けると言えるのはバビロン議員が若々しいからデスね。背中を押されて動くには、ボクは少し重くなり過ぎたのデスよ。」
「明日を見続けるよりも、今が大事になってしまったのデス。未知に飛び込むのは若い内の特権デスからね、それで……バビロン議員はどうするのデスか?」

話したことは彼女の全てではないが偽りでもない、凡そ本心に近い事。柄でもない事を話したこともあってか照れ隠しに聞かれた話題をそのままバビロンへと返す、聞いてきた以上は何か確固たる考えを持っているのだろう。
彼女は決して悪ではない、が全てを投げ打ってまで善を為せる存在ではない。年を取り、大切なものが増えて、背負わねばならぬものが増えたから、善を為せなくなった、悪を許容せざるを得なくなった。
心根が痛む、だから隙間を縫って援助はしている、時空防衛連盟への資金援助も建前以上の思い入れはある。だが仕事であるから歴史是正機構への運輸も行う、民衆からの言葉も突き刺さるが仕方のない事だと諦める。
どっちつかずの蝙蝠、周りに流され続ける風見鶏。酒でも飲まなきゃやってられないと、冗談めかして彼女は言うがその状況は酒で解決できるほど甘くはなかった。流れ流れて何処へ向かうか。
さあ、未だ若いバビロンの問いかけに少しばかり熱が籠った彼女であった。対するバビロンはどう受け取ったのだろうか、軽蔑か、賛同か、はたまた別の感情か。彼女には窺い知れない。

>>ダン・マッケーニ=バビロン


【絡みありがとうございます!】

7ヶ月前 No.828

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/深淵の間/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 必要な犠牲など存在しない。人と魔族が解り合える一縷の望みがあるのならば、例えそれが零に近しい可能性であったとしても、決して諦めずに和平と言う理想を追い求め。胸に秘めた願いを誓いに変えて、掲げる意志を言葉に籠めて魔帝へと訴え掛けて。共に手を取り合い戦える未来へと、状況を少しずつ合致させようとする。
 響かせる叫びの声は、彼女の耳に届いて心に達し。刹那に揺れ動いた感情が、僅かな隙と言う物を生み出させる。氷魔の像が放つ氷柱は辛うじて往なし切り、迫る蛇を悉く退けるが、遂には上空から投擲される一本の刃が左肩へと突き刺さる。それでも続く蹴りの一撃を防御し、光輝の刺突を大鎌で受け止めるのは、総大将の位が示す実力通りと言った所か。斬撃も弾かれ、光の暴風圏からの脱出も許す事になる。

「プーリッシュ・ラガルデール……?」

 意図せずして零された一つの言葉。遠き過日に喪われた一つの国家、その再建の夢。それに対して真っ先に反応を示した者が告げる魔帝の正体、真の名をプーリッシュ・ラガルデール。人類が黄金期を迎える時代に生を受け、最後の記録は失踪で締めくくられた一人の少女。記憶の大海から探り当てたその者と、こうして対峙している人物が同一であるとは、流石に驚きを隠せないが。成程、そう言う事ならば――全てを繋げさせる事は可能だ。
 何らかの要因で失踪、この現代へと飛ばされて来た彼女は、成長して行く中でラガルデール王国の滅亡を知り、魔族を統べる魔帝として君臨する傍らで王国の再建を願う様になった――推測でしかないが、恐らくはこういった顛末なのだろう。
 風を手繰り寄せて纏い突き進み、迫る雷霆の槌を確実に避けながらも、魔帝の下へと接近して行く。氷魔像が告げる通り、此の場に於ける最適な行動とは、殺す事では無く止める事。既に彼女の真意を概ね把握した以上は、一刻も早くこの戦いを終結へと導く事に異論はない。氷の鎖による拘束を狙う味方に続き、自らも無力化の一手を講じようとしたその寸前――背後から迫り来るモノに勘付き、即座に振り返る。

「――はぁっ!」

 束ねられた鎖の毒蛇。血肉を喰らい、精神をも喰らい千切る"魂喰らい"の一撃。それが氷魔像の要請を踏み躙る、完膚無きまでの殺傷行為だと断定したその刹那に、勇者は光輝の剣を揮い、明確なる叛逆行為へと移った。不浄の穢れを打ち払う神聖なる光の波。遠くに目掛けて放たれる波動の刃が、毒蛇の一つを魔帝へと届くよりも疾く破壊する。力を収束させての一撃故、続け様に連発する事は能わず。間隔を空けて迫る残りの二つを、自らが止める事は叶わない。
 大地へと着地し、魔帝へと背を向けて。此方の掲げる主目的に反する行いをした味方を"敵"と断じた勇者は、容赦無くその聖剣の切先を向ける。睨み付けるその双眸には、敵意を宿して。

「――それが、どうした。例えそれが本当だったとしても、僕は魔帝は殺さないし殺させない」

 小さく開かれた金色の瞳。常に柔和さを崩さない狂気を貼り付かせた蛇使いの語る、"時空断裂"とやらの仕組み。本来の歴史から大規模な改変が生じた時、過去、現在、未来全てを問わず歴史が消失する現象。彼が言う正しい歴史に則るならば、アンナローズ・フォン・ホーエンハイムと言う一人の少女は魔帝ヴェルメイユを戦いの末に殺害した事にしなければならない。そうでなくては、断裂が引き起こされるのだから。
 であれば、それに態々付き合うのか。当然、答えは否。そもそも此方に魔帝を殺す理由と言う物は存在せず、"時空断裂"とやらの存在も信じてはいない。自分は、自分の戦いをするのみ。故に彼女を護る選択をした。

「……魔帝を護る為に、人類の未来の為にも、力を貸して欲しい」

 氷魔像に向けるは、助力を要請する言葉。魔帝が此処で死ねば、人と魔族の和平の未来はきっと潰える。魔帝軍は滅びるだろうが、これまで通り双方は敵対を続ける事だろう。それだけは、避けたい。人類が善き明日を掴む為に、彼女の存在は必要不可欠なのだから。

>魔帝ヴェルメイユ 氷魔像ギラード ハザマ

7ヶ月前 No.829

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL



【無限廊下/ニア】

 彼女には、分からなかった。
 なぜ無音の魔物が、人間と共存するという選択を懐いたのかが分からなかった。
 これが情の類であるというなら、まだ良い。
 自分が不必要な荷物だ、と捨てた類のものであるというなら、まだ理解もしよう。どうあれ理解しようが、しまいが、塵殺剣は自分の歩んだ道を阻むものに対して、何を想おうと例外なく排除という手段を取る性質だが―――それが自分の理に当て嵌められないものならば“まだ”納得した。それは不要と断じただけで、まだ理解の及ばないものではないからだ。受け付けないわけではないのだ。

 だが、違う。無音のプロヴァンス―――影を歩む者達は、そもそもそうした性格がない。
 情を懐くだけの要素はない。あれはあくまで固有名称を持つだけの、“ダークストーカー”という大きな群のうちのひとつだ。群体のいち端末に過ぎない魔物が、まして古来よりヒトという種と生物的な本能で争って来たものだった。

 それ以上のものはない。それ以上の余計なプロセスなどない。
 つまるところ、ニアという宣告者がある意味理想とした生存形態だった。
 余計な情に行動を揺るがされない。余計なモノで、死を不可解なものに貶めない。
       、・・・・・・・・
 ………だから、おまえだけはないと断じていたのだ。
    おまえだけは何がひっくり返っても、自分と同じ選択をするだろうと断じていたのだ。

 それがどういうプロセスから導き出されたものだったのか、塵殺剣が理解することは終ぞない。
 しようと思えば出来たことかもしれないが、しなかった。

 疾走する。
 黒猫の血縁を穿ちに掛かるその瞬間に聞き届けた言葉に対して、何も口にすることはなかった。
 分からない、とレプティラは言う。理解するフリは出来ても、分かり合うことは出来ないのだと。
 それで十分だと、彼女は断じた。そんな瞬間はもう過ぎた―――言葉で語る時間はもう過ぎて、あの時彼女が敵対を決意した時にもう結論は出ていた。惜しかろうが、同朋だろうが、“今後”のために無くてはならない善き者だろうが、彼女には道を阻むものを排除するという選択肢しか取れなかった。積み上げた屍の数を、また一つ増やす以外の選択が出来なかった。

 それ以上のものはない。それ以外の余計な選択肢など無い。
 そう決めて走って来たのがニアという女だった。その為ならば全てを薪にした。
 ただ、度し難いものの全てを焼き払うために。
 何故度し難いと思ったのかさえ、今はもう不要だった。


「―――それで、満足か」
「ならば、おまえを、わたしは結局………―――」



 だから、終ぞ常山蛇勢の意を真に理解することはなかった。
 最後の行動すら分からなかった。何故、その女を庇って命を散らすのかと問いかけもしなかった。
 ………しなかったが、感情を宿さない瞳は僅かに問いかける。“何故だ”と。
 貫いたのは、黒猫の血縁ではなかった。不可逆のこの瞬間、一撃必殺にして乾坤一擲、同時に最初で最期の機会だったこの瞬間は、しかし蛇の肉体を穿つに留まっていた。そしてその瞬間、狙うべき最期の好機が彼方へと過ぎ去ったのを理解した。

 彼女の―――レプティラの視界へと明確に自分が入った。
 躱せない状況が出来上がれば、それは紛れもない詰みだ。
 実に合理的だ。自分がやったことと全く同じではないか。
 何かをくれてやる代わりに何かを貰う。何かをするためには、必ず痛みという代償が伴う。
 そればかりは理解が出来た。だが、それをするだけの動機がやはり理解出来なかった。
 背後で吼える炎獅子の言葉を借りるならば、遺すものというのか。彼女が、無音が、理解出来るものと出来ないものを織り交ぜにして来ることが。何よりそれを想定出来なかった自分の驕りと過ちこそが、全ての敗因だったのだろう。

 ………その殺し方はあまりにも合理的だ。
    なにかを残すことを考えないものの蛮勇は、あまりにも多くの破滅を生む。

 それをニアは知っていて。だから、彼女の死が自らを引き込もうとしていることを理解した。

    臆病で、消極的で、何より平穏と安寧を望んだレプティラが。
    命を捨てて“それ”をしたことに対して。
    自らの所為で、彼女の善性が失せたことに対して。

 つまるところ、“自分の最も理解出来るやり方”を。
 最後まで理解の及ばなかったレプティラが取ったことに、ニアは何かを感じることはなかった。

 ………それは。しようと思えば出来たことかもしれないが、しなかった。

   、  貫くことを止めたのならば、その過程の全てが無価値になるからだ。
   、  それだけは、してはならないことだった。
   、  彼女にとっての感情はきっと、自分を揺らがせる不要なものだったから。


 光が舞う。牙が迫る。躱せる道理はない、最早嬲られるだけ。
 終わってしまえばこんなものだ。終わりが華々しいものだと決まった覚えはない。
 どんなモノだろうが、どんな存在だろうが。始まって歴史を積み上げたからには絶対に終わりがある。
 知っていることだったから、その一撃がレプティラを射貫いた時点で―――目論見が失敗した時点で、塵殺剣は特に足掻きを選ばなかった。牙に自分が食い破られようとも、降り注ぐ光が自分を射貫こうとも。

 単純な話だ。どれだけ早かろうが、どれだけ先が見えていようが、詰みという詰みは存在する。
 終わるべき刻というのは存在する。だから、そう断じた瞬間に、彼女はそれを受け入れた。
 宣告者たちは、死を導くものだ。定めに抗って生き続けるものを殺すモノだ。
 終わりを運ぶものが、終わりに対して不誠実にあってはならない―――例え、それが自分の価値観に照らし合わせてあまりにも無意味で無価値だろうとも。旅の果てに、塵殺剣という一魔族が懐いたものが誰にも継承されることがないとしても。

 つまるところ、受け入れたのだ。


「………絵空事だ」
「おまえは、醜いものを知らないだけだ。眼を背けただけだ。今に、分かる」


 最後まで感情を宿すことなく、サシャの叫びに対して冷淡にそう返す。
 あれは利発だが、知らない者だ。
 世界が灰色なのだと、ヒトが灰色なのだと知らない者だ。
 あるいは、知らずに生きていられた者で。知ったとしても、そう言える者だ。
 何もそいつは切り捨てることをしなかった。他の何者をもさえ、切り捨てようとしなかった。
 なにかに伴う痛みを否定した。積み上がるものに目を背けた。情で理を振りほどいた。
 甘い毒だ。やがて何時かはと繰り返すだけの癌だ。だからいつかは分かる―――いつかは、背けて来たものに揺らぐ時が来る。何時の日か無価値に見えるほど、その道は屍を築き、見つめることになるだろうと断言する。


「おまえも、ヒトも。あるいは、魔族も」
「結局は自分に都合の良いものしか見ることは出来ない」



 遠回しに、それは自分もそうだと言い切る意味合いであったが。
 それを彼女が特に語る事はないし、その言葉の意図を説明することはない。
 死者に口はないからだ。無意味なことであるからだ。彼女に、それを遺す意思とする義理がないからだ。

 最後の視線が、静かに炎獅子を向いた。
 決着/引導を渡しに来た最期の一人だ。視線がほんの一瞬だけ、突き進む彼と交差した。

 紅蓮の焔の如く燃える瞳が、交差した。
 とっくの昔にさび付いた瞳と、再び燃え上がったものが交差した。
 交差しないものは、剣だった。自分が剣を引き抜くよりも早く、その一撃は最期の引導を渡すだろう。
 仮に対処したとしても、蛇の牙が自分を食い破るだろう。
 それすら超えたとしても、降り注ぐ光が自分を射貫くだろう。



 ―――ところで………その姿を見て、気付いたのだが。


「おまえも、同じだ」
 ・・・・ ・・・・・・・・・
「おまえは、必ずわたしになるよ」


    わたしはこの男がどうも、煩わしくもあり、羨ましくもあったらしい。



 死ぬ定めを受け入れずに抗った。
 何処までも描いた理想《モノ》に突き進む癖に、自分にはない情こそがその糧だった。
 そこに至るまでの過程を重んじた癖に、決してこの獅子は答えを変えるまいと確信した。

 ………何処までも理解出来ないものが中心を占める癖に、突き進む意思だけは理解出来た。
 ………突き進む不退転の誓いこそ同じ癖に、あれは結局のところ情を棄てずに走って来た。

 自分は捨てたものを、この男は捨てなかった。捨てずに飛翔した。
 いずれ燃え尽きるその時まで飛ぶ、危うくも勇壮なるイカロスのように。

   、    、   、 わたし
 だから。やがてはおまえも、塵殺者になると断言する。
 あらゆる全てを薪と燃やして、遥か過去に理想と定めたものに走り続ける錆び付いた鋼に。

 ………“だがもしも”―――などとは言わなかった。自分が肯定することだけはなかった。
 そもそも、だからこそ、これに同意するわけにはいかなかったのだ。それに頷くことは、自分が捨てたものこそが過ちだったのだと認めることになるから。
 それは、自分が今まで貫いたもの全てを一度翻すことになるから。

 何度でも言った。もう、そんな機会は過ぎ去ったのだ。
 理解しようと思えば、理解出来たことだろうが。
 それが殺すには惜しいものだろうが、
 それが最も平穏に近い選択だろうが、
 そんなものは最初から関係が無かった。決めたのならば、最期まで往くのが、彼女なりの積み上げた屍に対する礼儀だったからだ。何も口にせず、何も本意を語ることのない宣告者たちの長の、せめても塵殺した全てへの敬意だったからだ。

 だから、しなかった。
 だから、出来なかった。
 だから、選ばなかった。

 道を変えるという選択を。変わっていく世界の予兆を、受け入れなかった。
 今更曲げられはしないのだ。そんなものは、決めた時から潰えたのだ。
 その結果が例え―――何も遺さない、もっとも忌み嫌うかたちの死だろうが。

  結果は結果と受け止めるのが、彼女の最期の情だ。
  ならば、自分はどうして、三者に未来への悲観を語ったのか。その答えにだけは思い至る。


「ああ。………本当に、」
 オマエタチ
「人間は、度し難い………―――」


 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
 要は結局、最期まで余計なモノに振り回されたわけだ。

 だから、度し難い。
 捨てたものに最期まで振り回された自分も、結局は塵と断じたモノと変わらない。



 蛇に裂かれ、光に穿たれ。
 そして、焔剣が自分を斬り裂いた時に、その肉体を光の粒子と変えていく。



 ………その残り香が、吹いた一陣の風に攫われる最期まで。
    女は嘗ての理想にだけは真摯だった。

 ―――魔将軍が一角、“塵殺剣”のニア。
    彼女の死の後には何も遺らない。終わったものに、続きなどない。



>レオンハルト、レプティラ、サシャ


【お相手ありがとうございました〜】
【長くお付き合い頂き感謝します。最後に遅れて申し訳ない!】

7ヶ月前 No.830

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

「ハハハハハ!!! 失礼。
 だが年功序列も腐敗の一員じゃあないかね。俺は誰に対しても平等でいたいのさ」

 ソファにどさっと座り呵々大笑するバビロンからにじみ出るのは、何処までも不遜な態度。
 年長物だから敬うとか、年功序列の信望だとか、そんなものは彼にとっては屁にすらならない。
 そして誰がいくら調べても、目的までは分かれど――真意までは見えてこないのは当然のことだ。
 何故なら、ダン・マッケーニ=バビロンにとっては世界とは砂を入れた箱庭でしかないのだから。

 獰猛な瞳はイルグナーを見抜いている。
 無論、彼は彼の知りうる限り全てを把握している。
 例えば、あの無能(だいとうりょう)の命はもう長くないということも。
 未来に怒涛の変革が訪れるということも――予知ではないが、一代で全てを築いた慧眼だからこそ見通すのだ。
 大局が見えないものに勝機はない。
 そのことは、どの歴史においても証明されているのだから。

 だからこそ。

「おかしなことを言うものだな?
 何時になっても成功する奴は成功するのだし、失敗する奴は失敗するものだ!!」

 部下に命じて取り寄せたワインを飲み――更に笑う。この男は深淵そのものだ。
 大口を開け世界を飲み干す化け物。彼は破滅も大成するも、その全てを見てきた。
 何故なら彼が仕立て<プロデュース>したのが、それらであるのだから。

 この男は。

   ・・・・・
「俺は何もしない。
 何故かって? 前線に出て華々しく散るのもいいが、時にはこういうだろう。
 明日を見るならば、今この一瞬の刹那――輝く火花になるのが人生の華であるとな。故に」

 ――イルグナーの心の内まで覗き込んだ。

 ・・・・・・・・・ ・・
「そのままの道でいい、進め。
 お前がいかなる選択をしようとも、世界はお前を祝福するだろう!」

 いつしか、ダン・マッケーニ=バビロンの黒い瞳が鮮血のような朱に塗り替わっていた。
 心の内を覗き込み――差し出された神の果実は何時だって、人を人智の超えた何かに作り替えるのだ。
 だからこそ、風見鳥たるイルグナーに「決めたことをやり遂げろ」などという曖昧な言葉を告げた。

 ……己を燃やしつくすまで。

 バビロンが与えた異能<かじつ>そのものに実害はない。
 だが――"そのまま進み続ける限り"己の全てを薪にして戦い続ける限界突破の力。
 使い続ければ肉体は滅び、それでも前へ前へ前へ前へ前へと進み続ける心は体を燃やし尽くしていく。
 止まろうと思えば、あるいは別の答えを見つけ出せば止まれるが――風を受けるままに進み続ける彼女は恐らく止まれない。

 イルグナー・シュタウンハウゼンは選ばざるを得ないのだろう。
 ……そしてその矜持のままに世界政府と共に死ぬのだ。バビロンの目は、それを確信していた。

>イルグナー ALL

7ヶ月前 No.831

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL

【大統領官邸/庭園/ストライフ・ロスチャイルド】

「うーん、もうちょっとない? もうちょっと心の余裕とかない?
 このいたいけな美少女にもうちょっと付け加える言葉ない? ないですか。ないね!」

「リルちゃんは仕事上手だけど、そういうとこヘタクソだよねえ。かわいいよ♪」

 けらけらと笑って、彼女はリコルヌの素っ気ない返答にも何処か上機嫌で応対する。
 少女の笑顔には外見相応の純粋さと、その純粋さに見せかけた薄皮一枚を剥いだ先に見える淫靡さ、そして老獪さが垣間見えた。紫の髪と瞳は風に乗って揺れている。その瞳が宿すものは実に対照的だったと言えよう。
 人を食ったような態度と余裕に満ちた言動は、幼い外見からは予想もつかない得体の知れなさを放つ。それは遊びの無い彼女も同様であり、共通点として“やり手”であることが挙げられようが、その一連の行動は最早真逆レベルだった。

 何しろ見据えているものも違う。あくまでも利害の合致だ。
 その利害の方向性が、極めて同じ方向に似通うが故のこと。
 人の感情というのは制御できない。思想というものも。だからこの辺りはさじ加減が大事だ。

「うんうん。じゃあもうちょっと話を広げてみよっか!」

 見据えているところが同じならば、態度こそ変えないが言葉を惜しまない。
 なにしろ言葉を発することだけならばノーリスクだ。無償という言葉ほど心地の良いものはない。
 必要な時以外に投資も何もしたくはない自分にとって、すべての物事におけるリスクリターンの天秤は重視するもので―――そして同時に、リスクとは可能な限り消すことが前提だ。兵は拙速を何とやらというが、自分達は兵ではない。見据えるべきものが違う。

 時々スキンシップじみて顔を近づけてみたりしながら、
 彼女の口からは流暢に、リコルヌに対しての言葉が流れ続ける。


「他の議員とのお話はした? 不測の事態へのリカバリはどのくらい用意出来てるかな?
 手の出せないところの目はちゃんと引ける? そこら辺もぜ〜んぶ考えないとダメダメよ?」

「バロさんは………頭おかしいから良いわ。終了。
 イナちゃんはどーかな? ショコちゃんは話聞きそうにないし、伝わったら大変そうだねえ。
 ミーさんなんて、そもそもユリちゃんが更迭で〜す! はいサヨナラ! って聞いただけで凄いことになりそうじゃない?」


 指を折りながら挙げた名前。それは一名を除いた、
 ある程度有力な政府官僚たちの、あるいは目を付けておくべき対象の名前だ。
 バビロン、イルグナー、ショコラ、ミシャール………ユーフォリア。
 独特の呼び名で語りながら、“そいつらの動向は気にしたか?”と彼女は問いかける。なぜなら人間は易々と制御できるものではない、餌を与えるなり目晦ましを用意するなりしても、どんな時でも不測の事態は起こるのだ。
 ましてや感情的なタイプの人間なんぞ、何をするか知ったものではない。

 さてその上で、不測の事態の筆頭である時空防衛連盟への対処は必須の内容とも言えた。
 ユーフォリアの名前を上げたのはそれが理由だった。アレと時空防衛連盟は目の上の瘤だ。彼女からすれば思想などはどうでも良く、目の上の瘤となる理由はただ一つ。


「いちお、目を向けさせる題材は用意してあるけどね〜。テロとか安価だし。
 それに侵攻ルートの横流しもしておくつもりだから、まー誰かが勝手に襲うんじゃない?」

 ・・・・・
 邪魔だからだ。
 思想や理屈、信念でご飯は食べられない。
 それが彼女の基本概念だから、事生温い理屈を語る輩が嫌いだった。それを免罪符にする人間も。とはいえ、壊滅して貰っても困る。軍需が高騰している原因は、この組織の存在と、これに相対する組織の天秤が釣り合っているからだ。
 他の金蔓も十分揃っているが。
 今高騰しているものがそれである以上は、残って貰わないと困る。

 10年、20年―――もっと、もっと。疲弊し切るまで、絞り切れるまで永遠に。
 だから、その為にも………。


「いずれじゃないよ」
「今すぐ。絶対なんて言葉はないし、殊更家族の情って厄介なんだよ〜?
 ああいうのが折角立てたプランをバッキバキにしちゃうんだよね」


 消えて貰わないと困るのだ、あの女。
 無能な指導者は操り人形に出来ても、有能な指導者は傀儡に出来ないと相場が決まっている。その点において、ユーフォリアという人間は嫌味なほどに完成されている。

 ………つまり。
 正直に言って嫌いなタイプだから、是が非でも破滅させてやりたいところなのだ。
 インテグラーレの名前を含めて、まとめて全部。

「リルちゃんには分かんない概念っしょ?
 でもね、人間は分かんないものが一番怖いんだよ。だから、さあ」
「私達みたいな人種に分かんないものは、殺すか首輪付けて飼わないと」

 ―――だから。
    正直家族に殺させるなんて話になるのならば、正直“がっかり”というわけだ。

>リコルヌ

7ヶ月前 No.832

中二病でもハッキングがしたい! @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【歴史是正機構本部/個室/シエンタ・カムリ】

どちらかといえば、甘い菓子よりも塩辛い菓子……つまりはポテトチップスなどを好むシエンタ。今回、わがままを聞いてもらったお礼に、プリンは全てキラーに渡すつもりであった。
しかし、それでは彼が納得出来ないようだ。あくまでこれは仲直りのために買ってきたのだから、二人で食べなければ意味がないのだとゴネる。仲直りなら、とっくに出来ていると思うのだが……
とはいえ、キラーはあの程度の、ちょっとした喧嘩に本気になっていたのか。彼女は思わず内心で"可愛い"などという感想を抱くが、直ぐ様何を考えているんだ、という表情でそれを振り払う。
何もそこまで躍起にならなくとも、と思わないこともないが、この様子からして彼は本気なのだろう。取り敢えず、今の姿だと普段と違った雰囲気を楽しむことが出来るので、面白い。

「そこまで言うのならしょうがないね。特別に、君のために、食べてあげることとしよう」

にやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、シエンタはプリンを手に取り……しかし、キラーと同じ席には座らず、わざわざPCの前へと戻って、そこで食べ始める。
これから少しの間、脳味噌をフル回転させなくてはならない時間がやって来る。その前に僅かでも多くの糖分を補給しておくのは、悪い選択肢ではないだろう。
あれではキラーが使い物にならなさそうなので、一人でやることとしよう。分かる、大いに分かる。きっと、彼が本気でスイーツを味わうのは初めてのことだろうから。
カチカチ、というクリック音と、時たま挟まる咀嚼音だけが響き渡る空間。シエンタの見ているモニターに表示されているのは、凡人が見れば恐らく理解することの出来ない難解な画面。
彼女は、大統領官邸の防犯システムにハッキングを仕掛けているようだ。片手間にプリンを食べながらであるのにも関わらず、正確無比な解析を続け、遂には……

「お話にならないね。ボクとおバカでは頭の出来が違う。それじゃあ、やることを済ませておくとしようか」

まだ作戦が実行に移されていない以上、今やることはそのための"準備"だ。防犯システム内にお手製のとあるプログラムを忍ばせたシエンタは、すぐに接続を切り、証拠の隠滅を図る。
相当な能力を持ったハッカーでなければ、巧妙に隠されたそれを見つけ出すことは出来ないだろう。いや、シエンタは自分以外に、それが出来る人間などいないと考えている。
このウイルスプログラムが起動した時点で、大統領官邸の防犯システムは完全に停止し、無力化されるのだ。そして、そのスイッチは、彼女の手に握られている。
いわば、シエンタは大統領の命そのものを握ったも同然。直接手を下す訳ではないが、大統領暗殺計画においても、非常に重要な役割を果たしているのは間違いないだろう。

>アイシス・カムリ
【返信先を意図的に変えるな(戒め)】

7ヶ月前 No.833

緋焔閃 @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

「身の程を弁えなかった愚かな外道。晴れる事なき怨恨を抱いたまま、冥土を彷徨い続けるといい」

 罪人を裁く神速無音の刃。緋色に煌く焔の剣閃を前に、黒猫は恐怖するだけで足掻きもせぬまま心の臓を穿たれ。続く剛刃の一閃はその身を縦一文字に断ち、伸ばされた手が臓物を引き摺り出す。面影の一片すら残さない凄惨な末路、無慈悲なる邪悪の結末。
 憎むべき奸臣をこの手で討ち滅ぼしたにも関わらず、心が虚無で満ちるのは、その呆気無さ故か。一矢報いようとする気概すら見せずに死んで逝った黒猫に、視線を向けるだけの価値は無く。この眼で捉えるのは唯一つ、これより雌雄を決する真の敵のみ。

「……それで、魔剣士よ。この黒猫の無様からして、更に飢餓へと瀕したのではないか。見込んだ獲物が期待外れで、心底失望しているのではないか」

 求めていた筈の黒猫の血を浴びた時の表情。期待していると告げた時に見せた、冷え切った口調と期待を裏切るなよと言う念押し。火照っていた熱が一瞬にして冷まされ、深い失望を覚えた魔剣士に対し、自らもまた、強く同情せざるを得ない。此方も主君を貶めようと策謀を巡らせた主犯を殺めたのは良いが、その主犯が余りにもの不甲斐無さから、達成感と言う物が芽生えて来ない。
 全力で挑まねば死ぬと覚悟して臨み、実際は全力を出さずとも何とかなってしまったのだから、肩透かしを喰らったのもいい所。正味な話、消化不良感が非常に強いのだ。

「……俺もだよ。命を賭す心算で臨んだにも関わらず、こうも歯応えの無い相手では、な」

 本来の目的を果たした以上は此処に留まる必要性は無いが、欠落した部分を別の物で補うが為に、敢えて留まる選択を選ぶ。此度の戦いはまだ終わらない、終わらせない。

「だから、魔剣士。お前の餓えを満たすが為、己の餓えも満たすが為――今から俺は全力で喰らわせに行く」

 是より臨むは自己満足の為の私闘。魔帝に仕える忠臣、"龍炎公"ヴァンレッドとしてではなく。闘争の中で己を錬磨し続ける一人の武人、"緋焔閃"として。魔剣士の餓えと、己の餓えの両方を満たさせるが為に、この剣を全力で揮おう。決して黒猫の様に、失望させたりなどしない。心の底から見惚れさせる程の熱を、与えてやる。

「アーケオルニ、この私闘に交わるかどうかは、お前自身の判断に委ねよう」

 次代を担う者として必要不可欠な、尊きもの。それを喪いたくは無いと思い、彼女には選択肢を与える。この私闘へと加わり、共に剣を揮うか。或いは、命を優先して戦場を立ち去るかのどちらかを。

「――"緋焔閃"ヴァンレッド、推して参るッ!」

 刀身に付着した黒猫の血を振り払う動作の直後に、力強く地面を蹴り飛ばし。轟音と共に激しい衝撃波を発生させながら、魔剣士の眼前へと瞬時に躍り出る。移動に要するだけの時間、それは一を十二分割しても尚、余裕で収まって見せる程で。
 言葉通りの"瞬間移動"で接近を果たすと、刹那に放つは二十四の灼炎纏う紅き剣閃。この一時を長く味わうが為にも、内四つはわざと急所を外している物だが。残りの十六は紛れも無き急所、寸分の狂い無く捉えたその時、確実なる死が訪れる。
 さあ、応えて見せてくれ魔剣士。火照った心を更に昂らせる灼熱を、この俺に与えてくれ。早く、早く、早く――!

>魔剣士 アーケオルニ・ランドグリーズ ("災いを呼ぶ黒猫"チェル)


【お相手ありがとうございましたー】

7ヶ月前 No.834

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★Android=rT60tYi8k1

【ディンカ/小屋/ナイトローグ】

「!」
身を翻し、攻撃を避ける。
そして、そこから勢いよく立ち上がり――――

「キャラが被ることはない……私にはこれがあるからな……」
『アイス・スチーム!』
そう言いながらナイトローグは赤い剣『スチームブレード』を取り出し、バルブを回す。
するとどうだろう、スチームブレードに氷の力が込められていく。

「はっ!」
地を蹴り、一気に駆け出す。
それをしながらトランスチームガンからラシアナめがけて弾を放つ。
しがもこの時すでにスチームブレードを降りかざしていた。並大抵のものならうかつに避けるとアイススチームを食らってしまうという、算段のようだ。

>ラシアナ

7ヶ月前 No.835

限界を超えて @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

決戦場ごと押し流す背水の陣で立ち向かう黒猫。それをものともせず進撃する龍炎公と魔剣士。彼らに比べて力の劣る矮小な身を歯痒く思いながらも、竜狩りは自分に成せる最高の業を以て剣を振るう。
鋼鉄はおろか金剛石すら貫かんばかりの緋剣、臓物を引きずり出し鮮血と断末魔に身を浸さんとする魔手。総力を尽くすに至らないというのに、魔大将を三、四人叩きのめしてもお釣りがこようかという熾烈さ。
続く竜狩りの一閃も一介の剣士にしては破格の剛撃であったが、どうしてもこの場に集った三傑に比べれば見劣りしてしまう。

ともかく魔大将の撃破はここに果たされた。"災いを呼ぶ黒猫"チェルの死は、人と魔族が織り成す新時代に仇なす勢力の潰滅を意味する。王国の騎士として己が心身を改めたアーケオルニにとって、ここからが本当の勝負となる。
だが――新たな世の中へ踏み出す前に、決着をつけておかねばならない戦いがもう一つ。天…いや地獄に血の雨ごいをする幽鬼、魔剣士を退けなければ、新時代はおろか城の外へすら歩みを進められない。

「言うまでもないな。アタシも疼いてるんだ。"竜狩りのアーケオルニ"が死ぬ場所は、とびきり熾烈な戦場って決まってるのさ」

龍炎公が負傷の身を案じてかけた言葉を一蹴し、彼との戦いによって変わる前の戦闘狂さながらの台詞と共に戦列に加わる。何も知らない部外者がその言葉を耳にすれば、彼女のことを単なる死にたがりとしか捉えないだろう。
しかし、彼女の心境に変化が訪れるきっかけを作った龍炎公ならば、その限りではないはず。確かに竜狩りとしてのアーケオルニはこの場で死ぬ。このことに勝敗は関係ない。
明日を生きるのは国と民の盾として産声を上げた"王国騎士"、アーケオルニ・ランドグリーズ。彼女は俗にいう引退試合に臨んでいたのだ。
傲慢な言い方になるが、亡き魔大将では不相応だったのは間違いない。単なる実力の面のみならず、己の招いた結末を直視できない心の弱さ、麾下の者の失態と信じ込む器の小ささ。
それらの要素に竜狩りは失望していた。卑小な人間の身なれど、強大な魔族に比肩する狩人。英雄。新旧の時代を股にかけ、戦乱の世の記憶を未来へ伝える生き証人。そんなアーケオルニの晴れ舞台に立つのは、魔大将より遥かに強く気高い戦士であるべきではないか。

その条件を満たすどころか器から溢れ出る人材…魔剣士をおいて他にいまい。

「"竜狩り"のアーケオルニ…この名をよく覚えておけ。お前を討つ者の名を!」

片腕のみで振りかざす刀身。宿る炎が黒猫の血を宙へ還す。無謀な挑戦であることは理解している。緋焔閃が傍らにいようと命の保証はない。
傷つき疲弊し今にも頽れそうな細い身体を駆り立てるのは、紛れもない竜狩りとしての魂。最後だからこそ激しく脈打つ鋼の心臓。アーケオルニという存在の"核"。
相方に続いて第二幕へと踏み切った竜狩りは、またも手にした大剣を放り投げる。間髪入れずに疾走、跳躍。その勢いが最も強いであろう瞬間に果たす、得物との再会。
剣を伴った状態での加速が難しいのなら、別々に行えばよいだけのこと。大地を穿つ巨戟と化した竜狩りは、圧倒的な手数で攻め立てる相方とは対照的な、一撃必殺の重撃を以て挑みかかる。
その剛刃が叩きつけられた床には、直径数メートルにもなる大穴が開くことだろう。発生した衝撃波は、堅牢な魔族の身体すらも無に帰すだろう。

そう――自らの限界へ臨む内に、そんな小さな枠は飛び越えてしまっていたのだ。この一戦に限り、傷はもちろん隻腕というハンディキャップもない、完全体としての竜狩りすら凌駕する怪物が降臨する。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"緋焔閃"ヴァンレッド、魔剣士


【お相手いただきありがとうございました!】

7ヶ月前 No.836

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【歴史是正機構/丞相室→移動/フォルトゥナ・インテグラーレ】


ヘルガ・アポザンスキー。その目的を彼女は知らない、生きる理由においてそれは必要なく、またそれが何であれ為すことは変わらない。知ろうと思えば知れただろう、だが飾りだけの将官の立場で必要とすることもなく、故にその点については無関心だ。
未来が主目的である事、それも知ってはいた。世界政府の腐敗、その一掃。それ自体には彼女も大いに賛成である、言わずもがな汚職を働いた父はその一部であり、似たようなことが起き自身の様な存在が生まれないのならば、それに越したことはない。
既に叶わぬと知っていながらの、幼き夢。それを壊したのは父であり、その道をなぞる様に進んでいるのが姉である。同じことを繰り返そうとしている、止めねばと思ったのはそれからだろうか、あんな思いをする人間を増やしてなるものかと。
彼女が見える真実で結論付けたのがそれだ、父は汚職をして、姉もその道を辿るのではないかと。どれだけ調べども父がやったという証拠しかなく、周囲は汚職議員の娘だと罵り、叔父は毎日のようにお前も父の様にそうなるのだろうとそう言い続けていた。
信じたくはなかった、知っている父はそんなことをする人間ではなかった。だが調べれば調べるほど父がやった証拠ばかりで、信じたくとも周囲は、証拠は、全て違うと物語っていたのだ。それを知っている姉が、その道を辿っているのをどうして許せようか。
だから丞相の誘いに乗った、姉を止めないかと言われれば乗らない道はなかった。その為に鍛錬は増やし、最低限の休息のみで日夜問わず己を研ぎ澄ましていった。それが姉を超えるために必要であったからだ、なのに、その言葉を聞いて咄嗟に出そうになった言葉は自身のものと思いたくはなかった。

「それ、は……」

殺す必要があるのか、漏れ出そうになった言葉を抑える。表情もどうにかして平静を保つ、自信から出そうになった言葉が許せなく、同時にそうであって欲しいとまで思っていた。
だが分かっていた、あの総統は何度折れようとも止まらない、少なくともフォルトゥナ・インテグラーレと言う人間はそうする。ならばユーフォリア・インテグラーレと言う人間もそうであるべきだと。
止める、そういった真意は何故父と同じ道を歩むのか、それが間違っていると諭す為の言葉であった。だが、それで止まるような人間ではないことは分かっていたはずだ、何故ならば自身もそうだからだ。
その程度の障害で止まる筈がないと、分かっていた。だから、丞相が言ったように救うならば殺してでも止めなければいけない。止めるを、殺すへ。ただ、それだけの事。いつものように、自身がすべきことを再定義すればいい。

「……指令、確かに受け取りました。必ず、総統を止めて見せましょう。」

いつも通りの表情で丞相へ命令の受諾を伝える、先の動揺など欠片も残らない何時もの将官の姿がそこに在った。形式だけの礼を再び済ませ、部屋から退室する。そこに、殺害への躊躇いはなかった。
一つ、大きく息を吸う。目を閉じ、ゆっくりと吐く。精神的乱れはなし、目的を総統の殺害へと変更、現在の不要な感情を排除、目的達成への最効率を選択、情けも憂いも必要はない。
目を開け、皮手袋を嵌めた手を何度か握り、開く、僅かな魔力の残滓が煌めく。身体の鈍りはない、魔力操作に影響なし、常に最高の状態、通常通りの肉体反応。確認を終えれば出撃準備の為、丞相室を後にする。
変わらぬ険しい表情、僅かな波すら立たぬ心情、目的の為の動力となりえる憤怒と憎悪以外を今ここで完全に切り捨てた。故に、彼女は殺さねば止まらぬというならば、かの総統の息の根を止めるだろう。

―――時に、愛憎と言うものは完全に切り離せるものではない。愛しているから憎んでいる、憎んでいるから愛している。根本はそれでしかない。
どれだけ憎んでいようとも、どれだけ憤っていようとも、根底にあるのが愛であるならばそれを切り離せはしない。
何故か?愛がなければその感情が発生しえないからと言う他ない。彼女は切り捨てたと言った、果たして本当にそうだろうか?

>>(ヘルガ・アポザンスキー)


【プロローグのお相手ありがとうございました!】

7ヶ月前 No.837

魔帝 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【魔帝城/深淵の間/魔帝ヴェルメイユ】

心底、やりにくい相手だと思った。ギラードの言葉は、的確に魔帝の本心を突き刺してくる。彼らの思想を踏み潰すことなど、出来るはずがない。そんなことをすれば、余計に理想が遠のく。
魔族と人間の共存が目的である以上、全力を持って相手を叩き潰すなど、ヴェルメイユには不可能だった。しかし、その甘さは、この場においては致命傷となることだろう。
やがて、一人の敵が、明らかに普通であるとはいえない魔帝の態度、そして思わず溢れてしまった一言から、彼女の正体に気付いてしまう。プーリッシュ・ラガルデール。その言葉を聞くと同時に、彼女の動きが一瞬静止した。
今まで、絶対に知られてはならないと思い、隠し続けていたことが露見した瞬間。魔帝として、あくまで人類の敵として振る舞い続けた数十年が、無に帰した瞬間であった。
幸いなのはそれを知ってもなお、ギラードが敵意を向けてこなかったことか。彼はあくまでこちらの動きを止めるため、アイスソードの先端を鎖のような形状に変化させ、飛来させる。
捕まる訳にはいかない。魔族の全てを背負うと誓ったからには、その責務を果たす必要がある。軽やかな動きで無数の鎖を躱し、後方へ着地した魔帝。だが、次に視界に飛び込んできた光景に、彼女は目を疑った。

ハザマが自分を殺しに来るのは分かる。そして、未来からやってきた者が自分の命を狙った時点で、生存させれば何らかの不都合が生じるのであろうことも推測出来ていた。
しかし、アンナローズが、仇敵であるはずの魔帝を助けるかの如く、毒蛇を受け止めたのにはさすがに衝撃を隠しきれない。それは味方に対する、明確な裏切り行為だ。
理解が追い付く暇もなく、ハザマが歴史の死、時空断裂についての解説を始める。要約すれば、本来の歴史が書き換えられた時点で時間の連続性が失われ、世界が崩壊する、ということらしい。
つまり、何をしようと自分に未来は訪れない、ということか。そして、ラガルデール王国の復興も成されない。それが歴史。未来を知る者が定めた、絶対の運命。思わず、絶叫したくなる現実。
だが、それに抗う者がいる。人間の勇者は、未来のため、魔帝を殺させはしないと誓った。再びヴェルメイユの顔に浮かぶ驚愕。彼女が、どうして―――
いや、悩み迷うことは、もうやめよう。和平のために倒さなければならない相手が誰であるのかは明白。立ち上がったヴェルメイユの瞳が、真の敵を見据える。

「争いが終わりが鍵となるならば、私達が手を結ぶことでも歴史は守られる……そうとも言えるだろう?」

正直、こじつけと言われるかも知れない理論だ。ハザマは、"この時代の終わりは、争いの終わりで成し遂げられる"、と語った。ならば、必ずしもその結末が、敵の打倒でなくともいいのではないか、そうヴェルメイユは考えたのである。
彼女の左手が、鎌の切っ先へと向けられ、炎が灯る。空気すらも焼き焦がす灼熱の炎をまとったそれを、ヴェルメイユは回転させながら勢いよく水平に振り抜いた。
すると、炎は一つの巨大な火球となりて、"共通の敵"へと向かう。この炎は、未来への道標。人と魔族が同じ視点で、同じ立場で手を取り合い、暮らすことの出来る世界を照らす、いわば太陽だ。
人を代表し、ここへ乗り込んできたアンナローズは、それを選んだ。そして、ヴェルメイユも今、その想いに応える。今こそ、長らく敵対関係にあった人類と魔族が結ばれる時―――

>ハザマ、アンナローズ・フォン・ホーエンハイム、氷魔像ギラード

7ヶ月前 No.838

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【大統領官邸/公邸→移動/イルグナー・シュタウンハウゼン】


「……違いない、デスねえ。年寄りばかりでは腐るのも当然デス、そして成功する人間は成功するというのも、これもまた当然デスねえ。」

痛い所を突かれたと、またも冗談めかしながら語る。平等でいたいと宣ったバビロン、確かにそうで在れればどれだけいいかなど彼女にも分かっている。だが、格差は無くならないし、必要なものとさえ認識している。
平等はとても綺麗な言葉だ、誰が聞いても欲深い一部を除けば頷く言葉だろう。しかし彼女は、その平等から最も遠い人物だと認識されているだろう。管理省、それは必要な場所へ必要な物資を分配する管理局。
その指示が大統領から下されると聞けば、大よそは理解できるだろう。平等に分配などされはしない、甘い汁を吸う連中が更に良い思いをして、苦汁を舐める
人々が変わらずその環境に居続ける、それを奨励するかのような指示。
僅かな沈黙に込められた思いはあれど、それを誰かに漏らすようなことは彼女はしない。腐敗の一員なれば、これは背負うべき悪名だと彼女は理解している。誰かに語ろうとも軽くなるものでもなければ、共に背負う人間を探していいものではないのだ。
礼儀何て何のその、ワインを飲み干すバビロンを傍目に捉えながら、彼女も酒を取り出そうと考えてやめた。まあ、警備員が少ない状況でもこの場で飲酒をした損を計ってしまったのだろう。門を作ろうとした腕を降ろす。
バビロンはどう行動を移すか、何気なく聞いた言葉であった。だが背筋に薄ら寒いものが這った様な気がした、彼女が危機感を優先できればすぐにこの場から逃げ果せただろう、彼女が体裁を気にしなければ即座に門を創造しただろう。
しかしもう遅かった、目の前のバビロンは既に品定めを済ませており、後は背を押すだけでしかなかった。何もしないと言ったその男が続けた言葉は、まるで後の彼女を予見する様な言葉であった。

「何を……!」

その目が黒から朱へと変わる、その異変に気付き腿のホルスターから拳銃を抜こうとするも遅かった。既に彼女は背を押されてしまっていた、そのままの道を進めと、決めたことをやり遂げろと、断崖から暗黒へと落とされていた。
枷を外す、限界を超えると言った表現をする時に凡そ使われる言葉。しかし限界とはその生物における許容の最大であり、それを容易く超えては支障が出る。その無意識化のストッパーを枷と見立ててそう表現するのだろう。
では彼女にとっての枷とは何であろうか、肉体的な枷は彼女には人間の通常通りの物が備わっていよう。ある一点を除いて、異能の使用による侵蝕、それが彼女が最小限でしか能力を使わない理由であるならば、それは枷と言えよう。
では思想としての枷はどうだろうか、彼女は自身の立場が危うくなり大切なハウゼン運輸が脅かされることを恐れている。どのような動きをしようとも損はないか、等と言った思考が先に出てしまう。
しかしそれが原因で腐敗の一員のままでいる、大きな行動を起こせないと言えるだろう。であれば彼女にとっての思想的な枷、それは損得勘定で動いてしまう事だろう。
精神的な枷、それについては彼女は既に壊れている。愛していた唯一の拠り所を失ってからこれまで、言動の変化が異能の侵蝕と共に起こっていた。それは死者との邂逅を果たしていたからだ、門を創造する、その能力が死の世界と繋げられぬ訳もない。
故にその時から彼女は常人のふりをしていた狂人と言っても過言ではない、死者と言えども会えてしまうのだから、死への価値は他と比べてどうしようもなく薄れてしまう。これを狂っていると言わずに何と言えようか。
さて、ここまで彼女の枷について語った訳。それは彼女はバビロンに背を押されたことでその枷を無視して動くことに他ならない、理想に殉じるなどと言えば格好はつくが結局は自壊への滑空をしているだけに過ぎない。
詰まる所、腐敗を一掃するという理想へ一切の損得勘定なく進み続ける。異能を最大限に活用し、腐敗を掃討するためだけに動く。本来ならば穏便に済ませ、犯人を明確にしないなどの工作を取るべきだがそれすらしない目的への一直線、枷が外れるとはこういうことだ。

「―――ああ、そういう事、デスか。何を言い出したかと思えば、こういう事デスか。」

突如立ち上がり、僅かに呆然としたかと思えば拳銃を携えたまま呟く。額に手をやり、普段の彼女では想像できぬ笑い。このバビロンの異能に既に堕ちた、かの女帝と違う箇所は事前の仕込みの差異、突然それに中てられれば何が理由かは想像できよう。
だがそれでも抗えない、枷が無くなった今の彼女は水門のない水路。ただ理想で固められた路を流れるままに進み続ける、その先が何であろうとも構わずに、夢へと進み続ける。
自身の思考に余計なものがない事に彼女は気が付いた、守るべきハウゼン運輸だとか、能力の代償だとか、損得勘定だとか、敵を作らずに動くだとか、そういったものは掻き消えていた。あるのは腐敗を一掃する、ただその夢だけ。

「感謝するデスよ、バビロン議員。おかげでボクは夢を叶えられそうデス、これほど気分が良いのは久しぶりデスよ。では、ボクは腐敗を除去しなければならないので、ここで失礼するデスよ。」

腐敗に手を染めた官僚の邸宅、自宅、別宅、またそれで甘い汁を吸っている上流階級の同様のそれらは情報収集の結果全て頭に入っている。彼女の異能を活用すれば、全てを排除するのに二十分も掛かりはしない。
門を創造し、銃を放てばそれで終わり。位置さえ分かっていれば門を創るのは容易い、欠点としては邸宅などにいない腐敗した連中の排除が出来ない事だが、何れ見つけ次第殺せばいい。
宙に指を這わせ、その軌跡から門が創られる。その先に見えるはどこぞの官邸、在宅を示す様に部屋の明かりは灯っている。よく見れば会食か何かをやっているようで、彼女にとっては都合がいい。

「ああ、そうデスねえ。バビロン議員、貴方は大統領の次に排除しに来ます。汚職に関与してない、だなんて言わないデスよねえ?」

そう告げると門へと入り込み、その場から彼女は消え失せた。門も秒も経たないうちに空気へと同化していく、バビロンへ残したのは明確な予告。腐敗排除への夢、その背を押したことへの感謝はあれど腐敗には違いない。
多くの官僚を排除し、大統領を排除し、バビロン議員を排除する。そして残った所在の分からない汚職に手を染めた議員を探し出して排除する、最後に自身も排除してそれでおしまい。腐敗は無くなる、若い力が十全に発揮できる時代が来るのだ。

後に、多くの官僚や上流階級の人間が自室で射殺されているのが発見される。全ての殺害が三十分以内で終えられており、それが出来る犯人など容易く絞られるのだが、それはまた別の話だ。

>>ダン・マッケーニ=バビロン


【夢を叶えろと言われたので飛び出してきます!絡みありがとうございました!】

7ヶ月前 No.839

北方守護騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_7ig

【魔帝城/深淵の間/氷魔像ギラード】

既にギラードのやることは決まっていた、他の者がどう動くかなどは関係ない、仮に理解が得られずとも、自分は人類の守護者として戦い抜くまで。
だが、表情を見る限り、勇者の選択は決まりきっていた、それもそのはず、彼女は最初から人間と魔族の和解を信じてここに立っているのだ、その上に魔帝が過去の人間であると言う情報まで与えられれば、彼女の選択は一つしかなかったのだろう。
こちらのアイスソードを使った拘束をヴェルメイユはたやすく回避する、やはり、では仲直りとは行かないか、とギラードが思ったその時、後方から声が響いた。

"「魔帝ヴェルメイユ。貴女にね、生きていてもらうと困るんですよ」"
その言葉の後に、時空断裂について語り始める。 歴史が正しく運行されなくなったとき、全ての時間が破壊される、簡単に纏めるならばそんな所だ。
故に、本来死ぬはずだったヴェルメイユにはここに死んでもらわないといけない、そういう事なのだろう。

相手が毒蛇を放つ、ギラードがそれに対処を行おうとした時、そのうちの一つをアンナローズは叩き落した。 ……それはまさしく、歴史の流れに逆らう行為だ。

「……そうか。 勇者よ、我が主の力を使う者よ、我はそなたの思いに応えよう」

それだけ言って、ギラードは氷の鎖のように変形していたアイスソードを元の形状に戻して、アンナローズが落としきれなかった魔帝に対しての攻撃に対して、ギラードは盾からアイスレイを照射して一つを弾き、最後の一つはその見た目とは不釣合いな機動力を発揮して、空高く跳躍して、真上からアイスソードを毒蛇に叩き付ける事で、魔帝を敵の攻撃から守りきる。
こうすれば、アンナローズや魔帝が相手の奇襲を受けることなく、判断の時間が与えられるだろう。

そのために使う魔力など、安いものだ。

それがどうしたと勇者が語る、その言葉は時空断裂など知った事ではない、自分は、自分のやりたいことをすると言う、ある種の危うさを感じる解釈も出来る言葉だ。
確かに、自分が居た古代、中世、そして未来、全ての視点統合すれば、ハザマの言う事がもっとも正しいのかもしれない、こちらは時空の破壊者で、あちらは真の守護者なのかもしれない。

だが。

「応ッ! ラガルデール王国、魔道帝国、ロンカ村……我はどれも守りきる事が出来なかった、だが、今、ここにある生命を、我は守って見せよう!!」

たったそれだけの言葉に、どれほどの思いがあったのだろう、あるいは、どれほどの苦痛があり、それを忘れようとしていたのだろう。
ロンカ村については、守りきったと取れるかもしれない、だが、あくまで彼が火を呼び込んだ原因の一つであり、あれほどの被害を出してしまった以上「守れた」なんて言葉は相応しくない。
だから、ギラードは、今度こそ、守護すると言った物を守るべく、剣を振り上げる。

「未来の人間よ、もはや歴史は壊れた、お前のいう時空断裂を回避するには、勇者が魔帝を倒す、これが絶対条件のはずだ、だが、その前提は既に壊れている。 ならば、それに合わせた修正を行わねばならないのではないか? ……お前が"勇者"となり、無理にでも歴史をお前たちが言うところの「正しく」運行すると言うならば、我は、お前たちに剣を向けよう。 覚悟ッ!!」

その言葉と共に、ギラードはヴェルメイユが放った火球に巻き込まれないように一定の距離を置きながら前進する。
魔帝の火球が着弾するのとほぼ同時に、三本のアイスソードを構えて斬り込み、その氷の刃をハザマに突き刺そうとする。

あくまでもっとも危険な前衛は自分が、ギラードが考えているのはそんな所だ。 何せ、魔帝も人間である事が分かった以上……必要に応じて盾として振舞えるのは、自分ぐらいなのだから。
そして、自分は、きっと勇者や魔帝とは違い「本来存在もしていない、歴史に不要な存在」だから。

>魔帝ヴェルメイユ ハザマ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム

7ヶ月前 No.840

ジジイ @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【歴史是正機構本部/丞相室/ヴァルガス・スターン】

蹄鉄のような靴音を響かせ、是正本部の廊下を闊歩する老齢の男性。まるで衰えを感じさせない佇まいは、彼が鋼鉄の如き軍人であることを主張してやまない。
ヴァルガス・スターン――地球軍に長年勤めあげ、今なお軍に対して強い影響力を持つ人物。個人としての彼を見れば、卓越した戦闘技術と経験に裏打ちされた知識が光り、集団の中の彼を見れば、歳を重ねるごとに増していく指導者としての力が目を引く。
老いとともに失われていく身体能力を補って余りあるそれらは、彼が位と栄誉の数々を実力で掴み取ったことを何よりも雄弁に語っていた。

ではなぜその様な人物が是正機構にいるかと問われれば、彼が抱える唯一といってもいい欠点について語らなくてはならないだろう。
一人の戦士としても、部隊を率いる指導者としても有能なヴァルガス。軍に生涯を捧げてきた彼は人望も厚かった。しかし『天は二物を与えず』とはよく言ったもので、彼の思想はこの平和な時代に不相応なほど過激だったのだ。
平和に緩みきった人類…もしも非常事態が起こった時、非日常への耐性をなくした彼らがどのような道を辿るかは想像に難くない。その懸念は日に日に膨らんでいき、遂に歴史是正機構の扉を叩くに至ってしまう。
秩序と安寧の維持に尽くす戦士から一転、歴史の冒涜者に成り果てた老兵は、今や人類にとって廃すべき敵に他ならない。丞相ヘルガ・アポザンスキーに信頼を置かれているということは、正常な視点から見れば危険人物そのものなのだから。

「丞相閣下、失礼します」

丞相室に間も無く辿り着こうかというところで、まさにその中から出てきた人物を目にしたヴァルガスは、直立不動で彼女の通過を見送る。フォルトゥナ・インテグラーレ、是正が目の敵にする連盟総統の妹君。
要人の抹殺ただ一点を見据えて将官の位を手にしたことから、丞相が彼女にかける期待というのは相当なものらしい。年齢を言えば彼女の三回り近くも生きているヴァルガスだが、深く根付いた軍人精神が無礼な態度を許さない。如何なる組織に努めようと変わることのない、言ってしまえば矜持も同然の振る舞い。

それが終わると丞相室の扉を二回ほどノックし、許しを得た上で室内へと足を踏み入れる。

「閣下、私(わたくし)の部隊も出撃の準備が整いました。閣下の計らいを受け、士気は高まっております。

それと、折り入ってお頼みしたいことがあるのですが」

丞相の眼前に立ち、直立不動で報告する。彼のいう部隊とはヴァルガス・スターン直々の訓練を受けた精鋭兵達のこと。一万に届こうかという是正の私兵のうち一割を占める彼らは『死の機動部隊』と呼ばれ、連盟の勇士達ですら大きな脅威と認めている。
規模と兵士の練度はもちろん、部隊内での統率、新鋭兵装の充実といった重要な要素も満たし、征圧力と機動力に長けた大部隊。
古代、中世と立て続けに敗北を喫したことで消耗を懸念する者もいるが、優秀な兵とは何も戦いの中でのみ力を発揮するわけではない。引き際をわきまえ、撤退の手際も極めてよい彼らは、帰還率も相応に高いのだ。
加えて未来での決戦を見通して振るわれた采配により、部隊の大半は出撃を控えて訓練に徹している。これから立つことになる晴れ舞台を夢見て、その士気の上がり様は留まるところを知らない。

それらの事実を今一度確認すると、ヴァルガスは付け加えて己が要望を伝える。

「兵士達が死地に臨むとあらば、それを束ねる者も運命を共にしなくてはなりますまい。

つきましては、出撃の許可をいただきとう存じあげます」

彼の望みとは自ら戦地へ赴くこと。これまで指導者としての面を重視され、喪失の影響が大きいことから出撃を許されなかったヴァルガス。しかし麾下の兵全員が出るとなれば話は違う。
一大決戦を控え、士気が上がる反面不安も大きいであろう兵士達の心境に思いを馳せた時、仮にも副将たる自分が安全地帯で椅子に腰かけているというのは忍びないのだ。
正義の道を踏み外していながらも、高潔な軍人としての魂は健在。運命の時が迫る中、丞相は果たして彼の望みを聞き入れるのだろうか。

>>ヘルガ・アポザンスキー、(フォルトゥナ・インテグラーレ)


【許可をいただきプロローグ第二弾になります、絡みよろしくお願いします】

7ヶ月前 No.841

炎獅子 @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 立ち止まる事を赦さず、最期の瞬間まで突き進み続ける塵殺剣の突貫。右腕のみならず命運自体を代価に、彼女は一つの生命に終止符を打たんとする。初動が遅れた炎獅子がそれを妨げる事は能わず、然し秘めたる力を解き放ったサシャであれば必ず避けられると信じていた。誰も犠牲にならない未来を掴み取れると心の底で信じていた。
 だが――彼には一つ、見落としがあった。誰彼もが彼女を信じられる訳では無い事を、失念していた。だから、自らよりも疾く、彼女を庇うべくして動いたレプティラの行動という物を、全く想定出来ていなかったのだ。炎熱を纏う大剣を手に疾走する彼の眼が捉える光景、揮われた細剣が彼女の左眼を貫き、振り上げられる刹那を前に。
 それでも――彼は歩みを止めない。想定外の事象は驚愕するに値するが、されどそれが剣の冴えを鈍らせる動揺には至らない。放出する焔の勢いは衰えず、ただ塵殺剣を討つ為に肉薄して行き。猛毒の牙に噛まれ、乱舞する光に身を灼かれ、嬲られ続ける彼女に引導を渡すべくして。

「――ああ、きっとそうなるだろう。過程は違えど、俺もまた"おまえ"になる」

 情熱の輝きを宿せる紅の瞳と、とうに錆び付いた紅の瞳とが交差する。彼女が告げる言葉を、炎獅子は否定しない。其処に至るまでの列記とした根拠は無く、あくまで感覚上での話だが。己もまた、彼女の様に未来永劫、歩みを止めないのだと、そう感じたのだ。どんな理由があろうとも、決して道を変えず、止まらずに終着点を目指す者。何もかもが灰になるまで、ただ一つを目指して駆け抜ける者。
 そう、例えるならばそれは蝋翼のイカロス。燃え尽きて灰となり天墜するまで、輝く太陽を目指し続けた、勇壮にして無謀なる者。自らが死を迎えるその瞬間まで、決して飛翔する事を止めなかった者――その彼を、自らの在り方と重ね合わせた。
 故に、いずれは自らも"塵殺者"に身を窶す。遥か過去に定めた"理想"まで、最期まで駆け抜け続ける鋼の心の持ち主になるだろう。

「全てが灰となるまで、俺は"太陽"を目指し続けるのだから」

 太陽と書いて理想と読み。定義した自らの行動原理を述べ終えた時、焔剣は彼女の身体を容赦無く切り裂いた。切り上げ、そして断つ二連撃を終え、よろめきながら、眩暈に苛まれながらもその双眸は塵殺剣の姿を捉え。最後の残滓が、風に攫われて行くまで見届け続け。
 そして、完全に消え去った刹那――無限廊下の一戦が終着を迎えた。勝利を掴み取ったのは此方、だがそれに要した犠牲は多く。喜ぶ事はおろか、感じるのは余りにもの未熟さ、至らなさ。足りない、これでは足りない。この程度では、"太陽"に届きはしない――

「…………うっ……」

 ――意識は途絶える。遂に正真正銘、炎獅子は糸が切れた人形の様に動かなくなった。その命を獲りに来る者はもういないが、何の処置も施さねば確実に死が訪れる重傷を彼は負っている。彼の命運を左右するのは、今後の後始末と言った所か。

>ニア レプティラ サシャ


【此方こそ、お相手ありがとうございました!】

7ヶ月前 No.842

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 簡単だった。
 具体的な目的意識の全てを、振り返る過去によって縛られているイルグナーは風見鶏でしかない。
 彼女は受ける風に従いその方向を向き続けるのだから――少し、そう、"己で風を吹かせられなくてどうする"と焚きつける。
 するとどうなるか。空を目指して、未来へ向けて舞い上がり続ける一人の蝋翼の完成だ。
 これが楽しくてたまらない。
 だってそうだろう。
 考えても見ろ。
 初志貫徹という言葉が意味する通り――善なる者であれ、悪なる者であれ、貫き通せば全て<ルール>になりうるのだ。
 それを目の前で見ることが出来る。それは至上の幸福であるのだ。
 勝者が夢を叶えて報われるその瞬間こそ、英雄譚は幕を開けるのだから。

 燻る薪に――火を灯してやった。
 振り返ることなく、己の正しきを信じて進み続けるがいい。
 出来ないことはないのだから。叶わない夢はないのだから。
 だがそれでも、踏み出せぬ者たちはいるだろう。そんな弱さですら、バビロンは愛している。
 一旦踏み出してしまえば……後は楽だ。
 その薪に、火を投げ入れ、燃え上がれ――情熱的に。光のままに。大火が都市を焼こうともその夢を成せ。

 そうだ。
 それを可能にしてしまえる魔法のランプがダン・マッケーニ=バビロンの異能<デュナミス>。
 天が彼に与えた最悪の権能であり、人理を食い尽くす魔神へと変成させた要因。
 光を尊び夢を尊び、前へ前へ前へ前へただ前へ。そうして、明日へ向けて進み続ける力。

「ハハハハハ!!!」

 ――"最後に己を殺す"。これで完成だ。天を目指して舞い続けるイカロスの。
   腐敗により流れた涙を明日の光に変えんがため、イルグナーは政治家を殺しまわるだろう。

「いいぞ、来い。最後は俺を殺しに来い。
 何故ならお前の翼が焼け落ちる頃に――俺はお前の前に立つのだからな!」

 去り行く彼女へ向けてエールを送る。
 開いた<門>が閉じるのは、もう後ろは振り返らないという表明だ。
 だからこそ素晴らしい。勝者とは、轢殺した敗者の遺骸の山でのみ輝くのだから。

>イルグナー ALL

【こちらこそ、お相手ありがとうございました〜】

7ヶ月前 No.843

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/魔大将の間/魔剣士】


引き摺り出した臓物、その鮮血。魔剣士はそれらを興味なさげに投げ捨てた、あれは生き汚かった、死ぬ気で抗えば喰らうに値する存在だと確かに認めた。だが死を容易く受け入れ、剰え実力不足を恥じるではなく見当違いな下らぬ怨嗟を撒き散らしただけであった。
これは喰らうに値しない、そも雑兵と何ら変わらぬ。いや、命尽きうるまで抗った雑兵の方がまだ喰らえるだろう。諦めて死する、何と無駄な事か。生まれ持った唯一のそれ、使い切らずしてどうするのだ。

「……まだ残り滓の方が喰いがいがあろう、限り有るものを投げ捨てるとはな。」

普段であれば返り血を払うことなど滅多にない魔剣士、籠手に着いた黒猫の痕跡を腕の一振りで払う事で失望の程が分かるだろう。黒猫に期待はしていた、決して高くはないが確かにしていた、だがそれを容易く下回っていただけなのだ。
故に、その程度の雑兵に交じろうが大して変わりのない存在は既に眼中にない。であれば視線を向けるのは龍と人間、先の刺突と剛撃は中々に良いものであったと評しよう。だが残念なことに、魔剣士は熱に滾ってはいない。
少なくとも雑兵が余裕を保っていた時ほどの熱はない、味見をし、どれだけ熟れるか、どれだけの悦楽と快楽を齎すか、それだけで数度果てていたような昂ぶりは既に冷めていた。そう、龍の称する通りに。

「飢えを満たすか、身を越えた誇張はあれの再来となるぞ、龍よ。貴様は確かに好い、だが私の飢えを満たすならばあの程度では満足はせん。」

更なる飢餓、確かにその通りだ。期待外れでの失望、これもその通りだ。龍が飢えている、龍自身が語る以上きっとそうなのだろう。だが魔剣士の飢え、未だ満ち足りた事無き器を満たすなど、妄言にもほどがある。
だが魔剣士とてそこまで言わしめる龍に期待がないわけではない、確かに龍は最も好い。それが未だ全力を発揮せず、更なる力を持ち得ているのであれば期待は高まるばかりだ。しかもその全力を見せるとまで、ならば喰らう他あるまい。
人間も未だ立ち向かう、種族の差、隻腕、並のものであれば退く状況ですら立ち向かうその精神。その点で先の有象無象よりも期待が持てよう、この人間であれば命尽きる瞬間まで抗い続けるだろうと。

「討つ、か。ああ、貴様らは期待させる。好い、好い、これで喰らえれば更に好い、そして燃え尽きるまで命を使うならば、最上だ。」

次第に魔剣士の表情に深い笑みが刻まれていく、先の失望など原因と共に忘却の彼方。今眼前にある至上の鮮血を喰らう事に集中するほかあるまい、口角を吊り上げ蒼い冷え切った瞳に熱が灯り始める。
未だ満たされぬ器を満たすと豪語した龍、未だ傷一つ無き魔剣士を討つと言い放った人間、どちらも至上、追い込めば追い込むほど熟れる逸材。望むはただ只管の紅の劇場、全てを強者の血で染め上げる悦の園。
力強い踏み込み、瞬間移動に見紛う速さのそれを魔剣士は難なく捉える。煌めく炎熱、瞬きなどすれば即座に散り散りの灰へと化す紅蓮の剣戟。計二十四に及ぶそれ、急所とそれ以外を狙ったそれを僅か一閃のみで払う。
空気が揺れる間もなく放たれた一閃、長剣が龍の斬撃に触れたのは僅か一度、ただそれだけで続く剣閃を剣気のみで相殺する。僅か一振りに込められた剣気は二十三、この程度であれば剣を振るう必要すらないと言う確固たる証明。
続く人間の重撃、長剣以上の刃と重さを誇る大剣を持ったままの加速を不可能と判断し、放り投げることで威力と素早さを両立させたそれ。得物の重量など気にも留めぬ魔剣士ではあるが、その思考の柔軟さは評価に値する。
並大抵の魔族であれば余波で命を散らすその大剣の一撃、一閃の流れそのままに唯そうすれば弾くことが分かるかのように振るわれた長剣。振るわれただけならば長剣が力負けして折れる結果で終わる筈のそれ、しかし降り注ぐ鉄塊はそれだけで弾かれていた。
何も不思議な事ではない、長剣の扱いに関しては魔剣士は生まれた時から共に在るようなもの。どの部分で受ければ、どのように受ければ容易く受け流せるかなどは基本中の基本でしかない。

「龍よ、人間よ、傷の一つでも負わせて見せろ。ならばその名、傷と共に覚えよう。」

避けずに全ての剣戟を受けた魔剣士の身体が文字通り揺れる、陽炎の様に揺れたかと思えば二人の魔剣士が龍と人間へとその長剣を振るっていた。分身、そうではない。ただ速度のみで脳の処理を追い抜くことで二人に見えるだけの事。
龍と人間、双方に襲い掛かるは四十八の斬撃。四肢を飛ばす剣閃を十二、首を飛ばす斬撃を八、胴を分かつ剣戟を二十、身体を両断する一太刀、心臓を突く刺突を二度、脳天への貫きを三突き、そして回避を塞ぐ二つの剣筋。
それを秒の一分にも満たない速度で放てば魔剣士の姿が再び一人に見えるだろう、本気を出す前に芽を手折ってしまうのは惜しい。故にこの程度対処できなければ討つことも、満たすことも出来ぬという選別。
未だ片手でそれを振るう以上、全力の二割を出しているかどうかすら怪しい。だが魔剣士は愉しんでいる、元より全力を耐えうる強者は求めていない。そんなものは存在しない、だからこそ傷付けるだけで十分。
その命を燃やし、燃やし、燃やし尽くす最後の輝きで僅かな傷でも与えられればそれでいい。それ以上の期待はしていない、しかしだからこそその傷一つ与えられれば魔剣士は悦楽の果てへと容易く登るだろう。
さあ、舞台は中盤に差し掛かる。不手際がありましたが漸く主役のご登場、炎熱の龍に隻腕の人間、未だ彼女を打倒すに足りないが強者には違いないでしょう。さあさあ、紅く染めましょう、もっともっと染めましょう!
その剣は、まだ血を求める。

>>"龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ("災いを呼ぶ黒猫"チェル)


【お相手、ありがとうございました!】

7ヶ月前 No.844

“ナルカミ” @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

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7ヶ月前 No.845

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/無限廊下/"常山蛇勢"レプティラ】


彼女の牙がニアを裂いた、サシャの光がニアを貫いた、そしてレオンハルトの炎剣がニアを断った。その肉体が光へと変わるのを見つめながら、彼女はニアがニアであった最期まで見続けていた。
戦いが終わった、命のやり取りが終わった瞬間に力が抜けていく感覚があった。緊張の糸が切れたのだろう、身体から伝わる痛みを無視しながら彼女は最期のニアの言葉を思い出していた。
満足か、そう問われた。その後に続く言葉はきっと結局理解できなかったと、そう続いていただろう。互いに分からないから、分からない事だけは理解できてしまった。彼女もニアが何を想ったのかなど分かりはしない。
自身の牙がニアを裂く直前、見た瞳は最後まで何故と問うていた。そんなことは決まっているのに、ニアを討つならばニアと同じやり方ではないと彼女では届かないからだと、そしてそれが彼女へニアが遺した事だと。
言葉にしても届かない、そして既に何をしようが届きはしない。ニアを討った、そうすればニアが死ぬ、そんなのは誰にだって分かること。決めて突き進む間は良かった、決意に漲れば目的の為だけに走り続けられるのだから。
でも全てを差し上げると言った彼女は生きている、身体中が裂傷による血で塗れていようとも、無き左眼の痕から脳漿が見えていようとも、頭蓋の半分が切り裂かれていようとも、龍族から分かれた蛇族も長命であり生命力も高い。
だから目的を達成して、終わりとはいかない。ニアを討つために注いだ心血は、今は行き所なく自身の心を傷付けるばかり。夢の為に何かを犠牲にする、それはこれほどまでに痛いものなのか。

「満足、ですか。出来る訳、無いでしょう……!」

彼女は泣いた、涙を流す機能を既に失った右目、瞳そのものを失った左目がなく、涙が流れずとも確かに彼女は泣いていた。未だ血の止まらぬ左目、尾、手当てが必要だと分かっていながら、それよりもただ泣きたかった。
ニアの魂魄を削る剣技、確かに彼女から多くの物を削り取った。以前ほど彼女は感情豊かではなくなる、ニアの言う善性も凡そ消えかけてしまっているだろう、気力と言ったものも削げ落ちているかもしれない、だがそれでも彼女は彼女でしかない。
魔族の平穏を望んだ彼女と何ら変わりはない、心根が変わることはない。だから最初は得体の知れない恐怖しか抱かなかったニア、でも対話で少し分かったつもりになって、自身の夢を気付かせてくれた、その相手を殺してどうして笑えようか。どうして満足できようか。
必要だった、魔族が平穏を保つために必要だった。そう割り切れるのは討たねばならない状況であったからで、討った今それを押し通せるほど彼女は強くはない。背負うとそう決めたはずなのに、自分で背負えるわけがないと思っている。
当たり前だ、彼女は人の上に立つ器ではない。一人の魔族の命すら背負えるわけがない、そんな彼女がただ討たねばならないとまで思えたことは魔法でしかないのだ。もう一度、そうなれと言われてなれるものではない。
魔族の平穏とニアを天秤にかけて、魔族の為に身体を張る人間を見て漸く決断し、尾を裂かれようと挫けず、命を賭してまで繋げた言葉を受けてこそ、目を貫かれようとただ討たなければならないから討つために全てを捧げていたのだ、どれだけ彼女が自信を追い込み、周囲が追い込み、その状況へと至ったのか。中途で彼女が戻ることは許されなかった、進む以外の道はなかった。
そして走り切った結果がこれだ、達成感など有る訳がない、魔族の平穏を守れたなんて安堵など一切ない、魔帝がこれから執るであろう和平が良いものであっても彼女には喜べない。ブロヴァンスに託された想い、繋げなければと抱いた覚悟は今の彼女に見る影はない。
分かり合えない、そんなのは戦う途中で分かっていたはずなのに、こうすれば良かったのではあの時こうしていればなど後悔は絶えない。討てども終わらなかった、ニアは死んで、彼女は生きている、なら続くのは道理でしかない。
背負い続けなくていいと誰かは言うかもしれない、だが彼女はそれを許容しない。特にニアとブロヴァンスは死ぬまで背負い続けるというだろう、何故かと問われればこう答えるだろう。
背負わなければ本当に何も遺らなくなってしまうから、ニアは何も遺さなかった、ブロヴァンスは託して想いを遺していった、だけどこの場でブロヴァンスの言葉を聞いたのは彼女だけだ、その意志は彼女にしか遺らない。
だから背負い続ける、ニアが何も遺らないとそうしようとも遺す。ニアと言う存在を、ニアを見て覚えた全てを捨ててまで相手へと届かせる方法を、ブロヴァンスが魔帝の言葉を聞いて想った願いを、せめて自身が死ぬまでは背負い続けようと。

「何故、満足できると……!本当に、貴方が分かりません……!」

死ねていれば満足であった、きっとそうであったのは自身でも痛いほど良く分かる。ニアを討って、自身も死ねば思い残すことは本当になかった。満足かと問うくらいならばいっそ道連れにしてほしいと思うほどに。
ニアがそうしないことくらい分かる、そんなことは必要ないからだ。一度、ニアへ追い付くために全てを投げ捨てて必要なことのみを追求したからこそ、唯一理解が及ぶこと。これで全部分かった気になれるほど、彼女は愚かではないが。
彼女は確かに死を覚悟していたし、死んだとしても憂いはなかった。だからこそ、こうして生きている以上自分がしたことへの責は誰よりも感じている。同胞の命をこの手で奪った事には変わりはない、この感触を永劫忘れるつもりはない。
忘れてしまえばニアを討った意味も薄れてしまう、大義は魔族の平穏の為、でもそこに至るまでに彼女が抱いた想いも全て無駄にはしない。ニアが何を想ったのか、それが分からない以上死したニアを大事にしたかった。

目としての機能を失いかけている右眼が無限廊下の先から来る一団を捉えた、未だ蛆を湧かせているのは申し訳ないとは思うがこうしなければ視界を確保できないのだ。そんな中でも躊躇わずにこちらに向かってくるのは、蛇族、その中の救護班であった。
その後ろには巨体を揺らす先に伝令へと遣わせた大蛇が居た、もし戦闘中であったのならば自分たちも危険なのにと思いつつも此方へ向かう救護班を待つ。視界の端で捉えたレオンハルトは意識を手放していた、あれだけの傷を負って意識がある人間のほうがおかしい位だ。
救護班が辿り着いたのを見て右目を閉じる、同族であり意思の疎通も取りやすい以上後は任せて問題ないだろう。サシャも軽傷とは言え彼女の無茶に付き合わせてしまった、怒られても仕方がないとは思う。

「倒れているレオンハルト、人間から治療をしてください。彼は重症です、私は後回しで構いません。サシャにも早急な手当てを―――」

そこまで言い終えると、彼女の巨躯は床へと倒れ伏す。レオンハルトを重症とし、意識がある方がおかしいと称したが彼女自身も十分に重症だ。体長の四分の一を失い、全身裂傷、左眼の喪失に頭蓋損傷、出血を数えれば既に致死量に至ってもおかしくはない。
彼女が倒れても救護班は慌てることなく、レオンハルトと彼女を優先的に治療を行う。ただでさえ死にかけの二人、救護班の大半が二人への救護へ向かっている。サシャには一人だけではあるが、この状況で文句を言うほど心が荒んでいる魔族ではない。
出血を止める事を最重点とし、その後傷の手当てを薬物を使用しつつ縫合する。未来の医療設備に比べれば劣るが、中世では蛇族の医療は最先端を行くもの。ここまで重症であっても命を取り留めることは容易い、とは言え救護班全てが集中し事に当たっていることから二人の怪我の深刻さが分かるだろう。少なくとも十分遅れていれば容体が変わったと言える程。
一通り出血を抑え、傷口の縫合を済ませれば包帯を巻き始める。二人とも包帯だらけになるほどの怪我であった、彼女が怪我を負っていることを知り多くの包帯を所持してきたことが幸いした。最後に造血剤、栄養剤を投与して安静に保つ。
救護班は数名がこの場に残り経過観察、残りは他の魔族の治療へ向かう様だ。幾ら魔将軍の負傷と言えど怪我人に貴賤はない、元々レプティラ自身がそういった方針を取っていたこともあり揉めることもなく次の患者へと向かっていった。
意識を失った彼女の表情は決して穏やかではない、怪我の状況から顧みても当然だろう。しかし要因はそれだけではないだろう、きっと大きな部分を占めているのはニアの事だ。きっと、彼女は今日の出来事を一生忘れない。
だがこの時ばかりは幸せな夢を見ても良いだろう、何れ現実へと引き戻されるのだとしても、妄想としか言いようがないそれを僅かばかり思い描いても許されるだろう。そう、例えば、魔族も人間も誰一人駆けることなく幸せに暮らせるようなそんな世界。
子供の様な夢、だが今この時ばかりは彼女の心を癒す最良の手段となるだろう。人間の顔は朧気だが、魔族は魔将軍や魔大将も含めてみんなで笑い合えている、既に有り得ぬとしても夢位はいいだろう。
目が覚めればいつものように、悩んで、背負って、どうにかしようとする彼女が目覚める。自分が出来る事を只管やって、それがどれだけ苦しかろうとも続ける日々が来るのだ。
ただ、これまでと違うのは彼女の精神が削れてしまった事、大怪我の代償として尾が短くなり視界が通常時は閉ざす必要があること、そして自分にとって大切なものを胸に秘めていること。たったそれしか変わらない、でもそれでいいのだろう。
ただ従い続けるだけではなく、自身の夢を持って、何が大切なのかをしっかりと理解できた。間違いなく彼女は成長している、そして成長に相応しい痛みも大いに味わった。
だから、今だけはおやすみなさい。

>>サシャ レオンハルト・ローゼンクランツ (ニア)


【お相手ありがとうございました、此方こそ長くお付き合いいただきありがとうございました。】

7ヶ月前 No.846

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL

【魔帝城/深淵の間/ハザマ】

 拍子抜け。
 先程彼ではなく、氷魔像が評した言葉だ。
 ………まさか短い時間に二度も、この言葉を使う日が来ようとは思わなかった。そう―――。

    、  、   ・・
「(………うーん。まだ違うんですよねえ)」
「(あーいや、後少しか? まあ、どちらでも良い。
  重要なのは、それが今は私に向かなかったということだ………―――)」


 殊の外、ハザマの懐いた感情は失望に近かった。
 本音を言うならば“もうちょっとあるだろう”という意識が最も近かった。防ぐまでは予想通りだ。凌ぐまでなら予想通りだ。それくらいはするだろうと判断していたし、別にそれでも構わなかった。
 嬲り、凌辱し、蹂躙し、その果ての叫喚を聞くに当たって、まさか切り札の一つ二つは用意していないはずはない。失敗すればそれまでだが、そのための準備を怠るほど彼は阿呆ではない。
 その上で、提案を“蹴った”以上待っているのは敵対にして形勢逆転だ―――そこも比較的どうでも良かった。目的が達成出来るならば、個人の理屈としてはハザマは別に自分の命が絶たれたところで眉一つ動かすことはなかったからだ。

 その上で、ハザマが見たかったもの………訂正すると識りたかったものは“違う”。
 いざ失敗してみればこんなものだ。とは、いえ。


「さいですか。アンナローズ・フォン・ホーエンハイム」
 ・・・・・・・・・
「アナタは勇者なのに?」


 まだ十分に、突き倒すべき部分が残っている。
 まだ、完璧に想定を外れたわけではなかった。
 自分が自分の知りたいものを識るために足掻けるチャンスは、十分に残っていた。
 使わない道理などない、行わない理由などない。
 そして当然、それが果たされるまで死ぬわけにもいかない。


「人々の希望を背負って、争いを終わらせに来たのに?
 あーいえ、確かにそれも戦いを終える形でしょうよ。否定は特にしません、めんどいですし。まあ出来るでしょう! 確かに貴方の言う通り前提は壊れた、それに伴う修正が必要だ。
 しかし私ね、勇者ってガラじゃないんですよ。傍観者は歴史の主役にならないのが基本ですからね」


 先ずは吹き荒れる火球の一撃を、地面を踏み鳴らすと同時に仕込んでおいた蛇の牙が凌ぐ。
 単発同士の威力では明らかに前者が勝るが、ならば展開する壁の数を増やせばいい。
 アークエネミー
 事象兵器の一角たるウロボロスは実質無制限。打ち上がる緑黒の防壁は先ず魔帝の放った一撃をいなしつつ、しかし続く突撃によって蛇双の壁が粉砕される。元より図体の大きく質量に優れたギラードの疾駆を、ヴェルメイユの魔力によって放たれた攻撃を凌いだ直後のウロボロスが耐える道理は特にない。そこまでは想定済みだから、迫る彼へとナイフを構えて応戦する。

 魔素を宿したバタフライナイフの刃が、突き刺さるべく放たれた氷の刃をいなす。
 同時三本―――であるに、残る二つは当然毒蛇の牙が迎撃する。三本腕の剛力は鍔競り合いに持ち込まれるならば脅威と言えようが、長時間ぶつかり合わなければそれまでだ。弾いて余計な損傷を負わぬようにしつつ、返す刀で正面に穴を空ける。
 空いた孔から時間差で殺到する無数の毒蛇の牙は、そのまま氷魔像を足止めするように襲い掛かるだろう。威力はどうあれ、空間ごと食い千切り固着する牙は、何より生存力に優れたそれの動きを止めることを念頭に置いた攻撃だった。

 その最中にも、聊かわざとらしく彼は言葉を紡ぐ。
 何の為かなど決まっているし、今更正義の味方を気取るつもりもない。


「で、ソレ………お互いに家族を殺された人間にどうやって説明するんです?」

「聞いているか知りませんが、この戦争で何が起きたかご存知ですか?
 虐殺、略奪、差別! 挙句ヒトは憎い魔族を滅ぼすために毒を使い、王都では貴方達の言う“和平”の為に堪えていた者達は皆殺しだ。さて彼らにとって、お互いはどういう眼で映るのでしょうねえ、考えたことは? 正面に立てる自信はおありで?」

「平穏にするので我慢しろ? 轍になれ?
 ハハハ! 素晴らしい傲慢さだ尊敬しますよ! それでこそ英雄だ! それでこそ勇者だ!」

「流石は単身で魔帝もろとも魔族を皆殺しにした勇者殿、その傲慢さだけは健在のようだ!
 あ、それ元の歴史の話です。失礼間違えました」


 単純に正論らしく聞こえる内容で、相手の神経を逆撫でするだけだ。
 そして実際のところ、完璧な建前だけではない。要は“責任の取り方”を話しているのだ。


「で。ねえ魔帝殿、当事者として、指導者として何も思いません?」


 例えこれを起こした人間が誰であろうが、魔帝以外であろうが。
 それをやったのは、間違いなくラガルデールのヴェルメイユを名乗っていた何某であるということに変わりはない。人間が、自分の目的の為に魔族を利用し、いざとなったら和平という手段を選んだと映る可能性を誰にも否定出来ない。
 大多数がそうではないと言っても。少数そうした悪意と憎悪は残る。
 そうした憎しみと痛みは世界に爪痕を遺し、必ずや報復を叫ぶのだ。

 ―――だから、ハザマはああ言ったのだ。
    ・・・・・・・・・・・・・・・
    指導者のおまえはもう詰んでいる、と。

 けらけらと変わらず笑いながら、大きく後ろに飛び退いて。
 ゴムか何かの要領で後方の壁に引っ掛けたウロボロスをバネにしようとする直前―――。


「つーか、もう言いますけど。隠す話じゃないし」
   ・
「その毒使ったの、ぶっちゃけ私です。あれ“覚えのない物質”とかって話になってるでしょ?
 流れに乗ってくれた方が居たようなので、だいぶ上手く行ったと思ったのですがね、ハハハッ」


 明かす必要のないことを、彼は躊躇うことなく明かした。
 嘘などではない。その躊躇いの無さは、嘘であるという可能性を極端に剥いだ。

 ………理由? それも決まっている。
    ハザマの行動の全ては、ある一点にだけ集約されている。


「ですが。私がやらないでも結局他の誰かがやったでしょう。
 人間憎しと叫んだ誰かが! 魔族憎しと乗り込んだ何者かが!
 撃たれた痛みを忘れることも出来ず、向き合うことも出来ない何者かが!」

「現にそうだ。王国で起きたこと―――魔族がやったことには私は何も関与していない。でも結果としてそうなりました。結果として、彼らは痛みを忘れることはありませんでした。
 さて、彼らに対して貴方達はどうケリを付ける気です?
 責任者で、“自分の理想のために”彼らを利用した支配者殿! 魔帝ヴェルメイユ!」


 その一点の為ならば。
 ハザマは誰から敵意を買おうが、誰から悪意を受けようが構わなかった。
 自己を確立させるその■■のために、彼は此処までの手を打って、此処までの流れに乗ったのだ。


 ―――魔帝ヴェルメイユの理想と願望を、徹底して踏み躙ることで。


 まずは深淵の間に所狭しと、雨のように降り注ぐ毒蛇《ウロボロス》の牙。
 脚を止めたギラードへ重点的に降り注ぎ。
 残る何割かは勇者と魔帝の二人を寸断するように落下し、地面に突き刺さる。
 その後に天井に仕掛けたウロボロスをバネ代わりにして、思い切り飛び掛かり。

 ………その瞬間に彼らの視界から、ハザマという男は消えた。
    緑黒の“揺らぎ”のみを幾つもの箇所に残して、彼は姿を消し、そして―――。


「ヒヒ、ハハハ、ハハハハハハァ―――ッ!」

    、   、 「『冥蛇』―――『月光牙』ァ!」


 まずは、勇者の背後から現れた。
 すれ違いざまの斬撃、首を刈る不意打ちの一閃。
 再び別の魔素の“揺らぎ”、空間跳躍の術式を刻んだポイントへと疾走して姿を消し。

 続いては魔帝の右側面から薙ぐように一閃、その後に引っ込んでまた転移。
 さらに魔帝の頭上から急降下して斬撃を放ち、足元に空いた“揺らぎ”に飛び込んで転移。
 余すことなく襲撃を掛けるハザマは、さらに魔帝の背後を食い破るように転移と共に斬撃。
 ヒットアンドアウェイの連続攻撃は、戦局が多人数に至った時点で見えていた行動だった。

 ………そして最後に勇者の真正面、絡め手を予測させておきながらの正面突破。
 手元で回転したバタフライナイフの斬撃が、彼女の立っている座標諸共周囲一帯を引き裂く。
 余計な防御など無用の長物。その場ごと斬り裂く刃だ、此処までの嬲るような長期攻撃への対処次第では十分に致命となるだろう。

 ―――何故勇者の方を本命として狙ったのかは、単純だ。
    殺すべきは魔帝であっても。
    彼女を揺さぶるならば、一度此方を狙った方がいいと思っただけ。


>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード、アンナローズ

7ヶ月前 No.847

閃剣 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【マロニス城/厨房/レーヴ・カストリス】

先程まで取り繕う暇すらもなかったガドンの口調が、最初に会った時と同じものに戻っている。つまり、彼……いや、彼女? に余裕が戻りつつあるということだろう。
これは悪い流れだ。レーヴとミコルナは、相手を視界の中心に捉え続けなくてはならないという制約がある以上、その戦い方が大幅に制限されることとなる。
恐らく二人でなければ、速攻で詰みとなっていた。頼もしい味方の存在があるからこそ、自分はこうして戦いを続けることが出来るし、足元を見れなくとも的確に攻撃を回避することが出来ている。
勝利を確信している敵を驚愕させる一撃を、渾身の力を持って解き放つ。しかし、それが敵の肉体を穿つことはなかった。撒き散らされる煙幕、響き渡るひどく耳障りな声。

「出来ることなら、二度と会いたくねえな、あんたとは」

捨て台詞に対してそう吐き捨てながら、レーヴは双剣を鞘へと収める。何はともあれ、厨房での戦闘にはこれで幕が下りた。……改めて見るとひでぇな、おい。
床にぶちまけられたシチュー、魔法によって焼け焦げたテーブル。戦闘が起こったという時点で責任を押し付けられる者は誰もいないだろうが、予想以上の惨状だ。
一部ミコルナの所為だということは……隠しておこう。それを報告したところで何もメリットはないし、何より彼女の機嫌を損ねる結果となりかねないからだ。
そうなった時に迷惑を被るのが自分である以上、レーヴはそうした。まあ敵の攻撃で吹っ飛んだとでも言い訳しておくか、バレなきゃいいが……などと考えていると、不意に首に衝撃が伝わる。

「おいおいよせって、結構痛ぇんだからな? ま、今日は勝ったし少しはこのままでもいいけどよ」

素直な気持ちを吐露しながらも、彼の顔に浮かんでいるのは笑顔だ。勝利したことに違いはなのだから、変にしんみりとした表情になる必要もないだろう。
……ふと、ミコルナの腕を見る。相当深い傷、というか貫通している。骨すらも砕けているのではないだろうか? この分だと、その内痛みで泣き叫びだすのは間違いない。
そうなってからだと、余計に面倒だ。故に……レーヴは「悪いな」と一言告げ、首に回された腕を解くと、厨房の鍋が置かれていた場所の近くを物色し始める。
やはりあった。こういう場所では怪我が付きものである以上、置いていないはずがないと思った。彼が手に持っているのは、救急箱。これで、簡単な処置をするつもりのようだ。

「ったく、あんまり無茶すんじゃねえぞ。お前はいいかも知れねえが、オレの気分が悪い。ま、こうでもしとけば大丈夫だろう。ほら、もう痛くないだろ?」

幸いにも彼女は魔族だ。人間とは身体の構造が違う以上、これほどの重傷であっても、痛みさえ和らげることが出来れば、その内快方へ向かっていくことだろう。
どういう状況であっても、共に戦った味方が負傷するというのは後味が悪いものだ。本人は何とも思っていないかも知れないが、レーヴ自身が納得出来ない。
まるで将来の婿であるかのように、優しく包帯を巻くレーヴ。彼としては一切そういった気持ちはないのだが、ミコルナがどう捉えるかなど、分かったものではないだろう。

>ミコルナ

7ヶ月前 No.848

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

【マロニス城/厨房/ミコルナ】


口では痛いなどとは言っているがその顔には笑顔が浮かぶレーヴ、嫌であれば嫌と言う彼がこのままでもいいと言う以上彼女は離れない。勿論、嫌だと言っても大人しく離れるほど素直でもない。
彼女は気まぐれで飽きっぽくて、多くの人々を惑わしながらふらふらとうろついていた。天性の弓の腕もあって魔族と言えども彼女は大よそからは好かれてはいたし、彼女もそれは心地よいと感じていた。
しかし魔族の社会が詰まらないと感じた彼女が変わり映えのない好かれ続けることを良しとし続けはしなかった、小さな町を転々としながら色々な人間が様々な形でその好意を寄せることは分かっていた。
だが彼女はその好意と呼べるものを知らなかった、すごい事をしたから褒められているとずっとそう思っていたのだ。魔族を追い返して、色々な人に甘えて見たりして、それがすごいから良くして貰えているのだと思っていた。
それが当たり前になり始めれば彼女はまた別の街へと移ろいゆく、そうして王都ロンカリアへと流れ着いたのだ。人が多く、魔族に対する緊張が高まっていたこともあった為、以前ほど早くは受け入れられはしなかった。
それでも時間の問題であっただろう、半年もすればきっと変わらずに周囲の人間を骨抜きにして、飽きてまた別の街へ。そうなる筈であったのだ、レーヴに出会う前は。彼女にとって凄い事をしても手放しに誉めないで、加えて何かを教える存在は初めてであった。
だから他の人間とは違うと次第に追うようになった、暇があればレーヴを訪ね、何かあればレーヴに教えて貰い、何かやらかせばレーヴにも怒られた。傭兵を始めたのもレーヴからその話を聞いたからだ、彼女の止まり木であり育みの場であったのがレーヴだ。
何も知らない彼女に人間の理を教え、何色でもない彼女に色を与え、善悪に収まらない彼女を善へと押し込めた。ただ、褒められるために力を振るっていた彼女ではなく、何のために振るうかを決断させたのもレーヴだろう。
だから、ミコルナと言う魔族の現在を構成する殆どはレーヴから齎されたものだ。依存とも違う、支配とも違う、彼女がレーヴに望んだから、レーヴもそれに答えているに過ぎない。言い表すならばパートナー、それが適切だろう。

「レーヴなら平気でしょ!それに、あたし飛べるくらい軽いしー!」

翼をぱたぱたと動かしながら彼女はレーヴの首を支点にふわりと浮き上がる、実際レーヴの首へと衝撃が加わるのは飛びついた瞬間だけである。それが痛いのだが、彼女は自信を軽いと思っているし丈夫なレーヴなら平気だと思っている。
レーヴの視線が右腕の傷へと移る、控えめに言っても重傷だ。この時代の医療で、彼女が人間であったならば間違いなく二度と動かぬほどの大怪我。魔族と若さゆえに相応の処置さえすれば、一年経つ頃には元通りでもおかしくはない。
悪いな、その言葉と共にレーヴは彼女の腕を優しく、傷に響かぬようそっと降ろす。骨を砕かれている以上気休め程度でしかないが、それでも彼女が大声を上げるほどの痛みは発しなかった。尤も、その顔は痛みを堪えているのだが。
厨房へと向かったレーヴが持ってきたのは救急箱、彼女の傷の処置にはやや不足かもしれないが何もしないよりはずっといいだろう。騎士故そう言った訓練も受けているのだろうか、手早く彼女の傷へと処置をしていく。
右腕は圧迫止血、傷口の消毒が主であった。救急箱では流石に砕けた骨をどうこうまでは難しいのだろう、塗り薬の痛み止めを患部に塗った時は彼女の瞳に涙が浮かんでいただろう。
左脚も同様、止血と消毒。貫通した以上魔族の治癒力に任せるほかはないだろう、しばらくは定期的な処置が必要になるだろう。痛み止めを塗布した綿や布を患部に当て、その上から包帯を巻いていく。優しく、これ以上痛みを発しないように巻かれていく。

「無茶はしてない!でもレーヴが嫌なら気を付けるね!まだ痛いけどレーヴがこうしてくれたなら、平気でしょ?」

彼女はあくまでも無茶をした自覚はない、でもレーヴが嫌だと言うのなら出来る限り気を付ける、多分。今日寝るまでは間違いなく覚えているだろう、それ以降は覚えているかもしれないし覚えていないかもしれない。
元々レーヴに駄目と言われたことは極力やらないし、気を付けるのだが嫌だと言われればそんなに重視しない。好奇心の塊がどうしても駄目ならば止まるかもしれないが、嫌程度で止まる訳がない。進んでやるとまではいかないが、無いのと同じだろう。
包帯を巻かれながら元気よく答えていく、傷の手当てがどういう意味を持つかすら彼女は知らないがレーヴが自分にやってくれて、痛くないと聞いてくるのならば痛くなくなるのだろう。今痛いのは、きっとその内レーヴがやっつけてくれる。
包帯を巻くレーヴを何気なく眺める彼女、何故か普段見ているレーヴとは違って見えてしまう。どこか親しみがある、何故か愛おしい、等そんな感情を幼い彼女が理解できるはずもなく、ただ胸の奥がきゅうっと締め付けられるような苦しさを覚えるだけ。
首を傾げながらその苦しさを正体を突き止めようとするも姐さんの攻撃を受けた覚えもなければ、怪我の痛みとはまた違うものだ、レーヴが痛くなくなると言ったのにまだ苦しいのだ。
分からない、困惑に混乱を重ねながら包帯を巻かれていない腕を薄い胸へと当ててみる。早い鼓動が胸を打つ、しかし彼女は普通の速度の鼓動を知らない。だから幾ら胸に手を押し当てようとその理由は分からず仕舞い。
分からないならばどうするのか、それは何時も通りレーヴに聞く以外の方法を彼女は知らない。包帯を巻き終わったその腕をそっと彼女の小さな手が包む、そのまま自身の胸へとレーヴの腕を導いていく。

「……えと、何かね、レーヴ見てたら苦しくて。レーヴが痛くないって言ったのに、ここだけ急に苦しくなって、あたし分かんなくて。教えて、……レーヴ。」

触り心地の良い生地、その奥へ隠れた柔らかな膨らみへレーヴの掌が沈み込む。未だ成長途中の双丘の奥からは痛い程鼓動を打ち鳴らす、彼女の苦しみの元凶があった。それをしっかりと教えて欲しいから、その手を取ったはずなのに。
鼓動はますます強くなるばかり、彼女は分からない。レーヴの腕を握って、胸へと押し当てているだけなのにどうしてこんなに苦しいのか、それなのにどうしてレーヴにもっと触れて欲しいと思うのか。
腕の痛みより、胸の苦しみの方が上回ってしまう。鼓動が止めどなく早くなる、胸に押し当てているレーヴの腕に力が入る。もっと奥まで触れて欲しい、この胸の苦しみを早く教えて欲しい、二つの欲望が混ざり合う。
肌は紅くなり、頬は紅潮する。動きは何処かぎこちなく、内股を擦り合わせていたり、尻尾は小刻みに揺れている。視線はレーヴの腕のみを見つめていて、その息は荒く、何らかの病気とも見て取れるかもしれない。
だが病気と言い表すことも出来るだろうが、その本質は違うだろう。少なくとも、レーヴが知らぬものではない。ミコルナは幼さゆえにその感情を知らず、整理が付けられない。
ふと、彼女が顔を上げる。小悪魔的な三白眼は涙で潤んでおり、何かを乞うかのように訴えかけていた。頬は朱く染まり、吐息は苦し気ながらも何処か艶がある。湿気で潤った唇は、ただ欲する名前を紡ぐ。

「―――レーヴ。」

ぐいっと、胸へと押し当てられていた腕が引き寄せられた、怪我をしているとは思えないほどの力。当然腕を引っ張られれば上体は彼女へと傾く、その隙を逃さぬように彼女もまた前へと身体を向かわせる。
レーヴの顔、その唇へと彼女は向かう。割れた窓から差し込んだ光、それに照らされていた人影は一つの接点を持って一つの影へと交わった。数時間に感じられるほどの数秒間、交わった影は小さい影から離れていく。
彼女は惚けた顔でレーヴと繋がっていた唇を指でなぞる、何故こうしたかなど分からない、ただこうしたかっただけ。この行為が意味するところは詳しくは知らない、ただ男女がそうしていたのを見たことがあるだけ。
トロンとした瞳、いつもの様な生意気そうな瞳はどうしようもなく熱を帯びたまま宙を見つめていた。不思議と胸の苦しみは薄れていき、お腹の辺りから温かく満ち足りたような感触を覚えていた。
レーヴの腕を片方の腕で愛おしそうに撫でる、何故かは分からない、元々レーヴはお気に入りであったはずだし、怪我をしたら嫌だとは思っていた。でもこんな温かい想いを抱いたのは初めてであった、また分からない事が出てしまった。
けれど、それを聞くよりも今はした行為を噛み締めていたかったのだろう。先程までの無邪気で元気な彼女は何処へやら、ただ火照った身体でレーヴを見つめる一人の少女しかこの場に居ない。

「……ちゅー、しちゃったね。」

行為の名前は分からなかった、キスだという気もしたし接吻何て言い方もあった気もする。でも彼女が言い表すならばこの言葉以上のものはないだろう、だってまだそれが何かすら分かっていないのだから。
小悪魔的な笑みではなく、ただ恥ずかしそうにもじもじと事実を確かめる様に小さく呟く。しちゃった、その言い方にどんな思いが込められているだろうか。一つ言えるのは、それは無垢な感情のままであったことくらいだろう。
色恋を知らぬ幼き魔族の娘に、その身をもって教えてあげよう。レーヴよ、彼女の気持ちにどう答える。

>>レーヴ・カストリス

7ヶ月前 No.849

退廃的世界論 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【大統領官邸/庭園/リコルヌ・エルヴェシウス】

極めて事務的で、面白みのない回答をしたのにも関わらず、それを聞いたストライフは上機嫌だ。年相応の反応なのかも知れないが、リコルヌはさして興味がなかった。
気にすることなく、彼女は仕事を続ける。警備システム関連は……あの自称天才ハッカーの少女に任せておくとしよう。信頼してよいものかは不明だが、少なくとも歴史是正機構に選ばれているという点では期待出来る。
そして、ストライフが絡んできた時は、大抵の場合話が長くなる。リスクを極端に嫌う彼女は、計画が破綻する可能性が僅かでも残ることをよしとしないからだ。
勿論、リコルヌがそこを考えていないはずがないのだが、彼女の場合はストライフとは異なり、多少のリスクはあっても高くなりすぎなければ、より利益の高い方を選ぶ性格をしている。
失敗しないという自信があるからこそなのだが、リスクリターンの基準が両者で全く違う以上、意見に多少の相違が出てくるのは、もはや仕方のないことであった。

「イルグナー氏に関しては、恐らく自分からは行動を起こす気概はありません。有事の際にどう動くかについては、監視が必要ですが。ショコラ氏、及びミシャール氏には一切の情報が伝わらないように手を打ってあります。彼女達にはこちらからアプローチを仕掛けるべきではありません」

バビロンはストライフの言う通り、まともな会話が成立しない時点でどうにもならない。イルグナーはというと、日和見主義だ。正義感はあるのだろうが、それを実行に移す気概はないと見る。
とはいえ、いざ問題が発生したとなったら、何をしでかすか分からない。リコルヌは彼女の存在が不利益となることを想定し、予め監視を送り込んである。
ショコラとミシャールに関しては、もはや近付くのを避けた方がよいレベルだ。思想が真っ向から反対の、汚職を嫌う者達。二人に計画を知られれば、即座に潰される危険性がある。
まあ、ショコラは味方の数からして、逆にこちらから圧殺することも不可能ではないのだが。ミシャールは仮にも地球軍の中将であるため、下手に手を出すべきではないだろう。

「時空防衛連盟は確実に歴史是正機構と衝突します。丞相はあちらの総統に対する秘策を考えていらっしゃるようですが」

詳しい内容は聞いても話してくれないので知らないが、ヘルガはユーフォリアを確実に無力化する方法を温めているようだ。だから、心配は無用であるはずだと、リコルヌはストライフに言う。
何を考えているかは察しがついている。歴史是正機構にはどういう因果関係か、ユーフォリア・インテグラーレの実の妹である、フォルトゥナ・インテグラーレが所属しているのだ。
どのように言い包めたのかはさておき、あれを足止めとして使うのは有効な戦術であると見る。悪には敏感な総統であっても、血縁とあっては即座に切り捨てることも出来ないだろう。
リコルヌの視点からすれば特に不満はないのだが、ストライフはそうではないらしい。戦いの最中で情が芽生え、計画が破綻する可能性を危惧しているようである。

「我々に今出来るのは、作成が失敗した際の保険を作ることまでです。それまでは、独断行動をするべきではないでしょう」

万が一に備えて保険を掛けておくことは賛成だが、それ以上は逆に計画を破綻させる行為となりかねない。管理社会を理想とする、リコルヌらしい考え方というべきか。
目的から外れた行動、言動が目立つようであれば、ストライフにも監視を付けなければならない。そんなことを考えながら、彼女は再び視線を膝の上に乗せられたノートパソコンへと戻す。

>ストライフ・ロスチャイルド

7ヶ月前 No.850

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/17代目葛葉 ライドウ】

「真名開放か、なるほど、サーヴァントというものはそういうものか、だがアレは……獣の方は恐らくだが覚えがある。
 人間を憎み切った白い狼、シートン動物記の『ロボ』ではないかと踏んでいる、今更分かった所で無意味だがな」

そもそもシートン動物記を読んだのは子供の頃だ、内容も朧気だが大筋の内容は「人間を苦しめた狼ロボが妻の死体を利用した罠にかかって殺された」というものだ。
もっと早く気が付いて白き獅子である仲魔のケルベロスを召喚していたならどうなっていたか分からない、むしろ激昂した可能性もある。
上に乗っていた騎手は結局分からず仕舞いだが、たらればの話をしてもしょうがない、蘇って襲ってくるわけでもなく完全に死んだのだ。
次にサーヴァントとの戦いがあった場合は参考にしておこう、宝具を使う際は真名開放せねばならず、その名からサーヴァント自身の名が想像できる、と。

「そろそろ動いても大丈夫だろう、これからどうする?」

ライドウの肩の傷は完全に癒えた、マグネタイトも通常分しか使用していないので予備の封魔管のマグネタイトは完全な形で残っている。
少し息も切れているがあと一分もせずに呼吸は整う、もう一戦やれと言われても充分に対応可能だ。
王都の中に入ってしまっている魔族もそろそろ討伐されていることだと思う、入り口である跳ね橋を塞いでいたのだ、増援がなければ各個撃破されるのは必定だ。
弾薬もある程度残っているが、さてどうするか。王都に残る魔族の残党狩りに参加してもいいのだが。恐らく無用だろう。

「俺は一先ず未来の本拠地へと戻る、我らの障害は魔族や時空是正機構などというふざけた連中だけではない、貴公も味方という名の害虫には気を付けた方がいい」

そう、時空防衛連盟も一枚岩ではないのだ、主に他所からの介入という名の妨害を受けていることも知っている。
その妨害によって足を引っ張られた挙句の敗北など考えただけでも嫌気が差す、未来の本部に戻ってけが人の治癒に勤めてもいい。
つらつらと考えていると一つ余計なことを思いついてしまった、邪魔者がいるならその弱みを握って揺さぶれないかということだ。
悪魔召喚を使っての隠密諜報活動はライドウの十八番でもある、元の世界でも霊的防御のある場所に潜入して汚職を暴いたことも多々ある。
まあ独断でそれを行うほど愚かではないのだが、指針が決まるまでは本部に居るのも悪くない、使った弾丸も補充しなければいけないしな。

>ランサー、アベリィ・シルバラード、ALL

【アベリィ様のレスがないので一先ず続きを投下させていただきます】

7ヶ月前 No.851

讐心名誉顧問 @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

【魔帝城/魔将軍の間/シャル・ド・ノブリージュ】

「……豚がミネルヴァに何を言う」

 一般に魔族は人類よりも優れた能力をもつとされている。その点において魔族は人間の上位種であると言えなくもない。実際のところ、銃士が述べたことに間違いはない。人間という種は悲しいほどに不完全なものだ。全能などとは程遠く、社会においては他社の手を借りねば生きていくことさえままならない。人の上に立つ者すら、自らの責務というものをろくに全うできていないのに……確かに魔族から見ればお笑いだろう。
 百も承知だ。人間は社会形成において欠陥だらけの生物。今更説かれるようなことではない。人間は愚かだが、だからといって魔族に劣るというわけではない。人間には生まれ持った尊厳がある。少なくとも、上位種を自称するだけの蛮族の愛玩動物となるつもりは全くない。
 片羽。下等。ぐうの音もでない。だが、魔族も人間と同等に愚かだ。人間とこのような争いに落ちている時点で魔族が上位の存在であると語る資格はないに等しい。とりわけ自らの欲望に突き動かされるだけならば獣にだってできる。無関係な多くの人間を殺めているぶん、あれはそれ以上に邪悪な存在だ。どうして人間を見下せよう。なけなしの魔力が漲る。敵を屠る準備はとっくにできている。
 銃士によって嗾けられた葛は大剣の叩きつけで起こした爆炎で処理。魔術師は炎の鞭によって対処。いずれも大きな損傷はない。爆炎と炎の鞭は葛を焼くに留まらず、奥の銃士へと牙を剥く。
 それにしても魔術師の援護能力には舌を巻く。こちらの動きを阻害せず、かつ的確に相手の動きを止める術を用いている。こちらの攻撃の穴も漏らさず埋めている。爆炎を弾丸によって止めるのはほぼ不可能。ならば相手がとる行動は回避か、もしくは先に見せた魔法壁による防御か。鞭はいずれの行動にも対応できる。魔術師の目論見は的中した。堅牢な魔法壁を潜り抜け、銃士に一撃入れることに成功する。既に他の部位にも鞭が巻き付き、身動きはとれない。後は爆炎が彼女の体を飲み込めば、勝負はつくだろう。
 シャルは半ば勝利を確信したが、それは油断にも等しい。今にも炎に飲み込まれんとする彼女の不敵な瞳を目にして、彼は勝利という認識を改めた。人間だろうが魔族だろうが勝利への執念は同等だ。彼女らが諦めない限り、こちらも全身全霊で潰しにかからねばならないのだ。
 銃士の咆哮。銃弾は……光。

「ぐぉっ……」

 爆炎さえ消し飛ばす膨大なエネルギーの光弾は彼の大剣による防御をいとも簡単に崩す。防御し損ねた体は吹っ飛び、瓦礫へと突っ込んだ。銃士は先ほどの光弾を一挺の拳銃から放った。然して彼女の銃は二挺。次弾は彼の体勢が整うよりも早く放たれた。その状況にあってなお彼は毅然とした面持ちを崩さない。

「オーバードライブ……此方も出し惜しみはせん」

 大剣のリミッターを外し、術式と機構をフル稼働。大剣が激しい金属音を立て、蒸気が立ち上る。攻撃に生じる反動は大きくなるが、それだけに火力は破格のものとなる諸刃の剣。ただでさえ相手の攻撃をまともに受けて余力の少ない状況、使えばどうなるかは想像に難くない。しかし、使わなかったとしてどうなるかも容易に想像できる。なれば使う以外に選択肢はあるまい。単純に使わねば負ける以外の理由があろうか。こんなところで負けてはいられない。
 彼が放つは先程と同じ要領の爆炎。それは過負荷によって限界まで強化された暴虐の炎。核にも匹敵する破壊の焔。深紅の灼熱は回避の余地もないほどに広がり、青い光弾もろとも銃士を焼き尽くさんと迫る。

>>フィラッサ、エスト

7ヶ月前 No.852

緋焔閃 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

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7ヶ月前 No.853

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

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7ヶ月前 No.854

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【大統領官邸/庭園⇒/ストライフ・ロスチャイルド】


「さっすが〜。渡っちゃいけないところと渡って良いトコは判断しないとね。
 世の中にはこういう時、外にまで聞こえて来る叫び声上げる野蛮なのがいるんだから」

「乙女は自衛出来なくっちゃねー。キャー襲われちゃうー☆」


 そう、あくまでも自分とリコルヌという人物は利害の合致だ。
 進む道が極端に似通い、恐らくだがそれは最後の最後まで逸れることはないだろうという見解にまで至っている。少数の支配者と多数の隷属者、奪うものと奪われるもの、利用するものとされるものの関係を世界に構築したいのは同じだ。
 ストライフは自分の悦楽のために。リコルヌは恐らく自分の理想のために。
 つまり違いがあるとしたら結局はそこなのだ。人間の思想ほど分からないものはなく、首輪を付けて飼えないジャンルはない。組織の腐る理由とは概ねそうした感情が複雑に絡み合って拗らせた結果であるとも言えるのだから………。

 その点において、イルグナーという女とフラナガンという男を彼女は安く買っていた。
 思想が想定の範囲で、行動も想定の範囲で、コントロールしようと思えばコントロール出来るものを、彼女は別に脅威とすら思わない。興味にさえも思わない。ライオンは食い殺す獲物に執着をしないし、人間は踏み潰した羽虫の顔をいちいち覚えない。

「(アッハッハッハ、だから分かってないなのよねリルちゃんったらさあ。
  人間は機械じゃないんだよ〜? 100%じゃないものは100%にしないといけないのに)」

「(まあいいや。そもそもの話、気付いてどうするって話だしね!)」

 さて。話を戻すが、つまりそれ以外の官僚と要注意人物は易々とコントロールできないのだ。
 そのミシャールとショコラこそ、いざ知った時に何をしでかすか分からない。
 触れないという選択は正解だが、この段階だからこそ始末しておきたいという気持ちは大いにあった。序でに言うと………そうでなかったとしても、この一件から意識を離させておきたいという感情は大いにあった。何より女だし。

 そこに加えて、彼女は殊の外、家族の情という言葉を心の底から買っている。
 ・・・・・・・・・・・
 一番目障りなものとして、だ。

 売り買いは出来ない、容易く心動かされる。インテグラーレの血縁が人間である限りは。
 ヒトとはそういう不完全な生き物で、ヒトがお互いを貶めるためにはその孔を突くのが肝要なりということを、恐らくストライフは目の前の彼女より理解していたわけだ。
 その上で一歩足りない。脚を止めてそれからどうするのかが絶望的に足りない。
 当人が満足でも此方としては困るのだ。早急にいなくなって欲しいものだから、そこを処理するための労力とリソースは惜しむべきものではなかった。なかったからこその、先の言葉である。
 だが、同時にストライフは病的なレベルのリスク嫌いだ。
 自分が露呈するような行動は取らない主義だ。
 であるに、此処では特に口を挟まない。挟む必要が無いと思ったのならば特にしない―――それが本人視点欠陥ありきだとしても、此処で止めることのリスクの方が高いと睨んだからだ。


「そうね〜。保険って大事よ? リルちゃん健康保険とか入ってる?  身体はひとつしかないから大事にしないとね―――あっそういう話ではない! ははーっ失礼しました〜」


  ―――何よりアタマが違っても、この女そっこそこ有能だし。
     なら、まあ、適度におだてておかないとね。目的が一致する限りは。

 柔和な表情、外見通りの愛くるしい顔の内側。
 誰にも悟られない底の底に、外見に似合わない老獪さを秘めて。


「おや! ノートパソコンに御執心、酷いわリルちゃん私とのことは遊びだったのね!
 ハイお後がよろしいようで。じゃあ私、そろそろ仕込みの方に戻るんで………」

「バァイ、リルちゃん♪」


 彼女は、最後まで仕事を続けようとするリコルヌに、抱きつくスキンシップを一度かまし。
 それからくるりと身を翻して、
 この上なく自分の少女体形を理解した歩き方で手を振って去って行った。

 ………ところで、別に彼女は計画の最中に何かをしようというわけではないのだ。
    家族の情は家族の情。足止めという意味なら実に良い駒だろう。

 最高だとも。全く問題はない。そこまでなら問題はない。
 邪魔をする気など微塵もわかない、どうぞ勝手にやって欲しい。
 だがその後が問題なのだ。であるに、リスクの分の保険は確りと積み立てておかねばならない。



 ◇ ◆ ◇



 しかし、だからと言って。
 リコルヌと別れた30分後、御誂え向きに仮名で貸し切ったあるホテルの一室にて。
 今日も今日とて政府官僚の一人と“おはなし”をするより前に。
 彼女が思い出したように、通話を寄越した相手は、というと………。



「―――あ、もしも〜し、バロさ〜ん! 私だよ私!
    私ったら私だよ! 私私私! ………あっ待って切らないで詐欺じゃないのゴメンて。アニメでもないのホントのことよ、だから切らないでお願いだから」

「耳寄りな話があるんだけど聞かない? ユリちゃんのことなんだけどさあ」

   、    、    、  リ ヴ ァ イ ア サ ン
 先程“論外”と断定したばかりの、世界を喰らう大災害。
 有り体に言って呼吸するミサイル発射装置である。



 ………そう、計画の邪魔はしない。だが保険というものが必要だろう。だって。

 ―――将棋やチェスで言うところの“詰み”に相手を嵌めるなら、
    とーぜんミサイルの一つは用意しないとね?



>リコルヌ(前半)、バビロン(後半/通話)


【短くなりましたがお相手ありがとうございました〜 此方の都合で切って申し訳ないm(._.)m】
【そしてお手すきと判断したので、よろしければ会話だけでもm(._.)m】

7ヶ月前 No.855

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

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7ヶ月前 No.856

人類昇華への道 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【歴史是正機構本部/丞相室/ヘルガ・アポザンスキー】

一瞬だけ戸惑いを見せながらも、フォルトゥナはこちらの指示に従った。当たり前だ、そうでなくては困る。何のために貴様を雇ったと思っているのだ。
そんな威圧感が漂っていたことも、彼女の決断に影響したのかも知れない。少なくとも、この回答がヘルガにとっては最良のものであったことは間違いないだろう。
貴様の価値はそれで、それが出来ないなら貴様に価値などない。ヘルガの目が、そう語り掛ける。政治犯の娘に出来ることは、同族が過ちを繰り返さぬよう、命を奪ってでも止めることだけだと。
これで、ユーフォリアの無力化は完了した。予期せぬ事態が発生する可能性もあるが、フォルトゥナの能力からして、確実に任務を遂行してくれる確率の方が高い。
仮に失敗した場合の挽回策も用意していないことはないが、それは今話すべきではないだろう。時計を見やるヘルガ。作戦の遂行時間が、刻一刻と迫りつつある。
そんな折にやって来たもう一人の来客、ヴァルガス・スターン。彼は歴史是正機構でも特に優れた"指揮官"であり、1000人規模の大部隊を任されるほどの人物だ。
では何故、高い能力を持ちながら、今まで戦線に出てこなかったのだろうか。その裏に、ヘルガの意志が絡んでいるのは間違いない。彼女はこれまでどういう訳か、頑なにヴァルガスらへ出撃許可を出さなかった。

「貴様を温存してきた理由、それは理解出来ているか?」

机に両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に当てながら、ヘルガは鋭い視線でヴァルガスを見つめる。そう、彼女が出撃許可を拒んできたのは、決して冷遇のためではない。
来るべき決戦の時に備えて、彼らが絶対に死ぬことがないよう、敢えて温存し続けてきたのである。確かに、古代や中世にヴァルガスの部隊を送り込めば、作戦の成功確率も上がっただろう。
だが、それで部隊に欠員が出たり、よもやヴァルガス本人が命を落としたりでもしたら困るのだ。時空防衛連盟は、侮ることの出来ない相手。勝利のためには、彼らが必要不可欠だ。

「行け。貴様ら課せられた使命を果たす時だ」

冷たいながらも、部下を鼓舞するような意図も感じられる言葉を放ち、ヘルガは椅子を回転させて後ろを向く。これ以上の会話は不要、という意志の現れだろう。
死の機動部隊が前線に出るとなれば、生半可な者達では太刀打ち出来ない。時空防衛連盟の精鋭達も、一定数を駆逐することが出来るだろう。上手く運べば、半数以上ということもあり得る。
敵が中世の時空振動の鎮圧で手を拱いている内に、着々と準備を進める歴史是正機構。彼らは未来へと帰還した直後、体制も整わぬ内に、これらと戦うことを強いられるのだ。
一つの作戦の失敗すらも、次なる作戦の成功の布石へと変えてしまうヘルガ。時空防衛連盟の面々は傷ついた身体で、彼女の策略に打ち勝つことは出来るのだろうか。

>ヴァルガス・スターン、(フォルトゥナ・インテグラーレ)

7ヶ月前 No.857

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【魔帝城/深淵の間/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 飛ばす光輝の刃が撃ち落とす毒蛇は一つ。掲げた意志そのままに歴史の流れに逆らい、魔帝を護り抜かんとするが、残る二つを撃ち落とせない。このままでは喰らい付かれてしまう、拒むべき未来の到来を予感してしまうが。それを打ち砕くは、氷魔像の放つ二連撃。毒蛇を弾き、撃ち落とし。次の反撃に備えるだけの余裕を彼は確保してみせる。

「勇者だからだ。例えどれ程の苦難が待ち受けていようとも、善き形で争いを終結出来るのならば、それに賭けるのは至極当然のこと」

 大気すら焼き焦がす魔帝の灼炎球。望むべき明日を掴み取るが為にも、斃さねばならぬ"共通の敵"に向けて放たれたそれは、地面を踏み鳴らす音と共に現出する蛇の牙が全てを受け止め、相殺する。続く氷魔像の突撃によって緑黒の防壁は打ち破られ、氷の三刃が振り下ろされるが、これも全て往なされた。空いた孔から殺到して行く毒蛇の牙が、彼の動きを封じ込めようと襲い掛かるのが窺える。

「……黙れ」

 その最中に紡がれる言葉、語られて行く事実。人類と魔族との戦争で起きた虐殺、略奪、差別、それらは想像が付くし当然の顛末だ。人は魔族に対して毒を使う卑劣な手段を講じた、それも十分有り得る話だ。王都では既に和平の為に堪えて来た者達は皆殺しに遭った、なるほど絶望的な状況だ。残された者達がお互いに向ける眼差し、それは無論"憎悪"だろう。

「人と魔族、互いに向ける憎悪は確かに深いさ。彼等の痛みを癒すには、途轍も無い時間を要するだろう――だが、それでも僕は正面から立ち向かう。
 傲慢だと、罵られようとも」

 神経を逆撫でする様に述べられていく言葉は効果覿面で、応じる言葉には怒気が宿るが。それに比例する形で、決意もまた昂りを見せる。難題に近しい事だが、必ずやり遂げて見せよう。お互いに負った傷を、向ける憎悪が和らぐその時まで、戦い抜こう。諦めなければ、理想は必ず掴めると信じている。だから、その為の第一歩として、お前を斃すのだ。

「我が声に応えよ、風よ」

 自らを目掛けて寸断すべく落下する無数の毒蛇を、呟く一声と共に刃より外へ向けて放出する風の刃で切り裂き破壊し。続く背後を狙った不意打ち、首を刎ねんとする斬撃を即座に振り返り、剣で受け止め。真正面、即ち現在の状況に於いて逆方向から迫る、座標諸共周囲一帯を切り裂く範囲の一撃を、急速に風を纏って真横へと跳躍し、回避。制御下に置く前に動作へと移った事が祟り、風によって脚を切り裂かれる事になるが、移動する分に支障はない。
 続く反撃として放つは、風の力を刃に収束させ、振り下ろすと共に引き起こす大暴風。怒涛の如くに攻め立てる風の奔流が、討つべき敵の全身を血祭りにあげるべくして、強襲を仕掛ける。

>ハザマ 魔帝ヴェルメイユ ギラード

7ヶ月前 No.858

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【魔帝城/無限廊下/サシャ】

激戦の果て、ニアは光の粒子へと姿を変え、風の中に霧散した。彼女が最後に残した言葉の真意を、サシャはまだ理解することが出来ない。だが、きっといずれ分かるんだろう。
出来れば、分かりたくないことではあるが、人間と関わるに連れて知ることになる。それでも、サシャは信じる。人間はニアが言っていたほど、悪い存在ではないことを。
たとえ醜かろうと、受け入れてみせる。それは人間だって魔族だって同じ。お互いにいいところも、悪いところもある。ならば、それを補い合っていけばいい話ではないか。
潔白を証明した、といっていいのかは分からないが、もうサシャを疑う者はいないだろう。これで、人間と共に、よりよき未来のために歩んでいくことが出来る。それを確信した彼女は、脱力しかけるが……

「ちょっと……レオン、レプティラ! 起きてよ! 寝てるだけだよね!? ねえ、聞いてるの!?」

疲れで寝ているだけ、そう信じたいのは山々だったのだが、サシャは先程の戦いで二人が自分を護るため、無数の剣撃によって傷付いてきた姿を目にしている。
だから、簡単にそうだと言い切ることはとても出来なかった。もしかしたら、死んでしまったのか。そんな気持ちが心の中に芽生えては、彼女は頭を振ってそれを払おうとする。
魔族の医師が治療を始める中でも、不安は晴れなかった。早く目を覚まして欲しい。いつもの何倍にも、一秒が長く感じる。祈るサシャ。無限廊下に複数の乱入者が現れたのは、その時だ。
思わず身構え、戦闘態勢を取る彼女であったが、集団の一人がレオンハルトの名前を叫んだことを聞いて、それを解いた。どうやら彼女達は、時空防衛連盟とやらの者達らしい。
シフォンの態度を見たサシャは、安堵を感じると共に、少しだけ悲しそうな表情をした。理由は自分でも分からなかったが、きっと"そういう"ことなのだろう。

「ううん、あたしは……護られてただけだから……」

感謝の言葉を述べられても、そうと返すことしか出来ない。自分が力になれたと言えるのは最後の一瞬だけであって、それ以外はずっと足を引っ張ってばかりであった。
二人が身を挺してくれなければ、とっくに自分は死んでいたことだろう。むしろ感謝しなくてはならないのは、こちらだ。故に、サシャはシフォンから感謝を受け取ることを拒否した。
そして、シフォンはどうにかして二人を安全な場所まで連れ出したいようだが……自分の力ではレオンハルトはどうにかなっても、レプティラを運ぶことは出来ない。
かといってここで治療を続けるのは、多大なるリスクを伴う。徐々に戦いは終息へ向かっているとはいえ、人間に対して敵意を持っている魔族も当然いるのだ。

「あなたは……分かった。あたしも頑張るから、手伝ってくれるかな」

丁度、物陰から姿を現した馬の亜人。直接の面識はない。魔帝軍の兵卒は大体種族ごとに固まっていることが多いというのも一因だが、それを差し引いても相当な数がいるため、横の繋がりはそこまで広くないのだ。
名前も知らない人物であるが、この状況を見て自分達に協力を申し出るくらいなのだから、まさかここで突然裏切って攻撃してくるなんていうことはないだろう。
サシャは、彼女のことを信じることにした。状況を打破するためには、一人でも多くの力が必要。数人で力を合わせれば、重いレプティラの身体も何とか運べるかも知れない。

>レオンハルト・ローゼンクランツ、常山蛇勢"レプティラ、シフォン・ヴァンディール
【お相手ありがとうございました。非常に楽しかったです!】

7ヶ月前 No.859

竜狩り @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

強い。ただこの一言で十分。魔剣士という規格外の狂将を語るには言葉が追い付かない。振りかざされた剣は天を衝き、突き立てられた剣先は地獄の底まで突き貫く。
防御は言わずもがな意味を成さず、返す刀も切り傷一つ付けることすら不可能。渾然一体、攻防の全てを掌握した幽鬼に隙など存在しない。あるのは背後から迫りくる死と眼前で狂笑する恐怖の権化。
定められた死と鮮血の終幕。非常な運命が挟み撃ちのように挑戦者たちを責め苛む。ただ刀で斬られるよりよっぽど痛く、闘争心や敵愾心といった一時の感情を糧に燃える炎は瞬く間に消えてしまう。
しかし何故だろうか、高嶺の如き敵に挑む龍と人間の面(おもて)に絶望の色はない。疼きを抑えきれず、火照りを治めること能わず、それらの解消を戦場という死が支配する修羅の場に求めている。
異常かもしれない。元よりこの一戦は完全な彼らの私闘。どう転ぼうと中世の明日をかけた駆け引きには微塵も影響せず、誰かが語り継ぐこともない。
だからこそ良いのかもしれない。王国の騎士である以前に、強さを求める一介の剣士。龍族の長である以前に、荒ぶる力を眠らせた若き闘士。何もおかしいことはない。

「こんな戦いが立て続けに起きるなんてな」

思わず心に浮かんだことが口を突いて出る。名家であるランドグリーズの技術を叩きこまれて育った彼女にとって、約束された死に自ら飛び込むような戦いは全くの未経験。
あくまで自らの使命、たった一つの存在意義として魔族を虐殺しながら、心のどこかでは燃える名勝負を求めていたのだろう。霞がかった嶺の頂に手を伸ばす。楽しい。感情が爆発する。いつまでも剣を振るっていたい。
その願いを初めて叶えたのが龍炎公。そして一度では満たされない魂に歯を立てるのが魔剣士。この出会いに限って偶然など有り得ない。アーケオルニは導かれた。運命によって誘われた。来るべくしてここへ来たのだ。

陽炎の如く揺れる難敵の姿は、彼女が有する他の追随を許さない能力によるものか。それともこの場を満たす熱気が視界を歪めたか。
繰り出されるはありとあらゆる部位を対象とした神速の剣技。都合四十八を数えるそれら全てが致死性を孕み、己が身を顧みないことの愚かしさを思いらせる。
標的を見定めた肉食獣さながらに迫りくる死を眼前にして、竜狩りがとった行動とは…なんと目を瞑ること。得物から手を放し、鎧はとうに脱ぎ棄て、最後に残った視界すらも自ら手放す。
正気を疑う選択。戦いを放棄し逃れられぬ運命に身を委ねたも同然だというのに、そこからのアーケオルニの動きは見違えるような軽やかさに満ちていた。
ひらりひらりと蝶が舞うような身のこなし。内に眠る野生は視覚など必要としない。ランドグリーズ家に伝わる戦闘技術、死線を潜り抜けてきたアーケオルニが培った洞察、そして若い娘の身体に宿るしなやかさ。
それらが溶け合い混じり合い、前後左右に聳える"死"という大山に大穴を空けた。後はそこへ飛び込むのみ。

「ッ…!」

とはいえ退路を断つために放たれた斬撃まで対処することはできない。ちょうどアーケオルニが下がったスペースを狙っての双剣閃、咄嗟に肘から先のない左腕を盾にして致命傷を免れる。
幾らこれ以上負傷するリスクのない部位とはいえ、相当な痛みと出血が待っている選択に迷いなく踏み切れるのは、それだけこの戦いにかける情熱が凄まじいということ。

身に余る猛攻は凌いだ。己が肉を切らせたのなら次は敵の骨を断つ。身を翻して魔剣士の頭上を飛び越え、回避のために手放した得物を再び握り締めると、緋焔閃に続いて反撃を開始する。
その様は一撃の破壊力に重きを置いていた先程までと一転、力量はそのままに圧倒的な速度と手数を手にしている。
してその攻撃手段とは、なんと巨刃を携えた身での跳躍からの前方回転。それも一度や二度ではない。魔大将の構えを突き崩した時のものを横回転から縦回転に切り替えたと言えば凄まじさが伝わるだろう。
着地までのわずかな時間に二十や三十はくだらない斬撃、その度に飛び散る炎熱。強敵との連戦が彼女の潜在能力を完全に開花させたのだろう。負傷を考慮しても万全の状態を遥かに凌ぐ戦闘力、これぞまさしく竜狩りのアーケオルニの神髄。

>>"緋焔閃"ヴァンレッド、魔剣士

7ヶ月前 No.860

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

【魔帝城/魔将軍の間/エスト(残魔具3762個 残魂数9)】


説得力など欠片もないのは彼女も承知の上、これまで前衛の男性の援護に徹していた以上捕縛は仕方がない事だと割り切った。言い方を変えてしまえば諦めたとも、あの少女の認識を変えるのはかなり骨が折れるだろう。
そも言い草からして人間を愛玩動物の一つ程度にしか思っていなさそうな少女、そこから判断するに愛玩動物の一つの嗜好程度としか思ってない。言葉が通じぬ畜生が只管に一つの行動を取っていれば、その意図が理解できぬ側からすれば好みと映っても仕方がない。
植物の種による銃撃は戯れであったのか、説明を態々入れるほど力を入れているのかとも思ったが容易く双方に破られようと飄々とした態度を崩すことはなかった。愉しんでいる、戦闘をそう捉えるものの考えは分からないと彼女は息を吐く。
さて、彼女の魔力操作と男性の爆炎の範囲の広さゆえか炎の鞭は少女の身体に確かな火傷を刻んでいく。魔法障壁での防御も対処が見当違いであったためかがら空きの胴を焼く匂いが広がる、声にならぬ絶叫を上げる少女の姿は決して気分が良いものではない。
その中で動きが変わった、腕を除いた部位に絡もうと気にもせず銃を構える。遊びはこれまで、苛立ちが募ったと言う理由で少女は死を宣告する。銃口から溢れる眩き光、絶大な光量を孕んだそれは引き金と共に男性へと向かう。
閃光、青白い巨大光弾は炎の鞭や爆炎、この部屋にある様々なものを飲み込みながら男性へと向かった。援護をしようにも今の今まで炎の鞭を操作していた以上、即座に魔術を紡ぐことは不可能。
幸いにして男性は大剣を盾にし、吹き飛ばされながらもその命は持ち得たままであった。次は己だろうと彼女は確信していた、持つ銃は二つ、片方を男性へ放ったのならばもう片方は此方へ放つ可能性が高いと。
無論、戦況の覆しを図るのであれば片方を確実に葬る方が良い、が少女はあくまで遊びの延長線上に殺害があるタイプだろう。ならば残る銃の狙う先は明白であった、彼女の指が記録書の頁をなぞる。

「うーん?そう簡単に死ねるものでもないのでな、それに人の趣味で生かされるのも好みではない。」

これまで使用した魔術と異なり、先の銃口に見えた極光にも劣らない眩い輝きを放つ頁。魔具を使用しながらの大型術式、相応の魔力を注ぎ込むことにより絶大な範囲と威力を誇る大魔法。前衛の男性が吹き飛ばされた今、使用しない手はない。
瞬間、光輝は反転する。黒より黒き深淵の闇、見るもの全てを深遠の果てへと導かん底なしの暗黒。彼女を中心として広がるその冥府の門、内から出でたるは正に闇そのものであった。漆黒の影が、宙に投影されたかのような巨大なそれ。
辛うじて人型であり、紅き瞳の様なものが確認出来るその黄泉への案内人。六つの瞳は迫る極光を疎ましく、それでいて喜ばしそうに見つめていた。光、その逆は闇であり影。光から隠れるものは光を嫌悪し、そして渇望する。
宙へと舞い踊った少女から放たれた青白き光弾、それを飲み込み、侵蝕するかのようにその漆黒は愛おしそうに抱える。その身が照らされ、焼かれようとも光を我が物にする為に影が光を喰らう。
それを傍目に彼女は記録書を開く、あの影は光を受け止めるだろうがそれだけでしかない。少女へと攻撃を与える以前に満足して門を閉じるのは分かり切っている、だからこそあれに気を取られている内に次を考えねばなるまい。
選ぶ頁は二つ、一つは身体強化、もう一つは限定転移。前者は言わずもがな彼女が尤も使用すると言って過言ではないもの、強固に強靭にそして剛力を得る。後者は転移の魔術を範囲を狭め、精度を上げたもの。
彼女が何をしようか、それを思い至るものも多かろう。しかし男性が限界を越え、爆炎を開放した以上それを行えば巻き込まれるのは違いない。水の魔術を用いて防護しようが意味を為さぬ火力、それを解き放っていた。
故に、瞬時の離脱が求められる。だがそんなもの魔術を極めた彼女にとって造作でもない、同魔術の時間差発動など頁にさえ一度触れれば操作など容易いものだ。だからこそ、これまでの戦闘で一歩も動かぬ彼女は動いた。

「盟友との約束があるのでな、命をくれてやる気もさらさらない。」

その言葉と共に彼女が現れたのは天井付近にいる少女の背後、不意打ちであれば言葉を発するのは下策であるが目的はそうではない。此方に意識を向け、男性の爆炎への対処を遅らせる、それがこの蹴撃の目的。
宙で回転と共に放つは踵落とし、劣化し続けた身体の重量故に致命には至らぬが、身体強化によって防御を取らずに済むほどの威力には収まってはいない。そして彼女の靴は特製の物、幾重に防護を掛けられたそれは生半可な反撃を打ち消すだろう。
踵落としを放った後、彼女の姿は突如消え失せる。限定転移の遅延発動、それにより先に居た場所に現れる。その頃には光弾を侵食しつくして満足した影が闇へと還っていた。
さて少女はどうなったのだろうか、灼熱が部屋を包み込む以上その姿を視認することは叶わない。だがこれでやられるような魔族ではないと、彼女は直感的に感じていた。

>>シャル・ド・ノブリージュ フィラッサ

7ヶ月前 No.861

ジジイ @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【歴史是正機構本部/丞相室/ヴァルガス・スターン】

机に両肘を立て、鋭い眼差しと抗い難い威圧感を以て訴えかける丞相、ヘルガ・アポザンスキー。その凍てついた鋼のような佇まいは、様々な時代からの来訪者や異なる生まれの者を惹きつけて離さないカリスマ性の具現。
古代と中世での敗北は全て未来での目標達成のための必要経費。投入する戦力や敗戦後の立ち回りも計算ずく。連盟は我々の後を追いかけ、外見上は完全な勝利を得てきたが、その裏では綿密な計画が進められていたというわけだ。
一人の軍人として慢心を禁忌と心得るヴァルガスですら、彼女の抜かりなさには底なし天井なしの称賛をおくる。見事網にかかった連盟が辿る運命など、想像に難くない。
当組織に属する者は皆、完全無欠の丞相に倣い、各自の為すべきことを一切の妥協なくやり遂げてきた。指導者ならば兵を鍛え上げ、参謀ならば数手先を読んで手を打ち。
現実は理想通りになどならないが、反面自分がしたようにはなる。何もしなければ万が一にも成功は見込めないが、力を尽くしたのならば多かれ少なかれ可能性が出てくる。
そして今はその可能性が限りなく膨れ上がる絶好のチャンス。虎視眈々と機会を伺ってきた丞相の思惑通り。自分たちは揺ぎない法則に則って使命を果たすのみ。

「必ずや勝利の報せを」

部下の意を汲み、満を持してヴァルガス及び麾下の部隊の出撃を許可するヘルガ。冷たいからこそ強く、重く、それでいて鋭利な一言。
喜びを覚えつつも使命感をより一層強くした老兵は、向けられた背中に深く一礼するとともに、彼女のはからいを無駄になどしないと心に誓う。
死の機動部隊は今この瞬間から連盟の脅威と化す。そして彼らの主戦力は未だ中世にて交戦中。これが何を意味するか、最早言うまでもあるまい。
練り上げられた策略が身を結ぶ瞬間。我ら歴史是正機構が描いた理想の実現。そして何より一人の軍人として最後の戦いに挑むことが許された幸せ。鋼鉄の軍人たるヴァルガスですら笑みを禁じ得ない。再びの深い礼と共に丞相室を後にした彼は、自らの手で鍛えてきた精兵達が待つ部屋へと急ぐのだった。

>>ヘルガ・アポザンスキー


【プロローグの絡みありがとうございました!】

7ヶ月前 No.862

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

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7ヶ月前 No.863

"混沌" @kyouzin ★XC6leNwSoH_7ig

【魔王城/魔将軍の間/フィラッサ】

「わーお……あれを耐えちゃうんだ、あははははっ! 凄い凄い!!」

アルティメット・カノン、それは"既知"の物であるフィラッサの大技の中でも最強クラスの魔弾だ、あらゆる防御を粉砕し、そして敵対者を確実に葬る大火力砲撃。
しかし、その攻撃は相手にトドメを刺すには至らなかった、片方は大きく吹っ飛ばされて瓦礫に突っ込んだが、そもそも、この攻撃を耐えるという事自体がフィラッサにとっては驚きに値するのだ、何せ彼女自身も「終わらせる」つもりでこの攻撃を選択した。
それでも、彼はまだ、大剣の機構を使ってさらに攻撃力を上昇させた状態でこちらに突っ込んでくる。

これを褒めずに何を褒めると言うのか、そして、何らかの召喚魔術を使ったのか、こちらの発射した極光を食らう暗黒を使って最小限の被害で抑えた魔術師の力量と判断力もまた、大した物である。
フィラッサは苛立ちが吹き飛んでいた、中途半端に自分を苛立たせるだけの実力はメンドウなだけだが、もしかしたら自分が殺されてしまうかもしれない、そんなスリリングな体験をさせてくれるならば大歓迎と言っても良い。
これはお遊びではない、戦いなのだ、久々だ、何代前の魔王とタイマンした時以来だろう? ほとんど暗殺で済ませてしまっていた事もあって、その記憶は遥か彼方。 とにかく実力、精神力共にここまで食い下がると言うのは何千年に一つか二つの人材と言っても良い。

――だからさ、文字通り奥の手を使っても問題ないよね?

「そんな君の命だから奪う価値があるのさ!!」

フィラッサがエストの言葉に対して叫ぶ。 絶対に生きる、果たすべき約束がある、それを奪うと言う事こそ、自分にとっての最高の娯楽なのだと。
こちらに向けられた踵落としに対して、フィラッサは魔法障壁は間に合わないと判断して、右腕を使って防御する……ばきりと骨が完全に粉砕されたような音が響くが、そんなことはお構いなしにエストの方に左腕で持っている銃口を……向けなかった。

彼女の並外れた経験量と戦闘スキルは、相手が直前に使った魔術の「系統」ぐらいは察する事が出来る、エストが先ほど使ったのが、空間魔術の類であり、そして、その転送先の座標がどのあたりであるか、そんな事はフィラッサにとっては把握は容易い、もっともそれは大雑把な物で、普段であるならば壊滅的な射撃の腕もあって役に立たない、だが、今だけは、確実に離脱できたと思っているエストに銃弾を叩き込む"不意打ち"となる。

爆炎が来る直前、フィラッサはエストの転送先となる『元の位置』に通常の弾丸を数発発射する。
……当然、そんな事をしていれば、爆炎に対処する余裕はなくなってしまう。

となれば……これは相打ち狙いで、爆炎を受けて死ぬ気だった、そう誰かが受け取っても無理は無い、しかし。

彼女の全身が炎で包まれる、誰もが終わりを確信しかねないその時。
――ゆらりと影が炎の中から立ち上がった。

「グッド、グッド。 最高だよ、最高ッッにクールでエキセントリックだよ人間。 まさか私が、魔帝以外に、奥の手を使って殺す相手が沸いてくるとは、今世紀はアタリだね、だって全力を使って殺せる相手が三人も居る!!」

その体は、火傷を通り越して、ほとんど死体となっているような状態だ、皮膚は焼け、ところどころ見える骨は黒ずみ、機械のような羽の装甲は溶けている。
だがそれでも、フィラッサは何時もの調子で笑う、いや。 本心から笑う。
その時、機械のような羽の装甲が完全に溶けて、地面に落ちた。 ……だが、そこから姿を現したのは、羽に相応しい骨でも、機械に相応しい歯車やエンジンでもなかった。

腕だ。

まるでテレビの砂嵐をそのまま腕の形に纏めたような、三本指の灰色の腕。 それが、機械羽と言う『装甲』あるいは『偽装』の下から無数に這い出てきたのだ。
それらは全て、今までフィラッサが狩ったであろう人間の武器が握られており、そして、よく見れば口も満足に動いていないフィラッサの代わりに「喋っている」のだ。

"自由と混沌の信奉者"。 それは偽りの名である事が晒される、これは混沌その物だ、理解できない姿を持ちながらも、気まぐれに『皮』を被って姿を現す真の化け物、魔族と言うカテゴリに入れるかも迷うような存在。

そして、それらの腕は、フィラッサが残った拳銃でもう一度アルティメット・カノンを発射したのを合図に、足の動かなくなったフィラッサの体から一斉に『伸びて』、刀や斧、槍や杖、あらゆる武器や魔法を持って、敵対者である二人に攻撃を仕掛けた。

>シャル・ド・ノブリージュ エスト


【次で退場させます!!】

7ヶ月前 No.864

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

【魔帝城/魔大将の間/魔剣士】


振るわれた四十八の致死の煌めき、龍は四つほどを手傷で済ませる、焔剣による相殺が間に合わぬ証明であった。だが魔剣士はそれを限界と見ない、常時の全力など命尽きる瀬戸際の抗いに比べるべくもない、故に未だ熟れる余地を残していることに歓喜する。
対する人間はまたも剣を放り、目を閉じた。脳が二人とまで錯覚する速度、それに視界は不要と判断したのか。退路を断つ剣筋から逃れられはしなかったが、既に無き左腕を盾にして凡そ目立った傷はなく突破する。龍の実力を評価するならば、人間はその柔軟さを認めるべきだろう。
悦、魔剣士の貌に浮かぶはその感情。笑みは深く、口角は吊り上がり続ける。蒼き瞳は熱を持つ、それもそのはずだ。選別を潜り抜け、この身へと刃を届かせようと万進する存在を見て愉しくない訳がない。勢い余って長剣を構えてしまうかもしれぬ程だ。

「好い、好いぞ。龍、人間、喰らうのが惜しい。惜しくて堪らぬ、ああだが熟れた時の甘美なる感触、それを逃すのもまた惜しい。」

龍の僅かな鮮血、人間の無き腕の代償。魔剣士を満たすに足りず、昂らせるに十分。剣を交えるたびに鋭さを増す存在、幾度も重ね続ければもしやとも思わせる気概が龍にあり、人間は隻腕の不足を補って余りある闘志を燃やしている。
そして何よりも、この戦を死地と定め退く気がないのが至上と言える。それは即ち、命が風前の灯火となろうとも再燃させ向かい来るという事。死んでも構わない、それでもまた好い。死しても討つ、尚好い。最上は、この首を落とされることであるが、流石に過多だろう。
血を流すとも止まらぬ勢い、それは即座に反撃に転じる事を意味していた。そうだ、怖れるな、死は何時でも隣にあるもの、迫った時に己が生を使い果たそうとも跳ね除けるもの。向かう事を選んだ時点で先にしか道はない、後に下がれば有象無象として斬り捨てよう。

「生を勝ち取るに進む以外の道はない、臆するな、怖れるな、貴様らはまだ生きていよう?一太刀?生温い、命の一つ程度奪って見せよ。貴様らと変わらず、私の命は一つしかない。」

奪い合いになっても構わない、そう言い迫る両名を笑顔と呼ぶには余りにも凶暴すぎる残忍さを称えた表情で迎え入れる。余剰の命を削り、文字通り命を薪にして迫る龍。大剣の欠点を容易く補った速度と手数を増した連撃、炎熱を放つ回転を惜しげもなく向けるは人間。
好い、何度でも魔剣士はそう称しよう。龍は生をこの一瞬の為に手放し、僅かでも迫る為に使っている。人間は熟れる兆候を僅かばかりだが出し始めている、隻腕であろうとも大剣に一切の鈍りが見えぬのもその証拠だろう。
三十六の緋閃、三十六の焔蛇。先の二十四閃を数でも威力でも上回る紅の煌めき、龍の身から溢れ出す大気を焼く灼熱の火炎。並の強者であれば百殺してもまだ殺したりぬ程の業、されどその内の一閃でも魔剣士の鎧一つ傷付けることは叶わない。
身を裂かんと振るわれた炎熱の剣戟、相対するは僅か三振り。長剣が描いた軌道は袈裟、薙ぎ、逆袈裟。袈裟で十八の剣戟を内包した剣気と共に打ち払い、薙ぎで迫る炎蛇の首を容易く別ち、逆袈裟で残る十八の剣戟を再び伴った剣気で払う。
続く人間の巨刃の連撃、再び剣と自身を別ったことで速度を得た回転。先の魔大将と言う名の存在を容易く崩した回転、それの力の方向を変え直接叩き込むとなれば威力のほどは語るべくもない。伴う炎熱と併せれば防ぐことが愚行であると断言できよう。
だがそれが愚行と呼ばれるのは得物が大きい上に、速度も併せ持った重撃であるからだ。凡そ定点攻撃と言えるそれは単純な対処で言うならば避けるだけでいい、着地した隙は得物から見ても大きい。そこを狙うのが所謂正攻法だろう。
しかし魔剣士は愚行ですら正攻法足りえる、連撃結構、炎熱結構、されど此方へ向かう物に剣で斬り伏せられぬものはない。振るわれた一閃、若しや空間を断ち切ったのかと錯覚するほどの圧を放ったそれは、迸る焔を消し飛ばし、振るわれた大剣を止めるに容易い。
またも防ぎ切った魔剣士、しかしその表情は防げた落胆ではなく、対処に必要な力量が増していることへ歓喜を覚えていた。長剣を振るえばそれに対し命を賭して対応し、此方へ切っ先を命へと届かせようとしてくる。これを喜ばずに居られるか。

「思わぬさ、限界など命の使い方で如何様にも変わるものだ。生きていれば、限界など存在せんよ。」

揺らめく魔剣士の姿、先に見せた分身に見紛う単純な速度で織り成される死の演舞。先と違うのは陽炎が集う様に姿を漸く捉えられた数が、二倍の四となっていることだろう。純粋に速度が二倍、そうとはいかぬ。それ以上の速さを以ってこの現象は起こっている。
速度で幻視させるだけであれば同じ軌道を高速で取り続けるだけでいい、だが魔剣士のそれは四つの姿が別の軌道を以って龍と人間へと迫る。重ねて言うが魔剣士はこの世に一人しかいない、例え時空を斬れるとしても強者を、例え自身とは言え他者と共有する訳がない。
龍へ向かった二つの魔剣士は上段と下段、人間へ向かった二つの魔剣士は左方と右方からその長剣を振るう。魔剣士が織り成す速度に比べれば遅い、だがそれでも先の龍の踏み込み程度の速度は十分にある。
魔剣士一人が放つ剣閃は七十二、四肢を断つ斬撃が三十六、首を別つ剣戟が十二、胴を裂く剣閃が十六、回避を許さぬ煌めきが六、そして百の剣気を秘めた一振り、締めに振るわれたのは見当違いな方向への一閃。
先の斬撃を優に超える数を放っておきながら要した時間は然程変わらず、その技量に未だ底が見えない。四つの姿が掻き消えたかと思えば魔剣士は一人へと戻る、此度は選別ではなくただこう振るいたく放った技、故に四肢の一つでも飛ぼうが構いはしない。
さて、一つばかり見当違いに放たれた一閃がある。あれの目的は何か、答えは斬撃を曲折させて飛ばしている。云わば腕試し、剣戟が振るわれた後に間を置いて背後から迫る剣気に対応できるかだ。容易く胴程度は断つつもりで振るってはいる、当たって無事などそれは攻撃ではない。
龍、人間、双方共にこの選別ではない魔剣士が放った最初の斬る意志で放ったそれを対処できるのだろうか。いや出来よう、何故なら生きているから。その命が失われてさえいなければ限界などない、一人百四十四の斬撃など容易く避けられる、背後から迫る剣気も問題など有るまい。
そうだとも、未だ死んでいなければ力量差などないに等しい。燃え尽きていなければ何度でも燃え盛ろう、敵の命を刈り取るまで止まらなければその手に魂は掴めよう。熟れよ、足掻けよ、進めよ、さすれば道は途切れない。
悦楽、快楽、愉悦、それらの果て。魔剣士は求め続ける、強者の血を、その最果てを。龍も人間も、素質は大いにある。この世に打倒せぬものなどない、全てが生きており、生きている限り死ぬのだから。
さあ、さあ、舞台は終幕へと向かいつつある。未だに傷一つ無き彼女、されど向かう二人の闘志は揺るがず、その意志折れぬ限り彼女へと届くでしょう!さあ満たしましょう!さあ染めましょう!彼女が目指す果て、それは意外と近くかもしれません!
その剣は、まだ血を求める。

>>"龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ

7ヶ月前 No.865

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【大統領官邸/???/ストライフ・ロスチャイルド】


「(………おっかな。物怖じもしないで、こっちの考えをピタリと当てて来たか)」
「(リヴァイアサンなんて良く言ったもんよね。“魔王”とかの方がお似合いだわ)」


 得体が知れない。
 通話越しの声色には一切出すことなく、ベッドの上で脚をじたばたさせながら、彼女は密かにそう思う。
 ………そう、“おっかない”だ。
 話をして、ただユーフォリアの話題だと言っただけであの声色。何を寄越して来るのか、何を考えているのか見透かすようなあの言動。全てが人間とは思えない―――最初の言葉尻だけで既に要件がなにか判断して来る辺り、洞察というわけではないだろう。
 これはそういう類ではない。そもそも自分の言葉になど、大半の部分は目を向けていない。聞いて、反応を示して、喜んで歯をむき出しにしたのはユーフォリア・インテグラーレに関する事柄“だけ”だ。冗談にも付き合いはしないこの精神性は、別に人の観察が巧いというわけではない。ただ単に自分に忠実なだけだ。

 何故なら、この男は狂っている。それも狂っているという指標が通じるタイプの狂人だ。
 自分の中で定められた一つのルールにだけ殉じる怪物。
 より言い方を小さくしてしまえば、大人になっても童心を忘れない………そんな男が、自分以外のすべてを好奇心で弄ぼうとする末路がこれだ。彼の目には最早、周りの人間など英雄か、英雄を引き立たせるための小道具か、程度の分別しか付けはするまい。

 そして、これはリコルヌには言わなかったが。
 ・・・
 だから取引相手としては最高の類だった。


「さっすがダン・マッケーニ=バビロン! 判断の速さに痺れちゃうね!
 あ、でも惚れたりとかはしないと思うからよろしく〜」


 手を組むのなら、自分と正反対の人種が望ましい。
 自分が芥のようなものとしか断じていないモノを、この上なく有難がる人間が良い。
 自分が喉から手が欲しい要素を、この上なく簡単に放り捨ててくれる人種が好ましい。
 そういう意味で―――そして、ダン・マッケーニ=バビロンの性質さえ理解していれば、レールを敷くことは容易かった。これはレールを敷かれることを自覚した上で、レールの通り方だけは好き放題にしていくタイプだ。そして、レールの中に煌めく英雄以外は目もくれず踏み潰して行く怪物だ。
 だから最終的に“何をしてくれるのか”さえ分かっていれば、要は災害を制御する行動と全く変わらない。その上で自分がそうしたカテゴリの中では“そそらない”ことなど重々承知である。


  ただ。手綱を取っている、と思い上がる行為自体が論外だ。
  あくまでも、災害を何処に誘導するかを考えるような気分で良い。
  一歩間違えればそれが自分の首を易々と“ついで”で跳ね飛ばす竜巻だと思えばいい。

  それさえ達成すれば、自分にとっては上々の結果が齎される。
  バビロンとは、ストライフにとってはそういうタイプの最高の怪物だ。


「ユリちゃんがさあ、大統領サマの次に始末されるらしいのよ。
 貴方が? 進む先を見たいって言って聞かなかった子。
 あ、覚えてる? そりゃ覚えてるよね! 立ち止まって灰になるまでは大事な英雄譚の主役だもんね〜」


 だから、ストライフか彼へとこう述べる。脚をぱたぱた動かして。
 ベッドの上で―――外の人間には、誰も見せたことのないような悪どい笑みを顔に張り付けて。


「その子が始末される計略が、詳細はさておき、これまた浪漫優先みたいなところでさぁ………」

「ユリちゃんの妹さんなんだってさ、手を下すの。
 ………どうなるか、気になんない? ユリちゃんが妹さんも薪木にするのか! 妹さんが手を下してもう何処までも止まれなくなるのか! 座標の方が必要ならその時にでも送らせるけど、どう? どうどう? ねえ、どう? バロさん的には面白いシチュだと思わなぁい?」


 その上で、自分が伝えることはただ一つだけだ。
 ユーフォリアが自分の妹と対峙して、殺し合いになるということ。
 それを彼女がどうやって乗り越えるのか、特等席で見物したくはないかという誘いだ。
 必要ならばそこに至るまでの経路と警備情報も伝える。ユーフォリアの行き先が何処かも流す。
 その上で、もう自分は此処から先に干渉する必要はない。件の計画が上手く行けば良し、そうでなくともこの男ならば、上手く行った直後にその光景を賞賛しながら滅茶苦茶にするなど造作もないだろう。


 ―――これだけでいい。
    これだけで、この男は自分にとっての最適解を計算して打ち出す。


 それが結果としてストライフにとっても喜ばしい事態になるというわけだ。
 ………リコルヌに言った評価は“人間としてバビロンを見た場合”であり。
 ………彼女にとってのバビロンとは、即ち歩く災害か伝染病の元凶のようなものなのである。


>バビロン(通話)

7ヶ月前 No.866

魔帝 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【魔帝城/深淵の間/魔帝ヴェルメイユ】

和平を選んだ先にある険しい道のりは、理解している。大多数の人間は、これをすぐに受け入れようとはしないだろう。何せ、魔族はこれまで多くの命を奪ってきた、忌むべき存在なのだから。
同様のことは、魔族の視点からもいえる。戦いを優勢に進めていたとはいえ、被害を零にするというのは不可能。人間に同胞を殺された者も、少なからず存在する。
しかし、そんなことは百も承知だ。これは、誰かがやらねばならぬこと。先駆者がいなければ、道が開かれることはない。自分は魔族の命運を背負う者として、それを目指す義務がある。
敵の策略に乗ることなく、あくまで冷静に振る舞うヴェルメイユ。だが、続くハザマの言葉は、そんな彼女ですらも激情へ導くには、十分すぎる代物であった。

「……今、なんと言った?」

先刻、敵方によって兵舎に正体不明の毒がばら撒かれ、多くの兵卒が体調不良を訴えているという報告は、当然軍を率いる立場である魔帝の耳にも届いている。
海底洞窟より続く水源に毒を盛られたという見方が強いが、不明な点が一つ。その使われた毒が、中世においては全く未知の物質であったということである。
恐らく、未来から持ち込まれたものだろうという認識がなされていたのだが、今しがたその犯人が判明した。ハザマが、自らの仕業であることを暴露したのだ。
どのような形であれ、多くの味方の命を奪い去った怨敵。彼がやらなくとも誰かがやっていた? それは関係ない。実際にそれを行ったのは、このハザマだ。
理想のため、ラガルデール復興のために魔族を利用しようとしていたことは、否定出来ない。まとめ役を欲していたチェルとは、不思議なくらいに利害が一致していた。
積極的に人間を殺そうとせず、可能な限り開戦を遅らせ、前線に立つのを拒んできたのもそれが理由。しかし、今のヴェルメイユは違う。彼女は自らの意志で王として、魔族の全てを背負う覚悟を決めたのだ。

「……お前が……お前がやったのかぁぁぁ!!!!」

絶叫と共に、迫り来る蛇を打ち砕きながら急接近を果たすヴェルメイユ。その瞳に宿るのは、憎しみの色。絶対に許す訳にはいかない。彼だけは、何としてでも殺す。
それが、死んでいった魔族達への弔いだ。これまで見せることのなかった、真の魔力を解き放つヴェルメイユ。風の刃が荒れ狂う中に、先に見通せない闇が広がる。
やがて闇はまるで意志を持ってハザマに襲い掛かるように蠢き始める。周囲に迸る魔力の奔流は、その攻撃の威力がどれほどのものであるかを物語っていた。
暗黒の中に引きずり込まれようものなら、二度と戻ってこれないのは確実。そうこうしている間にも、闇からは無数の手足のような物体が伸び、彼を奈落へ引きずり落とそうとする。

>ハザマ、アンナローズ・フォン・ホーエンハイム、氷魔像ギラード

7ヶ月前 No.867

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

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7ヶ月前 No.868

北方守護騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【魔帝城/深淵の間/氷魔像ギラード】

"お前は勇者なのに"。 ……なるほど、お前は魔帝に対しても同じような事を言うのだろうな。
ギラードは内心そう毒づいた、あぁ間違いない、こいつは。

「お前は同じ人間を『正史の役職』でしか人を見れぬ傾向にある、お前たちが望まぬ歴史を歩み、勇者や魔帝がお前たちにとって都合の良い筋書きから外れたのも、元を辿ればお前たちの干渉が原因だろうに……」

正史ではこうした、だが今は違う、こいつらはそのような括りでしか過去の人間を見ていない。 自分たちが撒いた種によって、人間たちに起きた心境の変化など無視して、ただ同じ道を辿らせる事だけを重視する、そのためならば煽りはする、非道も辞さない。
もはや、奴らの語る「勇者」とこちらの「アンナローズ」は、別人にも等しい変化があると言うのに、奴は「正史の勇者」と言う名前を使いたがっている。 おそらく、正史と今ここに居る者が別人に近い、そんな事は向こうも承知の上だろう、その上で、正史では何が起きたかという事実を使って、嗤っている。

まさか、こんな物がロンカ村を守ったとは信じ難い、だが、こういう手合いを受け入れたというのは、事実であろう。 そして、奴は傍観者、つまり、責任が介在しない立場から、こちらには責任を押し付ける、傍観者と言う名前は便利な物だ。

攻撃がバタフライナイフによって往なされ、置き土産ばかりにあの蛇のような武器を飛ばして、相手は離脱する。 あくまでもこちらにとって有利な接近戦はさせない腹積もりらしい。
蛇が、ギラードの体に突き刺さる。 わざわざ引き抜くほどの隙は晒せない。 ならばとギラードは自分の一部を通常の氷水へと『戻して』体の一部ごと相手の武器を体の中から取り出した。 当然それは、文字通り身を削るような行為だ。
だが、ギラードは疲労を表に出さない。

「――ッ。 それでも、と、歩み続けるのが人間だ。 お互いが虐殺をした、和解が出来ない、そんな単純な図式の上にこの世界があるのならば、古代の、いや、もっと前にこの種は滅んでいる!!」

ほとんどはハザマの言う通りだ、彼の言う事は、ある種感動を覚えるほどに正論ばかり。
魔族に殺された者も居て、人間に殺された者も居る、その数はとても数えられる物でもなく、殺した者への恨みを持つ者の数など、それこそ、今ここで魔帝と勇者が手を取り合った所で、またもう一度戦争を引き起こせるほどに膨大だ。

だが、それでも、アンナローズのような"だが、それでも僕は正面から立ち向かう"と語り、実行できるような、真に勇気ある者……『勇者』が居たから、人間は何度も殺しあっても、ここまで生き残ってきた。 今更魔族との大戦争で未来永劫憎しみ合うほど脆くはない。
きっと、途方も無い時間が掛かるだろう。
だが、今この時代では、第一人種や第二人種と言う括りが無くなっている、お互いに何人殺したか分からないと言うのに。
だから、ギラードは人を信じる。 仮に未来が如何なる物であるかと説かれても。

この戦いを激化させるために毒を撒いた事を聞けば、魔帝が激昂する、ハザマの攻撃が往なされたのは良いが、これでは。

「落ち着けプーリッシュ。 奴の言う事は残念ながら事実でもある、どうせ誰かがやった事なのだ。 ……お前が理想ではなく、復讐に目を向けてどうする、先ほど勇者と交わした会話は虚言か!? ――お前が記憶している、その事実が大事なのだ。 思うなとは言わん、だが復讐以外に、何が最も手向けとなり得るかを熟考しろ。 戦いが終わった後にな」

お前が復讐を選ぶなら、多くの者もまた、人間に対する怒りを選んでしまう。

そして、戦闘に目を向ければ、このとき、ギラードは好機を感じていた、大規模な攻撃が二つ同時に放たれる。
本来であれば、自分もブリザードなどの広域攻撃で支援するのが常道、だが、相手の認識の中に、"離れた位置に居るギラードがリスクを負って接近戦を仕掛けてくる訳が無い"と言うものが少しでもあるならば……付け込む隙はそこにある。

瞬時にギラードは無数の吹雪となり、まるで「ただ支援するため吹雪を引き起こした」ようにハザマに近づく、おそらく、二つの大技を前に、ギラードが消えた事を察知し、この吹雪が"それ"と気づくのは、よほどの観察眼と冷静さが無ければ不可能だ。

一撃を加えれば、それで良い。 後は、二人が上手くやるだろう。 ギラードの思考はいつだって同じ、自分は、人間のための捨石だ、自分にとっての創造者すら使役する勇者が味方ならば、なおさらだ。

暴風と闇の中で、アイスソードではなく、巨大な一本の氷の刀を持ったギラードが、ハザマの死角から出現する。
当然、二人の攻撃は、敵味方の区別を付ける物ではない、当然ギラードは、回避も捨てて全ての攻撃を受けることになる。

だが、振るうは、相手の首を両断できずとも、僅かな傷を付けただけでも、そこから冷気が流れ込み、まるで体を一瞬で腐らせるウィルスのように、相手の体を凍りつかせ、それなりのダメージを与えるような武装だ。
トドメを刺せるとは思っていない、だが、自分一つで、この者のペースを崩せるなら、安い物だ。

絶対零度の刀がハザマに向かって振るわれる、その直後に、ギラードは己の存在を維持できなくなったのか、あるいは回避なのか分からないように吹雪へと姿を変えて飛散した。 だが、無敵に思えるその吹雪のような状態であっても、一部が風に煽られ消滅し、闇に飲まれ消えた事を見るに……どう見てもノーリスクな離脱方法ではないのは誰の目にも明らかだった。

>魔帝ヴェルメイユ ハザマ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム

7ヶ月前 No.869

閃剣 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【マロニス城/厨房/レーヴ・カストリス】

確かにミコルナの言う通り、彼女は軽いので、首に飛びつかれたところでそれほどダメージがある訳ではない。それでも、痛いものは痛いので、出来ればやめて欲しいのだが、そうもいかないだろう。
一先ず、傷の手当はこれで大丈夫、といったところか。無理に動かしたりなどしなければ、一年経たない内に治癒するだろう。魔族の身体能力の高さが成せる技だ。
あくまで無茶はしていないと言い張るミコルナだが、普段の態度からして信用ならないというのが正直なところだ。だが、あまり追求するのもよくないし、そういうことにしておこう。
勿論、行き過ぎた真似はして欲しくないと思っているし、それはしっかりと注意しなくてはならない。まだ幼いミコルナには、これから学ばなければならないことが沢山あるのだ。

「ん? っておい! ……大丈夫か? 風邪でもひいたか?」

いきなり彼女はレーヴの手を掴み、胸元へと持っていく。何事かと驚き、思わず狼狽えるレーヴ。その手に伝わってくる鼓動は確かに早く、ミコルナは苦しそうだ。
風邪でもひいたのだろうか、と一瞬考えるが、先程まであれほど元気に動き回っていた時点でその可能性は低い。そもそも、魔族に風邪という概念はあるのだろうか。
取り敢えず、この状況をどう切り抜けるべきか。大の大人が(見た目は)少女の胸を触っているという絵面は非常によろしくないし、もし誰かに見られでもしたら言い訳が出来なくなる。
目のやり場に困り、ミコルナの顔を見つめるが、挙動不審という表現が正しい。まるで何かを恥じらっているかのようだが、失礼ながら彼女がそんな状態に陥ったのは初めてである。
遂には、特徴的な三白眼が涙で潤み始めた。こいつは本当に体調が悪そうだ。今なら詰所も空いているだろうし、しばらくの間そこで休ませておくしかないだろう。
決断を下したレーヴは早速、彼女を詰所へ連れて行こうとするが、そこで事件は起きた。突如として引き寄せられた腕。何が起きたのかを確認する間もなく、唇に伝わってくる感触。
視界を覆い尽くすのは、ミコルナの顔。これは大変だ、夢でも見ているのか? いや、あんな状況で寝れるほど図太くはない。つまりこれは現実、いやこんなことが起きてたまるか。
ミコルナの苦しみが晴れていくのとは対象的に、レーヴは混乱していた。何とか冷静に、冷静に。落ち着くように自分に言い聞かせながら、彼女の様子をもう一度窺い……そこで、ようやく気付くことが出来た。

「……ああ。そうだな。お前の気持ち、確かに受け取ったぜ」

そうとだけ言って、レーヴはいつもと同じように笑い、そして手を差し出す。しかし、とんでもないことになったものだと思うが、満更でもない自分がそこにはいた。
彼女が"そのつもり"であるなら、それを拒む理由はない。いずれ、連れ添う相手を決めなければならないと思っていたし、それがミコルナであるのならば何も不満はない。
レーヴは、彼女の気持ちを受け止めた。あとは、ミコルナ次第。この手が繋がれたその時こそ、長きに渡る歴史で初めて、人間と魔族が結ばれる瞬間である。

>ミコルナ

※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
7ヶ月前 No.870

緋焔閃 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

 撒き散らされる僅かな鮮血。着実に死への一歩をこの足は踏み出していると云うのに、火照った心の中で滾る情動は溢れんばかりで。生を掴み取らんとする渇望は強まり、手繰り寄せるが為の一手に対する躊躇を遍く消し飛ばす。例えこの生命が風前の灯火となろうとも、明日を生きる事さえ叶うのであれば、如何に危険極まる術を講じようとして。故に、手始めに解き放つは第一の切り札、龍が持つ強大なりし力の源たる焔の結晶、極限の速度を以てその歯車を回転させ、壊れる事さえ厭わずに膨大な灼炎を生成する。

「生温い、生温いか! 良い、良い。ならばその命に終止符をくれてやる! 宣言する、宣言するとも!」

 煌く三十六の緋閃。殺戮の為に培って来た技術を遺憾なく発揮し、無数の刃の応酬として放つ怒涛の連撃に重ね合わすは、我が身より溢れ出る輝かしき三十六の焔蛇。生ある者を灰燼へ帰させる、煉獄の如し炎熱を孕みし、焔王の御業。魔帝との死闘ですら露見させなかった真の死力を以て、挑み臨むは最強にして最凶の魔剣士。時代に巣食う規格外の怪物へと、"勝利"を刻むが為に揮うた奥義。
 されど、まだ通じぬ。相対する三振り、内包された数多の剣気が焔の剣戟を全てを打ち払い、煉獄の焔蛇の総てもまた容易く別たれた。強者と呼ばれる者ですら、一殺はおろか百殺ですら殺し足りぬ程に殺戮出来ると断言できる技が、通用しない。何という不条理、ああ然しそれを恐れる心は既に殺してしまった。恐怖の代わりに芽生えるのは無謀、ただ無謀に等しい勇気と闘志だけ。殺すか殺されるか、どちらかの結末を迎えるまで止まらない。止められない。

「フ、ハハハ、ハハハハハハハハハ―――――――!」

 狂気に満ちた高笑い。遂に龍はご乱心になられた、とでも云わんばかりの姿を曝け出しながらも。然し、王だとか魔将軍だとか、そう言った仮面を取っ払った彼の本性とは正しくこれなのだ。暴虐なる兄にしてこの弟あり。王道を歩む宿命を定められなかった"もしも"があったとしたのならば、間違いなく彼もまた完全なる戦狂いへと身を窶した事だろう。血に飢えた餓狼として、生暖かき鮮血を浴びるが為に剣を揮う異常者として、君臨した筈だ。

「まだだァッ!」

 限界などまだ訪れていない。そう、生きている限り、越えられぬ壁など存在しないのだ。諦めない限り、必ずそれは超越出来る物と信じている。百四十四の剣閃、なるほど確かに恐ろしい物だ。だが、突破出来ぬと決定付けられた訳ではない。その気があるのならば、例え一以下の確率であったとしても掴み取って見せよう。
 故に迸れ、紅き剣閃。十数の剣気を伴いて、この無数の一閃よ、炸裂しろ。三十六と三十六、越えるに能う。十二と十二、問題無用。十六と十六、それがどうした。六と六、退けた。迫る百の剣気を伴う一斬、極限まで昂らせる究極の一斬、四十三の剣気をもって八十六の剣気を殺し。残る十四の剣気、我が身を血の赤に染めて受け止める。血飛沫を舞わせながら、背後から迫る剣気を一閃で受け止め耐え抜き。

「喰らえや我が魂、獰猛たる残滓よ――!」

 引くは第二の切り札。鎧に埋め込まれた、紫の結晶体に焔を灯し、引き起こすは龍心晶同士の共鳴。紅焔と紫焔が合わさった刹那、瞬間的ながら爆発的な力を発露して見せて。応酬として放つは七十二の紅閃、七十二の紫焔。灼熱の連閃も、猛毒の灼炎も、見せるは更なる昂りを。そして最後に放つは正面から攻め立てる神速一閃、五十三の剣気を内包した一撃。全てを切り裂き破壊するべくして、猛襲を駆けるは凶暴なる魂の持ち主――

>魔剣士 アーケオルニ

7ヶ月前 No.871

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

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7ヶ月前 No.872

竜狩り @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

糸くずのようになった左腕は勝利への投資。生存の対価。明日へひた走る列車の切符。今まさに竜狩りは暴走機関車と化している。自らの命をスコップで豪快に掬い上げ、惜しみなく火の中に放り込む。ブレーキなどとうの昔に破壊されてしまった。
生を求めて命を投げ出すとはなんとも矛盾めいた行為だが、修羅に身を置くものにとっては何もおかしなことではない。気取った言い方をすれば『背水の陣』『死中に活を求める』と言ったところか。
非日常は人間の普段見せない顔を、背後に迫る死は身体の奥底に眠る力を、否応なしに引きずり出してしまう。死神に骨ばった腕で抱きしめられたとき、誰もが赤ん坊のように感情を剥き出しにし、ケダモノのように理性を吹き飛ばす。
そう――この場に集いし誰もが、赤子の如く無垢で、獣の如く自由。戦いが潮目を迎え、争いを核としない新たな時代が拓けようという中で、なおも剣に生きる者達。
屠った獲物の血しぶき。その温もりに自らの生を見出す。閃く刃に映る我が身。鏡には映らない真の姿。竜狩りの黒光りする巨剣は、身に余る力に己が身を焦がしながらも、天を睨んで翼を広げる竜を映していた。
あの日、彼女が討ち損じた龍族によって刻まれた傷。竜狩りの英雄を竜へと変える呪い。誰がこのような展開を予想できただろうか。難敵との連戦によって力を引き出されたアーケオルニは、内に宿る竜すらも喰らおうとしているのだ。
自分を飲み込もうとする力を逆に飲み下す。呪いによって宿されたそれこそが、竜狩りが最後に仕留めた竜となる。

「いってぇじゃねえか…でも最高だ!」

迫りくる魔剣士、その数は先程の倍に当たる四。加えて攻撃枚数と速度は倍どころでは済まされず、剣閃を数えれば百を優に超える。四肢や胴を狙う斬撃はもちろん、退路に刃を突き立てる剣煌も先程の比にならない。
魔族である緋焔閃の身すら切り裂くそれらは、人の身には重すぎる超火力。一閃でもまともに受ければ間違いなく死に至る。その事実を重々承知の竜狩り、当然対抗策はある。
再びの瞑想。この度は視覚を捨てた回避のためではない。瞬く間に高められていくは火炎と暗黒のエネルギー。竜の咆哮と聞き紛う雄叫びと共に、力の濁流が魔大将の間の一切合切を押し流していく。
百を超える斬撃も例外ではない。果ては魔剣士すらも攻撃の対象。これまで剣技の補助程度にしか魔法を用いたことがなかったというのに、力の覚醒が原因で規格外の進化を遂げている。

続く背後からの剣気だけは荒波を乗り越え、鎧を纏わない無防備な背中に肉薄。そして命中。しかし鮮血は伴わず、響く音も肉を切った時のそれとは明らかに違う、鋭く聴覚を痺れさせるような金属音。
扱いの荒さもここまでくると天晴れ、なんとアーケオルニは騎士の命たる剣を盾にした。背に腹は代えられないとはよく言ったものだが、敵の一撃一撃が致死性を孕んでいるとなれば、得物に背は代えられない。
とはいえ魔剣士の底知れない技量から繰り出された斬撃の威力は凄まじく、この破れかぶれの防御はあくまで死という一要素を取り払ったに過ぎない。
確かにその衝撃は分厚い鋼鉄を貫通して竜狩りへと伝わり、吐血と骨折を引き起こす。亀裂が走った哀れな巨剣は、もうあと数分の実用にも耐えられないだろう。
いくら覚醒したといっても矮小な人間の身。鎧を脱ぎ捨て、命をすり減らし、挙句武器まで失おうとしているアーケオルニは、誇張一切抜きの崖っぷち。
転落した先にあるのは川などではない。鋭利な尖端をみせる岩肌。あちらこちらに見える裂け目には溶岩流が覗いている。眼前には餓えた虎が迫り、手繰り寄せる蔦もない。

生きる術はただ一つ。虎を切り伏せるのみ。

「絶ッ!ドラゴンスレイヤァァァァァッ!」

咆哮、そして一閃。魔帝城を二分しようかという熾烈さを秘めた絶技こそ、龍炎公に一矢報いた『ドラゴンスレイヤー』の極限進化。重撃を主とする竜狩りの太刀筋にどこまでも忠実な一撃。
火炎と暗黒を纏う巨剣は、赤一色の終末の空に聳える摩天楼が如く。押し寄せる破壊の大津波は、百はおろか千、いや万に届こうかという斬撃を一つに束ねたといって良い凄まじさ。
この場の全てが彼女を高めている。共闘する緋焔閃はもちろん、命を喰らい合う相手である魔剣士も成長の糧としている。彼女の言葉を借りるなら、やっと"熟れて"きたのだろう。

敵の力が底知れないのなら、こちらの伸びしろも同じこと。

>>"緋焔閃"ヴァンレッド、魔剣士

7ヶ月前 No.873

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

【魔帝城/魔大将の間/魔剣士】


百を越え、強者へと迫る数多の斬撃。龍は僅かな剣気を除き全て相殺しきっていた、身を鮮血に染めながらも自らも剣気を伴った一閃で迫る百四十四を耐え凌いだ。人間は僅かな瞑想と共に大魔法と呼ぶに相応しい力の奔流を発揮する、襲い掛かる数多の斬撃を吹き飛ばし魔剣士にまでその余波は迫る。
だが魔剣士は避けようとも、防ごうとはしなかった。ただ、嗤っていた。そうだとも、先の剣閃は振りたくて振るった命を狙った殺す為の剣。それを龍は身を血に染めながらも耐え抜き、未だ歩みを止めはしない。人間は魔法など使う素振りなど見せていなかった、それをこれだけの出力で発揮している。
迫る火炎と暗黒、それが魔剣士を包むも苦痛の声など響くはずもない。轟轟と音を立てて、魔力を燃やしているその中から聞こえるは高らかな笑い声。悦楽だ、愉悦だ、快感だ。この上なく昂ぶり続ける魔剣士は気が狂ったかのように嗤い始める。正常ではないのか?その通り、これで正常だ。
腕が横へと動いた、ただそれだけで身を包む黒炎はその存在を保てずに消滅した。その場の魔剣士は何も変わらない、魔力による熱を受けようとその鎧には血以外の物は浮かばず、その肌が焼け焦げた跡もない。ただ、嗤い続ける幽鬼が立っているだけであった。

「好い!ああ、好いぞ!確かに喰らうつもりで放っていた、それを生き延びるとはな!そのままこの命まで、奪って見せよ!」

その命に終止符を、そう宣言した龍の言葉。それも魔剣士をここまで昂らせた原因の一つ、命を燃やし尽くすほど追い縋るその姿、まさに喰らうに値する強者がそう宣言したのだ。もしやと思うてもいいだろう、期待してもいいだろう、この首が落とされるのを望むことの何がおかしい。
龍の鮮血、それだけでは最早足りぬ。龍全てを喰らいて、人間も喰らわねば足りぬ、さらに熟れねばまだ足りぬ、命果てるまで抗い続けなければ到底満たされぬ。ここまでの飢えともなれば最早夢心地、いや飢えとはまた違うか。言うなれば更なる強者との邂逅、それを望んでいる。
龍は更にその魂を燃やし、人間は得物が崩壊間近であろうとも剣を構える。好い、未だ折れぬ、未だ抗う、その生を全て使い切らんと言う思い、それこそが最も好き強者。だからこそ、その血を浴び、臓物を撒かねばならぬ。それこそが、戦場を彷徨う幽鬼の本懐。
紅き焔、紫の焔。二色の焔が合わされば、龍はまた一つ命を燃やし高みへと昇り詰める。先までとは全てが比べ物にならぬ力、狂気を孕む笑い声をあげながらもそれが龍の本性であるならば、この暴虐的な力もまた龍の本来の力であるだろう。
灼熱の業火、深淵の暗黒。得物の真価を発揮せしめん為に研ぎ澄まされた純粋な破壊の権化、凡百な斬撃など万を束ねようとも及ばぬ一つの極み。この魔帝城ですら両断して見せる気概を窺い知れる、威力もまたそれが誇張でないことを示している。
その双撃、片や七十二の紅と七十二の紫、そして究極の一閃。片や天地を砕かんとする重撃。嘗て争った相手にも拘らず、いやそれ故か意図せずして最善の好機に魔剣士へと襲い掛かっていた。だからこそ、そこに紅が咲いた。
漆黒の重鎧、右肩口から脇腹にかけて両断された金属の狭間からは朱きそれが漏れ出している。舞う金糸、紅き斑点が付着する。裂かれた魔剣士の長髪の一部、そして顔には左目を塗り潰すかのように赤が広がっていた。
龍の七十二の紅閃、そして七十二の紫焔。それを十振りで叩き落した、伴う剣気は一振りに三十六。先の迎撃よりも二回り以上数を増したそれが龍の力量を物語っているだろう。だがこれではまだ魔剣士には届かない、はずであった。
神速の一閃、これ自体は容易く対応できていた。だからこそ、同じ一閃を魔剣士も放っていた。だがここで魔剣士の想定を龍が上回っていた、伴う剣気を五十とした。本来であれば龍のそれが五十三であっても打ち消せるはずであった、だが並んでいた。龍と魔剣士の剣気はこの時点では、並んだのだ。
故に残る三の剣気、魔剣士へと迫り来るは道理。だがそれを黙って受けるほどであれば何処かの戦場で斃れ伏していたであろう、だからこそ咄嗟に放った一閃は剣気を払った。だが、ここでも龍は想定を上回っていた。長剣と剣気が触れる瞬間、一つが跳ね上がった。
断ち切れぬ、ただの剣気が逸らしたとはいえ剣に打ち勝った。魔剣士の貌に浮かぶ赤の縦線、大きく裂けたそれは纏う死の瘴気など容易く貫いた剣気によるものであった。であれば胴の傷は?簡単である、それに歓喜した故に人間のそれを視界から外していた。
迫る大剣に驚愕した様子もなく長剣を宛がう、それで弾いて終わる筈であった、だが人間も熟れていた。容易く魔剣士の想像を超えたその重撃は長剣の防御など弾き返した、であればその大剣は胴を断たんと振り下ろされるが道理。決して浅くはない傷をつけた。
だが魔剣士に驚愕はない、あるのは純粋な歓喜だけ。鈍い音を立てながら胴を守っていた鎧が剥がれ落ちる、これまで死闘を繰り広げていた人物には思えぬ小柄な容姿、痛ましさすら覚える一糸纏わぬ姿には大きな朱が描かれていた。

「ヴァンレッド、アーケオルニ、だったか。好い、好い。だが、少し足りんかったな。まだ、生きているぞ?」

血に塗れた姿でもその威圧は衰えることなく、むしろ増大するばかり。負った傷など気にも留めずに、負わせた者の名を呼んだ。その名を魔剣士は忘れることはない、自身の命を奪うと宣言し、傷を負わせた者として。
しかし、まだ生きている。片眼がつぶれようと、胴を裂かれようと、まだ呼吸をしている、まだ身体は動く、まだ剣は振れる。ならば止まる理由にはなるまい、それにここまで熟れていたのならば喰らわねば損だ。
だからこそ、これまで片手で振り続けていた長剣を両手で構える。長剣を床に水平になる様に、例えるならば居合のようにその長剣を構えた。ただ、それだけ。それだけで周囲の音は掻き消える、光も掻き消える。

「―――ならば、終わりなどではあるまい。」

黒塗りの世界、存在するは龍と人間と魔剣士のみ。その様な錯覚を覚えさせるほど、その構えはあらゆるものを切り離していた。音も、光も、風も、香りも、置き去りにする。感知できるのは強者だけ、それ以外は何も感じない、そのような空間を幻視させる。
魔剣士の長剣が僅かに動いた、ただそれだけ。それが既に振るわれた後の物だとどうして気付けようか、あらゆるものを斬り伏せたその一閃がどうして認知できようか。振るわれた長剣はたった一振り、龍と人間の胴を別つ為に放たれた。
その一閃は見えない、視覚すらも断ち斬っているから。その一閃は聞こえない、聴覚すらも断ち斬っているから。その一閃は感じない、感覚すらも断ち斬っているから。小細工など何もない、あらゆるものを斬っているだけ。
これが両手で長剣を振るわなかった理由、ただ斬るだけであればこのように不要なものまで斬る必要はないから。では何故今振るったのか、龍と人間がこれを振るおうと凌いでみせると理解できたからだ。
理解した上で、その命を散らすために振るった。抗い、足掻き、その命が尽きぬよう命を燃やし尽くしてこの一閃を凌いで見せよ。さすれば至高の甘美となろう、ならば後で喰らうても許されよう。今喰らい尽くすには、惜しい。残して、また味わいに来る。そう思ってしまった。
さあ、舞台は既に終幕です。差し詰めこれは閉幕の一撃とでもしましょう、これでどうあろうともこの舞台は終演。龍も、人間も、彼女も、平等に紅に染めたこの舞台。さあさあ、最後の一幕を全員生きて迎えられるのか。それとも最後に喰らい尽くされてしまうのか、どうぞお楽しみください。
その剣は、まだ血を求める。

>>"龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ


【次で撤退を想定しています。】

7ヶ月前 No.874

北極星の魔銃師 @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

【ディンカ/小屋/ラシアナ】

 この男がどういう目的を持っているかは知れないが、態度からして自分を倒しに来たことだけは間違いない。この場にいることかも察せるが、組織内において重要なポジションに就いているようには見えない。そうであれば本城を守っていておかしくないからだ。自分と同じ、異世界からの尖兵といったところだろう。戦闘を避けるのも一つの手かもしれないが、そうしたところで別の誰かがこれを相手にしなければならなくなるだけだ。倒せばよい。彼らをあるべき場所へと還してやるだけだ。
 青年が構えたリボルバーの撃鉄が響き、魔力の銃弾が男の眉間を狙い進む。銃弾がその本願を果たすことはない。男は銃弾を見切り身を翻し、すかさず反撃に転じた。彼の言う通り、扱う得物が同じという青年の懸念は解消されるのは確かだ。男が用いたのは青年が扱うことのない武器。剣。近距離戦においてよく見られるような片手剣ではない。独特の機構を備えた……バルブを装着した剣だ。男がバルブを回せば、それに応じて刀身は冷気を帯びる。青年の、バルブを利用して刀身に様々な性質を付加させるのだろうという推測と、男が放った銃弾の回避は殆ど同時だ。
 あの男がそうしたように、こちらに対して撃たれた銃弾を回避するのはそう難しくない。銃弾に何か特殊な効果が付与されているわけでもない。だが、恐らくあの剣と同じ……銃にも何らかのギミックはあるものと考えた方がいいだろう。銃と剣の同時攻撃――なるほど心配はいらない、か。

「そうだね、剣……それは父さんの武器だ。ボクのじゃない」

 銃と剣。遠距離と近距離の両方に対応した、互いが互いの得意な距離を補い合う無難な装備だ。どちらもこれまで見たことのない形をしている。この世界でも発見ばかりだ。自分と違う世界の武器なのだから、その仕組みも違っていて当たり前だとは思うけれども、実物を目にしてみればそれは楽しいものだ。だからこそ僕は距離をとる。僕がもつ武器の花を開かせるために。人とは異なる力を使うために。

「ボクの武器は……これだ!」

 放たれた弾丸を回避、そして同時に剣の一撃も飛び退いて回避。着地と同時に抱く違和感。どうやら剣に帯びた冷気は予想以上の範囲でもって僕の足を蝕んだらしい。凍える両足からあっという間に触覚が失われていく。それは置いておいてもいい。問題はこの後どうやってあの男に攻撃するかだ。僕の銃は一挺だけじゃない。彼の武器が銃と剣なら僕は銃と銃。二挺拳銃。彼のと比べれば確かに近距離戦における対応力には劣る。しかしそれだけ遠距離戦における制圧力は剣のそれとは段違いだ。
 銃が増えれば弾丸の数も二倍。今度はただの弾じゃない。着弾と同時に爆発を生じる炸裂弾だ。魔力の弾ならリロードいらず、連射もお手の物。断続的に火を吹く双銃は、無数の爆発で以て男を迎える。当たればただでは済まないのはもちろん、わずか地面へ逸れた弾も充分な威力だ。生き残れるか。

>>ナイトローグ

7ヶ月前 No.875

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【お待たせいたしました。第四章に合わせて移動させていただきます、絡みありがとうございました!】

【王都ロンカリア/城壁・(跳ね橋)/ランサー】

「ほう。人を憎みきったねえ」
 赤い目が冷たく光る。
 どうりで殺し方が執念深いわけだとランサーは思う。
 人を挽肉になるまで殺した理由はあったのかと、狼王達が消失した場所に視線を落とす。
 あれだけの憎みきりよう、恐らくは分かち合えない存在だったのだろう。
 友と息子を殺され、仕えていた王の復讐に挑んだフェグルス・マックロイのように袂はとうに分かれていたか。
 それにしてもおかしい、確かロボは英霊の座には登録されていない筈だが、裏技染みたものまではランサーの専門外なのでこれ以上考えないようにした。
 険しい表情で思い馳せていると、これからどうすると聞かれてランサーはライドウに視線を向け直す。
「そうさね。オレは大将達に呼び出されるまで、跳ね橋の警護を続けるし、この橋を降ろさねえとアイツみたいなのが攻め込まれて来たらひとたまりもねえだろう」
 乗り掛かった船だとそうはっきりと答えると、ライドウが政治的な敵がいるという暗示を含んだ台詞を聞いて、首を傾げて気が抜けた口調で答える。
「悪りい、まどろっこしいのは好かねえがそういう連中は、わざわざオレが首突っ込まなくても連中から尻尾出すだろう」
 朱槍を肩に担ぎ両腕を掛けてくるりとライドウに背を向けて、手のひらをひらひらと動かす。
「連中が尻尾出した時が、オレの仕事だ」
 裏切者を用心深く探るだけ、器用に生きていないランサーはきっぱりと裏切者に対しての方針を告げると跳ね橋を降ろしに青い髪をなびかせて塔の中へと静かに向かった。
>17代目葛葉ライドウ ヘシアン・ロボ アベリィ・シルバラード

7ヶ月前 No.876

メンヘラ @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_Ao2

【王都ロンカリア/飯店/ラヴィ】

みんなが怖がることをもうしない代わりに友達になってくれると話すイアン。至近距離で見つめあったことによって彼女はきっとまた腹をすかせているだろうが、それを感じさせることなくきっとした態度で話している。ラヴィはそれを見て、少なくとも他の人間たちとは違うところに興味を抱いた。自分の能力にこれだけの時間あてられていても狂わない人物を見たことがなかったからだ。

「ででで、でも私……結構要求激しいですよぉ? 本当に大丈夫ですかぁ?」

先ほどから説明している通り、ラヴィはちょっとした時間構ってあげないだけですぐにアピールを始める。多くの人間はこれに耐えることができず、自ら命を絶ってきた。それを知っているからこそ、彼女はほんの少しだけ本気で心配そうにそう言う。いくらイアンが能力の影響を受けにくい体質だったとしても、お腹は減っているのだから、大食いになって生活が苦しくなったりしないだろうか。

そんなラヴィの心配をよそにイアンは友達についての説明をしていたが、途中で言葉が浮かんでこなくなったのか諦めて、右手を差し出してきた。突然のことに、ラヴィがビクッとなって一歩だけ後ずさる。彼女は自分から誰かに取り入ろうとするのは日常茶飯事だったが、誰かから手を差し伸べられるということは、今まで一度もなかったのだ。

「に、逃げたら怖いですよぉ……?」

おどおどして体を震わせながらも、ラヴィはイアンの手を取る。相手から求められるという経験がはじめてで、怖気づいているのかもしれない。脅しのような言葉をかけるが、その声は震えていた。相手のことも考えるというのは、すぐには難しいことだ。ラヴィは配慮というものを知らないため、それはこれから学んでいくことになる。しかし、本当の友達になってくれると聞いたのははじめてだからか、少しだけ今までの人間たちとの関係とは違うことも感じていた。

>>イアン

【本当に遅くなりました……】

7ヶ月前 No.877

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【歴史是正機構本部→/牢屋→/Cluster E装備】

人工の声帯による鼻歌が牢屋内に響く、何時もと姿を変えている、ここから何時も誰かを連れ出しては消し去ってしまう機械は、今日に限っては、誰一人として牢屋から出そうとはしなかった。
ただ、自分の管轄である少女や少年の牢屋の前のロックに細工を施していただけであった。
ザーシャという例外こそ居たが、多くの者にとってクラスターに連れて行かれると言う事はどういうことか、と言うのはよほど幼いか、精神が崩壊していなければ理解できる事であり、恐怖の対象である。
だが、ここにくれば必ず子供を一人連れて行った彼は、今日に限っては、誰も連れて行かなかった。

むしろ。

「諸君、聞け。 僕は新たな可能性をこの目で見てきた。 最高のマキナヒューマンの開発方法を! 僕が今までやってきた研究は間違っていた、こんな狭い場所に閉じ込めて、ただ機械の身体を与えるだけでは、良い物が作れるはずが無かったんだ! だから、今宣言しよう」

クラスターは最初こそ威厳ある喋り方であったが、すぐに興奮を隠し切れない様子を表に出し始めて、自分が今までやってきたことは間違っていたと語る。
だが、それは間違っても懺悔の言葉ではない、最初からザーシャを見ただけで、人の扱いを改めるほど、彼の人間は出来ていない。

全てはヘルガ様のために、全てはマキナヒューマンと言う構想を否定した世界政府の復讐のために。
それこそがクラスターの思考回路、もちろんこの場の誰も、謝罪の言葉になんて期待はしていなかっただろうし、それ以上に、新たな実験方法に変更する、なんていいだしそうなクラスターに対して、今度は何人死ぬことになるかと恐怖を抱く者が大半であった。

しかし、クラスターの語った言葉は、その全ての予想を裏切る物だった。

「時限ロック解除装置を作動した! 戦いが終わったとき、君たちは自由の身になるだろう! 何故か? そんな事は簡単だ、それが最も優れた手段だと確信したからだ!!」

そんな言葉の後、クラスターはさらに興奮を強めて、自惚れるように自身の顔に手をやって語り続ける。

「なぜこんな手段に僕は気づかなかったんだろう。 世界政府によって手を加えられ、酷い生活になった者が、戦いが終わって、ヘルガ様の統治が実現する頃合に世に知られ、そして、数日が経ったとき、自動で放たれる時限ウィルスによって、僕の作った機械化や精神破壊の治療法は世界に蔓延する! 世界政府は、僕の研究を必死に吸い上げた君たちと言う成果を、一日してこのクラスターの手によって、そう、一度は切り捨てた僕の手によって駄目にされるんだ、こんなに素晴らしい復讐は無い、はははははははっ!!」

クラスターは狂笑を浮かべる。 ここの者たちを作るために、世界政府の連中はどれだけの予算を投じたのだろう、どれだけの時間を掛けたのだろう?
だが、それらは全て、ヘルガ様が勝った後の世界に、ネガティブキャンペーンとして放たれ、成果であろう精神破壊や生体兵器化の試みも、このクラスターが放ったウィルスによって治療可能にされてしまうのだ。

あぁ、なんと素晴らしい、そして、ザーシャのように自由な環境で育った者は、きっと自分の期待に応える物になるに違いない。
特に最高傑作だろうSKYなど、どうなってしまうのか? 逃してしまったが、REDもどうなるか。 治療しても副作用が消えるだけで、戦闘能力は残るはずだ、その上で自由な環境による育成、あぁ、なんと、なんと素晴らしいのだろうかッ!!

ひとしきり叫んだ後、クラスターは満足したように、手を振って牢屋を立ち去った。

「さあ! 僕の作品を放つに相応しい世界を作るとしよう。 メガニア爆撃機の準備をしろ、世界政府の愚図どもを焼き払ってやる……!!」

>ALL

7ヶ月前 No.878

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【やや時系列が前後しますが、第四章の開始をこれ以上遅らせる訳にもいきませんので、ユーフォリアは未来に帰還させます。
 未来の時系列は、中世の戦闘が全て終了した後のものとして行動して下さると助かります】

【マロニス城/ホール/城前→時空防衛連盟本部/総統室/ユーフォリア・インテグラーレ】

結論から言えば、ユーフォリア達は戦いに勝利した。それも、犠牲を払うことなく、だ。三人の一糸乱れぬ連携、かつての友人を信じることに決めた総統の覚悟、彼女の想いに行動で応えた旧友、従姉の力となることを望んだ従弟の尽力。
その内のどれか一つでも欠けることがあれば、此度の結果を得ることは出来なかっただろう。まさしく、総力戦。全ての力を出し切ったが故の結末が、そこにはあったのだ。
地面に膝を付いたまま、肩で息をするユーフォリア。相当な体力を消耗してしまい、今すぐに動けるかどうかも怪しい状態であるが、歴史改変を阻止するためであればこの程度の痛み、どうということはない。
彼女はあくまで限界まで自分を追い込んではいないつもりだが、周囲には当然、そうとは思わない人間もいる。ヴァイスハイトもその一人で、彼はそれが心配だからこそここへ駆け付けたといっても過言ではない。

「私は大丈夫。それよりも、貴方は?」

明らかに辛いことを隠しているかのような様子であっても、ユーフォリアは毅然と振る舞う。痛みなど感じていないかのように立ち上がるが、直後に一度吐血した。
無論、何事もなかったかのように口を拭い、端末を開いて状況確認を始めたのだが。未来に残っているオペレーター達と、回線を繋ぐ。中世全体の状況は、果たしてどうなっているのか。
確認を取ったところ、少なくとも中世の時空振動は収まっており、これ以上時空防衛連盟が干渉を続ける理由はなさそうだ。更に聞くところによると、未来で小さな問題が生じているらしい。
詳細はまだ掴めていないそうだが、世界政府と歴史是正機構内において、不穏な動きが目撃されているとのこと。両組織の関連性は不明だが、汚職によって歴史是正機構と癒着している官僚が数人いることは知っている。
もしや、時空防衛連盟構成員の大半が留守となっているこの瞬間を狙って、次なる作戦のための準備を進めているのだろうか? だとすれば、今すぐにでも未来へ帰還し、直接組織の指揮を取る必要がある。

『時空防衛連盟の全職員に告ぐ。西暦7000年……私達の住む時代にて、問題が発生したわ。中世に展開中の人員は、付近の安全を確保し次第、早急に帰還して対応に当たってちょうだい。本部に留まっている人員は、いつ戦闘が起きても問題がないよう、準備を整えておくこと』

ユーフォリアは専用の回線から時空防衛連盟全体にそう呼び掛けた後、隣に立つダグラスとヴァイスハイトを見やり、言葉こそ発しなかったが、目線でメッセージを送る。
歴史是正機構との激しい戦いを、一人で乗り切ることは出来ない。たとえ次なる舞台がどこになろうとも、二人の力は必要だ。彼女は仲間の存在というものを、何よりも重要視している。
身体を襲う浮遊感。時間遡行特有の感覚だ。先程のメッセージが伝わっていたならば、ユーフォリアに続く形で、彼らも未来世界に姿を現すことだろう。
重力が足元から伝わってくると同時に、彼女はしっかりとした足取りで地表を踏みしめる。だが、今はここで二人を待っていられるだけの時間的余裕がない。
申し訳ないが、再会を喜ぶのは少しだけ後にさせてもらうとしよう。急ぎ総統室へと向かった彼女は、部屋に足を踏み入れるやいなや、部下達が残していったであろう報告書に目を通し始める。
そこに記されていたのは、歴史是正機構が大統領の暗殺へ向けて動き出した可能性があるという、衝撃の内容であった。形はどうであれ、世界政府の直属となっている時空防衛連盟。自分達には、嫌な相手だろうと政府の官僚を義務がある。
仮に事実であれば、直ぐ様手を打たなければならない。再度、端末を取り出し、各方面へ連絡を入れるユーフォリア。このような時に頼れる人物を一人知ってはいるのだが……何故か、その人物を連絡を取ってはいけないような、嫌な予感がした。

>ダグラス・マクファーデン、ヴァイスハイト・インテグラーレ、(エクスデス)
【エクスデス本体様、お相手ありがとうございました。
 これより、第四章を本格的に開始致します。中世で展開している絡みは、時系列をずらす形でそのまま継続して構いません】

7ヶ月前 No.879

第四章:「昇華の革命」 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

第四章:「昇華の革命」
中世にて起きた人類と魔族の闘争は、本来の歴史にはない、両者の和平という形によって幕を閉じることとなった。
幸いにも、時空断裂が起きることはなく、時間は止まることなく紡がれている。この"小さな"改変により、未来の人類と魔族の関係が改善されたのは、幸運というべきか。
しかし、帰還した時空防衛連盟の面々を待ち受けていたのは民衆の歓迎などではなく、未来世界にて発生した新たな問題であった。
突如として世界政府から出される非常事態宣言、錯綜する情報。そんな折に飛び込んできた、大統領が暗殺されたという報せ。
世界政府及び時空防衛連盟の情報系統が完全に混乱している隙を突いて、歴史是正機構が遂に革命を起こす。
彼らは人類を昇華へと導くため、今、この時代の"改変"を目論んでいたのだ。古代や中世の改変失敗も、全て計算の内であったのである。
まともな準備も整わない内に、この日のために準備を進めてきた相手との戦闘を強いられる時空防衛連盟。
もしも、敵が歴史是正機構だけであれば、どれだけ幸せだったことだろう。彼らは、自分達を疎ましく思う全ての勢力と、一度に対峙することを迫られたのである。

7ヶ月前 No.880

大飯喰らいで役に立つ @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

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7ヶ月前 No.881

執心名誉顧問 @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

【魔帝城/魔将軍の間/シャル・ド・ノブリージュ】

 威力で述べるならばそれは銃弾の極致と呼んで差し支えない。銃士が自らの得物から放った弾丸は剣の盾などでは到底守りきれるものではなく、防御に失敗した己の体を遥か後方へと吹き飛ばした。瓦礫に叩きつけられた衝撃に胸の奥から辛酸がせり上がる。自分が鍛錬を怠ってきたという認識はない。身の丈を超える大剣を振るうだけの体をもってしても、あの弾丸は深い傷を負わせてくる。
 だのにあの銃士はどこまでも軽薄だ。自分が魔弾を受けきれるとは思っていなかったらしく、心底楽しげに笑っている。苛立ちを通り越して称賛。全身全霊で以て命を奪うに相応しいという惜しみない称賛。そこまでにあれは人の命というものを軽んじているのだ。年端もいかぬ子供が虫を殺すことに罪悪感を覚えないのと同じように、誰かの命を奪うことはあれにとって自らの退屈を満たすだけの遊戯に等しいのだ。

「決してお前を赦すものか……」

 放つは恋い焦がれた激情。戦いに身を置く者には、それぞれ死ねない理由がある。意志。執念。誓約。戦いによっていずれかに必ず生じる死を受け容れられないのはそれによる。自分もあの魔術師も、そして敵である銃士でさえ戦いによる死は抗わねばならないものだ。戦いに込める思いを踏み躙るなど、決してあってはならない。それが許されるのは、彼の持つ意思が純然たる邪悪だった時だけだ。あれは確実にその邪悪に値しよう。
 ならば燃やし尽くす。大剣に持ちうる限りの魔力と術式を込めよう。全身の骨が乾き腐りかけた樹のごとく軋もうとも、その痛みを超越せずして勝利は得られない。そうせねば倒せぬ敵であり、同時にそうしてでも倒さねばならない敵なのだ。魔術師は有難いことにこの意志を汲んでくれている。放てば同士討ちは必至の灼熱を回避する手立てを用意している。転移術式による回避、そして自己強化術によって自らが囮となり銃士へ灼熱を通す。最上の援護。これほどまでの共闘が出来たことには感謝せねばならない。銃士が魔術師への対処をしたのなら、灼熱の防御は不可能だ。
 そしてついに――燃やした。魔術師への反撃と引き換えに銃士は炎の大海に飲み込まれていった。銃士の全身は煌々と輝いている。彼の燃え盛る炎の光に包まれながら銃士は倒れ伏した。雌雄は決したか――シャルは眉をひそめたままだ。まだ、在る。喉の焼けつくようなどす黒い気配が。漆黒が炎を突き破って這い出てくる。

 ――其は混沌。道化を纏い秩序を犯す真の邪悪。その嬌声を耳にした彼は思考するまでもなく咆哮した。

「邪悪ッ! 灰燼と消えろ! お前に人の命を奪う資格など無いッ!!」

 彼が絶叫するや、体は炎と化す。彼が纏うは己さえ焼き焦がす炎の鎧。自己の焼失へのカウントダウン。生まれもった魔力に乏しい彼がここまでの術式を得たのは、ひとえに己の限界を超えうる義憤を心に抱いたからに他ならない。彼の剣は地獄の業火。刀身の銀さえ覆い隠す焦熱の閃光である。今、彼は自らの目的を捨てている。ただ眼前の邪悪を屠ることだけを考え、焦土と化した戦場を駆ける。
 銃士の体は既に燃えさしだ。屠るべきはその背後の混沌だったのだ。混沌への憤激を力とした彼を混沌自身が止められようか。既に彼は、銃士が先ほど放った極限の魔弾を易々と弾いてのける領域まで踏み込んでいる。ただ彼は進む。混沌が銃士と同じ消し炭となるまで。その途上の全てを、矛も盾も陰も陽も、焦がし、融かし、燃やし、還す。

 ――其は煉獄。神火を纏い混沌を裁く誠の摂理。その喚声を耳にした彼女がどこへ向かうかは思考するまでもない。

>>フィラッサ、エスト

7ヶ月前 No.882

首刈りヴァルキリー @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【時空防衛連盟本部→大統領官邸/休憩室→大統領執務室/ミシャール・ルクセン】

よく分からない、それがREDの発した言葉だった。 それに対してミシャールは「今はそれでもいいさ」と笑い返す。
そして彼女の頭をなでた時、一瞬だけ伝わってくるびくりと跳ねるような感触をミシャールは感じて、少し表情を崩しかけた。 不審者に頭を撫でられている訳ではない、身内にあたるような、顔も知っているし、素性も確かな大人に頭を撫でられるだけで、この年頃の子供が恐れを覚える。

――歪んでるよ、この世界は。

ミシャールは内心そう悪態を付いた。
性格の問題で片付けられればどれほど良かったか、だが、このREDの他者からの優しさを受け取れない性質は、明らかに後天的な物だ。
そして、それを植え付けたのはこの世界であり、また、自分が所属する世界政府の研究機関だ。
だから、責任ってモンは取らなくちゃあならんよな。

ミシャールはREDの頭から自分の手をどけて、彼女の目を見ながら話しかける。

「アタシはそろそろ行くよ、ゆっくり食べな、食べ切れなかったらその辺の奴らに渡すか、冷蔵庫にでもぶち込んでおきな」

そう言って、ミシャールは席を立ち、何時も通りに「またね」なんて言おうとした、その時、これからやる事を思い出して、少し固まった後に、今度はREDと目線を合わせずに話す。

「あー、まあなんだ。 アタシも忙しくてね、明日にでも異動とかで会えなくなるかもしれない、その時は、周りの奴らを上手く頼って生きていくんだよ。 ……ただ一つ言える事は、アタシや他の連中は、お前に絶対危害を加えたりしないから安心しておくれ。 もしそんな事をしたら……そいつはニセモノだ、遠慮なくぶっ潰せ。 ……そんなところかねえ、アタシは行くよ、じゃあね」

そんな言葉を言い残して、ミシャールは足早にその場を立ち去った。
何時もは時間ギリギリまで「まだもう少し居たいねえ」なんてしつこく言うような人間であるにも関わらず。

そしてその道すがら、彼女はあえて人目の無い道を通って目的地と向かう途中に、自分の家に戻り、そこから会社用の端末を使って、自身の会社や、子会社のマザーコンピューターに当たる管理ソフトウェアを起動する。

『お呼びですか』

無機質な男性のAIのボイスが響く、何時ものようにミシャールは、複雑な操作が不得意なので、音声認識によって命令を下す。

「暖めていた計画を実行に移す、ヘルガ様にこれより"可能な限り"の戦力を裏切らせた上で事を起こすとだけ伝えてくれ、さて、ハッキング状況はどうだい?」

『地球軍のセキュリティビット、および、ソルジャービットや無人戦車、無人戦闘機の大部分は動員可能です。 しかし戦力を増強したいのでしたら、防衛連盟や世界政府、貴方の企業が持つ個体は簡単に掌握可能だと考えられますが』

計画を実行に移す、そのために使える戦力の詳細をAIに聞けば、AIは反乱のために効率よく戦力を収集する方法を提示する、しかしそれに対してミシャールはけらけらと笑って。

「それは無理だね。 あくまで誰にも責任を押し付けられない形で、アタシという個人がAI兵器を使った反乱って形にしたい、防衛連盟や企業との共謀の可能性は徹底的に潰す。 それに過剰戦力を使えば、ヘルガ様が余った戦力を市民に向けるかもしれん、アタシはショボいギリギリな戦力を出して、あいつらには、それなりの兵員に余裕がある世界政府や地球軍と、市民なんてどうでもよくなる総力戦をして貰うさ。 って事だ、計画はアタシが奴の首を取り次第実行、いいね?」

『了解しました』

感情の介在しないAIは、主からの命令を聞いて、一切、彼女の行いを咎めたり止める事も無く、その役割を実行するためにプログラムを走らせ始める。
そしてミシャールはツヴァイシューターと呼ばれる二本の巨大な斧を隠し持って、大統領官邸に向かう。

別に前もって連絡を入れた訳ではないが、それでもミシャールは地球軍中将、緊急の要件とだけ言えば、最高のセキュリティなどほとんど無視して、大統領の部屋へと足を進めた。
そもそも、首刈りだの物騒な名前を付けられるような人間に、わざわざ関わりたがる人間はいない、彼女が世界政府の方針に反対意見を出していても、ユーフォリアのように下手に左遷されないのは、その立場の強固さもあるが、その物騒な名前通りの、高い戦闘能力と凶暴性にある。

さて、大統領の部屋に付けば向こうも計画とやらを進めているようで、ちょうどいいタイミングだったようだ。

「なかなか面白い話をしているじゃないですか、大統領。 ぜひアタシも混ぜて頂きたいものです、防衛大臣と言う役職を奪った小娘には苛立ちを覚えているモンで、とでも言えば満足ですかね?」

扉を開き、ミシャールはニッと笑いながら周囲を見渡し、そのような言葉を発した。
そして中に居る人間を確認する。

……最優先目標のバビロンの奴を初手で殺せないのは残念だが、そのうちゆっくり始末するか、後の人間の自浄作用に期待するしかないかとミシャールは割り切って、大統領と他のこの部屋に居る者たちに、笑いながら近づく。
……彼女は知らない、一部の、まさに先ほど名前をあげたような世界政府高官の中には、是正機構と繋がっている者が居ることを。 そしてそんな者たちは、前もってミシャールの行動を察して、この場に居るわけがないのだと。

>大統領

7ヶ月前 No.883

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【ディンカ/小屋/ナイトローグ】

「この程度、当たるようでは困る……」
ラシアナが攻撃を避けた事を確認したナイトローグは、すぐに足を止める。
そして相手を見つめると、相手の動きがおかしいことに気がついた。

「かすったようだな……残念だが、これで終わりだ……」
『ライフルモード!』
足元が凍っていくのを見たナイトローグは、スチームブレードをトランスチームガンに取り付け、ライフルの形状にする。
そして、ラシアナに狙いを定め、引き金を引こうとした――――

「ぐっ……」
それと同時にラシアナが放った炸裂弾が胸部を直撃。
これは効いたのか、ほんの少しだけ後ずさった。

「どうやら君を少し見くびっていたようだ……少し装備を整えさせてもらう……」
体制を取り直したナイトローグはラシアナに向かってのたまった。
そして、背中から蝙蝠を模した翼を生やすと、どこかに飛び去っていった――――

>ラシアナ

【4章が始まったため、切り上げさせていただきます】

7ヶ月前 No.884

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【魔帝城/無限廊下→王都ロンカリア/噴水広場/サシャ】

馬耳の少女は暗がりに姿を消したかと思うと、次に現れた時には一頭の立派な馬となっていた。それを見てもサシャが驚くことはない。何せ、亜人にとっては普通のことだからだ。
今でこそ見てくれは少女だが、サシャも本来の黒猫としての姿を持っている。魔力を持っている亜人は得てしてそういうものだが、動物の姿に戻ることを嫌う個体もそれなりに多い。
もしかしたら彼女もそうだったのかも知れないが、それでも怪我人を運ぶため、決断してくれたというのであれば、感謝してもしきれないだろう。サシャもその好意に甘え、軽やかな動きで背中へと飛び乗る。
そこからはあっという間で、気付けば海底洞窟を抜けてディンカが見えていた。とはいえ、ここは魔族の領域であるため危険。安全を確保するためには、マロニス王国まで向かわなければならない。
恐らく、人の手で二人を運ぼうものなら、丸一日かけても海底洞窟を抜けられたかすら怪しい。彼女が協力を願い出たのは、まさしく最高のタイミングであったのだ。

「ありがとう。あたし達を助けてくれて」

マロニス王国の王都ロンカリアにある噴水広場にて、サシャ達は馬耳の少女の背中から降りる。そこには既に、時空防衛連盟とやらの医師達が待機しており、レオンハルトとレプティラは彼らの治療を受けることになった。
結果として、その場には三人のみが残されることとなる。そんな中、サシャの視線は王宮の方へと向いていた。彼女は、以前から人間の王族のような暮らしに憧れていたのだ。
だが、その夢は少し変化しつつある。レオン達が住んでいる未来の世界とは、どういうものなのか。自分を信じてくれた人間のいる世界を、一目見てみたくなったのだ。

「ねえ、お願いがあるんだけど……」
「あたしを未来に連れてって! レオンが住んでる世界を、この目で見てみたいんだ!」

やけに真剣な表情で、シフォンに向かってそう言い放つサシャ。自分の生まれた世界を捨てるに等しい行いだが、不思議とこの世界にはもう、未練はなかった。
きっと、人間と魔族は和平の道を進むだろう。邪魔をする者がいなくなった今、きっとその思いは、未来まで紡がれていく。自分は、そんな世界を実際に確かめてみたい。
レオンハルトが住んでいる世界の素晴らしさを、瞳に焼き付けたい。そこで、憧れていた王族のような暮らしをするのだ。それが叶うのかは相手の返答次第だが、たとえ無理だと言われても、彼女はどうにかして未来に行くだろう。短い言葉の中には、それだけの覚悟が詰まっていた。

>シフォン・ヴァンディール、(レオンハルト・ローゼンクランツ)、("常山蛇勢"レプティラ)
【勝手に運んでしまいましたが、問題がありましたら蹴って下さい】

7ヶ月前 No.885

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 今日という日は、最悪な日だ――少なくともその認識だけは絶対改めるつもりはない。

「――間が悪いなぁ。いや、私の運が悪いだけかな、これ」

 屍の山を作りながら、嘆息するは簡素な衣服に身を包んだ女性。
 流れる茶髪は何処か作業用オイルに汚れているのかくすんで見える。
 整った顔立ちは疲弊の色を見せているのか、何処か澱んでいるようにも見えた。
 だがあくまであるのはそれだけだ。今目の前に出来ている屍だの機械の残骸だのに対して、何も思うところはない。

 不幸な偶然が切っ掛けだった。
 この日、商談のために取るに足らない――しかし金だけはある議員と会う約束をしていた。
 だが、来てみればなんだこれは。
 無価値な肉の塊。無残な有様となった肥え太った肉塊が転がっていた。
 即死だ。どうみても、――それ以外に判断のつかない状況で死んでいた。
 さて誰の仕業だこれは。
 それへの思考と並行して考えているのは、一つ。

(……不味いことが起きている、と考えるべきかな)
(いずれにせよ――安全だけは確保したいかなぁ。……やんなっちゃうね、まったく)

 ――多分、次消されるのは自分だ。
   それを証明するのが積みあがった死体。先ほど自分を狙って襲い掛かって来たものを、処理した名残。
   恐らく、内部に入り込んでいた是正機構か、もしくは何処かの兵士だろうか。

 何だっていい。
 硝煙を噴くハンドガン片手に肩を竦め、小さな箱庭を守るために死を振りまく発明家は――戦場と化す邸内を進む。
 願うことはただ一つ。時空防衛連盟にせよ、世界政府にせよ、是正機構にせよ、何でもいい。
 ・・・・・・・・・・・・・
 化け物は私にかかわらないでくれ、という恐怖心からくる些細な願いのみ。
 兵器開発者である彼女は、しかし奥底では怯えている。
 些細な幸せとか分相応とか、そういう日常を奪い去ってくる魔人どもを誰よりも。

 だって、そうだろう――大義とか正義とか革命とかそういうのは、出来る奴が勝手にやっててくれればそれでいいのだから。
 自分のような、たかが兵器を少し"改良"するくらいしかできない凡人には対岸の火事であるはずなのだから。

>ALL

7ヶ月前 No.886

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

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7ヶ月前 No.887

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【魔帝城/深淵の間/ハザマ】

 魔像が発した言葉は、行動は、思考は、その実七割以上は的を射るものだ。
 ハザマは表面上、確かに“正史”という名前の盾を使っている。
 改変される前の歴史において魔帝がどうだったのか、勇者アンナローズはどのようにして来たのか、そこだけを重視する。“元通りの歴史に戻す”ことを優先して、その為だけの行動しかしない―――その為ならばどんな非道だって良しとする。
 彼は確かにそう見えたことだろう。ハザマが意図的にそうした行動に出ているのは明白だからだ。


「だから、言ったでしょう?」

「一旦今日の感情で改竄できるようになったものなど、明日にも崩れ去る!
 未来に在る全ての罪が、過去・現在・未来のすべてをとっくに塵も等しいものにしたのだから!」


    、    、・・・・・・・・
 ………あくまでも、そう見えるだけだ。
 彼はそもそも隠そうとしていないが、傍観者だ。
 実際のところ、ハザマにとってこの戦いの勝者が何になろうが、結末がどれになろうがどうでもいい。
 極論、時空断裂による崩壊が起きたところで、彼は素知らぬ顔をするだろう。
 興味がある内容が得られなければ、“つまらなかった”の一言を辞世の句にするだけだ。

 彼は時空改変を巡るこの抗争でたまたま彼らの陣営に付き、たまたま陣営の目的を正確に認識し、“だから”お役所仕事でもするような形で―――最も手っ取り早くカタが付き、最も多くの人間に禍根が出るやり方を選んでいるだけに過ぎない。
 覆すことは難しい正論という名前の盾を、存分に振り回して。敵味方問わず、その想いに汚泥を投げつける。そう、言い換えればわざわざ敵を作ろうとしているのだ。わざわざ敵を作り、わざわざ自分に悪意《ヘイト》を向けさせようとしている。


「実に傲慢で実に独善的だ! 貴女は中々英雄の才能がお有りらしい」

「それは貴女という小さな世界の方が大衆より重要だから?
 ええ、そこのところはご理解申し上げますよ。ぶっちゃけ私もそうですんで」

「でも、そうされると歩みが止まると仰っているのですよ。と言っても聞きませんかねえ」


 例えば、勇者―――アンナローズに対してもそうだ。
 闘う最中、斬撃を交えながらの言葉からもその感情は明確に見て取れる。
 彼女に対して“おまえの親しい間柄に魔族が居るからだろう”と、特に否定することはないが嘲笑うようにぶつけるのも、全てそうだ。彼は所々、わざと言わなくても良いことを口にしている。
 魔帝に対してもそうだ。最初からこの男は、明確に傷口を見つけるや否やそれを的確に抉ることだけを思考に入れる。何故なのかと考える時間は、きっとなかっただろう。多人数相手でも“互角に見える”ような立ち回りが出来るのは彼の万能性あってだ。

 実際のところ正面からぶつかっていけば、必然、魔像ギラードの防御力をハザマは崩せない。
 魔帝との火力勝負ではハザマは有利を取れないし、アンナローズとは確実に膠着状態の戦局が完成する。

 つまるところ、ウロボロスによる手数とバタフライナイフによる連続斬撃。
 速度を活かした分断と攪乱は、そうした“正面からぶつかる状況”を徹底的に減らしている。アンナローズとの斬り合いも鍔競り合いには絶対に発展させず、攻撃の可否を確認するより早く、思い切り飛び退いて反撃へと備える手際の良さだ。
 手を地面に叩き付けると同時に展開された拘束術式。吹き荒れる風の奔流のうち、明らかに詰みとなりかねないポイントだけを空間ごと押し留め、その間にハザマは回避を選ぶ。全てではないのは、これまた正面からぶつからない為だ。

 ………見れば、魔像は未だダメージを見せていない。
 当たり前と言えば当たり前だ、此方が当てた攻撃は足止めと牽制以上の意味を持たない。
 持たないが―――戦闘が佳境に入ったタイミングでの行動だ。
 それが影響を及ぼすより前にダメージは蓄積していたはずで、しかし。

 しかし―――。


「(居ない? ―――ああ、だが、それよりも)」


 ひとつだけ。
 ハザマにとって、戦闘結果がどうでも良くなる内容が露になった。

 逆に言うと、その瞬間とギラードが吹雪に姿を変える不意打ちがほぼ完璧に重なって被ってしまったことが、ある意味ハザマにとっての最悪の展開を導き出すことになったが―――彼は、もしそれに気付いていたとしても放置していただろう。
 激昂だ。降り注ぐウロボロスの豪雨を打ち砕きながら、憎しみに染まった女の表情。
 殺意に塗れた女の顔。
 魔帝としての感情であることは言うまでもないだろうが、いやそんなことはどうでもいい。

 まずは風の刃が荒れ狂う中へ。そこからワンテンポ遅れて、折角確保した撤退位置へと闇が広がる。
 奈落へと引き摺り落とし、虚無へと連れ去る黒い天体だ。


「………ハ」


 ハザマはそれを―――しかし。

 どういうわけか、珍しく反撃を交えることなく。
 口元を釣り上げて、ことによるとギラードの斬撃すら取り合わなかった。
 ………正確には彼のそれは誤算だ。
 昏い闇の波動を安全地帯に飛び退いて回避し、時間を稼ごうとした。
 そこで、その先に構わず斬り込んで来た彼の捨て身の斬撃が文字通り深い傷を付けたというわけだ。

 有り体に言って、捨て身のギラードの斬撃は直撃と言って良い。
 あと1、2発が命中すればさしものハザマとて生命の危機だ。だというのに―――。




 ―――そもそも、痛みなどで止まるようには出来ていないかのように。


「第666拘束機関解放、次元干渉虚数方陣展開………」
   ソウル・オブ・ランゲージ   ブレイブルー
「コードS・O・L………―――碧の魔道書、起動ォ………!」


    彼はその瞬間、狂おしいほどに笑った。



「ハハハ、ヒャハ、ヒャハハハハハ、イヤァーッハッハハハハハ―――ッ!」



 初めて。
 彼は蛇が狩猟の前に洩らすような冷たい悪意を乗せた笑みを零した。

 その上で、彼を中心に緑のリングを思わせる魔法陣が幾重にも広がった。
 空間を侵食し、食い破り、自分を中心に広がっていく膨大な魔素。
 リングの内側へと入ったものの生命力を、力を徐々に簒奪して自らに上乗せするもの。
 それによってヴェルメイユが放った全霊の魔力と、
 序でに接近して来た者の生命力を喰い散らかすことで、ダメージによる被害を超再生で上乗せしたのだ。

 特にギラードには、吹雪から自分を再構成するまでの間は効くことだろう。
 範囲内の全ての存在から簒奪を行うこの魔導書は、いま細かな無数の形になった彼には効果覿面というわけだ。

 それはヴェルメイユの憎しみが、アンナローズの敵意が向けられた瞬間のことだ。
 あるいはそれこそが、ハザマがわざわざ戦闘を引き延ばすように立ち回った理由であるかのように。

 彼本人だけでは起動できず、
 自分自身に憎しみが向けられ、自分を認識出来なければ真の力を振るえなかったかのように。



「そうだ、その感情ォ! 憎悪だ………!」

「おまえの為に用意したんだ、魔帝ヴェルメイユ!
 ・・・・・・・・・・  ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
 そいつが聞きたかった! おまえの痛みが、この時空の旅で最も価値あるものだァッ!」



 心の底から、ハザマは満足げに。
 解放した碧の魔道書によって得た力を収束させながら、嘲笑うように口にした。

 おまえを邪魔した理由も、さっきから言っていた正論も全部。
 ・・・・・・・・・・
 単に私が満足するために決まっているだろうが、と。



 ………そうだ。種明かしの時間といこう。
    ハザマが此処まで手を張り巡らせて蜘蛛糸を張っていたのは、ただそれだけの為だ。



 口にしてしまえば、なんのことはない。
 ハザマに歴史がどうこうだとか、そうした信念はない。
 彼はたった一つ事だけを切実に求めただけだ。自分を確立させるその感情を求めただけだ。

 その為ならば、自分が死のうが一向に構うことはない。
 それがハザマという青年の、虚ろなる器の蛇が本性だ。

 彼は知りたいだけだ。だれかの痛みを、苦しみを。
 それが自分を正しく確立させ、認識させてくれる内容だから。

“どうせ死んだ命になど興味はないから、ハレの日らしく、もう一度それを味わいに来ただけ”なのだ。

 であるに、彼が魔帝という存在に目を付け、踏み躙ってへし折ろうとするのは道理だった。

 であるに、彼がヘルガという人物に眼を付け、
 ただのぽっと出に踏み潰される痛みを知ろうとするのは道理だったのだ。

 そして―――。


「では観測者らしく―――無責任に喰い滅ぼしてあげましょう、おまえたちの全て!」


 こういうのが時空防衛連盟とやらのやることではないのか、と。
 最後の最後まで彼らにも、彼らの敵対者にも汚泥を叩き付けながら。

 ハザマはこの場の魔力残滓をかき集め、自身を中心に刻んだ術式を起動する。
 無数の毒蛇を思わせるウロボロスの牙が地面から突き出し、
 地上に足を付けた対象全てを切り刻み、食い破らんと足元から殺到し、そして収束すると―――。



   、   「一夜に千の死をもたらす冥府の蛇よ、
   、    その顎で、全ての魂を喰い尽くせ―――《千魂冥烙》ッ!」


 それらは合一することで、深淵の間ひとつを埋め尽くすような魔素の大蛇へと変貌した。
 在り方そのものが人体への致死毒。
 その牙から単純な質量に至るまで、全てが効率的に“殺し”に特化したウロボロスの応用形態だ。

 それは世界そのものを食らい飲み干すヨルムンガンド。
 逃げ場など何処にも残さぬ。この間ごと、そこにいる三人全てへと、ハザマを乗せ上空から襲い掛かる。

  ―――文字通り。
     魔帝も勇者も魔像も、その全ての痕跡を“無責任に”蹂躙して嘲笑うために。


>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード、アンナローズ


【お待たせして申し訳ないm(._.)m】

7ヶ月前 No.888

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

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7ヶ月前 No.889

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【大統領官邸/???/ストライフ・ロスチャイルド】


「でしょっ、でしょっ? 家族の情って強いものね〜。
 それが物凄く不合理なことでも、その一言出せばハイ終わり! なんだからさ。難儀よねえ」
    、    、   、   、   、  エイユウ
「その難儀さを捨てられるのが居たら、それがたぶん怪物ってやつじゃなぁい? なんちゃって」


 同意するように、あるいは相槌を打つように声を発し。
 けらけらと少女らしい声色で、成熟した大人のような思想を軽々と口にする。
 アンバランスさは突き詰めると美しくなるか歪になるかだが、彼女の場合は前者だった。
 そして彼女は、それを理解して口にするタイプの―――いわば、何処までも“あざとい”女だ。

 庇護欲を掻き立てることで操れる相手ならそうする、
 支配欲を掻き立てることで操れる相手ならそうする。
 男の意地がどうこうを適当に支えて操れるならそうする。
 下らないプライドが大事なら、そいつだけを守って他を操れるように立ち回る。
 これはそういう女だ。良くも悪くも厚顔無恥だが、死んでも生き延びるような生き方をすることに掛けては右に出るものはいない。それが彼女を女狐とも魔人とも言わしめる内容のすべてだった。

 最もバビロンにそれが通用するわけはない。
 そこは何度も説明した通りだろう。この男の価値観は、あらゆる物差しに当てても測れない。
 狂っているし、災害のようなものだ。だから実際のところ、語り方には意味など無い。
 必要なのはそこではない。


「はいは〜い♪ まあ? たまたま? 聞いちゃったことだからね〜。
 貸しとか借りとか、そういう話は抜きでもいいよね〜」


 必要なのは、ダン・マッケーニ=バビロンに伝える情報だけだ。
 ユーフォリア・インテグラーレの現在位置から予想される待機地区、
 同時に警備員の大半に“お願い”して聞いたセキュリティコードのすべて、予想される“処刑”が発生するポイントのすべてだ。警備員の側から逐一リンクされる情報と合わせてしまえば、この男でなくとも容易くこの先を掴み取る事が出来るだろう。
 送信しておいてなんだが、実際、此処までする意味があるのかは怪しい。


「それ、何時聞いても本人たちはカンカンよねぇ」

「ま、私にとってはどうでもいい話なんだけどー。
 バロさん的には興味お有りなんでしょう? 最終的に何処まで登って来るのかが」

「太陽に近づき過ぎたものって、それは蒸発待ったなしだと私は思うんだけどナー?」


 バビロンという男は、不屈だからだ。
 ………良くも悪くも、諦めると言う言葉を知らない。
 荒野をただ切り拓いて進むことしか知らず、その最中に何百何千と羽虫《ヒト》を潰しても取り合わない。

 その代わり、彼は全てに手を掛ける。
 信じていると言う言葉で、前に進む人間を無責任に応援する。


 、 ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・
   潰れたのならそれまでだが、おまえはきっと潰れない。

 、 ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
   信じているぞ、おまえの理想を俺に見せろ。


 その結果で世界を食い千切り、好き勝手に荒らしていくだけだ。
 リヴァイアサンとは良くも言う。確かに蛇だろう。
 その囁く有様と行動は、悪魔という意味での怪物にこそふさわしい。

 彼女がバビロンを魔王呼ばわりする最大の理由はそれだ。
 正確に言うと、一つはそれだ。もうひとつは………。


「………………あー………はい」
「あのね?分かる? 今私が言いたいなーって思ったこと分かる?
 分かるよね? 言うよ? 言っちゃうからね? えっとねー□」


「 な に し て く れ て ん の ? 」


 ………こんな感じで、比較的まともで警戒しなくても良い人物を。
    よりにもよって最大の危険物に勝手に仕立て上げたりするところだった。

 本人は別に悪気とかない。
 だから災害なのだ。だから魔王なのだ。
 取引は出来たとしても、支配できるとは考えてはいけないというのはこれが理由だ。

 ―――ストライフ・ロスチャイルドの中で、イルグナー議員の顔に×が付いた瞬間でも、あった。

>バビロン(通話)


【こちらもお待たせして申し訳ないm(._.)m】

7ヶ月前 No.890

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【マロニス城/ホール(城前)→時空防衛連盟本部/総統室/ダグラス・マクファーデン】

 天墜する一条の流星の如くに突貫を仕掛ける己の右手は、必殺の一手。仲間より託された未来の命運を掴み取るが為、駆け抜ける己が今、此処に一発の銃弾として完成を果たす。ヴァイスハイトの正確無比な銃撃は敵の注意を引き、彼の逆方向より旧友が放つ虹の極光は、かの暗黒魔導士に防御という選択を強制させる。宙に浮き、全方位に展開される金色の多重障壁は、両面からの攻撃を遮断し、結果としては残光が鎧を傷付けるに留まった。
 そう、"二つ"を凌ぎ切る行動としては正しく最善。然し、此の場に於ける前提に当て嵌めれば、それは真逆の物として成立する。立ち止まって防ぎ、尚且つ"三つ目"を察知していなかったとすれば。辿る結末は、一つでしかない。
 炸裂する猛毒の刃。苦悶の呻きをあげながら、霊樹は崩壊を開始する。致死には届かずとも、与えた損傷の程はその様子から十分に窺えるだろう。既に戦闘の続行は無価値と判断したのか、敵は開いた扉を介して戦場を離脱して行った。

「……とんだ強敵だったな」

 マロニス城での戦いは終着した。身体中の至る所に紅い筋が奔り、赤々とした血液が流れ出ていながらも、それを気に留める事無く他の二人の方を見やる。ヴァイスハイトの方は様子からして無事な様だが、一方でユーフォリアは相当な負傷を負っている。口では大丈夫とは言うが、吐血している時点で大丈夫ではないのは確か。
 出来れば暫く安静にして貰いたいのが本音なのだが、立場以前の問題として、彼女の性格上聞き入れそうに無いのもまた事実。故に、此処は自分やヴァイスハイトが何とかして支えて行くしかないだろう。

「……感謝する。これからはお前達の仲間として、俺も戦わせてくれ」

 此方へと視線を向け、信頼に値すると認める言葉と共に、握手を求めて来たヴァイスハイト。それに応じるかの様に、自らもまた手を伸ばして握手を交わし、感謝の言葉と共に戦う意志を表明する。
 そして、本当の意味での和解が成立した直後。ユーフォリアの連盟全体に対する呼び掛けから、遂に歴史是正機構が本格的に目的の遂行へと動き出した事を知る。であれば、今持つ情報を全て開示しなければなるまい。特に、"ある将官"については絶対に伝えねばならない事だ。
 彼女に続く形で時間遡行を開始し、未来世界へと帰還――元居た組織では無く、寝返り先の本拠地へと辿り着くと、一目散に総統室へと向かう。そして部屋の中へ足を踏み入れると。

「……少し時間を貰えるか、ユーフォリア。お前には伝えておかなければならない情報が、幾つかある」

 真剣な表情を浮かべながらも、総統としての職務に追われる旧友に少しだけ報告の時間をくれないかと告げる。この報告は歴史是正機構を相手するに当たって、そしてユーフォリアやヴァイスハイトらにとって、重要な意義を持つ物だ。

>ユーフォリア・インテグラーレ ヴァイスハイト・インテグラーレ (エクスデス)


【エクスデス本体様、お相手ありがとうございましたー】

7ヶ月前 No.891

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/無限廊下→王都ロンカリア/噴水広場→時空防衛連盟本部/エントランス/シフォン・ヴァンディール】

協力を申し出てくれた亜人の少女の正体は、驚いたことに筋骨隆々の馬であった。四人を乗せた上でなお快速の健脚。駿馬の名を欲しいがままにする走りで、瞬く間に危険地帯を抜けてゆく。
難攻不落を誇る海底洞窟ばかりか、魔族ひしめくディンカすらも彼女の走りにかかれば通過点。あっという間にマロニス王国領に入り、比較的安全と言える噴水広場まで辿り着く。
そこには連盟所属の医療班も待機しており、やっと重態の二人にとって安心できる環境が整った。担架に乗せられて慎重に運ばれていくレオンハルト、それを見送る眼差しはなんとも悩ましそうな色に満ちている。
すぐに彼の姿も見えなくなり、肩の荷が下りたことで思わず座り込んでしまうシフォンだが、すぐにはしたない行為であると気付いて起立、小さく咳払いしながらサシャの方へ向き直る。
真剣な面持ちと物怖じしない言葉で語られるのは、戦いの中で心を通わせたであろうレオンハルトが住む世界を見てみたいという願い。軛を断ち、魔族のみならず人類のためにも命を燃やした心優しき鬼神。どこまでも純粋かつ曇りない、幼い頃に宝物としたビー玉のような、透き通った心の持ち主だからこその言動。
生まれ育った世界から離れる覚悟も決めた上でのことなのだろう。そんな強く清らかな彼女の夢を無下にするはずがない。柔和な笑みを浮かべ、彼女を未来へ招待すべく口を開きかけた矢先――携帯している端末から鳴り響くアラーム音。
メッセージの送信者はユーフォリア。内容は未来で問題が発生した旨を簡潔にまとめたもの。異変の詳細な内容と被害等の情報はなかったが、立て続けに舞い込む続報によってその全容が見えてくる。
それにしてもよりによってこのタイミングとは…中世では各地で激戦が起こり、死傷者数も古代を遥かに凌ぐと聞いている。加えて自分を含む連盟主力の面々はほとんどが中世に出払っており、本部に残された戦力だけでは心もとない。
是正はこの絶好の機会を伺っていたのだろう。古代、中世と後手に回っての戦いに振り回され、形式上の勝利こそ勝ち得たものの犠牲は小さくない。奴らが正さんとするのはあくまで未来。停滞と腐敗の暗雲が垂れ込める西暦7000年。

自分たちは陽動されたと言ってもいいだろう。

「…未来で事件が起きてしまいました。是非ともお招きしたかったのだけれど、関係のない貴女を巻き込むわけにはいきません」

緊急事態とあっては、心苦しいがサシャの願いを退けなければならない。一途で純粋な願いを叶えた彼女の瞳に映り込むものが、醜く空を蝕む戦火と黒煙ではあんまりではないか。
加えて是正の本命たる未来が戦場とあっては、今までとは比べ物にならないほど厳しい戦いになるのが目に見えている。そんな危険な状況下に他世界の住人を連れ込むなど、時空の守護者のする所ではない。
苦虫を噛み潰したような表情で断りを入れながらも、その手はすでに時間遡行装置に伸びていたが…背後から大きな茶色いものが倒れ込んでくる。成すすべなく押されるように転倒し、その際サシャを巻き込んでしまう。
犯人は手を貸してくれた少女その人であった。重積載の上に長距離を走ったせいで疲れ果ててしまったのだろう。一瞬呆気にとられたシフォンだが、苦笑いして起き上がろうとする。

しかし次の瞬間、彼女の身体に異変が起こる。足が地面を離れるような、確かに覚えのある感覚。これを感じるときと言えば…



気付けば三人は時空防衛連盟、エントランスホールの冷たい床の上。転倒した際に装置が起動し、一緒に倒れたサシャはもちろん、倒れ込んできた馬耳の少女まで道連れにしてしまったようだ。
二人の顔を順々に見比べるシフォン。ほつれた髪をなおそうともしない彼女の顔には、「やってしまった」の七文字がクッキリと浮かび上がっていた。

>>サシャ、(レオンハルト・ローゼンクランツ)、("常山蛇勢"レプティラ)


【勝手に進めた&運んで申し訳ないです…】

7ヶ月前 No.892

大統領 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【大統領官邸/大統領執務室/大統領】

世界政府やその直属の組織の人員に変更を施す際には、様々な事務的手続きが必要となってくるが、実質は大統領の声さえあれば自由になるといっても過言ではない。
現大統領はそうして、政敵や気に食わない人物を抹殺、左遷してきた。自分の障害となりうる人物を排除するのは、上に立つ者として当然の行いであると言わんばかりに。
そして今宵もまた一人、彼は不都合な存在を排そうと計画を進めている。ユーフォリア・インテグラーレ。かつては次期大統領候補としてその名を轟かせた、時空防衛連盟の総統。
彼女は確かに非常に優秀で、その座に相応しい人物だが……大統領となるには、少々狡猾さが足りないようだ。何事においても彼女は、正々堂々とすることを望む。
しかし、様々な陰謀と野望の渦巻く政会において、それは致命的な弱点であるともいえよう。大統領からすれば彼女は、現実を知らない青二才であるも同然であった。

「おお、これはこれは。ミシャール・ルクセンではないか。君の口からそんな言葉が聞けるとは、夢にも思っていなかったよ」

そんな折に訪ねてきたのは、元世界政府防衛大臣で、地球軍の中将という要職を任されるミシャール・ルクセン。大統領はこれまで彼女を、危険分子の一人として認識していた。
何せ彼女はユーフォリア派であろう人物であるからだ。時空防衛連盟にしょっちゅう顔を出しているのは知っているし、その目的は十中八九支援のためだろう。
だからこそ、ミシャールがユーフォリアに苛立ちを覚えている、というのは予想外であったのだ。もしかすると、自分に擦り寄るための方便かも知れないが、それはそれ。
このような優秀な人間が使えるのであれば、積極的に使っていくべきである。彼女をこちらに引きずり込むことが出来れば、ユーフォリアに多大な精神的ショックを与えることにも繋がるだろう。

「君も私に協力してくれるのかね? もしそうだとするなら、何が望みだ?」

大統領は、協力者に対価を支払うことを惜しまない。こうすることによって裏切りの確率を減らすことが出来るし、次に問題が生じた時も協力を仰ぎやすくなる。
そして、大体の場合、自分に就こうとする人間は、それを求めるのだ。彼はミシャールの顔を見つめながら、彼女が何を望んでここへやって来たのかを探ろうとする。
彼は、まだ気付いていない。この場にミシャールが現れた時点で、己の身に危険が迫っているということを。そして彼女が心の奥底に隠した、真の目的を―――

>ミシャール・ルクセン
【次で一思いにやってしまってください】

7ヶ月前 No.893

緋焔閃 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

 紅き飛沫を舞わせながらも、総数百四十四に渡る剣舞を耐え凌いだ龍の心臓は、今も力強く鼓動を続け。限界を度外視して稼働させる第二の心臓が齎す絶大なる負荷も、五体の可動に支障を与えるには未だ及んでいない。故に、まだ己は生きていると言う実感を深く覚え。同時に、生きている以上は更なる無茶を押し通せる事実にも繋がり。踏み切るは、鎧に埋め込まれた第三の心臓の稼働――万象を穢し蝕む猛毒の邪龍、偉大なる先祖の血を共に流す兄弟であった龍の力を、此処に解き放つ。
 紅の焔と紫の焔が合わさったその刹那、身体を循環する暴虐的なまでの力が、龍の本性を厭が応にも喚び醒ましていく。数多の殺戮と蹂躙の果てに、戦場に降る血の雨を一身に浴びる事を望む狂戦士としての性を。崩壊して行く理性、露わとなって行く本能。後二歩、否、後一歩呑まれれば、共に轡を並べる少女すら殺める事を望んでしまうだろう。然し、狂乱に心を支配されつつある龍は、それを前提とした上で尚突き進む事を選択した。停滞が意味する事は、即ち死であるのだから。

「ハハハハ、ハハハハハハハ―――!」

 狂える高笑い。もしも、龍が深く忠誠を誓っている魔帝が、魔帝軍随一の人格者として龍を深く敬愛している蛇が、今の彼の様子を見たらどう思うだろうか。恐らくは、これまでの間に積み重ねて来た印象が一瞬にして崩れ去る筈だ。今後の交流に当たって多大な差し障りが生じる事を踏まえると、彼女達が此の場にいなかったのは幸いと言っても過言ではないだろう。龍の本性を知るのは、龍狩りと魔剣士だけで十分だと、消え行く理性は切に願う。

「生きている、そうか生きているか! ならば次だ、次で仕留めて見せる!」

 先の応酬として、計百四十四、七十二の紅き剣閃と七十二の紫焔で攻め立てるが、それらは総て叩き落とされる。が、其処に一つ加え入れた、百四十五番目に位置する、五十三の剣気を宿した一閃が、遂に魔剣士へと手傷を負わせるに至る。貌に一つ紅い筋を走らせた程度とは言え、それが齎した成果は上々。続く龍狩りの一撃もまた、敵の右肩部から脇腹にかけての深き傷を与えている。
 鈍い音と共に剥がれ落ちた鎧、露わとなる魔剣士の一糸纏わぬ姿は、痛々しくも、同時に麗しく目に映り。それを美しいと感じたからこそ、更に彩りを加えてやらねばと龍は息巻く。お互い死ぬまで限界など無いのだ。ならば高みを目指し続ける限り、何処まで、何処までも、美しくなることが出来よう。

「紅き焔と共に――」

 魔剣士は両手で剣を構え、居合さながらの構えで静止し。その刹那、世界は三者を残して虚無へと消え去った。認識できるのは、眼前にて威圧振り撒く強者のみ。対する龍もまた、極限の概念を超越した威圧を振り撒きながら、両手で居合さながらの構えを取り。そして、魔剣士の長剣が揮われた刹那――同時に、龍もまた緋焔の一閃を奔らせる。不可視にして無音無感、森羅万象をこの手で切り伏せる一閃。
 二つの猛威の激突は唯々一瞬で。その攻防の趨勢を握ったのは、魔剣士の一閃であり――相殺し切れなかった斬撃が、龍の胴を溢れんばかりの鮮血で染め上げ。それでも尚、龍はまだ、生きている。生きているのだから、反撃に移れるのは当然。

「散れェェェェッッッッ!」

 一瞬だけ揺らめく龍の姿。それを視覚で認知した時点で、既に一手は下されている。神速を越えた神速、百を遥かに越え、二百に届きかねない程の無数の剣気を宿した一閃、この限定的な状況であるからこそ可能とした、窮極なりし殺戮の術理。それが炸裂した刹那、掴み取るは勝利か敗北か――結末は未だ、明かされず。

>魔剣士 アーケオルニ・ランドグリーズ

7ヶ月前 No.894

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン(通話)→(通話終了) 】

「ハハハハ!!!
 どうせ、貴様にとっての"まとも"などいい子いい子どうでもいい子だろう!?」

 たまたまイルグナーと出会い――彼女の経歴を調べ上げ、そしてたまたま興味があった。
 なので囁いて、断崖絶壁から突き落としてやった。お前ならきっと出来る。
 お前なら、常人が即死するほどの高さより突き落とされてもきっと生き残れるだろうと。

 それはそれとして。
 故に、魔人共なのだ。
 荒れ狂う大海の如し未来政府――それを逆に牛耳れる存在など他に何処にいようか。
 悪性魔境とすら揶揄されることはあるだろうが、裏を返せばそのような状況でもまともに立ち回れるということ。

 情報は全て受け取った。
 精査はそこまで要らない。少し解析を進めれば、どこで誰がどうしているのかは丸わかりだ。
 逐一更新される情報を照らし合わせてしまえば――そこにいるのだと、眼を付けるのは簡単。

 ・・・・・・・・・・・・・・・
「太陽を丸ごと喰らうことが出来るだろうよ。
 何故なら、奴らは素晴らしいのだから。きっとそうしてくれるだろう!
 難儀さを喰らうも捨てるも奴ら次第だ。だが、それを越えてでも進むはずさ!」

 ワインを片手に呵々大笑する――これで、必要なものは出そろったか。

「ではな、切るぞストライフ。今日の情報は素晴らしかった。
 恐らく、そう、もうすぐだ。もうすぐで世界政府は動乱の波に飲まれるだろう!」

 電話を受けた側が一方的に切るなどという、常識では考えられない非礼も気にはしない。
 一方的に電話を切ったバビロンと言えば――。

(……さて、此処には誰が来る?)

 ――到来する新たな獲物を待ち望むのみ。

>ALL (ストライフ)

【お相手、ありがとうございました〜】

7ヶ月前 No.895

首刈りヴァルキリー @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【大統領官邸/大統領執務室/ミシャール・ルクセン】

かかかっとミシャールが容姿とはつりあわない、本来の年齢らしい笑い声を発して、大統領の言葉と態度を見ていた。
これは襲撃を掛けにきた自分に対しての時間稼ぎか、あるいは強者故の余裕か。
ミシャールは最初そう思って大統領の目を見て話していた、それこそ、お互いが殺すと思えば、即座に首を跳ね飛ばせる必殺の構えを維持している。
……そして、ミシャールは後に続いた大統領の言葉と顔を見て、それは馬鹿な想像に過ぎなかったのだと内心落胆する。

何が望みだ? 強いて言うならば、武器である大斧二つを背負って執務室までずかずかと上がりこんで来た反感を持っているであろう人物に対してそのような言葉をかけるアホ面が一刻も早く視界から消える事だよ、などと言いたい所だが、それだけで済ませてしまうと、今後のイメージ操作に問題が生じる。 ある程度、会話はしなくてはならない。

「いやいや、何も今日は協力をお願いしに来たわけじゃあないんですよ。 アタシは思ってるんですよ、ユーフォリア・インテグラーレ、父が惨めな汚職政治家で、あれ本人も、一向に是正機構の殲滅を成せない無能に過ぎない。 今まではアタシの役に立つかと泳がせておきましたが、いよいよ面倒見切れなくなってしまいましてね、そろそろ始末しようかと。 やはり指導者と言うのは有能で強くあるべき、そうは思いませんかね?」

この会話は、監視カメラのハッキングと言う形で、セキュリティシステムで繋がっているルクセン系企業や時空防衛連盟の一部には公開されるはずだ。
そんな状況下で、自分がこのようなことを言えば、きっと他の連中が自分を見る目は変わる、それでいい。

そしてこの言葉を聞いて最も喜んだのは大統領だろう。 ミシャールと言うのはユーフォリアに執着している、孫のように接しており、多額の資金をつぎ込んでいる、そんな事は政界の中では半ば常識として罷り通っていた。 その彼女がユーフォリアを潰す方向へと舵を取るならば、もはや彼女の行く末は決定付けられたようなものだ。
さらに「有能で強くあるべき」を自分のことと解釈できるおめでたい頭をしているなら尚更である。

これを聞いた大統領は「よし協力しよう!」なんて言っていたような気もするが、彼などもはや、ミシャールの眼中に無い。
喜ぶ相手に合わせているにしては……口角を吊り上げ、ぎらりと歯を見せ、まるで獲物を前にした猛獣のような笑みをミシャールは浮かべ、そして語る。

「だから、アタシが正しく導いてやろうって話です。 まず最高権力者の大統領とここにいらっしゃる高官の方々を皆殺し、続いて無能ながら確実に邪魔になるユーフォリアも消す。 感謝してますよ、貴方はこの老婆の野心の隠れ蓑にとっては最高の無能でした――では、サヨウナラ」

ひゃははははははっ!!
そんな本性をむき出しにするかのような邪悪な笑みがこの場に響く、ユーフォリアと時空防衛連盟も、大統領と世界政府も、自分が殺すと彼女は宣言した。
誰かが構えていた銃が、その手ごと切り落とされる。 逃げようした人間の頭が切っているのか殴っているのかも分からないような大斧で粉砕される。

そして……ミシャールは一瞬のうちに大統領に接近して、その首を一瞬のうちに落として見せた。

斧に血液がほとんど付着しないような一瞬の早業を持って、この場に静寂が立ち込める。
そのままミシャールは大斧を天上に投げつけて、大穴を開けてから、落ちる大斧と交差するように、照明弾を取り出して、放つ。

「――感謝して欲しいモンです、苦しめず一撃で葬ってあげたんですから。 さっ、始めようか、大粛清って奴だ」

空に放たれた照明弾が赤い光を放つ、それと同時に、この大統領官邸や、その周辺一帯、いや、それどころか地球軍のほぼ全ての無人兵器が動き始める。
目的はただ一つ、無差別殺戮。 と言うのは表向きの話。

あくまでミシャールにとって最優先なのは世界政府の腐敗を一掃すること、そして……派手な宣戦布告を受け取った時空防衛連盟によって殺されること。
ゆえに、AIで動く兵器たちは、まるで無差別な破壊を振りまくように見せかけて、ほとんど世界政府関係者を狙い撃ちで殺戮を始める。

主戦力はレーザー兵器で武装しているとはいえ貧弱なセキュリティビット、もう少しマシだが数が少ないソルジャービットや無人戦車だったり無人戦闘機だが、温室でぬくぬくと育っていた連中を殺しきるには十分だ、むしろ過多な戦力投入は、是正機構が無用な欲を出しかねない。
再度ミシャールが笑う、これで、目的は果たせると。

……彼女は是正機構に世界政府の者が居ることも知っていたが"あえて知らないこと"にしておいた、上手くやれば是正機構側の世界政府もAI兵器が殺すだろう。
知ったことか、世界政府は皆殺しと自分は言ったのだ、不慮の事故で協力者が死んだところで、自分には痛くもかゆくも無い。

>大統領 ALL


【と言う事で、僭越ながら許可を取った上での確定ロルで、本格的な四章開始を!!】

7ヶ月前 No.896

秘剣 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

白熱を重ねる死闘。この場に集いし三傑の誰もが戦いの中に一つしかない命を投じ、血の雨の降りしきる中に生を感じている。安全圏に胡坐をかき、事の成り行きを見ているだけでは味わえない感覚。
生命というものは当然のように与えられている反面、出るところに出ればいとも容易く失われてしまう。大方の者はそれに恐怖を感じ、生き永らえたいという一心で自分を危険から遠ざける。
しかし中にはそうでない者も一定数存在する。死神の熱視線を全身に浴び、"死"が四方八方どころか、頭上と足元からも迫るような修羅場…そこで過ごす永遠のような一瞬。その刹那に己が道を見出してしまう者達。
彼らはバトルジャンキーだの、破綻者だの、不名誉極まりない渾名を賜ることがほとんどだ。無理はない、一般的に見て異常なのだから。死に急ぎ命を蔑ろにする愚か者、戦いの渦中にしか自分を見出せない戦闘狂。こういった認識は決して間違ってなどいない。

そんな雄々しく気高く、それでいて儚い者達が集ったのがこの空間というわけだ。ここには野次もなければ制止もない。無粋な介入に興醒めしてしまう恐れもない。
勝敗が誰の目にも明らかになるまで、鋼と鋼のぶつかり合う音が止むことはない。見るがいい、このひと時に文字通り"全て"を注ぎ込むケダモノ共の姿を。
城の外に出れば無限大の世界が広がっている。そして間もなく、手を取り合った人と魔族によって、全く新しい未来が拓けていく。だというのにだ。それらがケダモノの興味を引くことはない。
否、彼らにとっては、初めから存在してすらいないのだ。他の人間も、魔族も、世界も、未来も。この空間と、ここで過ごす時間以外の全てが無意味。何者も、何事も、彼らに干渉することはできない。



剣気と魔力の波にのまれながらも狂笑、それを今度こそ仕留めんとする龍もまた狂笑。相手の激情を誘う打算的な笑いでも、敵を嘲笑し優位を誇示するための笑いでもない。
それは踊り昂る心が発する咆哮。理性などという矮小な概念は音もなく崩れ去る。戦闘不能の瀬戸際にいる竜狩りは笑みを浮かべることすらなかったが、仮に余裕があったとしたら、間違いなく二人に負けず劣らずの狂いぶりをみせたことだろう。

膝をつき、亀裂の走る剣を突き立て、荒い息で必死に空気を取り込む。対する魔剣士は鎧を失い、生まれたままの姿。痛ましく、それでいて優雅で雄々しい。未だ彼女の渇きは満たされてはいない。求むるは血。長剣を両手で構える。普段ありふれていたものが失われていく。音も光もない。強者(つわもの)のみが存在を許された空間。
今更驚く必要はあるまい。元よりこれは"そういう"戦いだったはず。より余計なものを省いたに過ぎない。

生まれ持った感覚という、生物に残された最後の武器そのものを断ち切る、魔剣士の一閃。超神速の一瞬に喰らいつくは緋剣閃。その名に違わぬ炎が、刃が、生き様が光輝く。
竜狩りは九割九分九厘反応できなかった。切り裂かれる肢体。苦悶に歪む貌。しかし十割の無反応とは決定的に違う点が一つ。横向きに構えられた大剣…竜狩りの流派にどこまでも忠実な大業物は、所有者そのものに対しても忠実であった。
護ったのだ。数多の魔族を切り伏せてきた『アトロシス』、業の深さから最早妖刀と呼んで差し支えのない剣が、最後に所有者を護った。柄頭から剣閃まで見事に二分され、冷たい床に身を横たえる大剣。
この紙一重の防御が竜狩りを救った。噴出する鮮血は傷の程を物語っているが、即死ではない。片腕を失い、鎧を失い、最後は騎士としての芯とも言える剣すら失ったアーケオルニ。彼女の戦いはここでお終い。勝敗の程は、一命をとりとめたならこの世で、そうでなければあの世で、龍の口から…

なんということだ。竜狩りの瞳はまるで猛々しさを失っていない。瞳だけではなく、全身が熱く燃え滾っている。二分されたかつての巨剣が、右足によって掬われ、蹴り上げられる。それを掴むのは右手と左足。
二振りの剣を携え、空を仰ぎ吼える絶技こそ――



「秘剣」



――二天一龍



X字に交差する双剣閃。圧倒的な手数があるわけでも、規格外の破壊力を誇るわけでもない。ただ美しく、洗練され、剣の道のなんたるかを雄弁に語る。
さらに左足から剣を放し、刹那という表現すら生ぬるい速度で身を翻す。続いて繰り出されるは、右腕のみならず、全身の力を使って繰り出される熾烈極める突き。
言うなれば初めの二撃は龍の爪と尾。そして突きは牙。竜狩りの英雄でありながら、龍族の呪いを刻み込まれた彼女の最後の切り札。

それが秘剣『二天一龍』。竜狩りのアーケオルニの生き様そのもの。

>>"緋焔閃"ヴァンレッド、魔剣士

7ヶ月前 No.897

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【時空防衛連盟本部/資料室/桐生戦兎】

「うーん……」
膨大な資料が入っている資料室で悩んでいる男が一人。
傍らには歴史改変や『代替物質』に関するぶ厚い書物がどっさりと乗っている。どうやら悩んでいる原因はそこにあるようだ。
未来に帰還した戦兎は並行世界への影響や、スクラッシュドライバーの負荷を軽減する研究をしていた。
スクラッシュドライバーは性能を最大限に引き出すために装着者のアドレナリンを過剰に分泌させるからだ。

「これもダメそうだ……」
今は負荷軽減に関する資料を調べているようだ。
ため息をつきながら、自分の期待通りのものでなかったことに落胆していた。

>周辺all

【時空防衛連盟本部/訓練施設/万丈龍我(仮面ライダークローズチャージ)、葛城】

「はっ! でやっ!」
ところで、負荷を軽減しようとしているのは万丈も同じだった。
万丈はクローズチャージに変身し、シミュレータの中にいる無数の『スマッシュ(=元の世界での敵の一つ)』を相手に戦っていた。
クローズチャージの性能ならスマッシュは余裕で倒すことが出来るのだが、長時間戦い抜けるかというと話は別。

「くそっ……もう少しだってのに……!!」
全滅させる一歩手前で反動が来てしまい、そのまま倒れこんでしまった。
そして変身が解除されてしまう。
そこに突如現れた女が万丈の肩を支えた

「大丈夫か?」
「誰だお前?」
「ここの利用者の一人だ! ここ最近組織に転がり込んできたばかりのな……」
「わかった……だが大丈夫だ! まだいける!」
「わかってるさ……アタイだってそうする!」

>対象なし

7ヶ月前 No.898

Futo・Volde @nonoji2002 ★gLBoRrfVfo_sgc

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7ヶ月前 No.899

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【時空防衛連盟本部/総統室前/17代目葛葉 ライドウ】

未来に戻ってきていたライドウは使った弾薬を補充している途中に通信を傍受した。
近いうちに政治的に何かしら動きがあるであろうことを察知したライドウ、それはどんな形になるかは分からない。
軽いジャブとしては身内からの妨害工作、重いものでクーデターか何か。どちらにせよ戦いに集中できる環境を整えておきたい。
そう考えたライドウはフル装備で総統室の前に立ってドアをノックする。

「時空防衛連盟一兵卒、17代目葛葉ライドウだ。今後の活動について一つ提案があって参じた。手隙であるならば扉を開けてもらいたい」

通信があって数分後なので多分まだ中に居るであろうユーフォリアに扉越しに告げる。
今後の活動についての提案とはライドウを戦闘員だけではなく諜報員としても使用しないかどうかという提案だ。
その提案は蹴られてしまえばそれで終わる話だが、それでもライドウはやる気である。
技芸属による完全な変装に加えて外法属による読心術で大抵の情報は抜きだせる、ライドウ自身もその活動に慣れている。
今まさに事態が動いていることは露知らずライドウは扉の前に立って返事を待つ。

>ユーフォリア・インテグラーレ、ALL

7ヶ月前 No.900


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