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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/03/04 20:57 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_cjE

―――現在は、第四章です―――


第四章:「昇華の革命」

中世にて起きた人類と魔族の闘争は、本来の歴史にはない、両者の和平という形によって幕を閉じることとなった。

幸いにも、時空断裂が起きることはなく、時間は止まることなく紡がれている。この"小さな"改変により、未来の人類と魔族の関係が改善されたのは、幸運というべきか。

しかし、帰還した時空防衛連盟の面々を待ち受けていたのは民衆の歓迎などではなく、未来世界にて発生した新たな問題であった。

突如として世界政府から出される非常事態宣言、錯綜する情報。そんな折に飛び込んできた、大統領が暗殺されたという報せ。

世界政府及び時空防衛連盟の情報系統が完全に混乱している隙を突いて、歴史是正機構が遂に革命を起こす。

彼らは人類を昇華へと導くため、今、この時代の"改変"を目論んでいたのだ。古代や中世の改変失敗も、全て計算の内であったのである。

まともな準備も整わない内に、この日のために準備を進めてきた相手との戦闘を強いられる時空防衛連盟。

もしも、敵が歴史是正機構だけであれば、どれだけ幸せだったことだろう。彼らは、自分達を疎ましく思う全ての勢力と、一度に対峙することを迫られたのである。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

第四章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-222#a


・現在イベントのあるロケーション

大統領官邸:大統領暗殺事件

時空防衛連盟本部:時空防衛連盟と歴史是正機構の全面戦争

歴史是正機構本部:時空防衛連盟と歴史是正機構の全面戦争

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メンヘラ @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_LPw

【王都ロンカリア/飯店/ラヴィ】

どうやらこの狼は同族ではあっても魔帝軍ではなかったようだ。なら、はじめから攻撃していたほうがよかったかもしれない。こうなってしまった以上、もはや戦う以外に選択肢はない。それでも、イアンはまだ話そうとしているあたり、少し頭が悪いのかもしれない。ラヴィにとってはあまり興味のないことだが、変な噂を広められて、人間に近づきにくくなってしまうのはごめんだ。今でさえだいぶ難しいというのに、これ以上となると本当に厄介である。

「苦しめてなんかいないです……私はただ……寂しいだけですよぉ……」

ラヴィの息が荒くなる。本当に寂しいだけなのか、それとも別の目的があるのかは言葉だけでは判別できない。しかし、少なくとも底なしの悪意を持って人間に接近しているわけではないことはわかるだろう。彼女はただ単に誰かに構ってほしいだけだ。しかし、そのスキンシップの要求が過剰すぎるために多くの人間たちから疎まれ、遠ざけられる。それで行動を見直すならまだしも、ラヴィは余計にこじらせ、強く相手に依存するのだ。これに耐えきれなくなった人は、自ら命を絶ってしまうのである。

「もしかして、あなたが私を受け入れてくれるんですかぁ……? もっといっぱい、おいしいごはん食べたいなぁ……」

息を乱しながら、イアンに近づいていくラヴィ。彼女の周囲からは、ついに邪悪な気が溢れ出す。これは相手の精神に直接作用する魔力であり、触れれば急速にうつの症状を引き起こすことだろう。更に怖いのは、ラヴィがこれを自由自在に操れるということである。今はまだ、自然に溢れ出ているだけだが、一度敵対関係となれば、彼女はこれを用い、敵を殺そうとすることだろう。

>>イアン

【遅くなってすみません】

2ヶ月前 No.701

指輪の女帝 @kyouzin ★XC6leNwSoH_0D6

【このまま四章開始まで待っていいかなとも思いましたが返信します!!】

【歴史是正機構本部/実験室/パージルク・ナズグル】

エステルの、自分の心をへし折るべく行われた屈辱的な行為に耐えながらもパージルクはもう一人、この部屋に入ってきた人間を視認する。
その男は遠慮も何も無くこの部屋に入室しては、まるでそういったショーを見るようにその辺の椅子に腰をかけた。
嬲られる人妻、そんなワードにさらにパージルクの心は追い詰められてゆく。

そして彼はそのままこう告げた、お前は愚図だと。
続けざまに放たれる叫び声にも近い大音量の言葉に対してパージルクはびくりと身を震わせる、それは単純に驚いたと言うのもあるが、その内容に対しての物だった。

「夢……私の夢。 下等な第二人種を、駆逐する事」

間違ってもそれが目的なのではなく、その先にある世界こそが彼女の目的だったはずだ、だが、この状況と相手の言葉が、"過程"を"目的"にすり替わりかねない物。
いや、仮に過程としてパージルクが認識しなおしたとしよう、何が変わるのだろう、彼女はただ、第二人種を殺戮する女帝としての役割を再認識した、そこから行われる生き死にの数は変わらない。

故に、仮にエスメラルダや臣下と笑って暮らしたい、人が実力で評価される世界を作る――だから第二人種を殺しつくす。
そういった思考になった時点で、目的や過程がどうであろうと、この瞬間、彼女は時空防衛連盟に立ちはだかる脅威となった。

そして、ただでさえ限界が来ており、仮に戦力として起用した所で大した戦果があげられないであろうパージルクの枷をバビロンは"外した"。 夢は必ず叶うのだという言葉に乗せて。
その過程をもってして、初めてパージルクは「……協力、受けよう、それが、あの人だけではない、エスメラルダや忠臣たちへの弔いとなる」と言う言葉を発したのだ。

パージルクを縛り付けていた拘束が解かれる、だが、パージルクの目的はもはやこの場から逃げ出すから、この地に実る第二人種を殺しつくし、そして後に、反逆者マロン・アベンシスとエストを殺し、魔道帝国を真の形で再興する事に変わっていた。
改めて自由を手に入れて、分かることが一つ。 おそらくあの男の能力であろう、まさに自分の全盛期に近い膨大な魔力が感じられる、今ならば、コントロールクリスタルが無くても、最高の力を発揮する事が出来るだろう……もちろん、それに代償が無いとは、限らないのだが。

「感謝しよう。 もう一度、夢を追う機会を与えてくれて。 さて、妾は行くよ。 指示があり次第、この地の愚か者どもを根絶やしにせねばならん、本来妾が処理すべきは古代の連中だが、その古代に戻るため、多少はこの世界に貢献せねばなるまい?」

その言葉を最後に、パージルクは拘束を解かれたからと攻撃をする訳でもなく、感謝の言葉を述べてから、この部屋を後にした。

>ダン・マッケーニ・バビロン エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール


【一応これで一区切り付けたいと思います、お相手、ありがとうございました!】

2ヶ月前 No.702

黒闇の騎士 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限回廊/ローウェン・アルベリウス】

 武力によって全てを屈服させ、恐怖による圧制を以て世界の平定を為し得る覇道。古今東西に至るまで、その政治が失敗に終わって来たのは、上に立つ者がそれ相応の力を持ち合わせて居ないからだとフロレは語る。然し、何人であろうと平伏させられる力など、最早それは神のみが為せる御業。想像上でしか存在し得ぬ、架空の代物でしかない。そんな物を持ち上げて構築された理論の、何処を信じろと言うのか。
 所詮、どんなに優れた力の持ち主であっても、いずれは打ち破られる宿命を背負う物。この世の全てを力で支配出来る者など、誰一人として存在し得ないのだ。だが、今の彼女はその事実に気付く事は無いだろう。突き付ける言葉は、既に意味を為さぬ物となったのだから。もしも気付くとすれば、それはこの刃がこの女の心臓を貫いた時だ。

「……憎悪に囚われ堕ちるなよ、ゲイル!」

 遂に嘗ての同胞への説得を辞め、復讐の炎に燃える青年へと戻ったゲイル。団長代理として騎士団を担い、魔族に対する冷遇の改善に努めてきた姿から一転して、心に取り付けた仮面を剥ぎ取った彼は、魔族への憎悪を露わにする。激憤を込めた眼でフロレを睨み返し、先陣を切った彼はただ一言、背を向けるローウェンに言い放つ、自らに着いて来いと。
 それは紛れも無く、全員を引っ張って行く指導者としての姿。だが、それを見てローウェンが感じ取るはそれだけに非ず。復讐心に囚われるがまま、魔道へと堕ちかねない危うさをも、彼は実感していた。故に、その言葉に応じながらも、彼は決して堕ちる事が無い様にと進言する。

「簡単な事だ。貴様の考えは、事実とは程遠い」

 乱撃も、剛撃も、悉くが往なされ躱された。俊敏な動きで前方に陣取ると、フロレは雷撃の如し漆黒の魔力を纏わせた魔剣で、暴風を引き起こす。この無限回廊の壁を軋ませる程の暴虐な力。然し、荒れ狂う風を前に二人の心は頽れる事無く立ち向かう。碧の突風が強引に抉じ開ける、狭き突破口。ゲイルに続いて飛び込むローウェンは、容赦と言う言葉を心から消去させた上で次なる一手に臨む。

「魔族とて、心臓を殺せば死ぬのは同じ。そんな脆弱な存在の何処に、絶対的な力が在ると言う」

 振り翳される左手。無数の粒子となって放出される漆黒の魔力が、瞬時に膜となってフロレの全身を包み込まんとする。それは、一切の光を遮断し、暗闇へと陥れるが為の闇。膜自体に大した強度は無く、ゲイルの操る旋風によって破壊される事も踏まえると、視界を奪えるのは一瞬の出来事だろうが――恐らくはその一瞬が、続いて放たれる攻撃の命中を促すだろう。
 魔力によって浮遊した大剣より各部位を分離させ、双刃を手にして構えるローウェン。残った槍の先端へと闇の魔力を充填させると、フロレへ向けて一直線に飛ばし、鋼をも貫通させる闇の刃でその身を貫かんとして。更には発射と同時に疾駆を再開し、彼女へと瞬時に肉薄すると、首、心臓、両腕両足の悉くを斬り殺すべく、双刃による無数の斬撃で攻め立てる――

>フロレ・ゾンダーランド ゲイル・ベネルド

2ヶ月前 No.703

ダン・マッケーニ・バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc

【 歴史是正機構本部/実験室/ダン・マッケーニ・バビロン 】

 振り返るな。
 ただ、――お前を阻む者を轢殺してでも夢を叶えるがいい。
 それこそが夢を勝ち取る勝者の役割。敗者が流した涙こそ、お前の命の糧となる。
 エスメラルダは美しい。その美貌と豊満な肉体、つきすぎずやせ細っているとも言えない甘美なる体。
 だがそれに靡くことはない。美しい。だがそこまでである。
 手に入れたい夢でない以上、彼女に靡くことはありえない。
 全てを喰らう暴食のリヴァイアサンは――女という果実など、たかがちっぽけな一つの実としか捉えていない。

「そうだとも。
     、   、  ヴァルハラ   、  、 エインヘリャル
 さぁ行け、指輪の女帝。楽園へ召し上げられる不死戦奴が如く――遍く全てを塵殺するがいい。
 その果てにこそ、お前の未来はあるのだから。
 そして誇りを抱いて進むがいい、英雄。

   ・・・・・ ・・・・   、   、  、    ・・・・・・・
 ――お前の夢は、必ず叶う。諦めない限り、必ず。だから、妥協はするなよ?」

 ――そして燃え尽きるまで進むがいい。
   お前の焼失のその果てに、輝かしき英雄譚はあるのだから。

 そうして、――堕落と淫欲。そこに火を付けられた復讐の鬼は解き放たれ、この場を後にする。
 一切が全てを鏖にする。何にもなれない第二人種を殺戮しつくし、仇を取って帝国を復興する。
   、   、   、   、   、   、   、   、・・・・・
 結局のところ描く未来のためには殺しつくさなければならないという哀れな矛盾を女帝は抱く。

 それを知っていたから――妥協はするな。とことんまで追い求めるがいい。彼はこう告げたのだ。
 最後にダンが送った呪いの言葉<エール>は、パージルクの胸に突き刺すように研ぎ澄まされたもの。
 人々<第一人種>のために戦う女帝となるがいい。
 それこそ、俺が見たいものなのだから。

 限界が来ている? 何も関係はない。
 本来なら捨て駒でしかない? 何も関係はない。
 気合と根性さえあればそんなもの、どうとでもなるだろう?

「エステル、――ヘルガの奴はどうせ哀れな捨て駒にするんだろうが、俺は違うと考えている」

 面白いものが見れる。
 ただそれだけで、彼は歓喜するのだ。

「奴は必ず夢を叶えてくれる。
 この地に残る第二人種を鏖にし、臣下を手にかけ進むだろう。
 何故なら、奴はもう――立ち止まらない。己の未来を変えるため、気合と意志で突き進むのだ」

「何故なら、人は諦めなければ夢を必ず叶えることが出来るんだから。
 どんなに傷ついても、逆境に立たされても、体が消し飛んでも、体を犯されようとも。
 肉親が死んでも、友が死んでも、心が削られても、心を凌辱されようとも、誇りを穢されようとも。
 それを糧にして、想いの限り――何度でも立ち上がるんだからよ」

 異能が起動していることを示す深紅の瞳は、病的なほどに明るい蛍光灯に映えるように輝いていた。
 両手を広げて歓喜する。
 捨て駒扱いされた復讐鬼が、本気で己の復讐を成し遂げる。
 そんな、素晴らしいストーリーがまた一つ紡がれはじめたのだから。

「それが人類だ。
 俺が見込んで愛してやまない人間ってやつだ。俺が見たいものだ。
 さぁ、これから楽しくなるぞ――ハ、ハハハッ、ハハハハハハハアーハハハハハ」


 ヒャーーーハハハハハハハハハハハハハハァァッ――――!!!!


>エステランディア (パージルク) ALL

【パージルク本体様、お相手ありがとうございました】

2ヶ月前 No.704

健啖の銀狼 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【王都ロンカリア/飯店/イアン・ガグンラーズ】

具合の悪そうな様子を見かねて食べ物を振る舞った相手が、まさかの魔帝軍所属でかつ人間の大敵だったという事実が判明。慌てて彼女と距離を離し威嚇するイアン。
具体的にどんな悪事を働いているかは不明だが、姿を見ただけで尻尾をまいて逃げていったことからして、彼らにもたらす悪影響の程は相当なものであることが伺える。
このまま放置しておけば状況は悪化の一途を辿るばかり、ただでさえ狂気に沈もうとしている街がどうなってしまうかわからない。
ただ口ぶりからして下衆なヤツだったり根がひん曲がっていたりということはなさそうだ。悪意なき悪と呼ばれるタイプか、それとも誰かに命じられて不本意ながらやっているのか。
いずれにせよ戦って征することでわかってもらうしかない。それだけは確かだ。

「や、やめろよ!ボクが受け入れるのはご飯だけだぞ!

…そうだ!これを見ろ!」

荒い息を吐きながらにじり寄ってくる兎娘。間近に見ることで改めて読み取れる表情の異様さ、本人の持つ底知れない不気味さ。加えて彼女の全身から発せられる邪悪なオーラ…それを目にした瞬間、イアンは身の危険を察知して素早く飛び退く。
アレにどのような効果があるかは知らないが、触れればまず間違いなくこちらが不利益を被ることとなるだろう。今後も攻撃手段として用いてくるのなら、細心の注意を払う必要がある。
反撃を喰らわせる前に最後通牒を叩きつけておこう、そう考えたイアンは、避難していった客の残した骨付きステーキを、兎娘の眼前に突き付けて叫ぶ。

「ムシャムシャ…バリバリ…ゴクン!

どうだ!悪いことやめないんだったら、次はキミの番だからな!」

ハッキリ言って滑稽極まりない絵面なのだが、当の銀狼は真面目も真面目、大真面目。おまけに返事も待たず攻撃を開始する矛盾っぷり。
彼女の言う最後通牒というのは、ステーキを骨ごと噛み砕いて飲み下すところを、これ見よがしに敵に見せつけるという訳の分からないものであった。
恐らく『悪事を働き続けるなら食べちゃうぞ』と言いたいのだろうが…何はともあれいよいよ戦いの幕が切って落とされる。初っ端から狼形態へ切り替えたイアンは、持ち前のスピードと身軽さを活かして、兎娘を撹乱するように走り回る。
そしてテーブルの下を駆け抜けることで行方をくらませ、彼女の背後から浴びせる奇襲の一撃。

「バイシクル〜ッ、ビースト!」

尻尾の先端を加えて車輪の様に回転し、銀色のオーラを纏って爆走。最早定番の『バイシクルビースト』が炸裂した。ロンカ村で使用された際はオーラのみを発射することで遠距離攻撃のように用いたが、この度はそのまま突っ込む肉弾戦車スタイル。
コミカルな見た目に反して破壊力抜群、速度も十分にある。本格的に戦い始まる前から只ならぬ気配を漂わせていた兎娘、その実力の程は如何に…?

>>ラヴィ

2ヶ月前 No.705

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

 駆け抜ける焔と共に戦地へと踏み込んでの先手の三連撃は、黒猫の身体を捉える以前に乱入して来た魔剣士の刹那の一振りによって払い除けられる。敵方の総大将とも言える黒猫を殺し損ねた挙句、強敵の乱入によって正面からの殺害が困難となったのは相当な痛手だ。
 獰猛な生ける災害、先程の魔族狩りを更に飛躍させたかの様な思考の持ち主である、かの魔剣士の実力の程は推測だけでも黒猫を遥かに凌駕している。同時に相手取るとなれば最悪、後に誰かが止める事を願って"切り札"を引く事を考慮せざるを得ないだろう。然し、それが原因で魔帝を斬り殺したとなれば本末転倒も良い所。不利を取るか、有利を取るか。何方も選び難い、難しい問題である。

「……良いだろう、マロニスの騎士アーケオルニ。我らが辿り着くべき未来の為に、その剣を我が隣にて揮う事を許す」

 幸いだったのは。魔剣士とは別に乱入して来た一人、先の一戦にて剣を交えた龍殺しが今度は味方として、人と魔族との和平を願う者として戦場へと現れた事だろう。左腕を失った彼女に黒猫の相手を一任させるにはやや不安があるが、であれば己が彼女の左腕となれる様に動けば良いだけの事。迷いの無き、輝かしく映る表情を浮かべる彼女の意志を汲み、その戦列へと加わる事を二つ返事で許可する。

「王座とその真名を捨て、一介の魔族へと成り下がってまで従う価値を見出せたのは、今も昔もただ一人。
 かの君に捧ぐ忠誠を、貴様の矮小な器に向ける価値など無く、そしてその心算も無い」

 かくして一対二の状況は避けられ、二対二の状況で始まりを迎えた魔大将の間での一戦。自らを好敵手と認め、それを喰らう事に歓喜を見出す魔剣士が揮う胴体目掛けての一閃を、難無く焔剣で受け流して退ける。確かにかの一閃は速く、そして見えない。眼で捉える事に意識を傾ければ、気付けば腹を捌かれ臓物を引き摺り出される事は想像に難くない。
 だが、龍炎公の鍛え上げられた感覚は、眼以上の速さを以て脅威を感知する。揮う刃に関しても、不可視の境地へと達せさせるのは容易い事。感知から判断、そして判断から行動に至るまで、全てに余裕を持たせる事を可能としているのだ。

「今日は随分と血を狙われる物だ。此処まで我が血を求められているとなると、不思議にも心が躍る。
 ――いいだろう、喰らいたければ喰らえ。鮮血に染まりたくば、我に熱き血潮を流させるがいい!」

 先程まの龍殺し然り、魔剣士然り。此度の戦いでは何とも血を狙ってくる者が多いなと思い。それだけ自らの血が価値ある物に見えると言う事実は、殺意を向けられているにも関わらず、不思議と心が躍ってしまう。嗚呼、ならば全力で喰らい付いて来い、この熱き血潮をその身に浴びて見せろ。王座を捨てたと言えど、我を流れる血は紛れも無く龍王の血。この世にとってこれに勝る物は無い、希少な血だ。

「アーケオルニ、お前はお前自身の戦いに興じろ。配慮は無用!」

 地を蹴り味方の前に躍り出ると、迫る十字の斬撃を縦一文字で斬り捨て、即座に魔剣士への対処へと戻る。再び移動を開始するその寸前、視線を味方に向けると、此方の心配は無用であると告げると、移動を開始し室内からその姿を一瞬で消した。鍛え上げられた眼で漸く捉えられる程の速度で龍炎の騎士は室内を駆ける。
 室内に置かれた家具の数々を踏み台にしては破壊しつつ移動をして、遂にその姿が現れたのは魔剣士の背後。爆速の勢いで肉薄を果たすと共に揮われるは焔の斬撃。見た目以上の剛腕で揮われる焔剣の一撃は、肉を裂き骨を断つ程に強く。一縷の煌きすら残さずに放たれたそれは、彼女の纏える黒鎧を容易く突破して退けるだけの威力を持つ。

「存分に楽しめよ、魔剣士。果てに達するまで、付き合ってやろう」

 それに加えて間を置かずして放たれる五連撃。肩を、脚を斬り落とし、上半身と下半身を分断させる腹部を目掛けての連撃の数々は、やはり煌きを残さない。迫る不可視の焔の六連撃、対する魔剣士が見せてくれるであろう業を龍炎公は待ち続ける。戦士としての興が乗ったのだ、であれば満たしてくれるだけの物を乞うのは当然だろう。だから、失望させてくれるな。

>魔剣士 チェル アーケオルニ

2ヶ月前 No.706

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/無限廊下/"常山蛇勢"レプティラ】


サシャの幼いながらの精一杯の問い、だがニアはそれを一蹴した。どちらの理屈も彼女は理解できる、魔帝が魔族を嫌っているだとか人間と共存を選ぶことが魔族を見捨てることになるとは思えない。
だが、それでも積み上げた屍は変わらない。多くの理由で膨大な数となった多くの戦士、その個々の思いはどうであれ少なくとも魔族の為にと、人間との戦争が始まってから潰えてしまった命達。人間と和平を結ぼうなど、その死者の冒涜と取れることも彼女は分かる。
だから何れかを捨てなばならないのだ、和平を結ぶなら命散らした英雄たちの上にその平穏があることを噛み締め、戦争を続けるならば今掴めた平穏を見ない振りをして突き進まなければならない。とても重い選択だ、そう彼女は思う。
その選択を彼女はした、死んでいった同胞の意志が無駄になってしまったとしても、これ以上の犠牲を出さぬために、少しでも魔族全てに平穏が訪れる様にと、ニアとは別の道を選択した。それが命を懸ける理由だと、ニアを討つ理由だと、そう定めた。
ならば煌めく剣閃、これも仕方のない事だろう。ニアが必要と判断したならば殺さねばならないと、そう判断することは分かっていた。そこに感傷は、まああるだろう。少しでも剣が鈍ってくれたら何て、淡い期待もあった。だけど、ニアならこれでいい、きっと親しみを感じたニアもそうなのだから。
僅かに目で追えるだけの速度、炎で焦がされた尾を避け、蛆湧く視界から逃れ、地から天、天から地へと駆ける疾風。彼女の頭上を駆け抜けるそれに、只ならぬ悪寒を感じ首を捻る。ニアが殺しにかかるならば、急所を狙うなど考える暇もなかった。
首に走る一筋の赤、それを視認するよりも襲い掛かるは後方の重さがなくなったことによる不安定さ、急激な肉体への倦怠感、そして尾があった場所に走る痛烈な痛み。邪魔だと判断し、根元から絶たれた尻尾が付け根を失い廊下へと跳ねる。
倒れこみそうになりながらも、ふらつく身体でどうにか地に伏せる事だけは回避する。医術に精通する彼女は倦怠感は出血やそれに伴うものではなく、ニアの魂を殺すと言われる斬撃によるものだと結論付ける。厄介だと、騙し騙しの戦闘意欲も剥がれてしまいそうなほどであった。
すれ違いざまに聞こえた、惜しいと感じたという言葉。それも殺された戦闘意欲をさらに傷付ける、剣は鈍らぬとも、ニアが彼女に何を買っていたのか分からぬとも、ニアが彼女を認めていたことには間違いない。けれども、それで迷う時は既に過ぎた。
尾の出血は無視する、あわよくば目潰しにでもなればと思っている節もある。倦怠感も振り切って見せる、どれだけ魂魄が傷付けられようとも殺し切らねば彼女は既に止まれぬ。殺すならば、この痛いほどの感情であって欲しいと思うが、それでも抱えていたいとも思う。

「―――ッ!ニアァァァァァアアア!!!」

咆哮と共に既に背後から離れたニアを追う、肉体の傷など、精神の傷など、全てを無視してただ駆ける。その場を退避したという事は彼女にとってもこの目は厄介だという事だ。そして切り落とした以上尾もそれだけ邪魔であった、ならばこの戦場の決め手は彼女が担わねばなるまい。
僅かに思い出されるレオンハルトの言葉、ニア以外を生き残らせると言った生温いながらも確固たる信念。彼女が望む平穏が良きものである、そう言い切った胆力。成程、サシャが気に入る訳だと何処か遠い視線で感じたその感情。
何故か、それは彼女に生き残るつもりがないからだろう。ニア相手に数の利があろうとも犠牲無しは厳しいだろう、であればその犠牲は魔将軍が担うべきだ。部外者に背負わせる気もなければ、被害者に背負わせる気もない。何もできない魔将軍でも、こういった時には役に立たねば。
それに、サシャを残そうとも守ってくれる存在、しかも人間がいるならば心残りはない。魔族の中で生きにくくとも、人間の中で生きていけるだろう、サシャの心根の優しさからもそれは間違いない。だからこそ、生き残るべきはあの二人。
全ての心残りがなくなった訳ではない、伝えていない事、夢見ていた事、未練と呼べるものはある。だがそれはどれだけ尽くそうとも残ってしまうものだと彼女は思う、だからこの瞬間だけでも悔い無きように、ニアへと駆ける。
レオンハルトが蛆の湧き出る方へ退避することで好機を窺う、だがそれではサシャが危ないのだ。あの剣はレオンハルトを殺すと同時に、サシャをも殺すために振るわれている。だからこそ、人間の擬態を一部解き下半身を尾へと変え、サシャを中心とし蜷局を巻く。
サシャを狙った剣戟、肉体を盾として防ぐ。鱗が弾けながらも、その内の肉が抉れながらもサシャを狙う十に届かぬ剣舞を全て受け止める。痛みよりも、喪失感の方が大きい、僅か五度で倒れこみそうなほどであったのだ、その倍を喰らえばどうなるかは想像に容易い。
だがそんな想像など軽く振りきるほど憔悴していた、何を失くしたかもわからず、何を喪ったも分からない、感情か、記憶か、決意か、望みか、憧憬か、どれが削れても彼女の構成する一部が消えたことには変わりはない。だが、それでも戦意だけは未だ爛々と輝き続けている。

「ニ、ア……貴方を、倒します、でも何で……いや、倒さなければ……」

再び開かれる右目、レオンハルトには悪いがその視界を逸らせる余裕はもうない。背後に隠したサシャを除いた視界に移る全てが白く泡立つ、再び広がる悍ましき白の狂宴、天井も壁も床もその全てが蠢きだす。
それと同時に、先に湧いた蛆が蠅となり全てに襲い掛かる。廊下を埋め尽くすほどの黒き砂嵐、近くにいる生きる全てを怨念の仇とし突撃する穢れの軍勢。レオンハルト、ニア、そして彼女自身にも襲い掛かる。サシャは背後から動かなければ彼女が全て受け止めるだろう。
蠅自身の攻撃能力は低い、ただその突撃は生まれたばかりの己を賭してまで相手へ穢れを蓄積させるもの。ニアとはまた別方向の魂を傷付けるもの、多くの斬撃を受けた彼女にとっては諸刃の剣だがニアの斬撃と比べれば魂が死ぬまでの猶予はまだある。
是の目的は、廊下殆どを埋め尽くすことでニアの軌道を視覚化するため。動いた場所の蠅は死滅し、黒き嵐の中空洞が視認できる。そうなれば速さには反応できなくとも、軌道の予測から反撃は可能なはずだ。黒き物が視界を埋め尽くす気味の悪さはこの際は仕方がない。
そして更なる追撃とし、偶然にもレオンハルトの六連斬と凡そ同時に振るわれる擬態を解除したことによる伸びた尻尾の薙ぎ払い。先に振るった物よりも長さは劣るが、それでも廊下の幅に至るほどの長さはある。先端からは鮮血を撒き散らし、視界塞ぎにでもなれば上々だ。
身に穢れた蠅を受け止めながらもその目はニアを捉え続けている、此度は右目を閉じない。どれだけ動こうとも、ニアを追い続けて見せると、残った戦意がそうしろと訴えかける。既に思考は必要ない、唯本能に任せニアを討つのみ。

「―――ニア、私は……」

その先に続く言葉すら思い出せない、友だったのか、親しくなれたのか、それとも違う感情か。語る彼女にも分からぬそれが伝わる訳もない、だが少なくとも良き感情であったのは確かだ。戦意に塗れた今でも、その想いは変わらず。
瞳に溢れる涙が頬を伝う、その涙はきっと彼女の心。討つと決めた今でも揺れ動き続ける、だが揺れるだけだ。どれだけの魂を削られようとも戦意が損なわれていない、それだけ彼女の決意は固く、折れることはない。
その決意さえ、削られてしまったのかもしれないが、だがそれでもまだニアの前に立ち続ける。討つとそう決めたから、守るとそう決めたから、望みを果たすとそう決めたから。決めた以上、引き返す道は既になし。
この身、この魂、全て潰えるまで止まることはない。どんな状況であってもニアを討つ、それを成し遂げるまでは死して尚身体を動かそう、魂削られようと尚肉体を動かそう。それが、彼女の決意。
虚ろな意識、夢見るは有り得ない幻想。それを夢と分かりながら、現実の為、どれだけ望んだものでも切り捨てる。
笑ったニア、そんなものはない。人間と共に居るニア、そんなものはない。もう、己の理想にはニアはいない。
故に、その理想に自身の場所さえなくしていく。望みをこの目で見る想いは、消えて無くなった。

>>ニア サシャ レオンハルト・ローゼンクランツ

2ヶ月前 No.707

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大宿屋/黄衣なる者】


やっとだねえ、やっと会話らしい会話が出てきたねえ。まあ会話が出てきたとしてもここで撤退するんだけどねえ、何故かって?それは足止めの役目を終えたからねえ、最後まで戦うなんてそんな柄ではないからねえ。
さて、相殺の為に放った魔力弾だけどねえ。実は風の刃に対しては一つで足りるんだけどねえ、小竜巻は一つじゃあ足りないんだよねえ。まあ詰まる所どういうことかと言えば、彼女はすぐさま回避行動を取らないと小竜巻に切り裂かれちゃうねえ。
そうそう、風の刃は全て相殺されたねえ。魔力弾一つで相殺される上に、幾らか巻き込まれてるからねえ。数が足りていなくても、全て相殺されてしまったみたいだねえ。そして相変わらず飛んでくるのは五個だけだねえ、様子見にしては長いけどねえ。
今回は障壁ではなく、力場を使って逸らすねえ。障壁はそろそろ割れてもおかしくないからねえ、逸らされた魔力弾は宿屋に直撃して半壊したねえ。うんうん、やっぱり威力はかなりあるみたいだねえ。

「さあ?どうだろうねえ、君に勝てない程度の相手が他の場所に行った所で被害が大きくなるとは、思えないけどねえ。」

クスクスと笑いながら語り掛けるねえ、そろそろ別の反応を探した方がいいかもねえ。困ってないようにだとか、クスクス笑うだとか、結構似た反応だけじゃ飽きると思うんだよねえ。
まあそれはそれとして、この言葉の真意は相手の実力を見誤ったと見せかけることだねえ。だって、この状況から考えても慢心してもおかしくないだろう?全て対処されるけど、逆に言えばそれ以上はしてこないのだから。
だから君程度で抑えられるなら、別の場所でも変わらない、そう言ってるんだねえ。まあ、彼女がどれだけ強いかなんて興味はないんだけどねえ。あまり強くても、やられちゃうからねえ。うわーやられたーってね。
さあさあ、未だ残る小竜巻に加えて今から繰り出す攻撃で攻めていこうねえ。まあどうせ近いうちには撤退するからねえ、後先考えずに行こうかねえ。大盤振る舞い、二度目と行こうねえ。

「そろそろ他の技も見せてくれると嬉しいんだけどねえ、まあお前には言われたくないって思うのは分かるけどねえ。ほぅら、風の刃だねえ。」

今回はそう、嫌がらせで行こうと思うねえ。宿屋の中に突如吹き荒れるは暴風、何も風で断ち切るだけじゃないからねえ。元々風って吹くもの、ならこちらの方が自然だねえ。
室内に吹き荒れる暴風に、幾つかの風弾を混ぜるねえ。これは当たったらその場で風が炸裂して吹き飛ばすねえ、しかも相当な距離離れないと余波で吹き飛ぶほどの強風が発生するからねえ。もし相殺なんて狙ったら、面白いくらい吹き飛ぶだろうねえ。
さらに相殺しきれなかった小竜巻も添えるねえ、おやおやこれは豪華だねえ。滅多に無駄遣いはしないんだけどねえ、こうも反応が薄いと反応を引き出すために頑張ってしまうねえ。
まあ、これで最後なんだけどねえ。そろそろ潮時だからねえ、戦場も一つ終わりに向かったようだからねえ。ここに留まり続けて囲まれた、何て笑い話には下らな過ぎるからねえ。

>>ジークリンデ・エレミア


【次で何もなければ撤退させて頂きます】

2ヶ月前 No.708

王国の騎士 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

龍炎公の許しを得て、新たな時代へ踏み切るための戦いに加わる。魔大将のチェルだけでも難敵だというのに、厄介極まりない性質の持ち主である魔剣士までもが立ち塞がり、状況は決してかんばしくはない。
しかし竜狩りの辞書に撤退の二文字はないのだ。全身に傷を受け、五体満足という騎士の絶対条件すら欠いていてなお、踵を返す素振りなど微塵も見せはしない。
"竜狩りのアーケオルニ"の最期にして、"王国の騎士"としての初陣。中世をめぐる人間と魔族の戦いは、間違いなく魔帝城での決闘を最後に幕が降りる。
続きはない。勝っても負けても、ここで終わる。ならば勝って終わらせ、罪無き人々を一人でも多く救うのが、王国騎士としての務めではあるまいか。
そのことを忘れたまま18年間を費やしてきた彼女にとって、殺すためではなく護るために剣を振るうという感覚は、得も言われぬほどに心地よいものだった。
殺戮こそが全て。そう叩き込まれて生きてきた自分が、今では王国の守護者として、たった一つの命を燃やしている…傲慢かもしれないが、アーケオルニは初めて"使命感"や"やりがい"といったものを見出していた。

「おあいにく様。アタシは指一本でも残ってれば十分なんでね」

含みを持たせるような投げかけの後に攻撃を開始するチェル。溢れんばかりの魔力が湧出させる水は、瞬く間にフィールド全体を焼き焦がす炎を飲み込んでいく。
相手より数段上手であること、後手に回っても劣勢になど立たされないことを誇示するかのような立ち居振る舞い。並の兵ならばこの時点で戦意を削がれ始め、腰が引けてしまうことだろう。
しかし今彼女らの前に立ちはだかっているのは、名もなき有象無象の雑兵などではない。片や、龍族の長にして魔帝の忠臣。片や、魔族の鏖殺に人生を投じた騎士。
共に正反対の立場と視点からこの世界を理解し、今では己が責務と理想のために同じ道を歩む者同士。話術はおろか、刃で以て切り伏せたしても、二人の信念を変えることは不可能である。

「魔族にこの身を案じられるとは、アタシも衰えたもんだな!」

魔大将が繰り出す十字の斬撃。その対処に頭を悩ませる間も無く、割って入るは龍炎公の縦一閃。断ち裂かれた斬撃は消滅し、ここにアーケオルニを束縛する要素も雲散することとなる。
支援など考えず、己が戦いに全てを注ぎ込めと叫ぶ彼に、憎まれ口を叩きつつも感謝の眼差しを投げかける。全く、物事はわからないものだ。ほんの一、二刻前、相手の喉笛に刃を突き立てんと剣を振るっていた二人が、今や互いを案じて死地へと望んでいる。
そんな奇妙を通り越した自らの運命に苦笑を浮かべながらも、せっかく作り出された攻撃の機会を無駄にはすまいと前進するアーケオルニ。依然として水蒸気による狭視界が続いているが、火炎魔法で以て進路を切り拓き、すかさず攻撃態勢へと移行する。

「ドラゴンスレイヤー…改!」

全身にかかる負担も、命を蝕む竜化の呪いも意に介さず、右手に握り込んだ大剣を空高く放り上げる。続けざまに大跳躍、愛器との再会を果たして間も無く繰り出されるは『ドラゴンスレイヤー改』。龍炎公に一太刀浴びせた奥義の進化である。
空中にて横への薙ぎ払い、更に急降下しながらの斬り下ろし。双方の動作に衝撃波が付随し、組み合わさることで十字を成して魔将軍に襲い掛かる。
愛用する技に改良を加え、かつ先程の敵の攻撃への意趣返し。竜の鱗を裂き、甲殻すらも断ち切る猛烈極まりない一撃は、果たし有利な流れを手繰り寄せることができるのか。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド、魔剣士

2ヶ月前 No.709

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

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2ヶ月前 No.710

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/魔大将の間/魔剣士】


片手で薙いだだけの一閃、小手調べに過ぎないがそれだけで両断され、臓物を撒き散らした命は数知れず。その凡百と目の前の龍は違うといったところを示して見せた、視界に頼らぬ感覚によっての対処、これは好いと笑みをさらに深める。
久方ぶりに剣が弾かれた、肉に食い込むことなく、臓物を引き摺り出すこともなく、命を散らすことなく、血を浴びることなく。堪らない、これは喰いがいがある。即座に喰い潰しては惜しいほどに、嬲り続け味が無くなるまで味わい尽くしたい。
だが残念なことに、龍だけで満足するほど御行儀の良い存在ではない。そう、あくまでこれは味見に過ぎない。ならば次に試すべきは、誰かなど分かるだろう。そう、黒猫以外に居ない。
次に人間、然程期待はしていないが予想外程悦楽を突き破る快感はない事もまた事実。もし喰うに足る存在であるならば、片腕がないのがまた悔やまれる。五体満足であれば潰す楽しみも、まだあったというのに。

「ああ、喰らってやるとも。だが、貴様だけでは足りぬかもしれぬからな……」

黒猫の水によって遮られる視界、だがその中でも魔剣士は黒猫、龍、人間の動きは視えていた。人間に襲い掛かる黒猫、飛ぶ十字の斬撃は龍が防ぐ。龍は何とも酷い、喰らえと言っておきながらも己は他者へ気にかける。
だがまあ、それも喰いがいがあるというもの。他への目移りが激しい龍が熱中すれば、それはどれだけ甘美なるものへ変化するのか。ああ、そうなると人間のが少し邪魔だと魔剣士は笑う。
味見序でに喰らってしまおうか、だがもし逸材であったならばそれで喰らうのは惜しい。ああ、困った。強者の可能性が多すぎて、目移りをするのは此方もであったか。だが、味見をやめられぬ。その喰らった時を想像し、またさらに昂るのだ。
遮られる視界の中、視覚からの龍の強襲。生半可な防御など容易く貫き、身体を断ちて飽き足らぬほどの威力の剛剣。焔を纏いしそれは魔剣士の背へと吸い込まれるように煌めき、容易く弾かれる。
視認せず、長剣を背後に回し角度をつけるのみであしらわれる。続く四肢と胴を狙った五連撃、それも姿勢を変えることなく弾き切る。どれほどの剛撃であっても、まだ魔剣士が両手を使うには遠い。

「龍、貴様も喰らうがまだ味見が済んでいないのでな。達するのは、また後でだ。」

振り返りながら袈裟に一閃、殺気も気配も、果てには音すら置き去りにした必滅の斬撃。意識外で放たれた一撃、故に意識すればするほど知覚が遅れる。威力も速さも、また命散らすには重すぎる。だが、龍が対処できると見込んだ牽制でしかない。
是の本命、それは黒猫の味見。人間の十字斬が襲い掛かる、それを利用し味見をするのは不本意ではあるが態々相殺して助ける必要もない。そも、あれをどうにかできる程度でなければ味見をするまでもない。
音、気配、殺気、そして存在。その全てが消え失せたかのように黒猫の背後へと回る、狙うは臓物の詰まっているその胴。避けなければそこまで、避ければ喰らう価値あり。血錆に塗れた長剣は三度、音なく煌めく。
横薙ぎ、逆袈裟、刺突。その全てが秒を四度割ろうとも優に収まりきる速度で振るわれる、神速にして隠密の一撃。放たれる全てが黒猫の柔らかい肢体を裂くに余りあるもの、それどころか命を三度散らそうと足りぬ。
だがそれを避けてこそ、より上質なものへとなる。喰らった時の快感が、悦楽が、さらに高まる。未だ誰も血を流さぬこの戦場、されど昂ぶり続ける魔剣士。強者が強者であること、それが示されるたびにまた一つ昂る。
龍、黒猫、人間。どれも素質は十分、であれば後は戦いの中で熟れさせて、頃合いを見て喰らう。全身でその血を浴び、この間を臓物で溢れさせ、魔剣士以外が地に伏せた部屋で踊ろうではないか。
その剣は、まだ血を求める。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ

2ヶ月前 No.711

魔帝 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/深淵の間/魔帝ヴェルメイユ】

ヴェルメイユの決意を聞いたブロヴァンスは、その言葉を他の者達へと伝えるため、姿を消す。彼は、己の命を、魔帝のために捧げることを決意したのである。
もはや味方などいないかに思われた状況。彼女を救ったのは、声なき魔物の代表であった。人類を滅ぼし、新たなる魔帝となる黒猫の野望を阻む存在が現れたのである。
とはいえ、戦況は決してよいとはいえない。軍が内輪揉めしている間にマロニス王国軍は城の奥深くまで攻め入っており、各地で激しい戦闘が繰り広げられているのだ。
ラガルデール王国の復興を最優先目標とするヴェルメイユにとって、魔族の存亡は必ずしも重要ではなかった。しかし、今は違う。彼女は己に、王として全ての魔族の命運を背負う氏名があることを自覚していた。
仮にこの先人類との和解が成り立った暁には、自分は人間も魔族も関係なく、全ての種族が平等に暮らすことの出来る国を作り上げる。そんな決意と共に、魔帝は次なる一歩を踏み出そうとしていた。

影が去り、静寂に包み込まれる深淵の間。そこで佇んでいた魔帝の元に、突如として猛吹雪が巻き起こる。それが何を意味しているかを理解するのは容易い。敵の襲来である。
王国の騎士が氷魔法でも使役したのかと思っていたが、次の瞬間姿を現したのは、騎士の氷像とでも形容すべき、氷の精霊。なるほど、彼は人類に味方をしている魔族の一人か。
魔族だからといって、必ずしも魔帝軍に所属しているとは限らない。例えば勇者の従者であるロコのように、自らの意志で人類に味方することを決めた者もいる。
故に、ヴェルメイユが驚きや落胆の感情を抱くことはない。敵対するならば、それまで。異なる陣営の者同士が出会ってしまった以上、そこに発生するのは命のやり取りだ。
氷魔像が乗り込んだのを切っ掛けに、続々と深淵の間へ役者が集まってくる。二人目は、緑髪の青年。一見すると如何にも温和そうな雰囲気だが、どうもその心の奥底には正反対の感情が渦巻いているようにも感じる。
そして三人目。人間の少女……いや、ただの少女ではない。あの剣は、以前一度見たことがある。奴の娘か。父の死後に、魔帝討伐の意志を継いだということだろう。
これほどまでに親孝行で、才色兼備な子を授かるとは、彼も幸運なものである。出来れば、こんな形で会いたくはなかったが、彼女にとって自分は親の仇。敵意を向けられるのは、当然のことである。

「如何にも。この私が魔帝ヴェルメイユだ。それにしても、人類の守護者、か。実に皮肉なものだな」
「随分とお疲れのようだな。あの回廊は、私達にとっての敵が踏み込んだ時に限って無限となる。お前が心配したような不満が出ることはない。案ずるな。そして、私にとってはお前のいう歴史とやらは関係のないことだ。勝手な都合を押し付けてくれるなよ」
「人間の勇者がそのようなことを聞くとはな。私が戦う理由は今も昔も唯一つ。少なくとも、魔族の繁栄や人類の抹殺といった単純なものではないとだけは言っておいてやる」

三者三様の言葉に、それぞれ返答を行うヴェルメイユ。特に、アンナローズの言葉は、核心を突いたものであった。そもそも、このような曖昧な回答をした時点で、彼女には別の目的があることを察するのは簡単だろう。
だが、それを他人に話したところで何になるというのだ。目的がかつての王国の復興と聞いたところで、人類が今更協力するはずもないし、未来からの勢力は正しい歴史とやらを守るため、きっと自分を殺しに来る。
つまり自分は彼らの知る歴史においては敗れ去ったということを意味しているのだろうが、そんなことはどうでもよい。幼き頃からの夢を果たすまでは、意地でも倒れてなるものか。

「さて、お前達はここへ会話をしにきた訳ではないだろう? 来い。先手は譲ってやる」

彼女は魔帝としての威厳と余裕を見せ付けるかの如く、挑発の言葉を投げ掛けながら、敢えて先制攻撃はせず、様子を窺うことに専念する。
勿論それは言葉通りの意味もあるのだろうが、もう一つ、考えられる理由としては、彼女がそもそも人間との戦いを望んでいない、ということが挙げられるだろう。
出来る限り攻撃したくないと考えているからこそ、わざと開戦を遅らせている、ともいえるのだ。まあ、三人の中にそのような思考に至る者などいないだろうが。
敵対者達へと突き刺さる、鋭い目線。ヴェルメイユの本心は、未だ闇の中。それが白日の下に晒されることは、果たしてあるのだろうか……

>アンナローズ・フォン・ホーエンハイム、氷魔像ギラード、ハザマ

2ヶ月前 No.712

閃剣 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【マロニス城/厨房/レーヴ・カストリス】

レーヴの脳内が困惑と呆れによって支配される。全ての性別を超越した存在……か。確かに、そういった捉え方も出来なくはないが、とにかく相手にしていて疲れる。
戦いの最中で茶番を見せられても、一体どういう反応をすればよいか分からない。取り敢えず、無視すればいいかとも思ったが、奴の性格ではそうさせてもくれないだろう。
しかし、彼……彼? 彼女? …………ガドン。ガドンの戦闘能力は本物といえる。常人であれば視認することすらも難しい四連撃を、的確に防ぎ切ってみせたのだ。
それも、レイピアの刺突で。声に素が出てしまっていたような気がしなくもないが、とにかく、この動体視力を掻い潜って攻撃を当てるのは、至難の業といえる。
こちらの攻撃を防いだ後にすぐ後退したところを見ると、接近戦には持ち込まれたくないのだろう。ならば、徹底的に間合いを詰め、敵のリズムを乱してやるのが最善だ。

「男にだって自分のことを私っていう奴はいるだろ? そういうことだ。それに、おにねえさんだと別の意味になりそうだ」

ミコルナは彼の説明が分からないというが、当然のことだろう。何せ、自分でもよく分かっていない。取り敢えず、一人称についてはこれでどうにか理解してくれるだろうか。
彼女が発言したおにねえさんという言葉を聞いて、レーヴが連想したのは"鬼姉さん"という綴り。それだと、中間の性別を指す言葉ではなくなってしまう。
ガドンの性格からして間違っていない可能性もありそうだが、それを言ったら激しく怒りそうだから扱いに困る。出来れば、普通の敵と対峙したかったものだ。

敵の詠唱と共に、光が充満する。いきなり歌い出したので少々面食らったが、まあ歌声は悪くないかも知れない。などと思っていたら、突然デスボイスになった。
行動から言動の隅から隅まで反応に困る上に疲れる男……ガドンだ。いちいち気にすることすらも億劫になってきたので、もうこれからは考えないことにしよう。
二人へ向かってくる無数の流星。レーヴは双剣を構え、それを撃ち落とそうとするが、それよりも早くミコルナが動き、敵の攻撃を全て霧散させた。
これで反撃に集中出来る……と思いきや、あろうことか彼女の放った矢の流れ弾が襲い掛かってきていた。直ぐ様反応し、叩き落とすものの、気付くのが遅れていれば大変なことになっていた。

「おいおい、どこ狙ってんだ? しっかりしてくれよ。オレのハートでも射抜くつもりか?」

一歩間違えば同士討ちになっていたという状況にも関わらず、レーヴは軽口を叩いてみせる。大事には至らなかったので、彼の中ではよしということなのだろう。
再びガドンの方へ向き直ると、彼は瞬時に加速し、一気に敵の懐へと飛び込む。遠距離戦には持ち込ませない。どこに逃げようが、接近戦で勝負し続けてやる。
光をまとった双剣による、目にも留まらぬ五連撃。そのまま相手を飛び越えたかと思うと、今度は背後から三連撃。トドメとばかりに跳躍し、上空から四連撃。合計十二の斬撃が、ガドンへと迫りくる。
近距離から圧倒的な手数で敵を押し込む。それが、閃剣のレーヴの戦法。これらを全てを防ぎ切るのは非常に難しい。敵の動体視力が優れているならば、それですらも反応出来ない数の攻撃を打ち込んでやればいいのだ。

>ガドン・バルザック、ミコルナ

2ヶ月前 No.713

わんわんお @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/ヘシアン・ロボ】

 交差の瞬間、互いの牙が唸りを上げる。
 咆哮に合わせて、姿を現す互いの必殺宝具。
 英霊の誇りと、報復の象徴が互いの首を刎ね飛ばすべく気勢を上げている。
 梯子外しからの不意打ちを狙っていたにしては、あまりにも予見され切っていた行動だ。
 順当も順当と言えるだろう。数の理は人間が獣を狩るに当たって常用されるものであり、それはサーヴァントと召喚士という超人どもを交えたとしても変わらない。それを、まして狼王がいくら憎悪に狂っていようが理解していないはずはないのだ。

 その意図が攪乱と虐殺に在ったこと、それ自体は否定しない。
 狼王にとっての勝利条件が、自分の牙で噛み砕くことではなく………この城壁の第二波、第三波と雪崩れ込む魔族たちの上陸支援が含まれていることに至らなければ、多少不可解な行動にも映るだろう。そして、それを加味してもなお不可解だ。
 何故なら、ランサーのみならず、三者三様の集中砲火を見れば分かる。
 自ら包囲網を作り出したも同然だ。自ら、回避不能の状況を生み出したも同然だ。
 傍から見れば愚かとしか言いようがなく、だが状況として狼王は致死の牙を振り翳している。世界に偏差を掛けて振るえば、射程内ならばたちまち首を刈る鎌刀と騎士の刃は幾ら優れた武勇と叡智を持っていようが関係がない。

 人間、頭と胴体を切り離せば死ぬのだ。実に分かりやすい、その為の手段などロボは選ばない。
 食い千切ってやるとも。引き裂いてやるとも、自らの爪で。牙で、ありとあらゆる武器を以てして。

 故にこの瞬間、すれ違うその一瞬より先に紅槍が煌めく。
 対処最優先は此方だ。あれは因果を打ち砕き、死を齎す、ある種完全な狼王の上位互換と言って良い。
 超速でランサー目掛けて駆ける狼王は、まず吹き荒れる竜巻を躱す。回避の挙動は眼を疑うような絶速、何の加速動作も付けることのない急加速と横っ跳びで以て竜巻を躱し、擲つ準備を整えられた魔槍が唸りを上げるのを今は捨て置く。
 踏み込んで来た召喚師の刃には首無し騎士のシェイプシフターが引き戻されると同時に応じる。斬り下ろしを二本が弾き、斬り上げを戻って来た二本が鍔競り合いに持込み、残る薙ぎ払いが狼王の躯を斬り裂くも止まることなどない。

 そして予想通りに食い付いて来た。
 だからおまえは今捨て置くのだ―――狼王の疾走は、今なお、彼とはまるで違う方向に向いている。

 狙撃手も動いた。銃が唸りを上げている。
 同胞たちを撃ち殺して来た武器だ。十六に及ぶ掃射を冗談ではない速度で回避しながらも、
 しかし“ここを回避すればランサーの本命を避けられない”ような詰ませる箇所だけは避けない。
 単純な威力評価の問題であると同時、ここで連射撃を行動に選んだアベリィの対応の練達を賞賛するべきだろう。着弾点で爆発を起こした炸裂弾が視界を赤い血で染めてなお止まらない。四肢への攻撃は機敏にも狡猾にも全て回避している。
 ならば止まる道理はなく、後は蒼き槍兵さえ突破してしまえばその喉元を食い破れるだろう。

  狙撃手の読みは正しく的を射ると言えるだろう。
  この狼は餓え切っていて、乾き切っている。人を食い殺すのは、その憎しみを紛らわすためだ。
  食い殺して足りぬ、斬り殺して足りぬ、踏み潰して足りぬ、原型すら残さぬほどに砕いても足りぬ!
  次の、次の、次の次の次の―――やがて狂おしいほどの憎悪は、彼が何のために牙を剥くかも忘れさせる。


「―――■■■■■■■■■■■■■■■■!」


 そして、最大の難関と彼は零距離で交差した。
 正しく視界を埋め尽くすが如き、紅の棘と対峙した。
 あれらはまるで戦略兵器だ。風を切る絶速、城の壁程度ならば紙細工のように穿ち潰す破壊力と貫通力。
 上空から襲い掛かるそれへの対処こそが本命だった。呪いの朱槍は数多の怪物と英雄を仕留める因果逆転の魔槍。投擲という形式で使われた彼の宝具は、正しく城塞都市一つ程度ならば一投で消し飛ばせる程度には冗談のような威力を持つ。
 加減はした、と彼は言う。だが文字通りの対軍宝具だ。
 それこそ、言ってはなんだが継ぎ接ぎの霊基でしかない狼王ロボと傭兵ヘシアンの憎悪と怒りを象徴とした宝具よりも、ほぼすべての点において上回っている。控えめに言って、それを使わせた時点で大抵は“詰み”なのだ。


 ………だが、ならばこれはどういう有様か。
    加減したにも関わらず、周囲に幾つものクレーターを作る魔槍の暴威を受けて尚。

 一発が明確に胴体に突き刺さって尚、その狼が平然とした態度で吠え立てているのは何の冗談か。
 周辺を消し飛ばすが如き槍の絨毯爆撃、その大半は打ち合えるようなものではない。故に狼王はその敏捷性を以て回避し続けたのだ。他のあらゆる攻撃が着弾して血塗れになっても理解の上で、獣のしぶとさという言葉の意味を存分に見せつけた。
 だが、それは“しぶとい”では済まされない。
 槍が突き刺さって尚、憎しみを吠え立てる狼王の有り様はただの魔獣を通り越した怪物だ。

 ―――そう。ほぼ全ての点において、ケルトの大英雄クー・フーリンは狼王ロボに勝る。
    トップサーヴァントに比肩するスペックを持つと言ってもふさわしいものだろう。


 ただし、彼ですら到達できない点がある。憎しみだ。
 霊基を改竄しようとも、自我を失うことのないほどに暗く冷たい憎悪。
 親しいものでも殺されなければ産み出すことが出来ぬほどの、人類すべてへの有り余るほどの憎悪!

 月下で慟哭が響く。
 誰にも俺を邪魔させはせぬ、と。
 そのまま、跳躍したランサーを、正反対にして上位互換の“対人宝具”を持つ英霊を迎え撃つように。

 否………それが狙いだと判断したのならば、それすらもズレている。
 気付けば三者を、ひとっ跳びで食い殺せる立ち位置に狼王は陣取っていた。
 だが、攻撃が届く位置ではない。ならば何のために? どんな意図があってそこに立っている?


「■■■■■■………」


 まさか、諦めたのか。
 などともしも考えたのならば、それが恐らく致命の隙だ。

 狼王が吠え立てる。その憎悪を、その殺意を、その慟哭を。
 ここでもう一度語るが、この復讐者の宝具とは、世界に偏差をくわえる宝具だ。
 因果を改変するものではない。レンジ内の世界を改変し、攻撃箇所を調整することで首を刈りやすくする。
 人間は頭と胴体を引き剥がせば死ぬのだから、そこさえ断てればなんでもいい。
 首無し騎士の理と狼王の憤怒が結晶となった、またひとつの“対人”における最凶宝具だ。



「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――――ッッッ!!!!!!!!!!!」



 つまり。

 自身の攻撃に偏差を加えて振るえば、レンジ内ならば何処の相手の首でも刈れるわけだから。
 単純な攻撃距離を“惑わす”という点において。人間を効率よく殺す点において。
 これは、彼の大英雄の紅棘すらも上回るほどの性能を見せる。


 その場で狼王は、銜えていた鎌刀を思い切り水平に薙いだ。
 合わせて首無し騎士が蓄えていたブレードを開放するように、あらゆる方向にその刃を伸ばした。
 各方向に夥しい勢いで襲い掛かる刃は縦横への逃げを制限しつつも、ライドウが召喚したクー・フーリンの心臓を穿ちに掛かり、同時に魔槍の投擲ポイントをずらすようにして襲撃を掛ける。
 空のランサーには単純に足元から串刺しにするように、
 アベリィは背後への逃げ道を消すように、
 首無し騎士の両腕が変質し、貪るように斬り殺す無数の刃となって襲撃をかけていく。


 ―――そして本命は、その狼王がなんでもない空を薙いだ時だ。



 攻撃箇所に対して発生した甚大な世界への“ズレ”は、狼王の牙を正確な攻撃箇所へと誘導する。

 なんでもない場所を斬ったとしても、その斬撃はレンジ内にいる三者全員の首元に発生する。

 完成するのは容赦のない奇襲攻撃だ。
 振れば当たるというわけでもなく、防げないというわけでもないが。

 何故ならそんな使い方は、ただの一度とて見せていない。そして、当たったなら人間は殺せる。
 多くを殺すにはこの三者の包囲網は逆にうってつけ。
 全員の意識が攻撃に向いた砲火の状態こそがねらい目であり、その為ならば労力は惜しまない。


 同時に―――。

 空へと高く飛んだランサーなどは、無傷では間違いなく避けられはするまい。
 宣誓通りだ。最初におまえを殺す、とあの時狼王が瞳で告げたように。
 首元へと突然飛来する本命の刃、足元から串刺しに掛かる斬撃、空中で易々と二段構えを凌げはしない。あの宝具で詰ませられなかった以上は、紛れもなく詰みであり、他二者からの援護も、彼らに飛ぶものも“致死”の一撃ゆえに期待させない。

 紛れもなく、これは狼王の引き出せる殺意の終点だ。
  フリーレン・シャルフリヒター
 遥かなる者への斬罪―――その真なる形が、今此処に牙を剥く。


   殺しても、殺しても、戻って来るはずの故郷が遠ざかる。
   あの土のにおいも、走り慣れた草原も、今では何もかも覚えていない。

   それでも、人間《かいぶつ》が見えるのだ。
   だから、ああ、殺さなくては。俺はこの生き物を、殺したくてたまらないはずだったからだ。


>ランサー、ライドウ、アベリィ・シルバラード


【次で退場予定です(挨拶)】

2ヶ月前 No.714

"混沌" @kyouzin ★XC6leNwSoH_0D6

【魔王城/魔将軍の間/フィラッサ】

当然の事ながら、大きく着弾地点を外した榴弾は、その爆発力を持ってしても、相手を粉砕する事は無かった。
せめて破片で、とも思ったが、相手は炎の防壁を作り出して、破片や爆風によるダメージも完全にシャットアウトした。 となれば、この攻撃は間違いなく防がれたと取るべきなのだろう。
とりあえず、どうしようもない精度の射撃で、相手が大剣だけではなく、炎の魔術を使ってくる相手であると分かっただけでも収穫であろう、そして、炎魔術の相手は、身内にそういった奴がおり、そしてその身内は何れ殺そうと思っていたので、対処する戦術は多く持ち合わせている

そして相手は、先ほどの射撃の精度と、この衣装について思う事があったのだろう、皮肉交じりにスラムで花を売ってた方が良いと語った。
この状況で現れたもう一人の乱入者も、仕方が無いと言い出す始末。 実際のところ、フィラッサの衣装を見た段階でほとんど者は仕方がないと思うだろう。

それに対してフィラッサは機嫌を損ねる訳ではなかった。

「あー、残念。 もうやってるね、お金は取ってないけど。 でも本業にはしないかなー。 私が好きなのは自由と混沌、自由に男も女も自分の物にして、勝手に戦場に出てきては殺戮を振りまく、それが私の生きる道なんだよ!」

何故ならば前々からそういった事には手を出していた、もっとも、お金は取っていないと前置きして。 つまり組織に属してそういった事をやっている訳ではなく、個人でやっており、そして……金の代わりに命を頂戴する、そこまでフィラッサは語らなかったが、相手からすれば、ある程度想像が出来るだろう。
だが、本業にはしない、あくまで彼女は自由にこそが価値があるのだと語り、その歪んだ欲求を剥き出しにする。
そしてある意味、フィラッサが語ったその言葉は、この場に居る男女二人、どちらも自分の射程内であると語るようなもので、嫌悪感を引き立てる。

さて、ここまで終わったのなら会話は終えて続きを、と思ったフィラッサであったが、彼女が動くより先に、乱入してきた女性の方が動く。
鎖を出現させて、まさしく空を舞う蛇のようにこちらへと向かわせる、この時点ではフィラッサは普通の攻撃だと思っていたので、二挺の拳銃の引き金を引いて、二発の弾丸を発射するが、そのどちらもが盛大に鎖とは見当違いの所へと着弾して爆発した。

結局鎖はこちらに当たる……なら回避しよう、と思って飛び上がろうとするが、その瞬間、鎖が網状へと変化して、少し宙に浮いていたフィラッサを絡めとって地面に引き摺り下ろした。

「ひぃやああああん!? うわぁっ、もう、何これぇ……でも、そう、そういう事がしたくて――うひゃああっ!!」

網となった鎖が絡みついたフィラッサは、奇妙な声をあげた後、嫌がるような声をあげるのだが、それにしては、妙に色っぽく網を解こうともがく。 ……どちらかと言うと自分のボディラインや、足、尻などの部位を強調するように。
当然ながら、それは「そういうことがしたくてやった」と認識したからで、エストに頬を染めながら声をかけるのだが、その瞬間飛んできたのは、最初から居た男が放った炎の衝撃波だった。

口では情けない声をあげても、その動作は精確その物で、素早く網の中で拳銃を衝撃波のほうに向けて発砲し一つめを潰す。
だが次に来る物も分かってはいたが、それ以上に、エストが使った魔術に釣られる形で、そちらを見てしまったために、迎撃がうまく行かず彼女は熱波を受けて吹っ飛び、壁に叩き付けられ、地面に落ちた。

しかし、その時網は焼けたようで、あーあー、と声をあげながら、網をぶちぶちと切ってフィラッサは立ち上がる。

「もう、ちゃんと強度しっかりした物使わないと逃げちゃうよ? ……で、次に使うのはその能力、やっぱり気があるのかな? ふふっ、可愛い。 楽しませてあげるね?」

網の強度に対して不満を吐きながら、エストが自分に視線を集中させるような魔術を使った事に対して、フィラッサは軽く半透明の羽衣を持ち上げて、元から見えてはいたが、完全な素足を晒して、やっぱり気があるのかな? と問いかける。
まあ、どちらにせよ、客人は持て成すのが魔将軍の礼儀。 ただ殺すか、殺す直前に色々するかの二択なだけだ。

カチャンと音を立てて、拳銃にこめられた魔術が変更される、そして。

拳銃ではなく、ミニガンと間違えるような連射速度で、大量の弾丸を二挺拳銃からフィラッサはばら撒いた。
今度は先ほどのように爆発する榴弾ではない、だが特筆すべきはその数だ、明らかに拳銃には収まらない数の魔弾を、彼女は二人に向けて乱射している、これならば確かに、彼女がいくら射撃下手と言っても関係が無いだろう、つまるところ、フィラッサの戦闘スタイルと言うのは、こういう物なのだ。

>シャル・ド・ノブリージュ エスト

2ヶ月前 No.715

ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc

【 マロニス城/厨房/ガドン・バルザック 】

 ガドン・バルザックは大人なのだ――おにねえさんとかいう超越を開始した造語は華麗にスルー。
 脳みそを使う仕事をしていれば、こういう発言を流れるようにかわして愛嬌の微笑みを振りまくことも可能なのである。
 そしてふざけた外見とふざけた言動、存在自体がふざけているのではないかというオンパレードであっても彼女は本物だ。
 宮廷仕込みの剣術と。
 天性の直感で操る魔術は十二分に、彼らにとっては脅威となりうる。

「やるじゃない小娘、そっちのガキも速さは十分かしら。だけど――」

 レーヴに、そして自身に飛ぶ総数数十を超える流星群。
 ミコルナはそれに矢を的確に叩き込み、撃ち消してゆく。
 正しい判断だ。そして、それが出来る実力をあの小娘は兼ね備えている。
 防御<ディフェンス>にまわるミコルナに背中を預け、――疾風怒濤。光を帯びて風になったレーヴは此方との距離を詰める。
 叩き込むは連続攻撃。
 強化された動体視力、――そして戦術予測が知らせる。
 見えぬほどの手数から繰り出される連続攻撃で追い詰めるつもりだと。

 考えたな小僧ども。
 だがそんなもの、……序の口だ。
 己の判断の誤りを前に、ケツの穴をキュっと閉めておけ。

「――まだァッ!」

 >>アーターシーの、歌を
 >>Ganze Sommernaechtelang,


 ふんぬばらぁッ!!!
「 Hore es !!!」


 もはやテンポもメロディーも歌詞も何もかもかなぐり捨てた――詠唱破棄。高度技法が一つ。
 詠唱完了の締めが、取り繕うだなどという単語を忘れた地の果てから鳴り響くデスボイスであるのも今更。
 瞬間、降り注ぐミコルナの放った矢もろとも、攻撃を叩き込もうとしたレーヴを吹き飛ばすように衝撃波が放たれる。
 それは闇の波動。光輝かしき高貴なる宿命を背負った乙女の印象とは対照的な、ドス黒い全方位へ向けられた魔術。
 Schwarze Eifersucht
 《 乙女の嫉妬 》、……集団戦用に開発された闇属性防御魔術。
 攻撃こそが最大の防御と言わんばかりに、こちらに距離を詰めていたレーヴを。
 そして遠方から弓を撃っていたミコルナへと向けて襲い掛かる。

 当然、その場に留まってやる義理などどこにもない。
 初撃、第二撃――それらから逃げるように、踊るようにして退避。再び視界にミコルナとレーヴを入れる。
 相手は近接、中距離から遠距離その全てを補えるツーマンセルだ。

(だが――相手にしては上等じゃないの)

 魔術発動媒体――レイピアに刻まれたルーンが紫色の輝きを見せる。
 流動するマナを全て掌握し此方へ引きこみ術式を装填<セット>。

 >>天帝よ平伏せ、アタシの美貌を前にして。
 >>アタシの美しさと清らかさこそ、世界でただ一つの真理なのだから!

 詠唱によるマナ改変、――そこから放たれる世界へ訴えかける魔術言語の行使。
 己の意志と思いを乗せて撃ち込むことこそ、魔術の神髄。
 レイピアの切っ先を彼らへと向けた。

  Gott der Frauen
「《顔が命、恋せよ女》ッ!!!」

 解き放たれるは炎魔術、――即ち回避と撃ち消しの余地がない純粋な火炎の放射。
 紅蓮の波動が前方へ向けて轟々と渦巻きながら放たれる。
 点ではなく面。それも部屋の隅まで埋め尽くすほどの規模の紅蓮。
 先ほどのような対策は、もう通用はしない。

>レーヴ・カストリス ミコルナ

2ヶ月前 No.716

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu


【マロニス城/城前(ホール)/ダグラス・マクファーデン】

 尊大な態度を取って見せるだけの実力はあるのか、二人掛かりで挑んでいるにも関わらず互角以上の戦いを暗黒魔導士は演じて見せる。上空からの魔刃の投擲、一瞬の間を経ての背後からの強襲。続け様に放った連続の攻撃は、何方も有効打とは成り得ない。
 ならば、と光と闇の属性弾を乱射して更なる猛襲を仕掛け、相方の放つ四属性の魔法弾と共に忙しく攻め立て行くが、其処は相手の方が一枚上手であったと言うべきか。鎧の片腕によって迅速に描かれる魔法陣に注がれる魔力。複合陣の中で乱反射させられる魔力が、宿せる暴威を更に高めて行き、遂には広域範囲を殲滅する魔力光となって解き放たれた。
 数多の属性弾を掻き消して行きながら、自らへと迫り来る白き光。現状の位置と敵の行動からして、味方による援護は望み薄。その速度からして回避は間に合わず、真っ向からの防御を強制させられる。対処速度を踏まえると、無傷で凌ぎ切る事はほぼ不可能。

「クッ……」

 輝く光と冥い闇を其々に宿す両手。相反する二つの魔力を収束させた手を重ね合わせて、前方へと展開する平面型の巨大な光の障壁。突貫工事も良い所で、魔力光を受け止め切るには心許無いが、威力を減衰させられるだけ良しとすべきか。
 接触を果たすと共に、周囲へと撒き散らされるは大地を揺るがす程の暴虐的な余波。猛進を続ける光を必死に歯を食い縛りながら押し留め、その猛威が収まるまでダグラスは立ち向かう。然し、劣勢の証として彼の身体は徐々に押し出されており、障壁も維持するだけの魔力を削られその輝きを失って行き。
 そして遂に障壁は打ち破られた。衝撃波を受け大きく吹き飛びながらも、光に呑み込まれて行った彼の身体は一瞬だけ見えなくなり。暫くが経った頃、露わとなったのは全身を光に焼かれた彼の姿であった。

「正直、舐めていたのは……認める」

 至る所に火傷を負いながらも、立ち上がった彼の双眸が、暗黒魔導士の姿を射貫く。余裕綽々としていた態度から一転して、死闘に臨まんとする覚悟を決める彼は、両手に光と闇の双刃を形成して構える。
 魔力光への対処に追われている間、戦場に親友の従弟であるヴァイスハイトが乱入して来たのか、状況は1対3と数に限れば此方がより優勢となった。事情を知る親友は兎も角、彼は此方の事を疑っているだろうが、現状は敵の排除を優先する方針に落ち着いた様だ。不審な行動を起こさない限りは、問題なく戦闘を続行できるだろう。

「行くぞ……!」

 不可視の風を身に纏い、空中を高速で移動を開始する。音よりも素早い速度で直進し、敵との接近を果たすとすれ違い様に放つは、右の闇刃による横薙ぎの一閃。直後に天に向かって飛翔して十分な高度を稼いでからの、敵を眼下に見下ろしつつの急降下。再びの接近、肉薄と同時の停止と共に繰り出すは交差を描く斬撃、そして怒涛の如くに連続で繰り出す刺突の連撃による応酬。最後の一撃を放ち終えると、即座に宙を回りながらも後方へと退避し、反撃へと備える。

>エクスデス ユーフォリア・インテグラーレ ヴァイスハイト・インテグラーレ

2ヶ月前 No.717

北方守護騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_0D6

【王都ロンカリア→魔帝城/深淵の間/氷魔像ギラード】

さて、そろそろ始めるとしよう。 とギラードは剣の切っ先を魔帝に向けて切り込もうとするが、その直前に実にこの場に扉を蹴破って、この場には不釣合いな、少しとぼけたような口調で入ってくる青年が一人。 その人物は、時空防衛連盟に属するハザマであると名乗った。 おそらく、組織名を完全に覚えていない、あるいは言う必要がないと考えている事から、あまり忠誠心が無い、つまりは、過去に一度だけ自分と共闘した異世界人に当たる人間なのだろう、その実力は、千年前の戦いから考えて、疑いようも無い。

口調についても、本人の性格であると考えれば、別に問題がある物でもない……しかし、ギラードは彼の言動に違和感も覚えていた、魔帝を前にしてこの余裕、何かを隠し持っているのだろうか、と。
だとするならば、味方としては心強い、ギラードはいったんそう解釈する事にした。 ……ある種、古代での戦いが、時空防衛連盟に対する信頼感をギラードに生じさせていた故に。
ハザマと名乗った男は、少しお互いの容姿を見比べて、そちらは敵ではなさそうだと言う、まぁ、これについては、自分が魔族その物な造型をしているからだろう、そして、決闘が好みならば申し訳ありませんが、と前置きして力添えする、と口にした。

これに対しギラードは、無い首に代わって、腹部の"核"を思わせる美しい氷の球体をハザマの方へと向け、表情こそ分からないが、確かに人間の言葉で。

「元より戦いの形式に拘っては居ない。 そんな生半可な美学を持って倒せる相手でもないだろう」

特段、ギラードは決闘に拘っておらず、まだ、仮に拘っていたとしても、そんな美学を持って戦える相手ではないと、ハザマの共闘を快く受けた。
"歴史どおりに事を進める、だから消えてもらう"その言葉に、ギラードは少々思うところはあれど、そんな目的だからこそ、古代において共闘出来たのならば、今はあちらに合わせるべきだろうと、特に言い返すことも無く、味方の得物を確認する。
バタフライナイフと、鎖鎌に近い形状の武装、メイン武装はおそらく後者だろう、となれば、近から中距離戦に優れている人材と見える。

ならばちょうど良い、こちらは最前線で敵を引き付ける壁役だ、あまり最前線で戦う者が居ても仕方が無い。

そして、もう一人がこの場に現れる……その時ギラードが感じたのは「懐かしさ」もしやと思って振り向けば、それは予想とは少々違うが、かといって間違いでもない、そんな存在が居た。
彼女は魔帝に対して問う、何のために戦うのかと。 対する魔帝は、少なくとも単純な目的ではないのだと語る。 また自分に対して「皮肉な物だ」と返したのも少々奇妙だ……何を笑う事があるか、しかし、ただ獲物を嘲笑していると言う訳でもなさそうだ。

だが、今やるべきことは、一つだ。
相手が仕掛けて来いと先制攻撃をこちらに譲った、ならば、お言葉に甘えるとしよう。 だが、その前に。

「人の子よ、我はお前の持つ力の一つより生まれ出たモノ、その役割はお前の持つその剣とは、おそらく大きく異なる、殺戮のためだけの力。 故に、そのように見るが良い、我は人間の剣として振舞おう」

勇者に対してギラードが振り返ることなく呟く、自分は元々、その剣に宿っている力の一つから生まれてきた、殺戮のみを目的にしたモノなのだと。
だから、そのように振舞う、故に……妙な情けやフォロは不要、好きに巻き込むが良い、そんな意味の言葉を残して、ギラードは真っ先に敵に向かって走り始める。

その動作は見た目と違って歩幅が大きい事もあって、それなりに俊敏と言える一歩一歩踏みしめるたびに、周囲の気温を変化させながら、ギラードはある程度の所まで距離をつめると一気に跳躍して、そのまま空中から降下しつつ魔帝に対して三本のアイスソードを振り下ろした。

>魔帝ヴェルメイユ ハザマ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム

2ヶ月前 No.718

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【歴史是正機構本部/実験室/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

野に解き放たれる復讐鬼。最早それを止める手段は無い。彼女は怒りのままに全てを焼き尽くすだろう。……そう、己の身さえも。
復讐の女帝が立ち去った後、黄金王が大仰に語る。ヘルガの目論見をも越えて、復讐鬼と化した女帝はそれを成すだろう、と。
悪魔の女は、そんな喜び猛る黄金王を前にして背筋が寒くなるのを感じる。彼は語る。強い意志があれば人は万事を為せるのだ、と。それは確かに事実だが、彼が求めるのは生半ではない。彼に目をつけられた時点で、立ち止まる事は許されない。心が軋み、体が壊れようとも止まる事は二度と不可能だ。求められたイカロスは太陽へ向けて飛ぶ為の蝋の翼を与えられ、いずれ地に墜ちる――。
つまるところ、奴にとって他人の事情などどうでも良いのだ。どんな理由でも同じ。結局は、『俺がそれを見たいのだから、俺はお前を応援する』と言う理不尽な期待でしかない。立ち止まれなくしておいて、燃え尽きたなら勝手に失望する。そうして直ぐに興味を無くして、別の誰かの意思を食い物にするのだ。

――全く、本当にとんでもないお方ですわね。悪辣な事この上ない……敵でなくて本当に良かった、と言うべきかしら。

そして、それと渡り合う悪魔の女もまたさるもの。決して奴に魅入られる事が無いように立ち回り、欲するままに場を掻き乱す。こと、悪辣さで言えば女もひけをとらないのだろう。己の欲望に忠実に生きる女。他人の欲求を食い物にする男。全く対照的ながら、しかしその本質のおぞましさは大差ない。結局のところ、二人とも"自分が良ければそれで良い"のだから。

「では、私はこれで失礼します。部屋に可愛い娘(こ)を残して来てしまっていて、あまり放置してあげるのも可哀想ですので……ふふふ。先生はごゆるりとなさって下さいね」

女は妖艶な笑みを浮かべて一礼し、実験室を立ち去る。今、この女の欲を最も刺激するのはかの復讐鬼でも黄金王でもない。中世の時代で"手に入れた"一人の少女だ。切なく鳴く少女の嬌声を思い出すだけで心が昂り、熱い桃色の吐息を思うだけで体に熱が入る。既に女は辛抱堪らないと言った風で、獲物を前にした獅子の様な表情を浮かべて去って行った。

>>ダン

2ヶ月前 No.719

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【魔帝城/深淵の間/ハザマ】

「了解しました。いやあ、話がスムーズなのは好感が持てますね」

 共闘を拒む様子、無し。
 完全に鵜呑みにした気配、これまた無し。
 結論―――あの魔像、ただの木偶の坊というわけではなさそうだ。
 違う世界の理まで頭に叩き込んだ覚えがない以上、ハザマからして見ればあの魔像は全くの未知数。言動の節々から感じ取った“性格”と呼べるものも狙いに掠りはしないと判断出来る。つまりは必然的に、共闘相手以上の価値はないタイプ。
 しかし共闘相手として見るならば、あの手のタイプは目的さえ違えなければ律儀に付き合うだろう。
 覚えがあるのだ。そいつも最終的に自分の興味からは“逸れた”が、この魔像とよく似たタイプを知っている。あの頑強と思わしき肉体と同様の精神、控えめに言って言葉では揺るがない、生まれた時の信念という名前のプログラムに殉じる機械のようなもの。

「(ま、あの言い方ならちょっと最終目的はズレそうですかね………。
  其れも良いでしょ。どうやら彼方の御仁には素直に頷く気配もないと見えます。予定からそうズレはしない)」

「生憎と戦闘専門ではありませんのでね、お二方の脇役に徹させて頂きますよ」
「ケリを付けに来たのがこの時代の人間なら、ええ、それはもう願ってもない」

 最も。此方の言葉への反応ともう一人の登場と同時に投げかけた言葉を聞くに、“それだけ”のデカブツでもないらしい。この分なら自分の目的が露になった時、彼からの時空防衛連盟とういう存在の価値がどれほどガタガタになるか分かったものではなさそうだ。
 しかしハザマとしては知ったことでもない。
 そんなものに意識を割く良心など持ち合わせてはいなかったし、この魔帝討伐という点では目的が合致する。その時点で、彼の主目的以外の全ては須らくどうでもいい。それが本音だ。

 その上で………その登場したもう一人がある意味本命。
 双方の言い分、そして外見、なるほど術式に保存した歴史に合致する。

    ・・
 ―――勇者だ。魔帝とその軍を単身で滅ぼした、人型の怪物。

    報復の幽鬼。彼方より来たりて全てを滅ぼす断罪者《パニッシャー》。
    勇者と、英雄と、名を付けられていように、その有様は憎しみの螺旋に囚われたもの。

 と、いうのが歴史の話だ。
 つまり、このアンナローズはそうではない。

 なにしろ、出会い頭に怨敵滅殺と仕掛ける様子が無い。
 使命に殉ずるというところか、はたまた魔族憎しで凝り固まっている部分が無いのか。無くなったのか。魔帝ヴェルメイユの言葉を待つ精神的余地は、正史を知るものからすれば驚嘆に値するか。
 あるいはそんなものなど、最早塵屑のような価値でしかないのかも知れない。というよりハザマは既にそのように判断し、あくまでも相違点を照らし合わせて“遊ぶ”ためのものでしかないと結論は付けている。つまりは例外こそあれど、どうでもいい。

    、   、   、   、      ・・・・・・
「(さて、思ったより遥かに理知的。………ああ、そういうことか。
  この分なら、アレで確認した通りの出鱈目さはないと思うべきだが―――)」

「結構、結構。確かに貴方の歴史は貴方の歴史だ。
 王の鑑ではありませんか、未来も過去も知ったことではない、ただ傘下の者こそが全てだと!」

「一部分だけ賛同しますよ、こうまで改変だらけの世の中、歴史の価値など塵に等しい。
 いつどこで、何がすり替わっているのか分からない。嘘、嘘、嘘、嘘だらけだ。………ああしかし、それでも、それがお上からの命であるなら割り切りが必要なのも事実でしてね。ホント世知辛い世の中だこと」


 情報《カード》が揃った。彼方から出してくれた。
 ………ほんの一瞬だけ、ハザマの糸のような細い目が開いて、金色の蛇を思わせる瞳を露にする。

 仕掛けに来なかった。これは最大の情報だ。
 この女、口調の割に必死さがない。傲慢、慢心………そう言い換えても構わないが、それとは違う。
 何処に本心があるかはさておき、人間に対する敵意という気配を感じない。
 そうした気配に関しては極めて鋭敏なハザマの感覚がそれを捉えない。憎しみ、怒り、恨み、嘲り、呪い、敵意、そうしたものが自分を■■させる以上、それがない相手を見分けることなど朝飯前だ。

 つまりだ、この女―――。


「しかし、しかしだ。そうまでして護りたい国とは、ものとは………いったい何なのでしょうねぇ?
 まあ正直どれでも構いません。その発言が出ようが出まいが、過去未来全ての人間の敵だ」


  ―――どうのこうのと喋りながら、開戦を遅らせたがっていたわけだ。

     なるほど、見てくれだけは良くても継ぎ接ぎだらけの小娘らしい。


「そうでしょう? 魔帝ヴェルメイユ」


 つまり、想定通り兵舎に流した魔素を利用したのはこの女ではない。

 ………そうと分かればハザマが手を出さない理由は無い。
 足跡のない雪を思い切り踏みつけて荒らすように、躊躇うことなく手を出した。

 正確には手というより“蛇”か。
 自身は一切動くことなく、空間に空いた孔から飛び出した毒蛇の鎖。深緑色の、肉体と精神の双方に噛み付き摩耗させる事象兵器《アークエネミー》………その名をウロボロス。
 なに一つとて正面から、正々堂々とは仕掛けない。言葉の最中に飛び出した蛇を思わせるアンカー、合計六に及ぶその全てが死角からの強襲だ。二本は足に絡みつき、ギラードの疾駆から繰り出された斬撃をアシストするための布石。
 一発は背中からその頭を噛み砕くように。
 一発はそれこそ臆面もなくギラードの図体を利用して出現点を隠し、その上で彼の行動を利用して、それらが全て防がれたタイミングを狙い、胴体を突き破りに掛かる時間差攻撃。

 残る一発は自分の手元に残して移動手段、残る一発は何時もの伏せ札。

 ―――勿論ただのアンカーと思うなかれ。
    世界を喰らう獣すら制して征するのが事象兵器《アークエネミー》、術式兵装の最高点だ。ハザマのそれは速攻守全てに用いることの出来る万能兵装、何処から蛇が顔を出して来るかも分からない変幻自在のトリックスター。

 侮ればそのまま狙った通りの箇所を噛み砕き、突き破り、穿って穢して蹂躙する。

>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード、アンナローズ

2ヶ月前 No.720

エクスデス @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【マロニス城/ホール(城前)/エクスデス】

「―――ぬ!?」

 エクスデスは、思わず驚嘆の声を上げた。
 突進の勢いを乗せた突きを回避されたことに、ではない。
 零距離から撃ち放った真空波を対処されたことに、でもない。
 彼が聊かの怒りを乗せたその声の正体は、真空波を対処した相手がユーフォリア当人ではないことだ。………それもそのはず、踏んだ算段通りならばユーフォリアの虚を突いた攻撃は少なからず手傷を与え、彼女を下し、残る魔弾に意識を集中させられただろう。そうでなくとも、どのタイミングで反撃が来るのか程度ならばエクスデスはアタリを付けていた方だ。

 そのアタリを付けていないタイミングからの阻害。
 真空波を放つ直後の連射撃、単発の威力はさておき咄嗟の射撃において両者を上回る。
 突きの狙いが逸れた正体はそれだ、加えて横腹からいちいち銃撃を叩き込まれては正直溜まったものではない。追撃が逸れるというより成立しない、たまらずエクスデスは一歩後退、そしてその射手へと視線を合わせた。
 威風漂う鎧姿、そして兜越しに見える暗黒魔導士の視線がヴァイスハイトを捉え―――。


「おのれ、小癪なハエめが………!」


 今までの様子からは珍しいほど、打算を崩して来たことそのものに怒りを見せた。
 一瞬だ。それに飲み込まれるほどエクスデスは短絡な思考ではない。魔導士は根本からして理知的だ。
 だが一瞬とはいえ、向いた敵対心《ヘイト》の量が尋常ではない。
 それはある意味、彼の性格とスタンスに寄るものであるとも言えよう。

 その“指揮官”と同様に金色の鮮やかな髪を持つ男にも意識を向けたエクスデスは、長剣を再度構え直した。比較して不味い状況になったと判断できる。エクスデスが見せていない札の数は無数にあるが、三人を同じ射線に捉えるのは少々骨が折れるからだ。
 それに、あの魔弾使いも死してはいない………『デルタアタック』の一撃を受けておきながらよくも耐える。それで尚闘志を失うことなく狙いを付けて来る辺り、どうやら虚偽で彼方に組しているというわけでもない。元々考えもしていなかった可能性だが、いよいよ以てヤツが演技や擬態で其方に与しているという発想は消失した。

 両者が同時に迫る。
 炎熱凍結、二種類の弾丸を蹴り砕くように。正しく熱を操るサラマンダーだ。
 近接戦を仕掛けに来たダグラスと比較して彼女の本命は遠距離戦と言えるだろうが、それに手を出す猶予はない。むしろこちらとて本命は遠距離、近寄ってわざわざ不得手な行動を晒してくれるならば儲けものだ。しかし、しかし―――。
 問題は、そことほぼ同じタイミングで仕掛けて来るダグラスにある。この男が振るう剣が最初にダメージを与えて来たことをエクスデスは忘れていない、その近接戦闘能力も速度に関しては此方よりも上だ。音もろとも斬り裂くような豪速と、肉体の性能に振り回されない戦闘経験値の蓄積。紛れもなく、この男こそがこの場における一番の“戦士”だろう。

 この期に及んで『カーズ』による弱化を狙い、嬲りに行くことエクスデスも愚かではない。
 魔力の性質は増幅タイプのままだ。力押しは非効率だが、せめてそこで勝てねば戦略の幅が縮まる。
 短く区切った詠唱で以て、ユーフォリアの方に片腕を、ダグラスの方に片腕を出し、双方の斬撃と魔法射撃に対して障壁を張る。全方位への強烈なガードは白魔法上級位階『ウォール』―――その応用体とも言える、溜めの後に全方位へのバリアを張る技術だ。炎熱と凍結の双方攻撃とダグラスの斬撃の最初を防ぐならばそれしかない。一斉攻撃を受け止め、すかさず反撃のために剣を繰り出し………。

「飛び回りおるわ………!」

 空を切った剣が命中の失敗を理解させると。
 視界に入らぬダグラスからの、強襲じみた急降下により繰り出された斬撃が鎧をもう一度斬り裂く。
 止めになりかける突きは回転させた長剣によって弾き飛ばすが、再度後退する魔弾使いを追い切れない。もう一人の射手は動いて来ていない―――ある意味幸いしたが、しかし隙を突けるチャンスをうかがっているともなれば早めに数を減らしたい。
 なにしろダメージも蓄積して来た頃だ。引き際を間違えれば元も子もないが、何より骨折り損だけは避けたい。此処まで手間をかけて“何も得られない”というのはつり合いが取れていないからだ。


「手古摺らせおって」
「ならば揃いも揃って………チリとなれい!」


 故に、仕掛け時。エクスデスが詠唱を終えたその時、彼の肉体を巨大な竜巻が覆う。
 同じく青魔法、魔物の力や技術による暴風。
 中央で発生する磁気のようなそれを軸としたその旋風を、彼は片腕を振り払うようにして動かす。
『ミールストーム』と呼ばれる高位青魔法は彼の手に応じてエクスデスの下から離れて動き出すと、まずは後退したダグラスを横薙ぎに薙ぎ払いに掛かり、続いてその勢いのまま旋回して背後のユーフォリアを吹き飛ばしに掛かる。それだけに収まることなく、竜巻はエクスデスの周囲を旋回しながら交互に彼らを襲い、その攻撃と行動を阻む。
 迂闊な近接戦闘はこれで望めまい。その間にエクスデスの視線はすぐヴァイスハイトに向いた。そう、『ミールストーム』の範囲攻撃と防御を利用し、今のうちに攻め立て、この乱入者を仕留める算段だ。

 再びの疾走。鎧の重量級を思わせる外観からは予想もつかない浮遊による高速移動。
 手にした長剣もまた浮遊し、舞うように三度煌めく。
 ヴァイスハイトの立ち位置を襲うそれは斜め左下からの切り上げ、斜め右下からの切り上げ。縦方向と横方向、どちらにも移動を強要するような大振りの斬撃だ。当然本命は其方ではなく、回避した先を追撃するように襲い掛かる突きにある。
 剣戟においてもエクスデスは相応の万能さを見せる。
 射手と一対一の格闘戦に持ち込めば勝機を拾うのも容易。
 余計な邪魔はある程度ならば、今もユーフォリアとダグラスを襲う暴風で凌げるだろう。故に―――。

「わしの邪魔をした………報いを受けよ!」

 ここが、増加した数という“危険要素”を速やかに取り除くチャンスなのだ。

>ユーフォリア、ダグラス、ヴァイスハイト

2ヶ月前 No.721

ガン=カタ @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【マロニス城/ホール(城前)/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

ヴァイスハイトの乱入により手傷を負わずに済んだユーフォリア。彼女も彼女なりに彼を心配する様子を見せるが、説得力はあまり無い。

「ああ、分かってるさ。お前よりは無茶はしない。逆に言えばお前が無茶する限り、俺だって付き合うからな」

ふっ、と軽く笑って間接的にユーフォリアの無茶を窘める。冗談を言う余裕があるのか、それとも冗談でも無い本心か。それは他人には量れないだろう。
ダグラスについての心配と追及はしない。何処まで信用して良いのかまだ不透明だからだ。ユーフォリアが信頼しているのだから、間違いは無いかも知れないが……彼女の父の事を思うと、どうにも不安が募るのだ。

相対する魔人が憎々しげに吐き捨てる呟きが、乱入したヴァイスハイトへの苛立ち(ヘイト)の募りようを如実に顕している。それだけ注目して貰えたのなら、乱入した甲斐があったと言うものだ。
体勢を立て直したユーフォリアとダグラスが共に前に出て攻撃を合わせる。二人掛かりの強烈な連携攻撃に堪らず魔人も呻き後退せざるを得ない。確実に押していると言う手応えがある。此処にヴァイスハイトが合わせなかったのは、二人が前に出た事で射撃での誤射を警戒していた為と、一歩退いた位置で魔人の動きを観察する為だ。そして、その判断は恐らく正しいものだったろう。

魔人は吹き荒ぶ竜巻を解き放つ――だがこれは決殺を目的としたものではない、と即座に判断して身構える。その予想の通り、竜巻は二人を魔人から引き剥がす様に展開される。
魔人は竜巻を味方に付けたまま、乱入者であるヴァイスハイトに狙い(ターゲット)を絞って仕留める算段で来たようだ。見掛けに寄らない高速移動と達人級の剣捌き。確実に、ヴァイスハイトを遠距離型と確信しての動きだ。なるほど確かに単純な銃撃手であればそれに対応出来ずに切り刻まれる事だろう。

「そう来たか――だが、そいつは悪手だ」

――だが、そうは行かない。魔人は状況不利からの脱却を優先し過ぎる余り、敵対者の観察を怠っていた。魔人が見た目によらない戦闘スタイルであるように、ヴァイスハイトもまた単なる銃撃手ではないのだ。
彼の真髄は近接対応力にある。言ってしまえば、得物が銃になっただけの格闘手(インファイター)だ。ユーフォリアやダグラスの様な超常染みた能力による防御力は無くとも、単純な攻撃の回避力で言えば二人に大きく勝る。
さながらそれは銃撃の演舞(バレット・ダンス)。踊る様に攻撃を避け、刺す様に銃撃を叩き込む――それが彼の戦闘法(バトルスタイル)だ。

左下からの斬り上げを身を反らして寸前で避け、右下からの斬り上げを後転ですれ違う様に回避しつつ左右合計二発を胴体目掛け撃ち込む。続けて襲い来る縦横の連撃。縦斬りを見事な足さばきで往なし、横斬りを身を屈めて回避する。それで仕留めるつもりだったのだろう刺突については、くるりと身を翻してすり抜ける様に避けてみせる。結果、魔人の連撃はコートの裾を引っ掻いた程度の成果しか挙げられていない。そして、それだけ一気に攻めたと言うことは、反撃させるつもりが無かった――言い返せば、"反撃への備えが無い"事の反証となる。

「射手(ガンナー)と侮った――それが敗因だ」

彼は魔人の手が止まった瞬間を逃さない。標的を捕捉(ロックオン)し、双方の銃口を向けて魔人の兜へ六度連射する。

>>ユーフォリア、ダグラス、エクスデス

2ヶ月前 No.722

クランの猛犬 @akuta ★Fwax7xTHaw_ly4

【共闘だー士郎を奇襲して、仕留めた実績のある兄貴】

【王都ロンカリア/城壁・(跳ね橋)/ランサー】

 あれがライドウの世界の自分と師匠か。風貌はだいぶ違う、恐らく並行世界というよりも別世界から来たと例えが正しいのだろう。
 自分の幼名を一目で見抜くのも、千里眼持ちの師匠というところだろうか。
 三人の斬、魔、刺の連帯を見てフッと口角を上げてあっちさんもやるじゃないかと、魔力を肌で感じながら暴風に髪とピアスを揺らし、こちら側の攻撃を食らっても尚、白狼は吼えた。
 まだだまだ足りないと、言わんばかりに荒々しく咆哮したと思えば真名開放なのか魔力を肌で感じるとランサーは起きた変化に目を見開く。
「!」
 槍がこちらに戻ってくる間に、宙に浮いたランサーの足元に複数の刃が仕込まれていた。
 こいつは一本取られたと、清々しい表情でその刃を受けて体はズタズタに引き裂かれ、赤い雨を地上に降らせ戻ってきた槍で首元に発生した刃を重身の体でなんとか弾き、切り刻まれた体は地上に落ちる。
 口から血を吐き、天を仰いで空を見る。狼の癖に自分と渡り合えるとはと逆にこの負けが心地よい、だが倒れている暇などランサーにはない。
 ここで倒れたら一気に戦況がひっくり返る、ただでさえ上で誰かが戦っているのにこっちは休んでられるかと。
 持ち前のタフネスさで体を重く立ち上がると、地面を深紅に染めて無言で狼王の様子を見る。
 胴は確実に重傷を負っており、放置しても死ぬだろうが。ここは複数多数の人々が行き交う世界、何が起こるか分からない。
 ここでヤツを見逃したら、また人々を足元に転がっている駐屯兵のように襲うのだろう。こいつを止めるには誰かが息の根を止めるまで疾駆は止まらない。
 急所はなんとか守ったので、保有スキル「戦闘続行」は発動していないが他はボロボロで赤い轍を作る。
 後ろの二人は無事なのだろうかと確認したいが、振り返る暇などない。
 ランサーは鍛えられた体を引きずりながらも、かける言葉もなく大狼にゆっくりと近寄り立ち止まる。
 そして静かに自分の血で滴る朱槍をかざしてその首元を狙って縦に振らんとして、今まで築き上げてきた戦争観が気さくなランサーを冷徹にさせると同時にアルスターの戦士の敬意として心臓を穿って殺すのではなく首元を穿つ行為をさせていた。
>17代目葛葉ライドウ ヘシアン・ロボ アベリィ・シルバラード

2ヶ月前 No.723

『恋はジョリジョリ』華麗なる大円舞曲より @akuta ★Fwax7xTHaw_ly4

【ああー19話……しんどい……乱入?のカタチになってしまい失礼します。※無視してもいいですよー】

【王都ロンカリア/噴水広場→大通り・屋敷の屋根上/ショパン】

「……」
 目を伏せてそうかと残念そうに俯くと、声をかける前に不思議な魔法使いは眼前で消えてしまい、ショパンは寂しそうに立ち去ったあとを見送った。
 なんだか地球の最高の音楽を聴きに来て、アンコールを求めて暴れ街を破壊しつくした宇宙人達を思い出す乱闘騒ぎだ。
 あの時は、普段は怖いがなんやかんやで世話になっている大家の懇願で館の危機をみんなで救ったのだが、今回は宇宙人ではなく異世界の住人である。
 獣と化した民衆に恐怖しつつも状況を整理する。この暴動、目に通した史料には書かれていなかった。
 となればこれは外部からの介入、つまりは敵組織による仕業である。そう考えると自分ができることはただ一つ、宇宙人の暴動を諫めた自分ができる唯一の方法。
「……ジョリー、君の力を貸して欲しい」
 そう怯えた目がすっと光が差して立ち上がり、愛しの電子の恋人の名を呟くとタクトを振るい出現するダンボールを操って大通りへと移動し、どこかの屋敷の屋上へと降り立つ。
 下を見下ろすとやはり、流血しながらも自分勝手に振舞う市民達にヒイっと悲鳴を一つあげるが、静かにタクトを構え大通りの聴衆に向けて。挿している羽ペンの羽根を揺らして、恐怖に染まった心を鎮める。
 クラシカロイドが何故、人のカタチをした楽器として生み出された理由、最高の音楽を生み出すのは「人間」であるからだ。
「最高の楽器」が今――――開演を始めた。
 軽やかで華やかなピアノの旋律から沢山の楽器の音が加わる。
 フレデリック・ショパン作曲。『華麗なる大円舞曲』
 ショパンが最初に出版したワルツ曲で、特に華やかで響きを持っているとの呼び声高い曲。
 それを歌うのは、かつて二週間以上も愛を育んだ電子の恋人。歌唱開始前に彼女を出現させる。
『恋はジョリジョリ 愛の駆け引き ゲームみたいな そんなモード』
 出現している彼女はもう自分を振り回した彼女ではないが、笑顔で踊り歌うと同時に大通りの風景が一変。澄んだ青空と色とりどりの花びらが舞う花畑の空間を大通りにいる人々を引き込ませる。
 ショパンは三拍をタクトで刻みながらも薄っすらと涙を流す。ああ、ジョリー楽しかったよと、僕の心の中でいつまでも歌っているよと。
 幸いここなら、あの時の様にジョリーに目を付けられて奪われる事はないし。敵味方問わず電子兵器として利用しようと考える人々はいないだろう、だからこそショパンは発動したのだ。
 すると突如流れてきたムジーク空間に連れてこられた人々は最初は動揺するが、ジョリーが「すごいって分からせてあげたかった」と勝手に投稿した動画サイトで動画再生ランキング一位を勝ち取った音楽は、欲望剥き出しの人々の心を掴んだ。
 もっと聞きたいと。華やかで透き通った円舞曲をもっと聞きたいと欲求を刺激させ、暴動を鎮めさせる事に成功させた。
『恋はジョリジョリ ふわふわ 雲のように 移ろいゆく 危うさ 少し怖いけど』
 観客に向けて丸く赤い目を輝かせて腰まで伸びた黒髪と水色のコートを揺らし、ショパンに贈られた歌い続けるジョリー。
『喜びも 悲しみも 戸惑いさえも 絡み合った気持ちが 愛しくて』
 この演奏を止められる方法はただ一つ、奏者を攻撃すればいい話だ。
>(エスト) 大通りALL

2ヶ月前 No.724

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_HV3

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/17代目葛葉 ライドウ】

「浅いか……!」

煉獄撃の二撃までは防がれたが最後の一撃が通った、通ったがまだ浅いので止めるには至らない。
ライドウの予想ではライドウ自身を無視してクー・フーリンのゲイボルクの投擲を阻止しに行くものと思っていたが……。
あの凄まじい野生の直感の持ち主だ、ゲイボルクを発射させることの意味を理解していないわけではないはずだ、だとしたらどこかで阻止しに来るはずだ。
アベリィの掃射による傷をももろともせずに只管ランサーを狙っている、その心中にあるのは憎悪化矜持か。
クー・フーリンのゲイボルクに込められた魔力はもう臨界に近い、普段ならもう発射している頃だがまだ発射しないところを見るとクー・フーリンも警戒しているのだろう。
それに”保険”もあることだ、魔槍が不発に終わることはないはずだ。

ランサーの『突き穿つ死翔の槍』を受けても尚狼王は憎悪に吠える、致命傷に至ってもおかしくない傷だ。
そもそもランサーの『突き穿つ死翔の槍』はクー・フーリンのゲイボルクより効果範囲も威力も使い勝手も高いのだ。
もしライドウが真正面から受けていたら血飛沫しか残らないだろう、そういう槍だった。
ライドウは確信する、この獣はもう長くないと。だったら決めるのは今だ。だがあの狼王は諦めていない、そういう目だ。
何もない空間を切り裂こうとする狼王と首無しの騎手、ライドウの直感が告げる、これは危ないと、咄嗟に「防御を――」と声を上げるが恐らく完全に防ぐことは難しい。
秘剣ヒノカグツチにマグネタイトを流し込み縦に刀を構えて防御態勢を取る、狙いは恐らく”首”だ、
ランサーは深手を負っているがまだ生きている、生きている限りはスカアハが治せる。

「ぐううぅぅっ!」

『我が魔槍発射ならずか……だが!』

ライドウは首への致命傷を避ける代わりにズレた斬撃に右肩を深く切り裂かれ、クー・フーリンは百戦錬磨の直感で心臓への直撃こそ避けたが肩を穿たれ、完全に深紅に染まったゲイボルクは明後日の方向に放り出される。
だがここで一つ狼王に判断ミスがあった、それはスカアハがフリーだったことだ、スクカジャ・オンにより大きく底上げされた速度で明後日の方に飛んだゲイボルクの着地地点に回り込む。

『おばちゃんを忘れたらいかんぞ?』

元々ゲイボルクとは影の国の女王たるスカアハがクー・フーリンに与えた魔槍だ。ルーン魔術を極めたスカアハだが武芸にも秀でる彼女だ。
そのスカアハがゲイボルクを扱えない道理はない――!

『ゲイボルク、発射ァ!』

回転しながら飛んでくる深紅の魔槍を爪先で拾い上げるように狼王に射出するスカアハ、クー・フーリンが限界まで貯めた魔力は損なわれることなくスカアハの手によって射出された。
射出された深紅の魔槍は狙いを違わずに音速にも迫る速度で朱色の軌跡を描いて飛翔する、この槍にはランサーの『突き穿つ死翔の槍』のような分裂して絨毯爆撃するような能力はないし一撃の威力も見劣りする。
だが”対軍”ではなく”対人”の能力としては見劣りすることは無い筈だ、因果逆転のような特殊能力もない槍だが、投擲手の管制を受けてホーミングミサイルのように何度も襲い掛かるのだ。
音速に迫るホーミングミサイルの如き槍の刺突の嵐、それは溜め込んだ魔力に比例して威力も速度も跳ね上がる、一撃や二撃ではない、何度も何度も、魔槍に込められた魔力がなくなるまで魔槍の嵐は収まらず朱色の軌跡が乱舞する。
その嵐は狼王を、騎手をも巻き込んで荒れ狂う嵐のように突き穿たんとする。ライドウは初めからこれを狙ってゲイボルクの持ち主であるクー・フーリンとその師匠でゲイボルクを十全に使えるスカアハを召喚したのだ、伝説と名高い14代目が編み出した確実にゲイボルクを発射する方法だ。
仲魔を一体しか召喚できなければ絶対に出来ない芸当、既に少なくない傷を負ったその身で耐えられるものならば耐えてみろ獣よ――!

>ランサー、ヘシアン・ロボ、アベリィ・シルバラード、ALL

【メガテン版投げボルク、描写は漫画基準に多少のアレンジをしました】

2ヶ月前 No.725

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【王都ロンカリア/城壁/上部/ギルバート・トムフール】

どれだけ正論を並べたとしても、丁寧に説得を試みたとしても、クジャルナの意志が変わることはない。彼にとっては人類の排除こそが全てであり、生きる理由なのだろう。
あくまで自分は正気であると言い張る彼に対し、北斎が哀れみの目線を向ける。確かに、思考さえまともであれば、この能力を活かす場所が他にもあったに違いない。
もはや同情の余地は残されていない以上、やるべきことは敵を全力で倒すことのみ。ギルバートが攻撃を打ち込むのに合わせて、北斎も背後から奇襲を行う。
お互いに戦場においては初対面であるとは思えないほど、洗練された連携。これを見切ることは相当難しいはずだが、むしろ敵が待っていたのはこの状況であった。

「お前は力ばかりを求めて何も見えていないようだな。しっかりと目を開けていれば、少数に味方する民の存在にも気付けたはずだ」

民は多数の下にのみ湧くものであるという持論を語るクジャルナの言葉を、ギルバートは一蹴する。確かに多数派の方が支持を得やすいというのはその通りだ。
しかし、だからといって少数派が全く賛同を得られないという訳では断じてない。耳を傾ければ、彼らの味方をする者が、必ずどこかにいたはずなのだ。
ギルバートもよく知っている人物から名を挙げるとすれば、現時空防衛連盟総統のユーフォリアも、大統領となった暁には魔族の差別を解消するという公約を掲げていたと聞く。
魔族の地位向上ばかりを考える末に盲目となったクジャルナには、それが見えなかったのだろう。されど、繰り返しにはなるが、同情の必要性はない。

振るわれた重力の拳が、敵の左腕を破壊する。それに合わせて放たれる反撃の蹴りを回避する手段はない。カウンターによって、いつもの何倍にも高められた威力が、全身を駆け巡る。
人間の身体など軽く吹き飛ばされてもおかしくはなかったが、ギルバートは執念だけでその場に踏み止まった。さすがに吐血はしたが、まだ戦闘不能なほどの傷ではない。
確実に敵は追い詰められ始めている。畳み掛けるならば今と判断したからこその行動。絶好の機会を得た彼は、後ろに流れそうになる身体を根性で押し戻し、今一度クジャルナと対峙する。

「上に立つのはお前のような視野の狭い者ではなく、全てを見渡すことの出来る人間だ!」

軍服を血で濡らしながら放たれた渾身の一撃。至近距離からの重力砲が、敵の心臓目掛け進んでいく。唯でさえ威力の高いこの攻撃をほぼ密着した状態から受ければ、回避はおろか防御も難しい。
それを可能としたのは、ギルバートの勝利への執念。絶対に歴史改変を許さないという覚悟が、必殺を打ち込むための舞台を整えたのだ。とはいえ、無茶をしたのは事実であり、直後に彼は片膝を地面に付く。
単独であれば、このような危険な賭けに出ることは出来なかった。北斎という心強い味方の存在に、感謝しなければならない。荒れた呼吸を整えながら、ギルバートは自らの攻撃の行く末を見守る。

>クジャルナ・クオーク、葛飾北斎

2ヶ月前 No.726

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【マロニス城/厨房/ミコルナ】


「ふふーん!あたしはやるんだよー!すごいでしょー!でも、あたしはミコルナって名前があるんだからね!」

例え今この時矢を放った相手からの誉め言葉でも、彼女は嬉しそうに無い胸を張って誇る。小娘と呼ばれたことに対しての訂正こそするものの、その腕を褒められたことの喜びは褪せない。
尻尾をぶんぶんと振り、翼もリズム良く、機嫌を表す様に宙を舞う。無邪気な笑みを浮かべた顔はあれほどの矢を放った人物と同じとは到底思えないほど、時折宙返りする姿は魔族というより妖精の様だ。
レーヴからの言葉は理解したのか理解していないのか、分からない嬉しげな表情のままで頷いている。恐らく、超越した造語の事は忘れ去っているし、姐さんの呼び方や性別についても自分で納得できている。
だから話半分で聞いていたのだが、レーヴに向かった矢への返答にはそれはもう可愛らしい、小悪魔の笑みを浮かべている。怒りたいと思うが、何処か庇護欲をそそる年齢にそぐわぬ魔性の技。

「ごめーん!間違えちゃった!レーヴのハート?は狙ってないよー!」

ハートとは何だろうか、心臓の事かな等と自身が持つ知識の中で最も想像と近い物に当て嵌める。未だ、色恋沙汰には疎い。気障な言葉を向けられても、その理由が分からないなら大した反応はないだろう。勿論、それが意味することを理解すれば相応の反応はするかもしれない。
そんな漫才染みたやり取りを吹き飛ばす姐さんの波動、今まで繕ってきた綺麗なイメージを文字通り吹き飛ばすどす黒い衝撃波。下手な歌ー!と楽しげに笑いながら吹き飛ばされるのを楽しむ彼女、少し吹き飛ばされた空中で体勢を立て直す。羽ばたいている以上姿勢の制御は難しくない様だ。
少し痛かったようだが、それよりも飛ばされる楽しさが勝ったようで姐さんが次はどんなことをしてい来るのか好奇の目線で見つめる。綺麗な歌に流星、見た目は極悪だが吹き飛んで楽しかった衝撃波。何だかんだ全ての攻撃を楽しんでいる彼女、なら期待してしまうのも無理はないだろう。
しかし聞きなれない言語と共に細剣から繰り出されるは炎の奔流、これには彼女も大慌て。炎に呑まれれば無事ではないし、何よりそれを楽しめるほど感性がぶっ飛んでいる訳でもない。かといって避けられるほど甘い攻撃でもなさそうだ、弓でどうにかできるものでもない。
厳密には「デーモンの髭」は炎には例外的に強いのだが、説明など知らずに何となく使っている彼女が知る訳もなく、何とかしてあまり熱くないように飛ぶ事しか出来ない。服に執着はないため焦げても気にしないが、肌を焼く熱さを気にしないほど強靭ではないのだ。

「あわわ!熱い、熱いよー!あちっ……!そうだっ!」

燃え盛る業炎の端っこでどうにか熱くないように、天井と壁の僅かな隙間へ退避していた彼女だったが何かを思いついたように。熱いのを我慢して厨房の調理場へと飛行する、そう炎に対しては水、小さな子供でも分かりやすいもの。
しかし悲しいかな、水を溜めて用意することなど調理場においては多くない。ましてや食事を終えた後だ、スープの仕込みの様な水に近いものはある筈もない。そんな中、火にかけられていただろう大鍋が二つ。そう、この中身は決して水ではないのだ。
彼女は飛んだ勢いのまま、大鍋の掴みを持ち回転し姐さんへとぶん投げる。残ったもう一つの鍋も同様にして姐さんへとぶん投げる、少女の姿とは言え勢いよく飛んだ力を利用すればどうにかして姐さんの下に届かせることは出来るだろう。
だが、その中身は水ではない。一度煮込まれ、味を熟成させるために寝かされていたシチュー。牛肉をたっぷり使った旨味が浸み込みだしたビーフシチュー、牛乳を使ったまろやかでコクのあるクリームシチュー。
何れ騎士達の食卓に並ぶ筈であったそれらは、一人の少女を炎から逃がすために盛大に宙へとばら撒かれた。とろみがついたとはいえ液体は液体、純粋な水に比べると効果的ではないが彼女に襲い掛かる炎はかなり軽減されよう。
しかし姐さんと近くにいたはずのレーヴに襲い掛かるは二色の油分と旨味ととろみがたっぷりの液体、まともに被れば視界は塞がる、足元は滑る、べたつくなど決して良い状況にはならないだろう。ちなみに中身がシチューだと気付いた彼女は口元に手を当て、やってしまったという顔をしていた。

「あ……し、知らなーい!水だと思ったんだもーん!」

中身を水だと信じて疑わなかった結果、厨房中に漂ういい香り。炎の勢いを弱めるという目的こそ達成した物の、かなりの大惨事になろう。攻撃?レーヴに任せるほかない、尤も炎を避けることに専念するあまりそうはならないかもしれない。
間違いなく、連携は崩れた。同時に戦況も可笑しなことになった、宙を飛ぶ彼女には関係ないがシチュー塗れの床は戦いづらい事この上ないだろう。唖然とする彼女、故意ではないにしてもやりすぎたと顔に書いてある。
祈るはレーヴがシチュー塗れにならない事、そもそもあの炎を避けていること。想定外の事態に彼女もあわあわとしているが少なくとも炎は弱まったのだ、好機は好機。頑張れ、レーヴ。負けるな、レーヴ。相方が弓を射ることを忘れているが、頑張るのだ。

>>レーヴ・カストリス ガドン・バルザック

2ヶ月前 No.727

葛飾北斎 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc

【 王都ロンカリア/城壁・上部/葛飾北斎 】

 ギルバートの拳が突き刺さる。
 北斎の筆が連続して相手を塗り立ててゆく。
 だが止まることはない。
 前へ前へ前へただ前へ、――クジャルナ・クオークの体は止まらない。
 妄念とすら呼べる意志は戦闘の続行を可能としていた。
 だがそれがどうした。想いの差で負けました、などというのは画家の名折れ。

「なら言ってやるよへんちき野郎!」

 小筆は防御には向かない。
 手数を意識し一気呵成に書き上げるとはいえど、大槌の如し回し蹴りには対処はしきれない。
 否、それはもう打撃武器にすら在らず。
 音の挙動でもって切り裂く刃<足>を前に、北斎は甘んじて受けきることを選ぶ。
 突き刺さる足。骨の一、二本はいったか。吐血。
 吐き出す血が着物を深紅に染める。垂れおちるそれは華奢な体に似合わぬ紅蓮の華。
 だが結果は上々、これでいい。無理に受けて腕を折るなど、画家の名折れ。

 >>オン・ソチリシュタ・ソワカ
 >>オン・マカシリエイ・ヂリベイ・ソワカ

  、  ・・
「御大層な正気<キョウキ>をお持ちのようだが。
 ――ソレに呑まれちまってるんじゃあお話にすらならねぇナ!」

 武装は大筆に持ち替えた。
 宝具が紐解かれる、――幻想<ノウブルファンタズム>の解放。
 ギルバートが解き放つ重力砲に合わせ、北斎の筆に宿るは何処までも蒼い魔力の波。
 ミンシュウ
  対軍を呑み込むそれこそが、葛飾北斎――一人と一匹で構成される英霊の真価。

「今からその答えを見せてやる。
 たっぷり墨はすったぞ――さ、身構えなァッ!」

 莫大な魔力を内包する大筆が描き出すのは、そう、それこそ世界である。
 ただ一瞬を切り取る画法。彼/彼女が確立した世界の形とは、それである。
 自然の振る舞いを見定め、そして神懸かりの境地でもって描き出される世界は見るもの全てを呑み込んでゆく。

 >>万象を見通す玄帝、北辰より八荒擁護せし尊星の王よ!

 まずは一筆、大波が描かれる。
 そして二筆、人を乗せた船が描かれる。
 その筆が振るわれるごとに魔力実体がクジャルナへ向けて放たれ――。

 >>渾身の一筆を納め奉る――!

  、  、   ・・・・
 そして三筆、――空と富士が形成される。
 描かせた時点で此方の勝利は決まっている。そう、――それら全てが"実体"を伴った世界の構築であるのだから。
 クジャルナは無論、ギルバートですら下手すれば呑み込まれるだろう。
 此処は海だ。
 大波も。
 船も。
 富士も。
 空も。
 その全て、あらゆる全てが――リアリティを持った"現実"として飲み込みにかかるのだ。
 そう、それこそが彼女/彼の才覚。

「――いざいざご賢覧あれッ!」

 その場にいる兵士も誰もかれもを飲み干し、その身も心も衝き動かさせる。
 そんな世界を生み出す偉業をやってのけるのが彼女、葛飾北斎/お栄。

「『冨嶽三十六景』ッ!」

 クジャルナを呑み込まんと襲い掛かるは大波。船。富士。空。それらすべてをひっくるめた"世界"。
 何処にも逃がさない。
 何処にもよけさせない。
 他の何処にも目を逸らさせない。
 捉えたが最後、この降臨者<フォーリナー>の意志が容易く鑑賞者を飲み干し喰らう。
 それこそがミスター北斎が生み出した大傑作グレートウェーブ。


「神奈川沖――浪裏荒びィッ!!!」


>ギルバート・トムフール クジャルナ・クオーク

2ヶ月前 No.728

力への誘い @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/無限回廊/フロレ・ゾンダーランド】

血で血を洗う闘争の歴史。魔族が台頭する以前から、人類は同族同士での殺し合いを続けてきた。彼らは時に綺麗事を述べてみせるが、力こそが全てという理に染まっているのは疑いようのない事実。
だから、今度はより大きな力を持つ魔族がそれを実行する、ただそれだけの話である。蹂躙されたくなければ、もっと力を付ければいい。出来ぬのなら、大人しく殺されてしまえ。
結局最後は、強き者が生き残るのだ。フロレの話を聞いたゲイルの表情に、憎悪が宿る。素晴らしい。そうだ、恨め。自らの無力さを。力を手にした偉大なる存在の前にひれ伏せ。
このまま精神的に攻め立てていけば、恐らく彼も"堕ちる"。彼女の顔に、歪んだ笑みが浮かんだ。もしかしたら、同胞が増えるかも知れない。同じ未来を志す仲間が増えるかも知れない。
本当にそうなったら、嬉しい限りだ。かつて味方であった彼と共に、魔族の繁栄を夢見られるなど、夢にも思っていなかった。迷うゲイルに、正しい道を示してあげよう。さすればきっと彼も、救われる。

「あなたのその心こそが、力を生み出す糧となります。自分自身を受け入れるのです。あなたにも見えるでしょう? この光が」

虚空へと手を伸ばしながら、フロレは恍惚の表情でそう語る。実に、優しく暖かい光だ。一度手にしたら絶対に抜け出すことの出来ない、極上の幸福感。
悩みも辛さも何もかもが消え去る最上級の救済。それだというのに、何故彼らは頑なに拒むのだろう? 人間としてのプライドを、捨てられないとでもいうのか?
闇への道を突き進み始めているゲイルを、ローウェンが一喝する。無駄なことだ。彼はいずれ堕ちる。自分と同じように、偉大なる力の導きによって光へ誘われるのだ。
あくまで邪魔をするつもりなら、それでもいいだろう。だが、分を弁えなければ、いずれ身を滅ぼすこととなる。ゲイルが敵となった時、唯一残された彼がどのような反応をするのか、見ものだ。

「今あなたがしたこと、それこそが力の素晴らしさを象徴しているではないですか! あくまでわたしを否定するつもりなら、そんなものなど使う必要はないはずです。違いますか?」

緑色の突風を纏いながら暗黒を突破したゲイルに向けて、フロレは狂気をちらつかせながらそう語り掛ける。結局のところ、敵に倒すために、どんな存在であろうと力に頼るのだ。
にも関わらず、それを指摘すると挙って違うと言うのは、何故なのだろうか。綺麗事を並べたところで、事実は変えられないというのに。フロレには、彼らの思考が理解出来ない。
緑色の旋風に黒い稲妻をぶつけて相殺しながら、続くようにして飛び込んできたローウェン斬撃を受け止める。その反応速度は常軌を逸しており、とても人間が真似出来るようなものではない。

「何を言っているのです? 人間は、心臓を突かれなくとも簡単に死ぬでしょう。そこが、魔族との決定的な差です。あなた達は、私達よりも遥かに弱く、愚かな存在なのですよ」

どのような生物でも、心臓を突かれれば死ぬ。当たり前のことだ。確かに、そこだけ見れば人間と魔族も差はない。しかし、彼らはそんなことをせずとも、いとも簡単に命を落とす。
それで魔族と同格を語るとは、随分と威勢のいいことだ。何も、現実が見えていない。丁度いい機会だ、二人には両者の間にある、埋めようのない差を教えてやるとしよう。
フロレが剣を地面に叩き付ける、刹那、迸る電光。無限回廊の踊り場全体を覆うかのように広がったそれが、ゲイルとローウェンを一斉に呑み込まんとする。
更に彼女は上空へ向けて空いた手を突き出し、魔法陣を展開。そこから闇の弾丸が、嵐の如く降り注ぐ。もう、逃げ場などない。力はより大きな力を用いることで、簡単に押さえ込める。彼女にとって今の二人は、何ら驚異的な存在ではなかった。

>ゲイル・ベネルド、ローウェン・アルベリウス

2ヶ月前 No.729

@sable ★8O0rjcH5GN_8gk

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2ヶ月前 No.730

その心の者、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/無限廊下/サシャ】

必死の叫びが、ニアの心へと響くことはない。返ってきたのは、実に冷徹で残酷な回答。疾うの昔に錆び付いてしまった彼女に、同情などという感情はないのだろう。
サシャの表情が一層悲痛なものへと変わる。何も、言い返すことが出来なかった。言葉が浮かんでこなかった。戦いをやめれば、散った命が無駄になる。確かに、そうかも知れない。
でも、これ以上戦いを続ければ、余計に多くの命が……目を潤ませながら呼吸を乱し、目のやりどころを完全に失っている様子のサシャ。今にも錯乱しそうな彼女を、レオンハルトの声が引き戻す。
彼は、絶対に死なないこと、そして自分達を守ることを誓った。魔族のために、人間が。とても現実とは思えない、夢に描いていた光景に、涙が頬を伝う。
心の中に、自信が漲ってくる。相手がどんなことを言ってこようと、自分の信念を曲げる必要はないのだという決意。サシャは先程までとは全く違う真っ直ぐな視線で、ニアを見据える。

「無意味なんかじゃない! 死んでいった人達は、あたし達にこれ以上戦う必要はないってことを教えてくれたんだよ! ここでやめなかったら、もっと多くの人が殺されちゃうって!」

はっきりいってこじ付けにもほどがあるし、恐らく彼らはそのようなことを思って死んだ訳ではない。だが、サシャにとっては、そう思えてならなかった。
屁理屈と言い返されれば、反論は出来ないだろう。それでも、これ以上の戦いが無駄であることは、疑いようのない事実。人間も魔族も、和平の道を進む準備は出来ている。
ニアがそれを邪魔するというのなら、倒さなければならない。戦う必要はないと述べておきながら矛盾しているが、そうでもしなければ自分は生き残れないのだ。

完璧にタイミングが合ったはずの攻撃が当たらない。敵の速度は超人じみたものであり、現段階ではこの場にいる何者も、付いていくことの出来ないものだ。
迷いのない、澄んだ刃がレプティラを斬り裂く。切断された尾を見て、思わずサシャは目を逸らした。しかし、そんなことをしている場合ではない。既にニアは、狙いをこちらへ変えている。
勿論、それに気付かないサシャではなく、直ぐ様回避を行おうとするが、それをするよりも早く、下半身の擬態を解いたレプティラが彼女の周囲でとぐろを巻いていた。
自分へ向けられた攻撃を肩代わりする度に、その身体から血が吹き出す。とても、見ていられない。レオンハルトも剣撃を喰らい、傷付いている。なのに、自分は無傷。守られてばかりでは、いられない。

「二人共自分を大切にしてよ! あたしを守って傷付いて……そんなの、見たくない!」

あの速さに付いていける可能性が僅かでもあるのは、サシャ。正面から奴と張り合うには、自分が前に出るしかない。そんな思いが、彼女の身体を突き動かす。
結果として、サシャまでもが穢れの軍団の影響を受けることとなったが、これ以上二人が傷付いていくところを黙って見ているのに比べれば……痛くも痒くもない。
大きく宙へと跳躍した彼女は、尻尾に光を纏わせると、回転しながらそれを振るうことによって、虚空に衝撃波を描き出す。眩いばかりの光が、無限廊下全体を明るく照らし出した。
直視すれば、激しい閃光によって目をくらまされ、視界を闇に閉ざされることとなるだろう。そうなれば、この攻撃を回避出来る道理はない。ニアにこの程度の子供騙しが通用するかどうかは未知数だが、最善を尽くすのみだ。

>"塵殺剣"のニア、レオンハルト・ローゼンクランツ、"常山蛇勢"レプティラ

2ヶ月前 No.731

災いを呼ぶ黒猫 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

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2ヶ月前 No.732

メンヘラ @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_LPw

【王都ロンカリア/飯店/ラヴィ】

マイナスのオーラを撒き散らしながら、じりじりとイアンに歩み寄るラヴィ。呼吸も荒くなっているが、何よりもその目つきが危険さを象徴している。まるでとろけるような、誘い込むようなその視線で、一体どれだけの男性を騙してきたのだろうか。もちろん、今の相手の性格ではこれが効くことはないだろう。しかし、彼女にとってはそのようなことはどうでもよく、ただイアンに構ってほしいがために、このような態度を取る。

「うさぎは寂しいと死んじゃうんですよぉ……聞いたことないですか?……」

うさぎは寂しいと死ぬ。よく聞く言葉だろうが、これは迷信だ。だが、この場においてはそうではない。ラヴィは実際に寂しくなると、すぐに誰かに依存しようとするし、一度依存したら四六時中自分に構うことを要求するのだ。理由は特になく、ただ自分を見ていてほしいというだけである。そこまで彼女一人に時間を割ける人間はいないだろうが、そんな理屈は通用しない。

「私……何も悪いことしてないですよ……どうして構ってくれないんですか……?」

ステーキを食べながら威嚇するイアンを見て、ラヴィは少し悲しげな声色でそう言う。突進してくる彼をかわしたと同時に、自然と湧き出た禍々しい色の弾丸が相手へ向かう。この弾丸は肉体と精神の両方を攻撃するものであり、当たれば急速に気力が失われ、うつになっていく。恐らく、ラヴィを無視した人間が次々に命を絶っている理由もこれだろう。見た目以上に危険な攻撃に、彼女はどう対処するのか。

>>イアン

2ヶ月前 No.733

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/深淵の間/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 魔帝ヴェルメイユが軍を率いて人類と戦う理由。それは今も昔も終始一貫としている物で、魔族の繁栄や人類の抹殺と言った単純な物では無いのだ、と彼女は語る。問いに対する答えは曖昧とした物で、其処から人類に向ける印象を窺い知る事は出来ず、人類の存亡をどう捉えているのかが解らない。曝け出させるべき主張は、まだ彼女の内に秘められたまま。問答は、続ける必要がある。
 そして一つ、彼女が述べる言葉の中で気になった物。それは、自らを人類の守護者と語った氷像に向けて、皮肉な物だと称した事。初めてこの地に足を踏み入れた時に感じた、魔帝の魔族としての違和感と相まって、一つの想像が掻き立てられる。
 数多の魔族を統べる魔帝の正体、それは魔族では無く人。そうでなくては、人類の守護者の行いが皮肉として成立する筈が無いのだ。

「妨げられると知っていて何故、最初から全力で殺しに来ないんだ。お前は本当に僕達と戦う気があるのか……!」

 先手は此方に譲る。その言葉を額面通りに受け取るなら、様子見に徹する心算なのだろうと考えるのが普通だが、相手は魔族の総大将。敵に手番を明け渡す事が、どれ程悪手であるかは十二分に理解している筈。敢えて力の差を見せ付ける事で、此方の戦意を削ぐ可能性も否定は出来ないが、効果は微々たる物で、態々ハイリスク兼ローリターンなこの戦術を選択するメリットは無い。
 なのに、魔帝はこの選択を選んだ。だから、勇者は彼女に疑問を突き付けた、本当に自分達と戦う気はあるのかと。必死で戦いに臨む心算ならば、全力で殺しに掛かって来るのが道理だろうと、叫ぶ。

「……魔帝、人類をどう思っている。お前達の目的の為には、彼等は犠牲にならなければいけない存在なのか?」

 氷像が語る、自らの正体。振り返る事無く呟かれるその言葉に、勇者は静かに頷いた。そして、氷像が先陣を切って魔帝との距離を詰め始めたのを見計らって、彼女もまた奔り出した。荒ぶる風をその身に纏い、魔帝との距離を縮めて行く中、彼女は問いを投げ掛ける。人類とは、魔帝にとって死すべき存在であるか否なのかと。
 一瞬の内に肉薄を果たした勇者が繰り出すのは、音をも越えた速さで放たれる三方向からの剣戟。それらはいずれも一撃必殺を狙った物では無く、直に受ければ手傷こそ負うものの、今後の戦闘に及ぶ影響は然程大きくは無い。良くも悪くも、彼女が魔帝の殺害へと踏み切れてはいない点が、露わとなっていた。
 一連の攻撃を放った勇者は、共闘者の攻撃や敵の反撃に巻き込まれない様に即座に後方へと退いて距離を取り、剣を構えて次に備えるのであった。

>魔帝ヴェルメイユ 氷魔像ギラード ハザマ

2ヶ月前 No.734

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/城壁・上部/クジャルナ・クオーク】


この男に救う余地はない、それは何故か?思想故か?それならば違う思想に染めればよい。視野狭窄故か?それならば世界を示せばよい。己の正義故か?それならば正義を否定すればよい。この男に救う余地なし、その理由は至極単純。
全て理解したうえで、己を正義としているから。その思想が世に合わぬとも、その思想より温和なものがあろうとも、その思想より正しきものがあろうとも、それを知覚しているからこそ尚、正義を振りかざす。
魔族が虐げられた?ならば自身が先触れとなり、人間に知らしめようと。魔族を擁護する派閥ができた?あんなもの遅すぎる、それに浸透した思考を塗り替えるにはあまりに長い。歴史改変以外の方法がある?その間にどれだけ虐げられる魔族が増える、どちらが多くの魔族を豊かにできるか分かるだろう。
全てがこの男の正義、全てが独断。理解など求めない、これが正しい事だと何よりもこの男が信じている。そしてそれを為すだけの力も持ち得ていた、だがそれも最早届かぬ。されど、この意志まだ潰えず。
隊長と女性への反撃、双方とも確実に決まった。互いに吐血、内臓への損傷は大きい、だが即死には至らなかった。ならば次に来るのは反撃、この男は油断も慢心もない。至近から放たれる文字通りの必殺、動揺もなく回避も、恐らくは防御も不能であると反断。
故に選択するは犠牲、心臓に放たれたそれを僅かな後退に合わせ、肘より先がなくなった左腕を捨てるつもりで思い切りにぶつける。多大な負荷により文字通り吹き飛んだ残った腕、肩口より夥しい出血、だがまだ動ける。

「全てを見渡す?何を馬鹿な事を、見えていなければ動くわけがなかろう!ああだが、正義には呑み込まれていよう!我こそが正義!それは揺るがぬ!」

背後から襲い掛かるは大波、視線を集める絵画の如き描かれた世界。だがそれは絵の中の空想ではない、目の前に現実として確かに存在するもの。まさにもう一つの世界そのもの、それを描き切るとはただの筆で戦う奇怪な絵師ではない。
だがこの男には誰であろうと関係がない、高名な画家であってもこの場では敵に他ならず、襲い掛かる世界の大波を描いた張本人でしかない。一つ、感想を漏らすならば美しいと、人間の肩を持つのが惜しいとだけ、心の中に留めよう。
迫る大波、回避は不可能。世界を覆そうとするこの男、世界から逃げる事だけは許されない。呑み込もうとするならば、逆に呑み込み返してやろう。左脚を城塞へと突き刺し、荒ぶ世界を受け止めよう。

「ハ……ハハハ、ハハハハハ!面白い、面白い!これほどの絵は初めてだ、現実と見紛うほどにな!だが、我はこの程度で倒れる訳にはいかぬ、いかぬのだ!」

どれだけの傷を負おうと、どれだけの言葉を浴びせられようと、笑みを保ったままの男の顔が崩れる。世の大波に呑まれぬよう、突き刺した左足で全身を支える。徐々に抉れる城壁、傷だらけの身体に打ち付けられる世界を構成するもの。
大山、海、空。そのどれもが現実、いやそれ以上の意志を感じるもの。それは間違いなく描き手の情念、人智を超えた此方を飲み込まんとする意思の中に絵に込められた思いまでが伝わってくる。芸術、そう表すのが的確。
だがこの男も折れぬ、挫けぬ、まだ果てぬ。世界がなんだ、そう言わんばかりに空想でありながら現実を受け止め続ける。正義を翳した時、既に世界の一つや二つ背負う覚悟は出来ている。
ああしかし、傷だらけの肉体は持ちそうにない。世界である前に魔力の奔流、着実に肉体に蓄積していく死への刻。古代で負った大火傷、左脚の手当てに使用した人工皮膚は既にない、剥き出しの焼け爛れた皮膚がさらに抉られる。
左肩からの出血は留まることはない、世界に赤き雨を降らせるように止めどなく流れ続ける。背に負った傷も決して軽くはない、眩暈を起こすほどに血を流し過ぎている。だがこの男は、世界に呑まれることを良しとはしない。
故に、地を右腕で殴りつけもう一つの楔とする。世界とは言え波、押せば引くもの、されど引く場所なければ押すのみ。何れ去ることに変わりはなし、そしてその時はついに訪れる。

「―――ああ、耐えた、耐えきってやった!我の正義は未だ健在ィ!……ん」

咆哮、その終わり際に放たれた惚けたような声。共にこの男の視界は流転し、身体は地へと伏せる。耐えた、耐えたがこの勝負には負けた。最早攻撃する手段はない、それどころか数分の間に鼓動すら止まるだろう。
世界を受け止めた、それこそ称賛に値しよう。だが、この男はこれでお終いだ。迅速な手当てをしても助からず、どれだけ手を尽くそうとも消えかけた灯火がまた燃え盛ることはない。前のめりに倒れ、ふと王都を見る。
あの混沌は何処へやら、未だ一部分ではあるが鎮静へと向かっている。その場にいたのは、またも芸術関係者か。画家と言い、音楽家と言い、道を阻んだものにはそういった才能を持つものが多かった。
心残り、多大にある。ここで死すことを良しとは出来ぬ程ある、されど既に身体動かなければ打つ手なし。このまま殺されるか死ぬか、それでしかない。死を待つのみの身体、しかし魔族を人間に託すなど絶対にするものか。

「ふっ、……残念だ、大いに残念だ。」

何を残念がったのかは敢えて語るまい、語ったところでこの男は歴史を変えようとし、その時代の人間を殺しに殺した、その存在で良いのだから。どれだけの想いを抱えていようと、それは変わらない。
先程までの苛烈な言動とは打って変わった、落ち着いた語り。嘲りを含めた言葉、その矛先は誰に向けたものか。微笑みを浮かべ、王都を、世界を眺める。正義は為されず、また別の正義が為した。

「……ああ、魔族が―――」

言葉は続かず、その瞼は落ちる。床に広がる紅、片腕を無くした肉体。壮絶な傷を受けて尚、戦意衰えることなく、自身の正義に殉じた外道。そう外道、この男を表すにはそれで充分。
無念の内に果てようとも、その顔は穏やかであった。何故か?そんなものは知らない。この男なりに満足して逝けた、それだけだろう。風に揺れる白糸の髪、寝ているようにさえ錯覚する穏やかな顔。先までの印象など、欠片も見えない。
ここに、魔族による統治を望んだ一匹の外道は滅びた。強大な力を持ち得て、それを存分に振るった。されど力及ばずこの地にて果てる、理解者も仲間も己一人。だが、それでよかった。

―――――豊かに暮らせるように。

【クジャルナ・クオーク(Chrono Crisis)@重力砲を腕を犠牲に回避、その後迫る世界を耐えきるも限界が訪れる。魔族の繁栄を願い、その命尽きる。】

>>(葛飾北斎 ギルバート・トムフール)


【御相手ありがとうございました、これで退場とさせていただきます。】

2ヶ月前 No.735

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

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2ヶ月前 No.736

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

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2ヶ月前 No.737

Charlotte @kirieru ★Android=ryLO8WYMEG

【魔帝城/舞踏場/リュドミラ】

怒りに身を任せた魔力の噴射。
床を粉砕しながらシフォンの命を奪うべく迫り来る。
しかし彼女の起死回生のカウンターアタックであるアイスシールドによって打ち返されその魔力の余波は壁や柱を次々と破壊していくのだった。
天井の崩落が止み豪華絢爛だった舞踏場も見る影もなく崩壊している。
既に満身創痍の二人であったが突然、シフォンが驚くべき内容を口に出した。

『たった今、部下から良い報せが齎されましたわ魔族の中に人間との和解を望む勢力が生まれ、今この瞬間も、実現のために動いている』

なんと今まで侵略行為をし続けて来た魔族の中に中立派が生まれ人間との共存を願っている勢力が存在していると言うのだ。
にわかに信じられない話であるが『無益な争いはやめ、新しい時代を受け入れる』と言いながらなシフォンは傷だらけの手をリュドミラに差し出したのだ。
この期に及んで和解しようと言うのであろうかリュドミラは何の躊躇いも無しにシフォンの手を払い除けた。

「残念だけど答えはノーよ.......私達、アジ・ダハーカ一族に共存という二文字は無いわ........服従か滅亡ただそれだけよ.........」

あくまでも共存という道は通らず支配という覇道を突き進む.......リュドミラの選択はそのひとつしか無い。
故にシフォンの言葉にも耳も貸さなかったのだ。

「今回はアンタの無駄な度胸に免じてここで退かせて貰うわ........けど次はその共存とか言ってる連中共々、皆殺しにしてやるわ...........!」

そう言ってリュドミラは双翼を大きく拡げ崩壊した天井の部分から上空に向けて飛び上がっていくのだった。


>>シフォン


諸事情で遅くなってしまいましたがこれにて撤退させて貰います
雑ですが御相手ありがとうございました

2ヶ月前 No.738

健啖の銀狼 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【王都ロンカリア/飯店/イアン・ガグンラーズ】

負のオーラとともににじり寄り、男性の心を射止めて離さないような眼差しを向けてくる兎娘。仮にイアンが男性で、それも女に飢えているような年頃の少年だったとしたら、ものの見事に落とされていたことだろう。
いや、彼女の前では年齢など関係ないのかもしれない。だからこそ人間たちの間で名が知れ渡り、警戒の対象となっているのだ。表立って街や市民を襲う魔族とは違い、水面下で暗躍するラヴィ…被害のスケールとしては、戦争に比べれば遥かに小さいが、それでも説得もしくは倒すべき敵であることに違いはない。
加えて最後通牒(の体を成しているかは別として)を突き付けても意味がなかったため、交渉は決裂し、戦闘は避けられないものとなる。この期に及んでも彼女が口にするのは『かまってほしい』という意思、願望の塊。
挙句の果てには、本人も嘘偽りだとわかっているであろう迷信まで飛び出した。何よりの問題は、それを言われた側が、迷信であることを把握していないことなのだが。

「だからって!ボクだっておなかが空いたら死んじゃうけど、ここの人たちを食べたりしないぞ!」

そもそも空腹が原因で死に至るのは、何もイアンに限ったことではないのだが…ただ、いくら抜けたところがあるイアンでも、目の前の少女がどういう手で人々を苦しめているのかは理解できたようだ。
それほどまでに彼女の異常性というのは顕著なのだろう。特に"目"。今までのイアンの人生の中で、一度も見たことがないといってもいい。

さて、戦いはまだどう転ぶかわからない最序盤。軽やかなフットワークからの先制攻撃、銀色のオーラを纏って回転しつつ体当たりする『バイシクルビースト』。
敵もやはり初撃で沈むほど甘くはないらしく、回避することによって簡単に対処されてしまった。さらに反撃とばかりに繰り出されるは、禍々しい色をした飛び道具。
先程見た不気味なオーラと同じ色をしている。隙の大きい攻撃を仕掛けた後のイアンでは回避できず、横っ腹に数発もらって倒れ込んでしまう。とはいえ"肉体的には"大したダメージはなかったらしく、すぐに起き上がって次に備える。

「ふん、こんなのどうってこと…

!」


グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!


突如として、イアンの腹から凄まじい音が鳴り響いた。品のカケラもないそれは、店の周囲どころか王都全体にこだまするのでないかと思わせるほど。
ラヴィの放った弾丸の持つ性質、それは相手の精神を蝕んで死に至らせるという厄介なもの。ただしイアンの頭には脳ミソが入っているかも疑わしく、事実、精神汚染に関するような効果は何一つとして出ていない。
しかしだ。代わりと言ってはなんだが、彼女にとってはメンタルよりよっぽど大事な、命にも直結するパラメータに影響が出てしまった。

そう、満腹度である。イアンのこれが削がれるというのは、通常の人間が精神を蝕まれることの数倍、いや数百倍は重いダメージとなって表れる。その重大さを示すように彼女の足は震えだし、間も無く力が抜け切ったようにカクリと折れてしまった。
自動車は燃料がないと動かせない。電子機器は充電してやらないと使うことができない。イアンもまた同様だ。食べ物という石炭を放り込まれて走る暴走機関車。そんな彼女から燃料を取り上げてしまっては…

「お、お前…なにしたんだよ…」

ふらふらとした足取りでラヴィから距離を空け、絞り出すような声をあげるイアン。必死に繰り出す反撃、銀色のオーラを纏わせた足を振り上げることで放つ真空波も、空腹のせいで威力・速度ともに減退が激しい。
先程のような攻撃を受け続ければ、彼女の空腹はどんどん進んでいき、終いには命に関わることになるだろう。仮に死は回避できたとしても、今度こそ精神を壊されてしまうかもしれない。

がんばれイアン。兎に負ける狼など、おとぎ話の中にもいやしない。

>>ラヴィ

2ヶ月前 No.739

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【マロニス城/ホール/城前/ユーフォリア・インテグラーレ】

ヴァイスハイトの乱入によって目論見が外れた形となったエクスデスは驚嘆の声を挙げると同時に、怒りを露わにした。ここまで常に冷静を保ってきた相手が見せた、初めての感情。
それは一瞬のものであったが、ユーフォリアにとっては突破口を見つけ出すための大きな鍵となったに違いない。彼とて、無敵ではない。隙を生じさせることはあるのだと。
三人の息の合った攻撃が、確実に暗黒騎士の余裕を奪い去っていく。されど、未だ油断は許されず。一発が大きいだけに、ここから形勢をひっくり返される可能性も考慮しなければならない。
かといって、消極的になろうものなら、敵は必ずそこへ付け込んでくるだろう。総合的な観点で捉えれば、攻め続けなければならないこちらが不利に立たされているともいえる。
ちらと、視界の隅に映るヴァイスハイトを見やる。膠着した状況を打破する鍵になるのは、彼の存在だ。ただし、単純な能力から考えて、単独で前線を任せるのは危険が伴う。
重要なのは、彼が自由に動けるように、極力自分がサポートをすることだろう。力押しだけが戦いの作法ではない。時には味方を活用することも、勝利を手繰り寄せるために必要なことなのだ。

ユーフォリアが炎熱の一撃を放つと共に、ダグラスも動く。風を纏い飛び回る彼は、先程受けた光の影響によって身を焼かれていたが、戦闘に支障はないようで、一先ずは安心した。
初撃は、エクスデスが瞬時に発動した魔法障壁によって防がれた。ここまでは想定の範囲内。しかし、ダグラスの連続攻撃はまだ終わっておらず、敵はその対応に追われている。
反撃の剣が空を切り、斬り下ろしが暗黒騎士の鎧に傷を刻む。徐々に流れがこちらへ傾いてきている感覚があるが、相手もこのまま黙って押し切られるはずがないだろう。
そんな彼女の読み通り、エクスデスは自身の周囲に強烈な竜巻を発生させることによって、この窮地を乗り切った。接近していたユーフォリアは巻き込まれる形となったが、幸いにも腕に裂傷を負っただけで済んだようだ。
とはいえ、じっくりと長期戦に徹せるような状況ではなくなりつつあるのも事実。勝負に出たいところであったのだが、一瞬の隙を突かれ、ヴァイスハイトが攻撃の対象となってしまった。
強張るユーフォリアの表情。しかし、彼は裾を引っ掻かれた程度の被害でこれを切り抜けた。危機は好機へと変わり、味方の手番がやって来る。押し込むなら、今。

「私はまだ塵になる訳にはいかない。歴史を守る使命を果たす、その時まで」

開かれた両手に、虹色の光が灯る。周囲にエネルギーを迸らせる光弾を空中へと放り投げたかと思うと、彼女は一気に跳躍し、それらをオーバーヘッドキックで同時に蹴り出した。
蹴り出された弾丸は途中で一つに集束し、視界を覆い尽くすほどの大きさとなって、地面を抉り取りながら進んでいく。この威力では、竜巻を展開していようとも安全とは言い切れないだろう。
遠距離戦を得意とするユーフォリアの本領。攻撃を終え、着地した彼女は、直ぐ様反撃に備えて身構える。これで決着が付くとは限らない。何が起きてもよいように、敵の行動を注視する必要がある。

>エクスデス、ダグラス・マクファーデン、ヴァイスハイト・インテグラーレ

2ヶ月前 No.740

黒闇の騎士 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu


【魔帝城/無限回廊/ローウェン・アルベリウス】

 憎悪の炎に呑まれるがままに剣を揮うゲイルに忠告の声は届かず。嘗ての己と同じ轍を踏まんとしているのを見て、フロレは歪んだ笑みを浮かべる。復讐を果たさんとする己の無力を嘆き、更なる力を求めて闇へと堕ちて行く彼の未来を、彼女は予見しているのだろう。

 ――冗談では無い、誰がそんなふざけた未来を許すものか。

 ローウェンはそう心の中で自らを奮い立たせ、その結末を未然に防ぐのだと志を新たにする。深淵の奈落の底へと友が堕ち行く前に、必ず正道へと引き戻す。憎悪が引き出す力は確かに凄まじいが、それではかの邪悪を葬り去る事は叶わない。唯々、濁った心がより深く濁って行くだけなのだ。そしていずれは闇へと染まってしまう。
 闇に堕ちた者の辿る末路は悲惨だ。仮に戦いを制したとしても、元の様には戻れまい。力に魅了され、溺れた者がそう易々とそれを手放す事は無いだろう。その源からして、清廉潔白な騎士であった頃の面影は、間違いなく消え失せる。在るのはただ、復讐鬼としての姿。

「ゲイル……! 憎悪に囚われるがままでは、決して奴は倒せん! 思い出せ、お前が本当に為さねばならない事を!」

 碧の風が抉じ開けた突破口へと飛び込み、繰り出した怒涛の猛撃の悉くが往なされる。常軌を逸した反応速度、正面から挑む事が如何に下策であるかを思い知らされるかの様な的確な対処。依然として一撃を叩き込むには至らず、戦況はより不利に陥って行くばかり。それでも勝機は必ず掴める物と信じ、心を折らずに立ち向かう。
 大地に剣が叩き付けられると共に、迸るは雷電。無限回廊全体を呑み込むが如くに迫る雷撃を直に受け、猛烈な勢いで生命を削り取られて行く身体。然し、負ける物かと轟音にも似た咆哮を挙げると、全身から闇の波動を放出して電撃を押し返し、降り注ぐ弾丸の嵐の総てを打ち消して行く。攻撃が収まる頃、危うく膝をつきそうになりながらも、両足に力を込めて立ち上がり、毅然とした態度を貫いたままフロレを睨み付ける。

「……ならばどうして一撃で、俺を殺せない。貴様が言うからに、人は簡単に殺せる程、脆弱なのだろう!」

 漆黒の魔力が生じさせる闘気を身に纏い、黒く輝く闇の双刃を構えて地を奔る。敵の眼前へと躍り出る寸前、溜め込んだ魔力を爆発的な勢いで放出させると、双剣の刀身に鋭利な闇の刃を纏わせる。そして肉薄と共に叩き込むは、これまでと同じく無数の連撃。されど侮る事無かれ、同じと言えどもその威力は桁違い。生半可な防御を容易く両断せしめて見せる事だろう。十二に渡る黒の煌きが今、敵の身を悉く切り裂かんと迸る――

>フロレ・ゾンダーランド ゲイル・ベネルド

2ヶ月前 No.741

閃剣 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【マロニス城/厨房/レーヴ・カストリス】

一歩間違えば味方殺しとなってしまったかも知れない状況。にも関わらず、ミコルナは間違えてしまったとほとんど反省している様子もなく答えてみせる。
あれがわざとやったものであろうことは、考えなくとも簡単に推測出来る。暴走気味の彼女にレーヴは少々呆れた様子を見せながらも、気にすることなく戦闘に集中する。
色々と問題行動こそあるものの、ミコルナが貴重な戦力であることに変わりはない。それに、攻撃を防いでくれたのは事実だし、ちゃんと自分の役割は果たしている。
まあ、もう少し配慮して欲しいと思うことはあるが、彼女は自分よりも年下だ。他人との付き合い方は、これから覚えていっても遅くはないだろう。その内何とかなるはずだと、レーヴは楽観視していた。

「おおっと、随分汚い声になったな! さっきまでの歌声はどうした?」

果敢に接近戦を挑んでいったレーヴの動きを読んでいたかのように放たれる闇の衝撃。思わず吹き飛ばされそうになるも持ち前の体幹で耐え、皮肉を飛ばす余裕すら見せ付けてみせる。
さすがにノーダメージという訳にはいかず、腕や脚に軽い切り傷を負うこととなったが、この程度であればさしたる問題ではない。そのままレーヴは、後退した敵に再度接近を試みる。
ガドンが自身の得意な間合いを保とうとしているのは明白。だからこそ、休む暇もなく接近戦を挑み、ペースを乱すことが重要なるはずだと、彼は考えていた。
勿論リスクもある。途中で相手が反撃を行えばそれに対応せざるを得なくなるし、実際にそうなった。レイピアの切っ先から放たれる強烈な火炎が、二人を襲う。
咄嗟に双剣を風車のように回転させることで軌道を逸らし、何とか攻撃を凌ぐレーヴ。反応が遅れていれば、今頃全身を焼かれて客席に並ぶ料理の仲間入りを果たしていたかも知れない。
このままではジリ貧になる。一度後退し、体制を立て直すべきか。彼の頭の中にそんな考えが過ぎった瞬間であった。ミコルナが放り投げた、大鍋が二つ、背後から飛んできたのは。
あの野郎、またなんてことしやがるんだ……思わず悪態をつきそうになるが、結果としてそれは、膠着状態を打破する鍵となった。鍋の影に隠れる形で、レーヴはガドンに急接近する。

「全く、どうすんだこれ? 料理長に見つかったら大目玉だぜ。まあ、あんたには関係のない話だがな」

まだまだ余裕といった様子で、無残に床にぶちまけられたシチューを見ながら率直な感想を述べるレーヴ。恐らくミコルナは、後できっちり絞られることになるだろう。
だが、それも今から倒されるガドンにとっては無関係だ。颯爽と眼前へ躍り出た彼は、まず双剣がまとったままであった炎を牽制として飛ばしつつ、再び光の魔力を込める。
このまま双剣で斬り掛かる……と思わせ、最初の一撃は強烈な回し蹴り。意表を突いた後は頭上を飛び越える形で背後へ回り込み、そこから光の斬撃を六発。
更に相手が振り返るタイミングを予測して元の位置へと戻り、六連撃。跳躍し、縦回転斬り。着地と同時に右横を取り、そこから直接斬り掛かるのではなく、光の衝撃波を三発。
締めとばかりに今度はガドンを飛び越しながら真下に衝撃波を一発叩き込み、敵を後ろに見る形で地面に着地、不意を突くような形でそのまま後方へ双剣による刺突。
もはや数えるのも面倒な数の暴力が、ガドンへと襲い掛かる。なおも高速で動き回りながら、攻撃の機会を窺うレーヴ。彼と対峙して、距離を取るなどという安全策は無意味。どんな状況でも接近し、自分のペースに持ち込むだけだ。

>ガドン・バルザック、ミコルナ

2ヶ月前 No.742

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【マロニス城/城前ホール/ナイトローグ(氷室幻徳)】

「……」
一人の黒い装甲を身にまとった男が、歩いてホール内に入ってきた。
目的は『この世界』の歴史を改ざんすることにある。

「少し分が悪いようだな……」
ふと前を見ると、どうやら全身を水色の鎧に包んだ男が複数人の敵と戦っていた。
見たところ若干押され気味のようだった。

(あそこにいるのは……まぁいい)
よく見たら敵の一人にこちらの仲間のはずの人間が混じっていたが、特に意には介さなかった。
離反したようなら容赦なく叩き潰せばいいし、そもそも自分の目的とは無関係。
『自分の世界』に干渉さえできれば、それでいいのだ。

「助けに行くとするか……」
前方に銃を向け、狙いを定める。
ユーフォリアの背後から、弾を撃ちだそうとする。

『スチームブレイク! バ―ット!』
そして弾は放たれた。
強力な必殺弾はユーフォリア本人ではなく、ユーフォリアが放った光弾や、ヴァイスハイトが撃ちだした弾丸のほうに向かってゆく。
どうやらこれで攻撃を相殺しようとしているようだ。

>エクスデス、ヴァイスハイト、ユーフォリア、ダグラスおよび周辺all

2ヶ月前 No.743

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【無限廊下/ニア】

 こと、その剣に必殺性はない。
 物理の威力とは速さと質量によって直結するものなれば、ニアのそれには後者が聊かに欠けている。女の細腕で振るわれる剣戟は確かに彼らを一撃で斬り殺すには足りず、しかしそれだけならば塵殺剣は魔将軍の座に就くことはなかった。
 つまるところ、一撃で殺せなければ百を打ち込めばいい。百が足りなければ千を叩き込めばいい。
 最終的に触れることさえ叶うならば殺せるのだ。ならば余計な膂力など要らない、相手が反応できず、それだけの攻撃回数を実現させるだけの速度が備われば良い。実に合理的な“モノの殺し方”は、彼女が死に近く、死に触れ続けて来た生物だからだ。

 疾駆から移動、角度を変え位置を変え、振るわれる剣戟は都合数百に到達。
 舞い飛ぶ剣先が風を生み、ただの動作で颶《つむじかぜ》を連想させるそれらが吹き荒れる。
 魔法どうこうではない。剣の一振りを突き詰めた先にある完成形態。龍炎公ほどの万能さはなく、混沌ほどの手札はなく、不死公ほどの物量はなく、元騎士団長ほどの暴力性はなく、常山蛇勢ほどの支援能力もなく、災禍龍姫ほどの破壊力もない。
 突き詰めたのならば、到達出来るかはともかく到達できる可能性のある一点だ。
 ただ速く、ただ鋭い。言い換えれば―――なにかを殺すためならばそれだけでいいのだ。それ以上のものなど要らぬというのは、先程の斬撃がレプティラの蛇尾を断ち切り地へと叩き付けたことからも明白。ここには多少の抵抗が想定されたが、此処ばかりはニアにとって良い状況へと転んだと言える。
 なにしろ絶速の剣士にとって好まざる状況は“完全な詰み”となる攻撃範囲、それが出来るのは視認した限りならば先ず彼女だ。次点で戦場を支える炎獅子ことレオンハルトに軍配が上がるが、此方の処理には一手、確実な詰めが居る。

「………」

 こと、蛇は善き者であっても戦士ではないのだ。
 その違いはすぐに出た。激情する彼女に対して、塵殺剣の表情と態度は変わらない。
 決まったことは変わらないのだ。“惜しい”と感じたその言葉が紛れもない本物であっても、そのように道が造られたのならば彼女は止まらない。出来ぬから、やれぬから道を曲げることこそ刻んだ歩みへの侮辱に他ならないし、何よりそれを感じるだけの余地など不要だった。重要な点は―――手傷を負わせた程度で、もうこの蛇が物怖じすることは無くなったという点くらいだろう。

「おまえは、敵だ」
「それ以上でも無ければ、それ以下でもない。が、解せない」

 それでも。
 痛めつけようが、尚その眼が敵意を宿して来ることに、彼女は小さな不可解さを覚えた。
 何故と困惑すること自体もそうだ。蛇にとっても自分は明確な敵であるし、その逆も然りと言えよう。そこに余計な感情を挟む余地などない。そんなものは必要なことではないからだ―――機動を取りつつ、剣を振りつつ、だから女は語る。


「おまえは、平穏を望んだと言った」


 平穏を望んだ癖に、何故自分の死に物怖じをしないのか、と。
 出会った当初に“分からない”と称したが、此処に至ってのレプティラはその不可解さが頂点に達している。
 女の望みは平穏だと言った。だからこそだ、自分と戦うことまではまだいい。それが把握できないニアではない。この女はそれが魔族の平穏に繋がると判断したのだ。そこに評価を下すには、まだこの蛇の命は使い切られていない。
 だからこそ―――何故恐れないのかと問いかけようとして、


「(いや、不要か)」


 それも不要だと切り捨てる。
 分かっておくべきことは、この常山蛇勢が文字通りの死兵と化したことだけだ。
 残すことを考えなければ、その行動は驚くべき成果を上げる。
 ただしそれは生物の在り方ではない。通常の思考では成せない、死を前提とした行動の上にあるものだ。つまりこの蛇は、死を善しと出来る何かを、炎獅子か、黒猫の血縁か、あるいは―――あの魔帝に見出したということになる。

   理解は出来ない。そもそも、するつもりもない。
   しようとすれば理解出来たのかも知れないが、それは不要なことだ。


 宣告者たちは死を見続ける。ものの終わりを、四六時中、自らの眼に入れ続ける。
 例えば自分の手で下すこともあるだろう。
 例えば自然と定命に幕を下ろすこともあるだろう。
 例えば、宣告を受け入れた者の死を看取ることもあるだろう。けれどもそれは生存の否定ではない。死は終わりであっても虚無に非ず、なればこそ天秤の片方にそれが在ることで生が成り立つ。彼ら彼女らはそうやって生きて来た。


「知っている」


 だから。
 そんなことは、炎獅子が言葉にせずとも分かっている。

 繰り返す中で、その歴史を顧みて生物は恐怖を知る。何も出来ずに生涯を終えることを。
 何かを残すことも出来ずに死んでいくことを。生命とは、そうした事柄の連鎖に他ならぬ。

 剣を舞い踊らせる中。
 飛び回る彼女の動きは一度たりとも同じ場所に留まらない。
 移動と同時に沸いた蛆を蠅を、うごめく白の百鬼夜行を突風が吹き払う。
 これも同様だ、触れれば確実に負債を積み上げる、蝕みの力。とうとう足場の無くなった中で絶えず襲い掛かって来るそれらを移動と共に生じる風で吹き払い、あるいは剣で切り返し、同タイミングで襲い掛かるあらゆる攻撃に反応していく。
 単純な反応速度と機動力の差異だが、それで尚追い縋る炎獅子の胆力と気合は賞賛に値するべきものだろう。赤熱する大剣との鍔競り合いは分が悪い、単純な膂力という意味ではニアは外見通りだ―――回避の箇所を読み取るべく周囲に目を凝らした瞬間、余計な光が目を覆う。あの娘だ、単純な点の打撃は分が悪いと判断したのかどうかは知らないが、なるほど効果的とは言える。
 人型の生物であるなら、五感の一つは視覚に寄るもの。瞬時に目を瞑り、頭の中で描いていた回避先へと移動しつつ六連に及ぶ斬撃へと相対する。一度目は躱し、二度目はいなし、三度四度と繰り返して、―――しかし、六度目にてとうとうそれがニアを捉える。伸びた尾の擬態が解除されたことによる不意打ち、それと視界を一瞬とはいえ潰されたことによる刹那の遅れが致命になった。

 尾撃と完全な同タイミングで振るわれたレオンハルトの炎剣がニアを僅かに掠める。
 舞う血飛沫には取り合わず、後退するべき時には後退して次の手に出る。

 剣戟そのものはただ掠めた程度だろう。
 が、叩きつけられた炎風のあおりがあるにしても、その剣戟が凌がれた様子は全くなかった。

 つまるところ、その速度に反比例して塵殺剣は、肉体面においてはさほど頑強ではないのだ。
 ゆえに魔力耐性程度ならば十分に備え、その精神面は不動であると言っても、単なる物理的攻撃には脆い。“当たらなければどうということはない”が、当たった場合のことに関しては一切の保障が無いのだ。それが例え掠めた程度であっても。
 だが。鮮血が散る中で、一切彼女は表情も移動も緩めない。
 痛みそのものを感じる余計な手間は闘いの中で必要ではない。まして、この数の差ならばだ。


「だから、なぜおまえたちは繰り返す………そう言っている」

「無意味な生で終わることを恐れるならば、余計な欲望は捨て去るべきだったのに。
 軌跡を遺せぬ無価値さを忌み嫌うならば、その根源たる争いを起こすべきではなかったのに」


 それが分かっているから、理解をした上で彼女は言うのだ。
 分かって何故繰り返す。それをいつの日になったら止められる。
 やがていつかは、そう口にして―――いったいどれほど、屍を積み上げれば気が済む。
 言ってしまえば単にその程度の話だ。その程度だが、彼女は結局のところ、ヒトという種の未来に生存の価値を感じなくなっただけ。比較して魔族の方が“まだ”生態として争わざるを得ない場合もあるから、マシであると断定した程度に過ぎない。


「甘い毒だ。根一つ残せば無限に広がる」

「今のおまえの言葉のように。なあ、猫の」


 だから。
 それを残しておくならば、無価値で無意味なモノは広がるのだろう。
 塵殺剣にとって、共存が容認できない真の理由はそれだ。癌は切除するものであり、毒は抽出するものだから。
 白の汚濁を触れる前から根こそぎ切り払いつつ、彼女は舞い踊るようにしながら剣戟を続ける。
 剣戟は手を変え品を変え―――袈裟掛け、払い、突き、薙ぎ、振り下ろしと、流麗に繋がる連続剣。それのみに及ばない四十を軽く越える乱舞は、しかしレプティラの所為で最適化されてはいない。二発か三発の斬撃を炎獅子に見舞う間、彼女が展開している蟲や悍ましきモノを切り捨てるのにニアは動作を割いている。それでも、斬撃のほぼ全ては前衛のレオンハルトを斬り殺すために今は向けられていた。

 最短ではなくとも紛れもない神速の剣だ。
 その極まった例は、剣を振るうごとに発せられる鋭さを伴う暴風の存在だろう。
 ただ突風が起こり得る程度の速度で振るう剣戟ゆえに、それは爆発じみた風の刃を伴う。魔力を介するものでもなければ、魔法により生み出されたものでもない。ただ速いだけだが―――だからこそ、細かな魔術防御など意味を為さない。これは根本からして物理現象だ。いわゆる“鎌鼬”と言葉に出来るものは、レオンハルトを通り抜けて、丁度脚を止めるだろうレプティラへと無数に向かう。
 直接彼女が触れるものでもないのだから、それに精神を引き裂くような要素はない。ないが―――黒猫の血縁を護るためにそこに立っているならば好都合だ。立ち止まったままなら、レオンハルトとの同時攻撃が成立する。避けられる状況などわざわざ作る必要などない。この状況で、サシャに対してわざわざ攻撃を仕掛ける必要性がそもそもない。

 その上で。時間を掛ける趣味はないが、時間を掛けてでも、まず炎獅子を殺す必要がある。
 だからこそ、本命である自分自身の剣戟はほぼレオンハルトに、文字通り“殺す気で”向けられ。
 だからこそ、剣戟の副産物である剣風は立ち止まり、サシャを護るレプティラだけを狙って放たれるのだ。

 だから、甘い毒だと言うのだ。
 黒猫の血縁に責められる要素はない。謂れは何もない。
 それも一つの見方だろう。ただし、それを断定した上で彼女は何も語らず行動だけでものを語る。


    おまえは非力だ。
    おまえは、言葉一つで、行動一つで全てを死に追いやる死神に過ぎない。

    おまえは結局、黒猫のそれと全く変わらない、と。
    悪意も敵意も込めず、ただ淡々と、事実だけを突き付ける。


 彼女に相手を嬲る趣味はない。
 ならば何故そのような手法を取るのかと言われたら、そちらの方が殺すのは早いからだ。


>レオンハルト、レプティラ、サシャ



【お待たせしました、申し訳ないm(._.)m】

2ヶ月前 No.744

影の魔物 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【魔帝城/無限廊下/"無音"のブロヴァンス】

――影の魔物が駆ける。怨嗟と怒号が飛び交うただ中を、ただ影を渡り駆け抜ける。彼は魔物の中でただ一人全ての真実を知る者だ。故に彼は一つの義務を背負っている。即ち、此度の騒動の黒幕に仕立て上げられたサシャの無罪の証明。既に竜炎公には全てを伝えている。彼ならば全ての元凶たる魔大将を討つだろう。であれば、その身に残された使命はそれ一つだ。それさえ成せば、後は全て、誰かが終わらせるだろう。
先刻サシャを見掛けたのは無限廊下。"塵殺剣"が刑を執行してしまうその前に、辿り着かねば。故に、駆ける。駆ける。最期の使命を果たす為に。


……ニアと言う魔族には、きっと分からないだろう。誰よりも死に触れ、死を与え、死を遂行してきた彼女だからこそ、ある一点において致命的な見落としをしている。
彼女は多くの義務的な死を経て来た。彼女にとって生命の結末は個体の死であり、それが執行者(バンシィ)と言う種族の価値観の一つである。であるが故に、彼女は命の価値をその死と生き方に求める。そうしている内に、彼女はきっと抱いたのだろう。変わらぬ人に、変わらぬ世界に、失望に似た感情を。だが、違う。決定的な一点において、彼女は違うのだ。

彼女は結末で価値を図るが、命の価値とは"何を遺せたか"で幾らでも変わるものなのだ。ニアは、その一点だけを見落としている。
多くの財を成した者であっても、死後に遺せるモノが無ければ先へは続いていかない。貧しい生涯を経た者であっても、次の世代へと何かを遺せたのなら十分過ぎる程の価値のある命だ。
命の循環とは、単なる死と再生の繰り返しではない。形有るもの、形無いものを"遺し"、そして"受け継ぐ"のだ。それが歩むと言う事だ。それは人間も魔族も変わらない。生物であるが故に、当たり前に繰り返すサイクルだ。
彼女は、確かに多くの死を見てきたろう。無意味な戦乱を嫌と言うほど見てきたのだろう。人が無価値に思える程の死を見届けて来たのだろう。だからきっと、人類に厭いてその滅びを願うのだろう。
しかし彼女が与え、彼女が見届けて来たのは何処まで行っても"死"だ。その先にある多くの遺せるもの、多くの受け継がれるものを彼女は知らない。彼女は、その務め故に誰からも何かを受け継ぐ事は無く、そして誰かへ何かを遺して来た事も無い。それ故、『繋ぐ』事の価値を量れないのだ。


無限廊下へと彼奴が辿り着いた時、"塵殺剣"は三人を相手に同等、否それ以上の圧倒的な力で翻弄していた。もしも此処へ一介の魔物風情が紛れ混もうものなら、瞬く間に剣閃に断たれる事だろう。だが、しかし――。


生きると言う事は、数多の過ちと一握りの存在意義を抱いて未来(あす)へとそれを繋げる巡礼だ。生ある者は必ず間違いを犯す。それでも、同じ過ちを繰り返さぬ様に次の世代へとそれを伝えて行くのだ。
昨日と同じ様に人は今日争っているかもしれない。だがその痛みを、苦しみを、二度と繰り返さぬ様に、顔も名も知らない"誰か"に届く様に。何時か、"誰か"が抱いたその理想を叶える為に。そうやって繰り返し、積み上げるのが『歴史』と言うものだ。ニアが見てきた『歴史』とは『結果』だ。人は争いを繰り返す。結果だけみればその通りだ。しかし其処には多くの意思がある。迷い、過ち、振り返り、正して、そして次へと想いを受け渡す。ニアはきっと其処を知らない。だから人間を無価値だと断定するのだ。

そして、それは魔族とて同じ。多くの過ちを繰り返し、無限に等しい屍を積み重ね、それでも未来への希望を繋ぐ為に想いを伝え、次の世代へと受け継がれて行く。例えば魔帝では魔族に平穏をもたらせなかったとしよう。だが、その意思はその後を歩く誰かが受け継いで往く。何時か、遠い未来で――『私達』が抱いた願いを、叶える為に。


――しかし、否それ故に、彼奴が動くのは早かった。例え彼らが"塵殺剣"を討ったとしても、此処でサシャを、レプティラを殺されてしまえば意味が無い。故に、己の命と引き換えに、彼らを――人間の男を含めた皆を、生かす。生かして、就き従う主君たる魔帝の理想の為に"繋げる"。それが、『私』と言う個体の抱いた最後の感情だった。
塵殺剣の姿が何処かの影に重なるのを見逃さず、彼女の影へと渡り忍ぶ。影と同化するが故に、塵殺剣がどれだけ忙しなく飛び回ろうと影がある限りその動きに常に追従して離れない。ましてや狭いこの空間、影が消え去る事も無い。故に、彼奴は何時如何なる状況であろうと、塵殺剣が生む一瞬の隙を突くことが出来る。

「――――――――ッ!」

僅かに、塵殺剣が隙を見せる。時間にして、一秒未満。だが、彼奴にとってはそれで十分過ぎる。塵殺剣が動きを止めたその瞬間、影との同化を解除し姿を現す――そして振るうは鉤爪の刃。それは全くの無音。例え誰よりも素早き塵殺剣であろうと、放たれる直前に気付く事は不可能。それでも、魔将軍たる彼女であればそれを弾き飛ばし、瞬時に首を跳ねるなど実に容易い事だろう。それでも、『私達』……否、"私達が信じた者"の意思を見せるには、十分だ。

>>ニア

【許可ありの乱入です。】

2ヶ月前 No.745

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【無限廊下/ニア】

 前提として。
 塵殺剣は、一連の動きの中でも基本的に回避を優先に重きに置く。
 理由のひとつは単純な打ち合いの状況そのものを彼女が得意としていないためだ。
 剣のみで全てを為す塵殺剣は、されども力を乗せた打ち合いに向いた身体の造りをしておらず、そのように剣を磨く必要もない。先に語った通りだが、殺すための手段として速度へ一極化したニアにとって、原始的闘争の意味はない。
 もう一つは、単純に状況が多人数との戦闘であるからだ。
 わざわざ捨て身になって攻撃を行い、反撃を貰うことほど愚かなものはない。故にこそ生存へと意識を傾け、確実に仕留める。彼女にとって剣を振るうというのは命を賭し、誇りを賭した決闘や闘争などではない。彼女にとって剣を振るうというのは殺すことだ。生命を終わらせることだ。だから、この状況でも逐一レプティラの放った毒蟲や汚濁に反応するというロスを残している。

 だがロスを残しても、それは隙に繋がるようなものではない。
 単純な反射速度から運動性能。
 思考の早さからそれを肉体に反映させるプロセスに至るまで、彼女は迅い。

 炎獅子が如何なる反撃を選び取っても、それをいなし、回避し、迎撃するだけの意識の余地がある。
 常山蛇勢の渾身がリスク覚悟の特攻を選んだとしても、最善の択を選び取るだけの思考の余地がある。
 ましてや黒猫の血縁が動き出し、此処で前に出ようとしても。
 彼女はそれを斬り伏せるだけの行動の余地がある。

 必要なことだからだ。剣を振るう場において、それらの思考と状況の把握は彼女にとって必須と言えた。
 つまり端的に視野が広い。若くして長になり、そのまま長として在り続けた宣告者《バンシィ》は、そう在る必要があったからだ。個ではなく群として物事を捉える必要があり、一ではなく全のために意識を割く必要があった。
 そのために不要なものは全て切り捨てて走って来た、その全のために癌となるだろうモノの切除のためにこの場に立っていた。ただ一つことの為だけに、彼女は剣を振るって来た。
 女の鉄心は切り崩せない。冷徹なる塵殺の剣を砕き、折ることの出来るものなど誰もいない。


 だが………、そうだ、それだけは予見などしていなかった。

  一連の剣戟、乱舞じみたそれを放ち終えた時。
       、     、    、    、   、    、  ・・
  それが炎獅子と常山蛇勢を討ったかどうかの結果を確認するよりも早く、それは訪れたのだ。


 あらゆる段階、あらゆる角度からの攻撃に備えていた塵殺剣なれど、
 その者の攻撃だけは一切の予見などしていなかった。当然だ、最初から戦場に居なかった。

 だが何より―――有り得ないものだと、確信していた。
 もしも乱入者の姿があったとしても、その存在だけは“ない”と断定していたものだった。

 なぜなら、それはそういうものだからだ。
 必然として争わざるを得ないもの。共存という選択を選べば、切り捨てられることを危惧するべきもの。
 生まれから人と争う業を持つ生き物。影に生きて影に死する種。
 個ではなく群として、ヒトと魔族の争いに確固たる生存競争としての意を見出していた種だった。

   、  ・・・・・・・・・・・・・
  つまり、ヒトとの共闘など有り得ない。

  あれはそういう生物だったはずだ。そのように在ると認識して来たものだった。
  個ではなく群として、ただ自らの生存のために適解を選びながら、残すものを選ぶ種だったはずだ。

    それが―――。



「おまえは―――」



 それが、いまこの瞬間に裏切られた。
 微かな時間だ。一秒未満、増えた気配と襲い掛かる爪牙は最悪のタイミングで姿を現したその魔物。
       ダークストーカー
 そいつこそが影の魔物。無音の名前を冠した魔獣、言葉を介さずとも意思ある貴重な固有名を持つ存在。
 プロヴァンスだったからだ。


 否定出来ないほど、それは明確に此方を狙っていた。
 二つ名の通りの働きで、静寂《しじま》の向こうから渾身の鉤爪が襲い掛かる。

 否定出来ないほど、それはニアの思考に空白を生んだ。
 一瞬だ。瞬きすれば無くなるほどの一瞬だ。ただそれでも、鉄心の女に隙を生んだ。

 否定出来ないほど、それは彼女の状況に詰みを作った。
 疾風の如き剣士にとっての忌み嫌う状況は確かに回避の場所がないことであるが、もう一つある。


 彼女はそれでも、行動の中で最善の択へと着手した。
 思考と肉体を切り離す。目的のための疾走として、もっとも望ましい選択肢を提示させる。
 敵意を以て迫ったプロヴァンスに対して言葉を語る意味などない。
 不要な行動だ。不必要な行動を彼女は選ばないし、選ぶ気もない。
 だから、求められる行動は最優先で、この伏兵を叩き落とすことだった。


「――――ッ」


 事実、それは確りと行動として移されることだろう。
 ニアの細剣は四十に及ぶ斬撃を放ち終えた瞬間に、返す刀で空を薙ぐ。
 鉤爪がどうしても自分の肉体を捉えるならば、不必要な部位を切り捨てる。
 利き腕ではない方の腕だ。剣を振るに当たって支障のない方を構わず取捨選択で切り捨て、ねらいを逸らさせて鉤爪が行動に支障の起こり得る部位を引き裂く可能性を避ける。
 何度も言うが、その速度に反比例して塵殺剣は、肉体面においてはさほど頑強ではない。
 当たった場合、それが例えば下級の魔物であろうが、致命の打撃となる可能性がある。

 まして、ニアにとっては。
 たとえ理解しようとしても、その存在の攻撃だけは予測が付かず、理解のしようがないものだ。

 その手元にある剣を振るう。
 薙いだそれは正しく絶速となって、プロヴァンスの最初で最後の一撃へと手痛い洗礼を見舞う。
 文字通り、五体を飛ばし、魂ごと掻き消すように、一度の斬撃で以て振るわれた剣戟は多重の軌跡を描く。妨害など炎獅子にも蛇にもさせず、これ以上その存在には戦局に影響を起こさせぬと言わんばかりの、情けも容赦もない一刀。
 放った直後に、それぞれへの攻撃を確認するより前に状況を仕切り直すべく一歩後退し。

 だからこそ、だからこそ、応えようのない疑問を彼女は呟くのだ。
 絶対に帰って来ない、不要であるはずの問いを。無音の名を冠した、本来名もなき影の魔物に。


「なぜだ」    、     ・・・
「―――なぜ。おまえが、それを選べる」
「何故―――」

      ・・
 初めての、驚嘆だった。
 彼女が、自分の視点で何を零し、見落としているのかは知ったことではない。
 知っていても、考えることからして不必要だ。
 塵殺剣にとってそれは決まったことで、それは断定されるべき価値観だ。

 いつか生命は滅び去る。
 いつか生命は命を終える。

 だが、だからこそそれを知らなかった。
 女は完成されていたが、女は孤独だった。
 鉄心は錆び付いた後であれども、たったひとつ、それだけは身に覚えのないものだった。

 その、どうしようもなく避けられない結果を
 無意味なものにしたくない、だれかは願い続ける。


 ―――どうか、私が遺した時間を使ってください。
    私たちがたどり着けなかった場所に、
    後に続くあなたが、いつか辿り着く為に、と。


 そんな素朴で、普遍にして不偏のものを。

 それは恐らく、彼女がレプティラに対して“分からない”と断じたものの一要素だ。
 プロヴァンスが信じて、塵殺剣が信じなかった一要素だ。


「………………いや、これは」
「わたしの、驕りか―――」


 利き腕ではない方の右腕はもう使い物にもならない。
 深く刻まれた爪痕と流れる血は、先程の炎風と炎剣にて付いた傷跡と合わせて確かな手傷の蓄積を警告している。つまるところ、彼らは自分と同じ思想に至るだろうと判断した自分の驕りが招いた結果だ。
 息すら荒げない。微塵も剣さばきは衰えさせない。
 致命だけは避けたがそれは手傷だ。彼女はそれでも、健在のままに剣を振るうだろう。

 ………ところで。

 ニアはこれを驕りと称したが。
 同時にプロヴァンスの行動を、生命を終えるだろう今ですら不可解なものだと断じていた。

 ………彼が信じたものは、ヴェルメイユが歩むその先だったことを。

     塵殺剣は、理解しようとはしなかった。
     しようとすれば出来たことなのかもしれないが、しなかった。

>プロヴァンス、レオンハルト、レプティラ、サシャ


【同様に、レス内の時系列を考慮した上での、プロヴァンス本体様の許可ありの即時返信になります〜】
【プロヴァンス、レオンハルト、レプティラ、サシャの各本体様にはご迷惑をおかけします】

2ヶ月前 No.746

影の魔物 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【魔帝城/無限廊下/"無音"のブロヴァンス】

それは刹那の交錯だった。戦闘の状況としても、また彼女の想像からしても、完全なる意識の外から繰り出された渾身の一撃。彼女が"それだけは無い"と目を反らしていた下級の魔物の、その鋭利な鉤爪が迷い無く振るわれる。
対する"塵殺剣"は、僅かに動揺し、しかし冷静に、合理的に刹那を把握し、繰り出された一撃を致命傷から耐え得るモノへと変化させ、そして思索するよりも速くその刃を振るう。
視認する事など不可能な程の速度の斬撃。一介の魔物風情が受ける事はまず有り得ないだろう、明確な『死』をもたらすその一閃。彼女の心象が顕れる事のない、何処までも心から斬り離された剣閃。
彼奴は回避しよう等と考えてはいない――否、考えていたとしても避けられはしない。何故ならば、"塵殺剣"の刃とはその様なものだからだ。剣を握らぬ腕を代償にして――即ちそれは、間違いなく、狂い無く、容易く一体の魔物の命を刈り取ったのだ。

その魔物は身を刻まれ、前のめりになりながら倒れて逝く。一瞬の、しかし永遠の様な一刹那。

「――――ガ……!」

その、今際の刻。最期に一矢報いた彼の魔物は呻く様に鳴く。それはサシャにしても、レオンハルトにしても、ニアにしても、単なる断末魔の呻き声としか聞こえなかっただろう。
だが、レプティラには――多くの魔物を知り、繋ぎ、応えて来た彼女には聞こえた/理解出来た筈だ。彼奴が伝えたかった、最期の言葉が。

――魔帝とサシャは無実だ。全ては、黒猫の企み。魔帝は、人間と共存しながらも、魔族の"全て"を統べると決断された。だから、『私達』は――。


影に生きる運命の魔物は間も無く骸と化す。その骸は、瞬く間に風化し塵と化し……そして、淡い風に浚われて消えていった。その存在の証さえ、残さぬかの様に。

……果たして、彼奴に遺せたモノはあったのだろうか。それを知るものは、きっと――。


【"無音"のブロヴァンス@オリジナル/"塵殺剣"の猛攻を受け、絶命。魔物らしく、黒い塵と化して消え去った。】

>>(サシャ、レオンハルト、レプティラ、ニア)

【事前に相談して投稿する他者を待たない返信になります。サシャ、レオンハルト、レプティラ各本体様にはご迷惑をお掛けします。】

2ヶ月前 No.747

魔帝 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/深淵の間/魔帝ヴェルメイユ】

出来ることなら、戦いを避けたいという本心が見え隠れするヴェルメイユの行動。なるべく悟られないように取り繕ったつもりだが、恐らく彼らはもう勘付いているだろう。
勇者が憤怒を露わにする。何故、殺しに来ないのだと。当然の反応だ。決戦の舞台にいざ乗り込んできて、敵に戦意がないと分かれば、そうなるのも頷ける。
ハザマはこの口振りからして、既に魔帝の本心を見透かしているのかも知れない。守りたい国、ああその通り。自分はその国を、この世に取り戻すため、魔族の王となることを決意した。
本当は、魔族でなくてもよかった。頂点に立てる場所なら、どこでも彼女はよかったのだろう。しかし、今は違う。自分は、全ての魔族の命運と未来を背負い、この場に立っている。
彼らにとって最善の選択肢が何であるのかは、様々な意見があるだろう。少なくともヴェルメイユにとっての最善は、人類と和睦を結び、これ以上戦争でお互い犠牲を出さないようにすることであった。

「反対に質問しよう。お前達にとって、魔族とは必ずしも犠牲にならなければならない存在か?」

質問で質問で答える。明言を避けたがっている何よりの証拠。ヴェルメイユの真の望みが何であるのかは、もはや疑いようの余地がないだろう。よほど、愚鈍な者でない限り。
偶然、ハザマが発した言葉によって、何を目的に歴史是正機構が魔帝軍に協力したのかも判明する。つまるところ彼らは、自分達が勝利することを望んでいたのだ。
そして敵方の未来人、時空防衛連盟の目的が歴史を護ることであることから察して、正史ではどうやら魔族は敗北しているらしい。未来が分かった上で戦うというのは、奇妙な感覚だ。
とはいえ、ヴェルメイユはそれで抵抗を諦めるような人間ではない。僅かでも可能性があれば、それに懸ける。何故なら……彼らの全てを背負うと、心に誓ったから。

「いずれにせよ、お前達には理解されないことだ」

魔帝は本心を話さない。それを話したところで、徒労に終わると思っているから。三人の敵対者の攻撃が迫る。三本の氷剣が振り下ろされ、周囲の気温が一気に低下していく。
軽く跳躍することでヴェルメイユはギラードの攻撃を躱すが、丁度そのタイミングを狙ってハザマが追撃を仕掛ける。全て死角を突いている辺りが嫌らしい。
容赦の必要はないといわんばかりに放たれた六発の連撃を、彼女は一つ一つ魔力をぶつけることによって相殺していく。続くアンナローズの剣撃は……驚くほどに危険性が低かった。
……まさか、彼女もまた、戦いを望んでいないというか? いや、そんなことはあるまい。人類が目的としているのは、魔族の打倒。その長である自分に、情けを掛ける理由などこれっぽっちも見当たらない。

「私を殺し、魔族を滅ぼした先に人類の繁栄があるというのなら……まずはそれを成し遂げる力を示してみせろ」

ここに来て、ようやくヴェルメイユも反撃を放つ。巨大な鎌が振るわれると同時に顕現した、黒い魔力。暗黒の力を宿した暴風が、敵全員を呑み込まんと襲い掛かる。
詠唱もなしに発動された魔法であるが、その威力は桁違いであり、当たれば戦闘不能には至らずともそれなりの手傷を負わされることは間違いない。
驚くべきことに、魔帝はこれでもまだ本気の半分すらも出していない。深淵の間に辿り着くほどの実力を持った者であれば、この程度の攻撃、簡単に往なせるはず。そう思ったからこその、初撃の選択だ。

>アンナローズ・フォン・ホーエンハイム、氷魔像ギラード、ハザマ
【BGM:魔王決戦】

2ヶ月前 No.748

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

 骨ごと肉を断つ焔の剛剣が描く真紅の煌き。紅の剣閃が描く軌道を魔剣士は視覚に頼る事なく的確に捉え、背後に回す長剣の角度を付けるのみで一蹴して行く。猛者と評する事すら生温さを感じさせる神業を前に、龍炎公は意図せずして心躍らせる。こうも魅せられてしまっては、魅せ返す事で最大の讃辞を示す以外に道はあるまい。
 敵の振り返り様に放たれる袈裟の一閃。大気を裂く音すら置き去りにする神速の刃は、意識の外にて対処すべき物。認識からの思考、思考からの判断の手順を総じて飛ばし、即座の動きで構え直した剛剣で迫る斬撃を難無く受け止める。
 其処から瞬時に反撃へと移ろうとしたその刹那、既に敵は黒猫の味見の為に背後へと移っており、攻撃範囲からの脱出を果たしていた。

「俺の血では不足、と……随分と貪欲なものだ。然し、大いに結構。それでこそやり甲斐がある」

 龍を喰らうには飽き足らず、黒猫と人をも喰らわねば達せぬかもしれぬと明言する魔剣士の貪欲さ。深き欲望の程を躊躇いも無く曝け出すその態度、何とも好ましい物であるか。それでこそ、死闘に興じて欲望を満たさせ、至福の瞬間へと彼女を至らしめるだけの遣り甲斐があると言う物。一時のお預けも、文句無く受け入れよう。先ずは十分、獲物の味見を済ませると良い。
 それまでの間、此方は黒猫と戯れでもしているとしよう。新たなる魔帝として君臨出来るものとして驕り高ぶっている、哀れで愚かな駄猫。身体を軽く動かす分には丁度良い相手だろう、恐らくは。

「……遅すぎて欠伸が出る、軽い運動にすらならん」

 蒼き魔法陣より、深海に等しき圧力で放たれる水砲。当たれば当然、重傷は逃れ得ない強力な一撃であるのは確か。しかし極論を言ってしまえば、当たらなければどうと言う事は無い話であり。一瞬でこの空間の端から端を駆け抜けられる彼にとって、この砲弾の速度は余りにも遅すぎた。姿を瞬く間に消して、黒猫の背後に現れた彼はわざとらしく欠伸をしてから、左手を天へと翳す。

「これが自称、新魔帝の全力か。自立した我が君と比べるまでも無く貧弱だな」

 心底莫迦にした態度を取りつつも、翳した左手を振り下ろして反撃の合図を出すと、敵の頭上に紅の魔法陣を展開する。開かれた門から現れるのは、煌々と燃える焔の奔流。地平を焦がし、森羅万象の悉くを灰燼へと帰させる灼熱の吐息。龍帝その物が放つ物と比べれば、その威力には雲泥の差があるとは言え、この場の敵を焼き融かすには十分過ぎる威力を持つ――それでも彼からすれば、文字通りの"戯れ"なのだが。

>チェル 魔剣士 アーケオルニ

2ヶ月前 No.749

メンヘラ @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_pNI

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2ヶ月前 No.750

Futo・Volde @nonoji2002 ★0hekQLL3eX_sgc

【ディンカ/海底洞窟入口/アーチ上/魔獣ヴァグネル】

N極とN極が退け合うように、時に同じ属性物通しがくっつけば、相いることはなく、退け合うのは自然の理だろうか。魔獣も、そしてアンリエットも求めるのは“戦闘”だ。そんな者達が戦いに身を投じれば、何か大きい引き金が起こらない限り、どちらかが倒れるまで戦い続けるだけだろう。

「我も甘く見られたものよのう」

初手の一撃。容易に想像していたとは言え、軽々しい身のこなしはまさしく獣の求めていた強く、気高き人間の合格点に達していると言えるだろう。
この程度の攻撃、これを回避できなければ、この人を喰らい、人を殺してきた獣を楽しませることなど到底不可能な事だ。

「侮るな、人間よ」

相手の反撃の一撃を剣を盾替わりにして受け流す。こちらの攻撃の後を突いての反撃もまた、この獣にとっては自身を昂ぶらせる材料の1つに過ぎない。
この雷撃を纏わせる拳を武器にする彼女に対し、獣の武器はこの大剣と彼自身が持つ魔術。そう、彼が“魔獣”との異名がついたのはこの魔術の存在があるからだ。彼の魔術は様変わりしている。他の者が持つことの少ない魔術を数多く習得しているのだ。

「手加減は必要ないようだな」

さて、小手調べはここまで。相手の求める物が“全力”ならば、この剣――ユリエルズ・エッジ――を解き放つと気だろう。
剣を平行に持ち、右手では剣の柄を、左手で刃をゆっくりと人撫ですれば、ひとたびその剣は真の姿へと変わってゆく。
地獄に存在し、地獄の魔族に伝わるという伝説を持つ剣、ユリエルズ・エッジ。
炎を纏うこの剣は神話の存在ではなく、実在する。煌びやかに燃え上がる炎は獣には不思議と熱さを感じさせない。

「これがこの剣の真の力よ。さあ、行け、我が下僕よ」

剣を何度か左右に振りかざすとともに放たれる炎の球は一直線に相手へと放たれる。
だが、獣はそれだけでは飽き足らず、次なる一手を投じる。
剣を持つ手とは逆の腕を下から上へ大きくひっかくように振ったかと思えば、地面から突如として現れる小さな悪魔。
どす黒い影だが、そのフォルムは小さき悪魔そのもの。牙と吊り上った目、そしてキィキィと啼くその声は、膝丈ほどの大きさながらも禍々しい雰囲気を醸し出す。
インプと呼ばれる彼の造り出した5匹の分身は、飛び跳ねながらアンリエットの方へと近づいて行く。1匹の体力は低くとも、まとまってかかれば厄介。ましてや飛び付かれれば噛み付かれ、最後はインプそのものが爆発四散するのだから、早いうちに手を下す必要がある。

>アンリエット・エクレール


【早く返すつもりが、今度は精神的な不調で文章が書けないクソみたいな始末に……またお待たせしてしまって申し訳ないです>アンリエット本体様】

2ヶ月前 No.751

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【マロニス城/城前(ホール)/ダグラス・マクファーデン】

 烈風の衣を纏いて挑むは接近戦。猛烈な速度で空を駆けながら距離を狭め、すれ違い様に放つは黒く煌く闇の一閃。相方の放つ炎熱凍結と共に剣閃は迸り、刹那に展開される敵の障壁へと炸裂する。全方位を覆う強烈な防壁は、両者の挟撃を完全に受け止め、完膚無きまでに無力化を果たした。
 されど、攻撃の手番はまだ終わらない。挟撃を受け止めた敵が繰り出す刃の一閃が身を引き裂くよりも早く天へと離脱し、急速な勢いで堕ちると、交差する双刃で二閃を繰り出す。堅牢な鎧に刻み付けるは刃の跡。続け様に放つ刺突の一撃は、惜しくも回転する刃に阻まれ未遂に終わるが、弾き飛ばされる勢いを利用して宙を返りつつ後退を果たす。

「塵となるのは……」

 暗黒魔導士の反撃が発生させるのは、此方の行動を阻害する強烈な竜巻。最も排除が容易と判断したのであろう、ヴァイスハイトの始末を遂行する為に、敵は重厚なその外観とは裏腹に、浮遊による高速移動で接近して行く。残念な事に彼の応援へと即座に回る事は出来ない。真っ先に仕向けられた竜巻を乗り越えるまでの間、何とか耐えて貰うしかないだろう。
 竜巻との接触に備え、纏う風の勢いを更に昂らせる。凌ぎ切るのは、一回。それを乗り越えれば、転じるのは反撃の手番だ。轟音と共に迫り来る暴風へと飛び込む。無数の風の刃を、風の防壁で弾き返しながら、竜巻からの脱出を果たすべく前へ前へと突き進む。視界が晴れる頃、ただでさえ先の光でボロボロになっていたスーツは更に無惨な姿となり、曝け出した素肌には裂傷の紅い筋が幾つも走っている。

「……そっちだァッ!」

 これは新調が必要だな、などと内心思いながらも、手早く反撃への準備へと移り、浮遊しながら敵を眼下に見下ろせる位置まで移動した。光と闇、相反する二つの力を宿した両手を重ね合わせ、力を融合させて行く。生み出す属性は、ユーフォリアの操る虹と同じく、数多の属性を内包した特徴を持つ"混沌"の力。白と黒とが入り混じる不安定な色合いの輝きが、最高潮に達したその刹那。
 一瞬の眩い煌きを放ったのを合図に、暴虐的な熱を宿した破壊の光が彼の両手から放出された。奔流を自在に操る仕手の意志のままに、光は無数の軌道に分裂しながらも、ただ一箇所を目指して集束されて行く。触れる物全てを消滅、良くても大幅に削り取るだけの暴威を宿す光。他の二人と併せて迫る攻撃を前に、果たして敵はどう動くか。

>エクスデス ユーフォリア ヴァイスハイト

2ヶ月前 No.752

Futo・Volde @nonoji2002 ★0hekQLL3eX_sgc

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/アベリィ・シルバラード】

――勘っていうのは嫌なものよね。嫌な予感っていうのは大体当たってしまうんだもの。
――ねえ、おじいちゃん。

過去は遠ざかってゆくだけで戻れない物だと思ってた。けど、技術の革新が生み出した物はタイムマシンと呼ばれる代物。それで過去にも未来にも自由自在に行き来できるのだから、面白い世の中になったと言えるだろう。
だが、アベリィにとって過去とは尊ぶもの、思いだし懐かしむものであり、再び体感して、記憶に上書きする物では無い。だから、彼女は未だに自身の過去に干渉したことがない。何故、今、このタイミングで遠い、子供の頃の記憶を思い出したのだろうか。その疑問を一番強く抱いているのは彼女自身だ。


――動物の知性や本能、生態の多くは祖父から教えられた。祖父はその昔、動物に命を助けられたと。そんな縁で自身が前線を退いた後はよく動物園に出かけては、動物を眺めていた。そして子供の頃、アベリィはよく動物園に連れていかれたものだ。そこで多くの動物に関する事を祖父から教わった。今は祖父に教えられたはずの多くの事を忘れてしまったが、動物に対する感情は人一倍敏感で、やはり動物を見ると今は亡き祖父の事を思い出す。だからこそ、この獣をある種“見抜くこと”が出来た。

アベリィの放った炸裂弾がより、獣を追い込めるのに役立ったことに間違いはないだろう。結果として、槍に突き刺さった獣は吠えるのだ。憎しみの遠吠えを。
それでもなお、この獣は動く。突き動かすのはやはり底の見えない憎悪だ。動物、とくに賢い動物になればなるほど、されたことというものを覚えている物だ。この獣の持つ、人間の憎悪はただの本能や憎しみを通り越して、まるで“取りつかれている”ようにも思える。

「ちょっと!そんな怪我じゃ!」

地面にバタンと落ちるランサー。血まみれ。普通なら助からない。それどころかあの出血量から言えば、そのままショック死してもおかしくはない。だが、彼は間違いなく生きていて、動いている。自身が今、なすべき事を理解している。そして、それと同時にアベリィは今一度“見抜く”のだ。獣は有言実行を果たしたのだと。そして自身にも、そしてライドウ達にもまた脅威が迫っている事を。

「……私の手には負えないわね」

逃げ道を塞ぐように飛来するブレードは一歩間違えば自身の身体を綺麗に切断する。後気付くのが一瞬遅れていたとすれば。肩を掠めたブレードは服の繊維を切り裂き、肌を慮出させる。掠り傷から垂れる血と、後方へと飛んで行ったブレードを交互に見ながら、アベリィは一度唾をのみ込んで、昔から愛用していたダブルアクションリボルバーを取り出して両手に1丁ずつ構える。

1つはブラックにペイントされたもの。もう1つは祖父の形見であるシルバーのもの。それぞれにホローポイント弾を仕込んであるこのリボルバーは、急所を狙えば並大抵の生物の命を1発で奪い取る。それほどまでに凶悪な性能を持つが故に、アベリィはここぞという時以外ではこの武器を使わない。

「……」

ただ何も言わず、ブレードを避けるように、後ろを振り返らずに獣の居る方へと、駆けて行くアベリィ。ホーミングランチャーのように、あの獣へ追尾している槍を横目に、両手に握られたリボルバーのトリガーを引きながら、照準を獣へと向けてただ無我夢中に引く。
ただ彼女の思いは“楽にさせたい”と。実に人間のエゴの塊ような気持ちで。きっと、絶命しそうになれば、あの獣はその前に何らかの形で逃げ出して行くだろう。それが本能と言う物だ。だが、彼女はそれに気付いていない。

>ヘシアン・ロボ、ランサー、17代目葛葉 ライドウ


【ヴァグネルのレスの通りで、また遅れてしまって申し訳ないです;;】

2ヶ月前 No.753

王国の騎士 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

魔帝の座を奪い取ろうとする魔大将、新たな時代を求め刃を振るう龍炎公と竜狩り、そしてどちらにつくでもない魔剣士。三者三様、異なる三つの勢力が繰り広げる争いは、早くも混沌の様相を呈していた。
唯一の人間であり、片腕の喪失に全身火傷という、戦っていられるのが不思議な程の負傷を鑑みれば、この場で最も戦闘力が低いのはアーケオルニだろう。
人間の脆さも相まって風前の灯火も同然、一撃でも貰えば戦闘不能に追い込まれること間違いなし。しかしこうとも言えるだろう。

この場で最も諦めが悪く、かつ逆境に立ち向かえるだけの闘志と潜在能力を秘めているのも、また彼女に他ならないのだと。

もしかすると、これこそが彼女を"竜狩り"たらしめる要素なのかもしれない。剣技の腕でも、魔術の熟練度でもなく、芯の強さが強者たる所以。龍炎公や魔大将といった、本来遥か格上であるはずの存在に食い下がる姿を見ていれば、あながち間違ってはいないと思えてくるはず。

「このアタシに討ち取られることも、誇りに思ってもらっていいんだぜ」

ギラつく目で魔大将を見据え、軽口にしてはドスの聞いた台詞を吐く。幾ら王国と民を護ることに目覚めたとはいえ、その本質はやはりバトルジャンキーに他ならないのだろうか。
否、これは自分自身の士気を鼓舞しているに他ならない。敵は魔族の中でも最上位に位置する難敵二人、あまつさえ人の身体には重すぎる傷を抱えての挑戦。
一瞬たりとも気が抜けないというのに、激しい痛みと疲労感は、絶えずアーケオルニの意識と思考に割って入り、真剣勝負に横やりを入れようとしてくる。
己が道は『魔大将の首をあげる』、この一点のみ。そう己に言い聞かせでもしないと、今にも倒れてしまいそうなのだ。

そんな苦境に襲い来るは、深淵の来訪者。水というありふれた物質なれど、その実態は状況や使い方によって千差万別。こと魔大将ともあろう者が用いたならば、鋼鉄の砲丸すら凌駕しかねない破壊力を孕んだものとなる。
龍炎公程の能力者なら全弾回避も容易だろうが、先述の通りの悪条件が積み重なったアーケオルニでは困難を極める。加えてこの度は援護もない。己の身一つで凌がなくてはならないというわけだ。
それでも彼女は諦めない。防衛に失敗することなど、万に一つも有り得ないと言わんばかりの自信。大剣の柄を握り締め、震える両足に力を込めて―――

「その程度かよ…魔大将ォォォォォォォォォォ!」

なんと突っ込んだ。全身に炎を纏い、剣を引きずりながらの猪突猛進。被弾の寸前で振るわれる剛刃。まるで『ドラゴンスレイヤー』を切り上げに転用したかのような要領で繰り出される一斬は、魔大将の間の床を深々と抉り裂き、竜狩りの滾らせる炎を総て吸い込んだ上で水球と衝突した。
当然激しい衝撃がアーケオルニを襲う。鍛えられているとはいっても年端もいかない少女、腕どころか身体中のあらゆる部位が今にも壊れてしまいそうだ。
しかし彼女があげるのは、苦しみから来る悲鳴ではない。あくまで魔族に仇なす者としての一吼え、己が力に酔いしれる魔大将への挑発。

そう、なんと竜狩りは"撃ち返して"みせた。脆弱な人間の身体など粉微塵にせんばかりの脅威を正面から捉え、炎を込めた一斬で発動者へ送還。水球は燃え盛る火球へと変貌し、切り上げの衝撃波を伴って魔大将に襲い掛かる。
さらに凄まじい衝撃に敢えて身を任せ、翼を得たが如き軽やかさで宙を舞う。こうしたからといって身体を苛む負荷をやり過ごせるわけではないが、攻撃に転用できるだけ価値はある。
ここから繰り出されるは、兜割りすら容易に成すであろう強烈な一撃。魔大将の頭上を捉え、大きく振りかぶった刃で以てたたっ斬る。単純であるがゆえの破壊力、魔帝に取って代わろうとする者はどう凌いでみせるか。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド、魔剣士

2ヶ月前 No.754

北方守護騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_7ig

【王都ロンカリア→魔帝城/深淵の間/氷魔像ギラード】

初めに現れた共闘者、ハザマと名乗った男は軽い口調のまま、話が早いというのは好感が持てると話を切り上げて、あくまで自分は戦闘専門ではないので、脇役、つまり支援に徹すると発言した。

と言われても、自分も、通常の魔族が相手なら永遠と相手に殴りかかれるような防御力と再生力こそあるが、相手は魔族の統率者、おそらく生半可な攻撃力ではなく、自分の防御にも何れ限界が来る、一方こちらは決め手となる大火力攻撃が通じるか怪しい、となると、自分もまた勇者と言う味方に火力を任せる"脇役"に過ぎない。
ケリを付けに来たのがこの時代の人間ならば……そこでギラードはふと思う、自分もまた、この時代の存在に分類されるのかと。 長生きと言うのも考え物だ、色んな事に首を突っ込む事になる、そう内心笑いながらも、ギラードは開始する。

だが、その時後ろでは勇者が魔帝に対して問いかけを続けていた。
それに対する魔帝は質問を質問で返した、会話をする気がない、と言うよりは触れられては困ると主張するように。

さらに言うならば、このハザマと言う男も何かを知って言葉を選んでいるように見える。
確かに、この者は後の時代の存在、この後、正史においては何が起きて、魔帝がどのような人物であったのか知っているのは当然だ。 だが、後の時代から見ても悪逆非道な魔族の王に対する言葉としては、違和感がある、歴史を知って浮かんだ皮肉をぶつけているのかもしれないが……それにしても"歴史の価値など塵にも等しい"とは、大きく出た物だ。

気を抜けば体温と一緒に命を奪いかねない冷気を纏ってギラードが突撃するが、それは容易く往なされ、隙を突くように放たれたハザマの攻撃にも的確に対処する。 一方勇者の攻撃は……どうも殺意と言う物に欠けた、いわば手加減をしているような物だった。
しかし、一度接近したのならば、タダでは距離を開けさせない。

「かつて我が守れなかった者のような事を言う。 魔族ではなく、"帝"の名に殉ずるか、あるいは私人を捨てるかすら決まっていない人間のようだ」

理解される訳がない。
その言葉を聞いて、ギラードは魔族ではなく人間のようだと、かつて自分が見た人間を脳裏に浮かべて感想を漏らした。
だが、ただ感想を漏らすだけではなく、アイスソードの一撃を外した瞬間には、アイスシールドから敵の動きを鈍らせるべく吹雪を発射しつつも他の味方と同じ所まで下がる。

そしてギラードは、ハザマのほうをチラりと見てから、魔帝に視線を戻しつつも呟いた。

「戦闘が専門ではないにしては、相手の死角や隙と言うのをよく見ているようだな。 戦闘が専門ではない、暗殺が専門なのだと語る性質か? まぁいい。 戦力になるならば、お前にももう少し働いて貰おう」

本当にハザマが居ても居なくても変わらないような非戦闘員ならば、自分の防御能力は勇者にのみ使うつもりだった。
だが、このハザマと言う男は先ほど確かに、魔帝の視界外や、こちらを適切にアシストできる位置に攻撃を使った。 これで、戦闘に縁が無い男と言うのは流石に無理がある。 だからこそギラードは、暗殺やそれに準ずる事を行う人物で、あくまで戦闘ではなく暗殺が専門なのだとプライドを持っているタイプか、と推測した。

とにかく、戦力になるのならば、放たれた魔帝の攻撃を防御しない理由は無い。

――ギラードが叫び、三本のアイスソードを地面に突き立てれば、無数の氷柱が地面から出現し、味方と自分を守る防壁となった。
相手は明らかに加減をしている、直に受け止めてギラードはその事を察しながらも、味方へ向かう余波が最小限になるように受けてから……最後の最後に意図的に防壁を緩め、氷の防壁を破らせる。
これでは、少ないとはいえ余波が二人に向かう、だが、こうすれば、攻めも守りもできる、あくまで自分は被害を抑えるだけで良い、という判断だった。

破壊された氷の防壁の破片が周囲に散る、それらはそのまま重力に従い地面に落ちるかと思いきや、その場で浮遊し始め、そしてギラードが剣を振るえば、一斉に氷の刃となって魔帝を引き裂くべく突撃する。

>魔帝ヴェルメイユ ハザマ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム

2ヶ月前 No.755

健啖の銀狼 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

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2ヶ月前 No.756

ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc

【 マロニス城/厨房/ガドン・バルザック 】

「あらァ! それはアタシの華麗な歌が聴きたいということかしらァ!?
 アンタも隅におけない色男ネっ!!」

 業炎の魔術、――炎術式に拡散の属性を掛け合わせた火炎放射。
 点ではなく面での攻撃は破壊力が減衰する/魔力をその分注がなければ威力が減るが、それに見合うのが回避範囲の減少。
 ミコルナはともかく高速機動を得意とするレーヴは恐らくガドンの実力では追いついて的確に穿つことは出来ない。
 それは単なる実力差の問題ではない。

(……得意分野が違う。――真っ向からやり合ってやるバカがどこにいるのよ)

 速度を追い求め、手数を追求してきたレーヴは自身でも自覚している通り、技には誇りを持っているはずだ。
 先ほどは単調さが目立ったためにレイピアの刺突で弾き返したが次からはそうはいかない。
 そして不確定があるとすれば――。

「こんの小娘ェッ――!?」

 ミコルナの動きに気づいたとき、咄嗟に近場にあったテーブルを蹴り上げて宙に浮かせていた。
 判断力も迅速だが、貞淑さとか美しさとかかなぐり捨てているかのごとしはしたない動き。
 だがこの場に立つ以上机一つを蹴り上げられない筋力のものなどお呼びではない。
 派手な音を立てて宙に舞う木製テーブルは火に包まれている。だがそれはどうでもいい。
 舞い散るシチュー、大鍋にぶち込みこちらへの被害を阻止。
 押し込むように回し蹴りで吹き飛ばして――接近するレーヴを捉える。

「やるじゃないの!! あと十歳歳とってたら惚れていた――わァッ!!!」

 右腕で回し蹴りを止めて受け流し、――見失う。
 レイピアのルーンに魔力を通し、更に両腕に紅蓮形成。

 >>情熱の恋よ――。

 Teufels Liebe
「《乙女の情熱》ッ!!!」

 灼腕――残留する火炎というべきか。振り抜いた軌跡<ライン>ごと燃やす紅蓮の腕。
 空間に残留する火炎は魔力的性質を持っており、わずかではあるが攻防一体の壁として機能する。
 粘着質とも呼べ、しかし情熱的。少しの水で消すことは出来ないと言わんばかりに輝く赫爛と燃える火炎。
 降りかかる光の斬撃にたたき込まれるも、そこにレーヴの姿はない。
 狼狽はない。余裕はまだ保たれている。二人相手は予想外だが、だからといって負けてやるはずもない。
 真上からの強襲。
 レイピアを払って紅蓮を生み弾き返し、正面からの連□もまた、振るわれた右腕が生み出す紅蓮の壁で掻き消す。
 再度の上空からの強襲。同じく紅蓮の腕を振るい防御。
 此処までを全て的確に対処しきった上で、――反撃に打って出る。

 レイピアを右手に持ち替え左手を突き出す。
 狙いは一瞬。後方へ向けた追撃をレーヴが行うその瞬間に、――術式起動。
 マナを急速に集中させ魔術を熾す。

 >>十代の輝きは色あせない――。

 Leuchtende Frau
「《数多喰らう女》ッ!」

 光魔術に炎魔術を掛け合わせた複合術式、――"当たれば術者以外を巻き込み爆発する"機雷を設置。
 魔術回路を識別し誤爆を防ぐ魔術機雷は、ことこの至近距離での戦闘においては強力なカウンターとなりうる。
 正確無比たる術式の構築が出来るのは性別もセンスも超越しているガドン・バルザック故か。
 いずれにせよ、レーヴの最後の追撃は機雷にたたき込まれることとなり、爆裂。閃光と紅蓮を撒き散らし飲み込みにかかる。

   Dal Segno
「《輪唱を規定する》――五つ!」

 更なる複合詠唱。
 復唱詠唱によって《数多喰らう女》を謳い、――同じ魔術を五つ同時に起動させる。
 瞬間、ガドンの周りに五つの浮遊機雷が顕現する。無論効果は変わりはない。
 殴れば破裂し周囲を巻き込んだ火炎を引き起こす。

「――サアどうするかしら!?」

 >>包み込む愛情――。

  Liebe Frau
「《女神の抱擁》ォ!!!」

 魔導剣士、――クセの強い魔術を勘だけで扱いこなす乙女たる才覚。
 手数で押してくるのならばそれを躊躇わせればいい。
 構築と術式制御においてはトップレベルの実力者を前に、自壊戦術は通用しない。

 ダメ押しと言わんばかりの詠唱<ランゲージ>。
 ガドンより二人へ向けて撃ち出される炎。今度は勢いを弱めるもなにもない、"壁"。
 それが二人を押しつぶし焼き付くさんと前進を開始する――。

>レーヴ ミコルナ

2ヶ月前 No.757

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/魔大将の間/魔剣士】


剣の上に乗る黒猫、嘲りとも取れるその行動にも魔剣士は笑みを深める。及第点ではあるが、身のこなしは十分。余裕ある対応は強者の常、この程度で手傷を負う者ならば前菜にもなりはしない。
黒猫の発言、魔剣士はそれを意に介さない。どっちつかず等言われようと、元々より戦える方に着いただけ。今この時、戦えるのは己以外と敵対することのみ。この場の誰の味方でもなければ、特定の陣営に肩入れすることなど有り得はしない。
さて、黒猫を及第点を称した理由はその甘さ。敵対する行動を取って尚、反撃せずにいるのはどのような理由であっても甘いと魔剣士は断ずる。性質が理解できていない訳でもあるまい、手綱を握ろうとしたいならばそれこそ愚の骨頂。
例え龍と人間が斃れても、その剣先は黒猫に向くのみ。未だ判断の時ではないが、恐らくは三人同時に相手して尚余力を残せるだけの実力を持つ魔剣士を御そうなど考えぬ方がよい。狙うならば結託し、戦場の災禍を打倒すこと、それが出来ぬならば積極的に殺しに来るしかない。

「……甘い、だが喰らうに値するのもまた事実。龍ほどではなくとも、楽しめそうだ。」

黒猫の味見は済んだ、であれば次の標的は人間。この場の中で魔族という肉体的優位さもなく、加えて隻腕という傷まで負っている。されど本来の実力がどうであれ、追いていかれることなく喰らい付いている。故に、一番の逸材である可能性も否定はできない。
たかが人間、されど人間。龍を喰らう味付けとしても良い、本人が喰らうに値するならば楽しんで喰らうのもまた良い。一番の喰らいがいがあるのは龍ではあるが、楽しみ方と期待値が大きいのはこの人間。ならば、少しばかり過激に行こうか。
黒猫の水球、龍は避け隙だらけのその背を見つつ欠伸をする、文字通り欠伸が出るほどの遅さというべきか。天へ翳した手が紅炎を呼ぶ、黒猫を灰へと葬らんとして襲い掛かる。龍も魔剣士を味わおうとし、味見の間の戯れに黒猫へとその矛先を向ける。
対する人間、龍とは違い避けはせず打ち返す。水球を炎球へと転じさせその勢いのまま宙へと躍り出る。黒猫を狙ったそれ、狙いも威力も人間を言う事を加味しても十分すぎるほど。当たりさえすれば、黒猫も無事ではあるまい。

「さて、次は人間。貴様だ。期待を裏切ってくれるなよ。」

黒猫が反撃をしない事を良い事に、その場で僅かばかり戦場を見渡していた魔剣士。だが動き出せば、魔族の視界であろうとも映りはしない。突風が巻き起こっても不思議ではない速度、されど音も風の動きもなく掻き消えたかと思えば、黒猫と人間の間へと幻影の如く現れ出でる。
何気なく薙がれた長剣、今までの斬撃に比べれば視認も容易く軌道も読める、斬るつもりで放たれたものではないと明確に分かるその一振り。ただそれだけで、切っ先から遠く離れた炎球は霧散する。一振り、その飛来した斬撃は千にも及ぶ。
続く兜割、十分な高度と腕力を以って振りかぶられたその刃は致命への誘いに事足りるもの。だがそれでも魔剣士は長剣を未だ両手で構えることはしない、それは決して威力を見誤っている訳ではない。片手で足りる、その事実を以って真っ向から受け止める。
周囲に轟く剣戟の衝撃波、大剣と長剣という本来であればどちらが折れるか明白なそれを覆す光景。僅かな後退もなく、ただ剣を翳すだけ。その動作だけで大剣から放たれる圧倒的な斬撃を容易く受ける。
弾いても良かった、隙だらけの胴に長剣を突き刺し、臓物を外気へと晒す、何とも魅力的なものだろう。しかし、想定以上は付き物。人間でありながら屈さない意志、砕くに値する。故に、味見は是より始まる。

「ああ、貴様もそれなりに好い。だから、この程度で死んでくれるなよ。」

長剣を傾け、文字通り黒猫ごと砕くはずであったろう大地へと大剣を受け流す。そのまま流れる様に袈裟に一閃。そう、一閃された一振りは確かに見える。誰であっても一振りであったと視認出来る、だがその斬撃が一振り分とは限らない。
目に映る剣筋、それが例え一つでも人間に襲い掛かる斬撃は十を超え十二。内同時に放たれた斬撃は四、それを一秒を八つに分けた内の一つよりも素早く放たれる。首に二度、失った部位を除く四肢に六度、胴に四度。放たれた斬撃は正面から斬られたはずなのに、四方から迫る。
その場から動かず、対象に瞬撃を全方位から放つ技でさえも魔剣士にとってはこの程度。小手調べに過ぎず、少しばかり気を入れた味見でしかない。人間が期待させる余りに先走った牙、並の人間であれば死せるそれを打ち破り喰う価値があると示してみろと。
仮に人間がこれを打ち破ったならば、魔剣士の笑みは最高潮へと達する。最も喰らいがいのある龍、少し見劣りするが十分喰える黒猫、期待と味付けで熟れさせれば化ける人間。まさにより取り見取り、昂る気持ちは止まらない。
強者が集う場、その場以上に血に沈めるに好い場所はない。臓物を撒き散らすに適し、柔肉を裂くに適し、骨を砕くに適す。打ち合い、避け、鮮血を散らそう。舞踏会は始まったばかり、彩る紅すらない質素なものだが何れ豪華なものへと変わっていくだろう。
踊ろう、散らそう、全てを深紅に染め上げようぞ。魔剣士の口角はつり上がり、笑みと形容するには悍ましいそれ。人間の味見は済んでいないが、その期待のみで悦楽に至る。さあ、未だ前奏。楽しむべきは、少し先。
その剣は、まだ血を求める。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ

2ヶ月前 No.758

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X


【魔帝城/深淵の間/ハザマ】


「おっと失礼、暗殺はむしろ更に専門外ですかね。ま、配慮の分は働かせて頂きますよ」

 少しばかり会話を交わしていて分かることだが、この魔像、予想よりも聡い。
 この分なら共闘相手としては中々のアタリを引いたというところか。目の付け所といい動きの取り方といい、言葉にするでもなく此方の都合の良いように立ち回らせてくれるとは実に都合が良い。
 最も都合がいいだけで済めば何よりなのだが、しかしそうも行くまい。
 一連の言動を聞く限り、本人の言葉通りの機構《システム》じみたものとこの氷魔像は一線を画している。人間の為と判断するからこの場に馳せ参じたのだろうと判断したことは理解したが、その判断基準は恐らく自分のものだ。
 他に定められた規範などに準拠するのではない、紛れもなく自らの価値観に従うものだ。

 そして―――。


「(………しかし今の言い方………疑惑までは覚えたか?)」
「(そう、その通りだ。他の魔族たちとこの女、どうも違うんですよねえ。
  魔族の為でもないし人類の為でもない。目的は思わせぶる―――まあ、だから暴き甲斐はある)」


 だからこそ、魔帝の言葉への判断も速いと見るべきだろう。
 あれが語った言葉はどうも戦意に欠ける。決めきれず、揺れる天秤のようなものだ。

 ………とはいえ。
 ハザマは、魔帝ヴェルメイユの本質と呼ぶべきものを完璧に解き明かしたわけではない。
 魔帝に関する情報は、あくまで彼女が勇者と呼ぶべきものに討たれたということだけ。
 あとは目の前で彼女が勝手に零してくれる情報から、勝手に推察を終えていっただけだ。

 恨みもない、憎しみもない、まして敵意と呼ぶだけのものさえもない。
 あるのはもっと別の感情。種族を背負った闘争というには欠伸が出るほど生温く、もっと別のものを背負った闘争というなら清々しいほど理に適う。確かに、具体的に何が本心であるかは欠片も見せることがない。が、どうもこの女、うわべのそれがポーズであることを隠すのは下手くそだと見て良さそうだ。
 態度を見れば分かる。行動を見れば分かる。
 この期に及んで、文字通りの小手調べを仕掛ける程度には余裕もあるらしく。
 この期に及んで、覚悟を問うほどには言葉の余地もあるようだが、しかし―――。


「さあ?」
「質問に質問で返されても困りますが、まあ答えて差し上げましょう。
 ・・・・・
 そんなことは私も知りません。まあ私、不必要な殺しは面倒なんでしたくない方なんですけど、でも仕事とモラルと内情は、まあ、ほら別問題でして! ………ましてやこちら、仕事の対価が身の安全なのでね。
 何度も言ったでしょう? お上の命令には忠実なのが社会の基本ですよ」


 それが一番の証拠だ。
 あらゆる障害を踏み越えるだけの鋼のような決意など、微塵も感じない。
 だから包み隠さず、嘘偽りなく答えてやるのだ。それが仕事で、おまえが未来過去全ての人間にとって、歴史を脅かす存在であるから問題なだけだと、遠回しに告げていくのだ。
 それ以上の必要などない。おまえのそれも一理あるが、でも知ったことではないの一言で済む。


「むしろ、今の段階でそれを聞くのは遅いんじゃありませんか?
 それとも、聞かれる度に同じ言葉を返さないといけませんか? あ、それとも何か―――」

「………戦争を始めた張本人が? まさか………人間を滅ぼすと困る理由でもあるんですかねェ」


 だから、比較的有り得そうな答えと、有り得なさそうな答えを織り交ぜて。
 神経を逆撫でするような物言いで以て心を揺する。
 一度も人間を滅ぼすという言葉を乗せていないのは、そんなことは言わずとも分かるからなのか。

 それとも、言ってしまえば自分の何かを曲げるからなのか。反応を見れば分かることだ。
 内側が見えずとも外側の殻の時点でこれはただの小娘。時間を掛ければ孔はすぐに見える。
 が、その分、力という意味では相応に強力だ。反応も良い、氷魔像の打撃が効果的に通るように仕込んだウロボロスだったが、それが全弾対処となると単純な運動神経という意味でも出来がいいと見える。魔帝というのも伊達ではない。
 幸いなのは手駒が自分を含めて多いことだろう。これならば立ち回りの仕方次第で互角以上に持ち運べる。その分駒の性能は存分に生かさなくてはならない。魔像も勇者も、当然自分もだ。


「さて―――」


 暴風が吹き荒れる。
 宣言通りに防御を回した氷魔像のお陰で行動の猶予はある。
 であるならば次は、どうも躊躇いが見えるようだが戦力の一部であるアンナローズのアシストだ。
 氷の防壁が破壊されるまで数秒。術式を並列展開、最善手を導き出す。
 地面を踏みつけると同時、その床を突き破るようにして幾つも緑黒の蛇を思わせる鎖が次々と突き出すように出現した。それは残る黒風の余波を防ぐ防壁になると同時に、そもそもの性質として、生態として、気配として―――“敵意のかたち”として、極めて攻撃直前の人間に近しいように作ってある。つまり、何処から奇襲攻撃ないし近接攻撃が来るのか、その判断を付けにくくする。
 要は大仰なジャミング、妨害行動だ。多数の場所で攻撃の“ダミー”が起動したのだから、ギラードの行った攻撃とアンナローズがこれから行う行動がどんなものだろうが、発動点を予測させにくいという意味でのアシストとなるだろう。
 そして当然―――それらはダミーだけではない。

 至るところから出現したウロボロスのアンカーは6割以上がダミーだが。
 逆に言うならば4割はダミーではない。上空から、まるでヴェルメイユの左右背後串刺しにするように、ある程度まばらにして襲い掛かる。つまり当人を直接狙うのではなく、当人が“回避や移動行動を行えば突き刺さる”ように置いて当てるわけだ。
 ならば当然、正面にしか逃げ道はない―――逃げ道はない、が、其方に進めばどうだ。
 当たり前のようにギラードの攻撃が飛ぶ。故に彼女が行うべき行動は、その魔力を費やした広範囲攻撃、あるいは防御を行うより他にない。損傷覚悟の戦術など此処から取っていればジリ貧だと、まさか言わずとも分かっているだろう。


 ―――だから。

    氷魔像の繰り出す氷刃が、
    ヴェルメイユを捉え終わる/防がれる/避けられるタイミングで、更に一手打つ。


「―――そぉら、詰めますよ………!」


 完全に各方位から攻め込むようにして、面倒だと薙ぎ払わせるように仕向けてからの時間差攻撃を掛ける。
 自分の手元に残しておいたウロボロスを空中に固着させ、ゴムの要領で反発させ。
 それによる立体機動を活かした、空中/頭上から魔帝へ繰り出されるナイフの投擲攻撃だ。数は三本、狙うは目と頸動脈。更に上空で跳ね回る彼は、そのまま空からの落下と重力を乗せて、降下しながら魔帝の立っている位置へ蹴撃を掛けていく。
 蹴撃には緑黒の、ウロボロスによく似た色合いの力が乗っている。それが魔素と呼ばれるものであることに関して、この世界の誰も識ることはないが―――識る意味もない。ただそれを元とした術式を伴う蹴撃は、生半可な威力ではないことだけは事実だ。………無論、当然のことながらウロボロスに引っ掛かる方が手痛いが、此処まで時間差で算段を立てての連続攻撃というところに意味がある。

 追い立てて、追い立てて。
 追い詰めて、追い詰めて。
 立て続け様、矢継ぎ早の攻撃は相手から判断能力を失わせる。
 一度や二度は弾くだろうとも。百でも対処し続けるなら上等だ。


 だから延々と続けてやるのだ。
 千ならばどうだ? 万と続くか? 続こうが続くまいが、念入りに蹂躙し凌辱してやろう。

 根を上げ、しびれを切らし、致命的な判断ミスを犯すまで。
 蛇が獲物を嬲るように陰湿に。獣が狩りをするように冷徹に。


>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード、アンナローズ

2ヶ月前 No.759

エクスデス @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【マロニス城/ホール(城前)/エクスデス】

 遠距離攻撃という形で火力支援と行動阻害を一手に担う後衛の弱点は、古来から決まっている。
 彼らは元々白兵戦をするように戦術を構築していない。
 それが専門ではなく、それをするよりも援護と本命である火線の集中こそが役割であると決まっているからだ。それが集団であるというなら、役割《ロール》からエクスデスがヴァイスハイトをそのような相手だと判断するのも無理はない。
 まして、仮にあの金髪の射手に多少でも白兵の心得があったとして。暗黒魔導士はそれごと潰す算段でいた。自分とて本職ではない、その莫大な魔力を用いた攻撃魔法………そして、それすらも上回る“ある力”こそが彼の真髄だ。近接での長剣捌きは余技に過ぎず、しかし余技であっても十全な速度と威力を兼ね備えた剣舞は文字通りの脅威になり得る。

 そのはずだったが、しかし、斬撃の全てが空を掠めている。
 一度目は多少の疑惑に至り、二度目は焦燥と共に確信した。
 その銃弾の威力自体は前者二人に及ぶべくもない。
 魔弾使いダグラスのような苛烈さがあるでもない。
 まして万華鏡の如く魔法の性質を切り替える、ユーフォリアのような多彩さがあるでもない。

「小癪なァ………!」

 その上で。この男、ただの射手《ガンナー》ではない。
 その長所と呼べる部分を完璧に殺した酔狂が過ぎる闘法であるが、その在り方はむしろ誰よりも零距離での打ち合い―――否、“撃ち合い”を好む超接近戦型だ。苛烈ではないし威力では比べるべくもないが、その手数と動作の流麗さは洗練されている。
 回避と同時の攻撃から何から何に至るまで。
 射手としては落第でも、そうした温室育ちが務める後衛とはわけが違う。
 あるいはそもそも集団戦向けの思考ではない。むしろ単独戦闘向け、創意を基点とした戦いの術だ。


「(まさか―――わしが、侮ったのか!)」


 その上で、威力こそ極端なものではないそれをこれ見よがしに打ち込んで来るとなれば………。
 エクスデスの判断は素早かった。鎧越しならばまだしも、これを内側の本体に貫かせるわけにはいかない。
 だが判断よりも弾丸が辿り着く方が早い。幸いにも彼の鎧は頑強であるし、そもそも内側を射貫いたとしてその生態構造は人間のそれを遥かに逸脱している。その点では相性が良いが、あまりにも特化し極まった一芸に魔導士は目を奪われた。

 此処でよりにもよって『ミールストーム』の暴風に突破を選んで来る勇猛さを、魔弾使いが見せて来ること。ある意味それは、ヴァイスハイトの銃弾により生じた僅かな隙を突くには十分すぎる。

 幸いなのは、ユーフォリアが放つ光弾も含めた二発の攻撃がまだ遠距離攻撃だったことか―――威力という意味においては絶大、『ウォール』を用いた防御や『デルタアタック』の大出力攻撃でもあれらは纏めて防げない。
 いや、そうではない。銃弾に気を取られたせいで、それらを回避する余地がない。

「ぬぅっ―――!」

 たまらず、エクスデスは『ミールストーム』の暴風を再び自分の下に呼び戻した。
 加えて白魔法下級位階『シェル』の魔法防御を上乗せした多重障壁を展開。破壊の光が幾多に別たれて迫り、殲滅の光が螺旋を描いて直線的に襲い来る―――回避の時間はない、最大限ダメージを取り除くために凌ぐしかない。
 膨大な魔力を用いて使われた防御策は、しかし急場とはいえアレだけ万全に行ったというのに。


「………おのれ」
「おのれェ―――」


 それごとあっさりと打ち破って爆発を起こし、煙の中から現れたエクスデスの纏う鎧の一部を砕いていた。そうして彼はその正体を垣間見せる。
 魔人が鎧の内側から覗かせているものは、これまた黒い甲冑とも樹木とも言えるような肌だ。
 それもそのはず、比較的エクスデスの系統は“魔物”と呼ぶべきものに近しい。
 さる邪悪な意志が一本の大樹に宿って誕生した“暗黒魔導士”こそがエクスデスゆえに。

 さて、急場しのぎとはいえ二重の防御には十分な力を注いだ。それで尚打ち崩された。
 比較的押されている状況であるし、彼方も体制を整える余裕が出来てしまった。
 こうなるとヴァイスハイトを取り除く手段も失せた。リスクという意味でも甚大だ。

 そもそも余力も然程残らない。ずいぶんと手痛い一撃を受けてしまったものだった。
 ………しかし。しかし、だ―――。


「わしを、怒らせたな―――!」


 ここまで損害を負わされてしまっては、相手にも損害をぶつけなければ割に合わない。
 であるに、奥の手の一つや二つならば、開帳するにも吝かではなかった。

 エクスデスを中心に広がるドーム状の空間。
 一寸先すらも見えない闇を彷彿とさせるそれは、あるだけで既存宇宙の法則を乱す力。
 消滅を司る“無”の力。破壊の極点と呼ぶべきもの。彼が手に入れ、試そうとしていた力の正体だ。
 エクスデスを基点として時間を掛けて広がって行き、周囲の三者三様を纏めて飲み込まんとして迫って来るそれは、例えるならば彼が展開した法則の中に敵対者を捉え、絶大な重力を掛けて文字通り“すり潰す”ような攻撃に等しい。
 城前の広範囲を纏めて球状に飲み込んでいくそれは、発動中自身が力の制御に意識を割く必要があることを差し引いても絶大な威力と攻撃範囲を持つ。先ず物理的攻撃は展開中ならば構わず押し潰し、飲み込んだ対象は構わず粉砕し得るだろう。



「―――消えるが良いッ!」


 ―――『アルマゲスト』。既存の魔法形態のどれにも属さない正しく切り札だ。

 広がり切り、膨張し切った未明の空を思わせる黒が、エクスデスの言葉と共に崩壊する。


 彼を中心に展開されていた極小規模の宇宙が、今度は逆に白光を帯びて―――ガラスが割れるような音と共に周辺の大地を、橋を、削り取って粉砕する。内部に居たならば、よほど強靭なものか、強力な防御でなければ耐えられはするまい。
 消滅と崩壊の根源たる無の力、理でも捻じ曲げねば受けきることは出来ぬ。

 そんな力にも欠点がある。
 唯一の欠点はただ一つ、発動後の甚大な隙だ。

 エクスデスは城前の敵対者三人を呑み込む程度の比較的小さい規模に『アルマゲスト』を設定したが、それ以上の広さとなると彼でさえ力を制御する事が出来ない。無の力を自在に扱うには、例え神に等しい力が在ろうが相当な手間がかかる。
 故に彼は、全方位への力の奔流、極小規模の世界を創り、壊すに等しい攻撃を終えて。

 しかし、その場に立ち止まらざるを得ない。
 それだけのリスクを伴うが故に、内側であの時欲を出して追撃でもして居ようものなら死は確実だ。


「(まさか此処まで使わされるとは、手古摺らせおって………)」


『アルマゲスト』で展開された世界が膨張し、崩壊し切った後。
 制御の為佇んでいたエクスデスが見るものは、三者が纏めて飲み込まれ消え去った後の光景か。

 それとも―――。


>ユーフォリア、ダグラス、ヴァイスハイト


【大仰なこと書きましたが普通に対処してくれて構いませんのでー!】

2ヶ月前 No.760

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【マロニス城/厨房/ミコルナ】


「こ、小娘じゃないってー!ミーコールーナー!」

シチューを床に食べさせた衝撃が未だ抜けきらないのか、言い淀みはしたがまたも小娘と呼ばれたために訂正の言葉を叫ぶ。彼女、これが戦闘中である意識は
殆どない。そも、彼女にとって戦闘は割と楽にお金とかが貰えるものでしかない。
姐さんほどの強者と出会わなかった運の良さゆえかこの状況においても危機感は薄い、姐さんのこう……性別を超越した雰囲気もあってか未だ遊びが抜けきっていない。尻尾をぶんぶん振りながら名前の訂正をしている時点でそれは明らかだろう。
それでも弓を構えようとはするが、レーヴの得意な戦闘は速度と手数によるもの。如何にミコルナの腕が優れていようと下手に撃てば誤射をする、まあそんなことは気にしないので弓を構え始めるのである。
傍から見れば綺麗と感想の漏れそうな煌めく剣閃と魔術の応酬、レーヴと同じ戦場に立たぬように姐さんが様々な手を尽くしている。彼女がそこまで理解しているかは別だが、少なくともレーヴが思うように戦えてない事だけは分かる。
故に、魔術による浮いた何かを見た時にすぐに射ることはせずに少しばかり観察を挟む。そうすればレーヴの最後の一撃がそれに当たり、光と炎を混ぜたような爆発が起こる。それを打ち落とすのは駄目だと感じ、対処は全てレーヴに任せることにする。
そしてレーヴがそうなった以上は彼女自身も何かしなければと思ったのだろう、弓の大きさを所謂大弓へと変貌させる。彼女の身長よりも大きいその弓、限界まで引き絞って放てば城壁を貫くことも可能かもしれない。
大弓の元弭を床へと突き刺し、安定を図る。微小な狙いや即座な狙いの変更こそ出来ないものの、命中精度だけを見れば最も高くなる。加えて身の丈より大きいため、手で射ることは不可能に等しい、その為の手段でもある。
しかし持つ矢は短弓用、大弓で放つには小さすぎる。それでも彼女は大弓に矢を番える、例え大弓と言えど矢の大きさが合わなければそこまでの威力は出ない。だが、飽きやすい彼女はレーヴの為と思って苦手な下準備を始める。
矢に魔術を付与する、時折使う物でありそれ自体は難しいものではない。それに加えて魔力によって矢を形成しなければの話である、そう大弓に合う大矢をこの場で魔力を編んで作り出そうという事。
何故か、そう問われれば先の炎の奔流への対処には咄嗟に取れる手段がなかった。ならどうにかできるものを選ぶ、何て思考が彼女にある筈もなくただこうすればいいと何となく思ったからこうしているだけ。
経験、言い換えるならばそれが妥当。この場でレーヴを即座に援護するよりも、何か起こった時の突破が出来る様にと思考を挟まずにその結論へと至った。だからこそ、苦手な下準備と集中を用いて大矢を編み込む。

「うー!うー!うぅ……うー!つまんなーい!でも必要だと思ったしー!」

尻尾を真っ直ぐに伸ばしながら自身の勘を信じて魔力を編み続ける、集中が必要とし一つの事をするのは彼女にとっての大苦手。こうやって文句の一つでも言いながらでないと、きっとすぐに痺れを切らして短弓へと持ち替えてしまうだろう。
徐々に形成される大矢、番えることが出来る様になれば全身を用いて弦を張る。脚を突っ張り棒として、全身を後ろへと倒す。ついでに翼もはためかせ気持ち強めに引っ張る、腕で引くには大きすぎる為どうしても隙が出来る。
こればかりはレーヴが前に出たおかげで姐さんの注意が此方に向いていないことが幸いした、もし気付いていれば何らかの妨害を加える。今までの魔術の扱い方から見てもそうだろう。
限界まで引き絞られた状態を維持する、姐さんはさらに爆発する浮遊物を出した。そして追撃で召喚されたのは炎の壁、押し潰して焼くための通常の手段では打ち破れないそれ。
しかしこの場には大弓に番えた大矢がある、元の矢こそ木製で燃え尽きてしまうがこの大矢の殆どは魔力によって編まれたもの。故に燃える心配はない、そして絶大な威力を誇る大弓で以て放たれれば活路を見出せる。

「い……っくよー!レーヴ!」

掛ける言葉は避けてという意味、決してレーヴに向けて放つことを意味している訳ではない。きっとレーヴならこの声掛けで分かってくれるはずだと、一方的な信頼の言葉。
それと同時に放たれる大矢、空気を穿つような音と共に限界まで張り詰められた矢が宙を裂く。途中にある炎の壁など、矢の大きさ以上の大穴をあけて貫く。勿論、彼女は反動で後ろに倒れるもくるんと一回転して再び宙へと舞い踊る。
大矢は一直線に姐さんへと突き進む、あれだけの大きさの弓で曲げて射る芸当は不可能。素直な狙いではあるが掠りでもすれば容易く人体など吹き飛ばす威力は秘めている、そしてその威力で宙に浮かぶ爆発物も巻き込み無駄に終わらせる。
そう、レーヴに避けてと言った意味は大矢を避けてという意味と爆発物から離れてという意味を持っている。分かるかそんなもん。彼女なりの姐さんに気取られないように配慮したのだが、伝われば良い方だろう。
少なくとも逃げ場を無くしてしまう壁は穿たれた、そしてレーヴの邪魔になる爆発物も大矢で巻き込んだ。短弓に戻しながら、後はレーヴに任せつつ援護をしようと楽をするために目論む。
苦手な集中と下準備をしたために疲れてしまった彼女、前線で戦っているレーヴはどうなるんだなんて言ってはいけない、彼女なりに精一杯頑張ったのだから。むしろ元気が有り余ってれば短弓で追撃を放ち、幾らかレーヴにも襲い掛かっていただろう。
これは幸運なのでは?味方からの攻撃に気を使わなくていい、速度と手数を重視するレーヴにとっては下手な援護は邪魔になる。そういう事にしておこう、味方に誤射されるレーヴはいなかった、これは幸運である、いいね?

>>レーヴ・カストリス ガドン・バルザック

2ヶ月前 No.761

わんわんお @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/ヘシアン・ロボ】


   振り下ろされる槍。
   首を断つ絶殺宝具の一撃を受けて尚そのタフネスさに揺らぐ様子はない。
   躊躇わず撃ち下ろされた一撃を、しかし、それでは死なぬと迎撃した。
   鎌刀が衝突する。神秘の違いで、狼王ロボが銜えていた鎌はあっけなくへし折れた。


   折れた鎌は、霊子を散らして砕け散った。
   それでも、鎌でさえも、ひとつ先の方向を示していた。

 だが、それだけだ。
 狼王は最後の力を振り絞って駆ける。躊躇わず駆ける。
 最初から英霊相手は、極めて厄介な障害でしかなかった。狙い定めていたものを殺すに当たっての障害だ。つまるところ足蹴にした。重傷を負わせ、健在と言えども動きも最初の頃と比べると聊か鈍くなった朱槍の英霊を捨て置いた。

 あるいは、それは戦士としての介錯だったのかも知れぬ。
 だが、そんなものは不要だ。
 戦士の誇りだの何だの、そんなものは文字通り犬に食わせて捨ててしまえばいい。
 傭兵たちの怨念たるヘシアンも、悪魔の如き叡智を振るって来た狼王も、そうした感性とは無縁だ。


   投げ放たれる槍。
   狼王が仕留め損ねた女から投擲された、誘導弾のように幾度も自らを狙い定めるもの。
   躊躇わず放たれた一投を、しかし、それでも死なぬとなお迎撃した。
   傭兵が刃を振るう。荒れ狂う嵐のように突き穿つそれを、文字通り決死の覚悟で迎撃した。


   やがて力尽きた。首無し騎士は、ずるりと落ちて、それでも立っていた。
   消えゆくその瞬間まで、ランサーとライドウを阻むように両腕を広げていた。

 だが、それだけだ。
 狼王は最後の力を振り絞って駆ける。躊躇わず駆ける。
 憎らしい召喚師であるが、行動から分かるようにさらに優先するべきものが居た。
 だから、狼王が残りのリソースを全て割かねばそいつは殺せないと判断した時に、まずはその存在を“遠くに引き剥がす”ことを選んだ。最も食い殺すべきもの、報復するべきものを殺すために。

 あるいは、それは人間としての意地だったのかも知れぬ。
 だが、そんなものは不要だ。
 狼王にとって召喚師は殺意を向けるべき対象だが、彼には最初からそれ以上の優先順位が居た。
 だから、もう長くないことを悟った狼王が、其方に余計なリソースを割くことはなかった。代わりに対処をした首無し騎士にそんな義理はないはずだが、それでも彼は狼王を護るべく腕を振るい続けた。


   撃ち貫く弾丸。
   最後に狩人がその手元からエゴを乗せて放つ、獲物を約束された死へと導くもの。
   何も語らず引かれた引き金を、しかし、それすら喰らうと進軍した。
   残る狼王の瞳は殺意にぎらついて、最早それ以外には何も残ってなどいなかった。


   最初から、そうだ。彼はアベリィに大して、ライドウ以上の敵意を向けていた。
   狩人、などと。自分達の同朋を撃ち殺して来たものを、生かしておく道理はなかったからだ。

 あるいは、それは狩人としての慈悲だったのかも知れぬ。
 だが、そんなものは不要だ。
 彼にとって人間は、群れを殺すかいぶつで。殺せば、殺すだけ、故郷に近づけるはずだったからだ。
 だけど、そんなことはない。殺しても殺しても満たされない。



「―――■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」



 走っていく。
 走っていく、走っていく。
 何時の間にか、故郷の匂いも、あの草原の感触も忘れてしまった。
 感覚と記憶が、この戦場に塗り替えられていく。覚えのない、知らぬロンカリアという街に。


 ―――おれは何の為に、人間を食い殺していたのだっけ?


 もう、思い出せない。
 だけど眼の前にいるのだ。あれだけ多くの仲間を撃ち殺して来たやつらが。
 食い殺さなければ。叩き殺さなければ。塵のように、報いを叩き付けて返してやらねば。
 遥か遠くのそいつが犯した罪を償わせるために、そうだ、おれは―――。



「―――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――ッ!!!」



 走らなければならぬ。
 殺さなくてはならぬ。―――嗚呼、そうとも!


 おまえたちの慈悲など要らぬ。俺は飢え、満たされず、渇いて行くのだろう。
 だが元よりそのようなものだろう。ヒトと獣は、出会えば殺し合う間柄だ。相互理解など不要。

  おまえたちのような人種が、一番それを理解していることだろう。
  だから、要らぬ。どうなろうが俺は止まらぬが、その上で―――ヒトの慈悲など、要らぬ。


 狼王は、最後まで誇り高く。

 生前のように。人間の施しを最後まで、その憎悪で以て否定せんと吼え猛る。
 吠えながら、彼女の“ラストショット”ごと食い破らんと、その牙を躍らせる。そして―――。

 霊核はとうの昔に砕けている。何処に走るべきだったかも思い出せない。
 それでも。狼王は獣のサガとして、狩人に一対一を挑み、そして………。



■ ■ ■



 ―――あっけなく、あと一歩のところで、頭を撃ち抜かれて朽ち果てた。

   ………決着は付いた。ヒトと獣が相対したのならば、どちらかの屍こそが終着点だ。



>アベリィ・シルバラード、ランサー、ライドウ


【これで退場とさせて頂きます】
【お相手ありがとうございましたm(._.)m】

2ヶ月前 No.762

炎獅子/始型"後継者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 永き生命の循環を視続けて来た、死の宣告者。獅子のたかが二十七年で観測した死とは比とならない程、彼女が眼にした死の総数は数多に渡り。必然、彼が言葉にするまでも無く、繰り返される輪廻の中で生物が虚無の死に恐怖を抱く事を解している。
 そう、解しているからこそ、再び獅子に問う。恐怖を理解していながら、何故繰り返すのか。何時になれば、この輪廻からお前達は脱却するのか。無意味無価値な屍を、どれだけ積み上げれば気が済むのかと。

「人、いや、意志持つ生物の多くは――合理的な判断よりも、非合理な理想を行動の原理にする。
 無意味な生を恐れるからこそ、意味ある生を欲深く求める。
 軌跡を遺せぬ無価値を忌み嫌うからこそ、せめて争いの中で軌跡を残そうとする。
 ――繰り返しは、止められねえ。総ての生物が、お前の様にならない限り、永劫に……!」

 蛇の視界に映る世界が白く泡立ち、悍ましき白の狂宴に巻き込まれる獅子は。穢し蝕む黒き嵐に身を苛まれながらも、心に纏わせた気勢の外殻で己の魂を維持し続ける。誓った、確かにこう誓ったのだ。必ず二人を生き残らせて、必ず自分も生き残るのだと。それが叶わずとも、二人だけは決して死なせない。彼女達は人と魔族の和平に必要不可欠な、喪ってはならないモノなのだから。
 もしも誰かを犠牲として捧げる事を強いられるのならば、喜んで自分はその贄の役目を果たそう。誰かを導く光――歴史となって死に絶えるのなら、それこそ本望。やり残した事、夢見ていた事、数多くの未練がそこにはあるが、それを盾にしてやらなかったら、きっとそれ以上の後悔が我が身を襲うだろうから。

 ――それだけは、厭だ。

 昂る闘志にこの身を委ね、燃え盛る爆炎で神速の如き塵殺剣に追い縋る。鈍く重い動きながらも、重厚な赤熱の刃をその身に叩き付ける事に執心して。これが一対一の戦いであれば、活路を開く事無く避けられるが宿命だが――此度の戦は、獅子を二人の仲間が支えてくれている。
 穢れの大群に呑まれる事を厭わず、今度は二人を自らが守らんと云わんばかりに前へと出たサシャ。天へと跳躍し、光輝を纏う尻尾が照らす激しき閃光は、塵殺剣の視界を一瞬だけ封殺した。
 されども、魔将軍の地位は伊達では無く。目を瞑った儘でも、頭に描いた回避の道筋に従うがままに初撃を躱し、二撃目は往なし、三度四度、そして五度目の剣戟を奴は退ける。
 然し最後の六度目――擬態を解いたレプティラの尾による不意が仇となって、遂に焔の斬撃は敵を捉えた。掠める刃が、紅き血飛沫を舞わせる。不利な局面に立たされながらも、意味ある一撃を初めて叩き付けられた事実。勝利へと続く路が、漸く開き始める――

「――――――あ」

 ――そんな、淡い期待を、打ち砕くが如くに"それ"は起きた。

 泡立つ白の汚濁を斬り払いながら、神速の剣舞で流麗に熾烈に攻め立てる四十の剣舞。獅子だけを殺す事に特化しながらも、副次的に生じる暴風が蛇をも殺しに掛かる同時攻撃。獅子は味方を守る事に意識を傾け、蛇と暴風とを隔てる巨大な岩壁を後方へと形成して、進軍する鎌鼬の総軍を消し止める。これによって、蛇の一時的な安全は確保されたが。
 己を顧みなかったその代償は重く、純粋な身体能力のみで剣戟に応じる獅子の身体を、無数の剣戟は次々と裂いて行く。刃が触れる度に血飛沫がその場で舞い、彼の周りに紅い血溜まりを生み出して行って。
 心臓を狙った一突きが放たれ、咄嗟に庇った左腕が貫かれた刹那――心の外殻が、音も無く崩れ去った。生に対する執念、死に対する恐怖、護ると誓った想い、導きの光にならんとする願い。其の総てが、獅子の心から剥離して損なわれる。

「―――――――」

 岩壁が崩されると共に露呈する獅子の姿。虚ろとなった瞳が、塵殺剣の姿を未だに捉えながらも。血の池に斃れ伏した彼の身体は、糸の切れた人形の如くに動かない。力強く握り締めていた筈の刃の柄さえも、既に彼の手からは離れている。微かに聞こえる鼓動も、着実に停止への道を歩み始めていた。
 薄れ行く意識。白く染まり行く世界と、黒く染まり行く視界。急速な勢いで死へと堕ちて行く彼が、最後に見ようとしている物。塵殺剣の一瞬の隙を突いて奇襲を仕掛ける巨甲虫の姿。名前すら当然知らぬし、初めて邂逅を果たしたそれが、獅子に見せた物。
 無音の"彼等"は、自らの行いが必ず誰かに後継されて行くと信じて――勇敢にも、塵殺剣へと挑んでその命を散らした。魔帝の真意を、此の場に居る全ての者達へと示し、その理想へと繋げさせる為に。

 ――獅子の心が今一度熱を帯びて行く。喪った気勢を取り戻すのではなく、新たに生み出して。

「―――――――まだだ」

 静かに、力強く呟かれた言葉。獅子の瞳が輝きを取り戻したその刹那の時――身体から溢れ出る灼熱の焔が、柱となって彼を閉じ込める。全身を循環する炎の魔力、その総てを放出して。我が身を灰燼に帰そうと荒れ狂う紅焔を制しながらも、再び獅子は立ち上がる。前へと突き出した右手に総ての焔を収束させて行き――

「――まだだァァァァァッ!」

 戦場に轟かせる、戦士の雄叫びと共に、彼の右手に握られるは烈火の突撃槍、或いは烈火の大剣。"後継者"の銘を与えられし、新たなる獅子の力。飾り布の如き焔の帯に質量を持たせて腕を力強く締め付けると、猛々しく燃える焔の緋槍を手に、大地を蹴って炎獅子は猛進する。穂先と帯が後方へと放出する爆炎による推進は、今まで以上。こと前方への突撃に限れば、かの塵殺剣を優に越す速度を発揮して――

「……お前の言葉を、俺は理解する事は出来ない。だが、それでも――お前が遺したものは確かに受け継いだぞ……!」

 神速を越す神速を以て、刹那の瞬間に塵殺剣へと肉薄を果たした炎獅子が繰り出すは、全体重を乗せた、鋭く重く、そして疾き刺突の一撃。更に続け様に放つは、先の焔の六連撃を上回る速度で繰り出す、計十八に渡る焔の乱舞。薙ぎ、裂き、穿ち、そして断つ怒涛の猛連撃。満身創痍の身体に鞭打つ前提の動きなれど、脅威の度合いは凄まじく――それは対処を誤ったが最期、その命運を断つ必殺の剣戟である。
 繰り出す中で炎獅子は再度誓い、新たにも誓う。和平を成就させるが為にも、二人を生かし。名も知れぬ"彼等"の遺したものを受け継ぎ、最後まで戦い抜くのだと――!

>ニア レプティラ サシャ (ブロヴァンス)

2ヶ月前 No.763

讐心名誉顧問 @sacredfool ★z6mcgW7Sz6_D9v

【魔帝城/魔将軍の間/シャル・ド・ノブリージュ】

 シャル・ド・ノブリージュは寡黙だ。必要に駆られない限りは話さないという性質から、本部でも談笑しているところは滅多に見られない。合理を求める冷たく無機質な行動原理。戦闘中に敵へ向けて放たれる言葉は、その殆どが神経を逆撫でして冷静な判断を損ねさせるためのものである。今しがた銃士に放った言葉も、そういう類だ。実際がどうかなどは二の次、通れば御の字の通過儀礼。このような口車に乗る輩は大抵が自分の力に自信が無い。見え透いた挑発も受け流せぬ器であれば、こちらに敵う道理はない。目の前の銃士は違う。恐らくこのような非難も一度や二度ではないのか。
 超然かつ悪辣。彼女の返答を聞いた彼が抱いた感想だった。好きに生き、好きに殺し、手に入れたいものは手に入れる欲望の亡者。下種。俗物。

「屑が……」

 彼は受けた心証にそう呟きさえした。思わずとも滑り出た、忌憚のない低い唸りである。それは先の遠回しな扱き下ろしとはわけが違う。シャルは寡黙とあって寛容なわけではない。彼もまた時空防衛連盟の副総統など務めている以上は、それが望んで得た地位でないにせよ、彼女のような邪悪を許容しない程度の正義感はある。寧ろそのような連中を粛清しようという想いは誰よりも強い。ゆえに剣の柄を握り締める。改めてこの外道を焼き払わねばならぬという決意である。
 ならば先ずは向こうの戦い方に付き合おう。銃士である以上は接近戦を不得手とするだろうが、それはこちらも似た様なもの。しかし剣と銃では戦術は根本的に異なる。こちらは剣なのだから、最終的には斬り潰すことになる。無論接近することだが、それには向こうに隙が無さ過ぎる。銃の照準を明らかに外していることと言い、相手の戦術に判らない部分がまだ多い。それゆえの炎波。
 撃ち出した炎波は真っ直ぐに銃士へと向かうが、銃士はそれを回避しきれない。……横槍だ。鎖。魔術の鎖は対象に接近すると獲物を捕らえる網のごとく広がり、逃れかけた銃士を捕縛した。黒装束の魔術師……マロニス王国からの援軍だ。

「任せておけ。救援、感謝する」

 一撃必殺を本懐とするこちらからすれば敵の身動きを封じるこの鎖は願ってもないアシスト。共闘に礼を言いながら炎波に続いて接近を試みる。一つ目は銃撃に相殺されてしまったが、二つ目は魔術師の補助のおかげで直撃。充分すぎるほどの隙。続けて一撃叩き込んでやれば勝ちは濃厚だ。だが……向こうもそう簡単なタマではない。背格好はどうであれ、幹部を張るだけの実力は持ち合わせているということだ。

「先にやっていたのは俺、だからな。相手してもらうぞ。売女なら問題あるまい?」

 炎波の直撃を受けても苦にしたふうではない。そのうえ衝撃で網が壊れてしまっている。こちらが接近している今、相手にとっては迎撃の好機。二挺拳銃による掃射。榴弾とは性質を異にする、息もつかせぬ魔術弾の連射。彼女が持っているのは正真正銘の拳銃。だがこの弾幕は突撃銃や機関銃のそれを遥かに凌駕している。なおかつ一発一発の威力は手傷を負わせるのに十二分。
 その程度で怯んではいられない。身の丈より大きく、肩幅よりも広い刀身の剣なら、弾丸から身を守る盾にもできる。無数の銃弾が弾かれ火花を散らそうとも、走る脚は止めない。大剣を盾代わりにして突撃を敢行。乱射魔の銃士まで一気に肉薄し、斬撃の間合いにて一閃。防御から攻撃へ移る際に幾つか被弾したが、そうするだけの価値はある。炎波を受けて無事であっても、分厚い刃の一撃を受けて無事である保証はない。どうあっても剣士なのだ、接近せずしてどうする。拳が入るような至近距離ならばともかく、それ以外においてこの大剣は獲物を逃さない。近付けば刃が叩き潰し、遠ざかれば炎が焼き焦がす。共に戦う仲間がいれば、炎は更に勢いを増すだろう。大振りな攻撃が多い大剣において、隙を埋めてくれる共闘者の存在は何よりも心強いものだ。
 だからこそ魔術師を守ろう。後衛を守るは前衛の役目。前衛が攻めて反撃の隙を与えなければ後衛が倒されることもない。攻撃の隙は後衛が補えば良い。単純だが、とりわけ人数差のある状況であればこれほど効果的なものもない。下卑た欲望を魔術師にぶつけようというのなら、先ずは前衛を落とすことだ。立て続けに相手をするくらい、雌犬であればわけないだろう。
 シャル・ド・ノブリージュは苛烈だ。殊にこのような乱れた相手に関しては。

>>フィラッサ、エスト

2ヶ月前 No.764

力への誘い @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【魔帝城/無限回廊/フロレ・ゾンダーランド】

憎悪に囚われ、激情のままに剣を振るうゲイル。こうなってしまえば、もうこちらのものであった。力押しの勝負になった時点で、身軽さを売りとする彼に勝ち目はない。
完全に思い通りに事が運んでいることに、思わずフロレはほくそ笑んでしまう。あまりにも上手く行き過ぎているために、逆に心配になってきそうなくらいだ。
力に執着した者の末路は悲惨である。彼女自身がそうなったように、彼もまた、魔性の道へと堕ちることだろう。しかしそれは、恥ずべきことではない。
哀れで愚かな人類という枷から解き放たれ、魔族という新たなる枠組みの中で自由を得るのだ。この表情を見れば分かるだろう。何の悩みもなく、思うがままに生きる、自分の表情を。

「いいえ、同じです。あなたはわたしとよく似ています」

あくまで自分は違うのだと主張するゲイルに対し、フロレは妖艶な表情で誘い込むようにして返答を返す。着実に闇への道を歩み始めた彼に、優しく手を差し伸べるかの如く。
怒るゲイルの姿に、騎士団長だった頃、魔帝を倒すための力を追い求め、その重責に押し潰されそうになっていた自分が重なる。ああ、彼も同じだ。彼は救いを欲しているのだ。
先に光に辿り着いた者として、正しき未来を示さなければならない。幸いにも、ゲイルは徐々によい方向へと進んでいる。このまま行けば、あと数分としない内に、救済を受けることとなるだろう。
運命によって敵対せざるを得なくなった二人が、再び同じ目標へ向かって共闘することが出来る。その時が待ち遠しくて仕方がない。ローウェンが必死に呼び掛けているが、もう遅いだろう。

「一撃で倒す必要がないからです。人間相手に、全力を出す必要など、微塵もありません」

あくまで自分は本気ではなく、人間相手であるから手加減をしているのだと、フロレを語る。実際今の彼女にはかなりの余裕があり、ここからペースを上げられる余地があった。
反撃として、中規模の竜巻を起こしたゲイル。ローウェンともに黒い稲妻によって手傷を負わされており、既に万全ではない状態。流れは今、フロレの手の中にある。
彼女は竜巻に軽く左手をかざし……いとも簡単にそれを掻き消してしまった。憎悪の力に頼った攻撃はフロレにとっては造作もないものであり、目を瞑っていても対応出来る程度の代物だ。
しかし、次に迫ってきたローウェンの攻撃に関しては、そのような対処で済ませる訳にはいかない。無数の連撃を魔法障壁によって防ぐフロレだが、最後の一発が命中したところで、音を立てながらそれが崩れ去る。

「さあ、わたしと共に。あなたにとっての光が、すぐそこにあります」

かつての聖剣を地面へと叩き付け、渦巻く闇の奔流を発生させるフロレ。そんな中彼女は、暗黒へと堕ちようとしているゲイルへ近付いていき、左手を差し出す。
もし、彼がこの手を取ってしまえば……二度と光へ戻ってくることは出来ないだろう。若き騎士団長が、フィラッサの術に嵌って魔に魅入られた時と同じように、深淵へと誘われる。
邪魔はさせないとばかりに、ローウェンに向けては赤黒い魔力の塊が止め処なく放たれる。正義とは、力なり。人間は魔族に勝つことは出来ないのだという現実を、フロレはゲイルに押し付ける。

>ゲイル・ベネルド、ローウェン・アルベリウス

2ヶ月前 No.765

ガン=カタ @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【マロニス城/ホール(城前)/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

踊る弾丸は魔人を確かに捉える。それが致命打になることは無いだろうが、しかしそれこそが窮地を脱する布石へと繋がる。
勇敢にも竜巻を駆け抜けてまで畳み掛けるダグラスの一撃。遠距離から放たれる、防御を許さないユーフォリアの大技。急場の拵えでありながら、各々が最善を尽くした結果が其処にあった。

「人間離れしているとは思ったが、まさか本当に人間じゃなかったとはな。と、なると……」

絶大な攻撃を受けて尚魔人は立つ。しかしその武装までは無事では無かった様で、纏う鎧の一部が砕け魔人の本体が露わとなる。それは、おおよそ一般に人型と呼ぶには値しない姿であった。

――あいつは……ただの生物じゃないな。あれは樹木……か?

であれば、と。此処で一つ、ヴァイスハイトが閃きを得る。コートの内側に手を入れ、何かを取り出した。
味方二人と合流して、そちらへ視線をやる。ユーフォリアはほぼ無傷に等しいが、ダグラスは少々手傷を負わされているようだ。それでも彼の闘志は尽きていない――どころか、より激しく燃え盛っているようにも見える。
此処に、ヴァイスハイトは一つの確信を得た。即ち、ダグラスは"信頼出来る"と。寝首を掻くつもりでも、日和見でもなく、本心からユーフォリアの説得を受けて彼女と肩を並べて戦っているのだろう、と。先刻彼が繰り出した目を灼く光と、その裂帛の咆哮、そして身を切ってでも戦う姿が、ヴァイスハイトにそうだと確信させた。
であれば、仲間を頼るのは当然の戦術。正体を表した魔人との距離が離れ、即座に追撃が無いのを確認してからダグラスの傍へ寄り"ある物"を手渡す。

「……ダグラス、これを。隙を見て奴に打ち込んでくれ。俺より、お前の方が奴に近付けるだろう」

彼に渡したのは先程取り出した一つの注射剤(アンプル)。中身は少量で人間すら死に至る毒薬だ。ヴァイスハイトは自らの血液から様々な毒を精製する能力を持つ。精製の過程を経る必要があるために即座に作り出す事は出来ないため、コートの裏に無数に隠し持っている。
ダグラスに手渡したのも、能力によって精製したものだ。そして、その毒薬(アンプル)は生物に対しても有効であるが、何より、ヴァイスハイトの見立て通りならば"彼の魔人に対して覿面の効力を発揮する"。
それはかつての時代『除草剤』として使われていた毒物。少量でも大量の活性酸素を生じ瞬く間に細胞を破壊する性質のそれを、一際高濃度に精製したもの。誤って人間が摂取すれば、100%死に至る猛毒だ。
ヴァイスハイトは、魔人の肉体の大半が樹木のような物質で構成されていると見立てている。彼の推測の通りであれば、生身の部分へそれを打ち込めばたちまちのうちに魔人の体を構成する植物部は枯死するだろう。毒性によって壊死させるのではなく化学反応によって肉体を破壊するそれならば、解毒魔法も意味を成さない筈だ。
ただし同じ毒薬は2つ持ち合わせていない。外せばそれまでだ。故に、この中で最も魔人へ接近出来て、尚且つ直接触れられる可能性が高いだろうと読んだダグラスへそれを託したのだ。

一拍置いて、激昂した魔人が最後の猛攻に出る。放つは窮極の一撃、理解の範疇を超えた膨大な破壊の力。膨張し全てを呑み込む暗黒球。"それ"が展開されている間は近付けないと判断したヴァイスハイトは、至って冷静に素早くそれとの距離を取る。暴風に吸い込まれそうになるのを踏み堪えながら、反撃の好機を待つ。
一転、膨張して行った暗黒球が崩壊し、転じて"外側"への暴威となって襲い掛かる。万全を期して誰より距離を取っていたヴァイスハイトでさえ、嵐の様な力の奔流に煽られて吹き飛びそうになる。内臓を押し潰されるような感覚に襲われながらも、此処が踏ん張り処だと食い付いて堪えてみせる。

「ぐ、ぅ……っ! なんて破壊力だ……! これ程の奴を生かしておく訳には……! ユフィ! ダグラス! 此処で仕留めるぞ!」

憔悴しながらも、それでも後一歩のところで踏み留まり、動きを止めている魔人の姿を確認して最後の攻勢に打って出る。
魔人との距離が離れすぎていると判断したヴァイスハイトは、手に構えた拳銃の一丁を腰へ仕舞い、一丁を両手でしかと構え、正確さを重視して魔人へ二発撃つ。狙いは鎧が砕け露わになった生身。先ほどは鎧に全て弾かれたが、今度は当たればダメージになる。だが狙いは自身の射撃を当てる事ではない。これは"此方に意識を割かせる"為の牽制。

……そう。必殺の一手は既に託されている。あとは、それを彼が魔人へ届けるのみ。射撃を終えたヴァイスハイトは、万が一を考えて即座にマガジンを装填し直し、事の趨勢を見守る。

>>ユーフォリア、ダグラス、エクスデス

2ヶ月前 No.766

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『王都ロンカリア/大宿屋/ジークリンデ・エレミア』

今のジークだからこそこの程度の被害で済んだのである。
現にこの戦闘で巻き込まれて怪我をした人間や死亡した人間は誰1人いない。
もしも幼少時代に幼馴染みが声を掛けてくれなかったら、もしも誰1人ジークに近づいてくれる人が居なかったら今のジークはいない。
もしかしたら数えきれない程の悪行を働くかもしれないし、圧倒的な力を以てして人殺しを平気でする人間になっていたかも知れなかったのだ。
仲間が事情を知った上で受け入れ、支えてくれたから今のジークがいる。だから前を向ける。
どれだけ強大な力を持とうとも力で押さえつけ、弾圧しようなど一切考えていない。

すると相手が友人に手を振るようなしぐさを見せると、相手が姿を消し始めた。
こちらに対し何かやる様子も無いまま完全にその姿を消す。
ジークは軽く身構えていたが、何もしてこなかったため、おそらく撤退したのだろう。

「私(ウチ)も行かへんとな。自分の成すべき事を成すためにーーーーー」

ジークは握りしめた自分の右手を見てそう呟く。
殺すためではなく、守るためにジークは戦う。
例えどれだけ批判されようとも、どれだけ罵声・罵倒を浴びせられようともこれを変えることはない。
ご先祖様が出来なかった事を子孫である自分がやる。仲間と共に。
幼馴染みが掲げる理想に少しでも近づく為にジークは自分の道を進む。

>>(黄衣なる者)

【こちらこそお相手ありがとうございました】

2ヶ月前 No.767

@sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/無限回廊/ゲイル・べネルド】

通らぬ反撃。実らぬ成果。吹き荒れる深緑の暴風は、片手の一振りで容易く無に帰す。相方の手数と破壊力の伴った連撃も、すかさず展開された障壁に阻まれ、遂に怨敵を討つには至らなかった。
若きナイトは憎悪にのまれ、すべては己が思うがまま。高笑いの一つでもしたくなるような状況に、かつての騎士団長は嘲笑も交えてのことであろう笑みを浮かべる。
余裕綽々。素養に加えて、魔族に身をやつしたことで得た無限大の力…仮にまだ戦いが続こうと、一矢報いることすら許さずに勝つことができる。彼女の佇まいがそう語っているようだ。
魔族のソレに近しい外見と、悍ましいまでに歪んだ内面。身も心も変わり果てたフロレの姿は、本来なら目にするのも憚られる禁忌。しかしゲイルは攻撃の手すらとめ、そんな彼女の"威容"をまじまじと眺める。
そしてこちらへ歩み寄り、救いの手を差し伸べるフロレを見てうなずく。同じく彼女の下を目指す足取りは、微塵も迷いを感じさせない。決断など、遥か昔に終えていたかのように。

「これが俺の為すべきことだ」

そうしてフロレの間近まで辿り着くと、半身振り返りローウェンを一瞥。今から為そうとしていることが自分の使命であり、王国騎士団の長としての使命。
あまりに素っ気ない言葉と、まるで彼を見限ったかのような態度。同胞を躊躇なく捨てられる冷酷さは、間違いなく魔族が求める理想そのもの。

「お前の言う通りだ」

フロレを真っすぐ見据え、心底恐れ入ったかのように一言。ローウェンを狙い撃つ無数の魔力塊は、横やりを入れさせないための代物らしい。当然ゲイルには、彼の身を案ずる素振りすらない。
差し出された手に重ねようとしているのか、彼女へ向けて右手を伸ばしていく。この選択に一切の逡巡はない。恐らく今後後悔することもない。
今こそ迷える若者は光によって救われ、正しい道を歩みだす。そして力に満たされた剣を取り、真の敵に振り下ろすだろう。



不意にゲイルの手が大きく開かれる。ここからの彼の動きは、静寂の支配する水面(みなも)が豪雨に侵されるような、激動の二文字が相応しいものだった。
手のひらなどではなく、フロレそのものを目掛けて突き出される手のひら。回廊の下から上から、果ては窓や壁の一部を突き破って流れ込む、冷たく乾いた風。
速く疾く、鋭利さに満ち溢れていながら、どこか荒々しくもある自然の奔流。相方の行く手を阻む魔力塊までもが瞬く間に押し流されてゆく。その心地よい流れに身を任せ、ゲイルは真に"彼らしい"奥義の発動に踏み切る。

「ミストラルフィニッシュ」

ここまでの力任せの剣技とは一変、囁くような宣言。山々を駆け、川を抜け、ますます疾さを増していく風…ミストラル。そして彼はその風に乗り、大空へ翼を広げる隼であるかのよう。
細剣の切っ先はフロレを真正面に捉え、薄刃は右側面から三日月の軌跡を辿る。単純で捻りのない工程だからこそ、どこまでも彼のスタイルに副うのだ。
吹き抜ける一陣の風。人も魔族も超越した、スピードの極致にある神速の剣技…それが『ミストラルフィニッシュ』。憎悪と力への渇望に囚われたままでは決して成し得ない神業。

あの時―――絶対的な力を振りかざし、揺るぐことのない優位を感じて悦に入るフロレを見たとき、ゲイルは漸く気付くことができた。
彼女は"敗れた"のだ。戦い抜いた先に、力を求める自分自身の心という邪悪に敗れ、魔道に身を堕とした。そして今、自分もその魔物に敗れようとしている。
憎い、殺してやりたい、敵を討ち滅ぼす力が欲しい。そう願っていたのは、紛れもない自分自身。それでは同じ過ちを繰り返すだけ。為すべきこととは、彼女の手を取ることではない。それを払いのけ、己が道を征くこと。
フロレを見据えて口にした言葉も、彼女ではなく、自分を引き留めようとしてくれたローウェンに向けてのもの。全くもって彼の言うとおりではないか。

混沌のフィラッサの甘言に屈し、抗い難い誘惑と欲望に身を任せた在りし日のフロレとは全く違う、王国の騎士としてあくまで毅然としたゲイルの選択。

ここに光を名乗る暗闇のいざないは断ち切られた。

>>フロレ・ゾンダーランド、ローウェン・アルべリウス

2ヶ月前 No.768

災いを呼ぶ黒猫 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【魔帝城/魔大将の間/チェル】

わざとらしく欠伸をして、余裕をアピールしながらチェルの攻撃に対処するヴァンレッド。当たり前だ。まだ本気はこれっぽっちも出していないのだから、この程度で落ちられても困る。
本音を言うならばその方が面倒でなくてありがたいのだが、彼の実力はよく知っている。それを願ったところで所詮届くはずもないし、潔く諦めて戦闘に集中した方がマシだ。
とはいえ、ヴェルメイユと比較されたことを少々不快に感じたのは事実だ。あんな駒にもならない、魔族にとって害悪でしかない人間のどこに惚れたのだ、奴は。
やや不満気な表情を浮かべつつも、彼女は自信を狙った攻撃への対処を開始する。万物を焼き焦がす龍の吐息。だが、敵は全力を出さず、意図的に威力を落としているらしい。
侮ってくれるのであれば、それに乗ってやらない手はない。薄い水の膜を張って熱気を奪い取りながら、大剣を引きずりながら突貫してくる龍狩りをちらと見やる。
果たしてどんなものを見せているのかと期待していると……なるほど、思ったよりはいいものを持っているらしい。片手であれを弾き返すとは、なかなかにやるようではないか。
しかし、新魔帝となりし者を捉えるには、足りないものが多すぎる。余裕綽々といった雰囲気を醸し出しながら、軽く宙返りをして炎に転じた水を躱し、再度防御を展開しようとしたその刹那―――

「あら、たまには役に立つことをするのね? 是非ともずっとその調子でお願いしたいわ」

予測の付かない動きをしている魔剣士が、二人の間に割って入り、攻撃を受け止めたのだ。結果としてチェルはこちらに意識を割く必要がなくなり、自由を得ることが出来た。
若干の皮肉を交えつつも、彼女は魔剣士に賞賛の言葉を送ってみせる。これほどの実力の持ち主を常に味方として信頼出来るなら、これ以上のことはないのだが。
時として自分に利益をもたらしてくれる可能性があるからこそ、黒猫は放置という選択をした。十分な時間を確保した彼女は、一旦龍狩りを放置し、ヴァンレッドに照準を合わせる。

「魔族に衰退をもたらす人間に与して、貴方は何を望んでいるのかしら? 到底、理解出来ないわね」

まるで、自分と組んでいれば世界を支配することも出来たのにとでも言いたげな口調で、ヴァンレッドに質問を投げ掛ける。彼が魔帝を選んだ理由が、チェルには分からない。
人間と和平したところで、魔族に未来はないのだ。彼らは同族同士での争いを遙かなる過去から延々と繰り返してきており、このままのさばらせておけば、確実に世界に悪影響をもたらす。
だからこそ、チェルは決めた。ヴェルメイユを魔帝として相応しい人物に育て上げ、地上から人間を完全に排除するのだと。そして奴が使い物にならないと分かった以上、自分から動くしかない。
軽やかな足取りで龍炎公へと接近し、その途中で地面に両手を付く。すると、津波を思わせる大量の水が呼び起こされ、それが敵対者を洗い流していく。暴虐的な水圧をその身一つで受ければ、彼とて無事ではいられないだろう。

>"龍炎公"ヴァンレッド、アーケオルニ・ランドグリーズ、魔剣士

2ヶ月前 No.769

閃剣 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【マロニス城/厨房/レーヴ・カストリス】

「おっと、そんなこと一言も言ってないぜ。どうしても歌いたいってのなら、聞いてやらねえこともないがな?」

華麗な歌……であるかどうかは個人の感想に任せるとするが、それを聞きたいのかと語り掛けてくるガドンに対し、レーヴは軽口を叩きながら返答する。
結局、聞きたいのか聞きたくないのか曖昧な回答となってしまっているが、最初から完全に拒絶した訳ではない辺り、ある程度の優しさはあるのかも知れない。
とはいえ、戦闘中に敵の歌に酔いしれている場合ではないのも事実。そこに気を取られてしまっては痛手を負わされる形になりかねない故に、無視するのが正解といえよう。

「勘弁してくれよな! あんたに惚れられても嬉しいどころか虚しいだけだ!」

生憎、レーヴには男と付き合う趣味はない。それがお望みであれば、どうぞ同じ趣向を持つ人間とでお願いしたいものだ。自分では彼の気持ちに答えることは出来ないから。
まるで掛け合い漫才でもしているかのような状況だが、戦闘は苛烈。光の如き速さで紡がれたレーヴの連撃は、一つとしてガドンを捉えることはなく、的確に対処される。
初撃よりも速度は数段上がっているというのに、それですらも効果を生み出せないというのは予想外だ。奴の動体視力は、人外の領域に達しているとでもいうのか。
自らの最も得意とする戦法が通用しないことに若干の焦りを覚えつつも、彼はあくまで冷静を装う。だが、繰り出した攻撃を今更止められるはずがなく、レーヴの姿は爆炎の中に呑まれ消えた。

「ちっ、どうやらオレの速さじゃあんたには勝てねえらしいな。だが、これならどうだ?」

背後から聞こえるミコルナの声。レーヴはそれが相手に聞こえて作戦を看破されないよう、わざと大きな声を出しながらそう告げ、大きく飛翔しながら宙返りし、一度後退する。
長弓から穿たれた矢が、直線上にある障害物全てを掻き消しながら進む。彼はその後ろにぴたりと付ける形でガドンへと再接近を果たし、間合いを確認しながら追撃を行う。
ここでやるべきことは、手数に頼った攻撃ではない。折角ミコルナが大火力の一撃を放ってくれたのだから、自分はそれが確実に命中するように動き回るとしよう。

「そぉら、ここだ!」

レーヴが現れたのはガドンの背後。双剣を交差させるようにして振り抜き、X字型の衝撃波を飛ばす。いわばこれは囮。敵の気を引くための罠だ。
凄まじい速度で進む衝撃波は当然、矢よりも先にガドンの元へ到達するだろうが、こちらの対処に時間を掛ければ、背中から串刺しになる結末を迎える羽目となる。
前衛が主力で、後衛が援護役という常識を覆す秘策。正攻法での突破が厳しくなった以上、相手を倒すためには、頭をフル回転させて違いを生み出さなくてはならない。これは咄嗟の思い付きであるが、どれほどの成果を収められるだろうか。

>ガドン・バルザック、ミコルナ

2ヶ月前 No.770

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/深淵の間/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 人類は、魔族にとって必ずしも犠牲とならなければならない存在なのか――荒ぶる風をその身に纏い、疾風の如き勢いで戦場を駆け抜けながらも、魔帝へと問い掛けるその言葉。対する答えは、質問に対する質問。明言を避けられる形にはなったが、仄めかされる意志から、彼女が争いを望んでいない事は確かに窺えた。
 魔族は、人類にとって必ずしも犠牲とならなければならない存在なのか――其の答えは当然、否だ。人類と魔族、その双方の和睦が望めるのであれば、払わねばならない犠牲など存在しない。払わねばならない時が来るとすれば、それは何方か一方が滅び去る未来を宿命付けられた時だろう。
 だが、そんな未来は厭だと勇者は叫ぶ。折角手に入れた大切な宝物を、大切な友人を手放さねばならない未来など、何の価値があると言うのか。だから、失いたくない、ただその一心で叫ぶ。

「犠牲なんか必要ない! 人と魔族が解り合える可能性がある限り、どちらかが滅び去る必要なんか無い筈だ!」

 音速を越えた疾さなれど、明確な殺意が欠けた三連閃は須らく敵を捉えない。剣撃を純粋な魔力の衝突によって相殺され、一連の攻撃は徒労に終わる。反撃に備えて即座に後方へと退き、剣を構える事、数刻――応酬として襲い来る、漆黒の暴風。詠唱という行程を介さずに発動した魔法でありながら、手加減と言う物をしていながら、その威力は文字通りの桁違い。今の勇者では凌ぎ切るには心許無い、紛れも無き脅威。
 幸い、此の場には二人の味方が居る。出現する氷柱と、蛇にも似た鎖の数々。各々が勇者を守護する防壁として黒風を受け止め、猛威を極限の無力へと陥らせる。一時の安全、反撃の機会を得た勇者の、次なる行動の寸前。

「なんで最初から理解されないと決めつける。どうして、道を自分から閉ざしに行くんだ……!」

 理解されないとして、何を思っているかを話そうともしない魔帝に対して言葉で訴えかける。望んでいる物がありながら、何故その実現を諦める様な選択をするのか。一縷でも可能性と言う物があるのならば、それに賭けるべきではないのか、と。
 大地を蹴ると共に、勇者は前方へと激しく猛進を開始する。強烈な衝撃波を伴う程の速さを以て、魔帝へと肉薄すると共に繰り出すは、全身の膂力と風の加護を併せて放つ神速の刺突。急所をわざと外しているのは先程と同じく。然し、威力と速度は先程以上であり、真面に喰らえばそれなりの手傷を負う事にはなる。
 命中の可否を確認する間も無く、風の轟音と共に天高く後方へと跳躍すると、刀身が宿す光輝の碧を更に昂らせてでの、空を切り裂く斬撃。同時に放たれるは、黒風の意趣返しと言わんばかりの激しき光の暴風。白く輝く風刃の嵐が、魔帝を呑み込まんとして放たれる。

>魔帝ヴェルメイユ 氷魔像ギラード ハザマ

2ヶ月前 No.771

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

 岩盤ですら容易く打ち砕く深海の水砲。超々高速の疾駆で退ける龍の人外染みた所業に対し、強くはありながらも人の域を逸脱してはいない龍狩りが魅せるその姿は。実直な在り方を具現するかの如し、火焔を纏いての猪突猛進。何人たりとも止める事能わずと云わんばかりに力強く駆け抜け、被弾寸前の所で剛断の刃を揮い、迫る水球を文字通り"撃ち返した"。

「フッ……魅せてくれる。武人としての心がより一層、お前に惚れてしまいそうになるぞ……なあ、龍狩り」

 天に翳した手を合図に紅焔を招来しながらも、傍らで見届けたその光景を前に、龍炎公は思わず口角を上げて笑ってしまう。兵舎で相見えた時よりも見映える威勢の良さ。不屈の闘志を燃え上がらせ、窮地に立ち向かうその様は、端的に言ってしまえば"美しい"。死と隣り合せの彼女にとっては傍迷惑も良い所だろうが、更なる試練と言う物を与えてしまいたくなる。限界を越えた先に在るかもしれない物を、見たいと願ってしまう。
 故に、彼女へと襲い掛かる魔剣士の剣戟を代わりに防ごうとはしない。"味見"を邪魔する意義が無い、という点もあるにはあるが、理由としては此方が一番強い。一の武人としての性を徐々に露呈して行く彼は今、味方に対する配慮と言う物が欠けつつあった。引き戻させる術が無い訳ではないが、それは龍狩りにとって屈辱的に思うかもしれぬ選択であり。引き戻せる可能性は、天から見て望み薄である。

「聞かねば解らんのか? ……頭の程度も、我が君と比べるのが失礼極まり無い位に悪いようだな。"自称"、新魔帝」

 相応の手加減を加えた上で放たれた紅焔を水膜で掻き消し、予期せぬ援護によって十分な時間を稼げたであろう黒猫。照準を自身に合わせつつ、質問を投げかけて来た彼女に対し、嘲りの表情、言葉を以て龍炎公は応じる。彼がこうした態度を見せるのは、その生涯の中でも、たった一人だけ。黒猫だけに見せる特別な態度と言う、実に不名誉な特権を彼は与えているのだ。

「冥土の土産、"情け"として教えてやろう。俺が求めるのは、人との共存の上で成り立つ魔族の繁栄、ただそれだけだ。
 各々の種族の持つ性ゆえ、難題ではあるだろうが……断じて不可能に非ず。人と魔族、その両方を愛せる彼女ならば、夢物語で終わらせはしないだろう」

 明らかに見下しているのは一目瞭然。間違いなく、黒猫は自身の態度を大層不愉快に感じるだろうと期待を寄せながらも、龍炎公は己の描く理想を語る。人類と魔族、双方の未来を魔帝に委ねんとする理由は至極単純。彼女は人と魔族、その両方を愛した上で治めるだけの器を持ち合わせている、至上の人材であったからだ。
 もう少し欲を隠し、魔族を治める事だけに限れば――これは身内贔屓と言われても仕方の無い事だが。導き手としての才がやや欠ける点が致命的ではあるが、レプティラも選択の内にはあった。種族に隔てを作らず接する彼女は、その器を持ち合わせているに値するだろうと、彼は評価しているのだ。
 第三の選択として、自らが王となる道も在るかもしれないが――残念な事に、既に先約された"宿命"がある。啓示の時はまだ来ていないが、いずれは死に殉ずるかもしれぬ身である以上、その座に就く事は出来ないだろう。

「欠伸どころか、このまま寝てしまいそうだ……そろそろ本気で潰しに来ないと、死ぬぞ?」

 距離を詰めて来た黒猫が引き起こすは、荒れ狂う津波。暴虐的な水圧で押し流す魂胆なのだろうが、龍炎公は極めて余裕綽々とした表情で、堂々とした足取りで津波の方へと歩いて行き――縦一文字に剣を揮った刹那、単純な剣風だけで津波が二つに割れる。強引に開かせた路を一気呵成に駆け抜け、攻撃を退けた彼が次に取る行動。
 不可視の速度での肉薄と共に繰り出す、無音不可視の剣筋の数々。一秒を八に分割しても尚、一つの内に二つの斬撃が収まるか否かの疾さを以て。首を刎ねる三連薙、心臓を抉り貫く二連突、四肢を分つ四連斬、十字に断ち切る二連閃、計十一手の剣戟で黒猫を殺しに掛かる。先程よりも、手加減は大幅に減らしたとはいえ。本気には、まだまだ程遠い。

>"災いを呼ぶ黒猫"チェル アーケオルニ 魔剣士

2ヶ月前 No.772

削除済み @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【記事主より削除】 ( 2018/02/18 17:48 )

2ヶ月前 No.773

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/無限廊下/"常山蛇勢"レプティラ】


死すれば無意味、死すれば何かを残す。どちらが正しいか、正常な判断を持った状態の彼女であってもそれに答えを出すのは難しいだろう。どう生きたか、どう死んだか、どちらにも価値はあるし意味はある。
サシャの言葉は幼い、理屈で考えてしまえばそれこそ通りはしない。だがその考えは不必要かと問われればそれは否、死すれば喋りはしない、死した存在の意志など生き残った存在の解釈次第に過ぎない。
根拠などなくても良い、ただ戦わない理由を作る為だけでもいい。死んでいった存在が何を望んだかなど誰にも分からない、それを何を残したかと見るのもまた生き残った存在。だから、こじ付けであっても、全て違うとも言い切れはしない。
では今何故彼女は命を投げ打ってまでニアを討とうとしているのか、仮にここで命尽きたとすれば多くの人間は魔族の平穏を求めてその身を捧げたと語り継ぐだろう。そう、敵であるニアへの決別の為だとは誰にも分かりはしない。
それは相対するニアも同じこと、敵だと断じた上で解せないと語る。平穏を望んだと言った、そこで途切れた言葉はニアにとって必要ないからだろう。その真意を測るには情報も足りなければ、彼女の精神も削れ過ぎていた。
敵だと断じられ僅かに痛みを放つ感情、それすら何処か遠いほどその魂魄は疲弊していた。されど、僅かに込められた問いに答えようとする。既に動くだけの屍に近かろうと、まだ死に切ってはいない。

「平、穏……?ああ、もうニアとは、いや、……怖くは、ない。」

僅かに漏れる言葉は会話の体を為さない、彼女が問いから感じ取ったものがただ口から漏れただけ。平穏を望み、されどニアと歩む道は既に無く、討つためならばあらゆるものを捨て去ろうと。
仮に、ニアが不要と断じた言葉を形にし、彼女が僅かにでも思考を残していたならばこう答えるだろう。ニアの選んだ道が望みとは掛け離れたものだと断じたから、私はその選択を潰すために命を差し出すのだと。
夢を望むこと、それは他者の夢を踏み躙ることもある。夢に気付くことが遅すぎた彼女に、それを理解するには時間が足りず、そして譲歩できるほどニアの決意は柔らかくはない。だったら、命を使うべき場はこの場しかないとそう決めたのだろう。
人が望んだものを潰すのだから、己もその望みが見えなくとも構わないと。決断するまでは悩み抜いた、けれど決断すれば後は感傷が少し心を締め付けるだけ。決めてしまえば、後は進むだけなのだから。
その決意こそが、戦意以外を大よそ削られてしまった彼女を突き動かす原動力となろう。心残りは、ある。けれどもそれも削れてしまったに違いない、流れた涙の意味は彼女にすら分からない。
白き穢れの軍勢、ニアもレオンハルトも彼女も前に出たサシャも生きる全てへ襲い掛かるそれ。ニアのみが受けぬようにと風で、剣で群れる白を吹き飛ばす。合わさるレオンハルトの攻撃、サシャの目眩まし、そして空を切る、されど不意を突いた尾の感触。
その三要素が合わさり、この場で初めてニアに傷を与えた。掠めた炎剣、されどその傷は決して浅くはない。だがそれでもニアは痛みすらも不要としたかのように、その動きは鈍ることはない。
動きの中、ニアは語る。無意味な生、それを嫌うならば身を滅ぼさぬ程度の欲望を。軌跡の残らぬ無価値さ、ならば争わねばいい。改善される見込みのないそれ、ニアが人間を滅ぼす決断の理由でもあろう。
対する、レオンハルトは語る。無意味な生、それを嫌うから欲深くなるのだと。軌跡の残らぬ無価値さ、それを忌むからこそ争いの中で残そうとする。理想を追い求め、故に繰り返す。変えるならば、皆がニアの様にならねばならないと。
彼女が語るならば、無意味な生は今を生きる者が理由を見つけ、無価値な軌跡は残らねば学ばないとそう答えるだろう。生の意味、そんなものは終わるまで分からない、軌跡も振り返らなければ分からないと、彼女は言う。

「……そう、ですか。なら、私は……」

僅かに見えたのは白き穢れを振り払いながらレオンハルトへ斬撃の嵐を叩きこむニア、迫る鎌鼬、そして岩壁。その意図を彼女は理解した、僅かに残った精神が導き出した。レオンハルトが何故守ったか、ならするべきことは何か。
何かが水音を立てて倒れる、その意味も見ずとも理解できよう。故に、岩壁か崩れるとともに彼女はニアへとその身体を進める。人の足を維持できるほど無事ではない、故に蛇本来の動きによるもの。決して人の足程ではないその速度、だからこそ間に合わなかった。
影から現れ出でる、この場には居なかった、そして彼女自身も予想だにしなかった存在。無音の二つ名を持つ、ブロヴァンスという個体名の巨大な黒い昆虫の様な魔族。何故予想しなかったか、それはニアの驚愕と同一の物。この魔族は、人間と種族単位で争い続けて来た謂わば人間の天敵。
そう、ニアの側に着くことはあれど此方側へ着くことはそれこそ予想外。人間との共闘など考えられぬ種族、それがニアへと決死の突撃を行い、散った。理解できぬと、そういった表情のままニアは影の魔物を塵へと変えた。
驕りと評したニア、ここで漸く欠片が揃った。ニアが何を思ったのか、彼女を何故分からないと評したのか、正常な思考こそあれば彼女はそこまで察せていただろう。だが彼女は、塵と消える前に残された言葉を唯一理解できるが故にそれを重視した。
告げられたのは魔帝とサシャの無実、黒猫によるもの。そして魔帝は人間と共存し、魔族の全てを統べると決断したと。だからこそ、ブロヴァンスは、彼らは、命を賭してまで伝え、僅かな傷でも、隙でも残すために選んだ。
命の繋ぎ方、ニアが理解できぬとしたそれ。砂の城の如き、削られた精神に再び光が灯される。だが傷付けられた魂魄は再生などしない、であれば彼女が光を取り戻したのは何故か。残った精神を奮わせる、確かな遺志を受け取ったからだ。

「……確かに、受け取りました。」

驚愕で止めた歩みを再び進ませる、利き手ではない方を捨てたニアへと追撃。僅かに出来た隙はニアの手腕により無いも同然、だが確かに傷は与えられている。確かに繋がっている、ならばまた繋ぐまで。
彼女は受け取った遺志、それをこの場で高らかに叫ぶことはしない。ニアに伝えようとも、響かない。サシャとレオンハルトは、きっと分かっている。故に伝えるべきは全魔族、陣を敷いていた位置にいる未だ状況の読めていない大蛇二匹へと伝令を頼む。
一瞬、視線を交差させるだけで良い。それだけで理解してくれる、本来ならば立場としても彼女が伝えるべきだろうがやらなければならない事がある。言葉を話せる蛇族へ伝え、そこから魔族全体へ伝わればいい。魔帝の真意を、あらゆる魔族に伝える為に。
大蛇二匹が壁や天井を這い、この場から離れていく。蛆を湧かせてしまったことは謝らなければと、場違いの感想を抱きつつ彼女はニアへと突き進む。雄叫びと共に更なる炎熱を伴い立ち上がったレオンハルト、ブロヴァンスの言葉が伝わらなくとも確かに残せるものはあった。
そう、彼女はこれで全てを投げ打てると決意した。魔帝の真意、それが人間との共存と魔族全てを統べるならばきっと平穏は得られる。全てと言い切った、ならば大丈夫だ。もし、道を違えそうでもヴァンレッドもいる、ならば心配はない。
命を繋ぐ、想いでも些細な事でも繋げることはできる。ブロヴァンスが命を賭してまで、それを伝えたように。だから彼女は自身の命を賭して、ニアを討つ。魔帝とヴァンレッドが繋いで、望んだ以上の平穏を作り上げてくれるだろうと託す。
心残りは一つだけ、それもニアを討てば消える。だから何も心配はない、命尽きても道は続く。彼女の想いは魔帝へ、ヴァンレッドへ繋がっていく。きっと、魔帝とヴァンレッドが為せずともその遺志を継いだ存在がまた繋げていく。
彼女が望むのは魔族の平穏、そこに自分の居場所はなくても良い。ただ、魔族が心安らに過ごせるようになって欲しいとそう願ったから。身に合わぬ願いだと彼女は微笑む、だけど繋いでいけばいつか叶うとそう信じる。

「ならば、私も繋ぎましょう。願いも、想いも、繋がります。だから私は、命尽きるまで進むだけです。」

ニア以上の速度で吶喊するレオンハルト、それに続く様にニアへ迫る。右目で捉え、常に視界全てを白く染め上げ続ける。そして人間の擬態を完全に解き、大蛇の姿へと戻す。サシャを守るにも、ニアの阻害をするにも身体の長さが足りない。
さらに尾による面での制圧、その隙を突いた必殺の噛みつき。双方を行うには擬態を維持したままでは足りない、移動する速度こそ落ちるもののそれを補って余りある範囲を得られる。
レオンハルトの十六連撃、ニアから回避の手段を消すために薙ぐは尾。叩き落す様に振るわれるそれは跳躍を阻止し、続けて横薙ぎにされるそれは単純な横移動を妨害する。十六連撃への真面な対処を強いる為のそれ。
さらに先に白く染め上げた場からはまたも生者へと突撃する黒き軍勢、ニアが対処をする以上廊下を埋め尽くす量のそれは脅威となる。レオンハルトもサシャも彼女自身も変わらず影響を受けるが、それ以上にニアへの妨害が有効だろう。
そして最後に、ニアがあらゆる回避をすると見越した上での場所への噛みつき。これまでは回避と迎撃に重点を置いていたが、負傷の影響で少し回避に寄ると見定めた上で進路に置く様に放たれる牙。
喰らい付けば容易く死へと墜とす毒を注入する、牙に触れずとも口で捕らえれば時間稼ぎにはなろう。腹の内から切り裂かれようとも構わない、腹から出てくることが分かればレオンハルトが追撃をかける。場合によっては、彼女ごと貫いても良い。
白く蠢く視界に映る限り湧く蛆、廊下を埋め尽くすほどの軍勢の蠅、レオンハルトの十六連撃を防がせるために回避を阻む尾の一撃、そしてそれを突破することを見越して喰らい付く猛毒の牙。
彼女が持てる限りの方法を全て用いた妨害と必殺の一撃、噛みつきは弱点を晒すものでもあるがその弱点を狙うならば他二人が隙を突き、彼女が斃れようともニアを討つだろう。そう、続いていくことが分かった以上、ここで死せども繋がっていくのだ。
決意は定まった、命の使い方も決まった、繋がっていくことも分かった、ならば後はニアを討つだけの事。それが彼女が平穏を望んだ故の必然、自覚した時点でこうなっていたのだろう。
ブロヴァンスが命を賭して繋げたそれを無駄にしない為に、願う平穏の為に討たねばならないニアの為に、あらゆるものを背負い続けよう。死のうとも背負わねばならない、何れ誰かが繋ぐとしても、これだけは背負い続けたいと。

時に、彼女の心残りとは。
もしこうであったら、と言った仮定の話でしかない。この期に及んでそんなことを、と思うだろう。
彼女は戦士ではない、割り切れるものを割り切れない。彼女は王ではない、捨てるべきものを捨てられない。
誰かが捨てられるものを捨てられず、背負えるならば背負ってしまう。背負えなくとも、どうにかしようとする。
だからこそ、決断してまでも背負えないかと思ってしまう、捨てなくてもと思ってしまう。
どれだけ有り得ないと分かっていても、どうにかしてと考えてしまう。
だが、討てばそこで終わり。だから、心残りはないと。そう、思う事にした。

>>ニア サシャ レオンハルト・ローゼンクランツ (ブロヴァンス)

2ヶ月前 No.774

ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_t5r

【 マロニス城/厨房/ガドン・バルザック 】

 光魔術の身体作用、――五感の鋭敏化は魔術剣士という戦法<スタイル>を取るガドン・バルザックの定石であった。
 剣技で上回れないというのならばこちらで上回ればよい。
 処理能力と情報収集能力を格段に引き上げる光のマナの活用法。
 回復を行えるのならば、内部の活性化にも十分に役立てることが出来るのだから。

 そして、――ガドン・バルザックの頭の回転はそこらの兵士よりもずば抜けて高い(と自負している)。
 魑魅魍魎(自身含め)渦巻く貴族社会を生き抜くということは、それだけで生きるための術を身につけるというこt。
 ガドンは知っている。相手を上回るには、相手の戦術の最も脆い部分を常に突き続ければいい。

(光の速さと手数、――だとしても単調ならば何も意味はないわネ)

 扇状に広がる紅蓮の壁がその証拠<こたえ>だ。
 絶妙な連携を取ってこちらに攻撃を仕掛けてくるあの二人組に対し、範囲攻撃による一掃を仕掛けるのは効果が高い。
 なぜなら一方がし損じればもう一方の対処に動かなければならないというジレンマが、行動の幅を狭めてゆくのだから。

「お褒めにあずかり光栄かしらねぇ――イケメンってのはねぇ!!! 三つのものが必要なのよ!!
 頭脳が凄い!!
 顔がいい!!
 性格もいい!
 それ即ちアタシのこと!」

 追うのはレーヴでいい。
 未熟だが突飛な部分が強いミコルナは何をするか分からない以上、あちらにかまけていればレーヴに一撃を入れられる。
 飛び退いた彼がこちらの背を取り、剣先を交差させ振るう。放たれる衝撃波は、攻勢をかけるには余りにも弱い。
 浮遊機雷の一部を手繰り、ぶつけ相殺するも――レーヴの視線がこちらに向いていないことに気づく。

「チ、ィ――ッ!?」

 乙女力という言葉をかなぐり捨てた野太い焦り。
 背後から迫る魔力の大矢が広がる灼熱の壁を打ち破り、迫り来るその頃にはもう回避出来る余地などありはしない。

「《集束》ゥッ!!」

 浮かぶ浮遊機雷<しゃくねつ>をより集める。
 即興の防御壁だ、――だが間に合うはずもない。
 威力はわずかに押し殺せたものの、突破されたそれが右肩を刺し貫いていく。
 いや、それは貫いたという言葉すら生ぬるい。えぐり抜いた、肩の一部を消し飛ばしていったといった方がいいだろうか。

「――やってくれたわねガキ共ォ!!!」

 押されている。
 まともな連携が初めて取られたこと、――そしてポテンシャルを読み違えていたこと。
 この二点が不屈の乙女野郎に一撃を入れていった。……だがその事実は悲劇でしかない。
 なぜなら、少女性の奥にたたき込んで会った野郎性を引き出すということにほかならないのだから。

 即興回復魔術、《愛する乙女》――詠唱破棄。えぐれた右肩に回復の光をたたき込み、同時に脚力強化。
 飛び退いた彼は視界にミコルナ、レーヴの両者を入れる。
 先ほどまでと同じだ。距離を取る戦い方なのだから、相手の武器が届かない場所にいるのは当たり前の理屈であろう。

「オラ行くわよガキ共!!!」

 大声を張り上げる。嫌でも注意と顔をこちらに向けさせるための策。
 しかし、――彼女はそのような生ぬるい真似で済ませない。
 練り上げる魔力<マナ>が輝きを見せる。
 両者の目を、視界に入れた瞬間、――詠唱<ランゲージ>が起動する。

 >>おお、この愛らしき眼。愛らしき顔。美しき足。ふくよかな胸。
 >>男を引きつけて止まぬそれを持つ美貌のアフロディテ。貝より生まれしお前の体、全ての男が求めるだろう!
 >>故に私は、恐れ多くもこの美神に跪かぬ汝らに告げよう!


   Das Leuchten Gottes
「《我を視ろ、ただ只管に》ィッ!!」


 宣告と同時に取られた珍妙なポーズ。
 筋肉を強調するかのような謎の構えは嫌でも視界に入れることになるだろう。
 だがそうしたならば罠だ。ガドン・バルザックという超越生命体の仕掛けた罠に嵌まったということになる。

   、   、   、 ・・・・・・・・・・・・・
 ――ガドン・バルザックを視界の中心から外せなくなる。

 ただそれだけだというのに、この存在感はなんであるのか。
 足もとを見ることすら許されない。
 空を見上げることすら許されない。

「さぁ、串刺しの始まりよォ!?」

 詠唱破棄、――闇魔術《乙女の粘着》。
 ガドン・バルザックを中心に床に這うように展開された漆黒の魔力は当然、レーヴとミコルナの足下に広がる。
 だが問題はここから。

 ――無数に飛び出す闇の杭。不規則<ランダム>に展開された漆黒のソレが彼らへ向けて襲いかかる。
   かの串刺公の処刑がごとく。杭は血を欲している。

 定石を使わせない。
 それは、「足下さえ見ていれば回避出来る」というもの。
 だが、嵌まっていれば――ガドン以外を見ることは許されないという制約に縛られる。

>レーヴ ミコルナ

2ヶ月前 No.775

“ナルカミ” @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

【ディンカ/海底洞窟入口/アンリエット・エクレール】

 人虎の得物は剣。外敵を切り払う近接武器ゆえに、そこから導き出されるのは一瞬の攻防が勝負の明暗を分ける接近戦だ。己の体を武器とする稲妻からすれば、少なくとも遠距離攻撃を中心とするよりはやりやすい相手ではある。だが、彼女がやらなければならないことは先の戦いと殆ど変わらない。自分の間合いまで距離を詰めることだ。拳と剣とでは攻撃のリーチが全く違う。同じ接近戦の武器とはいえ、拳が得意とするのは剣よりも更に近い間合い、至近距離。遠距離に対応出来ないわけではないが、決定打とはなりえず、結局はこの戦いでも稲妻は戦場を走り抜けることになる。しかし彼女自身はそれを歓迎してさえいる。
 攻撃を当てるためにあれこれ考えなければいけないのは何を武器にしようと同じことだが、拳は他の何よりも単純だ。相手の攻撃を避けて近寄っていくだけでチャンスができる。場合によっては相手の方から近付いてきてくれる。注力するのが回避と接近だけならば、これよりやりやすい武器なんか無い。そうだ、避けて殴る、詰めて殴る。剣相手なら猶更やりやすい。

「ナメてなんかいねェさ」

 拳の弾かれる感触。剣を盾にして受け流した。タイミングは間違っていないはず。敵もまた要所を任されるだけの手練れということだ。あまつさえこっちが向こうを侮っているなどと吐いてくる。それぐらい取るに足らない攻撃だということだ。敵は遥か大きい。こっちをナメるくらいの余裕はある。実力もその口振りに恥じない。反撃に備え一度退き、相手の動きを見る。
 手加減なんかしていたら、お互い泣きを見るだけだ。勝負とは常に全力でのぶつかり合いなのだから。人虎が剣に手を翳すと、刀身に炎が宿る。魔術の炎。そうだ、ウチの上司もあんな剣を振るっている。けれどあの剣は、空を食って揺らめく炎は、それよりもずっと禍々しい。

「テメェがどんなカッコしてようが、どんだけ強かろうが関係ねェ」

 人虎の振りで空に火球が迸る。更に地面からは複数の使い魔。片方の対処に気を取られていては、もう片方に隙を突かれる。厄介な、それでいて嫌いなタイプの魔術だ。使い魔が雇い主に似るのかどうかは知らないが、少なくともコイツはまともなタチじゃない。けれど、相手の性質なんかこっちの知るところじゃない。格好も力量も関係ない。目の前にいるのは自分の道を塞ぐ敵。認識なんかそれだけでいい。それ以上考えると頭がこんがらがる。そして、道を塞ぐヤツへの対処はただ一つ。

「オレはただ、道を塞ぐテメェをブン殴るだけだッ!」

 青い火花が弾けたその瞬間、アンリエットは全てを置き去りにする。一息にて彼我の距離を拳の間合いまで詰める、縮地にも近い跳躍。人虎の術によって召喚されたインプがそれに追いつける道理はない。彼女へ向けて放たれた炎も、真正面から突っ切る。当然無傷とはいかないが、拳で相手の隙を突くならこれぐらいしなくてはやっていられない。
 炎が全身を焼き、高熱が全身を蝕む。歯を食いしばりながら、それでも拳の一撃を打ち込む。守りにも剣を使うなら、そもそも反撃を許さない。拳を打ったそばから更に次の拳を。また次の拳を。また次、次。一発でも充分な威力の拳を、息もつかせぬ連打(ラッシュ)でぶち込む。
 アンリエットは手加減を知らない。訓練であれ実戦であれ戦い(ケンカ)とあらば常に全力だ。そうでなければ殴った自分にも殴られた相手にも価値がない。誰かを殴れば、殴った拳にも痛みが返ってくる。その痛みに対する覚悟が無ければ殴ることなんて出来ない。だからどんな戦いでも全身全霊で臨むのだ。

>>魔獣ヴァグネル


【お互い無理のないペースでやり取りして下されば良いのでお気になさらずー】

2ヶ月前 No.776

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/魔将軍の間/エスト(残魔具4394個 残魂数9)】


響く嬌声、嫌悪の声こそ挙げるもののその所作は更なるそういったことを求めるようで、絡めとられ男性の炎の魔術によって吹き飛ばされた。視線が此方を向いていた以上、問題なく魔術の効果を受けている様だ。
だが、彼女はこめかみに手を当てる。隙を晒すわけではないが、何ともやりづらい。見た目からして少女はそういったことに慣れているようだが、それを戦闘中にまで持ち込んでくるとは少しばかり予想外であった。頭痛を感じるのも無理はない。
しかし実力が確かなのは間違いない、現に炎の魔術で吹き飛ばされようとも何てことはなく立ち上がる。強度を上げないと逃げられるとは言うが、前衛の獲物が大きい以上無駄に硬度を上げれば攻撃の妨げになるからだが、分かった上で言っていることは容易に想像がつく。
そして羽衣を持ち上げて誘う様に気があるのかまで問うてくる、やりづらいことこの上ない。可愛いなど楽しませるなど言われても困る、可愛いという歳ではなく、戦いを楽しめるほど常識が飛んでもいない。敵である以上打倒すが、どうも歩調を乱される。

「……うーん?こういう手合いは苦手だな、少なくとも私にそういった趣味はない。」

頁を捲る、二挺の拳銃から放たれる大量の弾丸を防ぎ、少女への妨害も為せるものを選択する。頁をなぞる、魔力を受け頁が光ればその変化は瞬時に現れる。彼女を中心として、気温が僅かに下がったと感じ取れる。
部屋の床が頁を開く彼女を中心に凍り始める、凍った床から出現するは氷の壁。分厚く、夥しい冷気を放つそれは迫る数多の銃弾を受け止める。無論表面も削れ、壁を抉らんと弾丸が飛来し続けるが生成される氷の方が多い。
この魔術は分類とすれば水を操作する魔術に相当する、極限まで冷やされた水を地へと溢れ出させ凍結した場を作り出す。その凍結した場からならば魔力の許す限り水を操作し、氷の壁や氷の槍などを生成できる。
使用する魔力量に比べ、効果が出やすいが凍結した場以外からは水を操作できない事が欠点。槍を作ったとしても飛来させれば水へと戻ってしまう、故に子の魔術は凍結した場をどれだけ広げるかが使い勝手に影響する。
さて、この魔術を選んだ目的は防御と妨害の双方を容易く素早くできるからだ。防御は今しがた完了した、では妨害はどうするのか。それは凍結した場から水を噴射し、対象に触れた瞬間に凍結させる、謂わば氷の拘束。
前衛を阻害せず、相手の動きを封じるのであれば前衛の攻撃で溶ける氷が良いと考えた。言い換えれば反射速度を以てすれば溶けた瞬間に抜け出せはするのだが、あくまで妨害、回避を一手遅らせられるだけでも十分だろう。

「うーん?さて、あまり乗り気にさせたくはないが、また動きは封じさせてもらう。」

地を走る冷気、彼女から二方向に別れ、少女へ向かう男性を迂回するようにし床を凍らせていく。少女を挟み込むような位置にまで移動すれば、床から極限まで冷やされた水が噴射される。
水の発射速度は先の銃弾程とまではいかずとも、避けようと準備をしていなければ完全回避は難しい程度の速度。液体という性質上飛散して、予想以上の範囲に広がることも相まって命中性は非常に高い。
そして触れた瞬間に凍り付き、触れた場所にもよるが宙に磔にされるように拘束されるだろう。仮に避けられたとしても、水飛沫が直撃した個所が凍り付けば動きの妨害にはなろう。
加えて、炎の魔術を扱っている男性へ飛んでも問題がない。当たる前に蒸発するか、当たったとしても唯の水になる。そこを利用されてしまうと無効化されるが、言い換えれば男性の大剣の得意範囲へ踏み込むことになる。
援護という目的ならば最良に近い魔術、加え前衛の実力も高い。守るような動きも取っている為彼女自身も動きやすい、咄嗟とは言えここまでしてくれた相手には報いなければならないだろう。
未だ多くの魔術の一端でしかない、対処しようとその魔術の数は膨大だ。その全てに対処できるものならば、してみるが良い。

>>シャル・ド・ノブリージュ フィラッサ

2ヶ月前 No.777

"混沌" @kyouzin ★XC6leNwSoH_7ig

【魔王城/魔将軍の間/フィラッサ】

自分の言動に対する相手の言葉が聞こえてくる、一つは怒り、あるいは軽蔑。 もう一つは困惑。
どうにもこの二人は自分の容姿や言動にはあまり喜んでくれないようで、何時も、特に男性を相手にする時に使っている冷静さを乱す戦術はあまり使えないかぁ、とフィラッサは、わざわざ相手に聞こえるように大きなため息を付いて、続けてそのまま内容を口に出した。

それより確認できたのは、相手の口ぶりからして、どうやらコンビと言う訳でもなく、むしろあまり関わりが無い二人のように見える、わざわざ何時も共に戦っている相手に、"救援感謝する"は無いだろう。 と言う事は、相手の二人もお互いの能力を熟知できていない訳で、連係というのも、即興の物が精々だろう。

――なら崩しやすくて助かるね。
にたぁとフィラッサが笑うと同時に、相手は次の行動へと移る。 男の子の方は暴言のオマケ付きで。
さて、相手はこちらの弾丸を、剣を盾代わりにして、そのまま強行突撃してきた。 また、魔術師の方は、氷の壁を展開して連射される銃弾を防いでいるが、こちらは重要ではないと今は無視した。
しかし、この時フィラッサはシャルの剣の強度を褒めるでもなく、その勇気に驚くでもなく、ただ、冷めた表情をしていた、なぜならば。

「あーあー……防御任せの突撃かぁ、そういうの無駄だって人間たちは学習しないなあ、魔族もかな。 もうちょっといたぶりたかったけど、確実な殺し手がある状況で殺さないってのもね。 じゃ、死のっか、アルティ――あっと」

何も、こういった戦術を使ってくる人間の相手はシャルが初めてではない、一発一発は強力だが、それでもフィラッサの乱射される弾丸は、盾や剣で防ぎつつ突撃する事が可能なレベルだ、だから、多くの者は、特に防御に秀でた奴はこういう戦術を使ってくる。
だが、そういう人間や魔族をフィラッサは何万回と見てきて、その全てを殺している。

二丁の拳銃のうち、片方が下げられ、確かに弾種変更を示す「カチリ」と言う音が周囲に響く、そしてその銃口がまた持ち上がる。 彼の剣がフィラッサに振るわれるよりも数秒早く、フィラッサが拳銃の銃口が彼のほうを向き、トリガーが引かれようとしている。
しかし、そのとき、自分の左右から水が発射され、それが自分の手足に付着したかと思うと、一気に凍り付いて、フィラッサは空中で拘束された。

「あっ、ん……っ、やっぱりそういう趣味ある? 二回もなんて。 うわっ!!」

妙に艶っぽい声を出して、フィラッサはとりあえず、手足の氷をどうにかしようと力をこめるが、彼女のまだ凍っていない細い身体が跳ねるだけで意味を成さない。
なら魔法で、と思うが、その頃には男のほうがとっくに剣の射程範囲に入っている訳で。

咄嗟にフィラッサは前方に魔法の壁を生成して、相手の剣と自分の身体の相手に割り込ませる。
だが、相手が力を込めれば、その壁をフィラッサに叩き付ける勢いで突破が可能だ。

直接剣が触れた訳ではない、だが、自分の至近距離に展開した魔法の壁が一撃の下に粉砕され、その衝撃がモロに身体へと伝わり、周囲に展開された炎で氷も溶けていた事もあって、地面に降りて早々に、特に痛かったであろうお腹を押さえてえずく。
が、すぐに立ち上がって、今までと違って、少々怒ったような笑みを浮かべて。

「痛ったあ……はぁ、もう。 そっちのお姉さんはよっぽど好きみたいだし、私もちゃんと合わせた武器使わないとね」

羽を広げてフィラッサは再度飛翔、その際に地面を蹴ってシャルから距離を取って、エストの"あまり乗り気にさせたくはないが"と言う発言など無かったかのように、よっぽど好きみたいだから、合わせた武器を使うと、またあのカチリという音を響かせる。
そのまますぐさま発砲する、かと思いきや彼女は語り始める。

「さて、戦場で自分の武器の自慢をするのは弱者のやる事だけど、私はそれが許されるぐらい強いから言うね。 この中には改良した植物の種が入ってて、着弾すると君たちと言う捕食対象を粘液に塗れた蔦で拘束して、そのまま絞め殺したり、消化液も兼ねている粘液で溶かすんだよー。 頑張って避けてね、でもお姉さんは受けたかったら受けてね、すぐには死なないと思うから」

要約するならば、急速成長するモウセンゴケのような"弾の中身"をフィラッサは解説する。
本当は下手に引き裂いたりすると粘液が飛び散って余計に動きを制限する事はあえて言わない、相手が対処を誤ってくれれば儲け物だ。

お姉さんは受けたかったら受けてね、とフィラッサは前置きして、その恐ろしい植物の種が詰まった銃弾を発射する。
それは二人の敵対者の前で炸裂して、周囲に無数の種を散らした。
数秒もすれば、一気にその解説された植物が生えてきて、その粘液と蔦を使って獲物を捕らえるだろう。

>シャル・ド・ノブリージュ エスト

2ヶ月前 No.778

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【マロニス城/ホール/城前/ユーフォリア・インテグラーレ】

一度膠着状態に陥った戦況を動かすのは非常に難しい。敵味方、両者の力関係がほぼ対等にある以上、どちらかが消耗するのを待つ以外に方法は少なく、長期製の様相を呈することがほとんどだ。
だからこそ、ヴァイスハイトの登場は拮抗を打ち破る上での重要なファクターとなる。思わぬ三人目の乱入によって、エクスデスには確かな隙が生じ始めているのだ。
ここまで手の内をいくつか明かしてきたユーフォリアやダグラスと比べ、彼は完全に未知。故に、敵も武装や雰囲気といったものから戦術を察するしかなくなる。
結果としてそこで、相手はミスを犯した。ヴァイスハイトを単なる後衛と侮ったことにより、予定していたであろう反撃への手立てを変更せざるを得なくなったのだ。
更にエクスデスを驚愕させたのは、暴風の中に突撃するという選択をしたダグラス。銃弾に気を取られていた彼に、ユーフォリアとの連撃を回避する余裕など残っていなかった。
溜まらず持てる限りの防御術を用いて、何とかダメージを最小限に留めようとするエクスデスであったが、圧倒的な威力の攻撃を止めるには至らず、暗黒騎士は煙の中へと消える。

やがて晴れ上がった視界の先にあったのは、鎧を破壊され、素肌を顕にした敵の姿。それは人間とはおおよそ似つかない不気味なもので、まるで樹木のようであった。
魔族の存在を知るユーフォリアにとっては今更驚くようなことでもないが、対処法は変わってくる。少なくとも、人間相手と同じ戦法が通用しないのは確実だろう。
激怒したエクスデスが、本気を垣間見せる。ドーム状の空間が広がり、深淵の闇が周囲を包み込む。暴虐的な破壊が、内部にある存在を、文字通り消滅させていった。
ユーフォリアが危険を察知して離脱を試みたが、僅かに半身が間に合わなかったのか、まるで強風で木の葉が舞い上げられるかのように、凄まじい勢いで吹き飛ばされていく。
地面に叩き付けられてもなおその勢いは止まらず、転がりながら大木へ激突するユーフォリア。これだけの衝撃を受けながら、骨が折れなかったのは奇跡としか言いようがない。

「……私達は、歴史の護り人。貴方に、あるはずのない勝利を渡すことは出来ないのよ」

痛みを堪え、彼女は一瞬ふらつきながらも立ち上がる。いつの間にか吐き出した血が、制服を赤く染めていた。そんな状況でも、彼女の視線が敵から外れることはない。
防御に力を割いたエクスデスが、致命的な隙を曝したのを、ユーフォリアは見逃さなかった。勝負を決める絶好のチャンス、ここを逃せば、間違いなくこちらの敗北は決定する。
ヴァイスハイトはダグラスに、必殺の一手を託した。彼がそれでも攻勢に打って出たのは、敵の意識を引き付け、残る二人の攻撃を確実に命中させるためだ。
ならば、自分はその想いに応えなくてはならない。大きく空中へと飛翔し、宙返りと共に着地したユーフォリアが、右手を地面に付く。刹那、描き出されるは、辺り一帯を覆い隠すほどの虹色の魔法陣。
丁度中心にエクスデスを捉える形で展開された魔法陣より放たれるは、殲滅の光。虹色の輝きが、そこにあるもの全てを溶かし尽くすかの如く、天まで轟く。
この一撃によって相手の外郭を完全に剥がすことが出来れば、ダグラスの持つ毒薬の命中率は飛躍的に上昇する。勿論、ユーフォリアの負担も尋常なものではなく、彼女は反動と蓄積していたダメージによって膝を付いてしまう。
敵を撃ち漏らすようなことがあれば、危険な状況に陥ることは間違いない。それでも、彼女は懸けた。かつて大学で同じ未来を描いた"友人"ならば、必ずやり遂げてくれるはずだ、と。

>エクスデス、ダグラス・マクファーデン、ヴァイスハイト・インテグラーレ

2ヶ月前 No.779

王国の騎士 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

激化すると共に混沌を極める戦場。単なる二勢力同士の対決ならこうはならなかっただろう。しかし、どちらにつくでもない幻惑さながらの存在…魔剣士が、両勢力の立ち回りを非常にややこしいものとしている。
ヴァンレッドとアーケオルニ、そしてチェル。どちらからしても、その働きの半分は利であり、もう半分は害。全てが彼女の匙加減で決まってしまう以上、味方につけるわけにもいかない。
ただし、アーケオルニには、このような打算的な考えなどありはしない。端的に言ってしまえば、そんな余裕はないからだ。この場で唯一の人間であり、背負ったハンディキャップは数知れず。
無駄な思考に力を割くわけにはいかない。見据えるのは、目の前にいる敵のみ。一点集中。そうでもなければ生き残れない。

「ああ、アタシも心底惚れ込みそうだ。その軽口を叩ける余裕にな!」

一介の騎士としてのアーケオルニを、率直に褒め称えるヴァンレッド。死地に臨んでなお冗談を飛ばせる余裕というのは、ここで過ごす一分一秒が緊張に満ちている彼女にとって、お世辞抜きに羨ましいものだった。
そんな受け答えをしている内に、襲い来る新たな刺客。そう、魔剣士が遂に彼女に切っ先を向けたのだ。打ち消される火球、受け流される大剣。間髪入れず追撃が来る、そう確信したアーケオルニは、迷いなく得物を遠方へ放り投げた。
負傷と疲労が重なり、おまけに左腕を喪失した今の状態では、ヤツの剣技を躱しきるなど夢のまた夢に違いない。ましてや重量のある大剣を伴っての回避など以ての外。とはいえ相手は血を求めて生きる幽鬼、重りを外したからと言って安全が保障されるとは限らない。
瞬時にそう判断したアーケオルニは、魔剣士の剣が唸るよりも早く行動に出る。一度彼女の眼前を斜めに走って通過し、すぐさま身体を翻して、フェイントをかけるように彼女の背後へ滑り込む。
大抵はここから反撃を仕掛けると予想されるだろうが、竜狩りの次の行動はそれとはまったく違うもの。再度反転し、先程投げ捨てた剣目掛けて走る。上空から見ればZ字を描くような一連の動き。
無骨で重量感あふれる技ばかりの彼女には珍しいが、今の彼女ではあの剣戟は手に余る故仕方がない。それでも凌いだことに変わりはなく、かつ得物も取り戻したことで反撃の準備が整う。

「まとめて食ってやらあ!」

掴んだ大剣を、誰に当てるでもなく横に一振り。本来ならば無駄骨で終わる動作だが、アーケオルニには『力の作用を活かす技術』という武器がある。
引っ張られるような勢いに身を任せ、魔剣士目掛けての薙ぎ払い。一度のみならず二度三度と続く上、回数を重ねるたびに速度も破壊力も増していく。
さらに回数が七回を超えたあたりで、敵も味方も関係ない全方位への真空波が発生。加えて斬撃に火炎が付与され、チェルも攻撃対象に含めるようになった。
小さな身体で呆れるような暴れぶりを見せ、炎をまき散らしながら回転する様はさながら輪入道。見るもの全ての魂を抜き去るという言い伝えに恥じない成果を挙げられるだろうか。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド、魔剣士

2ヶ月前 No.780

魔帝 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【魔帝城/深淵の前/魔帝ヴェルメイユ】

ギラードの言葉が、ヴェルメイユの身躯に響き渡る。魔帝として君臨し、人類に戦争を仕掛けて以降、彼女という人間は己を押し殺し、魔族を率いる者に徹し続けてきた。
本来の目的は違うところにあるのにも関わらず、それが恩人の願いであるという理由だけで、ヴェルメイユは自らの信念を捻じ曲げ続けてきたのだ。しかし、今は違う。
王としての自立を選んだ魔帝は、人類と共存すると同時に、彼女が中世に流れ着いてから思い描き続けていた夢、ラガルデール王国の復興へと歩み始めたのだ。
しかし、ここに乗り込んできた彼らにそれを話したところで、戦いが終わるはずがない。仮に、戦いを避けられるというのであれば、どれだけ幸運なことであっただろうか……

「……お前は、お前の成すべきことに集中すればいい。どうせ、結果が全てだ。私のことなどに興味はないのだろう?」

核心に迫るようなハザマの言葉を聞いて、一瞬だけ彼女は無言になるが、何事もなかったかのように取り繕い、あくまで敵らしい言動をすることに努めてみせる。
そんな平常心を打ち崩したのは、アンナローズの言葉だった。ヴェルメイユは、彼女が発した内容が、自分が追い求める理想と瓜二つであったことに、耳を疑う。
いや、聞き間違いだろう。そう思いたいのは山々であったが、確かにこの人間は言った。人と魔族が分かり合える可能性は、まだ潰えていないのだと。
たったそれだけの一言であるのに、魔帝は激しく動揺してしまった。自分が最初から無理だと諦めていたことを、よりによって敵が出来ると信じてこの場に立っていたことに。

乱れた精神状態で攻撃されれば、どうなるかなど想像に難くないだろう。最初のギラードの氷柱にこそ何とか対応してみせるが、次のハザマの連撃に対応しきれない。
ウロボロスこそ全て回避したが、上空から投擲されたナイフが、左肩へと突き刺さった。本来の狙いこそ外したが、気付いていなければ即死していただろう。
続く蹴りは即座に展開した防御壁で凌ぎ、アンナローズの刺突を大鎌で受け止める。この状態でも相手の連撃に付いていけるのは、さすが魔帝というべきところか。
斬撃を弾き、光の暴風の範囲から逃れたヴェルメイユは、左肩から流れ出た血を見やる。残念なことに、状況は思わしくない。ただでさえ人数で不利を被っている上に、先に手傷を負わされたのはこちらだ。

「私は王国を……」

思わず溢れた呟きは、魔帝が長年追い続けた夢そのものであった。この一言だけでそれに気付ける者は少ないだろうが、彼らの中には事情を察した人物もいるかも知れない。
未だ動揺を残しつつも、反撃に打って出るヴェルメイユ。真っ直ぐ天へと掲げられた左手。彼女の動きに呼応するかの如く呼び寄せられた雷槌が、深淵の間を包み込む。
本人の精神状態が大きく影響する魔法は、不安定な状態で放つと威力が減衰する場合も多い。だが、魔帝の放つそれは、そのようなことなど微塵も感じさせない、高威力の代物。
あくまで敵対者に容赦するつもりはないのか、それとも――― 徐々に明かされつつある魔帝の真意。それに勘付く者次第で、彼女の運命は変わるだろう。

>アンナローズ・フォン・ホーエンハイム、ハザマ、氷魔像ギラード

2ヶ月前 No.781

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【マロニス城/厨房/ミコルナ】


頭がよく、顔も良く、性格も良いという姐さん。自称という前提が付くが少なくとも彼女はその言葉に疑問を持たない、綺麗だと思ったし、レーヴが上手く動けようにしているのは分かる、戦っていて不快を感じる訳でもない。
彼女にとっては楽しい相手というのは願ってもない事、気分が強さに直結する彼女には最高の相性ともいえるだろう。故に炎壁をぶち破り、野太い声と共に取られた咄嗟の防御行動すら貫く一矢を放てるのだ。
レーヴが意図を理解し、気を引くために動いたからこそ姐さんに命中した大矢。分かってくれると信じて放った言葉ではあったが、実際に理解していたことが分かればそれはもう嬉しい、尻尾もご機嫌である。
それはそれとして抉られた肩に痛そうと言った、矢を放った本人が思うべきでない感想を持ちながら辛うじて保っていた女性らしさを自ら捨て去った姐さんを眺める。短弓を構え、矢を番える。いつでも放てるように、そう構えていたのだが。

「ふふーん!あたしとレーヴはすごいんだよー!頭が良くて、顔も多分良くて、性格もきっと良いレーヴにあたしが居ればやれるもんねー!」

姐さんが自称したそれに合わせる様に、レーヴと自身の凄さを出来る限りで表現をする。薄っぺらい胸を宙で張りつつ、態々番えた矢を矢筒に戻してから腰に手を当ててまで自慢する。得意げな表情は可愛いが、何処か腹が立つほど誇らしげである。
距離を取った姐さんに気付き、短弓を取り落としそうになりながらも慌てて矢を番えなおす。またもレーヴが得意ではない場へと移動する辺り、頭に血が上った訳ではない。ただ、少女ではなく野郎へと変わっただけだろう。
声を張り上げる姐さんに好奇心の塊である彼女は喜色を浮かべた瞳を躊躇いなく向ける、不思議な姿勢や綺麗な歌声、そもそも存在自体が面白い姐さんに期待をするなという方が無理だろう。詰まる所、彼女は姐さんの術中に嵌ってしまった訳である。
詠唱の後に美しい肉体美を誇示するかの姿勢を取る姐さん、それを最後に彼女は視線を奪われてしまった。何の比喩でもなく、視線は姐さんを中心に固定される。首を動かそうとも、身体を動かそうとも、常に瞳はあの性別超越生命体を求め続ける。
その危険性は戦いに身を置くものならば理解できる、相手がただ近接戦を仕掛けようともどうしても視覚外からの反応が遅れてしまう、それに加えて姐さんは魔術を高い練度で扱える。故に、目の前に居ながら容易に不意を突けるのだ。
そんな危険極まりない状態、流石の彼女も危機感を持つ……訳が有るまい。どう動かそうとも姐さんから外れない視線を楽しむに決まっている、既に宙へ浮かびながら側転をしたり、身体を捻ったり、くるくると動かしながらも固定された視線に子供の様にはしゃぐ。

「何これ何これー!面白ーい!あはは!姐さんしか見えない、これが目を奪われるほどの何とかって言うんだよねレーヴ!」

何処かで聞いた覚えのある言葉を、恐らく聞いた主であるレーヴに問いかけながら宙を舞い踊る。翼をはためかせ、ご機嫌な尻尾は大きく振られ、心の底から楽しんでいるのが分かるだろう。
しかし、あくまでこの場は戦場に違いない。彼女にとっては娯楽の一つなのかもしれないが、姐さんとレーヴは少なからず命のやり取りをしている。そうなればその隙を姐さんが逃すわけもない、床を這う黒き魔力、それは間違いなく攻撃の予兆である。
姐さんを中心として広がるそれ、彼女やレーヴの足元にも程なく達する。しかし攻撃の本命はそれではない、湧き出るは鋭き闇。容易く人体など貫きかねないそれは、不規則に血を求める。
そう、これは足元さえ見えていれば回避は簡単なのだ。だがここで姐さんしか見えない視界が邪魔をする、勘で避けようにも不規則さは仇となり、耳で避けようとするならば音の伴わない闇の魔術は厄介極まりない。そして魔力の感知で避けるのも、少なくとも彼女はしない。
所謂詰みへ持っていく攻撃、姐さんしか見えないため前方に進むしかないが背後から突き刺さる杭までは見抜けない。かといって動かねば不規則に血を求めるそれに狙われぬように運の良さを祈るしかない。
だが、これはある意味幸運であった。彼女の立ち位置は姐さんを中心としてレーヴの真反対にまで移動していた、ただはしゃぎながら移動していた先が偶然その位置であった。そしてさらに幸運だったのは姐さんが距離を取ったことで、姐さんを視界に収めながらもレーヴの足元が確認できたこと。
レーヴがこの術に嵌っているかが彼女の判断基準ではない、ただ危険が迫っていることを伝えるがために声を張り上げる。同時に視界の中心に収まっているならばと、感じたかどうかは別として十数の矢を放ち続ける。

「レーヴ!右、左、前、前、左、左、右、前で姐さん!―――いったーい!」

放たれた声は杭のない場所を示し、そのまま姐さんへと辿り着く為の言葉、レーヴの速さを加味した勝利への道。言い終わった直後に数本の杭が彼女を襲う、無作為に回避をしていて避け切れるはずもなく内一本が柔らかそうな太腿へと突き刺さる。
飛び散る赤、白く柔らかな肌を染めるそれは間違いなく負傷を示していた。骨まで貫かれはしなかったが杭の先が皮膚から見えている、貫通したその痛みは計り知れない。されど、あくまで心配をかけないように、レーヴが姐さんへ心置きなく迎えるよう軽傷のように叫ぶ。
多くの軌道を描きながら姐さんへと迫る十数の矢、それを五度に分け放てば百に近い数の矢が絶え間なく襲い続ける。しかし見ずに避けている彼女に身体には次第に赤線が増えていく、太腿の痛みがありながらも、浅くとも傷を受け続けようともその狙いは正確さを保ち続ける。
そして宙を舞いながら次の矢を放とうと矢筒へ手を伸ばした時であった、その腕を杭が貫く。太腿のように骨を避けるほどの余地はない、腕の中点を貫いた以上そこにあった骨も同様に砕いて貫いている。痛みに悶えるが、声には出さないし飛ぶことも止めない。
声を出せばレーヴは気を取られる、飛ぶのをやめればもっと多くの杭に貫かれる。だから可愛らしい顔を苦痛に歪めども宙を舞い続ける、襲い掛かる杭は多くが掠り彼女を赤く染める。辛うじて、貫通を運良く避けていた。
弓を射る腕を貫かれたことで援護は不可能となってしまった、ならば後はレーヴの足を引っ張らないように避け続けるしかない。一つ、弓を射る方法はあるがこの状況では不可能、戦況を見なければ再び弓は射れない。
この戦場はレーヴに委ねられた、少なくとも杭を止めねば彼女が再び弓を射ることはできない。どうにかして姐さんの注意を引くか、そのまま倒してしまわねばなるまい。

さて、余談であるが彼女は右と左は理解できる。だがこの指示がレーヴから見たものであるとは限らない、さらに言えば前のみはレーヴが向いている方向が分かる以上間違えようもない。
つまり、彼女の指示は左右逆で避けながら前のみ指示通りで動かなければならない、レーヴから見て左、右、前、前、右、右、左、前が正解となる。しかし問題があるだろうか、彼女の意図を僅か一言で理解できたレーヴがこの程度読み誤る筈もない。
頑張れ騎士様、可愛らしい魔族のお嬢様を守れるのは君だけだ。超越者を打倒せるのも、また君だけだ。

>>レーヴ・カストリス ガドン・バルザック

2ヶ月前 No.782

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【魔帝城/無限廊下/サシャ】

容赦もへったくれもないニアの言葉は、未熟なサシャの心を抉るには十分すぎる。口ばかり達者で、行動では何一つ示すことの出来ない無力な存在。それが、今の自分。
目を背けたくなるような現実を突き付けられ、とうとうサシャは泣き出してしまった。絶対に同じではないと思っていた姉と、結果的には何ら変わりないのだという事実を知って。
戦わなくてはならないということは分かっている。こんなことをしている場合ではないと承知している。それでも、深く傷付けられた彼女の心が、身体の動きを止めてしまう。
がっくりと膝を折るサシャ。もはや、ニアの勝利は決まったようなものだ。魔族は新魔帝チェルの元に統率され、ヴェルメイユは反逆の罪によって処刑されることだろう。
無実であることを証明する手立てはない。証拠が揃っている以上、ニアの言葉を信じぬ者はいないだろう。レオンハルトとレプティラは味方してくれたが、ここで死んでしまえば同じことだ。
ニアも、二人の存在が不都合となることは分かっているはずだから、全力で殺しに掛かる。道は閉ざされた。人と魔族の和平は訪れない。その先にあるのは、どちらかが倒れるまで殺し合う未来。

思考が諦めの色に染まりかけたその時、それは訪れた。見通すことの出来ない暗闇。まるで湧き出るかのようにしてそこから現れたのは、声なき影の魔物であった。
いつから潜んでいたのかは分からない。戦闘開始時からいたのか、それともつい先程ここへ辿り着いたばかりなのか。いずれにせよ確実なのは、彼が攻撃の機会をじっと待ち続けていたこと。
ブロヴァンスの攻撃など考慮しているはずもなかったニアは、右腕を犠牲にするしかなかった。だが、反撃に放たれた無数の斬撃が、余すことなく彼を捉える。
短い断末魔を響かせると共に、風に呑まれるようにして影の魔物は消えていった。驚愕する暇すらもなく、その全てを見せ付けられることとなったサシャ。
人間と戦い続けるしかないはずの彼が選んだもの。和平を望まぬのであれば、この場で攻撃を仕掛けるべきはサシャ達であっただろう。それをしないということは、即ち―――

「……どうして……どうしてあたしは……」

受け入れよう、自分はニアの言う通り、無力だ。誰も護ることすら出来ず、ただ護られるばかりで、それどころかブロヴァンスが最期に願ったことすらも理解することが出来ない。
心の中では違うと思っていても、本質は一緒だったのかも知れない。あの、忌まわしき姉と。自分がしていたことは、ただそうなればいいと頭で思い描くことだけで、それを現実にするために行動を起こそうとは一切しなかった。
しかし、それでは駄目なのだ。それでは、願いを叶えることなど出来ない。もっと早く、もっと早く和平を魔帝に提案して、その道が切り開かれていれば、少なくとも彼の命は救われたかも知れないのだ。
もう、逃げることはやめよう。未来は、自分自身の手で掴むもの。そのための犠牲など、必要ない。レオンハルトも、レプティラも、決して死なせてなるものか。

「駄目っ! 死んじゃ、駄目ーーーっ!」

命尽きるまで進むのみ。そんなレプティラの言葉を遮るかのように、サシャが叫ぶ。死んでは、意味がないのだ。和平が犠牲の上に成り立つのでは、意味がないのだ。
覚悟を決めた彼女の、秘められし力が覚醒する。元より、チェルよりも遥かに優れた資質を持ちながら、優しい心の持ち主であった彼女は、その力を無意識の内に封じ込めていた。
だが、目の前の二人を護りたいという強い意志によって、枷は解き放たれる。光の粒子をまとっているかのように錯覚するほどの輝きに満ちた、サシャの身体。
そこから生み出された速度は、超常の領域。今まではこの場にいる誰もが追いつくどころか、捉えることすらも困難であったニアの速度に、彼女は追い縋る。匹敵する。
爆発的な魔力を伴い、放たれた両爪の斬撃。直後にサシャは回転しながら尻尾を振るい、追撃として光の竜巻を射出する。そこにあるのは、護られるだけの弱き存在などではない。己の力で未来を掴もうとする、強き一人の魔族の姿であった。

>"塵殺剣"のニア、レオンハルト・ローゼンクランツ、"常山蛇勢"レプティラ、"無音"のブロヴァンス

2ヶ月前 No.783

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/魔大将の間/魔剣士】


己の得物が邪魔になると判断し、それを放り投げ回避を選択する。人間が取った選択はそれであった、唯の一振りにしか見えぬ斬撃の危険度を見定め防御ではなく、最大限できる回避を行う。その判断力、人間も喰うに値すると魔剣士は称する。
黒猫の言葉はまたも受け流す、いやそれどころではない。この場の全てが喰らうに値し、さぞ上質な血を浴びることが出来る事実に歓喜する。喜色の絶頂、果てに達したその感情。大笑いするでもなく、ただ歪んだ笑みが深く刻まれるのみ。
そして、更なる昂ぶりが魔剣士を襲う。喰らうことが分かり、その事実を噛み締めただけでこれなのだ。肉を抉り、骨を砕き、臓物を潰し、全てを紅に染めた時、どれだけの悦楽がこの身を包むことか。少しばかり、夢想したのみでももう一度果ててしまいそうだ。
ならば誰から喰らうべきか、全員から喰い喰われの惨状こそ至高であるが人間と龍は組んで黒猫を打倒す為そうはならない。そして黒猫も未だ利があるという細やかな理由のみで魔剣士を狙わぬ、喰う順番は大切だ、それだけで台無しになることもある。
龍は最後、これだけは決定事項だ。であれば人間と黒猫、どちらを先に喰らうか。喰うに足りた黒猫、期待と龍の味付けの人間、どちらも変わらぬ。しかし喰らった後を考えるならば、どちらが良いかなど明白であった。

「ああ……好い、好い。黒猫、人間、龍。どれも喰らえば悦に至る、ああどれにしようか、悩ましい。」

黒猫の津波を一薙ぎで払う龍、得物を再び手に取り大剣による回転を始める人間。襲い掛かる一撃も、恍惚の余韻さえ消えぬような、さして力の入れぬ払いのみで逸らす。七度を超えた回転で真空波と炎を纏う大剣の斬撃、しかしそれすらも春風の如く何の対処もなしに受ける。
龍の灼熱ですらも春の陽気の如く振舞う魔剣士には只の温風でしかない、揺れる金糸の如き髪にすら焦げ一つ付かぬ。真空波も鎧で阻むどころか、ただ手を翳すだけで霧散する。未だ、心ここに非ず。魔剣士は喰らう順番を定めている。
ああ、しかし既にそれは決まっている。最初に喰らうべきは迷う事はなく黒猫以外には居ない、この場において唯一魔剣士へと攻撃をしなかったそれは残そうと熟さぬと判断した。残すのであれば期待が出来る人間の方が良い、故に魔剣士は先に喰らうべきものへと向かう。
黒猫を中心とした水、そのどれにも波紋一つも残さずに正に掻き消え、その場に現れた魔剣士。黒猫を挟み、龍と対峙するかのような立ち位置。であれば児戯に耽るのも一興とする、黒猫を喰らうために放たれる龍との剣戟、中々に好い。

「喰らうべきは貴様と見定めた、抗い、私を悦へと導いて見せよ、さすれば骨の髄まで喰らい尽くそう。」

龍の放つ斬撃、一秒を八に分けようと二太刀収まる神速の斬撃。そのどれもが無音、不可視。本気を出さずしてここまで好いとは、魔剣士は最後に喰らうべきと定めたことに間違いはないと常に張り付いていた笑みをまた深める。
であれば龍に合わせよう、龍が手を抜くのであれば黒猫を喰らう間は同程度で貪ろう。故に魔剣士が放つ斬撃は全て鏡移し、龍が右から薙げば同じく右へ薙ぐ。無音不可視の斬撃が、互いに打ち合う。
黒猫の首を狙う三薙ぎ、互いの接触点を黒猫の首と定め剣閃を接触させる。続く心臓への二連突、剣の切っ先を寸分違わず合わせる様に黒猫の心の臓へと吸い込まれる。そして四肢を断つ四連斬、上から断てば下から同様に断ち、全てを龍と長剣が打ち合う様に振るわれる。
そして十字斬、およそ同時に放たれたその縦と横の斬撃を、打ち消すかのように横と縦の斬撃を合わせる。黒猫を挟んで行われる剣戟は一切の遅れなく、その全てが黒猫へと襲い掛かる。児戯と称したそれに、どれだけの技量が必要かなど魔剣士は意に介さない。
ただこの方がより楽しめると、黒猫をただ喰らうだけではなく龍と打ち合えた方がより達すると判断しただけ。もしここで上手く黒猫が立ち回ったのならば、しばらくは龍と打ち合い続ける可能性も高い。
しかし黒猫に襲い掛かるのは前後からの無音不可視の神速の斬撃、特に龍の接近に気を取られ過ぎれば魔剣士の接近には気付かない。そうなれば背後から血を散らし、魔剣士を悦に導くだけの事、それでも魔剣士は喰らえた以上構わない。
望むのは生命の危機に瀕した懸命の抗い、死して血の海に伏せるまで喰らわれてはならぬと足掻き続ければそれだけ上質になる。その肉は宝石の如き価値を得て、その骨は万能の知識の如き価値を持ち、その臓物は王権の象徴の如き価値を持つ。どれも魔剣士には価値無きと断ずるものだが、他の価値観に例えればこれだけの物を得られる。
故に熟し、更なる快楽を望む。既にこの場の存在が喰らうに値することは判明した、であれば後はそれだけ愉しんでより好く喰らうか。龍は本気ではなく、人間は可能性の塊、であれば黒猫は必死の抗いでのみその美味さを高めるだろう。
さあ未だ序曲也、この場で散るは名誉。その血肉全てを喰らう存在が居る、誰の死も無駄になりはしない。全てが幽鬼の快楽と、悦楽と、愉悦になる。さあ、さあ、血染めの舞台を作りましょう、最初の演目は愉快な黒猫さん。
その剣は、まだ血を求める。

"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ

2ヶ月前 No.784

黒闇の騎士 @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/無限回廊/ローウェン・アルベリウス】

 手数を重視した双刃が欠落している威力を、闇の魔力で上乗せして放つ十二の黒閃。展開する魔法障壁を打破せんと揮う黒き双刃の連撃は、最後の一閃になって漸く壁を打ち崩させる。それでも続け様に剣を舞わせる事で、手傷を負わせようと試みるその寸前。魔剣を地面に叩き付けると共に生じた闇の奔流の中で、魔道へと引き摺り込む邪魔はさせぬと云わんばかりに赤黒い魔力塊が無数となって放たれ、後退を余儀なくされる。
 刃を幾度と無く揮い、迫る魔力塊を全力で撃ち落として行く中、半身振り返り自らを一瞥するゲイルの姿を捉える。これが、自らの為すべき事である――素っ気のない言葉、説得を意に介さず、見限ったかの如きその態度。彼を深淵の奈落へと誘い込まんとする敵からすれば、心底歓喜せずにはいられないであろうその光景。されど、それを見届ける己の心は、不思議と不安の感情が芽生えては来ない。

「……演技派だな。役者になれそうだ」

 差し出されたその手に応じる彼の手が、不意に大きく開かれる。刹那、回廊の内部から外部に至るまで、あらゆる箇所から流れ込んでくる風が、自らの行く手を阻む魔力塊を全て押し流す。反撃の一手へと移る手番が回って来たと同時、甘言に釣られる愚者を見事に演じて見せたゲイルの演技力を、素直に賞賛する。これ程の物ならば、恐らくは味方すら欺く事も容易く出来る事だろう。
 かくして対処から解放された今、此処で立ち止まっている必要は無い。爆発的な勢いで全身を循環する魔力を刃に籠め、長大な闇の刃を纏わせると、大地を蹴ってフロレの背後へと移動を開始し――

「ならば、その余裕が命取りになるな。人の強さを忘れ、あまつさえ侮るその心……それが貴様を嘆きに導く!」

 回り込む瞬間の踏み込みと同時、回転する動きと共に右の刃でその背中へと横方向への斬撃を放ち、続け様に左の刃で横一文字に断ち切る一閃を放つ。一周し再び視線を敵の背中へと合わせると、今度は両刃で斬り上げ、勢いのまま後方へ宙返りからの着地。即座に大地を蹴り、範囲内への踏み込みの一歩の直後に、交差を描く様にして放たれるは十字の剣戟。
 そして双刃を天高く掲げ、両手で二つの柄を握り包むと――全力でその頭部を目掛けて剣を振り下ろし、接触寸前の所で下方向へと放出する暴虐的な闇の奔流。余裕を保たせたまま、全力を出さなかった事が命取りになるのだと告げるかの様に、破壊の剣を以て敵を抹殺せんとする。

>フロレ・ゾンダーランド ゲイル・ベネルド

2ヶ月前 No.785

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL

【無限廊下/ニア】


 彼女に相手を嬲る趣味はない。
 振るわれる剣は最短時間で最大効率を編み出し、不要な動作を極端に省く。
 所作の数々はさながら計算機のそれを彷彿とさせる彼女であるが、それでもレオンハルトを追い詰められないのは二つほど理由があった。一つは単純に常山蛇勢―――レプティラを主とした妨害に対して、いちいち対処の行動を挟むためだ。
 雷光じみた速度で放たれる剣戟は、しかし間髪入れない第二撃を約束されない。
 第二撃まで持ち込めば情け容赦なく死を運ぶだろうに、しかし蛇がそれをさせない。虚を見せれば、隙を晒せば、その毒蛇は鎌首をもたげてこの命を摘み取りに来るだろう。実に狡猾にして合理的な戦術だ。それを行っているのが、まさか、あの常山蛇勢であるとは思えないほどに―――ただ一個人を討つために全てのリソースを割いて来るその姿は、実に合理的だ。
 その代償のほどは当人を見れば分かる。涙で表情を濡らしながら、それでもと食い下がる姿は、控えめに言って生きる屍だ。そこまでする意味があるとは思えないが、その瞳を見てしまえば分かる。この女は全てが擦り切れるまで食い下がるのだろう、と。

「………」

 剣戟を交えながら、彼女は炎獅子越しにレプティラを見た。
 言葉は僅か、自分の問いかけに反応した程度のものでしかない。
 ………それは言い換えるなら、あれはもはや僅かな精神も残っていないということになる。善き者だった蛇は既に死したも同然であり、その命の末路は見えたと言っても過言ではない。
 それは彼女なりの生命の使い方なのだろう。あの女が望みと呼んだものの最適解がそれなのだろう。
 納得はした。理解は出来ないなりに、だ。先程断ち切った無音のように、自分には終ぞ理解出来ない感覚が連中にはあるのだろうということが。そして最早理解し終えたことでもあるが、彼女は完璧なまでの死兵と化した。
 命を遺すことを考えなくなった兵士は手強い。何が手強いのかと言えば、そこに取るべき手法が広がるからだ。後に何も遺さないという選択肢が選べるようになってしまった兵士は、目的の為ならあらゆるものを薪木に出来る。それが、他者から見れば、どれほど愚かなことだろうが―――関係はない。選んでしまったものは決めるしかない。
 ひとつ道を決したというなら、そこを走り切るしか命には約束されていない。
 それが生命の使い方という道の選択であるならば、猶更のことだ。

 レプティラは、それを選んだ。無音と同じように、自らに見えない何かを信仰した。
 そこに平穏《ユメ》を乗せたのだろう。―――もちろん、そこに自分の居場所がないことを容認した上の話だ。

 それは繋ぐという生命の連鎖だ。無音が託したものを、彼女もまた何かに託そうとしている。
 先の言葉を訂正するというなら、それが彼女の心の名残というわけだ。しかし―――。

 生命に続きなどない。生命に“もう一度”などない。そんなものは、ただそこにあるだけでも悍ましい。
 それは救う者、殺す者、全てが知っている概念だ。蛇とて同じだろう。死人に語る口などない。
 それを分かっていて選ぶということの意味を、分かっていて尚、自らを殺しに掛かるのだろう。

「わたしには。おまえが“分からない”ままだが」
「選んだのか。おまえも、結局」

 そこにニアは、何らかの感傷を覚えるでもなかった。
 彼女をそうしたのは紛れもなくこの瞬間だ。その事実に、眉の一つも動かすことはなかった。

 いや。
 覚えようと思えば。感じようと思えば。感じられたのかも、知れないが。
 そんなことは、どうだって良かった。選んだのなら、その道端に転がるものに目を向ける暇はない。


「無音のがそれに倣ったと?」
「なるほど。欺瞞で、詭弁だ」


 閑話休題。
 もうひとつ、塵殺剣の剣技を受け止める原因があった。単純に炎獅子が食い下がって来たことだ。
 単純な剣の腕と言う意味ではこちらが勝る。速度という意味でも言わずもがな。
 威力と言う意味ではこちらが劣る。されども総合するならば、単身において負ける理由はほぼない。
 その上で、この男が前で剣を振るっていたからこその均衡だ。明確な戦士としての腕は明らかに一つ抜けている。その正体を掴めないこと自体にニアが頓着することはなかったが、どちらにせよこの瞬間に仕掛けた剣戟こそ好機を狙ったものに他ならなかった。

 それに対して、レオンハルトは防御を取った。それも、自分にではない―――背後の二人に、だ。
 半分は予想通り。この男の言葉が語る通りであるならば、サシャとレプティラは生かしておくより他にない。
 ああ撃てばそう動く選択肢もないではない。しかし、自分の死が戦線を瓦解させることを理解しているならば選べない。そうした上での二者択一で、彼女が予想外としたのはただ一つだ。“それでも”自分の身を投げ出すような行為を取ったこと。

 無音に続いて蛇と来れば、今度はこの男だ。そこまで無駄死にが好きか。
 あるいはそれも、奴の語る非合理な理想ありきのものか。


「理想、意味、軌跡………いつもそれだ」


 ―――いつだってそれだ。おまえたちは変わらずそれを述べる。
    そこに広がるのは荒野ばかりで、何のカタチも残らぬというのに。

 あれを理想と言うのなら、残らず塵と還してやろう。
 あれに意味があるのなら、あまりにも合理ではない。
 あれが軌跡と指すのなら、それは何と無惨なことか。

 だから、結果は見るでもなかった。無音の一撃で使い物にならない右腕に目をやるでもない。
 仕切り直した直後に確認出来た虚ろな肉の塊を、気高さを失った獅子の残骸へと紅の双眸が静かに向けられ、そして次を向いた。残りは二人、レプティラを叩けば漸く手が届く。そして明らかに一歩遅れる黒猫の血縁は討つのも容易い。

 そのはずだが、しかし―――それでもまだ立ち上がる。“まだだ”と吼える。
 失った熱をもう一度取り戻し、猛る炎は情動の赴くままに自らへと食らいつく。
 それが無音の決死の突撃に起因するものだと、ニアが思い至ることは恐らくない。

 最初の突撃に限れば速度は上。
 続く乱撃に関しても、速度と威力の双方で此方に追い縋りつつある。
 初動を貰えば即死だ、故に回避する。回避した先に追い縋る彼の刃と、もうひとつ………蛇の叩き付けるように振るわれた尾をまず横に避けつつレオンハルトの炎撃を回避し、続いて横薙ぎにされるそれの上に載って続く刃をいなす。
 僅かでも鍔競り合いのような状況に持ち込むこと自体が悪手だ。力負けは重々承知していたし、立ち止まれば彼女の妨害が自らを食い破る。それらに処置をすべて打つだけの彼女の剣の煌きは軌跡だけで一帯を覆うほどに鋭いが、しかし。


「何処に辿り着いた、何処に残したという。遺るのは屍でしかない」
「死者に口は無い。そこに次はない」


 そうでなくとも。
 此処で気勢を上げた炎獅子の刃はあまりにも鋭く、苛烈だ。
 十八に及ぶ連撃を、熱を帯びて咆哮とともに加速していく剣の一撃を凌ぐには手が足りない。
 二の斬撃を六の斬撃で凌ぐ。五の斬撃を一度か二度では効かぬ数掠める、あるいは追い縋られる。
 九の斬撃を対処する間に立ち止まらざるを得なくなったが故に仕切り直すように飛び退いて―――そこで彼女の妨害がほんの一瞬形を成す。待っていたと言わんばかりに襲い掛かる蛇の牙が迫り、唸りを上げている。

 どちらが詰みであるのかは言うまでもない。一度移動の方向を狭められたのならば、そこで詰みだ。
 ならば、と―――彼女は負傷した腕の方に魔力を収束させた。
 魔族の中では相応なれども、魔将軍の中では下位に位置付けられる魔術師としてのニアの位階だが、彼女でも得意系統に限ればある程度の魔法は行使できる。それを戦闘の場で使わないのは、それよりも単純に剣技の方が優れているからだ。
 余計な詠唱の工程を挟む間に、彼女は十か百の首を一度に飛ばせる。ただし―――。


「諦観しろ」


 それは、詠唱を挟めばの話だ。そうでないのならば―――例えば。
 自分の負傷した腕を媒介にするような真似程度ならば、すぐにでも出来る。
 其方に起こした風壁を蹴るようにして方向転換をする程度ならば、すぐにでも出来る。
 所謂“詠唱破棄”による魔力の暴走だ。基点とした自身の腕は余計使い物にならなくなるが、元から剣を振る方の腕ではない。まして、此処でレプティラの一撃を貰うことの方が重い。そしてその上で、レオンハルトの炎剣を受けることの方が重い。

 殺されるには一手足りない。殺すにも一手足りない。
 その上で、満身創痍なれども塵殺剣が勝負を放棄する様子はない。立ち止まる様子もない。



 ところで。

 ………戦場の中で彼を絶えず狙っていた理由は、
    確かに戦いの最中で重要な役割を担っていたからだ。

    あれが最も大きな牙城であり。
    レオンハルト・ローゼンクランツこそが最大の障害と認識したからだ。



 だが、そうではない。
 それが9割方を占めることだけは認めてもいいが、その真意に誰かが気付くことはない。

 それはニアですらも気付くことはない。
 それを受け止めるだけのものを、女は既に錆び付かせているからだ。

 ………そうとも。たったひとつだ。
 彼女がレオンハルトを、戦闘の最優先対象と置いた理由は、ひとつしかない。



「―――足掻くな」

 ・・・・
 煩わしいからだ。



 とうの昔に、数多の死を律するべく心を錆び付かせ、何処までも合理を歩んだ彼女からすれば。
 今なお理解出来ない動機を撒き散らし、死さえ恐れぬと炎を猛らせ理想に走る獅子が。

 見て分かったのだ。こいつは相容れないと、あの瞬間に。
 ただ人間だから殺す、ではない。その瞳に消えぬ炎を灯すから殺すのだと。

「―――」

 風壁を蹴るようにして反転し、炎獅子を斬り伏せようとした時。それは訪れた。
 光輝を纏う黒猫の血縁の姿だ。此方に追い縋るほどの速度を得た彼女の姿だ。
 振り下ろされる高速の爪撃に僅かに対処が遅れる。刃が自分の身体を引き裂く。
 明確な傷だ。掠めるなどではない。致命にならなかったのは、ニアがその部分を避けたが故。

 黒猫と同類と呼んだそれが何を起点としたのかは知らない。
 ただ少なくとも、単純な機動戦と言う意味では自分に追い縋るということだけは事実だ。
 ・・・
 その上で―――。


「いいだろう」


 ひとつ、彼女は塵殺剣の強みを誤解した。


 彼女の強さの大半は速度に集積されるが、それと同等に剣にもまた魔将軍たる所以がある。
 多人数との戦闘には凡そ向かぬだろう細剣で、いなし、避け、斬り裂き、踏み込む、一連の動作における機械じみた精巧性。最短の動作で最高効率を叩き出すからこその“塵殺剣”だ。
 そこに速度で追い縋ったこと自体は彼女のポテンシャルを証明するが、しかしそれまでだ。

 単純な話であるが、戦闘経験が違う。
 踏んだ場数が違う。闘った数が違う。殺した数が違う。
 その点を埋めれば追い縋るやも知れぬが、そもそもの話として“次”など与えない。

 ―――今まで彼女を狙わなかった理由は、必要ではなかったからだ。
    だが自分から出て来たのならば、どの道傷の深くなって来た今が最初で最後の狙い目となる。

 だから。
 彼女は吹き荒れる光の渦に。それが放たれた瞬間を見計らって、躊躇いなく突っ込んで―――。


   、ソレ
「―――右は、おまえにくれてやる」



 容易く、右腕を棄てた。
 攻撃直後の隙を狙うための動作において、わざわざ竜巻に対処している時間が惜しかったからだ。
 そこに魔力の殆どを注ぎ込んで、暴走させると同時に自分で切り離して盾にした。
 吹き荒れる風が竜巻を弾く。
 余剰の光が自分の身体を穿とうが、ただの1秒でも速度に衰えを見せず走る。

 その痛みがどれほどのものかなど言うまでもない。
 しかし、これも言うまでもないが、そんなものを感じている時間自体が不要だった。
 疾駆に掛かる時間など秒すら不要。追い縋るほどの速度を得たのならば、ならばこそだ。その隙を補うことは出来ない。同速に達したと言えども、決定的な攻撃の隙をラグなしで相討つように踏み込んだ塵殺剣を黒猫の血縁は決して避けられない。

 必要なのは。あの女が竜巻を撃ち放ったこの瞬間。
 自ら飛び出す瞬間を待っていた。それが予想よりも遥か鋭く、遥か疾かっただけだ。
 だから塵殺剣は微塵も臆さない。

 此処に来て、最初で最期のねらい目となるものへと目をやって―――。


    、   ・・・
「―――だから、寄越せ」


 その首を刎ね飛ばすべく。死闘に幕を下ろすべく。
 何よりも先んじて、最短にして最速の刺突、続く振り上げ。
 それはサシャの首を貫き、そのまま跳ね飛ばすべく、寸分の狂いも見せず襲い掛かる。


 単純な剣の腕と言う意味ではこちらが勝る。速度という意味では今並んだ。
 威力と言う意味ではこちらが劣る。であるならばこの時、総合すれば自らに勝つ道理はない。

 そんなことは、もう関係が無かった。
 最後の勝ちまでは譲れない。死を重んじる女は、そこに至るまでの旅路も重んじた。
 今更曲げられはしないのだ。そんなものは、決めた時から潰えたのだ。だから―――。


 ―――右どころか、全てくれてやる。おまえの首を寄越せ。


>レオンハルト、レプティラ、サシャ

2ヶ月前 No.786

災いを呼ぶ黒猫 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【魔帝城/魔大将の間/チェル】

反吐が出た。人間と魔族の共存だと? そんなもの、断じてあり得ないし実現させなどしない。あのような忌々しい人間どもを生かすことに、何の意味があるというのだ。
彼らは傲慢で無知だ。意味のなき争いを繰り返した果てに世界の荒廃を招き、やがては種そのものを滅亡へ導く。だからこそ、自分は決めたのだ。魔族が統一された暁に、彼らを地上から消し去ると。
一度は同じ目標へ向かって団結し、進んでいたはずの魔帝軍であったが、今や酷い有様だ。人間出身のヴェルメイユは役に立たなかったし、あまつさえそれに騙され協力するヴァンレッドの輩も現れる始末。
やはり、上に立つべきは自分であったのだと、チェルは強く自覚する。最初から、こうしておけばよかったのに、どうして今まで回り道をし続けてきたのだろうか。

「貴方の望みは早死かしら? それなら、期待に応えてあげないこともないけれど」

余裕を見せ付けてくるヴァンレッドに、チェルも相応の返答を返しつつも、内心ではかなりの焦りを感じていた。元より、自分の戦闘能力が魔将軍達の中ではそれほど高くないことは自覚している。
それを勘付かせないために序盤からハイペースで飛ばしていたのだが、成果は全く挙がっていない。正直なところ、火力は魔剣士に頼らざるを得ない状況であるといっても過言ではなかった。
チェルは魔剣士を放置するという選択を取ることで、出来る限り彼女を長く生かし、有効活用することを目論んでいたのだが、結果としてそれが仇となることになった。
あろうことか、奴が最初に喰らうべき獲物として見定めたのは、チェルであったのだ。それを聞いた彼女の顔には、明確な焦りの色が浮かんだ。もはや隠すことの出来ぬ、焦燥が。

完全に同じタイミングで放たれたヴァンレッドと魔剣士の斬撃を、何とか躱していくチェル。しかし、格上の相手二人から同時に攻め立てられれば、次第に後手後手に回るのは当然。
少しずつ体勢が崩れてきた彼女は、あと一撃というところでアーケオルニがついでとばかりに放った火炎に当てられてバランスを崩し、敵の斬撃を尻尾に喰らってしまった。
鈍い音が響き渡り、鮮血が飛び散ると同時に何かが地面に落ちる。彼女はそれを見て、多大なる精神的ショックを受けることになった。猫族としてのアイデンティティの一つでもある尻尾が、切り落とされていたのだ。
追い打ちを掛けるかのように、部下の黒猫から報告が入る。それは、何者かが伝えた魔帝の真意を聞いた魔物達が、続々と反乱を起こしているとの報せであった。

「こんなっ……! ニアの奴、しくじったわね……! どいつもこいつも使いものにならないわ!」

自分の策略が失敗するはずがない、ということはニアがしくじったということだ。そんな短絡的思考の元に彼女は結託した味方を批判し、暴言を吐き捨てる。
結局、最後に頼りになるのは自分しかいない、ということだ。ダメージを受けながらも立ち上がったチェルは、再び魔法を唱えようとするが……直前でふらつき、地面に膝をついた。
そう、尻尾を失ってしまったことにより、平衡感覚が乱れてしまっているのだ。この状態では持ち前の機動力を活かすことが出来るはずもなく、彼女の回避能力は大幅に低下してしまう。
今更逃げることも不可能。奴らを倒すしか道がないのなら、そうするしかない。チェルの全力を持って解き放たれた水が、渦潮のように荒れ狂い、魔大将の間ごと敵対者を洗い流す。
強力な範囲攻撃以外に選択肢がなかったといわれれば、それまで。こうでもしなければ生存確率は零であるが故に、彼女は懸けるしかなかったのだ。

>"龍炎公"ヴァンレッド、アーケオルニ・ランドグリーズ、魔剣士
【なっさけなぁーい(侮辱)】

2ヶ月前 No.787

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_HV3

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/17代目葛葉 ライドウ】

「ようやく終わったか、しかしゲイボルクを凌げるとは……サーヴァント、下手をすれば悪魔も凌ぐ厄介さだな」

右肩の裂傷の激痛で取り落とした刀を左手で拾って鞘に納めると、こちらに来たスカアハに手短に「回復を」と指示を出す。
スカアハは頷いて広域完全回復魔法『メディアラハン』を唱える、ライドウとクー・フーリン、そしてランサーの傷がみるみる間に癒えていく。
だが今治したのは傷口だけだ、完全回復を謳っているが傷が深ければ深いほど治すのに時間を必要とする。

「その死ににくさ、敬意に値するな。しばらくは激しく動かないことを勧める、今激しく動けば傷が開くぞ。
 そこのスナイパー、治癒は必要か?」

ライドウとクー・フーリンは肩だけで済んだがランサーはもっとひどい有様だ、普通の人間なら絶命していてもおかしくない。
確かクー・フーリンの最期は壮大な立ち往生だったと聞く、それらの逸話がサーヴァントにも反映されるならこの死ににくさも納得だ。
そしてあの狼王を討ったスナイパーにも声を掛ける、遠い場所にいるせいか怪我しているかどうかが分からない。

「しかし最後の最後まで奴の正体が分からなかったな、どちらか片方ならば説明はついたのだが……」

あのバケモノの正体は最後まで分からなかった、それだけが気がかりだった。
アレは単一のものではなく何かを”混ぜたもの”だという仮説が通ればその名に覚えはあるのだが。

>ランサー、アベリィ・シルバラード、(ヘシアン・ロボ)ALL

【返信が遅れて申し訳ありません、お相手ありがとうございました】

2ヶ月前 No.788

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【ディンカ/小屋/氷室幻徳→ナイトローグ】

「中々やるようだな……先ほどの戦いはすべて見させてもらった」
突如ラシアナの前に現れたるは黒い装甲を身にまとった男。
男はこのような言葉を吐きつつ、さきほど魔族の群れを倒した男(=ラシアナ)に歩み寄ってくる。

「君を倒したところで任務とは何の関係もないが、障害は排除しておかないとな……」
バットの『フルボトル』を取り出して振り、それを『トランスチームガン』に装填する。

『バット……』
「蒸血……」
『ミスト・マッチ……』
構えを取り、銃のトリガーを引く。
すると黒い煙が銃口から出現し、幻徳の全身を覆う。やがて煙が晴れると、そこには――

『バット……バッ・バット…… ファイア!』
蝙蝠のような意匠を持つ黒い装甲をもった戦士『ナイトローグ』がそこにいた。
蒸気と花火が吹き出て、変身が完了した。

「君も銃を使うのか……まぁ、関係ないか」
トランスチームガンをラシアナに突きつけながら、のたまった。

>ラシアナ

【Twitterのほうでキャラリセに関する返答を得られたため、投下させていただきます】
【※少し戦ったあと撤退しようと考えている(4章が近い)ためナイトローグに対する援護はNGとさせていただきます。申し訳ありません】

2ヶ月前 No.789

大統領 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【大統領官邸/大統領執務室/大統領】

時空防衛連盟が中世の時空振動鎮圧へ向かった後、大統領官邸で動きがあった。世界政府の指示を無視し、横暴を極める彼らの権力を取り上げようというものである。
ユーフォリアと世界政府の確執は公然の秘密だ。表向きはビジネスの付き合いとして良好な関係を築いているように見えて、その内情は非常に冷え切っている。
無茶な要求を続けた世界政府をユーフォリアは完全にシャットアウトしてしまっており、今では干渉することすらも不可能な状態になってしまっているのだ。
こうなると面白くないのは彼らに利権という形で絡んでいる官僚達だ。物事を一つの組織内でしっかりと完結させてしまう彼女は、目の上のたん瘤も同然。
ならば、代わりの総統を送り込むことによって、組織自体をコントロールしてしまおう。ユーフォリアには残念だが、もっと小さな組織の長でも務めてもらうのが丁度よい。

「万事上手く運んでいるようだな。しかし、後任が見つからんと実行に移せん……」

計画の準備は整ったが、肝心の後任として任命すべき人物の選定が済んでいない。ここを間違えると同じことの繰り返しになってしまうので、大統領も慎重になっているのだろう。
世界政府や地球軍に所属している間は大人しく従っているように見えても、裏では反感を抱いている可能性も否定出来ない。実際、そうした人間の多くが、ユーフォリアによって引き抜かれている。
これを防止するためには、最初から構成員を世界政府に忠実な人間で固める必要がある。少なくとも、現在時空防衛連盟に所属している人員は、全員更迭とみていい。

「他の官僚の動きはどうなっている?」

大統領が気にしているのは、他の官僚達の行動だ。自分と思想の近い人間を置いたつもりだが、彼らにも彼らなりの野心がある以上、ノーマークという訳にはいかない。
何かが起こった際はすぐに対応出来るようにするため、息の掛かった者達に監視させている。今のところは特に変わった動きもないようなので、一先ず安心といったところか。
文字通り、世界を掌握し、全ての権力を自らの手に集中させつつある大統領。その頭の中では既に、ユーフォリア排除後の未来予想図が描かれていることだろう。

>ALL
【第三章も佳境へ入りつつありますので、これより第四章のプロローグを開始致します。
 なお、大統領は第四章限定のモブキャラクターです】

2ヶ月前 No.790

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【マロニス城/ホール(城前)/ダグラス・マクファーデン】

 既に手の内の幾つかを明かし、得意戦術の判断材料を敵方へと開示している二人に対し、現時点で遠距離からの銃撃以外の攻撃手段を見せていないヴァイスハイトは、文字通り未知数の存在。それ故に、選ぶべき上策は、先ず様子見であった事は否定できまい。単なる後衛だと侮るその尚早な判断が、因果応報と言う形で己へと返ってきたのだ。
 殲滅光の直撃に伴う爆発によって生じた煙が晴れ、再び露わとなる敵の姿。纏う鎧の内部に見える装着者の素肌は、人に非ざる樹木の如し。膨大な魔力を操る事から、さながらそれは霊樹とでも表現するのが妥当か。人外、それも魔族に見られる亜人とは異なる型の存在となれば、必然的に対処法を新たに打ち出さねばなるまい。

「……果たして奴に俺達の常識が通用するかどうかは解らないが。良いだろう、任させて貰う」

 ヴァイスハイトから手渡される、一つの注射剤。人間が誤って摂取すれば少量でも致死と成り得る、取り扱いに慎重を期す毒薬。その効果の程から解る様に、対生物でも十分な結果が見込めるが、其の本来の役割は"除草剤"。此方の常識に倣うのであれば、植物が本体である敵に対し八面六臂の活躍を期待できるのは間違いない。
 然し、そんな優れた凶器でも外せば意味は無く、そして二度目も無い。毒物の精製を十八番とする彼と言えども、複数の行程を踏まねば毒を作り出す事は出来ず、予め用意された分はこの右手が掴む一つのみ。正真正銘、与えられた唯一の機会。今後の命運を左右する大仕事を委ねられた形となる。寝返り早々、こんな大役を任されるとは思わなかったが。やると宣言した以上は、やらねばなるまい。

「……一人だけで突っ走る事が何とも莫迦げた行為だったかを思い知らされるな。やはり何かを為すには、力を合わせる事が必要か」

 憤激する霊樹が司る、万物圧潰の暗黒球を前にして、ふと言葉を漏らす。独りでも理想の未来を掴み取れる物と思っていた錯覚、それに囚われていた以前の己を深く恥じて。どんな事であろうと、何かを成す為には力を合わせる事が必要なのだと、漸く思い出すに至ったのだ。
 烈風を纏い、膨張する無明の空間以上の速度で距離を取りつつも、接触の好機を見計らっている内に、崩壊するは漆黒。離脱が間に合わず、半身を呑まれ衝撃に吹き飛ばされる親友の姿が見えたが、取り乱す事無く冷静を保ち続ける。彼女の実力は十分把握している、少なからずこの程度で死ぬ程、柔な奴ではない。

「――消えるのは、お前の方だッ!」

 脅威から一人だけ逃げ延びる形になってしまった分、それに見合うだけの功績を残す事は絶対の要求。流星の軌道で急降下を果たす速度は、全身の魔力を総じて費やした上での超々高速。魔弾や魔術等の攻撃に割く魔力は、無用。唯々自らを、一発の銃弾の如くに仕立て上げるのみ。刹那の肉薄と同時に、必殺を宿した右手を樹木目掛けて的確に振り下ろし、死に至らせるであろう猛毒を盛らんとする――

>エクスデス ユーフォリア ヴァイスハイト

2ヶ月前 No.791

北方守護騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_7ig

【魔帝城/深淵の間/氷魔像ギラード】

「……拍子抜けだな」

こちら側の人間や自分が放った攻撃の結果を見て、ギラードは静かにそう呟いた。
それには二重の意味を持つ、一つは、まさかこちらの攻撃が即興の物とはいえ、それなりの連携による物だったとはいえ、一人も致命傷を負うより先に魔帝が負傷した事だ。
少なくとも、味方に目立った傷がなく、その割には魔帝の肩には傷がついた、あくまで魔帝とは、圧倒的な戦闘能力を持って魔族を支配する者と認識していたためだ。

そしてもう一つは……自分たちの回答に対する魔帝の態度だ。
魔族の支配者、それのイメージと合致するのは、良くも悪くも凝り固まった思想と、相手を丸め込む事ができる話術、もしくは強制的に相手の意見と言う物を踏み潰す力強さを持っていると思っていたが、魔帝はどちらにも該当しない。
ただ、聞いただけで、こちらの反論を潰すような事を一切していない、まるでこちらの思想にも理解を示すように、あるいは最初から自分が何をやっているか分かっているように。

ぶしゅうと音を立てて、ため息のような冷気をギラードはコアから吐き出して、苛立った様子でアイスソードを魔帝に向けて問いかける。

「魔帝よ、お前にとってこちらは見たり会話しなくて良いほど矮小に見えているのか? それとも我らの思想を踏み潰して自分の理想の世界をこの地に作り上げる気が無いのか?」

――世界を支配すると抜かすならば、もう少し、こちらの意見を否定したり、甘い言葉をかけるなりして貰いたい物だ。 これではまるで、最初から相手にやる気が無いようではないか。
成すべき事を成せ、最も「魔帝」と言う称号に不釣合いで、成すべきことをしていないように見える魔帝がそう語る。

だが、次の瞬間魔帝から漏れた言葉によって、ギラードの認識は一気に変化する。

「王国……? 魔帝、お前は……」

もしも、彼女の『魔帝』と言う名が周りから"勝手に押し付けられた"名前であり、役割だとしたらどうだろうか。
人間も魔族も、魔帝という名前の下に、支配と力の化身のように認識し、本人にもそのように振舞う事を強要する、そのような状況があったとしたならば、この奇妙な問答にも納得が行く、相手にとっても魔帝の責務と言うのは勝手に押し付けられた物でしかないのだから。

では、彼女の正体とは何か、それは……あぁ、なぜ気づかなかった? あの髪色は、魔族にはありふれた物だが、もう一つ、人間でもあの髪の色を持つ一族が居た。 ギラードは直前まで古代の女帝パージルクを思い浮かべていたために、スムーズにその結論に至る事ができた。

魔帝の放った雷が迫る、それをギラードは、自分の周囲から、魔帝へと続く道を作るように『氷の床』を作り出し、その上をスケートで滑るように高速移動し、雷を回避しつつ魔帝に接近する。
もちろん、回避と言うより接近に重点を置いている攻撃であるため、雷はいくつか命中する、ほとんどは氷の壁を逐次作り出して対処するが、それでも、氷の壁を貫いて本体にも多大なダメージを蓄積させていた、だが、ギラードは彼女を止めねばならなかった。

「奴の動きを止める、付き合え。 こんな所で……何をやっているんだプーリッシュ・ラガルデール! この世界は、お前の居た世界とはまったく違う異次元などではないぞ、お前を育てた親が愛し、そしてお前自身が受け継ぐはずだった世界の者たちが作り上げた世界だ、それを、魔帝として破壊しようなどと!!」

味方二人に動きを止めるから付き合えとだけ言って、ギラードは、その名を叫ぶ。
魔帝ヴェルメイユではなく、ラガルデール王国の"プーリッシュ"の名を。

ギラードは彼女と直接の面識は無い、だが、古代に活動していた防衛システムとして、一方的にではあるが、プーリッシュを見た事があった。 それはまだ幼い頃で、目の前のヴェルメイユは面影こそあるが、耳などが変異しているため気づかなかったが、今、ギラードは完全に細かな特徴を脳内で合致させ、魔帝がプーリッシュである事を確信していた。
ギラードは怒る、と言うよりも叱る。 彼女が居なくなった世界で、人間はブールーンと言う暗黒時代を生き抜き、魔道帝国すらも打倒して、ようやくここまで至った、それを、人類の黄金期にも等しいラガルデールの王族が破壊するなど、"殺戮システム"であると同時に、人間の守護者を名乗る彼にとっては黙ってはいられなかった。

アイスソードの切っ先がヴェルメイユに向けられ、そのままギラードは突き刺しにかかる、と思いきやアイスソードは先端で無数の鎖か、あるいは縄のような形に分かれてヴェルメイユの動きを止めに掛かる。
それは誰の目から見ても、ギラードの攻撃が殺意をむき出しにした物から、相手を止めるための物に変わった瞬間だった。

>魔帝ヴェルメイユ ハザマ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム


【同郷のギラード君、お前が魔帝の正体をバラさず誰がバラす】

2ヶ月前 No.792

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【熱い絡みありがとうございました】
【王都ロンカリア/城壁・(跳ね橋)/ランサー】
「どっかで聞いた声だと思ったら、喫煙所で会った嬢ちゃんじゃねえか」
 槍とぶつかり合い砕け散る鎌、そして大声で言われてようやく存在をはっきりと確認したアベリィに心配するな大丈夫だと言わんばかりの声色で、そう返すと同時にあちら側の師匠の声が戦地に鳴り響く。
 ランサーは、射程距離外へと大怪我で衰えているものの体を動かして一斉発射を見て一言軽口を叩く。
「そっちの師匠もやるねえ」
 吐血しながらも、その様子を見ていると一匹と一人は支えあっている事に気づく。
 王を守ろうとする騎士の如きその姿は、きっとあの首なしは高潔な奴だったかも知れないとランサーなりに思うと、アベリィが撃った銃声が鳴り響く。
 これでおしまいかとランサーは黙って死を見守ろうとした途端、狼王はまた馳せる。
「……チィ! まだ"しまいじゃなかった"らしいな!」
 ランサーは朱槍を構えて、アベリィの元へと駆け寄ろうとしたがその必要はなかった。
―――――ヘッドショット、呆気なく白狼は朽ち果ててしまった。
 その最期は狩人の手によって、ランサーは走るのを止めて、血を滴りながら二人の元へと歩く。
「ま、厄介な事すれば亡霊と変わらねえけどな」
 あの殺し方から見るに白狼は亡霊に分類されるが、狼にしては知恵が回り何よりも荒々しい姿に好意的であったからこそ敬意を示した行動をしていた。
 そしてスカアハの治癒で傷がふさがり、ライドウの言葉にこう返す。
「ありがとさん、そして二人ともお疲れさん」
 労いの言葉も添えると、一匹と一人の正体の話題に入るとランサーは首を捻る。
「確か、真名開放すればサーヴァントの真名が分かるものらしいが……見当もつかなかったな」
 記録を辿ってランサーはヒントになりそうな事を言う。
 英霊の座によって、あらゆる英霊の情報を持っている状態なのだが、あんな宝具聞いた事なかった。
 そう考えると、白狼は本当に英霊なのだろうかと猜疑し始める。
 確かにあれはサーヴァントの気配だった、だが英霊の象徴でもある宝具を明かされてもその正体が掴めないのはおかしい。
 そうランサーは白狼の遺体を怪訝そうに見た。
>17代目葛葉ライドウ ヘシアン・ロボ アベリィ・シルバラード

2ヶ月前 No.793

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【大通り乱入と反応しないと判断して、プロローグ投下ッス】

【時空防衛連盟本部/食堂/ショパン】

「君の造った博士ってどんな人なの?」
 打撲用の湿布を処方薬を差し出し聞いてくる医者。
 全身強打したので眼までも診られた際、自分はクラシカロイドだと見抜かれ、医者のしつこさのあまり負けて造られた経緯を話した結果がこれである。
「よく知らない」
 そう淡々と答えると、袋を受け取り救護室から立ち去ろうとする。
「よく知らないってアンタねえ、産みの親でしょうに」
 ショパンの淡白とした態度に、何を思ったのか医者はあきれた視線を送られたので、流石にこの台詞は無言で流せないとショパンはゆっくりと振り向いて憂いを帯びた目を向けた。
「博士の事、どう思うが僕の勝手」
 自分は自分の感じ方があるときっぱりと医者に言い残すと、痛みに顔を歪ませながらも足取り重く救護室から立ち去った。
「アンドロイドの癖につれないねえ。良くも悪くも、造られた人間に何らかの感情が湧くのがお決まりでしょうに……」
 医者はやれやれと呟いて、次の診察を始めた。



 食堂。相変わらず人が多い、IDカードをかざして、コンソメスープとラザニアを注文し取りに行くと、ぐったりとテーブルに俯せて、こんな状態になったのはと大通りの事を思い出す。
 演奏を終えると即座に立ち去ろうとしたのだが、暴徒だった聴衆はアンコールを要求し始めたのであまりにも熱狂とその圧に屈して、ムジーク全て演奏したがそれでも満足しなかったのか更に要求されて、ここで人見知りが爆発し恐怖のあまり連盟軍の人が迎えに来るまで立ちすくんでいた。
「……だから、ライブ嫌い」
 根暗だと感じさせる暗い口調で呟くと、目元で隠れていても分かるぐらいに、憂鬱そうに疲れきった表情を浮かべた。
 鷲鼻の先端はまるで昼食と打撲用湿布が入った袋を指す矢印のようである。
「……バレてないといいけど」
 歴史改変を止めるには、ジョリーの力が最適だと判断した。
 どうせ、正しい歴史に戻されるのだ敵味方に知られたくないムジークを使っても、なかった事になるならとタクトを振るった。
 利用される事(ショパンは知らないが、ムジークは解析可能である)が何よりも嫌だ。
 誰かに奪われるくらいならと、ショパンの手で消滅を望んでまで守ろうとしてくれたあの曲を、勝利の為に利用されるのが何よりも嫌だった。
 それをされてしまえば喜んでくれた、すごいと言ってくれた彼女の笑顔を踏みにじられていると憤る。
 それはきっと彼女も望んではいないだろう。
「……痛い」
 こっちに戻ってからも、動画は相変わらず録り続けている、戦地に向かう前投稿した動画は全身強打による打撲の治療専念の為に、どうなっているのかよくわからない。
 炎上しなくとも、支援者が増えてくれれば嬉しいとショパンは疲弊した状態でそう思っていた。
>ALL

2ヶ月前 No.794

炎獅子 @zero45 ★h2BOlEz4kD_otL

【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 燃え滾る灼熱の煉獄。我が身を灰燼へと滅却する紅蓮の業火を制する炎獅子は、再起の咆哮と共に力強く大地を踏み締め立ち上がる。
 理想に殉ずる狂人は未だその歩みを止めず、不可能を可能とする不条理を生み出す気炎を心に纏い。滾る情念、熱き誓いを胸に、赫奕たる烈火をその手に宿して。不退転の覚悟を背負う獅子は、戦場を疾駆する。

「死人に語る言葉は無く、その次は無い。其の点に限れば、お前は確かに正しい」
「だが、言葉にせずとも伝わり、遺る物がある。描いた理想、抱いた意志――名も知れぬ彼はそれを行動と言う形で示し、伝えてくれた」

 塵殺剣の基準を上回る初手の突撃。五臓六腑を一突きで抉り飛ばす必殺を、敵は当然避ける。其処へ追い縋る様にして、続け様に放つは焔の十七連斬。擬態を解き、本来の大蛇としての姿を曝け出したレプティラの援護も重なり、徐々に劣勢へと敵を追い詰めて行く。二つは凌がれ、六つは掠めるか追い縋り、九つを対処する間に、必殺の毒牙が喰らい付かんと敵に迫るが。
 足掻く事を止め、諦観しろ――その言葉と共に、塵殺剣は負傷した右腕を媒介に、魔力の暴走によって引き起こした風壁を蹴る様にして反転し、牙と焔剣の両方を退ける。そのまま此方を斬り伏せるべくして肉薄する敵に備えて剣を構え。心では解らずとも感覚で解る、決して相容れない不倶戴天の存在との雌雄を決するべく。相討ちであろと仕留めきる魂胆で、斬りかかろうとして。
 刹那――其処へ割り込んで来たのは、光輝を纏うサシャの姿。これまで護られる側に居た彼女が、一転して塵殺剣に追い縋る程の実力を見せた事に、獅子は驚嘆を隠せない。振り下ろされる爪撃の一撃一撃が、掠めるどころか明確な傷を刻み付けてて行くその様は見事な物で。これまでの認識が一瞬にして崩れ去るのを実感する。

「此方にも譲れない勝利と言う物がある――これ以上の犠牲は、無用!」

 最初で最後の機会。"勝利"を手にすべく、躊躇いも無く突っ込んで行く塵殺剣を追従する獅子。初動が遅れた事で、サシャを庇う選択は立ち消えたが――元より不要。今の彼女であれば、神速の刺突を前にしても生き残れると信じている。故に、彼女を激励する様にして一瞬だけ目配せをして、再び塵殺剣の姿を捉え直す。
 下段に構えた剣の片刃から焔を噴出させ、爆発的な推進による加速と共に突貫。斬撃が届く圏内へと片足を踏み込んだ瞬間に、大地を蹴り飛ばして跳躍し、大気を裂く音を轟かせながら振り上げた刃での、斬り上げの一撃。勢いそのままに天井へと激突する寸前、焔の噴射を逆転させて落下を開始すると、縦方向に回転しながらの振り下ろしの、二撃目を放つ。
 負傷した左腕を使えず片手で放つ関係上、威力は著しく低減している状態にはあるが、致命傷を与えるには恐らく十分。

「……行け!」

 着地の直後によろめき、塵殺剣に引導を渡すべき者に向けて叫ぶと――気力で誤魔化し続けて来た身体に、遂に限界が訪れ始めたのか、激しい眩暈を感じてその場で頽れる。此処で仕留め切れなかったが最期、手にすべき勝利は確実に損なわれる事だろう。

>"塵殺剣"ニア レプティラ サシャ

2ヶ月前 No.795

讐心名誉顧問 @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

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2ヶ月前 No.796

閃剣 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【マロニス城/厨房/レーヴ・カストリス】

敵対する人物が格上である際に、格下が取ることの出来る選択肢は少ない。特に一人の場合は尚更で、よほど戦略で優位を作るなどしなければ、大体の場合は敗北を喫することとなるだろう。
しかし、味方がいる場合は勝手が違ってくる。たとえ二人の戦力合計がガドン単体に及んでいなかったとしても、緻密な連携によって、その差はいとも簡単に埋めることが出来るのだ。
今のところ、敵に傷を負わせるまでは至っていないものの、手応えはある。このまま続けていけば、いずれその時は訪れるだろうと、レーヴは信じていた。

「頭脳は認めよう、そして性格もまあ慕われてる辺りそうなんだろうな。だが、オレからすれば顔はダメだ!」

自らのことをイケメンと称したガドンの言葉を"一部だけ"否定しながら、レーヴは自らのすべきことに集中する。そして……奴は、遂にこちらの攻撃の餌食となった。
彼が注意を引き付けたことにより、相手はミコルナに意識を割くことが出来なかった。結果としてそれが仇となり、ガドンの右肩は穴が空いたかのように抉り取られる。
大きな一歩。しかし、これで敵も本気になったのか、今まで取り繕っていた女としての一面を捨て、完全に男らしさ全開のまま、激しい怒りを露わにする。
反撃を警戒し、レーヴは敢えて接近せずにいたが、幸いにもすぐにそれが始まることはなかった。声を張り上げるガドン。今度は何が始まるというのだろうか。

詠唱を終えると同時に、珍妙なポーズを取るガドン。突然の奇行に思わず怪訝な表情を浮かべてしまうが、その時既に、彼の体には異常が生じていた。
横にいるミコルナの位置を確認しようとしたのだが、首が動かない。おかしいと思って一歩動いてみた時に、レーヴは自分が何をされたのかを理解することとなる。
なるほど、これは非常に厄介だ。完全に視点がガドンを中心として固定されてしまっている。上を向くことも出来なければ、下を向くことも出来ない。相手は死角を突き放題という訳である。

漆黒の魔力が広がり、無数の杭が地面より射出される。こんなもの、足元さえ見れれば簡単に回避出来るというのに、ガドンの術によってそれが許されない。
だが、突破口はある。レーヴは一人で戦っているのではない。丁度反対側に移動していたミコルナが、どのように動けばよいのか指示を与えてくれたのだ。
まずは右、に動こうとしたところで彼は考える。ミコルナのことだ、相手の視点に合わせて左右を逆転するという発想を、瞬時にすることは出来ないだろう。
つまり、左右は完全に逆。最初に動くべきは、左ということだ。後ろに下がっていてはガドンに辿り着けないので、前だけはそのまま従えば問題ないだろう。
左、右、前、前、右、右、左、前。見えた、正面に敵が立っている。近付くことさえ出来れば、もうこちらのもの。機動力を生かし、先程と同じように立ち回るまで。

「ミコルナ、お前も気を付けろ! 左、後、右、右、後、左、後で安全圏だ! さぁてと、面倒なことしてくれるじゃねえか。鬱陶しくて仕方ねえ。きっちりツケは払ってもらうぜ!」

ミコルナへの指示は、相手の視点に合わせて逆転している。こうでもしないと、彼女はその通りの方向に動いてしまうため、攻撃に当たってしまう可能性が高い。
レーヴが至近距離から放つのは、手数よりも威力を重視した三連撃。ここまで高速戦闘を見せ続けてきただけに、突然異なるタイプの攻撃が飛んでくれば、ガドンも戸惑うだろう。
彼は攻撃を終えた後も、その場に留まる。この状況で下手に行動すれば串刺しになる危険があるためだ。それは反撃をこの距離で受け止めなければならないということでもあるが、自分には信頼出来る味方がいる。彼女のサポートがあれば、どんな状況でも切り抜けられると、レーヴは確信していた。

>ガドン・バルザック、ミコルナ

2ヶ月前 No.797

力への誘い @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【魔帝城/無限回廊/フロレ・ゾンダーランド】

遂にゲイルが、ローウェンに背を向けた。彼は自分のすべきことを理解したのだ。そう、それでいい。矮小な人間の枠組みに囚われる必要など、最初からないのだから。
完全に堕ちたという実感が、フロレの中にあった。元より兆候はあったのだから、今更不思議なことではないが、晴れて彼は魔族の一員となり、同じ道を歩む。
こちらを真っ直ぐに見据える瞳、そこに偽りは感じられない。差し伸べた手に、ゲイルの右手が伸びてくる。少しだけ、安堵を覚えた。若き騎士が、光の元へ辿り着いたのだという事実に。
しかし、彼女の思惑通りに進んだのは、そこまでであった。指先が触れる直前、唐突に開かれる右手。訝しむ暇すらもなく、そのまま右手はフロレへと突き出される。
力任せから一変、自らの長所を活かした戦術へと切り替えてきたゲイルを目にした彼女に、明確な焦りが芽生え始める。籠絡に失敗したこともそうだが、戦闘態勢にない状態で不意を突かれたことも、大きく影響していた。
それでも、すぐに落ち着いて魔法障壁を展開すればどうにかなるはず。しかし、極限域の速度に達したそれに対応するにはあまりにも遅すぎたらしく、フロレの肉体は無数の風の刃によって斬り裂かれていった。
味方さえも欺く演技を、力に溺れた今のフロレが見抜けるはずもない。先程まで余裕綽々であったはずの彼女は、完全に劣勢となり、防戦一方の状況に追い込まれてしまう。

「あり得ない、このわたしが負けるなど、あり得ない……!」

力は絶対だ、敵うものなどいない。魔族の前では人間は無力。そう信じ切っていたフロレは、自らの可能性を、成長の余地を、完全に潰してしまっていた。
皮肉なことに、停滞し、狭い枠組みの中で完結してしまっていたのは、ゲイルではなく、自分自身であったのだ。とはいえ、ここまで堕落しきった彼女では、もはやそのことに気付くことすらも出来ない。
闇の奔流が身体を蝕み、左腕を消失させる。驕れる者は久しからず。人間を弱き者であると侮り、力を温存し続けていたツケが、ここに来て回ってきた。

「フィラッサ様……フィラッサ様ぁ! わたしにもっと、もっと力を―――」

フロレの瞳に映るのは、力のみ。彼女は最期の瞬間まで、自らを導いた者の名を叫びながら、光の粒子となって消えていった。既にその肉体は、人間ならざる者へと変貌を遂げていたのだ。
"愚かな弱者"が消え去り、静寂が訪れた無限回廊に残されたのは、彼女が振るっていた一本の剣のみ。邪悪な心の持ち主に染め上げられたかつての聖剣は、何も語らない。

>フロレ・ゾンダーランド(Chrono Crisis)@自らの過ちを最期の瞬間まで知ることなく、なおも力を求めた末に、人間の可能性の力に打ち破られ、消滅。


>ゲイル・ベネルド、ローウェン・アルベリウス
【自らの目的を見失った愚か者に救いはなかった。お相手ありがとうございました】

1ヶ月前 No.798

退廃的世界理論 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_7ig

【大統領官邸/庭園/リコルヌ・エルヴェシウス】

大統領官邸の広大な敷地に作られた庭園は、美しい自然と噴水を堪能出来る上、一般人の立ち入りも許可されていることから、リヒトルザーンでも有数の観光スポットだ。
柔らかな日差しは強すぎず弱すぎず、心地よい陽気。今が丁度秋口ということもあり、気候は安定しており、写真を撮る者や、ベンチでくつろぐ人の姿が見受けられる。
そんな庭園の奥、世界政府の官僚のみが立ち入りを許された区画に、リコルヌは佇んでいた。彼女は今日、大統領に呼ばれてここへやって来たのだが、既に用事は済んだようである。
時空防衛連盟の洗浄計画。反抗的態度を取り続ける現総統のユーフォリア・インテグラーレを更迭し、新たに忠実な部下を送り込むことによって、組織をコントロールするというもの。
リコルヌ自身、労働階級の強い味方であるユーフォリアとは相容れない以上、彼がそうしてくれるというのであれば願ったり叶ったりなのだが、現実はそうもいかない。
彼女が秘密裏に協力している歴史是正機構においては、今まさに大統領の抹殺が実行に移されようとしているのである。理由は単純、ヘルガが未来でものさばる奴の姿を目にしてきたからだ。
つまり、今のまま何もしなければ、大統領はこのまま世界の頂点に君臨し続けるということ。元より、世界の改変を目的とし、時間遡行を行ってきた歴史是正機構としては、そのような展開は面白くない。
なれば、現在を直接変えてしまおうと思うのは、必然のことであったのだろう。彼女の性格を考慮すれば、何ら不思議ではない選択である。リコルヌからしても、今の大統領は理想とする世界のために、打倒であるとはいえない人物だ。故に、わざわざそれを妨害するつもりはない。

「私も準備を進めなければなりませんね。今のままでは、歴史是正機構が官邸に侵入を果たすのは難しい」

影に潜み、活動を進めてきた歴史是正機構の面々は、勿論顔を知られていないという利点こそあるものの、だからといって大統領官邸に堂々と足を踏み入れることが出来る訳でもない。
昼夜を問わず警備が厳重な敷地内に侵入するためには、前準備で様々な工作を仕掛けておく必要があるだろう。リコルヌは携帯を取り出し、とある場所へ電話を掛ける。
今の世界政府の官僚は、汚職に手を染めている者がほとんどであり、それは彼女も例外ではない。目的のためには手段を選ばず、ここまでのし上がってきた身からすれば、それは些細なことであった。
リコルヌが行おうとしているのは、警備員の買収だ。彼らは仕事でここを守っているだけに過ぎず、熱意を持って仕事をしている人間は恐らく少数派であることだろう。
仮に失敗したとしても、その日に限って特別警護を配備するということにしておけば、別の警備会社を派遣することも出来る。不測の事態に備え、作戦というものは複数用意しておくものなのだ。

>ALL
【既に中世で戦闘を終えたキャラクターも、未来へ帰還(もしくは過去の時代のキャラクターの場合は移動)し、プロローグへ参加して構いません】

1ヶ月前 No.799

騎士団長 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/無限回廊/ゲイル・べネルド】

暗中からのびる誘いの魔手。己の不甲斐なさに悩み、力を求めて喘ぐ若き勇者に示される、救いという名の奈落への一本道。討ち果たすべき敵を前にして力及ばないゲイルへ、その手を差し伸べるフロレ…かつて魔将軍の一角"混沌のフィラッサ"が彼女を篭絡するのに用いた手段と全く同じものである。
安全地帯に腰を下ろし、冷静かつ客観的にいられる間は縁のないことだと思うだろうが、戦場に身を投じた途端に世界はガラリと変わる。恐怖が生まれ、生への執着はより一層強くなる。
そのために必要不可欠なのが力だ。単に敵を倒したいから欲するのではない。生き残りたいから、名誉を得たいから、地位を確立したいから…様々な目的のために力が必要とされる。
裏を返せば力一つでそれらが叶うのも事実。こと戦乱の渦中にある中世に於いて、弱きは罪。フロレ・ゾンダーランドを腐りゆく沼底へと引きずり込んだのは、決して単純な心理などではないのだろう。
強く、気高く、騎士達を纏め王国を守らなければならない立場にあったからこそ、彼女の目には、混沌の魔将によって拓かれた道が魅力的に映ったに違いない。

それに関しては若き新騎士団長も同様。彼女と同じ苦難を経験し、同じ悩みを抱え、魔帝城を訪れた。まさにフロレが歩んできた道を辿っているわけだ。
彼があと一歩というところで踏みとどまり、フロレの二の舞にならずに済んだのには幾つかの要因がある。まずは一緒に戦ってくれたローウェンに感謝しなければなるまい。彼の訴えかける声による制止は、少なからずゲイルの精神に働きかけてくれていた。
そして何より大きかったのは、フロレの犯した過ちを知っていたこと。同じ轍を踏んではいけないと心に留めていたからこその結果と言えよう。

「…団長」

強大な力を持つ魔族と言えど、風の前の塵に同じ。吹き荒れるミストラルと雪崩れ込む闇の奔流がフロレの生命力を奪い、左腕のみならず彼女そのものとを無へと還す。
人ならざるモノへと変わり果てた身は、跡に肉片一つ残さない。最後まで我に返ることなく、己が全てであろうフィラッサの名を口にしながら消えていくかつての騎士団長を、ゲイルは複雑な面持ちで眺める。
この光景を忘れないために。そして自分が騎士団を率いるにあたって、同じ過ちを繰り返さないために。

無限回廊の冷たい床に横たわる、底の見えない漆黒に染まった剣。ゲイルの記憶に刻まれているのは、清く美しく、聖剣以外の表現が見つからないような青白い輝きに包まれたソレだったが…今や見る影もない。
魔道に身を堕とした持ち主をを体現したかのような禍々しさだが、迷わず手を伸ばして拾い上げる。心苦しいことだが、騎士団の皆には真実を語らねばなるまい。

「迷惑をかけたな。やっぱり俺はまだまだだ…

でも、ありがとう」

拾い上げた剣を腰に差し、すっかり迷惑をかけた戦友に詫びを入れる。今思えばこの場に立ち会った人物全てが王国騎士団の関係者であり、人と魔族が共存できる時代を目指しての戦いとは異なる趣旨の下に進められていたように感じる。
見方を変えれば、フロレもまた魔族に利用され、人生を狂わされた被害者なのだ。正騎士団長として新たにした決意、在りし日のフロレへの尊敬。そして激しく揺れ動く時代の中、最後まで王国に尽くすという信念。
それらを込めて黙祷を捧げると、ゲイルは戦友と共にその場を後にしたのだった。

>>フロレ・ゾンダーランド、ローウェン・アルべリウス


【お相手いただきありがとうございました!】

1ヶ月前 No.800


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