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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/03/04 20:57 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_cjE

―――現在は、第四章です―――


第四章:「昇華の革命」

中世にて起きた人類と魔族の闘争は、本来の歴史にはない、両者の和平という形によって幕を閉じることとなった。

幸いにも、時空断裂が起きることはなく、時間は止まることなく紡がれている。この"小さな"改変により、未来の人類と魔族の関係が改善されたのは、幸運というべきか。

しかし、帰還した時空防衛連盟の面々を待ち受けていたのは民衆の歓迎などではなく、未来世界にて発生した新たな問題であった。

突如として世界政府から出される非常事態宣言、錯綜する情報。そんな折に飛び込んできた、大統領が暗殺されたという報せ。

世界政府及び時空防衛連盟の情報系統が完全に混乱している隙を突いて、歴史是正機構が遂に革命を起こす。

彼らは人類を昇華へと導くため、今、この時代の"改変"を目論んでいたのだ。古代や中世の改変失敗も、全て計算の内であったのである。

まともな準備も整わない内に、この日のために準備を進めてきた相手との戦闘を強いられる時空防衛連盟。

もしも、敵が歴史是正機構だけであれば、どれだけ幸せだったことだろう。彼らは、自分達を疎ましく思う全ての勢力と、一度に対峙することを迫られたのである。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

第四章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-222#a


・現在イベントのあるロケーション

大統領官邸:大統領暗殺事件

時空防衛連盟本部:時空防衛連盟と歴史是正機構の全面戦争

歴史是正機構本部:時空防衛連盟と歴史是正機構の全面戦争

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喚び起こされし力 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/海底洞窟/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 相棒が紡ぐ詞の数々は大地を静かに鳴動させ、隆起した土塊を飛礫の如くに投げ飛ばして敵へと殺到させて行く。速度と重量を兼ね備えた土塊が大群を為して襲い掛かる光景は、戦素人である勇者に僅かな期待と言う物を湧かせる。現実的な観点から窺えば、魔族としての格差に加え、元兵卒と魔将軍との間に開かれる隔たりの広さからして通用しない可能性が高いのは、想像の範疇と言えよう。

 勇者に比べてある程度戦慣れしているロコは、命中の可否の予想を冷静に判断して見せ、余程の事が無い限りは、効果を発揮する事無く終わる物と予見していた。そして事実その推察は正しく、不死公は近場に散布した粉によって死者を蘇らせ、土塊を受け止める肉壁として利用する事で直撃を未然のままに終わらせている。場から一切動かぬ防御手段を取っているが為に、先の振動が齎した効力は皆無と言っていい。

 その態度こそ威厳は感じられないものの、実力に関しては紛れも無く魔将軍、立ち向かうに当たって難敵と成り得る存在である事を、改めてアンナローズは認識せざるを得ない。果たして勝ち目はあるのか、そう懐疑を抱かざるを得ない程に、彼女の心境は揺れ動いていた。

「えっ……!?」

 攻撃を凌ぎ切った敵は、跨っていた霊馬から降りると、自身の魔力を馬へと分け与え、報復として魔術に依る反撃へと打って出た。内容は単なる火焔の球、判断の機会を誤らない限りは勇者でも回避は容易だ。但し、判断速度に於いてはロコの方が上回り、勇者の判断よりも早く土の防護壁を作り出す事で、迫る焔球を遮断して見せる。互いの魔力量の差か、一発で土壁が音と共に崩れ落ちる羽目になるが、辛うじて窮地を脱する事に成功した。

 ――少なくとも、勇者の認識に限れば、そうであった。

 実情を語れば、火焔球など最初から敵を幻惑するが為の"囮"にしか過ぎず、寧ろ本命は続け様に放たれる拘束の一手にあった。勇者の非力さに対する指摘の言葉と共に、不死公の持つ棺桶から乱射される包帯の塊は、意識を逸らされた勇者へと容赦無く襲い掛かる。突然の襲来に驚愕を隠せない彼女であったが、辛うじて間に割り入った相棒の手助けによって難を逃れる。

 然し、その代償は重く。自分を目掛けて放たれた包帯の嵐を処理し、更には主の分まで処理しようとしたロコは、対応し切れずに包帯を真面に受けてしまい、頭以外の全てを完全に拘束されてしまう形となってしまった。戦力の八割はおろか、実質十割を占めていた相棒の喪失はかなりの痛手に等しく、状況は正に絶望的。剣術以外の戦う術を持たず、その剣術でさえも人の領域を逸していないとなれば、突破は確実に不可能と断言できる。

「そんな……ロコ……」

 一瞬にして命運を絶たれる事になった勇者の表情が、悲痛に歪む。戦いを委ねていた相棒が、無力な状態へと蹴落とされた中で、此処から先をどう戦い抜けば良いのか。平静を喪い、取り乱しつつある心で必死に模索して行く彼女だが、一向にその答えは見つからない。
 無謀にも突貫した所で、それは火中へと飛び込むのと同然で、即座に拘束される未来は目に見えている。ならば、死に物狂いで耐えつつ、一瞬の隙を見出すか。否、それも無理だ。不死公の繰り出す攻撃の苛烈さを耐え抜く事など、先ず不可能。最初の隙を見つけるよりも速く、此方が追い込まれる。
 だとすれば、尻尾を巻いて逃げるか――冗談じゃない。大切な親友を置いて、みすみす逃げる事なんかできない。そもそもそんな選択を考えること自体は、彼女の思考には存在しない。

「…………誰か、助けて」

 そうして逡巡する思考の数々が、導き出した答え。其れは神頼みにも等しい、在りもしない存在へと助けを乞う選択であった。傍からも、そして自分からも。追い詰められた大馬鹿者が見せる、嘲笑せずにはいられない情けない恰好に見える事だろう。何とも無駄な行為だ、いい加減現実を受け入れろ――とでも言いたくなるような、無様な姿。
 然し――然し、そんな惨めな彼女の願いを、聞き入れんとする者が居た。嘗て魔帝へと挑み、その命を散らした一人の男が残した"希望"。別れ際に父から娘へと授けた最後の贈り物を通して、切実なる願いを聞き届けた者達が今、動き始める――

「…………これは、父さんの……」

 眩い煌きの光を放ちながら、自ずと宙へと浮き始める首飾り。紅水晶に集う真紅の輝きが、無数の軌道となって天へと巨大な魔法陣を描き出して行く。陣の役割は、空間と空間を繋ぐ巨大な"門"。多少の攻撃では妨げる事すら叶わぬ強固な陣が、この海底洞窟へと一つの物質を運び込んで行く。
 それは、暗闇に閉ざされた周囲一帯を明るく照らし出す光輝の剣。一見すれば単なる剣に過ぎなくとも、その真実を知ればそれが如何に脅威と成り得る可能性を秘めた物であるかが解るだろう。

 転送を完了し、勇者の眼前へと突き刺さった光の剣。その輝きに魅せられるがままに、これまでの剣を捨て、新たなる剣を引き抜いたその刹那――彼女へと急激に流れ込んで行く膨大な智慧の数々が、その脳髄を激しく狂わせ、強烈な頭痛を引き起こさせる。余りの激痛にその場で滑稽な踊りを演じ……そして、頭痛が収まると、漸くその視線は不死公の方へと向けられた。

「……不死公ネクロニア。確かに君の言う通り、人は不出来な存在だ。完璧には、程遠いよ」

 先程とは打って違い、明確なる闘志の炎を宿した瞳。光輝の剣の切先を向けて、新生を迎えた勇者は構えを取る。それは無謀では無く、勇猛なる突貫の為の物で。刃の輝きを、碧色へと変化させたその刹那――大気を引き裂く暴風の加護が、剣へと纏わりさる。
 それは遥か古の御伽噺――人々から忘れ去れた精霊の一つ、風を司るもの"ウンディーネ"の力。彼女が手にする聖剣には、それのみならず炎を司るもの、水を司るもの、大地を司るものの力が封じ込められているのだ。

「それでも、変わる事は出来る。完璧に近づく事も、遠のく事も――そう信じているからこそ、僕は戦うんだ。ロコと一緒に、人と魔族、その二つが共存できる未来を掴む為に……!」

 大地を蹴り、無数の残像を残す程の速さで突貫を開始する勇者は、先ず最初に上空へと飛翔すると、剣を揮って無数の風の刃を撃ち放つ。敵では無く、包帯によって拘束されたロコを目掛けて。風は勇者の制御下にある限り、彼女の思うがままに動く。それ故に、例えロコが暴れ回ったとしても必ず無傷のまま解放する事が可能だ。更に、勇者は手傷を負った部分に巻かれている物だけは残す様に仕向けている。解放が出来て、応急処置もできる一石二鳥だ。

「吹き飛べぇぇぇぇッ!」

 続いて現在位置から少し前方へと出てから再度剣を揮うと、今度は荒れ狂う巨大な竜巻を引き起こした。轟く音を響かせながら具現する竜巻は、砂埃や小石を巻き上げながら、凄まじい勢いで敵の方へと猛進して行く。巻き込まれたが最期、狂乱する風切りの刃によって粉微塵になるまで裁断される事となるだろう。
 ロコの少し前へと着地して、彼女を護る騎士の様に佇むアンナローズは、竜巻が向かう先の方角をじっと見つめる。これからは自分がロコを護って見せると言う決意を、強く胸に刻みながら。

>不死公ネクロニア ロコ

2ヶ月前 No.601

"不死公" @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【魔帝城/海底洞窟/"不死公"ネクロニア+ドラゴンゾンビ】

「くくっ、言葉だけは勇ましくて結構、だが足手まといの人間を抱えて勝てるほど、この不死公の名は穢れていると思っているのか!?」

"不死公"、それはアンデッドの絶対的な統率者にして、自らも騎兵として最前線に赴き、無数のアンデッド軍団を指揮してあらゆる戦場を勝利に収めてきた、紛いなりにもチェルに利用価値が十分にあると判断され、スカウトされ、その歪んだ趣向を知った後も付き合う程の実力者。
中位の魔族でしかないロコが、足手まといの、精々剣技しかないような人間を庇いながら戦うのは無理がある。

それでは、簡単に弱点を突かれて攻撃を当てられてしまうよ?
そう笑いながら、ゴーストホースの攻撃が作戦通り相手の注意を逸らすことに成功し、バンテージキャノンを何発も撃ち込んだ。
結果は予想通りだ、まさか本当にロコが全弾受けてしまうのは想定外で、勇者の方は全く拘束できていないが、それでも、敵の戦力の大半を占めるロコの自由が完全に奪われた以上、既に勝負は付いたも同然だ。

私に構うな……
そんな……

そのような人間を殺し続けてきた不死公には見飽きている光景、だが、それを不死公は美しいと考えているために、あえてその時に手は出さなかった。
だが、会話が終わり、助けを求める声をアンナローズがあげると、畳み掛けるようにネクロニアは言った。

「あぁ助けてやるとも、私に永劫の自由と忠誠を捧げろ、そうすればロコと一緒に幸せに暮らせるんだからね? だからこれに当たるんだ、一発だけ撃ってあげよう」

来い、そう呟いた後、ネクロニアの棺桶が構えられる。
幾ら勇者殿といえど、あの様子では間違いなく自分を愛する忠犬と一緒に死ぬよりは、永遠の虜囚を選ぶだろう。

なぁに、そう邪険には扱わないさ、私は可愛い子には優しいんだ。
そんなネクロニアの笑みが浮かぶ、だがその時……光が発せられた。

何が起きた?
そうネクロニアは相手を確認するが、その力は……ありえない、こんなことは。

「精霊と剣が出た所で何だという! お前の行く末は変わらない、人間たちに明日など無い!!」

これさえ、これさえ当たれば全て終わる、幾ら強力な剣をもてたところで、拘束されて動けない事には意味が無いのだから。
バンテージキャノンが一発といわず何発も発射される、だがそれは……ロコに巻きついた包帯を引き裂くついでとばかりに、破壊された。

そして、続いて発生するのは竜巻、避けれない、だが、当たれば最後だ。

――普通ならね。

ニヤりとネクロニアが笑う、そして、無数の刃に切り刻まれ、ゴーストホースごとネクロニアは消滅した、かに見えた……だが、そのとき、無数に飛び散った肉塊が、急速に一箇所に集まっていたかと思うと、あの竜巻の中、ボロボロになりながらも残っていた棺桶が開き、そこから溢れ出た魔力が肉塊へと注がれ……元の姿に戻っていった。

「面白い術を使うじゃあないか、人間。 だが無駄だよ、不死公の名は伊達ではない、最高位アンデッドたる私は、弱いアンデッドたちと違って、何が起ころうとも、死なないのさ! さあ、私も切り札を使うとしようか!!」

その瞬間、ネクロニアの背後の地面から、凄まじい轟音と共に、巨大な"骸"が姿を現した。
それは、魔族中でも一二を争う最強の種族、龍族の物であった。

ネクロニアは優れた将である、彼女ほど部下やアンデッドを使える者は魔帝軍にはそういない、となれば当然狙われるのは指揮官である彼女、だが、指揮官である彼女が不死であるとするならば? 主戦力が、無限に再生が効くアンデッドだとするなら?
だから、無駄なんだよ? そうネクロニアは問いかけた途端、先ほど肉壁として使ったゾンビたちが撒き散らしたネクロウィルスの効果が出たのか、今度はまた別の、さらに古い死体を呼び起こしたのか、スケルトンと呼ばれる武装こそしているが、骨だけで、肉など全く残っていないアンデッドが無数に展開された。

「フフッ、少々自分でも、問題がある言動こそしていると自負しているが、それでも私の寛大な申し出を何度となく断ってくれたんだ、この際、死んでしまっても仕方が無いね……? 撃てェッ!!」

ネクロニアの戦術は、ただ死体を起こすだけではない。
続いて彼女が行うのはゴーストホースに使った魔力供給、だが、その量は先ほどとは桁違いだ。
彼女の膨大な魔力を注がれたスケルトンは、最下級のアンデッドでありながら、中級の魔物のリッチが使うような中級攻撃魔法を行使可能となり、ドラゴンゾンビは、今一度その全盛期の力を呼び起こす。

いや、むしろ全盛期どころか、胃酸の混じった、敵を消化する効果も持つ炎のブレスだ、本家越えと謳っても良いだろう。

不死公の攻撃指示と共に、ドラゴンゾンビは胃酸の混じった黄色い火炎のブレスを放ち、周囲に無数に展開されたスケルトンは、中級攻撃魔法を一斉にアンナローズに浴びせた。
……しかし、それと同時に、彼女の復活のトリガーであり、ほとんどの攻撃の媒体となっている棺桶に、ヒビが入ってる事に、彼女は気づいていなかった。

>ロコ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム


【たぶん次で退場しますので大技撃っても大丈夫ですー! まだ続ける場合は言ってくだされば対処しますー】

2ヶ月前 No.602

Charlotte @kirieru ★Android=ryLO8WYMEG

【魔帝城/舞踏場/リュドミラ】

双龍の如く襲いかかる蛇腹剣がシフォンを切り裂こう迫っていくが彼女が隆起させた氷柱に防がれる。
しかしリュドミラにとって予測はついていた。
すぐに次の攻撃が来る。
案の定、シフォンはリュドミラに向けて火炎弾を数発、発射そしてそれをリュドミラの周りで起爆させると爆炎がリュドミラを包み込んだ。
黒煙が晴れた先に現れたのは背から大きく拡げた双翼で体を包み込み爆炎を防いだ姿であった。
双翼の表面は少し焦げており煙が立ち込めている。

「私の翼を焦げ付けさせるなんて......アンタ人間の癖して少しはやる見たいじゃない.....ちょっとムッときたわ」

拡げた翼を背に収納し肩に付いた煤を手で払いながらシフォンに嫌味を言うとリュドミラが何かを思い出した様に呟いた。

「アンタここ最近にでしゃばり出してる『未来人』って奴でしょ.......あの騎士団の中でアンタの顔何て今まで見た事もないし.......それに魔力量......アンタ未来人の奴らの中でも結構な地位の人間でしょ.....」

リュドミラはここ最近でこの中世の世界に現れた『未来人』の事に対しての件は色々と触れている。
それに魔将軍の立場上、敵国の騎士団の構成員等の情報を逐一確認している。
リュドミラが知り得るここ最近の騎士団の情報ではシフォンという騎士団員は今まで会った事も情報さえ知り得なかった。
つまり目の前に居る人間はこの世界の人間ではなく別の時空からやって来た未来人という事である。

「まぁ良いわ.......未来人であろうとそうで無かろうとアンタは私に殺されるんだから!」

一通りシフォンとの会話を済ませると一言何か呟くと足下に紫の魔方陣が描かれるとシフォンの頭上に黒紫の球体が発生する。
いつの間に魔術の詠唱を済ませたのかリュドミラは恐るべきスピードで魔術の詠唱を終えたのだ。

「超重力球ってヤツに押し潰された事があるかしら?」

リュドミラはそう不敵に笑うと超重力球と呼ばれる物体をシフォンに向けて落とすのだった。


>>シフォン

2ヶ月前 No.603

ギラ・ズ―ル @blize859☆wKMk21AYDk6 ★XfXF0jdJYf_qTF

【ディンカ/魚市場/ギラ・ズ―ル部隊】

マロニス兵士たちの悲鳴と共に響き渡る銃弾の音。
ばったばったとなぎ倒される兵士たち。
その向こう側には無骨な機械兵が列をなして進軍していた。
ギラ・ズ―ル…この世界とは別に存在する世界のロボット兵器「MS(モビルスーツ)」と呼ばれる人型兵器。
ビームマシンガンから放たれるビームは兵士たちの鎧を突き抜けハチの巣にする。
弓で攻撃してもその頑丈な装甲を貫くこともなく、マロニス兵士たちは為すすべもなく虐殺されていくのであった。

「ジ―クジオン、ジ―クジオン、ジ―クジオン…」
「ネオジオン万歳。」

ギラ・ズ―ルの軍勢から憎しみにも恨みにも似た口調で同じ言葉を繰り返しただただ殺戮の為に進軍するのであった。

≫ディンカ魚市場ALL

【中々絡める場所がなかったので改めて文を投下させていただきます。もしご指摘がありましたら申し上げてください。】

2ヶ月前 No.604

黒鉄一輝 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 ディンカ/魚市場/黒鉄一輝 】

 化けの皮が剥がれた――常人は今のテルン・エルウェーウィンの姿を見たとき、第一にそんな言葉を贈るだろう。
 欲望とは建前を隠れ蓑にして成立する。自己正当化を繰り返し繰り返し繰り返し、己の成したいことを発散する。
 では建前をかなぐり捨てた場合はどうなるか。
 考えなくても分かる話だ。欲望のままに、一切のリスクやダメージのことなど度外視して行動を開始する。
 それは純粋性が大きければ大きいほど、その鎖から解き放たれた時の反動もまた大きくなる。

 要するに、今のテルンは獣と何ら変わりはない。
 防御壁の展開のタイミングをズラさせるために仕掛けた残像<フェイク>。
 それにすら対応することをせず、肩口に一閃を受けてもなお見開かれた目をぐりんぐりんと掻き交ぜている。
 人を甚振り本性を引きずり出し、それを徹底的に甚振って弄び愉悦を覚える。

 それを行う当人の本性が一切の包みなしに剥き出しにされているのは、一体どういった皮肉か。
 目の前の相手の狂気じみた変化。
     、    、    、  、  パーフェクトヴィジョン
 だがそれでも、動じることはない、――既に《完全掌握》は起動している。

 、  ・・・・・・・・・・・・・・・
「ええ、あなたなら此処は必ず捕まえに来ると思った」

 ――その照魔鏡の如し洞察力は、とうにテルンの本性を見抜いていたのだから。
   彼女は自分という存在を知った時、その内側の獣性を露わにして捕まえに来るであろうと。
   だから、慌てることもしない。喚くこともしない。動揺することもしない。

「あなたの歪みは直線的なものではない。
 あなたならばもっと手順を踏んで、狡猾に事を進めていた――あなたらしくないですよ、事を急<せ>くのは」

 冷静な指摘。
 それは、彼女が犯した判断のミスを分析したもの。
 相手の理を全て暴き出したうえで――視線の先に映る邪なる聖女の思考を、ほぼ完璧に複製<トレース>した結果。
 今までの彼女であれば、ダメージを受けた場合は徹底的に後退し魔術による物量作戦を仕掛けに来る。
 そうして相手の精神力と体力をゆっくりと削り取っていき、言葉による揺さぶりも兼ねて食べ頃の時に殺していただろう。
 遠距離からの立ち回りを徹底されていれば、《完全掌握》によって根幹を見抜いていたとしても切迫した勝負になっていただろう。

 泥のように、世界が遅くなる。
 物理的なものではない、――分泌される脳内物質が、体感時間を極限にまで停滞させている。
 掴みかかろうとするその手。連なるように展開される、棘糸につながれた無数の十字。

 互いの距離はほぼ零。
 だが、勝負はハッキリしていた。
 何故なら――。

「第七秘剣、《雷光》」

 ――自分を捕らえる前に、音の速度で振るわれた刀がテルンの首を断ち切ろうとするのだから。
   それは、手品でもなんでもない。正真正銘、"刀の振りすら認識できない速度の一閃"。
   気付いた時には断ち切られる。それは、技を主とする日本刀の神髄。

>テルン・エルウェーウィン

2ヶ月前 No.605

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【王都ロンカリア/大通り・北/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

悪魔の誘惑。肉の快楽は強烈な酸が如く理性を融かす。最初こそ嫌悪し拒絶する少女だったが、健闘も虚しく間もなく陥落してしまう。
優しく艶やかに撫でられて火照る少女の体。愛される悦びで少女が昂っているのを感じて、悪魔もつい大人気無く擦る手に熱が入る。困惑と快感が混じり合った、か弱く愛らしい嬌声が漏れる度、悪魔の心もまた昂って行く。
荒い吐息を重ね合わせ、淫靡な水音が二人を繋ぐ。唇を塞いでは唾液を丹念に交換して味わい、舌を絡ませる度その感触に身を奮わせる。悪魔は幾度となく繰り返して来た行為だが、少女にとっては初めての体験。痺れる程の快楽と、眼を眩ませる程の肉欲。甘く激しい蜜の遣り取りは、初心な少女には刺激的過ぎただろう。紅潮した頬。甘い響きを含んだ荒い吐息。切なそうに潤んで見つめる虚ろな瞳。生まれて初めて味わう快感で汗ばんだ肢体。溢れ出る未知の快楽への欲望。二人の距離が空いた時には、健気にも剣を取った強さは既に無く、少女はただ"満たされたい"と言う渇きに突き動かされていた。

「ストラーヴ……そう、ストラーヴと言うのね。ふふふ……そんなに焦らなくても私は逃げないわ。こんな所だとゆっくり貴女を愛でてあげる事も出来ないから、私達の"家"に帰りましょう。それから、ゆっくり愛してあげるわ」

最早少女は魔性の虜。人肌の暖かさへの渇望に全てを塗り潰された、憐れな童女(ラプンツェル)。
女はこのまま肉欲に任せるままに一線を越えようかとも思ったが、それでは楽しめない――否、今我慢すればもっと楽しめると気付いて踏み留まった。少女の唇に人差し指を当てて"待て"と伝える。それから少女の腰に手を回して抱き寄せて、周りの喧騒もいず知らずゆるりと歩き始める。快感に震え更なる悦びを求める少女を諭し、支えながらも自らの足で歩かせる。意識を奪って連れ去ろうとしないのは、彼女が自分の意思で愛欲を求めているのだと確認させる為。
ふと視線を下にやれば、少女が取り落とした剣槍が目に入る。自分には必要無い物ではあるが、いずれこの少女を戦わせるならば必要となるだろう――そう判断して、女はそれを手に取った。

「ふふ……可愛いストラーヴ。私のストラーヴ……貴女の心も体も、私のものよ……」

宥める様に、弄ぶ様に。耳元で甘く優しく囁いて、心を蕩かす毒蜜を少女に馴染ませる。嘆きと怒りと欲望に満ち満ちた雑踏も聞こえない。あるのはただ、快楽によってもたらされる愛欲だけだ。

……雷霆は地に堕ちた。最早星霜の輝きも届かない。

>>(ストラーヴ)

2ヶ月前 No.606

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/舞踏場/シフォン・ヴァンディール】

一太刀受けただけで相手の素性を突き止め、シフォンが未来人であること、そして組織の中でもそれなりの位についていることを言い当ててくる龍族。
鋭い眼差しが見抜くのは敵の太刀筋のみに非ず。逞しき双翼は天を舞うためだけの代物ではない。この度は防御に、それも生身で受ければひとたまりもない爆風を遮るという大きな役目を果たす。
そんな彼女の、"龍であること"そのものを活かして戦いを組み立ててくる様は、魔将軍の名が伊達ではないことを示唆していた。元より出し惜しみなどするつもりはないが、こちらも持ち合わせる力の限りを以てぶつからねばなるまい。
魔帝軍の勝利、ひいては時空断裂を阻止し、大河の如く続くであろう未来を護る…その壮大な使命を成し遂げるには、旅の途中で倒れてなどいられないのだ。

「"死なばもろとも"ですわ」

未来人であろうがなかろうが討ち倒すという宣言を受け、万が一そうなるのであれば道連れにすると顔色一つ変えずに言い放つ。まるで鋼のような信念。
簡単には砕けず、押しても引いてもうんともすんとも言わない。お嬢様育ちにしては少々暑苦しい言動かもしれないが、命を燃やして未来のために尽くす仲間達に影響されたと考えれば不自然ではない。

しかし意志だけでは生き残れないのが戦場というもの。シフォンが追撃を繰り出すより圧倒的に速く詠唱を終えるリュドミラ。突如としてシフォンの周囲を塗り潰す影…見やれば頭上には黒紫色のエネルギー塊らしきものが浮かんでいる。
見た目だけでは属性を判断できなかったため、こちらもすぐさま防御技が撃てるように魔力を充填。して、球体の正体は―――

「くぅっ……!」

落下、忽ちかかる負荷。球体が孕んでいたのは普遍的な属性などではない。対象を地にへばり付かせ、最悪圧殺してしまいかねない重力。咄嗟の判断で水魔法を発動し、高出力の水膜で以て"超重力球"の軌道を逸らしたものの、シフォンの身体には骨のきしみそうな負担がかかっていた。
続けて明後日の方向目掛けて水流を放ち、その反動で自身の位置をずらすことで、重力が作用する範囲からの離脱に成功する。今思えばだが、剣で斬りかかってきた開幕の印象に踊らされていたようにも感じる。
物理戦の苦手な自分には対処の難しい剣、そこに下手な属性魔法より制圧力のある重力も加わるとなれば、ますます長期戦は回避したいところだ。
仮に防御技を撃つとしても、並大抵のものは不可。やはりロンカ村で編み出した"アレ"の出番だろうか。

「『スターフレア』!」

悩みの種は尽きないが、反撃を封じ込めたのは事実。次はこちらのチャンス、そう判断して素早く切り替え、再び高威力の爆破魔法によって畳みかけていく。
夜空に輝く星のように、宙へと散りばめられた爆破エネルギー。粉末状のそれらを風魔法で一気に相手の方へ送りだし、右腕を振り払うと共に起爆。
初撃より密度と単純な破壊力の増した爆炎が邪龍の眷属に襲い掛かる。目のくらむような金色の光を伴って弾けるそれらは、麗人にどのような成果をもたらすのだろうか。

>>"災禍龍姫"のリュドミラ

2ヶ月前 No.607

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【魔大将の間⇒/ニア】


 すべてのものは、生きて死ぬ。
 これは当たり前のことだ。口に出して伝えるまでもなく、誰もが知っている不変にして普遍。
 すべてのものは、生命があるから死ぬ。
 終わりがあるから“生きること”の説明がつけられる。不死という言葉が世迷言に過ぎぬように。

 であるに、物事とは終わる時に価値を付けることが出来ると言えるだろう。
 すべてのものは滅びるようにデザインされている、というわけでもある。

 そこまでに何を成したのか、到達点で何を刻み、何に刻んだ意思を託したのか………。
 あらゆる生物はそうして価値を付けられる。
 終わり良ければどうこうという話ではない。物事が終わった時、初めて評価を出来るようになるというだけだ。だから、例えば終わりが完璧な聖者でもそこに至るまでの過程がどうしようもない悪党だったのならば、そいつは悪党でしかないだろう。
 ともあれ、自分たちはそれを見守るために存在があった。
 歴史に手を出すことなく、“終わるべき時”に終わらないものの命を絶ち。
 生命の環を崩そうとする全ての生物を、殺して来た。ずっと、ずっと、長い間。


「………。………ああ、そうだ。ひとつだけ、求めることがあったのを忘れていた」
「だが、おまえならば容易いことだろう。故に、一度しか言わん」


 ………ある種のことを、自分は見て来た。
    どのくらいになるか分からない。少なくとも長になってからは、四六時中、ずっとだ。

 手を下すまでもなく、同じ種同士の争いで勝手に滅び、勝手に朽ちていく生物だ。
 時として、必要があるならば自らもそれを間近で感じ、必要があるならばその手で殺めた。
 彼らは取るに足らない生物だったが、プラスともマイナスとも言い難い。
 そもそも、自分の価値観では生きている間の評価は不可能だった。だが………。


「簡単な話さ。わたしは支配者になる気も無ければ………」
「魔族の優越性がどうのと、“渇望”のが語るようなお題目を掲げる気もない」


 どうしても不可解なことがあったのだ。彼らは死ぬことを恐れている。
 にも関わらず争うのだ。死を恐れておきながら、同じ種族の他者が死ぬことは恐れない。
 生物の生存過程として必要だから争うのではなく。
 個体の俗的欲求のため必要だから彼らは争うのだと知った。

 それを繰り返す。個体の欲望のために個体を殺し、集団のためと嘲笑って少数を殺す。
 強者が弱者を喰らうことを当然の理屈とする日もあれば。
 協調こそ尊ぶべきものと嘯いてその強者を蹴落とす日もある。
 彼らは幾千幾万の死を築き上げて、屍を積んで、全体という一括りにおいて何の進歩もなかった。

「まずは、王国」
「終われば、世界」
「それが終われば、その歴史」

 ―――だから。ある戦争の結末と、その終わった生命から“評価”を終えた時………。



「おまえの支配する世界に、ヒトという種を残すな」



 心底から………わたしには、そいつが塵屑に見えて仕方が無くなったのだ。


「それだけだ。それ以上は何も求めない。………なに………出来るだろう?」
「黒猫の。おまえが見込み通りであることを願うよ」


  黒猫が欲望のために、宣告者が理想のために。
  お互いに行動を開始し始めたその瞬間から。短い間のみ強固となる同盟は成った。

  背を向けて、最後に“忘れていた”とでも言わんばかりに告げたそれにも、やはり感情は乗らない。
  どんな意図と、どんな思想がそれを紡いだのか、態度から理解もさせない。
  何故なら女の心はとうの昔に錆び尽きた。
  理想の為に犠牲を是としよう。善行の為に悪行を是としよう。如何なる代償さえも払おう。
  たった、一つ事のためならば―――。



――― ◆ ◇ ◆



 時は流れて、黒猫らの配下が行動を開始した後。
 彼女もまた行動を起こした。その考えがどのようなものであるか、概ね把握してからだ。
 兵舎の毒を戦力消耗から和平につなげようという発想まではいい。
 それのために、自らの妹を生贄の羊にしようという発想まではいい。
 であるならば、やるべきことはひとつだ。そもそも、どんな言い方、理屈を付けても、捏造である以上幾らでも粗は探せる。つまり必要なことは、いかにしてその虚言を正しい言葉とし、根絶のための火種とするのかという一点に限られる。

 彼女の前には二人の兵士が居た。一人は既に息絶えて、一人はそれを見下ろしている。
 息絶えた魔族の片手には、そいつの血で濡れた密書がある。
 密書の内容など単純だ。黒猫の妹であるサシャと魔帝の内通と行動内容を、それらしく記せばいい。
 そしてもう片方の生きている魔族には、当然のように剣が握られている。
 それはその魔族を殺す時に使用された一本の剣だ。当人の使っていた武器でもある。
 付け加えるならばその魔族は、ニアの部下。種を同じくする宣告者《バンシィ》たちの末端である。

「分かっているな」

 ………ニアの手には、息絶えた魔族の持っていた短剣が手に取られている。
    何をするのか? 答えは単純にして明快だ。
 ・・・・・・・・・・・・・・    、     、    、   ・・・・・・
 サシャの反乱を止めようとして実際に死んだ魔族が居たことにした方が、説得力があるからだ。
 魔族も人間も、百の言葉より実際に見たものを信じる。
 だから虚言でも、そこに生命という重石を乗せれば十分に天秤が傾く。

「おまえの死は無駄にはしない。おまえの死は無価値にはしない。それだけは約束する」
『………』

 ニアはそのまま………同意した同族の命を絶つ。
 一突きだ。それ以上の斬撃など不要。

 生命の根本を穿った一撃で、さも既に死んだ魔族と共倒れになったような現場が完成する。
 あとは他の魔族が勝手にこれを見つけたのならば、密書の内容を確認しようとするだろう。


 ―――それが完成しただけで、完全な証拠になる。
    黒猫一人の策で出来る孔も、実際に犠牲が出ているという“事実”の一つで封殺出来る。


 凶器はお互いの武器だ。探れる要素など、ない。
 少なくとも疑う行動に出る前に、此処で大半の者の思考は硬直する。
 そうなれば、チェルの行動のどんな裏を掛かれようと関係はないし、知ったことではない。

 黒猫の妹と魔帝によって和平工作が行われて、それを止める為に相打ちが発生した。
 死人に口なし。その事実を覆す証人など、何処にもいない。
 その結論を覆すことなど誰にもできない。覆せる二人は、自分の手で殺したからこそ。


「………さて。後は、当人を探すか」
「詰めをしくじりたくは、ないものだ」


 あとは仕上げだ。反論する張本人であるサシャを探して殺す。
 残る魔族の中から穏健なものを探して皆殺しにするよりは、ずっと効率が良く現実的だろう。
 作った現場から去って、他の戦線へと出向く。
 黒猫の策を補強した後とはいえ、不測の事態は起こるものだから。起こる前に詰め切る。


 ………ところで。今殺した同族の話だが。
 親しいか親しくないかで言えば、たぶん前者だ。
 同じく人間という種に否定的で、波が立たないという特徴があっただけ。
 打診して、受け入れるヤツだったというだけ。


 惜しいことをした、などと思うことはない。そう感じるだけの余地など、もうない。

 そうだ。

  理想の為に犠牲を是としよう。善行の為に悪行を是としよう。如何なる代償さえも払おう。

  たった一つことのためならば、わたしは自らの手で燃やせるものすべてを燃やそう。


 ………浪費された全ての生命と歴史を以て。
    我が宣告者の使命にかけ、此処に結論を下す。

 すなわち“人類の死は無意味であり、故に人類の生も無価値である”。

 灰も残さず燃え尽きろ。然るべき時が来たと諦観せよ。
 おまえたちの歴史は、等しく生命として残る価値を持ち得ないのだから。



>チェル(前半)

>対象なし(後半)

2ヶ月前 No.608

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【王都ロンカリア/大通り/橋川 清太郎】

「チィ!」

バイザー越しに魔族を睨み付ける。
MadElephantによる銃撃は有効打となったものの、決定打とまでは行かなかったようだ。
ウザい、気に入らない、邪魔くさい、鬱陶しい、疎ましい、苛立たしい、憎たらしい、面倒くさい、煩わしい、目障りだ。
過剰なまでの憎悪が今も尚とどまることを知らず増幅されていく。自制など効きそうにない。

(――――そうか)

漸く理解した、何故自分がこうも別人のように冷静さを失っているのか。何のことはない、自分も術中に嵌まっていただけの事。被害者達と同じ場所にいるなら自分も影響を受けるのは自明の理、こんな単純な事実に気付けなかったとは。

「オォオオオオォォオオ!!」

――だが、それが何だというのか。原因などどうでもいい、別に戦闘が困難になったわけでもあるまい。今は目の前の敵をぶちのめす方が先だろう。
バイザーのNVD(赤外線可視化機能)を使用、視界が緑一色にすり変わり魔族の姿がはっきりと映し出された。このGAWNDは基本性能だけでなく汎用性も重視している。この程度の基礎的な機能は問題なく備えているのだ。
MadElephantをその場に投棄、次の武装を転送する。ORW-BC-1296-Backdraft、大型ビーム砲で一気に勝負をつける。大型故に重量と取り回しに難があるものの、今回は目測で銃口を向けるだけで事が済む。小難しい照準合わせなど不要だ。
もう巨腕はすぐそこまで迫っている、ならば迎え撃つまでだ。あの女だけを狙えばそれで片がつくかも知れないが、纏めて消し飛ばせば関係ない。

「こいつで、どうだ……!!」

腰だめに構えたBackdraftのトリガーに指を掛け、遠慮も躊躇もなく引いた。計測することすら馬鹿らしくなる程のエネルギーが一瞬で銃口内に充填され、吐き出された。暴力的なまでの電熱濁流が魔族の腕『から』呑み込まんとする。
民衆も巻き込む可能性があるが構うものか。こちらが用意できる最大級の火力、受けきれるものならやってみるがいい。

>>大通りall

2ヶ月前 No.609

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【王都ロンカリア/大通り/噴水広場付近/ユーフォリア・インテグラーレ】

かつて同期のライバルとして激しく争ったからこそ、ダグラスの性格は理解している。彼は、紛うことなく、世界の現状に憂いを抱いている者の内の一人であった。
共に、より良き世界を作ろうと誓いあったことすらある。そんな親友と接していく内にユーフォリアは、彼が見えないところで焦りを抱いているのではないかという疑問を抱くようになっていた。
当時は、自分の思い違いかも知れないと考えていたのだが……こうして久方振りに再会を果たしたことで、疑問は確信へと変わった。そうでもなければ、あのダグラスが、世界を破滅に導くような組織に加担することを選ぶはずがない。
彼がどのような苦労を抱えてきたのかも、何となく察してはいる。だからこそ、彼女は優しく手を差し伸べた。これ以上親友が、誤った方向へと進み続けないように。

今まで誰にも話すことはなかったであろう、ダグラスの本心。ユーフォリアは、静かにそれに耳を傾ける。世界政府の改革。確かにそれは、迅速に果たさなければならない責務。
あれほどまでに腐り切った現状を見て、焦りを抱かない方が難しい。ダグラスもただ、奴らをどうにかしようと、正しき心の元に行動を起こしていただけなのだ。
単にそれが、間違ったやり方であったというだけの話。しかし、まだやり直すための時間は残されている。共に時空防衛連盟の味方として歩み、正当な手段を以て改革を成し遂げることこそが、最善の策なのである。

「貴方の考えは、痛いほどに理解出来る。世界政府は、私がこの手で必ず変えてみせるわ。だから、これからは味方として、傍にいてちょうだい」

即答であった。彼をここで切り捨てるなどという選択肢は、はじめから持ち合わせてなどいない。故にユーフォリアは、ダグラスを快く味方として迎え入れる。
もはや敵対する理由もなくなった二人。これからは手を取り合い、肩を並べ歩んでいくことが出来る。そんな矢先だ、彼女の持つ端末に、緊急通信が舞い込んだのは。
内容は、マロニス城に未知の敵が接近しているとのもの。時空防衛連盟の者ですら知り得ないとなると、歴史是正機構の新手か、あるいは異世界人の襲撃か。
いずれにしても、このまま放っておく訳にはいかない。ユーフォリアは通信相手に短い返答を返すと、隣のダグラスを見やる。彼の力を借りなければならない瞬間が、早速訪れたようだ。

「マロニス城に敵が迫っているようだわ。確実に敵を退けるためにも、貴方の力を貸して欲しい。いいかしら」

共闘の依頼。和解した直後となるとは夢にも思っていなかったが、この状況においてダグラスが隣にいるということが、如何に心強いことか。ユーフォリアは新たな味方に、頭を下げる。
混乱に陥るロンカリア。無数の罪なき命が散っていく。これを、中世の出来事だからと無視するなど、ユーフォリアには出来ない。介入を行った時点で、時空防衛連盟にも責任はある。起きてしまった事態を悔やんでいても仕方がない。重要なのは、それを何としてでも解決する手立てを模索することだ。

>ダグラス・マクファーデン
【次のレスでマロニス城の城前に移動してしまって構いません】

2ヶ月前 No.610

人類昇華への道 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【歴史是正機構本部/実験室/ヘルガ・アポザンスキー】

「随分とうなされていたようだな? 女帝様」

パージルクにとっては心底不快であろう声が、実験室へと響き渡る。全身を拘束され、一切の身動きが取れなくなっている姿。これがかの魔道帝国の女帝であろうと、誰が信じるであろうか。
歴史是正機構は、本来古代にて死ぬはずであったはずの彼女を回収した。それも、時空断裂を起こさぬよう、決着が付いた後という絶妙なタイミングを見計らって。
これを成し遂げてくれたクラスターには、後で恩借を与えなければならないだろう。そして望むのであれば、将官への昇進を打診してやらないこともない。
まあそれはいいとして、今はこの棺桶の中のお姫様をどう弄んでやるかを考えるとしよう。いやはや、実にいいものだ。歴史の偉人が、こうして目の前に横たわっているというのは。

「貴様の戻る場所など、もはや存在しない。嘘だと疑うなら、これを見ることだ」

そう、嘘はついていない。魔道帝国が滅んだのは、紛れもない真実だ。時空防衛連盟によって、正史は護られた。皮肉にもそれが、功を奏している形である。
暴れて逃げ出そうとするのがいい加減鬱陶しいので、一発蹴りを入れて黙らせる。いい気味だ。ついでに顔面にも一撃加えておく。今まさに自分は、歴史の破壊者となった。
パージルクにヘルガが見せ付けたのは、魔道帝国が滅んだという歴史書。と、改変前のデータを元に作られた、正史の歴史書とそっくりのコピーを混ぜ合わせたもの。
都合のいいように事実と改変され消えた事象が織り交ぜられたことによって、パージルクはこう思うだろう。"魔道帝国は滅び、エスメラルダはマロンによって殺され、裏切ったマロンとそれに付き従ったエストが新たなる国を作り、そしてその国が後の覇権を握った"と。

「所詮、貴様など邪魔な存在に過ぎなかったということだ。マロンもエストも、貴様がいなくなって清々していたことだろうな? そうでもなければ、貴様の愛してやまない娘を殺し、帝国を裏切って国を作るなんてことが起こるはずがない。違うか?」

ヘルガは相手の心を抉るように、顔を覗き込んでそう語り掛けながら、もう一度蹴りを見舞う。さて、追い詰めるのはここまでだ。そろそろ、救済も用意してやるとしよう。
奴がどんな感情を抱いているかなど、手を取るように分かる。憎いだろう。自分を裏切り、愛した国と娘を奪い、のうのうと世界を支配したマロンが。
だからこそ自分は、パージルクに復讐の機会を与えてやることとする。それが古代での話になるのか、未来での話になるのかは関係ない。少なくともこれで、忠実な駒が一つ出来上がるのは間違いないのだから。

「全てを奪った連中に、報いるつもりはないか? 貴様にその気があるのなら、私が力を貸そう。あとは貴様次第で、帝国の復興も叶うかも知れんな」

尤もらしいことを言っているように見えて、その実情は非常に単純。「復讐に手を貸す代わりに、自分の指示に従え」ということである。普通の状況であれば、女帝がこれを呑む可能性はまずない。
しかし、冷静さを失い、判断力を欠いているであろう今の状況であればどうだろうか? そう、ヘルガは、全てを計算した上でパージルクを拿捕し、一連の言葉を投げ掛けていたのである。
勿論、念には念を。もし断れば貴様の命はここで尽きると言わんばかりに、ヘルガの右手に猛々しい炎が灯る。ここで死ぬか、組織の犬と成り下がってでも、復讐を遂げてから死ぬか。パージルクの選択は、果たして―――

>パージルク・ナズグル
【確定ロルに関しては許可を取っております】

2ヶ月前 No.611

北極星の魔銃師 @sacredfool ★ZnbmB6kEWh_yoD

【ディンカ/小屋/ラシアナ】

 寂れた海浜に一筋の白煙が立ち上る。逼迫した戦争の最中とあってそれを見た者は味方への狼煙と捉えるだろう。尤も、煙の下にいる本人にはそのような心算があるわけではない。このような状況だからこそ彼は心を落ち着けて旅情に身を任せるのだ。

「や、ここの魚もおいしいなぁ。わざわざ来た甲斐があったってもんだよ」

 遠火でじっくり焼いた魚を頬張る青年は、程よい身の柔らかさと淡白な旨味に舌鼓を打つ。自分で獲った魚となるとその味もひとしおだ。砂浜に寄せる波の音、火中の薪が爆ぜる音、そして……血気盛んな魔族の怒号。恐らく、ここでしか味わえないだろう。単純な時間遡行者ではない彼にとって、自己が経験する世界は蔑ろにしてはならないものである。世界は一期一会。それゆえ一瞬一瞬を大切に……この魚も大事に味わわなければならない。
 ……半分は方便だ。ただ、道中は楽しい方がいい。やりたいことをして気楽に行く方が心に余計な力を込めなくて済む。

「おや、また来たね」

 彼は一匹の魚を食べ終えると手を合わせ、立ち上がっては伸びをした。悠長に、穏やかな潮風を一身に受けるように。
 彼はここが魔族の駐屯地であることを決して忘れているわけではない。ささやかな海の幸に目を奪われながらも、遠方から押し寄せる魔族の大群を捉えていた。にもかかわらず動かなかったのは、彼らが「その程度」の軍勢でしかないと踏んだからに他ならない。事実、彼の背後にはできている。既に彼の手に掛かった物言わぬ魔族の山が、うずたかく。所詮は腹ごなしの相手なのだ。
 スリットの付いたコートの奥の双銃が姿を見せるとき、彼の前に敵は無い。それは既に敵ではなく屍なのだ。双銃とあっては一度に処理できる敵の数は2体まで――などと考えた日にはその体に風穴が開くだけだ。彼の自然現象を司る異能は、骨董品じみた無骨な見た目の拳銃(リボルバー)からはおおよそ想像もつかない。着弾すれば渦潮に竜巻はお手の物。ダイアモンドダストもバックドラフトもお茶の子さいさい。彼の魔弾はタネが尽きない。遭遇する度に違った色を出し、見る者を楽しませるだろう。惜しむらくはそれを見て生きている者がいないことだ。

>>ALL

2ヶ月前 No.612

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_HV3

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/17代目葛葉 ライドウ】

「間違いない、奴には知性がある、”どちらの”方の知恵かは知ったことではないが――」

とにもかくにもこちらに向けられる殺意と憎悪が半端ではない、並の兵士なら恐怖に竦んで動けなくなるほどの殺気だ。
サーヴァントというならばどこかに『原点』があるはずだ、だが獣の上の首無し騎士以外は皆目見当がつかない。
デュラハンという線はとうに消えている、デュラハンが狼に乗っているなどあり得ない。狼の方もサーヴァントに召し上げられる程の知名度はあるのだろうが……。
なにはともあれ誘いに乗ってきた狼と騎手を迎え撃たねばならない、とはいえライドウ自身がやることは少ない。
あの獣と騎手の力量、パワーは数合撃ち合ってある程度は把握している、手加減していた可能性はゼロと言い切っていい、あれは確実に殺す心算の攻撃だった。
驚くべきことに狼の牙は暴威弾を噛み砕いて見せた、一瞬だけロボと目が合う、その目は殺意と”誘いに乗ってやったぞ”という意思が垣間見えた。
人間にこれほどの殺意を抱く狼、これだけで大分候補は絞れそうなものだ、少なくとも上の騎手とセットで考えると神話の生物ではなさそうだ。

「ヨシツネは上、ジークフリートは下だ」

『あいよ!』

『承知した』

それだけの言葉でこの仲魔たちとの意思疎通は充分だ、ヨシツネがヘシアンの斬撃を受け止め、ジークフリートが下のロボを受け止めるという役割分担だ。
まずはジークフリートが前に出てロボの突進を大剣を縦に構えて受け止める、無論無傷で抑えられるわけではないが地面に足をめり込ませながらもジークフリートは突進の勢いを殺して踏み止まる。
ジークフリートの悪魔の中でも並外れた膂力と耐久力がこの荒業を成し遂げた。同時にヨシツネが跳ぶ。
そしてヨシツネは空中で二刀を巧みに操り上の騎手の暴風のような斬撃からライドウの身を守護して見せた、しかしヨシツネはライドウを守る過程で少なくない傷を負った。

『源氏武者舐めんなよ狼がァ!』

『ムゥゥゥン!』

この挺身ともいえる防御を成したのは一重にライドウへの忠心と悪魔に共通する掟に従ったまでである。
悪魔は完全実力主義だ、一部の例外はあるが弱肉強食が悪魔の全て、ならばデビルサマナーとはどういうものか?
それは『その悪魔を従える”力”を持つ者』だ、一部交渉や供物を捧げた場合を除いて悪魔が弱者に従えられることはないのだ。
ライドウは狼王の突進によるジークフリートの後退に合わせて数回バックステップを踏むと再び銃口を狼に向ける。

「そんなに人間が憎いか? 悪いが一々お前の怨嗟には付き合ってやらん、去ね」

目と鼻の先に狼王の牙があるにも関わらず恐れた様子もなくライドウは至近距離で狼王に三発、騎手に三発暴威弾を発射する。無論後ろのランサーと射線を被らせるというヘマはしない。
遠距離と近距離では威力がまるで違うはずだ、仮に防がれても問題はない、ライドウが発砲したのは弾倉を空にしたかったからであり、食い止めている間にランサーによる追撃を期待していたからだ。
左手で空薬莢を排莢してホルスターに収めるとライドウは秘剣ヒノカグツチを抜刀する。
特に損傷の激しかったヨシツネには治癒の魔力が籠った魔石を投げる、これでライドウとランサーの挟み撃ちという状況を作れた。

>ランサー、ヘシアン・ロボ、アベリィ・シルバラード、ALL

【了解しました】

2ヶ月前 No.613

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【王都ロンカリア/大通り/噴水広場→マロニス城/ホール(城前)/ダグラス・マクファーデン】

 内に秘めて来た本心を、何一つ隠す事無く曝け出して行く。腐敗した政府の現状を嘆き、一刻でも早く改革を求めたが故に、焦燥に駆られた事。確かな調和を齎す一手よりも、混乱を度外視した迅速な一手が至上の手段と錯誤していた事。それが、正道を外れ魔道へと身を窶す選択を選んでしまった理由であるのだと。
 告白して行く懺悔の言葉の数々を、親友は静かに聞き入れてくれていた。海の様に広い寛容の心を見せる彼女の態度に、心の重荷が徐々に晴れて行くのを感じて。一人で背負いこんでいた過去の己に対し、強い恥と言う物を覚える。道を踏み外す前に一度、こうして悩みを打ち明けていれば、この様な事にはならなかっただろう。

「……ありがとう。これからは、その誓いを支える一人の者として。親友であるお前の傍で、戦わせて貰う」

 今一度、共に戦う者としてやり直す事を望む一声。其の言葉を快く受け入れ、即答で返す親友を前に、ダグラスは感謝の言葉と共にこれからの決意を告げる。より善き世界を作り出す一歩として、世界政府に変革を齎す誓い。親友が掲げる決意を支える者として、互いに手を取り合って戦い抜く事を力強く宣言するのであった。
 そして、その始まりを告げる様に、彼女の端末へと届く入電。マロニス城へと接近する未知の存在、語るまでも無く敵方に在る者が襲撃を仕掛けて来たのだ。通信相手との短い会話を終えると、此方を見やる親友。敵を迎え撃つ為に力を貸してくれと告げる彼女に対してダグラスは強く頷いて、即答で応じる。

「無論だ。力を合わせ、共に敵を迎え撃つとしよう、ユーフォリア」

 此処に成立する共闘関係。心強い味方が傍に居る事が、彼の闘志を強く奮い立たせる。光る風を身に纏い、威勢良く大地を蹴ると空中へと飛び上がり、混乱に満ちた王都を眼下に見下ろしながら空を飛んで王城へと向かう。そして暫くの間、心地の良い風を肌に感じながらも、城門前へと到着すると、急速な勢いで急降下すると共に、城内へと侵入せんとする者の姿を肉眼で捉える。
 それは全身に甲冑を纏える大柄な人型。後続するであろう親友よりも一足早く接敵を果たしたダグラスは、落下しつつも右手に握る魔銃を構えると、先手必勝と言わんばかりに焔の魔弾を十数発、怒涛の如き勢いで撃ち放ち。トリガーを引く度に銃口から現出する焔の弾丸は、直線を描きながらその堅牢な鎧に風穴を開けんと襲撃を仕掛ける。

「……通行止めだ。退路も与える心算は無い。お前は此処で朽ち果てろ」

 接地と同時に再び地面を蹴り、敵の頭上を飛び越える程の大きな跳躍をすると、その行く手を阻む様に立ち塞がり、銃口を敵の頭部に向けた。空いていた左手には、闇の魔力を用いて魔刃を鍛造すると、それを構えつつ敵の動きに備える。

>エクスデス ユーフォリア・インテグラーレ

2ヶ月前 No.614

指輪の女帝 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【ワームテイマーは次で返しますー】

【歴史是正機構本部/実験室/パージルク・ナズグル】

「貴様……是正機構の長か。 よくも、この妾を裏切ってくれたな! 何れ後悔することになるぞ」

もはやヘルガに抵抗する術などないと言うのに、パージルクは相手の姿が見えれば、あくまで気丈に振舞う。
何せ、あの黒い機械に自分を拉致させたのは、間違いなくこの是正機構の長なのだから、自分から見れば、彼女こそが敵対者その物なのだ。
拘束に抗おうとする手や足に自然と力が篭り、ギシギシと鳴る音はさらに大きな物となる。
パージルクはもう、ヘルガの手の中で踊る事しか出来ない、囚われの身でしかない。 それでも女帝としての義務や、彼女自身のプライドが、それを認めず、無駄な抵抗ばかりして、体力を消耗していた。

「存在しないだと? 何を馬鹿な事を――ぐっ……あっ……がぁぁ」

そんな状況下にありながら抗い続けるパージルクに対してヘルガも痺れを切らしたのだろうか、一発パージルクに蹴りが浴びせられる。
流石に痛みは先の戦いで受けた傷よりはマシだ、むしろ、その傷が開くという意味の方が大きいだろう。

だが、二発目の顔にも向かった時は流石に痛みに悶えた。 まぁ、悶えると言っても、芋虫、あるいは棒のような物がうねるぐらいで、精々そういった物が嫌いな人間の生理的嫌悪感を呼び起こすぐらいしか出来ないが。
くう……と唸るパージルクの眼前にヘルガはある歴史書を突きつけた。
それは史実通りの正しい歴史と、改変された歴史、さらには捏造が巧妙に混ぜ合わされた物であった。
しかし、書式は丁寧な事に統一されており、学のあるパージルクはそれを疑う事が出来なかった。

「エスメラルダ……私の、私と、あの人の、娘」

エスメラルダが殺されている、それもマロンによって。 そしてそのマロンにエストは付き従った。
最も心残りだったエスメラルダの話をパージルクにするというのは,極めて効果的であった。

しかし、それは嘘だ、暴力を振るい、自由を奪い、その上で甘い言葉をかけると言うのは分かりやすい洗脳方法だ。
そんな事はパージルクにも分かっていた、だが、もう一発蹴りを食らわされたパージルクは、ぽろりと、ぱくぱくと口を開いたり閉めたりしたあと、口にしてはいけないことを口にしてしまった。

「その者たち以外、私の愛しい臣下……カシュタンやネクロニア、いや将軍だけではない、ギラードやアルクールと言った……近衛たちはどうなった?」

それを言い切ってしまった後、パージルクは後悔したように押し黙った。
これでは、まるで、アレを事実として認めてしまったようではないか。

だが、畳み掛けるように、ヘルガが掛けた言葉によってパージルクは一時的に正気を取り戻した。
そうだ、コイツは脅しを掛けて来ている、本当に帝国を想うならば、こんな事はせずとも良い、ならば。

「黙れ小娘! このパージルク・ナズグルの忠臣、マロン・アベンシスやエストが、裏切る訳が無い、妾を、いや、妾の臣下をこれ以上侮辱するのは許さんぞ!!」

パージルクはもがいた、もがいてもがいて……どうにか、自分の臣下を侮辱したこの女を殺してやろうと思った。
だが、それは叶わない、叶うはずが無かった。
結局のところ、ヘルガにとっては耳障りな、彼女の身体とテープや包帯が擦れる音が響き、パージルクの汗が周囲に飛んだだけ、ただ、それだけしか起こらない。

>ヘルガ・アポザンスキー

2ヶ月前 No.615

Futo・Volde @nonoji2002 ★0hekQLL3eX_sgc

【ディンカ/海底洞窟入口/アーチ上/魔獣ヴァグネル】

古くから、人は大きく形の違う者に対し、恐れを抱く。大型の肉食動物しかり、あるいは同じ同族通しでも所謂“奇形”と言われる者しかり。彼らに対し、“健常者”側の人間は差別し、忌み嫌い、理不尽を強いる。昔から変わらない、人間の醜い所だ。

「ここを通すわけにはいかぬ。通りたければ我を楽しませてみよ」

来た。待ちわびた獲物だ。相手はとても好戦的で、すぐにでも襲い掛かる勢い。
普通の人間ならば、獣のその姿を見るなり、恐れおののくか、差別的な言葉を浴びせるかのどちらかだが彼女は違う。敵とみなしているのに違いはないが、そこにあるのはただ志のみ。ここを通り城へ行くという単純な物なのだろう。だが、獣にとってみれば、そんな志などどうでも良いし、もっと言ってしまえば敵味方は関係ない。ただ人間を、喰らい、殺すのみ。そこに善悪も、敵味方も何も存在しない。いわば、これは本能。本能に逆らえる程、知的な動物は居ない。特にヴァグネルのような半人半獣ともなれば、人間の理性と動物の本能が常にぶつかり合う。そしてそのぶつかりあった理性と本能、勝った方が彼を突き動かすのだ。

「くたばるが良い!」

ここだけの話、彼のこの口調は自前ではなく、自分で”作り見繕ったもの”だ。このスタンスを変える気は全くない。単にその方がより、力のある者に見えるだろう……そんな魂胆だ。

獣は剣を構え、先ほどまで座っていたアーチに立てば、そのまま上へと一度跳躍し、アーチを飛び下り、その勢いのまま、剣を大きく振りかざして相手へ切りかかる。
まずは小手調べと行こうではないか。どんな戦い方をし、どんな風にして獣を楽しませてくれるのか。見物と言えるだろう。

>アンリエット・エクレール


【返信が遅れて申し訳ないです。スランプに陥って気に入る物がなかなか書けなかったり、バタバタしてレスに時間さけない始末……( □ω□) >アンリエット本体様】

2ヶ月前 No.616

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/無限廊下/サシャ】

サシャは尋常ではないほどに焦っていた。それも当然だろう。ほとんど面識はないとはいえ、味方ともあろう者が毒で苦しんでいるとなれば、誰だってそうなる。
人間達の仕業であることは、十中八九間違いない。だが、眼前の敵も驚いていたのは想定外だ。同じ陣営なのに、作戦が知らされていないということなのか?
困惑している暇もなく、レオンハルトの腕がサシャの胸元へと伸びてくる。驚愕し、目を見開く彼女であったが、結果として尻餅をついただけであり、その身体が持ち上げられることはない。
何故なら、二人の間にレプティラが入り込み、代わりに彼女が胸倉を掴まれていたからだ。急展開すぎる状況にあたふたし、落ち着きを失うサシャ。彼女が平静を取り戻したのは、レプティラが説明を始めた後であった。

曰く、兵舎にばら撒かれた毒は未知のものであるとのこと。基本的に、魔族の体というのは人間よりも強い構造となっている。よって、多少の毒ならば、常備薬で緩和可能だ。
だが、現実はそうではなく、全く効果を成していないとのこと。中世に存在しない毒を流すことの出来る人物は、未来からやって来た者に限られてくるだろう。
この時点で、人間の犯行であることはほぼ確定。ただし、レオンハルトが知らないことからして、時空防衛連盟が意図して行ったことである確率は非常に低い。
では、歴史是正機構の仕業か? 否、それもないだろう。魔帝軍に加担しているはずの彼らが、味方を攻撃しているようでは、本末転倒となってしまうからだ。
結論として、レプティラはここでの無駄な争いを控えることを提案する。その通りだ。相手も事情を知らないのであれば、戦う必要はないだろう。

「うん、あたしも賛成する。それより、今何が起きてるのか調べる方が先だよ!」

とにかく、三人には手持ちの情報が少なすぎる。魔帝軍全体を見ても、指揮系統が混乱している所為から、様々な誤報が飛び交っている始末だ。
ここから兵舎を直接見に行くというのは距離的にもなかなか厳しいものがあるが、それぞれが知っていることを出し合い、状況を推察することくらい出来るだろう。
そう思い、サシャもレプティラの意見に賛成票を投じる……のだが。丁度その時、中級魔族の部隊が一直線にこちらへ向かってきたかと思うと、三人を取り囲み始める。

『見つけたぞ! よくも俺達の仲間に毒を盛ったな、この極悪猫が!』
『魔大将様、いや新たなる魔帝様から話は聞いている! お前がヴェルメイユと組んで、魔族を陥れようとしたことをな!』
「そ、そんな……あ、あたしはやってない! 何も知らない! 今話を聞いて初めて知ったんだよ!」
『黙れ! お前を止めようとして死んだ仲間もいる! そいつの持っていた密書に、反乱の内容が記されていたぞ!』

口々に彼らが言うのは、魔帝の指示によってサシャが兵舎に毒を流したのだという話。そしてそれを流布したのは、彼女の姉で魔大将であるチェルだという。
あまつさえ、その内容を示した密書が、死んだ魔族の手に握られていたというのだ。覆しようのない、完全なる証拠。知らない、何も知らない。どうしてこんなことが……
何が起きているのか分からず、サシャは今にも泣き出しそうな表情になりながら呼吸を荒らげる。言われもない罪が、あたかも正論であるかのように、自分に向けられている。その恐怖は、計り知れないものであることだろう。

>レオンハルト・ローゼンクランツ、"常山蛇勢"レプティラ
【状況が一気に悪化していく】

2ヶ月前 No.617

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

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2ヶ月前 No.618

地味な優等生と豪華な無能 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【王都ロンカリア/噴水広場/ワームテイマー+エンペラーワーム】

「分かるならとっとと帰るかワーム共の腹に収まって貰いたい、と言うのが正直な所ですねぇ。 突然壇上にあがって演奏するならまだしも、お前の人格なんかに誰も興味ねーってんですよ! 皇帝様、吹っ飛ばしてやってください!!」

いよいよもってワームテイマーのキャラが崩壊してきて、限りなく素に近い乱雑な口調に変わってくる。
とは言え、あくまで彼女のメイン火力となるのは、相方であるエンペラーワームだ、幾ら的が馬鹿デカくて、性格上作戦とかそういった事が出来ずに、魔将軍には不適格だったとしても、その凄まじい魔力量と、そこからぶっ放される火炎魔術の出力だけは本物だ、故に、相手がこしらえた防壁など、簡単に爆破魔術で蹴散らす事が出来るのだ。

相手が吹き飛んで無残にも転がる、さあ、そろそろあきらめて降伏したらどうです? なんて声を掛けようかとも思うが、相手は攻撃のトリガーであろうタクトを手放していない。
まだやる気のようだ、なら、仕方が無い、死んでもらうまでだとワームテイマーはエンペラーワームに最後の攻撃を命じようとした、そのときである。

音が響く、その音と共に雨雲が発生してこの場に降り注いだ、所詮は小さな雨雲、土砂降りになる訳でもない、そして、これをエンペラーワームはこう捉えた。

『立ち上がる勇気だけは褒めてやろう、小僧。 だが、この程度の雨で、我が紅蓮の炎が消えるとは思わん事だ!!』

そんな、雨で火炎魔術の威力を弱めようとしていると言う仮説を立てて、エンペラーワームは再度魔力を周囲に散らしてもう一度同じ魔法を使って敵対者を葬ろうとする。
だが、それと同時にワームテイマーはこの雨の真の狙いに気づき、さらに言うならば、敵の増援が出てきた事も確認した。

姿から見ておそらく魔道師、なるほど、さっきの奴でかく乱しつつ、アイツがトドメを刺すという寸法だったが、撹乱が上手くいかずに痺れを切らしてって所だろうかとワームテイマーは推察する。
もちろん実際はそんな事は無いのだが、少なくともワームテイマーからすればそれが最も適切な結論であった、となれば、連携を取って攻撃をしてくるのは明白。
さて、どんな魔術を使うか、と見ようとするが、どうも……視界がおかしい、なるほど、この雨の真の狙いは。

「皇帝様! この雨は視界撹乱効果付きです、敵が使ってくるのはおそらく火炎魔術!!」

『笑止! 人間の魔術師如きがこのエンペラーワームに火炎魔術で対抗しようなどと。 我が最大の一撃に、視界撹乱など意味を成さない事を知るが良い! ワームテイマー、お前は自らの役割を果たすのだ!!』

そんなやり取りが一瞬で済まされ、ワームテイマーは両手に水の魔弾を生成して、それを相手が作り出した火球に向けて発射し、少しでも威力を弱めようと努力する。
それと同時に、ワームテイマーの指示を聞いた複数のワームが周囲の岩石を持ち上げて、それを相手に向けて投げつける。

だが、本命はエンペラーワームが口元に生成し始めた超巨大な火球だ。
最もそれにはかなりの集中する時間が必要なようで、威力が弱まっただけの火球はエンペラーワームに直撃する形となる。

しかし……次の瞬間、驚愕に値する事が起こる。
エンペラーワームは、その攻撃を自らで受けるだけではなく、その熱量すらも魔力を使って自らの火球に融合させ、取り込んだのだ。
相手の魔術の逆利用。 エンペラーワームの一発大魔術を受けた程度では倒れない驚異的なタフネスが可能とする大技であろう。

『恐れよ、そして真の太陽を知るがいい。 これこそ魔帝すら焼き焦がす究極の"炎"。 我が最終奥義、火法・大火球を受けて死ぬことを誇りに思い、そして、散れェッ!!』

「総員退避ーっ!!」

超巨大な炎の塊となった火球が、まだ放たれても居ないと言うのに、その膨大な熱量でエンペラーワームの近くにある物を溶かし始める。
その説明には誇張が大量に含まれているが、威力だけは本物の大魔術だ。
だが、同時にショパンの撹乱によってエンペラーワームは照準を定められていない、しかし、この魔術でならば、この周辺ごと焼き払う事が出来る……が、それは同時に味方を巻き込む事を意味しているために、ワームテイマーはすぐに部下のワームたちを地中に退避させ、自分も体格の大きなワームの背に跨って地中へと逃げた。

そして、エンペラーワームの火球生成が終わり、その巨体から全魔力と、エストの使った火球すらもその一部にした大火球が今、もはや視界が意味を成さなくなっても、適当な所に投げれば全てが焦土と化すだろうと、投げつけられた。

火球の効果時間が終わった時、地中から再度出てきたワームテイマーが見るのは、主の敗北か、敵の死か。

>ショパン エスト


【次で撤退させますー】

2ヶ月前 No.619

ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc


【魔帝城→マロニス城/舞踏場→厨房/ガドン・バルザック+団員(モブ) 】

 自身が半ばほぼ強引に追い払ったことで、乳臭い小娘はどこぞへと消えていった。
 彼女は最後にこの究極の肉体美と内側から溢れ出る素晴らしき愛に賛同してくれたので、まあ許そう。トミーガンも許してくれる。
 だが、どれだけ待っても敵らしき影はこちらへと来ない――いや、離れの舞踏場では既に交戦が始まっているようだが。
 幾ら働きたくないとはいえここに居続けるのもまあ、よくはない。
 そろそろ外に出て運動をしなくてはならない。《愛と勇気の絢爛団》には怠惰は不要なのだ。

「行くわよ、アンタ達」
「「「はあい、お姉さまぁ!!!」」」 「「「何処へなりともぉ!!!」」」

 舞踏場にいた武闘派のオカマ達が、ガドンの後に続いて城を出る。

――――

 マロニス城に、悪夢がやってきた。
 魔族の軍勢が押し寄せ、戦の火はあちらこちらでちらついている。
 燃える住宅、広がる見るに堪えない醜悪な光景。
 戦という行為そのものは、ガドンは否定的だ。
 倫理とか道徳とかそんなものではなく、長い間隔を空けなければ疲弊するだkだ。
 戦争もまた、ビジネスと娯楽の狭間に成り立つもの。

 そこに価値を見出すことで一ー勝ち馬に乗る。 それが、乙女の信条。
 故に、単なる武闘派とか娯楽とかは、理解が出来ない。

「アンタ達、食糧庫行くわよ」
「どうしてですか、お姉さま」
「此処の飯をかっぱらって、ウチの本部に貯蔵するのよ」
「流石お姉さま!!!頭がいい!!!」

 アホみたいな会話をしながら、――そう、オカマの軍勢が城に乗り込み騎士団を昏倒させながら進軍しているのである。
 インパクトというか強烈な印象しか植え付けない。一般人であれば「なんだこの軍勢!?」となるが、ここは流石にエキスパート。
 悪名高き傭兵団であるとすぐに認識したうえで攻撃に移る。
 だが、勇ましき奴らの進軍の前に、ケツの穴をキュっとしめて震えあがるしかない。
 故に、彼女たちは目的地へすぐにたどり着く。

「あん? 此処にもいろいろいんのね。
 ほらアンタ達、ぼけっとしてないで食料持ってきなさい。積み込んだら撤退よ!!!!」
「イイ男は?」
「我慢しなさい!!!!」

 ――悪夢の軍勢が、厨房に現れた。

>レーヴ・カストリス ALL

2ヶ月前 No.620

エクスデス @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【マロニス城/ホール(城前)/エクスデス】

 ―――進入直前の均衡を破ったのは、不意に飛来する弾丸。
 熱を宿し、通り抜ける大気の全てを燃ゆる火で潜り抜けながら、そいつは幾つも自分に迫る。
 直線的に迫る弾丸は速度と手数の双方において上々、かつ的確な射撃だ。遊びなく確実に敵対者と判断して屠りに掛かるそれは間違いなく戦士の素質と言えるだろう。有体に言って“難敵”の評価を下すに相応しい。が………。


「―――ふん!」


 暗黒魔導士エクスデスも、また猛者だ。
 迸る魔力、備えられた戦闘経験、総合的な判断力に至るまで伊達に単独侵攻を狙ったわけではない。
 判断のし難いほどの短く膨大な敵意の発露を見逃すことなく、先手必勝と放たれた魔弾のラッシュへと意識を向け、対抗するように長剣を手元で素早く回転させ、その魔力を伴う回転によって生じた青白い力場が弾丸をその場で受け止めて弾き落とす。
 白魔法下級位階の《プロテス》。その応用系だが、下級魔法程度ならエクスデスほどの魔導士なら詠唱の必要性すらない。肉体の行動に付属させるようにして魔法の効果を発動させることで、その防御は実体的攻撃を凌ぐことに特化した適正を発揮するわけだ。


「来おったか………よもや、街の惨状より此処を優先するとは」
「無情であるが合理的」


 その正体は、時空防衛同盟の者達だ。
 前者は覚えがある。その麗しい金の髪と軍服姿は間違いなく敵の大将格。
 つまりは大物だ。まさか、この世界の“王族”狙いで動けば思わぬ相手が釣れた。
 力の実験には丁度良いし、その後の素材としても申し分ない―――強いて言うならば、文字通りの“大物”ゆえに、少々本腰を入れて掛からねばならないという問題がある程度だ。エクスデスとしては願ってもない機会と言えた。
 ………街の惨状を見る限り、人命を優先するならばどう考えても其方に出向くべきだろうが、しかし歴史の存続だけを考えるならばマロニスという国の根幹たる王の安否を確認するのは合理的判断とも言える。果たしてその理由は信頼などと嘯くつもりなのか、それとも。

「しかし………」

 ―――しかし、問題は推定「魔法」の力を宿した弾丸を打ち付けて来た男の方だ。


「貴様にも見覚えがあるぞ、魔弾の男。顔を合わせた覚えはないが………」
「裏切りおったか。下らぬ情に流されるとは、愚かな」


 そう、エクスデスはあくまで協力者。
 リスクとリターンを分け、ただ自分の報酬を得るためだけに歴史是正機構に協力する魔導士だ。
 だが、だからこそ―――そう、だからこそ、誰が敵で誰が味方なのか、その顔程度は判断している。
 その記憶と情報に照らし合わせて、ダグラス・マクファーデンは間違いなく此方の陣営の人間だったと記憶している。

 ………彼の事情については、断っておくが一切エクスデスは知らない。
 当たり前だが関与なんぞしていない。つまり、そもそも“利害の一致で協力していた”という重要なファクターに関しては一切覚えがないのだ。
 知っているのはその簡易的なパーソナルデータのみ。


「だが、丁度良い。わしに貴様たちの争いがどちらに転ぼうと興味はない」
「ただ、全てを無に帰すのみよ………」


 故に裏切ったならば、その手で屠れば問題ない。
 この男が優れた戦闘者であることも、身のこなしを見れば間違いはない。
 此処も含めて“本腰を入れる”必要があることは、エクスデスの視点で見ても事実だ。

 だが、二対一にしてなお自信を漲らせたエクスデスのそれは、断じて虚勢ではない。
 彼はその力に絶対の自信を持つ。
 力こそが、その無の力こそが、エクスデスをエクスデスたらしめる全てなのだから。


「その過程、その踏み台、それがわしを前に勝利宣言とは………ファファファ! 片腹痛い!」


 まずはダグラス。正面へ陣取った射手の方へと、収束した重力球が唸りを上げる。
 彼の全身が纏う赤黒い魔力によって構築されたそれは、
 本来の重力魔法の性能通りに直進しながら、周辺の全てを巻き込んで軋ませていく。見かけ以上に範囲が広く、その緩慢さも相まって防御の瞬間も掴みづらい。………更に、命中した全てを軋ませ潰していく重力球には、他ならぬエクスデスの手で付属魔法が掛けてある。
 赤黒い魔力の正体は黒魔法下級位階《カーズ》。彼は今、触れたものの力を一時的にとはいえ弱める呪詛の力を纏っている。例えば魔法にも、例えば防御にも、そして例えば―――攻撃にも。封印の呪詛と弱体化の呪詛、それらの悪意を使いこなしてこその暗黒魔導士ゆえに、攻撃から防御に至るまでエクスデスの手腕は変幻自在。それは、今から行う行動にも現れる。

「ぬぅん!」

 地へと剣を突き刺せば、今度はユーフォリアと、恐らくは後退するだろうダグラスの背後へ。
 大地から突き出した岩石が次々と突出し、二人の足元から奇襲攻撃を行う。当然、これらの全ての赤黒の魔力を纏い、触れたものに《カーズ》の呪詛による妨害効果を発生させるだろう。もちろん魔法耐性があるならば結果は別だが、さて、この奇襲に万全の防御が整えられるのかどうかという話だ。

 ―――さて、此処まで見せた。あとは彼らがどのような対策と行動を講じて来るか………。

>ダグラス、ユーフォリア


【お相手よろしくお願いします〜】

2ヶ月前 No.621

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【王都ロンカリア/城壁/上部/ギルバート・トムフール】

結論からいって、重力を用いた奇襲は失敗に終わった。クジャルナはそれに足止めされることもなく、加速した弾幕をいとも簡単に躱しきってみせたのだ。
常人であれば抜け出すことは難しいはずなのだが、彼も普通ではなかったということだろう。さすがは、歴史是正機構に属する者といったところだろうか。
人数はこちらが有利だが、かといって優勢を作れるかといわれればそうは断言出来ない状況。初めて共闘する相手と連携を合わせるのは難しいが、隙を見せればそこを突かれる。

「そうか。ならば、もう会話の必要はないな」

今の一言で、ギルバートはクジャルナを会話の通じる相手ではないと切り捨てた。見開かれた目は人間のそれではない。未来では少数派となった、魔族特有のものだ。
彼が何を思って歴史是正機構に与しているかは、敢えて聞かないでおこう。恐らく、聞いたところでまともな答えは返ってこないし、何より、時間の無駄だ。
世界政府が魔族に対してした仕打ちは知っているし、それは誤りであるとも思っている。だが、それをクジャルナに話したところで、何になるというのだ?
こうなってしまった以上、自分に出来ることは、歴史の改変を阻止するべく戦うことだけ。殺気が高まったことを感じ、身構える。次に狙われるのは、自分か、北斎か。

刹那、気付いた瞬間にはクジャルナが眼前に現れていた。そして、放たれる首への一撃。この状況からの回避は不可能、よって対処法は、必然的に防御のみ。
この場にいる誰もが、そう思ったことだろう。しかし、忘れてはならない。ギルバートの能力を。彼は咄嗟に、自身の前方から背中側へ向けて、強烈な重力を作用させる。
重力によって押し出されたギルバートの身体は宙に浮くが、同時に攻撃範囲からも脱出することが出来た。安全を確認した後、彼は今度は背中に重力を掛け、城壁の上へと戻ってくる。
しかし、城壁の石を抉るほどの威力……もし当たっていれば、恐ろしいことになっていたかも知れない。それにあの速度。どう足掻いても視認出来るものではなく、次の攻撃への対処も運が絡んでくることを実感した彼の表情が、思わず曇る。

「俺は魔族が外道だと言った覚えはない。お前が外道だと言った。心外だと思うのなら、自分の行動を見直すことだな」

クジャルナの言葉を冷たく受け流すと、ギルバートは右手に重力刃を形成し、重力による超加速と同時に一気に踏み込んで敵に斬り掛かる。
能力の性質上、直線的な軌道しか取れないのが難点ではあるが、単純な速度だけでいえばこの魔族の男にすらも匹敵するものであり、初動を見てからでは対処も難しい。
重力刃は命中すれば最後、重い打撃となって身体の内部に想像を絶するダメージを与えることだろう。そして、この場にいるクジャルナの敵は、ギルバート一人ではない。二人の連携攻撃に、敵は如何なる対処を見せるのだろうか。

>クジャルナ・クオーク、葛飾北斎

2ヶ月前 No.622

メンヘラ @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_LPw

【王都ロンカリア/飯店/ラヴィ】

「えへへ……大丈夫ですよ。ちょっとお腹が空いただけです……」

ちょうどお金の持ち合わせがなかったので仕方ないことだ。ラヴィはイアンに譲られたシチューと牛乳を食べ始める。その手つきは綺麗で、とても女性的だった。普通に客の中に溶け込んでいれば、誰も気づくことはないだろう。もっとも、ラヴィは気づかれないはずがないほど悪名を知られているため、この飯店でも恐らく騒ぎが起こることになるのだが。

騒がしくなってきた王都が気になるのか、イアンは様子を見に外へ向かう。しかし、そこで逃げてくる人間と鉢合わせして彼女の足の動きが止まった。ラヴィはそんなことに目もくれることもなく、ゆっくりと自分のペースで食事をしている。遠くから、夜這い兎だ、などという声が聞こえてきたが、今さらなので彼女は気に留めることもなかった。だが、イアンは違ったようだ。

「あれ……? 知らないんですか? 私のこと……」

食事を続けていた手がピタッと止まり、その虚ろな目がイアンに向けられる。同族だと思って話かけたのだが、まさか自分のことを知らないとは。まあ初対面だったので、そういうこともあるだろう。そうすませようとしたところで、ラヴィは考える。もしかすると、イアンは魔帝軍に所属していないではないか、と。だとしたら大事だ。自分の目的は、あくまで魔族の勝利のために人間を籠絡すること。それを邪魔するようであれば、残念だがここで消さなくてはならない。まだ攻撃をしかけることはないが、次に相手が敵意を見せてきたのなら、疑惑は確信に変わる。

>>イアン

2ヶ月前 No.623

黒闇の騎士 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限回廊/ローウェン・アルベリウス】

 限り無く続く階段の途中で待ち構える者、フロレ。その一身に受けた栄光の数々は既に過日の物となり、討つべき魔族の手先へと堕ちた人間。尊敬を寄せていた筈の名も、今となっては忌々しき物として記憶に刻まれている。それでも、彼女が述べる言葉の数々を、その理由を盾に一蹴する事は出来ない。
 これが真実には程遠い、雑音染みた物であったならば、何処吹く風と聞き流す事が出来ただろう。だが、実際に投げ付けられるのは的確に急所と言う物を突き、心を揺さぶる様な物ばかり。厭が応にも、真面に取り合う事を強制されるような言葉の羅列の数々である。
 莫迦で、阿呆で、極め付けに無能な王国の騎士団。それを真っ向から否定する事など、現状を知る者からすれば叶う筈の無い物。今の騎士団に正義は無く、団長代理のゲイルや、閃光のレーヴ、そしてローウェン等の、一部の騎士を除く多くの騎士達が塵屑と化した。真っ当な騎士達も、明日には屍か塵に成り下がる有様。ゲイル達の奮闘虚しく、騎士団は着実に衰退の坂を転がり落ちているのだ。

「断る。お前にとっては救済の光であっても、俺にとっては奈落の闇。
 俺が望むのは……最期を迎えるその時まで、誉れ高き在りし日の騎士達の遺志を継ぐ、アルベリウス家の騎士として使命に殉じる事だ。
 諦めろ、フロレ。今の貴様の言葉では、この俺を光へと道連れにする事は出来ん」

 "混沌"の異名を持つフィラッサを崇めながらも、人を捨て、魔族に身を窶す様に勧誘するフロレの言葉を、ローウェンは断固たる意志で一蹴する。誘いに乗れば、確かに従属を自ら望ませる程の甘美を、混沌が秘める魔力によって齎してくれるであろう。魔族として悩みも無く、無力を嘆く事も無く、幸福に生き続ける事が出来る。
 然し、それでも彼が望むのは、人としての一生。初代から先代に至るまでの、歴代の騎士達の遺志を継ぎ、最期の瞬間までアルベリウス家の騎士としての使命に殉じる、"人間"ローウェン・アルベリウスとしての生を望むのだ。今一度、世界に和平を取り戻す為にも、この命が果てるまで、最後まで戦い抜く一心を持つ。

「貴様に出来るのは、この俺を死へと追いやる事。それ以外の道など、有りはしないのだ……!」

 黒紫の輝きを宿す双刃の刀身。其々の手に握られた剣を、右、左と連続して揮うと、放たれるは漆黒の波動、或いは斬撃。進路上に在る物を切り裂く一撃は、直進するがままにフロレの下へと向かい、その身を引き裂かんとして襲撃を仕掛ける。更に続け様に大地を蹴って跳躍したローウェンは、無骨な鎧に見合わぬ軽やかな動きで宙返りをして、肉薄した彼女の頭上へと双刃を振り下ろす。
 状況に応じて変幻自在に戦い方を変化させる彼が、先ず手始めに選択したのは重き一撃よりも軽き連撃。手数を重視した双剣での攻撃は、果たして魔としての力を手にした彼女に、通用するのか否か。

>フロレ・ゾンダーランド ゲイル・ベネルド

2ヶ月前 No.624

葛飾北斎 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc

【 王都ロンカリア/城壁・上部/葛飾北斎 】

 霊基によって変質、強化された大筆は並大抵のことでは破壊することは出来ない。
 騎士王の聖剣がそうであるように、槍兵の死棘槍がそうであるように、――これもまた葛飾北斎を彩る伝承が一つ。
 研ぎ澄まされた、命を手折る殺人拳打であろうとも大筆であれば弾き返すことは容易い。
 身体能力もまた、衆人へと見せるパフォーマンスアートも行っていたこともあり。……常人に比べて筋力も優れている。

「やっぱへんちきだよ、アンタ」

 神話の怪物ならず。
 されど、常人にはあらず。

「今すらロクに変えられない奴が、過去に手ぇ伸ばして弄繰り回したところで何が変えられるってんだ。
 そんな独りよがりでとばっちり受ける民が、草葉の影で泣いてるってもんだよ」
「ま、火事と喧嘩は江戸の華――精々そこで首を洗って待っておきナ」

 降りかかる銃弾、――魔力<墨>を擦る。北斎が描く絵筆は一瞬を切り取った世界の具現。
 創作を超えたリアリティにのせられた魔力は、そこに描かれたありもしない絵画(くうそう)を実現させる。
 大筆を回せば、やはり蒼き波飛沫が噴き上がり旋回する。湧き上がっては巡るその様は大海の大波が如し。
 要は――魔力壁の展開だ。
 墨(魔力)を絵にする。
 魔術の領域にも入るやり口は、……芸術家を魔術師と呼べるほどのものか。
 だが、――クジャルナにとってはあくまで足止めでしかない。銃撃でその場に押しとどめれば、分断出来ると踏んでいたか。
 しかしそうは問屋が卸さない。
 そも、前提として二人で戦っているなどと誰が決めていたか。
 葛飾北斎という降臨者<フォーリナー>を構成するのは――少女一人のみにあらず。

「そら――」

 そっちがその気なら、こっちにも考えがある。
 飛翔するは、北斎の横を浮いていた蛸。
 実に面妖な光景だが、たかが蛸されど蛸、たこ焼きにされるのが宿命のそれとはワケが違う。
 それはひっそりとクジャルナの背後に忍び寄り、大きく体を膨らませ……蛸スミを叩きつけた。

 ぶちまけられた蛸スミ。
 それは魔力を含んだ猛毒の煙幕として、――漆黒の霧となりクジャルナに纏わりつく。
 直接触れているだけでもダメージが入るが、……何よりの問題は、濃い霧はそれだけで一寸先の闇を生み出す。
 即ち、襲い来るギルバートの重力刃の視認が困難になるのと同義であり――。

>クジャルナ ギルバート

2ヶ月前 No.625

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【すみませんご迷惑をおかけしました攻撃手段が14話分空けてようやく判明した件。わおん】

【王都ロンカリア/噴水広場/ショパン】

 雨音と共に聞こえる。時計の音、歌唱に挟むピアノの連符、雨粒を連想させる静かに響くアコースティックギター。
 電子と人が織り成す死を連想させる歌詞は、まさに死期を悟ったかのような内容だった。
 深海に漂っているかのような旋律に似つかわしくない、荒い口調でお前なんか知るかという態度を取る。
「だって……君も僕も……関係ないからね」
 そうだ関係ない。なんで関係のない部外者の自分が世界の為に戦わなくてはならないんだ、そんなの自分達の責任だから部外者に押し付けるなと上層部に言い放った。
 自分の人格や二つの組織は彼女に関係ない。
 ショパンはそう言いながらタクトを振るい続け、体を震わせてなんとか立ち上がると、息を切らしながら前奏曲を奏で続けているとページのめくる音が加わった。
 見た目は自分と同年代か、黒装束の女性が傍に降り立ち、自分に話しかけきたところを見ると味方のようだ。
 ようやく加勢が来たと安心からか髪で隠れて見えないものの、儚さを感じさせる整った顔は微かに柔らかくほぐれ、瞳孔が円形に囲まれた模様がある黄緑の大きくなった瞳は恥じらいから来ているのか反らす。
「……あ……うん。助かる」
 五線譜をタクトで描き、相変わらず暗く囁くような喋り方であるが、恥ずかしがり屋なりの礼をすると、大きな火炎の球を出現させた彼女を見て、ベトが喜びそうと火炎放射機を背負って餃子を焼く楽聖を思い出す。
 だが気を引き締めろと、痛みに苦しみつつもエンペラーワームはどこかで聞いた事がある台詞を言うのでつい。
「本当に……分かりやすい」
 おとぎ話に出てくる悪役だと、そう思っていたら灰になっていないワーム達は岩を投げてきた。
 ここで曲を変えてしまうと相手から雨雲は消し去ってしまうが仕方ないので、ぽつりと女性に言った。
「……守りよろしく」
 痛む体を引きずりながらもショパンは、後ろに下がり少しでも被害を減らそうと考えて、次に『前奏曲雨だれ』から『夜想曲第二番』へ切り替えて大きなダンボールの壁を出現させようと考えた瞬間、エンペラーワームが火球を取り込み融合し始めたのだ。
「……シューのムジークみたい」
 自分の物として返さないが攻撃を吸収して大きくするなんてまるで、シューベルトの『ザ・グレード』のムジークみたいだとぽつりと呟く。
 見とれている場合ではない、全員退避の声に放たれたと同時に電子の荘厳『夜想曲第二番』へ切り替えて、二人の足元に大きなダンボールを出現させる。
 これはかつて、「それを書けばここにいてもいいの?」と音羽館の契約書を書こうと手を伸ばした瞬間、歓迎され手を強く触られた事に拒絶を起こし頭を打った時何かを思い出し(あくまで本体の推測だが)、クローゼットに再び閉じ籠る為に作った塔だ。
 下が駄目ならば上だと、油汗をかきながらもショパンは天高い塔の建設を開始しようとタクトを力強く振るった。
>ワームテイマー エンペラーワーム エスト

2ヶ月前 No.626

獅子心 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 無限廊下で繰り広げられる筈の一戦。然し、それは突如として戦場へと侵入したサシャの言葉によって、一時中断を迎える事になる。暴走した部下に依る独断行動の可能性に狼狽するレオンハルトは、彼女に対して説明を要求しながらも、正常な判断が出来ずにその胸倉へと掴みかかろうとして。危うく露見すれば人望を失いかけない窮地に立つも、割り入ったレプティラのお陰で辛うじてやや真面な状況へと改善された。
 先ずは落ち着いて判断する様に提言しつつも、彼の突然の暴走を前に冷静を失ったサシャに代わって、レプティラは状況の説明を開始する。この頃になると、レオンハルトも多少は落着きを取り戻したのか、彼女の説明をちゃんと聞き届け、その内容を頭の中で整理して行く。腐っても時空防衛連盟の司令官を務める男、地位に見合うだけの能力はあるのだ。

「……手荒な真似をして悪かった。確かに、今はお互い争うべき時じゃない様だ」

 そして一通りの説明が終わると、彼は掴んでいた服を手放してレプティラを床に下ろすと、先程の行為に対する謝罪を行い、同時に今は争うべき場面では無いと言う言葉に同意する。この問題を放置してまで、戦いを続行する事にメリットと呼べる物は存在しない。戦いの裏で、この状況を利用した最悪の一手を打たれてしまっては、例え時空断裂が起こらずとも、本来の歴史から大いに変動する可能性があるのだ。
 それを未然に防ぐ為にも、整理した情報を共有する必要がある。先手を打たれる前に、何とかしなくてはならない。そう思って口を開こうとした矢先に、此処へ現れる中級魔族の部隊。彼等は揃いに揃って、サシャがこの毒を流した下手人として扱い、罵声の言葉を浴びせて行く。実際には彼女が毒とは無縁の、全く以ての冤罪である事を、レオンハルトは既に見抜いている。理由は、判断材料の多さからわざわざ述べるまでもあるまい。
 だが、それ以上に気になる言葉が、幾つか聞こえて来た。現在の魔帝に代わる、"新たなる魔帝"――魔大将と言えば、その役職に当て嵌まるのはチェル。そして、彼等の認識ではヴェルメイユとサシャが共謀して魔族を陥らせた事となっている様だ。

 ――そして、彼等に続く形で現れたのは、もう一人の魔将軍。"鏖殺剣"のニア。

 鏖殺すべきヒトと、冤罪を背負える生贄の羊に対する処刑を遂行し、最早不要と断じた前帝の存在を抹消するが為に、此の場へと現れた存在を前に。気高き獅子の心は、憶する事無く闘炎を宿す。

「……ハッ、さっきから長々と、下らねえ御託を。あたかも魔帝が裏切ったかに見せ掛け、魔大将の新帝就任の正当性を証明する――
 部下の身勝手な暴走を、良くも此処まで有効活用してくれたよ。思わず泣きたくなる」

 呼吸を荒げ、泣きそうになるサシャへと浴びせられる、躊躇いの無い糾弾の羅列。その一通りの言葉を鏖殺剣が述べ終えると、此の場に居る誰よりも早く口を開き、推察した"真実"を述べて行くレオンハルト――その刹那、彼の両足を通して放出された炎の魔力が、包囲する魔族へと其々一直線に突き進んで行き、足元へと辿り着くや否や爆炎を引き起こす。
 同時に、自らの左腕に素早く焔を纏わせ、それを振り翳すと、三人と鏖殺剣を隔てる炎壁を現出させる。所謂、後退までの時間稼ぎと言う奴だ。相手は魔将軍、突破は容易く一瞬の出来事だろうが、それでも二、三秒くらいは稼げる筈だと推測する。

 先程の推察に至るまでの経緯。鏖殺剣が述べた通り、魔帝ヴェルメイユが和平を望んでいるのであれば、人類を抹殺を第一とする魔族が大半を占める魔帝軍にとっては彼女は邪魔な存在でしかなく、後に排斥すべき存在として認識されているだろう。然し、軍を瓦解させる事無く王位を簒奪させる為には、正当性と呼べる物が必要で。サシャはその証明材料として、まんまと利用される形となったのだ。

「毒の見解だが、あれは紛れも無く俺達の部下の仕業。それも、改善が見込めないのなら恐らくは異世界の物質だ。一応、毒使いもいるには居るが、奴の立場じゃ無理だろう」

 突如の介入で語れなかった毒に対する見解を、レオンハルトは少し後退しつつ二人へと述べて行く。その手には大剣の柄が握られており、いつでも鏖殺剣や他の魔族が突破して来ても応じられるよう備えており。

「……それと。魔帝ヴェルメイユが本当に和平を望んでいるのなら、いよいよ魔大将は新たな魔帝として人類の滅殺を始める心算だろう。
 そうなれば、争いは更に激化して、人類と魔族、どちらかが滅びるまでぶっ殺し合う事になる。魔族も当然、大勢死ぬ」

 続け様に述べる言葉は、平穏を望むと言ったレプティラに対する物。未だに彼女が望む平穏の正体は掴めないが、この状況が其処までに至る道に多大な影響を齎す事は確かだろう。そう思った上で、レオンハルトは助力を求める。

「それが嫌と思う心があるなら、力を貸せ」

>ニア レプティラ サシャ

2ヶ月前 No.627

健啖の銀狼 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【王都ロンカリア/飯店/イアン・ガグンラーズ】

譲られた料理を食べ始めた同族の手つきは、明らかに病んだ表情とは対照的に、礼儀作法の伴った美しいものだった。特に健康上に問題が無いことも判明し、ホッとしたような表情を浮かべるイアン。
しかし間もなく崩壊を迎える均衡…魔族の襲撃。兵器兵員を用いての侵攻のみならず、王国市民の心を狂わせるという非道な手段。罪無き人々に迫るカタストロフ。
今や1500年の歴史を誇る荘厳な街並みなど見る影もなく、欲望と暴力、そして悲鳴が渦を成している。そんな混迷に飲み込まれたロンカリアの惨状は、かつて食べ物目当てに好き放題やっていたイアンですら、酷く心を痛めるようなものであった。
極めつけはこちらへ逃げてきた市民の言動だ。視線の先にいた二人のうち、明らかに兎耳の同族を指しての絶叫。

『よ、夜這い兎だ!』

その意味はイアンにはよくわからなかったが、背後の少女が人間に恐れられる存在であることは間違いない。食べ終わったら助太刀を頼みたいと思っていただけにショックは大きく、また、これから一人で戦わないといけないというプレッシャーがのしかかる。
ロンカ村で連盟の一員としての初陣を飾ったときは、心強い味方が二人もついていてくれた。片や連盟のキャプテン、片や村の守護者の一角。余程の敵でなければ勝利が約束されたような布陣。
だが今度は孤独な戦いをしなくてはならない。混沌の中、周囲に助けを求めることも能わない状況下で、一人。能天気かつ楽天家のイアンだが、流石に緊張せざるを得ないようだ。

それでも立ち止まっている時間がもったいないと判断し、すぐさま少女の方を向き直り、ややキツイ口調で糾弾する。

「キミもここの人達を苦しめてるのか!」

古代にスリップする前は盗みの常習犯だった身で何を言うか、と突っ込まれればそれまでだが、この純粋で愚直なオオカミは本気である。
威嚇のつもりかその目には敵意が漲り、黒い瞳は内に眠る野生を覗かせ爛々と輝いている。これで少女が否定せず、自分にもその手口を見せつけてくるようなら、戦いは避けられないものとなるだろう。

兎を獲るのに待ちぼうけなど必要ない、こちらから飛び込むまで。そう言わんばかりに身構えるイアンの風貌は、徐々に正義の味方らしさを帯びてきていた。

>>ラヴィ

2ヶ月前 No.628

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『王都ロンカリア/大宿屋/ジークリンデ・エレミア』

ジークが放った10球の魔力球により、小竜巻を打ち消すことに成功した。
そして直ぐ様高くジャンプして自身に向かってきていた風の刃を回避しつつ、
残った5球の魔力球を未知なる相手に放つが、障壁によって防がれてしまったようだ。
こちらの攻撃に相手は再び困っているようには見えない口ぶりで話しかけた上でクスクスと笑い声をつけるが、
残念なことにジークは全く聞く耳を持たず、無反応だった。
あまりに無反応なため相手が可哀想だが、
逆にこちらが無反応であれば相手に不安などを煽る事も出来るだろうが、相手が相手である。
これに意味があるかどうかは不確定要素でしかない。
相手の物言いからして何か凄い隠し弾でも持っているのだろう。
嘘かもしれないが、本当かもしれない。実際の真意はジークには分からない。
一方でジークは手の内を出しきっていない。むしろ隠している。

未知なる相手はジークの着地狙いで攻撃を放ってきたようだ。
前後の2方向の攻撃なのだが、隠密性が高いのかほとんど見えない。
ジークはジャンプ後の自由落下中に目を凝らすと、一瞬だったが見えた。

「ゲヴェイア・クーゲル」

着地狙いで放たれていた攻撃にジークは即座に対応する。
1回目と同じく、15球の魔力球を自分の周囲に展開する。
前後に5球ずつ放ち、残った5球の魔力球を再び未知なる相手に放とうとした。

>>黄衣なる者

2ヶ月前 No.629

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大通り(表通り)/オムニス・デューザ】


不可思議な青年二人の片割れが翼を生やし、その飛行能力を持って剛腕による圧縮を寸前で回避する。形態変化を持っているとは厄介だ、だが様子を見る限りでは一方の変化を使っているときはその変化をもう一方は使えない様だ。
対する機械的な青年は巨大な砲身を取り出し、その巨大な銃口に膨大な熱量が蓄えられる。僅かな間の後、それは魔族の腕を飲み込まんと放出される。強大な力の奔流、既に攻撃へと移っていた腕を引くことなど出来ず―――

『……まだだ。』

―――身体の半分が消し飛ぶ、暴虐的な光の渦に飲み込まれた魔族の部位は削り取られたかのように存在しない。腕も半数を消失、片側のみになった腕で一番に守るは腕の中の彼女。
溶け落ちた腕、その中にいた彼女を優しく抱き上げ、何事もなかったかのように再び包み込む。多少揺れた、その程度で済ませられるほど魔族の対応は素早く、丁寧であった。
その魔族に追撃を与えるは先に宙へ羽ばたいた不可思議な青年、水飛沫の様なものを纏う鋭き蹴撃。二本の腕で防ごうとするも、容易く貫き防御の意味を為さない。溶け落ちた身体の中心部を蹴りが貫く、その膨大な威力を示すかのような大穴が魔族の身体へ穿たれる。
その巨体がぐらりと崩れる、腕の中の彼女を残る二本の腕で守ろうとするも手が足りない。せめて衝撃だけでも行かぬようにと肩部から地へと伏せる、腕は多く失い、満身創痍と言う言葉が相応しい。
だが、魔族の目は未だに爛々と輝く。諦めてなどいない、この状況でも打開する方法があるかの様に。夢物語の悪鬼に似た顔は未だ生気に満ちている、そうだとも、彼女在る限りこの魔族が敗北することなど有り得ない。

『………まだだ。』

徐々にその上体が持ち上がる、同時に骨が砕ける様な、肉が裂ける様な、皮膚が割れるような音が響く。その発信源は魔族、その溶け落ち半分に削られた肉体は膨張し、歪み、そして爆ぜる。

『―――まだだ!』

その光景は形容しがたい、だが敢えて表すのであれば醜悪な蝶が繭から孵化した、とでも表そうか。魔族の肉体であった場所からは、文字通り無数の巨腕が這い出る様に沸き上がり、その中心には更なる透明度を持った魔族の肉体がある。
そう、彼女が神様と信じる信仰心はこの魔族に絶え間なく力を与え続ける。そして、彼女を守りたいと願う魔族の魂が死地を打開するために新たな肉体を、元の肉体から生み出した。
新たな身体となった魔族は数え切れぬ程の腕の一部で、彼女を大切に、優しく包み込む。それは子を抱く母のようで、そこには確かに愛と情が介在する。そしてその愛に不要な存在がこの場にある。

『倒れる事は許されない、オムニスが幸せをつかむまでは…!』

無数の腕、変わらぬ剛力、生半可な攻撃を通さぬ堅牢さ、先までは十で足りるほどの数でしかなかったそれが千を容易く超越する圧倒的な物量で展開される。防御は勿論、回避すら不可能に近い。
地に鋼鉄の馬を用意する青年、強烈な蹴りを放った青年、巨砲を放った青年。この場に不要と断じたその三人にそれぞれ百などでは足らぬ数の拳が降り注ぐ、空から放たれるそれは飛べども瞬く間に撃ち落とされる圧倒的な弾幕。
当たることも許されず、空を埋める拳は回避など考える余地もない。広域に放たれるそれは、この状況からの脱出を絶望的にする。唯一、拳が降り注がぬのはまだ多数の腕犇めく魔族の傍のみ。
懐に潜り込む、それは決死の一撃を決める最高の機会であり、同時に呆気ない死が確証される機会でもある。しかし、一人の女性によって齎された信仰心の怪物を打倒すにはこれ以上ない手段だろう。

魔族は吼える、ただ一人幸せを願い、その望みを掴み取る為に。
女性は祈る、全存在の幸せを願い、その望みを叶う様に。

>>仮面ライダービルド&仮面ライダークローズチャージ 橋川 清太郎


【状況によりますが次で戦闘を終えたいと思います、出来るならば弱点を穿ち、倒していただけると嬉しいです。】

2ヶ月前 No.630

忠犬 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/海底洞窟/ロコ】

勇者にお供する従者といえば、聞こえはいい。しかし、実際は戦力の九割以上を担っているのはロコの方であり、アンナローズをほぼ一人で守りながら旅を続けてきたのだ。
決して上位魔族ではないロコであっても、その辺の雑魚を相手にするだけであれば十分な存在であった。だが、いざこうして強敵と対峙すれば、当然のように綻びが出て来る。
彼女はまだ健気に勝利を信じ続けているが、状況的にほぼ勝敗は決したと見ていい。元々勝ち目の薄い戦いであったが、ロコを封じられたとなっては、もはや二人に為す術はないだろう。
力なく、助けを求めるアンナローズ。彼女があんな様子になっているところを見たくはなかった。全ては、自分の力不足だ。ネクロニアが笑う。残った一人を拘束しようと、再び包帯を発射する。
もはや、これまでか……思わず目を瞑るロコ。だが次の瞬間、凄まじいエネルギーの奔流が彼女を襲う。それは敵ではなく、アンナローズから発せられているものであった。

先程まで感じなかった強い魔力。それが、アンナローズから放たれている。上空に飛翔し、無数の風の刃を射出するその姿は、まさしく勇者そのものであった。
優しき風によって解放されたロコは、直ぐ様立ち上がり、ネクロニアの反撃に対処する。アンナローズの覚醒に気を取られているのか、どうやらこちらに攻撃をしてはいないようだ。
ならば好都合。ネクロニアの最大の武器は、膨大な魔力でも、使役するアンデッドでもなく、何度でも復活するという点。それを封じる役目は、自分では担えない。
しかし、今のアンナローズであれば、あるいは――― ロコは再び両者の間に立ち塞がると、渾身の力を込めて、自分の眼前に巨大な土壁を展開する。

「言ったでありますよ、アンナローズ殿には指一本触れさせないのであります!」

止める、この攻撃だけは何としてでも受け止める。この際、自分はどうなってもいい。アンナローズさえ生き残れば、反撃の手立ては必ず生まれるはずだ。
とはいえ、生まれ持った魔力量の差は如何ともし難い。両者が拮抗していたのは精々数秒のことで、次第に劣勢になったロコは遂に押し負け、吹き飛ばされてしまう。
それでも、今の主人にとっては余るほどの時間を稼げたはずだ、と彼女は確信する。あとは、最後の一撃をネクロニアに叩き込んでやることのみ。こんな状況であってもロコは、敵の棺桶にヒビが入っていることを、見逃していなかった。

>"不死公"ネクロニア、アンナローズ・フォン・ホーエンハイム

2ヶ月前 No.631

影の魔物 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【→魔帝城/→無限廊下→深淵の間/"無音"のブロヴァンス】

王都は陥落した。門を開かれて間もなく魔族の軍勢による侵攻が始まり、慈悲無き虐殺が展開されていく。
更に、何者かの干渉によって未だ非戦闘区域となっている場所でも人々の混乱した様子が見られる。これで最早、滅亡は秒読みの段階に入ったと言える。
引鉄を引いた影の魔物は既に戦線から離脱している。任務を終えたなら、後は他に巻き込まれる前に退くのが工作兵の鉄則であるからだ。
影と影を渡り歩き、風よりも速く城へと駆ける。彼の魔物は、足の速さで言えば一級品。影さえ繋がっていれば、彼奴より速く、そして静かに移動出来る者はいるまい。

……薄暗く、彼方此方に影が伸びる無限廊下を抜ける途中、ある魔将軍達が対話する場にたまたま遭遇した。塵殺剣のと、常山蛇勢の、そして有象無象の魔物共と、恐らくは交戦中だったと推測出来る人間、それから……黒猫と血を分ける者だと言うサシャ。対話、と言うには全く穏やかではないが、彼らは全く異質な繋がりでありながら今はただ塵殺剣が語るままに耳を傾けている。
塵殺剣が捲し立てるのは、魔帝と其処にいるサシャが魔帝軍を裏切り人間と組んでいたと言う、余りに唐突で、しかし残酷な事実。それを象徴するかの様に、魔物共は口々にサシャを責め立てる。最早崩壊は風前の灯にも見える程だった。
無論、これに影の魔物も反応した。ただ、その反応は他の魔族達とは幾分か異なるものであった。

そも、影の魔物は個体としての意識ともう一つ、種としての統合意識に似た思考がある。即ち『我々』と言う思考。『私』の生存ではなく、『我々』が最も生き永らえる為にどうすべきか、と言う思考回路だ。そしてその為に最も効果的なのが、『我々』を排除し駆逐した人間の殲滅であり、また魔族の存続へ真摯だった魔帝への従属だったのだ。
しかし、その魔帝が人間と組み魔族の内紛を助長していたとあれば……最早彼方に就く理由はない。直ぐにでも魔帝に次ぐ権力者――即ち魔大将の元へと向かうべきだろう。そして魔族達の協力を煽り、魔帝を打ち倒すべきだ。


……ただ、彼奴は『我々』と言う思考と同時に、『私』と言う思考を持ち合わせる。
塵殺剣が語った言葉の真偽を疑う程の知恵は無い。ましてや其処の人間の戯れ言に耳を傾ける気でも無い。ただ――"私は、黒猫よりは、魔帝の方をまだ信用していた筈だ"。
本当に魔帝がこの様な手を取るのか? それは黒猫の領分では無かったか?『私』が忠誠を誓った者とは、その様な俗物であったか?
それは理論も何も無い、単なる私的感情だ。しかし、彼奴は幸か不幸か今しがた戻ったばかりで毒を流されたと言う実感は無く、またその場面と言うのを目撃してもいないし、事の顛末をまるで把握していない。だから他の魔物達と違って事態への先入観は無く、何より"では黒猫の元に就いて良いのか"と言う疑問が常に浮かび上がる。

そして――だからこそ彼奴が選択する。即ち、『私』は真相を暴き、『我々』の生存可能性がより高い方へ就くと言う決断を。

決断してしまえば後は早い。影を渡り、魔物達が口々に語っていた"証拠"を探す。鼻は利く方では無かったが、それは存外早く見付かった。何せ、より魔族の悲嘆と憤怒の声が大きい方へと向かえば良かっただけだからだ。
魔族の骸に握られているのは、確かに魔帝とサシャの内通を著した一通の文書。それの真贋など、最早意味を成しはしないだろう。一度火が付いてしまえば、後は勝手に何もかもを呑み込んで燃え上がるのだから。
だから、それが本物であろうと偽物であろうと彼奴にとっては関係がない。ただ、それがあると言う事実が重要だ。それを屍の手から引っ手繰り、また影を渡って駆ける。目指すは深淵の間――一介の魔物が立ち入る事は許されない、魔帝の御座。

其処に独り立つのは紛う事なき魔帝その人。ぽつりと一人で、何ぞ思索に耽っていると言うわけか。
彼奴は躊躇い無く、真偽の明らかではない文書を魔帝へと見せる。もしこれに書かれている事が真実であるならば、魔帝は事の是非を問わず彼奴を惨殺するだろう。それも計算に入れての行動だ。そも、『我々』と言う総体において『私』と言う個体の喪失は然程思慮すべき案件ではない。それよりも、『我々』――否、『私達』が真に与すべき相手が誰なのかをはっきりさせる事の方が重要だ。

「ギッ……ギァッ!」

声帯を持たない彼奴は言葉を交わす事は出来ない。出来てこの様な不快な呻き声を挙げるだけだ。だが、真に魔帝が魔族を束ねるに相応しい者であるのならば、意図は伝わったろう。彼奴の問いはただ一つ。

――即ち、貴方は『私達』全ての魔族を背負う覚悟と信念がおありなのか。

魔帝軍と言っても一枚岩ではない。好き勝手に振る舞う混沌のがいれば、 事務的に務めを果たす塵殺剣のがいる。自身の目的の為に邁進する不死公のがいるように、他者に仕え身を粉にして務める常山蛇勢のもいる。
それは一兵卒共も同じだ。人間憎しで戦うもの、可能であれば和平を願うもの、単に自身の安寧の為に所属するものまでいる始末。そして、『我々』は人間とは根本的に相容れない生物である。それは『我々』だけでなく、他の魔物にもそう言った性質のものはいるだろう。
だからこその問いだ。貴方は絶大な力を持つ者だ。だからこそ、あの黒猫は貴方を奉り上げたのだ。貴方こそ、魔族を統べるに相応しいと。それに幾何の欺瞞があったかまではわからないし、『私達』は興味も無い。『私達』多くの魔物の願いは一つ。魔族の繁栄だ。貴方は、それを成す覚悟があるか。

……濁った魔物の水晶眼が、不遜にも魔帝を真っ直ぐに見つめている。問いに答えられなければ『私』は死ぬだろうと言う確信に満ちた眼差しであった。

>>魔帝ヴェルメイユ

2ヶ月前 No.632

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/城壁・上部/クジャルナ・クオーク】


やはり、と言うべきか。隊長の名、そして重力操作と言う非常に強力な能力。通常であれば反応すら出来ず、絶命に至る拳を感知し避け切った。しかしこの男の表情が変わることはない、先とは目が開いただけの笑み。獰猛さが滲み出た以外に変化はない。
宙へ躍り出た隊長が再び城壁へと舞い戻る、自身にだけ作用ができる以上範囲を指定してと言った芸当も可能だろう。女性も厄介ではあるが、隊長を先に潰さねばと再認識する。
隊長はすぐさまに攻撃へと移った、見る限りでは重力を用いた加速、その踏み込みを活かし右手に作り出した刃で切るのだろう。しかしこの男と同程度の速さでしかない、ならば能力を使わず戦闘において常にその速度を見続けているこの男が反応できない訳がない。
少なくとも未知の攻撃を受ける選択肢はない、故に狙いは最小限の回避、攻撃後の隙を突いた反撃だ。斬り掛かる動作と言う都合上武器を振るわなければならない、その隙は消すことは難しく、仮に重力操作を行ったとしても身体への負担は大きいと考える。

「チィッ、足止めにならんか!」

だがそこに数の不利故の邪魔が入る、純粋な魔力による毒を伴った黒霧。僅かに映った視界には黒い蛸、女性の傍にいたそれが動けることは想定していなかった。奪われる視界、蝕まれる肉体、だがその程度男にとって障害に成り得ない。毒が致死に至らなければ、即座の回避も必要ない。
見えねば迫る音で判断するのみ、微かな動く気配、迫る空気の流れ、最後に認識した隊長の場所、視界以外のあらゆる情報から割り出した刃の一撃を長き髪一本触れることなく、寸前で回避する。
身を反らし、空を切る感触を確認したと同時に繰り出すは頭部への蹴り。反らした動きのまま流れる様に穿たれる蹴りは、無音のまま静かに命を狙う。そうだとも、この男に煙幕が張られたという事はこの距離まで接近した隊長も同様の条件。

「我が外道?有り得んなぁ!我こそが正義、未来にはそれを分からぬ腑抜けが多すぎる!独り善がり?結構!正しきことを為して何が悪い!」

即ち、この状況で頼りになるは視覚ではなく聴覚。この男にとって音を消すのは常、諜報員として、そして魔族に有害な議員を消す暗殺者として、全てにおいて優秀である以上造作もない事。
女性への牽制も考えたが今取れる手段はなく、またこの距離であれば先の攻撃手段から考えるに隊長を巻き込むだろう。であれば、拳銃を撃とうとも目標が分からない現状では一度思考の外へと追いやる。
ならば次に行うは追撃に他ならない、視界の見えぬ状況での反撃を警戒した時咄嗟に回避する方向は何処か。それは後方、本来であれば直後に左右へ振るなどの動作を入れるべきだろう。
だが、この隊長は攻撃時直線状に突き進んできた。速度に頼るとしても角度を入れた方が攻撃としては優秀、それがないとなれば直線にしか移動できない、重力の操作をそこまで細かくできないと見るべきだ。
どうせ暗闇の中では追撃も限られる、それならば行動の予想で動くことも致し方ない。蹴りを放った直後に、気配のあった場所へ二発銃弾を撃ち込む。予想の行動を取れば、銃弾は隊長を貫くだろう。
依然、数の不利は続く。されどこの男に動揺はなく、動きに乱れも生じない。ただ、敵を打倒す。自身の正義の為に。

>>葛飾北斎 ギルバート・トムフール

2ヶ月前 No.633

垣間見えた本質 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【ディンカ/魚市場/テルン・エルウェーウィン】

本質を見つけたテルンの動きは、もはや先程までの取り繕ったものではない。ただ純粋に、求めているものに真っ直ぐ手を伸ばしてくる、いわば獣のような状態。
こうなれば、動きを読むことは一輝にとって簡単だろう。真意を悟られず、遠距離からじっくりと相手を追い詰めるという自らの持ち味が、完全に失われてしまっている。
よほどの能力差のあるマッチングでもない限り、自分を捨てた者に勝利が訪れるはずもない。つまるところ、テルンは完全に勝機/正気を逸してしまっていたのだ。
ただし、彼女がそれに気付くことはない。ただ目の前の青年が欲しい。初めて見つけた、本質を隠さず曝け出しにしている存在の中身を、隅々まで調べ尽くしたいから。

「そんなことはどうでもいいのですよ……私はただ貴方が欲しい! それだけのこと……!」

手を伸ばす。まるで子供が新しい玩具を見付けた時のように、獣が獲物を狩る時のように。無数の十字架が、一輝に絡み付く。されど、それは一切の効果を成さない。
冷静に状況を判断していれば、ここで一旦下がり、別の攻撃手段を模索していたのだろうが……テルンは馬鹿の一つ覚えのように、同じ攻撃を連射し続ける。
そんな状態で、己に危険が迫っていることを認識出来るはずもなく、テルンは音速で振るわれた刀の一閃を、まともに喰らうこととなった。それでも首が落ちなかったのは、聖職者ならではの幸運の強さか。

しかし、もはや戦闘を続けられる状況ではない。頸動脈を断ち切られたのだから。流れ出すおびただしい量の血。それでも、テルンはまるで死への恐怖を感じている様子がない。あるのは―――

「貴方の中身を……! 内側の本質を…………!」

最期の時まで、テルンは人の本質を見ることに拘り続けた。そんな彼女が、逆に自らの本質を暴かれ、それが原因で命を落とすこととなるとは、何たる皮肉だろうか。

【テルン・エルウェーウィン(Chrono Crisis)@黒鉄一輝との戦闘で相手の本質を暴こうとするも、逆に自らの本質を暴かれ、発狂。冷静さを失い、敗死】

>黒鉄一輝
【お相手ありがとうございました! 噛ませすぎる】

2ヶ月前 No.634

人類昇華への道 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【歴史是正機構本部/実験室/ヘルガ・アポザンスキー】

パージルクの抵抗の言葉に、ヘルガが耳を貸すことはない。所詮は、負け犬の遠吠えだ。奴はまだ魔道帝国の女帝でいるつもりなのだろうが、この時代においてそのような国は存在しない。
そもそも、あのまま宮殿から転落していれば命を落としていたのだ。わざわざ助けてやった歴史是正機構に、感謝の一つでもして欲しいところだが……あの性格では無理か。
一方的に甚振られるしかない状況においても心が折れない辺り、上に立つ者としての資質は持ち合わせているのだろう。まあ、それを折ってやるのが、今回の目的なのだが。

さすがの女帝様も、丁寧に捏造した歴史書の真偽を見分けることは出来なかったらしい。当たり前だ。書式も統一し、不自然に思われないように、変更も最小げに抑えてあるのだから。
これでも彼女は全てを信じてはいないようだが、少しずつその頑なな心が揺らぎ始めているのを感じる。押し黙り、沈黙を貫くパージルク。自らの信じたものに裏切られるという失望。
それでも、彼女は女帝として、臣下を信じるという決断を下した。大層な部下思いだ。いいだろう、そこまで言うのなら、揺るぎない証拠を見せてやるまで。
にやりと笑ったヘルガが取り出したのは、新たな歴史書。当然こちらも都合のいいように改竄されているが、先程の様子からして、パージルクがそれを見抜くことはないだろう。

「ならば、これを見てみろ。貴様が信じているマロンとエストとやらが興した国の行く末だ。貴様を捨て去った奴らは、あれから1000年以上も繁栄を続けた。心底、貴様のことが邪魔だったのだろうな? 奴らにとって貴様は、その程度の存在価値しかなかったのだということを、いい加減認めたらどうだ?」

ヘルガが突き出した歴史書には、マロニス王国の繁栄と魔道帝国の滅亡が記されている。歴史是正機構によって、あたかもアベンシス朝カルストンが、帝国を攻め滅ぼしたかのように編集されているが。
そこには、パージルクが愛した者達の最期も鮮明に描かれている。エスメラルダは帝国を守ろうと一人で戦い、マロンに虐殺され、カシュタンはエストの指図で再び幽閉、ネクロニアとギラード、アルクールは行方不明。しかし状況からして、マロンが殺したのだろうという記述。皆、マロンとエストによって、離散したのだと、歴史が告げる。
ここまでやれば、もう十分だろう。そう判断したヘルガは、わざとらしくパージルクがその場から視認出来る位置に歴史書を置き、部屋を後にしようとする。

「少し、時間をやろう。貴様の大事な臣下を滅ぼした奴らをこの期に及んで信じるのか、それとも我々の助けを借りて、復讐を成し遂げるのか。どちらが貴様にとって重要なのか、よく考えることだ。ああ、そうだ、もう一つ」

"従わないなら、貴様の命はないぞ?" 最後にそれだけ言い残すと、ヘルガは扉の向こうへと消えていく。歴史を捻じ曲げ、利用する。古の英雄でさえも、掌の上で踊らせてみせたヘルガの顔には、この上ない愉悦の表情が浮かんでいた。

>パージルク・ナズグル
【THE・洗脳】

2ヶ月前 No.635

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/噴水広場/エスト(残魔具4526個 残魂数9)】


「……うーん?まあ、如きと言われては嘗ての名が廃るな。」

火炎魔術を得意とすると公言した巨大な芋虫、大層な自信であるが彼女も人類の上から数えた方が早い実力を持つ魔を求めるものである。それを如きと評されれば自尊心も疼く、既に研究をやめたとはいえ未だ魔を扱う者、その実力もそれなりは自負している。
であればあの巨大な芋虫が放つであろう魔術を、此方も火炎魔術に属するもので受け止めるしかあるまい。丁度良く、青年が攻撃を引き受け、彼女に守りを任せて来た、勿論その守りと言うのは巨大な芋虫以外の攻撃も含まれている。

「任せろ、私も一端の魔術師。芋虫の攻撃程度、防いで見せよう。」

捲る頁、魔具を大量に消費し注がれる魔力、呼応するように光り輝く頁。先の火球を生み出した魔術とは明らかに格の違う魔術、所謂大魔法と呼ばれるもの。地に煌めく魔方陣が投射され、脈動するが如く陽炎が揺れる。
魔方陣の中心から赤熱を始める大地、燃え盛る業炎と共に姿を現すのは焔を纏いし巨人。その余熱のみで飛来する岩石は液状へと溶け落ちる、雨降る中水蒸気を照らす眩い灼熱。
どれほどの火炎魔術を撃とうとも飲み込み、返すつもりで召喚したこの巨人。しかしあの巨大な芋虫は先に放った火球を受け、それを吸収し更に巨大な火球へと成長する。炎の塊と化したそれは、周囲を溶かし始める、熱量も比べ物にならなくなっている。
しかし此方にぶつけてくるかと思いきや、大層な口上と共に在らぬ方向へと放られた。決して真逆な方向と言うわけではないのだが、狙いは逸れている。思い至るのはあの雨、先に少女が言っていたことは真であったようだ。少し、巨大な芋虫の言葉に気を取られ過ぎていたようだ。
だが狙いが逸れたからと言って大火球が炸裂すればただでは済まない、そして守りを任された以上青年に余波の一つでも漏らすわけには行かない。巨人を魔力で操作し、大火球へと向かわせる。
巨人が大火球を下から受け止める、しかし熱量では大火球が勝る。炎が炎に負ける光景などそう見ることはないだろう、しかし彼女にも意地と言うものがある。如きと言われ、仲間に任された以上何としてでも防ぐ必要がある。
さらに魔力を込め、巨人を活性化させる。溢れ出る炎の鬩ぎ合い、熱量は未だ負けているがあくまで防ぐことが目的。であれば、僅かな拮抗で十分。青年の攻撃を見やる、不思議な素材の塔を足元から発生させる様だ。
ならば、またとない好機。巨人は大火球を支えたまま跳躍する、身を溶かされつつも背負うものを落とすことはない。着地地点は勿論、あの巨大な芋虫。火球を受け止めたことから相当炎に強いだろう、だが魔帝を焼き尽くすと豪語した物を自身で受けるのもまた乙なものだろう。

「うーん?それほど自信があるなら自分で受けてみると良い、誇りに思えよ。」

そのまま巨人ごと巨大な芋虫へ突撃する、あれほどの自信で放たれた一撃だ、それでやられるならば本望だろう。あの巨人も本来ならば相当な火力を誇るのだが、あの大火球はそれを容易く上回った。幾ら火球を吸収したと言えど、その実力は本物だろう。
芋虫と侮っていたことは認める、その威力の高さも認める、だが扱いに関しては彼女は負けてはいられない。多くの魔術を編み出し、多彩なそれを使い分けられる以上その部分では負けられないのだ。
そう、割と彼女は負けず嫌いでもある。魔道帝国が採用したライフゴーレムに対抗し、自身の領では特製のゴーレムで作業をさせるなど対抗心が強い。今は柵もない、そんな状況であれば彼女の素に近い部分が出ることもあるだろう。
だがあくまで相手は盟友の国を荒らしたもの、実力こそ認めど行いを許可するわけはない。

>>ショパン ワームテイマー&エンペラーワーム

2ヶ月前 No.636

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

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2ヶ月前 No.637

黒鉄一輝 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc


【 ディンカ→移動開始/魚市場→移動開始/黒鉄一輝 】

 正道から外れ邪道に行く者――思考に乗っ取らないその場しのぎの選択、あるいは建前と本音が入れ替わった行動。
 あるいは、行動理念を無視した特攻。

 無数の十字は絡みつく。
 ・・・・・・・・・
 だがそれがどうした、――こちらが刀を振るう速度の方が圧倒的に早い。それに、この程度の痛みは何度も受けてきた。
 今更これで立ち止まり苦悶の呻きをあげることはしない。あるのはただ、目の前の相手の動きを止めて勝負に勝つ。
 ただ、それだけのこと。
 そして今、一輝が放った一閃はテルン・エルウェーウィンの息の根をほぼ止めた。
 半分断ち切るか断ち切らないか。
 頸動脈より噴き出す鮮血。
 幻想形態は使用していない。
 だがそれでも、彼女は止まろうとしなかった――生命維持活動を止める肉体と、活動を止める魔力とは裏腹に。

「……」

 元の粒子と化して消えていく十字架。
 腕には十字に絡みつかれたことによる無数の切り傷が見受けられるが、行動には支障はない。
 手で遺体の瞳を閉じさせ――人目の付かない裏路地に安置する。

「……どうか安らかに」

 簡易的とはいえ――仏教式の葬送は大丈夫だろうか。
 そんな場違いなことを考えつつ、手を合わせた一輝はその場を後にする。

>(テルン)

【こちらこそ、お相手ありがとうございました】

2ヶ月前 No.638

力への誘い @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/無限回廊/フロレ・ゾンダーランド】

二人から返ってきたのは、拒絶の言葉であった。これに対してフロレは、心底理解出来ない、といった表情を浮かべる。何故、自ら救済の手を振り払うのだ? と。
これは、悪魔に魂を売るなどという行為では断じてない。ただ、抑圧から解放され、救われるための道なのだ。フィラッサ様による導きで、全ての生命が光に辿り着く。
何ら、不思議なことではない。彼女は全知全能であり、頂点に立つに相応しい存在なのだから。ああ、なんとお美しい。自分は、彼女と共にどこまでも行こう。初めて会ったあの日、フロレはそう誓ったのだ。
人類などという矮小な種族に縛られる必要などないというのに、残念だ。こうなってしまった以上、残された選択肢は、より良き世界のために彼らを殺すことのみである。

「道連れだなんて……わたしはあなた達の考えを聞いただけです。相容れないと分かった以上、もはや容赦はしません」

ローウェンの言葉も、フロレには届かない。何故なら、聞く必要がないから。自分が従うべき言葉はフィラッサ様の言葉だけであり、それ以外は有象無象に過ぎない。
彼らの戦法は知っている。かつてあのような下劣な騎士として戦っていた頃に、何度も目にしてきたから。よって、対処は非常に簡単であるといえるだろう。
全方位からやってくる斬撃を、彼女は闇の障壁によって的確に受け止めていく。ゲイルは速攻型だが、それ故に単発の威力は低い。魔族となり、人間を凌駕する魔力を備えているフロレにとっては、造作もない攻撃だ。
一方、ローウェンの方はというと、彼は状況に応じで戦い方を変えてくるオールラウンダー。常に変化する戦法を見極めなければならないため、どちらかといえば、こちらの方が厄介な相手だ。
だが、最初はゲイルに合わせて手数を優先した模様。異なる攻め方で来るならまだしも、似たような攻撃が続いたため、完全にフロレの目は慣れた状態であった。
一切の傷を負うことなく、全ての攻撃を躱しきった彼女は、ふわりと宙に浮かび、人間では絶対に不可能な対空状態を保ったまま、両者の攻撃範囲外へと逃れる。

「何も分かっていないようですね……これからの世界を支配するのは、人間ではなく、魔族。あなた達は、絶対的な力の前に、ひれ伏すことになるのです」

蒼き輝きを放っていたかつての聖剣は、邪悪なる魔力に当てられ、漆黒の魔剣へと姿を変えた。真っ黒な刀身を光らせながら、フロレは二人の元へと疾駆する。
まずゲイルへ向けて、闇の魔力が込められた斬撃が放たれた。速度、威力共に桁違いの代物であり、掠りでもしようものなら、内蔵が潰されること間違いなしだろう。
続いてローウェンには、剣に宿った闇のオーラを穿つと同時に急接近、空いた左手でその心臓目掛けて、漆黒の魔力を撃ち込む。これは、対象の息の根を止める、恐ろしい魔法。
回避すればさして影響はないが、心臓に到達してしまえば、死者の怨念が込められた魔力によって、一瞬の内に生命活動を停止させられる。
これら一連の攻撃は、全て五秒未満の間に行われている。圧倒的な力量差を見せ付け、人間を見下すフロレ。これが、魔族の力。人類の勝利の可能性など、残されているはずもない。

>ゲイル・ベネルド、ローウェン・アルベリウス

2ヶ月前 No.639

@sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/無限回廊/ゲイル・べネルド】

差し伸べた手は払われた。救いの光も届かない。闇を照らすには至らない。恐らく相手方も同じことを考えているだろう。なぜ彼らはこの手を取らないのか。なぜ楽園へ導く方舟に乗らないのかと。
方向性はまるで違えど、互いに相手方の救済を図っているというアイロニー。今この瞬間、彼我の理念の根本的な違いが白日の下に晒された。
力を得ることで悩みから解き放たれ、全て思うがままに事を進められるという道を示すフロレ。なるほど、一種の啓蒙活動だ。より楽な生き方、より優れた指導者の存在を、無知で愚かな人間に諭す。
しかしそれは現実からの逃避でしかない。果たすべき役割の放棄に過ぎない。後に残された者達の苦悩を考えたとき、騎士団長代理としての使命を重く受け止めているゲイルに、そのような選択ができるはずもない。

(やっぱり団長は強い…俺の手の内が完全に読まれている)

全方位から追撃を伴って繰り出される連続攻撃だが、いずれも成果を挙げることなく障壁の前に掻き消えていく。速度と手数に振り切れたゲイルの攻め手は、その代償に破壊力を欠くという大きな欠点を抱えているのだ。
故に一手一手を見切られ防御されてしまえば、せっかくの殺傷力もまるで意味を成さない。希望は儚く立ち消え、訪れるのは危機。先制攻撃のチャンスから一転、敵にターンが渡ってしまう。
放たれた漆黒の斬撃は凄まじい速度と威力を併せ持ち、紙一重の回避ですら身体を蝕むのではないかと思わせる熾烈さ。命中でもしようものなら即死するのは火を見るよりも明らかだ。
かつそこに魔族の底知れない力が加わり、ヒトの生まれ持つ力では及ばないような絶技へと進化を遂げている。だが、ゲイルは怒るでも怯えるでもなく、悲しげな表情をしていた。
在りし日の正騎士団長、フロレ・ゾンダーランド…彼女の聖剣が灯していた、湖面に移る月のような蒼白の輝きは何処へやら。今や地の底から迸るような邪悪な煌めきに満ちている。
騎士の命とも言うべき剣、そして人間そのものを反映する太刀筋までもが、別人のような禍々しさに満たされている。もう、師として、長として敬った彼女は、どこにもいないのだ。

「それは違います!力で押さえつける政治が何をもたらすか、団長なら知っておられるはず!」

間も無く魔族が天下を取る。非力な人間はその剥き出しの荒々しい力によって組み敷かれ、殺されるか、無慈悲な魔族達の下僕と成り果てる…そう演説するフロレの瞳は、単に見た目が人間とかけ離れているだけでなく、邪悪な煌めきを宿していた。
そんな彼女の主張を一蹴し、迫りくる暗黒の刃を軽やかな宙返りで以て回避する。そこから間髪入れず風魔法を発動し、一瞬でフロレとの距離を詰め、再び繰り出すは隼の異名に恥じない連続攻撃。
この度の狙いは死角及びウィークポイントとなりがちな頭上。斬撃、刺突、そして追撃の風魔法による真空波。いずれも先程より威力と速度が増しており、同じ轍は二度と踏まないという意思が見て取れる。

>>フロレ・ゾンダーランド、ローウェン・アルべリウス

2ヶ月前 No.640

魔帝 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

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2ヶ月前 No.641

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/無限廊下/"常山蛇勢"レプティラ】


侵入者は説明を上手く飲み込み、冷静に戻った様だ。掴んだ服を放してもらい、地に足をつける。謝罪の言葉を口にして、争うべきではないと言った。少なくとも、この場では戦闘よりも真相を確かめる方が優先されるべきだろう。
軽く服を正しながら侵入者を見上げる、先の言葉から察するに前線指揮官以上の立場はあるのだろう。ここに来たのがある意味この侵入者で良かっただろう、立場が下であれば兵舎の件は決して良い方向には行かないだろう。

「いえ、大丈夫ですよ。貴方が冷静に話の出来る人で良かったです、では貴方からも情報を―――」

サシャの同意と共に侵入者から詳しい話を聞こうとする、が魔族の部隊が此方に駆け寄ってくる。おかしい、無限廊下の警備は彼女一人で十分だと伝達したはず。他の魔将軍からの指示でもあったのだろうか、どちらにしても理由を聞かねばと思った所、彼女は事態の遅さを悟る。
曰く、サシャは毒を盛った張本人だと。曰く、魔帝と組んで魔族を陥れようとしていると。曰く、密書を持った魔族が殺されたと。囲まれるサシャを庇わんと魔族の輪を抉じ開ける、正直考えが追い付いていない彼女だが確かなのはサシャをこのままにするのは不味い事だけ。

「待ってください!兵舎の件であれば―――」

しかし彼女の言葉はまたも続かない、少し前に聞いた起伏のない冷淡な印象を受ける声。目的の者を見つけた旨の言葉、そしてサシャを取り囲んでいた魔族へ向けられる労いの言葉。それは紛れもなく、魔将軍の一人、ニアであった。
何故、という考えが浮かぶ。至って冷静に努めようとするも訳が分からない、現状分かっているのは兵舎の件は人間の仕業、そしてそれは個人の暴走による可能性が高い事、しかし魔族の間ではチェルがサシャが魔帝と結託して行った事となっている。
ここで問題なのは犯人が未だに明らかでない事、そしてチェルがこれを利用していること、さらに真偽はどうあれ証拠が出てしまっていること。チェルの怖さを知っている彼女からすれば、実の妹を贄に捧げたと見ることはできる。
ではサシャがやってないと言える根拠は?彼女はサシャと出会ったのは先程、それ以前何をしていたかなど知りはしないが前線に出ていない事は確認している、魔帝との結託も陣を敷く前に行ったと言われれば今見える証拠の上では、サシャがやった以上の事は見えない。
未知の毒物、それさえも未来の介入でどうとでもなってしまう。監視はさせていたがあくまで本格的な侵攻を始めた今日が最初だ、それ以前に未来の人間から入手したと言われれば納得せざるを得ない。
彼女の心情としては、サシャはやっていないと思いたい。魔族の真意は分からない、だが少なくともサシャがどんな理由であれ魔族を傷付けるようには到底思えない。しかし、状況が全てサシャの仕業だと言っている。
思考に浸る彼女に声が掛かる、顔色も声色も存在からも心が読み取れない、ニアの声。先までは大丈夫だったはずの恐怖が、じわりと背を刺す。悪寒に近い、命が悲鳴を上げる様な恐ろしさが彼女を襲う。
勤勉な事だと、言う声は変わらないのに少しでも親しくなれたと思っていたのに、心が凍てつくような怖さを抱いてしまう。震える身体、だが魔将軍である以上魔族を守らねばならない、例えそれが罪に問われている者だとしても、まだそうだとは彼女は思えないのだ。

「状況は、分かり、ます。で、ですがサシャが……」

やったとは思えない、そう言葉は続かない。感情論でしかない、根拠は何一つない。サシャじゃない可能性はあっても、サシャじゃない根拠はない。だがサシャである証拠が挙がっている、ニアの言う通り状況は理解できた。ならば去るべきなのだろう。
だが、だがと言えればどれだけいいか。サシャがどれだけ拒否しようとも、状況がサシャだと示している。彼女ですら、この状況ならばサシャがやったものだ信じてしまうかもしれない。
剣を抜いたニアを止める言葉が見当たらない、どの言葉も今ある証拠とされているもので打ち消されてしまう。ただの感情、性格で話をしたところでニアは納得しないだろう。だからこそ、確実な言葉が必要になる。
ニアがサシャに語る言葉、魔帝が人間との和平を望むが故に今回の件を起こしたと。戦争の犠牲を無視して、その為に味方を手にかけてまで和平を望んでいたと。それが本当ならば、彼女も魔帝につく理由はない。
ニアは統治するものの責任を捨てたと言う、そして王たる資格はないともいう。分からない、彼女にはもう何が正しいのかは分からない。ニアが嘘を吐くとは思えない、だが少なくとも彼女の知る魔帝は魔族ではないにしても魔族を捨てる様な人物ではないと感じている。
魔族の存亡の為、確かに魔帝とサシャをこのままにすれば士気は下がるだろう。敵である人間に仲間を売ろうとしていた、だが……あの時のニアは彼女の魔将軍として動く理由を聞いて、ヴァンレッドか魔帝にならばと言ったのだ。
ニアの見る目は正しいと彼女は感じる、同時に嘘を吐くような人物ではないとも。サシャを信じたい、だが現時点では信頼できるのはニアなのだ。必要でない事をしない、そう感じているニアがしているならば必要なのではないかと。
ニアとサシャの間に割り込むべきだ、そう考えても足は動かない。サシャがそんなことをしないのは分かっている、だがそれ以上に証拠が、ニアを信頼してしまっている。どうすればいい、どうすればいい。

瞬間、視界が爆ぜる。目に映る赤が囲んでいた魔族を吹き飛ばす、それと同時にニアとの間に炎の壁ができる。侵入者だ、魔帝が裏切ったと偽り、魔大将の魔帝就任の正統性を示す為だと結論を出していた。
毒についての見解も部下の仕業だと言い、異世界の物質の可能性が高いという。毒使いがいるという事実も聞いたが、現状は置いておく。少なくとも侵入者側の立場からすれば、毒は異世界からの物という結論に至った様だ。
続いて向けられる言葉は彼女に対して、今のままでは戦争が激化し魔族も大勢死ぬと、それが嫌ならば力を貸せと。正しいことが分からない、そんなことを言われれば彼女は手を貸したくなる。

「わ、分かりません!ニア様が、嘘を吐くとは……でもサシャ様がやったとは……ですが、……うぅ。」

分からない、どちらが正しいのか分からない。先に話したあのニアが、偽りの言葉を吐くようには思えない。だからと言ってサシャがやったとも、思えない。チェルの企み、そう考えればサシャが被害者だと理解できるがニアが手を貸す理由が分からない。
何故、ニアはチェルに手を貸している?兵舎で話した時は、彼女の思想を否定することはなかった。同じ思想と言った魔帝、それを裏切るようなことが……あった?あの後、ニアは報告に向かうと言った。であれば、その時に何かあった、そう考えていい、だろう。
そうだ、ニアは魔帝が和平を望んだからこの行為に及んだと言った。なら、ニアが人間との和平に消極的であったらどうだろうか。彼女は魔族の平穏を願い、その場に人間は関係ないからこそ認められたのかもしれない。
だが魔帝がニアが思っているよりも、和平に積極的であったならば望むべく末路には至らないかもしれない。ニアが人間に何らかの感情を抱いているのは遠征の回数からも分かる、それが和平を嫌うことに繋がるのであれば―――――

―――ニアが、これを持ち掛けた?

あのチェルに?僅かながらでも交流をし、親しくなれたと思っていたニアが?有り得ない、これは仮定の話でしかない。魔帝と意見の相違があったら?ニアアが人間を嫌っていたら?その仮定に仮定を重ねた上で、それを理解しなければならないのに。
それであれば繋がってしまうのだ、兵舎の件が魔族によるものでないという前提の下でなら。ニアが魔帝と決別をし、チェルへと魔帝の排除を持ち掛ける、起きていた兵舎の件を利用し、チェルがサシャを犯人とし、その後の証拠をニアが用意したのだろう。必要だと思ったから。それならば、筋が通る。
何てことだと彼女は頭を抱え始める、未だ不透明な部分こそ多い、仮定を重ね過ぎて推測の域は出ない、だがそれであれば道となってしまう。ならばニアがここにいる理由もこうなる、その為にサシャを殺す必要があるから。

「あ、ああ……いや、でも。で、でも……だからといって、そんな……」

戦えるのか?ニアと。彼女には情もある、例え敵対した同胞であっても手に掛けることを良しとはしない。そんな彼女が、初めこそ恐怖を抱いていたが漸く、親しくなれそうだと感じ始めたニアに、牙を剥けるのか?
だがそうしなければ侵入者が言ったように、多くの同胞の命が失われてしまう。例えそれで勝利したとしても、魔族が平穏を迎えられるとは思えない。だからニアを止めねばならない、なのに出来るはずがない。
震えが止まらない、ニアへの恐怖ではない。どうすればいいのか分からない、ニアを倒すことが正しいのか?それともこの場をすぐに離れるのが正しいのか?分からない、天秤にかけるには重すぎる。
ニアを倒す、いやここまでした以上殺さなければならなくなる。そうでなければ軍として、魔族全体として示しがつかなくなる。だが殺して、それでいいのか。ずっと、ニアを背負い続けることになる。交流が浅くとも、己が手で起こした誰かの死を簡単に捨てられるほどではない。
この場を離れる、サシャを見殺しにする。そうすれば魔族は人間憎しとして纏まり、どちらかが滅びるまで戦い続けるだろう。現状ならば魔帝軍が優勢、ほどなくして勝てるだろう。だが、その時彼女が背負うのはサシャの死、そしてそれ以上に魔族と言う種は疲弊する。
そう考えればニアを倒さねば、魔族の平穏は遠くなる。だが、彼女はサシャを庇い立てたかったように、ニアも殺したくはないのだ。これを容易く割り切れるならば、既に彼女はこの場には居ない。

「ニ、ニア様。ひ、一つだけ……お聞かせ下さい。」

己で決められないから、判断材料を求める、震えた声でニアへと乞う。他の魔将軍であれば、それぞれの信念の下に早々に決断を下しただろう。だが、彼女はあくまで蛇族の召使の出。器ではなく、そのような判断を下すことはできない。
だからこそ、これさえ分かれば判断を下せるというものを一つだけ見つける。きっと長々と聞いたところでニアは答えない、そもそもこの問いに答えるとも限らない。必要ならば答えを濁すだろう、だがそれでもいい。
濁したのならば、言えば不利になる、そういう事だと割り切るしかない。そして答えがちゃんと帰ってきたのならば決めねばなるまい、それが例え敵対することになっても、これ以上の譲歩は出来ない、もう後ろは崖でしかない。

「人間を、……どう、思っていますか?」

それだけが求める答え、その一点さえ正解に辿り着ければ踏ん切りがつく。ニアを、倒さねば魔族の安寧はない事も分かっている。これはあくまで彼女自身のケジメであり、楔でもある。
ニアが人間を良く思わないのであれば、自身の過程を信じ敵対するほかはない。その答えならば、きっと彼女の過程は合っていたという事だろう。ニアがチェルに持ち掛け、証拠を揃えた、きっとそれが正しい。
ニアが人間を良く思っているのであれば、……彼女には判断がつかなくなる。この場から逃げ出してしまうだろう、ニアと魔族の平穏とサシャ、どれも選べずどれも捨てられない。なら、いっその事逃げ出してしまう他ない。
そして答えないならば、それが彼女に知られるのが都合が悪いと、そう信じるしかない。今のニアではない、先に会話をしたニアから感じ取ったものを信じる。必要だから、答えを濁したと、必要だから、彼女を欺いたと。
未だ、戦う決心などない。きっと答えが返ってきたとしても、心の奥底では戦いたくないと、どの答えが正しいのかと、悩み続けるだろう。魔族としては異端、それ故に迷い続ける。
弱いと、言われてしまえばきっとそうだ。魔将軍に相応しい魔族は他にもいよう、力のあるもの、策略を立てるもの、士気をあげるもの、その中で秀でたものもなく魔将軍に選ばれた彼女。良く思わない者もいただろう、蛇族などと言う龍族の落ちこぼれで反抗し続けた部族と言う事も要因の一つだろう。
だがその中で彼女は自分が出来る事を只管にやり続けた、蛇族の医療技術を生かす為亡くなった前任者を継いで医療班を作った、兵舎の状況が悪いのを見越して診察を行った、指示を飛ばす人物や後方で支援を行える人物がいないから出来る限りやり続けた。
彼女からすれば仕えていたから、ただそれだけ。やることが当たり前だから、自分に出来るからとやっていた。ニアに言われた歪みも今でも分からない、自分が出来る事は誰かもきっと出来るだろうとそう考えている。
だから決断ができなかった、これは彼女以外には出来ない決断。彼女だけの決断。敵対をしていながら見逃したニアに甘え、答えを求めているのは自身の決断などしたことがなかったから。
召使として生き、繰り上がりで蛇族の長になり、魔将軍に任命され、やれることをやってきた。そこに決断の余地はない、為る様にしてなった道を進んでいた。だから今回もそうしたかった、でもそうできない。
生涯初めての決断、それが親しさを漸く感じた相手の生死とは何と皮肉なものか、そして答えもその相手に求めようとしている。だが、それは間違いなく彼女が己で決める道には違いない。
故に、願う。どうか、決心がつく答えであるようにと。
そしてもしも、ニアを殺すことになってしまったのであれば、自らの手で送りたいと、そして死する時まで背負わせて欲しい、と。

>>ニア サシャ レオンハルト・ローゼンクランツ

2ヶ月前 No.642

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【王都ロンカリア/城壁/上部/ギルバート・トムフール】

戦いを続けながら、ギルバートは心の中で北斎の言葉に賛同する。そう、変えなくてはならないのは、今。過去に固執したところで、未来がよくなるはずがない。
現に、未来世界では問題が山積みだ。世界政府は人の導き手足り得ぬ惨状であるし、彼らの怠慢の結果が、歴史是正機構なる存在を生み出してしまったとも言える。
この男はどうも、そうした現実が見えていないように思える。奴らに賛同するくらいなのだからそれも当然かも知れないが、哀れみを掛けてやる必要はないだろう。
説得に時間を割く前に、敵を撃破する。それがギルバートの信条。話は敵の目論見を阻止してからでも出来る。今やらなければならないのは、この中世の歴史を守ることだ。

「お前のしていることが本当に正しいと思っているのなら……救いようがないな」

クジャルナはあくまで自らが正義であると語り、あまつさえ多くの未来人のことを腑抜けと称してみせる。耳障りな戯言だ。本当に、何も現実が見えていない。
魔族を迫害し、このような者を生み出してしまった世界政府にも責任はあるだろうが、だとしてもこの男の思想は異常極まりなく、見過ごせるようなものではない。
ギルバートは魔族に対して偏見を持つような者ではないが、クジャルナだけは心の奥底から軽蔑していた。これを正義と語るか。器のほどが知れるというものである。

北斎の、使い魔と称するべきだろうか。彼女が引き連れていた蛸が墨を吐いたことにより、辺り一帯が陰る。それは、重力刃を持ち、突貫したギルバートにとっては、絶好の好機。
闇の中の敵目掛けて彼は一直線に疾走するが、その途中で二つの銃弾が襲い掛かってくる。動きを読まれていたか。しかし、今からでは回避も間に合わない。
攻撃を叩き込むつもりであったが、ギルバートは直前で急停止し、重力を自身とは反対方向に作用させて、銃弾の軌道を捻じ曲げようとする。だが、二発とも叩き落とすには、時間が足りなかった。
腹部へと突き刺さった銃弾。鈍い痛みが全身を駆け巡るが、この程度の傷であれば大きな問題はない。一度距離を取り、敵の位置を再確認した彼は、今度は両手の拳に重力を纏わせ、突撃する。

「魔族のために奮闘するのはいい。だが、お前はちゃんと周りが見えているか? お前に味方がいない理由は、そこにある」

未来の魔族は、人間との闘争を望んではいない。いつからか魔族の数は減少の一途を辿っており、未来ではその僅かな末裔たちが、慎ましく暮らしているのみだ。
彼らが求めているのは自らが支配する世の中、などではなく、人間と平等に扱われる社会だろう。クジャルナに付き従う者が一人たりともいない時点で、それは容易に想像がつく。
現実を見れぬ者に、勝利が訪れることなどない。重力によって重みを増した拳が、敵へと叩き込まれる。まるで時代遅れとなった彼の思想を、根底から否定するかのように。

>クジャルナ・クオーク、葛飾北斎

2ヶ月前 No.643

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/無限廊下/サシャ】

無実の罪で包囲されるサシャの元に、処刑人がやって来る。"塵殺剣"のニア。魔帝軍の中では比較的温厚であると目されており、最近になって急激に台頭してきた人物だ。
そんな彼女が、自分に明確な敵意を向けている。それがどれほど恐ろしいことか。真正面から戦って、勝てるような相手ではない。ましてや、嘘を話すような人物であるとは思えない。
つまり、一連の流れは真実であると断定されたも同然。何故だ、そんなことがあるはずがない。本気で何が起きているのかを理解出来ないサシャの息が、激しく乱れる。
誰かがニアを騙しているのか? 彼女ほどの相手を騙せるような人物といえば、姉であるチェルしかいないが……確証はない。第一自分程度の者が反論したところで、握り潰されるだけだ。
遂に堪えきれなくなった涙を流し、地面にへたり込むサシャ。そんな彼女に奮起を促す切っ掛けとなったのは、人間である、レオンハルトの言葉であった。

ついさっき、顔を合わせたばかりだというのに、彼は自分のことを信じてくれている。どうして……? 彼には、魔族の、それもこんな一兵卒の味方をする義理など、どこにもないはず。
しかし、レオンハルトが語った内容は、奇しくもサシャが先程推測した内容とほぼ同じであった。やはりこの一件は、チェルによって仕組まれたものなのだろうか。
状況は悪い。自分の罪を否定する証拠はないというのに、それを示す証拠は無数に転がっている。でも、サシャには、一つだけ確信出来たことがあった。
―――思った通り、人間は、そんなに悪い人ばかりではないのだ。そして、魔帝も自分と同じように、和平を望んでいた。ならば、選択肢はもう決まったようなもの。

「あたしのこと、信じてくれてありがとう。一緒に頑張るよ。あなたのために、力を貸す!」

レプティラが交渉を行っている。だから、まだニアには手を出さない。だが、レオンハルトの先制攻撃によって、サシャを取り囲んでいた魔族は皆塵と化した。
彼女は自分を信じてくれた"人間"に寄り添うように隣に立つと、いつ敵が仕掛けてきてもいいように両手に魔力を充填しながら、事の成り行きを見守る。
未だによく状況が分かっていないが、恐らく和解は不可能だ。こうなってしまった以上、生き残るためには、ニアと戦うことは避けようのない運命である。
ここからならば、仮にレプティラが奇襲を受けたとしても、庇うことが出来る。未熟な自分では、皆の足を引っ張ってしまうかも知れないが、絶対に負けられないのだ。己の潔白を証明し、人類との共存を願った、心優しき魔帝を救うためにも。

>"鏖殺剣"のニア、レオンハルト・ローゼンクランツ、"常山蛇勢"レプティラ

2ヶ月前 No.644

地味な優等生と豪華な無能 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【宣言通り撤退させます】

【王都ロンカリア/噴水広場/ワームテイマー+エンペラーワーム】

『芋虫程度だと……? ふははははぁっ! よかろう、我は図体だけで判断したりはせん、掛かって来い、踏み潰してやろう!!』

エンペラーワームは、芋虫の攻撃程度、とエストが発言した事に対して、言葉を詰まらせた。
だが次の瞬間は、その暴言にも等しい言葉を笑い飛ばした。 さらに付け加えて図体の大きさ、つまり彼の最大の長所では人を判断しないとまで言って、その上で踏み潰すと宣言した。
ある意味ショパンの言葉は的を獲ているといえるだろう、彼ほど分かり易くステレオタイプな、脳みそに筋肉が詰まっていそうな、豪快な考え方をする魔族は他にそうは居ない。

あくまで守りは魔術師任せ、攻撃はあの先ほどまでは妨害手段しか使ってこなかった相手がすると言う。
ならば掛かって来い、そうエンペラーワームが意気込んでいるときに、退避していたワームテイマーと配下のワームが地中から顔を覗かせた。

そこには、エンペラーワーム最強の奥義である、大火球をこちらに向けて投げつけようとしてくる相手のゴーレムらしき存在と、それを見て爆笑するエンペラーワームの姿があった。
それだけならば、エンペラーワームの火炎耐性とタフネスは高い部類に入る、ただ殴りあうだけなら、彼ほど強力な存在は居ない、だから問題は無かった。

「メインの攻撃は音楽家の方だって向こうから言ってるでしょうが脳筋皇帝……あぁもう! あの人死んだら私がワームのトップは私、面倒ごとが全部のしかかるじゃあないですか!!」

そんなワームテイマーの言葉も無視して、エンペラーワームは馬鹿正直に投げ返された大火球を食らった。
だが、その分厚い皮が焼けても、無数に浮かび上がっている魔石の輝きは失われる事無く、まだ生存していた。

しかし、そこにショパンの攻撃が直撃して、あえなくエンペラーワームは撃沈、となるはずだった。

「皇帝様! ここは退きますよ……魔族本隊の方が指揮統制がぶっ壊れてやがります! ここで勝っても残ってる連中が雪崩れ込んできます、予備の食糧と基地は用意してるのでここは!!」

エンペラーワームの前に躍り出て、頭を下げてそんな事を言い始めるワームテイマー。
まぁ、こちらの言う事にも誇張が含まれているが、一部は事実でもある、チェルと魔帝の対立がここにきて表面化し始めている、と、伝令役のワームから聞いたのだ。
別に他の場所で負けている訳でもないが、このまま頑張って続けた所で、次に待っているのは同属同士の殴り合いだ。

魔族という種族が纏まっている一強体制だからワームテイマーは軍属になったのに、不安定な三勢力の殺し合いに干渉するのはゴメンだったのだ。

『……ふはははは。 我とて魔族、本来であれば小さき人間に討伐されるのもまた美しきかな。 そう思ったが、今我の身体は一人の物ではない。 ここで貴様の一撃を受けて、死ぬわけにはいかんなあ!? ワーム全部族に通達、全軍撤退!!』

それを聞くと、多数のワームは、すぐさま足元に出てきたダンボールを食い破るような形で地面へと潜り、それに続くような形でワームテイマーもこの場から逃げ出した。
一時はほとんどのワームが地中から顔を出していたが、指揮官のエンペラーワームが退くと言ったのだから、もうここで戦う意味は無かった。

エンペラーワームは全てのワームが引き上げたのを確認すると、自らの火炎魔術で相手に追撃の隙を与えぬように程々に爆炎を撒き散らしながら地中へと潜り、この地から撤退した。

>ショパン エスト


【ワームテイマー&エンペラーワーム@戦線離脱、お相手、ありがとうございました!】

2ヶ月前 No.645

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/海底洞窟/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 父から子へと託される、人類最後の"希望"。永きに渡る闘争へと終止符を打つが為の鍵、神聖なる加護を受けた光輝の剣。時代の変遷と共に、人々の記憶から忘れ去られた御伽噺の精霊達の力を借り受け、ここに勇者は再誕する。眩い暖かなる光をその手に宿し、闘志を込める瞳が見据える先には、不死公。かの存在と対等の土俵に立った今、"真の勇者"アンナローズの心に恐れはない。
 疾風を具現するかの如く。碧の輝剣を手に、幾数もの残像を残しながら、彼女は空を翔ける。其処へ襲い掛からんとするは、不可視の翼を得た彼女を地平に堕とさんとする白の乱舞。捉えられたが最後、墜落するのは想像に難くは無い。
 だが、然し。煌く刃が空を裂いた刹那、その未来は呆気無く断ち切られる。乱出する風切りの乱舞が、白の乱舞を一つ余さず引き裂き、更には親友を巻き付ける包帯を、優しく解き放つ。

「死せる龍……それが不死公の持つ、"切り札"。なら、僕はこの力でそれに応じる」

 万象を切り裂く竜巻が、幻霊の馬諸共、不死公の肉体を消滅させる。だが、その異名が連想させる通り、彼女は不死者。幾度と無く殺されようとも、こうして裁断され無数の肉塊となっても、何度でも復活を果たして見せるのだ。悍ましき光景を見せ付けながらも、元通りの姿となって今一度相対する不死公。
 その背後の地平から、凄まじく轟く音を響かせて現出するのは、巨大な龍。魔族として扱われる者の中でも、最も高位の存在として認識される龍族が、生ける骸となって呼び起こされる。不死公は、この骸龍を自らの"切り札"であると称した。その一手が如何に強力な物であるのかは、考えるまでも無い。確実なる死を齎すが為の、全力だ。

「――来たれ、焔の龍……!」

 不死公の展開する、骸の軍勢。膨大なる魔力を喰らい、過日の最盛をも越す力を得た骸龍が放つ黄焔の吐息と、骸兵が浴びせる怒涛の中級攻撃魔法が勇者へと襲い掛かる。回避の決意よりも早く迫る脅威。相対する勇者は防御へと移らず、攻撃へと意識を傾倒させる。
 何故ならば。その間に再び割り入った従者が、巨大な土壁で全てを受け止めるからだ。無論、力の差は既知の事実であり、劣勢に立たされる彼女は押され、遂には吹き飛ばされてしまう。
 だが、それによって齎された恩恵は大きく――招来の言葉と共に、反撃の一手は顕現する。

「終わりだ、不死公! その棺諸共、荼毘に付すといい!」

 紅の輝きへと変容を遂げる光輝の剣。輝く刀身に纏う強烈な焔が、独りでに動き出し、天に真紅の魔法陣を描き出す。刻まれた術式が召喚する物、それは炎熱の紅鱗を全身に纏う、骸龍を越す巨大な威容を持った焔の龍。膨大な魔力を宿せる紅の焔龍の双眸が一瞥するは、無数の死者の軍勢。その全容を把握するや否や、龍は自らの体内へと爆炎の力を収束させて行き。
 ――遂に、爆炎の吐息は解き放たれる。燃え盛る音を響かせながら、猛進する焔の奔流が、不死公を含めた全ての敵へと強襲を仕掛ける。形ある物の総てを灰燼へと帰す、龍の火焔。
 奔流を放ち終えた"サラマンダー"の顕現体は、その顛末を見届ける事無くその姿を一瞬にして消した。彼の龍に、未然と言う言葉は存在しない。在るのは一つ、絶対なる必然。不死公が荼毘に付される未来が、確約された物と判断し、龍はその役目を終えたのだ――

>不死公ネクロニア ロコ

2ヶ月前 No.646

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【あれ? チョッちゃん攻撃していないですよ。押し掛けてすみませんでしたがお相手ありがとうございました】

【王都ロンカリア/噴水広場/ショパン】

 人あらずの歌声はピアノの詩人が遺した夜想曲を歌い広場を満たす中、魔導師はページをめくると、火炎の巨人が召喚され、その登場に思わず言葉を失った。
 例え見た目がどう見ても0点ものの餃子の採点を求められたら、きちんと完食し採点をするショパンですらもその風景には圧巻された。
 そして火炎の巨人が火球を受け止めて、こちらの陣地に踏み締めたのを見て思わず慌ててる。
「うわあ゙ーーーっ! やめて! 燃えるから!」
 流石にこの火力ではと焦げる前にと塔がものすごいスピードで伸びて、熱で乾いた赤茶の髪を揺らしながら上へ上へと伸びていき、火炎の巨人は飛びエンペラーワームに特攻をし始め、受けて立つと言わんばかりのエンペラーワームの態度を見て、乾いた笑みを浮かべる。
「ここまでくれば、逆に気持ちいい」
 相手に皮肉と称賛を贈っていたらワームテイマーの怒声が響き渡る。
「……大変だね、君も」
 気苦労する相手を見て、もしかしたら話し合えばきっと仲良くなれたであろうワームテイマーに小さく慰めの言葉をぽつりと呟くと。
 塔は王国全域を見渡せる高さまで到達した。
 ここまでくると、あの二人の声は届かない。
 下の様子を伺おうと、燕尾服の裾をダンボールの床に着かせて覗き込むと。
 かじられた形跡があるダンボールの塔と焦げた広場には穴だけが残り、城からここへ通った大通りの風景は――――
「……どうなってるの」
 ケダモノ化した町の人々をようやく知った。
 盗み、奪われ、殺され、犯されを繰り返す魔族達や人々に恐怖し声を震わせて言うと、ちらりと怯えた表情のまま相手にじいと視線を向けて、何か知っているのかと無言で訴えてきた。
 >ワームテイマー エンペラーワーム エスト

2ヶ月前 No.647

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6


【無限廊下/ニア】


 ………思っていたよりも、幾分か聡い。

 毅然と言い返して来た男の方へと視線をやる。
 言い分を聞く限り、想定通りの未来人というヤツなのだろう。
 この状況で平静を保ち、この戦局でどちらかに憎しみを向けない俯瞰の視点を持ち話をすることが出来るのは当事者以外だ。魔族にも人にもごくわずかな例外が居ることを当然彼女は知っているが、例外とは少数ゆえの例外。
 存外に聡い。ただ“蛇”の視点と思考を補強するだけの歯車だと思っていたのだが。
 さて、言い分は正論というより他にない。
 毒が改善不可能となれば先ず槍玉に挙げられるべきは魔帝などではない。良く分かっている。


「ではその部下の名前は? 心当たりは?」
「語れるか? いや、語れない。何故ならおまえはそれを知らないし、当然わたしも覚えはない」


 だからこそ。そんな当たり前の穴を突かれることを、誰が想定していないという。

「分からないならこう言える」

「我々に与した連中の方が、影響を及ぼせる時間は長かった。
 例えばそこの娘と前魔帝の交渉に乗る阿呆など、居てもおかしくなかろう?」

 これも当然、証拠の無い話だ。だが、あの炎獅子とて“その部下”の名前を挙げられはしまい。
 知っていたのならばその名前を出す。それだけで、恐らくはわたしの誤解を解けると“思う”だろう。
 それを初手でして来ないという時点で、この男にも毒の下手人は掴めないのだ。
 なるほど、その下手人は下衆だ。どのような意図があったにせよ、こう言い切れる生粋の生物だろう。
 だが、その下手人がどんな悪意を込めて、あるいは嘲笑を込めて行動を行ったのかなど興味はない。
 必要なのはそれが利用出来たこと。重要なのは、何よりそれが憎しみの色で旗の半分を染め上げたこと。

 証拠が無く、確信に至れず、恐らくという理屈に思考は当然理解を託せない。
 皮肉な話ではある。よりにもよって、最も俯瞰の視点で理解を得たこの男の存在こそが、あらゆる“不可能”を“可能”にしたのだ。異なる世界の人間、その信条と思想が理解出来ていないのならば、どんなことだってあり得る。
 それがあり得るのだから、違う世界の毒を持つ誰かと魔帝およびサシャが共謀したという理屈だって有り得る。実質の権力者が如何なる企みをしたところで、それを知り得ることが出来るのは権力者と意思を同じくしたモノだけだ。

「さて、わたしとてその娘がやったとは思えないが」
「他に真実が無いなら、それが真実だろう。だから退けと言う」

 つまり。
   、   、   、   、  、  、  ・・・・・・・・・・・・・・・
 違うと口にできるのは魔帝とサシャだけだが―――容疑者の言葉が信用出来る被害者などいない。
 それがレオンハルトとレプティラに応ずることのできる解答と言えた。

 ………この時点で他の魔族を靡かせるのは不可能だ。可能であっても、その時には事態はもう引き返せない。
 この男の言葉通りだ。争いは激化して、どちらかが滅びるまで殺し合う。正真正銘、これが最後の争いになる。敵であるものを全て滅ぼせば争いは終わりだ。大きな争いは、魔帝がこの戦争を始めた時点でこれが最後になると分かり切っている。
 何故なら―――。


「ではなぜ、アレは戦争を始めた?」


 一度犠牲が出た時点で、収拾の付け方とは王の首を落とす以外にありえない。
 歯車は回ったのだ。お互いに積み重なる犠牲の末に、どうしようもないほど歪な音を立てて。

 この解答に応ずる者はいない。
 少なくとも魔帝の心境を知るものでも居ない限り。
 その実態が概ね“黒猫”のことばであることにニアは当たりを付けているし。
 彼女の本意としてはそうなることに全く厭を覚えていないのだが、当然言わなくて良いことだ。
 だからそれは、態度にすら出さない。

「止める余地は幾つもあった、歩み寄る余地も幾つもあった」

「では、何故それをしなかった………? 何故、此処まで犠牲が出て、漸く?
 ならば、アレは最初から魔族の生存など望んでいない。あの女が見据えるのは、もっと別の理屈だ」

 別の理屈そのものに彼女はアタリを付けていない。
 だが、魔帝となった彼女が魔族全体の平穏を想定しているのかと言われると、答えは疑問が残る。
 例えば………影の者だ。あれは生物全体として、ヒトという種と殺し合う定めがある。
 それ以外にも幾つも、幾つも。そうした者達からすれば、和平という言葉自体にも反発があるはずだ。その時に彼女には、必ず何かを斬り捨てる選択が必要となる。その義務があり、責務がある。王とはそのような巨きな歯車の部品だ。

 だから。魔帝ヴェルメイユが、例え和平を是としていても。
 それ以外の目的があることくらい、見れば分かる。―――視れば、分かる。

 ………言葉は決した。炎壁で隔てられたその視界を、まずは一薙ぎしようと細剣を構え―――。


  >ひ、一つだけ……お聞かせ下さい。
  >人間を、……どう、思っていますか?


「………………」


 意外な者から、意外な一言が飛んで来た。
 常山蛇勢が何を想い何を感じたのか、それをニアが推し量ったわけではない。

 だが。その一瞬だ。
 本当に、その一瞬だけ。彼女はレプティラに、何時もと変わらない視線を向けた。
 感情の無い表情と、燃えるような紅蓮に反して色を宿すことのない双眸。
 錆び切った感情は、もはや錆を払うことはない。であるが、しかしその瞬間にだけ―――。


 ・・
「それは口にする必要のあることか」



 言葉に込められた心底からの“無関心”さが、ここで彼女の疑問を証明することになっただろう。
 歯車は止められない。一度回り出したのならば、砕け散るまで進むだけ。
 その歴史は不要であると断定した。その生命は無価値であると、その死を以て確定した。
 そして彼女は、それを滅ぼすためにあらゆるものを置き去りにした。何時の間にか朽ちていた心も、それまでに培った情も、争いには自ら与しない掟も、すべて不要な枷とした。―――であるに、その一点だけは変えようがない極点だ。

 塵殺剣が魔族そのものの平穏を望んでいること、戦争を忌むことに間違いはない。
 彼女が語った理屈はすべて真実だ。なにしろ、戦争という無価値な死を生む要素を除くためならば………。


 これを最後の戦争として、ヒトが滅びてしまえば良いと思っていて。
 それが終わった後に、相応しくない主導者をこの手で殺せばいいと思っている。


「―――もういいか?」
「退けよ、蛇の。おまえは此処に居る者ではない」


 だから。
 求めた終点へ辿り着くための犠牲を、結局のところ彼女は容認して塵殺するのだ。
 その言葉が意味するものは“常山蛇勢”の価値を理解しているという事実に他ならないが。
 その言葉が意味するものは“常山蛇勢”であれども邪魔をするならば切り捨てる事実に他ならない。

 ―――細剣が振り払われる。
    吹き荒ぶ風が、目前の炎壁を文字通りに吹き飛ばす。

 どちらにせよ、下手人とされるべき黒猫の妹を逃がすことはない。

 剣風が戦場を薙いだ一瞬、彼女は文字通りに姿を消した。………そう、消したのだ。

 ………さて。なぜ塵殺剣などという名前が付いたのか。
    単純な虐殺という意味なら、“混沌”の彼女のような名が付けられると相場が決まっているのに。

 ただ人を殺す時に剣を振っていたから? それは違う。
 そういう意味ならば、元騎士団長のフロレとてそうだ。蛇腹剣を扱うリュドミラもそう当て嵌まる。
 であれば何故、女の二つ名がそれなのか………その答えは共闘したものだけが知っている。

 断っておくが、ニアは魔将軍の中において、魔法および魔力という点に関して平均以下だ。
 魔将軍の外に出しても、得意分野以外ともなれば凡庸と呼ぶより他にない。
 補助用に魔法を使うことこそあれど、攻撃用に何らかの魔法を使うことなどない。


  消えた彼女は、文字通りに背後から現れた。
  正確には、正面からレオンハルトの肉体を貫き穿ちに掛かるのとほぼ同じ速度で、背後からだ。

  貫き穿つ刃の正確さと同様に、
  サシャとレオンハルトの背をそのまま鋭く裂く薙ぎ払いの質感も変わらない。
  紛れもない二面の斬撃。瞬きする間に終わる処刑の刀。
  それが狙いを二人に絞ったのは、本心から“まだ”レプティラを狙う意思がないことの表れだったが。
  それが二人纏めて狙ったところで、予測が出来ても身体が間に合うような速度ではない。
  神速、雷速、音速、なんでも構わない。
  そうした陳腐に過ぎる表現が“合う”ほどにこの女の動きは速い。


 ………さて、これは如何なる理屈の上にあるものか。

 分身? 否。幻覚魔術? 否々。
 理屈として語れば阿呆らしいが、それは極めて単純な話だ。
 ・・・・・・
 ただ速いだけ。その「ただ速いだけ」という理屈が、どうしようもないほど極まっているだけ。
 先のそれだってそうだ。語った通りだが、ただの剣風でしかない。細剣を抜き放ち、薙いだだけだ。ただそれが、如何なる修練と才能のものか分からないが、ただ実体的に鎌鼬もかくやの暴風と化して炎壁を斬り裂くほどに異様な速度を持っていただけ。

 彼女がその名を賜る最大の理由は、ただ一点、剣の技/業のみ。
 それだけならば他の何よりも勝る、その速度と技巧だけならば、他の何さえも殺して回る。
 どんな生態だろうと、どんな存在だろうと。触れて、斬ることが出来るならば殺して回る。

 宣告者《バンシィ》の剣は、その肉体と魂を双方斬り裂くソウルイーター。
 如何なる物理的防御、魔術的防御だろうが“外側”に左右する防護など意味を為さない。
 肉体で受ければ当然のこと、防ぎ続けてもいずれ魂を食い殺す―――故にこそ、彼女は死を運ぶ者だ。

 付け加えて遊びがない。
 今の一連の動きでどちらが“良く動くのか”判断した上で、行動の比重は炎獅子こと、レオンハルトに置いている。横に逃げれば払いが刺さるように、縦に逃げれば突きが刺さるように、上以外の逃げ道を失くすように。
 ただし空中に逃げるなどとひと手間置けば、紛れもなくニアはサシャを殺す。
 頭数を減らしにかかる。戦場の基本にして、鉄則であるとさえ言えた。

>レオンハルト、レプティラ、サシャ

2ヶ月前 No.648

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

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2ヶ月前 No.649

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6


【魔帝城/海底洞窟(用水路)⇒兵舎⇒???/ハザマ】

 時に、ハザマの行動はたったひとつだけ。
 ただ一石を投じただけだ。
 わざわざ“この世界では知られていない毒素”を使い、憎しみを煽りに煽っただけ。
 実際に行動を起こすとか、吹聴して回るとか、そんなことは一つたりともやっていない。

 その結果についてどうなるかなど、付け加えて言うならハザマは一切頓着していない。
 それにより世界が終わってしまうならそうなればいいと思っているし、
 それにより自分が死ぬのなら、まあ自分の価値などそんなものだろうと弁えている。
 必要なのはあくまでも結果。そのための過程として一番効率が良いモノというのは、こと蹂躙と呼ばれる内容だ。踏み潰し、突き放し、嘲笑い、そうして求めるものを引き出す………終わった後の敵を考えない短期的行動としては、あまりにも効率がいい。


「………ふむ。なるほど、なるほど?」
「ただ憎しみ一色になるのかと思っていたのですが、どうも違いますねえ。
 それらしく動いた者もいるようですが―――あー、ダメダメ。“近い”んですけどこれじゃない」


 その結果は、当たり前のように失敗。
 息絶え、苦しさで嘆く魔族たちの声を聴きながら、彼はそれをある程度まで注意深く聞いていた。
 声は悲鳴のオーケストラ。苦しみと嘆き、そして何より彼らを蝕む魔素の■■が絞り出す感情の大合唱。
 その中を土足で踏み躙りながら、しかしハザマは、一定の段階になるとそれへの興味を失う。

“これではない”と、言い切って。また違う場所へと歩き出す。

 ………動乱を起こしたという意味ではこれ以上ないほど“正解”だったが、
 ハザマの求めるものはそもそも動乱とは掠りもしていない。それを蒐集するための状況造りとして都合がいいからだ。そうしていた方が身体の性に合うからだ。必要でなければやるつもりはないが、必要であるから率先して行っているだけ。
 彼の目的はそれだけ。ハレの日の愉しみ方など、最初からそれしか知らない。
 そこに辿り着くことが出来ないなら、まあ精々敵対勢力のことごとくを嘲笑うだけで済ませようかと思っているし、今も望みが達成出来ていないことを考えると、やはりそう動くより他にないわけだが―――ふと、彼は自分に埋め込んだ“歴史”を閲覧する。
 改変される前の歴史のデータだ。術式に固着させ、自身の文字で記した内容は変えることなど出来ぬ。
 であるに、当然“本来の歴史”における登場人物がどのような末路を辿ったのかも、表面上の文字に過ぎぬが想定は出来る。

 この世界で、歴史などそんな価値でしかない。
 人類が貶めた。人間が紙屑に変えた。ただの預言書じみた胡乱なモノにまで失墜させた。
 時空を歪めて世界を歪めて、丁度良いオモチャに仕立て上げた。


「さて、次は。………ああ、丁度良いのが居ました!」
「お仕事を果たすとしましょうか。ええ、時空の防衛というヤツをね。ヒッヒヒヒ―――」


 であるに、自分もそれらしく使ってやろう。
 それが正しい歴史なのだと、嘲笑いながら使ってやろう。
 ―――そうすることで■■を感じ取る事が出来るならば、ああ是非とも、喜んで。

 再び彼は兵舎を出て、動乱の中をひょいひょいと歩き出す。
 目指すはただ一点。そこ以外は、今のところ須らくどうでも良かった。

>(対象なし)

2ヶ月前 No.650

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大宿屋/黄衣なる者】


これはこれは、流石に間が持たないねえ。戦闘中に饒舌なのも困りものだけどねえ、肉体で戦わない以上少し喋っても良いとは思うんだけどねえ。警戒されているねえ、悲しいねえ。
さあ、襲い掛かるは先と同じ魔力弾だねえ。風の刃打ち消すには十分だねえ、反応できているってことは見えたか特殊な感知能力を持っているのかもしれないねえ。うん、勝てないねえ。
彼女が使っている魔力弾が通常攻撃だとしたらねえ、風の魔術は通らないからねえ。全て打ち消されているからねえ、そろそろ潮時だねえ。まだ未知数だけど、これだけ強いと思われる相手を足止めしてるんだからねえ。
まあ、此方に向かう魔力弾は障壁で防ぐねえ。まだ平気そうだけれど、少し耐久度が不安だねえ。これが割れてしまったらねえ、他の方法で防がないといけないからねえ。障壁が一番便利なんだよねえ。
うん、仕事はしたねえ。この時代での目的は魔族の勝利だったかねえ、ならば王都の強者を抑えてその隙に侵攻が始まるからねえ、現に外は少し騒がしいねえ。ああ、混沌が好みそうだけれどもあまり好きではないねえ、どう見てもこれは人の手によるものだからねえ。

「困るねえ、負けてしまうねえ。まあそんな強くても、ここにいる限りは被害を抑えるには至らないけどねえ。」

依然として困っていないような口調で言うねえ、彼女に行ったことはこのまま戦ってても良いのかいという事だねえ。未来の介入で増えた敵と味方、味方が一人敵に掛かりきりになれば手が足らなくなるからねえ。
何故かって?それはこの時代が本来であれば魔族側が優勢で、それを一人で引っ繰り返した存在がいるからだねえ。でも未だに帰還命令はないねえ、ならその引っ繰り返した存在はいないんだよねえ。じゃあ、敵側が優勢で同じ規模敵味方が増えたらばどうなるだろうねえ。
正解は味方が不利になるねえ、こうやって時間稼ぎや論戦が大好きな奴の相手をしていると戦場全体で負けてしまうかもしれないってことだねえ。ほら、そう言って考えれば十分な仕事はしているねえ。
駄目?厳しいねえ、勝ち目が見えない以上仕事はしたと言える状況にしてもいいと思うけどねえ。まあもう少し位は頑張ろうねえ、ちょっとだけ、ほんの少しだけねえ。

「さてさて、今度は避けないと首と胴体がお別れするねえ。本当だと思うよねえ?どうだろうねえ?」

風の刃の対処に使った時も、竜巻を打ち消す時に使った時も必ず魔力弾の数は十五個だったねえ。それに風の刃に五個ずつと五区切りが多いねえ。その操作しか出来ない事にかけてちょっと大盤振る舞いしてみようかねえ。
本当なら、避ける余地を与えて潰すんだけどねえ。今回ばかりは相殺させること前提でやってみようねえ、つまりは風の刃による全方位攻撃だねえ。上下前後左右、何処からでも彼女に襲い掛かるねえ。
そうだ、小竜巻も四つほどおまけしようか。円を描きながら徐々に彼女に迫るようにするねえ、彼女も脅威だと感じていたからか結構な魔力弾を差し向けていたしねえ。
彼女に襲うのは無数の風の刃と小竜巻四つだねえ、まあ無数と言っても百は越えないけどねえ、数えるのが面倒だからねえ。今回ばかりは逃げ道も作らないねえ、これは彼女がどれだけ魔力弾を出せるかの確認みたいなものだからねえ。
これに対応されてしまったらお手上げ、逃げるねえ。運がいい事に逃げるのは大得意、その次に自己防衛が得意だねえ。まあ取り合えず、彼女がどうするかを楽しもうねえ。

>>ジークリンデ・エレミア

2ヶ月前 No.651

獅子心 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu


【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

「否定はしない。俺が可能とするのは、最も在り得るかもしれない可能性を提示する事だけで、真の事実を解き明かすには決して至らない。
 ……だが、例え真実がどうであろうと俺の知った事ではない。
 人の歴史、魔族の歴史、その何方かが潰える未来を未然に防ぐ。俺が為すべき役割とは、全くの無縁の話だからな」

 推察に生じる"虚"を突かれる事など、最初から想定済。下手人の正体に対する曖昧な憶測は立てられたとしても、歴然たる事実を解き明かすに至るには、必要な因子が欠落している。異世界人の犯行、ならばその異世界人とは誰か。答えられる筈が無い、自身はその名を委細把握などして居ないのだから。
 提示できるのは真実に非ず、単なる一つの可能性。真かもしれぬし、偽かもしれぬ、常に揺れ動いて安定しない天秤。然し、それが何方に振り切れるかを、獅子は一切の重要視をしない。肝要なのは、人の歴史と魔族の歴史の双方を護り抜く事。既に本来の歴史への修復が叶わぬ以上は、最善と思える結末へと導く事だけを考える。

「これが奴の答えだ。人が潰えるのならば、塵殺剣は永きに続く闘争を是とした。その鉄心を揺るがす術が無いのは、お前も既に理解している事だろう。
 ……もう一度聞く。この未来を嫌と思うなら、力を貸せ」

 塵殺剣は人の存在を否と断じ、其の歴史を潰す事を是とした。その意志の程は、常山蛇勢への応答を以て包み隠さず、此の場に居る全ての者へと伝わった事だろう。そして、鉄の如く堅い意志を揺らがせる事が、不可能である現実も。既にレプティラに残された選択は、彼女の齎す平穏を是とするか、それとも否とするかを裁決する事のみ。
 それを踏まえた上で、獅子は再び彼女へと問う。闘争の未来を拒む心があるのならば、塵殺剣を止める為に力を貸せと。そして、言葉にはしないものの、肯定するのであれば、此の場から退く事を望む。斯様な選択であろうと、獅子はその意志を誤りとはせず、尊重する心算でいた。

「礼を言うのはこっちも同じだ、お陰で孤軍奮闘せずに済む。今更だが、俺の名はレオンハルト。共に戦おう、サシャ」

 問答は終わり、塵殺剣は再度退けとレプティラに告げると、遂に細剣の一振りが炎壁を吹き飛ばした。露わとなる視界の先に、敵の姿は無い。代わりとして、背後から迫る超速の瞬刃。純粋に極めた剣技が成し遂げる、窮極の業。攻撃の正体を予測は出来ても、その対処を至難とする必殺の絶技が、中立と定義された蛇を除いた二人を強襲する。
 対する獅子が取った行動、それは放出する爆炎による加速を伴った、超高速移動。空間に火焔の軌道を残しながら、自身に迫る瞬刃を越す速度で回避を行う。身体へと流れる魔力を媒介にして引き起こす超常は、単純な膂力を以て発揮する超常に劣る。故に、求められるのは短期での決着。長期に渡って戦いを演じる事が、どれだけ不利な局面へと陥るかは想像に難くない。

「ぐっ……お前のそれは、肉体のみならず、精神をも斬り殺すか!」

 焔を纏って地を奔る獅子は、瞬刃がサシャの背を引き裂くよりも早く両者との間へと割り込み、彼女へ向けられた一撃を肩代わりする。刹那、刃が引き裂くと共に流れ出る鮮血の紅。然し、獅子の意識は自らの負った肉体の傷よりも、同時に自らの精神に刻まれた傷へと傾倒している。徐々に薄れて行く、心の情熱。数度と無く斬り刻まれれば、忽ち己の魂魄は消滅を果たす。そうなったが最期、其処に在るのは単なる廃人の姿だ。

「だが、例え幾度と無く切り刻まれようとも、この決意だけは壊させん……! 後世に生ける者達に示す歴史は、この俺が護り抜くとな……!」

 それでも最後の瞬間まで忘れまいとする闘志の炎。後世を生ける者達に示す歴史。潔白であるとは口が裂いても言えないが、だからこそ其処には価値が有る。過去の過ちを教訓へと変え、善き物は受け継がせよ。人に対しても、魔族に対しても、皆平等に。善き未来を築くには、歴史と言う物は必要不可欠なのだ。だから、命を賭してでも護り抜く。
 刃によって引き裂かれたその直後、彼の左手は前へと突き出された。収束されて行く火焔の力。尽滅の業火が、燃え盛る音を響かせながら奔流となって塵殺剣へと襲い掛かる。回避の余地を与えぬ心算で放った、即座の反撃。然し、未だに全力を発揮していないであろう敵は、恐らくこれを容易く退ける。完璧な決め手となる事は、まず無いだろう。

>ニア レプティラ サシャ

2ヶ月前 No.652

影の魔物 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【魔帝城/深淵の間→庭園/"無音"のブロヴァンス】

魔物が向ける濁った眼差しに、魔帝は揺るぎの無い眼差しで返す。多くは語らなかったが、その真意は痛いほどに魔物へ伝わった。即ち魔帝の決意。十を従え、十を統べる覚悟が。
……無論、例え魔帝であれど全てを救う事は不可能だろう。意志だけで全てを成せると言うのなら、誰かが既に理想の世界を作っている。彼奴も、魔帝の掲げる理想の実現は困難だと理解している。魔帝も何時かは死ぬ時が来る。そしてその後の後継が理想を正しく継ぐとは限らない。

だが、重要なのは其処ではない。そも、『我々』も永遠に存続出来る等と驕ってはいない。生命であり種族である限り何時かは滅びるものなのだ、と言う一種の悟りがある。いずれ変化し進化して、形を変えて存続する事はあるだろうが、それは最早『我々』とは異なるもの。だからこそ『我々』は選択するのだ。魔帝か、黒猫か、或いはそれ以外か、若しくは何処にも就かないか――あらゆる選択肢から、最も己を生かす道を選び取る。

即ち、彼奴が求めたのは『私達』はどうすれば良いのか、貴方に付き従っても良いのか、と言う命題への回答。魔帝はそれに、おおよそ満足が行く答えを持っていた。ならば、それで十分だ。

彼奴は魔帝へ頭を垂れる。その寛大さと、その決意への敬意が自然に現れた行為であった。これは単なる力への恭順ではない。『私達』が生きる為に、貴方の力となる。その誓いの証なのだ。
そして、彼奴は速やかに魔帝の御座から立ち去る。魔帝はこの座から動く事は出来ない。ならば動けぬ主の代わりにその意志を、言葉を、伝えるべき者へ伝えるのが彼奴の次なる務めであるからだ。
そして、それを伝えるべき者はただ一人――即ち魔帝が最も信頼する者、『龍炎公』ヴァンレッド。彼は未だ魔帝の真意を知らない。全てを知れば、彼は間を置かず動き出す事だろう。最高位の魔将が魔帝に就くとなれば、多くの魔族もそれに靡いて同調し、何者かが企てた内乱は急速に沈静化する筈だ。あとは残った埋み火とこの乱を引き起こした元凶を討てば良い。それで魔帝軍は真の統一を見るだろう。

「ガァァ! グゥアァァッ!」

影に紛れず、魔物は己の足で城内を駆け巡り、声を挙げて龍炎公を探す。これこそが『私』が為すべき使命だとの確信を得て。
そして、辿り着くは庭園にて――。

>>ヴァンレッド

2ヶ月前 No.653

"不死公" @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【魔帝城/海底洞窟/"不死公"ネクロニア】

この絶対的な不死性を見ながら、無駄だというのに、何度倒しても私は蘇ると言うのに相手はあくまで対抗しようとしてくる。
その覚悟だけは認めなければならないだろう、だが、認めるのはあくまで勇者と言う個人に対してであって、人間と言う種族に対してではない、ここがネクロニアと人間が相容れない要因であった。
少なくともネクロニアは相手を玩具やペット扱いする事をやめて、全力を持って敵を撃滅しようとした。

相手が龍には龍で応じるとでも言うのか、その剣を紅く染め、魔方陣の展開準備が行われているが、しかし。

「馬鹿め! 間に合うものか!!」

そう、アンナローズの攻撃動作は、間違いなく常人と比較すれば素早い物である事は疑いようもない。
しかし、こちらの魔法攻撃やブレスが放たれた後から撃つには、あまりにも詠唱時間は長く、攻撃を相殺するにも間に合わないような物だ。 しかし、相手はその攻撃をするために動きを止めている。
無理攻めの結果は何時だって破綻する、そう考えながら、放った魔法群が勇者へと直撃するのをネクロニアは待つ、だが……それに割り込んでくるのがひとつ。

ロコだ……馬鹿な、命を捨てに来たとでも言うのか、そこまでして人間の勇者に、自分たちの種族を滅ぼしかねない者を守ると言うのか。
そして、ロコは巨大な土壁を生成して勇者を守ろうとする……だが、そんな物は無駄だ、少し時間を稼ぐぐらいにしかならない。

いや……相手にとっては、ただ、少しの時間を稼ぐだけで十分だったのだ。
土壁が崩壊してロコが吹き飛ばされ、攻撃がアンナローズへと向かう、だが、その時にはすでに、彼女の攻撃は完成されていた。

出現するは焔の龍、それが放ったブレスは、通常のドラゴンより優れているはずのドラゴンゾンビのブレスすら蒸発させ、ネクロニアの軍勢をたやすく吹き飛ばした。
もちろん、それはネクロニアも例外ではなく、棺桶は吹き飛ばされて壁に叩きつけられ、ネクロニア本人は灰へと変わった。
だが。

「まだだ、まだ終わらないぞ。 幾度滅ぼされようとも、お前たちには決め手がない、負けるのは貴様らだ!!」

棺桶が開き、ただで破損しかけていたと言うのに、完全に破損しているような見た目ではあるが、魔力を放出、それを受けてネクロニアは灰より蘇った。
幾度倒しても、確かにネクロニアは蘇る、これでは、勇者側がジリ貧で敗北する……かに思えた。

だが、その瞬間、棺桶が一瞬光ったかと思うと、先ほどロコに放ったバンテージキャノンが、ネクロニアを狙って放たれた。

当然背後からの攻撃が予測できるはずもないネクロニアは、いともたやすく背後から迫る包帯の塊を受けて、胴体を巻かれた。
――へ?
そんな情けない声にも構わず、棺桶からは、追加のバンテージキャノンが発射され、ネクロニアの足、腕、肩に隙間なく包帯が巻かれて行った。

さて、ここで棺桶の機能を説明しておかねばならないだろう、これは単純な武器ではなく実際は、他の領地に待機させているアンデッドの攻撃を転送する『門』でしかない、つまるところ、バンテージキャノンにしろ、放出される魔力にしろ、彼女の指揮下のアンデッドが発射しているのだ。 それが今、ネクロニアを拘束している、と言うことは。

「アンデッドが暴走した!? そんな、馬鹿な、や、やめろ、私は主だぞ!? ……ひぃっ、ちぇ、チェル様! 聞こえていらっしゃるのでしょう!? わた、私を助けぇっ」

魔法を使ってチェルに救援を求めるネクロニア、しかし、今、まさに正念場を迎えているチェルが、これに答えるかと言われると……いや、そもそも、ネクロニアはあくまで妄信している戦力だったからチェルに重用されていたに過ぎず、一度勇者に負けたネクロニアを、わざわざチェルが救い出すか、と言われれば、答えは決まりきっていた。
チェルは何も答えず、ネクロニアを棺桶の中に引きずり込もうと伸びてきた包帯がネクロニアのミイラのようにぎちぎちに拘束された身体に絡みつき思いっきり引っ張ったことで、ネクロニアはずるんと地面に倒される。

その際に身体を打ったが、ここでアンデッドの暴走で離脱する訳には行かないと必死に彼女は身体をうねらせるが、魔族すらも捕獲するバンテージキャノンの包帯は、彼女でも解ける事はなかった。
腕も使えない、足も使えない、魔法は集中と指を使った行使ができない、となれば、とネクロニアは必死な形相でロコを見て。

「ろ、ロコ、助けてっ、私はまだ、まだやりたいことが……今までの事もすべて、すべて謝る、だからっ!!」

引き摺られていく段階で何度も地面に頭を打ちながらであるため、言葉詰まりが酷いが、おおむねそれは命乞いと呼べる物であった。
涙ながらに訴える彼女に、さらに追加の包帯が巻き付けられる、もうそれは、ロコの手にどうにかなるような物でもなかった。

「うわああああ! チェル様、チェル様ぁ! わたし――むぐう!? むううう! ぐうううんん!!」

ばたばたと陸に打ち上げられた魚のように跳ねて見せるネクロニア、それが何か身を結ぶこともなく、チェルに助けを求め続けるも、それが届くことはあっても、聞き入れられる事もなく。
ついには口を塞がれ、全身を包帯で巻き上げられて、ゆっくりと棺桶の中に引きずり込まれていく。

その最後の瞬間まで彼女は暴れていたが……勇者が何かしようとしても、その前に、ずるんと棺桶の中にネクロニアは引きずり込まれて、バタンと音を立てて棺桶は閉まった。

……すると、今までのダメージがここになって出たのか、バラバラと音を立てて棺桶は無数の破片となって崩壊し、"門"としての役割を果たさなくなった。
もう、ネクロニアがこちらに戻ってくる方法も、連れ戻す方法も、ない。

こうして、"不死公"ネクロニアは魔将軍で最初に、人間に敗北し、最後には自らの能力に囚われ、消えた。

>ロコ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム (チェル)


【"不死公"ネクロニア@自らの能力の核となる棺桶が破損したことでアンデッドが暴走し、捕縛され消息不明。 と言うことで、お相手ありがとうございました! ネクロニアはこれで退場となります!!】

2ヶ月前 No.654

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/噴水広場/エスト(残魔具4526個 残魂数9)】


未だ巨大な芋虫は健在、あれだけの大火球を受けても尚態度の大きさも変わらない。火炎魔術では上回ることは不可能、仮に上回れたとしても倒すのに見合わない膨大な魔力を消費することになるだろう。
こればかりは種族の差、と言う物だろう。どれだけ彼女が鉱石を食べ、魔力を蓄えられるとしてもあれほどの巨体でなければ意味がない。人間の域では負けるつもりはなかった、しかし正に人外の域の巨大な芋虫には負けてしまうのも仕方ないだろう
負け惜しみ、彼女は結構負けず嫌いである。素直に負けを認めることはあまりない、だから出力と耐久性で負けていても魔術の緻密さでは勝っていたと思いたいのだろう、事実魔力の扱いには長けている。

「うーん?撤退したか、しかし指揮系統が崩壊していると言っていたが……いや、気にする必要はないか。」

爆発を辺りに散らしながら潜行する巨大な芋虫、少し戦略面では抜けているようだったが殿を務め、挑発に乗らない器の大きさは皇帝の名に相応しいのだろう。尤も、悔しいので間違っても彼女がそう呼ぶことはないのだが。
さて、彼女はこの青年を救助すれば戦乱を治めるために本拠地を叩こうと考えている。王都の防衛も必要である、しかし攻めてきた相手を迎撃するだけでは無用な被害が増える。徐々に戦線は此方が優勢になってきている、ならば未来の者に任せて行くべきだろう。
記録書を捲り、転移で向かおうとすると恐怖に塗れた困惑の声が上がる。この状況に気付かないほど戦闘に夢中になっていたのだろう、音楽による魔術の様なもの以外使っていなかったが控えめに言っても戦いが得意なようには見えない。
それだけ必死になっていれば気付かなくとも仕方がないだろう、尤もこの状況も見ていて気持ちの良いものではない。怯えた表情で此方へ視線を向ける青年、何も言ってはいないが事情を説明してほしいのだろう。
とは言っても彼女も殆ど情報はない、王都に踏み入った時からこの状況であったのだ。能力や魔術によるもの、そこまでの推測は出来ているが見た以上の情報は持っていない。

「……うーん?残念だが、君が望む答えは持っていない。私も先程この場に来たばかりだ、ただ異常な状態であることしか分かっていない。」

大きく表情も変えずに青年へと伝える、慰めを言える状況でも情報を持っている訳ではない。だから淡々として、事実のみを伝える。不思議な素材の塔から見渡した以上、多くの物が見えてしまったのだろう。
錯乱するような青年であれば既に戦いの時点で心を乱しているだろう、だが立ち向かった青年であるならば理解して何をしようか考えられるだろう。ここで少しでも話すことで、恐怖を緩和できればいいのだが。
青年を落ち着かせ次第、魔族の本拠地へと向かう。状況は好転してはいるが窮地には変わりない、時間も決してあるわけではないだろう。指揮系統が崩壊している、それが事実であれ嘘であれ攻め時には変わりない。

>>ショパン (エンペラーワーム&ワームテイマー)


【御相手ありがとうございました!此方も次で移動します。】

2ヶ月前 No.655

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【王都ロンカリア/大通り/仮面ライダービルド、仮面ライダークローズチャージ】

「はぁ……はぁ……」
スクラップブレイクを怪物に見舞った後、そのまま着地する万丈。
消耗したのか、息が上がっているようだった。
ちなみに倒れ伏した巨大な怪物は見ていない。

「うっ……!」
「万丈!」
その直後、バチバチとベルトがスパークし、万丈は前に倒れこんでしまった。
それを見て万丈の身を案じる戦兎。

「……ん?」
万丈のところに向かおうとしたところ、あることに気がついた。
どうも敵の様子がおかしいのだ。
案の定、怪物は異様な音を立てながら孵化のようなことをはじめ、瞬く間に変化を完了させた。

「最悪だ……」
勝利の法則はまだ見つかっていないというのに。
戦兎はそう思いつつも、すぐに敵を倒すために動き出す。

「はっ!」
バイクを走らせ、空から振ってくる拳を回避していく。
その際万丈がいるところを見ると、ギリギリで防いだのが見えた。

「だったらこっちも……!」
先ほど取り出したゴリラのフルボトルをラビットのフルボトルと交換し、レバーを回す。
そして『ゴリラタンクのトライアルフォーム』に変身し、ゴリラの右腕で敵の拳をぶん殴り、弾き飛ばす。
そのままダイヤモンドのボトルも振り、開錠し、タンクのフルボトルと交換し、レバーを回す。

『Are You Ready!? 輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド! イェーイ!』
「ぐっ……!」
ゴリラモンドに変身し、別の拳をダイヤモンドの装甲で受ける。
割と堪えたが、それでもバイクを走らせ続ける。
しばらくバイクを走らせて、ついに怪物の傍にたどりついた――――

「……勝利の法則は、決まった!」
バイクを止め、そこにだけ拳が降ってこないことを確認した戦兎は勝利を確信し、巨大なフルボトルを取り出し、勢いよく振った。
そしてプルタブを開錠し、ベルトに入っていたボトルと交換する。

『ラビット! タンク! スパークリング!』
そしてレバーを回し切り札である『ラビットタンクスパークリング』へと変身。
勢いよく飛び上がり、もう一度レバーをまわす。
ラビットタンクスパークリングの強力な必殺攻撃が怪物目掛けて、放たれた――――

『スパークリング・フィニッシュ!』

>オムニス・デューザ、魔族および周辺all

【問題あるようなら修正します】

2ヶ月前 No.656

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/庭園→魔大将の間/ヴァンレッド】

 魔帝城入口前に広がる、美麗を感じさせない殺風景な庭園。天を貫くが勢いで聳える牙城を一望出来るこの地にて、龍炎公は一匹の巨甲虫との邂逅を果たす。"無音"のブロヴァンス――軍内では影と同化する才能を買われ、諜報や破壊工作、暗殺任務を主とした活動を行っていた兵卒の一人。濁った水晶眼で見上げ、言葉では無く鳴き声で伝えようとする意図を、龍炎公はその一切を把握する。
 魔帝は王としての自立を選択した。彼女は既に黒猫の傀儡では無く、真に魔族を導く指導者として立ち上がる決意を固めたのだ。ならば、自らもまた臣下としてその決意に報いよう。
 討つべき敵は魔大将の間に在り。悪辣な謀略を巡らせ、王座を簒奪しようと目論んだ大悪への誅罰を果たすが為。そして、彼女の望んだ悲願を現実の物とするが為。今ここに、焔の誓いを果たすのだ。

「……帝王の名を捨て、主君に奉じたこの数年。魔将軍としての最後の務めを果たす時が、遂に来たか」

 焔の剣を天高く掲げ、決意を新たにした龍炎公は戦場への路を歩み始めた。左手に蓄えられる焔を撃ち出し、天に描くは意志表明の言葉。龍炎公の異名に於いて、真の逆臣たる魔大将を討ち滅ぼすと宣言する。
 城内へと侵入した彼の猛進を阻む者はいない。強烈なる威圧を漂わせ、烈焔を纏う緋剣を手に駆ける騎士に追い着ける者は誰一人として居らず、仮に追い着けたとしても、その猛進を食い止める事は叶わぬ現実があるのだから。

「――魔大将、いいや叛逆者チェル。貴様の陰謀も、此処で終わりとなる」

 燃え盛る烈焔の渦が、部屋の主と室内に設けられた調度を諸共焼き尽さんと強襲を仕掛けた。焔を放って敵地へと侵入を果たした龍炎公は開幕一言、告げるべき言葉を簡潔に述べると、焔剣を更に昂らせて巨剣へと新たに鍛造し直して構え、爆炎と共に渦中へと飛び込む。
 紅蓮の焔が視界を遮る中でも、龍炎の瞳は敵の位置を決して見逃さない。瞬く間に黒猫の眼前へと躍り出たヴァンレッドは、確実に抹殺する事だけを考え、ほぼ同時にも等しい刹那の刃で死を齎さんとする。頭を断ち、首を刎ね、心臓を突かんとする怒涛の三連撃。灼熱の紅を刻み込む様に、黒猫を目掛けて軌道は奔る。

「詰めを誤ったな、黒猫。この俺を排斥し損ねた己の失策を、地獄の底で呪うがいい」

>チェル ("無音"のブロヴァンス)

2ヶ月前 No.657

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【王都ロンカリア/大通り/橋川 清太郎】

「な……!?」

完全に自らの予想を覆す光景に面食らう。
3人がかりの同時攻撃で決着がついたと思いきや、まるで脱皮でもしたかのように無傷の状態へ逆戻り……どころか寧ろ進化を遂げたとも解釈できる外観だ。
自身の現行装備で、最大級の破壊力を有する武装でも倒しきれないとは。これが『魔』の力だというのか。

「クソが!」

一度投棄したMadelephantを拾い直し、再び腰だめに構える。火力が足りないなら継ぎ足せばいい、単純極まりないが有効な手段だ。

「HeavyBeetle転送!!」

更にミサイルランチャーも全身に転送装着、火力のみに特化し運動性、重量バランス、命中精度、反動制御の総てを度外視した歪な火薬庫が完成する。

「いくぜ……」

Backdraftの砲身が花弁状に展開し、対多数を想定した拡散モードに切り替わる。まだ冷却が終わっていないが四の五の言ってられる状況ではない。
巨大な腕の雨が降り注ぐ、それに臆することなく全火力を解放した。
閃光、爆音、衝撃。
放射状超高出力電磁熱線。
大口径六連装回転式機銃弾。
対集団多連装飛翔炸薬弾頭。
それぞれ違う火門が織り成す鋼鉄の三重奏、余すことなく受けて貰おう。
赤熱化した砲身の高温が腕部装甲に伝わってくる。バイザーに現状での危険を知らせるアラートが表示されるが一切見えていないかのように無視した。

(………………)

魔族の肉片と血飛沫、熔けた砲身の一部と排薬莢と噴射煙が落ちていく中で、ある考えが脳裏を駆け巡る。
あの魔族が持つ脅威的な戦闘力と生命力、本当に元からあったものだろうか。この時代には他者と契約を結ぶことで、特殊な能力を得る技術体系が有るらしい。もしこの二人もそれを行っているとしたら……

(一つ、試すか)

火線は女性の方にも向けている、もっとも例によって腕で防がれているが。
バーニアを吹かし女性目掛けて急加速すると同時に、DE-561X-WitchJudgmentを起動。これは自身の周囲にごく小さな対魔法フィールドを展開する装備である。
狙いはこうだ、まず加速をつけた体当たりで腕のガードを崩し、そのまま女性に『衝突』という形で無理矢理フィールドの範囲内に入れさせ、魔族との魔法的契約を断ち切ろうという算段なのだ。この現状が続けばジリ貧になる可能性が高い、ならば大博打に打って出るのも一興か。

>>大通りall

2ヶ月前 No.658

"真の従者" @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/海底洞窟/ロコ】

アンナローズの護衛という、自身にとっての役目を終えたロコに出来ることは、事の成り行きを見守ることのみ。あとは主人が、必ずやネクロニアを倒してくれるであろうことを祈るしかない。
しかし、彼女は全く心配などしていなかった。覚醒し、新生を遂げた今のアンナローズにとって、不死公など造作もない相手であるという確信があったからだ。
地面に叩き付けられ、本当なら痛いはずなのに、何故か今ばかりは心地が良い。これで、少しは従者としての務めを果たせたという実感が、ロコの中にはあった。
それでも万が一があればいけないと、再び彼女は立ち上がって、何かあれば自分が攻撃を肩代わり出来るよう体制を整える。そして、そんな信頼しあう二人の関係が、結果として勝敗を分けることとなった。

「今更遅いのであります。自業自得なのでありますよ」

何度死んでも蘇るという謳い文句に嘘はない。事実、アンナローズの一撃を受けてもなお、ネクロニアは灰の中から再生し、往生際悪く抵抗を試みてきた。
配下の暴走。恐らくは、あの棺桶がコントロール機能を持っていたのだろう。それに気付くことの出来なかった彼女は、最後の最後で報いを受ける形となった。
自らが崇拝する魔大将のチェル、あまつさえはロコにすらも助けを求めるも、その願いが届くことはない。全身を包帯で拘束されたネクロニアは、そのまま棺桶の中へと引きずり込まれていった。
全てが終わると同時に棺桶は崩壊し、辺りには静寂が訪れる。もう、敵が戻ってくることはないだろう。つまり、勝ったのだ。自分達は。
されど、まだ戦いは終わらない。旅の目的は、魔帝を討伐し、人類に安寧をもたらすこと。断言出来る。アンナローズならば、それを成し遂げられると。
だが、これほどまでに傷を負ってしまっては、もはや自分は足手まといにしかならないだろう。悔しいが、ここで彼女の足を引っ張る訳にはいかない。一つの決意を固め、ロコはアンナローズへと話し掛ける。

「私はもう戦えないのであります。構わず行くのでありますよ、アンナローズ殿」

しばしの別れ。主人の戦いを傍で見届けることが出来ないのは残念だが、考え抜いた結果だ。もしも無理をして自分が死にでもしたら、アンナローズの精神に関わる事態となるのは確実。
ならば、ここで彼女を送り出し、帰りを待つことこそが、従者としての最良の選択であると思ったのだ。露骨に悲しげな表情を浮かべるロコだが、はっと気が付いたように、ポケットから一つの宝石を取り出す。

「これを持っていくのでありますよ。この宝石が、私の代わりにアンナローズ殿を守ってくれるであります」

蒼く澄んだ輝きを放つ宝石。見ているだけで心が浄化されるような色のそれを、ロコはアンナローズへと手渡す。これは、彼女が魔帝軍にいた頃に、上司からお守りとしてもらったものだ。
思えば、今まで様々な困難に遭遇しても生き抜いてこれたのは、このお守りのお陰かも知れない。だから、アンナローズもこれがあれば、必ず生き残れるはず。ロコは自分が動けない状況においても、常に主人の役に立つ方法を考える、"真の従者"であった。

>アンナローズ・フォン・ホーエンハイム、("不死公"ネクロニア)
【お相手ありがとうございました。
 ここでカルストンライトの伏線回収】

2ヶ月前 No.659

指輪の女帝 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【歴史是正機構本部/実験室/パージルク・ナズグル】

パージルクは全てを信じようとはしなかった、何せ彼女の知識上、こういった本は改竄が効かない物だと思っているのは確かだが、それ以上に彼女がマロンやエストと言った自分の臣下を強く信頼していたと言う事が大きい、しかし、それでも、この文章は、そう思いながらパージルクはヘルガが提示した物に目を通すしていた。
ありえない、違う、とうわ言のように呟くパージルク、それに対してヘルガは冷酷にも、魔道帝国、ひいては自分の国家が滅びた後のあの世界の行く末を自分に見せ付ける。

……魔道帝国が滅びたあと、マロニス王国は1000年に渡って繁栄した、それ自体は、自分が最初からマロンのような優しい子が国家を引っ張って欲しいと思っていたので、魔道帝国が滅びようともマロンの国が栄えたというのは本来喜ばしい事だった。
それが、自分の愛した他の忠臣たちを犠牲にした物でなければ。 カシュタンはブールーンの横暴の中、幽閉されていた所からようやく出てこれたと言うのに、あの環境に逆戻り、現時点でも半ば錯乱状態であったと言うのに、また長期間の幽閉をされれば、どうなったかなど容易に想像でき、名だたる将軍や近衛は、揃って生死不明や戦死、処刑といった言葉が並んでいた。
そして最後に、エスメラルダが、こんな馬鹿な母の国を最後まで守ろうとしてマロンに殺されたと、そう文献には書かれていた。

あの子が、私の国を? そう思ったが、もしも、マロンが作った国と言うのが、ブールーンのような邪悪な国家だとしたら?
パージルクは目を見開いたまま、それ以上反論をする事は無くなった。

「嘘だろう……? 嘘だと言ってくれ、そんな、そんな事が……妾の、魔道帝国が、そんな奴らを育て、そして他の忠臣を殺しつくしたと言うのか!? なら、私は、私は!」

ヘルガに懇願するように叫ぶパージルクだったが、彼女に向けて言われた言葉は、選択を促す言葉と、脅しじみた言葉だけだった。
それだけ言い残されると、パージルクはこの場に一人残された。

もう、もがき疲れていたのもあるが、それ以上に、脱出に気が向かなくなってしまい、彼女はただ葛藤する。

「あ……あぁ、エスメラルダ、愛しい臣下たちよ……私は、私は、どうしたら。 お前は、お前たちは復讐を、望んでいるのか? 本当にそんな事が」

死者の言葉を聞く能力など持ち合わせていないと言うのに、パージルクはもう居ない者たちに語りかける。
だが、確固たる証拠が目の前に置かれていても、パージルクはかつての忠臣を信じようとしていた。
まだ、ヘルガの望み通りにはならなかったと言っても良い、脅しは彼女に効果は無く、また、歴史書だけでは、落としきるには不足であったのだ。

そのときだ、もう一人、別の人間が入ってきたのは。
彼女は皮肉っぽく笑いながら、自分に声をかけてきた。

「……そうだとも、妾は、権力と強さの化身、悪の……悪の」

倒されるべき悪の化身そのものだった。
そうパージルクは続けようとした、だが、それはもう、口には出せなかった。
その時、相手はこちらへと手を伸ばして……胸に手をかけて、嫌らしく愛撫する。

「何をっ! やめろ、やめてくれ、この身体はあの人の――ぐあっ……」

胸だけではなく、まるで全身を味わうようにその手は様々な所を撫でる、股、尻、足、それこそ、一般的に触るのはタブーと言えるような所も、全てだ。
もちろんそれは、直接触られた訳ではなく、テープや包帯越しにである、だが、それでもパージルクへ嫌悪感を与えるには十分だった。

だが、もがいた所でどうにもならないと分かっているので、パージルクはただやめろと声をかける、この身体は自分が生涯でただ一人、異性として愛した人のための物なのだと。
それにも構わず、エステルは首筋に噛み付いた、まるで吸血鬼が己の獲物に印を付けるように。
この瞬間より、パージルクは捕虜ではなく、エステルと言う人間の獲物に成り下がったのかもしれない、当然突然そんな事をされたのだ、パージルクは彼女を睨み付けるが、ぐいっと顔を近づけてきたのを見て、不気味さを感じて目を逸らそうとする……が、人差し指を顎にあてて、くいっと正面を向かせられた。 こういった仕草は往々にして。

「駄目だ、駄目だ駄目だ! 私の身体は、あの人の物で、私はアレから誰にも――んん!!」

あの人が死んでから、自分は誰にも心も、身体も許していないのに。
そんなパージルクにとって、エステルによって行われた"蹂躙"は、壊れかけているパージルクの心をへし折るには十分な物だった。
苦しい、嫌だ、やめて、そんな言葉がパージルクの中に駆け巡るが、エステルはそれをやめようとはしなかった。 それでも、これだけは本当に拒絶したかったのか、無駄だろうがなんだろうと、相手を蹴ったりしようと、一本に纏められるようにぐるぐる巻きにされた足を滅茶苦茶に、ばたばたと動かすが、そんな物を回避したり抑えるのは、エステルにとって実に簡単だ。

顔を離された頃には、パージルクの目は虚ろで、半ば放心状態となっていた。
そこにエステルはさらに畳み掛ける、あくまで蹂躙は、前段階でしかない。 パージルクの頭が"あの人"への謝罪で埋め尽くされた時、エステルはエスメラルダの名前を出し、弔いや、同胞と言った言葉を告げた。

「ごめんなさい、ごめんなさい……とむ、らい? 私は、あの人を、どう、弔って……エスメラルダ、臣下たち、私は……そうだ、私は、殲滅して、もう二度とこんな事が起きないようにする、それが、あなたへの弔いだと……だから、エスメラルダにも、それを」

そうだ、そうだとも、とパージルクは何かに気づく、いや、思い出してしまった。
己の奥底に眠る、第二人種への復讐心、それがエステルの能力によって増幅される。
そして"あの人"に捧げたのは二度と同じことが起きない世界の構築、なら、あの子や臣下に捧げるのも、同じように、今度こそ第二人種を殲滅しきった世界ではないか、と。

「あはは……何故、忘れていたのだろうな、私、いや、妾は、第二人種を滅ぼすために、あの国を作った……その目的を何時か忘れて、あの憎き第二人種の娘と、それに同調したエストに……憎い、奴らが。 今度こそ、帰還し、奴らを殺し尽くす……! ……協力、受けよう、それが、あの人だけではない、エスメラルダや忠臣たちへの弔いとなる」

その時、パージルクは、"最初"の目的を思い出した。 そして、長い時間を掛けて辿り着いた、最高の結末へと導くための目的を記憶の片隅へと押し込んだ。
今度こそ、皆殺しにする、今度は、同調しようとする第一人種も、殺す、そう決意した。

拘束の必要はもはや薄く、また、一度解放され、命令が下れば、彼女は帰還し、そして正しく世界を導くために、何であろうとも焼き尽くすだろう。

>エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール


【祝寝返り。 ということで今後パージルクは、歴史是正機構の協力者として動かします! まだ縛られてますが、解放しても良いですししばらく眺めてても良いです】

2ヶ月前 No.660

ダン・マッケーニ・バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc


 この世の中に不可能という文字はない。
 何故なら、俺が全能だからだ。


【 歴史是正機構本部/実験室/ダン・マッケーニ・バビロン 】

「よーぅヘルガーァ、新しい出資者――悪い、お楽しみの真っ最中か」

 やや遅れ――扉をあけ放ち、無遠慮にもむせ返るような甘ったるさが充満する空間に侵入するのはスーツを身に付けた男だ。
 パージルクとエステルを見てそんな感想を漏らしつつも、しかしこの男には一切のペースの乱れは見られない。
 適当なパイプ椅子を蹴りだすようにして腰かけ、にやにやと彼女たちを眺める。

「いい絵だ。
 ああ、いい絵だとも。縛られた人妻を嬲る美人、楽しい絵画じゃないか――ええ?
 その手の連中には大ウケだろうよ。だが、俺はそんな新たなビジネスの開拓をしに来たんじゃあない」

 怒りも。
 欲望も。
 その清濁も、――ああ呑み込もうさ。何故なら俺はダン・マッケーニ・バビロン、英雄主義者にして世界の全てを見る男。
 故に彼は笑いながらその本性を露わにする。いい逸材を見つけた、今日の劇場の主役はこいつしかあり得ないのだ。
 その志も全て蹂躙され、そして己の目的を思い出す魔族原理主義者の女王。腑抜けた牙は生え変わり、今こそ天へと羽ばたかんとする。

 ダン・マッケーニ・バビロンは何もしない。
 ささやかな贈り物しかしないのだ。蓋をこじ開けるのがエステランディアなら――たまたま訪れた男がやるのは灯油を注いでやること。

「パージルク・ナズル」

 黄金王は座るなり――縛られた女帝へ向けてこう告げた。

「お前は愚図だ。
 何故偽りの安寧を享受した? 何故第二人種を滅ぼすという目的を忘れた?
 何のためにお前はその夢を抱いた?
 ・・・・・・・・・・・
 何故そこで立ち止まった? 立ち止まらなければ、お前の臣下も、娘も、死にはしなかったんだぞ!?」

 説教染みた言葉だ。
 何故途中で立ち止まった。
 何故目的を忘れた。

「夢は叶えるもんだろうがッ――そこで余所見してる間に、他の連中がお前を食い物にしてんだぞ。
 お前の愛した臣民を、娘をぶっ殺して国を滅ぼしたんだぞ。"あの人"に捧げようとした夢を踏みにじったんだぞ!?」
「悔しくないのか?俺は悔しくてたまらねぇ……人様を食い物にして、己の利益に変える愚図共が」


「――夢に向かって走り続けていたアンタを食い物にしたクソ野郎共がッ!!!」


 ダン・マッケーニ・バビロンは心底怒っていた。
 このパージルク・ナズルという女帝を惑わし、目指していた夢から逸らさせた畜生が。
 何故そんなことをする。お前たちは何故この女の足を引っ張ったのだ?
 許せない。絶対に許せない。
 ……だからこそ、バビロンは彼女のために怒るのだ。

「夢を叶えてみせろ、パージルク・ナズル。
 マロン・アベンシス、そして魔大老エストを殺し――臣下の英雄となるのさ。
 そうだ、お前ならばそれが出来る。鋼鉄の意志を持ち、復讐の炎に身をやつしたお前なら今こそ!」

 両手を広げ、歓待するかのようなポーズをとりながら笑う。
 獰猛なその笑みは全てを呑み込む暴食の海竜のように。
 あるいは地を支配する魔竜のように。
 ただの人間であるはずなのに、何処までも高みへと羽ばたいて行ける魔人のように。

「偽善の言葉を囁く奴らを殺せ!
 鋼鉄の決意で逆らう奴らを殺せ!
 徹底的に蹂躙しろ。徹底的に焼き尽くせ!
 鋼の決意と意志を抱き、ただ走り続けさえすれば、お前なら出来るはずだ。何故なら――」

 目は、赫爛と輝いていた。
 パージルク・ナズルを焚きつける――ただ、その内にある復讐の業火を燃え上がらせてゆく。
 ダン・マッケーニ・バビロンとはそういう男だ。そして、彼の持つ異能<デュナミス>はそういうものだ。

「――描いた夢は、必ず叶うんだからよ!!!」

 さあ燃やせ、動力源はあるはずだ。
 想いをくべろ。心をくべろ。血肉をくべろ。
 絆をくべろ。過去をくべろ。想いをくべろ。
 ありとあらゆるその全て、お前の夢のために費やすがいい。
 何故ならお前にはそれが出来るはずだ。ならば俺が後押しをしよう。

 ・・・・・・・・・・
 夢を叶えるためならば、余計なものなど不要だろう?

 夢を謳う男の言葉は、女帝の中の大事な枷を全て――突き崩し、破壊していった。
 そうして作り替えられる。
 外された肉体の枷は、「諦めない限り」強くなり続けるという怪物染みたソレへ。
 外された精神<ココロ>の枷は、――彼女から「立ち止まる」という言葉を取り去って。

 後悔の憎悪を紅蓮へ変え――いざ舞い上がれ、その身その心燃え尽きるまで。
 外された枷は、エステルによって呼び覚まされた憎悪をとめどなく増幅させる。
 己の身が朽ち果てる、その時まで。

>パージルク エステランディア

2ヶ月前 No.661

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/無限廊下/"常山蛇勢"レプティラ】


紡がれた言葉、その言葉は彼女がある意味では最も聞きたくない物、ある意味では最も望んでいた物。口にする必要がない、ニアが無関心にそう語った以上道は示されてしまった。その真意は測れずとも、その意味は嫌でも理解できてしまった。
ああだが、あの表情はずるい。感情のなく、光もない視線。それは何時ものニアであることに変わりはなくて、ただ要件の為に話しかけた先の視線と変わりなくて、その視線一つで彼女の決断を鈍らせるには十分すぎた。
あの時から、ニアは変わってなどいなくて、きっと人間を滅ぼしてしまう事を決断した後で、謂わば切っ掛けさえあればこうなることは必然であったのだろう。だがそれと同時に、関わってしまえば彼女の平穏と言う望みを引き出し後押しもしたのだろう。
だからこそ、彼女の決心は鈍ってしまう。途中で気が狂ったのならばどれだけ手に力が籠められるか、チェルに惑わされたのであればどれだけ言葉を尽くせるか。だが、それが既に形成されていたのであれば残る道は二つ、逃げるか向かうか、それだけでしかない。
逃げればどうなるかなど聞く前に理解したはずなのに、戦わねばどうなるかなど整理したはずなのに、決心をしようと心を動かすたびに思い描かれるあの表情。あのニアと、目の前のニアは同じで、それは決別が必然と証明されるばかりで。

「あ、う……うぅ……私は、私は……」

ニアが放つ退けと言う言葉に、ここに居るものではないという言葉に、どうしようもなく溺れたくなる。逃げれば、楽だろう。戦争の終わりまで逃げ続ければ、犠牲など目を反らし、屍の上にある平穏を与えられ続ければ楽だろう。
戦争に必要だと言われるならば、犠牲も顧みず同朋を死地へと送り込もう、ただ流されるまま、自身が出来る事をやり続けるならばそうなろう。けど、彼女が望んだ平穏はきっとそうじゃない。人間と戦わない必要もないが、滅ぼす必要もない、そう考えていたのに。
求めた判断材料は確かに与えられた、だがそれと同時に与えられた物が余計に彼女を惑わす。でもあの時にニアと関わらなければ、等は決して思えない。関わったからこそ、平穏を望む自分がいて、どうすればいいのかを理解できたから。あの交流を、無駄だとは評したくはなかった。
ニアの語ったことを思い返そうとも糸口はない、侵入者が実行犯の名前を語ることなど出来ず、魔帝軍に干渉した未来人が居たと言われれば否定する材料もない。サシャがやった証拠はあっても、やっていない証拠はなく、仮にその証拠があっても魔帝かサシャしか持ち得ない。
魔帝の考えを彼女が知る術はないが、今までの状況からするに和平を望んでいる様だ。だがニアは魔帝軍が戦争を始めた理由を問う、だがこの状況で漸く分かったが魔帝を動かしていたのは凡そチェルの可能性が高い。
魔帝の座を奪い、人間を滅ぼすニアの誘いに乗ったのならば結論は魔帝とチェルに何らかの関係があり、傀儡になっている状況であったのだろう。止めなかったのではなく、止められなかったのだと思う。
だがそれが今分かったところで何になる、今必要なのはニアを討つ理由、若しくは討たない理由。この状況になった時点で魔帝軍の状況など気にしてなどいられない、どうすればいい、彼女の混乱は深まるばかり。
掛かる侵入者の言葉、決めかねる彼女に業を煮やしたのか、ただ僅かな戦力欲しさにかは分からない。それは明確な答えを表せというもの、ニアが齎す平穏を認められるか否か。容易く決められれば既に決めている、そんな言葉を吐く余裕すらない。
サシャは対照的に信じた侵入者の為に力を貸すといった、そも被害者である以上立ち向かう以外の選択肢はないだろう。侵入者に寄り添う姿は、和平の縮図を表しているようであったが、彼女がそれに気付ける思考の余地はない。

「え、あ……ひぅ、ヒュッ……ヒュッ……」

目元から溢れるは涙、不規則な呼吸と共にぽろぽろと吐き出されるそれは何の解決にもなりはしない。彼女の涙一つでこの場が収まるならば、彼女が悩む必要などないのだから。精神的圧迫、本来ならば気を途絶えさせてもおかしくはないが覚醒された思考がそれを許さない。
決断の前に戦況が動く、ニアが炎壁を吹き荒ぶ風で掻き消す。瞬間消える、仮に戦闘態勢に移っていたとしても見えるかどうかすら怪しい速度のそれを、現状認知できるはずもない。
サシャとレオンハルトと名乗った侵入者の二人にのみ、細剣の貫きと裂きが襲い掛かる。どうせならば、自身も狙いに含まれていればまだ決心はついたろう。だがそんな生易しい事は起こりえない、決断には遅すぎるほどであり、決めねば道は自然と定まろう。
襲い掛かる魂魄すら刻む斬撃、降りかかる分を爆炎にて回避を行いレオンハルトはサシャを庇う。飛び散る鮮血、この場で出会った魔族の為に肉体だけではなく精神までも賭した人間の姿。
―――私は何をやっているんだろうか?
レオンハルトの不屈の炎に照らされ、彼女は漸く現実へと引き戻される。人間が、しかも未来から来た部外者でしかないような存在が魔族の為に身を挺しているのに、魔将軍である自分はただ頭を抱え震えているだけ。
―――私は何をしている?
その場に立つべきは、サシャを守るべきは、魔族の平穏を願うならば、あの場には誰がいなければいけなかったのか分かり切っているだろう。"常山蛇勢"レプティラ、そのはずだろう。
―――私は何をすべきだ?

「……魔族の平穏の為、ならばやるべきことは決まっていました。」

元より、魔族の平穏を願うと定めた彼女であるならばどうすればいいかなど分かり切っていた。ニアが結果的に魔族の平穏を目指していようとも、彼女が目指すそれとは異なっていたのだ。彼女が目指すは、出来る限り犠牲の少ない戦争の終結、それによって齎される平穏。
人間を殺す必要などない、人間を殺すために魔族に犠牲を強いる必要などない、必要なのは犠牲なく終わらせる方法だけ。ならばニアを討たねばならない、この抱く感情は持ち得たまま討たねばなるまい、どれだけ心が痛もうともこれだけは決めねばならない。
そう、彼女だって魔将軍だ。望むことの何が悪い、他も好きなように望み思うがまま動いている、ならば己の望みの為に他者の命を奪って何が悪い。そう思い込む、初めて魔将軍という名を己の為に使おう、この感情を少しでも見えないように。
生きる意味、その命を使う理由、嘗て問われたそれを思い出す。あの時答えた魔族の平穏という答えに変わりはない、だがこの時ばかりはこの為に我が生を使おうと決意する、謀反者ニアを討つために命を賭そうと。

「ニア様、―――いえニア。」

涙を拭い、静かに名を呼ぶ。答えなど期待はしていない、きっとニアも改めて名を呼ぶ意味を理解している。明確な敵対の意志、魂狩り取る存在に恐怖がないといえば嘘になる。だが、これが為さねばならないと見定めたもの。

「私は貴方を討つためにこの生を使いましょう、それが魔族の平穏に繋がると、私がそう、決めました。」

拭った腕をそのまま右目を隠す包帯へ伸ばす、包帯を剥ぐと同時にニアへと駆けだす。外気へ晒される色を失った白き瞳、純白を汚す様に溢れ出す黒き瘴気は右目を中心に渦巻く。
レオンハルトが放つ灼熱の奔流と共に駆ける、既に視界に二人は居らず見つめるはニア唯一人。故に是より巻き起こるは穢れの侵蝕、彼女から前方全ての床と壁が白く泡立つ。生まれ出でるは悍ましき蛆、壁であろうと床であろうと食い破り生まれ出でるその景色は醜悪でしかない。
無論、ニアも例外ではない。この瞳に悪寒を感じ、すぐさま退避しなければその身体を食い破り蛆が湧きだす。即座に命に関わるようなものではないが、蛆の湧いた後の傷からは出血が起こり行動を阻害するだろう。
右目を再び閉じ、更なる追撃として長く伸びた尾の薙ぎ払いを行う。廊下の幅を越す長さのそれは単純な横移動を阻害する、無論ニアへと向かう業火へと触れることになるがニアの速度を僅かにでも抑えるため、焼け落ちたとしても構いはしない。
ニアの速度は僅かに追えるのみ、それを能力でもなく単なる身体能力な以上息切れも望めない。尻尾に当たりさえすれば巻き付く心積もりだが、その程度はお見通しだろう。だから狙うは数による連携、勝る点をさらに優位にしていくしかない。
サシャの守りはレオンハルトへと任せる、サシャを殺すことが目的である以上守るレオンハルトの存在は大きい。本来であれば護りに優れる彼女だが、この時ばかりは攻勢に出る方が得策だと判断する。
故に、伸ばした尾の真意はそこにある。移動を阻害すれば、自然と狙いが己に向くはずだと。これでも魔族、人間よりも頑丈である以上盾になるべきは自分だ。速度に優れるといっても足場が悪ければ反応できる程度にはなるはずだ、そう思いたい。
感情は揺れど、既に道は違えた。ならばその最期を背負う事こそが使命だと彼女は定めた、自らの身に似合わぬ魔族の平穏という大義。例えこれで散ろうともニアだけは連れて行く、彼女が描いた平穏にニアの場所は消えてしまったのだから、どのような状況であってもニアだけは討たなければならない。
僅かに残る涙は、彼女の想いを映していた。

>>ニア サシャ レオンハルト・ローゼンクランツ

2ヶ月前 No.662

黒闇の騎士 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限回廊/ローウェン・アルベリウス】

 混沌の齎す狂気の甘美に囚われた彼女を正気へと戻す事は叶わない。斯様な言葉を投げ付けた所で、心髄はおろか心自体に届かぬ以上、相対する二人の騎士は彼女に死を与える事を強いられるのだ。命を奪わねば、命を奪われる。それが戦いに定められた絶対的な法則。どれ程辛くても、握る刃に殺意を込めて、死力を尽くして立ち向かわねばならない。
 偽りの力に溺れた同胞を手に掛ける、業。その悉くを受け入れ、背負い続ける覚悟を、黒闇の騎士は既に決めていた。堕ちた魔将軍に引導を渡し、志半ばで折れた勇者への弔いとする。いずれ誰かが背負わねばならないのであれば、率先して自らがその務めを果たすのである。

「理解などしない」

 手数を重視し単発での威力が低くなった事と、連続して似た様な攻撃が続いた事が仇となったか、両者の繰り出す攻撃の全ては一切の成果を挙げる事無く、敵に手番を与えてしまう事になる。蒼白の光輝を宿していた筈の聖剣、今は邪悪なる心に中てられ漆黒の魔剣。フロレの剣に纏わる闇の闘気が穿たれ、更に彼女は心臓の鼓動を一瞬にして停止させる魔法を肉薄と同時に撃ち込んで来る。
 人類の勝利など夢でしかない。そう断言するかの如くに、圧倒的な力量差を見せ付ける彼女だが、対するローウェンもまたそれに負けじと全力を尽くして応じる。前方へと展開する闇の障壁で割れるまでの一瞬の時間を稼ぎ、その間に軽やかな跳躍からの宙返りで迫る魔の手から逃れる。そして着地と共に、再び大地を蹴って今度は此方が肉薄して行き。

「下らぬ妄言に付き合う頭は持ち合わせていないからな」

 眼前へと躍り出る直前、魔力で背負った槍を浮かせ、更には両手に握った双刃をも浮かせて、其々を連結させて一つの形へと変えて行く。合体を果たした三つの武器が生み出すのは、肉厚で重厚な大剣。彼の揮う武器は、戦い方に応じてその姿を変貌させて行くのだ。
 暗黒の輝きを刀身に宿させ、豪快に振り下ろす剛撃の一閃。大地に罅を入れる程の重き一撃で、今度こそ彼女に傷を負わせて見せんとする。非力な人間が、魔族に打ち勝てぬと言う道理など無い事を証明するが為に。

>フロレ ゲイル

2ヶ月前 No.663

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大通り(表通り)/オムニス・デューザ】


半透明の流星雨、それが命を容易く奪うものでさえなければ美しいといった感想も出てこよう。千に届くほどの巨腕による拳の嵐、この場に残る青年三人全てに等しく降り注ぐ。
反動で死に体のまま避ける青年、鋼鉄の馬を走らせ合間を駆け抜ける青年、圧倒的な弾幕を以って迎撃する青年。三者三様の手段で対処していく、特に機械的な青年は硬度が上昇しているのにも拘らず破壊を目論み、それに成功している。
されど嵐はまだ止まぬ、拳は絶えず降り注ぎ彼女へ害を成すものを滅ぼさんと魔族は奮戦する。だが、その嵐の合間を抜けて機械的な青年が吶喊する。その行き先は、彼女だ。

『…やらせん!』

周囲の腕を集め、防御壁を形成する。されど放たれる弾幕で削られ、速度に形勢が追い付かない。僅かな間で腕を通り抜け、機械的な青年は彼女を守る最後の腕へと突撃する。
瞬間、魔族と彼女の「契約」は切れた。魔力的な繋がりを以って彼女へと与えられていた視力、聴力、声は魔族が再契約を行わなければ二度と得ることはない。そう、それだけである。魔族の力は衰えず、依然健在している。
魔族と彼女の関係は契約のみに非ず、彼女が魔族を神と信仰する限り超然的な力を与え続けるもの。そこに魔力は介さず、言うなれば人間の意志の力、揺ぎ無き信仰心が生み出す純白の願い、魔族が得ていた力はそういうものだ。
だから、腕の守りを貫き彼女へと接触しようとも何が起きる訳ではない。ただ、彼女を守っていた者との繋がりを強制的に剥がすだけであり、そうなれば魔族の反応も当然遅れよう。そもそもだ、非力で己で動くことができない女性へと急加速した金属の塊が衝突すればどうなるか。

『オムニス!?オムニスゥ!!!』

そんなもの、強烈な衝撃を伴いながら吹き飛ぶに決まっているだろう?魔族の腕から弾かれるように飛び出す彼女は宙へと放り出される、全身に突然な痛みを感じながら浮遊感を感じる彼女。それを救わんと腕を伸ばす魔族、だが間が悪かったのだ。
異空間へ繋がる様な洞穴を空中に投影しながら放たれる鋭い蹴り、それが魔族に直撃する。先までの肉体であれば容易く蹴りが貫いていただろう、だがこの肉体はより堅牢になってしまっている。そうなれば貫くのではなく、威力のままに押し出されるのが道理。
その巨躯を大きく揺らし、魔族はその身体を傾け地へと伏せる。その腕は身体に引っ張られるように空を掴み、その腕の中に彼女はいない。この魔族の巨躯から放り出され、地へと叩きつけられればどうなるかは容易い。
そうだとも、血の海に沈むようにその白き体を横たわらせる彼女はいた。悶える余裕もない、ただ地に伏せているのみ。四肢はあらぬ方向に曲がり、胸部からは白い何かが顔を覗かせている。そして、その身体を己から溢れ出る深紅で染めていた。

―――――

ああ、痛いです。久しぶりに、私が受けるべき痛みを思い出しました。けれど、この痛みも徐々に薄れてしまいます。ですがこうして懺悔する時間を与えてくださった神様には感謝しかありません。……ええ、私等を気にかけてくださった方ではない、本当の神様です。
分かっていました、今地に伏せている私に纏わりつくのはこの場にいた人間の成れ果てだと。神様は、私の為にこうしたのでしょう。それならばやはり、私は生きたいと願うべきでなかった、そういう事なのでしょう。
異端の容姿、それを魔族とされ迫害を受けました。痛かったです、苦しかったです、気持ち悪かったです。でも、それで村の人々は不安を払拭できていました、ならそれでいいのだと思いました。
光を、音を、香りを、味を、腕を、足を、あらゆるものを奪われようとも、私が犠牲になることで人々から不安が除かれるならばそれで良かったのです。何れ死んでしまっても、私の命で誰かが少しでも幸せになれるのであれば良かったのです。
でも、あの夜生きたいと願ってしまいました。多くの人々を幸せにしたいと、人間と魔族の和平を望みたいと、そう思ったことに変わりはありません。ですが、生きたいとも願ってしまいました。
私にとって神様は二人いるのです、願うべき神様と、私を救ってくださったあの方。ですが、私は願うべき方を間違えてしまったのです。私を救ってくださった方に願うのは、私の代わりに人々を幸せにしてくださいと、そう願うべきでした。
でも浅ましく、生きたいと願ってしまったから、この場にいた方は殺されてしまいました。ええ、全て私が悪いのです。私が生を望まなければ、この王都の方々は幸せかどうかは分かりませんが、生きていることは出来ていたのですから。
こうして生きても、誰一人幸せになど出来ませんでした。それよりも不幸にしてしまった方が多いでしょう、ならばこの結末は当然です。幸せを邪魔するものは消える物、私は幸せにしたいと謳いながら不幸を振りまいていただけでしょう。
あの村で、不安の捌け口になっていれば良かったのでしょう。人知れず死する程度の命だったのです、であればここまでの生は高望み故の幻。そうであれば、誰も不幸にはしなかったのですが、もう遅いでしょう。分不相応な願いを抱いた者の末路です。
ああ、でも、もしもまだ願いが叶うならば、どうか私の死が誰かの幸せになれば―――

―――――

魔族の身体から粒子が天へと昇りゆく、彼女から与えられていた揺るぐはずのない祈りが途絶えた証拠であり、それが意味するのは言うまでもない。魔族は消えゆく力に未練なく、ただ彼女へと駆けよる。
動かぬ、冷え行く身体を抱える。僅かな反応も示さない、呼吸で動く筈の胸部の動きもない。ああなのに、苦しんだはずなのに、いつものように微笑んで死ねるのかと。優しく、離してしまわぬようにその小さな身体を抱く。

『オム、ニス……ああ、そう、か。守れなかったのか、……ああ、そうか。』

涙を流せぬ身体、だが心は確かに彼女の死を哀しんでいた。震える手で、抱き寄せる。末端から徐々に消えゆく身体を眺めながら、ただ喪失感を受け止め続ける。幸せにしたいと、そう思った彼女を守ることはできなかった。
酷い仕打ちを受け続けた彼女を、少しでも心からの笑顔を見せて欲しかった、少しでも彼女が幸せに暮らせることを望んだ。その為ならば邪魔なものも排除し続けようと、どれだけ犠牲を強いてでも幸せにしようとそう思っていたのに。
動かぬ彼女をそっと撫でる、反応はもうない。死してしまった彼女を想う人間など居るはずがない、死んでしまえば本当に彼女は一人になってしまう。それは、させたくはない。
彼女を抱き、この場から離れる。追撃を受けるようならばそれで構わない、どうせ長くは持たぬ命。ここで散ろうとも構わない、彼女と共に居るならばそれでいいと。
攻撃を受け続けた身体は彼女からの祈りが途絶えれば耐えきれないだろう、その前に彼女を人間のやり方で弔いたいとそう思った。彼女は間違いなく人間であったと、その証の為に。
出来るだけ、景色の良い場所へと、魔族は歩みを進める。せめて、見えなかった美しい景色の下に。ただ、そう思いながら。

【オムニス・デューザ(Chrono Crisis)@魔族から落下し、地面へと打ち付けられる。自身の生に意味などないと、生きたいと願った事を懺悔しながら息を引き取る。】

>>仮面ライダービルド&仮面ライダークローズチャージ 橋川 清太郎


【御相手ありがとうございました、残った魔族の処遇はお任せします。】

2ヶ月前 No.664

王国の騎士 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/兵舎→魔大将の間/アーケオルニ・ランドグリーズ】

"龍炎公"ヴァンレッドとの壮絶な決闘から数時間。鎧と左腕を失うという大打撃を受け、その上全身に火傷を負ったアーケオルニは、少し離れた場所で連盟所属の救護班による手当てを受けていた。
炭になってしまった左腕の残骸を取り払い、傷口を覆い隠し、全身の火傷には薬品が塗布されていく。環境が環境だけに応急処置が精一杯であり、細心の注意を払っているとはいえ麻酔もままならないそれは、年端もいかない少女には耐え難い激痛を孕んだものである。
焦点の定まらない目で空(くう)を見つめ、無言のまま涙を流すアーケオルニ。救護士達はそれが痛みによるものだと捉え、申し訳なさそうな顔をしていたが、実際のところはまるで違う。
あれから耳にした噂の数々…魔族は思想の違いを原因に勢力が二分され、一方は魔族が覇権を握るため、もう一方は人類と共存とするために旗を揚げたのだという。
これを耳にしたとき、アーケオルニは自分が行き場を失ったことを、否が応にも認めなければならなかった。戦いが長引く中で劣勢に立たされ、由緒正しき騎士団ですら戦意を失いつつあるのだ。魔族と和解できる道が拓けたのなら、誰だってそちらへ進むに決まっている。
そんな中で打倒魔族を唱え、剣を手に魔族を殺し続けるなど、到底できるはずがない。そんなことをしていたら、今度は自分が人類の敵になってしまうではないか。
この現実は、生まれてから18年間、魔族狩りだけを叩き込まれて育ってきた彼女にとって、死も同然のものであった。自分の存在意義がなくなる。誰も自分を必要としなくなる。

―――お前は魔族を殺すために存在している

そう刷り込まれて育ってきたアーケオルニは、どうしたらよいのかわからなかった。目を横へやり、愛用の大剣と、龍炎公が置いていった鎧を眺める。まるで自分が何をすべきか、その答えを乞うように。
当然物言わぬ鋼は何も教えてなどくれない。しかし、騎士が身に付ける品々を見たことで、彼女は自分がなんであるかを思い出すことができた。

自分は竜狩りである以前に、由緒正しき王国騎士団の一員。国を、民を、平和を守る者達の一員なのだ。何を迷う必要があろうか。何を悩む必要があろうか。
長きに渡る戦いを終わらせ、泥沼に沈みつつある王国を救う手立てがあるのなら、その道を選ぶことを恥じるな。魔族を憎むより、人類を愛せ。"守る"ために剣を振るう時は、今を置いて他にない。

やっと納得のいく答えに辿り着けた王国の騎士は、痛みと疲労を押し殺して立ち上がった。そして、救護士達の制止する声に耳も貸さず、自分の使命を果たすために走り出したのだった。



再び魔帝城に足を踏み入れる。先程来た時と雰囲気が異なって感じられるのは、決して気のせいではないはず。魔族も必死に動いているのだ。見つけた答え、理想の未来を目指して。
目指すは魔大将の間。真に討つべき敵はここにいる。主を欺き、己が野望のために魂を燃やす悪魔。叛逆者。そして…先程までの自分。立場こそ違えど、敵の殲滅に心血を注ぐ点では全く同じ。
この戦いは、新たな人生への、新たな時代への第一歩。そして"竜狩りのアーケオルニ"としての最後の戦い。成し遂げなければなるまい。民の命を背負う一人として。

「龍炎公…いや、ヴァンレッド。お前たちが何をしようとしているのかは知っている。

アタシにも協力させてほしい。やっとわかったんだ…自分が何をすべきなのか」

そうして辿り着いた最後の戦場。そこについ先刻刃を交えたばかりの龍炎公がいるのに気付き、驚きの声を上げるが、すぐに彼の下へと歩み寄って意志を表明する。
真に平和な世の中のため、魔族達と手を取り合って生きていく。魔族を狩るためでなく、人間を救うために生きる。その決して揺るぎはしない決意と共に、残った右腕で『アトロシス』を握り締め、魔大将・チェルへ躍りかかる。
片腕を失ったことで十分に剣の重さを制御できないというハンディキャップは、得意の体術と力の作用を活かす技術でどうとでもなる。そう言わんばかりの衰えないフットワークで前へ飛び出し、剣を引きずりながら猛突進。
前方へ驀進する力を乗せて繰り出されるは、なんとも豪快な薙ぎ払い。さらにその勢いを活かして一回転、右腕だけとは思えない破壊力の大回転斬り。

心なしか輝いて見える表情こそ、彼女がこの選択に満足している何よりの証拠だろう。

>>"災いを呼ぶ黒猫"チェル、"龍炎公"ヴァンレッド

2ヶ月前 No.665

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【移動中→マロニス城/厨房/ミコルナ】


ぱたぱたと忙しなく翼を羽ばたかせながら、昏倒した騎士達の頭上を駆けていく。王都の異変に気付いて持ち場を離れ、レーヴの様子を確かめに来たのだ。珍しく表情には焦りが浮かんでおり、ふりふりと振られる尻尾は下へと向いている。
彼女は宙を飛べるため被害には合わなかったが、王都の様子は酷い物であった。暴力、暴言、あらゆる悪感情が街を支配していた。もしも、レーヴがそれに巻き込まれていたら大変だと、一目散に向かって来ているのであった。
そしていざマロニス城へ戻って見れば騎士達が何者かにやられている、これはレーヴも危ないかもしれないと翼をさらにパタパタとさせながら城内を探し回る。そんなこんなで出撃前に出会った厨房にまで戻ってきたのだが……

「レーヴ!……と、お姉さん?でも、お兄さん?んむむー?」

出撃前と変わらず厨房に居たレーヴを発見し、駆け寄るが厨房を漁っているお姉さんかお兄さんか彼女にとっては判別がつかない人々がいる。本来は侵入者であると分かるのだが、性別の壁を超越した存在に初めて出会った彼女は疑問が勝ってしまった。
レーヴへと近付きながら興味津々に観察を始める、女性の服を着た男性という生まれて初めて目にするものをじっくりと観察する。目を輝かせて、何だろーとか面白ーいと小さな歓声を上げている。
その中でも他の性別超越生命体とは一線を画す存在がいた、高貴な髪型、綺麗な肌、可愛らしいドレス。他の人物がどう受け取るかは定かではないが、少なくとも彼女にとっては綺麗な人、と言った印象を受けた。
最も肌に関しては彼女は天然物であり、負けてなどいない。可愛らしいピンク色のドレスも彼女も似たような物は持っている、どちらが似合うかと問われれば個人の感性故多くは語らない、だが彼女の可愛らしさに磨きがかかるのは間違いないだろう。

「……レーヴ、あの人綺麗だねー。でも、お姉さんかお兄さんか分かんないよー。」

そっと、レーヴの耳へと尋ねる。分からない事はレーヴに聞けば大体教えてくれる、怒った時も何で駄目なのかを教えてくれるし彼女にとっては興味を満たすこと、それにレーヴの知識が付加されるのだ。理解は喜びである。
それはともかくとして未だに彼女は弓すら構えていない、そもそもあの性別超越者の集団を敵だと認識していない。王都でたまに見かける芸を見せる人たちの一種とさえ思っている、だから楽し気にはしゃいでいるのだ。
小さな子供、それと彼女は変わりない。分からない事に興味を示し、飽きたら別の興味へと移り行く。そんな最中、偶々お気に入りとなったレーヴが良く構ってくれているのがいい方向へ導いているのだろう。
楽し気に揺れる尻尾、喜色に染まる笑顔。ここに来るまでの心配は何処へやら、レーヴを見つけて安心して、面白い集団を発見してしまえばこの通りだ。うきうきと略奪を眺めている彼女を止めるのは彼しかいない。

>>レーヴ・カストリス ガドン・バルザック


【お待たせして申し訳ありません、乱入させて頂きます……】

2ヶ月前 No.666

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【マロニス城/ホール/城前/ダグラス・マクファーデン】

 先手必勝、瞬息の間に寸分の狂いなく、烈炎の魔弾を怒涛の激流の如くに撃ち込む連弾の猛襲。されど、対敵する威容が放つ威圧の程は凄まじく、猛者の予感を厭が応にも掻き立てる。単独で城攻めを敢行する、常軌を逸した行動。其の行為が無謀では無いと言うのならば、それは相応たる実力を持つ難敵の証明に他ならず。
 旋転する刃が生み出す蒼白の力場が、飛襲する弾丸の悉くを弾き落とした事実を前に、魔弾使いは戦いに臨む覚悟を新たにする。生半可な攻め立てでは、彼の防壁を突破する事は不可能。原理からして魔銃が引き出せる力には限界があり、その限度も純粋な魔術行使に比べると天と地の差がある。故に、この勝負を制するのであれば、魔弾使いとしての戦い方を放棄する必要があるのだ。

「どうとでも言え。昔も今も、俺は果たすべき大義の為に戦うだけだ」

 組織に対する叛逆行為を働いた事に、一切の罪悪は無い。当然だ、組織に加担していたのは単純にその時点での利害が一致していたと言うだけで、その利害関係を結ぶ価値も消失したとなれば、手を切るのは必至の流れと言える。
 とはいえ、敵方も事柄の真相には微塵も興味は無く、ダグラスもまた無駄な反論に時間を割かない。この戦いに於ける意義とは、要するに殺すか殺されるかの単純な話でしかないのだから。

「大した自信だ。だが、その踏み台に足元を掬われる事となる可能性は考慮しておけ」

 対面する敵が撃ち出すは、進路上に存在する物全てを圧潰させる重力球。それに伴う呪詛の存在も加味して、直に喰らえばどうなるかは想像に難くはない。万が一、重力に耐え抜いたとしても、身体を蝕む呪詛が力を封じ、今後の命運を絶たれる事になるだろう。それだけは、絶対に在ってはならない顛末だ。
 風を全身に纏って背後の空中へと逃げ込み、重力球を退けると、続く形で襲来するは突出する岩石。それが接触を果たすよりも前に、直角を描く様な軌道で更なる高度へと退避し、眼下の敵を見下ろす。

「――はぁぁぁッ!」

 自らの戦意を高める掛け声と共に、急降下を開始したダグラスは手始めの一撃に、エクスデスを目掛けて左手の魔刃を投擲。そのまま回転して飛襲する刃を上回る速度で敵の背後へと回り込むと、今度は右手に魔刃を形成してすれ違い様に斬撃を放つ。そして直進した勢いを利用して態勢を整え、敵の正面を見据えると、光と闇が入り混じる属性弾を乱射して行く。
 ユーフォリアが放つ属性弾に比べれば威力は劣る分、数では勝る。両者が織り成す連携を前に、果たして暗黒の魔導士はどう出るか――

>エクスデス ユーフォリア・インテグラーレ

2ヶ月前 No.667

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/無限廊下/サシャ】

やっていない、と言い張るのは簡単だ。そんなことは誰にだって出来る。だからこそ、こういう状況においては、証拠こそが最大の武器となり得る。
サシャの潔白を証明出来る人間はいない。魔帝の潔白を証明出来る人間もいない。そんな中で、二人が無実を訴えたところで、一体誰が信じるというのか。
ニアは狡猾であった。はじめからあらゆる観点で隙を突かれることを想定し、ここにやって来た時点では、おおよそ反論の余地はない状態に仕上げてきた。
もはや言われもない罪を消すことは不可能かも知れない。だが、生きるために戦うことは出来る。進退窮まったサシャが選んだのは、レオンハルトと共闘し、ニアを打ち倒すことであった。

「そんなの、直接聞いてみないと分かんないよ! あなたは魔帝様から直接、私達魔族が嫌いだとか、そういうことを言われたの? 第一、人間と仲良くするからって、魔族を見捨てることには結びつかないでしょう!?」

尊敬すべき魔帝が何を思っているのか、それはサシャには分からない。同じことは、ニアにもいえるはず。彼女が本当の目的を話したことは、これまでになかったはずだ。
あたかも相手は全てを悟っているかのような口振りだが、確証を得られる言葉を実際に耳にしたのか? とサシャは問い掛ける。曖昧な言葉を都合のいいように解釈し、利用するのは簡単だろう。
それこそ、魔帝が魔族を見捨てようとしているという証拠はない。人間との和平が、魔族を蔑ろにするという思考へ直結することに、彼女は大きな疑問を抱いていた。

隣から、嗚咽が聞こえてくる。魔将軍レプティラが、重圧に押し潰され、涙を流している。なんと、なんと痛々しい姿だろうか。サシャはそれを直視することが出来ない。
背後から襲い掛かったニアの一撃へサシャが反応するよりも早く、両者の間にレオンハルトが割り込んでいた。肉体と精神を同時に切り裂く刃が、彼の身体を蝕んでいく。

「駄目だよレオン! あたしは大丈夫だから! あたしレオンが死んじゃやだよ!」

やっと出会えた人間。自分のことを信じてくれた人間。それを、こんなところで失いたくはない。本心からのサシャの叫びが、無限廊下にこだました。
守られてばかりいる訳にはいかない。自分の力でなんとかしなければ。レプティラも戦う決意を固めた。もう恐れるものなんて、何もない。三人の力を合わせれば、きっと―――

「うにゃあーっ!」

レオンハルトが放った業火の後を追うようにして、駆け出すサシャ。亜人特有の優れた身体能力を以て、彼女は一瞬の内にニアへと肉薄し、両手の爪を振るう。
サシャの持つ光の魔力が上乗せされた一撃は、敵に斬撃のダメージを与えると同時に、視界もくらませることが出来る優れもの。しかし、圧倒的に格上の魔将軍相手に、それが通用するとは思えない。
よって、この攻撃はどちらかというと、レオンハルトやレプティラの補助という側面が強い。だが、それでいいのだ。誰にだって、自分の役割というものがある。とどめを刺すのは、より威力の高い攻撃を持つ二人に任せるのが最善なのだから。

>"塵殺剣"のニア、レオンハルト・ローゼンクランツ、"常山蛇勢"レプティラ

2ヶ月前 No.668

Charlotte @kirieru ★Android=ryLO8WYMEG

【魔帝城/舞踏場/リュドミラ】

超重力に捕らわれ圧殺の危機に瀕したシフォン。
しかし水魔法の高圧水流によって重力球の落下をずらされた挙げ句、重力場から脱出させられてしまう。
それに続いてシフォンが放った光属性の魔法は光輝く流星群となりリュドミラに降り注ぐ。

「甘いわね!光には闇よ!!」

光の流星群が炸裂する瞬間にリュドミラは闇属性の魔力を身体に結集させそれを一気に放出させる。
衝撃波となった闇の波動は流星群を相殺するが完全には防ぎきれない。
だが反撃に転ずる隙は出来た。
リュドミラはシフォンの背後に回り再び魔法陣を発生させるとシフォンの足下から黒い無数の鎖が飛び出しシフォンの四肢を拘束させる。
文字通り手も足も出せなくなったシフォンにリュドミラは勝利を確信した笑みを浮かべゆっくりと近づく。
手には赤黒く波打った刀身のフランベルジュが握られそれをシフォンの眼前に掲げる。

「どう?体の自由を奪われた感想は?これからアンタをゆっくりと切り刻んであげる......」

邪悪な笑顔をシフォンに見せるとフランベルジュを彼女に降り下ろすのだった。


>>シフォン

2ヶ月前 No.669

力への誘い @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/無限回廊/フロレ・ゾンダーランド】

矮小な人間とて、そう簡単にやられてくれる訳ではないようだ。ゲイルへと放たれた剣閃は持ち前の軽やかな動きを以て回避され、ローウェンへと撃ち込んだ魔法も跳躍によって躱された。
名ばかりの騎士とはいえ、伊達に訓練を積んでいる訳ではないか。圧倒的な実力差が埋まることはないだろうが、少しは骨のある連中と認めてやってもいいだろう。
しかし、最終的に魔族が勝利する運命が変わることはないため、相変わらずフロレは余裕の表情だ。まるで彼らをじっくりと甚振り、殺す過程を楽しんでいるかのようである。
それにしても何故、ゲイルは悲しそうな表情をしているのだろうか。戦いとは常に残酷なもの。敵に対して同情する必要など、これっぽっちも存在しないというのに。
分からない、心底分からない。これが人間だというのならば、自分は魔族となって正解であった。命のやり取りをする場面になって要らぬ感情に流されるなど、弱き者であると自ら象徴しているようではないか。

「何を言っているのか分かりませんね……力で押さえ付ける政治が失敗しているのではありません。失敗したのは、上に立つ者の力が足りなかっただけのこと。この世において最も重要なものは、力。力こそあれば、全てを制することが出来るのですよ?」

単純な話だ。恐怖政治が、絶対王政が崩壊する際に起きるものは革命。革命が何故起きるのかと問われれば、王たる者の力が衰え、民衆がそれを打倒する機会を得ているからだ。
つまり、力で押さえ込んでいる限り、彼らは歯向かうことすらも出来ないのである。仮に反乱が起きたとしても、それを平定するのは容易いこととなるだろう。
所詮、この世の全てのバランスは力によって保たれている。より強き者が弱き者を従える。世界中のどの国を見渡したとしても、その構図は同じであるといえよう。

「下らぬ妄言に付き合わされているのはこちらですよ。何故、たった一つの事実を認めようとしないのです?」

この世の真理を教えてやったというのに、それを妄言扱いされるとは実に心外だ。まあ、人間の頭では理解出来ないということか。ならば、仕方あるまい。
彼らは極力争いを避けようとする。力を持たぬが故に。にも関わらず、一度戦争が始まれば徹底的に相手を蹂躙するまで止まらない。優勢に立てば、尚更のこと。
ああ、なんと矛盾しているのだろう。最初から和平を望むのであれば、そういえば済む話であるのに。結局のところ、人間も、どこかで他人の上に立つ機会を伺っているのだ。
魔族が憎いだろう? 人間に協力する少数派を受け入れたつもりになって、心のどこかで蔑んでいたのだろう? フロレの目が、二人へとそう語り掛けてくる。力で魔族(よわきもの)を押さえ付けていたのは、お前達も同じではないか、と。

ゲイルが反撃に仕掛けてきたのは、先程と同じように速度を活かした連続攻撃。ただし、今度は死角と頭上を利用している辺り、同じ轍を踏むつもりはないようだ。
だが、無意味。フロレが剣を地面に突き刺すと同時に出現した闇の防御が、彼の斬撃と真空波を遮断し、無力化する。力がないから手数に頼るのだろうが、そんな子供騙しなど通用しない。
続くローウェンの威力を重視した攻撃も同様だ。魔族に打ち勝つには、何もかもが足らなすぎる。人間の限界点など、たかが知れている。大地を割った? そんなもの、魔族にとってはごく有り触れたものではないか。

未だ、フロレは無傷。俊敏な動きで二人を正面に捉えられる位置へと移動した彼女は、その場から雷撃のように迸る漆黒の魔力を纏わせた剣を力強く振るう。
すると、魔力が剣から解き放たれ、暴風の如く荒れ狂いながらゲイルとローウェンを飲み込まんと襲い掛かっていく。激しい振動によって、無限回廊の壁が軋む音が聞こえた。これが、真の力というものだ。人間では到底辿り着けぬ領域の恐怖を、とくと味わうがいい。

>ゲイル・ベネルド、ローウェン・アルベリウス

2ヶ月前 No.670

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/舞踏場/シフォン・ヴァンディール】

圧殺の危機を間一髪逃れたシフォン。しかしその身体は重力の負荷によって蝕まれており、激しい動きなど以ての外という状況に追い込まれてしまう。
不幸中の幸いと言えるのは、元よりどっしり構えて魔法で対処する戦闘スタイルだったこと。もし体術からのカウンターに重きを置くようなスタイルだったとしたら、持ち味を根こそぎ持っていかれるも甚だしい。
反撃の爆破魔法もほとんど相殺されてしまい、更なる苦難が彼女に襲い掛かる。それは足元に描かれた魔法陣から飛び出す鎖。敵を縛り付け、動きを封じ込めんとする軛。
普段の彼女なら素早く足元を凍らせるなどして防げただろうが、一手喰らっている状況下ではそうもいかない。咄嗟の回避ができるでもなく、相手の意のままに四肢を拘束され、自由を奪われてしまう。
この役物を引きちぎる力など、魔法を抜きにすればか弱い女性のシフォンにあるはずもない。チャンスから一転、絶体絶命の危機。禍々しく彩られた刃が眼前に迫り、追い詰められた獲物を今にも切り刻まんと掲げられる。
静かに目を瞑って下を向くシフォン。最早万策尽きたか、ここで終わってしまうのか。

「…!」

否。カッと見開かれる目、おっとりとした顔立ちに似合わない鬼気迫るような表情。同時に二人の間に割ってはいるようにして、分厚く高出力の水膜が展開され、シフォン目掛けて振り下ろされた刃を右へ受け流していく。
さらに狙いが胴体から外れたところで水膜を消滅させ、右腕を精一杯の力で身体への方へ引き寄せる。そう、彼女の目的は、狙いの逸れた凶刃を鎖に命中させること。
まるで諦めたかのような様子でいたのは、一点集中で危機を凌ぐため、無駄な抵抗に力を割かないようにしていたというわけだ。溜めた力を惜しみなくぶつけ、相手の攻撃すらも自身の四肢の解放に利用する。
そしてその目論見は見事当たった。切っ先が太ももを切り裂き鮮血が噴き出したが、胴体を切り裂かれるという最悪の事態は回避できた。加えてに右腕を拘束していた鎖が断ち切られ、一か所ではあるものの自由を取り戻す。
すかさず相手の視界を塞ぐために低火力だが広範囲の火炎魔法を乱発し、その隙に火炎魔法の熱で以て残りの鎖も焼き溶かす。ここにピンチからの脱出は成功し、再びシフォンがターンを取り返すこととなった。

「ライトニングヴォルテックスッ!」

満を持して発動される風魔法。その後押しを受けることで、生身の彼女では成し得ない超高速移動を実現する。向かった先はリュドミラとは正反対であったが、規格外のスピードによって弾かれた空間が、元に戻ろうとすることで竜巻も同然の烈風を巻き起こす。
更にその中に雷魔法を叩き込むことで、竜巻は天変地異も同然の破壊力を孕み、ますます膨れ上がっていく。渦を成す烈風に敵を撃ち滅ぼす雷電…この二つが交じり合うことで未曽有の力を生み出し、かつ発動者であるシフォンは敵から離れた位置へと非難することが出来る。それこそが、様々な属性魔法を操れる彼女だからこそ成し得る奥義、『ライトニングヴォルテックス』。
命の危機に瀕したことで引き出された力が、更にその威力を高めている。魔将軍の運命や如何に…

>>"災禍龍姫"のリュドミラ

2ヶ月前 No.671

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【無限廊下/ニア】

「ほう」

 動きが早い。
 単純な速度差においてこの場の誰よりも隔絶する塵殺剣であるが、
 本命として狙った炎獅子の対応は相応に素早い。戦闘経験の是非というよりは、恐らく洞察力の賜物だろう。狙いを付けられたのが自分だと判断する速度が速い。思考の余計なプロセスを挟まず、反射神経の動き一つで導き出された最適解が細剣を阻む。
 彼女の剣は魔法により成立するものではない。前提がそうである以上、一つ一つの刃の威力は急所でも捉えぬ限りは一撃必殺になり得ない。元より細剣とは切断・打撃には向かず、何方かと言えば護身用という性格の方が強い武器だ。つまるところ急所さえ狙われないことには、一撃一撃が即死に繋がるような膂力もない以上、多少は狙いの矛先が掴めるということになる。

 ………であるが、しかし。彼女の剣は、そもそもからして防御という行動が成立するものではない。
  、  、    ・・
 斬れば必ず何処かを殺す。
 肉体を穿てずともその魂魄を、魂魄を削れずともその気勢を、彼女の剣は死を運ぶ。
 切り裂いたものを終着点に必ず近づける、それが宣告者たちの技巧だ。故に―――


「確かに“外れ”だが、目敏い」
「賢しさを感じるほどに、おまえは目敏い」


 そこで、“塵殺剣”の機動力という一点が猛威を振るう。
 あらゆる戦いの場において、速さとは全ての要素に直結すると言っても過言ではないからだ。
 当ててしまえば確実に削れる術を、常軌を逸した剣速と技で以て取り回す。
 一騎打ちで対峙するならば、まず間違いなく勝ち目はない。こと魔将軍の中でも、彼の“塵殺剣”は誰よりも単騎同士の打合いに長けた手合いだ。その特性は多人数においても、陣形を成立させないという性質に変じて敵手を襲う。

 その闘法あってこその“塵殺剣”だ。
 魔将軍の誰よりも、剣を振るう一点にしか秀でない彼女は手札に欠けるが。
 魔将軍の誰よりも、剣を振るう一点だけを極めた彼女はなにかを“殺す”術において頂点に立つ。

 それを前にして気勢を失わぬ炎獅子の気高さは正しく名の通りか。
 ことこの三者の中で戦い慣れしているのは間違いなくこの男であるし、必要でもないことを射貫くのもこの男だ。賢しさを感じるほどに聡く、煩わしさを感じるほどに強く、羨ましさを覚えるほどに気高く、殺意を覚えるほどに間が悪い。
 何故ならこの男は揺るがない。真実がどうのこうのと、まやかしと虚言では道を誤らない。
 此方も同じことではあるが、だからこそ巡り合わせの悪さを感じずには居られない―――続く炎は奔流、点ではなく面を取る攻撃はこれまた正解。速いならば逃げ道を塞げば良い、一手動く間に敵が三手動くなら、三手では挽回できないほどの詰みを作ればいい。なるほど定石通り、欠けの無い戦術であるし、割り込んで来たサシャの牽制も相まって一気に反撃の場が完成した。


「そうだな、知らない。だから、それをわたし以外の前で言ってみるが良い」

「友を殺された者、種の本能として相容れない者、ヒトと魔族、問わず全てだ。
 一度ついた憎しみは薄れるだろうが、薄れるだけだ」


 ………もちろん、完成しただけだ。


「あの女が魔帝に座する前より。そして、あの女が一度でも“戦争”を選んだ時点で決まっている。
 おまえの理屈は駄々を捏ねた赤子のそれに過ぎない。あの女には、情がどうあれ責務がある」

「長としての責務、歯車の中点としての役割だ。 それを今引き返す? ―――ならば、もう一度言う。
 それを積み上げた屍全ての前で言ってみるがいい。おまえと魔帝は、此処に辿り着くまでの全ての屍を無価値にした」


 踏み抜いた地面と合わせて右方へと跳躍、輝く黒猫の爪と吹き荒れる炎の奔流から身を躱す。
 単純な身体動作だけでも、凡そ音の域もかくやに達する“塵殺剣”は衝撃波じみたものを伴った移動となる。炎の奔流が風に煽られて範囲を想定より僅かに変え、点狙いの爪撃は本人の想定した通り命中はしない。縦軸広域を覆い尽くす炎は横方向への移動でどうとでもなるというわけだ。その―――はず、だが。
 その視界が捉えたもの、
 その肉体が感じたもの、その脅威の根本が“それ以外”であることをまずニアは感じ取り―――。


「………そうか」



 それが蛇の尾であることを理解したから、彼女は静かにそう呟いて。
 理解したから―――もう一度踏みしめたばかりの今より浸食される床を即座に蹴り抜いて天井へと跳躍。跳躍してから更にそれを蹴り抜いて急降下、逆に炎の奔流の発生点を抜け、レプティラの頭上ぎりぎりを通り抜けるようにしながら着地。
 横薙ぎの蛇尾と前方を焼く炎、疾駆した爪撃を躱し切ると同時、すれ違いざまに剣風が舞う。


「惜しさだけは、感じた」


 躊躇うことなくレプティラを首ごと刎ね飛ばしにかかった斬撃が本命の一斬。
 それ以外の四斬、“邪魔”だと感じた尾を斬り飛ばすために根元狙い。
 計五撃を見舞い速やかに無力化しに掛かると同時、結果を見ずに再びサシャ等の背後に回る。動作としてただの一度も立ち止まる時間を残さないが、これはレオンハルトやサシャを畏れてではない、むしろレプティラへの警戒だった。
 アレの視界の中に入ったままとなるのも煩わしいし、何より厄介だ。前衛の炎獅子と黒猫に噛み合わさるだけで此方を詰ませる状況が完成する、何よりこの狭い場で範囲を取る彼女の動作は、ニアを攻略するに当たって重要な点を理解しているものの動きだ。

 そして………誰よりも善き者であった。
 恐らくは、誰よりも死ぬべきではない性質を持ち。
 これに他者を導く才能を足せば、恐らくは理想的な王が完成するだろう。その程度には彼女は蛇を高く買っていた。
 僅かな会話で確信すら懐けるほど、これは凡庸だが、得難いものの持ち主だと。
 ………それは分かっているが、だからニアは何も語らずただ黙して、このように結論する。

 ・・・・・・・・・
“ならば殺すしかない”。


 それで何か罪悪を感じる精神はとうに失せた。そんなものは錆びて朽ちて、果てて終わっている。
 だから躊躇いなく首を狙った。アレの目は脅威だが、別に胴体と切り離されて動くわけではあるまい。
 だから躊躇いなく殺しに掛かった。アレは得難い者だったが、こうなってしまえば全てが瓦解しかねない。この状況で彼女への情けを優先するほどニアの精神に感情が宿っているわけはなく、であるからこそ直ぐに殺しに掛かった。

「ならば、何故おまえたちは繰り返す?」
「何故………おまえたちは繰り返しておきながら、死ぬことを怖れる?」

 そう、必要であるから彼女の刃は振るわれるのだ。
 ならば“サシャがレオンハルトを見捨てようとしない”ことが分かった今、狙いの優先順位は大きく変わる。
 つまり、彼女の中で最も厄介だと焦点が当たったレオンハルト―――此方を文字通り殺しに、細剣が一度の煌きで以て刃の軌跡を数多に残し、刺突の連撃がレオンハルトを襲い、その瞬間に彼女は位置をずらしてまた剣を振るう。
 数十に達する剣戟のうち9割方は本人狙いで、1割はレオンハルトが視認出来る位置を理解した上でのサシャ狙い。眼から首、心臓から四肢の腱、何処を射貫けば人間が死ぬのか良く知っている、華はなくとも屍を作るには適解だろう無数の剣舞。

 避ければ追う。レプティラが自らを捉えようとしていることが分かる以上、わざわざ位置を留めはしない。
 左方から、右方から、彼女の視界に入り浸食を受けた壁と床以外のあらゆる場所から留まることなく炎獅子を狙い、その時折気を張って居られぬ瞬間を狙ってサシャを狙う。合理的で、冷徹なる塵殺の剣。
 全方位からの舞うような、姿さえ見せぬ刺突の中で、彼女は文字通り全てを斬り殺すまで止まらない。


 ―――ところで。厄介さを良く知っているレプティラではなく。
    この場で仕留めておくべきと判断できるサシャではなく。

 何故、彼女が、幾らこの戦闘の要と言えども、第三者の人間であるレオンハルトに狙いを付けたのか。
 何故、彼女は相も変わらず感情の宿らない声とはいえ、“その言葉にだけ”応じたのか。
 必要なことではないにも関わらず………―――その答えを、やはりニアは語らない。理由は言うに及ばずだ。

>レオンハルト、レプティラ、サシャ

2ヶ月前 No.672

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

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2ヶ月前 No.673

エクスデス @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【マロニス城/ホール(城前)/エクスデス】

「ファファファ! 大義、正当性………揃って同じことを言う」
「絶対的な力の前に………すべては無力、信念なぞただの徒労よ」

 真っ先に反応を返して来たのは、軍服の女。先程“大物”と評した方。
 続いてどうという話でもないと言わんばかりの態度を取るは魔弾の男。“裏切り者”の方。
 どいつもこいつも揃って同じことを言うものだが、エクスデスの反応は嘲笑というものではない。むしろ“やはりな”とでも言わんばかりの成熟した対応だ。樹木に蔓延る悪意で以て形成された暗黒魔導士は、その精神を深く深く重ねている。
 愚かであるが変えようのない愚かさならば、そこに嘲笑の声をぶつける意味などない―――つまるところ、根本的には“見下し”だ。そんな答えしかお前達人間には出すことが出来まい、とでも言わんばかりのものだけだ。

 重力球を退いて躱す。想定通り、余計な対応をするだけアレは無駄だ。回避で良い。
 それを見越して設置した岩石もまた躱す。………想定通りだが、しかし動きは想定よりも幾分か良い。
 それに至る両者の間にあるものが言葉を交わすまでもない無形の情であることにエクスデスは気付いていた。
 何しろ彼は魔導士だ。戦うにあたって、ただ魔力を振り翳すが魔導士の戦いではない。相手を識ることから既に戦闘だ。そこについて、そこに関してだけは、エクスデスは相手を見くびらない。アンノウンをアンノウンのまま殺せると断言することがないわけではないが、この相手が“そうした部類”ではないことを彼は理解しているというわけだ。


「ふん。掬われる前に―――」


 続いて両者が動き出す。投擲された魔刃、さらにそれを上回る速度での回り込み。
 すれ違いざまの斬撃―――脅威の度合いは後者の方が高い。前者は自身を覆う魔力の性質を変え、呪詛から単純なパワーの増幅に纏う魔力のパターンを切り替えることでそのダメージを可能な限り防ぐ。防げぬ部分は鎧に傷が付くが些細なことだ。むしろ、その戦士としての膂力で振るわれた剣技の方が防ぎ難い。牽制の一撃で鎧にダメージを与えるとなれば猶更のこと。
 長剣をその手元で浮遊させて動かし、魔刃と刃が衝突し合う。魔弾使いと指揮官、二人が同じ場所に立った上での一斉射撃。放つと同時に再び波状攻撃を仕掛けられる立ち位置になるように疾駆するユーフォリア。

 良く出来た連携だ。だが、そうなるならば、そうなるで十分やり様がある。
 エクスデスは手元の剣を即座に引き戻すと、片腕で迅速に魔法陣を虚空へと描いた。黒魔法中級位階『リフレク』の複合陣だ。何をするのかと言われたのなら、答えは決まっている―――剣を通して、その部分に魔力を叩き込む。

 通常、『リフレク』は反射の属性を持つ。魔力を持つもののベクトルを反射する為の魔法だ。
 これで攻撃を防ぐことも恐らくは容易かろう。ユーフォリアの攻撃ならば、同タイミングに行われた攻撃ならば凌げる。あるいはダグラスの魔弾も容易くガード出来よう。
 だが、それでは甘い。それでは、防がない片方の攻撃が容赦なくエクスデスを襲う。この択を強いられ続けてはエクスデスとてジリ貧だ。そうならないための“力”には覚えこそあるが………まだ切るべきタイミングではない。

 リフレクにはもう一つの使い方がある。
 魔法攻撃のベクトルを反射させ続けることで、その運動量と熱量を増幅させる応用技術だ。
 これによって反射された魔法は同じ『リフレク』程度の魔法では反射すら出来ないほどに威力と性質を強化する。魔力同士の相互反応による応用技術であり、本来は魔導士二人以上で以て成立する連携攻撃だ。

 ………そう。エクスデスが展開した陣はその『リフレク』だ。
    差し込むように陣を射貫き、起動した巨大な魔法陣が唸りを上げる。


「踏み潰してくれるわ!」


 速やかに放たれた広域への白光。レーザーを思わせる破壊の波動。
 魔法陣の中で只管に乱反射させられた魔力がその運動量を増幅させ、巨大な魔力光と化した。

 これこそが『デルタアタック』―――エクスデスの扱う力の一つ。すれ違いざまのユーフォリアは狙えずともダグラスならば、両者の二方向攻撃諸共打ち消して彼を狙える。立ったままなら、そこにある一切諸共消し飛ぶだろう。
 しかし、エクスデスとて万能ではない。
 デルタアタックの魔法陣で防げなかったユーフォリアの魔弾のうち、氷のそれが再び鎧を傷つけた。


「わしに傷を付けるほどの魔力とは………ファファファ! 力を試すには丁度良い」


 つまりは、エクスデスの纏う魔力を貫通できるほどの力を彼女は有しているというわけだ。
 これを屠り、それを基に自らの力を高めることが出来れば………鎧の中で暗黒魔導士はひそかにほくそ笑むと、デルタアタックの射線から逃れ、すれ違いつつ退避しようとしたユーフォリアを狙って行動を開始した。
 ただし、魔法ではない。纏う魔力の性質を『カーズ』のそれから単純な能力増幅に切り替えたエクスデスの行動は単純、ユーフォリアの追跡だ。魔導士同士の遠距離戦と腰を据えさせる前に、自ら接近して相手のペースを乱す。
 それを判断したエクスデスの挙動は控えめに言って“詐欺”とすら言えた。
 地を滑るように飛行するエクスデスの速度は図体の大きさと魔導士の外見に反比例するかのように素早い。彼女に追い付きに掛かると同時、手にした長剣が彼の魔力に合わせて動き出す。ユーフォリア目掛けて繰り出されたのはまず突き。
 突進の勢いを利用して打ち出された重い刺突と同時、エクスデスの手元から剣が離れて浮遊。

 自由になった両手で、間髪入れず魔法を行使する。
 今度のそれは『青魔法』………魔物の力や技術を魔導士の手によって再現し、“力”とするための分野だが、それすらも彼は高いレベルで収めている。


「死ねいッ!」


 刺突を回避するか防御するか。
 そこに待っているのは言うなれば“真空波”だ。白く輝く、触れたものを斬り裂く魔力の衝撃波。
 両の腕で突き出されるように放たれたそちらこそが本命。突きに惑わされるようでは、手痛い打撃と共に一度距離を引き剥がされるだろう。そうなった場合、彼らの連携は成り立たなくなる。

>ユーフォリア、ダグラス

2ヶ月前 No.674

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/海底洞窟→移動開始/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 天に描いた魔法陣が導き出すまでの時間を、決死の覚悟で稼いでくれたロコ。彼女の努力を決して無駄にはしまいと、召喚した焔の龍が放つ灼熱の吐息は、不死公の軍勢を一網打尽に吹き飛ばして行く。それでも不死者としての往生際の悪さを見せ付けるかの如くに、不死公は灰より蘇った。幾度と無く倒した所で、その度に蘇る。何度も、何十度でも。
 然し、その時の事であった。棺桶が放った閃光と共に、放たれた包帯の塊は意表を突いて主を容易く拘束して行く。引き起こされた、部下達の暴走。滑稽にも崇拝するチェルに救援を求め、敵である筈のロコにまで助けを求め。そうした言葉は届く事無く、聞き入れられる事無く、遂には全身を包帯で巻き上げられ、棺桶の中へと引き摺り込まれて行く。
 そして、生ける死者を収めたが最後、棺はその役目を終えたと言わんばかりに無数の破片となって消えて行った。魔将軍が一人、"不死公"ネクロニアはこの瞬間を以て、事実上の退場を迎える。彼女がこの後、どんな末路を辿ったかを、勇者とその従者は知る由も無い。

「……ロコ」

 海底洞窟での一戦は確かに終わったが、魔帝軍との戦いはまだ依然として続いている。魔帝を倒し、人々に確かな安寧を齎すまでは、この旅路は終わらない。然し、主を庇った事で傷だらけとなってしまったロコはこれ以上の戦いへと着いて行く事が出来ない。着いて行っても、足手まといになってしまう。そう理解しているからこそ、彼女は勇者を一人送り出し、その帰還を待つ事に徹するのだ。
 最良の選択だが、最後まで着いて行けない彼女の表情が、悲しげな物に変わる。だが、次の一瞬、何かを思い出したかのように彼女は自らのポケットから一つの宝石を取り出す。それは、蒼く清らかな輝きを湛えた宝石。正しき心の持ち主を護ると言われる、希少な光輝を宿すもの。

「……ロコがずっと傍で支えていてくれたから、僕は此処までやって来れたんだ。
 もしもこれが僕一人だったら……きっと途中で旅を諦めてたかもしれない」

 戦いの場に立ち会えない自分に代わって、この宝石は勇者を守ってくれるだろう。その言葉と共に手渡される宝石を受け取った勇者は、ロコの瞳を真っ直ぐに見つめながらも、一呼吸を置いてから、心に秘めた感情を吐露して行く。
 出会って以来、旅路を共にして来たこの三年間。辛い事はあったし、悲しい事も沢山あった。それでも、旅を諦めようと思わなかったのは。ロコがいつも傍で支えてくれていたから。時には励まして、時には慰めて。どんな事があっても、必ず立ち直れる様に応援し続けてくれていたから、此処までやって来れたのだと、彼女は語る。

「この三年間、辛い事も悲しい事もあったけど、その分楽しかった。いつまでも続けられたらいいなと僕は思ってる。
 だから……必ず僕は生きて帰って来るよ、ロコ」

 そして、この旅は辛くて悲しいだけじゃなくて、その分楽しくもあった。彼女と過ごすそんな毎日は、今も大切な思い出として胸に刻まれ続けている。だから、それを此処で終わらせる心算は無い。もっと、未来の先まで続かせて見せる。そう決意したからこそ、彼女は約束する。

 ――必ず生きて帰って来るのだと。

 その言葉と共に、勇者は従者へと背を向け、最後の戦場へと歩み始めた。魔帝が待つ、深淵の間を目指して――

>ロコ (不死公ネクロニア)


【お相手、ありがとうございましたー】

2ヶ月前 No.675

閃剣 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【マロニス城/厨房/レーヴ・カストリス】

指令も出たので、いよいよ出撃……したのだが、魔帝城へ向かう以前に王都の状況が凄惨たるものとなっていた。欲望を曝け出しにした民衆が、思い思いの暴動を繰り広げている。
正直、見るに堪えない光景であったが、騎士として彼らを救わなければならない。だが、必死の呼びかけも虚しく、彼らが止まる気配は一切なかった。
そうこうしている内に、城内に敵襲があったということで、レーヴはマロニス城へと連れ戻される。よりにもよって、厨房の警護を任されることになるとは。
このタイミングでミコルナが戻ってきたら、何もしていなかったと勘違いするに違いない。それだけは避けたいところなのだが……そこまで考えたところで、レーヴは視界の隅で動く集団を発見する。

「おいおい、オレのいる前で略奪とは、随分派手にやるじゃねえか。当然、覚悟は出来てんだろうな」

どういう訳か軍勢を率いる人物が女装した男性であったが、重要なのはそこではない。王宮の厨房にて、食糧を盗み出しているという行為が問題なのだ。
唯でさえ劣勢であるというのに、そこに加えて兵糧攻めまでされたら、マロニス王国の敗北はほぼ確定してしまう。到底、見逃すことなど出来ないし、見つけた以上はここで彼らを倒すのみだ。
……よく見ると、周りに集まっている兵士も全員女装した男か? 何とも奇妙な集団だ。不気味さすらも感じるが、やるべき仕事は変わらないと、レーヴは気合を入れ直す。

と、そこへミコルナが戻ってきた。戦力としては非常にありがたいことなのだが、ちょっとばかし厄介な事態になるかも知れない。彼は、そんな気がしていた。
そしてそんな予想通り、彼女から飛んできたのは目の前の集団に関する質問。何とも答えづらい。ある観点で見れば男、ある観点で見れば女。というか昨今はこういう問題であまり批判的なことを言えない。中世では違うかも知れないが。

「あー、どっちともいえねえ。多分、オレらからしたら男だが、あいつらにとっては女だ。てか、見てないで止めてくれよ! こうなったらしょうがねえ、オレが先に行く」

質問するより、略奪を止めるのが先だろう。そう言わんばかりに、レーヴは一応ミコルナの質問に対して捻り出した答えを返した後、単騎で敵のリーダー格と思しき女性……女性?……女性……? に突っ込んでいく。
放たれるは高速の四連撃。光をまとったそれは、まさしく閃剣の名を冠するに相応しい。速さ勝負ならば負けるものか。何人たりとも、この場から食糧を持ち出させはしない。

>ミコルナ、ガドン・バルザック、団員

2ヶ月前 No.676

わんわんお @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/ヘシアン・ロボ】

 引き裂く牙、荒れ狂う刃。
 分類としては確かに斬撃に該当されようが、齎す効果は爆風に等しい。
 それら全てには底冷えするほどの憎悪が乗る。
 憎んで憎んで憎み切って、目に映るすべてを屠ってもまだ乾く。
 そうした類の狂おしいほどの感情は、しかし英霊というカテゴリにおいて当て嵌まるような原点が存在しない。
 ………ライドウがそのように判断を下すのもむべなるかな。蒼狼と首狩り騎士、そのような組み合わせを持ち、尚且つ人間に対する憎悪をむき出しにした存在などそうは居ない。ただ狩りをするではなく、自らの命を度外視して復讐心だけを振るうものなど存在しない。これほど鋭利な思考を持ちながら、その根本は底冷えするような殺気によって創られている狼などいない。


「■■■■―――!」


 狼王を凌ぐは竜殺し。
 首狩りを払うは百戦錬磨の源氏武者。
 狼王の行動に対する異様なまでの速度の早さ、何よりも召喚者に対する忠義の堅さが成し得る完膚無きまでの防御だ。その代償は彼らの傷であるだろうが、後者にはそれをものともしない精神力が、前者にはその程度で揺るがぬ堅さがある。
 まるで城塞だ。如何に人を殺す爪牙と処刑刀と言えども、城を崩すには尋常ならざる手間が掛かる。

 だがそれでいい。そう、それで良いのだ。
 狼王がわざとらしささえ感じるほど、何故ランサーを無視してライドウを狙ったのか。
 理由は二つある。ひとつは、ランサーをそもそも敵としての優先順位はともかく、“殺す対象”としてのランクを下げているからだ。エーテル体で作られた仮初の肉を持つ英霊ではなく、彼は心底から人間を憎んでいる。

 獣の狩りが持つ合理性さえも上回るほどの、例えば親しき者でも殺されたかのような憎しみ。
 瞳を見れば分かる。
 その在り方を見れば分かる。
 特に………ライドウとアベリィに常々向けられていた殺意を精査すれば分かる。
 その行動、命すら擲つ狂気と獣のしぶとさが同居した在り方は、彼の背で刃を舞わせる首無し騎士が出せるものではない。本体は頭上のそいつなどではなく、紛れもなく狼王だ。この狼こそが、人間を殺したくてしょうがないと叫んでいる。


   ―――そうだ。
   、  雄も、雌も、小さいのも、大きいのも、太いのも、細いのも、殺して良いのだ。

   ―――俺は殺すのだ。あいつらが、俺たちを殺した分殺すのだと思って此処に来たのだ。


 放たれた魔弾の存在を感じながら、狼王は逆走した。
 唐突が過ぎるほどの、しかしランサーからすればある意味“予想していた”流れではあるだろう。
 此処まで近距離を詰めておきながら、本当に唐突に、相手の梯子でも外すかのような勢いで移動を再開した。
 その突然の移動は、射たれた暴威弾の射線をすべて明後日の方向に逸らすには丁度良い。

 なぜなら。

       、・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
 ―――戻って、街中を荒らした方が、より多く人間が殺せるから。

 ―――そのためには、あの男が邪魔だ。だから“撃てばこちらに来る”とでも判断させておこう。
    腰を据えさせ、迎撃の構えを取らせよう。そうすれば、その間だけは幾分か動きやすくなるだろう。


「―――■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」


 そして走り出し、ケルトの英雄クー・フーリンと真正面から向かい合う。
 槍兵の中でも三本指に入るその健脚を前に、まさか此処まで来て放置はしない。
 すれ違いざまのその一瞬、何時の間にか彼の口元に銜えられていた鎌刀が陽光で煌いている。

 世界そのものに偏差が加わる。
 青白い炎が揺らいで、目に映るすべてを殺さんと猛り狂っている。

 すれ違うその瞬間、クー・フーリンを殺すべく首無し騎士が、狼王が動き出す。
 時速にして200km超を発揮する狼王の爆走を補佐するように、無数のシェイプシフターを思わせる刃が槍兵を襲う。胴体を解体しようとし、腕を串刺しにしようとし、足を細切れにしようとし、縫い止めて、斬罪の瞬間を作り出そうとする。

 それに気を取られるならば、あるいは迂闊な逃げなど取ろうものなら。
 どこへ行こうと追いかけて、狼王はその口元に銜えた鎌刀で以て、必ず首を刈るだろう。

 ………それこそが、この英霊の宝具。
    因果の逆転に非ず。世界そのもの、自分の周辺に偏差を加えて“ズラす”力だ。

 それにより、彼はレンジ内で鎌刀を振るえば確実に首を落とす。
   、  スリーピー・ホロウ
 それなるは微睡みの窪を彷徨う軍人と、愛するものを殺され、奪われた狼王の復讐心の結晶。
 一撃で首を刈る絶殺宝具。交差の瞬間に放たれる騎士と狼王の一撃を凌げる道理なぞ何処にもない。
 狼王は彼の英霊を屠った後、再度、ためらうことなく城壁内外での虐殺を再開するだろう。

 槍兵が何もしなければ―――否、何かしたところで、この狼王の疾走はもはや誰にも止められぬのだ。

 そうとも。

  誰も俺を邪魔出来ぬ。
  誰も俺を邪魔させはせぬ。

  だから、ああ、その思い上がった敵意を向けて来るなら良いだろう。気が変わったぞ。


「―――■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!!」


    ―――まずは貴様からだ、死ねよ英霊《ニンゲン》。



>ランサー、ライドウ、アベリィ・シルバラード


【アベリィの返信を待つつもりでしたが、とりあえず状況だけ動かします】

2ヶ月前 No.677

@sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/無限回廊/ゲイル・べネルド】

力による支配の重要性を説くフロレ。今覇権を握ろうとしている我々には、それを成し遂げるに値する力があると言わんばかりの物言い。最早心身ともに変わり果てた姿に、ゲイルは息を呑んで後退りする。
しかしその瞳に、顔に浮かぶのは、先程までの恐れや悲しみなどではない。怒り。憎むべき、廃すべき敵を眼前にしての怒り。この怨敵を必ず討ち滅ぼす。
本来なら戦いが始まってすぐにこの感情に至らなければならないのだろうが、やはり相手が慕い敬った正騎士団長ともなれば話は違う。若さゆえの未熟も相まって、ローウェンほど非情になりきれなかったのも大きいだろう。
くだらない逡巡は何よりの命取りになる。宿運の決戦に臨むにあたっては、そんな気の迷いなど捨ててしまえ。そもそも進退窮まるも甚だしい状況下に置かれて悩んでいる事自体が勝負師として不遜である。
騎士たる者、如何なる者を相手取ろうと、剣を振るうことに真摯であれ。例えかつての同胞に切っ先を向ける誰がための勝負であろうと、その鉄則に変化が生じることなどありはしないのだから。

「ローウェン…行くぞ」

普段騎士団の面々に見せている顔から一転。味方に付いた魔族を受け入れ、冷遇をやめるよう言って聞かせていた姿からも一転。そこには、魔族によって肉親を失った、復讐に燃える青年としてのゲイル・べネルドがいた。
もちろん魔族全てを滅ぼそうなどという気になったのではない。人と魔族が手を取り合い、共に全く新しい時代へ歩もうとする中で、力で押さえつけての圧政を敷かんとする"アイツ"が憎い。同じ過ちを繰り返そうとするフロレ・ゾンダーランドが憎い。
含みを持たせた眼差しで語りかけてくるフロレ。怒りと憎悪の炎が渦巻く目で睨み返す。そうとも、俺はお前が憎い。魔族ではなく、今目の前にいるお前が。そう吐き捨てんばかりの眼光。
ゲイルの手数で攻め立てる速攻も、ローウェンの一撃の破壊力に託した重撃も余裕をもって回避し、二人の真向かいに陣取るフロレ。その漆黒の剣に宿る力を、雷電の如き闇を目にするなり、ローウェンに背を向けたまま、一言いい放つ。
"俺についてこい"。遥かに歳上の彼に向ってそう言ったも同然である。だが、これは単なる傲慢や彼を軽視してのことではない。今まで団員達の中に溶け込み、横一列に並んで歩んでいくことを好んでいたゲイルが、先頭を走って全員を引っ張る指導者(リーダー)へと成長したことを示していた。
皮肉にもそれを引き出したのは、フロレ・ゾンダーランドの容赦ない言葉。しかしこうも取れないだろうか。如何なる形であれ、どのような関係であれ、やはり彼女はゲイルの師に違いないのだと。

「スパイラクルドライブ!」

深淵へと挑戦者たちを引きずり込まんとする魔力の暴風。吹き飛ばされるなどという表現は生温い。あの暴圧も同然の風に身体の自由を奪われれば、まるで千刃に切り刻まれたかのような無残な姿に成り果てること間違いない。
規模が規模だけに回避も難しく、魔族へと身を窶したフロレの戦闘力を鑑みれば、防御技を繰り出しての阻止も不可能。月並みな対処では、反撃はおろか生存すら能わぬ窮地。
そんな中でゲイルがとった策、それは常軌を逸したものであった。宣言と同時に力を解き放ち、風魔法によって薄い緑色の突風を巻き起こす。その風は、横向きの小規模な竜巻と形容する他ないような形状へと変化し、ドリルのように鋭利な先端部分を暗黒の竜巻に突き立てる。
程なくして風のドリルは人一人通れる程度の穴、まさに風穴をブチ開けるに至った。竜巻そのものを消し去ろうなどという思いあがったことは望まない。ただ、この身一つをその先へと運ぶことが出来ればいい。
空気を求めて海面(みなも)を目指すような、明日を迎えるべく草根に歯を立てるような。豪勢でないがゆえの力強さ、突破力。それが『スパイラクルドライブ』なのであった。
かくして得られた突破口にすかさず飛び込むゲイル。当然ローウェンが通ることも考えて緑色の風は生きている。そうしてフロレの遥か上方へと躍り出たゲイルは、さらなる奥の手を繰り出す。

「ゼファー…ヴォルテックスッ!」

彼の愛用する細剣『ゼファー』の名に因んで命名された必殺技。彼自身が渦の中心、台風の目と化すかのように巨大な緑色の旋風が巻き起こる。
ある意味では意趣返し、またある意味では決別の奥義。憎んで止まない敵を空の彼方へ消し飛ばさんばかりの暴風。ゲイルは愛剣を手に、その中を真っ逆さまに落ちていく。
レイピアも同然の刃、切っ先は闇騎士の脳天を指している。そうとも、ヤツはここで止めなければならない。そして、今この場に立っている二人には、それを成し遂げる義務がある。
魔族だから殺すのではない。新たな時代の到来を拒むから廃するのだ。それに新たな正騎士団長として皆を率いていくためにも負けられない一戦。遅ればせながらの覚醒が、若き英雄に底知れぬ力を引き出させる。
言うなれば"資質の覚醒"。果たして吹き荒ぶ風は、新時代への扉の前に立ち塞がる怪物をいなすことが出来るだろうか。

>>フロレ・ゾンダーランド、ローウェン・アルべリウス

2ヶ月前 No.678

ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc

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2ヶ月前 No.679

葛飾北斎 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_7sc

【 王都ロンカリア/城壁・上部/葛飾北斎 】

 ――あーあ、聞く耳すらどっかいっちまってやがる。耳無し芳一の方がまだマシだろ。

 徹するはフォロー、――ブチこんだ毒性魔力の煙幕は黒々とした大気となりて視界を塞ぐ。
 斬りこみにかかったギルバートもクジャルナも同条件に置かれるものの、ほんのわずかに肉体に傷を入れたのみとなる。
 それも一撃が決まっていたわけではない。
 毒性煙幕による被爆ダメージだ。
 先ほどの身のこなしといい、人体の急所を適格に狙った攻撃といい、地を蹴り砕くほどの破壊力といい。
 火や氷を撃ちだすなどの派手な力を持たない分、身体能力に全てを割り振ったかのような戦闘能力。

「お前さん、いっぺん金槌でブン殴られた方がよっぽど目ぇ覚めるんじゃないかい?」

 あれで性根さえまともなら――今ごろこんなところで武器<肉体>を振るうことはしていないだろうに。
 世の中は諸行無常。未来世界に関する情報を積み立てている北斎であっても、その悲壮さは理解は出来る。
 だが納得はしてやらない。

「マ、お前さん一人に任せてどうにかなる世界<みらい>なんざクソ喰らえだっていう話だ。
 少なくともお節介受けるにしたって、民はお前さんみたいなのにはそっぽ向くだろうよ」

 指の合間に挟み込むのはやはり小筆。
 本腰入れっか――スキル起動。森羅万象。
 自然の有り様を研究し、その真髄を見抜く観察眼。
 観察対象はクジャルナ・クォーク。徹底的にその内を暴きあかし、その一筆に収め奉るまでの前準備。
 それがもたらすは、適格な命中と適格な身のこなし。画家始点の超観察から導き出される判断からなる精巧極まりない技術。

 地を蹴り接近戦に打って出る。
 狙うは挟撃。
 全面、腹部を狙いギルバートがクジャルナに拳を叩き込むタイミングに合わせて――クジャルナの背後に位置取りを行う。
 こちらも身のこなしは負けてはいない。着物がはだけるのもお構いなしに、熱の入った体と魔力の籠る絵筆を構えた。

「そらッ!!」

 疾風怒濤の連続攻撃、――左右四本、計八本の絵筆が描く色とりどりの軌跡が乱舞する。
 それは獲物を狩る獣の爪のように。その背に瞬時に一筆を描きこまんと、連続して振るわれた。

>クジャルナ ギルバート

2ヶ月前 No.680

魔人騎士 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【ディンカ/海底洞窟入口前/ルーカン・ベレスフォード】

 配属された場所は魔帝城へ続く入口。
 戦場は混沌とし、同胞達の屍は白い山となって積まれていく。
 ルーカンはマントをはためかせて、王国側の騎士を切り伏せていく。
 そして、背中から魔法使いに火炎を浴びたがゆっくりと振り向きそのまま、焦る魔法使いに弾丸の如く突っ込む。
 魔法使いは焦って火炎を降り注がせたがルーカンは傷一つ負わずに止まらない、やがて魔法使いは効かないのかとルーカンの気迫に満ちた表情と迫りくる現実に震え上がり、ルーカンは無言でその魔法使いを袈裟斬りして倒す。
(……これだけいればきりがない。混乱に乗じてもう攻め込まれているかも、知れない)
 赤く染まった剣身を振って血を払う。
 数も多いし、何よりも主君の身が心配だ。
 もし自分が知らないところで、殺されていたらと考えると胸が張り裂けそうだった。
 だが数が多過ぎてとても向かいに行けない状況だった。
「……恐がらせて申し訳ない」
 そう遺体に話しかけると、ルーカンは再び戦場へと馳せる。
 魔族にも人間と対等の権利を。
 魔族にも尊厳があるという事を。
 主君も恐らく人間を殲滅せず、とうに亡びた国の名を挙げて蜂起したのだろう。
 だからルーカンは魔帝の事を同志だと思っている。
 魔族復権を望む魔帝に忠誠を誓った身だ、例え誰かに見放されてもルーカンは剣を降り続けるし、チェルの事を信用していないせいもあるだろう。
 何か起きたら、この人混みを超えて魔帝をお守りするのだろうと。
 ただひたすら剣を振るっていた。

>ALL

2ヶ月前 No.681

ガン=カタ @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【マロニス城/ホール(城前)/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

凄惨を極めるマロニス城の戦い。彼方此方で剣戟の音が響き、一人また一人と倒れて行く。
中央ホールもまた、激戦区と化している。一人は、世界の命運をその双肩に背負う司令官。一人はそれに同調し、共に往くと決めた若者。それに対するは、二人掛かりでも尚五分以上に戦う、鎧の魔人。
強烈かつ多彩、まるで隙の無い魔法の連撃。その上、その重装ぶりからは想像も出来ない速度の突撃まで繰り出すのだから、正しく強敵と言えるだろう。
猛烈な勢いの刺突、そして続けざまに放たれる魔法――明確な必殺でありながら、例え仕留められずとも二人の連携を崩壊させる事の出来る一撃。魔人の思う通りに行けば戦況は奴の有利なまま推移する――が、それをさせぬとばかりに、新たなる乱入者が現れる。

「やらせるかよ!」

唐突にホールに響き渡る男の声――そしてそれすら掻き消す、無数の銃声。ユーフォリアと鎧の魔人の間に無数の銃撃が炸裂し、魔人の突撃と更なる追撃を阻害する。勢い良く場外から男が二人の間に割って入って来たかと思えば、たちまち身を翻して両手に握る拳銃を魔人目掛けて乱射する。
乱入してきたのはユーフォリアとの血縁を感じさせる髪色の男。彼の名はヴァイスハイト――『ヴァイスハイト・インテグラーレ』。ユーフォリアの従弟であり、時空防衛連盟所属の精鋭兵員だ。即座にユーフォリアへと向き直り、その無事を確かめる。

「ユフィ! また一人で出たな! お前の強さは分かっているつもりだが、それでも万が一って事もあるんだ。あれほど前線に出る時は護衛を就けろ、と……ん? アイツは――ダグラス!? 何故奴が……」

親しげな愛称でユーフォリアを呼びながら、軽い説教染みた小言を垂れる。無論、それが本心から心配しているからこそ出てくる言葉だと言うのはユーフォリアも理解しているだろう。そも、ヴァイスハイトが時空防衛連盟に所属したのは、偏にユーフォリアの為でもある。故に、過剰な程に彼女を心配するのも無理はない。
そして、ユーフォリアと魔人と、もう一人の存在に気が付いてそちらに視線をやる。その男はダグラス・マクファーデン。古代時間帯でフォッサ達と交戦した記録が残されていた事もあり、ヴァイスハイトは彼がユーフォリアに与している事に驚きを覚えた。

「何故アイツが此処にいて、あの魔人と敵対してるのかは分からないが……話を聞くのは、後にしておこう。今は、目の前の敵の無力化を優先する!」

それでも彼の決断は素早い。二丁拳銃を構え直し、相対する魔人を見据える。ダグラスの事も気になるが、彼と和解したのか、それとも一時的な共闘なのかと言う事は、この強敵を打ち破るには不要な情報だからだ。

>>ユーフォリア、ダグラス、エクスデス

2ヶ月前 No.682

Futo・Volde @nonoji2002 ★0hekQLL3eX_sgc

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/アベリィ・シルバラード】

「……格が違い過ぎるって感じね」

アベリィの居るロンカリアの街とそれを覆う城壁。そして街と壁の外を繋ぐ跳ね橋。
そこで同時に行われる命のやり取り。それを理解するのにそう時間は要しないが、かつてアベリィが経験してきた戦場の数倍は早く、目まぐるしく状況が切り替わっていく。

ショットガンの弾丸は僅かではあるが、あの狼に少しの傷を与えた。だが、この程度では掠り傷に過ぎないのだろうとも思う。それよりも、今は彼女自身が出来ることを見つける必要がある。それぞれに出来ることは違う。そのそれぞれの中で私に出来ることは何か、些細な事でもいい、ないかと。

「……もしかして」

一度はこちらを離れて、跳ね橋に居るライドウの方へと、戻って行ったかに思えた。
所謂挑発と言う奴に乗って、それにまんまと掛かり、ライドウを喰らおうと。
だが、この狼はそんな簡単に、こちらの思惑のままに突き動かされるのだろうか。

あの狼を突き動かすのは目的があるからではなくただ心にまとわりつき、本能となっている憎悪、ただそれだけなのではないか。
そこには思慮も、情も何もない。ただ本能がそこに横たわり、侵蝕している。
普通、生き物の本能は多くの子孫を残し、睡眠や食欲と言った欲求を満たすことだろう。だが、この狼の本能はそう言った欲求を満たすものではなく、ただどす黒く、どこまでも闇が広がる様な、人間に対する憎悪。そう訴え駆けている気がした。

狼が駆けて行く城壁の方にはライドウが。対する、その狼の後方にはランサーが。彼らがどんな攻撃をするかなど、アベリィには予想も出来ないが、1つ確かなのは挟み撃ちして確実に仕留めるつもりということだった。
だが――。

「……やっぱりね」

ああ、予想通りだ。急に立ち止まったかと思えば、今度は逆戻り。前からの攻撃と後ろからの攻撃が入れ替わった。狼と首のない騎士はランサーと対峙し、対するライドウには狼と騎士の後ろ姿が見えている。
このまま前に突っ走って行くのなら、撃たずにこのまま様子を伺いながら、次なる一手に思考を巡らせていただろう。だが、この場合は――。

「……私ごときじゃ相手にならないだろうけど」

再びマークスマンライフルを構えてスコープを覗き、照準を狼、そして跨る騎士へと合わせる。その速さはアベリィをもってしてもやはり、捉えきるには非常に難しい。
だが、装弾数は16発。加えて小爆発を起こす炸裂弾もあることを考えれば、運が良ければ当てられるかもしれない。

それに対峙しているランサーもおそらくこうなる自体を全く考えていないわけがないだろう。アベリィはトリガーをとにかく引きまくり、1マガジン分が空っぽになるまで撃ち続ける。そして弾が尽きるとともに、炸裂弾のマガジンへとリロード。そして1マガジン分の、ありったけの弾を撃っていく。当たらずとも、せめてランサーの手助けになれば、と。

>ヘシアン・ロボ、ランサー、17代目葛葉 ライドウ


【やや多忙気味でスレの確認ペースが落ちてるので、また遅れてしまって申し訳ないです >各本体様】

2ヶ月前 No.683

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【王都ロンカリア/城壁・(跳ね橋)/ランサー】

 響き渡る、銃声剣撃。
 ランサーは言葉も交わさず無言で殺意を纏うと、向かってくる魔力を感じた。
 あちらも宝具を使う気か――――――なら好都合。
 いつも軽率そうに笑う顔もなく、ただ冷たく狙う処刑人の如くの顔で空高く飛び上がり、首無し騎士の攻撃を躱しこちらも魔力を溜め、朱槍は禍々しい光を揺らめかせ、腕に力を込めて顔に筋のような物が浮き出る。
「この一撃、手向けとして受け取れ」
 それは弔いの言葉。
 後衛が巻き添えになる事を配慮して、対人レベルまで落としたが十分過ぎる破壊力である。
「突き穿つ(ゲイ・)――――」
 真名解放。
 この槍は影の国の魔女から授かった魔魚の骨から作られた魔槍。
 投擲すれば刺がいくつも爆ぜて戦士達を穿つ、その槍の名は――――――
「死翔の槍(ボルク)ーーっ!!」
 そして投げた。強烈な風切り音が耳をつんざいた。
 轟音と共に狼王に向かって突き進んでいくうち、矛先が10本に分裂し串刺しせんと襲いかかる。
「お前ら、気を付けろ! 一応加減はした!」
 静かに着地して、筋が浮き出たまま目を見開いてそう大きな声でそう警告した。
 避けられる物ならば避けてみろ。
 ミサイル並の早さで槍が複数降り注ぐ濃密な攻撃、その俊敏さで果たして全弾躱し切れるか。
 ランサーはただ静かにその様子を眺めていた。
>17代目葛葉ライドウ ヘシアン・ロボ アベリィ・シルバラード

2ヶ月前 No.684

Charlotte @kirieru ★Android=ryLO8WYMEG

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2ヶ月前 No.685

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

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2ヶ月前 No.686

災いを呼ぶ黒猫 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/魔大将の間/黒猫】

計画は実に順調に運んでいた。恐らく、もう魔帝を信頼する者はいなくなったことだろう。はじめから、人類を倒す気概のない輩など、こうしておけばよかったのだ。
とはいえ、ニアがこちら側に付いてくれたのは予想外である。何を考えているか分かったものではないが、もし後で裏切るようであれば、始末すればいい話。
元よりチェルもそれを覚悟の上で組んだのだ。今更、心配する必要はない。証拠の捏造もニアが上手くやった。晴れて新たなる魔帝が誕生し、魔族は人類打倒のために一致団結する。
そのはずであったのだが……戻ってきた黒猫からの報告は、予想外のものであった。何とあの魔帝が声なき魔物の前で自立を宣言し、声なき魔物はその意志を龍炎公に伝えというのだ。
この期に及んで反抗するか。それもまた、いいだろう。束になって掛かってきたところで、彼らが少数派であることに変わりはなく、大体数はこちらの味方をしているのだから。

「あらあら、威勢がいいことね。それにしても、何を言っているのかしら? 叛逆者は貴方達でしょう? 同胞を手に掛けたヴェルメイユに、まだ付き従うつもりなのかしら?」

だからこそ、チェルは魔大将の前へヴァンレッドが踏み込んできても一切動じる様子を見せない。遙か格下の存在を見るような目付きで、彼を軽蔑し、冷たくしらう。
どこで知り合ったのかは不明だが、人間の龍狩りも一緒だ。この様子からして、戦いの中で惹かれ合いでもしただろうか? 心底、反吐が出る。
燃え盛る部屋。されど、黒猫は余裕を失わない。龍炎公の疾風の三連撃、龍狩りの薙ぎ払いと回転斬り、その両者を軽やかな動きで往なそうとするチェル。
だが、ヴァンレッドの攻撃が彼女に届くことはなかった。最期の乱入者として現れし魔剣士が二人の間へと割り込み、代わりに攻撃を弾いたからだ。
彼女がどういった性質を持っているかは知っている。はっきりいって厄介なことこの上ないが、今のところ共通の敵を倒すという意味で共闘しているので、よしとしよう。
それでも、自分に流れ弾が飛んでくる可能性が否定出来なくなったため、立ち回りを変える必要はあるのだが。ひとまず、ヴァンレッドは奴に任せて、自分はこの龍狩りへの対処に集中するとしよう。

「可愛そうね、片腕がないなんて。私ならそれを治す方法を知らないこともないけれど……貴方はそれを望んでいないようね」

本当に心配しているのか、それとも皮肉を言っているのか曖昧な言葉を吐き捨てながら、チェルは右手を振るい、部屋を焼く炎に向けて大量の水を射出する。
たちまち炎は消火されるが、その際に生じた水蒸気が霧のように部屋を覆い、一時的に視界を悪化させる。彼女は動いたのは、まさしく次の瞬間であった。
一瞬の内にアーケオルニへと肉薄したチェルが放つは、縦と横の二回の斬撃。ただの斬撃ではない。オーラを纏ったそれは、十字のエネルギーとなり、直線上にあるもの全てを斬り裂いて進む。
アーケオルニの背後には、丁度ヴァンレッドがいた。つまり、これに相手が回避で対応すれば、斬撃はそのまま龍炎公へと到達するということ。勿論、簡単に止められる威力ではない。隻腕の龍狩りは、この状況を前に、如何なる選択をするのか。

>ヴァンレッド、アーケオルニ・ランドグリーズ、魔剣士
【実質的な中世編のボスとなります】

2ヶ月前 No.687

北方守護騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_0D6

【王都ロンカリア→魔帝城/深淵の間/氷魔像ギラード】

王都ロンカリアにはこんな伝承がある、かつてこの地にはマロニス王国の代わりにこの地域を守っていた者が居ると、それは神のようで神でなく、魔族のようで魔族ではなかった。
それは目的を失って彷徨う存在であったが、その目的の代わりに彼は人間を愛する事を選択した。 故に、時には村に刃を向けてでも、この地に居た人間たちを守ろうと、その氷像のような姿を現したと、そんな御伽噺が語られている、だが、それを証明するように、その守護領域に入っていたとされるこのロンカリアには時折、まるで人を避けるように、季節外れの冷たい風が吹く。

それが気候上の問題なのかと言われればそうでもなく、勘違いなのではと言われれば実際に温度が急激に低下しているデータが上がって来る、ならば魔族や神格なのではないかとコンタクトや貢物を試みても、何も起きない。
故に、それはロンカリア特有の自然現象、確かにそこにあった守護者から、浪漫や不可思議によって構成される伝承や御伽噺になった。

だが確かにその氷魔は存在し続けていた、かつて戦いで傷を負い、現世に小さな形でしか介入できなくなり、その間に多くのことが起きたが、それでも、本当に自らが力を振るう時のために力を蓄え続けていた。
氷魔像は最初はその姿を現さなかった、精々、自らの氷の権能によって、魔族が近づけないような所を人為的に作成するぐらいだ。
とはいっても、それだけでは何も解決しない、かといって、ここを離れれば、より多くの人間が死ぬだろう、そして、自分があえて守ろうとしたのは、それこそ彼の記憶の中にある人間の家名を受け継いでいるような物ばかりであり、見捨てるという選択肢もなかった。

……その時だった、多くの場所で、かつて見たことがある者たちによって魔族たちが急速に数を減らし、撤退し始めたのを。

「……不思議な物だ、最初に事故で目覚めた時、お前たちが居て、また脅威となり我が目覚めた時、またお前たちが居るとはな」

今まで不可視の化け物だった冷気が急速に一つの場所へと集まって行く。
その名は氷魔像。 かつての人類と精霊が作り上げた魔族殺戮装置。 これが長きに渡る休息より目覚めて、ロンカリアの建物の上に姿を現したのだ。
作られた目的こそ単純明快に、ただ脅威とみなした物を排除し続ける殺戮用、だが一度古代に目覚めた時、この氷魔像は、こう考えた、自らの真の使命は、ただ殺す事ではなく、"脅威より人間を守ること"であると。

建物の上に現れた氷魔像、"ギラード"は、大量の氷の矢を自らの体から射出し、それによって凍え死なないように間隔を設けて氷の壁を形成して、欲望に狂った者からまだ正常な者たちを出来るだけ多く『隔離』する。
その氷は、絶対の防壁ではない、逆に言えば、人間や下等な魔族には絶対に破れないが、事が終わり次第、溶けて跡形もなく消える物だ、命を奪うような物ではない。

それだけを撃ち終えると、ギラードは北風に乗って消えた。


魔帝城に真冬でも起きないような猛吹雪が襲来する、それはたった一箇所の壁を突き破って建物内に侵入し、その城の奥底まで駆け抜けて、室内に侵入するとそこで一つになって固まる。
姿を現したのは、氷によって製作された騎士像のように見える化け物。 人間にとってはかつて存在した守護者であり、魔族にとっては、かつて精霊と呼ばれる物が作り上げた無慈悲な殺戮装置の一つ。

「……見つけたぞ、お前が魔族の指揮官か……我が名は氷魔像ギラード、太古に貴様らの祖先を葬るために作られし人類の守護者なり」

その魔族とも間違えかねない容姿から、ギラードは魔帝を確認すると流暢な人間の言葉を使って喋り始めた。
そして、ギラードは四本の腕の中に、三本の氷の刃、アイスソードと、一つの氷の盾、アイスシールドを生成して戦闘形態を取り、静かに開戦の瞬間を待った。
人類の守護者、そして魔族殺戮装置、一見相反する事が無いように思える二つの名だが、この戦いでは……矛盾した称号になる、それに気づくのは、もう少々後になるだろう。

>魔帝ヴェルメイユ


【魔帝戦は既に来て大丈夫だそうなので、解禁宣言がてら突っ込みます!】

2ヶ月前 No.688

獅子心 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 肉体のみならず、精神をも斬り殺す刃。其れの推察自体は正解には非ずだが、真理へと辿り着くまでの過程としては可能であるとも言えなくはない及第点。幾度と無く切り刻まれて尚、高尚な輝きを秘めた獅子の魂魄が健在であるのならば、いずれはその全てを把握する可能性も出てくるだろう。問題は、その上で戦意を滾らせ続ける事が出来るかどうかではあるが。

「……俺は絶対に死なないし、お前達も死なせない。必ず全員生き残らせた上で、勝利して見せるさ」

 無限廊下へと木霊するサシャの叫びを聞いて、獅子は静かに己の宣誓を言葉にする。必ず生き残り、そして二人も生き残らせた上で勝利を掴んで見せる。決して失わせたりなどしない。未来へと続く架け橋を壊させない為にも、全身全霊を駆けてこの勝負に臨むのだ――誓いを新たにする獅子の左手が、灼熱の奔流を解き放たれる。

「俺はお前が望む平穏が良き物である筈だと信じている……だから今は耐えろ、レプティラ!」

 荒れ狂う焔の奔流と、光輝を宿した黒猫の爪を前に、塵殺剣は音速の域にも達する単純な移動でこれらを退けた。続く常山蛇勢の尾も、迅速な判断かつ迅速な動作で退け、更に殺しの一手と排除の四手を以て敵は躊躇う事無く蛇を殺しに掛かった。その距離からして、獅子の焔を以てしてでも庇い切る事は不可能。故に、自分の身は自分で守って貰う以外に術は無い。

「繰り返す中で知るからだ。無価値のまま、何も出来ずに死んで行く事の恐ろしさを」

 苛烈極まる数十の剣戟。一度に煌く剣閃が数多の刃の軌跡を残し、その悉くが人体の急所を狙った必殺の一撃。単純な爆炎の行使では、回避が不可能である事は明白。十数を退ける前に、それ以上の刺突が的確に自らを射貫くであろう未来が容易に想像できる。仮に全てが急所を外れたとしても、先の様に彼女の剣は獅子の肉体のみならず、その身に宿る精神や気勢、魂魄と言った物を殺すだろう。
 然し、幸いな事に。常山蛇勢の魔眼が捉える視界が、獅子の退路を生み出した。一瞬の点火と共に加速を開始すると、複雑な直角軌道を描きつつも、穢れ満つる中へと飛び込む。途中、数度の剣戟が身体を掠め、その度に血液と魂魄を削って行くが、獅子の心は未だ折れず健在。更には蛇の魔眼が齎す全身の悪寒と共に、身体を内より蛆が食い破るが――剣舞を真面に受けてしまうよりは、希望のある流れと言えよう。

「無意味な生で終わる事を恐れ、軌跡を残すが為に戦う……その感情、理解出来なくはないとは思うが」

 蛆が更に我が身を蝕むよりも早く、爆炎を撒き散らして視界内から一瞬にして離れ、今一度敵に向かって肉薄する。疾風が逃れるよりも早く、それを上回らんとする志で叩き込むは高速で放つ灼熱の六連斬。放出される爆炎が宿す熱に曝され、赤熱する大剣の刀身が緋色の煌きを迸らせる――

>ニア レプティラ サシャ

2ヶ月前 No.689

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【歴史是正機構本部/実験室/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

女が屈辱に堪え忍ぶのが手に取る様に分かる。一頻り行為を終えた悪魔は満足そうな笑みを浮かべて、女が暗い欲求に支配されて行くのを見ていた。これで良い、と悪魔はほくそ笑み、堕ちて行く様を眺めていた。
そんな折、またしても何者かが訪れる。それは、正しく最後の引鉄。決定的な破滅を与える、第三の悪魔だった。

「まあ――まあまあ、バビロン先生! もうお越しになられていたのですね。取り込み中で御構いも出来ず申し訳ありません」

大声で実験室に入って来たのは、何を隠そう歴史是正機構の出資者(パトロン)にして何よりも強い後ろ楯。"世界を平らげる男"とまで呼ばれた男――『ダン・マッケーニ・バビロン』上院議員その人だ。
女はわざとらしい程に明るく愛嬌を振り撒き、議員の腕に胸を押し付けながら抱き付く。尤も、議員がそんな事で靡かない人間なのは重々承知している。あくまでもお愛想だ。
それよりも、議員の興味は其処の"元"女帝に向いている様で、席に座したまま熱い言葉を元女帝へと投げ付ける。暴力的な程の言葉の奔流。その場で聞いている者なら、それが全てが本心だと分かるだろう。そして同時に、それが破滅への最後の一手だと言う事も。

――ああ、これは終わりましたわね。

……バビロンと言う男はおそらくこの世界において最も悪辣な人間だ。彼に不可能はない。己の意志と腕一つで万事を為す。故に、"他者にもそれを求める"。『俺に出来るのだからお前に出来ない筈が無い』と説く。
それだけならば理想が高すぎるだけだが、この男はあろうことか、『俺が見たい』と言う理由だけで他人を容易く破滅させる。苦難からの栄光。逆境からの勝利。そんな誰もが憧れる王道(サクセスストーリー)を見たい――『だから、試練を与えよう』。理不尽な大嵐が如く、この男は世界中の人間を食い物にする。ただ己を満足させる英雄譚を作り出す為に。
そして、それを成させる奴の力は、奴本人と同等以上に悪辣だ。即ち"限界突破"の能力。己のみならず、他人の限界でさえ取り払い再現なく歩ませる力。一度その力に暴露すれば、肉体も精神も"止まる事が出来なくなる"――つまり、"崩壊するまで進み続けさせる"能力だ。
……今、女帝はヘルガによって植え付けられた偽りの憎悪と復讐心を悪魔によって引き出されている。そんな状態で議員の能力の影響を受ければどうなるか。答えは単純――復讐を完遂するまで止まらない、自壊しながら突き進む復讐鬼の完成だ。

「さて……もう宜しいですわね。拘束を解きますわ。先生、もしもの事がありますのでお気をつけ下さいな」

完全に元女帝の心が堕ちたのを確かめた女は、その拘束を一つ一つ外して行く。それは僅かな時間の、しかし永劫にも思えるような時間だった。
最後の拘束が外され、遂に漆黒の復讐鬼が自由の身になる――。

>>パージルク、ダン

2ヶ月前 No.690

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R0X

【魔帝城/???⇒深淵の間/ハザマ】

 王都ロンカリアが惨状を極めた有様となっているように。
 魔帝の城もまた、敵味方入り乱れる混沌の様相を醸し出していたと言って良い。
 中世における種族の争いも、既に佳境を迎えているというわけだ。

 ………奇しくも、その“凄惨な状況”を作り出した根本は極めて似通っている。
 実を言うと、どちらも事の発端はただ一石を投じられただけなのだ。
 元々燻ぶっていたもの、遅かれ早かれ火種となっていたもの、時間を掛ければ燃え広がるようなものを、この世界に非ざる者がほんの気まぐれと我欲で波紋を広げて火に油を注いだだけ。………言葉にしてしまえば、たったそれだけの一石が投じられただけで、此処までの事態になったのだ。
 撃っては撃ち返し、撃ち返してはまた撃たれる………血で血を洗うような惨い闘争の始まりだ。

 結局のところ、歴史を正す為に、あるいは乱すために現れたものが全ての発端となっている。
 本末転倒だ。時空を旅する叡智が、現在・過去・未来の全てが元来持っている価値を、まるで何度も書き直せる塵屑のようなものに貶めてしまっている。それに気付いている人間が如何ほど居ることか、気付いていて悪行を行える人間が如何ほど在ることか。
 前者の名前を愚者といい、後者の名を獣と言う。
 愛を知らぬ、情を知らぬ、生まれついて何かが欠け落ちた異常者。人間として備えられるべき“当たり前”が当たり前ではない、世界に必ず生まれる畸形。そこに至るまでどれほど世界が理路整然と回っていようが、必ずそのようなものは生まれるのだ。
 それは必然ではなく偶然で。得てして、その偶然の一言だけで世界は色を烈しく変えていく。

 例えば嘗ての騎士団長が、混沌に煽られ充てられていなければ、それを継ぐ者の覚醒が無かったように。
 例えば在りし日の勇者が、一人で旅を続けていれば、より凄惨な結末が待っていたように。
 例えば魔帝の行動がもしも少し違っていれば、ある将軍の離反を未然に防ぐことが出来たように。
 例えば王都に欲望と獣性の女が降り立っていなければ、このような惨状は起きなかったと言えるように。

 例えば―――。


「―――ようやく最深、ようやくお目当てですか。いやあ疲れました」
「あの回廊、老人の皆様には堪えるんじゃないですかね。もっとバリアフリーで行きません? 魔族の方々にもご老齢の方々が居るなら不満の一つでも洩らしてるんじゃないかと思いますよ、実際どうだか知りませんが。
 あ、どうもお初にお目に掛かります。時空防衛………なんとかのハザマです。以後はないと思いますが、この間だけお見知りおきを」


 たった今、魔帝の待つ間へと現れたこの男が、自分の欲望のために石ころを投げて波紋を起こさなければ。
 もう少し、魔帝城を取り巻く混乱の規模は小さかったと言えるように。

 その偶然の連続性こそが世界を形作る。
 知っているとも。毒蛇は知っているからこそ、“正しい歴史を”と嘯いて此処に来たのだ。

「そちらは、あー、敵ではなさそうだ。決闘が好みでしたら申し訳ありませんが、お力添えしますよ」

「(一番乗りではありませんか。ま、言い分からして敵対者扱いと見える。
  余計な口叩かれる前に―――というのも趣味じゃないんですよねえ、面白くない。どうしましょうか)」

 扉を乱雑に蹴破り、現れた男は大仰な会釈と共にその糸の如く細い目で周囲を見渡す。
 これより敵の指揮官を討つ人間の顔としては、実に、実に不釣り合いなほど張り付けたような柔和な表情。
 軽口一つ叩きながら現れたそいつは、“得体の知れなさ”の前に極めて感情と態度の“薄さ”を感じさせる。
 魔帝と思わしき姿のほかに、明王を彷彿とさせる四本腕を持つ氷像の姿があった。この様子を見る限りここの一番乗りとは行かなかった、と判断したのか、ハザマはけたけたと笑いながら、ギラードへと声を掛ける。
 その口調には多少ばかり慇懃無礼のケがあるが、かといって煽るようなものではない。
 ただ饒舌で、ただ人を食ったような態度に見えるだけで、その言葉に嘘はないのだ。そう―――ハザマとしては、別にこの魔像は本命ではない。どうでもいいものにプラスもマイナスも掛けはしない。ならば、どうにも敵と定めたものは合致するらしいし、精々持ちつ持たれつと行くのが彼の流儀である。


「そういうわけで、混乱の最中でありますが、だからこそ今のうちに」

「我々の仕事は歴史通りにことを進めるというワケでしてね。
 ああ、差し当たっては………特に貴女が生きていられると不都合なんですよ。魔帝殿」


 つまり、仕事の開始である。   、   、  、 アークエネミー
 手元でバタフライナイフを弄び、術式を展開して現れた事象兵器たる《ウロボロス》が鎌首を擡げた。

 正史において魔帝ヴェルメイユが死を遂げたというなら、その通りになって貰わないといけない。
 そうしてくれるのが自分の付いた陣営の望みらしいから、叶えてやるというわけだ。

 例え和平の可能性があろうが関係ないし、より良い形に出来るとしても知ったことではない。
 ・・・・・・・・・・・・
 だからとことんまで潰した。一石を投じれば、所詮かたちを持ち思考をする生命の動き方など見えて来る。後はどうなろうと知ったことではないし、その結果としてどうなろうとハザマの行動は決まっている。そうとも、最初から彼は“ハレの日”らしく自分の欲望第一で動くつもりでいたわけだ。
 この瞬間こそ、その目的のひとつ。
 魔族の王、正しき歴史では勇者に敗れて夢半ばで殺された者との対面。

 ―――そいつに、遠回しに自分の夢が破れることを突き付けた瞬間の表情が知りたい。

 ―――そいつがどんな夢を持っているから知らないが、
    恐らく自分が想像するより巨きなものだろう。だからそれを、是非踏みつけてやりたい。


「さあて、ガラではありませんが………脇役らしくお手伝いと参りましょう」


 そのためだけに状況を拵えたのだ。
 失敗したならばそれで良い、ハザマは確立していない■■に執着心などない。
 詰まらなかったら作業のように殺せばいい。
 如何に力が強かろうとハザマにとって“興味”がないなら有象無象だ。


 ―――だから、なあ。

    おまえの叫喚を、おまえの嘆きを、おまえの■■を。
    是非とも僕/私に聞かせておくれ、魔族の長。その役割を被る孤独な者、ヴェルメイユよ。


>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード

2ヶ月前 No.691

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/深淵の間/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 二人の旅の終着点。最後の決戦となる舞台へと、最後の主役が足を踏み入れる。その右手に眩い光輝を放つ聖剣を携え、その左手には蒼白の輝きを宿す宝石を手にして。父の遺志を継ぎ、人と魔が織り成す長き闘争へと終止符を打つべく、真の勇者は戦場に降り立った。清浄なる風の碧衣を纏い、魔帝城の最奥へと続く道を、不可視の速さを以て刹那に通り抜ける。
 行き着く先は城の奥底。因縁深き宿敵である魔帝が待ち受ける深淵の間へと、勇者は辿り着く。視線の先にある玉座へと座するのは、かの魔帝ヴェルメイユ。その魔帝と先んじて対峙していたのは一人の男の姿、そして四本の腕を持つ氷の騎士魔像。その氷像が、従える四つの御伽噺に深く纏わる存在である事を、彼女はまだ知らない。

「……お前が、魔帝ヴェルメイユ」

 構えた光輝の刃の切先を魔帝に向けながら。勇者の双眸は、魔族の王とされる者の身体を注意深く捉えて行く。魔族と言うよりは、人に近い肌の色。容姿自体も、耳が人と異なる形状をしている事を除けば、紛れも無い人であるその姿。これまでイメージしていた魔族の王の姿とは、真逆を行く魔帝の姿には思わず面喰らってしまう。そして同時に浮かぶのは、一つの疑問であった。彼女は本当に魔族なのか、と。

「戦う前に一つ聞きたい事がある。お前は何の為に、戦っているのかを、僕は知りたい」

 だが、先ずはそれ以上の疑問として。魔帝の目的が如何なる物であるかを、勇者は問い質す。あくまで人の絶滅を願う、悪逆非道の者であるのならば、此処で引導を渡し、父の仇を討つ事を望むだろう。人の守護者として、悪である魔族の王を討つ事に異存はない。彼女を殺さぬ限り、和平が訪れる事は無いのだから。
 然し、もしもその真意が、人との和平を望んでいたとするならば。彼女を葬らんとする刃を引き止め、然るべき問答を行わねばなるまい。人の和平を望みつつも、同時に魔族との和平も望んでいるからこそ、お互いの主張を交えるべきだと彼女は判断する。それで相容れぬと解れば、主張を潰す為に剣を揮うし、和解出来るとなれば、この剣を収めよう。
 彼女が望む物が如何なる物であるのか、その応えを知るまで勇者は攻撃を仕掛けない。殲滅よりも、先ず為すべき事は対談。人と魔族の和平を願う者として、魔族を統べる王が願い、そして辿り着こうとしている場所を知らんとする。

>魔帝ヴェルメイユ 氷魔像ギラード ハザマ

2ヶ月前 No.692

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【王都ロンカリア/大通り/橋川 清太郎】

腕の防御壁を突破し見事女性を撥ね飛ばす。博打は成功、魔法接続を断絶できた……かどうかは分からないがやれるだけのことはやりきった。

「ぐぅおおおっ!!」

バランスを崩し大きく転倒した。当然だ、重量均衡など一切考慮していない状態での突進、そのくせ速度だけは篦棒(べらぼう)に高いものだからそれはもう無様に転げ回る。

「流石に、無茶が過ぎたか」

地に伏したまま一人ごちる。
疲弊か慣れかは知らないが、例の興奮状態は幾らか静まり冷静な思考を展開出来るようになってきた。
スーツの破損状況を確認。全体的に50%を上回っており、Backdraftを保持、接触していた部分に至っては装甲がまるごと損失している。そして件のBackdraftはフレームから完全にひしゃげてしまい、この場での再使用は不可能だ。

「あの二人は……?」

身を捩らせ、魔族と女性がどうなったかを確認する。女性の方はどうやら今のが致命傷になったらしく、息も絶え絶えだ。間も無く彼女は息を引き取り、バイザーの生命反応も一つ消滅した。やがて魔族の体も少しずつ消失していく。契約相手そのものが絶命したためか、或いは別の要因か。

「いっそのこと、復讐鬼にでもなってくれればこっちもやりやすかったんだけどな」

こうも具体性のない博愛主義を貫かれては困惑するしかない。愛と平和を叫ぶだけでそれが実現するのなら世の中苦労しない。

(それにしても疲れたな、長いこと自律神経とかを強制的に活性化させられたからか?)

全身に倦怠感が溢れ、起き上がることすら億劫だ。出来るならこのまま横になっていたいところだがそうもいくまい。
未だストライキを続ける脊髄を叱咤し、鉛のような体に鞭打つ。上体を起こし立ち上がるという行為が、普段の何百倍の労力にも感じられる。やっとの思いで二足立ちになり、協力者の二人へ話しかけた。

「共闘感謝するよ、僕はこの通りまともに戦闘を続けられる状態じゃないから、帰還させて貰うね」

BackdraftとMadelephantの回収も忘れない。
見たところ彼らに大した負傷などはないようだ、身のこなしからして相当な場数を踏んでいることは明確である。

>>大通りall


【リインさんお相手ありがとうございました】

2ヶ月前 No.693

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_HV3

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/17代目葛葉 ライドウ】

「……?」

ライドウは言葉を発さずに怪訝な表情をする、この狼王の意図が掴めないでいるのだ。
暴威弾が交わされることは予想できていたが唐突にターゲットを変更するその不合理さがライドウには分からなかった。
こちらに銃以外に脅威たりえるものをみなかったのか? それは恐らく違うだろう。
英雄(あくま)二体を使役しているこちらを潰せば戦局は優位に進めるのは明らかだ、それをしないのは何故だ?
まさか、城壁の中に入ってより多くの人間を皆殺しにするためか? だとしたら舐めているとしか言いようがない。だが頭はいたって冷静だ。
”ヨシツネ”と”ジークフリート”の二体の仲魔を封魔管に戻すと新たに二体の仲魔を召喚する。
それはランサーに会わせると約束したばかりの幻魔だ。

「来い、クー・フーリン、スカアハ」

『おやおや、随分と変わった状況に呼びましたね17代目』

『あらまあ、セタンタが二人おるでな』

白い髪に額当てと軽鎧を着込んだ美男子と黒い円形の三角帽をかぶり黒いマントを纏った如何にも魔女といった風貌の女性を召喚した。セタンタというのはクー・フーリンの幼名だ。
後者は何故か正座姿で宙に浮いていることを除けば一応人間に見えるので問題はないはずだ、呼び出した仲魔はクー・フーリンとその師匠であるスカアハだ。
目の前にいるランサーの正体を看破しながらも二人の仲魔は戦闘態勢に入っている。
スカアハは即座に補助魔法である『スクカジャ・オン』を発動しライドウとスカアハとクー・フーリン、ランサーの速度を大きく底上げする。
ライドウと二体の仲魔はランサーの『突き穿つ死翔の槍』の射程圏内から大きくバックステップを踏んで安全圏に逃れる。

「俺は前に出る、クー・フーリンは魔槍の発射準備を整えろ、スカアハは援護だ」

『承知しました、これは”彼”に後れを取る訳にはいきませんね!』

『フフッ、負けず嫌いなところは変わらんのやね。ええよライドウ、おばちゃんに”任しとき”』

こちらのクー・フーリンは銀色の槍を一度空に投げて受け取り、魔槍の投擲体制に入る。魔力が槍に満ちていき銀色の槍が朱色に染まっていく。
スカアハはクー・フーリン短い詠唱で局地的に竜巻を起こす『ザンダイン』を狼王に放つ。
そしてライドウは底上げされた速度を以て『突き穿つ死翔の槍』によって巻き上げられた土煙を突っ切りながら抜刀。
背後より接近し斬り下ろし、斬り上げ、薙ぎ払いの三連撃、葛葉に伝わる剣術の基本型”煉獄撃”を放つ。
今度はライドウが仲魔を守るために前に出て仲間が援護と重い一撃を放つというさっきと真逆の陣形だ。
崩せるならば崩すがいい、”人間の知性”の真髄を見せてやる。クー・フーリンの魔槍はほぼ深紅に染まって今にも放たれんとしていた。

>ランサー、ヘシアン・ロボ、アベリィ・シルバラード、ALL

【いろいろと分かりづらい書き方になってしまいましたがランサーはランサー、仲魔のクー・フーリンはクー・フーリンで統一します】

2ヶ月前 No.694

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『王都ロンカリア/大宿屋/ジークリンデ・エレミア』

ジークが相手を警戒しているのもまた事実。
それとは別にジークは自分の持つ力がどの様なものなのか知っているために神経質になっている。
神撃の領域にいる人間の中で一際強い力を持つジークは特に。

「今ここで私(ウチ)が離れればあなたが何処かに行って被害を出すかもしれへんやろ?」

相手の攻撃に放った10球の魔力球は先と同じく打ち消すことに成功したが、
残りの5球は相手の障壁に再び防がれる。
そして依然として困っている様には思えない口ぶりで此方に話す未知なる相手。
確かに戦闘前とは異なり少々外が騒がしくなってきている。
戦闘開始してから其なりに経ってからジークはようやく相手と会話を行う。

正確な数は不明だが無数の風の刃が上下左右に前後と全方向からジークに襲い掛かる。
相手はさらに小竜巻を4つを出現させ、それが円を描きながらこちらに向かってくる。
無数とは言っても、100に到達してはいないようだ。
すぐにジークは再び「ゲヴェイア・クーゲル」を自身の周囲に展開する。ジークにとっては初めてだが今回の魔力球の数は45球。
魔力球を向かってくる攻撃にそれぞれ1球ずつ飛ばし、5球は変わらず相手に放たれようとした。

>>黄衣なる者

2ヶ月前 No.695

“ナルカミ” @sacredfool ★OfXQD6YXPi_D9v

【ディンカ/海底洞窟入口/アンリエット・エクレール】

 アンリエットは臆さない。それが如何に強大な異形だったとしても自分の勝利を信じて疑わない。どんな相手だろうと勝利を収めるという気概でなければ、自分の戦法は成り立たない。詰めて殴るの一辺倒。
 だからこそこの獣人との対峙も彼女にとっては人間を相手取るのと大差はない。道を塞ぐものを殴り倒すだけなのだから、それの力量だとか外見だとかはどうだっていい。問題はそれをどうやって倒すかに尽きるのだ。
 とはいえ彼女は人虎の言葉に戦意を高揚させている。無論、どのような敵であっても倒すことに変わりはないが、敵の性質次第では拳に込める力も入れやすくはなる。向こうが乗り気になってくれるなら、喧嘩を売った方も張り合いがあるというものだ。その点においては彼女にとって期待以上の相手であるといえる。通るには力を示さねばならない。紛うことなきゲートキーパー。拳を振るうに不足はない。
 洞穴のアーチから人虎が剣を掲げ跳躍する。彼女に恐れはない。寧ろ、彼が醸す風格に喜びを覚えてさえいる。力のある者と闘うこと。喧嘩屋にとってこれほど嬉しいことも少ない。しかし高揚しながらも冷静に、彼女は跳ぶ人虎を見る。そう、見る時間は充分にある。彼の初太刀は小手調べ。敵が主にどのような戦術をとるかの様子見。ならば期待に応えるしかない。向こうもこちらを見た時に予想の一つとして挙げられただろう。元よりとれる戦術など一つしかないのだ。
 敵の攻撃をいなして殴る。基本にして究極の戦術。

「そうかい、楽しめッといいなァ……!」

 剣の大振りなど、稲妻たる彼女にとっては欠伸が出る。それが開戦の、体勢を整えた状態だったなら尚更のこと。楽しむも何もない。この場で動かなくなるまで殴ってやるだけだ。

「オレも拳(コイツ)にゃ自信があっからよ……」

 剣の一撃を回避するに容易い。稲妻は身を横へ流すと、地へ降りた人虎へすかさず反撃の拳を打ち込む。電撃を纏わせて強化した拳の一撃は堅牢な装甲も硝子と砕く。生身で受ければ戦闘不能は想像に難くない。
 人虎の戦術がどうであれ、こちらがとる戦術は先に言った一言に尽きる。だから彼女に小手調べなんてものはない。敵と向き合ったならば、その全てを渾身の力で打ち砕く。遠距離から撃ち抜いてこようが、近距離での殴り合いになろうが、それは一つも変わらない。
 ただ……どうせならこっちの土俵に乗ってきてもらう方が有難い。勝ちやすいからだとか打算的な理由がないわけではないが、敵の力量や想いなんかを推し量るのに最も適するのは拳を交える以上にはない。どれだけの力を込めているのか、全力なのか、手抜きなのか……拳には全て伝わる。拳に込めた力に嘘は吐けないものなのだ。
 何よりも……やりやすい。遠距離から撃ってくるヤツを殴りに行こうとするよりも、実際に殴り合って血潮の熱さを感じる方が、ずっと。

「せいぜい楽しませろやァ!」

 人虎は魔族とあって巨漢だ。妙齢の女性として年相応の矮躯しかもたない稲妻は、それでも臆さない。かえって意気揚々と啖呵を切る。拳に加えて顎を狙った跳び膝蹴り。肉弾戦における彼女の破壊力は言うに及ばないが、同時に機動力も侮ってはならない。一辺倒である分、極まりは勝利を容易くもぎ取れる可能性を秘めている。

>>魔獣ヴァグネル


【こちらこそ遅れて申し訳ないです……】

2ヶ月前 No.696

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【マロニス城/厨房/ミコルナ】


凄味を含んだ返答にも、ただその反応が面白い様に顔を綻ばせる彼女。揺れる尻尾はその振れ幅を増し、はためく翼も何処となく浮かれ気味に見えるだろう。体温の高そうな肌、浮かぶ笑みは年相応。魔族の中で人間の年齢に例えてもかなり幼い部類の彼女、それはもう楽し気。
彼女の様な子供にも、化粧のノリのように良い性別超越生命体の集団。それが芸人集団と見えた理由の一端でもある、保護者ことレーヴの下へ向かっていた彼女は質問の答えを待つ。
そう、あの性別超越生命体の性別が何方かを問うたのだ。言うなれば身体は漢、心は乙女、見た目も乙女、しかし気性は漢の如し。後に本人から語られるように、それは一つの稀有な存在なのだ。それをこの興味の塊の幼子にどう教えるのか。
返ってきた答えは何とも気遣いのあるもの、傍から見れば男でもきっと女性と思っているのだろうと。間違いなく百点の答えだ、尤もそれが彼女の納得を得られるかは別ではある、そしてその本人が目の前にいたことも運がなかったのだろう。

「……あたし、分かんなーい。お兄さんなのにお姉さん?おにねえさん?でもアタシって言ってるし……でも、あたしもあたしなんだけどなー。」

小首を傾げながら唸る、もし彼女の思考が可視化されていれば可愛らしい角の上には疑問符が浮いていることだろう。しかし考えている暇はない、レーヴが性別超越生命体の群れへと飛び込んでしまった。
そこで漸く略奪をしていることに気付いた彼女、レーヴが飛び込んだのを見てから自身の獲物である得物を取り出す。彼女は知らぬが名を「デーモンの髭」、これ一つで多彩な戦略を取れる名弓である。だが彼女は準備に飽きる為その真価の半分も発揮できていない。
しかし侮るなかれ、齢十五という年齢で人里を襲う魔族を単独で追い払う事三桁に届くほど。見た目の可愛らしさに相反し、その実力は一流の戦士の如く。如何せん気分に左右されるもののレーヴが共に居る戦場であればその心配も薄い。
勇ましい掛け声とともにレーヴの閃光の四撃を避ける性別超越生命体の頭領、やっぱりお兄さんなのかな?という疑問を抱きながら番える十数の矢、短弓の形を取る今の弓の限度を以って番えられるその矢。狙いはレーヴの隙を穿つ攻撃の相殺。
決して理論で構築された訳ではない思考、ただ以前戦った魔族はこうしてきたから、経験のみで狙いを定めるそれは狩人の勘。美しい歌に興味こそ惹かれるも気は緩めない、いや正確には興味はそちらに向いているが同時にその弓も獲物を待ち構えている。
迫真の表情で詠唱の締めとされた心の叫びの如くの声、特徴的な顔をさらに尖らせる様にすら見える性別超越生命体の頭領から放たれる流星、見た目こそ小さいが威力は十分なそれをレーヴへと襲い掛かる分にのみ矢が放たれる。

「すごいねー!姐さん歌も綺麗!でもー、レーヴはあたしのだからー、駄目なのー!いっくよー!」

姐さんと周りが呼んでいたから、彼女はあの性別超越生命体をそう呼ぶことにした。その意味は良く分かっていない、でもお兄さんでもお姉さんでもないならその方が良いのだろうと彼女なりに考えた結果だった。
自身に放たれる流星を翼を羽ばたかせ、宙を踊る様にきゃーきゃーと喜びながら避け続けていく。その合間合間に十数の矢がレーヴを狙う流星を霧散させていく、散る魔力の残滓に綺麗という感情を持ちながら。さて、この弓の特徴として放った矢が実体と精神体の双方に作用する。それはどういうことか。
そう、レーヴへの流星を相殺させた矢は実体部分であり、放った総勢数十に及ぶ精神を傷付ける矢が姐さんへと襲い掛かる。相殺の為に放たれたそれ、最終的な狙いが全て標的へと向かうその腕は天性の物。
その内、三本程度はレーヴへ向かっているのは悪戯心。どういう反応をするか、どんな行動を取るか、お気に入りであるレーヴのあらゆるものが興味の対象。故に、流星の脅威は去っても背後から飛来する精神の矢を避ける必要がある。
小悪魔的な笑みを浮かべながら未だ迫る流星を避けながらレーヴを見つめる、その感情は興味に近いもの。何れ変わりゆくとしても今抱くのは興味以外の何物でもない。
―――レーヴはどうするのかなー?あたしから攻撃されるなんて、思わないだろうし―?

>>レーヴ・カストリス ガドン・バルザック

2ヶ月前 No.697

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【マロニス城/ホール/城前/ユーフォリア・インテグラーレ】

ここまでの口振りからして、暗黒騎士は自らの実力に相当な自信を持っているようである。同時に感じられるのは、底知れぬ悪意。それこそが、彼を象徴しているといっても過言ではないだろう。
人間という種族自体を見下しているようにも受け取れる回答を返すエクスデス。されど、ユーフォリアが怒りを抱くことはない。元よりまともな問答は期待出来ない以上、気にするだけ無駄だ。
戦闘における数的有利を活かすためには、味方との連携が必要不可欠。ダグラスが時空防衛連盟入りを果たしたのはつい先程のことだが、ユーフォリアとはそれ以前より面識がある。
大学時代には激しく主席の座を争いあった二人は、お互いのことをよく理解している。よって、共闘はこれが初めてであっても、息を合わせることは難しくなかった。
通常であれば間違いなく強みとなる点。だが、今回においてはそうはならない。何故ならエクスデスは、疾うの昔に、ユーフォリアとダグラスの関係性を見抜いていたからだ。

一斉射撃が敵の身体を焼かんと襲い掛かる。それに反応してエクスデスが取ったのは、魔法による対処。反射か? いや、違う。彼はあろうことか、自らそこへ魔力を流し込んでいる。
何らかの意図があることを推測し、警戒を強めるユーフォリア。その真相は、次の瞬間に明かされることとなった。解き放たれる光。破壊の波動が、周囲の存在全てを消し去っていく。
すれ違い様に攻撃を仕掛けた彼女が被害を被ることはなかったが、ダグラスが心配だ。だが、彼は簡単に死ぬような人間ではない。味方の生存を信じ、ユーフォリアは更なる追撃の準備へと入る。
暗黒騎士とて、無敵ではない。その証拠に、先程放った氷の魔弾が、彼の鎧に確かな傷を刻んでいる。必ず勝利を掴めるという手応えを感じるが、相手は狙いを彼女に定めた。

戦術的な側面で考えれば、至極当然のことであるといえる。数で不利な状況において優先して倒すべきは、自分にとってより大きな脅威をもたらす方であるからだ。
勿論、先に簡単な方を叩いて一対一に持ち込むという選択もあるにはあるが、エクスデスは前者を選んだということ。追跡体制へと入った彼の動きは、見た目に反して凄まじく速い。
徹底して接近し、遠距離に退避させない作戦か。ならば、こちらにも考えがある。ユーフォリアは相手の見立て通り、基本的には魔術師型であり、遠距離戦を得意としている。
しかし、それは接近戦が不可能という意味には直結しない。短時間の詠唱から放たれる連続の光弾。右手、左手が振るわれる度に、虹色の球体が、エクスデスへ向けて放たれる。
それでも、敵の勢いを削ぐには至らず、彼女は突きへの対処を余儀なくされる。咄嗟に身を屈めることで、紙一重でそれを躱すユーフォリア。されど、相手の攻撃はまだ終わらない。
荒れ狂う真空波。まともに受ければ重傷間違いなしの大技だが、それが彼女に到達することはない。何故なら、この場に現れたもう一人の乱入者が、エクスデスの追撃を阻害したからだ。

「詳しい説明は後でするわ。ヴァイスハイト、貴方も無理はしないでちょうだい」

ヴァイスハイト・インテグラーレ。ユーフォリアの従弟であり、何かと彼女のことを気に掛けている人物。最初の言葉は、一人で前線へ出たことに対する説教のようなものであった。
護衛ならばいない訳ではないのだが……と考えていたところで、彼もその存在に気付いたようだ。どのような経緯があったのかは、説明すれば長くなる。故に、今は戦闘に集中するべきだろう。
地面を蹴り、加速するユーフォリア。彼女は敵が接近戦に持ち込むことを狙っている状況で、敢えてそれに乗ることにより、思惑を崩すという作戦に出たようだ。
エクスデスに激突する寸前で跳躍し、空中で右足に炎を纏わせる。同時に無属性の魔力弾を宙に浮遊され、まずは火属性の衝撃波を、回し蹴りによってそこへ撃ち込む。
すかさず逆の左足に氷を纏わせ、今度は逆回転の回し蹴り。すると、炎と氷の魔力を宿した弾丸は、周囲に相反する二つの属性の奔流を撒き散らしながら、猛烈な勢いで進んでいく。
反作用によって、弾丸は着弾と同時に大爆発を起こすことだろう。たとえ回避したとしても、その範囲外に逃れられなければ、傷を負うのは確実。敵がセオリー通りに回避を行えば距離が離れ、必然的に遠距離戦となる。ユーフォリアはそこまで予測した上で、この攻撃を選択したのだ。

>エクスデス、ダグラス・マクファーデン、ヴァイスハイト・インテグラーレ

2ヶ月前 No.698

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【王都ロンカリア/大通り/仮面ライダービルド→桐生戦兎、仮面ライダークローズチャージ→万丈龍我】

「……し、しまった!」
渾身の一撃が、決まった。
怪物は大きなダメージを負い、地に伏せた。しかし『飼い主』の方は空に放り出されてしまった。
とっさに助けようとするも間に合わず、『飼い主』は地面に激突してしまった。

『飼い主』からどくどくと、血が湧き出てくる。

「……」
戦兎も万丈も、見ている以外に何も出来なかった。
やがて『飼い主』は死に、怪物もその体を失いつつあった。
怪物は『飼い主』を抱えてどこかに去っていく、戦兎は黙ってそれを見送った――――

「いいのか? 追わなくて」
「いいんだ……多分もう暴れねぇよ。それよりも……」
スパークリングボトルをベルトから外し、変身を解除する戦兎に万丈が問うた。
戦兎もそれに答えるが、どこか空元気であった。
やはり『飼い主』を死なせてしまったことはショックだったのだろう。万丈はもうそれ以上は何も言えなかった。

――――共闘感謝するよ、僕はこの通りまともに戦闘を続けられる状態じゃないから、帰還させて貰うね
「わかった、俺たちはまだ残るつもりさ」
「あいつらを止めなきゃいけねぇからな!」
やがて全てが終わり静けさが戻ると、一緒に戦った男が戦兎たちにこう言った。
二人もそれに元気よく返した。

戦兎の平常心ははかろうじて保たれたものの、のちに平常心を保てなくなる事態が起こってしまう(※本編21話)のだが、それはまた別の話。

>オムニス・デューザ、清太郎および周辺all

2ヶ月前 No.699

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/城壁・上部/クジャルナ・クオーク】


再び空を切る音越える脚部、戦況を読み違えること自体が珍しいこの男。僅かに鉄面皮の表情に疑問が浮かぶが、それもすぐに消え失せる。それだけ相手が上手であるだけの事、今まで苦戦がない状況が有り得なかっただけである。
そも、不利な状況を選ばずにいたこともその理由に挙げられよう。だがこの状況で退く選択肢は殆どない、この場での歴史改変が必須である以上それを見届けるまでは残らねばなるまい。
いい加減に鬱陶しくなってきた毒霧、致命的ではなくとも無駄に手傷を負うのは避けたい。故に地への踏みしめ、その風圧を以って吹き飛ばす。これで視界も良好、少しばかり身体が鈍ったような気もするが健常の範囲内。
開けた視界で確認するは隊長の腹部の銃創、成程読み自体は然程間違ってはいなかった。であれば致命的な攻撃を避け続ける敵の手腕、評価すべきはそこだろう。されど、それがいつまで続くか。

「目が覚める?救いようがない?ハッ!馬鹿も休み休み言え、我は正気であり、貴様に救われるほど落ちぶてても居らぬわ!」

視界に両者を含め、言い渡すは自身の正気、正義。それは逆に言えばこの男に救う余地などなく、何処かで道を踏み外した以上は戻れぬことを示す。この男に在るのは自身の正義、それを崩さねばその意志は止まることはない。
女性と隊長は共に近接戦を仕掛ける、片や重力を込めた拳、片や面妖な小筆。この男の得意とする距離に近付かねば打開は出来ないと踏んだのか、それともただ決着を急いだだけか。
何方にしても下策、この男に数で勝る以上攻めさせれば互いが防ぐ合間に片割れが背を取る。それで何時かは倒せる、勿論防ぐ側は認識外の踏み込みを見切り、命砕く体術を防ぎきらねばならないが。
だから、明確な詰みでもない以上この男に守勢へと回らせるのは相応の危険を伴う。何故か、攻撃への対処はこの男が得意とするところであり、敢えて受ける事でその隙を確実に狙い、命を刈り取るからである。

「民など後に湧くもの!味方など力なくば寄らぬもの!力なき魔族の味方など居らず、民など多数の下にしか湧かぬ!故に―――」

迫る重力を帯びた拳、風切り音で判断する背後から襲う八に及ぶ筆による爪撃。互いに即席とは思えぬ息の合った一撃、例えこれを避けたとしても味方同士で打ち合う可能性は万に一つもないだろう。
ならば危険を冒してでも、狙うは反撃。どちらがより重いか、それは重力の拳。特性上魔族の肉体であろうとも砕けかねない、であればまだ女性の魔力の一撃は受けられる。だが、受けねば隙は出来ない。
丁度よく、全力を発揮できない左腕がある。拳を振るう以上、振りぬかねば威力は出ない。それは重力により威力を増したとしても変わらない、元の威力が低ければ強化など意味がないからだ。
だからこそ、左腕を犠牲にして全力で破壊させる。骨が砕け、肉が裂け、腕が爆発したように受けた肘より先が鮮血を撒きながら城壁の下へと飛来していく。背に走るは鋭き痛み、魔力の籠る筆にて背に描かれるは血の絵画、だが双方を受けて怯みもしなければ、止まりもしない。

「―――我が上に立たねばならない!」

左腕で受けた反動をそのまま腹部を狙った右脚の蹴り、その鋭さは研ぎ澄まされたものであり打撃よりも斬撃に近い。故に受け止める手段はなく、攻撃の隙に差し込まれる回避も困難な一撃。速度も人間の認識など優に超え、拳を振るった以上は回避のしようがない一撃。
流れる様に背後に繰り出す左脚の回し蹴り、即座に軸足を変えたことで速度と威力共に右脚の物よりもの劣るが致命には事足りる。狙うはまたも銅、斬撃には及ばぬが鋭い打撃には変わりない。胴に刺されば心の臓へと達することも容易い。
自身の身体を囮にし、確実な隙を以って穿たれる致命の一撃。自身の危機を最低限の代償を以って、敵の排除にへと充てる。防御も回避も至難どころか不可能の域、それを為されたのならばこの身持つ限り何度でも不可能を与え続けよう。
この男、大多数に不要と断ざれるべき存在。されど、戦闘能力と信念だけは揺ぎ無いほど。唯では朽ちぬ、唯では死なぬ、唯では諦めぬ。ならば、動かぬまで砕くしかないだろう。

>>葛飾北斎 ギルバート・トムフール

2ヶ月前 No.700


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