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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/07/13 02:23 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_ouC

―――現在は、最終章です―――


最終章:「Chrono Crisis」

激しい戦いの末、歴史是正機構に打ち勝った時空防衛連盟。晴れて時空を護り抜くことに成功したかに思われた矢先、それは始まりを告げた。

まるで世界そのものが崩壊するかの如く、ひび割れていく空。その向こうから現れしは、正しき歴史を紡ぐ使者。

彼らは、人類の捻じ曲げた歴史を修正するべく、この世へと降臨した。これこそが、時空断裂。積み重なった歪みが、限界に達した瞬間であった。

改変に改変を重ねた今の世界が正史に塗り潰されれば、そこに生きる者達は"もしも"の存在と化してしまい、歴史の闇へと葬り去られてしまう。

それは即ち、世界の崩壊といっても過言ではないだろう。時空断裂による時間の連続性消失を防ぐためには、彼らに戦いを挑み、勝利するしかない。

人類が罪を犯したのは、疑いようのない事実。歴史を変えるなどという禁忌を犯した種族には、当然の報いであるかも知れないが……そんな人類も、生きている。

生けとし生ける者、全ての願いは、今日を、明日を生きること。黙って死を受け入れるなどということが、出来るはずがない。生きたい、と願う限り。

これは、明日を手に入れるための戦い。自らの存在を世界線に、時空に刻み付けるため、時空防衛連盟は次元を超える。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

最終章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-286#a


・現在イベントのあるロケーション

狭間世界:最終決戦

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讐心名誉顧問 @sacredfool ★uLPVqbm99T_D9v

【グリア村→魔帝城/魔将軍の間/シャル・ド・ノブリージュ】

 辺り一帯に頭を割るような爆音が木霊する。大地に深々と突き刺さった大剣が引き起こす、核とも見紛うばかりの爆裂。避けるには全力後退あるのみ。しかしそれは叶わないはず。こちらの隙を突くのに躍起になっていれば、予想外の反撃に対しては後手に回らざるを得ない。この噴火を受ける術などあの男には恐らく持ち合わせがなく、かといって後退するには余裕がない。消し炭になるしかあるまい。だが――
 なるほど地の利を活かされたらしい。あの男が持つ能力では受け切れない炎は、彼の身のこなしから作られる大地の盾で防がれる。地形を利用した天然の防壁によって受ける灼熱の軌道を逸らし、致命傷だけは避けたようだ。無論、戦闘を続行できるようなものではないのは明白。引導を渡すには容易いかと思われたが、半身に大火傷を負ってもなお退却するだけの余力は残しているらしく、捨て台詞を残すと一瞬にして木々の隙間へと消えていった。追えなくはないが……ここで深追いする必要もない。村の解放が先だ。突入を果たせばここグリア村の奪還はそう遠くない。となると残るはあの男の言った一方の――

「総統、グリア村は概ね制圧しました。次は――」

 魔道帝国のロンカ村襲撃に端を発する古代の時空振動はここから終息へ向かってゆく。時空防衛連盟の尽力により歴史の変化は防がれ、正しい歴史が紡がれていくこととなる。襲撃に失敗した魔道帝国は主要戦力を失い、暫くは再起不能となった。ここに一つの時空戦争が終わる。この時代の歴史は守られても、また歴史是正機構によって次の歴史が狙われるだけだ。奴等を滅ぼさなければ未来の平穏は戻ってはこない。連中を追うにも足掛かりがなく、後手に回るしかないのが現状だ。
 だが、泣き言を吐いてはいられない。魔の手は既に動き出している。古代の歴史改変に失敗した是正機構の次の標的は中世、AD1074。人と、人ならざる者……魔族の、闘争の時代。

 仕事上避けられないとはいえ、時間遡行は不思議な感覚を伴う。膨大な情報の海を漂うような、得体の知れぬ浮遊感。ともすれば目のくらむ時間の渦に巻き込まれるような高揚。その先に待つのは……己の見知らぬ時代。書物からしか得られなかった風景。マロニス王国王都ロンカリア。長い歴史に裏付けされた都市の威容は、未来とはまた違った雄大さだ。ここもまた、戦火に包まれることとなる。先ずは王宮へ。
 トラブルも予想されたが、思っていたよりは恙なく王国へこちらの意思を表明することができたと言えよう。マロニス王国と時空防衛連盟との同盟。言うまでもないが、魔帝軍と歴史是正機構もまた同じく連合を組んでいる。彼らと激突し、勝利を手中に収めなければならない。古代がこちらの勝利で終わったのだ、中世でそれができない道理はない。

 マロニス王国から遥か東の孤島、魔帝城。魔族の巣食う欲望の根城。専守防衛の防衛連盟総統に対しこの副総統は、その肩書きにそぐわぬ積極性で敵陣へと切り込んでいく。立ち塞がるのが人外の力を持つ魔族であろうと、赤熱に染まった巨大な刀身はそれらを易々と灰に還す。それがいかな数であれ、彼は寧ろ望むところである。彼が輝くのはこのような一対多……自らの得物による殲滅戦において彼の右に出る者はいない。
 やがて彼は王城の一室の鉄扉を蹴破る。そこに居た者が人間でなく、敵である魔族と判断するに充分な材料があることを認めると、すぐさまに剣を振るう。

「……焼かれろ」

 これが敵でなかったら何だ。外見は言うに及ばず、味方であるはずの他の魔族を吊し上げて拷問とは随分な趣味だ。万が一味方だとしても自分のこの行動が正解なのではと思えてくるほどだ。充分すぎる。外道、間違えようもない外道。今すぐにでも消毒してやろう。剣を振るえば願わずとも生じる紅蓮の焔。悪しき意思を断ずる正義の炎。闘志を受けて燃え盛れ。

>>フィラッサ

8ヶ月前 No.501

わんわんお @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/ヘシアン・ロボ】

.    、  、    デュラハーン
 ………それを、ある者は首無し騎士と評した。
 なるほど言い得て妙だ。狼に跨り死を振り撒く片割れにスポットライトを当てたのならば、
 確かにこれは死の運び手、馬を引き滑走して首を刈る殺戮の象徴と呼ぶに相応しきものだろう。

 だが、そんな機構に無く、この狼に有るものがひとつだけある。
 それこそが決定的に、御伽噺のような遠さではなく、密接したものであるとこの場の全てに教えている。

 ・・
 殺意だ。憎しみ、恨み、呪い、苦しみ、ひっくるめたマイナスのエネルギー全て。
 遠くからでも感じさせる、狼の瞳に宿るぎらついた感情は、偏に動く者へと向けられていた。正しくは、動いて、やって来た生命のうち、こと人間であるとカテゴライズ出来る全ての存在に。
 到着した紅槍の英霊と、召喚された悪魔(正しくは四聖獣の長と呼ぶべきなのだろうが)に対してのそれが明確な妨害者であることの敵意だけだとするならば、どうだ。近距離に居る相手よりも、どういうわけかこれの殺意は遠距離の者へと向いていた。ともすれば、それは好戦的に仕掛けるように躍り出た者達が少しでも態勢を崩せば、構うことなく飛び込んで仕掛けに行くかのように。

 その矛先は、アベリィ・シルバラードに。
 あるいは、葛葉の当主に。主にこの両者へと、獣を動かす原動力のベクトルが傾いていた。
 敵意だけでは説明できず、理屈には敵わず、故にこそ決してこの蒼狼が捻じ曲げることのない感情。
 それは、殺意を向けていた片割れである彼女が………アベリィ・シルバラードが、人間の叡智の代表とも言える銃を使って、この復讐者たる狼王と首狩り騎士を狙った瞬間に―――周りの人間全てを竦み震え上がらせるような勢いで増幅した。行動の瞬間に、抑えていた蓋と箍ごと吹き飛ばすような勢いで。



 ―――死ね、死ね、死ね、死ね。
    苦しみ、悶えて死ね。毒を喰らわされた仲間のように。
    頭を抉られて死ね。あの細長い棒で、頭を吹き飛ばされて死んだ仲間のように。
    無惨に息を絶えさせて死ね。縄で首を絞められ、物も言わぬ屍に変わった仲間のように。


「―――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!」


  ―――なんと秩序的な殺し方だ。獣である自分では到底真似出来まい。
     だが、だからこそ自分のやり方で殺してやる。
     おまえたちが殺した分、俺がこの牙で、この爪で、この顎で、おまえたちを殺してやる!



 狼が、駆けた。
 特注の魔銃、並の魔族や敵性存在ならば反応よりも前に消し飛ばす正確無比な狙撃を前に、
 しかしその殺意を鋭敏に獣の嗅覚で感じ取ったのか、大地を揺るがす咆哮と合わせてこれは疾走する。
 荒々しい一連の挙動は、しかし生物としてあまりにも完成された挙動である。跳ね橋から城壁内の狙撃手に狙いを定め、最短距離で“殺す”ためだけにエネルギーを使う。弾丸は疾走を始めた狼には当たらず、首なし騎士の鎧を僅かに破壊するに留まる―――守勢に回ろうとしないそれは、自らの命を度外視しているかのような有り様だ。まるでそれは、自らより“人間の殺害”を優先するかのように。



 されども、あくまでそれは“狼の”挙動だ。
 首なしの騎士が突撃まで物言わぬのかと言われると、これまた違う。

 ………すれ違うその瞬間、朱槍の英霊クー・フーリンとライドウへ、暴風が奔ることだろう。

 それは刃だ。接触と同時、無数のシェイプシフターもかくやに広げたその腕を首なし騎士が振り翳し、すれ違いざまに首を刎ね飛ばす横長のブレードに形を変えさせて、旋風《つむじ》が如く左右の両者を襲わせただけのこと。
 それも一度ではない。すれ違うさまに叩き込まれる斬撃の総計は両者それぞれに対して十を軽く越える。
 彼らほどの猛者であるならばそんなことはあるまいが、瞬きする間の反応も出来ぬなら瞬時に細切れだ。………特にライドウの方には、明らかに戦力として数えられるだろうコウリュウを“無視して”、ライドウだけへ集中砲火を加えた。

 召喚師であるならば頭を潰す。
 あの一瞬でそれを把握したが故の挙動であり、そして―――狼の本命は、そもそもアベリィだ。

 攻撃が終わればすぐに距離を離す。あくまで首なし騎士の斬撃は守勢に回らせないための挙動であり、
 同時に明確な脅威を認識させるためのものだ。背を向ければ、構わず殺すという威を理解させるためのもの。
 よもや戦士である槍兵が、歴戦の徒である召喚師が、その程度のことを把握しないはずもあるまい。


「■■■■――――ッ!」


 咆哮と共に、跳躍して飛び掛かり、その肉体によるボディプレスを行う。
 時速200km超の加速から繰り出された急降下からの物理的な質量爆撃は、アベリィの居るだろう民家諸共踏み潰して粉砕することさえも容易い。狙撃手の優位を活かさせない戦略は、しかし獣の理屈とは思えないほどに理路整然としている。いずれにせよ、アベリィが立ち止まるならば民家ごと構わず押し潰し、その質量で人間一つ程度容易くプレスして肉塊に変えることだろう。

 そして同時に………此処で暴れ回ることによって、影の魔物への注意を一切向けさせない囮役も買って出た。
 死を振り撒く獣の殺意は真なれど、これなるは狼王。理性と悪魔の如き智慧で以て群れを導いたモノなれば、その行動は潤沢な獣の生命力と強靭さに加え、知性が乗る完全無欠の殺戮者に相応しいものと言えよう。

>アベリィ・シルバラード、ランサー、ライドウ

8ヶ月前 No.502

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大宿屋/黄衣なる者】


うんうん、何か感じ取ったけど分からないみたいだねえ。本能は気付いても知識が追い付かない感じかねえ、久しぶりにそういう反応してくれて嬉しいねえ。ほら、皆屈強な精神を持っているからねえ。
まあ、他の客からは怪しまれるよねえ。宿屋に入っていきなり直前に入った客に話しかけて、芸を見せるって言うんだからねえ。人によっては不審者扱いだねえ、未知の恐怖が上回って助かったねえ。
さてさて、快諾してくれたはいいけどねえ。うん、考えてないんだよねえ。突然他の客の首を飛ばして人体切断、とかは趣味じゃないし、彼女に不意打ちするのもなんだかねえ。久しぶりに人間らしい反応をしてくれたしねえ。
難しいねえ、そうだねえ、一つ隠密を使って面白いことしてみようかねえ。この触手の身体と隠密をかけ合わせれば、芸の一つにはなるかもしれないねえ。うん、まあやってみようかねえ。

「ではでは、ここに魔術で作り出した鎌鼬がありますねえ。これを、こう。」

鎌鼬を作り出し、そのままローブの腹部辺りに直撃させるねえ。本当なら真っ二つになるけどねえ、ここは腕の見せ所でねえ、あくまで切り裂いたように直前で消して直後に発生させるんだよねえ。
そしてその部分から隠密を発動させれば不思議だねえ、まるでその部分から切れたように見えるねえ。さらに、触手の身体を伸ばしつつ切り口からどんどん透明の部分を増やせば下半身があるのに、上半身が浮遊しているように見えるんだねえ。

「さあさあ、空中浮遊ですねえ。鎌鼬で切断されたところから浮けるんですねえ、どうです?気に入りましたか?」

両手を広げて、彼女に問うねえ。少し勘が良ければ実際に斬られていない事には気付くかもしれないねえ、でも透明の部分は温度以外は隠せてるからねえ。さらに触手の身体と知らなければ種は分からないだろうねえ。
まあ、そんなこんなで芸を見せたけどねえ。うん、不意打ちしようかねえ。いやあ、立場上敵対しているからねえ、本当はしたくないんだけどねえ、嘘じゃないんだよねえ。
ふむ、先は彼女が気付けば戦闘だと言っていたって?ここで話すことが全て本当だと誰も言っていないねえ、ほらねえ、嘘つきじゃないけど正直者でもないからねえ。

「おや、魔術が滑りましたねえ。」

適当に誤魔化しを入れて彼女に風の刃を叩きつけるねえ、良くて裂傷、悪くて両断だねえ。他の客?騒ぎが起これば逃げるだろうねえ、そもそも他で騒ぎが起きてる以上逃げ出してる客が居てもおかしくないからねえ、それを早めるだけだねえ。
さあ、風と言う性質上見えない事を除けば簡単に対処できる一撃だねえ。彼女の腕前を測る小手調べと言う事にしようかねえ、うんうん、良い理由ができたねえ、そうしようねえ。

>>ジークリンデ・エレミア

8ヶ月前 No.503

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【ディンカ/岬/ザーシャ】


さてさて、俺も戦場に出たはいいが今までの不運がこれで清算されるってなら神様でもぶん殴ってやりてえ位だ。遥か前方に見えた黒い機体、同型機が居なけりゃ感謝してぶん殴る方の糞親だろうなあ。
いきなり遭遇、なんて幸運、クソッタレが。確かにぶん殴らせろとは言ったが心の準備もある、それが戦場に出てきて第一敵対者とかふざけんな。木端魔族の群れの方が幾万倍マシだ、ファッキン神様、序でに神様関係のあの糞親もファック。
さて、正直に言うがあれの事はよく知らねえ。情報にあるのは歴史是正機構の頭に御熱だってこと、それ以上の事は知らんし拾われたことも昔過ぎて覚えちゃいねえ。ただ、死にそうなのを食える分は保証してくれたことだけ覚えてる。
感謝とぶん殴りてえ気持ちは別だけどなあ!あのままいりゃあ他の奴が居なくなってたようになる、それを受け入れちゃあいたがまさか掃いて捨てるほどの扱いだったとはなあ!
相変わらずと言える程親しくもねえが敵味方構わず、組織の為なら殺すあたり情報は間違ってねえ。ま、雑魚に気を取られねえだけ十分だなあ。これで清々ぶん殴れる。

「よう、Clusterさんよお。いや、こういった方がいいなあ……お・と・う・さ・ま?」

まあこう言っても覚えちゃいねえだろうけどなあ、精々実験体Jくらいの認識しかしてねえだろうよ。人様に軽くあげられる程度の存在らしいからなあ、どっちの糞親も人間の命ってもんを軽く見過ぎた。
感謝もある、あるがあいつが気狂いじゃなけりゃあの話だ。あくまで真っ当な奴なら本当に心からお父様なんざ臭い呼び方してもいいんだけどなあ!どうせ俺を見たところで分からねえだろうなあ!
身長も伸びた!髪も伸ばした!胸は変わんねえ、糞が!右腕は触手になった、糞親が!左目も良く分かんねえものになった、糞が!これで覚えてたらなんだってしてやる、あの糞親のどっちかにでもパパだの言って甘えてやらあ!
有り得ねえけどなあ!片や実験動物、片や人外。誰が悲しくて池の底で千年暮らしたがるか!言いつけ守ってやったが迎えに来ねえ、どうせ飽きたらポイだろうがよお!
……よおし、戦意が漲ってきた。少なくとも堅そうだが……顔面?顔面っぽいところぶん殴る、絶対ぇへこましてやる、人外に変えられた娘の腕力舐めんじゃねえぞ。何が悲しくて素手で岩砕けるようになるか!てめえらのせいだよクソッタレ!

「認知しろなんざ、言わねえ。言わねえからよお……まず、ぶん殴らせろ。」

風の魔術で自分の身体を空にいる糞親目掛けて吹き飛ばす、精密な動きなんざ必要ねえ。吹っ飛べば後はこの得物で叩き切るだけ、斬る事に特化し間合いも広い大曲剣。それに真空刃を加えて、切れ味さらにドンだ。
だが、斬る前に殴るのが先だなあ。だから空いた左腕で奴の顔面目掛けて思いっきり拳を振りぬく、さらにその勢いのまま右腕の大曲剣で両断するつもりで振りきってやる。
まあ、避けられるだろう。糞親は間違いなく空中戦に強い、だが最初はどうしてもぶん殴りに行かなきゃ気が済まねえんだよ。あの小さなころの感謝と純情な気持ちを返しやがれってんだ!
さあさあ、どっちにしても構わねえ。避けても次、避けなきゃ追い打ち、少なくとも痛い目は見せてえ。最初から全力でぶつかってやる、んでぶっ飛ばす。その後にもう一人もぶっ飛ばす。

>>Cluster

8ヶ月前 No.504

忠犬 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【魔帝城/海底洞窟/ロコ】

騎士団長を救うという決意と共に海底洞窟に侵入した一行を出迎える魔物はいない。不気味なほどの静けさが、却ってロコの警戒心をより強いものへと変える。
くんくんと辺りの匂いを嗅いでみるも、敵のものらしきそれは感じられない。というよりも、かつてここで死んでいった人々の腐臭が多く、正確に判別出来ない。
ロコの強みでもある嗅覚の鋭さは、無関係の匂いが多すぎる場所では役に立たないのだ。アンナローズに役に立てなかったことで、彼女は悔しそうな表情を浮かべる。
そんな時であった。彼女の耳が、こちらに近付いてくる足音を捉えたのは。瞬時にアンナローズを庇うような位置に移動し、腰を落としながら周囲を見回すロコ。
暗闇の向こう、洞窟の奥底から現れたのは、出来ることならば二度と会いたくないと思っていた人物であった。その姿を一目見たロコの顔に、実に不快そうな表情が浮かぶ。

「……会いたくなどなかったのであります。アンナローズ殿、気をつけるのであります。彼女は超の付く変態でありますよ」

元は魔帝軍にいたロコなら、不死公ネクロニアの名前は嫌というほど知っている。こんな形で再会を果たすこととなるとは、運がいいのか悪いのか。
少なくとも、彼女の悪行をここで終わらせることが出来るかも知れないという意味では、幸運かも知れない。当時は味方ということもあり手を出せなかったが、今はもう魔帝軍とは無関係。
真っ向から歯向かったところで、どこからも文句は出ない。ネクロニア自身からは出るであろうが、彼らはアンナローズのため、人のために、打ち倒さなければならない存在なのだ。

「あやつの話を聞いてはならないのであります。ここは私に任せるのでありますよ!」

ネクロニアの話を完全に無視し、ロコは攻撃態勢に入る。一点に集中していく土の塊。彼女の手が前方へ勢い良く押し出されると同時に、土の塊は洞窟の地面を転がり始めた。
塊は敵に到達するまでの間巨大化し続け、ネクロニアの眼前に迫る頃には成人女性の腰の高さほどの大きさとなっていた。こんな量の土に押し潰されれば、一溜まりもないだろう。
会話が通じない相手と話したところで時間の無駄。だからこそ、ロコは容赦のない攻撃を放ったのだが……相手にとってはそれすらも、ご褒美となってしまう可能性があるのだから恐ろしい。

>不死公ネクロニア、アンナローズ・フォン・ホーエンハイム

8ヶ月前 No.505

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【ディンカ/岬/Cluster】

黒翼が空に在る。 その事実だけで、この地は魔帝軍でもなく、ましてやマロニス王国でもなく"クラスター"と言う個人が支配していた。
彼は自身の空想を邪魔する部外者を絶対に許さない。
それは自らの素晴らしさと、その自らが妄信するヘルガ・アポザンスキーの理想を否定する凡人の存在を許さない。
クラスターは、命の価値と言う物は偏在する物と信じている、自らの素晴らしさと、高尚さが、狂った凡人共と同じ一単位で計られると言うのはおかしな事だと確信している。

だから、是正機構の副将は、ただ破壊を容赦なく振り撒く事が出来る、女子供、例外なく、それが仮に味方であろうと、邪魔をする者であれば殺す事が出来る。
……しかし、それでも、彼に無礼な口調で話しかけようと許される者が居る、それは、少なくとも凡人ではない者。 彼の理想や、彼が絶対の自信を持つ発明品を最低限否定しない者だ。

近づいてくる敵が居る……だが、クラスターはそれに見覚えがあったために、ミサイルの射程に入ろうとも攻撃はしなかった。
だから、ある意味では、ミサイルと言う長射程武器を備えるクラスターが先制攻撃をしてこなかった時点で、ザーシャは気づくべきだった、のかもしれない。

「なんだい、君は。 突然見ず知らずの人間にお父さん? とは、脳に蛆でも沸いているんじゃないのか?」

クラスターはあえて、最初は興味なさげに、全く知らない人物にするような対応を取った。
なぜならば、彼女が、ここに居る。 それだけでクラスターは大きな反省と怒りに駆られているからだ、その二つの感情が無ければ、彼は暖かく迎えたのかもしれない。

そして、そんな挑発じみた言動が効いたのか、あるいは最初からそのつもりだったのか、相手は実に短絡的なことに、とりあえず殴らせろと言ってきた。
これに対する反応すら待たずに、相手は空高く飛び上がる、なるほど、どうやら魔術を使っているようだ。

――僕はそんな知恵が必要だと言ったかな?

内心クラスターはそう毒づきながらも、接近してくる相手に対して、いつも通りレーザー砲やミサイルで迎撃するのかと思いきや……あえて射撃武器で迎撃せず、人型形態に変形して、右腕に装備されている五本のクローで相手の大曲剣を受けるのではなく"逸らす"。
そして追撃として振るわれる拳に対しては、左腕のクラッシュアンカーを絡みつかせて阻止、そのまま電流を流し込んでゲームエンドに持ち込むのかと思いきや、クラスターはザーシャの至近距離で、囁くように言った。

「もし覚えていなければ、僕を遠慮なく殴り殺せて幸せだったかい? 実験体、いや、手土産ちゃん? 僕は、そうだね――」

その瞬間、ザーシャの腕に絡み付いていたクラッシュアンカーが解かれ、たかと思うと、クラスターはその細長いが、かなりの強度を持つ脚部をさっと、相手の頭上にまで振り上げ。

「君は手土産であり、昔は実験体であったというのに、"切断していないが存在してなかった足や口を使って"僕の目に現れて喋っている。 その事実と自分のコントロールの未熟さに怒り狂うばかりだよッ!!」

そして、敵が地面に叩きつけられるように、まるで踵落としのように長い足を振り下ろした。
当たったか、避けられたか、そこについてはどうでもいい、今は初撃の段階だ、だが。

「君は僕が友人に渡した手土産でなくなってしまった! 手土産に口など要らないからね、なら君を作った者の責務として、僕が君を壊してあげなくちゃあならない!!」

この者の存在をこれ以上許すと言うのは、彼のプライドが許さない。
その友人が望んだから、ザーシャは今、こうやって人間のように動いているというのを知らないからこその言動であった。

そのままクラスターは、追撃するようにザーシャに向けて大量の誘導ミサイルを発射した。

>ザーシャ

8ヶ月前 No.506

竜狩り @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝軍/兵舎/アーケオルニ・ランドグリーズ】

威風堂々。業火を背に佇んでいるかの如き威容で挑戦者を迎え撃つは、魔帝軍きっての勇将"龍炎公"ヴァンレッド。武人としての誇りと指導者としての才覚を持ち合わせる彼は、魔族達の中では際立った存在と言えよう。
その首を取ることで得られる栄誉は一入だが、間違いなくそれは不可能に等しい。一騎当千、鎧袖一触。麾下の魔族達がそう噂する通り、彼を討ち取るということは、即ち王国の勝利に直結すると言っても過言ではないのだから。
孤高の戦士。届かぬ頂。彼を倒すなど、手を伸ばしても届かない絵空事。"朧"。まともな思考の持ち主なら誰もがそう判断し踵を返すだろう。
だが"竜狩り"のアーケオルニの辞書には懸念も諦念も存在しない。故に進撃する。挑戦そのものが死を意味するとしても、彼女にとってはそれすら本望。

何故なら。

「それがアタシの生きる意味だからだ」

龍炎公の、恐らく混じりけの無い興味から生まれたであろう問いを受け、平然と言い放つ。答えは"己の存在意義だから"。魔族狩り、イコール彼女の一生。竜狩り、イコール彼女そのもの。
復讐でも狂気でもない、使命すら遥かに超越した境地。その道から外れることはない。故意に外れることも出来ない。逃げ出すなど出来るはずもない。
魔族を、竜を狩るのをやめた時点で、アーケオルニ・ランドグリーズという人物は死んだも同然なのだ。このような解答を受け取れば、多くの者は彼女が狂っていると確信するだろう。
段ビラを振りかざし、肉を断ち切ることにしか生きる意味を見出せない異常者。凶刃を振るい、屍の山を築くことでしか自分を認められない狂戦士。彼女の本質とは異なる、そういった評価が下されてしまうに違いない。

「"龍炎公"ヴァンレッド。その熱い血、浴びさせてもらう!」

向けられる切っ先。陽の光を受けて煌めく刀身。その危うい輝きに心臓が破れそうな興奮を覚えたアーケオルニは、自らも負けじと得物を翳して突き付ける。
同じ剣士同士の対決と言えど、その性質はまるで違う。ヴァンレッドが『自らの生き様と1000年の時を経て未だ消えやらぬ焔が刻まれた緋剣』"レヴァンテイン"の使い手だとすれば、アーケオルニは『無骨ながら積み上げてきた屍の血を吸い上げ咆哮する剛刃』"アトロシス"の使い手。

揮われる炎刃。地獄の底の底、亡者達の身を苛む釜の湯ですら、ここまでの熱は有していないだろう。石畳の床すら溶かし尽くすその熱量は、紙一重の回避を決して許さない。
並みの騎士であればひとたまりもないであろう灼熱の奔流。しかし竜狩りとて黙ってはいない。自慢の得物を手に―――

走り出した。彼女のとった策は回避の正反対。火柱目掛けて突っ込んでいくという正気を疑う暴挙。だがその表情を、自信と闘争心に満ちた動きを見ていれば、考え合っての行動であることは疑いようもない。
事実、アーケオルニはこの脅威に真正面から立ち向かい、跳ね除けてみせた。その手段とは即ち、巨剣による豪快な切り上げ。振るい抜かれた刃に伴う衝撃波が、床をめくりあげんばかりの力強さが、火柱を打ち消していく。
だがそれだけ大きく重量も桁違いの武器を振り回せば、当然それ相応の反動が返ってくることになる。余程の怪力の持ち主でなければ制御は能わず、逆に剣に振り回されてしまうだろう。そしてアーケオルニにもそんな力はない。
だが彼女には"技"がある。力のみに頼らず物事を進めるための技術が。剣に引っ張られるようにして宙を舞い、今度は自身に生まれた力の作用を以て、地面に突き刺さった剣を引き抜く。
さらにその過程で発生した遠心力を用いての強烈な横薙ぎ。石の柱ですら容易く断ち切る斬撃が龍炎公を襲う。
技そのものを見れば酷く単純かもしれないが、そこに至るまでのプロセスは凡庸な兵とは比べものにならない。本来致命的な隙となるはずの反動や力の作用を無理なく、そして最大限に活かす技術。それこそが竜狩りとして彼女の名を轟かせた何よりの武器なのだ。

>>"龍炎公"ヴァンレッド

8ヶ月前 No.507

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【魔帝城/舞踏場/サシャ】

あ〜あ、始まっちゃったか〜。そんな溜息のような呟きが、どこからか聞こえてくる。声の主は、サシャ。魔帝軍にて魔大将を務めるチェルの妹と言えば、分かりやすいだろう。
ただし、彼女は姉とは違い、全く以て野心を持っておらず、それどころか本心では人間との和平すらも望んでいる。先程の呟きは、そんな本心から来るものであった。
勿論、他の誰かに聞かれれば大事だ。だからこそ、普段サシャはあくまで魔帝の意向に従うという名目で、自分の意見を述べようとしたことは、一度もない。
出来ることならば、理想が現実になって欲しいものだが、人間と魔族がお互いに憎しみ合っているのを見る限りは、それも難しいだろう。種族の溝を埋めるのは、並大抵のことではないのである。

間もなく、自分も前線へ向かうこととなるのだろうか。話の通じる人間が相手だったら、どうにか説得して戦いを回避出来ないものか。色々なことを考えながら、舞踏場へと足を踏み入れるサシャ。
特に用事があった訳ではない。ただ、戦いが始まる前の、魔族の平穏というものを目に焼き付けておこうとしただけだ。魔帝の登場により、少なくとも魔族は、様々な種族の垣根を超えて団結することが出来た。
なれば、同じことが人間との間でも出来ない道理はない、とサシャは思う。そのためには多くの時間を必要とするかも知れないが、魔帝にはそれを可能としてくれそうな、不思議なオーラを感じる。

「うわぁぉ、あんま会いたくない人がいるなぁ。会いたくないっていうか、めんどくさいっていうか」

さて、感傷に浸るのもこれくらいにして、いざ出陣……というところで、サシャの視界の隅に一つの人影が飛び込んでくる。まさしく、この場に相応しい格好をした、美しい女性……ではなく男性。
世の中には様々な人がいることは理解しているが、さすがのサシャであっても少し気味が悪いと思う、いわゆるオカマ。ガドン・バルザックであった。
決して全否定する訳ではないが、進んで関わろうと思えないのも事実。悪い人ではないのだろうが、どうしても格好の先入観が強すぎて、苦手である。
気付いていないのなら今の内、といきたいところなのだが。彼が厄介なのは、能力を掛けた相手の視線を釘付けにすることが出来るという点。大抵の場合はこれを防ぐことが出来ないため、発動されれば最後ともいえるだろう。
どうか気付かれませんように。そんな願いと共に、そそくさと舞踏場を後にしようとするサシャ。果たして彼女は、面倒事に巻き込まれずに退散することが出来るのだろうか。

>ガドン・バルザック
【遅くなりました(スライディング土下座)】

8ヶ月前 No.508

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【ディンカ/岬/ザーシャ】


……期待しちゃあいねえけどなあ、案の定覚えていやがらねえ。どうせ数ある実験体の一つにしか過ぎねえんだよ、俺は。見ず知らず、蛆が湧いてるとまで言いやがった。そうか、……そうかよ。
じゃあ、ぶっ飛ばす。それしかねえな、覚えてねえならもうそこまでだ。ならぶっ飛ばす、それでいいんだ。どうせ覚えてねえことなんざ、最初から分かってたんだよ。だから、余計なもんなくなってやりやすい。
もう一切の未練なく、ぶった切ってやる。そう思い振り下ろした大曲剣は呆気なく逸らされ、ぶん殴ってやると思った拳はアンカーで絡めとられる。確か、そのアンカーやべえもんだった。
これで終わりとは情けねえ、だが終わってやるわけには行かねえ。振りほどいてやるために全力で腕を振ろうとした時、不意に兵装のミサイルを使用していなかったことが脳裏に過りやがった。
そこで聞こえたのは、殴り殺せて幸せだったかと囁かれ、いや!違う!重要なのはその後だ、何ていった。こいつは、この糞親は何て言いやがった。実験体?手土産ちゃん?それって、もしや―――

「お、私の事、覚っ、覚えて―――っ!」

瞬間、衝撃と共に地面に叩きつけられる。何が起きたかさっぱり分からない、でも確かに、あの人は俺、私の事を呼んで。そう、間違いない、覚えていた。覚えていたんだ!ああ、覚えていた!
本当に!本当に覚えていた!何てこと、僅かにでも記憶に残ってればと、断片でも覚えていてくれれば、そう思ったけど、ほ、本当に?夢ではない?こういった時痛みのない身体は不便だ、私には夢か現実かの区別がつかない。
ああでも、本当に、これが夢でないならどれだけ嬉しいか!ああ、あああああ!糞親に初めて感謝だ!まさかあの人が覚えているなんて、生きていてよかった……言われたことを守っていてよかった!
ああ!あの人が私を見て怒っている、ちゃんと私を一つの存在として見ている!嬉しい、嬉しいぞ!俺は、私は、いやこんなものどうだっていい!俺は、あの日救ってくれた人に覚えて貰っていた!
ああ、そうだ、そうだとも。あの人の友人様は、糞親は手土産じゃなくて一つの存在として俺を育てた!そしてあの人は一つの存在として俺を見ている!なら、ならば、後はどれだけの存在になったかを見せるだけだ。
漸く、漸く落ち着いてきたぜえ。後はどれだけ育ったかを見せるだけだ、糞親と朱槍の男の知識と言葉で俺はこうすると決めた。だから、やるのは決まっている。

「……そんなら話は早えなあ!壊されてたまるかってんだよ!俺は、手前らと敵になってぶっ潰す!そう、決めたんだからなあ!」

迫るミサイルに障壁で対応する、阿呆程に硬いこの障壁をミサイル程度じゃあ破れやしねえ。糞親の守りは固え、だがそれを攻撃に転用すりゃあもっと有効に扱える。
だからミサイルの雨ん中を障壁を盾に突き進む、無論耐久に劣ってる俺の障壁じゃあ受け続けりゃあ破れる。だが、接近できりゃそれでいい。ここで見せるは俺の十八番!
まず一つ!大曲剣に風を纏わせ、真空の刃を作る。ここまではさっきと変わんねえ、違うのは見た目以上に刀身を伸ばすこと、風の刃は見えねえし威力は十分にある。それを大曲剣の振る速さで振れば、リーチの不明な凶器になっちまう。
次に右腕の触手、手袋を外せばそれはもううねる軟体の腕だったものがある。だがそれは剣を振る事に限れば太刀筋が読めねえことに繋がる、まさに変幻自在の剣術ってことだなあ。
最後に力場だ、本来ならば相手の攻撃を反らす為にあるもんだが、これで俺自身の攻撃をずらす。つまり振るったと思って避けても力場で無理矢理逸らせば刃を当てに行けるって寸法よ、普通の腕だと無理だが触手なら問題はねえ。

「さあパパ!作った物の予想以上の出来に震えるが良い!それと俺はあれの娘で、手前の娘だからなあ!覚えてんなら認知しやがれ!」

曰く繰り出すは不可視の間合いから放たれる、変幻自在の多重斬撃。避けようとも力場で無理矢理斬りかかり、身体に掛かる負担は触手のおかげでない。間合いが読めないため、大きい回避運動を強制させる。
これが俺がこの身体になって編み出した技!大部分にあの糞親の要素があるのが気に入らねえが、俺の技に変わりはねえ。勿論、まだまだ技はこんなもんじゃねえ。
勝手に行動した俺に怒ってんのがあの人なら、勝手に行動して認めてもらいてえのが俺だ。少なからずどっちかがぶっ倒れるまで終わらねえ戦いだろうなあ!だがそれでいい!
俺は!糞親の知識のせいで人も世界も嫌いだが!戦士として戦うなら正しいためと誇りを持った!後は拾ってもらって成長の成果を見せれば一人前だろうなあ!だから、絶対ぇぶっ飛ばしてやる!

>>Cluster


【キャラ崩壊&会話のドッジボール】

8ヶ月前 No.509

ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 魔帝城/舞踏場/ガドン・バルザック 】

 唯でさえ人間の中でも色濃い人種であるというのに。
 その人種が、傭兵団を引き連れて堂々と魔帝に雇われているという信用皆無の役満状態。
 顔面と衣装の濃さを除いても彼が率いる傭兵団の悪名は世間に轟いているのだ。
 現地の住民(なんみん)を根こそぎ掻っ攫って自身の団に加えて勢力を拡大。
 そしていざ仕事先の立場が危うくなれば資金を持ち逃げして離反する。
 それを繰り返しているのだから、一体何処に信用があるというのだろうか。いや、無い。
 要するにこの男(女)――好きなのだ。
 勝ち馬に乗り続け、しかし前に出すぎない強かな勝利というやつが。
 既に開戦の火蓋があちらこちらで切って落とされていると、部下からの報告があがっている。
 今回引き受けたのは、数の利を生かした魔帝城の防衛。
 今回は時空防衛連盟という胡散臭い名前をしてキャッチセールスで売り歩きそうな組織がバックについている。
 そのため、人間は使いづらいと判断されたか。

(マ、いいけど。適当に戦って、負けそうならズラかりましょう)

 煌びやかなシャンデリアはしかし先行きの不安を示すように、頼りなく揺れ続けている。
 対してこの場にいるガドンを含めた全てのドレスに付いた装飾品はいっそ悪趣味な位に煌いていた。

 ガドン・バルザックが任されたのは――此処舞踏場の警備。
 信用されていないというのもあるだろうが、今回は魔術師ではなく異能力者を相手にする可能性すらある。
 そのような不利な条件があるのなら、いっそ前線に出ずここで警護を続けた方が楽に稼げるだろう。
 既に部下も何名かこの場に紛れさせている。
 賊が来ようものならば、豪華絢爛才色兼備、我ら《愛と勇気の絢爛団》の洗礼を浴びせようではないか。

「しかし、こうしてただ佇んでいるだけで金が貰える」
「暇ね暇ね暇ね〜〜〜〜〜でも楽な仕事だワ。このままだぁれも来なかったらアタシたちの一人勝ちよ!」

 ハスキーテノールとかそんな領域ではない。
 地の果てから響くような高笑い。
 しかしその耳は――その言葉を逃さない。

「ちょっと、何か言った。オイ、そこの乳臭い小娘、ツラぁ見せろ……じゃない顔見せなさい、顔」

  Gold Rose
 《女は地獄耳》――分類は光魔法。外に向けられる魔力としては、「回復」と「浄化」を司る聖なる魔術。
 だが内に向け自己強化も可能である。……といっても単純な「五感の鋭敏化」であるが、これが意外と効く。
 たとえば、隠形もせずに何か言ってからそそくさと帰ろうとするフードを被った猫娘とか。

 魔族? 知るか。だが女であるには変わりはない。
 男なら「オ"ル"ル"ァ"ン"!?」と頭の血管を何本もブチ切れさせこめかみをひくつかせる。
 そして、数多の鬼すらも卒倒する形相で殴ってやっただろう。
 だが女であるのならば、許そう。

 ――という、超ド級の災害のような男はサシャにどすどすと歩み寄る。妙に威圧感のある図体で。

>サシャ ALL

8ヶ月前 No.510

苦難の中の本質 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【ディンカ/魚市場/テルン・エルウェーウィン】

人が苦痛を感じるシチュエーションというのは千差万別。ある人は自分の考えを否定された時、ある人は何かの勝負事に負けた時。それらを一緒くたに語るのは、非常に難しい。
だが、どのような人物でも、同じような苦痛を感じる場面がない訳でもない。一つの例を挙げるとするならばそれは、外敵の攻撃によって身体に傷を負った時、だろう。
誰だって、怪我をすれば痛い。痛みを快感などと思う者は、よほど特殊な性癖の持ち主でもない限りいない。そしてそこには、必ず苦痛の二文字が存在する。
テルンの試練とは、他人を痛め付け、その中にある本質を見出すためのもの。彼女は善意でやっていると主張しているが、その裏には隠し切れない愉悦や高揚が見え隠れしている。
つまるところ、テルンはこれを楽しんでいた。目的のため仕方なくやっていたことの優先順位はいつしか入れ替わり、今ではこちらが主であるといわんばかりまでに。

「さすが。この程度で脱落するようでは面白くありませんからね」

迫りくる聖十字を躱し、逆袈裟を放ってきた青年を、テルンはそう褒め称える。元より小手調べの一撃であったこともあってか、彼女の顔には笑みすら浮かんでいる
相手の一撃も余裕を持って対処し、彼女は再び地面へと降り立つ。なるほど、相当に身のこなしは軽いようだ。接近戦に持ち込まれると、少々苦しいかも知れない。
ならば近付かせなければよいだけの話。幸いにも、遠距離からの攻撃手段は複数持ち合わせている。これらを上手く組み合わせることで、十分戦闘は可能だ。

「人が苦しみの中で見せる本当の姿……それはさぞ美しいものだと思いませんか? だから貴方にも、そんな姿を見せて欲しい」

隠すつもりもない危険思想。本質を見たいと言っておきながら、もはや目的が人を傷付けることにすり替わってしまっている。本質を見るのは、おまけ程度の扱い。
テルンの前方へと展開される無数の十字架。白い輝きを放ちつつも、縁が淡い赤色で彩られたそれは、あらゆる方向から青年の元へと殺到する。
一つ一つの威力は小手調べに放たれたものと同等であり、当然喰らえば痛手を追うのは間違いない。それが複数襲い掛かってくるのだから、尚更対処が難しいだろう。
彼女は敢えて追撃を行わず、その場に留まる。機動力にはそれほど優れていないという面もあるが、何よりも大きな理由は、今はまだその時ではないと考えているから。
試練とは、得てして徐々に厳しくなっていくものだ。第一の試練を突破した彼が受けるのは、第二の試練。果たしてこの青年の限界はどこにあるのか。それを確かめるのが、実に楽しみである。

>黒鉄一輝

8ヶ月前 No.511

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu


【魔帝軍/兵舎/ヴァンレッド】

 魔を狩る者、龍を狩る者。懸念も諦念も、そして死でさえも意義を持たない"龍殺しアーケオルニ"とは、その二つの言葉に集約される。彼女が突き進んでいる道こそが、彼女自身であり。誰かに道を外される事も無ければ、故意に外れる事も無い、生まれながらにして運命付けられた路線。
 多くの者は彼女が狂気に囚われていると錯誤し、己の力を誇示するが為に屍山を築く狂乱の戦士として誤った評価を下す事だろう。実際には最初から狂ってなどおらず、第三者の視点での異常が彼女の正常であり。彼女の全ては、魔を狩り龍を狩る事だけなのだ。
 そして、其の対象に例外と呼べる物は存在せず、それ故に恐れを抱かない。魔であり龍であるならば必ず挑み、そして絶対に仕留めるのが"アーケオルニ・ランドグリーズ"なのだから。

「生きる意味、魔を狩り龍を狩る事が全て、か。何とも単純明快で、迷い様が無い生き様だ」

 そんな生き方を、龍炎公は何とも羨ましく思う。誰にも惑わされる事無くただ実直に、命が尽きるその時まで闘争に生き続けるだけの一生。迷いを見せる必要など無く、唯々真っ直ぐに進み続けていれば良い在り方なのだから。
 それに対し、自らの生き方と言えば、欲求を抑えて大義に殉じ、常に思い悩み続けて選択して行かなければならない苦難の道。精神を擦り減らしながら生き続け、辛うじて癒しとなる者達の手助けで生き続ける在り方は、正しく苦行と言っても過言では無い。
 然し、羨みこそすれど、今の在り方を手放そうとしないのは――これまた単純明快、この在り方が最も相応しい物と感じているからだ。苦難の果てに待ち受ける未来こそに己の一生の意味を見出し、積み重ねて来た歴史を誇りとして明日を生きる。そんな生き方を、心の底から好ましく思うのだ。

「ならば全力で熱き血潮を流させてみるがいい! この"龍炎公"の血、そう安くは無いぞ!」

 千年の時を経て尚、勢いを衰えさせぬ煉獄の業火。石畳を融かし尽くす熱量を宿した火柱を前に、豪腕の英傑が取った行動とは正気を疑う正面突破。自信に満ちた表情と、闘争心に満ち溢れる動きがあるからこそ、未だ正気であると断定する事が出来る。
 豪快な切り上げに伴う猛烈な衝撃波は火柱を消し飛ばし、更には巨剣の動きを制して隙を与える事無く、遠心力を利用してでの強烈極まる横薙ぎの一撃を繰り出して来る。石柱はおろか、鋼鉄ですら断ち切らんとする勢いで繰り出される強撃。
 だが、相対する龍炎公の表情は余裕の色を保ったまま。緋剣に再び焔の魔力を収束させると、下方へと爆炎を放出する事で多大な推進力を得て、上空へと退避する。結果として斬撃は空を切る結果に終わり、一瞬の隙を生み出させる。

「俺を殺すつもりならば、往なして見せろ!」

 体勢を整えると同時に着地し、敵の背後へと回る龍炎公。その間に、何やら喧騒が起き始めている兵舎内の問題に対処するよう、護衛へと目配せで命令を送り出す。本来ならば魔将軍である自身が率先して対処に出るべきだが、この状況ではどうしようも無い話だ。
 かくして、移動を開始した護衛達の姿を見届けつつも、先ずはこの戦いの雌雄を決するべくして、剣と拳に焔の魔力を収束させる。煌々と燃える緋色の刀身と、紅蓮を纏う紫鱗覆いし拳を構えると、大地を蹴って瞬時に肉薄。

「ハァァァァッ!」

 轟く叫びと共に、大気を引き裂きながら繰り出すは拳撃と斬撃が入り混じる無数の乱撃。一撃、また一撃と放たれる重き攻撃に伴う形で放出される爆炎が宿す熱量は、先程の火柱と同等。対処を誤れば、火傷どころか被弾した部分が融かされる事になる。彼の繰り出す攻撃の全てが、必殺と成り得る可能性を秘めているのだ。

>アーケオルニ・ランドグリーズ

8ヶ月前 No.512

黒鉄一輝 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 ディンカ/魚市場/黒鉄一輝 】

 袈裟斬り――結果は命中ならず。一輝の斬閃に合わせてテルンはふわりと浮き上がるようにして大きく飛びのいた。
 追うか。追わないか。……無論、追う。遠距離(ロングレンジ)を主体とする相手に距離をくれてやる必要は何処にもない。
 今のところは相手はそちらを主体にして戦い、己のペースを保ち続けている。一輝が接近すれば相手が離れ、更に弾幕を仕掛けてくる。
 一進一退。この言葉がよく似合う状況。
 ペースの狂わせ時を見誤った――仕掛け時を見誤った方が、先に負ける。

「それがあなたの望む結果なら、いいんですけどね」

 破綻した精神性が齎すものは、やはり破綻した結果でしかない。
 テルンは元々思想は破綻していたのだろうが――手段を続けていく内に、精神も何もかも壊れていったのか。
 口にする言葉の羅列は順序が滅茶苦茶で理に適ってなどまるでない。
 声音に宿る感情も、瞳に宿る喜悦も、その行為があべこべであるということを証明していた。
 苦笑し、間髪入れずに再度地を蹴りテルンを追う。

(――弾幕か)

 茨の聖者、――悪意により地獄への道を舗装せんとする邪なる聖者の意志。
 並べられた十字は光輝の絨毯が如く。テルンの合図に従い――射出される。
 右。左。真下。真上。中央。四方八方、あらゆる角度から焼き焦がさんとする洗礼十字。
 威力は先の一発と同等、……だが規模が違う。受けるのはリスクが高すぎる。

(此処は、――引き寄せる)

 視線はテルンに合わせたままに。
 光十字の群れに、一つの隙間。突破の活路を見出す。
 だがまだ動かない。動かない。引き付けろ、引き付けろ。
 着弾まで後少し。止まらない光弾、――そして。
  、   、   、  ・・・・・・
 突如――テルンの視界から一輝が消えた。

「――ふっ!」

   、   、   、   、   、・・・・・
 そして突如、――テルンに肉薄する距離に一輝が現れ胴に一閃を放った。
 対象が何処にもいなくなった聖十字の弾幕は互いにぶつかり合い、消滅する。

 魔術転移か。いいや、違う。何てことはない、ただの縮地――手品だ。
 人にはどんなに気を張り詰めていても、必ず意識の狭間に無意識の空間が出来る。
 黒鉄一輝は其処に滑り込んだ。
   、   、   、 、 呼吸
 テルン・エルウェーウィンの無意識――その隙間に己を差し込むように、針穴を通すが如く正確な動きで聖十字を回避しながら。
 恐らく彼女は一輝の一連の行動を"認識"出来ない。そのため、一輝の姿を捉えることが出来ないだろう。
 無意識を知覚すること。それは五感に頼る人類である以上は――至難の技であるのだから。
 気付けるタイミングがあるならば、それは一輝が一閃を振るうその瞬間。テルンの内にあるであろう生存本能が警鐘を鳴らすか否か。

 その技術の名を――。

(古流歩法《抜き足》――通じるか)

>テルン ALL

8ヶ月前 No.513

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=dgrb36F8Ll

『王都ロンカリア/大宿屋/ジークリンデ・エレミア』

「ほんまに凄いなぁ〜」

ジークに問いかけた人物は彼女の快諾を得て、魔術を披露する。
魔術により鎌鼬が作り出されると、それを自分自身の腹部辺りに当てた。
すると鎌鼬で切断された上半身が空中浮遊する。
これについては実際にはトリックはあるのだが、見ているジークは魔術によるものだと完全に思い込んでいる。
空中浮遊している相手は両手を広げてジークに問いかけた。ジークの反応は好感触のものであった。
しかしそのあと、相手がとった行動により一気に現実に引き戻される。
相手が出していた鎌鼬がジークに向かって飛んできた。相手は魔術が滑ったというが、そうは思えなかった。
油断していたとはいえ、急な出来事に対してジークは咄嗟の判断で、右に動き地面に伏せるという形で回避行動をとる。
その動きはとても良く、しなやかであった。
避けた際に被っていたフードが外れ、隠していた黒髪のツインテールと素顔が曝されることになった。
だが今の状況と此れからの展開を考慮すると、あまり気にする事ではない。
どの道戦闘になれば、(バリアジャケットのデザイン的に)ジークは素顔を曝す事になるからだ。

「私(ウチ)としたことが迂闊やったわ・・・。ここまで敵さんの接近を許してしまうやもんな・・・。
あなたが何時何処で私(ウチ)に気づいて付いてきたなんて野暮な事は聞かへんよ」

今冷静になって思い返してみれば怪しいところはあった。が、過ぎてしまったことは仕方ない。
ジーク自身まがりなりにも魔法使いではある為、意図的に狙わない限りこちらに対して魔術が滑るなどあり得ない。
ましてや事前告知すらないのである。
いくらなんでもこれは気づく。今目の前にいる相手は旅人なんかではなく、敵であると。
地面に伏せていたジークはゆっくりと立ち上がりながら、
ジャージ姿から黒を基調としたヘソ出しのバリアジャケットを展開して戦闘準備を済ませ、
ジークは「みんな!今すぐこの場から逃げるんや!戦闘に巻き込まれるんよ!」と、
この場に残っている一般人に対して大声で彼らが巻き込まれないように、ジークは今すぐここから離れるように退避勧告を出した。
そしてジークはそっと相手の方を向き、
「先祖代々続くエレミアの技、その身に受けてもらおか」と開戦の合図とも宣戦布告とも受け取れる物言いで未知なる相手に言った。

>>黄衣なる者

8ヶ月前 No.514

地味な優等生と豪華な無能 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【王都ロンカリア/噴水広場/ワームテイマー+エンペラーワーム】

酷く順調に虐殺は進行中、これならば囮として十分に機能しているだろう。
事実として、次から次へと兵士がおびき寄せられて来ては、簡単にワームに食われる。 と言うのも、既にこの場には、数十のワームが展開しているが、実際にはそれ以外にも、地中にいくつか伏兵となっているワームが潜んでいるのだ、精確な数と敵の種類さえ把握できないマロニスの雑兵が、ワームテイマーと言う指揮者に従って動くワームたちを止められるはずが無い。

この調子で、騎士団長代理でも食い殺せれば、自分は魔将軍になれてしまうかもしれない、とワームテイマーは一瞬考えるが、すぐに「やっぱ要らない」とその思考を切り捨てる。
誰が好き好んであんなギスギスした魔将軍になりたがる物か、いや、馬鹿ならそう思うかもしれないが、少なくとも自分はあんな場所に居たくない、ただでさえ黒猫や混沌は嫌いだし、塵殺剣は何を考えてるのわからないし残りは性格が合わないか、種族的に格上で話したくない。

まあ、それなら適度に功績あげて、魔将軍にならない程度に頑張ってみるか、とワームテイマーはさらに攻撃を激化させるが、そんな時、自分たちの前に逃げずに立ち向かってくる者が居た。 おっと、これは本当に良い階級所が来たか? とそっちに目をやるが、知らない奴だ。

――噂の未来人って奴かな?

そう思った途端、相手はタクトを振るい……歌う。
視覚化される音符などを見て、ワームテイマーは気づく。

――面倒臭い、呪歌の真似事か!

ワームテイマーは無数の演出用の花火を自分の周りに打ち上げて相手の音を聞かないようにするが、部下のワームはその音を聞いて……変なのが生える。 まぁ、あくまで目的は人を犬に変えて逃がす事か。 今更敵かどうかを確認してくる相手に対して、ワームテイマーは見下すようにため息をつき、呆れ交じりに笑って答えた。

「いかにも! ワタクシはワームテイマー、人類の天敵、魔族の一人です。 ……って言うか、やめて欲しいんですよねー、犬なんかに変えられると肉の量が減ってワーム共に怒られるのは私<ワタシ>なんですから」

二重人格者のように「演出家」と「面倒くさがりな魔族」の口調を使い分け、ワームテイマーは自己紹介を終えて、相手に対して苦言を呈した。
ま、とりあえずそれだけ済めば、後はほかの奴らと同じように殺せば良いだけだ。

「にしても……音楽家の方なのに、主役登場前に音楽を掛けるとは、普通は登場と同時に盛り上がる曲を掛けるべきなのでは? やっぱり未来人のセンスってのはぶっ飛んでますね。 とにかく、それではご登場頂きましょう、我らがワームの絶対王者にして、1000の時を経て蘇りし虐殺者! エンペラーワーム様に!!」

その瞬間、彼女の腕から、彼女の何倍も大きく、それこそ大柄な人間や、家畜であれば簡単に呑み込めそうな、真っ白でありながら、紫色の鉱石が浮かび上がり、頭部の鉱石は王冠のような形状を形作る、不気味な巨大芋虫……"エンペラーワーム"が姿を現した。
とは言え、知っている者からすれば、1000日や、1000年の"時を経て復活"ではなく、1000時間前に勇者フロレに討伐されたばかりの魔物である事はすぐわかるだろうが、少なくともこの場にそれを知る者は居ない。

そしてワームテイマーは、さあ! とエンペラーワームを促すが、その見た目と裏腹にエンペラーワームと言う巨大芋虫は会話能力があるようで、ワームテイマーのほうを向いて答えた。

『小童一匹ではないか、いいかワームテイマーよ。 我らワーム種は、今まで龍族の亜種でしかなかった、だが、千年程度しか生きていない子供と、媚を売りし蛇が龍族のトップである今、古より存在せしワーム種こそが世界最強、即ち、我が手を出さずとも、有能なワームの臣下が小童一匹ごとき、簡単に仕留める。 当然、その中でも優秀なワームテイマー、お前もまた、手を出す必要は無い』

何とも……現実を見ていないような言葉だった、とにかく、エンペラーワームは、そんな慢心の塊のような台詞を口にすると、ワームテイマーは、はあとため息をついて。

「……あー、って事で、攻撃開始ですよ有能なワームの臣下たち!!」

そのワームテイマーの号令と共に、エンペラーワームではなく、まずそれが引き連れるワームによる攻撃が始まった。
ワームと一口に言っても、種類はばらばらで、それぞれの得意とする攻撃手段は違う、それを証明するように、まず真っ青な身体をしたワームが口から氷塊を吐き出して相手の動きを制限しようとする。

当然それを相手は避けようとするだろう、だが、その瞬間、打撃力に優れた赤いワームがその強力な牙を持って、敵に食らい付く、そういう算段だ。

>ショパン

8ヶ月前 No.515

竜狩り @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝軍/兵舎/アーケオルニ・ランドグリーズ】

火花の散るような激しい戦い。片や、永き時を経て未だ衰えぬ龍王。片や、短き命を惜しみなく燃やす狩人。立場や来歴を含む全てが相反するからこそ、衝突する力は凄まじい。
あろうことか魔将軍、それも誉れ高き龍炎公に単騎で挑みかかる愚かな娘…初めにアーケオルニを見たとき、この場の魔族共は等しくそういった評価を下したことだろう。
命知らず極まり身の程知らず。分を弁えない戦士の屑。こんな雑輩ばかりでは騎士団の衰退も納得だ、と。しかし実際はどうか。まだまだ小手調べとはいえ炎熱の強襲を退け、雑兵のソレとは明らかに一線を画す動きを魅せている。
龍炎公の力が強大かつ無尽蔵であるように、竜狩りもまた底知れぬ力を秘めているのだ。それは必ずしも自身に利益をもたらすとは限らないが、少なくとも戦場で剣を振るっている分には"味方"でいてくれる。

「ぐぅっ…」

咆哮を皮切りに始まる逆襲。一瞬の肉薄は、終わることなき連撃の奏し始め。炎剣炎撃、百花繚乱―――獲物を刺し貫くだけには飽き足らず、砕き潰し、果てには焼き尽くさんばかりの猛攻。
一撃を捌いたところで追撃する爆炎の餌食となる。距離も相まって先程のような突貫戦略は不可能。事実、アーケオルニは相当な重量を持つ得物を携えたままでの回避を余儀なくされる。
斬撃と拳撃を見切り、炎は自らも火炎魔法を用いることで打ち消す。だが力量差に加えて後手に回った現状では、攻撃一辺倒な彼女の性質も相まって防御が立ち行くはずもない。
乱れ打つ拳が左肩に命中し、鎧のひしゃげた部分を熱が容赦なく溶かしていく。幾ら重厚に仕立てられた甲冑とはいえ、こうなってしまっては傷の痛みを和らげるので精一杯。
鋼鉄を喰らってなおも健在の炎熱が、古傷や生傷の上から直に肩を焼く。その痛みに声を上げ、大きく仰け反るアーケオルニ。並の兵ならばこの直後には転倒し、戦意を喪失してしまうことだろう。

しかし"竜狩り"のアーケオルニに関してはその限りではない。先刻の横薙ぎに至るまでのプロセスからもわかる通り、人体に働く力は全て彼女の計算の内にある。

そう、この仰け反りでさえも。

「ドラゴンッ…キラァァァッ!」

得物から手を離し、身体を反らせた勢いをそのまま乗せての宙返り。着地から間髪入れず前方めがけて突進し、柄を引っ掴んで豪快に斬り上げる。
床どころか兵舎そのものを二分しかねない、豪速かつ規格外の剛撃。
その凄まじいまでの斬撃には衝撃波すら伴い、また彼女の戦いの一部たる反動を生んでいる。この度は体術には派生せず、引っ張られそうな力に身を委ねての一回転から横薙ぎを繰り出す。
さらに交叉法を絡めての頭部を狙った振り抜き。まさに渾然一体、荒々しく豪胆ながらも洗練されている。無駄がないというよりかは、本来無駄とされるものを利益に換えているといった方が正しいだろう。
『ドラゴンキラー』の銘に恥じぬ大技。龍の鱗を切り裂き、甲殻すら砕かんとする覇者の刃に、龍炎公はどう打って出るのか。

>>"龍炎公"ヴァンレッド

8ヶ月前 No.516

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【王都ロンカリア/大通り/桐生戦兎、万丈龍我】

突如口から出された『共存を望む』という言葉
一瞬困惑したが、その目を見て嘘でないと二人は確信した。

「共存、ねぇ……」
戦兎がこう返した。そしてその後一呼吸入れた後、さらにこう続けた。

「まったくわかんねぇよ。この世界のことは全くわからないし、こっちでも戦争起こってんだ」
『こっち』というのは自分が住んでいる世界。
『東都』と『北都』の二つの国が自分の世界での重要なアイテム『パンドラボックス』のために争いを続けていた。

「同じ人間同士ですらわかりあえるか怪しいのに……違う種族ってんならなおさらだ。 だけど俺は信じるつもりだ」
戦兎が長話を終えた。そしてその後――――

「共存ってんなら、とりあえずそのデカいの家に帰したらどうだ?」
「あぁ、まったくだ。ついでに暴れないように教育してもらったほうがいいかもな」
万丈が前に出てきてこう言った。戦兎はその言葉に返す。

そして、二人とも敵の方を向いた。

>オムニス・デューザと魔族および周辺all

8ヶ月前 No.517

豪腕剣士 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【城塞都市ギリダン/宮殿内部→玉座の間→移動/マロン・アベンシス】

完全に冷静さを失っているようであったエストだが、マロンが到着したことによって少し落ち着きを取り戻したのか、差し出した手を取りながら魔術書のページをめくり始める。
魔法の発動によって、無残な姿になっていた彼女の身体は驚異的な速度で回復し、遂には立ち上がることが出来るまでになった。こうなれば、もう手助けは必要ないだろう。
エストは背中に乗ることを遠慮し、続いてパージルクの無事が確認出来ていないことを告げる。玉座の間に着いていない時点で嫌な予感はしていたが、やはりか……
ここからならば、玉座の間は近いはず。エストも動けるようになった今ならば、なんとか間に合うかも知れない。そんなマロンの淡い希望を打ち砕くかのように、残酷な事実が告げられる。

「何だと!? それを早く言ってくれよ!」

玉座の間を何者かが吹き飛ばしたというエストの言葉。それを聞いたマロンの顔には、さすがに焦燥の色が浮かんでいた。いくらパージルクといえども、それほどの攻撃を受ければ―――
いや、まだ分からない。死体を確認した訳ではない。希望を捨てるなマロン。諦めるのは、全ての事実を確認してからでも遅くはないのだから。道塞ぐ瓦礫を蹴りで吹き飛ばし、彼女は急ぐ。
そうして辿り着いた玉座の間には、人っ子一人としていない。あるのは焼け野原になった地面と、崩壊した玉座のみ。パージルクの姿が見えないことに、マロンの表情が強張る。
いや、まだどこかにいるかも知れない。隅々まで探して―――そう考えたところで、宮殿が大きく軋む。ぼろぼろになった建物は、もはや耐久力の限界であった。
これ以上、ここに留まっていれば、二人共巻き添えを食って死んでしまうだろう。悔しさを押し殺しながらもマロンはエストの方を振り返り、一度俯きかけながらも叫ぶ。

「今は一旦逃げるぞ! パージルクならきっとどうにかして生き延びてるはずだ! 先に私達が死んじゃどうにもならないだろ!」

あくまでマロンはパージルクの生存を信じているからこそこの場から脱出するのだと、エストに語る。そう、彼女が生きているのであれば、ここで死んでしまっては意味がない。
再会を果たすためには、どちらも生き残っていることが絶対条件なのだ。パージルクを自らの手で救い出すことが出来なかったのが悔しいが、それでも今は―――
マロンは近くの壁を粉砕し、そのまま近くの地面へと飛び降りる。彼女ほどの身体能力がなければ骨折間違いなしだが、エストは飛行魔術を持っているので、この高さから落ちてもなんとかなるだろう。

「そうだ、エスメラルダは……エスメラルダはどこだ!? きっとあいつもここに来ているはずだ! エスト、私はエスメラルダを探しに行く。お前は先にカルストンで待っていてくれ! ギリダンの入口に私の近衛が待ってる。そいつらに聞けば、道は分かるはずだ!」

何もなければこのままカルストンへと直行するつもりであったのだが、マロンは寸前でエスメラルダの消息が未だ不明となっていることに気が付く。
情報が正しければ、彼女はギリダンの正門を守っていた。ここへやって来た時に見た、半壊した正門。……まさかとは思うが……いや、そんなはずはない。
エスメラルダが宮殿に砲弾が直撃する瞬間を外から見ていたとしたら、どんな状態に陥るかなど、考えなくても分かる。この崩れゆく宮殿に、たった一人で乗り込もうとするに違いない。
そんなことをすれば、また一つ命が無駄に散ってしまう。何としてでも彼女を止めるべく、マロンは一旦エストと別れ、走り出す。不思議なものだ。パージルクを止めるために来たはずが、今は一人でも多くの命を救うために動いている。だがそれは、帝国の将軍としての運命であったのかも知れない。

>魔大老エスト
【少し巻き進行ですが離脱可能な状況にしました】

8ヶ月前 No.518

勇者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/海底洞窟/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 敵の本拠地へと続く唯一の道であるにも関わらず、侵入者を迎え撃とうとする魔物の姿が一向に現れない奇妙な状況に、アンナローズは一層警戒心を強めて洞窟の中をロコと共に突き進んで行く。
 死者の腐臭が充満する空間の中では、相棒の優れた嗅覚の鋭さも役には立たず、敵を察知するには視覚と聴覚に頼らざるを得ない。道を進む傍らで、ロコが悔しそうな表情を浮かべるのが見えた。
 その直後、彼女にやや遅れる形で此方へと接近して来る足音に気付く。庇う様に前へと出た相棒の背を見つつ、鞘に納めた剣の柄に手をかけて、襲来する敵に備える。
 深淵を思わせる闇の奥底から現れる者。邂逅するのは、"不死公"ネクロニアと名乗る魔将軍が一人。相棒はその姿を見るや否や、不快極まる表情を浮かべながら、彼女が"超"が付く程の変態である事を忠告して来た。そして事実、彼女の言う通り。アンナローズは魔将軍を自称するこの存在を、変態極まる下品な存在であると認識した。
 誰があんな変態のペットに成り下がる物か。それに、ロコもあんな奴には渡さない。彼女は、私の大切な仲間なのだから――と、交戦意思を固め、剣を引き抜き片手に構える。

「断る! 僕にはやらなきゃいけない使命があるんだ! それにロコの主はこの僕だ、お前なんかに渡さない!」

 ロコに続いて戦闘態勢へと移行するアンナローズ。然し、今はまだ攻撃には移らない……と言えば聞こえはいいだろうが、その実情は"移れない"が正しいだろう。これを悟られれば、見下されるか、或いは拍子抜けする事間違いなしなのだが、彼女は魔法を始めとする異能を現状持ち合わせていない。勇者でありながら、攻撃手段が剣術しかないのだ。当然、遠距離からの攻撃は出来ない。
 言い方は酷いが、彼女の戦闘能力は土属性の魔法を使えるロコよりも遥かに劣る、と言っても過言では無い。放たれた土の塊に繋げる攻撃を放てない以上、この手番はロコに任せるしかないのだ。接近戦を挑んだ挙句、味方の攻撃に巻き込まれてしまっては一たまりも無いから。

>不死公ネクロニア ロコ


【こんな勇者で大丈夫か?】

8ヶ月前 No.519

『4.A.M.Nocturne』-夜想曲第二番より- @akuta ★Fwax7xTHaw_ly4

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8ヶ月前 No.520

"不死公" @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

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8ヶ月前 No.521

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【王都ロンカリア/大通り/橋川 清太郎】

確信した。こいつは蜘蛛の少女とは違う、在り方も、信念も、何もかも。

「共存、か。出来るかどうかは分からない」

誰にやられたのか知らないが、そこまで傷ついても復讐を考えない心意気は見事。

「個人レベルなら兎も角、種族レベルで深く交流するのは避けた方がいいだろうね」

互いに醜いと思っているのなら、離れて暮らせばいいだけのこと。直接目に映さなければ幾ら醜悪であろうと関係ない。もし水源地だの故郷だのがなり立てる輩がいれば、それは独立する気概すらない軟弱者だ。

「それと、今の君達の在り方は『共存』には見えないね。これは僕の勘だけど、現状では単なる『共依存』……違うかい?」

或いは、同情と盲信から成る利害一致か。
別にそれ自体は悪質ではない、が自分達の歪な現状を『目指すべき理想』と履き違え他人に押し付けるのは間違いである。

(しかし、妙に状況が混迷し過ぎてるな)

一瞬だけ目線をバイザー内のレーダーに移す。どうやら跳ね橋が下ろされているらしく、それが混乱の一因となっているようだ。この襲撃はだいぶ本腰を入れたものだと思って間違いない。

(さっさと機構に引導を渡したい所だけど、贅沢言ってられないか)

頭部装甲(ヘルメット)の下で嘆息を洩らす。
ここで高望みは出来ない、当初の予定通り魔帝軍もろとも討伐するべきだ。

「――――僕は、君達と戦う」

構えていたStrikedogのトリガーに指を掛け、引いた。火薬の爆発により超加速した鉛礫が飛来する。

>>周辺all

8ヶ月前 No.522

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

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8ヶ月前 No.523

“ナルカミ” @sacredfool ★P137WP3JAs_D9v

【ナコーン→ディンカ/海底洞窟入口/アンリエット・エクレール】

 彼女の持つ戦闘センスが、かの鉄塊の複製を予期させたわけではない。だが、万が一にでも近距離戦が起こるとしたらそれは確実に本体ではなく複製だろう。それでも問題のない方策を彼女に取らせたのだ。肉弾戦においてリズムとは切っても切れない位置にある。拳を打つ瞬間に込める力は寸分の狂いもあってはならない。だからこそ、一瞬であっても動きを止めるための電撃も、それは自分の足も止めるフェイントとなりうる。鉄塊の複製が殴りかかろうとも、前進を止めた状況ならばそれを見切ってすり抜けるだけの技量は、彼女になくてはならない。そうでなければ空手しかできないなどとは言えるはずがない。どうであれあの鉄塊は電撃に対応した。それが理解の及ばない吸収だろうが何だろうが、稲妻からすれば放たれた電撃への対応はすべからく間隙と呼ばれる。
 鉄拳制裁。稲妻の拳が再び鉄塊へと打ち込まれる。冷たく厚い装甲も、稲妻の前では飴細工と砕ける。二度。鉄塊が彼女の拳を受けた回数だが、それは鉄塊から戦意を削ぐに充分であるらしい。
 稲妻が鉄塊の言葉を理解するような余裕があったわけではなく、機体の僅かな所作から、それは既に目標の撃滅から撤退へと動作を変更していることを洞察しただけに過ぎない。そう見るや稲妻の行動は一択。その性質からして背後からの追撃以外に有り得ない。そうでなければ何のために自分が鉛玉を受けたのか判りはしない。

「待てコラッ――」

 無論、鉄塊がもつ合理からすれば彼女の手を読むことは造作もない。先ほど避けた光輪が鉄塊のもとへ戻る軌道上に彼女が位置どることも……撤退の為の窮余策となることまでは予想できなかっただろうが、とかく稲妻はこの光輪に気付かない。もしも何の躊躇いもなく鉄塊への追撃に踏み出せたなら。
 稲妻は踏み出さない。できなかった。先に被弾した半身の疼きが僅かにその意思を削ぎ、鉄塊だけを見据えていた視界が一瞬ながら索敵の状態へ戻った。既に寸前まで肉薄した光輪に、彼女は反射的に放電する。激しい電光の力場が彼女を包み、背後からのエネルギー体から守る。電撃のバリア。回避不可能と判断された攻撃、あるいは自らの虚を殆ど完全に突かれた際の防衛策である。攻撃する意志を捨て自らの異能を防御に注ぐ分、凡その攻撃は防げる。

「……クソが」

 当然だが逃げる相手への追撃は叶わない。被弾と引き換えにネームドの敵を撤退に追い込んだといえるが、稲妻にそのような認識は無く、傷を負ってただ倒せた敵を逃がしたという傲慢にも近い後悔だけが残った。ただ、この期に及んで戦闘を続行しようという腹積もりではない。雑兵は倒せても、今ほどの敵が現れては善戦すら叶わないだろう。敵を認識していない限りは、稲妻は冷静であった。ただ、鉄塊の消えた空を苦々しげに見つめていた。


 時は変わり、ここは中世。稲妻の健闘も手伝ってか古代の時空振動は無事収束へ向かい、歴史是正機構の次なるターゲットへ赴くこととなる。人と魔族の闘争の時代。栄華に影を落とす、血塗られた歴史の一端である。闘争は勇者によって収められたという正史は今書き換えられようとしている。魔族による暗黒時代が到来すれば、時空断裂は免れないだろう。
 そんな事情は稲妻の知ったことではない。元より時空が云々などの込み入った話は稲妻の専門外である。とにかく未来(ここ)ではないどこかに行って敵を殴り倒す。彼女の専心はそれである。今回は東の小島にある城を落とす。水底の洞窟を通らなければそこへは辿り着けない。だからその道中で邪魔するヤツらをブッ潰す。そして城に居るヤツらも全部ブッ潰す。そうすれば終わりだ。
 稲妻でさえこの海底洞窟がこの戦いの要衝であることは把握している。当然、ここからしか城へは行けないのだから、落とせば他の味方の道が開ける。粗野だが義憤に燃えるだけの器量は持ち合わせている。

「っし! つーわけだ、通してもらうぜトラ野郎!」

 そして今、稲妻はその入口に立っている。拳を合わせて指を鳴らし、返答の如何に関わらず既に臨戦態勢だ。それもそのはず、彼女は目の前の半獣半人が味方だという可能性は捨てている。この時代に来てからというもの、彼女はそのような手合いにしか会っていない。人の姿をとらない異形の者。人に近しくとも、人でない部分をもつ者。雑兵だろうと手練れだろうと、魔族というものは凡そそんな外見をしていると彼女は学習している。
 気炎万丈にして意気衝天。青い火花が荒れた銀髪の周りで弾ける。凡そ人間とはかけ離れた姿を前にして彼女は欠片ほどの畏怖も無い。かえってその闘志を燃やすばかりである。これほど判りやすい敵の姿もあるまい。人っぽくなかったら殴ればいい。単純明快ゆえに彼女の気質と合致する。宣戦布告。ただ味方の道を開くために、目の前の敵を屠るのみ。

>>魔獣ヴァグネル


【お相手ありがとうございました! 絡ませていただきますー】

8ヶ月前 No.524

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【城塞都市ギリダン/宮殿内部→玉座の間→移動中/魔大老エスト(残り魔具5473個 残魂数9)】


マロンに続き、玉座の間へと急ぐ。塞ぐ瓦礫をマロンが砕き、降り注ぐものを魔術で彼女が掃う。互いに女帝の無事を祈りながら、決して止まることなく最大速度で駆け抜ける。
待っていたのは嘗ての面影などない荒れ果てた部屋、天井は吹き飛ばされ壁に掛かった国旗も見る影はない。女帝が居るべき玉座もその形を留めてはいない、この宮殿を知らねばこの場が玉座の間だと言われても信じることなど出来なかった。
だからこそ、知っている二人の表情は固い。彼女はすぐさま駆け出し、声を張り上げようとする。しかし瞬間宮殿に大きな揺れ、崩壊間近の建物にしてはかなり持った方だ。だがそれもここまで、後幾何で形を保てなくなり崩壊するだろう。
反応が早かったのはマロンだ、女帝は生きているとそう信じた上で、生き残らねばならないと叫ぶ。彼女も分かっている、だがもしこの場に女帝が居ればと思わないわけがない。女帝の実力を心配しているわけではない、ただどうしようもない警鐘が頭の中に響いている。

「……分かった、パージルクが死ぬわけがない、そう、だな。」

軋む歯、不甲斐なさを表す様に彼女はその表情を歪める。この場ではもうどうしようもない、マロンの言う通り生存を信じ脱出するしかない。壁を壊し跳躍したマロンに、彼女は浮遊魔法を用いて追いつく。
省みる点は多くあった、それが遠くない魔道帝国の崩壊を止めるやもしれない、そんなものもあった。だが、この結果だけは明らかに自身に責があると彼女は考える。そうだとも、彼女は最初女帝を守るためにギリダンの正門を防衛していた。
だが、戦況を見て援軍に向かってしまった。自身が女帝が重要だと分かっていたにもかかわらずだ、女帝なら大丈夫だとそう思っていた。しかし結果はどうだ、生死不明、行方不明、多くの要因があれど彼女が防衛から離れたのは事実、そしてこの結果に結びついたのも事実。
残っていれば女帝を救えた等の傲慢はない、ただどうなっていたかだけでも確かめることができたはずだ。せめてギリダンに残っていれば、後悔は尽きない。女帝を守ることが最優先だと宣わっておきながらこの有様だ。
自責の念に囚われているところにマロンが声を上げる、女帝の子息であるエスメラルダを探すと。確かにこの事態で二人でこれだけ焦っている、性格を考慮し肉親を失う可能性も含めればここに突入してくる可能性は高い。

「そう、か、私が行くよりも適任だ。……エスメラルダだけでも、頼む。無茶をして、死ぬんじゃないぞ、本当に……頼む。」

駆けだしたマロンの背を見送る、自身が手を貸せることはない。この瓦礫降る宮殿では容易く破壊できるマロンの方が捜索に適している、彼女は役に立てることはないとマロンの言葉通りにカルストンへ向かう。
失うことが恐ろしいと感じたのは久しぶりであった、いや元々恐ろしかったが久しく失ったからだろうか。女帝は見つからなかった、それが結果だ。生きていると信じようと、今目の前にはいない。
将軍もどれだけが残っているか、ノエルもカシュタンも前線に向かって消息は分からない。遠視で探そうにも、何処に居るかが分からなければ探すに探せない。戻ってきていない以上、そういう事なのだろう。
だがマロンもエスメラルダも生きている、だからこそ失いたくはない。きっとマロンならエスメラルダを救出し戻ってくると、信じたい。あのマロンだ、大丈夫だ。
失うと言えば、魔道帝国も女帝が居ない以上続かない。あの悪魔使いの言った通りになった、過程が変わっただけで結果は変わらない。その過程を彼女は知らないが、きっとどちらが良いかなど決められるものではない。
どうなるかは、分からない。生き残った将軍で領地争いをするかもしれない、エスメラルダが生きているならば彼女が魔道帝国を継ぐかもしれない、ただ言えるのは先のことなど彼女には分からないという事だけ。
この身は時によって死すことはない、時に流れ老いることもない。ならば、少しでも彼女が思う理想に近い者を守りたいとそう思った。女帝を守れなかった、それは消えぬ業として背負い続ける。
せめて女帝の娘、エスメラルダを傍で見守り続けると決める。償いにはならない自己満足だが、安らかな一生を遂げられるように今度は守って見せると、心に誓う。

>>(マロン・アベンシス)


【エピローグありがとうございました、魔大老エストのエピローグはここで終わらせて頂きます。】

8ヶ月前 No.525

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大通り(表通り)/オムニス・デューザ】


二人の青年、答えはイエス、だが傍らの魔族をどうにかしろと言った。機械的な青年、答えは分からない、だが個人に留めるべきだと、そして彼女と魔族の関係を共依存だと言った。
彼女は困ったような、戸惑いを隠せない表情を浮かべる。当然だとも、彼女が言っている魔族とは傍らにいる魔族の事ではなく、魔帝軍を差している。そもそも、傍らにいる魔族を魔族と認知していない、彼女にとってその魔族は神様でしかない。
だから先の証明は魔帝軍にいても自身は生きている、だから共存できるはずだとそう言っているのだ、彼女にはこの場には魔族は見えていない。居るのは神様と、相対する人間三人だけだ。

「あの、仰る意味が分かりません。デカいのと言うのが神様の事を差しているのでしょうか、それならば神様は暴れていません!
そして共依存、ですか。私と、神様がですか?あの、私は魔族と人間の共存について話しています、……からかっているのですか?」

浮かぶのは困惑のみ、言っている意味が分からないとばかりに整理しようと言葉に出す。それも当然だ、彼女は神様が魔族であろうとも神様としか認識しない。対する三人は魔族として、人間を殺した相手として認識している。
彼女にとって神様は「神様」でしかない、その正体が何であれ自身を連れ出し、共存の道を歩めると認めてくれた存在。だからこそ、神様以外の存在として認めない。例えそうでないと分かっていたとしても。

「……もう一度お話し致しましょう?そうすれば、分かって頂けるはずで―――――」

戦うと宣言した機械的な少年が弾丸を放つ、それと同時に彼女の声が途絶える、口をいくら開こうとも声が紡がれることはない。放たれた弾丸は魔族の巨大な腕に容易く弾かれる、すると不干渉を決め込んでいた魔族は動き出す。
今彼女の声を奪った、正確に言えば彼女はこれ以上見ることも聞くことも喋ることもできない。何故か?魔族がこれ以降を見せる必要も聞かせる必要もないと、そう判断したからだ。
魔族の腕の中で彼女は口を開き、何かを訴えるようにしているが魔族は意に介さない。例え彼女が望まない事でも攻撃をしてきた以上、「人間」ではないのだ。それを潰した光景を見せ、心を痛める必要はない。

『答えは理解した、彼女の望む人間ではなかったことを悔いて死ぬが良い。』

腕の中で祈る様に蹲る彼女を見て見ぬふりをして魔族は危害を与えようとしたものを排除せんと動く、地から上半身だけが生えたように見えるがそれでも大きさは城壁を超すほど。腕の長さで言えば城壁が二倍の高さでも足りぬほど。
その長さの腕が九本、彼女を持つ腕と守る腕を除いて六本全てが敵対者を叩き潰さんと襲い掛かる。三本を敵対者を一人づつ潰す様に叩きつけられ、残る半分は時間差を置いて街並みごと横に三度薙ぎ払われる。
跳べば叩き落され、地を駆ければ薙がれる。加えて巨体に似合わぬ速度で振られる腕、半透明であることも相まって距離感が掴みづらく回避もしづらい。腕の長さから範囲も広く、剛力故に当たれば致命傷に成り得る。
三次元的な回避でも困難、好機を生かし僅かな隙を見て避けるしか生き延びる術はない。人間とは異なる多関節故にそれも意識しなければ回避は難しい、かといって防御をすれば容易くそれを貫くだろう。
まさに天災、単独で王都を破壊しつくすことすら可能なこの魔族。その戦いの幕は切って降ろされたのだ。

魔族の腕の中で彼女は嘆く、ああどうして神様は今になって見捨てたのかと。

>>桐生戦兎&万丈龍我 橋川 清太郎

8ヶ月前 No.526

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/舞踏場/シフォン・ヴァンディール】

無事古代に於ける戦いに勝利し、改編を未然に防いだ守護者達。時空防衛連盟としての使命を全うした彼らは、現地で肩を並べ戦った者達との別れを惜しみつつも、元いた時代へと帰っていく。
魔将軍との激戦を生き延びたシフォンもその一人であり、自らが命懸けで守った国を、大地を、そこに行ける人々を目に焼き付けてからゲートをくぐる。

そうして連盟本部へと帰りついた矢先にもたらされる報せ。次の戦場は中世…人間と魔族が果てしない戦いを繰り広げる戦乱の時代。ここでも古代同様に時空振動が観測されたのだという。
つくづく後手に回らなければならない現状にはうんざりさせられる。そもそもこれは、世界政府が危機感を持っていれば避けられた戦い。彼らと軍が連携し、暗躍する是正機構を初期段階で叩けていれば、このイタチごっこのような事態は未然に防げたはずだ。
そしてその怠慢は今日この日にまで及んでいる。滞る支援、消極的な研究姿勢。ユーフォリアの指示の下改良された装置で、時間遡行に関する課題は幾らか解決されたが、本来ならばこれは政府が率先して行わなければならないこと。
敵は既にこの技術を得て、有利に事を進めている。後追いしかできない側にどんな結末が待っているかは想像に難くない。焦りこそ抱けど具体的な行動には移せず、上に物申す権限もない。そんな自分に対し、シフォンはますます怒りを募らせていくのだった。



シフォンが降り立ったのは、こともあろうに魔帝城のすぐ近く。当然警備の魔族達の目に留まり、普通ならひとたまりもないような波状攻撃に晒される。
しかし彼女は仮にも司令官、雑兵が群れを成そうと一太刀浴びせることすら難しい。程なくして決着がつき、シフォンは爆破魔法でついた肩の煤を払いながら、城の中へと足を踏み入れる。
枯れ木と乾いた風の中を進みながら、天を衝くかのような魔帝城の偉容を記憶に刻む。そうして歩くうちに行き付いたのは、どうやら舞踏館と思わしき豪勢な建物。
殺風景の三文字がよく似合う庭園とは大違いな気品漂う造りに、お嬢様育ちのシフォンは純粋に惹かれてしまい、無意識に扉に手をかけていた。

「ダンスの相手をお探しかしら?殿方でなくてごめんあそばせ」

そんな夢見心地も、中に佇む人影を見れば泡のように弾ける。真紅の瞳に着こなされたドレス。妖しさを湛えた紫の髪。服装の端々には自分の普段着との共通点も見受けられる。
角と尻尾こそ生やしているが、そんなもので気品の有無は判断できない。如何なる風貌だろうと、身なりをきちんと整えた彼女は立派な麗人。この場に相応しいと言えるだろう。
そんな魔族の女性に、シフォンは軽口を叩きながら歩み寄っていく。

>>"災禍龍姫"のリュドミラ


【まだ受け付けていらしたら絡みお願いします!】

8ヶ月前 No.527

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【王都ロンカリア/大通り〈裏手)/ミラノ】

 前提として。この策は“二つ”の要素が成り立って初めて成立する。

 前提、その1。速度の差。
 銀狼と黒影の間にある、機動戦を行うにあたって生じる速度の差。
 体捌き、運動神経、機動力、ひっくるめて、ミラノの行動が攪乱になる程度の差が無ければならない。

 前提、その2。相手の判断。
 此処まで露骨な動きを仕掛けた上で何だが、この黒ずくめは頭が回る。
 寒気のするほどに冷酷で、刃物のように鋭利。
 悍ましいほどに正確で、理解を拒むほどに狂気的。そうした人間は先入観だのなんだのに惑わされない。どのような状況でも、自分の目的のために合理かつ最適の判断をすると相場が決まっている。コイツも、またそういうタイプだ。

 だから必然、その上を往く必要がある。
 ヤツならば此処まで読むと判断させた上で、お互いに何の切り札を持っているか分からない状態で。
 お互いの札が見えない状態で、確実に、かつ一瞬のチャンスをもぎ取れるかどうかの勝負………これは“言葉”を抜きにすればそうした戦闘だ。唯一気にかかるのは彼方の耐久力だが、少なくとも此方はアレを喰らっていられない。
 何処かがしくじり、詰みとなった時にそれを覆す手段がない。だから、これでも慎重に事を為した。

 完璧な奇襲ではあったはずだ。

 ―――ならば、どうか。
    ヤツの宣告と共に、その前提が叩き潰された瞬間、ミラノはどうするのか。

 前門の汚濁、後門の刃。
 片方の対処に意識を割くならば、片方に飲み込まれてデッドエンド。
 人が攻め手に掛かった時に詰ませに来るその根性と言い、何より仕掛けるタイミングと言い。
 普通に考えて詰みだ。此処で何を言おうとも、何をしようとも、もう遅い。

 ―――ただ。ならばどうして、この少年は笑っているのか。
    この不敵なる盗賊王は、如何なる理屈でかの魔術師を攻め崩せると自信を持っているのか。


「“悲劇の中に出でたる聖杖の賢者………”」

   >Sage wielding the holy scepter of War...


 解答は単純にして明快。
 姿が消えたその瞬間、一秒のロスすらなく紡いだ詠唱に解答がある。

 前提としてミラノは彼の魔術属性について知っていたわけではない。
 むしろ予想外だ。アレは虚偽でもなんでもなく、殺し手のつもりで放ったのだから。

 つまりはこの状況自体、本音を言うならば彼だって予定外。だけど―――。


   「―――“その杖、我らを護る盾とならん”―――ッ!」

   >Let thy light Shield the weak.

 ・・・・・
 お互い様だ。

   相手がワイルドカードを隠したように、此方も当然忍ばせたジョーカーがあるというもの。

 肉体で触れて腐敗する障壁、回避も出来ないほど迅速な凶刃。
 片方のみしか凌げないというが、それはあくまでミラノがその身体能力で物理的に凌ごうとした場合のみ。
 起動したタクティクスカードの名を《シールドバリア》。
 護人ハシャハティの守りは、起動した僅かな時間のみあらゆる障害を跳ね除ける。

    ・・・・
 ―――あらゆる、だ。肉体的だろうが精神的だろうがそもそも話になりはしない。

「―――そうかい、んじゃあイーイこと教えてやるよ魔術師」

 そもそも攻撃がミラノの肉体に触れはしない。覆う傍から弾いて何処かに散らばる。
 であるにその一瞬だけなら、前方の魔泥に対して全く意識を割く必要が無い。

 魔泥を防ぐ手段はふたつ。ひとつは反応を上回ること。
 そしてもうひとつは、その術自体にそもそも触れない防ぎ方をすること。
 持続時間が違えども、単純な用途と強度が違う。一瞬だけなら此方の勝ちだ。
 これで前方の脅威は排除出来る。であるに、残るは“本人”だけ。

 鎖を引っ掴んで投げた斧を引き戻し、くるりと反転して逆に黒谷の真正面まで特攻。
 シールドバリアのタクティクスカードが持続する僅かな時間とチャンスを活かす為の最短距離、突き刺すナイフの一撃を加護が弾いたのを確認してから、逆に手元に戻って来た斧の刀身が光を浴びて煌いた。
 わざわざ魔術師が、速度強化で不意打ちを仕掛けに来たのがこの瞬間“だけ”は幸いした。
 実にいいところに飛び込んで来た。だから、狙いを定める必要もない―――。


「ガラクタの意味も分かんねえなら、お前はガラクタ以下だってなッ!」


 故にこそ、抜刀は瞬間のうちに。
 ヤツがその隠し玉を持っているというなら、その時間こそが勝機の鍵となる。
 薙ぎ、振り下ろし、払い、袈裟掛け、振るわれること四連撃。
 さながら狼の爪牙が獲物を引き裂くように、叩き込まれるのは一度限りの零距離カウンターだ。

>黒谷平助

8ヶ月前 No.528

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【王都ロンカリア/城壁・(跳ね橋)/ランサー】

 その一発は火薬かもしくは硝煙の臭いで探知したのか、撃たれる前に躱した。
「はっ、いい吠え方するじゃねか」
 騎士達をいたぶり殺す殺し方はどうも好かないが、白狼の荒ぶりにクランの猛犬は讃える。
 金龍コウリュウに乗って降りたライドウは日本武将を召喚したのを見るとここに残る事を選択したらしい、跳ね橋を下げた犯人を標的に探知のルーンを発動したが、反応はなし。
「橋を降ろしたヤツ。どうやら、魔術ですらも見つからねえらしいな。後ろに気を付けろよライドウ」
 魔力を感知できる自分を欺いた輩に背後を取られるなと、ルーン刻んだ石を道端に投げ捨てライドウに忠告すると、白き暴風が弾丸がこちらに疾走し首なし騎士がライドウの頭に向けて斬撃を繰り出す。
 ランサーは獲物を狙う豹の如く、体を構えて狼の脚を傷つけようと駆けた。ライドウの守りは英霊と同等と説明されたヨシツネに委ねる、だがそれと同時に狼は跳ね上がり押し潰そうと襲いかかってきたので落下地点まで駆け終えたランサーは槍を横に持って盾にして、それを防ぎ土埃をあげて地面にめりこむと、鍔競り合いの形に持ち込もうとする。
 両者の衝突により、衝撃波は多少和らいだものの突風が木々や土煙を巻き上げ、後衛にもその余波が迫り来る。
 鋭利な爪から滴る血。
 それを見たランサーは鍛え抜かれた前足を受け止めつつ言った。
「番犬にするには、ちと勇まし過ぎるな」
 言葉は通じていないと思うが、外敵を追い出すのではなく鏖殺する狼に対して、番犬の器で収まりきれない程の殺気と覇気は、勇猛だと評価した。
 ランサーは鍛え抜かれた両腕に力を入れて、狼を持ち上げ跳ね返そうと体を踏ん張った。
>17代目葛葉ライドウ ヘシアン・ロボ アベリィ・シルバラード

8ヶ月前 No.529

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

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8ヶ月前 No.530

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【深淵の間⇒魔大将の間/ニア】

 その行動は、すべて必然だった。
 その結論は、すべて偶然だった。

 いずれは辿り着く結末。宣告者の思想は並行ゆえに、必ず道はすれ違う。
 故にこれは避ける事の出来ない行動だったと言っても過言ではないのだろう。
 だが、遅らせることは出来た。遠ざけることは出来た。
 たったひとつの誠実さは、しかし俯瞰してみればただの愚行でしかなく。
 たったひとつの協調は、しかし異なる側面からしてみれば理解の及ばぬ狂気に他ならない。

 つまりは、なんのことはない。理解の不足だ。
 魔帝は選択を誤った。魔帝はただ一つの致命的な誤解をした。
 彼女は確かに理性的であり、戦争を嫌う者であるが、彼女にとっての人間の価値を理解していなかった。

 塵殺剣は自らのことについて一切を口にしない。
 その思想に至るまでの全てを語らない。どころか、あらゆる魔族に思想を誤解させる。
 あくまでも従順にして、怜悧にして、冷徹にして、死に重きを置く魔将軍であるとしか考えさせない。
 合理的であるが、それ以上に“合理的に物事を進めて辿り着きたい願いがある”ことだけしか理解させない。

 当然と言えば当然なのだろう。
 ニアは必要だと思ったこと以外の全てを語ることがなければ、そもそも行うことさえない。
 その胸中を理解させるための機会を、他の誰にも与えない。

 ………だから、すべて必然なのだ。
    兵舎に撒き散らされた正体不明の“毒素”による被害も。
    この場に攻略のために派兵されて来た敵兵による動乱も。

 普段ならば率先して事に当たるニアが、どういうわけかそれをすべて無視して。
 辿り着いた先は―――。


「―――やはりな。此処に居たか、黒猫の」


 黒猫。
 彼女がそう呼んだ、魔大将チェルに与えられた悪趣味なほど豪奢な部屋。
 魔将軍が礼節を保つのはあくまで魔帝だけだ。
 彼女の語りは変わらず、感情というイロを宿さない冷静沈着のそれであるが………同時に、他者に理解のピースを渡さない拒絶的なものでもある。そこに乗っているものは明確な虚無、それこそがニアのパーソナリティだ。

「おまえは聡明だ。だから、手短に伝えよう」

 ―――だが。彼女はあまりにも、その瞬間だけ行動に必要なもの全てを省いた。
    そうすれば確実にチェルが食い付くことを、知っているとでも言わんばかりに。

 瞬間。
 彼女の部屋に不躾に入り、一切の返答を聞くことなく、ニアは行動に出た。

 ………風の魔術は、主に移動に使われることが多い。

 風とはなにかを伝え、運ぶ力を持つ要素だからだ。必然、その属性にちなんだ魔法はそうしたものが多い。
 調整するべきものは多いが、塵殺剣はどれかと言えばその風魔術に関してのエキスパートである。
 魔将軍として見れば平均以下の魔術の素養であっても、魔族内で見ればそれは十二分に上位格だ。ゆえに彼女が“運ぶ”という概念に重きを置き、その為だけに誂えた形で術を行使したのであれば、残った音の残滓程度ならば平然と運び、伝えることが出来る。

 ………つまり。


“ニア。お前は、人間は是が非でも殲滅しなければならないものだと思うか?”

“殿下は、人という種の歴史をご存じでしょうか。
 ………失礼ながら、その問いへの解答とするにはこれで十分かと思われます”

“勿論、知っているとも。それを理解した上での質問だ”

 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・
 魔帝ヴェルメイユが、人間との闘いを望まず。
 ・・・・・・・・・・・
 しかし和平を望んでいるという物理的音声の証拠を残すなど、造作もないというわけだ。


「殿下の言葉だ。そして」
「何が言いたいか、分からんおまえではないな?」


 ―――リュドミラと、フィラッサを選ばなかったのは単純だ。

 前者を支えるものは誇りだ。
 くだらないプライドに縛られて、感情で物事を優先される危険がある。
 半々だが。半々程度でリターンが同じなら、リスクの無い道を通った方が合理的というものだ。

 後者を築いたものは混沌だ。
 極論アレは物事を惑わせるならなんでもいいのだろう。利害で説くにはあまりにも使い勝手が悪い。

 そこで出て来るのが魔大将だ。この女は利用できる。
 器の大きさに釣り合わぬ願いどうこうの話ではなく、単純に性根の問題だ。
 利己主義者は利用する分には信用出来る。方針が明快なものほど計算には入れやすい。
 ………そして、この女にも“この言葉”は利用価値がある。まず間違いなく。なにしろ―――。


「私とお前にとって、人間という種に生存価値はない。
 その点において、今の殿下に対する評価は一定の合致を見るだろう」

「この戦争に揺られるだけの神輿に、もう担ぐ価値はないと。そうは、思わないか」


 その戦争を起こした張本人が、この女であることなど。
 ヴェルメイユの態度を見れば分かる。だから、こう応えるのだ。

 おまえにとっても和平は不都合だろう? ―――と。
 自分にとっても不都合になった魔帝の切除を唆すように。彼女にとって必要なことを、口にする。

>(チェル)

8ヶ月前 No.531

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝軍/兵舎/ヴァンレッド】

 永き歴史の中にて命の灯を輝かせ続ける龍炎の騎士と、短き生命の中で刹那の閃光を輝かせる狩人。激突する両者がぶつけ合う力は凄まじく、衝突の度に生じる余波は他者の干渉の一切を阻害する。荒波と呼ぶ事さえ烏滸がましい闘争空間へと足を踏み入れんとする魔族は、この場に誰一人とて居はしない。
 皆が戦慄に打ち震えながら、固唾を呑んで戦の成り行きを見守っているのだ。偉大なる魔将軍の一人、誉れ高き栄光を一身に担う龍の帝と、数多の龍を鏖殺し、その帝にすら挑まんとする魔の狩人の決闘を。

「……それが我らの同胞を斬り殺した奥義。龍滅の刃か」

 戦場に轟く猛き雄叫びと共に、執り行うは逆襲の猛攻。刹那の肉薄を合図に強襲を仕掛ける焔の乱舞。燃え盛る焔の刃が、燃え狂う焔の拳が、獲物を引き裂き打ち砕き灰燼に帰すべく放たれ暴れ舞う。
 間髪を入れる事無く、忙しなき激流の如き怒涛の連撃を前に、戦士が取る行動はただ回避に専念するのみ。焔刃と焔拳の狙いを見切り、焔を焔で相殺して行き抗い続けて奮闘する。だが、必死の防御も遂には打ち崩すに至り、鎧へ炸裂するは爆炎の剛拳。
 身体を焼かれる激痛に襲われ声を上げながら、大きく仰け反る敵。それでもその辺の雑兵とは違い、転倒するには及ばず。逆にその勢いを利用する事で、逆襲に対する逆襲の一手を投じる。

「並大抵の技では無い事は窺える。一撃の重さも、凄まじき物であるのは確かだ」

 ――しかし、それを前にして彼は表情を変える事無く。

「だが、龍殺しを語るには"五百年"早い」

 焔の剣に宿される焔の巨刃。膨大な魔力を放出して一から鍛造した烈火の魔刃を構え、勇ましく前方目掛けて飛び込むと、迫り来る豪快な斬り上げに刃を振り下ろす。初動の遅れから、相殺し切れずに弾かれる結果となるが、その勢いを利用して敵とは逆の方向へと一回転。
 膂力を発揮した豪快な横薙ぎを以てして、再び迫る横薙ぎの一閃へとぶつける。激しい火花を散らし、音を響かせながら激突する刀身同士の勝負、これも相殺し切るに至らずまた弾かれる。
 その直後に襲い来る頭部への振り抜きを、弾かれた勢いを利用して後方へと退避する事で直撃を回避。伴う衝撃波は躱し切れず、鎧を貫通して生身の肉体を傷つけられる事になるが、戦闘に支障が出ない程度の軽傷。隙間から流れ出る血の量も、大したものでは無い。頑強な身体が功を為した、と言うべきか。

「嘗て龍殺しの偉業を果たした者として断言しよう」

 切先を下方へ向けて構え、刀身に収束させて行く魔力。荒れ狂う紅蓮の乱舞が最高潮に達すると共に放つは、空を切り裂く斬り上げの一撃。それと共に放出される爆炎の波が今まで以上の高熱を宿して大地を奔り、敵を呑み込まんとして襲い掛かる。
 然し、反撃は此処で終わらない。今度は空いた左手に魔力を集中させ、球状の火焔を生成する。それを敵に向けて投げると、火焔球は四つの火焔弾へと分散し、敵の回避先の候補と予見した位置へと次々と着弾させて行き――瞬間、現れるは焔の竜巻。波より逃避を図った者を焼死へと至らしめる、罠だ。

「お前の技は、我が偉業を越えるに至らぬ」

>アーケオルニ・ランドグリーズ

8ヶ月前 No.532

苦難の中の本質 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【ディンカ/魚市場/テルン・エルウェーウィン】

テルンの望む結果。人類の本質を覗き見た先にあるものは、何か。いや、先に何があるかなどは、もはや関係ないのだろう。彼女が必要としているのは、その行動そのもの。
ある目的のためにそうするのではなく、そうすること自体が目的。本質を見るという作業の過程を楽しむことは、いつしかテルンの生きる意味となっていた。
だからこそ、一般的ではない性質を持った者には特別執着する。そういった者の本質というのは、得てして希少なものであり、一度は見ておく価値があるものだ。

殺到する十字架を前に動くことなく、極限まで攻撃を引き付けようとする青年。まさか、このまま被弾するつもりのはずがないだろう。では、何のためか。
攻撃を回避した後に来るのは、反撃であることが定石だ。テルンは敵がそれを狙っていることを予測し、勘付かれないように密かに魔力を前方へ集中させる。
果たして、その予測は当たっていた。次の瞬間、視界から消えた青年は、突然眼前へと姿を現した。目で追うことの出来ない速さ。まるで空間そのものを圧縮したかのような動き。
読みを外していたら、痛手を負わされていたことは間違いなしだろう。しかし、今回ばかりは運が良かった。予め充填されていた魔力が壁を形成し、敵の一閃を弾く。
たとえ知覚は出来なかったとしても、予測は出来る。伊達に多くの者の命を奪ってきた訳ではない。テルンには、これまでの戦いで積み重ねてきた経験がある。

「一つ、質問をさせていただきましょう。貴方は何のため、彼らに手を貸しているのです? 理由もなく、あちらに付くことを選んだ訳ではないでしょう」

掴みどころのない動きで、一度詰められた距離を再び離しながら、テルンはそう問い掛ける。青年は何故、時空防衛連盟に協力しているのか、と。
歴史是正機構に寝返れ、ということをいいたいのではない。あくまで、彼がそうした理由を知りたいだけ。人の行動には、必ず理由というものが存在している。
何の理由もなく行動する者がいたとしたら、そいつはよほどの大馬鹿者か、ただ死んでいないだけの者、あるいは選択の権利を奪われている者に限られてくるはずだ。
右手を振りかざし、再度魔術を発動するテルン。すると、青年の周囲を取り囲むように四つの十字架が地面から現れ、敵の行動を制限する。
更には上空からも十字架が迫り、実質的に地中に潜る以外逃げ場はない。刹那、四つの十字架は、上空からの十字架が着弾するのと同じタイミングで、爆ぜた。
質問に答えなければ、自らの手で本質を暴き出す。テルンのそんな心中が垣間見えるかのように、彼に向けられた攻撃には、一切の容赦がなかった。

>黒鉄一輝
【質問しておきながら攻撃する人間のクズ】

8ヶ月前 No.533

黒闇の騎士 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限回廊/ローウェン・アルベリウス】

 魔帝城内に響き渡る無数の悲鳴。それは、脆弱なる精神の持ち主を侵蝕する暗黒の力によって心を打ち砕かれた者達の物。黒き鎧を身に纏った白髪の騎士が揮う暗黒の双刃の餌食となった魔族達が、次々と地面に斃れ伏して行く。そして一人残らず、最後の心を打ち砕いて無力化すると、騎士は剣を鞘に納め、城内を駆けながら突き進んで行く。
 一見すると、闇に堕ちた騎士を連想させる姿をした男の名は、ローウェン。古代にてマロニス王国が樹立されて以来、代々王国に仕えて来た騎士の系譜、アルベリウス家の末裔。印象からして王国内で精通している者は希少とも言える闇魔法の使い手であり、同時に暗黒剣の使い手である"暗黒騎士"でもある。然し、その経緯とは裏腹に国民からの信頼は非常に強く、行方不明となった騎士団長フロレの代理として名前を挙げられる事も度々あったとされる。
 結局、代理の座はゲイルに取られる形になったものの、彼はそれを妬む事無く、寧ろこれを機に騎士として成長して行く事を願って快く送り出したのであった。

「本来の目的を忘れ去り、魔道へと堕ちた愚か者」

 そんな彼が今、目指しているのは一人の女性の下。魔帝軍を、ひいては魔帝を倒すと言う本来の目的を見失い、求め得た力で数多の弱者を殺戮して来た愚物。嘗ては騎士としての誇りを抱く者として尊敬していたが、今となっては騎士の面汚しと称すまでに憤慨を抱く相手。其の者の名は騎士ならば誰もが知っている。

「弱者を嬲る事でしか、力を実感出来ぬ哀れな輩」

 "元"騎士団長、フロレ・ゾンダーランド改め、"魔将軍"フロレ。勇者として旅立って以来行方を晦まし、斃すべき敵方へと寝返った忌むべき叛逆者。騎士としての誇りを誰よりも大切にして来たからこそ、男は彼女の断罪を願う。力の誘いを受け入れ、誇りを捨てて魔道へと堕ちた彼女の存在を、彼は決して認めない。

「己の抱える闇を受け容れられなかった弱き者、フロレ・ゾンダーランド――貴様の命、此処で断たせて貰う」

 無限に続く階段を昇り、先行して突入していたゲイルと合流を果たした彼は、鞘に納めた双刃を再び引き抜き、向かう先にて待ち受ける者へと近づいて行く。鋭い眼差しで射抜くは、魔族へと堕ちた"醜き"彼女の姿。戦い引導を渡すべくして、黒騎士は刃を構えて戦闘態勢へと移る。

>フロレ・ゾンダーランド ゲイル・ベネルド


【危うく幽霊騎士団員と化しかけたローウェンくん、絡ませて頂きます】

8ヶ月前 No.534

獅子心 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 辛くも古代に於ける戦いを制し、歴史の改変を小さな変動のみに留める事に成功した時空防衛連盟。そんな彼等が休む間も無く次に訪れたのは、人類と魔族の果てしなき戦争が続く激動の時代――時代の最後は、たった一人の勇者が齎した魔族の大量殺戮によって魔帝軍は壊滅し、長きに渡る戦乱の幕が閉ざされたと言う。
 幾つもの本を読み耽り、数多の英雄の逸話を知り得たレオンハルトだが、その中でも数少ない、好きになれなかった英雄が、この勇者と呼ばれる人物だ。確かに殺戮に至るまでの、魔族への憎悪を募らせるだけの過去が彼女には在る。外道へと堕ちるのも、致し方無い事だろう。
 それでも、思わずには居られない事がある。魔帝軍の中にも、和平を提唱する者は居たのではないか、と。そして思う度に、勇者はそうした者達をも抹殺して来たのではないか、と考えてしまうのだ――それが、好きになれない理由の一つと言える。
 だが、この機会のお陰で自分は歴史の真実に触れられるかもしれない。そうすれば、その印象も変わるかもしれない――そう思って、疲労した身体に鞭打ち"中世"へと降り立ったのであった。

 ―――――――――――――――――――――――

 単騎で海底洞窟を突破し、城内へと侵入してから二十数分。襲い掛かって来る魔族の顔面を容赦無く殴り飛ばして失神させるなどして無力化して行き、そして時折道に迷いながら、辿り着いたのは城の最深部へと直結する廊下。尤も、この瞬間――侵入者に反応した事で廊下に仕掛けられた魔法が作動し、無限に続く廊下へと変貌を遂げ、直結では無くなったのだが。

「……意味深だな」

 侵入者の進攻を妨げる仕掛けを目の当たりにして、如何にも此処が重要な地点である事を彼は察する。最深部に続く最終防衛線か、或いは厳重な何かが秘匿されている部屋に続く道なのかは解らないが、とにかく此処を突破される事が魔族にとって相当な痛手となる事は確かだろう。現に、この廊下には一人の魔将軍が二匹の大蛇を従えて陣取っているのだから。

「此処の仕掛け、お前を倒せば解除されるのか」

 分厚い大剣の柄を掴んで肩に背負いながら、戦闘態勢へと移る前に一つ問いかけてみる。敵であるのだから、正直に答えてくれる期待などしていないが、一応可能性を考慮して――

「……いや、やっぱいい。聞いた所で、俺の役目は変わらねえ」

 ――しかし結局、前言撤回。解除されるされないのどちらであっても、彼女を倒す事に違いは無いだろう。ならば、さっさと終わらせるに越した事は無い。時間をかければ、増援が送り込まれて囲まれる危険性だって出て来る。特に、魔帝軍が擁する六人の魔将軍を同時に二人以上相手するとなると、確実に生きては帰れまい。

「他五人の魔将軍と合流される前に、お前を倒す。それだけだ」

 両手で大剣を構えると、そのまま刀身に地の魔力を注ぎ込んで行く。そしてそのまま天を目掛けて振り上げると、一気に眼前の大地へと叩き付けて魔力を放出。刀身より離れた魔力は地を奔って敵の方へと一直線に突き進み、通過した進路上の地面を隆起させて岩柱で攻撃する"地烈撃"の一撃。轟音を響かせながら、無数の岩柱が進撃を開始する。

>"常山蛇勢"レプティラ


【絡みます】

8ヶ月前 No.535

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【ディンカ/岬/Cluster】

耳元であの言葉を囁くと、相手には明らかに動揺が見られた。
正直な所、上手くいくとはさほど思っておらず、精々攻撃直前に意識を逸らせれば良い、そして、自分の記憶力を馬鹿にするなと主張する程度の意味合いであったが、この相手にはかなり効果的だったようで、簡単に足を使った一撃を食らわせて、地面に叩き付ける事が出来た。
となれば、追撃のミサイルもそれなりの威力を発揮するだろう、だがクラスターが注目していたのは、そんな戦闘関係では無く、ザーシャの反応の方だった。

随分と喜んでいるようだ、明らかに"今までの固体"とは別種の反応と言えるだろう。 自分がしばらく研究所を空けて戻ってきた時などは似た状況と言えるが、その際、ほとんどの実験固体と言うのは拒絶反応を出した物だが……思えばこの固体だけは昔から拒絶反応が薄かったか。
そこまで殺したかったのか? まあ、どの道、その反応に対して言える事は一つで。

「……僕が覚えている事よりも、背丈が変わるほどの年月が過ぎて尚、僕の言葉で一喜一憂できる君の記憶力の方が素晴らしいと思うけどね?」

結局、クラスターにとってはつい最近の事だ、ザーシャからすれば拾った時に少し記憶されているかどうかと言う話なのだろうが、実際のところクラスターは、牢屋から実験台を選び出したり、リストを見るたびに、それぞれの実験体の気質や特徴を把握しており、最後にザーシャの本来の管理ナンバーを見たのは数時間前、それでは覚えていて当然なのだ。
一方ザーシャは、この時代に自分を示す物など何一つ無く、会う事も出来ない相手の言葉で一喜一憂している、その記憶力の方が素晴らしいと思うけどね? とクラスターは半ば呆れるように言った。

……だが、結局のところは他の反抗的な実験体と同じようで、戦闘の意思は揺るがないようだ。
結局変わらない、か。

なんて考えながら、クラスターは気だるげに反応する。

「あぁわかった。 僕と言う存在が呪縛になっていて、殺して満足したいなら相手をしてあげよう、それも拾った者の勤めだ、と言えば激怒されるのだろうがね」

彼は今までの「経験則」でザーシャと言う存在の状況を推察して、少々的外れな返答を行った。
きっとこれは、自分の名から逃れたいために、命令違反を起こしたのだろう、とはいえ、それを潰すのも、また自分の役割。

などとクラスターは考えていたのだが。

――今何と言った?

相手の剣に風が宿った、明らかに戦闘が再開されるのに、クラスターはまるで先ほどのザーシャと全く同じように、喜びの感情のせいで回避が困難となった。

「作った物の予想以上の出来? 娘? ……役割から外れて尚、僕の発明品の一つだと言うのかい? ははははっ! 馬鹿な失敗作と言う物は何時も発明品ではない、ワタシは独立した一個の人間だと語ったよ、まるで自分で飯と取れて、暮らしていける野生動物のようにね! だが君はそんな現状理解が出来ていない馬鹿とは違うと? ……くくくっ」

クラスターが人型形態から飛行形態に変形して空高く飛翔する、だがその判断は何時もよりも鈍い物だったが、そこはクラスターの機動力、変形中に飛んできた攻撃でさえ、クローアームで往なし、飛行形態になれば、その圧倒的なスピードで無理やり回避困難な攻撃を『引き剥がす』

それでも……一撃は入っていたのか、ボディには傷が一つ入っていた。

「それならばテストしてやろう、君はこの僕と、僕が作った傑作Clusterを超える事が出来たのなら……君は紛れも無く、僕が想定していなかった傑作だ!!」

その言葉と共に、クラスターはまたもや幾つかの誘導ミサイルを発射し、そして赤色レーザーを乱射しながら接近する。
だが、それらの攻撃も布石に過ぎない。

飛行形態でも利便性には劣るがクローアームは展開可能、その十本の刃を空中で展開したかと思うと、ミサイルやレーザーに対応するであろうザーシャに対して、まるで鷹が獲物を狩るように急降下してそのクローアームでズタズタに引き裂こうとする。

>ザーシャ

8ヶ月前 No.536

忠犬 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【魔帝城/海底洞窟/ロコ】

「何を言っているのでありますか、私はただ事実を述べただけであります」

言い訳を並べるネクロニアに、ロコは呆れたような声でそう返す。彼女は対価さえ与えれば、変態的な行動をしても許されるとでも思っているのだろうか。
だから、会話は無意味なのだ。奴は自分のやっていることが一般的ではないとは微塵も思っていない。周りから避けられる原因が、全て周りにあるのだと思い込んでいる。
幸いにも、アンナローズも忠告を聞き入れてくれたようだ。尊敬すべき存在である彼女が、まさかこの程度の敵の誘惑に踊らされるはずがないとは思っていたが、ひとまず安心である。
勿論、相手にとっては面白くない状況であるのは確かで、ネクロニアは何を思ったか急に態度を変えたかと思うと、勇者の存在そのものを否定するかのような言葉を投げ掛けてくる。それに真っ先に反論したのは、ロコであった。

「アンナローズ殿は自らの意志でここに立っているのであります! それに、アンナローズ殿が死んだら悲しむ人なら、ここにいるのでありますよ!」

格上相手にも全く怖気付いた様子を見せず、力強くそう宣言するロコ。アンナローズを死なせてしまったら、きっと自分は悔やんでも悔やみ切れないだろう。だからこそ、従者として、彼女を護ると誓った。
予想通り、こちらの魔法はまともに通らない。ロコは人形にすらなれないほどの下級魔族ではないにしても、上位魔族では決してなく、精々中位がいいところ。
対するネクロニアは、上位魔族の中でも一握りしかなることの出来ない魔将軍の地位に就く者であり、その差は歴然。真っ向からぶつかり合っても、勝ち目はないに等しい。
それでもロコは、時間稼ぎなどをするつもりはなく、あくまで勝つために戦っていた。二人の目的は、魔帝を討伐すること。こんなところで苦戦する訳にはいかないのだ。

ハルバードを構えて接近してきた敵を見て、直ぐ様ロコはアンナローズの前に割り込む。傍から見れば、従者として当然の行動をしているまでと思えるだろう。
だが、実際は、こうでもしなければアンナローズは被弾してしまう確率がかなり高いのである。勇者とはいわれているが、現在の彼女の戦闘能力はロコよりも下。
ネクロニアに余裕を見せ付けるかのように、攻撃をしなかった理由もそれだ。数は二人であるものの、実質的に戦力となるのはロコのみであり、敵への攻撃から自身へ向けられた攻撃への対処、更にはアンナローズへ向けられた攻撃の身代わりまで、全てを一人で担っていた。
そんな状況でも、ハルバードの一撃だけであれば、ロコであっても十分に対処可能な代物であるはずであった。だが、一瞬だけ辺りが暗闇に包まれたことにより、敵の動作への反応が僅かに遅れる。
ほんの数秒、戦闘においてはその数秒が命取り。結果としてロコは、アンナローズへ向けられた攻撃を代わりに喰らう形となり、勢いのまま地面に叩き付けられた。

「アンナローズ殿には指一本触れさせないのでありますよ!」

痛みに耐え、立ち上がるロコ。斬り付けられた部分からは人間のものと同じような鮮血が流れ出すが、彼女はそれを気にすることなく、反撃の魔法を行使する。
ロコの詠唱に反応し、隆起する地面。持ち上げられた瓦礫と、その際に生じた振動が、ネクロニアと取り巻きのアンデッド達へと襲い掛かる。だが、詠唱時間の割には、大したことのない攻撃であることは否めない。
中位魔族からすればそれなりに威力の高い魔法であっても、上位魔族にとっては小手調べ程度のもの。つまり、よほどのことがない限り、この攻撃も意味を成さない。
そんなことは分かっている。けれど、アンナローズはどんなことがあっても護ると決めたのだ。ロコは諦めない。この戦いにも必ず勝てると信じて、一人奮闘し続ける。

>不死公ネクロニア
【あかんこれじゃロコが過労死するゥ!】

8ヶ月前 No.537

黒鉄一輝/ガドン・バルザック @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 ディンカ/魚市場/黒鉄一輝 】

 此処で《抜き足》に打って出たのはある種籠手試しのようなものだ。
 恐らく此方では発達していないであろう未知の武術。
 それに対して敵がどう打って出るのか。一輝が持つ鬼札<ジョーカー>の起動にはまだ、情報が足りない。

 絡繰りも分からぬ"消える歩方"など、初見は戸惑うものでしかない。現に彼女は此方を見失っていた。
 そして第三者が見れば違和感すら覚えるだろう――テルン・エルウェーウィンは目の前にいる敵すら見失うのか、と。
 だが現実はそうではない。
 ただのハッタリ。何の浪漫もありはしない。
 黒鉄一輝は速度を挙げたわけでもなんでもなく、テルンの無意識<死角>に滑り込んだ。
 そして滑り込まれた彼女は目の前にいるにも関わらず、黒鉄一輝を見失った。
 それだけの高次元の戦闘の話。
 だから籠手試しなのだ。
 当たるか。当たらないか。
 そもそも通じるか、通じないか。
 その結果は――。

(……ダメか)

 ――魔力障壁によって弾き返された《陰鉄》が証明していた。

 それも最初から展開されていたわけではない。
 魔力量の差によって刃が通らないのであれば、最初の時点で既に分かっている。
 隔絶した魔力の差でなければ――。

(――読まれていた)

 ――積み重ねた戦闘経験で裏打ちされた予測しかない。彼女はそれに賭け、予め防御を回していたのだ。

(加えて、初見の技への対応力――只者じゃないな。僕もまだまだだ)

 一輝が意識の隙間に滑り込んだ/聖十字の弾幕を回避した瞬間に、正面に魔力を集中させていたのだろう。
 そして再び知覚できるようになると同時に起動し、盾を形成して防御<ガード>した。
 弾かれながらも、しかし自身の勢いを空に受け流し更に前方――追撃を避けるべく、テルンの後方へ退避。
 同時、テルンも踊るようにして距離を離す。これでお互いの立ち位置は元に戻った<リセット>。

「決まってますよ。
 自分自身と、――剣の誇りのためです」

 四方を囲む巨大十字。魔術的なものであり――帯びた熱量からして炸裂するのは目に見えて明らかだ。
 一秒の余談も許さない。十字の影が差す。蓋をするように上空から降るは、同じく閃光十字。

「今度は僕が聞きます。
   、   、・・
 ――あなたはの誇り<アイデンティティ>は何処へ置いて来ましたか?」

 逃げ道はない。四方は塞がれ逃走経路は失われた。
 ・・・・・・・・  、   、  、  、 じぶん
 ならば創ればいい。そこに無いなら作り出せ、黒鉄一輝は何時だってそうしてきたじゃないか。
 両手持ち。水平に構え前足の踏み込み。四方と上空の起爆とタイミングを合わせろ。ズレれば焼死。
 三、二、一――。

 黒鉄一輝を取り込むすべての十字が起爆し、周囲は硝煙で満たされる。
 焼け死んだか。回避する余地は事実上零、無尽蔵に引き出せるようになっているとはいえ魔力量は依然低水準。
 防御もままらなないと思われた状況の中、――しかし煙より天<ソラ>を駆けるミサイルが如く飛び出す黒い影がある。

「第一秘剣――《犀撃》」

 ――それは爆発に呑まれたはずの黒鉄一輝。
   破軍学園の制服のあちらこちらに焼け焦げた跡が残っており、決して無傷とは言えない状態。
   だが"想定しうる限り最小限のダメージ"で抑えている。

 その答えは――テルンがそこに行き着くかどうかは別として――水平に構えられ、放たれる突き……突進にあった。
 全ての力を切っ先一点に集中させた、黒鉄一輝の持つ技の中でも随一の突破力と突進力を持つ秘剣、《犀撃》。
 十字架が起爆するコンマ数秒前。一輝は駆け出していた。
 姿勢を極端にまで低くし、切っ先一点から全身に受ける空気抵抗を零に近づけた突進が生み出すのは空気の層。
 要するに一輝は突破したのだ。
 魔術起爆によって引き起こされる熱と衝撃を、――突進によって形成された空気の膜で受け流して。

 その勢いを殺すことはない。
 最大の速度。音を超え、空気を引き裂く弾丸のように。
 テルン・エルウェーウィンの胸に突き立てるべく、黒鉄一輝は《陰鉄》の切っ先を向け突貫する。

 その鋭い先端は、陽の光を受けてぎらりと煌いていた。

>テルン・エルウェーウィン


【 魔帝城/舞踏場/ガドン・バルザック 】

 結論から言えば、サシャの言葉は全部聞こえてはいたのだが――。
 人間、どうでもいいことは全て脳ミソの奥にあるごみ箱にぐしゃぐしゃに丸めてからポイしてその上にお菓子の袋とかをぶちこむものだ。
 ガドン・バルザックにとっては開戦の是非とか匙みたいなものである。《愛と勇気の絢爛団》のモットーはただ一つ、勝ち馬に乗ること。
 開戦したら適当に戦って勝つ方に付き、瀟洒な椅子で胡坐を掻いておほほほほほほと笑っていればいいのだし。
 開戦しなかったらしなかったで現状優勢な魔帝側に媚打っておけばそれで将来の安泰が手に入るのだ。
 拒否されても軍資金を持ち逃げして第三勢力となればよい。
 そういうわけだから忘れた。サシャの開戦がどーたらとかいう声などというものは、耳クソと部屋の隅の埃と一緒にゴミへポイした。

「あらそう。
 そうよね、全ては愛ゆえに成り立っているのよ。
 アタシの存在が美しいという理屈だけでね。おほほほほほほほ!!!
 小娘、将来はアタシのようになりなさい。エレガントでビューティフルでパーフェクトでギガンティックな、

 こ の ア タ シ の よ う に ! 」

 飛び上がる猫娘。
 尻尾を立てて冷や汗をたらしながら恐る恐る振り返る猫娘。
 苦笑いを浮かべながら、この場からさっさととんずらしたいと願う猫娘。
 彼女の切なる(?)願いに反するが如く、ガドン・バルザックの謎のアピールが繰り広げられた。
 一回転。バレェの如し立ち振る舞い、――ふざけた容姿(と言動)とは裏腹の、一切の無駄がない動き。
 よく見れば無駄な肉も筋肉もないしなやかな体つきであることが分かるかもしれない。

「ハァッ!!!」

 ――決めポーズはいつも決まっている。口に薔薇を加え、超優雅な立ち振る舞い。

「マ、――いいワ。ほらとっとといきなさい小娘。此処は大人の社交場よ。
 アンタみたいなガキがホイホイ出入りしていいような場所じゃあないわ。
「もうじき此処にも攻めてくる奴はいるでしょうしね。防空壕を見失ったならアタシのダチが案内してくれっから」

 しっし、と追い出すようなジェスチャー。
 会話のペースも何もかも握りこんでいたガドンはしかし――はて、どっかで見たなこの娘と心の中で首を傾げていた。

>サシャ

8ヶ月前 No.538

黒谷平助 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 王都ロンカリア/大通り〈裏手)/黒谷平助 】

 何てことはない。
  テンパス
 《時属》、時間操作。
 希少性の高い魔法形態を使用できる時点で黒谷平助という魔術師は有象無象とは一線を画していた。
  、 ディアブル
 同時に《魔属》も持ち合わせていたがために、……彼はそれを真の切り札とすることが出来たのだ。
 さながら、日常(おもて)と非日常(うら)を巧みに使いわけ、己の狂気性を隠しながら生きてきた己のように。

 時間加速もその内の一つ。頑なに《時属》を行使してこなかった――印象の強い腐食の魔法に目を向けさせるため。
 そして黒谷平助の近接戦の技量を見誤らせるため。近接戦闘に持ち込めば勝てるという淡い希望を抱かせるため。
 だが目の前の少年はそういったものを一切抱くことはなかった。
 いいや、策士などではない。あれは道化だ。
 狂気的に理性を保ち続け、機械の如く正確な判断を下し続けるのが黒谷ならば――あれはおどけた仮面に全てを隠す道化師。

「ち――」

 宣告される加護。
 弾かれるナイフ。少年を包むことなく影に溶けて消える魔法。
 その防護壁が前には肉体的浸食など――使用されてはいないが精神的な浸食も――塵だ。門前払いされるべき悪害。
 あらゆる障害を跳ね除ける防護壁を前に、鉄面皮から初めて舌打ちの音色が零れた。

 ならば、次に少年がすることはなんだ?
 思考時間一秒未満。
 振り返る少年の顔に敗北の文字は描かれていない。彼の顔にあるのは常に勝利のビジョン。
 己が一歩上回り、黒谷平助という敵を殺害して成し遂げる栄光の二文字だけ。

 コロッジオーネ・テンパス
「《腐食の時間》――!」

 繰り出される零距離反撃<カウンター>。
 ミラノの追い立てる獣の如し一気呵成の攻め立ては、しかし黒谷が崩れ落ちるように消失することで宙を空振る。
 千切れたビデオテープの接合のように。時空の短距離転移<ショートジャンプ>による行動の省略。
 つまるところ相手に読ませないワープだ。
 次に黒谷平助の姿が現れるのは、ミラノの全てのレンジ外にして、しかしその真正面。

「――ならば、逃げられないようにするまで」
 フリューメン・アケロン
「《黒金の壁》」

 告げる言葉の温度は極零にまで低下している。
 腐食の壁が周囲に展開される。攻撃性能を兼ね備えた防御ではない。
 戦闘領域を狭めるための――檻<ゲージ>だ。派手に逃げ回れば腐り落ちる領域形成。
 ……次で潰しきる。
 必要なのは、――たとえもう一枚隠し札があったとしても上から押しつぶせる絶対的な一手。
 ヴィンクラを握る手に自然と力が入る。

 そして、――告げる。決定的な一手。禁忌が一つを。


 テンパス・ディズイーネ
「《時よ、止まれ》」


 ――瞬間。全ての時間が、停止する。
   澱んだ大気は流動を止める。鳴りやまぬ戦火の音も止まり、静寂が立ち込める。

 《時属》の最高魔法。複合魔法ではない、純粋な――時間の領域を脅かす魔法。
 彼にとって世界とは全て都合のいい映像記録<ビデオテープ>でしかない。
    、   、    、    、    、   、 ・・
 巻き戻しは不可能だが、……加速させることが出来るならば、停止させることも容易い。
 制約上、黒谷平助は止まった時間の中で他者に危害を加えることは出来ない。
 だがそれを侵したところで、あくまで強制解除という罰が与えられるだけだ。

 狙うは何処だ?
 ねじくれまがった精神、千日手<サウザントウォーズ>とすら思える鬼札の出し合いから見えてくる事実。
 背後を狙うのは、目の前の視界70度以内に捉えられないときに思い当たるセオリーだ。
 だからその思考に行きつかないようにする。

 距離を詰める。まだ解除されない。零距離、顔がよく見える。肩を掴み固定する。
 短刀――《ヴィンクラ》を取り出す。
 その肉を抉るべく刃の切っ先をミラノに向け、突き立てんと振るい――。

 制約違反。時間停止は、解除される。
 見えるのは、零距離にいる黒谷平助と彼の手に握られたナイフが腹部を抉らんと振るわれる光景――。

>ミラノ

8ヶ月前 No.539

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【魔帝城/無限廊下/"常山蛇勢"レプティラ】


突如伝令が彼女の前に現れる、この魔族は兵舎の警備を任せていた者。ヴァンレッドが兵舎で陣を敷いたと聞き、他の場に警備を向けたのだが予想しない事態が起こった様だ。
それは急な体調不良を訴える魔族、おかしいと彼女はすぐに気付く。何故ならば先まで診察をしていたのだ、その時に異常を訴えるものは居らず、以前からの患者のみであった。
話を聞く限りでは水が原因とみられる、思い当たるのは何らかの細工をされたか衛生面で問題があったか。用水路の場所から考えるにどちらも有り得る、しかし余程の悪環境でなければ後者は怪しく、見張りもいることから薄いと見る。
ならば細工をされたと考えるが、多少の毒であれば常備薬で事足りるはず。であれば未知の物質を使われたか、何らかの能力の可能性も視野に入れるべきだろう。本来ならすぐに医療班を向かわせたいが、ヴァンレッドが戦闘を行っているとのこと。
彼女が指示を出すよりも現場に任せた方が良いと判断、この場からは医療班を戦闘が終わり次第確認に向かわせると指示を飛ばす。人間との戦いでこのような手段を取られたのは初めてだ、考え直さねばならない事も少し増えるだろうと彼女は思案する。
すると警備からこちらに向かう侵入者ありとの報告、魔族を無力化して向かう一人の人間だそうだ。ここに向かってくる以上手練れなのは間違いない、この場にいる大蛇を除く魔族には別の警備を命ずる、これまでで止められていない以上無用な犠牲は避けるべき。無力化と言えども、傷は傷。

「他の魔将軍への増援要請は必要ありません、これ以降私への伝令も同様です。各自、自身の身を第一に行動してください。では、ご武運を祈ります。」

最後にそう告げると、魔族は各々警備しやすい場所へと向かう。この場に陣を敷いた以上彼女に撤退はない、退けば残るは魔帝のみ。魔将軍として退くわけには行かず、魔帝が彼女と同じ志を持つのであれば生きるべきは魔帝。
運良く、敵も味方も魔帝へ向かうにはこの廊下を通らねばならない。裏切りも許さず、侵攻も許さない、魔帝が魔族の平穏を望む限り彼女はこの場で砦となろう。例え、自身の灯火消え失せようと。

相対する黒の人間、侵入者を表す様にその姿を彼方へと伸ばし続ける廊下。最深部へ最も早く辿り着いた人間、背後に控える大蛇は威嚇の構えを取る。彼女は
変わらぬ調子で人間を見据える、様々な感情が渦巻くがそれを抑える。
言葉を紡ごうと口を開く人間、しかし戦えば分かることと言わんばかりに撤回し、増援が来る前に倒すとそう言った。他の魔将軍であれば、名乗りだの格好の付く言葉を向けられるのかもしれないが彼女には苦手だ。
だから、言う言葉は決して飾ったものではない。彼女の信念、気づいた目標、ただそれを率直に言葉にするだけ。人の下に就き、尽くすことが生きがいであった蛇の初めての自己と呼べるもの。

「ようこそ、魔族が住まう城へ。残念ですが、魔族の平穏の為に倒されるわけにはいきません。ですので―――」

迫る大地の隆起、地から穿たれる岩柱。背後の大蛇は両壁へと張り付き回避を取る、対する彼女は地から突き出る杭の如き岩を踏み台として侵入者へと跳躍する。背後の大蛇はあくまで進路を塞ぐ為の物、戦闘を行うのは彼女のみ。
空中へ躍り出た彼女は体勢を容易く立て直し、侵入者へ向け降下する。彼女に遠距離からの攻撃手段はない、あるのは魔族としての身体能力と蛇としての力、そして右目のみ。故に近付かなければならない。

「―――この場で朽ちて頂きます。」

人間に擬態していた顔が突如崩れる、頬の辺りから一文字に裂け、顎が人間の可動域を明らかに越え開かれる。頭部からならば人間程度容易く入る大きさ、だが今狙うのは丸呑みではない。
牙から染み出る劇毒、噛みつきによって体内へと注入されれば間違いなく死に至るそれ。牙が突き刺さらずとも、劇毒に濡れた牙で傷をつければ致命傷へと至る。
襲い掛かるは蛇の大口、傷を負えば命を容易く溶かす死神の鎌。彼女は魔将軍で最も弱い、それに間違いはない。だが、それは楽に勝てる事には繋がらないのだ。
不退、彼女の意思はそれだけ。魔族の平穏の為、この命役立てるならば喜んで捧げよう。今彼女は自身の信念の下で戦いに身を賭す、例え水面下で魔帝軍がどうなろうともその意思は変わらない。

>>レオンハルト・ローゼンクランツ

8ヶ月前 No.540

竜狩り @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝軍/兵舎/アーケオルニ・ランドグリーズ】

龍を滅する。この一事のみを追い求め、磨き上げられたと言っていい熾烈な剣撃。龍殺しの名に恥じぬ三連撃は、いついかなる時もアーケオルニの十八番であった。
これを放てば容易く決着がつく。仮に凌がれたとしても敵は虫の息、寿命が僅かに延びたに過ぎない。読んで字のごとく必殺技。跡に死体も残さない勝利を約束する奥義。
しかし龍炎公ともあろう者を相手取るなら話は別だ。その盤石であるはずの定義は、酷く脆弱な不確定要素へと姿を変えてしまう。事実、僅かな手応えこそあったものの、決め手と成り得るような傷は負わせられていない。
自慢の技が事実上破られたとあっては、普通の戦士なら戦意を失ってしまうだろう。そして自らの挑戦を無謀と認め、眼前の敵に命を乞う。示されたのがどのような条件であろうと受け入れ、無様に生き永らえる…

だがアーケオルニ・ランドグリーズという女は、そういった腰抜けの選ぶ道とはことごとく縁遠い。"太く短く"。こうも彼女を的確に言い表した言葉は他にないだろう。
可能性云々ではない。劣勢などどうでもよい。首が胴体と繋がっていて、剣を握る腕が、大地を踏みしめる足が生きている限り、彼女がリングを降りることなどありはしない。

「龍の長にしては月並みだな」

龍殺しを語るには500年早い、そう言い渡す龍炎公。その台詞回しに少々ガッカリしたような口ぶりのアーケオルニ。こうして食いつくということは、彼女が相当に燃えていることの証明でもある。
低級魔族が相手なら、無駄な会話に思考を割いたりなど決してしない。相手が孤高の存在、遥かに格上だからこそ滾る。アツくなる。狂人さながらの思考をしていようと、こういうところは人並みかつ年相応というわけだ。
見れば敵は剣先を下げ、その身に宿る魔力を注ぎ込み始めている。下段の構えからの突進か、もしくは炎熱を含ませた斬り上げか。敵の動きを注意深く観察しながらも、アーケオルニにはもう一つ注目している点があった。
それは今から繰り出される攻撃に付随するであろう追撃の手。開幕の斬撃には火柱が伴っていた。先程の剣と拳を織り交ぜた動きの際は、放出される爆炎によって追い討ちをかけてきた。
今度も仕掛けてくるはずだ。一度の回避では生存を許さない、二段構えの猛襲を…

「アタシが倒した魔族も、同じことを言っていた」

籍を切ったように迸る灼熱の奔流。その様は灼熱の大津波と形容するに相応しい。しかしアーケオルニが目を向けていたのは龍炎公本体であった。
空いた左手。そこに魔力が集中していることに気付いた彼女は、やはり追撃があることを確信して行動に出る。全身に黒色の闇属性エネルギーを纏い、横へ一回転した勢いを乗せての大胆な投擲。
持ち主の手を離れた巨剣は唸りを上げ、高速回転しながら龍炎公に襲い掛かる。重量と切れ味、スローイングの勢いもさることながら、付与された属性魔法によって破壊力は留まるところを知らない。
さらに回転の勢いを活かし、大振りな足払いのような動きで、右足に纏わせた闇エネルギーを射出。だがこれは敵を狙って放ったものではない。対象となるのは、彼女が何より警戒していた追撃の一手…退路を塞ぐようにして渦を成す炎の竜巻だ。
これによって4つの竜巻のうち1つが消滅し、アーケオルニはやっと生まれた安全地帯に飛び込んで炎の波を凌ぐ。

一秒たりとも気が抜けない戦い。一瞬の油断が何もかもを奪い去っていく極限の勝負。しかしアーケオルニはこれまで味わったことのない高揚感を覚えていた。
敢えてハイリスクな道を選び、まともな人間なら回避するような罠を踏み抜く。そんなスリルと危険に満ちた選択の結果とも言える現状こそ、殺しだけを叩き込まれて育った彼女が追い求めてやまない境地なのだから無理もない。

>>"龍炎公ヴァンレッド"

8ヶ月前 No.541

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【ディンカ/岬/ザーシャ】


そうだとも、俺はあの人に拾われて生き延びた。どれだけ先があろうともそれに変わりはねえ、拾われてなければそこらで野垂れ死んでいた。だからこそ俺はあの人に示す、あん時の俺よりもこれだけ立派になったと。
抱いた気持ちも全て覚えている、幼心だが確かに恋していたことも、あの人の為に使われるならそれで良いと。今だってそれは変わらねえ、だが糞親に魅入っちまったせいでこうなって純粋なあの人の作品ではないかもしれない。
それでもだ、俺はあの人に示す。貴方が拾った俺はこれだけの事を為せるようになったと、貴方の期待に応えることができるんだと。だから、俺は今までの全てをあの人にぶつける。糞親だろうが全部使ってやる、それが今の俺だからなあ!
俺の十八番は何故か初動こそ遅れていたがほぼ回避されてしまった、あれじゃあ届かねえって事だなあ。機体に傷こそ入っているが足りねえ、あんなのはその気になれば誰だって為せることに違いねえ。
しかし俺に向けられた言葉はテスト、そうあの人が試しているのだ!見せつけるだけじゃない、あの人が見せることを許可した。余計に負けられねえ、絶対ぇにぶっ飛ばして見せる。
そしてあの機体以上の傑作だってことを示してやる、一人の戦士として、あの人の作品として、俺は勝つ。勝たなきゃならねえ、そうでなきゃ意味がねえ。だから全部賭してでも、負けられねえ!

「超えてやるよぉ!俺は手前の娘、血は繋がってねえが作られたことに変わりはねえ!だからよぉ!!!」

迫る誘導ミサイルを力場で逸らそうとしても後ろから戻ってくるだけ、赤色レーザーは障壁で防いでも貫通力が高く受け続ければ割れちまう。それが同時に来る、どちらかなら対処は問題ねえ。だが両方だと、ちと厳しい。が、このくらいで止まる訳ねえだろぉ!
誘導ミサイルと赤色レーザーの嵐、ミサイルは障壁で破壊しレーザーは力場で逸らす。風の魔術で強引に体を浮かせ、入り混じるそれへ対処する、しかし俺には出来る、出来て当然だ!一つの誤動作なく、ミサイルとレーザー全てを対処し、力場も障壁もいまだ健在。
そして、これがあくまで目眩ましだってことも分かってんだよ!見上げれば飛行形態のまま猛禽の如く襲い掛かるあの人、展開された十本の爪。無論受ければズタズタの布切れのようになる、対処できない訳がない。
だが、ここは敢えて受ける!

「……つぅかまえたぁ!さあパパ!手前の娘の全力、受けて見ろやぁ!」

突き刺さる爪、飛び散る肉片と血。されど俺には関係ねえ、痛みもなければ真っ二つされても死にはしねえ。なら至る所から突き刺さる爪に耐えて、飛び去ろうとするあの人を掴むことだって出来らぁ!
このまま戦っていちゃあ空中戦に有利なあの人に追いつくのは難しい、そして追いついても容易く突き放される。なら接近して攻撃を行う時、態と受ける事でその身体を掴む。想像以上に大きく固い、冷たい身体に胸躍る俺だが今はそんな場合じゃねえ!
周囲に俺とあの人を中心とした大竜巻を発生させる、飛ぶ以上悪環境ってのは避けるもの。人型になれば問題ねえかもしれねえが、今は俺が抑えている。だから逃がさねえための檻、どれだけ高性能でも無差別に吹き荒れる竜巻の中の離脱は困難だろう。
だがあくまでこれはそう言った思考に向ける為の物、何故俺が爪に突き刺されてまで攻撃を受けたのか、それは防ぐ手立てのない状況まで接近すること、そしてあの人に掴まり逃がさない事。つまり、本命はこの大曲剣でぶっ差す。
突き刺さった爪に触手を絡ませる、しかし肩の根元をから裂かれたからか上手く力が入らねえ。だったらさっさと決める、左腕で構えた大曲剣を振り上げ、鋭さを増すために真空刃を纏わせる。

「これが、俺の一撃だぁ!!!」

戦闘機型の搭乗席部分目掛けて大曲剣を振り下ろす、風により鋭利になった状態ならば装甲も問題なく切り裂ける。これが決まれば傑作だと、認めてくれるに違いねえ。
だが、ふと過る。間違いなく好機ではある、しかし絡めた触手には力が入らねえ、振りほどこうと思えば離脱されちまう可能性もある。竜巻も落ち着いて人型に変形されれば容易く抜けられちまう。
そして何より、アンカーの存在。一撃必殺と言えるそれをこの至近距離で使用されれば、幾ら俺の身体が頑丈と言えど意識が飛ぶ危険性がある。そうなりゃ、認めて貰えねえ。
だから賭け、これはもう賭けだ。失念していたのは俺、それに気付かれれば認められず、気付かせなければ俺のは認められる。あの人ならば気付く、そう思いたいが今だけは認められてえ、だから思い至らないでくれ!
俺は認められたい、あの人の娘だと、傑作だと、作られたものとして認められるものほど嬉しい事はねえ。だから、後は賭け。駄目なら、気合で耐えてまた好機を窺う、絶対ぇ認めさせる。それまで倒れるものか。

>>Cluster

8ヶ月前 No.542

Futo・Volde @nonoji2002 ★0hekQLL3eX_sgc

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/アベリィ・シルバラード】

城壁で何が起こっているのか。それをアベリィが知る由もないが、1つ言えるのはあんまり“望ましい状況ではない”ということ。

狙撃の結果から言えば、良いとも悪いとも言えない。
とは言え、元から結果には期待していないのは事実だ。とは言え、予想以上に彼女の挑んだ相手は能力が優れている、と言わざるを得ない。
大きい狼に放たれた弾丸は、何事もなかったの如く、無慈悲に地面に穴を開けるだけ。
一方、狼に跨る首のない騎士に放たれた弾丸は、僅かに騎士の鎧にクラックを入れただけに過ぎない。

「こっちに気付いた――!?」

咆哮と共に、動物とは思えない速さでこちらへと駆ける大きな狼を前に、アベリィは手も足も出ない。だが、動かなければ殺られる。アベリィは急いで、武器を担ぎながら建物を駆け下りる。

彼女にとって、魔法は物理で太刀打ちできることものだが、より暴力的でより野性的な、物理攻撃には太刀打ち出来ないものだ。
それは自然の驚異と言う物がまさしくそうだろう。人間は、動物は、自然災害の前では恐ろしく無力だ。それは物理的な要因がひと噛みしているからに他ならない。

巨体がものすごい速さで駆け、獣が通った後に暴風が吹き荒れ、瓦礫を、人を吹き飛ばしながら、飛躍し、アベリィの居る建物へと大きくボディブローを決めるその瞬間。アベリィはその様子を尻目に急いで、自身に加わる被害を少しでも防ごうとさらに駆ける。しかし、次に彼女を待つのは予想していた事とは少し異なったものだった。

アベリィは狼が着地する際に生じる衝撃波や、吹き飛ぶ瓦礫に巻き込まれるとばかり思っていた。
だが実際は違った。確かに衝撃波は起こったし、建物も崩れた。だが、それは想像よりも小さなものだった。一体何が起こったのか、状況を把握するのに時間は要しなかった。
つまりは、狼が着地するのを男がその落下地点の下から現れて、自身もまた、狼に衝撃を加えて、衝撃を相殺したのだ。そして、その男は、大きな大きな、自身の身体の何倍もあろうかという狼の足を掴み、1人で支えているのだ。

「あんたは……」

アベリィには見覚えがあった。今、狼をそのたくましい腕で支えている男に。
かつて本部の喫煙所で一度顔を合わせた。だが、今は悠長に話をしている場合ではないのはアベリィも、そして彼もおそらくわかっている事だろう。

このままでは、おそらく狼を支えきれない。かといって、アベリィには彼のような力はない。

「私にはこれくらいしかできないけど……!」

アベリィはショットガンを構え、狼の胴体目がけて何発も放つ。散弾銃はその名の通り、精度こそ高くはないが、弾が散らばって近距離では絶大な威力を誇る。
ましてや、相手は非常に大きな体を持つ。ともなれば、その効果は絶大と言えるだろう。
――当たればの話だが。

>ヘシアン・ロボ、ランサー、17代目葛葉 ライドウ


【遅れて申し訳ないです;; 返信速度が場合によってまちまちになりがちなのであんまり遅い場合は順番すっ飛ばしてもらっても大丈夫です】

8ヶ月前 No.543

"混沌" @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

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8ヶ月前 No.544

欲望大好きウーマン @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【王都ロンカリア/???/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

魔帝軍の侵攻に響動めく市中。未だ敵は大通りと噴水広場でしか確認されておらず居住区は安全圏ではあるが、一度投げられた小石が立てる波紋は静かに、しかし確かに人々に浸透して行く。
不安がる人々の合間を巡視の騎士達が堂々と歩き抜けていく。それで仮初の安堵を得た人々は、何時もの様に善き営みを続けている。……その平穏が、間も無く終わろうとしている事にも気付かずに。


一際高くなった街の一画、王都を一望出来る一点に、その街並みに似合わぬ女がいた。
胸と腰だけを隠した扇情的な装いに、蠱惑的な魅力を放つ肢体。一見情婦かと錯覚する姿だが、しかし何処か異質な雰囲気を湛えている。
彼の者は街を見下ろしながら、にこやかな笑みを浮かべている。それはまるで――新しい玩具を得た子供の様な笑みだった。

「綺麗な街並みですねえ。壊してしまうのは勿体無いですが、まあこれも任務。あの方の命令には従わなければ、ですよ。ま、方法については『やりたい』様にやらせて頂きますけれど……!?

――ふ、ふふふ、ふふふふふ。そうそう、私がやりたい様にやらせて頂きましょうね! そうと決まれば早速初めてしまいますとも! さあ皆さんどうぞご一緒に! 全ての殻(ヴェール)を脱ぎ去って、望むがままに振る舞いあそばせ! いち、にい、さん、はい! 睡(まどろみ)、性(おかし)、喰(くらい)、惰(かまけて)、権(みくだし)暴(こわし)拒(にげて)守(かばって)、そして己を曝け出す! さあさあさあさあちっぽけな理性なんて投げ出して! 肉の歓待を、知の吸収を、貴方と言う人間が抱く悦びを見せ付けて差し上げましょう! ――ッハハハハハハ! アーッハッハッハッハッ――!」

突然捲し立てたかと思えば、高らかに笑い声を天に轟かせる。それと共に、耳鳴りの様な甲高く不快な音が人々の間に響き渡った。そして――。


『ひぃ……いや、いやいや! 止めて止めて止めてえ――!』

『何しやがる! この野郎、ふざけやがって! 殺してやる!』

途端。道行く人々が何かに捕り憑かれたかの様に豹変する。
奪う。壊す。犯す。貶す。殺す。まるで感情の堰を切ったように、唐突に変貌しては思い思いの惨劇を繰り広げる。
その悪性の正体は『欲望』。人間が人間である限り抱き続ける基本的活動原理である。尤も、彼の者が植え付けたものではない。王都中に暮らす人々が常々抱きながらも、社会的生活を維持し正常なコミュニティを持続させる為に自制していたそれらを"刺激"し、"解放"させただけだ。しかし、それだけで人間の理性を破壊するには十分だった。
欲望に押し潰され獣性に呑まれた人間は、ただ己の欲を満たす為に活動するケダモノになる。一人や二人では無い――この王都の至るところで、ケダモノと化した人間が悪逆の限りを尽くし始めたのだ。

『ずっっと思ってた……あんたが着けてるそのアクセ、私欲しかったの……悪く思わないでね』

『前からお前が嫌いだったんだよ! 死ね、死ね、死んじまえ――ッ!』

……加えて言うのなら、彼の者はこの王都にいる全ての人間を対象にしていない。"欲望に呑まれたのは精々人口の七割"だろう。そして、それはつまり"三割はまとも"だと言う事でもある。
……想像すると良い。昨日まで、否先程まで、全く平然と談笑をし、商売をし、生活をしていた隣人達が、突然狂い極まったかの様に欲望を吐き出す様を。ある男は道端で商店の看板娘を襲い出し、ある二人組は互いに忌み合って暴れ、ある女は親友を殺して宝飾品を奪い、ある騎士は同僚に向けられるべきではない憎悪を突き立てる。そんな光景を見せられた、"まだまとも"な人々の心情を。――全く無意味な追記であるが、彼の者は決してそうした事に意味を持たせてはいない。ただ、『何となくそうしたかった』と言う些細な欲のままにやってやっただけだ。
絢爛華麗だった王都は地獄の様相を呈している。逃げ惑う人々の狂乱の叫びが、獣性に堕ちた者共の強請の唸りに掻き消されては減っていく。

――そして、嗚呼そして、全く無慈悲な事に、欲望に呑まれた者共の矛先は、遂に"友人達"へと向けられた。

『ひ、ひぃ……なんだ、どうしたんだ!?』

『いやだ、いやだ……止めてくれええええええ!!!!』


――共にロンカリアで暮らしていただけの善良な"魔族達"が、次々と惨殺されて行く。

彼らを突き動かすのは"魔族に襲われたくない"と言う自己防衛欲求だけだ。 最早彼らにとって種の共存共栄等過去の話。眼前に迫る魔帝軍の侵攻と言う事実に基づく恐怖の前には、紡いだ筈の絆等頼りない縒り糸に過ぎない。
ただ、何の因果か魔族達の中に欲望に呑まれた者はいない。それが彼の者が意図的に仕組んだ事なのか、それとも単純に魔族には効果がないのか――どちらにせよ、この恐慌状態において"全員がまともだと言う事実"が、これ以上無く人間達を刺激する。……即ち、この異常事態が『魔族の仕業だ』と思い込む疑心暗鬼の火種となったのだ。
……後は、最早語るまでも無い。獣性に呑まれた人間達は魔族の弁解を耳に入れる前に殺してしまう。殺されてしまうのではと言う恐怖心と死にたくないと言う生存欲求が彼らを凶行へと駆り立てる。


「――ハッハハハハハ! 中々面白くなりましたねえ! やはり人間、欲望を解放して幾らです。ヤり過ぎって位が気持ちいいんですよねえ、欲望って言うのは。ああっ……あんなところで魔族の少女が……あーあ、かわいそ。きっとあれ、後で殺されちゃいますねえ。散々"使った"後は気持ちいい内に処分しちゃいますよね、私だってそうします。いやあ、それにしても……何度も見てはいますが、やはり脆いものですねえ。抑制を強いる不完全な監獄……それが社会であり、コミュニティと言うもの。一度欲望が爆発すれば、あっと言う間に崩壊してしまいますね。……うーん、呆気なさ過ぎる気はしますが、まあこんなところでしょう!」

惨劇を引き起こしておきながらけらけらと楽しそうに笑うこの悪魔の様な女こそ、かの歴史是正機構将官の一人。その名を、『エステランディア』。多くの作戦において、この様な惨劇を引き起こして来た、文字通りの悪女である。

……逃げ惑う人々の数が少なくなるにつれ、欲望に呑まれた人間達が衝突する頻度が増える。悪辣なる欲望の女はそれを、ただ眺めていた。

>>(ALL)

【この後から、『王都ロンカリア』ロケーション内部の人間市民の殆どが正気を失います。また市内の魔族は"ロンカリアに住む人々によって"次々と殺されるようになりました。なお、此方のレスの内容については許可を頂いております。エステランディア自体はその内ロンカリアの中で絡み可能なロケーションに移動するので接触希望の方はお待ちください。】

8ヶ月前 No.545

Charlotte @kirieru ★Android=ryLO8WYMEG

【魔帝城/舞踏場/リュドミラ】

敵の襲来をまだかまだかと待ち兼ねていた頃。
外の庭園から轟音が聞こえ待機させていた兵士達の悲鳴が木霊す。
この地の底から響くような音は間違いなく爆発音だろう。
『遂に来たと』と言わんばかりの笑みをリュドミラは浮かべると前方にある出入口の扉へと注目する。
開閉された扉から現れたのはブロンドヘアの抜群のプロポーションを持つ女性。
その容姿と仕草からリュドミラと同じく位の高い家系の生まれなのであろう。

「なんだ.....ろくな足止めも出来なかったのね、やっぱりクズは集めてもクズなのね」

敵の襲来を一秒でも足止め出来なかった配下の兵士達を呆れながら酷評すると目の前の女性へと歩み寄って行く。

「取り合えず......はじめましてかしら?私は魔将軍、災禍龍姫のリュドミラ、そして誇り高き【アジ・ダハーカ】の血を受け継ぎし一族の長よ」

目の前の女性に向けて自己紹介を始めるリュドミラ。
悪逆非道と呼ばれる魔族であるがやはり家柄なのか敵同士でも最低限の礼儀は忘れない。

「ええ.....ダンスの御相手ならよろしくてよ.....一緒に踊ってあげる」

女性に向けて華やかな笑顔を浮かべていたリュドミラであったが彼女が指を鳴らし服装が軍服へと変化した瞬間、表情は悪意を含んだ邪悪な笑みへと変貌していた。

「アンタが地獄に堕ちる前の余興としてね!!」

殺気に満ちた爬虫類の眼光と鋭い八重歯を見せた笑みを見せながら手元に二振りの双剣を召喚する。
そしてそれを思いきり振り上げると刀身が鞭の様に伸び始める。
リュドミラは振り回した蛇腹剣は意思を持つように彼女へと迫っていくのであった。



>>シフォン、All

8ヶ月前 No.546

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★Android=rT60tYi8k1

【王都ロンカリア/大通り/桐生戦兎→仮面ライダービルド、万丈龍我→仮面ライダークローズチャージ】

「いや、暴れてんじゃんその神様……」
相手のいった言葉に対し呆れたような物言いで返す戦兎。
そして、おもむろにビルドドライバーを装着したのち、懐からフルボトルを二本、取り出した。

「しゃあない、飼い主がやってくれないならこっちでやるか!」
「あぁ……あれをのさばらせとくわけにはいかねぇからな!」
戦兎がフルボトルを振りながら物を言い、それに対して万丈が応対しつつドラゴンスクラッシュゼリーとスクラッシュドライバーを取り出す。

「おっと、用法容量を守って正しく使えよ? まだ改良できてないんだからな」
「わかってらぁ!」
スクラッシュドライバーを取り出す万丈に戦兎がフルボトルのロックを解除しながら忠告し、それに対してベルトを装着しつつ景気よく答える万丈。
そして二人ともベルトにボトル/スクラッシュゼリーを装填する。

『ラビット! タンク! ベストマッチ!』
『ドラゴンゼリー!』
戦兎がベルトのレバーを回し、万丈がベルトのレバーを押す。
すると戦兎のベルトからパイプラインが出現しビルドの装甲が、万丈の周囲から容器が出現し中が液体で満たされていく。

『Are You Ready!?』
『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

「「変身!」」
『鋼のムーンサルト! ラビット・タンク! イェーイ!』
『ドラゴンインクローズチャージ! ブーーーーーーラァ!!』
戦兎の身体に装甲が装着され、万丈の身体に液体がまとわりつき、それが装甲となりさらにそこから装甲が追加される。
二人の変身が完了した。
その矢先に敵からの攻撃。二人はそれを飛んで避けたあと、怪物を殴りにかかる。

>オムニス・デューザおよび周辺all

8ヶ月前 No.547

災いを呼ぶ黒猫 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【魔帝城/魔大将の間/チェル】

暗闇の中、開戦の報せを聞くチェル。何の事はない。戦力差からして、魔帝軍が敗北を喫する確率など皆無に等しく、セオリー通りに戦を進めれば、魔族は勝利する。
……尤も、その前に片付けなくてはならない問題が山積みなのも、また事実なのだが。特に、軍の頂点に立つ者が弱腰というのは、如何ともし難い状況である。
指揮官の状態は、全軍に影響を及ぼす。特に劣勢に陥った時、それを挽回出来るかどうかは、その出来に全てが掛かっているといっても過言ではないだろう。
では魔帝がその役目を果たせるかどうかと問われれば、答えは否。この期に及んで敵との和平を模索するような者が、兵の士気を向上させることなど出来るはずもない。
やはり、先に排除しなければならないか……そんなことを考えていると、部屋の扉が開かれる。またネクロニアが戻ってきたか、とも思ったが、どうやらそうではないらしい。

「あらあら、珍しいこともあるものね」

"塵殺剣"のニア。魔将軍の中でも、比較的穏健な部類に入ると目されている人物。そんな人物が、わざわざこの魔大将の元を訪れるとは、今宵は雪でも降るのだろうか。
果たして用件は何なのか、と期待しながら待っていると……ほう? 面白いものだ。まさか彼女が、"そんなこと"を持ち掛けるためにやって来るとは。
チェルの表情に、愉悦が宿る。なるほどなるほど、やはり魔帝は、人間との戦争を望んでいないらしい。今までは直接その意志を確認したことはなかったが、ニアが拾ってきた音の残滓によって、それが明らかになる。
困ったものだ。あれほど"魔帝らしく"振る舞えと忠告したはずなのに、結果はこれか。こうなるくらいならもっと早く切り捨てておくべきだったと、チェルは自分自身の不明を嘲る。

「貴方の言いたいことはよく分かったわ。……丁度、私もそう考えていたところよ」

余計な言葉は必要ない。ニアであれば、これだけでチェルの真意を察することだろう。もはや二人にとって魔帝は不都合であり、ただ邪魔なだけの存在となっていた。
決して同じ思想を持っている訳ではない。しかし、二人は共通の目的において、今結ばれる。お互いに利用し合うだけの関係であるかも知れないが、その事実は大きい。
手始めにすべきことは、魔帝を引き摺り下ろす正当な理由を作ること。そういえば、兵舎にて正体不明の毒が検出され、多数の被害が出たという報告を聞いた。
まず間違いなく人間の仕業なのだろうが、ここは一つ、これを魔帝が戦争を回避する口実として仕組んだものとすれば、さぞかし面白い光景を目にすることが出来るかも知れない。
災いを呼ぶ黒猫は、不敵に笑う。遂に見えてきた世界の頂点。元より、人類打倒の目的が果たされた暁には、あの人間には退場してもらう予定であった。それが、少しだけ早まった。それだけのことである。

>ニア
【Mission Failed
 やべー奴らが徒党を組んだ】

8ヶ月前 No.548

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【王都ロンカリア/大通り〈裏手)/ミラノ】

 どんな人間でも、初めて見るものには反応が遅れる。
 それは当然の理屈だ。未知とは知らぬから未知であり、何もかもが理解の彼方より来たるが故の未知だ。
 その点において黒谷平助が見せた時間の加速は、ある意味ミラノの前提を容赦なく打ち壊してくれた。一見リカバリーを利かせ、窮地から逆に相手の窮地を引き摺り出したとは言え、あの手札は一度限りのジョーカー。
 タクティクスカード《シールドバリア》の利点は偏にその絶対防御という性質にこそあるが、そもそもタクティクスカード自体、そこに込められた力と加護の“期間”が過ぎてしまえば、そこからクールタイムとなる長期間の間において機能しないという欠点を持っている。その上で、絶対的な防御性能を持つ分の代償は極めて分かりやすい。

 ………単純に、時間の短さ。引き出し、自らのものに出来るだけの加護の限界の短さである。
 だから、あちらが何度だって易々と使える黒壁とは違って、こっちのは一度きり。
 そもそも二度、三度と使えたところでヤツは聡明だ。二回目ともなればいくらだって対策を出すし、見え切った札に頼り切ってのゴリ押しほど足元の見えていない戦い方もない。そんな真似をすれば奈落へと真っ逆様、正直言って御免被る。

 だからこそ、此処で決めるつもりだったのだ。
 逃がせばそれが最後、またもや近距離を詰められなくなる。
 ヤツが一度優位になったのならば、危ない橋を渡ることなど恐らく二度はあるまい。
 ………そうなってしまえば当然、戦士ではなく盗賊たるミラノは逃げの一手を打つとはいえ、勝ちに行くならば好機は此処しかなかった。彼の見えている範囲では、先ず間違いなく此処がチャンスだったのだ。―――だが。

「チッ、決まると思ったんだけどな………ったく、やりづれーの」

 そうならないから、彼は振り終えた斧をすぐさま引き戻しつつ舌打ちした。
 空を掠め、一撃は空をむなしく切るだけ。有効打にならなかったその正体は、ヤツの短距離転移の連打。
 身体技術などではないが、だからこそミラノには門外漢だ。肉体的な動作ならばそれより先に追い縋る自信があったが、彼は魔術の徒ではない。アレがどういう仕組みで、どのような効力を持ち、どのように応用されたものなのかさえ分からない。
 これにて仕切り直し。しかし誤解を招くより前に言うが、ミラノに先程の突破方法はもう出来ない。
 あとはこの相手には間違いなく機能しないもの、機能はするが文字通り最後の切り札、攻撃性に特化するが故に接近しなければ意味のないもの、“この地形”では機能しないもの4種類―――と、来た。
 ならばもう逃げの一手を打ちたいところだが、そう上手くいくはずもない。


「(逃がす気もねェ、ってか)」


 辺りを覆う黒い壁。
 触れるだけでその悍ましき権能を解き放つそれは、今回ばかりは用途があからさまだ。
 周囲に展開されたそれは、此方の動きを制限したいが故のもの。つまり明らかに決めに来ている。
 ―――当然、と言えば当然だ。此処まで状況が膠着するように認識できる以上、彼方に目的があるならそろそろ戦闘を無為に続けるのも億劫になる頃合いだろう。闘うこと、争うこと、そうしたものに悦楽を感じているわけではないだろうし。

 であるに、必然こいつは此処で動く。
 なんのために? 当然―――オレを殺すために、だ。

 だが、何故動かない。
 何故、わざわざあのド真ん中まで後退して、仕切り直しの体を取った?

「(中距離から攻めるため? 確実に殺すため? ………や、違うよな)」

「(それだったらわざわざ壁を貼る意味なんざない。
  あの動き方は時間を掛けて嬲り殺しじゃねえ、明らかに次で首取りに来てる動き方だ)」

 考えが纏まらない。
 当然だ―――もう一度言うが、ミラノのタクティクスカードについて黒谷が知らないように。

 彼は黒谷平助が今から侵す禁忌を知らない。その全貌を理解出来るはずもない。
 魔術の徒から遠く離れ、在り方まで対極の点に立つもの。
 唯一近しい点は遺るモノには対して頓着しないところ程度だろうが、それ以外の全てがズレている。

 ………だからこそ、その男の切り札にミラノは気付かない。
    あるいは、黒谷平助に見えている世界のカタチに、ミラノは気付かない。



 ―――世界を制する、その術も。

    その根底にあるのが、物事を書割のようなものとしか見据えていない精神であることも。


 男にとっての現実が薄いモノなら、如何様にも否定出来る。
 本のページを捲るようにして世界を巻き戻し。
 本のページを開いたままにするようにして、世界を止める。
 そんな世界に価値などなく。
 そんな価値観でなければ、その禁忌は侵せない。即ち―――。


    ・・・・・
 ―――時よ止まれ、と。世界をめぐる時間の価値を零にする、虚無と狂気と効率の集大成。



「―――っ、が、ぁ………!?」



 反応は、だから初めて一手遅れた。
 致命的で、決定的で、どうしようもないほど大きな一手の差。

 一瞬頭が真っ白になった―――錯覚であるが、ミラノとしてはそう言わざるを得ない。

 なにしろ目を開けた瞬間に零距離にヤツがいる。
 手元に凶刃をきらめかせ、その腹を掻っ捌くために振り抜いて来ている。
 躱せない。当たり前だ、アレが躱せるようなタイミングにわざわざナイフを振り抜いて来るはずがない。
 急所だけは避ける。刺されば“即死”という箇所だけは避けようとして、しかしあまり上手くいかなかったのは、ご丁寧に肩を掴んで固定して、確実に王手詰みの宣言を突き付けようとしてきたからに他ならない。

 どこが抉られた。それは知らん。見えないし。
 ただ滅茶苦茶なくらいに痛い。臓器のどっか逝ったかも分からない。
 手痛いと言えば手痛い有り様だ。だが―――。

 ―――だが。ある意味、最後までそう言うヤツで助かった。
    抉り抜かれたナイフが衣服ごと肉を貫き、零れ落ちる血と神経を激痛が疾走する中。

 それでも。だからこそ、こう言ってやる。



「っ、………てェ、なァッ! けどよ―――」
「最後のひと勝負と行こうぜ、魔術師………! もちろん、勝つのはオレだ―――!」



 オレの勝ちだ、と。
 このクソみたいな状況から、にたりと笑って行ってやる。
 ヒトのことぶっ刺して来た業物らしいナイフとその腕を、がしりと掴んで離さない。

   、   、  、  、  ボーダーライン
    つまりは、ここが生と死の境界線。
    一番のジョーカーを、ヤツのツラに叩き付けてやる最大のチャンスということだ。


.    ストレイシーフ
 少年は、盗賊王だ。

 ガラクタのような世界で生きて来た。
 奪うことで走り、従えることで生き永らえ、屈しないことで自分を形成した。
 理屈を越えた域で、銀狼はただ生存の為に戦って来た。身分どうこうなど関係もなく。



「風裂くサエザル………お前の出番だ」

   >The shadow of the wind Snatches all...



 ―――だから。
    ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・
    欲しいと思ったものは、強引につかみ取るのが盗賊の性分だ。


 勝利を、生存を、そして我欲を!
 小難しいことなんぞ関係ない! あと興味もない!
 自分を貫け! 邪魔する相手は張っ倒せ! 何故なら―――。



「―――派手に、何か盗ってきなァッッ!!」

   >Even the treasure of the Gods.



 ―――銀狼は、その横暴なれども一線を越えない在り方あっての銀狼だからだ!


 風が舞う。
 比喩を抜きにして、無風の戦場に、突然疾風が舞う。
 風を斬り裂くようにして不可視の突風が吹き荒れる。
 ミラノの背後から、ミラノの視界に入る全てをなぎ倒し、打ち壊し、切り払って去っていく。
 さながら神出鬼没の盗賊のように、すれ違いざまに“ほしいもの”を奪い取る無法者《デスペラード》。

 命中したのならば、さてどうなるか。
 黒谷平助は、紛れもなく“何か”を奪われる。
 あるいは力の“一部”か。あるいは武器か。あるいは、もっと予想もつかない概念か。
 それは模倣ではなく文字通りの強奪だ。運よく嵌れば、この一瞬だけはその力を振るえまい。

 風魔サエザルの真骨頂は略奪と簒奪。叛逆と下剋上。
 すなわち“気に食わないモノ”を引き摺り下ろす強奪《スティール》のタクティクスカードだ。

 ―――ミラノにしかこのカードが合わない理由など決まっている。
    こんな傲慢さと善性を同時に持った“盗賊”など、彼以外に居ようはずもない。


「―――ら、ァッ!」


 故に、あとは乗るか反るか。
 零距離にまで飛び込んで来た。そのヤツがあの腐食の術を此処で発動して来たらミラノの負けだ。
 そして、出血量を考えるとあまりもたもたしても居られない。
 避けられて、逃げられてもミラノの負けだ。負け筋の方が、恐らく多い。

 だが、それよりも早く、今彼が振るった戦斧の一閃が黒谷を斬り裂き、倒せるならば。

 吼えた通りに、自分の勝ち。
 ―――さあ、乗るか反るか。賭け金はお互いの命だ。


>黒谷平助


【スティール命中で何が一時的に持っていかれるのか、
 そもそも“なにか”を持っていかれるかどうか、
 それ以上に「スティール」に命中するかどうかの有無はすべてお任せします〜。】

8ヶ月前 No.549

メンヘラ @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_LPw

【王都ロンカリア/→飯店/ラヴィ】

『はぁっ……はぁっ……なんで構ってくれないんですか……私こんなにも好きなんですよぉ……』
『やめてくれ……やめてくれ……! もううんざりだ! こんなことになるくらいなら、いっそのこと……』

最近、王都では精神を病んで自殺する人間の数が急増している。その原因は不明だが、一部で噂になっていることがある。「夜這い兎に気をつけろ」なんていう言葉は、流行に詳しい人であれば一度は聞いたことがあるだろう。噂によれば、精神を病む原因はこの兎による精神攻撃であるとのことで、その行動から魔族ではないかと推測されている。実際その推測は当たっており、彼らを追い詰めたのは、1人の兎の亜人だ。

彼女自身は本気で相手に構ってほしいと思っているだけというのだから、余計に手に負えない。一番いい対処方法は無視することなのだろうが、それをやれば兎の要求はエスカレートして、かえって精神を病んでしまう。かといって構い続ければ、それ以外の時間が一切なくなってしまうため、仕事もできず、社会的な破滅を迎える。要は、彼女に目をつけられた時点で、助かる可能性はほとんどないといっても過言ではない。

「遂に始まったんですね……でも、人間いなくなっちゃったらつまらないなぁ……」

左手首に無数に刻まれた傷をさすりながら、兎の亜人、ラヴィはそう語る。魔帝軍による本格的な侵攻が始まったことによって、ロンカリアもかなり混乱に陥っているようだ。彼女も魔族の勝利を願っているが、それで人間が絶滅してしまったら、取り入る相手がいなくなってしまうので毎日がつまらなくなってしまう。同族を手にかければ大問題だし、人間は問題を起こさずに取り入れるいいカモだったのだ。

「こんにちは……美味しそうですね、その料理……私にも分けてくれませんか?」

どす黒い隈の刻まれた目で料理を見つめながら、ラヴィはひと目でわかるくらいに大量の料理を注文している”同族”の元へ向かう。実際にお腹は空いているし、これから始まる戦いのことを考えたらここで済ませておくのもいいだろう。ラヴィはまだ、イアンが敵であるということに気づいていない。イアンからしても、今のところラヴィはただ料理をほしがっているだけで、人間と一緒に暮らしている魔族の1人くらいにしか見えないはずだ。

>>イアン

【投下が遅れましたが、絡ませていただきます】

8ヶ月前 No.550

エクスデス @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【マロニス城/ホール(城前)/エクスデス】

 現在、王都ロンカリアにおける動乱の内容は、概ね下記の通りに集約される。

 大通り………人と魔族の共生者。平穏を望む白痴の少女と、その内側に潜む無形の魔。
 地獄への道は善意で舗装されるというが、これは正しくその典型だろう。
 お互いがお互いの善意の為に動き、理解したという殻に閉じ籠るが故の狂気が奔走する。

 その裏手………世界を虚無のレンズで見通す俯瞰の魔術師。
 彼の者ほど冷淡にして冷酷、機械的な存在は恐らくだが存在しない。
 残骸は残骸でしかないと、その手を振るう男の思想は一言で言って飛び抜けている。
 魔族とは違う。外観はあくまで人間だ。だが、故にこそ恐ろしい。

 宿屋………名状し難き魔性。黄衣を纏い、世界を嘲笑するトリックスター。
 彼の存在ほど異様なものはいない。何故なら彼には、積極的に争うモチベーションがあるはずもない。
 誰よりも短絡的で、誰よりも隔絶した視点で、ただ何となくでことを起こすモノ。
 その名は誰もが知りはしない。その銘を口にすることほど、破滅に近づく行為はないからだ。

 広場………此方は魔族同士のパッチワーク。敗残者たちの継ぎ接ぎだ。
 地より出ずる者達の主と、それを従えるモノ。
 もし性根が愚かであれども、人間にとっては天敵であることに変わりはない。
 使役者《テイマー》とは言い得て妙。力の方向さえ誘導されるならば、あれほど脅威となるものはない。

 城壁………復讐者たる魔獣と首狩り騎士、宵闇に潜む影。
 彼らとは、そもそもからして相互理解が通用しない。
 そこに在るのは人の敵だ。生態からして、根底からして、そもそも出会えば殺し合う。
 憎んで憎んで憎み切って。あるいは、その存在としての必然性で以て、可視と不可視の違いあれど。
 それらは明確に、人間の喉笛を食い千切る爪と牙に他ならない。

 ―――そして、その流れに更なる混沌を加えるもの。
    ひとつは最早語るに及ばず。狂気をばら撒き、欲望を刺激したもの。

 人間社会を人間社会たらしめるものの基盤が“理性”というなら、それを剥げばこんなものだ。
 栄華を誇る王都もこうなってしまえば末法というより他にない。
 よしんば立て直したとしても、魔族たちと人間たちには致命的な亀裂が走るだろう。
 生きていれば、の話であるが―――ともかく。


「―――ファファファ、誰も彼も盛りおって」
「勇猛さは買うが、しかし何も肝心なことが分かってはおらぬようだな」


 その流れの中においては、いくら城が堅牢と言えども。
 マロニス城まで、一人の“化外”の接近を許すには十分すぎるほどの時間があっただろう。
 そいつは甲冑で全身を包む、大柄な“魔導士”だった。
 底知れぬ魔力を迸らせ、道行く人間と魔族の死骸、ないし瀕死のそれを掴んでは何処か異空間に放り捨てながら………ただひたすらに城を目指して歩み始めている。雑多な他の生命には目もくれず、戦略的に最も重要なものを目指して。
 死骸や人間達の確保に関しては序だ。
 中世の人間は当代と違って魔力を持つ比率が高い。魔族など言うに及ばず。
 ならば、なにかに使えないこともないだろう………そう判断したが故の、素材の“貯蔵”とも言えた。もちろんこの争いで使ってやるつもりはない、自分が彼らに組する理由として、これくらいの“対価”はないと割に合わないというものだ。

「だが………」

 ………つまり、この“暗黒魔導士”の望みはただ一つ。
    強いポテンシャルを持ち、力を得るための素材となるだろう相手は、貴い血こそうってつけ。


「でかしたぞ、歴史是正機構」
「者どもが錯乱している今こそが好機! わしの目的を果たすには丁度良いわ」


 であるに、彼がマロニス城の攻略に乗り出すのは必然とも言えた。
 十全な“無”の力を使うことが出来れば城一つの粉砕など容易いが、流石にそうもいかない。
 蜂の巣をつついて何が出るかも分からぬのだ。此処は堂々と乗り込んで、最短距離で王を狙う。

 ―――門へと、足を踏み込ませる。
    甲冑の音を鳴らし、王都ロンカリアへの対処で兵が出払う今こそが好機だ。

>ALL


【城内に入るわけにもいかない+王都ロンカリアのロケーションが過密極まって来たので】
【城外で「乗り込んじゃうぞ〜」という描写をさせて頂くことにしました。よろしくお願いします】

8ヶ月前 No.551

万象滅尽の焔 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝軍/兵舎/ヴァンレッド】

 熾烈なる龍滅の剣撃。自らの一生を捧げ、磨きに磨き上げた必殺の奥義を受け止める龍帝の宣告は、無慈悲なる一蹴の言葉。その月並みな言葉に少し落胆したかの様な口振りを見せるアーケオルニの闘志は、未だに尽きていない。自慢の技を打ち破られても尚、自らの挑戦を諦める事無く、勝利を目指して戦場に立ち続ける。
 無謀にも勇猛にも映る彼女を、龍炎公は口にこそ出さないものの称賛する。打ち破れるかどうかの可能性云々など考えず、劣勢であるか否かを顧みず。首と胴体が繋がっていて、剣を握る手が、地に立つ足が、動き続ける心臓がある限り、果てしなく戦い続けるその姿。時に想起するは遠き昔、絶対なる覇王として君臨せんとする悪龍の征伐。
 嘗ての友と戦場を駆け抜け、共に彼女の様な志を抱きながら正義を果たさんとした時の事を、思い出す。

「……教えてやろう、小娘。遠き古の御伽噺、悪龍を滅した焔の剣の話を」

 振り上げられる焔の巨刃。剣に封じられた灼熱の魔力が解き放たれ、津波の如くに押し寄せる火焔の奔流となって敵へと猛襲を仕掛ける。然し、それでは活路を封じるに不十分。そう判断してでの更なる追い打ちは、球状へと収束された爆炎の塊。投擲した火焔球が分裂して着弾、四方を取り囲む紅蓮の竜巻として退路を断たんとする。
 だが、敵も容易くは死を受け入れない。追撃に対する反撃、漆黒色の煌きを纏える彼女が回転と共に勢い良く投げ放つは、圧倒的な重量と切れ味を有する巨剣。仕手の手より離れ、唸りを上げて高速で回転しながら飛来するそれは、先の漆黒と同等の煌きを纏っている。元来の性能に加えて更なる強化が施されたそれの破壊力は、留まる事を知らない。

「――龍翼、解放」

 正面から受け止めるのは英断とは言い難いが、龍炎公はその場で一回転した勢いそのままに焔剣を揮い、迫る漆黒の巨剣を迎え撃つ。刃と刃が織り成す、一瞬の拮抗。暴虐的なまでの破壊の塊を相殺し切るには至らず、その軌道を逸らすだけに留まり。急所への狙いは逸れたが、刃は紫鱗の肩を深く切り裂き、大量の紅き血潮を噴出させる。
 負った傷の痛みに一瞬だけ彼は顔を顰め。然しすぐに表情を戻し、竜巻から逃れて僅かな安全地帯に陣取る敵の姿を見据える。この状況を以てして、彼は時機が到来したものと判断する。窮極の一撃、森羅万象を滅尽する灼熱の焔を解き放つ時を。
 誰にも届かぬ程の静かな声で、宣言する彼の背から現出する龍の翼。纏える焔は、周囲の空間の悉くを埋め尽くす程で。

「森羅万象を遍く灰燼へ帰す、龍殺しの剣――古の約定に従い、汝の銘を此処に告げる」

 空を飛び、天へと掲げる焔の巨刃。それを合図に、周囲の大気に宿る魔力を龍翼が貪欲なまでに猛烈な速度で吸収して行く。喰らい尽くせば喰らい尽くす程に翼の焔は勢いを増して行き、彼の周囲を取り囲む焔の結界を作り上げる。一切の接近を許さず、一切の反撃を消し飛ばす紅蓮の焔。絶対に阻止などさせぬと言わんばかりの、見事なまでの防御。

「灼き滅べ――滅焔剣グラムッッッ!」

 最高潮に達する暴威。制御を不可能とする寸前まで喰らい尽くされた魔力が、騎士の担う焔の剣へと収束されて行く。そして、鍛造されるは万象を滅する超々高熱を宿せし焔の神剣。罪人を清める煉獄の焔ですら及ばぬ、窮極の火焔が此処に在る――但し、その威力はある事情から少々減衰されてしまっているが。戦いに熱中している彼は、自身を蝕んでいる毒に気付いていない。
 残像を残す程の速さで急降下からの急接近を果たした龍帝は、敵の真下から真上へと一気に斬撃を放ち――刹那、放出された神焔が天を貫く程の火柱となって敵を包み込まんとする。
 そして文字通りの必殺技を放ち、敵から離れた龍炎公。大技を放った分その反動は凄まじく、着地した瞬間危うく倒れ込みそうになる。咄嗟に大地に突き刺した剣を支えに立ち、火柱の方を見つめる。嘗て悪龍に手傷を負わせた技、果たして敵は耐えて見せるのか、それとも命を散らすのか。

>アーケオルニ・ランドグリーズ


【一応、次で撤退させる予定とさせて頂きます】

8ヶ月前 No.552

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

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8ヶ月前 No.553

勇者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/海底洞窟/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 超変態と称された事が相当心外であったのか、必死に反論の言葉を述べて行く不死公。その姿に魔将軍としての威厳は無く、底知れぬ変態性が感じ取れるのみ。対価を払えば、可愛いと思った少女にあんな事やこんな事をしていいと言う理論は、紛れも無く変態が振り翳す暴論だろう。
 どんな反論を返した所で、暴論相手に論破する事は出来ない。だから、真面に取り合わない相棒に従い、アンナローズも変態的な会話に対しては真面に取り合おうとはしない。あくまで話すのは、シリアスな会話を。

「僕の使命は、僕自身が課した物だ! 誰かに与えられた物なんかじゃない!」

 使命と言う言葉を鼻で笑い、生贄である哀れな勇者に向ける否定の言葉。然し、その勇者たる彼女は、あくまで自らの使命は自らが課した物である事を宣言する。そう、全ては真実を追い求めるが為に始まった戦い。一人の戦士として魔帝軍との戦いに殉じた父の辿った結末を知らんとするが為に、この旅路は始まったのである。
 最初から不死公の語る言葉は、見当違いもいい所だ。人々はこんな弱い勇者に使命など与えておらず、生贄としての英雄としての期待も寄せてなどいない。彼等は彼女を兵器どころか存在自体を認識していない事だろう。そして、彼等も彼女の死を悲しみなどしないのだ――それでも、全ての人々が悲しまない事にはならない。現に、此処に一人。大切な相棒が、死を悲しんでくれると強く宣言しているのだから。

「っ……ロコ!」

 存在し得ぬ蹄の音を響かせながら急接近を果たす不死公。構えたハルバードを軽々と、薙ぎ払う様にして揮う彼女とアンナローズとの間に庇う様にして割り込んだ、相棒の姿。傍から見れば従者の様に、実情では勇者が無力であるが故に行動する彼女。本来であれば、この一撃を往なし切れる筈だったのだが――刹那、洞窟を包み込む暗闇が、対処が不可能な物へと変える。
 視界を闇に閉ざされ、反応が遅れたロコは結果的に攻撃を喰らう形になり、地面へと叩き付けられる事となる。刃に裂かれた部分から流れ出る鮮血を見て、動揺と共に悲痛な表情を浮かべるアンナローズ。己の至らなさが、彼女を傷付けてしまった事実を彼女は悔いる。
 然し、悔いるだけで行動へと移る事は出来ない。先程よりも増えた敵を前に、突貫したが最期、一人を相手している間に残りの取り巻きが必ず自分を仕留めると予見出来てしまうからだ。
 何の役にも立てない自分を、勇者としての役目すら果たせない自分の力を嘆く。それだけに、力を求める気持ちはあった。然し、願った所でどうしようもならないと知っているからこそ、心底から求める事が出来ないのだ。

 ――力を求める瞬間を待ちわびる存在を、彼女はまだ知らない。

>不死公ネクロニア ロコ

8ヶ月前 No.554

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【王都ロンカリア/大通り/噴水広場付近/ダグラス・マクファーデン】

 解き放たれる人の醜き欲望が渦巻く王都の街。最も忌み嫌う豚と同格、或いはその下まで堕ちて行った人々の意識を漆黒の雷撃で一人残らず刈り取り、一時の眠りへと就かせる一人の男。
 街を支配する乱痴気騒ぎに苛立ちを隠せないと言った様子を見せる彼の名はダグラス。古代での一戦を経て、組織への叛逆を企てる決意を新たにした彼は、虐げられる魔族を救う傍らで、ケジメの為に一人の女性を探し求めていた。
 旧友、ユーフォリア・インテグラーレ。嘗ては友人兼ライバルとして主席の座を争い合い、共に良き未来を築くのだと誓い合った仲だった者。そして今は、お互い対立する組織に属する敵同士。尤も、滞りが無ければすぐに味方同士に戻れる筈だろう。多少の痛みは、覚悟しなければならないが。

「――薄汚い欲望を見せ付けるな、心底反吐が出る」

 報復の欲望を露わにする人間が集団で魔族を殴る姿。下衆な欲望を満たすが為に魔族の少女を穢す姿。互いに嫌悪し合う人間同士が殴り合う姿、些細な怒りを幾数倍にも増幅させて暴れる姿――視界に入るや否や、欲望を解き放つ者達を彼は即座に眠らせるか、或いは容赦無く殺して行くかの二つ。特に、魔族絡みの所は内容が苛烈極まる物であるせいか、殆どが殺戮の一手を下す羽目になる。
 そうして結果的に魔族を救い出すと、彼は右手に握った魔銃に風の弾丸を込めて、王都の外へと運ぶように仕向けて行く。それでも出力が足りないのであれば、直接魔法を行使して一人ずつ脱出させていく。中には、受けた内容が内容なだけに憎悪の眼差しを向ける者が居たが、彼はそれに動じる事無く、冷徹な機械染みた表情を崩さずに己の役目と言う物を果たして行った。

「……塵め」

 静かに呟く言葉は、この瞬間、街を見下ろす者に向けての物か。仮にこの現場を見られたならば、明確に叛逆者として仕立て上げられる事だろう。然し、彼にとっては最早そんな事はどうでも良い話。いずれにしろ叛逆者としての烙印を背負う事になるのだ。ならば、今この瞬間に、己の掲げる正義とやらを執行しても構わないだろう。

>ALL

8ヶ月前 No.555

"不死公" @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【魔帝城/海底洞窟/"不死公"ネクロニア+ゴーストホース+ナイトアンデッド】

「うっ……中には喜ぶ奴も居る! と言うか、私は魔族だ、欲しいものは力ずくで奪う! それが王道と言う物よ!!」

ロコの言葉に対して、真剣に戦っている時の態度は何処へやら、一転しておどおどとした物となるが、今度は開き直るように、喜ぶ奴も一定数居ると叫んだ挙句、自分はあくまで魔族、欲しいものは力ずくで奪うのが普通なのだと断言し始めた。 他の魔族にとってはとんだ風評被害である。
とにかく、とにかくである、今大事なのは変態の定義や魔族の王道の話ではなく、不死公として勇者と戦うこの状況そのものだ。

勇者は答えた、自分の使命は自分で課した物でしかないと。
これをネクロニアはありがちな「つまり自己満足か」と否定する事はしない、むしろ他人のため他人のためと動いてくる奴の方が『システム』を相手にしているようで薄気味悪い物。 かつては魔将軍ではなく、魔道帝国将軍として在ったネクロニアにとっては、こちらの方がよっぽど理解できる。

そしてまさしく忠犬らしく、ロコもそれに続いてアンナローズが死んだら悲しむ者はここに居る。

「唯一の理解者が魔族ならば――尚更、不出来な大多数の人間共に味方する道理は無いだろうにッ!!」

ハルバードを使ってなぎ払いを行う直前、ネクロニアはそう叫んだ。
そこまで仲が良いのならば、こんな所に出てこずにとっとと山奥にでも家を建てて二人で暮らしていろ、などと内心思いながら、一切の容赦なくネクロニアはハルバードを振るった。
結果は直撃……だが狙ったように二人同時に当たった訳ではない。 ロコがアンナローズに当たるはずだった部分も受けた。

なるほど、火力源を生かすか……と考えながら、ネクロニアはゴーストホースを走らせ、一撃離脱を試みる。

……さて、逃げ切れるか、と思ったのだが、あの勇者は、一切の反撃をしてこなかった。
なぜだ、こちらは騎乗しているとは言え、先ほどの大振りな一撃は、十分な隙があったはずだ。

――ははあ、なるほどねえ。

そうネクロニアは静かに笑った。
そしてやはり勇者ではなくロコが魔法を使ってこちらに攻撃してくる、振動を使って動きを封じて、瓦礫などで攻撃する、流石に基本戦術は抑えている。

「だが! そもそも動く必要が無ければ土魔法の行動阻害が容易と言う長所も台無しだなあ!? ネクロウィルス散布!!」

その言葉と共に、ネクロニアは棺桶をもう一度開き……周囲に粉のような物を散らせる。
次の瞬間には、この地に埋まる無数の死体が最下級アンデッドとなって蘇り、それらは文字通り『肉壁』となってネクロニアを守り、異様に腫れ上がった皮膚を破裂させ、最初に展開した粉、いや、ネクロウィルスと呼ばれるアンデッド化ウィルスを散布しながら消滅した。
そう、このネクロウィルスは、ウィルスの感染源となるアンデッドを生産し、それらが倒されてもウィルスが散布され、無限に死体を蘇生し続ける戦術兵器だ、これだけで、殲滅力に欠ける相手を追い詰めるには十分だ。

一方、アンデッドナイトの方は、最初はよく抵抗していたが、瓦礫の数に勝てずにほぼ行動不能となったが、そこは仕方が無い。

「さあ終わりにしようか! ゴーストホース、魔力を受け取り、奴らを焼き払うが良い!!」

ネクロニアは下馬して、ゴーストホースに自らの魔力を分け与え、見た目だけは派手な、中級程度の火炎魔術を行使させる。
内容は単純なファイアボール、回避は容易であるし、トドメにはならないだろう、だがそれで良い、ただ相手が『狙いはこの火炎魔術』と誤認すれば。

なぜならば、既にこの二人の攻略法は見えたし、無駄に傷つける必要も無い、あくまで目的は捕獲だ。

「さあて……勇者殿、キミ、実は、そんなに強くないね? ロコのような中級魔族に頼りきりな所を見てすぐわかったよ、つまり、キミを攻略するにはこうすればいい! ――バンテージキャノン!!」

ネクロニアは、勇者にニッと笑いかけて、推察した事を指摘する。
次の瞬間、ネクロニアが持つ棺桶が開き、無数の白い包帯の塊が乱射される。
これらは全て、拘束用と、標的の保護を兼ねた強靭な包帯の塊であり、人に着弾すると、その小さな見た目とは裏腹に、一気に膨張、解放され、一つであっても相手の全身を巻き上げ、抵抗できないように締め付ける事が出来るのだ。

だが何分、拘束性能と、あくまで殺さず捕獲する性能を優先しすぎたせいで命中率に欠ける、ロコに向けて何発も撃ったが、当たって一発だろう、だが……アンナローズを狙えば、ロコは必ずかばいに来る。
バンテージキャノンは受けた所で、当たった時点で標的をぐるぐる巻きにして、外部からの助けがなければ脱出不可能になる拘束具だ、つまりロコは確実に無力化できる。

それどころか、数を撃っているので、数発でロコを無力化、後続のバンテージキャノンでアンナローズも無力化という事も期待できる。
どの道、ロコが無力化された時点で、アンナローズもまた、自分の手中に落ちるしかない。 そうネクロニアは内心笑っていた。

>ロコ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム

8ヶ月前 No.556

健啖の銀狼 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【王都ロンカリア/飯店/イアン・ガグンラーズ】

中世での戦いが始まるなり、戦いそっちのけで食を謳歌するイアン。建前は「ここら一帯の見張り」で事実その役目は果たされているのだが、如何せん緊張感というものが足りない。
次から次へと運ばれてくる料理…シチューにステーキ、魚の旨味と脂を閉じ込めた塩焼き。それらをあらかた胃袋に納めたところで、バカな彼女も流石に異変に気が付いた。
周囲の様子がおかしい。和やかな雰囲気を破壊するかのような言動、振るわれる暴力。またタイムスリップでもしてしまったのかと疑わざるを得ない状況に、口の端に加えていた魚の骨がポトリと落ちる。
と、そんなところに声をかけてくる兎耳の少女が一人。見るからに具合の悪そうな顔に不安を覚えたイアンは、それが空腹によるものだと考えて席をすすめた。

「いいよいいよ。ていうかその目、大丈夫?ちゃんとご飯食べてるかい?」

向かいの席に座るよう促し、まだ手を付けていなかった追加のシチューと牛乳を譲る。そして自分は立ち上がり、すっかり異常をきたしてしまった街並みに目を凝らす。
正常な人もいることにはいるが、やはり狂ってしまった人の方が多いのは間違いない。思えば料理ももっと注文したはずなのに、あのシチューが来てからパッタリ途絶えているではないか。
『ちょっと見回りしてくるよ。キミは食べてていいからね』と兎耳の少女に告げ、事件への介入と黒幕の特定に動こうとするイアン。しかしその足は、とあるものを目にした途端ピタリと止まった。
そう、彼女にはもう一つ気付いたことがある。それはこちらへ逃げてくる、まだ正常らしき人の様子。明らかに助けを求めてきたはずなのに、自分達の方を見るなり血相を変えて引き返してしまったではないか。
現状が現状故に『魔族だから』という理由で避けた可能性もあるが、亜人の類ならそこかしこにいる。あくまで中立の立場を貫く者もいれば、同胞に仇を成し人間と共闘する者もいる。
自分も以前は好き放題やっていたが、人を傷つけたり苦しめたりということはしなかった。だから自分を見て逃げたはずはない。
そこまで考えた所で、こちらへ逃げてくる者がまた一人。彼もまた踵を返し、ドス黒く渦巻く雑踏を避けながら、遠くへと逃げ延びていく。声をかけることは能わなかったが、去り際に叫んだ言葉をイアンは聞き逃さない。

"よ、夜這い兎だ!"

「あのさ…キミ、何か知らないかな?」

兎耳の少女の方を振り返り、恐る恐る事件への関与を伺う。流石に彼女が王都全体を覆う狂気の原因とは考えにくいが、あの逃げていった人々の様子と言葉からして、何らかの悪事を働いていた可能性が高い。

>>ラヴィ


【絡み感謝です!少々展開が急ぎ足ですみません】

8ヶ月前 No.557

地味な優等生と豪華な無能 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【王都ロンカリア/噴水広場/ワームテイマー+エンペラーワーム】

「ほーん、そうですか。 んなら退場して頂きましょう! 戦場でワルツ奏でる奴が何処に居る、奏でるなら行進曲にしとくべきですね!!」

ワルツだから、そんな素っ気ない回答に対して、ワームテイマーは最初からあまり興味が無かったように、そうですかと返し、そして悪意をぶつけるように、それならば退場して頂きましょうと叫んだ。
どの道、ここでやる演目は虐殺劇、空気を読まない音楽を奏でる奴なんてお呼びではないのだ。

そして、エンペラーワームの登場にビクりと驚いた様子の相手に、ワームテイマーはニヤりと笑う、そうエンペラーワームは見た目と肩書きだけならば魔将軍にも匹敵する有力者にしか見えない、相手に恐怖を植え付ける、つまり一般人が居るこのロンカリア攻撃にはぴったりの人材なのだ。
どうやら相手の振る舞いを見るに生粋の戦士でもないようだし、エンペラーワームに恐怖して撤退してくれればそれが一番、って時に彼は世界最強などとのたまい始めた訳で。

……いやあ、なぜ上司を間違えてしまったのか、とワームテイマーは考えるが、冷静に考えれば他の魔将軍もロクでもないか、種族が格上だったり、何考えてるのか分からない連中ばかりだ、今思えばレプティラ様の下が一番良かったのだろうが、チェル様やフィラッサ様に仕える事になるよりは、無能だが自由にやらせてくれるエンペラーワームで正解だった、かなあ、と一人納得した。
一方エンペラーワームの方は、確かにショパンの言葉を「中ボス」と言う言葉を聞いていたのだが、それに怒り狂ったりはしない、態度や図体と同じように、心も無駄にデカいのだ。 まぁ、理解できなかっただけかもしれないが、仮に浅いと言う言葉が聞こえていたとしても、彼は怒りはしなかっただろう。

「よく分からない術を使いますねえ、ならば、こちらは貴方の悲鳴を奏でるべく、対抗させて貰いましょうか!」

出現するのは奇妙な防御壁、とは言えそれ自体はあまり驚くべき事ではない、おそらく奏でた音楽によって発生した物と言うのは容易に想像できる。

とにかく、それによって部下のワームたちの攻撃はほとんど失敗に終わった、穴は開ける事は出来ても、次の攻撃に繋がっていないようだ。
これはやはりエンペラーワームを動かさないと厳しいか、そう思っていた時だった。

"消えるのは嫌だ"
その言葉を聞いて、ワームテイマーは少し腹を立てた。

「あぁ!? 突然未来から来たのはそっちでしょうが! 私は是正機構にも防衛連盟にも物頼んじゃあいませんよ、この素晴らしい虐殺劇もおまえらが言う所の正しい歴史だってのに……」

何せ、彼女は是正機構とは何の関係も無い『ここに居て何の問題も無い人物』であったために、歴史是正機構と同一視されて怒るのは仕方が無いと言えば仕方が無いのかもしれない。
少なくとも、彼女が是正機構など居なくても魔族は勝てる、むしろ防衛連盟と言うイレギュラーを呼び込んだ邪魔者程度に思っているのならば、尚更だ。

エンペラーワームを利用すると言う案は吹っ飛んで、ワームテイマーはこちらを閉じ込めようとするダンボールに向かって両手に魔力を収縮して射撃を行おうとするが……そのとき、ゆっくりとエンペラーワームが前に出て制止する。

『……よせワームテイマーよ、お前の役割を忘れるな、我に出来ぬ事をお前はやれ。 なぜならば直接戦闘において我は最強の存在、そして我の副官であるお前は最高の指揮者、我が配下のワームたちは最高の兵士、それを生かした戦いをすれば、我らは常に必勝だ』

その内容は、実力が伴ってさえ居れば、かなり理知的で、頼りがいのある物だっただろう。
しかし、実力が伴っていないとは言え、感じる所はあったようで、ワームテイマーは一歩下がってワームたちの指揮に集中する。

そして、自ら直接戦闘を買って出たエンペラーワームはその口調のまま語る。

――我らの世を乱す害虫に等しき部外者よ、消えよ。

その巨大な口を開けてエンペラーワームが吼える。 すると大地が揺れたかと思うと、高濃度の魔力が彼の全身から浮かび上がる魔石から放出され、その瞬間、周囲に展開されたダンボールを吹き飛ばす爆発が何度も何度も発生した。

ただ、ダンボールを吹き飛ばすだけではない、吹き飛ばした後にも、この街ごと敵対者を吹き飛ばさんとする爆発は、幾度と無く起こるのだ。

>ショパン

8ヶ月前 No.558

黒谷平助 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 王都ロンカリア/大通り〈裏手)/黒谷平助 】

 ミラノが知るはずもない、――魔法の応用力を生み出すのは複数属性による掛け合わせ、すなわち《複合魔法》にあることなど。
 この時代(世界)の魔法使い/魔術師であろうとも知っていれば最前線で活躍できること間違いはない技術であるのだ。
 一属性に極化した、あるいは極化させて魔術を行使するのは誰でも出来る。少し研鑽を積めば複数属性を操ることが出来る。
 だから行き着く者が少ない。

(……流石に、時属と魔属の複合は読み切れませんか)

 コロッジオーネ・テンパス  テンパス  、  ディアブル
 《腐食の時間》、《時属》と腐敗の《魔属》からなる複合魔法。
 現象が作用する領域を時間にまで広げた黒谷平助の真価。
 時間を腐らせるとか、腐敗に時間魔法を掛け合わせて急速腐敗の壁を作るとか。
 その路に従事していなければ知り得ない発想、――それが分かっただけでも鬼札にはなりうる。
 だが、もうそんなことは関係はない。

 時は止まった。
 必殺の距離で動きも固定した。
 そして、――ナイフは見事にミラノの腹を掻っ捌いた。
 丁寧に、臓器をかき混ぜるようにナイフも回した。

 だが――そこが、黒谷平助の敗北点。
 命運はもう、決まったようなものだ。

「何――」

 要するに、――持っていたカードの数が違った。
 掴まれた腕。引き抜くことは許されない。
 姿勢も一切動かない。ヴィンクラを手放して距離を取るか。
 それを考える前に――黒谷平助は次に展開された風の前に平静を失う。

    強奪
 《スティール》。
 旋風乱舞。荒れ狂う暴風。何もかもを奪い去る快男児たる風の槌。
 だがそれは殺傷能力を持つわけではない。むしろその逆、「奪う」ことに長けた風。
 回避できる余地はない。

 彼はこれにより、奪われる。
 《時属》魔法、そして《魔属》魔法、――どちらも彼の根幹をなす戦闘技術。
 だが今の彼にとってはそんなことですら、些細なことにしか感じられない。

 ・・・・・
 スティール――忌々しき術式の名は、鉄面皮を完全に剥がし、剥き出しの憎悪を露わにするには十分だった。
 完全に破綻しきった男が壊し続けてきた中で、最後に壊そうとしていた男。

「貴様――」
「貴様、貴様、貴様、貴様、きさまっ――!!!
 ここでもまだ私の邪魔をするか、■桜■■郎ッ!!! 藤■製作所の忌み子ォ!!!」

 殺す。
 ここで殺す。亡霊よ。
 ここで死ね、亡霊。
 悍ましき執念が露わになった今――黒谷平助を衝き動かすものは一つ。
 目の前の残骸を消し去るという目的のみ。

 ナイフはいまだ刺さっている。黒谷平助は《ヴィンクラ》を手放していない。
 ミラノの振るう斧が黒谷の肩口から胴にかけてを深く大きく引き裂き、肉を大きく断つ。
 血しぶきが眼鏡を紅に染める。そこに最初にあった知的で冷静な優男はもう何処にもいない。
 ほぼ、即死。
   、  、  ラストアクション
 されど、執念が最後の行動を確約する。

 ――細腕より万力を発揮。痛み分け、相打ち、想起されるのはその言葉。
   そのまま腕を振り払うようにして肩口目掛けて引き裂かんと、突き刺さったヴィンクラに全力で力を入れて振るう。

 その結果を見ることはない。
 殺害か、救命か、それとも別な結果か。
 いずれの結果であれど、黒谷平助はミラノの最後の一撃が直撃した時点で死亡は確定しているのだから。


 黒谷平助@放課後の魔法戦争
 斧の直撃により肩口から胴にかけて引き裂かれるという形で、凄絶な死を迎える。

>ミラノ

【お相手、ありがとうございました】
【ナイフはまだ刺さっているものとして解釈しておりますが、最後の一撃に関してはそちらにお任せします】

8ヶ月前 No.559

『雨だれと憂事』-前奏曲雨だれより- @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【知識範囲内ですが、出棺用の行進曲ならありますよ】

【王都ロンカリア/噴水広場/ショパン】

「……!」
 ワームテイマーの怒声にショパンは目を見開いた。
 彼女?は異世界の問題に外部の人間に押し付けるなと上司に言い放った自分と似た感情を抱いているのかと。
「……君の突然未来からやって来たって気持ちは、よく分かる」
 ダンボールドームは壊れて、小さな悲鳴をあげながら襲って来たワーム達をダンボールに閉じ込めてなんとか煩わしい攻撃を避ける。
 突然やってきて連れ戻しに来ただの、突然連れてこられて異世界の危機を救えと言われそれらを拒んだショパンは、ワームテイマーの気持ちはよく分かった。
「けど……」
 燕尾服の裾と黒いブーツのスカーフを揺らして、再び姿を現すと。どうやら閉じ込めるのに失敗したらしい。
(やっぱり、戦うの無理)
 眉を寄せてそう暗い感情が過り、話の続きをしようとするが大地は揺れる。
「うわあ゙っ!」
 地響きに変な声を上げて周囲を見渡しながら困惑すると、エンペラーワームの肉に埋まっていた魔石からエネルギー弾が発射され籠は焼かれた。
 そして周囲に弾ける魔力弾に対して、ダンボールの盾3枚ほどを作って防ごうとする。
 だが、流石にこの盾は持つはずなかった、爆発の衝撃で細い体は石畳と共に吹き飛ばされ無惨に投げ出され転がっていく。
 転がり終わると痛みが骨まで染み、土埃だらけの体は地面に伏せる。
 爆発音が轟く中、痛みに悶え苦しみ小さく唸る、けれどもタクトは決して離しはしなかった。
「……違う」
 "ジョリー、もうお別れなの?"
 愛した人の為に贈った歌を好き?と慈愛の残り香は初期化されながらパソコン越しに問いかけてきた事も、走馬灯のつもりなのか脳裏に迸る。
「ぼ、くは……僕の、大事な、物を……歴史、是正機構に……魔帝、軍に奪われ、たくないだけ……」
 "ジョリー、また君を失った"
 自分がやって来たのは歴史を正す為ではない一度目はすれ違い、二度目は自らの手で失った電子の女性(ひと)のように、自分が大切に思える存在の消失を守る為にここに来たのだと。
 そう苦しそうに主張するショパンは『夜想曲第二番』の演奏を終えて、次は『前奏曲雨だれ』のムジークを奏だし、天空には鬱屈とした旋律と共に、雨雲が噴水広場全域に広がり雨を降らせ、さらに二人の頭上に小さな雨雲を発生させようとする。
 一見ただの雨雲だと油断するだろう、だが違う。
 二人に降らせている雨はベートーヴェンのように、月を連想させる丸いものを四角いものへと変えた雨でもあり、ショパンが脅威と思った物を対象者の視界から奪い去り、別の物へとすり替える特別な物でもあった。
 つまりは歴史改変であり、自分の存在を視界から消し去られるかどうかは分からないが、守りが効かないのならば存在を消し混乱させようとショパンなりの抵抗であった。
>ワームテイマー エンペラーワーム

8ヶ月前 No.560

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_HV3

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/17代目葛葉 ライドウ】

「なんという怨嗟に満ちた咆哮だ……!それにこの気配は――」

サーヴァント、そう言い終わる前に獣は飛びかかってきた。狙いは狙撃手か!
しかも首無しの騎手の方も飾りではないらしくすれ違いざまに暴風のような斬撃が浴びせられる。
その数は十を超える、特に集中砲火を受けているライドウ、一人ならば防ぐのは難しかっただろうが、傍にヨシツネを召喚していてよかった。
斬撃の半分をヨシツネが二刀を重ねて受け切り、残り半分をライドウが緑色のエネルギー、マグネタイトを纏った剣撃で相殺する。
意思疎通の暇もない一瞬だったが、その一瞬のうちに互いの役割を判断し行動に移す高度な連携行動、この連携こそがライドウの力であり葛葉の一枚看板たる所以である。

『おい17代目、こいつちょっとシャレになんねーぞ!どうすんだ!?』

「とにかく街から引きはがすぞ!奴は人間を憎み切っている、街にでも入られたりしたら甚大な被害が出る!」

葛葉ライドウは守りし者である、例え時代が違えども犠牲は避けたいところだ、それに奴はサーヴァントで銃に過剰に反応した、そこが突破口になるかもしれない。
刀を鞘に納めながらもう一本の封魔管を抜き悪魔を召喚する。それはニーベルゲンの大英雄、その名は――。

「来い、ジークフリート!」

『ああ、いい選択だサマナー、ようはお前を守り切ればいいのだろう?』

「そうだ、とにかく街から引き離す、そうすれば俺たちは存分に戦える」

呼び出されるは褐色の肌に大剣を掲げる英雄ジークフリート、特に防御に秀でた悪魔である。
悪魔の二体同時使役、この手を隠さずに相手できるほどこの獣と騎手はヤワな相手ではない。
奴は銃に過剰に反応した、ならばこちらも銃を使って奴を引き寄せられないかと考えたのだ。
だが彼我の距離で銃弾を当てるには片手の射撃ではまず当たらない、両手を使っての射撃でようやくといった所だろう。
両手がふさがれば刀が使えない、ライドウは無防備になるのだがその守りをヨシツネとジークフリートに任せたのだ。

「聞こえるか!とにかく奴を街から引き離すぞ!でなければ余計に被害が拡大する!俺が引き寄せるから『しばらく銃は使うな!』」

ランサーとアベリィの二人に聞こえるような大声でライドウは叫ぶとリボルバー拳銃、コルトライトニングに銃弾を込める。
込める弾丸は”暴威弾”当たれば戦艦の装甲をも削るとっておきだ、一発の単価も非常に高いため普通のサマナーはおいそれと使えないがライドウは躊躇いなく使う。
両手で銃を構えて、腕自体を銃身に見立てて狙いを定める、間違っても今鍔迫り合っているランサーには当てられない、慎重に狙いを定めて、発射。
その数六発、弾倉に込めた暴威弾を全て撃ち出した、二発外れて城壁を打ち砕くが、残り四発は正確な軌道を描いて獣に迫る。
即座に排莢してまた暴威弾を込める、奴がこちらを意識するまで何度でも撃つつもりだ。

>ランサー、ヘシアン・ロボ、アベリィ・シルバラード、ALL

8ヶ月前 No.561

力への誘い @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【魔帝城/無限回廊/フロレ・ゾンダーランド】

現在の戦況、魔族優勢。聞くまでもないことであった。力を持たない人間に、勝利を手にすることが出来るはずがない。故に、この結果は必然であるといえる。
まあ、彼らにしてはよく持っている方だとは思うが、それが続くのも今の内だろう。偉大なるフィラッサ様が望んだ通り、停滞をもたらす現体制は、破壊される。
その後にやって来るのは魔帝の下に集った魔族の時代だ。遥か古の時代より悲願とされてきた世界の支配が、ようやく成されようとしている。それが出来るのも、フィラッサ様のお陰。
彼女の力があったからこそ、魔帝軍はここまで勝ち進んでこれたのだ。たとえ魔帝であっても、その功績には感謝しなくてはならない。戦後には、相応しい地位を与えられて然るべきである。
少なくとも、あんな黒猫なんかよりは、きちんと魔大将としての務めを果たせるだろう。勿論、それを望むかどうかはフィラッサ様次第。自分は、あくまでその忠実なる下僕として、如何なる道にも付き従うのみ。

「愚かなる人間よ、ようこそ魔帝城へ。ゲイル・ベネルド、お噂は聞き及んでおります。何でも、"馬鹿で阿呆で無能な王国の騎士団長代理"を務めているとか」

風と共に無限回廊を駆け上がってきた青年、マロニス王国騎士団長代理として名を馳せるゲイルに対し、フロレは最大限の侮辱を込めた歓迎の言葉を述べる。
騎士団の最近の動向も一応は知っている。どうも、自分がいなくなってからは腐敗が加速しているようで、魔族に対する集団性的暴行事件が数か月前にも起きているのだとか。
よくもまあ、そんな連中が正義を語ってここまでやってこれたものだ。魔族だろうと、同じ時代を生きていることは変わりない。彼らを差別し、あまつさえ道具のように扱う人間の方が、よっぽど悪ではないか。
あんなのが正当化される世の中が訪れるくらいなら、魔族が統治する時代が訪れる方がいい。やはり、フィラッサ様と共に生きるのだという自分の判断は正しかったのだと、フロレは実感する。

「これは闇などではありません。救いの光です。フィラッサ様は、わたしを間違った道から救い出してくれました。理想を叶えたければ、力を持たなければなりません。力を持たない者は、死ぬしかないのです。戦いを始める前に、お聞きしましょう。貴方達も、こちらへ来るつもりはありませんか? 魔族となれば、忌々しい人間関係に悩むことも、己の無力さを嘆くこともない。光に満ちた生活を送ることが出来る。どうです……? 悪い話ではないと思いますが」

フロレを闇に堕ちた者と称したローウェンの言葉に対し、彼女は自らが崇拝するフィラッサを露骨に持ち上げるような言葉を返し、二人も魔族となるよう勧誘する。
魔族となってから、悩みを抱えたことなど一度もない。何もかもが上手くいって、自分が文字通り生まれ変わったのだということを実感することが出来た。
だから、闇に溺れていたあの頃の自分を救い出してくれたフィラッサには、感謝してもしきれない。この様子からして、彼らも同じように、闇に捕らわれてしまっているのだろう。
力を持った今の自分であれば、二人を救い出すことが出来る。かつての同胞を手に掛けたくはないし、どうか受け入れて欲しい。しかし、もしそれを拒むのであれば……残念だが、"力"で対応せざるを得なくなるだろう。

>ゲイル・ベネルド、ローウェン・アルベリウス
【プレビューしていなければ、即死だった……!(更新によるレス消滅危機)】

8ヶ月前 No.562

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/舞踏場/シフォン・ヴァンディール】

敵の侵攻を阻止できなかった部下に毒づきながらも、自分に対しては最低限の礼儀礼節を以て接する魔将軍。位が低かろうと人間よりは高い能力を持つ魔族。それを遥か格下に見ている彼女は、相当の実力者であることが伺える。
そして指を鳴らすと共に変貌…奇しくもまた二人の服装に共通点が生まれた。華やかな笑みは邪悪な含み笑いへ一転、敵意を剥き出しにしてきている。
危険な光に満ちた瞳に、牙と見紛うが如き鋭歯。呼び出された二振りの双剣は、金属の本来あるべき性質を凌駕した、鞭のようにしなるものであった。
故に紙一重の回避は危険。目で追える以上の攻撃範囲を想定して対処しなければなるまい。

「ご鞭撻いただけるなら、もっと優しいやり方をお願いしとう存じますわ」

鋭い音を立てて襲い来る刃を、氷の属性魔法で生み出した壁で以て弾いていく。肉弾戦がからっきしなシフォンにとって、このような物理攻撃には慎重な対処が求められる。
いくら地球軍自体に訓練を積んでいたとはいえ、異能の使い手ばかりの実戦では意味を成さない。横っ飛びで回避などという真似を続けていれば、魔法を使うより体力を消耗してしまうだろう。
何はともあれ先制攻撃は凌げたため、シフォンにターンが回ってくる。やや苦手な手を使われる可能性が高い以上、火力の高い属性で攻め立てるのが正解か。

「はぁっ!」

僅かな間ではあるが目を閉じ、一点集中。充填した魔力を赤色の粉状の爆破エネルギーに変え、リュドミラの方へまとめて飛ばす。そして間髪入れず右手を振り払い、起爆。
エネルギー塊はたちまち金色の光を伴って膨張し、小規模とはいえ破壊力抜群の爆発を引き起こした。それに伴う熱が、振動が、優美に飾られていたステージに亀裂を入れていく。
気品漂う造りの建造物を傷つけるのはなんとも複雑な心境だが、あくまでここは敵地。余計な逡巡はしないが吉だ。

>>"災禍龍姫"のリュドミラ

8ヶ月前 No.563

欲望大好きウーマン @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【王都ロンカリア/大通り・北/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

惨劇を引き起こした張本人が堂々と大通りを往く。物が壊れる音、女の悲鳴、男の断末魔。それらをまるでBGMの様に聞き流しながら、ゆったりと女は歩いて行く。その最中、女はある者に目を付けた。道端で縮こまり、周囲を警戒する何者か。
興味を惹かれたのか、或いは単なる気紛れか……女は、万葉いなくそちらへ歩み寄り、甘く優しく声を掛けた。

「どうしたの、貴方。大丈夫?」

女が目を付けたのは、明らかに人間と異なる容姿の少女だった。それでも、人間の目から見ても美しく、そして可愛らしいと思える美貌だ。ケダモノと化した人間達にやられたのであろう、痣が幾つも出来ているのが見えた。酷く憔悴している様で、優しく声を掛けた女にも怯えていた。

「可哀想に……酷い目に合わされたのね。ね、私と一緒に行きましょ。こんなところにいたら何をされるか分かったものじゃないしね」

女は魔族の少女の手に優しく触れ、にこやかな微笑みを掛ける。その微笑みは、少女の恐怖心を解かすには十分だった。
――誓って言うが、今この女は本心からの愛護欲だけで少女を保護しようとしている。先ほど自分が何をしたのか理解(わか)っていながら、今はただ目の前の不幸な少女を救いたいと思っているのだ。
怯えながらも少女は女の手を取る。それを見て女はまた優しく微笑み、少女に歩幅を合わせゆっくりと歩き出した。

『止まれ! 貴様、何者だ! 市民ではないな!』

「あら……今頃お出でになられたのですか、騎士様方。うふふ……少々来るのが遅いのではありません? それはもう、街は酷い……いえ、素晴らしい有様だと言うのに。のこのこと出てきて美味しいところだけ持っていく……ああ、そんな狡く立ち回ろうと言う欲求もまた、見ている分には楽しいものですけれど」

二人で少し歩いていると、恐らくは事態をようやく把握して城内から出てきたのであろう騎士達と鉢合わせた。流石と言うべきか、騎士達は少し見ただけで女を怪しい人物だと見て取り囲む。怯える魔族の少女を片手ですっと抱き寄せて、魔性の女はまたにやりと笑う。
ぞろぞろと騎士達が集って来るのも気に留めず女は悠長に喋っている。……まるで、"こうなる事を望んでいたかの様に"。
そして、騎士達との間に走る緊張感が最高潮に達しようかと言う瞬間、女はその本領を発揮させた。

「まあまあ、少しお聞きになって? 私、ずっと疑問に思っていましたの。市民を護る誉れ高き騎士様達が、どうして自制を求められなければならないのでしょう? 王国に仕え民を護る騎士様は何時も他人の為に苦労されていると言うのに……ねえ?」

甘く、甘く、蕩ける様な言葉が流れていく。桃色の唇から紡がれる一語一句は猛毒の花蜜だ。警戒していた筈の騎士達の心が、絶世の甘味によって少しずつ絆されていく。
耳を貸してはならない。理解してはいけない。何故ならば、その言葉を騙る女こそが、人を狂わせる淫婦(サキュバス)なのだから!

「要らないと思いません? 我慢だなんて……貴方達は騎士として王国を護っているのですから、誰に遠慮する事も無く欲望を発散させては如何です? ――そう、例えば……"魔族狩り"……等はお嫌いかしら?」

悪魔が彼らの求める欲を刺激する。暴力か、性か。何でも良い。彼らを肉欲へ堕落させるなら何でも良い。……"何でも、良かった"。


「あ、そうそう。この娘ですけれど、私もう要らないですし、"貴方達に差し上げます"ので……煮るなり焼くなり――"お好きになさって?"」


――瞬間、魔族の少女の顔が青褪める。
助かった、と思っていた。この人は命の恩人だ、と思っていた。この人となら何処へでも行きたい、と思っていたのだ。
それを、一瞬にして全て覆される絶望はどうだ。信じられない、と言う表情で悪魔染みた笑みを浮かべる女を見るが、女は少女への興味を失ったかの様に見向きもしない。
……誓って言うが。先ほど少女を保護しようとした時に、この様な事をするつもりも、発想も無かった。あの時は間違いなく、純粋に少女を助けたいと思っていたのだ。だが――"気が変わった"。少女への愛護欲よりも、この少女が騎士共に蹂躙され凌辱される様を見たいと言う下劣な欲求が強くなったのだ。
一見矛盾する行動に見える。だがその実単純明快――即ち『私がやりたい事をやる』。奴を動かすものは、それだけなのだ。

――女が、少女を騎士の群れのど真ん中へと突き飛ばした。


『いやっ、いやっ……どうして、どうして……やめて、やめて、やめてやめてやめてやめて――――いやあああああああああああ!!!!』

――それからの騎士共の様は、まるで久方ぶりに餌にありついた野犬の様だった。絶望の表情を浮かべて泣き叫ぶ少女を大の男数人がかりで押さえ付け、衣類を引き剥がし、欲望を剥き出しに――否、否。これ以上は語るべくもあるまい。
悪魔の様な女は、それを見て少しも悪びれない。それどころか、騎士だった畜生共を見てにやけた笑いを浮かべてすらいた。


……騎士の誇りは地に落ちた。二度と主へ捧げられる事は無いだろう。

>>ALL

【うーんこのぐう畜】

8ヶ月前 No.564

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【王都ロンカリア/大通り/橋川 清太郎】

「そんな図体で、こんなスピード……!」

巨体による破壊力と範囲、瞬発力、おまけに一定の隠密性まであるときた。どこまで対応出来るか。

「くっ!」

バーニアを瞬間併用しての横っ飛びで一段目を回避、丸太を通り越して石柱じみた腕が地面に叩きつけられた。
轟音と共に巻き上がる砂塵、蜘蛛の少女以上の怪力だ。しかし怯んでいる暇はない、既に横薙ぎの二段目はすぐそこまで迫ってきていた。
すかさず再度バーニアを使いながらの跳躍で二段目も回避――――

「わあああっ!!!」

出来なかった。近くにいた二人の男達は容易にやってみせたがこちらはそうはいかず巨腕の直撃を受け紙屑の如く吹き飛ばされる。二、三度地面を小さくバウンドし盛大に転がり回ったところで漸く停止。

「う……ぐ……」

掌を強く地に押し付け緩慢な動作で立ち上がる。直ぐ様バイザーのHUDで装甲破損度合を確認、頭部31% 胴体部29% 右腕部44% 左腕部32% 右脚部39% 左脚部43%

「やられたな」

特殊合金製の複合装甲をたった一撃でここまで損壊させるとは。否、装甲だけではない。肉体の方も幾つか軽度の打撲がある。

「!?」

周囲を見渡し異常に気付く、明らかに民衆の様子が可笑しい。大混乱という表現すら生温い惨状だ。この場が戦場に変わったが故の混迷でないのは明白である。
誰かが、第三者が引き起こしたのだ。具体的な位置までは掴めないがこの現状をほくそ笑みながら眺めているであろうことは簡単に予想出来る。

(……稚拙、だな)

この状況を作り出した何者かに対し、心底蔑む。理性を剥ぎ取れば誰しも獣となるのは中学生でも理解出来る事。
ワイングラスを壊して飛び散った中身を、指差しで嗤いさも鬼の首を取ったように騒ぎ立てる輩を誰が敬うだろうか。
それの何処に意義がある。
それが何の証明になる。
貴様のやっていることは積木遊びにも劣る。

「殺す」

直ぐにでもあぶり出して屠ってやりたいが、その為にはまず邪魔な木偶の坊を始末するべきか。

「殺す……!」

止まらない、混乱を起こした奴に対しての『憤怒が』どうしようもない程止まらない。

「殺す…………!!」

A.O.SでStrikedogを戻し、同時に別の武装を呼び出す。
ORW-GG-9103-MadElephant。大口径六連装ガトリング砲。堅牢な石垣であろうと削岩機の如く削り砕くことが可能だ。

「さっさとくたばれーーー!!!」

怒号を上げながら突撃を敢行、銃身が回転し始めてからおよそ1秒後に発砲が開始された。周囲にいれば難聴になりそうな程の爆音と共に無数の銃弾が吐き出される。ガトリング故に精密射撃は期待出来ないが、その分威力は折り紙付きである上、この巨体相手ならば大雑把なAIMでも問題ないだろう。

>>大通りall

8ヶ月前 No.565

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大通り・北/ストラーヴ】


悲鳴、罵声、怒声、僅か前には緊迫した状況ながらも平穏を保っていた王都の様子はそこにはない。あるのは抑圧され過ぎた欲望をありのままに吐き出す民衆、地獄絵図と表現するのが正しい無法の街。
その街を明らかに普段の様子とは異なる彼女は歩く、頬は紅く染まり、目はやや虚ろ。民家の壁に靠れながらどうにか歩みを進める、剣槍こそ手放していないが彼女もまたこの地獄絵図の一端になろうとしていた。
そう、この欲望塗れの民衆と同様この惨状の張本人の能力の影響を受けている。普段の彼女であれば防げたかもしれない、だが古代での戦闘時にストラーヴと彼女の乖離が発生、それが精神に大きな隙を作ってしまっていた。
だから、欲望の権化と化した民衆の接近にも気付かない。興奮し、明らかに正気でない男性の手が彼女に伸びる。肩を大きく引かれ、体勢を崩したところをそのまま押し倒される。本来であれば肩に手を置いた時点でこの男性は宙を舞っている、だが―――

「や、やめっ……いやっ!離して!」

普段の彼女からは想像できない弱弱しい声、どうにかして覆い被さる男性をどかそうとするが抵抗は弱い。その手が服に掛かる直前で、男性の急所を蹴り出し脱出に至る。悶える男性には目もくれずに、息を荒げながらその場を離れる。
彼女も能力の影響を受けていると言った、普段抑圧されている彼女の欲望は人との触れ合い。それは過去を忘れないため、今に塗り替えられないために拒絶するべきものだ。だが、人は孤立してその孤独に耐え続ける事は出来るだろうか。
少なくともストラーヴであれば何れ崩壊が来るとしてもこの場は問題なかった、だが彼女とストラーヴの境がまじりあった今では理性を欲望が超える。人の温もりを求める、だからこそ暴行紛いの交わりであっても心のどこかでは受け入れようとしてしまう。
乱れた服装を直す、そんな発想にすら至らず少しでも王都から離れるために壁に寄りかかり再び歩みを進める。そんな最中この時代の騎士が何者かと対峙するのを見つける、その相手は女性と少女。片方は明らかに異質、この状況で正気の人間もいたがあそこまで落ち着いて、いや楽しんでいるのは異常であった。
だからこそ、この事態について知っていると彼女は思い剣槍を構えようとする。ああしかし、女性の傍にいた少女は騎士達へと突き飛ばされたかと思えば突如肉欲の宴を開宴し始める、先程まで女性に不信感を抱いていた騎士たちがだ。
その欲望の捌け口からは目を反らす、間違いなく呑まれることを予感していた。そうなれば、彼女もこの場の民衆と変わらない理性の飛んだ獣と変わりなくなる。過去への縋る想いが、今彼女を理性にぎりぎり押し留めていた。

「……や、やられるよりもやる方が、得意、だからさー……本当に、貫く。」

余裕のない口ぶり、普段の言葉遣いもどこか覚束なく息絶え絶えに言葉を紡ぐ。よろよろとした走り出しから、跳躍へ続け剣槍で根源と思われる女性を貫かんと吶喊する。
だがぎりぎりの理性では思い至らない彼女、すでに術中に嵌っているならば手立てがない以上逃げるが吉。正しい思考ができていればいつも通りに逃げ果せていたはずだ、だがそうはならなかった。
理性で踏みとどまっている、その理性が彼女にとって譲れぬ一線でありストラーヴ足る由縁でなければ余裕があったかもしれない。だが以上引けば彼女は大切なものを捨てる事になる、だから危険を取ってでも元凶の排除へ走ってしまった。
鋭さも精細さにも欠ける一撃、稲妻すら纏う余裕すらないそれは避けるに容易く防ぐに容易い。追い詰められた獲物は底力を発揮すると言うが、彼女は常に自らを追い詰め続けた歪みがここで来ている。
そう、彼女は偽らねば大切なものを失い、偽れば心が悲鳴を上げる。抑圧、その言葉が正にふさわしい。それを開放する存在と対峙したならば、精神的余裕がない事も相まってどうなるかは想像に難くない。

>>エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール

8ヶ月前 No.566

葛飾北斎 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 王都ロンカリア/城壁・上部/葛飾北斎 】

「――こいつぁひでぇな」

 王都ロンカリアの城塞にて防衛のために残っていた彼女が見たそれは、実に凄惨たる光景。
 人は狂い。欲に塗れ、誇りも何もかも捨て去り己の本性を曝け出す。
 蓋を外された民衆は止まることを知らない。
 自制の枷とは多かれ少なかれ、犯罪行為に踏み切ろうとする意志を留める。
 人間の内に存在する天秤は――利己心とリスクで構成されているのだから。
 ミイラ取りがミイラになると言われるように、欲を掻いた者が大損する。
 世の中、上手いこと出来ているものだ。

 ああ、よくあることだ。実によくあること。
 刹那主義者のドンパチ野郎にはよくあること。

「だけど、時空改変ってェのはこんな命とっちまってもイイものなのかい。
 ああいや、変えられればいいってだけなのかもな――お前さんもそのクチだろ?」

 振るう筆。
 噴き上がる波飛沫、――銃弾の全てを払うようにして弾き返す。
 この大気、この大地、この世界そのものは葛飾北斎にとってのわら半紙。

「火事と喧嘩は江戸の華。
 とと様もよく言ってたなぁ――と、いうわけだ」

 義憤と正義は江戸の心。
 江戸に住まう者達を燃やす心は常にただ一つ。
 派手に華を咲かせる一凛の大輪の花が如く――派手にやって派手に追っ払う。

「仕事だよとと様。
 あのへんちきを描きつくして、追っ払ってやるさ!」

 右四本。
 左四本。
 何処に隠していたのか、暗器か何かのように出てくる小筆。
 宿す魔力は虹色の魔力。
 たかが小筆、されど小筆。絵付け以外にや役に立たぬ代物。
 だが降臨者<フォーリナー>の魔力を宿そうものなら、――決して無視できない威力を持つ弾幕と化す。

「そらっ!」

 七色――虹の色彩を宿す追尾砲弾。
 縦横無尽の軌道を描くそれは、銃器の殺戮者を射貫かんと駆け抜ける。

>クジャルナ・クオーク

8ヶ月前 No.567

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『王都ロンカリア/大宿屋/ジークリンデ・エレミア』

相手は困っているように喋るが、口調が口調な為に困っているようには見えない。
ジークにとってはどこまでが本当でどこまでが嘘なのかはわからない。
相手は言う程困っていないのでは?とジークは思い込む。
何はともあれ、相手の言葉に惑わされないようにしなければ。

程なくして未知なる相手と始まった戦闘。風の刃に頭への小竜巻。そして背後からの脚狙いの攻撃。
相手が放つ攻撃はこちらのの逃げ場を塞いでの徹底したものだった。
ジークは慌てず冷静にこの状況下でどう動くかすぐに思考する。

「ゲヴェイア・クーゲルーーーーーファイアッ!」

ジークは右腕を横に動かすと、自身の周囲に15球の高密度の魔力球による弾幕陣を出現させ展開する。
ファイアの掛け声と共に右手を小竜巻に向けて伸ばし、10球の魔力球を小竜巻に目掛けて飛ばしてぶつけようとする。
この魔力球で小竜巻を打ち消せるかどうかは分からない。
もし小竜巻を打ち消すことに成功した場合、
ジークは直ぐ様高くジャンプして自身に向けられて放たれた風の刃を回避しつつ、
残った5球の魔力球を敵対している未知なる相手にジークは放とうとする。
ジークが展開した魔力球は1発1発が貫通の出せるものであるため、威力はそれなりにある。

ジークが強いか弱いかと言ったらジークは強い。
(判定での勝利とはいえ)彼女を相手にして純粋に勝てたのはたった1人しかいない。

>>黄衣なる者

8ヶ月前 No.568

“塵殺剣” @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6


【魔大将の間/ニア】


「(だろうな。おまえはこれに必ず食い付く)」
「(次に出るのは野心か。利己か。どちらでも構わないが)」


 実のところ。
 問いかけるまでもなく、チェルの解答がどんなものになるかは分かりきっていた。
 それは彼女の元に出向くことを決めた時には、もう既に。
 そこまではまだ得られなかった確証も、あれほど魔帝の対応が露骨ならば読めるものもあるというもの。この女は忌み名通りに災いを呼び、この女は忌み名通りに他者を傀儡とする。より愚かで、しかして才ある者を揺り動かす。
 口振りからすべてを察するには至らないが、あの言い方ならば問題はない。この女と自分には一つ共通点がある。もちろん―――ひとつだ。それ以上でもそれ以下でもない。むしろ到達するべき点を考えたのならば、この女ほど邪魔になるものはいないだろう。
 だが、それでも。それでも、手を組むという一点に当たっては、この女ほど役に立つものはない。

 手を組むならば、正反対の者こそが信用できる。
 利害の合致という言葉ほど、何時か裏切るという前提ほど信用のおけるものはない。
 それまでならば、道が同じである限りならば。
 果たしてそこには歪にして短期なれども堅牢な関係が築かれよう。
 それが俗的な感情ならば猶更のことだ。ニアにはそれに対する興味など最初からなく、
 誰が玉座に付こうとも、塵殺剣の行動はなにも変わらない。だからこそのこの選択だ。

 ニアがたった一つ求めるものは、権力でも栄華でも悦楽でもない。


「そうか」
「それに当たって、私はおまえに何も求めない」


 だから、何も求めない。
 だから、存分に欲求を満たせばいい。
 放り投げるような冷淡さと無頓着さは、彼女にとっては欲しい内容だろう。
 担ぐ神輿など正直に言ってどれでもいいなどという言葉は、当然口にしない。
 必要なこと以外を喋る意味はない。黒猫に、王権は自らのものと理解させるだけでいい。
 彼女に必要なものはそれ以外であると理解させているだけでいい。

「証拠ならば先ので十分だろうが………」

「他に証拠が要るなら、疑われないようにはするといい。
 龍炎のと、蛇勢のは、聡い。混沌のは、行動が読めない。おまえが、頂を望むならば」

「手が要るなら、用意もする」

 先程のものは記録した音、それ故に間違いはないだろうし。
 兵の大半は侵略と暴虐で血に飢えているとしたならば、和平など望まないだろうが。

 万が一のことは幾らでもある。
 彼女は口に出した三者を良く買っている。個人としての好みはどうあれ。
 ひとつ訂正するならば不死公もだが、しかしチェルを相手に限ればその心配はない。
 ………アレはただ一点、そこに関してだけは愚かで不可解だ。
 だから、こう語るのだ。証拠を造るならば、それが疑われないようにはしろと。
 例えば、その証拠を語る役目を用意しろ。
 例えば、その証拠を疑う余地を排除しろ。
 それが出来たのならば、一件荒唐無稽だろうと………それこそが真実になるだろう。

 問題があるとすれば、此処で行動を起こすことのリスクだろうが。
 細い道でも、彼女の目的を達成するためには、此処で行動を起こすしかない。
 でなければ、そもそも魔大将の元へと出向いていない。
 必要なことならば彼女は語る。宣告者は、感情を自らの行動に挟むことはない。

「伝えることは伝えた」
「あとは全ておまえ次第だ」

 此処まで伝えたのならば、後は彼女も相応に動くだろう。

 ―――彼女は乗るべき船をもう選択した。
    ………その結果が如何なる運命を招こうとも、それこそは重んずるべき生死の境界だ。

>チェル

8ヶ月前 No.569

竜狩り @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝軍/兵舎/アーケオルニ・ランドグリーズ】

引き際などとっくに過ぎているというのに、なおも食らいつくことをやめないアーケオルニ。それは飽くなき闘争心の表れなのか、幸福とは縁遠い育ちによって築かれた反骨精神なのか。
何れにせよ、今の彼女がランドグリーズ家の理想…いや、都合のいい駒であることは間違いない。戦場に、使命に背中を向けず、それに見合うだけの実力も備えているのだから。
命尽きる瞬間まで剣を振るうのはもちろん、首だけになっても足に噛みついてきそうな彼女の姿は、いよいよ一種の"狂気"を孕みつつあった。一般的な異常を正常とする彼女から見ての狂気と言えば、その程とどれだけ常軌を逸しているかがわかるだろう。

さて、武器を手放すという危険な賭けの下に繰り出した一撃は、肩を深く抉ったものの仕留めるには至らなかった。何の変哲も無い一撃を外すより、こちらの方がよっぽどハイリスクだ。
なおさらこの一撃で勝負を決め、ハイリスクハイリターンという形で終わらせなければいけなかったのだが…残念ながら、ローリターンという形になってしまった。
そして当然の如く降りかかる災厄。翼に猛る炎を集わせた龍王は天を舞い、ヒトの目では追えない速度を以て急降下。辛うじて肉眼で捉えられたのは、斬り上げるような剣捌きのみ。燃え盛る摩天楼は既にその身を蝕み始め―――

「ぐぁぁぁぁぁぁっ…!」

悲鳴を上げることすら能わず、苦しみ悶絶しながら吹き飛ばされる。間一髪で後ろへ飛び退くことはできたものの、そんな心許ない移動距離より、火柱が舐める範囲の方が数倍大きい。
後方へ下がる力と爆風のおかげで一命をとりとめたようなものだ。大の字で倒れ込む彼女が被った被害は、取り巻きの魔族達が想像するより重かった。
首から下を包み護っていた鎧は全て焼き溶かされ、残ったのは命を預かるにはあまりに貧相なシャツとズボンのみ。溶けた金属の接触による火傷も数か所に負っている。
その他にも打撲や擦り傷が多く、ただでさえ古傷まみれの肌は目をそむけたくなるような有様だが、最も酷いのは顔を庇った左腕だろう。
剣技のために鎧の腕の部分が薄く造られていたことが災いし、鋼鉄をも焼き尽くす炎熱は直に左腕を直撃。結果、肘から先は辛うじて元の形状を保っているだけの炭のような状態となってしまった。
動かそうにもほとんど力が入らず、辛うじて動いてもそこから崩れていく。剣を振り回す腕という、騎士の生命線たる部位を破壊され、茫然とするアーケオルニ。
だが、そんな情けない表情は、次の瞬間には跡形もなく掻き消えていく。そう、彼女にはまだ"ある"。腕一本、指一本でも残っているのなら、彼女から牙を抜いたことにはならない。
よろめきながらも起き上がり、先程投げつけた剣を拾い上げる。そんなアンデッドも驚きのしぶとさに、周りからはついに野次の一つも飛ばなくなっていた。

『アトロシス』の柄が、握り締める右手と、最早意味を成さないが添えられた左手によって、赤と黒に染まる。奇しくも彼女らしさを前面に押し出すような配色…それは、アーケオルニ・ランドグリーズという少女の生き様を示すという意思の表れに他ならない。

「ドォラァゴン…スレイヤァァァァァァァッ!」

咆哮。跳躍。自身にかかる力、秘められた力、全てを解き放ち豪快に叩き斬る。『ドラゴンキラー』の進化と思わしきソレは、たった一撃のみの単純な技であるにもかかわらず、絶大な破壊力を備えていた。
地の底の底まで割り開こうかという熾烈さに、大気を震わせ、歪ませながら突き進む衝撃波。ここまでくるとソニックブームも同然。龍炎公の火柱のような派手さこそないものの、"龍殺し"を成すために必要な要素をどこまでも追及した奥義。
この一撃と時を同じくしてアーケオルニの左腕は崩壊し、彼女自身も続くようにして大地へと倒れ込んだ。生まれて初めて味わう大痛手と、同じく初めての恐怖や焦燥、後悔を感じながら…

>>"龍炎公"ヴァンレッド


【了解です!】

8ヶ月前 No.570

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【王都ロンカリア/大通り〈裏手)⇒/ミラノ】

 逃げ切られたのならば負け。
 傷が浅くても、当然自分の負け。
 残る勝ち筋は細い糸、暗闇の中で薄く瞬く蜘蛛の糸のみ。
 しかし、それだけあるならば盗賊王には十分だ。確率も可能性も全て無視してその腕でつかみ取る。
 得るべきものは全て得る。自分の物差しに従って、気に入らないものはその手で打ち倒す。
 そこに間違いはない。だが、だが、しかし………。

 ………タクティクスカード《スティール》。
 風魔サエザルの力で以て、渦巻く旋風と共に対象の何かを奪い去る強奪の業。
 ミラノにとっての最大のジョーカーであるが、これには一つの特徴がある。

 それは、奪うものが必ずしも形のあるものとは限らないという点だ。
 例えば武具になるかも知れないし、例えば技術になるかもしれない。
 あるいは、それは精神なのかもしれない。どれをその手元に収めるかは、気まぐれなサエザルの手綱を握ることの難しさを以て語る必要がある。………つまり何が言いたいのかと言われたのなら、それは即ち“不可能”の意味に等しい。
 であるに、あくまでも本命は自分自身だ。
 その斧を振るい、止めを刺すのはあくまでも自分自身。そして、だからこそ―――。


「………おい、おい」
「幾らなんでも、変化し過ぎなんじゃねえのか―――」


 こういう事態もあり得る。
 黒谷平助―――虚無を宿した男の豹変。剥き出しにした生の感情が、痺れるように自分に伝わる。

 それは、いったい全体どういう了見なのか。
 あるいは、今奪い去ったものがよりにもよって“ヤツの感情を隔てるフィルター”だったのか。
 壊れ切った男の精神を、しかし真っ当なものに見せかけたカモフラージュを自分の手で破いてしまったのか。

 どっちでもいい。振り抜いた斧を手元に戻していては間に合わない。
 道連れなど御免被る。悪党を倒したから悔いはないなどと、自分はそんな殊勝な男ではない。
 こんな自称処理業者に、命の一つだってくれてたまるか。

 自分はこんな良く知らないところで死ぬ気はない―――。

「なんだよ、ガラクタ、ガラクタ言ってる癖に………」
「執着するモンだけは、あったんじゃねえ、か………よッ!」

 生きるのだ。
 吼えて猛り、執念が引き起こした狂気と相対する。

 つまるところ、直撃の瞬間、絶命の瞬間。
 同じようにこっちの胴体を素早く引き裂こうとして来るそいつの腕を―――。


「―――らァアアアアアッ!」


 返す刀で、素早く撃ち落とす。
 正確には斬り裂く。絶命したその肉体を動かすのは執念だけ。
 理屈の通らぬ力ならば、そもそも動く部位を叩き落としてしまえば片が付く。
 振りほどく、飛び退くと言った手段は逆効果だ。それでは逃げるより前に奴の斬撃が自分を殺す。

 だから、そういう時にミラノは武器を振るうことを躊躇わない。
 斬り裂いて、物言わぬ屍から腕がごとりと落ちる。
 掴んでいたナイフは、横にぱっくりと傷口を開かせ、赤い血に塗れてそこで止まる。
 払った代償は大きいが、死んではいない。生きている。つまり―――。


「………痛ッ、て………最後の最後まで、好き放題、しやがって、こんにゃろ」
「ま………お互い様だよな。お前にとっちゃ、オレも“良く分かんないヤツ”だったんだろうしよ―――」


 自分の勝ちだ。
 こいつの考えていたことなど分かったものではないが。………ただ只管に気味は悪かった。
 世界が残骸《ガラクタ》だと他人に押し付けているところが、だろうか。
 ああそれとも、自分の本心を見せることがなく人間味がなかったところが、だろうか。
 分からない。分からないが、勘として絶対に相容れない自信はあった。だから、行動は振り返らない。

 ―――過去を振り返らないこと。名残には目を向けないこと。そういうのも、盗賊の才能だ。

「(………次、行くか? なんつーか、随分きなくさい感じになって来やがった)」

 ふと、街中の異常を感じ取るのもすぐだ。
 すぐでは、あったが。だから今出ても無駄死にのリスクの方が高いだろう。
 そこまでお人好しでも無鉄砲でもない。だから、動けるようになるまでは少し身を潜めることにする。

 ―――で、そいつが気に食わなければまた殴る。それで行こう。

>黒谷平助


【お相手ありがとうございましたm(._.)m】

8ヶ月前 No.571

苦難の中の本質 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【ディンカ/魚市場/テルン・エルウェーウィン】

平静を装いながらも、テルンは先程の攻撃で何が起きていたのかを必死に分析しようとする。動き自体はなんてことのない、直線的なものであったはず。
更に言えば、視認直後の様子からして、速度も平凡であった。ならば、余計に見失った理由が分からない。まさか、自分がそこまで衰えたとでもいうのか?
しばらくの思案の末、彼女は敵が何らかの絡繰りを使ったのだろうという結論に至る。青年は特殊な方法を用いてこちらの"死角"を突き、一瞬ではあるが不可視の存在になったのだと。
そしてそれを打ち破る方法を模索するよりは、予測を活かして防いだ方が早いであろうことも、テルンは見抜いていた。あれを見破ろうと試みたのでは、時間を無駄にしてしまう。

「自分自身と、剣の誇りのため、ですか。実に素晴らしいです。ですが……貴方は、心の底からそう誓っていると、断言出来ますか?」

心の隙間にぬるりと手を伸ばすかのように。テルンは青年の深層意識へと入り込もうとする。口ではどんな大層なことを並べていても、本質は正反対という歪んだ人間を、これまで何人も見てきた。
目の前の彼もそれらと同じであるのか、それともこれが本心であるのか。非常に興味がある。ああ、早く追い詰めて、隠された本質を太陽の下に曝してやりたい。
また、歪んだオーラがテルンから発せられる。どんなに取り繕っても、こればかりは偽ることの出来ない邪悪な気質。本質を見るのが目的なのか、追い詰めることが目的なのか。その答えを知る者など、もはやいない。

一切の容赦なく、全ての逃げ道を塞いだ攻撃。青年は当然為す術もなく、爆発の中に呑まれ姿を消す。やったか? そんな素人のような考えを、テルンが抱くはずもない。
彼が簡単にやられるような人材ではないことは、ここまでの戦いで重々承知している。無傷では済まないかも知れないが、必ずやこの試練を乗り越えてみせるだろう。
果たして、予想は的中した。粉塵の向こうから、砲弾の如く空中へと飛び出したのは、紛れもなくあの青年。彼が試練を乗り越えたことを確認したテルンは、思わず微笑を浮かべる。

人間の限界を超えた速度で穿たれる、反撃の突き。魔力の障壁を作り出しながら、咄嗟に後方へと飛び退くテルンであるが、元より身体能力は相手の方が上。
加速し続けながら放たれる一撃を捌き切ることなど出来るはずもなく、結果として彼女は脇腹を貫かれる形となる。それでも、まるで痛みなど感じていないかのように微笑む姿は、気味が悪い。

「いつ、私が誇りを捨て去ったと? これは、聖職者としての務めです。私は人の醜き本質を暴き、それを正す。何も、不思議なことではないはずです」

確かに、テルンの言葉は間違っていないかも知れない。ただし、それを成すために彼女が用いた方法は、百人中百人が間違っていると答えるような代物だ。
こんなことをしていることが明るみに出れば、彼女が聖職者としての資格を剥奪されることは確実。それほどまでにテルンは、歪みに歪み切ってしまっていた。
さあ、本質を見せてくれ。心の奥底に秘めた本音を曝け出してくれ。そのためであれば、自分は喜んで、貴方を傷付けよう。甚振ろう。場合によっては、命を奪おう。
テルンが両手を広げると同時に、その両脇に二つの十字架が展開される。彼女の閉じられていた瞳が開かれた刹那、暴虐的な光線の嵐が、敵へ向かって降り注ぐ。
試練は、まだ終わらない。あくまで本質を曝すのを拒むというのであれば、これも乗り越えてみせよ。

>黒鉄一輝

8ヶ月前 No.572

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【ディンカ/岬/Cluster+シャドウコルベット×4】

「ハハハッ、君に僕は手を加えていない、だが、それでも君が僕の娘だと語るなら! 付き合わないと言うのは失礼と言う物だな!!」

必ずクラスターと言う機体を超えて、クラスター……いや、ノイス・ヘルメラと言うという個人に認められるのだ、と言う覚悟を口に出したザーシャに対して、クラスターはしばし自分の本来の役割を、いや、それどころか自分が是正機構の兵士なのだという事すらも忘れて笑う。
本来ならば、こんな所で無駄な消耗は避けねばならない、消耗さえしなければ、あの古代の時のように、是正機構が最も良い場面で最大戦力を掻っ攫う事が出来るからだ。

だが、ここまで全力でぶつかってくるのならば、こちらも本気でやるまでだ。
シャドウコルベットの展開を視野に入れながらも行った、ザーシャに対するミサイルやレーザーと言う前段階まで用意して行った急降下攻撃、これを回避したり防ぎきれる物はそうは居ないだろう。

レーザーとミサイル、二つの性質が異なる攻撃に対して、ザーシャもまた二つの防御手段を持って、これらに対処する。
しかし、急降下攻撃には対処することが出来なかったようで、十本ものクローアームが相手に突き刺さった……かに思えた、だが実際には。

「捕まえた、か……良い判断だと褒めてやろう、だが、その程度で止められるクラスターの出力じゃあない!!」

その言葉と共に、クラスターは空高く急上昇する、真上に飛ぶ分には、相手が閉じ込めるために作り出した竜巻の影響は、"目"に当たる部分をただまっすぐ上昇するように飛ぶだけならば最小限に抑えられる、それでも、相手が組み付いている状態でも構わず飛行するというのは、流石の出力と言わざるを得ない
当然、クラスターに張り付いている形となっているザーシャには凄まじいGが掛かり、場合によっては振り落とせるだろう。
とは言え、それだけでどうにかなるとは当然クラスターも思っていない、事実、相手は剣を振り上げて、そこに真空を纏わせた。

振り落とすのは間に合わない、ならばやる事は一つ。

「甘い、甘いぞ! クラスターの最高の機能を忘れたか!!」

敵が剣を突き刺す直前に、クラスターは四機のシャドウコルベットを展開した。
だが、それらがザーシャをどうこうするよりも先に、確かにクラスターの搭乗席に当たる部分に、剣が突き刺さった。

「ぐああああああ! だが、だがァッ!!」

剣が刺さった部分が爆発して、火を吹き上げながらも、クラスターは、竜巻を突破して、さらに高く高く舞い上がった、それには性能で劣るシャドウコルベットは付いて来れない、だが、それでいい。
太陽が近づくような錯覚を覚える頃、クラスターはある機能を作動させた。

「あくまで君に優れた飛行機能は無いんだよ! フリーフォールを楽しむと良い!!」

その瞬間、クラスターの腕に当たる部分、即ち、ザーシャが組み付いている部分をクラスターは切り離したのだ。
当然、ほかにも翼や機首にも触手が絡み付いているが、それでも、先ほどまでザーシャの身体に突き刺さっていたクローアームごと大部分の触手が切り離されたのならば、そう持つ事は無い。

クラスターは、決め手であるミサイルを残して、全武装をパージする事によって、凄まじい高度からザーシャを落下させたのだ。
そして、そこでメイン火力となるのが、先ほど展開した四機のシャドウコルベットだ。

ザーシャに翼は無い、落下状態で適切に回避を行うのは不可能に近い。
そこに四機のシャドウコルベットがミサイルや赤色レーザーを持って、まるで海中に沈む獲物に群がるピラニアのように襲い掛かるのだ。

そんなシャドウコルベットの連続攻撃を受けたであろうザーシャは、おそらく地面に落下する……トドメに追撃を仕掛けるのが、ザーシャを追うようにして、ほとんど墜落の形で迫るクラスターだ。
次の瞬間、ミサイル攻撃が乱れ飛ぶ。
……だが、クラスターのダメージも既に限界が来ている、満足な飛行が出来ず、ほぼ落下しながらのザーシャに対する攻撃になっているのがその証拠だ。
ここを乗り切られれば、それは、クラスターの敗北を意味する。

>ザーシャ

8ヶ月前 No.573

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大通り(表通り)/オムニス・デューザ】


不可思議な姿に返信することで回避に成功した青年二人、叩きつけこそ回避したが横薙ぎを食らい吹き飛ばされた機械的な青年。互いに人間とは思えぬ身体能力と耐久力だが、魔法によるものだろうと魔族は決め付ける。
周囲の様子がおかしいが気に止める必要はない、彼女は既に見えていない、聞こえていない。であればこれ以上人間に傷付けられない、無様な姿を見て彼女が心を痛める事はないのだから。
そう、魔族を共に受け入れると言った人間も皮を剥いてしまえば容易く殺してしまう。彼女は求めているのはそんな人間ではないのだ、魔族との共存が出来る人間を求めている。争いなく、互いに手を取り合えるそんな未来を望んでいる。
ああ、だがそこに彼女の居場所は用意されていない。彼女はお前が死ねば共存すると言われれば喜んで死を選ぶ、そんな彼女が描いた未来に彼女の姿があるものか。それが、許されるものか。
魔族は故にこう望む、彼女こそ幸せにならねばならないと。友人を持ち、恋をし、平凡な日常が送れる、そんなありふれた、されど簡単に手の届かない幸せを彼女に掴ませる。
魔族自身がどう思われようとも構わない、彼女が幸せになる為なら彼女からのどんな言葉も感情も受け止めて見せよう。独り善がりで結構、自己満足で結構、彼女にとってこの光景を見せることが心の傷になるなら光も音も奪って見せる。
この光景を見た機械的な青年は怒りを露にする、既に目の前の魔族は敵ではなく邪魔をする障害物とでも言うかのように。爆音と共に吐き出される弾丸は間違いなく魔族の身を削っていく、防御に使用している腕が血液を撒き散らしながら肉を剥がれていく。
しかし、機械的な青年が行うべきは巨体に甘えた矢鱈目鱈な射撃ではない。魔族は何を原動力として動き、何の為に戦闘を行っているのか、それを理解すれば狙うべき対象が分かるはずだ。

『暴れている、か。理解できねばそれでいい、既に言葉を尽くす必要はない。それに―――』

腕の一つが千切れ飛ぼうとも意に介さない、残る八本の腕の内三本を彼女の防御に回し、一本で弾丸の暴風を防ぎ、一本で殴りかかる二人を受け止める。受けず弾いている故に、正直に受け止めていた最初の腕に比べて損耗は少ない。
彼女を守る腕は一部も隙が無いのに対し、自身の防御はおざなり。巨体に弾丸一つ穿たれたところで痛くも痒くもないのが事実、集中して穿たれれば何れ穴となるがそれを防ぐために腕を使用している。
殴りかかる不可思議な姿の青年二人も、威力は高いがそれでも魔族の腕を砕くまでには至らない。むしろ堅牢な皮膚に阻まれたことで隙ができる、そしてそれを見逃すほど魔族の目は節穴ではない。

「―――直ぐに考えなど必要なくなるのだからな。」

さて、魔族が使用していない腕は三本、無論攻撃を行う。不可思議な姿の青年二人は二本の腕を用いて、羽虫を潰すかのように挟み込む。巨体へ向け行われた打撃、空中に居るのは必然であり飛べぬ物ならば回避も困難だろう。
残る一本の腕で固定砲台の如く弾を吐き出し続ける機械的な青年を再び叩き潰さんと腕を振り下ろす、薙げば吹き飛ぶだけならば地を利用し潰してしまえばいいだけの事。
さあ、この異形の魔族。生半可な攻撃で倒れる事はなく、彼女の幸せの為ならば全てを賭してでも勝利を掴む。故に現状のまま攻撃しているだけでは三人に勝利はない、どんなものにも弱点は存在する。
そう、この魔族も弱点を突かれれば戦闘など行えぬ。王都を一人で壊滅に持ち込める魔族にでさえ弱点はある、聡いものならば気づくだろう。狙うべきはその弱点、ただ一つだ。

>>仮面ライダービルド&仮面ライダークローズチャージ 橋川 清太郎

8ヶ月前 No.574

その者の心、魔にあらず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【魔帝城/舞踏場→無限廊下/サシャ】

「あ、あぁ……うん……そうだね……うん。あたしもそう思うよ」

正直いって、ドン引きしていた。全ては愛故に成り立っているという理論はまだ理解出来なくもないが、その直後に放たれた言葉に関しては、全く以て賛同出来ない。
いや、これは個人的な感性の問題だ。彼女自身がそう思っているのであればよいのだろうし、これを好きだと言ってくれるような者も、中にはいるかも知れない。
だから、表立って思想を否定することはよそう。明らかに本心ではないことが見え見えではあるものの、サシャは一応ガドンを立てる形で、その言葉を認めてみせる。
とはいえ、こうして至近距離で見てみると、なるほど女性に近付くための努力は怠っていないのだと気付かされる。容姿と言動こそ酷い(※個人の感想です)が、動きや体つきに関しては一切の無駄がない。
決めポーズに関してはちょっとやり過ぎではないかと思ったが、これも口に出すのはやめておこう。丁度よく、相手もこちらを解放してくれたようなので、お言葉に甘えることとする。

「分かったよ。ごめんね、付き合わせちゃって。じゃああたしは、ちょっと前線見てくるから」

ガドンの追い払うようなジェスチャーを確認すると同時に背中を向けて、そそくさとその場を後にするサシャ。今更気付いたが、心臓がバクバクになっていた。
多分相手の言動というよりかは、魔帝軍への反抗的態度を聞かれたかも知れないという恐怖から来るものだろう。幸いにも、そのようなことはなかったようで、安心した。
望んではいなくとも、仕事は仕事なので、サシャは前線へ向かわなくてはならない。だが彼女はその途中で、少し気になる言葉を耳にすることとなった。

兵舎にいた下級魔族達が、集団で体調不良を訴えている。あそこがあまりよい環境ではないということは知っているが、確か最近新しい担当者がやってきて、だいぶ改善されたのではなかったか。
どうも、嫌な予感がする。これをしでかしたのは人間で間違いないだろうが、犯人は人間の中でも一般的な範疇に分類出来ないような逸脱者……そんな気がしてならない。
そしてこういう時に、味方に不都合な事実をも利用して自分の思い通りに事態を動かそうとする存在を、サシャは知っている。放置しておけば、大変なこととなるかも知れない。魔帝に報告しに行くか? 駄目だ、この程度の身分では謁見は許されないだろう。
サシャが導き出した結論は、既に出撃しているであろう魔将軍を探してこの事実を伝え、代わりに魔帝に報告してもらうことであった。そうでもしなければ、奴が先手を打ってしまう。

可能な限りの速度を出し、走る、走る、走る。身体能力には自信があった。……のだが、なんということだ。こんなところにも、もう敵は入り込んでいるというのか。
出撃前に魔将軍の間を覗いておこうと思った結果が、これだ。この廊下が無限に引き伸ばされているということは即ち、既にこの区画に敵が侵入していることを意味する。
荒れた息を途中整えつつも、数分は走っただろうか。ようやくサシャの視界に、二つの人影が入り込んでくる。片方は知っている。"常山蛇勢"レプティラだ。つまり、もう片方が敵か。

「あっ……レプティラさん! 大変なんだ、兵舎が!」

それは、レプティラにとっては先程伝令から聞いた話だ。だが、ここでサシャが口走ったことによって、敵の青年、レオンハルトもその事実を知ることとなるだろう。
歴史に詳しい彼であれば、それが何を意味しているのかはすぐに分かるはず。未来からやって来た何者かが、魔帝城の兵舎へ向けて毒を散布したのだと。
確かに結果は変わらない。魔帝軍さえ滅べば、本来の歴史は守られる。だが、だからといって到底許されざる行為ではないことなど、誰の目にも明らかだろう。

>"常山蛇勢"レプティラ、レオンハルト・ローゼンクランツ、(ガドン・バルザック)
【ガドン本体様、お相手ありがとうございます。そして急ぎ足気味ですが、乱入させて頂きます】

8ヶ月前 No.575

黒鉄一輝 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK


【 ディンカ/魚市場/黒鉄一輝 】

 結論から言えば――テルン・エルウェーウィンに黒鉄一輝を揺るがすことは出来ない。

 ・・ ・・・・・
「ええ、誓いますよ。
 ――それでも、試してみますか?」

 刃は突き立てられ、腹部にダメージが入る。
 だがテルンから余裕は消えない、――むしろ先ほどよりも喜悦が増しているようにすら思える。
 対する一輝の口元から笑みが消えることは、無い。

 巧みな言葉で心の隙間へぬるりと伸ばされたその触覚<手>が一輝を捉えることはない。
 状況からすれば圧倒的不利だというのに、次第に追い詰められている印象さえ受けるというのに。
 彼女からすれば違和感すら覚えるだろう。
 此処まで追い込まれている人間の表情が、何故さっきから変わっていないかを。

「あなたは神でもなんでもない。
 まして、人の上に立つこともしない。
 ただ、自分より弱い者を甚振ることに聖職者という理由を付けたいだけだ――だから、あえてこう言います」

 黒鉄一輝には、ただの一度も「栄光」などありはしない。
 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
 人生の全てが極限まで追い込まれ続けており、それでもなお立ち上がり続ける不退転の意志。
 あるのは――ただ、それだけ。

 テルンは見誤っていた。
 あるいはこれが彼女の見たかった理想形か。
 黒鉄一輝は最初から、取り繕った精神性も、自覚していない心の裏も持ってなどいなかった。
 極まったストイックな精神を維持し続けて、成長し続ける人間など何人もいる方がおかしい。
 それは要するに「あらゆる現実や脅威という壁を前に挫折せず、その上を乗り越え続ける」ことに等しいのだから。
 肉体を何度も擦り減らし血の滲むような鍛錬を、――ただ「自分の価値を諦めない」一心で恋人と共に続けた剣豪。


   さいきょう   、   、 さいきょう
「僕の  最弱  でもって、あなたの  歪み を打ち砕く!」


 それが、黒鉄一輝という男だった。
 真剣勝負の場に立った瞬間から、本質のままに刀を振るう尋常ならざる精神。
 その歩みに、迷いは一欠片も見られない。
 テルンの両脇に展開された巨大十字、――喜悦の瞳が見開かれるのを合図に夥しい数の閃光が射出される。
 それはもはや雨と呼ぶに相応しい。
 先の十字の弾幕とはワケが違う、――本物の光の絨毯だ。
 周辺地域はそれだけで焦土と化し、焼け焦げた世界を作り出すことすら容易としか思えない。

 だが、ただの一発も命中することはない。

 一切速度を落とすことのない疾走。
 不規則に降り注ぐ無限の光雨の隙間を縫い、テルン・エルウェーウィンとの距離を詰めていく。
 暴虐的な光の嵐。回避、回避、回避、刀の受け流し――最初から"視えている"かのような動き。

 パーフェクトヴィジョン
(《完全掌握》――!)

 黒鉄一輝の眼に映るは――"テルンの全て"。
 そもそも、一輝もまたテルンの本質を探りにかかっていた。
 それも彼女の尋問とはワケが違う。ここまでくれば技術の領域――いや、魔人の領域とも言うべきか。
 照魔鏡の如し観察眼は、先のやり取りでテルン・エルウェーウィンという女の根幹に至るまで暴きつくした。

 回避。
 回避。
 回避、――唯の一発も着弾することはない。
 光の爆撃は魚市場の残骸、死骸。
 その全てを砕き焼き払い焦土へと変えてゆくのとは正反対に一輝は無傷でテルンとの距離を零距離にまで詰める。
 狙うは胴への横薙ぎ。
 《陰鉄》――己の得物、日本刀の刃が届く距離<レンジ>。
 振るった刃がテルンを両断せんと払われ――。

 突如として黒鉄一輝の姿がテルンの目の前で煙のように失せて消えた。

「第四秘剣、――《蜃気楼》」

 次に声が聞こえる頃には、もう遅い。
 幻惑された、と気づく頃にはもう遅い。
 タイミングを一瞬ズラして、テルンの真上より肩口を切り裂かんと強襲する黒鉄一輝の姿が浮かび上がった。

 胴を狙って振るわれた一閃は完全な虚像<フェイク>、――本命はこの強襲にある。
 相手の魔力防御は瞬間的。自分の行動を予測して、一点に仕込み発動して防御するもの。
 ならば、その予測を裏切り防御を空撃ちさせる/不発に終わらせる。

  、  、 サディスト
 知るがいい、加虐者。――己の敵は、武の道に生きる剣豪であると。

>テルン・エルウェーウィン

8ヶ月前 No.576

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/城壁・上部/クジャルナ・クオーク】


「ああ、いや。ええ、そうですね。殺してはならない者さえ殺さなければ問題はありません、改変に多数の命が失われることは仕方のない事です。」

古い東洋の絵画に用いられていたような、情緒ある波飛沫が凶弾を飲み込む。波に飲まれた弾丸は弾き飛ばされ、城壁に当たり金属音を響かせるか王都へと落下していく。
先の凶悪な表情を繕う様にこの男は柔和な笑みを浮かべ、和装の女性へと振り返る。手の持つ火器さえなければ非難した国民に見えぬこともない、しかし勘の良い者ならば気付く必要な殺しには無駄がないこの男。
余興と評したそれは嬲る為、憂さ晴らしの為であったが敵対するものが眼前に現れたならばそこに躊躇や加減は存在しない。これ以上使用しないだろう火器携行袋を投げ捨て、狙撃銃も城壁へと放る。
この男の範囲はあくまで徒手、己が四肢を凶器とし手の届く範囲の命であるならば容易く刈り取る魂狩りの鎌。人体なぞ粘土細工の如く貫き、歪め、折る。そこに容赦も情もない。
相対する女性が取り出したるは筆、絵や文字を綴るそれで何を行うかと思えば魔力を有する七色の弾幕、小筆から放たれるそれはこの男を追尾し見た目の美しさなど意味を為さない威力を持っている。
宙を不規則な軌道を以って駆けるそれ、何れもこの男を射抜かんと喰らい付く。しかし追尾する、その事実さえ把握できればこの男は容易く回避を行う。どの程度追尾するかを見極め、追えぬ速度で誘き寄せる。
その後、瞬き程度の僅かな溜め。瞬間、城壁の一部が文字通り爆ぜる。砲弾でも直撃したかのように大穴をあけるその場に姿はない、この男は既に移動を完了している。

「追い払われるのは、貴方です。」

目で追えぬ速さ、瞬間的な速度であれば音に並ぶほどの踏み込みで女性の眼前へ。視線が交差するならばこの男は女性を見上げる形になる、何故ならば次の致命へ至る技へ繋げるためだ。
繰り出すは下段から上段への蹴り上げ、凡そ脳を揺らすに最適な顎を掬い上げる様に足裏で穿つ。女性相手であろうが関係なく顔面を狙い、その命を奪う事に特化している。その威力は顎を砕くに容易く、受け方が悪ければ頭蓋も砕けよう。
故にこの男が繰り出す体技全て致命傷に至る物であり、直撃すれば戦闘続行が困難になる物ばかり。心臓、頭部など命に関わるものも、内臓、四肢など動きを阻害するものもどちらも行う。
だがこの男、先の戦いにて負傷した傷は言えていない。大火傷を負った左半身、特に酷い腕と足は人工皮膚を包帯で固定しただけに留まる。安静にしていれば十分な治療であるが、戦闘を行う度に手当てをすればよいと動きがある動作に対しては意味がない。
それでも尚、動きに鈍りなく、命狩る技に翳りなし。傷を負った部分が比較的弱点になるが、治癒の速い魔族ならではの相手の命を引き換えに身体を犠牲にすることもある。
そう、何ら劣りはしない。ただ相手を屠る為だけに思考を使用する、そこに僅かな負傷など問題ですらない。ただただ、己が目的の為武を振るうのみ。

>>葛飾北斎

8ヶ月前 No.577

わんわんお @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_JM6

【王都ロンカリア/城壁(跳ね橋)/ヘシアン・ロボ】

 自然の生命に、実のところ余計な技など必要ない。
 技術とは悪い言い方をしてしまえば“小細工”だ。
 元より生命として劣るものが、生命の基礎として上回るもの、基底からの設計図において優れるものを打ち倒すために巡らせた智慧こそが技。それを突き詰めることの是非については語るに及ばないが、それは人間という種にしか備わらないモノだ。
 であるに。この復讐者の行動には智慧こそ乗っても、凡そ技術というものがあるわけではない。
 あくまでも早く。あくまでも、鋭く。そして、何よりも力強く。
 狼王が元々にして持つスペックの高さを、存分に、かつ最適の箇所で振るうだけで必殺となる。いちいち狙いがどうだの振り方がどうだの武具がどうだの、そうした小賢しい要素が自然にあるわけではない。ただ、狩りとしての智慧と、肉体という力があるだけだ。

 ―――であるに。そうしたものを御し得るはやはり英雄。

 力が強い。速度が早い。そうしたものなど幾千幾万と対峙してきた。
 例えば竜、悪魔と呼ばれる何か、魔獣化外の列挙と戦って来た勇者こそが赤枝の騎士だ。
 距離を引き剥がし、アベリィ・シルバラード目掛けて襲い掛かったその爪と朱槍が相対する―――その中で、もしも赤枝の騎士が衝突の中でその瞳を覗き見たのならば、すぐさま気付く。その目がようやく、障害としてランサーを捉えたことを。

 ………最初から、この英霊の狙いはひとつだ。
 仮初のエーテル体に過ぎない者になど最初から狙いを付けていない。
 憎んで、憎んで、憎み切って。ただの化外には絶対に放つことの出来ない色をそいつは放っている。
 その感情の名前を、憎しみ。あるいは憎悪と言い。
 その感情を持つものを、たかだか一つの枠組みで捉えようとすることの愚かさなど語るに及ばない。

 振り下ろそうとする爪よりも、打ち上げ、弾き飛ばす槍兵の力の方が僅かに強いのか。
 狼王の殺意を込めた振り下ろしは、しかしアベリィには届く気配すらなかった。

 ………否、否。正確には、違う。
 このまま押し潰そうとした場合に煌いた銃口の存在を狼王は見逃していなかっただけだ。
 あの火砲の脅威は良く知っている。だから、此処で行うべきことは槍の英霊に対し力比べと洒落込むことではない。彼の戦いは報復だ。美学だのなんだのは人間だけが持つ理屈であるからこそ、狼王は此処で行うべき行動を的確に判断する。

 狼王が、吼える。と、同時に押し返そうとする相手の勢いを利用して飛び退く。
 一旦距離を取り、援護に回って来たランサーから離れ銃弾を回避する。流石に散弾銃、大柄な狼王の肉体に幾つか銃弾が突き刺さり、その鉄の弾の刺さった場所から小さく血が零れ落ちるも、動きを止めるには至らない。
 空中から地面へと着地する最中、さらに第三者の刃が迫る。先程首無しの傭兵に屠らせるつもりだった片割れの人間だ。何かを使役しているとなれば本体の能力は言うほどでもないと思っていたが、どうもそうではないと見える。

 その上で、さらにもう1体の召喚。
 かの者の名は竜殺しの大英雄ジークフリート。世界が違えど、英霊のそれと違えど。
 その高尚なる精神と武技には一切の相違点もない。
 あれだけの数を展開して来たとなれば狙いは見えて来る。人間の戦いの基本、利であり理たるものは数だ。

 その上で、もう一度あのけたたましい音が聞こえる。
 同胞たちを数多く殺した、あの鉄の長い棒状の武器。
 召喚術の担い手が、わざわざ手持ちの刀ではなくこれを取り出したのは援護のためか? あるいは―――。


「■■■■■■■■■■■■―――」


 狙いが見えた。ならば誘いに乗ってやる。
 牙を打ち鳴らし、爪を研ぎ澄まし、狼王の殺意に滾った眼光がライドウを捉えた。
 これで彼方は自分を狙うと認識するだろう。それでいい、事実としてあの判断力は厄介だ。
 あのタイプは狙撃手と違う。狙撃手は殺さなければ均衡が崩れるが、指揮者は殺せば均衡が崩れる。
 均衡を保つものがあの槍兵であるが、此処で狙うものは決まっている。

 ―――砲弾目掛けて、突っ込んだ。四発のそれを潜り抜け、あの召喚師を殺すために。
    挑発を挑発と受け止めて、その意気や良しと、度胸に対する報いをくれてやるために。

 あるいは、そこまですれば相手も意図のほどを開くだろうと判断したが故に。
 突っ込んで来る弾丸に対して、まず一発目を吹き荒れる鎌鼬のような刃が解体《バラ》す。
 首無し騎士の腕はさながら歩く武器庫か処刑刀。自由自在に動き、時として攻撃を弾き、時として相手を瞬時に細切れとする全自動《オートメーション》の殺戮兵器だ。その刃に自らを護らせ、接近のために勢いよく駆け抜ける。初速からの図抜けた加速、迫る弾丸の二発目を飛び越え、三発目を着地と同時の異常な減速と急加速で回避し、四発目を―――。


「―――■■■ッ!!!」

 ・・・・
 噛み砕く。
 ばきり、という音と共に。銃弾に対して無理矢理顎の力だけで粉砕する。
 目の前でわざわざ見せてやったのは、意趣返し。
 そう、意趣返しだ。自らを狩る者と誤解したモノへの、悪意と殺意を込めた返礼。噛み砕いた銃弾に意識を取られているか、次の対処をするより早く、ライドウの零距離へと狼は踏み込みながらその牙を研ぎ、首無し騎士はその腕を振り翳す。



 ―――追って来るのが御所望だったのだろう?
    ただ撃てば、おれが釣れるとみくびったのだろう?
    、  ・・・・・・・・
    ほら、そうしてやったぞ。だから、喜んでそのまま死ね。


「■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」



 刃が、炸裂した。
 中央の狼を基点とし、三百六十度隙間なく刃が彼を護るように荒れ狂う。
 召喚師が使役したジークフリート、そしてヨシツネの二騎の堅牢なる守りを無理矢理突破するためだ。
 其は近寄るすべてをところ構わず斬り裂き、穿ち、砕く竜巻《ハリケーン》。
 それで居て本命は、ライドウに対するその牙だ。先程弾丸を噛み砕いた、原始的にして最大の武器。狼たちはそれで持って敵を引き裂き、食い千切り、噛み殺して死を与えんと疾駆し、その牙で喉笛を噛み千切らんと迫っていく。

 ―――これなるは、ただ死を与える者。死を纏う者。
    尊厳も信念も、ヒトの理屈すべてを踏み越える、彼方より人類を斬罪する存在である。

>アベリィ・シルバラード、ランサー、ライドウ

8ヶ月前 No.578

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【王都ロンカリア/城壁/上部/ギルバート・トムフール】

「……反吐が出るな」

それが、ギルバートが現在、王都で繰り広げられている惨劇を見た率直な感想だ。何がどうなったかは知らないが、民衆は皆欲望を曝け出し、暴虐の限りを尽くしている。
まさか、これが王国の正しき姿であると思うはずがない。これを仕組んだのは十中八九、歴史是正機構の人間だろう。何故なら、このような暴動が起きたとの記述は、歴史書にはなかったからだ。
奴らはここまでしてでも歴史を変えたいというのか。だとするならば、何としてでも阻止しなくてはならない。こんな連中が思い描く未来など、碌でもないものに決まっている。
首謀者を探し、城壁を走るギルバート。そこで彼は、不穏な言葉を口走る一人の魔族を目にした。だが身なりからして、この時代の出身ではないようだ。
未来世界ではその数をかなり減らしているはものの、未だに魔族は細々と暮らしている。もはや人間に敵意など抱かず、共存の姿勢を確かにした形でだ。
にも関わらず、今更時代遅れな迫害を仕掛けている今の世界政府は本当に無能だと思うが、それとは話が別。彼が歴史是正機構の所属なら、放っておくことは出来ない。

「下らない人間、か。確かに、これを見る限りお前は正しいかも知れないな。だがそれは、歴史を変えていい理由になるのか?」

この時代の人間の事情に深く突っ込むつもりはない。きっと彼らも、魔族が恐ろしくて仕方なかったのだろう。表には出てこなくとも、こうした感情を押し殺していた可能性は十分にある。
言葉を聞く限り、彼がこれを仕組んだという訳ではないようだ。しかし、歴史是正機構に属していることが確実視される以上、倒さなければならない存在であるのも事実。
見れば、隣には時空防衛連盟に所属する異世界人もいる。確か名前は、葛飾北斎といったか。たった今、データベースの写真と照合したので、間違っていないはずだ。
共に戦う味方がいるということは、いつだって心強いもの。同時に自分は隊長として、可能な限り彼女を護らなければならない。たとえ一番隊の所属ではなくとも、やることは同じだ。

「加勢するぞ。人が死ぬ様を眺めて愉しむような外道を生かしておく訳にはいかん」

北斎が七色の砲弾を放ったと同時に、ギルバートは丁度クジャルナの背中付近に重力を集中させる。敵は、突然身体がそちらに引っ張られるような感覚に襲われることだろう。
上手くいけば行動を阻害することが出来るが、効能はそれだけではない。北斎の放った攻撃までもが、重力に引き寄せられ、何倍にも加速していくではないか。
つまるところ、敵は強烈な重力に逆らいつつも、この攻撃に対処することが求められる。如何なる実力者であっても、自然の力に抗うのは簡単なことではないだろう。

>クジャルナ・クオーク、葛飾北斎

8ヶ月前 No.579

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大宿屋/黄衣なる者】


困ったねえ、余程胡散臭かったのか会話をしてくれなくなったねえ。折角久しぶりに新鮮な反応を返してくれる人間に出会ったのにねえ、煽って調子を乱すの作戦だからまあ正解なんだけどねえ。寂しいねえ。
さてさて、彼女は見事に対処したねえ。先の攻撃は竜巻さえどうにかしてしまえば避けるのは簡単だからねえ、それを魔力弾で相殺して回避の道を作るのはお見事だねえ。
だから竜巻は消え去って、風の刃も避けられてしまったねえ。さらに迫ってくる魔力弾が五つもあるねえ、威力も結構ありそうだねえ。しかも結構な魔力が凝縮されてそうだねえ、恐ろしいねえ。
まあ、防げない訳ではないんだけどねえ。障壁で容易く防ぎきるねえ、前の戦闘から時間も経ってるからねえ、それは新しく張りなおすに決まっているねえ。まあでも、ただの魔力弾にしては相当な威力だねえ。

「うんうん、お見事だねえ。素晴らしいねえ、これは負けてしまうかもしれないねえ。」

再び困ったように見えない風に話しかけるねえ、さらにクスクスと言った笑い声もおまけしてしまうねえ。困ってはいるんだけどねえ、こうも強い相手とばかり戦っていると大変なんだよねえ。
ほら、弱いから。手の内はもう殆ど見せてしまった、でもここから口でまだまだ攻撃手段があるように見せなきゃいけないからねえ。こういった感じなら素直に疑ってくれそうだからねえ、そうすれば大胆な行動には踏み切れないだろうからねえ。
こういった時表情がないのは不便だねえ、本当に困ったような顔ができれば油断させられるしねえ、逆にどんな状況でも余裕そうなら何かあるのではないかと思わせ続けられるからねえ。
ない物強請りをしても仕方ないからねえ、今度はどうしようかねえ。竜巻と風の刃ばかりじゃあ飽きるだろうけれども、今の状態じゃそれほど大きなことはできないからねえ。精々大きめの竜巻ができるくらいだねえ。
そうだねえ、じゃあ今度は敢えて温い攻撃をしてみようかねえ。風は見えないからねえ、どれだけの攻撃が来ているかは瞬時に判断できないからねえ。だから密度を薄くして大きく回避行動を取って貰おうかねえ、その隙をズバンといこうねえ。

「でも、簡単に負けるわけには行かないからねえ。ほうら、避けないと胴体がお別れするねえ。」

今回はあくまで前後の二方向だけだねえ、着地の隙を狙ったものだけれども先の動きを見る限りは効果は薄そうだねえ。序でに少しだけ細工をしておこうかねえ、音を潜めてより見えにくくして見るねえ。
そうしてみればこの通りだねえ、落ち着いて視力に集中させなければ殆ど見えないほど隠蔽性能が高いねえ。音も無音に等しいねえ、これで気付かれたならば彼女は五感以外で感じ取ってると考えた方がいいかもねえ。
さあさあ、襲い掛かるは隠密の刃。されど触れれば一刀両断だねえ、少なくとも彼女の方が強いのは理解できたからねえ、今度はその差をどうやって埋めていくかだねえ。
会話が続けば、何とかなるかもしれないんだけどねえ。まあそれは仕方ないねえ、心を乱すのが分かっていれば対策されるのも当然だからねえ。悲しいねえ、寂しいねえ。
さあて、後はどれだけ耐えれるかの耐久勝負だねえ。まあ守りには少し自信があるからねえ、また時間稼ぎを頑張ろうねえ。倒せって?いやあ、酷い事を言うねえ。人には得手不得手があるからねえ、人じゃないだろって?厳しいねえ。

>>ジークリンデ・エレミア

8ヶ月前 No.580

獅子心 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【魔帝城/無限廊下/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 地より穿たれる岩柱を足場に、空高く跳躍する蛇の主。宙にて体勢を整え、降下しながら距離を狭めて来た彼女の顔が、突如として崩れ始める。人体では到底不可能な、可動域を越えて開かれる顎。人を容易く喰らえる、そんな印象を感じさせる。
 猛毒の染み出る牙を突き刺さんと、肉薄する大蛇。生命を容易く溶かす凶牙を前にした剣士は、重厚な大剣を手に携えながらも、軽々とした動きで後方転回を繰り返してそれを退ける。左右前方への退路には限界があるが、後方への退路には無限があるのだ。道を塞がれでもしない限り、余裕は常に維持出来る事だろう。

「なら、此処で朽ちる前に聞いておきたい事がある」

 侵入者である己へと向けた言葉に含まれる、彼女の戦う理由。魔族の平穏が示す意味が、人類滅殺であるのか否かはいまだ窺い知れない。あくまで人類滅亡を望むと言うのならば、意識を存分に殺意の方へと傾けられる。だが、もしも和平寄りでの話であったならば別だ。その真実を確かめるまで、殺害には踏み切れず、そして此処で果てる事を許されない。

「お前の言う平穏とやらは、俺たち人類を皆殺しにする事で成り立つ物なのか。そして魔帝もそれを望んでいるのかを」

 胸元に寄せた左手に集中させる大地の魔力。土色の仄かな輝きを宿した手を振り払うと、放出された魔力が様々な箇所へと散布され、魔力が接触した地面より己と敵との間を隔てる無数の土壁を現出させる。敷かれるは強固な防御陣、接近を阻む障壁の数々。生半可な攻撃では打ち破れずに行き詰まる羽目になる。其処へ更なる追い打ちとして、今度は炎の魔力を左手に掻き集めようとして――

「……兵舎? まさか、独断で……!?」

 ――後方からやって来た新手によって、その動きを妨げられる事になる。突如として聞かされた、兵舎で起きた"未知の出来事"。兵卒が魔将軍へと報告する様子は、只事では無いと言った風であり。その要因は、紛れも無く魔帝軍へと害を為す物であるからに他ならない。その事から推測するは、史実を外れた一手を投じた者は、"時空防衛連盟"か"歴史是正機構"の両方。それも、魔帝軍の壊滅を目論むとなれば前者である可能性は高い。
 だが、兵舎を利用する様な指示は総統、副総統の両方から聞かされておらず、そして司令官であるシフォンも己もその様な作戦を立案していない。ならば隊長格の独断か、いやそれも有り得ない。フォッサも、ギルバートも、相談無しに、許可も無しに独断で行動する様な奴等では無い筈だ――

「おい、そこのお前! 兵舎で今何が起こっているのか詳しく説明しろ!」

 そうして行き着いた答えは、精鋭か協力者の独断。上の意向を無視して兵舎へと何かしらの行動を仕掛けた者が、内部に居る。だが、その内容とは何か。それを確かめる為にも、敵である以上は乱暴な手段を使わざるを得ない。
 大剣の柄を引っ掴んで走り始めると、新手である猫の少女へと肉薄。突き出した左手で胸倉へと掴みかかろうとしつつ、兵舎で今何が起きているのかを聞き出そうとする。好ましくは無い立ち振る舞いではあるが、状況が状況なだけに焦り、その事を意識するには至らなかった。

>"常山蛇勢"レプティラ サシャ

8ヶ月前 No.581

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_CK7

【王都ロンカリア/大通り/噴水広場付近/ユーフォリア・インテグラーレ】

マロニス王国と協力関係を結んだ後、ユーフォリアはロンカリアへと留まり、各地の戦況を見つめていた。人類と魔族、どちらが優勢であるとも言い切れない状況。
本来の歴史であれば、一人の勇者が獅子奮迅の活躍をし、王国を勝利へ導いたこととなっているのだが、古代で起きた改変の影響は、想像以上に強く現れているようだ。
勇者と呼ばれたアンナローズ本人の姿は確認されているものの、文献に記されていた内容とはあまりにもかけ離れた人物であり、更には正史とは異なって、獣人の従者まで連れている始末であった。
我々が知るよりも遥かに良識的な人物になっていたことが、果たしてよいことなのか悪いことなのか。少なくとも、現状では時空断裂が発生していないのが救いである。
あくまで時空防衛連盟の目的は、歴史を保護すること。人物の内面などに差は生じても、戦の結果さえ変わることがなければ、問題はない。そのためにも求められるのは、勝利の二文字だ。

魔帝城への侵攻作戦も進み、ユーフォリアも前線へ赴こうとしたその時。王都全体にて、突如異変が生じる。暴徒と化した民衆。何者かが彼らを先導しているのか?
否、そこで繰り広げられていたのは、暴徒と称するのも烏滸がましくなる狂騒であった。醜き欲望を露わにした民衆が、良識的な魔族を集団で暴行する最低の光景。
これが、中世の人間の本質なのかと思うと辟易してしまうが、重要なのはそこではない。直前まで温厚だった彼らが豹変したのには、何か別の要員があるはずなのだ。
彼女は自分へ襲い掛かってくる民衆を気絶させながら、事の発端となった人物を探す。噴水広場の近くへ差し掛かった時、ユーフォリアはそこで、懐かしい顔と再会を果たすこととなった。

「……久し振りね。ダグラス。まさか、ここで会うことになるとは思っていなかったわ」

ダグラス・マクファーデン。大学時代に、激しく主席の座を争ったかつての友人。時空防衛連盟設立の際にも声を掛けたのだが、事情があるとのことで彼はそれを辞退していた。
こんなところで何をしていたのかなど、聞く必要はないだろう。時空防衛連盟以外で、中世を訪れることの出来る組織は、歴史是正機構以外に存在しない。
ただし、ユーフォリアは決して彼を否定しようとはしていない。ダグラスが歴史是正機構に与することとなった裏には、複雑な事情があったことを古代で彼と交戦したフォッサより聞いていたからだ。
目指す先は同じ。されど、そのために選んだ道が違った。ただ、それだけのこと。まだ、やり直すための時間は残されている。だからこそ、彼女の口から飛び出したのは、説得の言葉。

「私は、貴方を必要としている。世界政府を本当の意味で変えるには、真実を知る者の力を合わせなくてはならないのよ。ここで、貴方と戦いたくはない。憎しみで人を殺しても、新たな憎しみを生む結果にしかならないことは、この光景を見れば分かるはずよ」

彼が歴史是正機構に与することを選んだのは、大統領をはじめ、腐敗した世界政府の上官達を一掃するため。確かに、彼らの政治は最悪で、評価出来る点は何一つない。
しかし、だ。それらを殺して排除したところで、余計な争いが生まれるだけのことだろう。ユーフォリアは正当な手段、選挙を通じて彼らを廃することこそが、真なる解決に繋がると考えている。
かつて親友として、好敵手として競い合ったほどの聡明な人物が、これ以上道を踏み外すところを見たくなどない。もしダグラスが提案を断れば、自分はそれを力づくでも止めなくてはならなくなってしまう。
どうか、どうかこの願いを聞き入れて欲しい。彼もきっと、心の奥底では理解しているはず。ユーフォリアは憎むことも、恨むこともなく、静かにその時を待つ。ダグラスが己の闇を払い除け、光の下へと帰って来るその時を。

>ダグラス・マクファーデン
【さあ、交渉の時間だ……】

8ヶ月前 No.582

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【ディンカ/岬/ザーシャ】


俺を、あの人が褒めてくれた!良い判断だと褒めてくれたんだ!それだけで、まだ俺は頑張れる。全身裂傷塗れだろうがまだ戦える、そうだとも!その言葉一つで俺はさらに力を発揮できる、僅かでも認めて貰えたなら……後は悔いが残らねえようにするだけだよなあ!
身体全体に掛かる重力、竜巻の目を急上昇する俺とあの人。そして突き刺さる大曲剣、悲鳴と炎が吹き上がるもあの人も止まらねえ。子機を展開して、天へと昇り続ける以上嫌でも次の展開は想像が付く。
だが、アンカーではない!それだけで十分に糸口は見つけられるんだよなあ。切り離される爪、深々と突き刺さったまま地へと放り出される俺。あの人に掴まろうとするも触手に力が入らねえ以上、落ちる以外に道はねえ。

「ああ!楽しんでやるさ!手前に褒められた以上、後は全力でぶつかるだけだからなあ!」

背へと叩きつけられる風、空中へ舞い続ける血飛沫、一刻と迫る大地。ああ、状況としちゃあ最悪だ。俺の身体も地面に叩きつけられて四散しちまえば流石に死ぬ、死ににくいだけで死なねえわけじゃねえ。
だが俺は見逃さねえ、ミサイルだけ残してあの人が分離させた意図を。互いに、状況は最悪ってことだ。俺は落ちるまでに仕留めなきゃ負け、あの人も墜落までに仕留めなきゃ負け。
ここまで追い込めた時点で目的は果たせたようなもの、だがこのまま負ければ悔いは残る。あと一歩まで行った、届かなかった、んなこた俺は許せねえ。ここまで来たなら完全に認めさせるしかねえ。
最後の詰めに必要な以上、障壁は使えねえ。子機のミサイルもレーザーも力場と風の魔術のみで対応しなければいけねえ、出来る出来ないじゃねえ。勝つためにはやらなきゃいけねえんだ。
大曲剣を鞘へとしまう、久しぶりの餌に群がるように迫る子機には笑いしか出てこねえ。だが、超えて見せる。これを凌いで、一撃を入れれば俺はあの人の最高傑作を超えたことになる、もう止まる理由もねえ。
レーザーは先と同様に力場で逸らす、だが今度は四機分。全てを逸らせるわけがねえ、だからあくまで身体の中心を貫くものだけを即座に選んで逸らす、血の如き赤き閃光が身体を焼く、だが最後まで動けば問題はねえ。
ミサイルは風の魔術で撃墜する、ミサイルだけは真面に喰らえばそこで終わり。身体がここで吹き飛んじまえば最後も何もねえ、一つの漏れもなく空中で風の刃で両断することが求められてらあ。これくらいあの人に届くためには出来て当然、本番はこっからだ!

「楽しいなぁ!パパァ!本当は逆だが、娘に飛び込んで来いよ!全部受け止めた上で、上回ってやらぁ!」

墜落するように俺へと迫るあの人と、そこから放たれたミサイル群。ああ、本当は俺が受け止めて欲しいんだけどなあ!こうなっちまった以上は俺が受け止めて、その上で勝つしかねえ。
使うのは障壁、先に使用した以上割れるのはほぼ確実だが……それでいい。むしろレーザー以外喰らわねえだけでも僥倖だったんだ、最後位喰らっても問題はねえ、なんせ後は機を見てぶつけるだけだからなあ。
襲い掛かるあの人が放ったミサイル、それを障壁を構える事で防ぐ。狙いは着弾した時の黒煙、一瞬でも俺を視界から外すことが出来ればいい。着弾する度に罅が入る障壁、嫌な音を立てつつも半数以上は防ぎきる。
そうだ、残るミサイルは全て俺に喰らい付く。だが同時に、あの人へ風の刃を無数に飛ばす。ミサイルの迎撃の為じゃねえ、あくまであの人に届かせる為の物。喰らったのは僅かにでも意識を逸らす為、相対速度でその僅かですら回避は困難を極めるだろうなあ。
あの状況なら僅かな傷でも致命傷になる、殺してえ訳じゃねえが死ぬとも思えねえ。だから遠慮はねえ、俺の持てる全てをぶつけた。何故大曲剣を使わなかったか?んなもん腕が吹き飛ぶのが分かってたからだ。

「ははははは!これで俺は、手前を上回れ―――」

まあ、残念なのは間違いなく当てた姿を見れねえってことだ。ミサイルが着弾し肉が吹き飛ぶ、爪とミサイルのおかげで身体の半分は失ったと見ても良いだろうなあ。それで地面に叩きつけられちゃあ、どう足掻いても死ぬ。
だから取る行動は一つ、風をその場で炸裂させ海へとこの身を吹き飛ばす。方向が横に向かった事、僅かに減速したことで海面に叩きつけられる前には一瞬減速ができた、出来たがまあ腕は吹っ飛んでいった。バラバラにならねえだけマシだなあ。
こんな身体でも意識があるのは恐ろしいやら有難えやら、今回ばかりはあの糞親に感謝だなあ。居なけりゃここまでくるどころか、爪でバラバラになった時点で死んでらあ。と言うよりも顔面が半分吹き飛んでて生きてるのは笑えるなあ。
海が赤く染まっていくのが分かる、結末が見れねえのは残念だが悔いはねえ。やれることをやった、俺の考えうる限りの最善手、これで認められなけりゃまた挑むしかねえ。
刺さった爪の重さで沈んでいくが、まあ海岸が近い以上沖へは流されねえ。気が付きゃ打ち上げられてるだろうよ、……まああの人が拾ってくれる事を期待してねえと言えば嘘になる、だがあの状態じゃあ難しいだろうなあ。
……流石に意識が保てるほどじゃねえか、ああいやこれはやり切った疲れだな。身体はまだ動くが、心がついて行かねえ。少し寝るか、寝て目が覚めりゃあ動ける程度には治癒が進んでるだろうよ。
結果は分からねえが、取り敢えずは満足だ。覚えていてくれた、褒めて貰った、それだけで嬉しい。認めて貰えてれば最善だが、……まあ俺はやれるだけやった。
もし、目が覚めてあの人が居たならば。ちゃんとパパって、呼び……た、い……な―――――

>>(Cluster)


【戦闘ありがとうございました!拾って持ち帰って頂いても構いません!絡みありがとうございました!】

8ヶ月前 No.583

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu

【王都ロンカリア/大通り/噴水広場付近/ダグラス・マクファーデン】

 耳障りな狂騒に包まれる王都を舞台に、欲望を解き放たれた人々へ次々と冷徹なる粛清の一手を加えるダグラス。行為に対する軽重に応じて生か死を無慈悲に選別するその姿は執行人にも似て。憎悪の眼差しを向けられて尚、動ずる事の無い在り方は機械染みた物だ。
 然し、彼にも心と言う物はある。狂える者達が織り成す最低な光景を見せ付けられ、彼は心底苛立ちを覚えていた。一歩間違えれば、課すべき量刑を誤ってしまいかねない程には平静を失っている。正気から狂気へと移り行く寸前、と言った所か。
 そう、彼もこの王都に生じた異変の影響を受けているのだ。忌々しき醜き欲望を曝け出す者に対する、確固たる断罪を願う欲望。誰かに対する劣情すら及ばぬ程に、その感情は荒々しい物へと変じている。
 それでも、理性を保っていられるのは。それは同じケダモノへと堕ちる己と言う物を、忌避する心があるからだ。

「ああ、久しぶりだ、ユーフォリア。期待はしていたが……まさか此処で逢えるとは思わなかった」

 久々に顔を合わせる旧友、ユーフォリア・インテグラーレとの邂逅。最後に彼女と接触したのは、時空防衛連盟設立の際に勧誘を受け、それを辞退した時だったか。その様子からして、自分が今何をしているのかは既に把握しているだろう。時代を飛ぶ事が叶う組織は、彼女率いる時空防衛連盟と、己が所属する歴史是正機構だけなのだから。

「…………ユーフォリア」

 そして、それでも尚、彼女の口から発せられた言葉は説得であった。魔道へと、道を踏み外した者を引き戻さんとする声。嘗ては親友として、好敵手として競い合って来た仲であるからこそ、真摯に己の事を案じてくれているその姿に、彼は深く感謝する。そして善き友と思う相手に、申し訳なさと言う物を感じずにはいられない。
 だから、今直ぐにでもその言葉に答えたいのだが――その前に、胸の内に秘めた物を曝け出す機会を貰う。彼女の言葉を一通り聞き届けた後に、その名前を呼んで。

「俺は焦っていたんだ、この現状に対して。強硬手段に打って出てまで、政府を打倒しなければならないと思っていた……だが、冷静に考えれば、それが最も遠回りな選択だった。今求められているのは、混乱を招く迅速な一手よりも、確かな調和を齎す正確な一手だと……漸く気付いたんだ」

 歴史是正機構へと与する事で、強硬手段で解決を図れば何とか出来ると思っていた。然し、熱を冷まして落ち着いて考えてみれば、それが最も誤った選択である事に気付いた。政府を打倒した所で、新たに混乱が生じるだけであり。本当に世界を救うのであれば、正当な手段を以て平定する事が最善なのだと、漸く解ったのだ。

「俺は進むべき道を間違えた。それでも、再び道を選び直す機会を与えてくれると言うのなら……俺はお前の、お前達の力になりたい」

 心の底から告げる、己の本心。今一度、此処からやり直す事を願う言葉。彼女の瞳を真っ直ぐに見つめながら、彼は親友の言葉が発せられる瞬間を待ちわびる。

>ユーフォリア・インテグラーレ


【結果:即堕ち】

8ヶ月前 No.584

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【ディンカ→歴史是正機構本部→時空防衛連盟本部近辺/岬→/Cluster→Cluster E装備】

売り言葉に買い言葉、この辺りになると、もはやクラスターも外面と言うのを気にせず、非常に熱の入った言葉を発するようになる。
幾ら完全に自らの身体を機械化しても、心の底は、まだ人間であったのだろう。

飛び散る機械の破片と相手の触手や血飛沫、一方的にならまだしも、本来クラスターはこのような荒事を好んでいなかった、だが、このときばかりは楽しかった。 もしかして、もしかするならば、この自分がまったく手を付けていないような「発明品」が自分の魂を注いだクラスターを超えるのではないだろうかと。
本来ならば、クラスターはそのような事を何よりも恐れる……だが、今ばかりは。

「あぁ楽しいともさ! ならばお言葉に甘えるとしようか、我が娘ェッ!!」

お互いの最後の攻撃が衝突することなく、それぞれ狙った標的へとすれ違うように向かってゆく。
ミサイルがザーシャの肉を焼いたように、ザーシャの放った無数の風の刃が、回避機動などもはや取れる訳が無いクラスターの身体をズタズタに引き裂く。
それでも、相手は風を炸裂させて、地面との正面衝突を避けた。

……この戦い、相打ちにしか見えないが、実際は異なっている、何故ならば、本体が大破しても、シャドウコルベットは一定時間の稼動が可能だ、故に、本体を時間移動ゲートを開いて回収しつつ、ザーシャに対して最後の追撃を仕掛ける事も可能であり、また、クラスターにはもう一つの体がある。

しかし。

「認めない……認めないぞ、僕の最高傑作を超えた、真の傑作を、ここで殺すなど!!」

意識が薄れ"もう一機"に意識が自動転送される直前、クラスターはシャドウコルベットに命じた、自身の墜落地点と、ザーシャの所にゲートを生成せよ、と。
彼にとっては、ザーシャはまだ強力な能力者であって、この傷では死んでしまう人間と見えていたから。


バチンと脳に音が響き、彼が目覚める。 その姿は、先ほど使っていたボディとは全く違う機体の物であった。 そして彼はすぐにゲートの帰還地点に設定している場所へと向かった。
そこには、大破している機体と、何故生きているのか不思議なザーシャの姿があった。

「よくやったよ、君は。 ……さて、処置を行い、後は、時空防衛連盟の連中に渡すとしよう。 僕が作った新しいこの機体と、時空防衛連盟や、様々な場所で勝手に育って帰って来た君、どちらが強くなるか、楽しみだ」

聞こえているはずの無い言葉をザーシャにかけて、クラスターはザーシャの傷の治療を開始した、
もっとも、そのとき、ザーシャと言うのは人間と構造が異なっており、治療しようがしまいが、おそらく命に別状は無いだろうと言うのは容易に結論付ける事が出来た。
なら、せめて、起きた時に苦痛が無いように、また、すぐに戦えるようにするとしよう。
そう考えて、クラスターは医師としての技量を発揮してザーシャを治療した。

……数時間後、時空防衛連盟本部の前に、全く正体不明の機械が訪れ、そして人目に付かないようにザーシャを置き、軽く頭を撫でる。
そして、もしお腹がすいていると、いけないな、と言うガラでもない親心染みた物が出た結果用意した保存食を置いて飛び去った。
仮に目撃された所で、機体を完全に一新している以上、それがクラスターだったとは誰も気づかないだろう。

それで良い、黒翼とは、是正機構の翼。 世界をよりよいものにするための、破壊者でなければならない、汚名は必要であっても、良い人だの、そういった無駄な名や印象は必要ない。

>ザーシャ


【お相手ありがとうございました! 好きにして良いとの事でしたので、時空防衛連盟本部に治療した状態で置いておきました!】

8ヶ月前 No.585

葛飾北斎 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_FXK

【 王都ロンカリア/城壁/上部/葛飾北斎 】

 飛沫あげろ、大海より溢れ出すは波があがるその瞬間。
 写実描写、――その一瞬を切り取り描き切る事に執念を捧げた画家。
 その名を森羅万象に轟かせ、天地太平を一筆にて収め奉るはその所業。
 狂気に対してどのように相対し己を保つのが、フォーリナーの英霊の前提条件。
 純粋性を失わないのが一つの答えなら。
 彼女"たち"の狂気すら喰らう人間性もまた、一つの答え。

 唯の画家と侮ることなかれ。
 故に彼女は魔を織りなす。

「ありがたい!
 人手が増えるのは大歓迎サ!」

 射出し、敵を追尾するは魔力を宿した筆の弾幕。たかが筆、されど筆、だが力を宿せば立派な武器。
 加え、増援の手により展開されるは重力領域。その動きを縛り付け、引き寄せられるように加速する魔弾。
 縦横無尽に駆け巡り突き貫く筆を前に、しかしコンマ一秒――勝負を分ける一瞬の時。
 刹那。
 クジャルナは重力波に捉えられることはない、――展開された時には彼の姿はそこにはないのだから。

 大筆を抜く。
 取った構えは、巨大半紙<せかい>に対して立ち向かう時と同じソレ。
 目の前に現れる。必殺必中。

「お――っとぉ!」

 顎、右腕、右足、左腕、左足、五臓六腑。クジャルナの鋭い体捌きから繰り出されるは、人を殺す最善手。
 その全てが適格で正確無慈悲。直撃すれば行動に支障が出るのは間違いない威力。
 だから一発たりとてもらってやらない。
 顎への一撃、――大筆で受ける。空へ受け流す。
 ぐるりと大筆を回す。吹き荒れるは波の魔力。筆の頭、穂先、その全てが正確に殺戮技巧を受け流している。
 たかが画家、されど画家、――されど命を刈り取る処刑人<エクセキューショナー>を描き切る精神で戦い抜く。
 五発目。
 撃ちこまれた腹部への拳打を弾き、大きく距離をとれば。

 いろ
「風情の無い兄さんだね。
 まるで絡繰りサ――そらよ、もってけ」

 トンッ、――筆の肋骨で大地を打った。
 響く軽い音。だが、それとは裏腹に顕現するは豪快そのもの。
 地面が軽く揺れた後、クジャルナの足もとより富士山が噴き上がる。
 東洋の風景画の如し富士、……縮小はされているもののされど圧倒的現実感を持つそれは"実体"を伴い、敵を吹き飛ばさんとする。

>クジャルナ ギルバート

8ヶ月前 No.586

クランの猛犬 @akuta ★Fwax7xTHaw_ly4

【了解ッス! UFO版鮭跳び!】

【王都ロンカリア/城壁・跳ね橋/ランサー】

 跳ね橋の中に入らない理由、ここで持ち場を離れてしまったら誰が憎悪の獣を止めろというのだろうか、それはランサーも同じだった。
 騎士達に申し訳ないが、これもまた戦場の残酷さだ。
 狼は盾にした槍の勢いを利用して、飛躍する。ランサーはニヤリと薄笑いをする、なんてヤツだと。
 流石、英霊として召し上げられた存在は一味違うと全身の血が滾る。
 距離を保たれて仕切り直し。城壁の上層から雪崩れ落ちるレンガ、別のところも戦いは始まっていた事を報せていた。
「じゃあ、コイツはどう――――……!」
 ライドウの指示に了解の返答代わりに槍の矛先に魔力をまとわせ、炎のルーンを宙に刻んでわざと相手が躱すと信じて後退させようと考えたのだが、狼は蒼い髪と銀のピアスを揺らしてすれ違う様子を見て、目を見開く。
 攻撃法がシンプルなランサーよりも、多種多様な攻撃を繰り出すライドウに目を付けたのは"野生動物特有の勘"か、それとも"そうしようと考えた"のか。
 その推測は必要ない、今は目先の仕事を片付けてからだ。砕ける地面と銃弾の欠片が舞わせた白狼はヨシツネとジークフリートと対峙し牙と刃から火花が散る。
 真っ先に厄介な相手を潰しに行ったその利発が逆に仇になった、忘れられたランサーは後ろに大きく跳ねて「相手を城門から引き離す」「後衛を死守する」の行動を律義に守ると白狼に声をかける。
「おい」
 オレがいる事を忘れているぞと静かで冷え切った口調だった。
 狼しかり犬しかりイヌ科の動物は、獲物を集団で追って狩りの成功率をあげるという。
 お前はその本分を忘れちまったのかと、相手の合間見る利発さからすればそれを覚えていなそうな相手の選択にランサーはどこか哀愁を感じ取った。
 赤目を鋭く光らせると、腰を静かに屈んで構える。相手が振り向いた瞬間を狙って宝具を使おうと考えた、城壁が半壊するかも知れないが相手の勇ましさに応えるには十分だと。
 クランの猛犬はかつて、魔術によって戦闘欲を刺激されて狂わさられ戦士達を鏖殺していった自分とこの狼を重ねていた。
>アベリィ・シルバラード ヘシアン・ロボ 17代目葛葉ライドウ

8ヶ月前 No.587

忠犬 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/海底洞窟/ロコ】

中には喜ぶ奴もいる。確かにそうかも知れないが、それはごく少数派の話。一般的な感性を持った人間であれば、まず間違いなく最初に浮かんでくるのは拒絶の意志だ。
それよりも、魔族の王道を勝手に定義したことの方が、よっぽど問題になりそうである。もしここに他の魔将軍がいたら、どうなっていたのだろうか。
とはいえ、そんなもしもの話に期待するよりも、今はこの局面をどう打開するかを考えるべきだろう。相変わらず、状況は悪い。こちらは攻め手を欠いており、未だネクロニアに有効打を与えることが出来ずにいる。
アンナローズが力強く返した言葉に、ロコは思わず笑顔を浮かべる。真なる勇者となれるのは、この方しかいない。あの時そう判断し、ずっと付き従ってきた自分の選択は、やはり正しかったのだ。

「私はアンナローズ殿が選んだ道に従うだけであります! そなたにそれを否定する権利などないのでありますよ!」

仮にアンナローズが魔族に与していたら、もう少し違った未来があった可能性は当然ある。しかし、彼女はそうしなかった。あくまで人間の味方として戦うことを選んだのだ。
ならば、従者としての役目はただ一つ。その道の行き着く末まで、お供し続けること。アンナローズの選択を否定することは、自分にも、ネクロニアにも出来ない。
だからこそ、攻撃を受けて傷を負ったとしても、ロコは気丈に立ち上がる。使命を果たすその瞬間まで、身を呈してでもアンナローズを守り抜く。敵には指一本たりとも、触れさせはしない。

得意の土魔法は、やはり効果がない。ネクロニアがばらまいた粉によって、この海底洞窟の地中に埋まった死体がアンデッドとなって蘇り、肉壁を形成する。
行動の阻害までがセットであったはずの攻撃は、そもそもダメージを与えることすらもないという、最悪の結果に終わった。一応、群がる死霊騎士を一掃出来ただけでも儲けものか。
やがて、下馬したネクロニアは、跨っていた馬へと魔力を分け与え、中程度の火属性魔法を行使させる。勿論、それを見て手をこまねいているロコではない。
直ぐ様土の壁を作り出して、炎を遮断。属性の相性的には有利なはずだが、根本的な魔力量の違いが大きいのか、壁は攻撃を防ぎきったところで崩れ去ってしまう。
これで一難去った……そう思った矢先、ネクロニアが動く。何ということだ、先程の火炎は、次なる本命を確実に命中させるための布石に過ぎなかったのだ。

襲い掛かる包帯の嵐を両手の爪で斬り裂き、颯爽とアンナローズの前に躍り出るロコ。だが、この体勢から、味方へと向けられた包帯を処理するのは無理があった。
アンナローズに向けられた分のそれをまともに受けたロコは、頭以外を完全に拘束されてしまい、身動きが取れなくなってしまった。危機的な状況。それでも彼女は、主人を守れたのならそれでいいと、大声で叫ぶ。

「アンナローズ殿! 私に構うななのであります! そなたならあやつを倒せるのでありますよ!」

ロコは、アンナローズを信じた。自分がいなくても、彼女であればネクロニアを必ずや打ち倒してくれると。それは無謀な賭けかも知れないが、どうせこのまま死ぬのなら同じこと。
それなら、ここで諦めるよりも、最後まで味方を信じていたい。二人の旅は、きっとまたまだ続くはず。全てを捧げ、主人を守り抜いたロコは、こんな状況に陥ってもなお、勝利を信じ続けていた。

>"不死公"ネクロニア、アンナローズ・フォン・ホーエンハイム
【サービスシーン(???)】

8ヶ月前 No.588

"龍炎公" @zero45 ★h2BOlEz4kD_kuu


【魔帝城/兵舎→撤退/ヴァンレッド】

 紅蓮の焔を纏う鳳凰さながらの姿で、残像を残しつつ急降下を果たす龍帝の手に握られるは、神焔の剣。龍殺しの偉業、歴史に銘を刻まれし必滅の奥義を以てして、彼はこの戦いを制そうとしていた。紅に輝く龍の瞳が眼前の敵を見据えたその刹那、天地を縦に両断する斬撃が放たれ――煉獄を一蹴する地獄の業火が、柱となって具現する。
 灼熱の剣閃を退けた敵と言えど、解放された爆炎には為す術も無く巻き込まれ。辛うじて後方へと退き吹き飛ばされる事で、一命を取り止めたと言えどその被害の程度は重大な物であり。身を護る鎧は灼き融かされ、炎熱を帯びた液状金属は容赦無くその身体に火傷を負わせて行く。全身には打撲に擦り傷と言った有様で、古傷塗れの肌には更なる傷が刻まれていた。
 だが、最も甚大と言えるのは。戦いを生業とする騎士にとって命に次いで大切と言える、腕の一本を喪失した事か。炭化した左腕を動かそうとする度に、形状が徐々に崩れて行く様を見て、彼女は茫然とした表情を浮かべる。

「……左腕を喪っても尚、立ち上がるか。無謀とも、勇猛とも言えるが――俺はその闘志を心の底から称賛する!」

 然し、それは一瞬の事であった。よろめきながらも再び立ち上がり、巨剣を拾い上げると、掴んだ柄を赤と黒の色へと染め上げて行く。勝利に対する執念を燃やし、不死者に及ぶしぶとさを見せ付ける彼女の姿は、端的に言って凄まじい物で、龍帝は感銘を受けずにはいられない。
 戦場に轟く咆哮と共に、天高く跳躍した龍殺しの騎士。文字通りの全てを費やす窮極の一撃が冠する名は、"龍殺し"。火柱の様な派手さは無く、ただ無骨に、熾烈に、何処までも殺戮に追究した龍滅の奥義。これ程の物を見せられてしまったとなれば、最早認めるしかあるまい。彼女もまた、"龍殺し"を名乗るに相応しき武人であったと。

「認めよう、"龍殺し"! お前が為したその技、我が偉業と並び立ち、越える資格を有すると!」

 迫り来る轟断の一閃を前に、全てを受け止める覚悟を決めた龍帝は身体に鞭を打って立ち上がり、大地に突き刺した剣を引き抜いて勝負へと備える。煌く刃に捧げるは、全身を流れるもう一つの血液。我が力の源たる、焔の魔力を惜しみなく投じて行く。そして鍛え、造るは剛き剣。
 厚き剛の焔剣を構え、回転の勢いそのままに剣撃を激突させ――刹那、一瞬でありながら濃厚な拮抗が始まる。圧倒的な力と力の衝突が生み出す余波は、大気を激しく震わせ。衝撃を一身に受け止める龍帝の表情は、苦悶の物へと変わる。
 それでも全身を奮い立たせ、一戦の勝利を掴み取らんと立ち向かい――

「ぐォォォォォッッッッ!」

 ――雌雄は決する。紫鱗の鎧を深々と切り裂され、鮮血を撒き散らす龍帝の姿。ふらつきながら後ろへと退き、遂に龍帝はその場で頽れる事になる。その視線は、倒れ込んだアーケオルニの方へと向けられており。

「……後二歩、いや一歩……お前が上回っていたのなら、危うく死んでいた所だ……」

 語り掛ける龍帝の言葉に込められるのは、自らを殺し掛けた者に対する紛れも無い敬意。心臓を壊せなかったが故に、こうして龍が誇る圧倒的な治癒力が働き、命を繋ぐ結果となったが。もしも後一歩彼女が上回っていたならば、龍炎公は志半ばで命を落としていただろうと、彼は断言する。それ程までに、彼女の繰り出す一撃とは苛烈な物だったのだ。

「……傷薬と包帯、そして鎧を持ってきて彼女に渡せ。手出しはするな」

 暫くして、よろめきながら立ち上がると、近場にいる龍族の部下に向けて傷薬と包帯、そして新たな鎧を持って来る様に命じる。それは、一時の熱情を湧き起こらせた好敵手との戦いを、この場限りで終わらせたくはない我儘に依る物。職権濫用もいい所だが、そんな事は今はどうでも良い話だ。
 そうして要求された物を取りに行った部下だが、それと入れ違う形でやって来たのは兵舎で起きている問題へと対処させていた者の一人であった。彼が報告した内容に依れば、兵舎に毒が散布されているとの事。そしてこの場での戦闘が終了次第、レプティラの部下である医療班が確認に向かうとの事であった。

「……よし、報告は任せる。また、残りの者達には協力して兵舎内に取り残された者達の救助に当たるよう伝えてくれ」

 兵舎での戦闘が終了する旨を報告するよう部下に命じさせると、龍炎公は再び彼女の方を見据えて。

「戦いの決着は次の機会だ、アーケオルニ。この命、まだ誰かに明け渡すには早過ぎる」

 その言葉と共に、龍炎公は戦場を離れる。未来からの来訪者が語る、魔帝軍を滅ぼしたと言う人の勇者と、それに仕える、嘗ての部下との邂逅の時を待ち構える為に。

>(アーケオルニ・ランドグリーズ)


【これで一先ず撤退とさせて頂きます。お相手ありがとうございました!】

8ヶ月前 No.589

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【王都ロンカリア/大通り・北/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

魔族の少女の悲鳴が次第に小さくなる。悪魔はそれを焚き付けるでもなく嗜めるでもなく、ただにやついた笑みで眺めているだけだった。
そんな折、一人の"獲物"が現れる。明らかにこの時代の者ではないと分かる容姿の少女――即ち未来からの来訪者。そして悪魔への態度を見る限り"そちら側"ではない。つまりは正義を執行する者だ。

「あら……そんなふらふらの体で戦おうだなんて、健気ですわね。でも……勇気と無謀の違いを弁えていられるほど、冷静では無かったようですね?」

しかし、少女の様子がおかしい。体はふらつき、声は弱々しく、眼差しに力は無い。剣槍を構えるだけの気力は残っている様だが、その刃には心の惑いが如実に表れている。精彩を欠いた迷いだらけの攻撃が、悪魔に届くはずもない。少女は選択を誤った。対峙した時点で逃げるべきだったのだ。
絞り出す様に一撃を繰り出した腕を、悪魔が事も無げに片手で掴み取る。続けざまに反撃するのかと思いきや、なんとそのまま優しく抱き寄せた。

「ふふふ……自分を誤魔化して、騙して、抑えて、逃げて……それで満足出来ていますか? 今の貴女を見ていると、苦しそうにしている様にしか思えませんわね。私は神様ではありませんし、貴女が欲するものも分かってはいません……でも、貴女が求めるのなら、私が与えてあげましょう。私は人の欲が大好きですわ。だって、自制して自縛して、そしてただひたすらに苦しむ姿を見るより……良いでしょう?」

左手で背中を擦り、右手で頭を撫でる。それはまるで、母親が子供をあやす様に。それはまるで、悪魔が心の隙間に入り込んで行く様に。
少女の耳元に顔を寄せ、蕩ける様な甘く柔らかい言葉で囁きかける。それが悪魔の手練手管と気付けばまだ救われる余地はあるが――しかし、心の奥底に弱さを抱えた少女が、果たして誘惑をはね除けられるか。

「良いじゃありませんか……心が求めているのでしょう? なら、貴女(じぶん)の言葉に従って、体を投げ出して、一時の安堵に身を委ねましょう? 辛いだけ、苦しいだけの人生なんて嫌でしょう。ちょっと位欲しい物を欲しいと駄々をこねたって、誰も怒らないから。全てを忘れろだなんて言わないけれど、今だけは欲望に身を任せてはいかが?」

紡がれる言葉は甘き毒。堕落と解放の呼び声、天上楽土への誘い。少女の惑い、悩み、苦しみを和らげる魔性の戯言(ロゴス)。
唇を更に近付ける。桃色の吐息をふっと吹き掛け、その愛らしい耳を舐め始めた。ぴちゃ、ぴちゃと淫靡な音をわざと立てて少女の穢れのない脳漿を揺さぶる。それから、震える少女の体を両手で丹念に愛撫する。腰、脇腹、腕、尻−−全身余すところなく味わう様に、丁寧に。数十秒ほどそうした後、唐突に少女の顔を正面に向けさせ、その愛らしい唇を奪う−−。嫌がる少女の口腔へ舌を捩じ込み、ねっとりと味わう様に舐め回す。息をさせる為に唇を離しては、また鳥が啄む様に激しく口付けをする。何度も、何度も、身も心も蕩かす様に。理性を壊す為に――欲望を解放させる為に。

「――私の名前はエステランディア。気軽にエステル、って呼んでね。貴女の名前は?」

――悪魔が、静かに舌舐めずりをした。

>>ストラーヴ

【エステル、三度やらかす。】

※警告に同意して書きこまれました (出会い/デート)
8ヶ月前 No.590

指輪の女帝 @kyouzin ★XC6leNwSoH_D9v

【城塞都市ギリダン→歴史是正機構本部/玉座の間→実験室/パージルク・ナズグル】

玉座の間において、支配者を示す女帝、パージルク・ナズグルは敗北した。
クリスタルに溜め込んでいた魔力と言う、元を辿れば自分の物とは言っても、確かな外部リソースをつぎ込んでも、自分は敗北した。
これで自分の役割は終わった、後は、後に生きる者が、自分の理想とまでは行かなくとも、多くの者が、幸せに生きれる世が出来れば……願わくば、自分の娘や、こんな自分に付き従ってくれた者たちに、どうか良い時代が訪れて欲しい、そう考えて、パージルクと言う人物は終わるはずだった、だが。

黒翼が、その死に掛けた体を掴みあげて、彼女を時空の彼方へと連れ去ったのだ。 しかし、この傷では、どの道自分は死ぬ、ネクロマンサーのような死体蘇生能力を使おうとも、そう活用は出来まい。
だが、自分の死体も無いとなっては、少し、悪が倒れたというのに、後味が悪くなってしまうな。

あぁ……それにしても、死ぬのは、恐ろしい、やはり私は、この世が。

最後に人間らしい死への恐怖、いや、別れる事への恐怖を抱きながらもパージルクの意識が途切れた。
そこで本当に死ねれば、どんなに彼女にとって幸せだったろうか。

しかし、彼女の生はそこで終わらなかった。

――ここ、は?

視界に入るのは見知らぬ天井、間違っても古代ではなく、まるで別世界のような印象を受ける部屋に自分は居た。
……あの世? それとも、別の時代? どれにしろ、自分は、もう、あの世界には戻れないのか? もう二度と、娘を抱く事も出来ないのか? あの世だとするならあの人は何処だ、何故迎えに来てくれない?

「――エスメラルダは何処だ? マロン、エスト、カシュタン、ノエル、アルクール、ギラード……私が愛した全ては、何処に居る? あの人は? 私は、私は帰りたい、退けっ!!」

違う、ここはあの世などではない、あの世ならきっと、自分が愛したあの人が来てくれる、ブールーンに殺されたあの人が。
だが……違うのだ、自分の傷の、薬か、魔法か、どちらかは分からないが、明確に伝わってくる不気味な感触と、自分の体に取り付けられた見たことも無い機械、そして自分を取り囲む白衣の連中。

底知れぬ恐ろしさを覚えたパージルクは、自らの光魔法を行使して、周囲全てを吹き飛ばそうとする。
しかし、その途端彼らはすぐに扉の向こうへと避難したかと思うと、壁から奇妙な色が付いたガスが噴き出した。
集中が乱れる中放たれた光の光線が分厚い壁の表面を溶かす、だが、貫通には到底至らず、そのままパージルクは力尽きるように、ガスを吸い込んだせいか眠ってしまった。


ギシッ、ギシッと何かが鳴る音が暗い室内に響く。
明かりをつければ、いや、そんな事をしなくとも、目を凝らせば、テープや包帯、鎖と言ったとにかく思いつく限りの拘束具で全身を巻き上げられ、柱にもたれ掛かるような体勢で拘束されているパージルクの姿が確認出来るだろう。
彼女は既に、もう一時間は、意識が覚醒してからこの拘束と格闘している。 こうした連中の思っていることは分からない、だが、何か恐ろしい事に使われるような気がして、そして、何よりも古代に戻ろうと無意味に足掻くが、幾つかの道具がきしむだけで、魔法を行使するための腕どころか、全身を封じられ、芋虫のように足掻く事しか出来ない彼女では、脱出は不可能だった。

「ぜぇっぜぇっ……これを聞いている者が居るなら、今すぐ放せ、妾は、私は、あそこに、戻らなくてはならないぃ……」

息も絶え絶えに、戻らなくてはならない、と言う言葉と共に、彼女なりの渾身の力をこめて腕を拘束しているテープや包帯を引きちぎろうとするが、所詮身体能力に優れていない魔道師の渾身など、たかが知れていた。
結局彼女は、ある存在がやってくるまで、この苦痛を味わうことになる。

だが、これすらも、始まりに過ぎない。

>ヘルガ・アポザンスキー


【ちょっとキャラの個人的なお話になってくるので、基本的に絡むことは出来ないです、申し訳ないです】

8ヶ月前 No.591

讐心名誉顧問 @sacredfool ★P137WP3JAs_D9v

【魔帝城/魔将軍の間/シャル・ド・ノブリージュ】

 己にとっての敵を認めた彼女は、居城にまで攻め込まれた者とは思えないほど至って泰然とした面持ちであった。ここまでの残虐な趣味とあっては、それ以前に魔族と人間とではその辺りの感覚が根本から違うのだろう。自らが付く陣営も心に決められぬような者と闘うよりは気楽だ。ただ……闘いの中で厄介なのは得てしてこいつのような手合いだ。己のみを信じ抜く者。孤ゆえの強さは、それが簡単に手に入れられるものではないからこそ並大抵の者では太刀打ちできない。
 奴の得物は二挺拳銃。魔力の弾丸は、手早い動作とは裏腹の大火力をもっている。着弾と同時に爆発を起こす榴弾……放った炎はそれに相殺されると思われた。が、その爆発は予想していた着弾点からは大きく外れる。背後の壁……外した。故意か? いや、しかし向こうは被弾していない。炎は避けられている。ならば伏兵か。爆発した後に更に何らかの攻撃を発する特殊弾なのか。弾丸そのものが魔力ならば警戒は怠ってはならない。
 魔力ゆえリロードという動作の隙も無いに等しい。矢継ぎ早。反撃する間も無く次の射撃が飛んでくる。恐らく先と同様の榴弾。爆発の範囲の広さゆえに近づけてはならない。炎が榴弾で相殺されうるのならば、その逆も成立するに難くはない。
 大剣の振り上げ。それ自体は敵を斬るものではない、単なる動作。重要なのはその魔力操作だ。榴弾に対して剣の振り上げにより火柱を立てる。いわば炎の防壁であり、弾丸はそこへ着弾すると直ちに爆裂し、相殺されながらも壁の後ろにまで衝撃を与えてくる。見込み通りだ。火柱に加えて、剣を前に突き出した防御動作をとれば、受けるダメージはそれほどでもない。

「大層な腕だな。仕事ならスラムで花でも売る方がいいんじゃないか?」

 シャルは衝撃の強さを賞賛するよりも、その狙いがずれていたことを、彼女の扇情的な姿も含め皮肉混じりに嘲った。しかし挑発しながらも、彼は相手の何かが妙にも感じた。
 あの銃の初撃も、次も明らかに照準を外している。榴弾という性質上、爆発の後に更なる追撃が来るとも考えにくい。命中率を捨てて、他の利を得ようとしているのか。だとすればそれは何か。命中率の低さから生じさせる油断か。だとすれば挑発も悪くはないだろうが……この戦法が相手にとっての常套ならば、そうではなくなる。相手の策を潰すにはまだ情報が足りないか。幸い、相手の得物は銃。近距離戦に持ち込まれることは稀だろう。相手の出方を窺いながら隙を見つけて一撃叩き込めばいい。今はまだ我慢だ。

「まぁ、花ごと燃やすがな」

 赤熱した大剣を右から左へと一閃する。しかし、彼我との距離は身の丈以上の大剣といえど間合いの外。当然、その意味は先程と同じ炎による遠距離攻撃。剣の軌跡に従って生じた火炎が衝撃波となり、銃士のもとへと一直線に飛んでいく。返す刀でもう一閃、都合二発の炎波が銃士を襲う。軌道自体は何の変哲もない直線だが、剣が大きければその規模もまた大きくなる。まともに受ければ斬撃と炎の複合が体に深い傷を残すだろう。

>>フィラッサ

8ヶ月前 No.592

苦難の中の本質 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【ディンカ/魚市場/テルン・エルウェーウィン】

誘いの言葉を受け続けても、一輝の顔から笑みが消えることはなかった。普通の人間ならば、疾うの昔に"堕ちて"いてもおかしくはない時間帯だ。やはり、彼は何かが違う。
いや、何かが違うだけでは説明が付かない。どれほど強固な精神構造を持った人間であっても、多少の変化が生じるはずであるのに、それすらも見受けられないのだ。
しばしの思案の末、テルンはある一つの仮説へと辿り着く。もしやこの男は、黒鉄一輝は、はじめから本質全てを曝け出し続けているのではないかと。
それならば、こちらの言葉に動じない理由も、いくら追い詰めたところで変化が見られない理由も説明がつく。もしや彼は、常に極限まで追い込まれているとでもいうのか。

「ふふふ……ふふ…………うふふふふふふふふふふふふふふ!」

一切余裕を崩すことのなかったテルンが、突如狂ったように笑い出す。ああ、なんと面白い。この男は本質の塊だ。上から下まで、外から内まで、何もかもが本質だ。
どうして、もっと早く気付かなかったのだろう。気付いていれば、もっと素晴らしい試練を与えることが出来たというのに。いや、彼には試練すらも不要か?
ある意味、彼女が求めていた理想形ともいえる青年を前にして、テルンも隠していた本質を曝け出す。きっと相手も勘付いていただろうが、彼女は歪みきっている。
本質を見たいという言葉は、仮初のもの。真の目的は、そこにあらず。彼女が戦場に立ち、敵を甚振る理由。それは―――

「素晴らしい……実に素晴らしい! 貴方のような人間に出会えたのは初めてです。嘘偽りなく、常に本質のままに生きる……なんと素晴らしいのでしょう」
「素晴らしいからこそ、私は貴方を破壊したい! ぐちゃぐちゃにして脳髄を引きずり出して、内蔵を地面に並べて、本当に内側まで同じなのか確かめてみたい!」

そこに、先程まで冷静さを保っていた聖職者の面影はあらず。今この場に他の者が居合わせていたとしたら、テルンは精神異常者の類であるとしか思われないだろう。
否、事実そうなのだろう。テルンの本当の目的は、これ。本質を知った相手を徹底的に破壊し、内側にあるものを外側に引きずり出すことに愉悦を覚える、猟奇的殺人犯。
自分の攻撃を躱されたことなど、もうどうでもよかった。早くあの身体に触れたい、本質に染まったあの身体を手に入れたい。そんな思いが、テルンを突き動かす。

「捕まえましたよ……! さあ、貴方の内面を私に見せてください……!」

ただ純粋に彼を手に入れようと行動し始めたことが、却って功を奏したのかも知れない。はじめにフェイクとして放たれた一撃に、彼女は反応しなかった。
何故、と問われてもその理由は分からない。強いていうならば、本能的なものだろうか。本質で染まった者が、あのような偽りの雰囲気を漂わせているはずがないと、直感的にそう思った。
肩口を狙った斬撃を受け、血を吹き出させても、真っ直ぐテルンは手を伸ばす。無数の十字架が光の糸で繋がり、絡み付くかのようにして、剣豪へと襲い掛かる。
一度捕らわれれば最後。ワイヤーのように締め付けてくるそれによって、彼は文字通り身体をバラバラに切断されることとなるだろう。攻撃を試練と称する手加減など、もはやそこにはない。

>黒鉄一輝
【悲報:こいつも変態】

8ヶ月前 No.593

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【王都ロンカリア/大通り/仮面ライダービルド、仮面ライダークローズチャージ】

「かってえなぁ……」
思い切り殴りつけたが、それでも大したダメージを与えられた様子はなかった。
その様に万丈が心情を露にする。

すると怪物が、二人を叩き落とさんと、挟み込みを仕掛けようとした。
どうやらこちら側の隙を見逃さなかったようだ。

「まずい、万丈!」
戦兎がタカフルボトルをとっさに取り出し、振る。
そして直撃までのわずかな時間の間に万丈に投げ渡す。

「おう! 任せろ!」
『チャージ・ボトル!』
万丈は渡されたボトルのロックを解除し、ベルトに挿さったドラゴンスクラッシュゼリーと交換する。
そして、レバーを思い切り押し込んだ。

『潰れなーい! チャージ・クラッシュ!』
「戦兎! つかまれ!」
ベルトのガイダンス音声と同時にクローズチャージの背中にタカの羽が生え飛行が可能になった。
そして戦兎に手をさしのべ、戦兎もそれを掴み、ギリギリのところで敵の攻撃を避けた。

「ただのパンチがダメなら……これならどうだ!」
「おっと待った! あれは多分むやみに攻めても意味ねぇタイプだ! ましてやお前のベルトは……」
「うるせぇ! やってみなきゃわからねぇだろうが!」
『スクラップ・ブレイク!』

飛行中、敵の硬さを確信した万丈は大技で勝負を決めようとするが、戦兎に静止される。
万丈はその制止を振り切り大技『スクラップブレイク』を怪物に見舞おうとレバーを押し込む。
そして空中から鋭い角度の蹴りを怪物にぶつけんと勢いよく迫る。

「おい万丈〜!」
『ビルドチェンジ!』
その影響で戦兎をつかんでいた手を離したため、落ちていく戦兎。
戦兎はおもむろにライオンフルボトルとビルドフォンを取り出し、ライオンフルボトルをビルドフォンにセットし、地面に投げる。
するとビルドフォンはバイクに変形し、戦兎はそこに着地した。

「ふぅ、やれやれ……勝利の法則……見つけないとな!」
そしておもむろに『ゴリラ』のフルボトルを取り出した――――

>オムニス・デューザおよび周辺all

8ヶ月前 No.594

災いを呼ぶ黒猫 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_0D6

【魔帝城/魔大将の間/チェル】

交渉成立。これで、一応の同盟関係は成立した。となれば、次の話は対価についての相談だろうか。こういった利害一致による関係には、それが付きものである。
ニアのことだから、大層なものを求めてきてもおかしくはない。だが、折角自分が王となる手筈が整ったのだから、多少の無理は飲んでやってもいいだろう。
チェルはそんな思考を巡らせていたのだが、次にニアの口から出てきたのは、意外な言葉であった。なんと彼女は、この同盟にさしあたって、何も要求はしないというのだ。
自分からそう言うのであれば、わざわざ用意してやることはない。利用できるものは利用してやるだけだ。その後で歯向かってくるのであれば、殺してしまえばいい。

「ええ、勿論よ。そこは私に任せなさい。貴方も、然るべき対応をお願いね?」

既にチェルは、今から何をするのかの決断を下していた。確かに、ニアの用意した証拠は確固たるものであるが、少々インパクトに欠ける点があるというのも事実。
魔帝の評判を地に落とすためには、もう一声欲しい。そういえば、兵舎で何か問題が起きているという話を聞いた。これを指示したのが、彼女であるというのは面白いのではないだろうか。
理由は、人類との戦争を回避するための口実、とすればいいだろう。元より、彼女は人類との和平を望んでいた。先程の証拠と合わせても、不自然とはならないはずだ。
しかし、これでは魔帝が深淵の間から動いていないことを証明されただけで、全てが崩れてしまう。ならば、実行犯は別の者であるということに仕立て上げるべきだ。
同じような思想を持っていて、なおかつ味方となる人物が少なく、地位も低い者。ああ、丁度良い奴がいた。あいつがやったということにすれば、まず疑う者はいないだろう。

チェルは右手を振るうと、部下の黒猫達に指示を出す。数分もしない内に、魔帝軍の面々、ヴァンレッドとレプティラの派閥に属する者以外は、耳にすることとなるだろう。魔帝が人類との全面戦争を避けるため、あろうことか同胞を手に掛けたという報せを。
そしてそれを実行した忌むべき怨敵が、チェルの実の妹、"サシャ"であるということを―――

>ニア
【 任 務 完 了 】

8ヶ月前 No.595

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

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8ヶ月前 No.596

@sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【魔帝城/無限回廊/ゲイル・べネルド】

果てしなく続く階段の中腹に待ち受ける者…かつての師であり指導者。在りし日の栄誉を捨て、魔道に身を窶した闇騎士。敬い慕い多くを学び取るべき存在から一転、廃すべき強敵と化してしまった。
その威容もとい異様な風貌は、不吉な風の噂が真実であることを否が応でも認めさせる。大きなショックと共に、『フロレ団長を助けよう』と日々鍛錬に励んでいた仲間のことを思い出し、やるせない気持ちになってくる。
極めつけは開口一番にフロレが放った言葉だ。ゲイルにこの言葉を真っ向から否定する術はない。彼女の失踪以降、騎士団は坂を転がり落ちるように衰退の一途を辿っている。
まだゲイルが幼かった頃の栄光はどこへやら、人員も士気も減る一方だ。団長代理を務めたことで改めて痛感したが、一度低迷の一途を辿り始めたものを持ちなおさせるというのは非常に難しい。

「お断りします。団長こそそんな…悪魔に魂を売るような方ではなかったはず」

強きを挫き弱気を助く、力なき民のために剣を振るう王国騎士団。その長であった彼女の口から飛び出すのは、力を持たない者には死あるのみという、なんとも耳を疑う言葉。
そしてフィラッサという名にユースの顔が気色ばむ。"混沌"の名を欲しいがままにする魔将軍・フィラッサ。まるで彼女を信仰しているかのような口ぶりからして、フロレが闇にのまれた原因はヤツにあると考えていいだろう。
従属を無理強いされている様子は微塵も感じられない。洗脳か、それとも心の底から魔族であることを誇りに思っているのか。王国及び騎士団が完全なる清廉潔白の組織とは言えないこと、そして何より彼女が抱えていた負担を考慮すると、本当に人間に愛想を尽かしてしまった可能性もおおいにある。
しかし魔族になることで苦悶から解き放たれたというのは誤りだ。現実逃避であり、試練からの逃走でしかない。そうして得た力に価値などないし、誰も真に幸せになることなどできはしない。
ただ今の彼女にそういった問答を吹っかけても意味はない、そう判断して口をつぐみ、腰に差していた繊細な愛剣『ゼファー』を引き抜く。
奇しくも彼女同様「力」という手段に訴えざるを得ない現状。非常に歯がゆいが、ゲイルは尊敬する父からの最後の教えを心の中で噛み締める。

『大切なのは力ではない、ここ(ハート)だ』という、相手に聞かれれば笑われてしまいそうな信条を。

「ローウェン、団長は確かに光の中にいる。でもその光は、柔らかく暖かなものじゃない。俺達の声も、差し伸べようとする手も遮る、悪魔の帳だ。

ここで決着を付けよう」

隣に並び立つ仲間の瞳を見据え、なんとしてもここで因縁を終わらせる決意を伝える。自分の役目は得意のスピードで速攻を狙うこと、そしてローウェンのサポートも両立すること。
その比重は戦いの後半になるにつれて後者へと傾くだろう。出来ることなら序盤の畳みかけで決めたいが、相手はよりによってフロレ・ゾンダーランド。ゲイルが速攻型ということくらいは把握済みに違いない。

しかし悩んでいる暇は無い。先陣を切って攻撃を開始したゲイルは、切っ先を敵に突き付け、身体は側面を向くという独特のポージングの後に、目にも止まらぬ速さで距離を詰める。
宙返りを伴う鮮やかな斬り上げに始まり、壁の装飾や階段の手すりまで踏み台にしての全方位攻撃。ただでさえ圧倒的な手数を誇る斬撃と刺突に加え、得意の風魔法を刃に付与することでの追撃。
光を受けて煌めく刀身に、三日月型の鋭刃と化した緑色の風エネルギー。軽やかながらも熾烈なそれらは、悲痛なまでのゲイルの覚悟を体現するかのよう。

>>"力への誘い"フロレ・ゾンダーランド、ローウェン・アルべリウス

8ヶ月前 No.597

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/城壁・上部/クジャルナ・クオーク】


女性などと侮ったことなどこの男に限って有り得ない、であれば命手折る拳と脚の応酬、その全てを大筆で以て受け流し切った女性の実力であろう。大波を伴う筆の軌跡、この男にない遊びを持った鮮やかな光景。
腹部を貫かんとした掌底、それを大筆で弾き勢いそのまま距離を取る。その間際に大筆が大地を小突く、さすれば軽い音と共に顕現したるは大山。これも古い東洋の絵画のよう、この世全てが画板の上とでも女性は言うのだろうか。
奇想天外な事態、だがこの男に動揺はない。襲うものが何であれ、己を脅かす攻撃に変わりはない。その見た目が如何様であろうとも当たれば支障がでる、避ければその隙を突ける、それだけでしかない。

「命の駆け引きに遊びを持たせるほど、余裕はありません。ですので、これは遠慮します。」

地から出でる大山、無表情にさえ見える柔和な笑みのまま後方へと跳ぶ。高さを必要とせず、ただ後退の為だけの隙を極限まで減らした足捌き。ただこの時ばかりは必要以上に大きく後退した、それは相手の増援。
あの顔は資料にあった、時空防衛連盟の隊長。先の踏み込みは運良く範囲外へと対比できたようだが、あの隊長が操るのは重力。単独であれば対処は出来よう、だがこの場には二人。
この男、体術を武器とする常として対多数は得意でない。しかも一ヶ所に無為に固まるような阿呆でない限り、一度に対応できるのは一人まで。互いの連携が取れていれば厄介極まりない、撤退も視野に入れるべきだろうと思案する。

「歴史を変えていい理由ですか、それはもう。―――あるに決まっているだろう?」

僅かな思考の末、あの隊長の問いへと答える。同時に見開かれた目は、明らかに通常の人間のそれではない。この男は魔族、あるいはその血を継ぐもの。未来に住まう者であればその扱いがどうであるかも語る必要はない。
この男の目的は歴史改変により、未来を魔族が治める時代へと変える事。何故か、魔族がこの中世の後に常に人間から虐げられていたからだ。挙句の果てに
政から魔族を排他し始めた、これでは人間の都合ばかりよくなるではないか。
だからこそこの男は人間も同様の扱いを受けるべきだと、自身にとっての正義を翳す。例え同胞から受け入れられないとしても、その行動が認められるものではないとしても、為さなければならない。
落ちた火器携行袋から拳銃を一つ取り出す、相手が数に勝る以上徒手だけではどうしても勝機は薄い。であれば忌まわしい人類の発明だとしても扱わなければなるまい、それが必要な事であるならば。

「外道、そうか外道か。残念だが人間にそれを言われるとはなあ、心外だよ。」

優先して潰すべきは隊長、重力を操ると言うのは厄介。であるならば首を狙うのはそちらであり、女性は拳銃で行動を阻害すればよい。波で弾かれてしまえばそれまでだが、あくまで協力させないのであればいい。
踏み込みの直前に一発、音を超えた中でさらに二発、女性へと凶弾を向ける。最初の一発のみ正確に胸部を捉えたが、残る二発は行動阻害の為に大雑把な狙い。防ぐ、避ける、どちらかの行動を取らせればそれでいい。
本命は此方だ、踏み込みによって再度城壁に大穴が開く、そして隊長への間に蛇行した小さな穴が穿たれたかと思えば、既にその男は眼前へと迫っている。狙いを逸らす為の速度を落とし、ジグザグに地を蹴ったがそれでも尚速度は人間の認識を超える。
眼前に迫ったこの男が繰り出すのは首を狙った殴打、続けて繰り出すは腕を振りぬいた勢いそのままに胴を狙う回転蹴り。軸足が城壁の一部に食い込むほど、それだけで威力を物語るには足りるだろう。
どちらも受ければ絶命は容易く、生半可な回避では肉を抉り取られるだろう。この場での勝機はどれだけ早く一対一に持ち込めるか、それにかかっている。狙うは急所、一つのみ。
魔族の治政、それが為されるまでこの男に容赦も諦めもない。己が正しいと信じ、その道を進み続けるだけ。

>>葛飾北斎 ギルバート・トムフール

8ヶ月前 No.598

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/大通り・北/ストラーヴ】


剣槍が何かを貫くことはなかった、それどころか軽く躱されその腕を掴まれる。乱れたコートがはらりと落ちる、不味いと脳が警鐘を鳴らすこともなく、ただその事実を噛み締めるだけ。僅かな本能が続く攻撃に身を強張らせる。
しかし彼女を包んだのは痛みでも、ましてや害を与えるものではなく、ただ人の温みであった。不意に襲う人肌の優しさ、ストラーヴが常に拒否し続けたそれを身体はただ受け入れる。
背中を擦られる、頭を撫でられる、思考では拒否をしなければと焦る。だが身体が動くことはない、抱き寄せられ、子供の様にあやされる。今の彼女には跳ね退ける意思が介在する余地はなかった。
耳元で囁かれる甘き誘惑、自分の大切なものを守るために心を傷付け続けた彼女にはどれだけの魅力的な沼だろうか。沈み込めば抜け出せぬ、だが拒絶などできようもない。彼女の欲は、あの時からずっと抑圧されたままだから。

「や……私は、僕は……それが一番だからって、苦しくなんか……な、い。」

形だけの言葉、形だけの拒否。弱弱しく拒絶しようと女性へ腕を突っ張る、沈み込む柔らかな感触、拒絶の為のそれは彼女の欲望を増すばかり。人肌に触れ、柔肉にその手を埋める。
求める様にその温みを優しくつかみ、離しまたつかむ。豊満なそれの感触を確かめる様に何度も、何度も。次第に腕の力など抜け落ち、身体も徐々に密着し、拒絶など既に言葉でしかない。
さらに女性は囁く、耳元で囁かれ続ける身を滅ぼす誘惑を閉ざす腕は既に堕ちた。防ぐ術なく、僅かに、それでも確かに堕ちていく。最後の一線が拒絶の言葉を上げようと、彼女の身体は只管に人の温かさを求める。
息を吹きかけられ過敏に身体が反応する、だがそれだけではない。不意に響く水音、脳髄を直接揺らすような甘美な感覚。身体の力は入らない、未知の感覚に身体を強張らせる本能的な防御も剥ぎ取られていた。

「―――――ッ!?」

背を擦っていた腕に熱が籠る、突如淫靡な動きで彼女を温める様に、溶かす様に、穢れ無き身体を徐々に染めていく。脇腹に指を這わせれば、その感覚に戸惑う様に吐息が漏れる。囁きに答える余裕すら、彼女に残っていない。
健康的な腕を凌辱する女性の指先、こそばゆいが確かにその熱を彼女は感じ取っている、漏れる吐息は更に熱を持ち、身体の芯からの熱に困惑と期待が増していく。臀部にその穢れが満ちれば、かつて出したことのない情欲を刺激する声が漏れる。
指が沈み込むたびに多く感じ取る身体に耐えきれず声をあげる、戸惑いも溶け落ち、ただ与えられる悦楽に身を委ねる。反応する身体は抑えられず、熱を持つ肢体は止まる術を知らない。
女性と視線が交差する、顔を向けさせられたと理解するよりも早くその端麗で妖艶な顔が近づく。惚けていながら拒否できたのは、純潔を守りたいと願う彼女の意志だろうか。だが弱弱しい拒否空しく、口腔を蹂躙される。
初めてであった、そんな感傷など覚える間もなく迫る悦に飲み込まれる。気付けば、此方から求めるかのように舌を絡めていた。唇が離れるたび名残惜しそうに、親鳥に小鳥が餌を求めるかのようにただ本能で女性を求め始めていた。
何度も、何度も、唇は離れそして接触する。目尻に浮かべる涙は嫌悪など感じさせない、ただ情欲を刺激する誘蛾灯。想い人の為保ち続けて来た純潔を蹂躙され、それでも尚女性を求める。

「あっ―――――」

大きく離れた唇、透明な淫靡な橋が彼女と女性に架かる。離れたくないと、もっと求めたいと、紅潮し惚けた顔。潤んだ瞳はただ女性を見つめ、更なる快楽を求める。それが、人を寄せ付けぬストラーヴだと誰が判別できようか。
名前を告げられる、エステルと呼んでと女性はさらなる深みへと彼女を引き摺りこもうとする。まだ欲しいと、もっと欲しいと、今だけでいいからと。問われる名前を告げようとする、だが決して隠した本当の名を告げぬことだけが彼女最後の理性だったのだろう。

「―――エス、テル?わ、僕はストラ……ーヴ、ストラーヴ……ねえ、もっと、もっと頂戴?」

女性の柔らかな肢体に全てを委ねる、全身が心地よい熱で火照る。汗ばむ身体、水気を持つ肢体、蕩ける様な夢心地。まだこの中で溺れていたいと、その一心で女性へねだる。首筋に柔らかく口付けをして、催促をする。

今ここに、ストラーヴは名しかない。あるのは悪魔により刹那的な楽園へと堕とされた彼女だけ。残る理性さえ僅か一点しかなく、人と触れ合いたい欲望を暴走させるのみ。
金属が鳴る、彼女が剣槍を手放し地へ当たった。抵抗する術を手放し、彼女は女性を受け入れる。最後の希望は潰える、ここに抗う者は存在しない。ただ、人並みに人を求めたかった少女の残滓が沈み込むだけ。

>>エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール

8ヶ月前 No.599

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_ly4

【王都ロンカリア/噴水広場/エスト(残魔具5352個 残魂数9)】


「盟友の国、マロニス王国。窮地と聞き救援に参上した、が……ここまでとは、何とも言えぬな。」

酷い有様だと、彼女は悲しむ。盟友と共に造りし国、政治を直感で行ってきた盟友に自身の知恵を貸し、慣れぬ政治に悩む盟友に助言をし、自身の教えが必要なくなれば相談役として支えてきた。
最期を看取り、今を生きる人々に任せるべきだとマロニス王国を離れた。大陸を超えた先でもその繁栄は耳に届き、魔族との戦争により窮地であるときき急ぎ戻ってきた。本来ならば今の人々で対処すべきなのだろう、だが状況が悪いと聞き及んでまで見ないふりは彼女には出来ない。
そうして漸くたどり着いた懐かしの地、たがその面影は今はない。欲望のままに行動を続ける人間と呼ぶには余りにも目に余る獣、そしてその獣に食い荒らされる人々。何らかの影響を受けているのは明白だ、だが今を盟友が見ればどう思うかを考えるだけで彼女は悲しみに暮れる。
既に彼女の傍らには土塊で四肢を拘束され、尚暴れようとする暴徒が辺りに転がっている。こんな状況になってしまっても建国の民の末裔、殺すことなど以ての外。魔力こそ使うが殺してしまうよりずっと良い。
そしてこの国には嘗て敵対した未来の組織、それが王国を守っている。対して嘗て味方としていた未来の組織、それが王国を攻め入っている。やはり、何らかの目的があった様だ。だがそれが何であれ、今この国を守っているのならばそれでいい。あの時は全て自身が至らぬせいだと、そう理解した。
魔具を使用し、転移の魔術を使用する。頁を開き、先に遠視で確認した向かうべきと判断した戦場へと向かう為、魔力を込める。この混沌めいた状況に加え、多くの場所で戦闘が起っていた。
このマロニス王国、その王都では幾つかの戦端が開かれている。十分な人がいるところは排除し、敵と味方が釣り合わぬ所へと彼女は向かっていた。そう、そこは多数の芋虫の様な魔族とそれを率いるもの、対して一人の青年が対峙していたのだが。

「……うーん?どうやら戦況は大分変わってしまったようだな、しかしやることは変わらないな。」

犬耳が生えたような芋虫の群れ、王と誇示するような巨大な芋虫、よく分からない材質の防壁、少し見ない間に何とも混沌とした場になった様だ。さらには音楽まで鳴り響く、だが音楽はどうやら青年が奏でている様だ。
見れば局所的な雨雲、ただの自然現象ではないようだ。音を利用した魔術はあるにはある、しかし曲として奏で何らかの作用を引き起こす物は初めて見た。気にならないと言えば嘘にはなるが、研究をやめ、さらには戦闘中だ。ならばとマントをはためかせ、記録書の頁を捲る。
対峙する巨大な芋虫に率いるものと青年、彼女は青年の傍へと降り立つ。無論、加勢する為。僅かに垣間見た程度だが、青年は戦い慣れしているようには思えない。それをこれまで持たせてきたのだ、後は任せろと言いたくもなろう。

「では、君の大事なものを奪われない為に手を貸そう。……失う辛さは、何度も味わいたくはないからな。」

魔力を得て光る頁、雨に濡れようとも問題なくその機能を発揮する。雨雲に包まれたこの広場を照らす太陽の如き火球、彼女の頭上に顕現したそれは雨で勢いが弱まる気配もない。
むしろ魔力を注げば注ぐほどその火力は増し、降り注ぐ雨を触れる前に蒸発させるほどの熱量を持っている。空中で見た限り、あの巨大な芋虫は魔力を用いた爆発を行っていた。同じ魔を操る者同士、その威力は察することができるだろう。
虫を退治するにはやはり炎が相応しい、彼女自身虫に嫌悪感はないが嘗ての領地では苦手な者も多かった。大抵炎で燻るか直接燃やしてしまえば死に絶えていた、魔族の虫と言えど然程変わるまい。
僅かな間で膨大な熱量と化した火球を巨大な芋虫とその傍らにいる少女へとぶつけようと操作する、大きさも家一つ分程度にまで膨れ上がったため御世辞にも軽快な動作とはいかないが、命中精度は彼女が操る限り保証される。
着弾すれば大爆発間違いなし、本来であれば王都の中心で使う物ではない。しかし周囲に何故か人がいないため、彼女は心置きなく使えることができる。そも、彼女が扱う魔術は被害が少なく済むものもあるのだが、この惨状の悲しみをぶつけたいからか巨大な火球を選んだのだろう。
ゆっくりと、されどその熱量を以って確実に焼く火球が魔族二名へと迫る。更なる時が過ぎようと、魔大老の名を捨てようとその魔術に劣化などない。変わらぬ実力を保持する彼女、その強大な力を盟友の国の為に振るわん。

>>ショパン ワームテイマー&エンペラーワーム


【決め手に欠けるとのことで乱入させて頂きます!よろしくお願いします!】

8ヶ月前 No.600


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