Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼ページ下 >>

【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
- アクセス(11277) - ●メイン記事(1845) / サブ記事 (316) - いいね!(7)

時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/07/13 02:23 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_ouC

―――現在は、最終章です―――


最終章:「Chrono Crisis」

激しい戦いの末、歴史是正機構に打ち勝った時空防衛連盟。晴れて時空を護り抜くことに成功したかに思われた矢先、それは始まりを告げた。

まるで世界そのものが崩壊するかの如く、ひび割れていく空。その向こうから現れしは、正しき歴史を紡ぐ使者。

彼らは、人類の捻じ曲げた歴史を修正するべく、この世へと降臨した。これこそが、時空断裂。積み重なった歪みが、限界に達した瞬間であった。

改変に改変を重ねた今の世界が正史に塗り潰されれば、そこに生きる者達は"もしも"の存在と化してしまい、歴史の闇へと葬り去られてしまう。

それは即ち、世界の崩壊といっても過言ではないだろう。時空断裂による時間の連続性消失を防ぐためには、彼らに戦いを挑み、勝利するしかない。

人類が罪を犯したのは、疑いようのない事実。歴史を変えるなどという禁忌を犯した種族には、当然の報いであるかも知れないが……そんな人類も、生きている。

生けとし生ける者、全ての願いは、今日を、明日を生きること。黙って死を受け入れるなどということが、出来るはずがない。生きたい、と願う限り。

これは、明日を手に入れるための戦い。自らの存在を世界線に、時空に刻み付けるため、時空防衛連盟は次元を超える。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

最終章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-286#a


・現在イベントのあるロケーション

狭間世界:最終決戦

切替: メイン記事(1845) サブ記事 (316) ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19


 
 

紅炎 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/ニケ・エタンセル】

自由をと平和をかけて争われた古代の聖戦。未来を切り拓かんとする者達によって魔道帝国は滅ぼされ、真に凪と呼べる時代が始まる。
しかし、その中心人物の一人である少女・ニケは、新たな戦場へと駒を進めていた。舞台は未来、連盟と是正による最終決戦が繰り広げられる修羅の地。
何故そのような危険地帯へ身を投じるのかと問われれば、偏にパージルク・ナズグルを探し出すために他ならない。決着の寸前に何者かによって連れ去られてしまった彼女は、現在この未来にて活動しているそうなのだ。
魔道帝国の女帝…ニケにとっての怨敵であると同時に、偉大な指導者。明確な正と負の側面を併せ持つ、孤独な女王。彼女ともう一度向き合うことで自分の道は拓ける、そう確信しての旅立ちだった。
それに正直なところ、今のニケの中では心配する気持ちのほうが大きい。憎悪などの負の感情には、玉座の間でケリをつけてきている。思慮深い帝国の長としての側面には、尊敬する気持ちもある。

……さて、そんな人物が無差別殺戮を働いていたら、一体どのような感想を抱くことだろうか。

「あれは…

パージルク!」

並び立つビル群の中でも一際の高所、そこから降り注ぐ光線に既視感を覚えないニケではない。雷鳴が轟くような大魔法の主こそ、まさしく探し求めていた人物。
しかしその様子はニケがよく知る彼女と異なっていた。強大な力を破壊と殺戮のために振るい、帝国でいうところの"第一人種"と"第二人種"の垣根すら超えて殺す様は異様としか言いようがない。
古代で負けて帝国を追われたから、理想を未来で実現しようとしている…と捉えるのはあまりに端的だ。絶対に何か理由があるのだろうが、まずはこの暴挙をやめさせなくてはならない。
そうすべくビルの中に足を踏み入れるが、丁度その瞬間に光線の一つがビルを直撃。勇壮な高層建築物ですらもが瞬く間に崩壊、瓦礫の山と化してしまう。
咄嗟に飛び退いて難を逃れていたニケは、肝心のパージルクの行方を目で追う。して、塵と残骸の煙幕が晴れた先に彼女はいた。やはり古代の時とは何かが違っている。
誘拐された先で洗脳でも施されたのだろうか。若しくは何らかの勢力の思想に賛同しているのか。少なくとも、あの自分達の見方をしてくれた時空防衛連盟側についているとは思えない。

「何やってんだ!お前…一体どうしちまったんだよ!」

思わず駆け寄って彼女の肩に手をかけ、何度も揺さぶって怒鳴りつける。不遜な上に危険極まりない行為だったが、そうさせるほど今のパージルクは"おかしい"のだ。

>>パージルク・ナズグル、(マロン・アベンシス、魔大老エスト、アラン・レイクルード)

8ヶ月前 No.1101

流水 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【時空防衛連盟本部/エントランス/ツバキ・オオトリ】

一瞬の間隙を縫って放たれた相方の必殺の一撃。それはある種の特攻とでも呼ぶべきもので、それ故に合理主義の極みとも言える機械にとっては理解し難いもの。その無理解が生んだ第二の刹那が、二の撃を届ける事を許す。
振り下ろされる激鎚が巨躯を揺るがす。それは機兵をどうしようも無い程に詰ませる第三の間隙を造り出した。
撃ち抜くは惨劇に幕を降ろす必殺の撃。それは機兵の主核を完膚無きまでに破壊し尽くした。
若干の揺らぎの後、核を破壊された巨体が崩れ落ちる。それは、殺戮者の敗北を意味していた。黒金の機兵は二度と動かない。殺戮兵器は稼働を停止し、完全に沈黙した。

「……終わったか。手間ばかり掛けさせてくれたな」

全く代わり映えのしない仏頂面のまま、ツバキはそれが崩れ落ちる様を眺めていた。生成した大量の水が、激戦の跡を洗い流して去って往く。
間も無く、小型の兵器の殲滅も完遂された。機兵の無差別攻撃に殆どが巻き込まれていた関係で掃討は易い。生き残った敵兵は最早戦意を喪失しており、この場が収まるのは時間の問題だった。

「至急被害状況を確認しろ。負傷者の手当てを最優先に行え」

勝ち鬨を挙げる隊員達に冷静に指示を飛ばす。戦いは後始末を済ませるまで終わりではない。指示された隊員達はてきぱきと行動を始める。この分ならば後は何も言わずとも彼らが済ませるだろう。

ツバキは髪留めを外し、水に濡れて滴を溢す髪を鬱陶しそうに手櫛で梳く。水滴が艶のある黒髪を煌めかせながら、細い指先に撫でられて散って行く。
水滴が垂れなくなった髪を再び束ねて、前髪を掻き上げる。ツバキの戦い方故仕方ない事ではあるが、髪だけでなく肢体も衣服も水浸しだ。もう気にしても仕方ないと言わんばかりに、衣服からぽたぽたと滴が垂れるのを無視して疲労から眠り込んだ相方の方に寄って隊員に指示を出す。

「彼は良くやってくれた。後で司令官らが戻って来たら、彼の手柄だと話してやれ。……私は寝る。後は任せた」

最後にそれだけ伝えると、ツバキは踵を返して部屋に戻る。からんころんと下駄を鳴らしながら、しかし少しの感慨も無さそうに。

>>清太郎、(ワーロック)

【お相手ありがとうございました〜。】

8ヶ月前 No.1102

受け継がれる凪の系譜 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

8ヶ月前 No.1103

シャプール @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【歴史是正機構本部/監視室/シャプール】

 身のこなし―――上出来、及第点どころか合格点。
 結果から見た予想の通りだ。この男は相応以上に出来る。

 槍兵の跳躍、そしてそこに関連する脚の運び。それを眺めながら、シャプールは長剣を構え、その獰猛さと嗜虐性を隠そうともせず口元を釣り上げた。構えは剣狼………攻勢に強く守勢に弱い、力の求道者たるシャプールらしい侵略の構えだ。

 槍兵が背後へと着地するまでの挙動に無駄はなく、軽口を叩きつつも動作は次を見据えている。
 あれは戦士の才だ。生まれ持った先天的な格と、鍛え上げた後天的な経験値によって培われるものが戦いの才能というものだが、この男の場合は恐らくその両方だろう。生まれ持った天賦の才覚は対峙した相手への表情からして頷け、それに甘んじることなく戦いに明け暮れた経験値に関しては反射速度の速さがそれを証明している。赤枝の騎士は間違いなく、槍兵として指折りの存在だ。


「ま、否定はしませんがね………」
「戦術、戦略、小細工、工夫、搦め手。そいつで引っくり返せる強弱など、
 結局の所ある程度拮抗した関係である事が前提だ。絶対的な力の前ではすべて無意味」

「だから、貴方以上に此処の連中は愚かと言ったのです」

    ・・・・・
 そう、力ある相手だ。そこが何よりも素晴らしい。


 シャプールがくつくつと笑みをこぼしていたのは、その男が上等な力の持ち主だからだ。
 それなりに価値を置くべき相手であり、だが何よりも“踏み台に丁度良い”………戦いに協力する条件として求めていたものには十分すぎる。そして、これは根本的な話だが、シャプールという男は何よりも実力主義だ。
 力を妄信し、信奉し、全てをねじ伏せ、統べる王のためにそれを振るう男だ。
 王のためという第一条件のない、異なる世界での彼というシチュエーションにおいて、何より信奉するべきものは力、ただ力。極論野蛮で無謀な戦術だろうがなんだろうが勝てば良い―――それは見てくれとしてあまりにも阿呆にして単純だが、“それが出来てしまう”のは力ある者の証明だ。力の桁が違えば相性や戦法、技術などというものに意味はない。

 奇策や相性で引っくり返せる強弱など、結局の所ある程度拮抗した関係である事が前提だ。
 どう転ぶか分からないという天秤を傾けるのが策であり状況。
 最初から絶望的に開いている差をそれらで埋めることなど出来ない。

「これはおかしなことを」

 そう、だからこそ。
 口の割に、彼はランサー………クー・フーリンを見下すような素振りを見せていない。
 あくまでも他に比べればの話では、あるが。


「力の無い者は死ぬ。戦いに勝った負けた以上のものはない」

「違いますか? いいや、違うまい。
 そうして連鎖を踏み躙って来た兵でないなら、私の試し相手にもなりはしない」


 が、しかし。同時に男にとって重要視するものは、力を振るった結果だ。
 0と1以外のものはない。及ばず敗れた輩に敢闘賞などという反吐の出るものはない。
 まして引き際さえも弁えられなかったとなれば、遅かれ早かれ死んだ方がマシな口だろう。

 地面を蹴り上げる音。朱色の砲弾が目前に迫る。
 砲弾と形容する程度の威力はある―――いやそれ以上。まともに着弾すれば城塞の一つ二つは構わず撃ち抜く。生半可な能力などでは防げない、魔法障壁の類も手傷を軽減する程度のものでしかないだろう。
 つまり結論として、あの槍兵との正面の撃ち合いは“今は”論外であるというわけだ。
 押し通る戦法こそ最上であるが、そこに固執するほど黒騎士はおろかではない。
 それが分かっているならば、シャプールとて馬鹿正直な応じ方はしない。突きの突進を逸らすために、射程からの飛び退きと同時に剣を振るう。一発………巻き上げられた風が水平に収束したかと思えば、そこに真空の太刀を作り出す。『ソニックエッジ』と銘を持つ片手剣技に分類されるそれは急所に当たれば相手を刎ね飛ばす威力はあるが、中距離から迫って来るランサーの足止め以上にはならないだろう。

 であるに、それは牽制と足止め何より布石。
 もう一手―――後退と同時に、壁を蹴って、シャプールは行動を起こした。


「………ふッ―――!」


 跳躍と同時に、先程の意趣返しのように頭上を飛ぶ。
 すれ違いざまに空中で身体を捻って放つ振り上げの斬撃は『ストームレイド』………先程のソニックエッジによって生まれた疾風を伴い、見かけ以上に広い範囲を切り裂く剣術だ。
 敵が戦士であることに喜びを覚えても、そこに敬意を払うでもない。
 彼は力を求める者であるが、戦士ではないのだ。


>ランサー

8ヶ月前 No.1104

フラナガン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【放送局/放送室/ニール・フラナガン】


「命を懸ける、………か」


 もう、傍観者の言葉で止まるところに彼女は居なかった。
 最後の一手を打ち放ったフラナガンは、ショコラの言葉を静かに回想する。
 そこへの道のりに命を懸ける………口にし、宣誓するだけならばこれほど容易いことはないが、されどそれを貫き通すに伴う難解さなど語るに及ばないことだった。それは当たり前のことだが、当たり前のことほど難しいのだ。
 どんな人間だろうが、当たり前のことを当たり前にやれば出自どうこうなど関係なくそれなりのものになる。真っ直ぐに生きて、真っ直ぐに死ぬだけで良いのだ。それが出来る人間こそ真っ当だと呼ぶに然る相手なのだから。
 であるに、その当たり前のことをやろうとしている彼女を責められる人間などそうはいないし、輝かしい若人に年寄りの冷や水を浴びせる資格など自分にはないのだろう。それを最初からフラナガンは痛いほど分かっていた。分かっていたし、最後の一手を選んだ時点で、薄々とこの争いの趨勢を察していた。どのように察していたかなどは言うまでもないだろう。

 今ならまだ間に合う。いまなら止められる。低きに流れるだけならば何も起きない。
 何も起きないから、何も変わらない。良くも悪くも変わらない。
 勧めなくなった大人たちとは違う。まだ若人と呼べる彼女の歩みは、正しく暗闇の荒野を切り拓く勇気ある行いに等しい。それが栄華か破滅をもたらすかは、彼女の奔走に隣人があるのか、その行いが盲目的なものではないのかが全てだろう。

 少なくとも、彼女は一切抗いを止めなかった。此処では止まれない、此処ではまだ終われない。
 やるべきことがあるのだと真摯に言葉を交わし、フラナガンの言葉全てに応じた彼女は、悪く言えば愚直だ。彼がもしも………そう、もしも、此処に立っているのがフラナガンでないならば幾らでも突きようのある死角がある。

 大海原に住まう彼の悪魔ならば、そこに何時も通りの破滅的な歓喜を乗せ背中を押すだろう。
 断崖へと蹴り飛ばし、やれば出来るおまえなら飛べると。まだ“そう”ではないが、その道への可能性が零ではないショコラ・ヴァンディールのりくつを聞こうものなら、彼はそうした結論を出すに違いない。
 世界を浸食する異物どもの女王ならば、そこに幾つだって突くことの出来る隙を見出す。
 なにしろ彼女は相手の土俵に立たない。自分は一切の手を出さず、脇から状況を誘導し、嫌いなものを徹底して踏み躙る女だ。人の善意も愛も情も、何もかも分かった上で唯我を貫ける正真正銘の侵略者《プレデター》なのだから。

 だがしかし、此処にいるのはニール・フラナガンだ。誰よりも凡人であり、良くも悪くも俗的な男だ。
 長きに巻かれて来た孤独な王だ。
 その男の諦観が織りなす言葉の全てに耳を貸し、対話し、答えを返した彼女のそれは愚直と罵倒するには値しない。それは当たり前の行動でしかないが、当たり前のことが当たり前に出来る人間こそ褒められて然るべきなのだ。


「(それが、正しいのだろうな)」


 そうだ。自分たちは落伍者なのだ。
 政治家としての、当たり前のことが当たり前に出来なかった―――。


 ………そして戦いの趨勢は、決しつつあった。

  、  、   、   、 チェック
 先も言ったが。それは断じて、詰みを宣誓する行為だった。

 彼女に奥の手が、フラナガンを圧倒するものが無ければ、此処で倒れる。
 倒れたのならば、命だけは保障されよう………命だけは。だが、そうでないならば―――。


 ―――そうでないのならば、フラナガンに次はない。


「ぬう………!」


 それを変えるだけの奥の手など、実際のところショコラにはなかったはずだ。
 彼女にあってフラナガンにないものは、最早これまで、“チェック”と宣誓された場面でも諦めないだけの気迫と意地と執念。合理的に闘いを進め、諦観を以て正論を説いて来たフラナガンであるが、彼に状況を変えるだけのちからはない。
 たった一歩だ。たった一歩だが、それが結果を分けた。
 回避先に構えていた兵士たちへの対応は、フラナガンがそもそも“攻撃から退避を選ぶ”と断定したからこその代物。そもそも逃げず、迎え撃とうという発想で来た場合、ポーンたちは一瞬にして木偶の坊と化す。有り体に言って采配のミスだ。


 たった今即席で生み出された天然の要塞が、室内を根こそぎ吹き飛ばす爆発の衝撃に拮抗する。
 石が積み重なり、土が隙間を埋め、木の根がそれを覆う自然の合一。
 それさえも吹き飛ばす女帝の死に花は、しかし………その要塞諸共ショコラ・ヴァンディールを倒すには至らなかった。なにより、そこで自ら打って出ると言う状況が予想外に過ぎるからこそ、フラナガンにはもう打つ手がなかった。

 土煙の中からそれが飛んでくる。
 今までと比較すれば脆弱な一撃なれど、それは無防備にして無力、孤独なる王を討つには十分だ。


「ひ―――ィッ………!」


 駒同士を同じマスに配置出来ない―――つまりは、自分を守らせることは出来ない。
 チェスの基本的概念だ。そして………。


 王が打ち取られた場合、その陣営は戦いを続けられない。
 ………それも、チェスの基本的概念だ。

 かすり傷だった。鋭く砕けた岩の破片を、彼は飛び込むようにして躱した。
 だが次はない。その恐怖が彼から戦意を削いだ………削がれた戦意は、そこに在る駒たちを消失させた。王《キング》の敗北は、如何に十五騎が屈強にして精鋭揃いであろうとも、その力の全てを無意味とする。
 彼は敗北した。完膚無きまでに。覆す可能性があったとしても、フラナガンには選べなかった。


「………こうなるか。………ふう。こうなる、よなぁ………」
「私の負けだよ………ショコラ・ヴァンディール」


 だから、彼は項垂れながら、小さく答えた。
 撃ったのだ。腹いせに撃ち返されたところで―――怯えるが、納得はする。
 ニール・フラナガンの目利きが確かならば恐らくそのようなことはないだろうが。しかし、薄々と感づいていた事実であるから、しょせん第三者でしかない彼は打つ手の無さに気付いた時点で戦意を喪失していた。
 己は、しょせん無能なのだ。どうしようもないほど………低きに流れるしか出来なかった男なのだ。
 妥協という冷風に煽られて、熱を失った者なのだ。どうして“まだ終わらぬ”と言えようか。


「行きたまえ………。は、敗者の、負け惜しみじみているとは思うが」
「命を懸けると、粗末にするのは、違う。忘れんようにな………」


 彼は、せめて彼女が“通ってはならない道”の穴を塞ごうとしたことに他意はない。
 そこまで打算的な感情や善意があるでもない。
 いつものように、誤算と不都合から、自分の行き先を妥協しただけだ。それは悪く言えば流されたのだということに等しく、よく言えば最初からそうなることが分かっていたからこその柔軟さでもあった。


>ショコラ・ヴァンディール


【いえいえ〜。此方こそ途中途中ややこしくて申し訳ないm(._.)m】
【お相手ありがとうございました】

8ヶ月前 No.1105

洩矢諏訪子 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【歴史是正機構本部/食堂/洩矢諏訪子】

「んー?」

 間延びした声だった。
 目の前に入って来た人影が明確にかたちを成すより少し前に、そいつはそんな声を挙げた。
 侵入者だ。誰だか知らないし、そもそも知る努力はしていない。だから、やって来たそれが敵か味方かに関する知識などはない―――であるに判断材料は一つだ。自分の行いに対してどのような感想を懐き、どのような処置をするかでそいつの所属はある程度区別が付けられる。仮に件の時空防衛連盟とやらでなかったとしても、仕掛けて来るのならば正当防衛が通るだろう。
 何しろ、この世界とやらでどう趨勢が動こうが、正直に言ってどうでもいい話ではあった。歴史も違う、かたちも違う、世界の成り立ちも違えば信仰の在り方からしてズレている。有り体に言って此方は部外者であり、そして此方にとってもこの世界の在り様は泡沫の夢に等しいレベルで無意味にして無価値だ。
 神も妖怪も畏れという名の信仰で成り立ち、畏れという名の信仰を対価に行動を為すもの。
 それが払われない以上何の意味もない、土壌が最初から違うのだ。極めて俗的な言い方をすれば、洩矢諏訪子に然したるモチベーションなどない。だから、比較的彼女はこの争いに関して興味も無かったし、気まぐれのような行動は起こしてもそれが善意に繋がることは一切なかった。元よりヒトの思考構造と、そうしたモノたちの思考構造は決定的に異なるのだ。

 常識外れも何も、最初から住む世界の違う生き物に常識を説いて何になる。
 妖怪とはそうした化外だ。カミとはそういう現象だ。であるに―――。


「そうだよー? ずいぶん分かり切っていることを聞くのだね。
 もしやたまたま小さな子が迷い込み、たまたま唖然としていた、なんてオチを期待していたの?」

「そんなこたないか! だってお嬢ちゃんは目つきが怖いものねえ。
 あーなんだ、知り合いでもこん中に居た? 殺しちゃいないよ、手間がかかるし勿体無い」


 入って来た人影が、そのひとみに明確な敵意を宿そうが。
 特に彼女は何かしらの反応を示すでもなかった。口元を軽く釣り上げ、人を喰ったような笑みを見せるだけだ。翡翠のような女の瞳の内側を覗き込むようにしながら、ひょいっ、と、軽い擬音でも立てるようにして女は地面に降り立つ。
 特に表情を変えるでもない。
 むき出しにされた敵意に、“おまえなにをそんなに真剣になっている”と、冷や水でもぶつけるかのようなノリの軽さと言動の柔らかさは、しかし彼女の足元に広がっている凄惨な状況を鑑みれば有り体に言っておかしいと言うより他にないだろうとも。


「が………、集られても困るんだ。少し黙っていて貰ったのさ」
「その上で、一応本分らしいことはしようと思っていたんだが………んー、なにかしら、やる気だった? もうちょっと奥の方まで行けば、少なくともやる気のある偉い人に会えただろうに」


 その最中に叩く軽口には、誤解を招く前に言うが別に煽り立てるような意図はない。かといって心底から手間がかかるとか、勿体ないとか思っているわけではない。その少女にとって、此処に転がった半死半生の人間たちへの見方などそんなもの。
 要するに、事情もライフサイクルも知らない虫への接し方と全く同じだ。
 触れるのも面倒だが寄られるのも面倒………何より大事なのは、“どっちでも然程自分のサイクルに関係はない”という一点だろう。道端の石にいちいちいたわりを持って接する人間はいないし、気まぐれで何かをしても真摯な気持ちで善意や悪意を散らすことなど以ての外だ。別に隠すでもないことなのだろう、彼女はそうした内情を特に隠そうともしなかった。

 向けられる感情の意味が分かっておきながら、態度が変わらないのだ。
 真摯に応じてやるという空気でさえない。
 そうした態度は、そもそも相手を舐め腐るとかそういう域を遥かに超えている―――諏訪子は確かに軽く笑ってこそいるが、その瞳が何を映しているのかなど分かったものではない。ないが、少なくともまともに取り合う空気ではない。

 戦いに高揚するでもないし、いちいち相手の態度に目くじらを立てるでもない。
 なぜなら、もう一度繰り返すように言うが―――カミとはそういう現象のことを指すのだ。
 人の常識内に生きていない。違う生き物だから、生きていようが死んでいようが殊更にどうでもいい。


「ふんふん。ではそうさな、そのお願いに付き合ってあげよう。
 なにせ、われわれは拠り所だ。たまにはそういうことをやってあげてもいいだろうよ」

「ただし、やるならちゃんと励みましょうね。分かるかしら、遊びは半端だとつまらないの―――。
 まあまあ安心しなさい! 最悪でもちょっと死ぬだけだ!」


 だから、極論誰が来て何を言おうが対応なんぞ変わらない。
 戦いを望んで来た相手だろうが。
 義憤に燃える真っ当な神経の持ち主だろうが。
 極論、実に極論であるが………同じ“カミ”であろうが。変わらない。

 こんなものは規模がどうであれ、モチベーションがない以上は遊びだった。
 明確な目的もなく、戯れるように事を行うのをそう言うならば、諏訪子のそれは根本から遊戯だ。

 であるに振るわれた光刃の一切を見つめて―――それからにこやかに迎撃を始めた。
 別段それが凡庸だと詰るつもりは殊更ない。むしろ相応に非凡で、逃げ道を塞ぐ一手であるのに間違いはない。相応にセリィという少女は、客観的に見て優秀だろう。

 が、それでもだ。避ける意味など最初からない。
 そもそも“真っ向から見える範囲で突っ込んで”というのが侮りも良いところだ。
 別に踏み潰すのも面倒だから、という理由で降りていた兵士たちの山から少し遠ざかり、振るわれた斬撃の連閃に対して彼女は手元にあった何かを振った。それ以上に何かしら大きな動きを起こすでもない。ただ振った、それだけだった。
 それは輪だ。古の鉄輪。手元で回転されたそれは幾つもの残影を軌跡と残し、真っ正面からの光の剣戟を正面から受け止める。目新しい反撃などするでもない、出来たかも知れないがしない。やる意味がそもそもの話として全くないからだ。

 のんびりと周囲を振り返る。
 駆け抜けた彼女には目もくれず―――一度頷いて。



「ほいさっ、と!」

 、   、   、  、   ・・
 地面を踏みつけると同時、足元が水没した。



 水没と言うが、その実態は単に踏みつけた場所から円形に広がるように水柱が噴出しただけだ。
 ひと一人どころか数人程度のグループならば2秒も立たずに轟と飲み込み、そのまま天井に噴射の勢いで叩きつけて押し潰すような水圧のものが。周辺の光子ごと跳ね飛ばすような勢いでそれは段々と範囲を広げ、至るところから予測も付かず一帯を襲う。
 狙いなど特に付けるまでもない。付けるまでもなく、大地そのものを呼び起こす“それ”が振るう力は、そもそも狙いを付けるのが億劫になる程度に広範囲を薙ぎ払い、打ち付け、揺るがすものだ。

 災害がいち個人を狙いに付けるのか?
 城砦を打ち壊すための武器でわざわざ一人だけを狙うか?

 簡単な話だ。セリィという少女一人を狙う意味がない。
 何処から噴出するかも分からず、明確な逃げ道もない噴射の水柱に安全地帯は存在しない。
 逃げ道を塞ぐもなにも、大地《ソレ》はハナから彼女のテリトリーだ。で、あるに―――。


「そーれーッ!」


 序でのように地形を薙ぎ払ってから、漸く行動を始める。
 次々と至るところから吹き上がり、押し上げて叩き殺す水流の柱で視界が覆われる中。
 崩れた足場から持ち上がったそれは例えるならば翡翠だ。大きさとして二個もあれば大の大人と同じ程度になるだろう翡翠は、明確な硬度と質量を持ち、彼女が両の掌を向けた場所から合わせて浮上し始めて行く。見てくれとしては美しい宝石のようだが、それは戦いの場なら質量弾以外の何物でもない。
 弾数にして八発。足元から不定期に、断続的に襲い掛かる水流の暴威と合わせて、正面四発、左右それぞれ二発の計八発が時間差で勢いよく襲い掛かる。
 風を裂くような轟音で放たれたそれは、特に防御も回避もする気がないなら確実に何処かの部位を砕くだろう。運が良ければ生きている、打ち所が悪ければ即死だ。


>セリィ、(ALL)


【よろしくお願いします〜】

8ヶ月前 No.1106

イスマリア @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4


【 時空防衛連盟/作戦会議室/イスマリア・ザルヴァトール 】

「――」

 思考がそこまで及んでいなかった。浅慮を反省する。
 イスマリアはアースワームの特性を「体内での無尽蔵の毒製造」だとみていたが、その特性は寧ろ逆。
 自身に蓄積された猛毒を吐き出しているのみであり、死ねば毒袋は毒爆弾と成り果てる。
 よって、イスマリアによって殺されたことで一度に放出された猛毒が部屋に充満を開始した。

 成る程、脅威だ。
 アレはつまり自律起動する機雷だ。「ワーム」と名を付けられ、行使される精霊は全て爆弾と考えた方がいい。
 最悪の場合、敵を引き付けて任意で起爆さえしてしまえば――それだけで大ダメージを保証できる。
 上手く決められれば即死だ。

 指向性を持った生体電流――増幅された雷の柱。雷鳴がとどろき、大気を焼き焦がす白き閃光が走る。
 炎のワームの手で強引に脱出したフランネルは苦痛に呻き、イスマリアをにらむようにしながら飛び上がった。
 使役される魔蟲が放つ炎弾に加え、高速で飛び回る彼女の姿は回避に専念しているか?
 いいや、違う。己を繭に閉ざして安全圏からの戦いを好むような人物が、隙を伺い致命的な一刺し<フェイタル>を狙うような真似はしない。
 何故なら、――殺害できるメリットよりも反撃を受けたときのリスクに目がいく。

 だから、――打って出た。
 一種の賭けだ。

 >>さあ、大衆よご覧あれ。

 納刀――詠唱<ランゲージ>。黒い粒が溢れ出す。粒子だ、未解明物質という名の魔の粒子。

 >>世紀の女王が此処にて斬首の刑と成る。
 >>次代の英雄が此処にて死を迎える。

 魔術と異能には決定的な違いが一つ存在する。
 それは、物理法則を超越することは魔術には不可能であるということ。
 指定された属性の、指定された現象のみに魔術式/詠唱/世界の改変でもって介入を行う魔術は、しかし既存の物理法則を捻じ曲げることが出来ない。
 現象系統――あるいは概念を司る術式は、時間魔術などの高度なものでもなければ成し得ることが出来ないのが現状だ。

 それを打ち砕いたモノが――後天的、あるいは先天的に発症する異能<デュナミス>。
 副作用や対価を求めるものが多いものの、その効果は少しの消費で多大なリソースを得られるものが多い。
 イスマリアが発症した第二の異能も、その一つ。

 >>処刑台よ、血を啜れ――今宵も罪人が首を差し出す。

    Punishment Fortuna
「《運命採決、処刑の輪よ首を断て》」

 ――凄惨なる絶対処刑の具現であった。

 黒い瘴気が泡立つ。イスマリアより溢れ出す漆黒の波。数多を犯し飲み干し喰らう――”何かある ”と確信させるには十分すぎるほどの絵面。
 太刀も冷たいほどに輝く鋼の煌きから、泥よりも暗い汚泥の色へと変色した。

 さあ、諸人よ首を差し出せ。
 影響が現れたのは旋回するファイアワーム。
 何もしていないにも関わらず――イスマリアの方へ、まるで何か強大な鬼にでも引き摺られているかのように接近を開始する。
 もがけども、この沼に囚われた者には安息という二文字はない。

 自身を取り囲みはじめた糸にしても同様だ。
 フランネルが放ち、形作りはじめていた繭の形が「崩壊」を開始する。
 内側へ、内側へ、内側へ、歪に凹み続けるという異様な崩れ方後についに「自壊」する。

 そして――アサルトライフルを構え、引き金を引いたフランネルであっても例外ではない。
 イスマリアの方に、何もしていないにも関わらず引き寄せられる感覚を覚えることだろう。
 自由に飛び回ることはもはや許されない。鎖と手錠に囚われた罪人が如く、身動きに制限がかかりはじめる。
 もがけどもがけど――イスマリアの方に引き寄せられるのは変わりはない。
 逃げられるとすれば物理法則をねじ伏せられるほどの怪力が必要となる程に、この底なし沼の口は深かった。

 何故なら――彼女を起点にして発現した現象は、「引力」。
 地球の物理法則であり、重力と同じくらいにメジャーにして弾き飛ばす斥力と対を成す能力。

「――小細工如きで、未来を止められますか?」

 ひどく冷え切った声のイスマリア。彼女へと向けて、全ての物体が引き寄せられていく。
 更に、電撃の異能で増幅させた生体電流が邪魔なテーブルや死体等を焼き焦がし消し飛ばしていく。
 浴びせかけられた射撃を雷撃の盾で逸らす。フランネルを突きさし抉り取るように射貫くその双眸に宿る感情は、これから行う処刑を暗示していた。

 セット
 装填――雷撃の杭を展開。
 その矛先は全て、フランネルへと向けられている。その五体と翅を刺し貫くべく――七本、投射された。

「これもお返しします」

 そしてついでと言わんばかりに、雷の杭を一本突き刺してからファイアワームを腕力だけでフランネルへと投擲。
 上手くいくとは考えていないが――予想通りであれば……彼女を巻き込んで爆裂ぐらいはしてくれるだろうか。

>フランネル

8ヶ月前 No.1107

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【大統領官邸/シチュエーションルーム/フォルトゥナ・インテグラーレ】


「……そう、捉えるか。何とも御目出度いな、歴史是正機構など関係ない事すら理解していないとはな。」

闇を纏う拳、的確に胸部を狙い穿つその一撃はユーフォリアへ届くことはなかった。脅威の精度を以って放たれる拳を往なせば、手首を掴み勢いを殺した上で逸らす、資料の上では遠距離が得意と記されていたが近接戦闘が不得手ではない様だ。
だが黙って攻撃の隙を晒す彼女ではない、掴まれた右腕を軸にして身体を宙に浮かす。軽い跳躍の音、地と身体が垂直になった直後に魔力で一時的な足場を生成し蹴り出せば、ユーフォリアの背後へと移動する。
着地の隙も最小限に留めるも追撃の様子はない、少しばかり怪訝に思うも油断を晒す理由には程遠い。踏み込み一つで詰められるだけの距離を保ちながら後方へと跳ぶ、構えを解くことはなくユーフォリアの動きを警戒しながら相対する意味を吐く。

「貴様が、敵であるから。それ以外の理由がある訳がないだろう、それを為すために最も近かったのが此方側であっただけでしかない。」

そう語る彼女の表情は、憎悪と悲哀と僅かばかりの情を感じさせる嘲笑であった。その形はそんなことも分からないのかと語っていたが、同時にそうするしかなかった諦念が表れていた。その形は、また普段通りの不機嫌そうなそれへと戻っていった。
敵、そう示した彼女の心境は騒めく波のようでもあった。仕舞いこんでいた幼き思いが蘇るようで、それが決して届かぬものだと理解してしまった故の揺らぎ。戻りたくとも戻れない、その術は父が奪っていったから。そう、言い聞かせる。
だから敵として、姉であった存在を討つ。憧憬を奪った存在と同じになる前に、殺さねば止まらないならば手を下さねばならない。それが自身のやるべきことだと、目的だと定義する。必要なのはそれだけでいい、それ以外は必要ないから。
そう決めた彼女をまた揺らがせる言葉がダグラスから飛来する、インテグラーレを貶めた腐敗の一つだとそう名乗っていた。まるでそれは、彼女が望んでいたが知ろうとも根拠がなく終わった夢のようで、妄言と断ずるには捨てきれぬ想い。
謂われなき罪を被せた、そう嘯く。有り得ない、どれだけ調べようとも彼女では至らなかった、全ては父が起こしたことだと物語っていたのだ、周囲も、叔父も、世間も。だから、この男は貶めようとしているのだと彼女は思う事しか出来ない。
それを真実とするには余りにも都合が良すぎて、それを容易く飲み込めるほど彼女はもう幼くはない。信じたいほど願った結末であっても、仮にダグラスの言葉が全て本当だとしても、今の全てを覆しかねないそれを認めることはできないのだ。

「惑わすつもりならば真実味のある妄言を吐くんだな、それを容易く信じるほど私は愚かではない。あれは、間違いなく自ら手を汚した、それが世間の言葉であり、覆しようのない事実であり、真実だ。」
「だから、その身勝手な贖罪は必要ない。その命、裏切りを悔やみ差し出すが良い。」

そう苦い顔で吐き捨てた、それが本当ならばどれだけよかったなど口から零せるはずもない。それが、今の彼女の根底であり、行動原理。生きる意味などとうに見失い、見つけた光も置き去りにされ、そうでないと否定するための努力も別の方向へと向いた。
ならば彼女は戻れない、進む先がなくともそれを認めて戻れる場所などないのだから。総統を討ち、裏切り者を処断する。それが目的で、やるべきことで、意味だから。またそう定義する、定めなければ彼女の行く先は見えなくなるから。
背後から迫る雷手、死角を取りながらも読ませない軌道を取る万全の技。身体強化も施されたそれは彼女が対象でなければ必殺足り得るものであった、そう彼女が対象でなければ。死角からの一撃、それをさも当然のように反応する。
心理状態など欠片も動きに見せぬそれは、迫る右腕を強化しただけの左腕で逸らした。接近戦における僅かな隙は致命傷へと至る、それを体現するかのように彼女は首からドックタグを外し、媒体として魔法を発動させる。
蠢く闇の魔力、黒より暗い漆黒から這い出るは魔手。対象へと絡みつき魔力を吸収し、魔力を得れば得るほど剛腕へと化していくそれ。拘束手段としては上等な部類に入るが目的はそれではない、これは只の目眩ましでしかない。
狙いは回避行動の隙、優先目標は総統に変わりないが確実に戦力を減らすのは定石。そう、それ以上揺らがす言葉を聞きたくないなどの私情はないのだ。ただ、総統を討つために邪魔であるから先に排除するだけ。
回避の先を狙う突きを放つ、狙いは心の臓一択。確実に一撃で仕留める為にさらに身体強化を引き上げ、踏み込み拳を放つ。そうすればいいだけだったのだ、だが聞こえてきた声に嫌が応にでも反応してしまったのだ。
お姉ちゃんと言う言葉ではない、勿論妹などいないし心当たりなどない。もしや居たのかもしれないと言う考えが平常時なら浮かんでいただろう衝撃的な言葉ではあったが、彼女の動きを止めたのはその声ではない、兄と呼ばれた方の声であった。
独特の渾名で総統と少女を呼び、裏切りとも面識がある様子の男。そして彼女を見て驚愕の表情を浮かべ、フィルと、確かにそう呼んだ男。待ち望んでいた声であった、消え失せた光を待ち焦がれていた、だが間違ってもこの場で聞きたい声ではなかったのだ。
彼女はこれまでの表情とは打って変わって、目を見開き有り得ないものを見るような表情で新たに現れた存在へと視線を向けた。嘗ての記憶の中より成長したその姿、だが面影が、呼び名が、間違いなくその人物であると物語っていたのだ。

「―――ヴァイス……ハイト?」

その声に先程までの冷酷さは存在していなかった、ただ僅かな親しみを残したままその名を呼んだだけであった。戦闘中であるのに、その身体は止まっていて、視線もそのヴァイスハイトと呼んだ男へと向いていた。
捨てられたとは思っていた、それでも全てを捨てきれはしなかった。ヴァイスハイトだけが彼女の言う事を信じてくれた、周囲とは違う陽だまりだった。思えば、父を信じることが出来なくなったのは居なくなってからだと思うほどに。
確かに待ち望んでいた、何時かは戻ってくると、また唯一の拠り所になってくれると、たった一人の理解者でいてくれると、そう思っていた。だが、この場に居ることが何よりの答えであった。ヴァイスハイトは歴史是正機構に、存在していない。
詰まる所、彼女から見れば消えた後に総統へと接触していた事であり、父と同じ道を歩んでいながら味方していると言う事に他ならないのだ。そう、何時かは戻ってくれると信じていた存在は、理解していながら其方側にいる。
結局、同じであったと彼女は理解した。ヴァイスハイトも、理解した振りをしていながら結局はそうだったのだと。だから総統と肩を並べている、突然居なくなった理由もこれではっきりした。全部、そういう事であったのだ。だから、銃を抜いている。
渇望していたからこそ、それが唯一であったからこそ、裏切られればそこに寄せられていた想いは全て反転してしまう。この瞬間まで、何時かは、また何時かはと信じてはいたのだ。そんな僅かな希望も、その当人に潰された。

「……そう、か。そういうことか、やはり貴様も結局は同じか。」

微かに震えた声、枯れた瞳に潤いは満たされない。流す涙は流れる先を失い枯れ果てた、悲しみは多大な信頼が反転し憎悪に全て塗り潰された。再定義する間もなく、溢れ出した感情は標的を違える。裏切り者よりも、総統よりも、優先してしまった。

「―――心底、安心したよ。」

その言葉に何が込められているかなど彼女は語らない、語る必要などない。僅かに見えた泣き笑いの様な微笑み、すぐにいつもの不機嫌なそれに塗り替えられたそれで理解できるだろう。許されない事をしたことだけは。
さらに身体強化を引き上げる、既に通常の人間と比べるまでもない能力を得たその身体での踏み込みは正に音を超えるほど。狙いはヴァイスハイト以外にない、近くにいる少女を巻き込むことなど思考から抜け落ちるほどに感情が暴走している。
固く握られた拳が定めるはその顔面、行動を阻害するだとか、一撃で仕留める為だとか、そう言った余分な考え全てを削ぎ落した感情に任せた一撃。只憎いから、裏切られたから、悲しいから、直情的なそれを表す様に放たれる直線的なそれ。
音を超える速度で眼前へと現れ、感情全てを込めた只のストレート。それが今まで冷酷に、機械的に判断してきた彼女が見せた人間らしさであり、あの時から一切見せる事のなかった理屈のない行動。ただ、そうしたかったからそうしたのだ。
周囲全てが彼女を汚職議員インテグラーレの娘と見る中、ただフォルトゥナ・インテグラーレと扱ってくれた存在。父の無罪を信じていながら周囲に否定されても、ただ一緒に信じていてくれた拠り所。それがいま、崩れ去った。
だから、どうしようもない気持ちをぶつけたかった。そう、彼女は割り切ったつもりでも割り切れてなどいないのだ。人間愛しく思うものを捨て去ることなど出来ない、それが容易く出来るのは何処か壊れている人間だ、彼女はまだ、壊れてはいない。
今この時だけは、ただ感情に身を任せたかった。それだけ待ち焦がれていて、希望であったのだ。何も証拠が見つからぬそれよりも、ずっと望みがあったそれを捨てられなかった。故に、こうなってしまった。
結局、彼女は捨てたと思い込んでおきながら何も捨てきれていない。捨てた気になって、そうなろうとして、あらゆる無理を通してきただけの事。確かに彼女は強い、でもその強さは無欠なものではまだないのだ。

そう、何も捨てきれていない。どれだけ身体的な苦痛は耐えられようとも、精神的なものを耐える術を知らない。鍛錬を如何に厳しくしようとも、それが情を捨て去る事には繋がらない。だから彼女が最初に手を汚すのが姉であったはずなのだ。
そうすれば彼女はあらゆる全てを捨てられてしまう、丞相が目論んだ通り優秀な処刑人になるだろう。そうでない今は、ただ戦闘能力がずば抜けている人間の一人でしかない。思考を持った、人間の一人なのだ。

>>ヴァイスハイト・インテグラーレ ユーフォリア・インテグラーレ ダグラス・マクファーデン アルカディア・クアドリフォリオ

8ヶ月前 No.1108

世間知らず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/クラリス・ツァクトユーリ】

「いや、別にパパとママはどうでもいいんだけど……まぁ、あんたと話せなくなるのは嫌かな……気を付ける」

両親はいない方が清々すると思っていたので、別に悲しもうがどうでもいいとしかいえないのだが、こうしてフリードと他愛もない話が出来なくなるのは確かに最悪だ。
目を付けられたとしても組織を抜け出してしまえばいいだけな気がしなくもないが、一応彼の提言通り、発言には注意した方がいいだろう。今は敵しかいないので構わないのだが。
しかし、それよりも気になったのはフリードの発言だった。彼は唐突に現れた目の前の馬の少女を見て、魔族を一括りに批判するような発言をした。
世界政府の方針により、人間と比べて冷遇を受けている魔族達ではあるが、クラリスは両者にそれほど大きな違いはなく、むしろよく似た存在であると考えている。だからこそ、フリードの"失言"を見過ごすことは出来なかった。

「あんたのそれ、嫌い!」

フリードの先制攻撃から始まった戦いの中で、クラリスはそう言い放つ。彼女は別段魔族を救おうだとか、そういう崇高な思想は持っている訳ではない。
それでも、魔族だから、と全てを一つに括って捉えるフリードの視点が好きになれなかったのだ。だから、注意の意味も込めて、クラリスは敢えてそれを言葉に出した。
これで彼の考え方が変わってくれればよい、という淡い期待を抱きながら。しかしながら、戦いはそんなことをしている余裕など、あまりない激しさとなりつつある。
水流の一撃は素晴らしい効果を発揮してくれたが、あまりにもうまく決まったこともあってか、敵の反撃が熾烈であった。まず、馬耳の少女は、開幕早々圧倒的な手数で攻め立ててくる。
魔力による身体強化によって反応速度が格段に上昇しているクラリスならば大丈夫だが、フリードがこの量の攻撃を受け切れるか心配だ。そこでクラリスは、これを回避ではなく、防御で凌ぐこととする。
わざとフリードと重なるような位置に移動し、迫り来る攻撃を一つ一つ処理。結果として、ルシウスが放った21もの光線に彼女は曝されることとなったが、この程度ならば問題にはならない。

「それ、さっきウチらを轢き殺しかけたあんたが言うセリフ!? こっちもこっちで自分の世界に入ってるし……あーもうやってらんない!」

頭を抱えて首を振りながらも、クラリスはこれも仕事だ、仕方ないと自分を奮起させ、反撃を開始する。魔力を流し込むことによって強化された彼女の肉体は、想像を超えるパワーとスピードを発揮する。
一瞬でコーマの目の前に現れたかと思うと、次の瞬間にはその顔面目掛けて回し蹴りが放たれていた。相手は女性だが、さすがに同性ということもあってか容赦がない。
続いてルシウスにも高速で接近し、背後から拳による三連打を見舞う。いずれもが数秒の間に起こった出来事であり、初動を見てから対処するのは困難を極めるだろう。
唯一弱点を挙げるとするならば、攻撃時にはしっかりと打撃へ体重を乗せるために動きを止めなければならないということだが、こんなふざけた連中にそれを見抜かれてはたまったものではない。

>コーマ・アンダルーシャ、フリードリヒ・ガーデルマン、ルシウス・アルトリウス

8ヶ月前 No.1109

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【歴史是正機構/監視室/ランサー】

 黒騎士は鎧の音を立てて飛び退けた。
 後ろには、跳ぶのに踏み台にしたモニターがあるにも関わらず。
 そして放たれるは風の刃、あの薄気味悪いヤロウを思い出すとランサーは内心毒ついた。
 あの少女は今頃どうしているのだろうか、英雄を見てみたいが為に育てられた少女は、怪物に成り果てたら黄色いローブを見逃した自責と少女が罪を犯さぬよう殺してやると言い放った少女は人の形をしているのだろうか。
 そんな過去が甦ったと同時に突きから薙ぎの体勢に代わり、体が止まった勢いで埃を大量に舞わせながらも風の刃を弾き返す。
 どうやら今度の敵は、細工は施さない判断した。
 そして次の瞬間、黒騎士は自分と同じように飛躍した。
 こいつは一本取られたと、ランサーの表情は柔和になったが刃の雨嵐が降り注ぎ顔を強ばらせて、槍で刃を次々と弾き返していく。
 途中裁ききれなかった刃がランサーの体を削り取っていくが本人はお構い無し、急所さえ当たらなければこの体は戦場を駆けれるのだから。
 槍を回しつつ、赤と石と青を飛び散らす様子は荒々しく気迫に満ちていた。
 すべての刃を弾き飛ばすと、前回の戦いで負った怪我もあってか、おびただしい程の傷を負ったランサーが立っていた。
 だが、このぐらいはと荒くなった息を整えて、相手を見据えると口角は強気に上がる。
「つまり、強ければそれでいいって事か? いいねえ、分かりやすい」
 勝ち負けしか興味はない、10の力に対して100の力で押し潰す。
 黒騎士の戦いの価値観に対して軽口を叩くランサー。
「はっ、オレはただの試し切りかよ」
 技量はあれで見抜いているだろう相手は試し切りと言ってきたので、不遜な黒騎士に対して言うと、どくどくと赤い血を流しながらもひゅんっと魔槍を振り下ろす。
 騎士なりの褒め方なのか貶し方なのかはよく分からないが、聞く必要はない今はただ目の前にある戦闘を味わうのみ。
 相手も分かりやすいとランサーは言ったが、戦場になると水を得た魚のように生き生きするランサーも分かりやすかった。
 さて、どう出るか。
 赤い眼を細め、魔獣騎士を睨む。
 拳に力を入れて強く握りしめると、槍を短く持ち、風切り音と共に駆けた。
 そして、槍の間合いに入ると騎士の頭上を振り下ろさんと振りかざす。
 だがこれは囮の斬撃。
 ランサーの狙いは二撃目、相手は受け止めた瞬間、矛を剣身から離して体を退けると同時に長く持ちかえて、胴を薙ごうと考えたのだ。
>シャプール

8ヶ月前 No.1110

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【時空防衛連盟本部/食堂/桐生戦兎(仮面ライダービルド)】

「!」
敵が注意をひきつけたのち、攻撃を仕掛けてきたがとっさにドリルクラッシャーを取り出し、切り払うことで対処できた。
思ったとおりだ。ある程度は対応できる。
しかし問題があった。

(味方の気配が……!!)
その一つは『味方の気配が消えた』と言う事。
感覚が強化されているとはいえ、目視以外での位置関係の把握がしづらくなっているというのは変わらない。

「……」
したがって敵が見えない状況下での攻撃方法は、ドリルクラッシャーのガンモードで敵が居そうな位置を撃つのがもっとも確実だった。
幸いにも感覚強化で位置はある程度は割り出せている。ただ当たる保証は全くなく、外れる可能性も十分にある。
だが撃つ。おそらくはこれが確実だ。
戦兎は雪葉がいそうな位置を狙ってガンモードで射撃を試みた。

>雪葉および周辺all

【遅れました……】

8ヶ月前 No.1111

ヴィクトーリア・ダールグリュン @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『歴史是正機構本部/牢屋/ヴィクトーリア・ダールグリュン』

時空防衛連盟と歴史是正機構との全面戦争が始まり、
斧槍型のデバイスを右手に姫騎士を思わせるバリアジャケットを身に纏うヴィクトーリアも遅れて敵地に到達した。
すでにあちこちで戦闘が行われており、ヴィクトーリアは遅れたとはいえ恐れずに敵の本部に突入する。
名の知らぬ兵士達が敵であるヴィクトーリアを討とうと向かって来たが、
大きな戦いを乗り越えたヴィクトーリアにとって兵士達だけでは全く相手にならず簡単に倒されていった。
しかし、その兵士達は誰一人死亡してはおらず気絶や痺れで動けなくなっている。
やがてヴィクトーリアは牢屋のある区画にたどり着くが、そこで驚きの光景が視界に入る。

「なんて酷いことを・・・」

ヴィクトーリアの目に入ったのは牢屋の中には大人だけでなく子供の姿もあった。
中にいる人達には食事をマトモに与えられていない者や存在な扱いを受けていた様で、ひどく痩せ細った者や眼が虚ろの者がいた。
そんな彼らがヴィクトーリアの雰囲気や身なりからすぐ察したのか彼女に助けを求める。
それに対し彼女は「安心して今みんなを解放するわ」と一声かけ、ヴィクトーリアは彼らをなんとかして牢屋から助け出そうとした。

>>ALL

8ヶ月前 No.1112

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【時空防衛連盟/武器庫→移動中/ザーシャ】


人の想いってのは口にしなけりゃ伝わらねえ、例えるならばガキが俺を斬れなかった理由と俺がガキが斬れないと思った理由は恐らく違うだろうよ。俺は怪物だと認識したから斬れねえもんだと思ってた、でもガキは違うだろうよ。
どれだけ悩もうとも、考えようとも、俺の考えは伝えなきゃガキに理解できねえしその逆もまた然りだ。だがなあ、全部が理解できていなきゃいけねえ訳じゃねえんだよ、どんな形であっても俺がガキをどうにかしてやりたいって気持ちが伝わった。だから、青白いそれは通り抜けるだけだったんだ。
直前に叫んだ明確な拒否は、俺を躊躇いなく斬ろうとしたものだったさ。だが、そうはならなかった。それでいい、ガキは斬れないだけの理由を俺に見つけたんだ。それは拒絶じゃあねえ、どうでも良くなくなっちまったんだろうなあ。
自分の世界に居るのは自分だけ、間違っちゃあいねえ。何処まで行っても人間は交わらねえ、理解できるものを見つけてそこで妥協して分かる気になってるだけだ。相互理解なんざ妥協点の擦り合わせ、自分の世界と相手の世界の双方を傷付けないための不干渉だ。
そして、同時に人間は孤独に耐えられねえものだ。変化がなければそれは緩やかな死だ、常に同じものを繰り返し続ければそれは感情の伴わねえ作業になる。だから、不安定な他人と接して変化を得る。他者から影響されて、自分も変わるもんだ。
俺の見えた範囲じゃあガキは変化が怖いんだろうよ、只の交流に過ぎねえことを壊すと形容することが何よりもの証拠だと思うけどな。始まりがないから、そうガキは言った。それは自分を定義できるものがないから、変化は全てを変えてしまうものだと勘違いしてるんじゃねえのか。
それが俺から見たガキだ、どんな出生抱えてんのかは聞いてねえから分からねえ。全てが正しい考えなんざ言うつもりはねえ、それでもこれだけは言えるんだよ。ガキはガキに変わりねえ、周りに何があってもお前はお前だってな。

「大丈夫だ、手前は決められるさ。焦る必要なんかねえ、手前には手前だけのものを持ってんだからなあ。」

微笑みってのはどうにも慣れねえが、きっと今のガキに必要なのは隣に居て一緒に考えてやれる奴だ。何時かは自分で見つける必要があるが、まあそれまでは俺が考えてやるさ、なら隣にいる奴が笑ってた方が嬉しいだろうからなあ。
手から零れた刀、ガキが持つには物騒すぎるそれも微かに輝く粒子となって消えていった。限界、みたいだな。少しばかり手酷くやり過ぎたかもしれねえが、こればっかりは人を殺した罰だと思って貰わねえとな。人の命は軽くはねえ、背負うには辛いかもしれねえなあ。
だけどよ、隣にいる間は一緒に背負ってやるし思うところがあるなら手伝ってやる。俺に出来る事なんざ高が知れてはいるが一人で背負うよりはましなはずだろうよ、だから安心して今は眠ればいいんだ。
伸ばされた手はしっかりと俺の左手を掴んでいた、床にぶつかる前に手を引いてそのまま抱きかかえる。膝裏に右腕を回して、左腕で首が落ちねえように支えながら抱える。こんなに軽いガキが、あんだけ重く悩んでたんだ。

「見つけるまで守ってやる、死なせはしねえ。期待しなくても良いが驚いて腰を抜かすんじゃねえぞ、俺はやると言ったらやってやるからな。」

出来る限り血の付着していない部位で左手の血を拭き取ってからガキの頭を撫でる、聞こえちゃあいないだろうが意外と意識外の言葉でも安心するらしいしな。勿論、言葉だけにする気なんざない。普通のガキらしく、せめて同年代の友達でも出来るまではちゃんと傍にいるさ。
だから、すこしだけすまねえ。そっと頭に手を置いてガキの名前と、ガキに命令を出した奴を記憶から読み取る。それ以外は触んねえ、流石にあれのように無遠慮に覗いたりなんざしねえ。ただ、このガキがこうだと知っていながら使った奴がいるからな。
そいつだけは許せねえ、ガキに色々と教えたことは間違いねえ。自分が何かも知らねえガキを、都合の良い様に殺しに使うなんざ誰かが許しても俺は許さねえ。戦士としてじゃあねえ、ただ俺が許せねえからぶっ飛ばしに行くだけだ。
世間から見りゃああの人だって同じかもしれねえさ、だからこのガキに命令を出したやつも俺があの人に思うように思われてるかもしれねえ。だがそれが何だってんだ、正義なんざ掲げるつもりはねえ、ガキの為なんて言い逃れも必要ない。
俺が、気に入らねえ。理由はそれだけだ、ガキにやった所業が許せねえからぶっ飛ばす。それがガキの親の様な存在だったならば悪い気はする、それでもやることは変わりねえ。全部、俺の勝手でやることだ。

「―――アリア、か。いい名前じゃねえか、目ぇ覚めたらちゃんと自己紹介しねえとな……ま、先に知ってんのは公平じゃねえけど勝者の特権って奴だ。」

部屋の外が騒がしくなってきた、まあ派手に戦闘やってた上にここに来た奴ら全員が音信不通じゃあ何れこうなるだろうよ。ガキの怪我も決して浅くねえ、怪我を負わせた張本人が言うんだから間違いねえ。ガキを抱えながら部屋を出ようとする。
その前に、この部屋で死んだ奴らに心の中で悪いが謝る。手を合わせる風習もある見てえだが、俺の手は生きてる奴だけで精一杯だ。きっと無念だっただろう、家族もいただろう、本来なら味方として仇を取るべきなんだろうよ。
でも、俺はガキの近くにいることを決めた。だから心の底から悪いと思うが、贖罪はもう少し待ってやって欲しい。それまで恨み辛みが耐えきれねえなら俺を幾らでも呪え、ガキを生かしたのは俺だからな、好きなだけ呪え。
ガキがやったことを理解できた時は、ちゃんと謝りに来るだろう。それで気が済まねえかもしれねえが許してやって欲しい、どうしても気が済まねえなら俺をずっと怨め、ガキが背負えねえなら俺が背負うと決めたからな。
ここの職員が集まり出した、施設の内部でのことだから敵襲だったら大騒ぎだろうよ。現に俺に武器を向けている奴もいる、まあどう見たって死に体でぴんぴんしててガキ抱えてりゃあそう見られるだろうさ。だから俺が言うのは一つだけだ。

―――侵入者は逃がしちまった、ガキが巻き込まれたから治療を頼む。俺はそいつを追いかける。

俺に治療手段がないわけじゃあねえ、だがあれは無理矢理細胞を結合させて再生させるもんだ。気絶するほど弱っている奴にやるのは余りにも酷だろうよ、最悪痛みでショック死なんざ笑えねえ。だから、任せる。大丈夫だ、ちゃんと戻ってくる。
あれの知識によれば大分医療技術はあるみてえだ、だからガキを抱いて走っていった職員を見る限り大丈夫だろう。目が覚めたらガキを縛るものは全部なくなっていた、そうすりゃあ憂いなく見つけられるだろうからなあ。
だからこそ、俺がガキに最初にしてやれることは今の状況からの離脱以外にねえ。良い様に使っていた奴から切り離して、ガキが自分で何をしたいか、何を決めたいかをしっかりと探さなきゃならねえからな。
俺にも治療をと言う職員もいるが、適当にあしらって駆け出す。ガキからの連絡がねえことを怪訝に思われたら面倒だ、連れ戻しに来られちゃあ意味がねえ。なら必要なのはその前にぶっ飛ばすことだけだ、それとなく人物像の見当はついたからなあ。
後は逃がさねえように追いかけるだけだ、それがガキに必要なら幾らでもやってやるとも。俺の怪我なんざ虫刺されみたいなもんだ、放って置きゃあ何時かは治る。だから今はただ駆ける、気に入らねえあいつをぶっ飛ばしにな。

精々楽しみに待ってやがれ、ストライフ・ロスチャイルドさんよぉ!

>>(アリア=イヴァンヒルト)


【お相手ありがとうございました!こちらこそ楽しくやらせて頂きました!】
【気絶したアリアを救護室へシュゥーッ!】

8ヶ月前 No.1113

シャプール @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【歴史是正機構本部/監視室/シャプール】


 舞う風刃が槍兵を切り裂く。手応えあり、シャプールの口元がつり上がる。
『ソニックエッジ』の風を伴う振り上げの斬撃は見かけ以上の広範囲を切り裂き、同時に自身をその風に乗せて移動させる攻守において万能の剣術だ。加えて実体を持たない刃とは、それだけでも一方的な鍔競り合いにおいて優位に達するだけのアドバンテージがある。
 こうした戦い方は、シャプールが好むというよりは、彼の世界の片手剣使いが好むヒット&アウェイ。つまりは機動戦だ。相手に狙いを絞らせず、優位な状況を保ったまま戦う―――シャプールとしての好みがどういうものであるかはさておいて、彼は豪語するだけの戦闘のカンがある。わざわざ近距離戦闘の土俵に“今”乗ってやるほど、ウィザードの片腕は凡愚ではない。
 相手の身のこなしはこと白兵戦においては随一だ。あれほどの早さ、槍を扱う人間としては全く覚えがない。自分の記憶の中にいる粗野な槍使いと合致する部分は多々あるが、あれとは戦いの経験、そして速度という意味で比較にもなりはしない。唯一そうではない部分があるとすれば………―――考えるが、仮定には意味がない。必要なものは、目の前の敵の把握だ。


「(それにしても………しぶとい。その上、魔力ならば弾けるのか?)」
「(手練れだな………此処のクズが勝てなかったのも頷ける)」

「その通りだとも。なにしろ………これは閣下のための力だ」
「凡才に使ってやるものではありません、そこのところは光栄に思っていただきたいですね」


 軽口の一つに応じながらも、シャプールは目に映る青き槍兵を再認識する。
 思った以上にダメージは入ったが、思った以上にしぶとい。
 荒々しい言動と構え、満ち満ちた気迫は戦士というより猛狗の如し、だ。
 長期戦の覚悟はしておいた方が良いだろう―――何よりも“試し切り”と彼方が口にしたように、シャプールからしてみれば、この世界の戦いなど自分の力量を図るためのものでしかない。
 獅子は兎を狩るにも全力というが、ジョーカーは取っておくのがシャプールの主義だ。それゆえに、コアである黒い長剣をわざと振ってみせ、生身の状態で戦って見せている。生半可な凡愚に騎士の力は勿体無いと、つまりそういうことだ。………そしてその上で、この相手は再三繰り返した通りお眼鏡にかなう相手だった。
 シャプールは傲岸で不遜な男だが、狩る相手の実力を過小評価するほど見境がないわけではない。

 そう、ただの試し斬り。
 これは戦士相手への敬意ではない。ランサーに見せる態度は、あくまで彼の“力”への評価だ。
 素晴らしいものを持っている―――という、彼本人の価値観に当て嵌めた上での賞賛だ。
 戦いの中で高揚する点に関しては、赤枝の騎士クー・フーリンと似通う点があるだろうが………彼の高揚とは似て、しかしある部分だけが致命的に異なっている。


 風切り音と共に槍兵が掛ける。
 間合いに入ると同時に振り下ろされる槍―――だが、軌道は単純。
 膂力と速度で頭一つ分以上の差がある相手だが、この剣でも存分に凌ぐことの出来る範囲。

 むしろこの零距離ならば………迫るのを見た瞬間、シャプールは構えを変えた。
『魔刃の構え』………対魔法耐性に回している自身のマナを攻撃用に転じさせる、本来は遠距離用の形態。しかし、突撃して来たランサーの腹を撃ち放つには十分な攻撃の一手だ。


「(バカが………!)」


 振り翳す槍。赤と黒が衝突し、蒼と翠がにらみ合う。
 鍔競り合いの状況ともなれば分は槍兵にある。
 だが………2秒と持てば十分だった。彼は片方の腕でマナを収束させ―――。


「………何―――!?」


 ―――る、前にランサーが動く。受け止めた瞬間、梯子を外された。
    傾けていた剣が空振り、詠唱と構えそのものがそこで中断される。

 迂闊。そう、迂闊だ。
 シャプールはすぐさまそれが虚の一撃であることを理解した。
 槍の特性とは突きと払い。剣よりはるか優れたリーチにある………それゆえに槍とは、クロスコンバットにならない程度の近距離から、突きと払いで相手を延々と牽制するだけでも圧倒的な強さを発揮するのだ。
 まして相手は一流の使い手。一発一発が稲妻の如く鋭く、鉄槌の如く重い。
 シャプールが白兵戦闘を嫌っていた最大の理由がこれだ、だからこそ―――。

「ちぃッ!」

 この状況で、どれだけシャプールが歴戦の兵士だろうが回避は難しい。
 すぐに剣を持ち替えて致命傷を防ごうとした彼の判断力は一流と呼ぶべきものなのだろうが、この状況では横薙ぎを入れに掛かったクー・フーリンの一工程の方が遥かに素早い。
 故に彼はその横腹を勢いよく切り裂かれ、同時にその直前で止めようとした剣もろとも吹き飛ばされる。

 ………モニターに激突。同時に火花が散る。
    近距離の間合いによる邂逅は、クー・フーリンに軍配が上がった。


>ランサー


【わけます】

8ヶ月前 No.1114

シャプール @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs


【歴史是正機構本部/監視室/シャプール】


 ―――だが。


「………クク………ッ」


 くぐもった笑みをこぼしながら立ち上がる彼の瞳は、笑っている。
 先程まで振っていた黒い長剣を、唐突に鞘へと納めながら、笑っている。
 当然、まだまだ戦闘は続行可能。
 そのはずであるが、しかし彼の態度は不審なものを感じさせるだろう。

 近距離戦闘では圧倒的に不利だと判明したにも関わらず。
 その上、彼の得意なもう一つの攻撃手段である魔法も、サーヴァント・ランサーが持つ対魔力の前には有効打となり得ない………その状況であるにも関わらず、彼はどうしようもないほど笑っている。
 劣勢への苛立ち、敗北の可能性。そんなものを微塵も考えていない。
 それは自信と名付けられるものだが、あまりにも、過剰なほど、シャプールはその感情を漲らせていた。

「よろしい、では私も本気でお相手しよう………」

 それは、そうだ。
 このシャプールという騎士は最初から自分の敗北………、正確には、自分の死を考えていない。
 此処を死に場所とする算段もない。なにより、それほどまでに彼は自分の力に絶対の自信がある。


「―――私の“騎士”の力でな!」


 哄笑と共に高揚。
 片方の腕に持った鞘を見せびらかし、そこに収めた剣の柄へと手を当てる。
 生身での戦いなど児戯に過ぎぬと言わんばかりの言動と共に、それは誕生の産声をあげていた。




「古の闇を支配する漆黒の翼ディニヴァスよ、我に力を………」


    、   漆黒のヒカリが彼を覆う。

    、   黒翼のはためく音がする。

    、   騎士の力がベールを脱ぐ。


  、  「  変 身 … … … !  」




 やがて。

 爆発のようなマナの奔流が収まると同時に現れたそれは、騎士だ。

 比較的大柄な青年だったシャプールだが。
 しかし、元が彼とは思えないほどその騎士は巨大だった。
 それは巨きく、強く、烈しさと威容を感じさせる姿を持っていた。
 ………漆黒の翼を翻す、シンナイトと呼ばれる騎士。シャプールが“変身”した姿だった。


 鳥類を彷彿とさせる頭部、巨大な鴉を思わせる黒翼。
 黒騎士と言うその名前に見合った漆黒の鎧と翼は、死界《ニヴルヘイム》からの使者を思わせる。
 手にした長剣は今までシャプールが振るっていた“アーク”である長剣と細かい形状は変わらないが、だからこそ大きさにして数メートルほどの騎士にとっての長剣なら、リーチの問題は軽々しく解決される。
 シャプールという男の自信の源は、この騎士の力だ。
 遥か昔に滅んだ彼の世界での古代文明、イシュレニア帝国が創り出した最強の戦闘兵器………巨大な鎧のかたちをした、人間の手で操ることが出来る脅威のちから。ヒトガタの暴威。

「貴方ほどの相手ならば、踏み台には丁度良い………。
 さあ、再開と行こう。最も―――」

 口調は変わらず自信と悦楽、高揚と歓喜に満ちている。
 相手を侮るような真似こそしないが、彼という男は自身の力に対して揺るがない確信を懐いている。
 だからこそ、負けはない。
 だからこそ、全ては踏み台なのだ。
 彼の主はこの世界にはいないのだから、此処には力を傲慢に振るい、求める魔人の姿しかないのだ。

 駆け出した騎士のサイズは今までとは比較にならぬ。
 が、それで居て小回りも効くのが彼の“黒騎士”だった。速度、膂力、これらは先程までのシャプールとは文字通りに桁が違う。此方こそ彼の本懐、この状態こそシャプールの力の真髄。


「私の騎士の力に、反応できるはずがない!」


 クー・フーリンを足場ごと切り裂かんと振り下ろす刃は暴風のような黒い風を伴い。
 続いて放たれる横薙ぎは、左右への逃げをその剣圧で容赦なく塞いでいた。
 今までのシャプールの剣術に、範囲と、速度と、破壊力の三本柱が完璧なほど補強されたのだ―――それは先程までのものとは比較にならぬ。黒騎士の長剣は下手を打てば、一撃で彼の霊核を穿ち、砕くだろう。


>ランサー

8ヶ月前 No.1115

『世界』を視る者 @x5mas☆sECYEVcUXiI ★iPhone=Sd1LJwcPBN

[時空防衛連盟本部/救護室/【リプレイサー】]

「――――――――ッツ!?」

頭を揺さ振る痛みが、意識を無理矢理に覚醒させた。眼を開けてみるが、焦点が合ってくれない。輪郭の無い光が部屋を照らしているらしいことだけだけは分かった。グラつく頭を叩き直し、重い身体を持ち上げる。手を握り締めてはみるが、まだ感覚は覚束ないらしい。

“あれ”から、どれくらいの時間が経ったのだろう。

目が醒めるのに遅れて、聴覚が戻ってきた。耳を澄ませなくても分かる程、馬鹿みたいに主張の激しい警報と爆音が鳴り響いていた。『頭痛のタネ』とはよく言ったものだ。ガンガン脳にも響き渡って、意識を深層まで掻き乱してくる。

「ああ……此処は、救護室……だったか。」

次に戻った嗅覚と視覚が、己の現在位置を定めてくれた。真白な天井、寝床に機材。消毒薬の匂いとやらも漂ってくるようだ。であれば、やはり此処は救護室に違いない。

そこまで認識して、やっと状況の理解に至った。古代からの帰参を直前に、やけに睡魔に襲われたことまでは覚えている。きっと自分は、そこからずっと眠っていたのだ。
いや……。『理解した』と言うには、少々欠落が大きいか。どうして突然に昏倒してしまったのか、自分が眠りこけている間、一体何が起きていたのか。どちらも全くもって見当がつかないが……『解らない何か』がキッカケにあるのだろう。或いは、『解らないキッカケ』とやらのせいで、もう一度意識が戻ったのだろう。
そしてその『キッカケ』は、勘が鈍っていないなら、恐らくはこの警報と爆音に関係している。ならばこそ、己の“不幸”を託つ暇はない。少しでも戦況やら何やら、情報を集め直しておかなくては。

「嗚呼、クソ……。意識が、どうも……。」

時間を経るに連れ、触覚も手元へと戻ってきた。だが、いざ立ち上がろうと踝に力を入れると、途端に意識へ霞が掛かる。まるで『まだ行くな』とでも言わんばかりに、腰を病床にへたらせてしまう。ここを襲撃されるのも、時間の問題だろうに――

――否。それは違う。

「うん……?なんだ、コレ……。」

脳裏にコトバが響いてきた。まるで、『まだ大丈夫だ』とでも言いたげに。何だ、コレは。とうとう耄碌してきたか。幻聴なのか、いや、これは――

――訓練施設に、エントランスに、放送室に、作戦会議室に、シチュエーションルームに、大型エレベーターに、食堂に、牢屋に、武器庫に、監視室に。

扉を見ても、敵影はおろか人の型すら見えはしない。近隣に語らう仲間がいるかと言えば、それも違う。だが、脳裏に浮かぶこの文字列は……?

徐々に薄れ行く意識は、やがて己の肢体を離れ、霞の彼方へ散って行く。せめて雲散はするまいと、瞼に力を込める――

――霞を超えた遥か先。声が聞こえる。姿が視える。この目が観るは、『彼ら』の織り成す物語。チェスか、或いは碁の目のように、盤面は瞬く間にその彩りを変える。
友を得た駒。理解者を得た駒。不解を騙った駒。理解を求めた駒。剣戟を求めた駒。激情に堕ちた駒。『世界』を拓いた駒。『世界』を閉じた駒。

盤面は一枚に非ず。差し手もまた、一人に非ず。
そして、今此処に目醒める駒は――

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

鈍い頭痛にまた、意識が浅層まで引き摺り上げられた。仰向けの身体に、見えるのは白天井。警報も幾分か落ち着いていたようだ。……どうやら暫く倒れ込んでしまったらしい。
幸い、感覚は普段と変わりない。視界は良好。脳裏を覆い尽くしていたモヤも、幾分かマシになっている。当面の行動に支障は無さそうだ。
ポーチを掴み取り、今度こそ確かに立ち上がる。立ち眩みも、動き出せない焦燥も、不思議ともう消えていた。

正直なところ……何が起きたのか、自分では分からない。脳裏に流れた映像と言葉、その意図するところは解らず終いだ。
けれど解らないながら、何となく理解できたことはあった。例えば、“この世界”の行く先だとか――

「うん? なんか増えてないか?」

新たに増えた、救護室の同居人のことだとか。部屋を見回してみてからやっと気が付いた。いつの間にか、集中治療を受けてる誰かさんが増えていたらしい。傷は深いと見える、恐らくは仲間か、或いは“別の誰か”にでも直接担がれて来たのだろう。道理で皆、慌しそうにしてるわけだ。
けれど、今の自分には特段関係のないこと。後れを取り戻さねば、颯爽と出口から出撃しよう――一度はそう思ったのだが。
扉に向かう足が、パタリと止まった。

「……まあ今は、俺の出来ることをすべき、だよな。」

自分の得物は手元にある。身体も無理なく動く。けど、今は――今はまだ『俺の出番』じゃあない。そうなんとなく、素朴に理解できていた。『出番』は“そう遠くない未来”に訪れるだろうことも。

ならば今出来ること、すべきことは何がある。振り返る目に飛び込んできたのは、消毒薬の詰まった棚に、治療を待つ人々の姿。まあつまり、そういうことなんだろう。

「良ければ俺も手伝う。備品の出し入れなら任せてくれ!」

手近な職員に声を掛けてみる。運良く声を掛けたのは闊達なヤツだったらしい。歓迎の意を二つ返事で表してから、ビンを此方に投げ渡してきた。指定する薬を詰めてくれ、との指示が飛ぶ。
これはまあ、しばらくは忙しいことになりそうだ。

>>(救護室、他ALL)

【最終章前の再配置、兼フラグ建築】

8ヶ月前 No.1116

慎重で臆病な上位種 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

【時空防衛連盟/作戦会議室/フランネル・サザンル】

「はは、何をやった所で――」

敵が黒い粒子を撒き散らした、それを見逃すフランネルではない、それは明らかに何らかの予備動作である事は明らかだ。
だが、糸に対して単純な攻撃で対応しようとしているのなら無駄なこと、彼女の行動を阻害するように糸が絡みつくほうが早いだろうし、何より強靭な糸は生半可な攻撃ぐらいならば千切れる事は無い。
もしも、強力な攻撃を放ってくるとしても、その時は先ほどのように繭を使った防御手段に出て、毒殺を前提とした持久戦に移るのみ。

しかし……相手の取った行動は、今まで隠していた手であり、同時に、フランネルにとっては想定外の物であったわけで。

相手が使ってくる手段は「引き寄せ」それも尋常じゃない力の物だ、下手なこういう能力は自身の人間よりはよほど高い身体能力で強引に無視する事が出来る、が、これに関してはそれが通用しない。
そして困るのは、これでは上手く糸を相手に巻きつけられないこと、これ自体に結構な能力があり、既に巻きついていた物は崩壊している事、さらには回避が阻害され、相手がこちらに必殺の一撃を叩き込む下地が整った事だ。

無理やりにでも糸を絡めようと動けば、もしかしたら追加の糸が相手に絡まるかもしれない、しかし上手く飛行できない状況でそれを行うのは、おそらく自分が自爆……いや自縛する危険性のほうが高い。
フランネルは今まで考えていた戦術を切り捨てて、糸を速やかに切り離す、ここに自分の糸の拘束も合わされば、本当に自分は捕らえられた獲物以下に成り下がる。

――ひっ。

イスマリアの冷え切った言葉に、フランネルはびくりと身体を跳ねさせる。
しかし、ここで退く訳には行かないし、退かせて貰えないだろう、ビビったら負けだ。

そんな自己暗示の後に、フランネルは辛うじて撃てる魔法で敵の生体電流を往なしつつ、相手の本命であろう七本の杭を視認した。

――ビビったら負けだが、口でも負けたくない。

一瞬の思考の後、完全に萎縮していた彼女が口を開く。

「小細工じゃなく慎重な準備だとか、搦め手と言って欲しいね。 それに、その小細工もちゃんとしたタイミングで投入すれば――それにキミの感じる未来なんてボクの知った事じゃない!!」

入念な準備、仕込み、そして初見殺し。 ……フランネルの自分ルールである。
自分は人間より優れているが、それでも魔族にも限界がある、だから人間を相手にする時にも準備を怠らない、それが出来ないから魔帝軍の、特に頭が足りてない奴は負けた。
追加で「未来なんて知ったことじゃない」と切り捨て、懐から前もって準備しておいたセキュリティビットの展開用コアを投擲。

基本これは纏め売りされてる物なので、出てくるセキュリティビットは十機、当然相手と自分の間に盾のような形で出てくるため……当然、壁になって爆散する。

が、当然ながら三機は残る。 レーザー攻撃の動作に入ったとき、イスマリアはファイアワームを突き刺して、そのままこちらに投擲してくる、大方、先ほどアースワームが見せたような爆発を狙った物だろう。
とは言え、消すにはそれなりの時間が掛かる、飛んでくるワームと言う爆弾を処理するのは難しい。

「クーリングオフなら物を受け取ったこっちは代金を返さないといけないね!?」

啖呵は切ったが、フランネルには有効な防御手段が無い、しかも、彼女は水の魔術を習得していないため、反対属性で打ち消すことも出来ない。
そのため、一番マシなのが、ただ回避すること、ただし現実的出来るのは……受けること。

アサルトライフルをワームに向けて浴びせる、その途端ファイアワームは膨張し、爆発する、当然ほぼ至近距離一歩手前で爆発したのだ、フランネルの負った怪我も凄まじい。

だが"生き残ったぞ"。 そんな確信と共に、三機のセキュリティビットから放たれるレーザー攻撃にあわせて、フランネルは詠唱を手短に済ませる。

――火法・火球連弾

これは彼女の先祖に当たる人物が書いていた自伝に「主人」として登場するデカブツの魔術を行ける所まで再現し、さらに高速詠唱用にアレンジした物。
元々の物と比べれば勿論、一般的な火炎魔術と比べても火力に劣るが、その分、数と……"着弾時の爆発"に重きを置いている。 相手の使う能力の原理が良く分からない以上、糸のように崩壊しようとも、崩壊直前で起爆させてダメージを与えるのが一番手堅いと考えた、最善の一手だった。

>イスマリア・ザルヴァトール

8ヶ月前 No.1117

受け継がれる凪の系譜 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/食堂/セリィ】

相手の飄々とした態度は、セリィに苛立ちを覚えさせるには十分過ぎるものであった。こうした行為にまるで悪意を感じていないのは、見た目相応の精神年齢だからなのか、それとも別の理由があるのか。
何にせよ、倒さなければならない存在であるということは、大いに理解出来た。この場に倒れている戦闘員は誰一人として殺していないというが、状況からして同じようなものだ。
こちらを煽り立てる、というよりは、人間を虫などと同程度と認識しているかのような物言いが心底腹立たしいが、セリィは湧き上がる怒りを深呼吸することで抑え込み、冷静さを保とうとする。
諏訪子にどこか、人ではないような雰囲気を感じ取りつつも、セリィはいよいよもって始まる攻撃に対して身構える。だが、それは彼女の想像を超える、苛烈なものであった。

「最悪のパターンが洒落になってないつうの……!」

威勢よく突っ込んでいったセリィの攻撃は、退屈そうに振るわれた鉄輪によって受け止められた。その時点で、セリィは敵の恐るべき実力の一端を垣間見る。
しかし、本領発揮はここから。諏訪子が足を踏み鳴らすと同時に、食堂の床から次々と水柱が吹き出してくる。狙いなどないようなものであったが、逆に予想が付かないことが脅威であった。
咄嗟の判断でセリィは身体を光の霧、もしくは雲のようなものに包み込んで空中を飛び回り始める。高速で動きながら、予想不能な攻撃を凌ぎ切るという作戦であろう。
常人の域を軽く逸脱した速度で動くことの出来るこの回避術だが、欠点がない訳ではない。それは、姿を変えている間に"茶々"を入れられると、ダメージが数倍になる、という点だ。
つまり、これを使う場合は敵の攻撃に絶対に当たらないことが前提となるのだが、諏訪子のような者を相手にして、それを果たすのはなかなか酷というものだ。
それでもセリィがこれを使ったのは、そうでもしないと避けようがなかったから。ようやく安全圏へと辿り着いた彼女は変身を解くが、直後に翡翠の弾丸が襲い掛かる。

「っ! エデンズデイブレークッ!」

着地直後の隙を狙われ、回避は不可能。小手調べとはいえ尋常ではない威力を誇る諏訪子の攻撃に対し、セリィは自身の持つ最強の防御魔法を発動することで抵抗する。
彼女を包み込んだ光の聖域は、まさしく無敵の名に相応しいもの。ありとあらゆる暴威がこの光の前では無意味と化し、砂上の蜃気楼の如く消え去っていく。
魔力を大量に消費するため、常時発動したままでいることは出来ないが、今回のような窮地を切り抜けるためには最高の技であるといえる。敵の攻撃も、一旦は止んだ。今度は、こちらの番。

「好き勝手に暴れてくれるわね……少しは弁えて欲しいものだわ」

右手に握られた剣に、月の光が宿る。神聖なる輝きに満ちたそれは、見る者を圧倒すること間違いなしだが、本物の神である諏訪子にとっては有象無象でしかないかも知れない。
真正面から斬り掛かって失敗した一撃目の反省を活かし、今度は姿を消して一瞬の内の背後へ移動してから、一気に敵の懐へと飛び込んで斬撃を放つ。
一度目の斬撃の後、地面を滑りながら方向転換し、再び相手の背後方向へと駆け抜けながらもう一撃。ここまでは、一発の威力よりも手数を重視したスタイルで攻め立てるセリィ。これも通用しないとなれば、また少し違った手を考えねばならないだろう。

>洩矢諏訪子

8ヶ月前 No.1118

イスマリア @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4


【 時空防衛連盟/作戦会議室/イスマリア・ザルヴァトール 】

 イスマリア・ザルヴァトールの特質――もとい異常性。
 それはただでさえ異常性の塊である異能<デュナミス>、人間の延長線とされるその力。
 全く系統も方向性も違う二種の武装、それを一つの肉体に同居させていることにある。
 だが、彼女は何も疑問に思うことがない。
 当たり前だろう。
 魚が川を泳ぐが如く、人が地に足を付けて歩くがごとく、鳥が大空を飛ぶが如く――イスマリアにとっては当然のことなのだから。
 未来を目指すという唯一つの妄念に賭けて、彼女は他の誰の追随も許さない。完璧な怪物として出来上がっている。

 黒い瘴気が部屋の大地を満たす。波打つ黒が蝕むは世界。
 耐えられず引きはがされた棚やテーブルまでもが自ら首を差し出すが如くイスマリアに殺到し、しかし増幅された雷撃を受け消滅していく。
 「引力」操作の異能、――自身を一つの星であると規定し、他の物体全てを物理法則でとらえて引き寄せる力。
 網にかかった者は大抵が逃れることを許されない。罪人は己の罪を悔い、その果てに頭を垂れるのだ……彼女という名のギロチン台へ。

「納得してもらおうとは思っていません」

 冷え切った声――いいや、他者の機微に敏感なフランネルだからこそ察してしまうものはあるだろうか。
 スピーカーから発されている音声が如く、イスマリアの声には全くの色がない。
 もはや人間が話しているのではない。機械が、インプットされた声をそのまま発しているかのよう。

「世界は求めています、叫んでいます、泣き喚いています。
 よりよい未来を。よき未来を。世界にとって優れた未来を」

 イスマリアにはエゴはない。
 いいや、あったのだろうが……それはもはや、エゴという名の怪物染みた精神性と成り果てた。
 未来のための殉教者――電撃を纏い、処刑台へ引きずり込む異能<チカラ>を振るう処刑人とはこのことか。

 完全に委縮しきったフランネル。
 硬直、――息を止めた彼女であろうともお構いなしに処刑刀は歩みを進める。
 だが覚悟を決めた。
 何時だって人間のそういう姿は美しい、と己の主は言うだろうか。
 構わない。

 七本の処刑杭は全て展開されたビットを刺し貫き、爆散する。
 ファイアワームにしても――成る程、仕留め損ねるか。
 飛ぶ手榴弾である以上は直撃しなければ問題無いという点を突いてきた。
 すぐさま、フランネルは詠唱を重ね火球を放つ。ビットの支援もあり――盤石、そう、盤石だ。
 包囲からの集中砲火による殲滅。
 ああそうさ。そのまま立っていれば灰も残るまい。

「評価はします。が――」

 生体電流増幅。黒光、稲妻の波が全身を覆う。肌が焼け肉を焦がされる痛みを覆うとも止まることはない。
 そして引力の異能の干渉を受けた太刀を構え……突貫。視線は一度もフランネルから外すことはなかった。
 防御も回避も必要はない。
 必要なものは――未来を信じるこの心のみ。

「――甘い」

 爆せた。いいや、弾けたという方が正しいか。
 一瞬にしてイスマリアが地より飛び、切断力のみで火球を切り裂き爆発に揉みこまれながらフランネルへと接近を果たしたのだ。
 焼け焦げた服。重度の火傷が見られる肉体。にもかかわらずまるで変わらない表情は、"生き残るくらいなんのことはない"と物語っていた。

 一閃、――イスマリアの太刀が右斜め上に斬り上げられる。
 だがただの斬閃ならばどんなに良かったことか。今行われたこの刃は、"敵対者を引力で刃の方へ引き寄せる"オマケ付きなのだから。

>フランネル

8ヶ月前 No.1119

未来のウィザード @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/フリードリヒ・ガーデルマン】

「ど、どうでも良いって……そこまで言わなくても。……え? そ、そうか……。うん、まあ気を付けてくれるなら何でも良いけど……」

予想外の反応だった。両親を嫌っているのだから、その話を持ち出されたならばさぞ不機嫌になるのかと思ったフリードリヒだったが、むしろさっぱり興味が無さそうな態度を受けて驚かざるを得ない。それよりも自分と話す事が出来なくなるのが嫌だ――と言った反応も予想外だったが、深くは考えずに受け止める。

「うぇ!? い、いや、これはその……ごめん。気を付ける……」

力強く嫌いと言われたのが余程ショックだったのか、演技も忘れすっとんきょうな声を挙げて狼狽する。気を付ける――とは言うものの、彼にそれが出来る自信は無かった。
そも、クラリスとフリードリヒとでは精神構造がまるで違う。彼女は人を見る目があり、全を見る視野がある。フリードリヒは違う。彼は良くも悪くも一般人の目線にしかいない。魔族は人類とは似て非なる隣人で、人間社会においては"異物"と考えている人間は数多い。フリードリヒも、その多数の内の一人だ。無理解が生む偏見――誰しもが少なからず持つそれを、彼もまた魔族への敵愾心として懐いている。それを理由無く完全に取り払うのは、困難だ。

思考を切り替え、敵を見る。先程の鉄砲水は効果覿面だった様だ。だが然程相手の戦力を殺いだ訳では無い。むしろ相手の闘争心に火を付けただけらしく、怒濤の反撃が放たれる。

「数は多い……が。この程度の魔法、私に通じると思うな! 『ライトシールド』!」

自身へ向けられた十数の光線と、特に対象を取らずに繰り出されたおおよそ五十に近い炎弾。彼はそれを魔術師(ウィザード)らしく、努めて冷静に対処する。ぱらぱらとページを捲り、一節の詠唱と共に右手を前方へ伸ばす。手元から光の粒子が生まれ、それが薄い壁の様に広がって一枚の盾になる。
半透明のそれに、炎弾と光線が激突して小さな孔を空ける――が、即座に光の粒子が補充されて孔は修復される。それを何度となく繰り返す。結果的に、幾つもの攻撃の内の一つですら、フリードリヒの元へは届かなかった。
この光の盾は然したる耐久力も無い下級魔法だ。だがローコストで展開と即時修復が可能であり――つまり数だけは多い攻撃への防御としては上等な部類だろう。
この場におけるフリードリヒの強みは手に持つ魔導書だ。各ページに描かれた術式に魔力を通すだけで即座に魔法が発動出来る様になっている。内容さえ把握していれば有効な攻撃も適度な防御も意のままに行える。
……交戦の最中に少年が叫んだ言葉が、いやにフリードリヒの耳についた。

――悪事を働く、か。やっぱりそう見られているんだな、僕達は。

「……いいや、今は考えるな……! クラリス、援護する! 『アーススピア』!」

悪い思考を振り切ろうと頭を揺すり、目の前の戦況に集中する。
クラリスは自己強化を乗せて目にも止まらぬスピードで間合いを詰め、得意の接近戦に持ち込んだ様だ。近接は彼女の領域、あの二人ではまともに取り合う事も出来ないだろう。
だがしかし、隙が無いかと言われればそうでもない。クラリスは華奢な体格故に一撃がどうしても軽くなる。それを補う為に、打撃の瞬間には動きを止めて体重を乗せる癖がある。そのラグは達人であれば間違いなく見抜くだろうし、注意深く観察していればそれなりの戦闘者なら感覚的に理解出来るだろう。
……だから、観察する暇を与えないのがフリードリヒの仕事だ。ぱらぱらとページを捲り、書に手を翳す。書が淡く発光したと思えば、途端にフリードリヒの足元から敵対者二人に向かう様に無数の岩の槍が湧き出した。クラリスを見れば此方への対処が鈍くなり、かと言って此方を見ればクラリスの隙を見抜けない。
フリードリヒの動きは正しくクラリスの為に洗練されたものだ。卓越した戦闘のセンスがあるならば話は別だが、少なくとも彼らの様な相手ならばこの連携は崩されない――そう、フリードリヒは読んでいた。

>>クラリス、コーマ、ルシウス

8ヶ月前 No.1120

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【大統領官邸/正門/ストラーヴ】


短く持った剣槍を構え一直線へ隊長へと突き進む、黄金色へと変質しつつある紫電を引き連れたそれは阻む土壁を容易く貫いた。それでも尚勢いが衰えることなく、土の破片が舞う中をただ怯むことなく進み続ける。
痛みを堪える為に歯を食いしばり、血塗れの身体に鞭打ちながらも失速する気配はない。これが彼女の愛だから、愛してくれた存在を守り通す為ならば全てを投げ打てる愛。それを彼女が気付いていなくとも、今彼女を動かしているのは愛に相違ない。
隊長を刺し貫くことに抵抗が無い訳ではない、それなりに交流はしていたし気にかけていたことも忘れてはいないのだ。それでも、彼女にとって今この瞬間優先すべきはエステルであったのだ。だから、その為に、その命を奪う事すらも考えていた。
握る柄に伝わる感触は肉を貫いた確かなそれであった、先端が僅かに肉へと埋もれただけであったがそれで充分であった。後はそれを押し込めば終わりなのだ、隊長を討って、エステルにご褒美を貰って、また愛して貰えればそれでいいのだ。
結局、隊長も大層な事を言っただけであって愛など教えてはくれなかった。ただ土壁で防いだだけで、それも防御にすらならなかった。だからエステルが愛してくれたことは間違いではなかったのだ、そう思い、剣槍に力を籠める。
―――ふわりと、何かに包まれた。

「……隊長?」

そう問うた相手は口元から血を流し、胴に剣槍の刺突を受けても尚ただ抱き寄せた。優しく語り掛け、腕に優しくも力強い温かみを感じた。ふと、口に出たのは純粋な疑問であった。何故、そんなことをしたのかが分からないと言う意味のそれを呼び名で表す。
無理をしなくていいと、死んだら愛を感じることはできないと、それは悲しい事だと、そう告げた。ただ、そう告げただけであった。理解が出来なかった、愛を教えろとは確かに言った、それが敵対している自身の攻撃を受け、致命傷を受ける事なのか。
疑問が生じた困惑は、ただ不明の拒絶へと変化する。彼女は隊長に敵対して、エステルを傷付けられそうだから、お願いされたから攻撃をしている。それを何だ、受け止めて抱き寄せて無理をするな?訳が分からない、そんなものが愛なのか?
それが美しい愛だと言うのなら、それが正しい愛だと言うのならば、それに殉じて死ねばいい。彼女の知る愛はもっと直接温かみと熱をくれた、エステルが与えてくれたそれは悦楽と充実をくれた、なのに隊長のそれは今の彼女には感じない。
だから、追い返すだけでいいとエステルは言ったが殺さねばならないとそう思った。あれだけエステルとの愛を馬鹿にして、挙句に教えるのがこの程度であった。ただ惑わすだけで、エステルの愛を疑っただけで、それだけであった。

「―――それだけ?隊長の言う愛って、その程度なんだ。」

冷たく突き放された言葉、抱き締められたことに何の感慨もないような声色で淡々と告げる。その色は失望と呆れと侮蔑が込められていた、結局知っているとは口だけであったと、言葉にしなくとも伝わるほどであった。
空間に金交じりの紫電が迸る、剣槍で貫くなんて生温い。身体の内側から稲妻で灼いて、エステルの愛を揺らがそうとした罪を償ってもらう。破裂音を立てながら紫電は貯蓄される、これを放出すればそれで終わり。
終わりなのだ、彼女自身も巻き込まれても構わないと思っているのに一向に放出されない。溜めども、溜めども、放出できない。隊長を灼くための稲妻が溜まるばかりで、放出されない。僅かに彼女の表情に焦りが伺える、何時もの様に能力が扱えないのだ。
ならばと今度は剣槍に力を籠める、ただ押し進めれば幅広の刃が隊長の胴を深く傷つける。そう、全力で押し込めばいいだけなのにびくともしない。抱き締められていることが行動の阻害に繋がっている訳ではないのに、どうしようとも動かない。

「……なんで」

焦りと共に吐き出された言葉、それを皮切りに帯電と剣槍を押し進めることを交互に行うも一向に隊長を傷付ける気配はない。感覚的に行える放電が一切行えず、ただ突き刺すだけの剣槍も壁に突き刺さったかのように動かない。

「なんで、なんで!」

帯電を示す稲妻が空を灼く、その余波すら隊長に向かう事がない。ただ、蓄積されるばかり紫電は黄金色から徐々に通常の薄紫へと戻っていった。それが何の切っ掛けにもならず、ただただ蓄積せども放出されず。
再び剣槍に力を込めども僅かばかりも押し込むことが出来ない、押すだけで殺せてしまうのにそれが出来ない。ただ抱き締められているだけなのに、押し進められない。理解できなかった、何故自分がこうなっているのかも、何も分からない。

「なん……で、なんでよ……どうして―――」

分からないのは、分かってしまえば壊れるものがあるから、分かりたくないのだ。だって、それを認めればそれも愛だと認識してしまう。エステルから与えられたもの以外を知ってしまう、それを良い事かどうかが判断できなかった。
抱き締められた温もり、体温以上の温かみを感じるそれはエステルの抱擁とは全く違っていた。身体を重ねる為に、お互いを高める為の前戯ではない。ただ暖かかった、言葉では言い表せなかったがただただその温もりが恋しいと感じた。
彼女の瞳から一筋の光が流れ落ちる、ぽつりと地に落ちたそれは朱い血溜まりの中に透明の膜を作った。ぽろぽろと、最初の一筋から止めどなく溢れ出てくるそれは涙であった。切なくて溢れるものではなく、あの過去より初めての本来の涙であった。

「―――温かいの……分からない、分からないよ……」

紫電は霧散し、剣槍を取り落とす。抱き締め続ける隊長を思いのまま抱き締め返した、まだ分からない、それでも何故かこうしたかった。エステルとは違う、その温かみをもっと感じていたかった。それが何かは分からないけど、ただ心地よかった。
隊長の肩へと顔を埋め少女のように泣き続ける、年不相応であるがきっとこれが彼女のあの時だろう、あの時から止まっていた時間は漸く針を進めだした。過去を写し続けていた氷漬けの時計を溶かしたのはエステルの愛であったのは間違いない、だがそれでは前には進めなかっただろう。
堕落し、与えられる愛を求め続ける奴隷のままであっただろう。彼女が進むためにはその愛では駄目だったのだ、ただ大切に、真剣に、彼女と向き合って想ってくれる存在こそが必要だったのだろう。きっと彼女にとって、それが必要な愛だ。
どれだけ鎧を重ねても、心の底から望んでいたものには無力だ。それがエステルと出会った時には愛であっただけで、この瞬間は彼女を想う愛を望んでいたのだろう。だから、愛してくれていた存在を消せなかった。

「でも、これが愛なら……私は―――――」

その言葉を紡ぎ終える前に彼女は意識を手放した、度重なる限界を無視した能力使用、身体を穿った五発の魔弾、そして何よりも愛を求めるあまり休まずに酷使し続けた肉体の疲労が限界に達していた。愛の為ならば、本当に投げ捨てられるのが彼女だ。
その彼女が意識を投げ捨てたと言う事は、きっと心から望んでいた愛を得たと言う事だろう。この愛ならば寄り添っても良いと、この愛ならば頼っても良いと、本能的に感じ取ったのだろう。だからこそ、傷だらけの彼女の寝顔は、とても穏やかであった。
一つ、補足するならばエステルに対して悪感情を抱いている訳ではない。彼女にとっては間違いなく愛をくれた人物には変わりはない、ただ求めていた愛が此方であると気付いただけなのだ。目を覚まし、また会うことがあれば謝罪と共に別れを告げるだろう。
どちらも彼女にとっては愛であったが、隊長の愛が望んでいたものだと知った、ただそれだけだ。愛を与えてくれた人物を悪く思うことなど彼女にはきっと出来ないだろう、それが気まぐれなものであってもだ。
だから愛に包まれておやすみなさい、きっと目が覚めれば世界は見違えて見えるはずだから。そんな声が何処からか聞こえた気もするが、聞き取れる彼女は夢の中。それで、いいのだ。

―――漸く、見つけられた。
その言葉は続かずとも、想いは届いているだろう。だって愛とは、そういうものだろう?

>>フォッサ・セントライト エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール


【ここでストラーヴは気絶とさせて頂きます、間を空けてしまい申し訳ありませんでした。お相手ありがとうございました!】

8ヶ月前 No.1121

迅馬 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

8ヶ月前 No.1122

"銀細工" @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【時空防衛連盟本部/食堂/ユスティーツ・シュタルク】

 発現する異能によって生成される金属を自在に操りながらも、気配無き襲撃者の動きを的確に対処して行く"銀細工"。以前、古代にて相見えた者から情報が行き渡った物と敵は推測した様だが、事実は異なる。総ての情報が皆無の状態からこの戦いは始まり、そしてこの極僅かの間に、確実なる対処法を彼は構築したに過ぎない。気配を察知する事は不可能、しかし視覚であればその存在を認識できる――であれば、それに重きを置けば良いだけの話であり。
 瞬時に敵の姿を視界へと入れ、その刹那に反撃を開始して。一つでも多く傷を刻み込まんとして繰り出す怒涛の猛攻。十に渡る刃の洗礼、分離する無数の金属棘で攻め立てる。それらの結果としては、軽口を叩かれながら凌がれる事となったが、其処に焦燥を感じる事は無い。依然として余裕を保ったまま、相対していられる。

「……連携出来ない様に、気配を消したか」

 再度、敵の姿が視界が消えるのと同時――共闘していた者の気配が、唐突に消失する。それは決して死んでしまったからでは無い。視線を向けて視界に収めれば、五体無事のまま健在している事が確認できる。気配を操る敵の能力が、此方にも作用した、という事だろう。この状態では間違いなく連携は不可能、数の持つ優位性を封殺された事になる。見ようによっては厄介極まりないが――

「だが、それがどうした。生憎と此方は一匹狼、元より連携に重きは置いていない」

 ――そもそも、"銀細工"はこれまで単騎で戦い抜いて来た一匹狼。誰かと共闘した場面も無くは無いが、それでも大体の場面は独力で乗り越えて来た。そんな男が、連携を第一とした戦い方をする筈も無く。背後から迫るナイフの刃を、背中の金属腕を変容させた障壁で受け止め。そのまま空間を駆けながら距離を取り、視線を動かして敵の姿を捉え直す。

「――拘束」

 その一言が告げられた瞬間、敵の足元から現出する無数の金属鎖。鎖同士が擦れ合い音を掻き鳴らしながらも、その動きを封じ込めるべく絡み付く様にして彼女へと迫り。捕らえられたが最後、鎖はその身体へと食い込む程に力強く締め付け、あらゆる動作を阻害する事となるだろう。
 そして、再び形成する金属杭。右手、左手と其々の手に握られたそれを続け様に投擲し、分離した幾多もの棘による"面"への攻撃で手傷を負わせようとする。

>雪葉 桐生戦兎

8ヶ月前 No.1123

洩矢諏訪子 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【歴史是正機構本部/食堂/洩矢諏訪子】


「………ふん、ふん」
「(やるねー、いや、あれくらいは対処するのが普通か? ま、どっちでもいいわ)」


 気体への変化、自身を中心とした守護領域。
 片や不規則な攻撃に対しての機動力、片や狙いを付けた弾丸に対する防御力。完全な正解であるかはさておいて間違いではない。悪態の一つも吐きながらの迅速な対処を、相も変わらずその場から動く様子なしに諏訪子は見ていた。そう………ただ見て、確認して、再度相手が動くまで手を付けない。
 わざわざ行動に茶々を入れる理由はない。
 もし、入れようと多少無茶とリスクを侵せば手の一つも出せただろうが、そんなことに興味を見出す女ではない。よほど“殺したい”と思ったのならば話は別でも、元来この女は―――“彼女”をより広義的にひとつのある纏まりとして見た場合、そのまとまりに属する者達とはそういう性格なのだ。
 常識の形態も違う。精神の構造も違う。戦闘行為へのモチベーションからしてそもそも違う。
 だから、わざわざ相手が明確な攻撃行動を起こすまでは一切行動を起こさないし、やって来たのならば相応の返礼を叩き付けているに過ぎない。
 元よりそいつは祟りを生業としたもの、人に畏れを以て敬われて来たものだ。


「はー真面目なことで結構だね。だが、弁えろとは言うけどさー」


 よほどのことでもない限り、遊びと公言したならばただの遊び。
 だから周りの輩の命も奪おうとはしない。その理由は偏に虫に対する気まぐれや情けのようなもので、数秒と経てば唐突に反故にする可能性さえもあったが、さりとて彼女は自らの口で“望み通りに”と言ったのだ。
 望み通りに遊びに付き合ってやろうと言った手前、気が変わる事が無ければ態度も変わらない。
 例え相手が真摯にこの戦いに―――否、否々。この世界の物事に向き合っていようが………変わらない。

 ・・
「何を?」
「なあ、いったい私に、これ以上何を弁えろと言うのかなお嬢ちゃんよ」

「遊び場の使い方はちゃんとしてるつもりだよ? そういう話でないというなら、はあ、お門違いさね。
 この世が幾ら荒れようが大して興味はないし、幾ら栄えようとも無論興味はないさ」


 だから、当然のようにそんなことを口にする。
 弁えろという意味合いがそもそもズレている。
 人の常識を汲み取って、理解して、だが“それと自分が何か関係あるか”という態度を徹底する。良くも悪くも傍若無人、傲岸不遜。徹底した上から目線と気まぐれの性質は、しかし薄氷の上に成り立つバランスでもある。
 ………もう一度言うが、カミとはそういう生き物だ。信仰と畏れで成り立つものは、しかしこの世にモチベーションとなるべきものがないことを早々に理解している。であるに、極論“この世界でどっちが勝って目的を果たそうが果てしなくどうでもいい”のだ。
 帰りたいのならそれこそ適当に帰れる。だからこそ―――。


「だがしかし、こっちの方が“らしい”だろう? いっぺんやって見たかったのよー」


 彼女はこう言うのだ。

 どうせ信仰も恐れもない世界の生末など死ぬほどどうでもいいから、
 自分はやりたいことをやっているだけ。それが“どうでもいい世界”でのカミの弁え方だ、と。

 どちらかと言えば、祟り神であるからには“人間を脅かす”のがらしい方だろうと。
 洩矢諏訪子が此方で好き放題やっている理由など、たったそれだけだ。


 悪意を持ってことを成しているわけでもない、善意でなにかの助けをしているわけでもない。
 そこらの考え方は、最初から盤上の内側に立つ気の無い輩が突然チェス盤に乱入して荒らしに来ているようなものだ。有り体に言って傍迷惑、かつ理解の及ばない感情だろうが―――災害だの天災だのに思考を要求する人間など居はしまい。
 言い換えればそんなものだ。ヒトのかたちだろうがなんだろうが、これらの生き物は思考構造からして違う。言葉が通じるだけの“異物”だから。


「それに、貴女もこの世にとっちゃあ異物でしょう? これは勘………」
「だが、ねッ!」


 背後から襲い掛かる剣戟。
 速度は増した、威力も推定は増した。
 とはいえ………正面からの突撃だけの話ではない。要は意の向け方が分かりやすいのだ、この女。


 であるに対処も明快で良い。
 左右正面を纏めて薙ぐ斬撃ならば、自分の立ち位置を変えるのだ―――踏みしめた地面から吹き上がる水流が諏訪子をソラへと飛ばす。くるくるとその小柄な体躯を撃ち上げながら回転し、まず1発目の斬撃を回避する。
 続いて残る一発には、元居た場所からせり上がる何かが衝突し、しかし斬撃で粉砕される。
 せり上がる何かの正体は石像だ。蛙の石像、物言わぬ石くれ、微かなれども神威を宿し、この周辺の素材を用いて成形された無機物。諏訪子の身代わりのように展開された石像は当然のように月光の剣に寸断されるが、本人には傷一つない。
 白い袖が暴風と水流に揺れて濡れて靡く。
 けたけたと笑い声を上げながら、天井に貼り付いた諏訪子が笑う。



「では次、もうちょい大きいヤツで行こうか! さーん、―――」

   、        ――― ゼロだ! 『源符「諏訪清水」』 ―――


 笑って。
 その正面から、集中砲火もかくやの勢いで放たれたそれは水流だ。
 セリィの居た場所を円状に穿ち、そのまま地面奥深くまで穿って消し飛ばすような水流。

 当たり前だが、先程まで生かさず殺さずだった人間たちには対して手を付けていない。
 弁えるとはそういうことだ。“遊び場”ならば、殺すのはご法度と、つまりそういう話である。

 ………が。それと“セリィに対して加減をする”のはイコールで結びつかない。
    遊び相手に手を抜くことほど失礼なことはない。それがカミの理屈だからだ。

 二度も三度も先のように防壁を貼るならば良いだろう。
 次はそれごと消し飛ばすことに挑戦してみるまでだ。
 避けるならばそれも良い。すぐには終わらせてくれるなよ、興が削げる。

 ―――セリィが彼女にとって優良な遊び相手である限りは、諏訪子の調子はそのままだ。
    付け入る隙はそこにあるが、されど忘れる勿れ。

    カミとは元より、ヒトとは頭の構造の違う“異物”だ。

>セリィ

8ヶ月前 No.1124

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【魔帝城/魔将軍の間→移動中/エスト(残魔具3184個 残魂数7)】


意識の覚醒、死の淵から明るき生へと向かう感覚もまた、そう容易く慣れるものではなかった。人は生きて、死ぬ。その自然の理から外れることを本能から拒絶しているのだろう、心が凍えるような恐怖は未だ張り付いたまま。
目を覚ました彼女は上体を起こす、傷を負っていたことは衣服の損傷がなければ判別できないほど、何時もの様に綺麗に塞がっていた。尤も、彼女本人はその何時もの記憶すら消えてしまっている。そしてまた、失ったのだ。
すぐさま違和感に気付いた、脚が微塵も動かない。そして、視界の半分が光を映さない事に。記憶は盟友との約束は覚えてはいた、だがそれだけであった。その盟友との思い出は僅かばかり残るだけで、最早顔すら思い出せなかった。
身体の喪失はまだ良かった、どうにかなる術があったから。しかし彼女にとってのその記憶は掛け替えのない物であって、失って良いものではなかった。強く残るあの帝国の日々、それすらも不鮮明になっている。
そして、彼女はこの場で何があったかさえも覚えてはいない。自身が何と戦ったのか、誰と戦ったのか、ただ戦闘の痕のみでそれを知る術はない。魂に刻まれるほどの鮮明なものでなければ、彼女は死ねば失ってしまうのだ。

「……うーん?分からないな、どうしたものか……ここは、危険なのか?」

頭を振りながら思考の海へと没するも何も浮かんでこない、判断するだけの記憶はなく、判別するための材料もなく、あるのは己が何かと言う答えと、僅かな記憶のみ。答えの出ない思考を取りやめ、近場にあった記録書を手に取る。
それが何かは知識で知ってはいる、だがその中身が何かまでは知らずにいる。だから読み進めた、何らかの解決になると思い、何故自身がこの場に居るのか、何故死んだのか、その理由を探して。
しかし、そこに記されるは魔に関するものと自身が魔を扱うために必要な事のみ。それ以上は何も記されておらず、現状の判断を行うに足るものなどなかった。記録書の頁の一つを開き、記された通りに魔力を込める。
するとふわりと身体が浮かび上がる、浮遊の魔術だ。脚の動かぬ今、移動の手段はこれに頼ることになるだろう。歩行程度の速さであればそれほど消費も大きくないようで、魔具を使用するまでには至らない様だ。
ふわふわと不安定ながらにも移動を行いながら彼女が目を止めたのは、正体不明の黒い粉。それが何なのかは分からない、分からないが邪悪なものであったと何処か感じた。拾って実験に使おうかとも考えたが、魔に注力しない事と記されていた事もあってやめた。
改めて見まわせば酷い有様の部屋であった、場合によっては部屋と判別できないほどの損傷具合だ。焦げ跡、魔力の残滓、数多の武器の痕跡、数え上げればキリがない。それだけこの場で凄惨な戦闘が行われていたのだろう、そう彼女は判断した。

「うーん?一先ずは、この場を離れようか。……行く当てもないが、世界でも見て回ろうか。」

そう、呟けば壁に空いた大穴から外部へと飛び出す。今までいた空間が城の一室だと気付いたのはその時であった、何故こんなところにと疑問が深まるがそれを解決する術がない、踵を返して海上を浮遊する。
そうだとも、今の彼女は盟友との約束と帝国時代の僅かな記憶しかない。女帝と呼んだ存在の声は思い出せず、盟友と呼んだ存在の顔は空白であった。共に作り上げた王国の存在、それすらも死は奪っていったのだ。
もし、記憶が残っていれば王国を陰から見守る選択肢もあっただろう。だがそうはならなかったのだ、魔族と人間の戦争を止めるために魔帝城へ向かった事すらも覚えていない彼女は、ただ盟友の約束のみを信じて生きる他はない。
未来で会えるから、生きていて欲しいとそう告げた盟友を信じて生きる他はないのだ。それまでに多く失っても彼女はこの約束を忘れることはないだろう、例えその盟友が誰かすら分からなくなろうとも、約束の為生き続ける。

―――そう、生き続ける。時を重ねても、死を隔てても、また会うまでは。

>>シャル・ド・ノブリージュ フィラッサ


【此方も遅れて申し訳ありませんでした!お相手ありがとうございました!】

8ヶ月前 No.1125

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【移動中→歴史是正機構/実験室/黄衣なる者】


人間の守護者が身を挺して隙を作り、勇者と魔王が手を取って道化を打倒しました……って感じだねえ。うんうん、望んでいた結末とは違うけれども、これもまた面白いねえ。障害が多くとも共生を選んだ以上は、きっとそうなるんだろうねえ。
まあ、介入するのは好まないからこうして帰って来たんだけどねえ。過去が変わる度に、辻褄を合わせるように未来も少し変化する、それが良い方向かは別としても考えたものだねえ。猟犬は休憩中なんだろうねえ、まあその方が面倒がなくていいけどねえ。
またビヤーキーには偵察を任せるねえ、だって面白い事を見逃してしまったら勿体ないからねえ。さてさて、戻ってきてゆっくりする暇はないみたいだねえ。どうやら侵入者の様だねえ、義理は果たさないといけないからねえ。
幾つか居るみたいだけれど、まあ向かうのは友人と称してくれた彼の良く使いそうな場所にしておこうかねえ。ほら、ザーシャは一人で頑張ってるけどそれでも恩は大切だからねえ、人間ってそう言うのを重視するから合わせようねえ。
そうして実験室に向かっているんだけどねえ、誰かが逃がしたのか色々な人間が向かって来ては走り去っていくねえ。理由はどうあれ、逃がすならば外まで護衛するべきだと思うけどねえ。だって、侵入者が居る状況下で撃ち殺されない道理がないからねえ。
運が良ければ数人は生き残るんじゃないかねえ、ああでも被検体ならこの施設の構造を知らないだろうねえ、迷わずに逃げられるか、他の場所で始末されるか、まあどっちでもいいねえ。いや、彼のだったら困るねえ、一人くらい捕まえておこうか。
逃げ果せる中の最後の一人を触手で掴むねえ、こうやって逃がす相手ならまあ面白そうな反応が見れそうだからねえ。しっかり口を塞いで、動けないようにしていこうねえ。そういえば、彼なら実験結果が消える方が困りそうだねえ、バックアップはありそうだけどねえ。
さて、そんなこんなで辿り着いた実験室だけどねえ、酷い有様だねえ。何かあったんだろうけどねえ、全部溶けてるか焦げてるねえ。直前の爆発でそうなったのかもねえ、その中に人間が一人だけ居るねえ。
いや、人間と言うには逸脱し過ぎている気がするねえ。まあ何にしても目の前の人間擬きは敵で、義理を果たすなら倒さなければならないねえ。……ちょっと骨が折れる相手ばかりだねえ、こういう時は何て言うんだったかねえ、特別手当を要求する、だったかねえ。

「やあやあ、侵入おめでとう。更に被害者も助けるなんて正義感溢れるねえ、すごいすごいねえ。」

乾いた拍手を打ちながら人間擬きに話しかけるねえ、勿論途中で捕まえた憐れな被検体ちゃんも見せびらかしながらねえ。口を塞がれて、身動きが取れないながらももがく少女は涙を浮かべてるねえ、それはどちらへの涙だろうねえ。
まあ、それは置いておこうねえ。そうそう、目の前の人間擬きの様なタイプは割と問答無用なのが多いからねえ、障壁と力場は事前に準備しておかないとねえ。炎でバッサリ切られるとちょっと面倒だからねえ。
少なくとも、人間擬きは被検体を開放するだけの正義感を持ちながら、外まで護衛することなくこの場に居たからねえ。自己満足だけの正義感か、それとも気まぐれか、まだ判断するには早いねえ。まあでも、あれは良くないものだねえ。
人間擬きの対応によって分かるだろうから、今はそんなに語る事じゃあないだろうけどねえ。取り合えず、見ていて面白いタイプではないんだよねえ。進化は好みだけど、袋小路に入って消えるのは詰らないからねえ。

「まあ、こうして君の前に一人連れて来たんだけどねえ。助けるのなら、最後まで守らないといけないねえ。こうして捕まっちゃうからねえ。」

クスクスと笑いながら語り掛けるねえ、反応は期待した物が返ってくるようには思えないけどねえ。そうそう、此方からは手を出すつもりはないねえ。人間擬きが仕掛けない限りは、仕掛けないねえ。理由?その内分かるだろうねえ。
まあ、人は人でありながらその小さな力を懸命に扱う事が面白いとだけ言っておこうねえ。善も悪も、存在するからこその人間だからねえ。聖人だとか、英雄だとか、そんなのばかりだと詰らないからねえ。
ああでも、そう言った存在が大衆の総意に押し潰されるのは面白いからねえ。正義も、信念も、行き過ぎれば異常だと判断するからねえ。だからこの人間擬きもそうなるんだろうけどねえ、でも見るなら面白い方がいいよねえ。
あまり気は進まないけどねえ、少しばかり介入しようかねえ。丁度ザーシャも手を離れてしまったからねえ、憂さ晴らしにでもなるといいけどねえ。まあ一先ず言えることが一つだけあるねえ。
英雄はなろうとした時点でなれないんだよねえ、目の前に居るのは恐怖を振りまくだけの存在だからねえ。それに気付いていれば、まだ面白いんだけどねえ。

>>レオンハルト・ローゼンクランツ


【絡ませて頂きます!よろしくお願いします!】

8ヶ月前 No.1126

ある男の慟哭 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【大統領官邸/シチュエーションルーム/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

どうしたら良いの――と問う少女の言葉も耳に入っていなかった。彼の目にはフォルトゥナしか映っていない。……皮肉にも、彼女と同じように。
彼女の言葉の僅かな"揺らぎ"と、ほんの一瞬見せた表情が、ヴァイスハイトの心を責め立てる。……自分の犯した罪の重さを、改めて認識させるにはそれだけで十分だった。

音速を超えた速さでフォルトゥナが突撃する。繰り出されるのは何の技術も魔法もない、ただの拳。ヴァイスハイトへの想い以外の全てをかなぐり捨てた一撃だ。それを――どうして、彼が避けられるだろう。

「ぐっ……!」

とっさに両腕を交差させてその拳を受けるが、力の差は歴然だった。……いや、それを加味しても信じられない程の重さだった。ただの馬鹿力ではない――嘆き、怒り、憎しみ、悲しみ……綯交ぜになった感情の全てをぶつけられたのだ。まるで大型車に追突された様な衝撃がヴァイスハイトを襲い、彼を大きく後方へ吹き飛ばし、硬く冷たい床へ叩き付ける。

「……っ」

腕が折れるまでには至っていない。痛みもあるが、堪えられない程では無い。そんなものよりも何よりも――たった一撃受けただけで痛い程に伝わる程のフォルトゥナの苦しみが、彼を苛んだ。

……ヴァイスハイトは愕然とした。"どうすれば彼女を此処まで苦しめられるのか"と言う自問に、自分だけが容易く解を得られるだろうと言う事実に。
故に、彼は失望した。他の誰でも無い、自分自身に、だ。この場にいる誰より全てを分かっていながら目を反らし続けていた、自分に。

「フィル……!」

銃を取り落としているのにも気付かず、ふらつきながら立ち上がる。幾つもの感情が浮かんでは消えてを繰り返していた頭の中は綺麗さっぱりと漂白され、後にはただ一つしか残っていなかった。

「俺が憎いんだろう……! 当然だ、俺はお前に許されない事をした! 俺は――"お前を一人で置いて行ったんだ"!」

――それは、ダグラスも、アルカディアも……恐らくは、ユーフォリアさえ知らない事実。ヴァイスハイトが生涯ただ一度犯した、決して消えない最大の罪の告白だった。

フォルトゥナは父親の死後、彼女の叔父……即ちヴァイスハイトの父の家に引き取られた。ユーフォリアを引き取った祖父母とは違い、叔父は彼女に辛辣だった。毎日の様に罵倒を浴びせ、精神的に追い詰め続けたのだ。
だが、ヴァイスハイトはそうではなかった。フォルトゥナと真摯に向き合い、時に庇い、本当の妹の様に大切に思っていた。だから、フォルトゥナも彼だけは信頼していた。――その信頼を、ヴァイスハイトはいとも容易く裏切ったのだ。
ヴァイスハイトはある日一人で家を出た。大切な妹が、自分だけを心の拠り所にしていると知っていて尚、彼女の前から去ったのだ。

「俺が家を出たのは平然と人を傷付ける親父の元に居たくなかったからだ……! だが、俺にはお前の命まで背負える自信が無かった……! だから、俺はお前を見捨てる道を選んでしまった……!」

弱かったのだ。童心にすら卑劣だと思える父親の元には居られなかったが、然りとてフォルトゥナを連れてまともな暮らしをさせられるだけの勇気も自信も無かった。
逃げないと言う選択肢があれば良かった。苦しくとも二人で生きようと思える度量があれば良かった。……だが、彼にはそのどちらも無かった。だから、逃げ出した。その選択こそが、大切な妹を最も傷付ける道だと分かっていながら。

「許されるとは思っていない……! だが、一つだけ、一つだけわかってくれ! 俺は、一日たりともお前を忘れた事は無い!」

吐き出す様に紡がれる言葉は慟哭だった。フォルトゥナを地獄へ突き落とした悔恨と、選択を誤った己への失望。後悔で軋む心に鞭打ちながら、心に血の涙を流す。

「何時か、必ず、お前を迎えに行こうと思っていたんだ……! ユフィと再会させる為に、姉妹で笑って暮らせる様にする為に……!」

語れば語るほどに言葉は空虚なものになる。何もかもが苦し紛れの言い訳にしか聞こえない。それでもまだ、取り戻せると信じているから……ヴァイスハイトは思いの丈を吐き出した。

>>ユーフォリア、フォルトゥナ、ダグラス、アルカディア

8ヶ月前 No.1127

ブリッツガール @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【大統領官邸/シチュエーションルーム/アルカディア・クアドリフォリオ】

軽率極まりない行為に一度は取り乱したアルカディアだが、すぐに我に返って両頬をポンポンと叩く。
顔は火照っているのに手は冷たく、間も無く冷静さを取り戻すことが出来た。すぐにフォルトゥナに目を向け、彼女の言葉に耳を傾ける。
行方不明だった彼女が、歴史是正機構に属していたこと。会話を聞く限り、実の姉であるユーフォリアとの間にも、深い溝が出来てしまっていること。
一家に平和の明かりが灯る日を夢見ていた無垢な少女にとって、打ち付ける雨のような現実はあまりに非情だった。
そしてそれ以上に、フォルトゥナの口から紡ぎだされる言葉が辛かった。不完全な冷酷さの裏に見え隠れする人情。
しかし何故ヴァイスハイトがその対象なのかがわからない。そもそもわからないことばかりなのだが、二人の過去に何かあったと見てよさそうだ。
それを探るべく、対峙する二人の顔を順に見比べる――が、突然の衝撃。腹の中の空気を全て絞り出される。
空気を求めて喘ぎながら、まるで荒波に揉まれたかのように地面を転がる。波動の主はフォルトゥナその人。彼女の瞬歩に伴うインパクトが、小柄な少女をおが屑のように吹き飛ばした。
よろめき立ち上がり、従姉妹を見つめる瞳に浮かぶのは深い悲しみの色。視界を切り裂く剛腕剛撃、拳打の先には傷ついたヴァイスハイト。
明確な原因こそ掴めないままだが、聡明な面を併せ持つアルカディアには理解できた。

ある時を境に、フォルトゥナは孤独の闇に取り残されてきたのだと。

あれは一度安らぎを知ったからこその激情だ。裏切られ、失望し、天を呪った者のみに巣食う魔獣の慟哭だ。
初めから何も持っていなければああはならない。かつては手にしていたからこそ。そしてそれを失い、心の奥底からも消し去ろうと足掻くからこその嘆き。
肉体を切り刻まれるよりも苦痛に違いない。灼熱の中に身を沈めるが如く。凍てついた鋼に舌をあてるが如く。

――しかし、なぜ?

何が彼女をそうさせた?確かに世間が向ける目は厳しく、思慮の欠片もないものだったに違いない。汚職官僚の娘。いつか卑劣な行為に手を染める。
きっと親類ですら肩を持とうとはしなかっただろう。そんな彼女に一時の平穏をもたらし、心の拠り所となった人物がいたとすれば…

「お兄……ちゃん……?」

彼女が勘づくのと、ヴァイスハイトの告白はほぼ同時だった。点でしかなかった疑問と推測の欠片が、急速に結び付けられていく。
語られるは罪の記憶。誰にも打ち明けられなかったが故の重責。肉親の身を案じ、人生を投げ打ってまで義を通した彼の、清廉潔白な人生に潜む影。
いつか償いの日が、向き合うべき時が来るにせよ、これ程までに最悪の形になるとは誰が予想出来ただろうか。
如何なる理由があろうとこれだけは揺るがない。ヴァイスハイトはフォルトゥナを"置き去りにした"。
たった一つの太陽であったというのに、月を照らすことをやめ、永遠に姿を隠してしまった。在りし日のオアシスは枯れ果て、絶望と孤独が支配する荒れ地となった。
そこにただ一人取り残された少女の悲しみと怒りは計り知れない。部外者も同然の身でそれを推し量ろうなど烏滸がましいが、アルカディアは必死にフォルトゥナの気持ちに沿おうとする。
頬を伝う涙は純心の結晶。真に他人の不幸に心を痛めていることの証。思えば、今まで彼女のために温かい涙を流す者などいなかったに違いない。
しかしこれからは違う。彼女は一人ではなくなった。蟠りさえ解けてしまえば、家族と一緒に幸せに暮らす日々が待っている。
ただその解消こそが一番の難題なのだが、血の繋がった者同士であたれば不可能ではないはず。
銃をそっと地面に置き、涙を拭いながら姉の下へと歩み寄る。心の中では伝えたいことが山ほどあるというのに、肝心の言葉にはならない。
涙は堰を切ったように溢れてくるというのに、言葉はこれっぽちも出てこない。何度もしゃくりあげた後に、やっと口を開くも――

「お姉ちゃん、もう――」

途切れる。途中まで紡がれた言葉も雲散霧消、意味を成さない。張り付いた表情は琥珀に閉じ込められたが如く。
ヴァイスハイトは言った。お前を忘れたことはないと。いつか迎えに行くつもりだったと。幸福に導くつもりだったと。字面だけなら至って感動的だ。
しかしこの状況下ではどうだろうか。まだユーフォリアとフォルトゥナの和解も済んでおらず、虚しい言い訳にしかなっていない。
恐る恐る振り向き、この場に集った全員の顔を見る。アルカディアには、どうもこの発言が地雷を踏み抜いたようにしか思えなかった。

>>ユーフォリア・インテグラーレ、フォルトゥナ・インテグラーレ、ヴァイスハイト・インテグラーレ、ダグラス・マクファーデン

8ヶ月前 No.1128

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

8ヶ月前 No.1129

豪腕剣士 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/マロン・アベンシス】

古代で起きた反帝国勢力の一斉蜂起は、パージルクの"死"による帝国の崩壊という形で幕を閉じた。正確には誰もその死体を発見してはいないのだが、あの高さの宮殿から落ちたのでは助からないだろう。
しかし、事の一部始終を見ていた者達によれば、未来からの来訪者が、彼女を何処かへと連れ去ってしまったのだという。信じ難いことだが、古代にやって来た彼らの技術力を考えれば、不可能ではない。
マロンはというと、エストと別れた後にエスメラルダを保護し、自領のカルストンへと戻り、そこで正式に帝国からの独立を宣言。アベンシス朝カルストンを建国した。
揺れ動く情勢の中でも、孤島であるということもあって平穏を維持していたのだが、彼女はどうしても、パージルクについての噂が気になって仕方がなかった。
もしかしたら、未来でパージルクは生きていて、こちらへ帰る方法を探しているかも知れない……そう感じたマロンは、歴史是正機構の者が落としていった時間遡行装置子機を拾い、時空の旅に出ることを決意する。
留守の間は、親友であるエストに国とエスメラルダを任せることとなった。彼女であれば、絶対に失敗はしないだろう。後顧の憂いなく、遙かなる彼方の時代へとやって来たマロン。
だが、未来では丁度、大きな戦乱が起こっていた。それこそ、あの魔道帝国との戦いを想起させるかのような、激しい戦闘が。時空防衛連盟と歴史是正機構が、お互いの本拠地を置く時代にて衝突していたのだ。
事情を理解したマロンは、すぐに時空防衛連盟に協力することを選んだ。あの時、反帝国勢力を彼らが支えたことは知っている。ならば、今度は世界を変えてくれた彼らを、今度は自分が助ける番だ。

そうして意気揚々と本部を飛び出し、敵地へ向かおうとしたマロンであったが……丁度彼女がエントランスを飛び出したところで、目の前の市街地が天より降り注ぎし極光に焼かれた。
ビルが崩れ去り、その頂点に立つ者の姿が露となる。忘れはしない。帝国が崩れ去るその日まで毎日のように顔を合わせ、嫌というほど記憶に刷り込まれた者。
パージルク・ナズグルは、確かにそこにいた。これほどまでに早く発見出来たことに、彼女は当然のように高揚感を覚えるが、同時に得体の知れない違和感が付きまとう。
今彼女は、一体何をしている? 最初は同じように連盟に協力していて、周辺に展開している敵を倒しているものかと思ったが、だとしたら市街地を破壊することはあり得ない。
疑惑は、次の瞬間に確信へと変わった。マロンの横を通り抜けるように、パージルクへ向かっていく戦闘員達。そして彼らは……瞬く間に物言わぬ屍へと買えられた。
マロンの中で、パージルクという存在の概念が壊れるような音が響いた。あれほど優しく、部下に対して慈悲深かった彼女が、見境なく殺人をしている光景など、あり得ない。

「おいパージルク! こんなところで何してるんだ! そいつらを殺す必要なんてない。早く古代へ戻ろうぜ!」

声を掛けたところで、パージルクの身体を揺すっている者の存在に気付いた。見たことはないが、あの様子からして、パージルクと何らかの形で面識があるのか。
とにかく、今パージルクがしていることはとても彼女らしくない。見知らぬ土地で錯乱してしまっているのかも知れないから、取り敢えずは落ち着かせなければならないだろう。
マロンはそんな思いと共に声を掛け、同時に古代へ帰る手段があることも示唆するが……それが、あんな結果を招くことになるとは、誰も想像し得なかったことだろう。

>パージルク・ナズグル、ニケ・エタンセル

8ヶ月前 No.1130

慎重で臆病な上位種 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

8ヶ月前 No.1131

裁定者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【大統領官邸/シチュエーションルーム/ダグラス・マクファーデン】

 インテグラーレの血脈に縁持つ者達が集う戦場。運命の力が働いたとでも言わんばかりの状況の中に入り混じるダグラスは、事実を前に驚愕と焦燥を隠せずにいるアルカディアが響かせる制止の言葉を振り切って、不規則な軌道を描く疾走で急接近すると共に、光輝に満ちた黄雷を纏える右腕を揮う。幾重にも施した身体強化の魔術の効果は瞭然。日夜の鍛錬が創造した剛腕を、更に剛く仕立て上げた其れは、敵の背を穿つべくして唸りを上げる拳に疾風の加護を授ける。
 その間に告げられるは、苦い顔を浮かべながらも、虚構に隠された真実の存在を否定するフォルトゥナの言葉。彼女の叔父を始め、周囲の人間が、世間その物が語る、偽りの事実に懐疑を抱き、そして真実に辿り着く事なく、遂に諦念を抱いたそれは、彼の言葉を妄言と断じ。贖罪など無用、ただ組織に叛旗を翻した裏切り者として命を差し出せ――そう告げる。

「惑わす? 始めからそんな意図など持ち合わせてはいない。先の言葉は単なる宣誓に過ぎん、勘違いをするな。腐敗の末裔として贖罪を果たす、故に命はまだ渡さんと告げた」
「……俺はやらねばならない使命がある。歪んだ政府を正し、隠蔽されて来た真実を明らかとするのも一つだが、何よりも公正なる社会の実現を目指している。それを果たす意味でも、この命はやれん」

 相手を惑わす妄言と断じたフォルトゥナの言葉を、見当違いであると否定の言葉を返す。相手の捉え方はどうあれ、先の言葉は単なる宣誓。貶める意図は無く、あくまで此処で死ぬ心算は無いとその理由を添えた上で告げたのみ。そして何より、そもそも自身との接点が限りなく薄い彼女の思考を、今になって漸く朧げながら把握してきたという段階であり、明確なる意図をもって心を揺さぶり、貶めると言う手段を取れないのが実状なのだ。

 雷霆を退けた彼女は、命を刈り取るべく漆黒に蠢く闇の魔手で捕らえに掛かって来る。推測が正しいならば、性質は先の奔流と同様。防御手段は無意味であり、必然的に回避を行う流れとなる。それらは深く考えずとも、既に理解の範疇にある領域。故に、思考すべきはその先の可能性。回避した先に本命の反撃が返って来る事を想定しながら、動いて行く。

 ――そして、その想定は外れた。此の場に現れた一人の青年に、意識を奪われたフォルトゥナは、追撃を仕掛けて来ない。これまでとは一転した表情を浮かべ、冷酷の色が消え失せ、代わりに僅かな親しみを帯びた声で男の名を呼ぶ。男の顔には、此方も当然覚えがある。前の一戦で共闘した、"ヴァイスハイト・インテグラーレ"。彼の瞳に映るのは、彼女の姿のみ。幼いが故にどうすべきかと迷い、そして問う少女の言葉は、聞こえていない。

 "将官"としての立場を忘却し、己が抱く激情に駆られるがままに、ヴァイスハイトへと炸裂させる渾身のストレート。身体強化を引き上げ、常人を逸脱した能力で放たれたそれは音速を超越し。辛うじて両腕を交差し、顔面への直撃を避けたとは言え、彼の身体は容易く吹き飛ばされ、床へと叩き付けられる。それでもふらつきながら立ち上がり、口を開いた彼が零すは罪の告白。紡がれていく慟哭の言葉が、最後まで述べられたその瞬間――

「……ヴァイスハイト」

 ――これまでの冷静さとは一転して、怒気を孕ませた声で其の名を呼ぶ。

「ふざけるなよ。一日も忘れなかった、迎えに行くと思っていただと?
 ならば、お前は今日に至るまで、彼女を何とかしようと、救おうと行動して来たのか?
 ……していないだろうッ! 本気で幸せになって欲しいと願うなら、後からでも強引に連れて行くなり、出来る手段はあった筈だ!」

 込み入った事情の総てを把握してはいない"部外者"が口に出すのは烏滸がましい事ではあるが。それを踏まえた上でも、溢れ出る感情を抑えきれず、怒りに駆られるがままに言葉を吐き捨てる。彼女を置いて一人で逃げたにせよ、後で挽回する様な動きをしていた事が窺えたならば、同情の余地はまだあった。当時の心理状態からして、そうせざるを得なかったのだと、彼の味方に回った事だろう。
 だが、実際はどうだ。呟かれる言葉の一つ一つが苦し紛れの言い訳ばかり。彼女を救うべく、何かしらの行動はしていたのだと明かす事も無く――それでいて、姉妹同士笑い合って暮らせる様にする為に等と告げる。そんな彼の様子に、失望を覚えたのだ。
 それでも一縷の望みとして、否定の言葉を期待して――だが、もしも。それを肯定で返されたならば、今度こそ心の底から失望する事になる。彼個人に対する評価は地に堕ち、向ける眼差しには軽蔑の念を込める事となるだろう。

>ヴァイスハイト・インテグラーレ フォルトゥナ・インテグラーレ ユーフォリア・インテグラーレ アルカディア・クアドリフォリオ

8ヶ月前 No.1132

イスマリア @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

8ヶ月前 No.1133

シャプール @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

【歴史是正機構本部/監視室/シャプール】

 あらゆる生物の“戦い”において。大きさとは即ち力であり、強さだ。
 物理的打撃の極致とは、要するに大質量の物体を高速で打ち当てることにある。身も蓋もない言い方をしてしまえばそれが物理の奥義であり、基本的な打撃のすべてに共通する“威力”を決定づける要素であるからだ。
 巨きいものは動きが鈍い、だとか。小回りが利かない、だとか。結局のところ、それは詭弁ないし錯覚に過ぎない。必然一つ一つの動作に齎される運動エネルギーも大きくなる以上、同じ挙動が生み出す結果はこうも違う。それはこの結果からも明白―――『シンナイト』の力を振るうシャプールの刃が、今まで白兵において相応に不利だったクー・フーリンの牙城を打ち崩したことからも、彼という人物がこの力を信仰していた理由が窺えるというもの。


「怪物、とは良くも言った。これこそ“騎士”の力………私の力だ」


 その風貌を見て“怪物”と呟いたのだろう蒼き槍兵の言葉。
 それを聞きながらも、戦いの中で彼はただ哄笑するのみ。
 猛禽類を思わせる鳥のような兜、その黒い翼。全長数mほどの巨躯を持つ騎士の姿を得たシャプールは、その言葉を否定しながらも満更ではなかった。人間の力と知恵では適わない絶対的なものを振るっている感覚は心地が良いし、現に『シンナイト』の力はまさしく怪物と呼べるものさえ一蹴するほどだ。
 それを見て怪物呼ばわりというのもむべなるかな。彼とて、目前であの騎士の力を見た時に何度も思ったもの。
 あらゆる知性と社会を持つ生き物は、自らの絶対上位に君臨し、あらゆる小細工も理屈もすべてを跳ね除けるほどの、揺るがない絶対の力を見た時に―――。


「そして、分かりやすいではないか。私の力が貴様の全てを食い潰せるなら貴様は死ぬ………。
 この世界の全てがそうだ! 戦い、負けたものの理屈は封鎖される。何故ならば―――」

 ・・
「弱いからだ! 弱い者は死に場所も選べぬ、意思も理屈も通せぬ! それが世の摂理だ!
 クク、だが私にはこの力がある―――この世界でも我を通すことの出来る、“騎士”の力が!」


 なんと素晴らしいものだろうか、と思うのだ。
 この世など所詮、強きものが正義。力あるものが理想を通し、弱きものは何も選べない。
 誇りがどうだの理想がどうだの、正しさがどうだの、そんな理屈を“説き通す”ことが出来るのは強者だけだ。まず揺るがぬ力を得た時、厳然なる力の差というものを思い知らせた時にこそ、それらは成る。

 だからこそ、シャプールが心の底から信奉するものがそれだった。
 如何なる神も存在も、ただ一人を除いて殉じるには能わず。
 自らの主である“閣下”の居ないこの世界では、彼という人間の今は力こそがすべて。

 小細工を理解して踏み潰す。
 細工と手練手管のすべて、読み切った上で驀進する。
 そうしたもので埋まる力の差ではないと、彼は騎士の力に酔い痴れながらも確信している。
 過信じみた感情を前提とするものだが、鋭利な刃物のように状況を鋭く切り開き、冷たい氷の計算機が如く状況を分析するのがシャプールという男のポテンシャルだ。故に―――二度の斬撃程度では勝利を確信しない。

 前提として、まず真っ向から突撃を掛ける。手を緩めることなどしない。
 相手の動きと読みを想定した上で、退路を与えぬ速攻戦術というわけだ。
 黒翼をはためかせた空の疾走は、当然、投擲される紅槍とかち合うが………。


「ハハハハッ………甘いぞ、甘い! 乾坤でも狙ったか!?」
「だとするならば、ああ確かに好機だとも―――」


 そこで加速を止め、急激に停止して翼の向きを変え、勢いよく落下する。
 当然、投擲された槍は黒騎士の持つ大翼を狙うからこそ天井へと逸れる。
 正確には“逸れた”だけで、かすめた部分ではダメージこそ受けたが………しかし多少ならば翼がダメージを受けたところで動きは鈍らない。―――そして、何も黒騎士の武器はその剣だけではない。単純にそれを振るうだけでも技と力を押しつぶすだけの自信はあるが、だからこそ此処でこう仕掛ける。
 彼は搦め手を嫌うわけではない。駆け引きと読み合いを拒否するような人物でもない。


「―――私の、だがなァッ!」


 であるに、此処で不意打ちのように“それ”が炸裂する。
 自分の正面広範囲を纏めて薙ぎ払うように、はためかせた黒翼が勢いよく暴風をまき散らす。物理的衝撃を伴うそれは例えるならばソニックブームと呼ばれるもの、音速を以て繰り出される不可視の刃だ。
 広範囲を纏めて薙ぎ払うその旋風、槍を投擲した今御せるとは言うまい。

「(あるいは………―――)」

 それで油断を誘った可能性も、なくはない。
 起き上がりは普段よりも遅い。損傷だけが理由だというには、あまりにも不可解だ。

 なにか仕掛けた、という可能性はあった。それを理解しないほど、彼は凡愚ではない。

>ランサー

8ヶ月前 No.1134

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk


【大統領官邸⇒歴史是正機構本部/核シェルター⇒資料室/ミラノ】

 少年は、振り返らなかった。

 何が手に入ったのか、奪ったもの/与えたものはなにか。
 自業自得の末路を与えた盗賊は、そのいっさいを語ることはない。

 人を呪わば穴二つ。そうだ、その通りだ。
 何かを奪うというならば、奪われる覚悟がなくてはならない。
 他人の理屈がどうだの、社会的良識がどうだの、という話ではない。
 それはミラノという少年が自分に課した規範だった。物心付くころから盗賊に身をやつし、持たざるものの側に立って生きてきた少年が、自らをそのように定義して来たルールだった。
 だから、彼はミルグラムに同情を見せるでもないし、背負う気さえもない。
 彼の命など最初から欲しくもない。何度も言うように、自業自得で、因果応報だ。

「(………ま。お前が悪いんじゃないんだろうけどよ)」

 ミルグラム・ゴートが完全に悪いのかと言われたら、きっと、そうではない。
 彼は被害者だ。被害者が転じた加害者、生贄にされ続けてきた羊たちの王だ。
 それが人間であるからこそ“何人も生まれてきた”羊たちが、たまたま復讐の機会を得ただけの存在だ。

 それ以上のことを、ミラノは知らない。知らないが、知る気もない。
 それだけならば何も言うまいが、彼は奪われるものから奪うものになった。死んでも終わらない、奪っても奪っても満足出来ず乾いた道を走り続けるだけの亡者になった。
 生きるためではなく。おそらくは、きっと“奪うために”彼は在るのだと感じた。
 その過程は他人のせいで、間が悪く、須く人間がそのようなものであるとしても―――ミルグラム・ゴートはただ一つの選択を間違えたのだ。であるに、盗賊王/銀狼の琴線に触れた。
 自業自得の略奪者は、風のように現れた略奪者に食われたと、ただそれだけだ。


「はー、ホントすっきりしねぇの。次行くか、次―――」

 生贄だった羊の最後の断末魔だけを残して、彼は先に進んだ。
 目ぼしいものは漁り尽くした。
 残る場所はミラノの感覚が告げている。“そこは危険だ”と教えてくれている。
 であるに、彼の行先はほぼ決まったも同然だ。仮にもこちらが世話になった陣営からモノ獲りというわけにも行かないし、そもそもこの火事場の元凶が何処であるのかも察しが付かないわけではない。

 彼は横暴だが、最後の一線は越えない少年だった。だからこそ―――。



◇ ◆ ◇



「―――此処は、違うな」


 だからこそ、彼はそこに足を踏み入れていた。
 歴史是正機構の本部。たまたま、セキュリティと電子ロックによる防衛網がぐちゃぐちゃにされた後だからこそ乗り込めた敵本拠地。敗走する兵士たちから座標を問い質し、そうしてやって来た先こそが此処だった。
 別段、彼に時空防衛連盟の戦争を手伝う意図はない。
 彼があの陣営に手を貸す最大の理由は“比較的頭がマシだから”だ。
 元より誰かを従えることはあっても、誰かの下につくような性格でもない盗賊王は、しかしこうしたイレギュラーな事態であっても変わらない。平常運転で事を成す。如何なる状況でも取るべき手法は変わらない。

 資料室のひとつに手を掛け、乱雑に扉を蹴破る。
 そうして辺りを見渡した後、発した第一声がそれだったように。


「(人によっちゃ宝箱みてーなもんだろうけどなぁ。今は別に興味もない。モロの外れだ)」

「(もう少し奥―――は、不味いな。なんつーか、ヤな予感がする。
  じゃあさっきの道だったか? 後でそっちも探ってみるとして………今はここだな)」


 結局のところ、彼がここに乗り込んだことに細かな理由はない。
 おそらくは此処の誰かが争いを引き起こした元凶である、と把握した上での虱潰し。
 何処かを探れば目当ての首領は見つかるだろう、と。要はその程度の発想から来るものだ。


>(ミルグラム・ゴート)(前半)

>ALL(後半)


【戦闘終了から2週間以上の遅れになりましたが、此方こそお相手ありがとうございましたm(._.)m】

8ヶ月前 No.1135

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

 世界の外は、真っ暗だった。
 閉じ籠っていた小さな箱庭の外側に、自分から飛び出した癖に。
 最初に自分が覚えた感想は、ただ只管に“暗い”だったことを、覚えている。

 足元も覚束ない。視界の先も上手くいかない。
 ただ分かるだけの範囲から飛び出した先は、ひたすらに現実感が無かった。
 何より確かな感覚を持たなかったのは自分自身だ。何も持たない、道標になるような灯など一つもない。それがないから、後ろにも先にも進めないのがわたしなのだと、ほかでもない自分が知っている。
 だから、一歩を踏み出すにもひどく労力を使った。それでも、一歩を踏み出した。

 暗闇の中で、声を聴いた気がする。
 その方向に、また一歩踏み出す。踏み出すだけなのに、普段と違う。
 知らない場所、分からないもの。理解できないところ。
 そうした場所に踏み出すことの痛さと怖さを、自分は良く知っている。


“知っているのに。なら、自分は何故”
“あの灯火のもとへと、歩いているのだろう?”


 自問に対する解答は、自分で打ち出すしかない。
 不慣れな自分の感情の精査をしながら、もう一歩踏み出す。


 灯が、見えたのだ。歪だが、自分はきっと初めて知るかたちの灯火を。
 触れたいと思って、知りたいと思った。
 ちぐはぐだと思っていた少女が、それでも尚そう在ることができる。
 という事実だけが、たぶん羨ましかった。
 まっすぐに立つ芯があって、どこか知っているものに近いちぐはぐさの持ち主だった彼女が………名前も知らない、どうでもいいはずの他人が、どうでも良くないと思えた。たったそれだけだ。

 本当に調子の狂う相手だった。
 だって、アレは別に知人でも、今までわたしの内側に在ったものですらない。


“赤の他人だ。そのはずだ。今まで、どうでもいいって言って来たものだ”
“なのに斬れなかった。わたしは、どうして………―――”


 それは、もう語るに及ばない結論だった。
 だったが………そこを導き出すほど、“アリア”の感情にわたしは詳しくなかった。


 一歩、踏み出す。考えとは関係なく、世界の外側へと飛び出す。
 寄る辺のない自分には、寄る辺に出来るものが必要だった。
 なんでも良かったのだ。少なくとも今は、なんでも。

 ………だから、だろうか。
    手元にその灯火が見えて、触れた時に、ほんの少し■■したのは―――。




【時空防衛連盟本部/武器庫⇒救護室/アリア=イヴァンヒルト】




 目を、開けた。
 白い天井が見えていた。見慣れないことはない、殺風景な白い架空のソラだ。

 それが先ほど戦っていた場所のものではないことも、概ね察しは付いた。
 周囲20mほどのモノの気配なら、力の応用ですぐにでも感じ取れる―――そこに、覚えのあるかたちの少女は居なかった。代わりに、覚えのない人間のかたちは幾つかあるが、そこに関しては比較的今はどうでも良い内容だ。
 見覚えのない場所で目を開けた時、確認するべき内容は複数。
 力が行使できる状態か、周囲に人の気配はないか、そもそも此処は何処か………左から順番に、可能、居る、恐らく連盟本部の救護室か治療室―――ある程度の辺りを反射的に付けたところで、次に反射神経が動かすのは身体だった。動くか、そもそも動けるかどうかの確認をしないとならない。頭が考えるより前の、体の反応だ。

 だから、体を起こす。訂正………起こそうとした、だ。

「………ッ―――」

 ずきり、と走る痛みに、押し殺すような小さな声をあげた。
 痛みに耐え切れなかったというよりは、それを予想していなかったからこその感覚だが。

 その痛さが、今まで断続的にしか繋がっていない自分の状況を接続する。
 自分が何処で何をしていて、何故此処に居るのか。そこまでの状況を繋げていく。

「(そうだ、わたしは………)」
「(負けたんだ。なのに、生きている―――)」

 有体に言って、自分は敗れた。
 あの後目を閉じて、次に起きる先が何処なのか………―――そもそも、“起きている”という状況さえも確約できない状況で、諦観と一緒に負け惜しみめいた台詞を吐いて、そのまま意識を失った。
 次に目を開けることがあるとしても、ロクな場所ではないだろうと思っていた。
 ………それなのに、この待遇だ。捕虜という空気でもない、周囲の自分を見る眼は“襲撃者”への反応ではない。どうでもいい相手への対応でもない。では他のベッドはどうなのだ、と意識を割いても、それらの負傷者と、そもそも負傷者からの対応さえも、ほぼ一緒だ。


“武器庫での騒動に巻き込まれたらしいが………大丈夫かい、お嬢ちゃん”


 続いて聞こえてきた声に、思わず振り返って。
 その言葉が疑惑を確信に変えたものだから、小さくうなずいた。
 白衣の、大人だった。おそらくはここのドクターかなにかだろう。
 様子からしても敵意は見えない。………それが何を意味するのか、分からないわけではない。

“そうかい。暫くは安静にしていないとダメだが、親御さんは?”

 いません、と答える。
 嘘を吐いているわけでもない。そもそも、自分に“親”などと呼べる人間はいない。

 必要でもないことは応じず、聞かれたことだけに応じる。
 ―――その繰り返しで、やがてその大人は退散する。
 ベッドの上だけとはいえ、狭いながらもパーソナルスペースのある身だ。周りの視線を意識せず、時折来る言葉に“敵意を持たれない程度に”返してやれば、これから先のことを考えるのには全く問題はない。呆けている余裕があるとは思えない。そこまで自分は楽観的ではない。

 運の良いことに、自分の居る場所は抜け出そうと思えばいつでも抜け出せる場所だ。

 ………そして。運の悪いことに、何時気取られてもおかしくない場所だ。
    わたしだって阿呆じゃない。殺したのだから、殺される可能性を考えないわけじゃない。

 リスクとリターンの採算は合わせるようにと、彼女は言っていた。
 その点でいえば、本当なら負傷した身体を引き摺ってでも逃げ出すべきではある。

 だが―――。

「(………逃げ出して、何処に?)」

 逃げて、どうする。何処に戻って、何をする。
 失敗した。連絡を取ることも出来ない以上、自分はおそらく死んだ扱いになるだろう。
 何処にも居場所はない。戻ったとして、あの合理主義の女性が自分を再び扱うとは思えない。

 かといって、此処に居場所があるでもないだろう。
 いまの自分の領域は、人を殺す場所ではなく、この身体を横たわらせるベッドの上だけ。

 ………どうする、という自問に応じてくれる他人などいない。
    だから、少なくとも今は、自分で考えて、解答を作るしかなかった。

 少なくとも、傷が癒えるまでは。

>(ALL)


【ではお言葉に甘えて。重ね重ねお相手ありがとうございました〜m(._.)m】

8ヶ月前 No.1136

指輪の女帝 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/パージルク・ナズグル】

虐殺、戦い……いや、パージルクから言わせば、癌細胞にも等しい存在を取り除く浄化は滞りなく進行している。
それは必然である、彼女にとってはこれは正しい行いであり、自分は正しい事に死力を尽くしているのだから、必然的に負けるはずが無い。
他の者からすれば、元より人類最高峰の魔術師であったパージルク・ナズグルが無意識下で抑えていた「殺意」であるとか「憎しみ」を遠慮なく撒き散らし、さらにはある人物の能力によってリミッターを取り外された挙句、未来技術で再生されたコントロールクリスタルが埋め込まれた錫杖によって増幅されている。 そんな人間すら超え、魔族を超越しかねない"化け物"に勝てる物など、そう居ない。

ビルを破壊し、中に居る人間を全滅させた、足りる訳が無い。
この地域の敵軍を一掃した、まだ足りぬ。
皆殺しだ。

自分の夢を妨げる者と、その夢の先にあってはならない者は、一人たりとも生かしてはおかない。
パージルクが錫杖を振るえば、距離と空間が引き裂かれ、古代より幾つかのライフゴーレムが召喚され、そのまま錫杖をまだ光を放っている市街地に向ければ、そこにある全ての生命を殲滅せんとライフゴーレムたちは動き始めた。
ちょうどその時であった、あの女の声が聞こえたのは。 この時代に居るはずが無いもの、しかしながら、それはパージルクにとって興味の対象外だったのか、実際に肩を揺さぶられ、怒鳴り声が聞こえてようやくパージルクは目をニケの方へと向けた。

「……愚物が。 どうもしておらんよ。 むしろ、あのとき妾が平和ボケし過ぎていただけだ、あちらが異常だったのだ。 妾の人生でもっとも大事だったあの人のためにも、最愛の娘のためにもならないような自己満足に浸る、あの時が」

その目線は、心底軽蔑したような冷たい眼差し、"何故そんな事も分からないのかと"、目だけでニケに語りかけていた。
だが、その直後には、あの迷いながらも、ある種「自分の死」へと吹っ切れていた表情とは打って変わって、夢追い人のような、狂気染みた明るい様子で"あちらが異常だった"と語った。

もしも、もしもそれだけで済めば、まだ、彼女は彼女のままと言えたのかもしれない、しかし、次の瞬間には。

「そして、あの人の身体に、第二人種に味方した塵にも満たぬ小娘が触るなっ! 視界から消える事すら許さん、一度でも、魔道帝国に唾を吐きかけた存在は、必ず殺す、そこで黙って死ねェッ!!」

――光剣

錫杖の先端から巨大な光の剣が生成され、ニケを追い払うなどの目的ではなく、明らかに"首を刎ねる"ために振るおうとした。
その様は、魔道帝国と敵対することになっても、敵対者として、挑戦者として、一人の人間としてニケを尊重していた古代での言動とは全く異なる物だった。

だが、実際に光の剣が振るわれるより前に、パージルクはある人間の言葉を聞き、その姿を視認した。

ぎょろりとパージルクの眼球が動き、マロンの方へと向く。

……一瞬の沈黙が場を包んだ、その間、パージルクは何かを言おうとするようにぱくぱくと口を開いていたが。
まるでスイッチが切り替わるように、不敵な笑みを浮かべる。

「そうか、そうか。 ニケ、貴様もまた、"いい仲間"とつるんでいるようだな。 マロン、今のお前は知らない、分からないと言うだろう、だが、あの少し後に起きた事を妾は知った。 だから、お前のその馴れ馴れしさが、たまらなく鬱陶しいよ」

――よくも、あの人と育てた我が娘を

光の剣が無数の粒子になって散ったかと思うと、その粒子が一斉に光の棘へと変わる。
呪詛に近い言葉とともに、その棘は一斉にニケとマロンに飛ぶ、手加減など一切無い、ただ、初手から相手を殺すために。

>ニケ・エタンセル マロン・アベンシス

8ヶ月前 No.1137

目指せ王子様 @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/ルシウス・アルトリウス】

 片や明確な標的を定めず、圧倒的な物量で攻め立てる灼熱の洗礼。片や的確に狙いを定め、それなりの物量で攻め立てる光の洗礼。数だけで言えば、合算して総数約七十にも達する熾烈な反撃。雑兵を殲滅するには十分過ぎて、御釣りが出て来る程の苛烈さ。
 だが、今相対しているのは雑兵などではない。たった一つの油断を死へと繋げて来る、並々ならぬ強さを持った者。相手の選択次第では、先の一撃ですら致死に成り得たかもしれないだろう。
 そして当然、強者が相手であれば必ず通用するとは限らない。フリードリヒを庇う様にして動いたクラリスは迫り来る攻撃の一部を処理し、それ以外の総てを彼は魔術師らしく、ただ冷静に半透明の光の盾を形成して防ぎ切って見せる。

「うわぁっ!? あ、危なかった……」

 急速な勢いで接近して来たクラリスが放つ、三度に渡る背後からの拳撃。魔力を流し込んで強化された肉体が発揮する速度は、目で追う事を困難な物へと変え。増幅する力は、一撃が誇る破壊の強さを高める。幸い、戦いへの集中が高まっていた事もあり、咄嗟の判断で動く事が出来たとは言え、先程までの心構えであったら、確実に重傷を負い、当たり所次第では致命傷になっていただろう。
 そのふざけた態度とは裏腹に、瞬時に敵の弱みを見抜くだけの聡明さを以て、相手の動きが止まっている一瞬の間に距離を取る事で避け。更に、魔術師が横槍として放つ無数の岩の槍、串刺しにせんと迫るそれを直感で捉え、寸での所で避けて見せる。流石に死を間近に感じた事もあってか、少しばかり心に焦燥が芽生えてくるが。
 同じく退避しているコーマが行った目配せ。言葉を介さずに行われた刹那の交信に一つの安心を覚えながらも、同時にそれが意味する物を読み取り、そして結論を出す。それが果たして正しいのかどうかは解らない。だが、これからの未来を考えるのであれば、是が非でも正解を引き当てねばなるまい。勝利を掴み取ると言う意味でも、彼女を愛馬として迎え入れるに相応しい人間である事を証明すると言う意味でも。

「……任せてくれ、コーマ!」

 手に持つ聖剣、もといレーザーソードへと流し込んでいく光の魔力。それに比例する形で徐々に輝きを増すそれを右手に構え、反撃の瞬間を待つルシウス。やがて響き渡る合図の声、放出する火焔の渦が敵対者を取り囲まんと大蛇の如くに襲い掛かったその直後に――力強い声で、応じるは聖剣の主。
 空いた左手を基点に出現させる小さな魔方陣。魔方陣と重なる位置に居るのは、クラリス。彼女の戦法からして迂闊に接近するのはリスクが高く、万が一焔を突破された場合、反撃を喰らいかねない。故に取るべきは、遠距離からの攻撃。陣の中心から放たれるは、強烈な光の奔流。当たれば無事で済む筈が無い、先の光線より二回り上の威力を宿している。
 そして、陣が発動した直後に大地を疾走し、フリードリヒへの肉薄を開始。彼の戦法の場合、遠距離戦を得意としているのは明確。逆に近距離戦は未知数な部分もあるが、恐らくは不得意な可能性は高い。加えて、此方は特に意識していないのだが、焔に続く追撃が目前まで来ている状況に、心理を狂わせられる望みも僅かにはある。
 剣が届く距離まで踏み込んだ刹那に、放つはただの一突き、ただそれだけ。然し、直後に放出される光の奔流がフリードリヒへと強襲を仕掛ける。仮に光の盾を張られようとも、この一突きが必ず孔を空け、放出される光の奔流が敵に害を為す。これを無傷で乗り越えるのであれば、取るべきは別の手段であるのは明白と言えよう。

>フリードリヒ・ガーデルマン クラリス・ツァクトユーリ コーマ・アンダルーシャ

8ヶ月前 No.1138

ゴシックは改変少女 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【歴史是正機構本部/食堂/マシュマロ・ヴァンディール】

改変の副産物、二の巻。

通路での勝利が一転攻勢の鍵となる。難攻不落のセキュリティを崩された是正は、連盟の容赦ない攻撃の波にのまれつつあった。
今が好機と見た本部は、大規模な歩兵戦力を投入。勝機を逃さぬは兵法の常道…掴んだチャンスを放すどころか握り潰さんばかりの姿勢。
しかし全てトントン拍子に進むとは限らないのが現実。それにしたって度が過ぎているのは否めないが。

敵本拠地の制圧に当たる一個大隊を襲ったのは、同じ歩兵でも異能の持ち主でもない。神格。霞がかった頂から見下ろす存在。人ならざる者。
特別な力を持つ以外は常人と同じ能力者とは比べ物にならない。具体的に言えば頭の作りが違うのだ。故にどう足掻こうと掌の上。
何故こんな真似をと問い詰めても、返ってくる答えは"気まぐれ"。人が習性を逆手にとって虫けらで遊ぶようなものかもしれない。

「りーちゃーん!りーちゃんどこですかー!」

混乱と戦乱。内から外から押し寄せるトラブルの大洪水の中で、護衛の兵士を鬱屈とさせながら声を張り上げる少女が一人。
低い背丈にあどけない顔つき、やや痛々しいゴシック&ロリータの装いは、血と悲鳴が渦を成す戦場にはとてもとても不似合いで。
いいところの育ちだろう、苦労の欠片も知らないだろうと思わせる無垢な佇まいの裏で、艱難辛苦を塗り固めたバベルの塔に絶賛ロッククライミング中。

その名もマシュマロ・ヴァンディール。変則型ぼっちにして、あのシフォン・ヴァンディールやショコラ・ヴァンディールの親戚である。

彼女の使命は友人の安否確認。連絡の途絶えた一個大隊を追って突入した少女を、文字通りミイラ取りがミイラにならないよう補佐する。
敵の注目を一身に集めながらも呼びかけるのはそのため。攻撃を仕掛けてくる兵は護衛が蹴散らすし、そうでなくても自分で対処できる。
様々な意味で年齢不相応な存在なのだ。実力も、精神年齢も、肝の据わり具合も。

「あ!やっと見つけた!やっほーりーちゃん、兵隊さんたちは大丈―――

へっ?」

そんな彼女でも耐えかねる建築物が一柱。四肢を潰された兵士のタワーを見るや、口元を押さえてしゃがみ込む。
刺激が強いだの残酷だのではない、絶望的すぎる。能力者には劣るとはいえ訓練を積んだ精兵達、それが折り重なって倒れている。
数千時間かけて鍛え上げられた身体が、マッチ棒のように折られて腰掛にされている現状。足もかくかくと震えを禁じ得ない。

とはいえ目的の人物が攻撃に曝されているとあっては怯えている場合ではない。護衛が二の舞にならないよう退去を命じると、セリィと水流の間に割って入り、展開するは従姉妹譲りの防御技。

「ブリザードウォーーールッ!」

右掌に氷魔法のエネルギーを握り込み、左、右と二度大きく振るった後に発動。吹き荒ぶブリザードの障壁が水流を阻み、僅かに凍り付かせつつ足止めに貢献。
しかし力の差は歴然。すぐに綻びが生じ始める。そもそも『ブリザードウォール』は対飛び道具に特化した低コスト低威力の技、押し寄せる濁流を前にバリケードの役目を果たすことは能わない。
もう間もなく、川が氾濫し水門を蹴破るが如く、ほとんど勢いの削がれていない水流が再度襲い掛かる。限界を悟ったマシュマロは僅かに振り向き、今のうちに反撃するようセリィへ促すのだった。

――ところでマシュマロの行った先々で付きまとう問題だが、それはセリィを相手にしても変わることはない。
彼女からすれば恐怖もいいところだろう。初対面の人間が渾名らしき名を呼び、戦闘に乱入し、挙句身体を張ってまで自分の盾になろうとするのだから。
直撃こそ免れたものの水流にのまれ、後方へと流されていく姿に何を覚えるのか。少なくとも好意的なものではなさそうだ。

>>セリィ、洩矢諏訪子

8ヶ月前 No.1139

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【歴史是正機構/監視室/ランサー】

「……」
 馬鹿馬鹿しかった。
 弱肉強食は否定しないが、その選民意識が癪だった。
 高揚からひどく凍えていく。
(そういうのも必要だと思うが……コイツの場合は"ありすぎる")
 こういう傲りも時として、前進する爆発力となり侮れないが黒騎士の場合はありすぎて逆に仇となっている。
 余分な傲りを削ぎ落とせば、力量も在り方が釣り合った戦士になっていただけに残念だとランサーは思っていた。
 呵呵大笑。
 つんざく高笑いに顔をしかめつつも、暴風がミキサーのようにあらゆる物をみじん切りにしていく様子を見て、風で不可視の攻撃とはどこかで見た気がするが、思い出させる暇を与えてはくれなかった。
 一か八か、刃が届かない場所まで疾走するが胴体がえぐられ、皮一枚繋がっているかいないかまでぱっくりと傷ができ血が噴出しても、ランサーは絶望の色を見せずに痛みに耐えつつもそこに立ちニヤリと勝ち気な笑みを浮かべ相手をわざとこちらに向けさせるよう、挑発的な態度を取った。
「なあ。テメエ、オレがさっきあの戦況で"防御"を捨てたか―――――わかるか?」
 粥が無限に溢れても器が足りないぐらいの尊大な態度ならきっと、この煽りに乗る。
 体をふらつきながら言葉を紡ぎ終わると、相手を掠り遥か彼方の空まで飛んだ朱槍は丁度、ランサーが視認できるところまで帰還しており、退却せず真正面で相手に立ち向かった種明かしがそろそろ、その身を持って証明する時が迫りつつあり。
>シャプール

8ヶ月前 No.1140

血に飢えた玉兎 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【時空防衛連盟本部/食堂/雪葉】

徒党を組んで襲い掛かってくる敵は、得てして連携攻撃を仕掛けてくるものだ。味方として協力している以上、まさか単独で戦闘を進めるはずがないと、雪葉は考えたのだ。
しかし、その目論見は失敗に終わる。なんと敵の片方は、はじめから連携など頭にない人物であったのだ。これにはさすがの彼女も、驚愕の表情を浮かべざるを得なかった。
更に、接近攻撃を受け止められたことで、こちらの立ち位置まで露呈してしまった。焦る雪葉。だが、そんな暇も与えないというかの如く、無数の鎖が彼女の身動きを封じようと迫りくる。

「おっひょぉぉぉ!? 容赦なさすぎじゃないですかぁ!?」

既のところで何とか攻撃を躱しながら、雪葉は思わず本音をこぼす。気配を消して優位に戦闘を進めているはずだというのに、むしろ追い詰められているのは自分の方ではないか。
どうしてこうなっているのか、それを冷静に分析しようと試みるが、やはり納得のいく答えは浮かんでこない。もしや、自分はあまりに強すぎる相手に挑んでしまったのだろうか?
いや、実力差すらも無意味に変え、勝利をもたらすのがこの「気配を操る程度の能力」だ。見えない相手に攻撃を当てることが出来ないというのは、ごく当たり前のこと。
つまり、当たり前のことを続けていれば、自分は勝てるということだ。落ち着け、冷静になって攻撃を組み立てよう。単調にならないよう、変化を付け加えるべき時だ。

「見えないばかりじゃつまらないですよね〜、こんなことも出来るんですよ〜?」

次の瞬間、雪葉の気配が強烈に漂い始める。同時に、敵の二人は彼女を視界に捉えるだろう。ここまでならば、ただ単に気配を強くして自らの居場所を教えただけ。
しかし、真骨頂はここからである。加速し、視認出来ないほどの速度で飛び回る雪葉。膨れ上がった気配は部屋全体を包み込むほどとなっており、彼女の位置を正確に把握することが出来ない。
人間の脳を揺さぶろうかという強い気配とともに、雪葉が二人の首を描き切ろうとナイフを振るう。決して、止まることはない。チャンスがあるとすれば、それは彼女が攻撃を行う一瞬の隙だ。
だが、平衡感覚すらも乱す気配の波の中で、彼らが正確な攻撃を打てるかどうか。それが、最大の焦点となることだろう。

>ユスティーツ・シュタルク、桐生戦兎

8ヶ月前 No.1141

紅焔の塵殺者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【歴史是正機構本部/実験室/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 赫怒の情に感応して増幅する焔の魔力。先の一戦を経て燃え上がった"火種"は、狂気の虜囚となった獅子の肉体を著しく変質させると同時に、超絶なる蹂躙の力を彼に与えた。焦土へと塗り替えられた実験室内部の凄絶なる光景は、その程度の表れ。一度、灼熱を掻き集めて解放するだけで、空間は瞬く間に生存不能の領域へと変える事が出来る。
 仮に生存できる存在が居るとすれば、それに拮抗し得るだけの力を持つか、或いは、彼が憤怒の情を抱く事が出来ない相手のみと相対させ、それ以前に灼熱を無力化してしまうかの二つ。然し、前者の大半は際限無く昂る憤怒によっていずれ追い放される宿命に在り。後者が実現する場面は、限定的な物であり、可能性としては限りなく低い。何故ならば、それは彼が認識する中での特別、"例外"である必要があるから。そんな存在、果たして居るかどうかさえ怪しい。

「そうだな、否定はしない。これが落ち度である事は確かだ」

 解放した被験体の逃走をより確実な物に変える為にも、今の基準では僅かと言う認識が相応しい地の魔力を用いてゴーレムの生成へと取り掛かる、そう決断したその矢先に、聞こえて来たのは乾いた拍手。音の主は触手で捕らえた被験体の少女を見せびらかす。口を塞ぎ、必死に逃れようともがきながら涙を流すその姿は痛ましく。同時に、彼女が抱く恐怖は奴と自身に向けられているのだと判断する――当然だろう、奴も自分も、真っ当な人ではない。恐怖の対象として見做すには十分過ぎるくらいだろう。

「……その子を離して貰うぞ。彼女は、俺や貴様の様な化物と関わるべき存在ではない」

 だからこそ、彼女の心が恐怖で壊れてしまう前に、早急に解放すべきであると判断し、行動に打って出る。緋色に煌く焔の剣を構え、一瞬の内に視界から消え去ると、直後にその背後から出現し、死を齎すべく六度に渡って神速の刺突を放つ。怪物を滅ぼすが為の術は幾らでもあるが、あくまで少女は巻き込むまいとして、数ある内の中で選択した攻撃手段がこれであった。

>黄衣なる者

8ヶ月前 No.1142

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【歴史是正機構/実験室/黄衣なる者】


自覚はあるみたいだねえ、落ち度も、自身が怖れられる存在であることも、ねえ。うんうん、ならまだ楽しめる領域だねえ。まあ自覚して尚そうあろうとする以上は骨が折れそうだけれども、気付いていないよりはずっと楽でいいねえ。
この人間擬きは何故そうしたのかまでは知りもしないけどねえ、随分と都合の良い身勝手な夢を見ている気がするねえ。態度から見るに正しく在ろうとはしているんだろうけどねえ、でなければただ焼けば良いだけだからねえ。
ああでも、確かに言ったんだよねえ。関わるべき存在ではないってねえ、なのに何故この場に居るんだろうねえ。この組織が悪ならば、一切合切焼いてしまえばいいのにねえ。実際、この部屋は酷い有様だからねえ。最初からそうしてしまえばいいのにねえ。
でも、そうしていないんだよねえ。逃がした、まあこの触手に捕まっているけどねえ、そうして助けるべき命を判断出来ているのにねえ。それなのに、化け物と称する自覚があり、根拠がある。何とも、どっちつかずだねえ。
邪魔だと、敵だと判断したならば助けるべきも全て鏖殺してしまえば問題ないのにねえ。助けるべきを優先し、守ることを念頭に置いて戦う事を選べば問題ないのにねえ。どちらにも振り切れない人間擬きは、まだ人間の範疇に居ると思うけどねえ。

「そうそう、君の落ち度だ。一時の救済も勿論必要だけどねえ、力なきものを助けるならば庇護の方が重要だよねえ。」
「ああ、勿論離すつもりはないねえ。ここで離すなら捕まえてくる理由がないからねえ、理由のない事なんて滅多にないと思うけどねえ。」

突然目の前から消えたかと思えば、後ろからとはねえ。人間擬きとは称しているけど、少しばかり逸脱し過ぎだねえ。魔力を上手く作用させれば枠からはみ出すことは出来るけどねえ、幾ら何でも人間の感知の限界を飛び越えるのは怖いねえ。
それでも、事前の準備さえしっかりとしていればどうにかなるものなんだよねえ。背後からの神速を誇る六つの刺突、速度は脅威だけど点である以上力場で逸らせるんだよねえ。あ、そうだねえ、ちょっと鎌をかけてみようねえ。
突きを力場で逸らしながらあくまで自然に回避行動を取るねえ、おっと掠っただけでもローブが千切れ飛ぶねえ。怖ろしいねえ、そんな怖ろしいものを傷付けたくない相手が居るのに放つのは、危ないよねえ。
ほうら、うっかり被検体ちゃんを掴んでいた触手が逸らした突きの近くに行ってしまったねえ。あら危ないねえ、もう少しで突きの一つが頭を貫いちゃうところだったねえ。特に何でもないように引き寄せて被検体ちゃんを見るねえ、勿論人間擬きから距離を取りながらねえ。
顔から頭部にかけて一本の赤い線が出来てしまったねえ、うんうん肉が抉れるほどでなくて良かったねえ、焼けてるけど。まあ、恐怖でどうにかなりそうなほど震えてるけどねえ。さっきみたいに、逃げるために暴れる気力が削げるほど、怖かったみたいだねえ。
可哀相にねえ、助けてくれた恩人に傷付けられるんだからねえ。まあ思惑はあったにしても、傷付けることを厭わずに行動して来たからねえ。どうして盾にすると考えないんだろうねえ、人質何て人間の中では有名すぎる手段だろうにねえ。

「おやおや、危ないねえ。この子を盾にされるとは考えないんだねえ、良かったねえ、そんな外道が相手なら君は助けた相手を殺す外道になっていたねえ。」
「まあ、この子の顔に傷をつけたのは紛れもなく君のそれなんだけどねえ。ほら、ここは裂傷と火傷が合わさって酷い傷になっているねえ。」

酷い傷、なんてのは誇張表現だけどねえ。触手で被検体ちゃんの髪を掻き分けて傷を見せつけるねえ、右頬から耳の上部を通って側頭部までの一本傷だねえ。下手をすれば目を焼き切っていたかもしれないねえ、恐ろしいねえ人間擬きは。
さて、ここでどう動くかで判別がつくだろうねえ。気にせず殺しにかかるなら被検体ちゃんの短い命はここで終わってしまうねえ、戦いを放棄するなら適度に痛めつけて、いや義理立てする為には殺さないと駄目かねえ、まあそれはその時だねえ。
何方にしても、関わるべきでない存在と称した被検体ちゃんをどう扱うかで決まるねえ。人間に戻れるか、殺戮者へ進むか、守護者になるか、それとも予想だにしない存在に至るか。まあ、どれでも面白そうだからいいけどねえ、このままが一番面白くなさそうだからねえ。
そうそう、攻撃をされたのに受けっぱなしは良くはないからねえ。実力差がある以上効きはしないだろうけどねえ、何もしないよりはずっといいだろうからねえ。一応、普通の人間なら当たれば死ぬ攻撃はしておこうねえ。
風の刃、狙いは胴と首だねえ。一応視界内からは左右と上部、死角からは背後の計四つを飛ばそうねえ。当たれば人体を両断する程度の威力はあるけどねえ、人間擬きは擬きだからねえ。効く気がしないねえ。

「そうそう、人間にはお決まりの台詞があるみたいだからねえ。言っておこうかねえ、ほら、こういうのは大事だろうからねえ。」
「この子の命が惜しければ投降することだねえ、抵抗したらどうなるかは……分かるよねえ?」

クスクスと笑いながら話しかけるねえ、一応最終確認って奴だねえ。確認は重要だからねえ、殺すつもりがなかっただなんて逃げ道は許さないねえ。こうまで言ったんだ、それで被検体ちゃんが死んでも人間擬きにも責はあるからねえ。
そう、敵が憎いならば味方も助けるべき存在も関係なく焼けば良い。それが出来ないなら味方も守れるよう人間なりに強くなればいい、人間は人間だからこそ面白い。どちらに振りきれるも自由だ、捨てるなら全て捨て、守るなら全て守る、欲張ればいいのさ。
まあ、そういうわけだからねえ。人間として進むことを期待するけどねえ、人でなくなったのに人であろうとする彼女が居たんだ、人なのに人に留まろうとしない存在が居ても良いけどねえ、それでも人間のまま面白いと嬉しいけどねえ。
何であれ、道を選ぶのは人間擬き自身だからねえ。今のそれが面白くなりそうにないから介入したけれど、面白くなりそうなら義理だけ果たせば役目はお終いだからねえ。どちらにしても、損はないからそこは気楽だねえ。
まあ、それでも、対峙する相手が悉く手のかかる相手なのは勘弁してほしいねえ。強くないんだよねえ、戦闘も得意じゃないしねえ。困ったねえ、うんうん、困ったねえ。まあ、どうしようもないけどねえ。

>>レオンハルト・ローゼンクランツ

8ヶ月前 No.1143

シャプール @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

【歴史是正機構本部/監視室/シャプール】

 再三繰り返したが………彼は戦士ではない。
 シャプールという男は兵であることに違いはないが、誇りある戦士ではない。

 彼が信奉するのは、ただひとつの絶対的な力という現象だ。
 あらゆる理屈の土台に成り立つものは力。
 富も名声も幸福も、信念も征服も、覇道も王道も、すべてはそれを成す力あってのこと。
 実に身も蓋もない言い方にはなるが“気に入らないものを殴り倒す”だけの武力があるならば言論の必要はなく、戦う舞台に上がる前に敵対者のすべてを打ち負かし、屈服させるだけの知恵と力があるならば、それは紛れもなく無敵というものだろう。
 それこそが絶対の存在。揺るがない力を兼ね備えたものこそが世界で覇を唱えるものだ。

 ………そう信ずるが故に、
 あらゆる怪物さえも小手先で下す絶対者たる“騎士”の力に魂を焼かれた。
 それがシャプールだ。強者であることに違いはないが、彼に誇りなどありはしない。
 リスクとリターンを計算し、その上ですべてを焼き尽くすような暴力をこそ尊ぶ男だ。

 であるに―――


「これはこれは………」


 シャプールは慢心とプライドに身を任せた尊大な“だけ”の存在ではない。
 ランサーの言葉が意図的な挑発であることを理解出来ない短絡的な男ではない。

「剣で勝てねば次は舌戦、次は小細工か? 笑わせる」

「(………違うな。これは、挑発か。
  私にそこまでして“前”に出てほしい理由があると見える。ならばそいつは何故だ?
  先ほどの起き上がりがあれほど遅かったのは………それが理由か?)」

 冷笑じみた声とともに返して―――しかしその上で、その意図への思考も忘れない。
 力だけで圧し潰せるならばそれが最善、最良にして理想の流れだ。
 しかしそうではないのなら………彼とて判断はする。相手の手札は完全に読み切っていない、白兵戦では無類の強さを誇ると判断こそしたが、それ以外の手札が無いという確証はない。
 最も“これだ”と判断し得るものは一つ………足元、あのポイントへの仕込みだ。
 なにかしていないという保障はない。であるに、黒騎士はその絶対的な力を振るうと決め打つ前に黒風を解き放ったのだ。これを続けて尚槍兵の様子が変わらないのであれば、何か他に仕込みがありますと言っているようなもの。多少でも変わるのであれば、よほど接近してほしい理由があるということになるからだ。


 ………挑発的なあの言い回し。
    あの態度は虚勢か、それとも好機を待っているのか。


 どちらにせよ、近寄ってこないならば………。
 黒い翼をもう一度はためかせ、風を巻き起こそうとした時―――。

 シャプールは、あることに気が付いた。

「貴様………」
「(なぜ、笑っている?)」

 槍兵が笑っている。全身裂傷の状態でなおも戦闘を続行する脅威の生命力も然ることながら、
 おまえには気付けまいとでも言わんばかりに―――ヤツは、どうしようもなく笑っている。


 あれは虚勢ではない。
 すぐさま確信を得た。


    、 ・・・・・
「(そうか、下ではない! ヤツが仕掛けたのは………!)」



 あれは、

  獲物が罠に掛かった時の狩人の、
  策略が成功した時の戦士の瞳だ―――!


    ・・・
「―――あの槍かッ!」



 シャプールが此処で相手を観察しないほどの凡愚ならば。
 槍兵が投げた槍は、見事黒騎士の核を撃ち貫き、その巨体を打倒していただろう。
 赤枝の騎士が誇る必中の魔槍―――真名を伴わずともその一撃は、さながら弾道ミサイルの如き威力に匹敵する。全力で投擲された魔槍は一つ二つの施設程度ならば余波で打ち崩す文字通りの戦略兵器。
 如何な『シンナイト』の装甲と言えども耐えきれる保証はなく。
 故に此処こそがシャプールの命の分水嶺となった。急転して飛来してくる槍の気配を察知したその時に、彼は即死の未来が確定するケースを防いだのだ。

 しかし―――。


「死に損ないがァ―――ッ!」
「(防いでいる暇はない………!)」


 もはや逃れるには値しない。
 攻・防・速の全てにおいて巨体とはアドバンテージになりうるものだが、
 しかし“被弾面積”という一点においては話が別だ。こればかりは如何ともし難い。
 被弾個所を予測し、彼は空の疾走から陸の滑走へと行動を切り替える。
 槍は黒騎士の翼をいとも容易く引き千切り貫通した。
 片翼に大穴を開けたそれはもはや飛行という用途には使用できまい。

 だが………所詮、翼だ。
 四肢は未だもがれぬ、『シンナイト』は壊れぬ。
 部位として重要な部分であったことは否定しないが、死に損ない一人ならば―――。


「足掻きは―――終わりだッ!」


 この剣で穿てる。
 判断と同時、ランサーのレンジに過剰に踏み込むことをせず、
 黒騎士はクロスコンバットにならない程度の近距離から、その長剣を煌めかせた。

 突きの一撃を見舞うこと三度。
 いわゆる『三段突き』と言われる剣技は、ランサーの機敏な動作と受け流しを無理やり力で押し込むような苛烈さに満ちている。一撃目を防いでもその剛力を伴う二撃目、三撃目が跳ね返るように襲い掛かる。
 特別な技法などではない。力と速度ゆえに成せる『シンナイト』ならではの連撃。まさしく決殺の一撃となり得るものだが、同時に彼はまだ“足元に何かを仕掛けた”という可能性を捨てていない。だからこその中距離から放つ『三段突き』だ。
 シャプールのそれは相手の行動を過剰に深読みした凶となるか、あるいは………。

>ランサー

8ヶ月前 No.1144

紅焔の塵殺者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【歴史是正機構本部/実験室/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 敵の感知を上回る心算での移動、直後に繰り出す神速六突。そのローブごと敵を貫き、死を与える筈の其れは、不可視の力場によって逸らされる。回避行動の最中の敵を掠めると、その身に纏うローブを千切り飛ばし。そして、さも偶然を装うが如く、少女を掴んでいた触手は逸らされた刃の近くへと行き――顔から頭部にかけての紅い一筋の線を走らせる。人間も良く使う常套手段、人質を盾として使うそれを敵は敢行して来たのだ。
 これが以前までの、人であった頃の彼であれば己の失策を嘆き、酷く心を傷めたであろうが――既に、今の彼にそんな"人間らしい"感情は無縁の物。己が失態を起こした事実を認識すれど、悲しみを抱く事は無く。あらゆる事象が彼の心を動揺を生むには至らない。

「外道……外道か。ああ、俺は外道だとも、其れこそ既に。己が選んだ道を突き進む限り、そうなる事は決して避けられん」
「……その傷を与えた過ちも。全てを贖い、その責を受けよう。来たるべき報いが訪れた時に」

 酷い傷、そう表現して見せ付ける少女の傷。下手をすればその右目を奪っていたかもしれない、そう予感させる傷を見せ付けられても――やはり、その心は揺らがない。助けた筈の相手に対し、恐怖と言う名の絶望と死を与える外道であると肯定し。犯した過ちは、来たるべき時が訪れた暁に、全てを贖い、そしてその責を受けると宣誓し。

「――救う理由はあるが、止まる理由にはならない。この返答だけで十分だろう」

 ――告げられる最終確認。少女の命が惜しければ、大人しく投降しろ、抵抗はするな。その言葉に対する返答は、拒否。己が選択した道に課せられる義務とは、最後の瞬間まで貫き通す事であり。総ての邪悪を塵殺した果てに、自らもまた一つの"悪"として大衆に消される末路こそが我が運命。その旅路の中で、誰かを救う事はあれども。決して、正義の味方を名乗る資格も、そう呼ばれる資格も存在しない。
 迫る風の刃、それを歯牙にもかけずに強引に突破し。切り裂かれた肉体、血の一滴すら零れ落ちぬその身体は、生成される焔の魔力によって即座に修繕される。

「……滅びるがいい」

 紡がれる言葉と共に顕現するは、焔の巨腕。超々高温を帯びた、圧倒的質量を誇る、鋼鉄の腕。彼が司る焔の剣と同様の原理を以て生成されたそれは、仕手の意志に応じるがままに放たれ。その巨躯を圧壊すべく、その拳を叩き込む。仮に少女を盾に使われようとも、彼の心は決して揺らぐ事は無い。だから、救えなかったとしても――男の在り方は、決して変わらないのである。

>黄衣なる者

8ヶ月前 No.1145

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【歴史是正機構/監視室/ランサー】

 起き上がりが遅かったのは、強大な力が生み出した余波で頭を打ち一瞬意識が飛んでから、また意識を取り戻して遅れただけであり、むしろ絶大な力が通じたと喜ぶべきであるが、ランサーも黒騎士もそれを知らないでいた。

 ランサーが投擲したのは、槍は自力で自分の手元に帰ってくるからだ。
 だから、それも含んで防御を捨て攻撃重視の道を選んだ。
 手元に戻ってきた槍を掴むと、罵声を浴びさせてくる騎士に対してこちらも趣旨返しにと皮肉を浴びさせた。
「さっきの威勢はどうした? 黒騎士さんよ!」
 さすがにこの胴の傷は重い、早めにケリをつけたいが相手は許す筈もない。
 読み通り、やはりああいった類いの人間はこういうのに乗りやすい、見下しているモノの鳴き声は耳障りだと思っている節がある。
 そして、三下風情がと言わんばかりの口調で冷静な足取りで、こちらに踏み込んでくるが、今のランサーは純粋な力と力がぶつかり合う一騎討ちに乗っている為に、ルーンによる小細工は仕掛けないで戦う方針になっているので、警戒してもそんな物はない。
 黒騎士が思っている程、ランサーは複雑な人間ではない。
 単純明快。戦いで死んでも悔いがなければ笑って散り、戦士として尊敬する友が敵対しても。今生の別れとして一晩で飲み明かし、友と果てし合う事が光栄だと刃を交わし合う。
 それがランサーという男だ。
 ケルトの戦士は、死を恐れない。その思想を絶対的な力で捻り潰す相手が理解するのだろうか。
 今のランサーは死のリスクを全て捨てて、絶対的な力に打ち勝たんと動いていた。
 一撃目はなんとか弾いたが、重く響くような二撃目と三撃目はあえて受けながらも、踏み込まないならこちらからと言わんばかりに、ランサーは家がによって速度は落ちてしまったが持ち前の俊敏さで、前進し心臓辺りを目掛けて突かんとして。
 二度も言うが防御を捨て、攻撃を重点に置いているのは力こそ絶対だと語る黒騎士の思想に感化されただけの話である。
>シャプール

8ヶ月前 No.1146

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【大統領官邸/シチュエーションルーム/ユーフォリア・インテグラーレ】

姉妹同士の最初の衝突。恐ろしいほどに正確な狙いを以て放たれた拳は、しかしユーフォリアを捉えることはない。彼女もまた、驚異的な反射速度を活かし、これを凌いでみせた。
背後へと移動したフォルトゥナの動きを見逃さず、相手が着地する頃には既にそちらへ向き直っていたユーフォリア。両者の実力はほぼ互角であり、現状はどちらかのミス待ちだ。
敵対する理由は敵であるからと語る妹を、彼女は少しだけ悲しさを含ませた表情で見つめる。質問の答えになっていない。それでもフォルトゥナにとっては、それが正しいと信じて疑わない道なのだろう。
必死に他の感情を押し殺しているようにも感じられるフォルトゥナ。だが、ユーフォリアは未だ結論を見出だせない。失われた時間は、あまりにも長過ぎた。二人は、何もせずとも意思疎通が出来るほど、同じ時間を過ごせなかったのだ。
これは、ある意味それを取り戻す戦いでもある。そのために、自分がすべきことは何であるのかを考え、間違いのないように行動しなければならない。人間は誰しも、失敗を糧に成長を遂げる生物だが、この瞬間ばかりはそれが許されなかった。

「……」

聞こえてきた言葉に、ユーフォリアは思わず己の耳を疑う。彼女は今まで、ヴァイスハイトとフォルトゥナが離れ離れとなったことには、外部からの圧力が関係していると思っていた。
叔父か、あるいは政界の人間か。叔父が実の息子を遠ざけるとは考えにくい以上、別所からの力が働いたと見るのが自然だ。まさか、彼が自分から妹を捨てるはずがない。
それまでの当然が、塵のように崩れ去る瞬間。ヴァイスハイトは、自らの犯した過ちをこの場で告白した。彼は"己の意志"で、父親から逃れるために、フォルトゥナを置いていったのだと。
確かに、彼の言い分にも理解出来る点はある。まだ学生であった当時のヴァイスハイトにフォルトゥナを養うことは出来なかっただろうし、余計に悪い結果を招く可能性もあった。
だとしても……ユーフォリアはヴァイスハイトがあろうことか、フォルトゥナを"見捨てる"という選択をしたことに、深い失望を抱いた。この状況で何を言ったところで、それが相手に届くことはないだろう。
空虚な言葉が響く。彼の思いが虚しく霧散する。僅かに涙を浮かべたようにも見えるフォルトゥナの表情を垣間見た瞬間、ユーフォリアは自分が何をするべきなのかを理解することが出来た。
従弟に対するやり場のない怒りが込み上げてくるが、自分が同じ立場でそうしなかったという保証はない。怒りを鎮めて、冷静に。真っ直ぐとした視線で、フォルトゥナを見据える。

「貴方が歩んできた道、味わってきた苦難。それを私は知らない」
「けれど、痛みを共有して和らげることは、出来る。だから、教えてちょうだい。貴方がここへやって来るまで、どんな思いで、何をしてきたのかを」

ユーフォリアは決意を瞳に宿しながら、"ヴァイスハイトの視界を遮るような形で"、フォルトゥナと対峙する。今の彼を、妹と対話させてはならないと、判断したから。
彼がここで償いをしようとする度に、フォルトゥナは恐らく悪い方向へと傾いてしまう。言い方は悪いが、和解を果たすまでの間、彼は"邪魔者"でしかない。
敢えて言葉では伝えず、行動でさり気なく示すことにしたのは、ヴァイスハイトのことも思っての行動だ。しかし、これで分かってくれないのであれば、その時は直接言うしかないだろう。
全てを受け止める覚悟は出来ている。それが、姉妹の絆というもの。今は希薄となったそれを、必ず取り戻す。止まっていた時計の針が動き始めた。ユーフォリアとフォルトゥナが、全力でぶつかり合う瞬間だ。

>フォルトゥナ・インテグラーレ、ヴァイスハイト・インテグラーレ、アルカディア・クアドリフォリオ、ダグラス・マクファーデン

8ヶ月前 No.1147

世間知らず……? @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/クラリス・ツァクトユーリ】

クラリスの指摘によってフリードはだいぶ大きなショックを受けているようだったが、それに対して反論や無視をするのではなく、素直に聞き入れるという選択をした。
彼女はそんな彼に対して、「それでいい」とでも言いたげな微笑を向ける。まだフリードは若いのだから、今は間違った認識をしていても、ちゃんと直すことが出来るだろう。
ほぼほぼ同い年であるクラリスは、自分がそんな上から目線で接する資格はあるのだろうか、と一瞬悩んだが、正しくないことは正しくないと教えないと駄目だろう。
接近戦を仕掛けるクラリス、それを援護するフリード。二人の連携は完璧だ。どちらかに気を取られれば、もう片方の攻撃を受け止めることが出来ない。ふざけた連中に、凌ぐことなど不可能。
彼女はそう楽観的に捉え、蹴りを叩き込もうとしたのだが……足の勢いが止まった瞬間に伝わってきたのは、相手を吹き飛ばした爽快な感覚ではなく、攻撃が何かに遮られた嫌な感覚だ。

「っ!? 痛っっ……」

身体強化をきっちりと施し、更には勢いをつけて放ったというのに、相手の蹴りはこちらのそれを遥かに上回る威力であった。クラリスとコーマの足が激突した瞬間、彼女は激痛に顔を歪める。
フリードが援護してくれたことによって鍔迫り合いは中断されたが、どうもクラリスの様子がおかしい。先程からずっと、利き足である右足を宙に浮かせたままなのだ。
試しに地面に足を付き、力を入れてみるが……直後に彼女は、再び顔を歪めて崩れ落ちてしまった。明らかに捻挫している。フリードの助けがなければ、あのまま骨を折られていたかも知れない。
身体強化を掛けた足をも負傷させるコーマの脚力に若干の恐怖を抱きながらも、彼女は右足に更に大量の魔力を流すことによって麻酔の代わりとし、再び軽やかに動き回り始める。

あの脚力を目の当たりにして、もう一度足技で挑むというのは学習能力のない馬鹿がすることだ。クラリスは拳よりも足での攻撃を得意とするが、そこは割り切らなければならない。
刹那、超高速で彼女は駆け出す。生み出された風が自然の防御壁となり、コーマの放つ炎を寄せ付けない。右足におかしな感覚があるが、今は少し無理をしてもらおう。
フリードへと向けられたルシウスの攻撃に、足で空を切ることによって生み出した衝撃波を放って手助けをすると、クラリスの視線は再びコーマの方を向く。

「あんたの足、結構やるじゃん。でも、馬って多分手使うの得意じゃないでしょ? その、相手の苦手分野を突くのって気分的に乗らないんだけど、ごめん許して! これ戦いだから!」

相手の弱点を突くのは戦闘においての基本中の基本だが、クラリスはあまり気分が乗らなかった。何故だか、悪いことをしているように感じてしまうから。
勿論、敵が悪であれば躊躇なくやれたのだろうが、この場合悪に属しているのは自分達だ。そのため、世界のために戦っている彼らを前に、全力で戦うのは、少しだけ気が引けた。
それでも、死にたくはないので、生き残ることには全力を出す。コーマへ目にも留まらぬ五連撃の高速パンチをお見舞いした後、僅かに後退してサマーソルトを放つ。
締めが結局足技となってしまったが、逆回転で足を出されない限り打ち合いにはならない。だから、また負傷するということはないだろう。コーマの能力は確かに高いが、戦闘経験そのものはこちらが上回っているはずだ。

>コーマ・アンダルーシャ、フリードリヒ・ガーデルマン、ルシウス・アルトリウス

7ヶ月前 No.1148

受け継がれし凪の系譜 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/食堂/セリィ】

話が通じなかった。一体どういう精神構造をしているのか分からないが、とにかく停戦等を持ちかけても無意味なことは、ここまでの彼女の返答を見ていれば分かる。
となれば話は楽だ。全力で倒すことだけに集中すればいいのだから。取り敢えず、これを遊びだと形容していること事態が非常に気に食わないし、そう来てくれるのなら望むところだ。
命のやり取りを要求される戦場における、こうした飄々とした態度は、死を恐れず立ち向かう者達に対しての冒涜といっても過言ではない。諏訪子はきっと、そんな連中のことなど端から気にしていないのだろうが。
こっちの方がらしい、という言葉の意味は察せなかったが、勝手に言っていればいい。倒すと決めた相手に掛ける慈悲はないし、話すだけ時間の無駄だということはよーく分かった。

「そうね。あたしはこの世界にとっては異物。そういうってことは、あんたもなんでしょ?」
「それでも、きっとあんたよりはマシ。いくら自分の世界じゃないからって、めちゃくちゃにしていい道理ってある?」

先程よりも制度と威力を上げて放たれた攻撃は諏訪子を捉えることなく、空振りと身代わりの石像を砕くだけの結果に終わる。態度が最悪であっても、実力は高い。
直線的な攻めを続けているセリィだが、これでは通用しないことを悟りつつあるようで、次は少し方向性を変えなければならないと思考を巡らせているようだ。
勿論、相手もそれを許すまいと、反撃を放ってくる。天井に貼り付いたままの諏訪子を見据えながら、強烈な水流を手持ちの剣で叩き斬ろうと動いた瞬間―――
不意に現れた乱入者が二人の間に割って入り、氷の障壁によってそれを受け止めた。だが、次第に状況は悪くなりつつあるようで、乱入した少女はこちらに目線で今の内に反撃をするように促してくる。
誰かは知らない。最初の言葉からして、向こうはこちらのことを知っているようだが……まあ、こういうことは、色々な世界を旅している間に、何回かあった。
今回もそういう類だと思って、セリィは跳躍する。確かに生まれた反撃のチャンス。これを無駄にする訳はいかないと、彼女の両手に自然と力が籠もった。

「あんたのことは知らないけど、助かったわ。あとはあたしに任せてちょうだい」

素早く接近し、剣を後ろへと引くセリィ。また斬撃を放つか、のように見せ掛けてこれはフェイント。天へ掲げられた左手が、眩い輝きに包まれた光の柱を呼び寄せる。
本来、これは敵の頭上に落とす形で使うものだが、そのままでは天井に貼り付いた諏訪子には当たらない。だが、今セリィは、空中で頭を地面の方へ向けている。
つまり、何が起こるかは想像の通りだ。彼女にとっての空中、つまりは地面方向より呼び寄せられた光の柱が、相手の頭を目掛けて落ちていくのである。
地上から見ているマシュマロにとっては、地面から光の柱が諏訪子を突き上げるような光景に見えることだろう。今度こそ、簡単にあしらわせはしない。捻りが加えられたこの一撃、敵はどのように凌ぐのか。

>洩矢諏訪子、マシュマロ・ヴァンディール

7ヶ月前 No.1149

もう花の姿はこりごり @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/資料室/アズリエル・ドリーマー】

やっとだ。
6人の人間達と、そこへ集まってきたモンスター達の無数のソウル。その全てを吸収し、僕は……遂に元の姿を取り戻すことが出来た。もう、花の姿はこりごり。
ハロー! ―――聞こえてる? 僕だよ、君の親友の……って、ちょっと待って。何だこれ。世界が歪んでいく。まるで、もう壊れ始めちゃっているかのような。
駄目だ、君のソウルがないと僕の目的は達成出来ない。待ってよ、行かないでよ。違う、僕が離れてるみたいだ。嫌だ、世界をリセットしなきゃいけないのに―――

それで、目覚めたらこんなところにいた。ここがどこかは分からないけど、俺が住んでいた世界とは違うらしい。下らないから、すぐにリセットしてやろう……
しかし、それは出来なかった。力が通用していないのか……? 神に等しい力を得たというのに。ああそうか、ここはあの世界じゃないから、こうして働きかけても無駄なんだろう。
だったら、リセットするには全部壊すしかない。そうして俺が一番になってやれば、この世界の主導権だって握れるはずだ。そうだろう? ―――君もそうして欲しいんでしょう?
じゃあまずこの近くから壊そうか。なんかここは歴史是正機構本部っていうらしいけど、そんなの知らない。もしかして、こいつらの協力者として呼び出された訳? それは面倒だ。
そういうのには心底興味ないし、出会った奴らは全員殺すだけ。気まぐれで逃がすとか、そういうのはあり得ない。でも、協力している振りをして後で裏切るのも面白いかな?
まあ、いいや。取り敢えず近くにいる人を探そう。資料室って書いてある。知らない文字だけど、読める。この世界の力かも知れない。誰がセーブ能力を主導権を握っているんだろう。

「あ、君! そこにいる君だよ。僕はついさっき、ここに来たばっかりで困ってるんだ。いきなり周りの景色が変わってて……ここはどこなのか、教えて欲しいな……」

アズリエルは姿を魔王のような邪悪なものから、か弱い獣の少年のものへと変えた。相手からすれば、力のない少年が、運悪くこのタイミングでこの世界へ送り込まれたように見えることだろう。
しかし、彼は結局、目についたものを殺すことしか考えていない。一応、歴史是正機構と時空防衛連盟の区別は付けてくれるようだが、それもいつまでかは不明である。
結局のところ、アズリエルの頭にあるのは、この世界をさっさとリセットして元の世界に帰り、ある人間のソウルを手にした後でその世界で最初からやり直すことだけだ。
にも関わらず、こんな回りくどいようなことをしているのは……自分の勝利は間違いないものなのだから、少し程度遊んでも許される、という考えが頭の片隅にあったからかも知れない。

>ミラノ
【非常に扱えるかどうか不安】

7ヶ月前 No.1150

シャプール @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk



【歴史是正機構本部/監視室/シャプール】

 ………結局のところ、それは完全な読み違いだ。
 シャプールは確かに自身の力に絶対的な確信を伴う男であるが、
 しかし“自信”のみで戦いが出来ると嘯くような凡愚ではない。
 相手の挙動一つ一つ、手札の有無。
 そうしたものに気を配るのは敵手と自分に厳然たる実力差がない―――つまりは、『シンナイト』の力を使って尚、あらゆる小細工を力で踏み潰せるほどの圧倒的格差まではまず存在しているまいと、何処かで確信を持っていたからだ。だからこそ、彼は行動のすべてに警戒心を保っていた。


 傲岸にして不遜なれど、鋭利な彼の思考は。

 しかし、此処で完璧な失策を生んだ。深読みから来る読み違いだ。
 ・・・・・・・・・・・・
 力あるものが皆自分と同じであるという一点が生んだ、完璧な読み違いだった。


 だが………だが、そうだ。それでも。
 それだけならば、シャプールには挽回のチャンスが無数にあった。
『シンナイト』の力の振るい方によってはまだ反撃のチャンスは幾らでもあっただろう。中距離から挑発に乗らぬ攻防を徹底していれば、いずれ赤枝の騎士はじわりじわりと断崖の端へと追い詰められていったに違いない。
 あるいは接近するとしても、より切れ目のない攻撃を打ち込めばどうだ。
 先ほどのように、点ではなく面を狙う攻撃を仕掛けているならば?

 そうした手法がいくつもあった。
 いくつもの転換点があり、どれか一つでも違えばその結果は無かったはずなのだ。

 だが………だが、そうだ。だからこそ。
 そうではないからこそ、黒騎士の力を振るう魔人の結末は今、ここに確定した。


「―――バカな!?」
「(踏み込んだ!? リスクを恐れずに!?)」


 重ねて言う。シャプールの振るった三段の突きが生温いということは断じてない。
 むしろ彼の罠を警戒した上で、尚且つ踏み込みには必ず死のリスクを伴わせるような力と速さの連撃だ。此処に踏み込んで来るものは強い弱い以前の問題だろう。死を最初から恐れていないも同然だ。
 わずかな躊躇いすらなく、決死の覚悟で打って出るようなものを無謀と呼ばずなんと呼ぶ。

 ………シャプールは強き者であるが、戦士ではない。
    クー・フーリン―――ケルトの大英雄は、あくまでも英霊だ。

 その違いを理解しなかったことこそが、致命的な読み外しであった。
 ランサーは、踏み込んだ。黒剣が暴風を伴って放たれ、
 二撃目と三撃目が彼を穿つ中で、躊躇わず前に出てきた。『シンナイト』の力に対して微塵も恐れることはなく、それどころか勇んで飛び込んで力を振るうその姿を、英雄と呼ばずして如何に呼ぶものか。

 突きが交差する。お互い、狙いは心臓。人体である限りの急所だ。
 引き戻す黒剣は朱槍より遥かにリーチに優れ。
 だからこそ、引き戻すという若干のタイムラグが発生してしまう。
 巨きさ故の強さ、速さ、射程距離………それらが此処で、最後に裏目に出た。



「おのれ………」
「―――おのれぇえええええええっ!!!」



 戦場の理など単純だ。
 シャプール本人が口に語っていた通りだろう。

 強き者が勝ち、弱き者が負ける。
 そして………どれほど強かろうが、死ぬ時は死ぬのだ。
 それは奇跡的なものであろうが、順当な結果であろうが、一切の関係はなく。

 槍が、黒騎士を穿つ。
『シンナイト』の装甲を大きく貫き、内部のシャプールを突き抜いた。


 ―――黒騎士の変身が消える。
    壊れた緑黒の鎧の破片と、有象無象と変わらぬ男の死骸が転がっていた。


>ランサー


【とりあえずはこの辺りで退場とさせて頂きます〜】
【お相手ありがとうございました! m(._.)m】

7ヶ月前 No.1151

洩矢諏訪子 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

【歴史是正機構本部/食堂/洩矢諏訪子】


 ・・
「うん」


 揺るぎない即答だった。
 攻撃直前の、心底から揺るぎない回答だった。
 それは、諏訪子という存在と、セリィという女性の中にある価値観の違いを示すには十分だった。

 攻撃の一歩手前に、さも当然のように、顔色のひとつも変えず平然と口を開いた彼女のそれは、善悪どうこうの理屈を清々しいほど超越している。人間の社会においては紛れもなく異物であろう、悪であろうとも。
 違う人種で違う世界だろうが、言葉を話し思考が出来るのだ。まっとうな価値観を持つ人間ならば、それを羽虫のように弄ぶことに抵抗を覚えるのが情というものだろう。たとえば食物となる家畜が言葉を話し、意思の疎通が出来るのだとしたら、そこには共存の可能性が出てくるだろう。………理由など語るまでもない。
 それは善意以前の問題として、痛みと苦しみの意思が伝わるからだ。ヒトという生き物にはそういう最低限の感情がある。それが煩わしさから成るものなのか、純粋な罪悪感から成るものなのかはさておくが。

 だが。しかし、しかしだ。


「理屈っぽく言うとさあ、等価交換って言うんでしょう?
 そいつがヒトの働く対価なわけだよ。何かをする代わりに何かを得るというのだろう」

「対価のない労働というヤツを貴女達は嫌うじゃあないか。ん? 違う?」


 それはヒトの理屈なのだ。
 彼女はそうではない。動物の声に、虫の鳴き声に、いちいち酌量の余地を持たない。
 たとえ意思が伝わろうがそういうものだ。高次元のイキモノとヒトという存在の思考回路は同じには出来ていない。彼らにとっての常識はヒトにとっての非常識で、彼らにとっての非常識はヒトにとっての常識なのだ。

 洩矢諏訪子は、祟り神だ。
 畏れを受け取って存在を成し、信仰を以て気まぐれを“善意寄り”にシフトする。
 人間が御恩を前提とした奉公で社会を成り立たせてきたように。
 そのサイクルがあって、成り立つ世界で初めて、彼女は郷に従う。
 であるに、カミとはそういうものだ。供物となるもの、理解を及ぼすものがあって初めてヒトという“思考の違う生き物”に善意を振りまき奇跡を寄越すものなのだ。

 つまり―――。


「その前提も成り立たせてくれない虫に、いったい私は何を配慮してやればいいのかな?
 おまえら私をただのボランティアかなんかと勘違いしてるのか、なあ。
 そこのところを自信があるなら答えておくれよ漂流者《ドリフター》―――」


 信仰も畏れも規範も無い世界で、諏訪子という祟り神の枷は完全に消える。
 わかりやすい言語に変換してしまえば、こうだ。
 対価も礼節も伴わなければ付き合い方も知らぬ者に、誠実さを発揮する必要はない。

 人間が羽虫を、善意も悪意もなく戯れで弄ぶように。
 諏訪子という土着の祟り神は、その前提のない世界で“祟り神らしさ”を隠す気がない。

 けたけたと笑う彼女も、その愉快げな目から一瞬感情という色が消えていた。
 セリィに向けられたそれが、一瞬だけ得体の知れないものになった。
 それが何を意味するのか―――は、ともかく。

「………んぁ? どちら様かしら。知らない顔だね、覚えるつもりも特にないが」

 状況は、そこで急転した。
 今までと全く違う系統の防御壁が視界に入ったことで、諏訪子はすぐさま状況を把握した。
 凍て付き高く聳え立つ氷壁が示すそれは第三者の介入だ。増えた気配に視線を下ろし、天井からひょこひょこと首を動かして視線を寄越す。はじめは退屈げに、しかし“遊戯”に混じったイレギュラーの少女を嫌うほど彼女は打算的ではない。
 むしろカミとはそういう生き物だ。死の寸前まで酔って痴れてが常道ならば、此処でマシュマロ・ヴァンディールという第三者に向ける目がそう悪いことにはならない。これは積極的な死合ではなく、諏訪子にとってはまだ“遊戯”だ。それも、素知らぬ第三者の敵意にわざわざ応えてわざわざ付き合っている程度の、些末なもの。

「ふん、ふん。知り合いじゃないのにお助けとな? 偉いじゃないのよ、お嬢ちゃん。
 良いとも、良いとも歓迎しよう! これで私は寛大なのよ―――」

 だから、快く応じるのだ。
 戦う場では全く似つかわしくない快活な笑顔で、愉快そうに。
 それは相手を嘗め腐るとかそういう次元ではない。
 そもそも彼女は誰よりも酔狂な振る舞いをしているが、誰よりもこの場で思考が醒めている。
 現在繰り広げられる勝負の是非などは割とどうでもいい。そう言い切りかねない一面が諏訪子にはある。



「精々驚かせておくれ! 遊びは本気でやらねばつまらないからね!」

    、   、  、 ――― 蛙狩『蛙は口ゆえ蛇に呑まるる』 ―――



 そしてだからこそ。
 反転して地より頭上に迫る一撃を、彼女は笑って迎撃した。
 まるで意趣返しじみた岩石の槍、横幅縦幅も数メートル程度では済まない城砦崩しの突撃槍を思わせる岩が、地面と壁の両方を文字通り突き破って来襲する。それらは突き上げるような光の柱と衝突し、相殺し、どころか空中で立ち回る彼女を十字砲火のようにして襲うだろう。縦軸と横軸の両方を抑え込み、その物量で叩き潰すように。
 そして、地面から突き破ったそれは当然諏訪子もろとも天井を破壊するが―――何処から岩石が出てくるかわかっている諏訪子からすれば対応も易い。それをかわしてくるくると回りながら降り立つ中で………。


「歓待代わりの大盤振る舞いさね!」

  、  、  、 ――― 開宴「二拝二拍一拝」 ―――


 折角やってきたのだから、とでも言わんばかりに。
 とても歓待というには物騒な洗礼が、水流と拮抗、あるいは後退するだろうマシュマロを襲った。

 彼女の足元から離れて左右、その地面が隆起する。大地が鳴動する。
 浮上し、かたちを成したそれは掌だ。釈迦の掌を思わせる巨大な岩の手。
 横からそれが合掌するようにして掌を向け合い、マシュマロを押し潰さんとばかりに迫りくる。余技というにはあまりにも苛烈で、やってきたばかりの彼女にぶつけるものとしては初手から容赦を感じないものだが………。

 幾度も言うように。諏訪子は真剣に遊んで、真剣に興じているのだ。
 所詮は些末な暇潰し。されども遊びで手を抜くことほど、つまらないことはないだろう。

>セリィ、マシュマロ、(ALL)

7ヶ月前 No.1152

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

【歴史是正機構本部/資料室/ミラノ】

 見て、聞いて、情報を得る方法というのは大まかに分けて3つある。
 ひとつは文字通り、自分の思考に寄る得た情報を精査する行為。
 ひとつは有機生命体ではないモノからの情報取得。文書だの状況だのがこれに当たる。
 最後のひとつは単純だ。だれかからの伝聞。
 ミラノが求めていたのは主に二番目、かつ求めている内容は実にシンプルなものだった。彼が誰かから歴史是正機構の理念や活動、そうした御題目など説かれたところで、心の底から“どうでもいい”としか言わないだろう。彼が今欲しいものはあくまで“誰を殴るのが解決の近道なのか”という確信だ。
 盗賊王を突き動かすものは理屈などではない。ある種獣のそれに等しい直感・第六感と呼ぶべきものだ。その感覚が彼に訴えたから今までの二者への攻撃があり、その感覚があるからこそ彼は時空防衛連盟に与している。正真正銘のアウトローである銀狼にとってしてみれば、この世界での争いなど比較的どうでもいいものだったのだ。

 ………どうでもいいが、だからこそ“目覚めの良いものであるのが望ましい”というもの。
    少年が歴史是正機構の本拠点に足を踏み入れた最大の理由がそれだ。

 彼は略奪者だが、同時に盗賊たちの長でもあった。
 長い目で見て拠点を潰すことの有効性が分からぬほどでもないし、
 如何に技術基盤が違おうが今彼らが浮足立っていることくらいならばすぐに分かる。
 それゆえの単独潜入で―――だからこそ、呼び止めるような声に対して、彼はすぐ振り向いた。
 この状況で掛かる声がどういうものなのかなど、基本として二極化出来てしまうからだ。すなわち敵かそうではないか、前者ならば物理的にお引き取り願うところであるが………。


「………んー」


 そうではない。外見上はそう見える。
 垂れ下がった大きな耳と穏やかな表情。獣と人の融合体のような外観の生物。
 ヒトではないが、言葉は通じる。であるに、とりあえずは意思の疎通が出来るのは間違いない。

 間違い、ない。そして同時に、ミラノという少年は持たざるモノに対してはその牙を振るわない。
 この状況でこの発言が飛び出す時点で、彼は完全に獣人への疑いを持っていたわけではない。
 それはつまり、この獣人の真意が邪悪なものであることを、そもそも彼は把握していない。


 ………だが、しかし。
    その上で、敢えて語るならば、たった一言。

    逸れ者の銀狼は、一線こそ超えない男だがそれほど優しい性格ではない。

「あー、決めた」

「とりあえずそこで止まれ。ストップ。オレの言ってること分かる?
 分かる前提で今から話進めるから、“分かりませんでした”とかナシな」

 力のない一般人がわざわざ呼び寄せられるケースがない程度のこと、
 把握していない盗賊王ではない。付け加えて、彼は基本方針がそもそも雑である。どのくらい雑なのかと言うと、アナーキスト気味な思想の根本からしてやや世間知らずなところがある程度には、雑である。
 つまり何が言いたいのかと言うと―――。

「10秒なー。それまでに、ほら、あっち。あっちまで走れ。
 あの辺なんもいなかったはずだし、振り向いたときに居なくなってたら見逃すよ」

     ・・・・・
 単純だ。相手が悪い。

 盗賊王、銀狼のミラノ―――。
 直感で事を成すこの侠客に、まさか化かし合いなど論外だ。

 彼が確証ありきで攻撃を仕掛けたのか? と言われると当然違う。
 ミラノにとって獣人はあくまでか弱い獣人の少年だ。
 見た感じはそう見えた。ただその上でなんとなく信用が置けなかった。


「はい数えるぞー、10、―――」


 なので、これからカマを掛けるというわけだ。
 有無を言わさず、カウントしながら別に待つこともなく勝手に切りかかる。
 0になったら切りかかるとか、カウントをすっ飛ばすとかではない。10と言いながら先ほどまでの発言を無視して、本当に唐突に、喋りながら予想もつかないタイミングで切り倒しにかかるのである。
 手元に握られた、身の丈を超える鎌斧の刃が閃いて、水平にその白光を軌跡と残す。今まで喋っていたテンポから全くの予備動作を見せず振りかぶられて、初手の対応としては誰もが度肝を抜かされるだろう一手が成立する。求められたものが会話のキャッチボールなら、これは投げられた言葉のボールをいきなりバットで打ち返した挙句三塁に走り出すような挙動だ。

 ミラノという少年に良心があることを示すのは、それが峰打ちで急所を外したものということだ。
 これならば仮に直撃しても、良くて昏倒程度で済むだろう。

 ミラノという少年がどれほど破天荒な人物であるかを示すのは、それ以外だった。
 彼がその獣人に有無を言わさず攻撃を仕掛けた理由は、単に―――。


 ―――こんな場所にいきなり召喚されて来て。
    戦えませんので助けてくれだの言う輩は居ないと断定したからである。


    間違っていた時の解答など、まあごめんなさいで十分だろう。
    そもそも、こういう時の盗賊王の勘はあまりにも正確に的中するものだった。


>アズリエル

7ヶ月前 No.1153

もう花の姿はこりごり @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/資料室/アズリエル・ドリーマー】

「えっ? うん、分かったよ。君の言ってることは理解出来てる」

そこで止まれ、と言われたので、アズリエルはそれに従い立ち止まる。まだ、彼は猫を被るつもりのようだ。相手の言葉は、どういう訳かちゃんと理解出来ている。
知らない世界に何も分からず放り出されることになるかも知れなかったが、不思議な力がどうにかしてくれたらしい。これに関しては、この世界の主導権を握っている者に感謝か。
10秒。それが、アズリエルに与えられた猶予であった。その間に彼が指差した場所まで走れば、逃してくれるというのだ。本当に、戦う気がないとでもいうのだろうか。
まあ、本当のことを言ってしまうと、相手の気持ちなんて関係なく殺してやるだけなのだが。気付いていないのであれば、嫌でも気付かせてやる。アズリエルは言われた通り、後ろを向き、そして―――

「なんだ、君もおんなじこと考えたのか! 案外、俺と似てるのかも知れないね?」

突如、禍々しい姿へと変貌を遂げたアズリエル。放たれた衝撃波が、ミラノに襲い掛かる。10秒与えると言っておきながら、1秒待つこともなく相手は攻撃を仕掛けてきた。
しかし、こちらもやろうとしていたことに変わりはない。逃げる振りをして、すぐに振り向いて攻撃しようとしていたのだ。結局のところ、二人が似たようなことを所為で、相打ちのような結末を迎えたのだが。
神に等しい力を持った恐怖など微塵も感じてもいない。こんな世界にいる奴らのことなんて、どうでもよかった。リセットが出来ないから、遊びに付き合ってやっている程度の感覚。
大人の姿をしていながら、精神面は子供の時からまるで成長していない。はっきりいって世界を滅ぼすとか、そういうことに興味はなくなっているが、相手からすればそうは見えないだろう。

「お前も人間なら、ソウルを持っているんだろう?」
「楽に殺してやるからさ、そのソウル、俺にちょうだいよ!」
「悪いようには使わないさ、俺は全てをリセットしたい。ただそれだけ」

アズリエルは、ミラノが人間であるという点に目を付けているようだ。彼を倒せば、ソウルが手に入る。そのソウルが手に入れば、自分はもっと大きな力を得られるだろう。
もしかしたら、この世界の主導権だって握れるかも知れない。この世界を滅ぼして、親友のいる世界に早々と戻ることが出来るかも知れない。そうなってくれたら、嬉しいことこの上ない。
彼の顔が歪み、両手が敵へと向けられる。そこから放たれたのは、無数の炎の弾幕。アズリエルの父と母も得意としていた攻撃だが、その威力は二人のものと比べて桁違いだ。
資料室にある本が次々に燃え盛っていき、炎の勢いを物語っているが、これは小手調べに過ぎない。彼は更に強力な攻撃を、まだいくつも隠し持っている。

>ミラノ

7ヶ月前 No.1154

改変の副産物 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【歴史是正機構本部/食堂/マシュマロ・ヴァンディール】

決壊、なだれ込む奔流。吹き荒ぶブリザードは大河が向ける矛先に屈し、いとも容易くその威容を失った。
防御に失敗し続く味方の攻撃も実らない。幼い見た目から繰り出される人智を超えた技の数々は、場数を踏んでいないマシュマロを慄かせるには十分すぎる。
水を吸って重くなった服の裾を絞りながら、冴えてきた頭で以て状況を判断する。相手は容姿からは想像もつかない使い手。こちらは数の有利など意味を成さない現実を突きつけられている。
そのことは折り重なって倒れる兵士達の姿からしても明らかだし、能力者二人でかかったからといって勝利が約束されるわけでもない。僅かに敗北の可能性が薄まっただけだ。
自分の未熟な防御技では凌ぎきれないし、かといって相方の攻撃も今のところは成果を挙げられていない。
八方塞がり、どうしたものか…と頭を悩ませるマシュマロ。しかし、戦場というものは本当に容赦がない。
余計な逡巡は最悪の結果を招く。相手が相手だけあって、僅かな思考の時間すら与えられないのだから。

「っ!」

ためらいの隙を突かれ、左右から迫り来るは岩石の挟撃。敵対者を塵屑に還さんばかりの容赦のなさは、とてもではないが歓待とは呼べない。
それもあくまで人間目線であって、彼女からすれば真面目も真面目、大真面目なのだろうが。
すんでのところで反応出来たマシュマロは、咄嗟に両腕を天に掲げて魔力を絞り出す。呼応するかのように床を突き破り、姿を現すは闇属性魔法のエネルギー柱。
意趣返しと言わんばかりに掌の形を成し、挟み撃つ掌撃に衝突。明るい紫色の魔手が僅かに死の瞬間を遠ざける。
紙一重の差とはいえ、この時間稼ぎがマシュマロの生存に結びついた。間も無く術は破られたが、間一髪のところで飛び退いて難を逃れる。

「もう!またこのパターン!?

…まあいいよ、反撃いこう!」

自分を知らないと宣うセリィに怒り心頭し地団駄を踏みながらも、気持ちを切り替えて反撃に転じる。
先程は攻撃を食い止めるので精一杯だったが、今回は彼女の攻撃に加勢することが可能だ。
飛散した闇属性エネルギーを□き集め、二十、三十程度の弾幕を展開。さらに氷属性の魔法を行使し、繰り出すは殺傷力に富んだ鋭利な氷弾。
連盟内でも使用した『クリスタルブリット』と相違ないが、明らかに威力が上昇している。
出涸らしの闇弾よりも破壊力がある上に手数は四十を数え、密度も及第点。ここにセリィの魔法が合わされば、大きな力となること間違いなし。

>>セリィ、洩矢諏訪子

7ヶ月前 No.1155

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【こちらこそ!お相手ありがとうございました】

【歴史是正機構/監視室→移動/ランサー】

 勝負はリーチで決着がついた。
 心臓を貫かれ、最期の足掻きをしかと赤い目に焼き付けると、断末魔を浴びさせて元の姿へと崩れ落ちる黒騎士を見届けてから、一言呟く。
「アンタには、決死の覚悟が足りなかったな」
 死を恐がったのか、それとも何かを警戒したのか、安全圏から獲物を仕留めたかったのか、相手の真意は理解できなかったが、黒騎士の名誉の為にそう解釈しておこう。
 ランサーは血が着いたら朱槍をひゅんと薙ぎはらってから、がくりと跪く。
(古傷とこれは、ちと堪える)
 ようやく顔をしかめさせて、胴が横ぱっくりと拓き、穴が二つに空いた体を右手で押さえつつ、脂汗が一つ二つ瓦礫と化した床に滴り落ちる。
(ま、ヤツが暴れたお陰でオレの仕事は省けたしな)
 黒い暴風で粉々に破壊されたモニター室をちらりと見て、一件落着と薄く笑うと荒い呼吸を整えてから、立ち上がるとこの体ではまともに戦えないと判断して潔く撤退しよう。
 混乱が満ちる廊下をゆったりと歩きながら、兵士と逆行するランサー。
 防御システムがハッキングされて無防備状態だの、爆発があっただの、資料室が燃えているらしいだのとお祭り騒ぎにランサーは仲間の武功に讃えつつも、味方の救護班と会うまでの間ずっと出入口目指して歩いていった。
>シャプール

7ヶ月前 No.1156

慎重で臆病な上位種 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

【時空防衛連盟/作戦会議室/フランネル・サザンル】

「――は? 嘘でしょ……?」

フランネルは、この状況下で相手が取るであろう行動のほとんどを予測していた。 それは間違っても、無能な人材が立てるありえない予想や、あまりにも奇手の類を想定していない予測ではなく、概ね正しい物ではあった、だからこそフランネルは、どれが来ても、自分のダメージはさておき"引き分け"に持ち込む事は可能だと思っていた、だからこその"特攻"染みた攻撃だ。
だが、相手の取った行動は、フランネルの想像を遥かに超えるような物であった。

自身の腕を切り落として、それをこちらに投げつけ、さらに自分のダメージを加速させるような方法で強引に離脱した。
無数の糸が自身を縛り上げ始めるその瞬間、フランネルは咄嗟に糸をさらに伸ばしてイスマリアに絡めようとするが……その糸が届く事は無かった。

ギュルルルル、と音を立ててフランネルの身体が糸に巻き上げられていく、それはまさに、巣に掛かった獲物が蜘蛛によって繭に変えられていく様その物である。
不味いと手を動かそうとするも、もう腕も、足も、動きはしない。 いや、動くかもしれないが、ぎしっ、ぎしっ、と音を立てるぐらいで、間違っても"腹部の辺りに当たっている生暖かいモノから発せられるであろう攻撃から逃れる事は不可能だった。

ぼとりと、イスマリアが言ったように「中に一人しか居ない強靭な繭」が地面に落ちた。

「ひっ……や、やだ、こんなところで、こんな所でっ! こんな奴に!!」

少なくともフランネルはそう言ったつもりなのだろうが、彼女の口元にも糸が絡み付いており、また焦りもあって、かなり聞き取りづらい。
恐怖と焦りが彼女を支配して、正常な思考を奪い、ここで取る手段として最も無駄である「筋力を使った抵抗」へと走らせる。

ぎちぎちと音を鳴らし、ばたばたと陸に打ち上げられた魚のようにもがくフランネル、だが、その体を包む糸が切れることは無い。 そんな事は、彼女がもっとも良く分かっているはずなのに。
相手の爆弾が起爆する直前までの、繭の中でもがく時間、それを少なくともフランネルは恐ろしく長い物に感じていた。

だが、一周回って、本当にギリギリのタイミングで、彼女は解決方法を思いつき、セキュリティビットに目をやって指令を下した。 それと起爆はほぼ同タイミングで、もっと早くそれに気づければ良かったのだろうが、そこが彼女の限界だったのだろう。

「いぎああああああ、ひっ、が、ああああああああ!!」

放たれた電気が彼女を焦がす、だが、次の瞬間には、セキュリティビットが繭に穴を開けるようにレーザーを放った。
最大出力で撃たせばフランネル自身も死ぬことになるので、拘束からの解放は当然出来ないが、穴さえ開ければ、密閉空間でこれを受けるという事さえなければ、死ぬことだけは、免れる。

「あっ……ぐぁ、出て、けぇ」

実際には、その言葉が放たれるより先に、彼女の腕は、雷の魔法のコントロールの際に使う技能をそのまま使って、繭の外へと放たれた雷撃を逃がしていた。
だが、それでもたかが知れている、負ったダメージは相当なものだし、繭で拘束されている状況は変わり無い、あの雷撃の中でも、その強度は大きく損なわれていたものの繭は解ける事は無かったのだ、完全に損壊していない事が、フランネルが上手く雷を外に逃がしたという事の証拠でもあるのだが。

少なくとも、電気を逃がしきった後の、繭の挙動は起爆前と比べて非常に鈍かった、だが、びくびくと動く、のはともかくとして、時折うねうねと動くため確かに"生きて"はいた。

フランネルが最後にセキュリティビットに向けて命令したのは撤退。 それに従うように、セキュリティビットは二機が繭に機体を引っ掛けて浮遊、一機が壁を吹き飛ばして、そこから早急に撤退した。
本来ならば、後ろから追撃を食らって、と言う事も考えられるが、それを考えられる余裕はフランネルには無かった。 だが、イスマリアの損傷も確かな物であったために、おそらく、今のところ損傷が無いセキュリティビットは逃げ切るだろう。

後に病院には重症患者が運び込まれるだろう、それこそ、魔族でなければ戦線復帰は不可能な傷を負った状態で。

>イスマリア・ザルヴァトール


【撤退します、お相手ありがとうございました!】

7ヶ月前 No.1157

瞬雷 @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/レイヴン・ロウ】

 暖かな心を宿した一人の少女の言葉によって繋ぎ止められ、帰るべき場所を見出した青年は、改めて別れの言葉を交わす。それは今生の別れなどでは無く、必ず戻って来ると言う強き誓い。新たなる未来の一歩を踏み出すが為に、総ての過去に決着を付けたその暁に、必ず村へと帰ると約束を結ぶ。
 そうして、古代から未来へと旅立ったアランは、嘗て村を救う為に尽力してくれた連盟に対する協力者として活動を行いつつ、一方で生死不明となった仇敵を追って市街地を駆け回っていた。
 幾つもの輝かしき黄雷の剣を侍らせ、自在なる軌道を描きながら敵を斬り倒し、時には迫る攻撃を防ぎながらも突き進み。その最中、視界に捉えた凄絶なる光景がその歩みを一瞬だけ止めさせた。天から降り注ぐ光の柱。世界を灼き払う暴虐がビルを倒壊させ、内部にいた生存者の一撃の下に殺戮する。
 光を放った主の姿には、覚えがある。忘れる筈が無い、己の幸福の総てを奪い去って行った、忌まわしき女帝。世界が例えその存在を容認しようとも、己だけは決して容認しないと、嘗てはそう誓った相手。

「……遂に見つけたぞ」

 淡々とした声で呟く。磁力を操り宙を舞いながら、一直線に向かうは瓦礫の頂点に立つ暴虐の帝。否、既に彼女に"帝"を名乗る資格など無い。それは魔道帝国が滅びたから、等と言う理由では無く。ただただ無差別的に虐殺を行うその立ち振る舞いを指しての事である。ふと思い出すは、共に村を護るべくして戦った守護者の姿。もしも彼が今の彼女を見れば、如何なる印象を抱くだろうか。接した時間は少ないが故に、その心境の総てを把握するには至らなかったが――その姿には深く失望するには、相違あるまい。

「……無辜の民を殺すとは、女帝とあろう者が随分と堕ちたものだ。
 一時の眠りに付くその時まで、帝国に尽力し続けたギラードも、この有様では浮かばれまい」

 狂気に憑りつかれた女帝を連れ戻そうとするマロンと、その身を案じるニケの両者へと襲い掛かる光の棘。其処へ助け舟を出すべく、侍らせていた雷剣を其々の周りを囲む様にして大地へと深く突き刺し――"発雷"、瞬時に発した言葉と同時に剣は放電を開始、全方位を覆う雷電の障壁を形成して光の棘を一つ余す事無く相殺する。多少の魔術に通じているニケは兎も角、一切の魔力を持たないマロンにとって魔術による攻撃は致命的だ。如何に身体能力が優れていようとも、女帝相手では分が悪い所の話ではないだろう。
 嘲りを込めた声で語り掛けながら、女帝の前に現れると、放出した魔力の粒子から再度雷剣を形成して自らの周囲に侍らせる。総ては、彼女を殺すが為の物。今の彼女を止めるには、殺す心算で挑む以外の選択などありはしない。

「パージルク、貴様が何を吹き込まれたのかは知らん。憤慨を抱くだけの事情が在った事だけが、辛うじて理解出来る。
 だが……それでも言わせて貰う。貴様の行いは紛れも無く、帝国が掲げる理念を信じて今日日に至るまで仕えて来た忠臣を侮辱する物だ。
 もはや貴様には、亡国の帝を語る資格すらない!」

 そして侍らせた雷剣を放ち、彼女の周囲の大地へと深く突き刺すと共に、再度"発雷"の一声を発する。放電と共に生み出すは、雷電の牢獄。先の二人を護る障壁とは違い、檻に閉じ込めた者に電流を浴びせ、拘束するが為の物。
 だが、この程度で無力化できるとは、到底思い難い。ただでさえ相対すれば強敵として君臨する敵、それが殺戮方面に傾いた狂気に囚われているとなれば、その実力は元来の物より数段跳ね上がると言っても過言ではないだろう。

「そして誓うぞ、今の貴様は此処で殺す。二度と我らの時代の大地を踏ませる心算は無い!」
「――召雷!」

 故に、仕掛けるは更なる追撃。牢獄に閉じ込めた囚人を天から射貫く、一筋の雷光。嘗て帝国に叛旗を翻した逆臣、"ノエル・マッケローク"に浴びせた物と手段は同一。されど、その稲妻が宿す猛威は此方が二回り上。苦痛に特化した殺害方法では無く、確実なる死を与える事に特化した殺害方法を選択したが故の事。
 一応、手加減はした心算は無いが――それでも通用するかどうかは、正直怪しい。実際に戦ったニケとは違って、此方は初戦。相手が如何なる術を用いるだとか、どう動く等と言った前情報は皆無からの始動となる。

>パージルク・ナズグル ニケ・エタンセル マロン・アベンシス (エスト)

7ヶ月前 No.1158

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

【そろそろ敵が倒され始めてお暇な味方がちらほらと居るかもしれないので投下を】

【時空防衛連盟本部/屋上/Cluster E装備型】

凄まじい轟音、この状況下では、誰もが戦闘によって生じた大きな音としか感知しないだろう、少なくとも「わざわざ寄っていく者」など居るはずが無い。
だが、この場において一人だけ、屋上に着陸可能で、尚且つわざわざ近寄っていくような精神を持った人物。 "是正機構副将、即ち、主力の一角"を意味する人物、Cluster<クラスター>の姿があったのだ。

彼の役割と言うのは、普通の部隊では掃討できないような存在、つまり相手の司令官級を落とす事だったのだが、残念ながら、一番の大物は同僚に取られている上、隊長ですらも"一応の上司"である奴が相手をしている、となれば、自分がやるべきことと言うのは、強力そうな能力者複数の掃討となる。
さて、それでは複数の能力者を引き寄せるにはどうするか、簡単だ、無視できないほどの大火力を本部に投射してやれば良い。 クラスターと合体しているイトマキエイのような形状をしている巨大爆撃機、メガニカは、単機でそれを可能とする量の爆弾や装備があった。

だが、それを行うには邪魔者が居る。 それが、あの屋上で音を出していた奴だ。
屋上と言う対空迎撃にぴったりな場所に敵が居るのに、それを無視して爆撃を始めるほど、クラスターは愚か者でもなく、ゆっくりと高度を下げて、屋上に降り立った。

「困った物だね。 反応消滅の場所を考えて、爆弾を消したのはキミか。 所詮、人間のエゴで作られたクローン生物を使おうなんて考えは、まさしく精兵以下のゴミ共の考えた浅知恵だったようだ」

クラスターは屋上に降りて早々に、おそらく"爆弾を消した存在"であるライドウに話しかける。
あくまで、クラスターが聞いたのは音だけであり、彼の切り札の存在はほぼ分かっていない状態ではあるが、それでも怖気づく事無く、何時も通りの、余裕の態度であった。

ここでクラスターは相手に情報を意図的か、それともただ抜けているだけなのか、それは定かではないが、三つ与えた。
"歴史是正機構側であること"、"ルーシャを知っていること"、"ルーシャを利用した人間たちを見下せる立場にあること"だ。

クラスターは見た目を変えたため、これだけの情報で副将クラスターと言う名前に辿りつくか、それは相手次第ではあるが、分かろうが分からなかろうが、クラスターにとっては至極どうでも良い事だった。
なぜならば。

「悪いが、消えてもらえるかな? それはキミがここから撤退するという意味でも良いし、蒸発すると言う意味でも良い。 ボクにはここを灰へと変えるヘルガ様より与えられた使命があるんだ」

その言葉と共に、クラスターは両手に持っているライフルを相手に向けて、さらに合体していた爆撃機を切り離して自律行動を開始させる。
"もし"、この騒ぎを聞きつけて誰かが援軍に来るなら、それはそれで好都合だ、一人倒した、一人引き付けたぐらいでは、ヘルガ様に何の恩恵を与えられているのだろうか、ヘルガ様に逆らう愚か者共を数千は焼き払い、力をおかしな方向に使う馬鹿共を二桁は殺さねば、あの方の愛に応えることは出来ない。

それに、あの面白い実験体に会うまで、ここで死ぬつもりも無い。 この相手は、あくまで通過点だ。
そんな風に、クラスターは見下し半分で、相手の反応を待っていた。

>17代目葛葉ライドウ ALL


【ルーシャで絡んだ直後ではありますが、絡ませて頂きます!】

7ヶ月前 No.1159

ごきげんよう @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/牢屋/Chara】

歴史是正機構本部の牢屋。そこは囚人のためのものではなく、組織が非合法な実験のために拉致してきた被検体達を押し込めておく姥捨て山のような場所である。
本来ならば警備員が常駐しているはずのこの区画も、現在は時空防衛連盟の侵攻に遭っている影響もあり、閉じ込められたまま放置された被験者達以外はもぬけの殻だ。
とはいえ、それは裏を返せば相当数の人間がここに捕らわれたままになっているということである。彼らは当然、この機に乗じて逃走を図ろうとするのだが、無情にも鉄格子は冷たい音を響かせる。
諦めムードの漂う中、不意に聞こえてくるのは何者かの足音。助けが来たのか、それとも警備員が戻ってきたのか。前者であればようやくここを出られると、彼らは胸を躍らせる。
次の瞬間、被験者達の視界に飛び込んできたのは、右手にナイフを握り締めた一人の少女であった。この非常事態にはおおよそ似つかないその光景に、一部の者は怪訝な表情を浮かべる。
信じられないことだが、これが待ち望んでいた助けであるとでもいうのだろうか。開け放たれる鉄格子。何にせよ、これでここからおさらば出来るのであれば感謝しなければならないだろう。
だが、それは大きな間違いであった。少女がここへ足を踏み入れた理由は、決して彼らを救い出すためなどではない。むしろ、その逆―――

「ごきげんよう」

ナイフが一人の被験者の首元へと突き立てられる。狂気じみた笑い声を響かせながら、少女は驚異的な速度で反転し、次の鉄格子を破壊。一人、また一人と犠牲者を増やしていく。
捕らわれた無力な彼らに出来ることは、どうか見つからないことを祈りながら、狭い独房の隅で身体を震わせることのみ。そんな願いも虚しく、牢屋にあった命は次々に散らされていく。
ベッドの下へと隠れていた最後の一人と、少女の目が合った。真っ赤な瞳が嬉しそうにこちらを覗き込んでくる。いやだ、死にたくない。彼女の表情が笑顔に変わる。お願いだ、見逃してくれ―――

「あははっ、見つけた」

震えながら命乞いをする相手を尻目に、少女、Charaは男の隠れているベッドを勢いよく投げ飛ばし、その身体を露わにさせる。だが、すぐには手を下さない。
まるで、相手が怯える様子を楽しんでいるかのように、彼女は観察を続けている。顔に浮かぶのは、張り付いたような気味の悪い笑顔。Charaが求めているのは、一体何なのか。
しばらくくるくるとナイフを回しながらじっと相手を見ていたCharaであったが、やがて飽きてしまったのか、その笑顔をより狂気含みなものに変えながら、一気に男へ斬り掛かる。
恐怖で足が竦み上がっていた彼に出来ることは、何もなかった。為す術もなく首を掻き切られ、灰色の壁が赤に染め上げられる。駄目だ、こいつはEXPにもなりやしない。
この世界へ降り立ってからまだ数分だが、どうやら外ではなかなか面白いことが起きているらしい。殺すか、殺されるか。人間は愚かだ。どんな世界でも、争いを繰り返す。たとえ、敵が同族であったとしても。

「こんな世界、すぐに破壊するに限るね。なあ、君もそう思うだろう?」

誰かに語り掛けるような口調でそう呟き、Charaは今来た道を引き返し始める。ここにあった命は、全て奪った。もう用はない。待っていても、誰も来やしない。
まだまだ虐殺(ジェノサイド)は始まったばかり。この世の一切を消し去ってしまうまで、彼女は止まらない。決意の力がある限り、少女は何度でも蘇る。

>ALL、(ヴィクトーリア・ダールグリュン)

7ヶ月前 No.1160

イスマリア/祈 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4


【 時空防衛連盟/作戦会議室/イスマリア・ザルヴァトール 】

 屋内での戦いにおいて――手りゅう弾を扉から投げ入れられたとき、ヒトはきっと絶望するだろう。
 何故なら遮蔽物があったとしてもはじけ飛び、吹き飛ばされる未来は変わりはない。
 その恐怖にヒトは竦み上がり、死の予感を前に訪れないでくれと祈ることしか出来ない。

 冷静な判断が出来る者は、ヒトの中でも特に長けたものだ。
 だからフランネルはヒトだ。よくも悪くも、ヒト足りうる存在なのだ。
 最も、――イスマリアにとっては興味の一片すらも沸かない相手であったが。

「……」

 念のため。
 周囲が黒く輝く、――イスマリアの異能の帯電だ。
 狂った果てに自爆特攻を考えた場合はカウンターの準備は出来ていた。
 だがそれも、杞憂だった。放電と同時に焼かれる魔族の絶叫が響きわたり――そして苦肉の策で脱出に成功。
 セキュリティビットに乗せられ、そのまま……どこかへと消えていった。

「……あ」

 斬り落とした腕はそのまま消し飛んだ。
 さて、帰ったら義手を申請しなければならないか。
 何れにせよ――目的を果たすまで、まだここにいよう。

>フランネル

【お相手、ありがとうございました〜】


【 歴史是正機構本部/牢屋/蓼科祈 】

 ――ぶち壊した戸の向こうの惨劇は、既に終わっていた。

 遅かったか。
 ぎり、と奥歯に自然に力が入る。握る手から白い雷が走り、ちり、と大気を焼き焦がした。
 むせ返るような鮮血の香りが鼻を蹂躙し犯しつくしていく。嗅ぎ慣れたくはない――が、嗅ぎ慣れていてまだマシだったか。

 血濡れの牢獄を隅から隅まで見渡す。
 死体。死体。死体。タイル。死体。死体、――下手人。
 だが明らかに様子がおかしい。あれは、歴史是正機構に協力しているとかそういうものでは決してない。
 意思があるか疑わしいものはともかく――あれは何処かが、何かが間違えている。
 突発性の災害だ。台風や豪雨に指向性がないように、アレもまたその類だ。

 古代にて焼き払ったノエルと雪葉は邪悪の類であった。
 進行方向にいるすべての命を轢殺して進む車輪のように、アレは立ち振る舞う――。

「――《破洸》!」

 ――故に取るべき手は対話でも説得でもなんでもない。”奇襲 ”。

 先制攻撃しか在り得ない。
 手に集うは、バレーボール大の白き破壊の光。
 照射の号令とともに、その少女らしき何かの背へと殺到する――むろん、直撃すれば灰へと邪悪を帰すだろう。

 だがこの一撃では終わらない。
 これまで幾度も経験してきた直感だが、今回ばかりは何かが違う。そう思えてならなかった。

>Chara (ヴィクトーリア)

7ヶ月前 No.1161

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【時空防衛連盟本部/食堂/桐生戦兎(仮面ライダービルド)】

「なーるほど……そこにいたか!」
仲間の攻撃により敵の位置が露呈した。
それに気づいた戦兎は雪葉の方を向き、飄々としているかのように言ってのけた。

「これはもう決まったも、同然だな! 勝利の法則!」
『レディ・ゴー!』
そう言いながら、ハリネズミのフルボトルを振ったのちドリルクラッシャーに装填し、必殺攻撃の準備に入る。
ドリルクラッシャーが軽快なBGMを流しながら激しく刃を回転させる。
急接近して一気にぶちのめそうという魂胆だ。

「行くぜ……なっ!?」
そしてぶちかまそうとしたその時だった――――
相手が急激に気配を全開にしてきたのだ。おまけにかなり素早い速度で動き回っている。これでは感覚強化も役立たずだ。

「まだ決まってなかったか……!」
一瞬怯んだが、体勢を立て直す。
次姿を現したら、その時に叩けばいい。戦兎はそう考えた。

そして――――

「悪いな……天才物理学者なんでな、もうお前の動きは全部お見通しだ!」(本当は違うんだけどな!)
首をかききろうとした雪葉を視認した戦兎はすぐに振り向き、ドリルクラッシャーによる強力な一撃を見舞おうとする。

『ボルテック・ブレイク!』

>雪葉および周辺all

7ヶ月前 No.1162

ごきげんよう @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

7ヶ月前 No.1163

Futo・Volde @nonoji2002 ★gLBoRrfVfo_ubH

【歴史是正機構本部/牢屋/Sans】

「時空の異常を検知して追いかけて見たらこの有様か。Heh, まぁこういうのは慣れっ子だけどな」

さて、どうやってここに来たとか、何しにここに来たとかは端折るとしよう。そんな説明なんて誰も聞いてないだろうからな。
俺たちが1度迎えた“最高のエンディング”だが……、一度でも“リセット”されてしまえば、その最高の日常、最高のエンディングもすべて“なかった事”になる。だから“俺はとっくにあきらめた”。

だが、今回ばかしは違う。諦めても居ないし、あのエンディングも日常も、確かに変わらずあそこに存在する。今ここに降り立ったのはそんなリセットによる影響でも相違でも、セーブやロードでも何でもなく、すべて“俺のケツイ”だ。

Heh, 敵の本部だとか、そういうのは知った事じゃない。だって俺には“ショートカット”があるから。俺の目的はただ1つ、“最悪の結末”を避ける為にアイツを止めることだ。
しかし……ふむ、どうやら先客が居るようだ。背格好から言えば、まだ子供だろう。ロングヘアが特徴的な人間の少女のようだ。

「よう。お嬢ちゃん。オイラはサンズ。見ての通りスケルトンさ。おっと、それどころじゃなかったな。悪いがお嬢ちゃん、コイツと俺の“サイアクなひと時”に付き合ってもらうぜ」

本当ならば、別の誰かを巻き込みたくなどなかったが、アイツのことだ、きっと彼女をこのまま見逃すような真似はしないだろう。誰かを守りながら、攻撃するっていうのは実に“骨”の折れる仕事だ。だが、巻き込まれてしまった以上は仕方あるまい。彼女もそれなりの実力を持ってくれていると良いんだが。

「外は騒がしいよな。人間と人間が争ってるんだ、無理もないか。……。こんな日にお前のような子供は地獄の業火に焼かれてもらうぜ」

殺意に満ちているアイツを止める術は1つ。アイツが諦めるまで何度も何度も殺し続ける事。ロードではなく、リセットさせてしまえば良い。だが、俺に“ケツイ”があるように、アイツにもまた“ケツイ”がある。その“ケツイ”の力を弱めさせることが出来れば良いんだが。

笑い声を響かせ、ダガーを手にして少女へと切りかかろうとするアイツを重力操作で一度持ち上げてから地面に叩きつける。と、同時に一気にたたみかけるように骨状の弾幕の壁を放つ。さらに隙を与えないように、対となっているガスターブラスターを解き放ち、轟音と共に、レーザーが照射される。この攻撃を始めて受けるんなら、間違いなく避けられないことだろう。

>Chara、蓼科祈

7ヶ月前 No.1164

『世界』を視る者 @x5mas☆sECYEVcUXiI ★iPhone=uHBOaGw0eq

[時空防衛連盟→移動(歴史是正機構)/救護室→資料室/【リプレイサー】]

右手に薬品、左手に工具。息も絶え絶えに一仕事終えれば、また次の仕事が大口開けて待っている。瞬間移動を駆使してみても、奇術師一人では到底処理し切れない業務が山積みだ。聞けば、度重なる戦闘の影響をモロに受け、人員を他所にも割かざるを得なくなったらしい。目醒めが時宜でなかったか。忙しない連盟員の往来は絶え間を知らないようだ。

「ま、当然といえば当然だよなあ、そりゃ。」

だが、その辺は奇術師にも素朴な理解はあった。何しろ、今叩かれているのは一軍の本拠地だ。全軍を留めてはいられない以上、迎撃だけでも支払う犠牲は数知れない。“例の世界”でも、同じような状況下で同等以上の苦境に立たされていた。恐らくは他の部署も火の車だろうことは容易に想像がつく。“負傷兵の看護”という名目上、救護室が特別目立つだけだ。

「……その点じゃあどっちも同じ、か。」

そしてそれは、“観る”限りでは彼方も同じ。機構側は身内の手痛い裏切りに遭ったらしく、セキュリティレベルが最低限まで低落。既に複数の精兵の侵入を許している。時間を経るに連れて抵抗も激化しているが、それはつまり苦境の裏返しだ。互いが互いの持ち駒を結集させた総力戦。ワンサイドゲームとなる気配は無い。

これを将棋か、或いはチェスの盤面と見るならば話は幾分か単純だ。どちらかの頭が斃れれば、その時点で勝負は終わる。現に、両軍は敵将を討つことを目標の一つに据えているだろう。将が斃れたなら否が応でも戦局は傾く。即終了とは行くまいが、勝利を手繰り寄せるには最も手っ取り早い手段の候補に入る。ならば、偶然にも戦況を監視できる立場を得た奇術師は、今すぐにでも出撃する義務すら背負っていよう。
――そうなのだけれど。

「何か、引っ掛かるんだよな……。」

将棋やチェスは、駒と盤面の両者が在って初めて勝負が成り立つ。だがもし、それがどんなに白熱した仕合であったとしても、他の誰かに『盤面ごと覆された』なら最後、勝敗の行方は彼方へと消し飛んでしまう。

予てから、ある一つの疑念を抱いていた。覚醒の瞬間、僅かに捉えた“世界の揺らぎ”。或いは『それ』を起こしうる存在が、盤面に触れうる存在が何処かに在るではないか――そんな妄執だ。
戦場に出ることなく、不完全な制御状態の千里眼(らしき力)を、偏頭痛を押してでも戦況の監視に傾けた最大の理由がそこにある。
唯の誇大妄想であればそれで良い。だが、もし『それ』が本当に動き出したとすれば、一体誰が対処出来る? 常に監視の目を置き、『最悪の事態』に備えられるヤツが他にいるかといえば……。

どちらにせよ、だ。戦況の把握は必須事項だった。だからこそ、霞み始めた意識を保ち続け、救護室の業務を手伝いながら、僅かな異変も逃すまいと観続けていた。

「うん……? これ、まさか……!」

果たして妄執は正夢となった。
奇術師は知っている。“誰かが異世界から召喚される”なんてのは、珍妙ではあれど、このような世界に於いては些事とされる。自身もまた、原理や方法は違えどそれ以外に大きな違いは無い。
けれど――今のは何かが違う。具体的には判らない、それでも本能が叫んでいた。

歴史是正機構内部の資料室。阿鼻叫喚の牢獄内。その二箇所に、奇術師の眼はほんの僅かな『世界の解れ』を捉えたのだ。

「想定より随分と早いな……。せめて準備運動ぐらいはしときたかったが――さてと。」

奇術師は作業の手を止め、愚痴を吐きながらも徐にポーチへ手を差し入れる。取り出されたのは、シースに収まった一対のダガー。銘が刻まれた刀身は、鈍い光輝を宿す。

目標が見え、座標が分かっているのなら、幸いにも奇術師は移動を苦とはしない。
遠方から“観ている”だけでは不十分。その場で確と、彼の姿を捉えねば。スゥと息を吸い、眼を瞑る――

――刹那。ダガーの軌跡だけを置き去りに、奇術師の姿は虚空へ消えた。

━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━


処は変わり、資料室。盗賊王としての研ぎ澄まされた直感が、悪意の波動を相殺する。“歪みの元凶”は心まで歪み切ったか、あるいは絶対の自身が故か、眼前の“敵”を“敵”とも思わぬように“不敵”な嗤いを浮かべていた。

翳された両の掌へと魔力が集う。やがてそれは熱量を帯び、陽炎を揺らし、散弾となって飛散する。
焔は散り、着弾する度に本を灰燼へと変えていく。弾幕の容を為すソレは明確な殺意を宿し、破裂音を響かせて、銀狼の躰を焼こうと迫り――

――地面へと、急に進路を変えてしまった。


展開された珍妙な光景。天使の気紛れか? まさか、それはあり得まい。では情けだろうか。否、それも当たらない。
考えるよりも、見た方が事は早い。見えるだろう、舞い散る炎の残滓の中に、人影が一つ増えたのが。

「おっと……! キャンプ場は此処じゃあないぜ。何なら外まで案内してやろうか、『魔王様』?」

つまるところ、それは転移した奇術師の仕業。彼が選んだ転移先、それがまさに資料室の中央だったということ。魔力の核、その位置を変えただけの小生意気な小細工だ。
戯けた様子の奇術師は服の煤を叩き落としつつ、すぐ後方の銀狼に振り返った。

「おはようさん。俺は【リプレイサー】、一応は精兵だ。突然で悪いが、ちょいとワケあってそこのガキの様子を見に来た。この様子じゃあもう分かってんだろうが、どうもコイツは只者じゃないらしくてな……。とかく、暫くは助力させてもらうぜ。」


“俺は協力者で、様子を見に来た”。奇術師はそんな必要最低限の情報だけを口にすると、返事も待たずに首を回して“彼”の方へと向き直る。
何処か巫山戯たような雰囲気はそのままにして、言葉を紡ぎ出した。

「さてと、俺としちゃあ出来るだけ穏便に行きたいところなんだが――。あくまで推論けどな、お前は多分、この世界についての情報が不足してる……ってとこなんじゃないか。どうだ、お前さん。この通り情報源も燃えちまったんだ。ちょいと腰を落ち着けて話そうって気はないか?」

語る奇術師は“さあ、私は丸腰ですよ”とでも言わんばかりに掌を見せ、首を竦めるようなポーズを取る。まるで先の『攻撃』も意に介さない様子だ。
語調こそ砕けているが、彼の言葉に嘘の雰囲気は無い。明確な敵意だとか、脅威への畏怖なんてものも、纏めて包んで小馬鹿にしたような口振りだ。

突然に現れた奇妙な男。惚けていると判断するか、ただの道化と見下すか。無視をするのもアリかも知れない。三者三様、捉え方は自由だろう。奇術師の意図も、今は材料が少ない、どんな風にでも取れそうなものだ。

――だから一つ、言えることがあるとすれば。これは奇術師なりの『確認作業』。目的は既に定まっている。あとはどう動くか、その一点だけだ。

>>アズリエル、ミラノ


【滑り込みで乱入させていただきます! 少々意図が不明瞭なムーブですが、そこはどうかご容赦を……】

7ヶ月前 No.1165

ヴィクトーリア・ダールグリュン @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『歴史是正機構本部/牢屋/ヴィクトーリア・ダールグリュン』

捕らわれていた人達を解放し、彼らから感謝の言葉を貰いつつ急いで彼らを逃がしていると、
ヴィクトーリアは他にも捕らわれている人達がいると聞いた。
それを聞いて「分かったわ。後は任せて」と伝え、捕らわれていた彼らと別れヴィクトーリアは別の牢屋に向かう。

それから数分後、別の牢屋にたどり着き様子を伺うが、ヴィクトーリアが来た時には既に手遅れだった。
牢屋の中に居たであろう人達全員が惨殺されており、地面が血の赤に染まり、壁にも血がべったり付いていた。
そこには既に戦闘している二人の少女がいた。
一人はナイフを持っていた。そしてもう一人はバレーボール程の大きさの光を作っていた。
どちらかが牢屋の人達を全員殺害した者で、
どちらかがヴィクトーリアと同じ時空防衛連盟に所属している仲間か協力者だろう。
だが、現在の状況を見ただけではあのナイフを持った少女の方が敵に見える。
戦場に来ている以上ヴィクトーリアは逃げも隠れもしない。
自分の目指す夢に向かって歩くために。

「五十四式 「槍礫」!」

片手サイズの青白い雷の魔力球を生成してナイフを持った少女に向けて放とうとした。
ヴィクトーリアは不殺の為、殺意を持った一撃ではなく、半ば相手の動きを妨害する様な攻撃だった。
威力は低い為当たった所でちょっと痛い程度だが。
攻撃行動を取ってしてしまった以上この戦闘からは逃げられない。

>>Chara、蓼科祈

7ヶ月前 No.1166

@tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4

【 歴史是正機構本部/牢屋/蓼科祈 】

 ――殺した?

 呆気なさすぎる。抱いた感想がこれで、気味の悪いくらいに綺麗に奇襲が決まった結果が目の前にある。
 静寂を切り裂いて投射された破壊の光が壁に敵を叩きつけると共に、<分解>を開始/絶命の証拠が目の前にある。
 死を見慣れているからこそはっきりと分かるのだ。

 ・・・・・・・・・・・
 アレは確かに死んでいる。
 だったら今降りかかる声は――何?

「――ッ!」

 殺し屋ではない。それは確か。
 殺意の指向性が露骨すぎる――判断と同時に身を翻し地面スレスレまで姿勢を屈めて後退。
 高笑いと同時に迫るChara。加速し、間合いを一瞬で詰めて振るわれるナイフは殺人、ただそれだけに特化した技。
 五体に加え、心臓を的確に穿ちにかかる血濡れの刃はそれだけであるにも関わらず、歴戦の猛者を演じる種となる。

 殺人鬼は人を殺すのに慣れているのだから、その点を考えれば当然の理屈足りうる。

「冗談」

 初手、足払い。
 そのまま勢いに乗せて両手を地面に付き、円を描き足で回転すること三度。ブレイクダンス。
 急所を狙う刃を足捌きで弾き返す――手の付け根、武装を振るうという行為におけるアキレス腱。
 回転させる足を相手のナイフ、ならびに手首に的確に当てて刃を反らし、そのまま腕を屈伸しバネの要領で跳躍。

 味方の魔術砲の支援も相まって、負ったダメージは零。
 着地――視線をCharaへ、そしてヴィクトーリアへ。

 能力の詳細を探る。死を覆す力など、それだけで世界法則を歪めるに等しい異能<デュナミス>たりうる。
 加えて戦闘時の膨大な記憶を蓄積することが可能な以上、罠、搦め手、それらすべてはいずれ通用しなくなる。
 それが何の対価/制約もなしに振るえるのであれば脅威極まりないが――にやり、と口角を吊り上げて不可能を否定した。
 必要なものは単なる発想の転換だ。手に宿る破壊の光が、継戦の意志が潰えていないことを声高に主張している。

       ダブル
「《破洸》――二重ッ!」

 破壊の光を集積。
 投射、左右それぞれから挟み込むように撃ち込まれる魔弾は、しかしぴったりと重なるような位置には撃っていない。
 ただ飛ぶだけを行えば天墜の鳥がごとく上方向の軌道の弾丸が直撃し、かがむだけならば足元を滑るように走る弾丸が焼き尽くす。

>Chara ヴィクトーリア

7ヶ月前 No.1167

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

【歴史是正機構本部/資料室/ミラノ】

 通常、会話の最中いきなり目の前で問答無用と刃が煌めくことを考えている輩はいない。
 もしも居るとしたら、そいつの頭は真っ当ではない。

 盗賊王、銀狼のミラノが行動方針の基底とするものは自分の価値観と勘だ。
 その勘が警鐘を鳴らしたのだ。腐敗の魔術を扱い、あらゆるものを芥のように断じた魔術師を見た時のように―――あるいは持たざる者たちの怨念を束ね、従える弱者たちの王たる山羊を見た時のように、彼の価値観に照らし合わせた時、この獣人がどういうものに見えたのかは………ミラノの行動を見れば明白だった。
 刃が煌めく。目の前で“余計なことさえしなければ止める”つもりだが、容赦ナシの一閃だ。これの対応に見るべきところが無いのならば本気で見逃すつもりで居たし、不安になるほどの弱者や善人ならば彼とて対応を改める。何度だって言うが、間違っていたらごめんなさいの一言で良いのだ、こんなものは。

 そしてだからこそ、一歩間違えれば失礼どころか無辜の民を殺害する凶行は―――。


「―――ビンゴ。三文芝居ご苦労ォ、ってな!」

     ・・・・・・・
 しかし、銀狼だからこそ大当たり。

 不可視にして非実体の衝撃が斧と相殺される。
 手に伝わる痺れから力のほどを概ね測りつつ、彼は口元を不敵に釣り上げた。
 瞬時に後退、追撃は仕掛けない。速攻戦術、積極的に殴りかかるのも悪くはないが、今はその時ではない。判断が終わったのならミラノの行動は淡々と進み、距離を離しながら手元に武器を構え直した。


「あ? 寝言なら寝る前に言えよなバケモン」

「序にコミュニケーションの仕方はご両親から教わってねーんだな。
 専門用語でベラベラ喋るヤツに“ハイそうですか”って言うヤツが居るかよ。なぁ?」


 ………まあ、別に同意が欲しいんじゃねーんだろうな。コイツ。
    少年は内心で呆れ、外面で肩を竦めながら、目前の魔人をそう評した。

 態度を見ていれば分かる。
 これは子供だ。

 力を持っていようがいまいが、思考構造としてあまりにも稚拙なモノだ。
 あるいは興味が無いのだろう。
 どうでもいいモノが無くなったところで心は痛まない。
 どうでもいいから、生きていようが死んでいようが構わない。
 もちろん、滅ぼうが残っていようが構わない。実に分かりやすく―――。


 ―――ならば対応は決まりだ、と動こうとした時に第三者。
    動く必要ナシと判断した彼は、すぐにやって来たそいつの姿を見た。


 黒髪と擦れ傷だらけのダスターコート。
 ところどころ見知らぬ装備と、そうではない―――おそらくは何の装飾も強化《エンチャント》もされていないような短刀や、それらを仕込むポーチ。外見はガサツなれど、声には飄々とした空気を乗せている。

「(魔法………じゃ、ねぇ。『アレ』でもねぇ。で、コイツの感じ―――)」

 見覚えはない。であるに後は感覚的な判断だ。
 この現れるだけ現れて会話を始めた男が、信用できるのかどうかという話であり。


「(………ま、いいか)」

「そりゃご苦労なこった―――まあいいや、お前の面は信用出来そうだし、好きにしろよ。
 つーか………オレ、用があるのはこの先なの。ガキの御守はまた後にしてーんだけど?」


 結論。ミラノが何をどう判断したのかは不明だが、彼の行動に口を出すことはなかった。
 彼の会話の内容をぶった切って殴るほどではなく。
 彼の会話通りに話が進むと考えるほど間抜けでもない。
 強いて言うなら―――最低限の情報だけを伝え、答えを聞く前に背中を向けたこの男を、ミラノが完全に信頼したのかと言われると嘘だ。かといって、“じゃあ纏めて殴る”というほど信頼出来ないのかと言われると違う。

 単純な話だ。
 信頼は出来なくても、信用は出来ると判断したから、彼は何も口出しをしないだけ。

 それに―――皆まで言うこともないが。
       盗賊王はある基準の相手からしか奪うことをしない少年だ。

>アズリエル、【リプレイサー】

7ヶ月前 No.1168

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【歴史是正機構/実験室/黄衣なる者】


「贖い、ねえ。いいねえ、死を都合の良い清算とまで割り切るとはねえ。外道も外道、大外道だねえ。」
「うんうん、君の道には焼け跡しか残らず、君が潰えればその道すらも罪として燃え尽きる。なんて、都合がいいんだろうねえ。」

人間擬きは全てを背負うと宣ってはいるけどねえ、死は清算にはならないんだよねえ。そんなもの、たかが一つの命程度じゃあ割に合わない。一つ奪ったら、一つ奪われる、それが当然の摂理だからねえ。それは逃避でしかないねえ。
そう、逃避だねえ。だってそうだろうねえ、幾ら殺しても、自身の信念に基づいて人の道を踏み外しても、その背後や足元に広がる数多の屍を見ても尚、償うと、贖うと言ってるからねえ。責があったとして、到底背負えるわけがないのにねえ。
人間には背負える限界もあって、人間擬きでもそれには変わりはないからねえ。それを良心の呵責とも言い換えられるだろうけどねえ、だって人間擬きは何時か止まるだろうからねえ。外道を進めるのは、外道と気付かぬものだけ、理解すれば何れ堕ちるからねえ。
認識も、理解も、あらゆる物事は知らなければ成り立たないからねえ。知っているからこそ言えることもある、同時に知っているからこそ成し得ないこともあるねえ。そうそう、だから知らないモノは強いんだよねえ、何に繋がるかなんて考えないからねえ。
だからねえ、人間擬きは何れ人間に戻るねえ。だって、彼は人間だからねえ。人間の常識を知っている、人間としての見識を持っている、なら行きつく果てはどうあっても人間だねえ。まあ、何処かで壊れていたなら知らないけどねえ。それなら、面白くないガラクタだからねえ。
さてさて、当の人間擬きは救う理由はあっても止まる理由にはならないと言っているねえ。そうだねえ、それならばはっきりと言ってしまえばいいのにねえ。被検体ちゃんにさあ、自分のエゴの為に死んでくれってねえ。それならまだ、可愛いのにねえ。
そして風の刃も気にせず突っ込んでくるねえ、割れたような肉体が焔で修復されるのは恐ろしい身体だねえ。どちらにしてもこれで勝ち目が無くなった訳だねえ、だって風の魔術が効かないなら攻撃しても効かないからねえ、困ったねえ。
ああ、哀れな被検体ちゃんは本当は人間擬きの返答があれだったから最後を迎える予定だったんだけどねえ、うん、きっとこの方が何時か人間擬きが理解した時に面白そうだからねえ。だから、ちょっとだけ苦しんでもらうねえ。
迫る巨人のような腕、あれは真面に喰らえば危ないねえ。まあ飛んでくるならば力場で逸らそうねえ、高温は少しばかり厄介だけどねえ。ほら、再生速度が遅れるからねえ。あれの炎も厄介だったねえ、巻き込まれなくて良かったけどねえ。

「十分だねえ、それなら助けずに纏めて焼いてしまえばよかった、なんて疑問が浮かぶ程度にはねえ。」

さてさて、飛来する超高温の巨大な腕、人間擬きがもう少し救いようがなかったり、もう少し人間味が残ってればこの被検体ちゃんはじゅっと溶けちゃうだけで済んだんだけどねえ。まあ、恨むのなら誰かを恨めばいいねえ、だって誰でも良かったのに捕まってしまったんだからねえ。
巨腕と言うだけあって逸らすのも一苦労だけどねえ、まあ特に何かをするわけではないけどねえ。ただ逸れて横を通り過ぎる直前に被検体ちゃんの下半身が丁度溶け落ちる様に潜らせるだけだねえ、おっと手が滑って左半分も溶けかけてしまったねえ。
絶叫、そう形容するに相応しい悲鳴が聞こえるねえ。うんうん、痛いねえ、でもすぐに死なれても刺激が強すぎて死なれても困るからねえ。ちょっと治癒をかけて、苦痛が続いても尚死ねない程度の重傷にしておこうねえ、治癒の激痛も分からない位には痛そうだねえ。
腰より下が蒸発したように溶け落ちてるねえ、内臓がぶらりと垂れ下がってるねえ。左腕は完全に溶けてて脇腹から肋骨の断面や胃が見えるねえ、よく見れば心臓の鼓動も分かるねえ。でも生きれるようにしてあるんだよねえ、勿論痛覚も生かしたままだねえ。
可哀相な被検体ちゃんだねえ、人間擬きが助けてくれればよかったんだけどねえ。まあ、これから助けて貰えるからねえ。安心すればいいねえ、だって救う理由はあるんだからねえ。ほら、介錯って言う素敵な言葉を伝えて見ればいいねえ。

「ほうら、救う理由があるんだよねえ。君がこの子を救うまでは逃げも隠れもしないからねえ、救ってあげると良いねえ。」

そう言いながらさっきと比べて体積が半分以下になった被検体ちゃんを人間擬きの前に放るねえ、悲鳴はくぐもった呻きに変わっているねえ。全身を襲う逃れられない激痛に苦しんでいるねえ、でもそのままじゃあ死ぬことは出来ないけどねえ。
ああ、この場からすぐに離れて治療、なんてのも難しいねえ。この治癒は謂わば細胞の異常進化、治癒しきらずに止めてしまえば人間ではない健常な細胞が留まっているからねえ。それを切除しなきゃ治療は出来ないねえ、まあ切除したら程なく死ぬけどねえ。
止まる理由は取り除いたからねえ、倒すべき外道はちゃんと待っているからねえ。なら救う理由を優先しても問題ないねえ、だって救う理由はあるんだろう?なら、救わないといけないよねえ。じゃなきゃ、ただの法螺吹きだからねえ。
そろそろだねえ、被検体ちゃんが根を上げるのはねえ。ほら、聞こえてきたねえ。助けてって、辛いって、苦しいって、切実な消え入りそうな願いが聞こえてきたねえ。そうそう、そう言っても被検体ちゃんも分かってるからねえ、自分の状況がねえ。

「君が止まる理由は無くなったからねえ、『助けて』あげたらいいと思うねえ。安心していいねえ、手を出すつもりはないからねえ。」

ほら、被検体ちゃんの最後の望みだねえ。殺して、ってねえ。生きられる希望を持てるほどの怪我じゃないのにねえ、それを長々と生かしてあげるのは可哀相だよねえ。うんうん、誰も責めやしない救いを齎せばいいねえ。
だって人間擬きはこれも背負うんだろうからねえ、きっと人間に戻ってもねえ。期待している面白さはその時だねえ、まあそれ以前に人間として生きる時にそれまでの犠牲を背負いきれるかも、面白いけどねえ。
もし表情があったならニヤニヤと意地の悪い笑みで見ているだろうねえ、まあどう選択しても面白いからねえ。もし助けないなら、それでもいいねえ。助けるなら、文字通り人でなしの完成だねえ、お祝いしなければいけないねえ。
今回ばかりは本当に手を出さないねえ、だって人間擬きの決意を無碍にするのは面白くないからねえ。無視して滅しに来ても、しっかりと救っても、助けを蹴っても、どの選択でも人間擬きが決めたことだからねえ。それを面白く見るだけだねえ。
いいねえ、正義感に溢れた英雄だったもの。何があったのかなんて知りはしないけどねえ、どんな存在であれ面白くなればそれでいいからねえ。それ以上望むことはないねえ、だから、面白くなって欲しいねえ。
何方にしても、勝ち目が薄い以上は撤退を視野に入れるしかないねえ。だって人間擬きに攻撃が通用しないからねえ、逃げるしかないねえ。義理を果たす為とは言ったけどねえ、流石に無謀を強要までは行かないと良いねえ。

>>レオンハルト・ローゼンクランツ

7ヶ月前 No.1169

ごきげんよう @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

7ヶ月前 No.1170

Futo・Volde @nonoji2002 ★gLBoRrfVfo_ubH

【歴史是正機構本部/牢屋/Sans】

「Heh, どうやら別世界のオイラはヘマをやっちまったみたいだな」
「でもそのオイラとオイラは違うんだぜ?」

アイツも今の俺と同じでいろんな“世界”を回ってきたのだろう。そしてアイツはいろんな世界を文字通り“壊してきた”のだろう。別世界の自分が一体、何人アイツの手によって葬られたのかはわからない。別世界の自分が一体どんな“ケツイ”を抱き、アイツと対峙したのか、知る術はないが、きっと今俺が抱いている“ケツイ”と同じ“ケツイ”を抱いていたはず。
つまり、俺はそんな“死んでいった奴ら”の“ケツイ”でもあるわけだ。
だからすることは単純でたった1つ。確実にアイツを止める事。そしてこれに失敗すれば、俺らが掴んだ“最高のエンディング”をぶち壊されるってわけだ。

「今、ここでお前はサイアクのひと時を過ごすことになる」
「お前に勝利は訪れないぜ」

コイツはきっと、既に別世界の俺と”サイアクのひと時“を過ごしてきたに違いない。
今一度、その“サイアクのひと時”をコイツには過ごしてもらう他ない。そして諦めさせるまで戦う。それが俺の“ケツイ”、死んでいった“俺のケツイ”だ。

「さて、もう1人増えたみたいだし、オイラから忠告しておくぜ」
「もう気付いてるだろうが、コイツは何度でも”蘇る“んだ。記憶を引き継いだままな。いくら殺したって無意味に近い。だが、殺すことに意味はある」
「アイツは明確に“ケツイ”を持ってる。それに抗うにはオイラたちも明確に“ケツイ”を持つことだ」

一撃目が躱されたことから言えるのは、おそらくアイツは俺の攻撃の殆どを読み切っているという事だ。いくら別世界の俺と言っても、おそらく基本的な攻撃スタイルは変わらないはず。
もし、これが1対1の対決ならおそらく、俺は別世界の俺のようにやられていたかもしれない。だが、これが不幸中の幸いという奴か、ここにはもう2人“味方”が居る。
俺以外の誰かが居るのはかえって足手まといだと思っていたが、それは飛んだ思い違いだったようだ。俺1人だけでコイツを相手に攻撃を繰り返していても、おそらくアイツはその大半を躱してきた事だろう。だが、俺以外のこの2人の攻撃が加われば? あるいは俺が攻撃せずとも、この2人が攻撃を加えたとしたら? まだどんな攻撃が彼女たちに出来るのか俺も知らなければ、アイツも知らない。
つまり、“変化球”を投げられるというわけだ。足手まといどころか、生き残るための道が大いに切り拓かれている。

「その攻撃がオイラに当たらないことはわかってるんだろ?」

何度も何度もダガーで切りかかってくるアイツを他所に、得意の“ショートカット”を用いてその攻撃を全て躱しながら、もう一度重力でアイツを宙に持ち上げれば天井に、そして今度は地面に、と叩きつける。そして同時に骨を突き刺してやるかのごとく、天井に地面にと突き出させながら、アイツをこのまま貫こうとばかりに“最初からやる気”を出す。そうでもしなければ、アイツは諦めないだろう。

>Chara、蓼科祈、ヴィクトーリア・ダールグリュン

7ヶ月前 No.1171

ヴィクトーリア・ダールグリュン @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『歴史是正機構本部/牢屋/ヴィクトーリア・ダールグリュン』

味方の攻撃を回避していた少女は、重力に従い落下を行いつつヴィクトーリアに狙いをつける。
胸から胴体に向けて数十回に及ぶ突きが放たれる。その攻撃は素早く正確なものだった。
ヴィクトーリアは自身の前に逆三角形の魔法陣の盾で防御行動をとり防ごうとする。
無理に攻撃に転じることはせず、ヴィクトーリアは防御に集中する。
相手の言葉に「貴女に何も壊させはしないし、私達の未来を潰えさせない。貴女の思い通りにはさせないわ」と強い意思と口調で返す。


「何度殺害しても蘇る・・・」

「なるほど・・・。とても貴重な情報をありがとうございますわ」

もう一人の味方である、スケルトンからの情報に感謝の言葉を送る。
何も知らないままナイフを持った少女と戦うところだった。
同時に「一見無敵と感じる能力にも抜け穴はある」とヴィクトーリアは思っていた。
そして「決意」。相手に抗うには明確にこれを持つ事だと彼は言う。
ヴィクトーリアにも遥か遠い世界の一件で決めた強い決意と覚悟がある。


「五十四式 「槍礫」」

最初に使用した1発とは違い、今度はヴィクトーリアの周囲に15の青白い雷の魔力球が生成され、展開される。
そしてその展開した魔力球全てを相手に放とうとした。
妨害目的で使用していた先程とは異なり、明確に相手を狙っていた。
数は変わっても威力は相変わらず低いままである。

>>Chara、Sans、蓼科祈

7ヶ月前 No.1172

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【大統領官邸/シチュエーションルーム/フォルトゥナ・インテグラーレ】


単純な腕力だけではなく、心情全てを乗せてもまだ足りぬと言わんばかりの拳はヴァイスハイトへと吸い込まれる。技術などない、思惑などない、ただ溢れ出るどうしようのない想いをぶつける為だけの拳。止まった時は、最悪の形で動き出したのだ。
両腕を交差し、咄嗟に防御の姿勢を取るも吹き飛ぶヴァイスハイト。その拳を受けた本人が一番理解できるだろう、その決して大きくない拳に込められた酷く重い情念の数々を。吹き飛ぶヴァイスハイトを彼女は冷ややかながらも、未だ巡る感情に揺れる瞳で見つめていた。
期待がなかったと言えば嘘になろう、まだ傍にいてくれればと願ってないと言えば嘘になろう。彼女は待ち望んでいた、その想いに一片の偽りもない。ないからこそ、許せないと、憎いとまで思えてしまうのだ。貴方だけは、分かってくれていると思ったから。
銃を拾う余裕すらないほどの衝撃を受けたのだろうか、ふらつきながらも立ち上がるヴァイスハイトを捉えれば彼女はまた歩みを進める。総統も、裏切り者も、視界に映ってはいない。映す余裕などない、この溢れ出る感情を抑えることが出来なかった。
続く弁解のように吐き出される言葉、それに偽りはない。彼女が唯一の拠り所である光を無くした理由であり、ヴァイスハイトが背負っている罪でもあった。だが、それでも彼女は一つだけ違うと叫びたかった。そうではないと、心のままを声にしたかった。
憎い、そう『今は』憎い。ヴァイスハイトが並び立つ場所が総統の隣であったからこそ、彼女は今までの全てが憎しみへと変わってしまったのだ。決して、居なくなったその日からずっと憎んできたわけではないのだ。ただ、ずっと待っていた、それだけなのだ。
でも、言葉にはならなかった。それを話すには遅すぎて、この想いが生きていたのは少しだけ前の事だったのだ。今それを吐き出せば、彼女は自分の感情すら分からなくなる。許せないから、許したいから、明確にしてしまえば壊れるのは彼女の方だ。
あの叔父から逃げ出したいという気持ちは彼女にも理解は出来た、ある種彼女自身が最大の被害者であったこともあるだろう。だが、ヴァイスハイトが置き去りにして逃げたのと同じように、彼女もまた逃げる選択肢を取らなかった。心を歪ませてまでも、留まったことには変わりはない。
それを彼女は理解しているからこそ、仕方のない事情があったと、あの年齢で二人で生きることも、耐え続けることも苦痛であったことも今であれば理解は出来るのだ。だからこそ、許したい。納得は出来なくても、何故そうなったかは理解は出来るから。
それでも許せない、そう憎んでしまうのはヴァイスハイトの立っている場所が問題であったのだ。少女が懸念した踏み入ってはならない場所を、悔恨の言葉を紡ぐたびに深く踏みしめているのだ。彼女が憎んだ理由は、捨てたことが理由ではないのだから。

「……忘れたことはない、迎えに来ようと思っていた、か。ああ、分かった。分かった、嫌でもな。―――貴様は結局何も分かっていないとな。」

歩みを止め、額を手で覆う。その口元は、どうしようもなくおかしい様に弧を描き歪んでいた。だが指の隙間から覗き見える瞳は口先だけのそれを射抜いていた、揺れ動いていた感情は激しく燃え盛りながらも凍り付いていた。憤怒、憎悪、僅かに残った温情は冷え切った。

「ならば!何故貴様は私の隣にいない!何故私の前に立っている!何故私に銃を向けていた!それが貴様の迎えだというのならば、失せろ!私にはもう、……もう貴様など必要ない!」

吐き出すような慟哭、冷淡で平坦であったこれまでの声色とは全く異なる感情ばかりの悲鳴。涙がその頬に伝わらなくとも、その心は深き海へと沈みゆく。沈み切った心はまた反転する、最早彼女にあるのは激情しかない。憎悪の焔は全ての愛すらも燃やそうとする。
そうだとも、彼女は待っていたのだ。何時かは、また何時かはと。仮にヴァイスハイトが歴史是正機構に所属していれば、そうでなくとも彼女を最初に迎えに行けば、きっと許していただろう。だって、しっかりと迎えに来てくれたから、捨てていないと証明したから。
だが視線の先のそれは思っているだけだった、勝手に思っているだけの想いなど伝わる訳がないのに。言葉にするには遅すぎた、今この瞬間にどれだけ取り繕おうとも彼女の焔をさらに激化させるだけだ。手紙でも良かったのだ、それがあれば孤独にはならなかっただろうに。
裏切り者の言葉は的を得ていた、行動が足りないとその一言に尽きてしまう。だが、彼女は裏切り者を僅かの間視線で射殺すほどに睨んでいた。確かに心の代弁と言える程ではあった、だがあくまで彼女とヴァイスハイトの問題であったのだ。
責める権利があるのはきっと彼女だけであろう、糾弾する権利があるのも彼女だけだろう。そしてそれに答える義務がヴァイスハイトにはあろう、だがそこに裏切り者は含まれてはいない。言葉を遮らなかったのは見当外れではなかったからだ、そうでなければ骸が一つ出来ていただろう。
歩みは未だ止めない、ヴァイスハイトがこの場から去らぬのならばこの手で息の根を止める。まだ戯言を吐き続けるのならばその口を閉ざさねばならない、拳を再び固く握りしめ地を蹴ろうとするとき、その間に一つの影が割って入った。

「……綺麗事だな。共有してどうなる、知りもしない貴様に教えたところで何になるっ!この苦しみが、この情念が和らぐのか!そもそもだ、貴様は何故同じ道を歩んでいる!」
「インテグラーレ議員の娘、ただそれだけであらゆる全てが結びつけられた!それは貴様も変わらないはずなのに、何故繰り返そうとしている!」

爆発した感情は容易く収まらない、本来であれば綺麗事と一蹴し歯牙にもかけないがヴァイスハイトへの道を遮ったことも重なり、彼女は逃げる場を無くしていた。だから、その行為が意味がないと騙りながらも抱えていたものを吐露していた。
同じインテグラーレだ、同じ汚職議員の娘と言うレッテルを張られる存在だ、家族が散った苦しみも理解できているはずなのに、それなのにも拘らず同じ道を歩んでいる。それが許せなかった、同じ苦しみを知っているのに繰り返そうとすることがどうしても。
彼女はその真相を知らない、総統はそれを知っていた。それだけの違いと言ってしまえばそれだけだ、もし知っていればきっと総統と同じ道を歩んでいただろう。だがそうではなかったのだ、彼女は知れる限りのことを調べ尽くしても尚まだ真実には至っていない。
だからこそ、彼女の瞳に映る総統は父と同じ道を歩み繰り返そうとしている愚か者としか映らない。だから止めねばならない、本来の目的であったはずなのにそれはとうに消え失せていた。今の彼女は、抑えすぎた感情を爆発させた少女に過ぎない。

「私は家族と共に居たかった、それだけだった!だがそれを壊したのは父で、貴様もまた繰り返す!なら私が止めるしかないだろう!」

彼女の瞳には確かな決意が燃えていた、本当の望みも、捨て去ったはずのそれを吐き出してまでも、止めると叫ぶ。愛は捨て去れなかった、彼女が止めると抱いた気持ちの根底はそれであった。間違えないように、また散らないようにと。
何処まで行っても彼女は愛していた、父を愛すが故に汚職を受け入れられなかった、姉を愛すが故に道を誤ったと思ったからこそ止めなければならないと思った、従兄を愛すが故に諦めきれずに何時までも待ち続けていた。どうしようもなく、愛を持ち過ぎていた。
だからこそ、父を愛すが故に信じる証拠が失せて愛は憤怒へと変わった、姉を愛すが故に同じ苦しみを抱きながらも繰り返そうとする姿を見て愛は憎悪へと変わった、従兄を愛すが故にその姉に付き従う姿を見て愛は悲哀へと変わった。
愛したままでは辛いから、愛を切り捨てようとした、輝かしい暖かき思い出が辛いから、忘れる様に鍛錬へと励んだ。そして、捨てきれなかったからこそ、裏切られ憎しみへと変わった。結局、彼女はまだ幼いのだ。時は動き出したばかりだから。

「―――だから、邪魔をするなぁ!」

枯れた瞳に僅かに潤みが帯びる、粒にならぬほどの些細なものではあったが確かに彼女は泣いていた。きっと彼女自身も気付いては居ないだろう、それが感情の発露だ。全てを抑え込もうとして、中途半端にできてしまったが故の不器用な涙。
身体強化をさらに引き上げる、魔族と比べても彼女に勝る能力を持つ存在は居ないと言い切れるほどの圧倒的な身体能力。軽い蹴り出す音、それが聞こえるよりも早く総統へと迫り、その拳を突きだす。狙いは顔、理由はそこに顔があったから。
感情的に、ただ殴りたい場所へとその拳を穿つ。邪魔をするなと言う気持ちもあろう、繰り返さないでと言う気持ちもあろう、理屈を抜きにしたただ強化された身体能力で放たれる拳。技術も捨て去ったそれは、剛拳と呼べるだろう。
真面に喰らえば人体など肉片となり散らばる様な、ただ力任せの一撃。今の彼女にあるのは感情と、それに引き摺られる身体だけ。謂わば殴りたいから殴っているのだ、ある種言葉などなくても分かる相互理解の方法だろう。
だから、これでいい。言葉を尽くす時はここでお終いだ、後は感情を乗せてぶつかり合うだけ。そうすれば嘘も偽りもなく互いを理解できよう、昂った感情のまま吐き出される言葉を隠す余裕などないのだから。
真実を知ることが出来ず、目的の為にあらゆるものを抑え込み続け、唯一の拠り所に裏切られ、愛するが故に憎み続けることになってしまった彼女。その殻を剥ぐときは来たのだ、丸裸の心を吐き出せばいい。彼女の『敵』は居ないのだから。

彼女は孤独であった、特にヴァイスハイトが置き去りにした時から。心を開ける相手など一人もいなかった、周囲は全てインテグラーレ議員の娘として接してきたからだ。それが長く続けば、彼女自身も関わろうとはしなくなった。
唯一、孤独になってから彼女が本心を見せたのはあの純真無垢な存在だけであった。それ以外、私情を一切見せずに只管己を磨き続けていた。誰も、傍には居なかった。誰も、彼女を気にかけはしなかった。
だから、もういいのだ。孤独のままでいる時は終わりだ、勘違いを解いて、理解するだけでいい。そうすればきっと彼女が望んだ、家族は得られる。

>>ユーフォリア・インテグラーレ ヴァイスハイト・インテグラーレ ダグラス・マクファーデン アルカディア・クアドリフォリオ

7ヶ月前 No.1173

@tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4


【 歴史是正機構本部/牢屋/蓼科祈 】

 その選択を取るのは――分かっていたことだった。
 何故なら一度、その痩躯に叩き込んでやった痛烈な光であるのだから。

 Charaが力押しで解決できるほどの力を手に入れて戻ってくる。
 または死ぬ度に強さそのものを増強させて戻ってくるのであれば手のつけようはなかっただろう。
 だから今の一撃が必要だった。
 交差する雷撃の威力を身を以て「知っているだけだ」という事実を掴むために。
 だから、今の攻撃についての狙いも悟られてはいない。

 宙を空振り、牢屋の奥へと消えていく魔弾。
 踊るように跳躍するChara。空を蹴って落ちてくる様は弾丸のよう。
 ナイフを地に向け、滑らせるようにヴィクトーリアを捌きにかかる。
 その矛先は祈にも向いた。払い、縦斬り、抉りこみ――執拗なまでに足を狙って放たれる。
 脚部へ破滅の光を集束させると同時に一つ、大地を踏み鳴らす。
 光の波動が立ち昇り、襲う刃を寄せ付けない。大きく後方へ向けて後退。

 飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。繰り返す宙返りのステップはひらりひらりと斬を寄せ付けない。

「……あ、そう」

 カチンと来た。Charaの言動と、ガイコツ――Sansのやり取りは皮肉にも突き刺さるものが多すぎた。
 尋常じゃないくらいに――ああそう、と心がざわめきはじめる。
 何か見たことがあると言われれば、それはもうその通りでしかないのだろう。
 泡立つ魂に映る視界は、いつも以上に明瞭でクリアなものとなっている。
 砂煙などありはしないというように。

 そうして一息吐く余裕が出来た時――視界に髑髏らしき人型がいることに気付く。
 ああそういえば、と記憶を手繰る。乱戦となる前、因縁ありげな何者かが悠々とこの場に現れていたことを。

「知ってる、サンズ。蘇るってことも。
   、 ・・・・・・・・・・・・・・・
 あと――そういうこと言ってる奴程止まれないことぐらいは」

 自分が氷になったようだった。燃える氷、――感情を制御しながらも焼け付く心が騒ぎ立てている。
 ヴィクトーリアが展開した十六の雷弾に加え、サンズによって支配された重力。

「《破洸》」

 再び両手に一つずつ、魔力球を展開。交差させるように腕を振り払って放ち――Charaへと殺到させる。
 ダメ押し二つ。地を蹴り飛び上がれば、仕掛けるは近接戦闘。その手刀を伸ばし、刃とする秘術。

「《滅光刃》――!」

 ステップイン。間合いを深く浸食。
 刹那、――空間ごと引き裂いて放たれるは祈の斬撃。
 触れたものを片っ端から切り裂き消し飛ばす暴威がCharaの足へ、腕へ。

>Chara ヴィクトーリア Sans

7ヶ月前 No.1174

受け継がれる凪の系譜 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/食堂/セリィ】

話にならない。あまりに価値観が違いすぎて会話が成立していない。こいつは知らない世界は破壊して当然くらいに考えているらしい。実に恐ろしいことだ。
同時に始まったのは、人間の本質に迫ってくるかのような煽りだ。等価交換と労働の話。割に合わない労働、何も得られない労働を人は嫌う。ごく当たり前の摂理だ。
これに関して、セリィが反論出来ることはない。正直にいって、自分も訪れた世界でこのような面倒事に巻き込まれるのは、出来ることなら御免被りたいところだ。
取り敢えずこの世界の人間を虫呼ばわりしたことに腹が立つが、こいつの言動は全てにおいてこの調子だし、いちいち反応して怒っていたところで時間と体力を無駄にするだけだろう。

「あんたが言ってることは正しいわよ。その通り、あたしがやってることもただのボランティア。何か見返りがある訳でもない」
「でも人間にはね、黙って見過ごす訳にはいかないこともあるのよ。あんたの汚れきった価値観じゃ理解出来ないでしょうし、理解しなくていいわ。されても腹立たしいだけだから。あたしはただ、これをしなくちゃいけないと思ったから、見返りなしに動いてるだけ」

セリィが時空防衛連盟に協力することを選んだのは、ひとえにそれが自分の使命であるからに他ならない。彼女が無数の世界を旅する目的の一つ。それは、異世界人達への恩返し。
かつて自分の住む世界は、多くの異世界人達の協力を得て、平和を取り戻した。戦いが終わった後、彼らはそれぞれの世界へと帰っていったが、自分がそうした者達にしてやれたのは、感謝の言葉を伝えることのみ。
もしかしたら、自分の世界に危機が迫っているかも知れない状況で力を貸してくれた彼らに、どうにかして形のあるお礼をする方法はないか。そこで、彼女と彼女の両親が思い付いたのが、この方法であった。
様々な世界を見て回り、そこで起きている問題の解決に協力する。ただの自己満足に過ぎないかも知れないが、今の自分達に出来ることは、それくらいしかない。

「あー……あとでゆっくり話しましょう。友達になるのは今からでも遅くないはずよ」

マシュマロは、自分が彼女のことを知らないことに怒っているようであった。セリィはただただ困惑するしかなかったが、戦いが終わった後に話をしようと約束する。
意趣返しのような形で放たれた岩石の槍を丁寧に躱していくセリィであったが、運悪くその途中で四方向を完全に塞がれてしまい、左手が串刺しになった。
利き腕でなかっただけ、幸いであったと考えるべきか。痛みは相当なものだが、時にはもっと酷い怪我をしたこともある。それから比べれば、全然マシに思えるレベルだ。
彼女の身体から光の波動が解き放たれる。劇的な身体能力の向上。一時的ではあるものの、相手を凌駕する速度を手に入れたセリィは、光速で動き回りながら、諏訪子へ何度も斬り掛かる。
一撃の威力もさることながら、手数も圧倒的。そこにマシュマロの攻撃が組み合わさることによって、回避は困難を極めることだろう。あの祟り神はこれすらも、難なく往なしてしまうのか。

>洩矢諏訪子、マシュマロ・ヴァンディール

7ヶ月前 No.1175

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/エスト(残魔具2851個 残魂数7)】


―――幾千の時が流れた。
文明の発達を眺めて来た、盟友の王国が途絶える姿も見た、朧げな記憶の中の帝国に現れた兵器が時代に追いついていく様を見た。退屈ではなかった、だが共に寄り添う人間は皆先に死んでいく。世界を渡り歩き、再び舞い戻れば見知った顔など死んでいた。
彼女はそれを幾度と繰り返し、この時代まで生存していた。本来の歴史であれば有り得ない事、彼女はあの時の古代と呼ばれていた時代で死亡していたはずであった。だが介入の影響でその結末が変化した、故に彼女はこうして生き続けている。
死なない存在、それは厄介で通常の社会に紛れ込めば異物として排除されるものだ。魔族と比べても未だ長命である以上怖れられることの方が多い、だから彼女はスラム街へと身を置いた。人の出入りが激しく、交流があるようで踏み込まない場所は最適であった。
人を好む彼女にとって人との関わりが薄い生活は苦ではあった、それでも先立たれる苦しみよりはマシだった。だからこそ、教えを乞う物に魔術を教えながら盟友との約束の日を待った。そんな中、奇妙な胸騒ぎが起きた。
本能に近いそれに従い時空防衛連盟に協力を申し出た、その直後であった。覚えのある魔力反応を捉えたのは、動かぬ脚の代わりの浮遊魔術で宙を駆け彼女は急いだ。あれは嘗て仕えた女帝の物であったと、そう記憶していたからだ。
上空から雷光と閃光が瞬くのが見えた、そちらへ向かえば掠れた記憶の中に面影が残る人物が二人、そして盟友と女帝の姿があった。今際の時の盟友は合えると言っていたが、女帝までもとは想定外だった。涙を流せぬ身体が恨めしい程の感動を覚えた、が様子がおかしい。

―――何故、マロンを女帝が攻撃している?

確か薄れた記憶の中で二人の意見は真逆な事は多かった、だがそれでも危害を加えるほどの中ではなかったはずだ。しかしあの青年が防がねば確かに盟友と少女を巻き込む攻撃を、女帝は行っていた。彼女にとって理解が及ばぬ出来事ばかりであった。
盟友が女帝がいる理由は時間遡行で説明がつく、正直説明で理解できてもまた会えたという歓喜が勝っている。しかし当の二人は争っている、決して仲が悪かったわけではない。少し混乱しそうであった、周囲の状況も併せればそれは女帝がやったという事だろう。
数度記憶を失っても、女帝がその様な事をする人物ではない事は知っている。でなければ彼女は仕えなかっただろう、悪政とも呼ばれているらしいが少なくとも彼女にとっては最上であった。それを実現した女帝と目の前の女帝が同一だとは考えたくなかった。
共に居る青年は女帝を殺すとまで言っている、確かにこの惨状を行ったのが女帝であれば罰されるべきではある。だが女帝がこのような虐殺を行うとは考えられない、即座に攻撃に移れるほどの見切りの速さはなかった。

「……女帝、事情を聞かせて欲しい。無用な虐殺を好んでいたとは記憶していない、そうするだけの理由があるだろう?」

ふわりと宙から舞い降り、盟友の前へとマントを風に靡かせながら降り立つ。再会を喜びたいがそれどころではない、異様な様子の女帝を捨て置けるほど恩を忘れている訳ではないのだ。だからこそ、彼女は記録書の頁をなぞる。魔力が込められた頁が眩く光る。
女帝を囲む雷の檻、落雷を以って捉えた囚人を処刑する牢獄。青年が放ったそれは絶大な威力を誇るだろう、だがあくまで彼女は女帝と話がしたいのだ。故に、その攻撃は防がせてもらおう。多大な魔力を得て輝きを増す頁、それは顕現した。
周囲の建物よりも一回り巨大な土くれの人形、魔力で形作られた土塊は檻を形作る雷剣を握り潰す。降り注ぐ雷光も屋根の如き掌で受け止めて尚健在、大魔法に属するそれは雷を相手にするならば多大な効果を発揮する。未だ、その能力に衰えはない。
盟友を制すように手を横に広げる、一度危害を加えたのは理解しているがそれでも理由なく女帝がそうするとは彼女には思えなかった。だからこそ、青年の女帝を殺すつもりの雷も止めさせてもらった。少し、魔具の残りは不安だ。もし女帝と戦う事にでもなれば……
だとしても今やるべきことは真意を確かめることに他ならない、何らかの理由があれば解消する手段もあるだろう。もう少し早く辿り着いていれば会話から判断できただろうが、少し間が悪かったのだろう。それでも、最善を尽くすだけだ。

「貴方に、魔を向けたくはない。」

記録書に手を伸ばしたまま、そう告げる。錫杖を此方へ向けるならば、それならば此方も答えなければならない。才では負けるも、練度では劣ることはない。盟友もいるならば、何があっても問題はない。
だから、女帝の返答次第だ。乱心であれば治めよう、この時代の恨みがあるならば違う形で晴らしてもらおう、そうでないのならば適宜考えるしかあるまい。女帝のこの様な姿は初めて見た、盟友との再会も相まって混乱が大きい。
両者ともに再会を喜びたい状況ではあったのだ、酷く久しぶりな他愛のない会話も再びしたかった。だが、こうなった以上は仕方がない。どうにか治めてその後にでもきっと出来るだろう、そうあってほしい。
数千年、待ったのだ。その再開の場が何故争いの場になっている、そう彼女は嘆く。仲が悪かったわけではない、なのに何故ばかり募っていく。嫌な予感が頭を何度も過る、もしが現実になることが恐ろしい。
しかし、どうしようのない擦れ違いは最早決定的であったのだ。

>>パージルク・ナズグル マロン・アベンシス レイブン・ロウ ニケ・エタンセル

7ヶ月前 No.1176

もう花の姿はこりごり @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/資料室/アズリエル・ドリーマー】

アズリエルが放った炎の弾幕が、盗賊王へと到達することはなかった。狙いを外した訳ではない。どちらかというと、何らかの力によって無理矢理逸らされた。
はじめは敵の能力かとも思ったが、どうやらそういう訳でもないらしい。これをやったのは、いきなりこの場に現れた乱入者であった。炎の向こう側で、もう一つの人影が揺らいでいる。
邪魔をされたことに苛立ちを覚えたアズリエルの顔が歪む。折角いいところだったのに。だが、よくよく考えてみれば、自分がこの戦いに負ける道理などなかった。
少しだけそれまでの時間が伸びただけの話。焦る必要はない。結局、最後にはリセットして全部なかったことになるのだから。再び彼の表情は、歪んだ笑みへと戻る。

「まさか、俺だってすんなり受け入れてくれるなんて思っちゃいないさ」
「でも、お前が嫌だろうと関係はない。そのソウル、力づくで奪わせてもらうよ!」

拒否されるのは想定の範囲内であったとアズリエルは語り、同時にソウルは力づくで奪うことを宣言する。元からそうするつもりだったのだ、予定に狂いは生じない。
むしろ問題なのは、乱入者の方。こちらも人間のようだ。もしかすると、自分からソウルを差し出しに来てくれた、とでもいうのだろうか? いや、そうではないだろう。
彼は邪魔をしに来た、と表現するのが正しい。どうやって自分の居場所を割り当てたのかが不思議で仕方がないが、あくまで立ち塞がるというのなら排除するのみだ。
そしてこいつ、現れるやいなやよく喋る。確かに彼の言う通り、こちらにはこの世界についての知識がほとんどない。しかし、はっきりいってそんなことはどうでもいいのだ。

「説得すれば俺が戦いをやめてくれる、とでも思っているのか? 第一、俺はこの世界に興味なんてない。どうせ消える世界のことを考えたって無駄だろう?」
「お喋りしてる時間があるなら、本気で掛かってきた方がいいと思うよ。まあ、意味はないだろうけどね!」
「攻撃してこないなら、俺からさせてもらうよ。『スターブレイジング』!」

自分を倒せるはずがないから。そんな自信を漂わせつつ、アズリエルは両手を天へ向かって掲げる。あちらから攻撃をしてこないというのであれば、さっさと叩き潰すだけだ。
彼の両手から、七色の光が発される。それに呼応するかの如く、空より降り注ぎし無数の星。星は地面に激突すると同時に弾け、無数の小さな星となって二人を襲う。
攻撃の際に叫んだ技名は、ネーミングセンスからして子供らしいものだが、攻撃そのものは熾烈。最後に落ちてきた一際巨大な星は、地表を揺さぶるほどの威力だ。
飛び交う無数の星を避け切るのは困難を極めるだろうが、当たれば大きな痛手を負うことは間違いなし。手加減するつもりはないであろうアズリエルに、リプレイサーとミラノは如何なる対応を示すのか。

>ミラノ、リプレイサー

7ヶ月前 No.1177

紅炎 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/ニケ・エタンセル】

憤怒、狂気、罵倒―――降りかかる火の粉のような言の葉にたじろぐ。
別人も同然の言動には鬼気迫るものがあった。一度対峙し、正面切ってぶつかりあったニケですら慄かせる気迫が。
同時に言葉に表しがたい使命感のような感情が湧いてくる。女帝と今再び戦うべきだと。何が彼女をこうさせているかに関係なく、止めねばならないと。
そう、ニケが彼女に抱く想いとは、酷く複雑に入り組んだものなのだ。故郷を破壊した侵略者。家族や友人を奪った殺人鬼。ロンカ村まで手にかけた憎悪の標的。
同時に、実力主義の帝国に君臨する帝王。第一人種に限るものの理想郷を作り上げた指導者。多面的な視点からパージルク・ナズグルという人間を見た時、善や悪などといった単純極める表現は相応しくない。
だからこそ。だからこそだ。女帝を女帝たらしめる要素に矛盾するような行いは理解に苦しむ。

「仲間?よせよ、お前が言うまで名前も知らなかったぞ。

それに俺は、お前がどうなったのか知りたくて来ただけだ」

掲げられる光剣。振り下ろす寸前での静止。気安さを含んだ言葉をかける女性のことなど知りもしないだけに、"つるむ"などという女帝の言葉に首を傾げる。
ニケは一人でここまで来た。親友の反対を押し切って。良くも悪くも肝が据わっているだけに、身の回りに起きる全ての事象を、落ち着き払った態度で見届ける。
自分と大剣を携えた女性を襲う魔術も、それを退ける友人の障壁も、罪人に下される雷鳴の鉄槌も。そして落雷を阻む新たな来訪者の一手すらも。
それらが終わりを迎えて場に静寂が戻ると、ニケは再び口を開く。

「……俺を愚物や塵屑と呼ぶのは構わない。だが、今のお前を見過ごすわけにはいかない。

アランの言葉を借りるなら、帝国に生涯を捧げた奴らを愚弄するも同然だ。

聞かせてくれ。何がお前をそうさせる?」

激昂するアランを左手で制しながら会話を試みる。口ぶりからして後からやってきた二人も臣下なのだろうと、それぞれの顔に目をやりながら言葉を紡ぐ。
単なる心変わりで済む話ではない。在り方こそ完全な正義とは呼べなかったものの、魔道帝国という組織はある種の信念の下に成り立っていたはずだ。
帝国を愛し、仕える者達と共に歩んでいた女帝の口から、あのような妄言が飛び出すとは…にわかには信じがたい。
何としても原因の程を探り出したい。それにあたって、ニケには一つの大きな武器があった。
たった一度、たった一瞬とはいえ、ニケは女帝と刃を交えている。その最中に交わし、心に刻んだ言葉も忘れてなどいない。
長い時間寄り添った臣下達には負けるものの、女帝の身に起きた出来事を推して知る術がある。

故に付け加える一言。

「いや…"誰が"お前にそうさせた?」

>>パージルク・ナズグル、マロン・アベンシス、アラン・レイクルード、魔大老エスト

7ヶ月前 No.1178

ごきげんよう @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/牢屋/Chara】

「それはこっちのセリフだよ、サンズ」
「私は勝つまでお前の前に現れ続ける。いつか、諦めてくれるとでも期待してるのかい?」

Charaはサンズにそう告げると、不敵な笑みを浮かべる。最悪な一時? それはもう一度過ごした。でも、今こうして自分がここにいるのは、その一時を切り抜けてきたからだ。
ならば、もう一度同じことが出来ないはずがないと、彼女は確信を抱く。決意が折れない限り、自分は何度死のうとも、次へ進むためこの場に現れ続けることだろう。
絶対に、諦めることなどない。むしろ諦めてしまわないか心配なのはあちらの方だ。不眠無休で戦い続けることの辛さを、彼らはこれから味わうこととなる。
それに比べて、こちらは楽なものだ。死ぬ度に体力は全回復するし、相手に対する経験値も稼ぐことが出来る。負ける可能性は0%。何故なら、勝つまでやめないから。

「勿論、知ってるよ。けど、そんなに飛ばしてて大丈夫なのかい?」
「まあ、あとで辛い思いをすることになるのはお前だ。私には関係ない。そうしなたいなら、そうすればいいよ」

サンズが動く。以前戦った時よりもずっとハイペースで。天井へ、地面へと叩き付けられる身体。突き出てくる骨を、Charaは間一髪のところで繰り返し回避していく。
知っている、覚えている。どんな攻撃なのかが手に取るように分かる。それを意識した瞬間、彼女の顔が歪む。面白い、無意味なことを続ける姿が、滑稽で仕方がない。
問題は、初めて戦うことになる残りの二人の方だ。ヴィクトーリアは相変わらず殺意を感じさせない。こんな説得が前提にあるような攻撃で、自分を止められると思っているのか?
彼女は見せ付けるかの如く、敢えて動かないままそれを喰らってみせた。多少の痛みこそ感じるものの、威力は非常に低く、殺すには至らない。全ての直撃に耐えきったCharaは、狂気の表情を相手へ向ける。
最後に迫ってくる祈の攻撃。魔力球はもう見たので避けられる、が……近接戦闘を仕掛けてくるのは意外であった。知らない攻撃を前にすると、どうしても対応が後手後手になる。
結果として、Charaは斬撃を躱し切ることが出来ず、また"絶命"した。腕を切り落とされ、脚を切り落とされ。それでもCharaは倒れる瞬間まで、狂笑を浮かべ続ける。
そして、何事もなかったかのように彼女は再び三人の前に現れた。その身体には傷一つない。やり直しである。だから、無駄だと言ったのに。奴らには学習能力がないのだろうか。

「ねえ、君達サンズの説明聞いてた? 無駄だって知ってるのにわざわざ攻撃するんだ?」
「時間を無駄にするのが好きなのかい? それとも私を諦めさせる自信があるのかい?」

挑発の言葉を投げ掛けながら、Charaは加速し、反撃へと移る。祈に対しては前後左右に不規則に現れながら、頭、腕、脚、胴体、胸と狙いを変えながら都合42発の斬撃。それを3秒以内に放つ。
次にヴィクトーリアの元へと向かった彼女は、正面から走って接近し、攻撃の間合いに入る直前で地面を蹴り、背後に降り立つと共に刃を振るい、三連撃を行う。
そして今回も、最後はサンズだ。ゆらゆらと先の読めない動きで、敵の回避を予想して右側に二発、左側に二発。いずれも予め狙いを外した状態で斬り付ける。
まあ、こんな手に乗ってくるほど甘い奴ではないことは知っている。重要なのは、とにかく疲労を蓄積させること。そうすれば、彼の動きもその内鈍ってくるはずだ。
仕上げとばかりに、サンズの胸を狙った突きを放とうとするが、何故か相手に命中する直前でCharaの腕が止まった。と同時に、彼女の身体に一瞬ノイズのようなものがちらつく。

「お前に主導権はないと言っただろう。邪魔をするな!」

何かを振り払うかの如く、彼女は空中を一度斬り付けた。一瞬だけ、Charaの姿が青いセーターを着た別の人物のものに変わっているような錯覚が、三人に走る。
そもそもCharaは、誰に対して話し掛けているのだろうか。この場にいるのは彼女を含めて四人だけで、それ以外に生きている者はいない。それにしては、不自然な発言だ。
怒りがまだ収まらない様子のCharaは、安全圏に逃れた後も、何度か空中を斬り付け続けていたが、やがて落ち着きを取り戻したのか、前を向く。何故だ? 奴の意識は、完全に支配したはず。
まさか、こいつと、サンズと出会ってしまったのが原因とでもいうのか? 厄介なことをしてくれる。だが、呼び掛けたところで戻れはしない。この身体は私のものだ。もう一度言おう。お前に主導権はない。

>Sans、蓼科祈、ヴィクトーリア・ダールグリュン

7ヶ月前 No.1179

"銀細工" @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【時空防衛連盟本部/食堂/ユスティーツ・シュタルク】

 共闘している味方の気配を消す事で、連携を封殺しようと言う敵の目論見を挫くが如く、宣告するは一匹狼な己の在り方。自らの弱さを自認し、強敵相手に協力して挑むと言う常道から外れた、異端。
 彼にとって戦いとは常に孤独な物であり、連携と言う行為に対する意識が希薄となるのは当然の成り行きと言っても過言では無く。普段、そうした傾向が良い方向へと働く事は滅多に無いのだが、偶然にも此の場に於いては上手く働いた。歪められた状況に困惑する事も無く、極めて冷静な思考を保ち続けたまま、的確に敵の攻撃を対処し。
 具現させる鎖。焦りを見せる敵の身動きを封じるが為のそれは、然し惜しくも躱されてしまう。続け様に放つ金属杭の連撃も、彼女を捉える事は無い。素早い彼女の動き、逃げ足も中々の物だ。

「気配の増幅、か……何とも気持ちの悪い感覚だ」

 敵の異能が気配を操る類の物である事は勘付いていたが、消去のみならず増幅にも手を出せる様だ。これまでとは一転して、静止状態ならば眼で視ずともその位置を把握できる程に膨れ上がった敵の気配。
 それが加速し、凄まじい速さで空間一帯を駆け回ったとなれば、今度はあらゆる方角に気配が存在するが故に、その位置を把握できない。おまけに、意識せずとも気配を読み取ってしまう物だから、その感覚は一言で言って最悪だ。出来れば、二度も味わう機会が来ない事を願う位には、気持ちが悪い。
 それでも何とか堪えながら、敵が攻撃を仕掛けてくる瞬間を待ち続ける。遠距離か、はたまた近距離で攻めてくるか。ブラスターによる攻撃は少々、分が悪い。敵の気配が強すぎて、放たれた攻撃の気配を察知できず、視覚で捉えた物以外の対処が非常に厳しい。
 その一方で、ナイフによる攻撃は比較的楽だ。敵の狙いは凡そ見当がつくし、反撃を命中させられる可能性も高い。対処さえ誤らなければ、問題無く乗り越えられるだろう。

「――また、首を狙うか。一撃必殺に固執するのは、貴様の悪癖だな」

 実際はどうかと言う問いに対する回答は、救いがあったと答えよう。此方が想定したナイフを用いた動きの通りに、首を掻き切るべく現れた敵。乱れた感覚での対処は中々に厳しく、頸動脈への直撃こそ外れたものの、刃が掠めて血が流れ出る。戦いが始まって以来、最初に負った傷がこれだ。
 そして、二つ目の傷を負う前に、勝負を決さんと反撃を行う。両手に形成するは金属の鉤爪。それで意趣返しと言わんばかりに、肉薄して来た敵へと放つ三度の爪撃。一つは、心臓を抉る物。一つは、首を掻き切る物。一つは、脳髄へと突き立てる物。いずれもが人間にとって致命となる部位を狙った物である事は、語るまでも無く明白だろう。実際にそれが通用するかどうかを、銀細工師は知らないが。

>雪葉 桐生戦兎

7ヶ月前 No.1180

紅焔の■■■ @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

7ヶ月前 No.1181

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

【歴史是正機構本部/資料室/ミラノ】


「―――ハイよ、交渉決裂だ」
「まだ続けるんならそれも良いけど、向こうはやる気。
 言うこと聞かせる前に躾の一つくらいはしていった方が良いんじゃないか?」

 それ自体が最初から分かり切っていたことであるかのように。
 第三者の言葉を切り捨てに掛かったのを確認すると、ミラノはにたりと小さく笑った。
 というのも、飛び込んできた奇術師と彼は根本的なスタンスが違っている。
 奇術師が魔人を如何なるものと見たのかは彼のみぞ知ることだが、銀狼からして見れば、もはや第一印象の時点でこの男は信用ならない相手だったのだ。彼の言葉を止めなかったのは、単に自分の眼で見ればいいと思ったからに過ぎない。

 さりとて琴線に触れて来た相手なのかと言われると、彼の言動からしてそれも違う。
 物事すべてを芥のように扱う魔術師のような、破綻したがゆえの悪辣さなどない。
 敗北者たちの長として、自業自得の呪いを束ねた山羊のような性根の悪さもない。

 有り体に言ってこの生き物は稚拙だ。
   、   、    、   、   ・・・・・・・・・
 されども、世界にはこういう言葉がある。憎まれっ子世に憚る。
 聖人でもなく、一周回って突き抜けた狂人でもなく。ただ、ただ、性根の下らない小さきモノが阿呆ほど力を持つことほど恐ろしいことはない―――この状況は正しくそれに合致しよう。
 アズリエルは極論世界の在り方に興味などない。それは明白だ。
 そしてだからこそ、どう転ぼうが構わないのだろう。それは例えば溺れるほどの力への深い過信と、呆れるほどの子供じみた理屈、あるいは生物としてそもそも思考パターンが違うからこその隔絶性。そのどれでもなければ、自らの生命と、その周辺に存在するファクターへの惜しみない失望が成せる考え方だ。
 ミラノとてどちらに転ぼうが興味はない。興味はないから生存のために戦い、序でに“目覚めの良い方”を優先しているだけだ。ただし、その根本的な動機さえもこの魔人にはない。有り体に言って彼にとって、世界とは自分の居た場所なのだ。その発想自体が悪いわけではないが、見方を違えば破滅的な所業は、このアズリエルの閉じ籠った精神性ありきのものだろう。
 これは浮遊しているし、何よりも―――。


「つーわけで、お先ッ!
 ―――“光届かぬ眼で未来を見る占師よ………我らが命運、汝に託さん!”」

 >Blind seer,mute Soothsayer...
 >All of fate lies in thy Cards.


 徹底的なほど他人を見ていない。
 もっとわかりやすい言い方をすれば、周りのすべてをナメているのだ。

 ―――これほど蹴落とし甲斐のある敵もいない。
    居ない、が。ミラノからしてみれば、どれだけ強かろうがただの踏み台で通過点だ。

 ・・・・・
 風の行く先を阻めるものなど誰もいない。

 彼が切り拓いた《タクティクスカード》の効果は有り体に言って単純明快。
 ごく短時間、10秒そこらだが劇的に運が良くなる―――それだけの、単純にして強力無比な一手。
 初動からそれを切った理由など言うまでもない、ただ速攻を仕掛けた方が効率がいいからだ。
 力に溺れる思い通りにならない子供―――そうした側面がある以上、どれほど強かろうと悪童としての天地の差がある。つまるところ、そもそもの力比べという土俵に絶対に乗ってやらないだけでいいのだ。

 ただし、それは言い換えれば力比べの場においてはアズリエルの方が上という事実の証明に他ならない。
 ………他ならないが、此方には怪物《アズリエル》には持ち得ないものが幾つかある。要は、それの使いどころだ。

 ミラノは降り注ぐ流星の中を表情ひとつ変えずに突っ込んで。
 しかし、当たらない。
 数十を超える流星が、彼の進行ルートには掠りすらもしない。
 それどころか流星の方からミラノの行く末を逸れて行き。ご丁寧に、流星の幾つかが“そのまま軌道を反らせば何の障害もなくアズリエルの元へと到達する”ように着弾間隔をズラされる。
 そうして一気に距離を詰めてみれば、その突進の勢いを活かして―――。

「―――そら、よッ!」

 まずは斬撃。その数は二発。
 鎌斧が閃いて、斜め上から袈裟掛けに交差する斬撃を放つ。
 巨大なその武器は振るうだけで視界を閉じる―――あまつさえ、自分が放った流星の所為で聴覚にもノイズを走らせている。視覚と聴覚に妨害が入る状態で、後続の奇術師の動きを完璧に把握出来るかと言われれば………答えは否だ。
 そして当然、その斧は着弾すれば、幸運にも/不運にも急所へと見事直撃するだろう。
 今この瞬間だけ、彼の斬撃は容赦のない致命傷《クリティカル》を引き起こす可能性がある―――つまり、二発直撃すれば何だろうが一瞬でゲームセットだ。


>アズリエル、【リプレイサー】

7ヶ月前 No.1182

洩矢諏訪子 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

【歴史是正機構本部/食堂/洩矢諏訪子】


 両者の対応は明確だ。
 歓待としてほぼ初手から殺し手を打ったマシュマロの方は、
 しかし間一髪と言えども明確なアクションを取った。間一髪であるが、分厚い紙一重だ。
 もう一度言うが、諏訪子はこと遊びの空気でも手を抜かない。“遊戯であるからこそ全力”だ。それをギアの上がらない初動の初速で対処して見せるのは見事と言えよう。あるいは数の理が彼方にできたからこそ、か。

 一方で先程から狙いを定められ続けてきたセリィの方は、とうとう被弾を許す。
 浅いと言えば浅かろう。深いと言えばそれなりに深い。
 つまり有り体に言って気力でどうとでもなる範囲だ。だからこそ、彼女はさらに一歩踏み出したのだ。速度を上げ、刃を煌めかせ、まだ終わらぬとその光を振るいに掛かる。


「―――は、ははは」
「ははははは、はははははっ!」

 偏にそれは、片や友達(現在一方通行)、片や世界のためだ。
 熱心な様子で連携に出てくる敵手二人の様子に少し満足げに笑い、
 続いて放たれる啖呵に―――声をあげて笑い始めた。セリィの言葉の何に思うところがあったのか、余人から見ればわかったものではないが………それにしても、あからさまなほど様子の違う笑い方をし始めた。

 それは彼女の手が若干緩むほどの隙間だった。
 あるいは、緩んでいなくとも正面と各位からの一斉放火は彼女に被弾を許しただろうか。
 氷弾が雨霰と殺到する中、先程よりも一回り小さい岩の掌がそれを阻む。阻んで、阻んで―――しかし30を超えた段階でセリィの斬撃も相まって見事に粉砕。
 正面と各位からの斬撃を受け止め、あるいは被弾させながら、彼女は笑っていた。



「良いねその啖呵! 気に入ったよ中々どうして悪くない。
 間違いじゃあないね! しなくちゃならない、そんな情も理も生物が動く理由だよ!
 しかし………しかしだ、一つだけドデカいマイナスをあげるわよ。ははははは―――」


 時に。
 そう、時に、だが。話題を変えよう。
 もしも彼女の発言を、すべて受け流して“付き合って”やれば、どうだっただろうか。

 諏訪子は極論なにがどうなろうと関係はないのだ。
 その証拠に敵対者を殺してはいない。うっかり殺してしまう可能性はあるが、
 それを“まあ最悪の結果”という雑な言い方ではあるが殺さない程度に留める気まぐれの感情はあった。言うなれば“遊び”だからだ。ただの遊びだから、終わって満足すれば彼女はどちらにも干渉しない。
 ヒトを脅かすのが祟り神らしい在り方だから、とりあえずやって見ているだけ。

 セリィ―――彼女の言葉はある種正解だ。
 間違ってはいない。人間、情のままに動くことを否と言われる筋合いはない。
 それだけならば諏訪子はただ呵呵大笑しただろう。
 気に入って、愉快そうに、少しの時が経てば満足してこの戦いの表舞台から一歩退くに違いない。

 ………問題は一点。彼女の言葉の理屈を“人間の世界の基底”と誤解したことだ。
    アレはもう一度言うが、神という、ヒトと違う生き物だからこその理屈だ。

   信仰という対価のない場所で、主義主張を曲げる意味などない。
   畏れという対価のない場所で、神が視線を下ろしてやる意味などない。

 少なくとも、祟り神が本質である諏訪子は本来ヒトに仇名す類の神だ。
 古くからこうしたモノは、供物を捧げて鎮め、敬うべきモノだ。
 それほど諏訪子が古い頭をしているのかと言われると、また違うが………彼女であっても、祟り神“だからこそ”と言うべきある性質が存在する。警告は確かに出ていたというのに、そこを突いたともなればもう赤信号は眼の前だ。


 つまりは。祟りを恐れず中指を立てる人間には、その通りに祟りをくれてやるということだ。
 幾度も繰り返すが、洩矢諏訪子はヒトではない。
 その理屈も、思考構造も、在り方も。“なにが逆鱗なのか”も、人間とは決定的に違うのだ。
 何を言うか、ではない。“どのような言い方をしたのか”が最大の問題なのだ。


 ―――そこを、たった今見落とした。


    ・・・・・・・
「―――何様だよおまえ」


    ――― 祟り神「赤口さま」 ―――



 ほんの一瞬。刹那の瞬間、空気が比喩抜きで凍り付いた。
 明らかに手傷を負わせた瞬間だというのに、真顔で呟いた諏訪子の言葉が世界を停止《と》めた。

 斬撃が自分を傷つけ、氷弾が一、二発は刺さった直後だというのに。
 彼女が宣言したそれは、紛れもなく“洩矢諏訪子”の真なる側面だ。つまりは―――。


 ・・
 祟りだ。



 彼女を中心に黒い霧が渦を巻く。
 すでに半壊した室内を征服し、飲み込み、段々と食らい尽くす。
 それは人間に対しての圧倒的な毒性だ。紛れもない悪意と呪詛による内側からの蹂躙行為、
 生命が凡そ生存できない大気環境の形成に他ならぬ。ここでも丁寧に先程不生不殺にした人間たちは一切射程に入れておらず、付け加えるならば遠距離から射撃による一手を打ったマシュマロ相手にも比較的影響は薄かろうが、しかし近寄ってきたセリィだけには話が別だ。何の処置もなければ、そのまま外から内から、呪詛は毒のように生命機能の崩壊を齎すだろう。


 もちろん、それだけではない。
 付け加えるなら、まだ決定的な地雷を踏みぬいたわけでもない。


「―――おっと、いけないいけない。大人げないことするもんじゃあないね」
「続きと行きましょう!」

 だからこそ、数瞬のうちに諏訪子は素に戻った。
 ………素というよりは、先程までの軽い態度に、だろうか。

 その様子でマシュマロの方をちらと見れば、黒い霧がかたちを成して白蛇となる。
 霧によって構築された蛇はそれ自体が巨大な呪詛の塊だ。
 唸り声を挙げながら迫る蛇は直前で二又に分かれ、左右からマシュマロ・ヴァンディールを一撃で丸呑みにしようと接近する―――直撃が如何なる結果を招くかは、転がる人間たちの様子を見れば言うまでもない。

 そして当然のことながら。セリィに対しても、一尾が迫って来ている。
 すぐさま背後に飛びのこうとするだろう彼女を、その背中から食い千切るようにして。
 至近距離で放たれた黒霧への処置も然ることながら、
 物理的な呪詛のかたちとして呼び起こされた赤口の牙は―――ただし。
 呪詛で仕置きをどうこうではない。一撃だが、心底から“むしろ殺す気”の一撃だ。

>セリィ、マシュマロ

7ヶ月前 No.1183

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【歴史是正機構/実験室/黄衣なる者】


やっぱり、ねえ。人間擬きと言う呼び方はやめておこうかねえ、だって彼、まだ人間に留まっているからねえ。しかも、壊れているように見えてもその芯は変わっていないみたいだしねえ。甘いとも言えるけどねえ、人間らしいとも言えるねえ。
そもそも、彼は中途半端なんだよねえ。救世主でもなければ、災厄の具現でもない、何方の側面もあって振りきれていないからねえ。悪と断じたならば、気を逸らされる全てを焼けば良いのにねえ。救うと決心したならば、必ず守り通すとそう動けばいいのにねえ。
まあ、それは面白くないから安心だけどねえ。そんなのは、人間じゃなくたって出来るからねえ。人間がその目で見て、その脳で感じ、その身体で動いた結果こそが楽しいからねえ。人外の所業は、人外がやるべきだからねえ。
おっと、少し楽しくて思考が逸れたねえ。何故、そんなに楽しいのかは彼が人間に踏みとどまったからだねえ。無論救うとまで言ったのにねえ、その意味も理解しているだろうにねえ、その瞬間まで己が力で救おうとしてたのにねえ。
涙を流していたんだよねえ、その気持なんか知る訳がないけどねえ。全知全能なんかじゃないからねえ、まあ頼まれたってそんな面白くもない物になりたくはないけどねえ。分からないからこそ、面白いんだからねえ。彼が、人間のままだったことも知っていたならば詰らないからねえ。
その力こそ人外だけれどもねえ、彼の心はまだ人間だねえ。少し手を加えた小細工も簡単に打ち破って被検体ちゃんを治療したねえ、一度髪が赤く染まったのはそういう事だろうねえ。一度、同じにしたんだろうねえ。人間を逸脱はさせてないみたいだけどねえ。

「うんうん、おめでとう。君は正真正銘の人間だねえ、『助ける』事も誰が見たって許されていたのにねえ、それを『救った』からねえ。君は、踏み出せなかったんだねえ。」

乾いた拍手を彼に送るねえ、他者から手を下されなければ永久に苦しみ続ける被検体ちゃんを救ったんだからねえ。本当はもう少しお祝いしてあげたいんだけどねえ、まあそれは後でいいねえ。伝えたいことはこれだけじゃないからねえ。
後は彼が無駄に踏み外さないようにするだけだねえ、彼の意思は固いようだけれどねえ、その固い意志が被検体ちゃんを救ったからねえ、まあ保険だけだねえ。勝手に人間をやめられたら、楽しみが一つ減っちゃうからねえ。

「見捨てて攻め続ければ、きっとやられていたのにねえ。望み通り助ければ、憂うものなく戦えたのにねえ。それをしなかった意味が、君自身が一番分かるだろうねえ?それとも、要らないとか思って見えない振りでもしているのかねえ。」
「良い事、として教えておこうねえ。人間は人間にしかなれないからねえ、どう進むのも勝手だけれどもねえ、人間のままをお勧めするねえ。だって、君は人間で、周囲も人間だろう?」

敵の言う事、それで聞き入れられなかったらまあ残念だねえ。もし、心の片隅にでも留めているならば踏み切ってしまう事はないと願いたいけどねえ。彼が見せた涙は、まあ想像するのも野暮だけどねえ、有体な言葉を並べるなら心の悲鳴だろうねえ。
後の楽しみはさておいてねえ、治療が完了すれば目の前の敵を倒そうとするのは当然だねえ。被検体ちゃんを片手で抱きながらもその視線は恐ろしいねえ、まるで子を守る父の様だねえ。視線だけで滅ぼされてしまいそうだねえ、怖いねえ。
どうあっても滅ぼそうとするのは変わらないみたいだねえ、被検体ちゃんへの優しさを向けてくれれば、なんてあり得ないねえ。振るう刃に燃え盛る焔、焼けると再生速度が落ちるからねえ、面倒だねえ。ま、その面倒をするつもりなんだけどねえ。
燃え盛る龍の顎、見ているだけで食われてしまいそうだねえ。まあ、その口は閉じようとしているんだけどねえ。避けようと思えば、無傷は難しくても軽傷では済むだろうねえ。力場では逸らせなくても、障壁で防ぐことは出来そうだねえ。
そんなことは、今回ばかりはしないけどねえ。

「そうそう、お祝いに半分だけ滅ぼされてあげるねえ。君が人間に踏みとどまった記念だねえ、有難く受け取ると良いねえ。」

まあ、再生するけどねえ。そう付け足せば喜びも半減するだろうからねえ、内緒だねえ。
焼ける、と言うよりも溶け落ちると表した方がいいねえ。残念ながらこの触手は灰にはならないんだよねえ、まあ高温で変質はするから面倒だけどねえ。うん、簡単に言えば右半分をその焔の顎に食わせたねえ。ああ、仮面だけはちょっと避けておいたねえ。
ローブはまあ、探せば材料はあるからまた繕えばいいねえ。身体の方も、放って置けば元通りになるからねえ。焼かれると面倒じゃないのかって?断面を斬り落とせば問題ないねえ。仮面は、まあ割られたのは彼女だけだからねえ。ちょっと、思い入れがあるからねえ。
今でも割ると思えば真っ二つに割れる位にはそのままだけどねえ、……うん関係ないねえ。まあそれは置いておくねえ、今の状況は文字通り半分になっているねえ。蠢く触手も隠せないけどねえ、まあ彼なら分かっているだろうからねえ。さっきも見せてたしねえ。
まあこの身体の事は置いておくねえ、取り合えずこれは彼へのお祝いだねえ。人間のままでおめでとう、ってねえ。ついでにこのまま面白そうな道を歩みそうで期待しているねえ、って意味も込めてはいるけどねえ。言ったら、まあ面白くないからねえ。
痛みがないのは便利だねえ、動かせる部分が減ったのは少し面倒だけどねえ。これではっきりしたのは彼には勝てないってことだねえ、精神性は人間のままでも肉体は頑強そのものだからねえ。ちょっと勝ち目が薄いからねえ、尤もらしい事でも言おうかねえ。

「さてさて、これで君を追うのも難しくなったねえ。もしその子を連れて脱出したとしても追える状態じゃないねえ、良い機会だと思うけどねえ、出来る限り安全にその子を『救う』ことが出来るからねえ。」
「戦闘を継続すれば、何処を狙うかなんて君なら分かるだろうねえ。想像の通り、その子を狙うねえ。もしかしたら首を撥ねて即死させちゃうかもしれないねえ、そうなっても君はまた『救える』のかねえ?」

身体半分を失って尚余裕がある様にクスクスと笑うねえ、まあ実際は勝ち目がないからねえ、出来る限り彼が面白い様に転ぶ展開にしたいだけだけどねえ。ほら、逃げ出すよりも相手が撤退したほうが義理を果たせているからねえ。
まだ戦うつもりならば、勿論被検体ちゃんを狙うねえ。きっと彼は守るだろうしねえ、救ったんだからねえ、きっと最後まで守るだろうからねえ。もしも守り切れなかったら、折れる姿も面白そうだねえ、もしかしたら人間のままではなくなるかもしれないけどねえ、それは少し困るねえ。
まあそれは置いておくねえ、今は彼にしっかりとした逃げ道を作らないとねえ。死ぬのは別に問題がないけどねえ、復活すらまでに面白い事を見逃したら嫌だからねえ。特に今は面白そうなことが多く起こってそうだしねえ、彼が撤退したら見に行くのもありだねえ。

「君は敵地を襲撃して被害者を助けたからねえ、正義の味方と言えると思うけどねえ。きっと君の仲間も喜ぶだろうねえ、時空防衛連盟だったっけねえ、その組織ならその子も保護できるだろうねえ。」
「ほうら、『救った』その子を守るか、再び危険に晒すか選ぶと良いねえ。」

表情があればそれはもう満面の笑みだろうねえ、だって楽しいからねえ。滅ぼしたい、救いたい、その何方を優先しても、何方を重く見ても面白いからねえ。ここも彼の選択だろうねえ、正義を為すか、悪を滅するか、ねえ。
それが彼の選択ならば面白いからねえ、人間を逸脱さえしなければ良い観察対象だからねえ。彼の事を全て知っている訳ではないからこそ、何が起こるか分からないからこそ面白いんだよねえ。彼の選択によって、被検体ちゃんの運命は決まるねえ。
勿論、彼が動くまでは攻撃しないねえ。彼の思考に水を差して変な結果が出るのは好ましくないからねえ、表情とかで表現できたならばニコニコと笑っているんだけどねえ。残念ながらないんだよねえ、ちょっと検討してみようかねえ。

「―――君の行動を、答えとするねえ。」

さあ、選択の時だねえ。撤退を選べば、見送ろうねえ。戦闘を選べば、被検体ちゃんを殺そうとしようねえ。そして、適当なところで撤退をしようねえ。少しばかり荷が重い相手ばかりだからねえ、真面にやり合ったら命が足りないねえ。
まあ、命の概念はないんだけどねえ。

>>レオンハルト・ローゼンクランツ

7ヶ月前 No.1184

Futo・Volde @nonoji2002 ★gLBoRrfVfo_ubH

【歴史是正機構本部/牢屋/Sans】

「Heh, 2回目のコンテニューか」
「お前みたいなガキは何度だってここに帰ってくるんだろう」
「罪が背中を這い回る感覚さえもお前は忘れちまってそうだな」

俺の重力操作に骨の突き刺し攻撃、そのすべてを躱されたが、幸いにも此方には2人の仲間が居る。
金髪の少女の方の攻撃は手加減をしているのか、アイツに大した効果を与えられてないようだが、ロングヘアの少女の方の近接攻撃に後手後手に回り、見事にそれを喰らって絶命する。
だが、案の定、奴は“コンテニュー”してこの場に帰ってきた。一体コイツを突き動かす“ケツイ”はどのような物なのだろうか。

「お嬢ちゃん、コイツに手加減は必要ないぜ」
「即死してもおかしくない攻撃を受けて死んでも、次の瞬間にはこうしてピンピンしてやがる」
「残念だが、ここじゃ“殺す”か“殺される”かしかない」

あまり他人に口を出すようなことは出来ればしたくはない。普通の人間、モンスターもだが、他人の“ソウル”を刈り取りたいなどは思わないだろう。
だが、コイツ相手にそんな綺麗事は通用しない。この場所では“殺す”か“殺される”かの選択肢しか存在せず、自分がそのどちらかを選ばなければ、自分が殺されるだけなのだ。自分のルールと言う物が通用しなくなる、それがコイツなんだ。

「もうこんなことはやめて友達とホットドッグでも食ったり……」
「一緒に遊んでよ、楽しい事でもしたらどうだ?」
「おっと、お前には友達なんて居ないんだったな」

煽りには煽りを。というわけじゃないが、どうも俺の性格的に煽られたら煽り返してしまうようだ。にしても、コイツこそ、人の説明と言うのを聞いているのだろうか。例え、回避場所を予測してナイフを振るったところで当たるわけはないのだ。
……無論、そろそろ疲れてきているのは否めないが。こうなるんだったら、もう少し体力を付けておくべきだったかもしれないな。

「……フリスク、お前なのか?」

その一瞬を間違いなく、俺は見逃さなかった。俺の胸元に突き立てられかけた、ダガーを止めたその手を。一瞬だけ垣間見えた青いボーダーのセーターを。そうか、コイツは――。

「もしお前なら、俺がわかるはずだ」
「お前にまだ一筋の良心の光があるなら、まだ罪を償ってやり直せる」

俺は今、コイツに情けを掛けている。確信があるからだ。コイツの中に“もう1人”の存在が居ることを。
そして、そいつは既にコイツにその殆ど乗っ取られてしまっているが、まだ僅かにその“もう1人”の存在が残っていることを。
もし可能性があるならば。俺は“最良な選択”を選びたい。Heh, お人好し過ぎるのかもしれないな。

>Chara、蓼科祈、ヴィクトーリア・ダールグリュン

7ヶ月前 No.1185

改変の副産物 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【歴史是正機構本部/食堂/マシュマロ・ヴァンディール】

友情…友情?の連携攻撃、炸裂。
叩きつける闇と氷の弾幕に、神速の光輝一閃。遠と近、見事なまでに分担された怒涛のラッシュが、遂に祟り神に一撃を通す。
戦闘続行に支障をきたすとまでは行かなかったが、神格相手でも勝ち目は消えていないことの証明になっただけで、挑戦者たちへ対する無類の鼓舞となったことだろう。
しかし代償も大きい。明確な防御の手を打たなかったセリィは、優れた回避術を披露しつつも岩槍の餌食になってしまった。
不幸中の幸いとでも言うべきか、大地の尖端が貫いたのは左手。こちらもまだ戦闘を続けられそうだ。とはいえ底知れぬ力を秘めた神格と違い、彼女は脆弱な人間。出血やそれに伴う体力の消耗からして、長期戦は無謀と言わざるを得ない。
分厚い紙一重に助けられたマシュマロも、短時間に連続して魔法を使役したために体力の消耗が激しい。残滴を□き集め再利用するという手段も、そう何度も使えたものではない。出涸らしは出涸らしだ。

「ひっ……」

冷たく放った一言。たった一つの言の葉が、この空間を、いや世界を凍てつかせる。
それを招いた張本人ではないというのに、恐怖し数歩の後退。心の内に渦巻くは、悪事が発覚した幼子のような感覚。胸がざわつき顔が火照る。それでいて背筋を嫌な汗が這う。
圧倒的な力を見せつけられるよりも。ヒトの頭脳では理解しえない理論を展開されるよりも。こう明白に"立っているところが違う"と見せ付けられた方が、余程神格の何たるかを思い知らされるというものだ。
動きを、時を止められたのはマシュマロも同様。セリィの身を案じることも、反撃に備えることも忘れて、ただ立ち尽くすか後退るしかない。
完全に威圧されてしまった。彼女がやっと解凍されたのは、祟り神が次なる手を打ってからのこと。
渦を成す黒霧。それが孕んだ性質など知る由もないが、単なる視界への働きかけ程度で済まされないのは明白。
アウトレンジに徹していたおかげで影響は無に等しいものの、近接攻撃を仕掛けていたセリィにとっては深刻な問題に違いない。
すぐ援護に駆けつけようとしたものの、"今度はお前だ"と言わんばかりの視線に再度の硬直。
事実、次なる攻撃対象はマシュマロであった。反転。暗黒の瘴気は純白の大蛇へと成り代わった。
呪詛という名の猛毒を滴らせる牙は、陰陽道にて忌み嫌われる赤口の具現だ。文字通り神が遣わせし悪鬼。
これまたマシュマロ当人には性質を見極める術などないものの、直撃と深手が紐づけされていることは疑いようもない。

(さっきのは良かったはず。もう一度…!)

繰り出すは地表を穿ち噴き上げる暗黒魔法。岩石の合掌を僅かとはいえ食い止めた魔手の再展開だ。
闇のエネルギーが平手の形を成すのを確認すると、今度は左右から迫る蛇を交互に視界に捉えつつ、両手をメチャクチャに振り回して気を注ぐ。
十分な力を得た暗黒の障壁は、再び使い手を守らんと脅威に相対する。対峙、肉薄、その後に衝突―――

が、しかし。まるで大蛇の擁する呪いに蝕まれてしまったかの如く、紫色の巨腕は呆気ない崩壊を迎えた。
雲散霧消。頼もしい要塞かと思われた魔手だが、その実態は砂上の楼閣。原理と発想こそ悪くなかったものの、祟り神の殺意に立ち向かうには力不足と言わざるを得ない。
頼みの綱の防御魔法が敗れ、迫りくるはほとんど威力の削がれていない呪詛の具現。再び緊急回避を試みるものの、付け焼き刃の対処が実るはずもない。
辛うじて大牙に抉られる事態だけは免れたが、胴体に接触したことで華奢なマシュマロの身体は宙を舞う。
乗用車に衝突されたような衝撃もさることながら、固い床に叩き付けられた痛みも馬鹿にならない。あまりの苦痛に思わず涙がこぼれる。
こんな甲斐性のない様を見ていれば、敵も味方もこう捉えるだろう『コイツは戦意を喪失した』と。
だが、マシュマロは諦めてなどいなかった。体勢を立て直すよりも、いや立ち上がるよりも早く、反撃の一撃を繰り出してみせた。

して、その策とは火柱で以て敵を衝き上げること。床に身を横たえ、苦しそうにわき腹を抱えたまま、諏訪子の足元に念を集中させる。
彼女の立っている場所を基準に半径3メートルほどの小さな魔法陣が出現し、その全域から噴き上がるは煉獄の炎。
単純であるが故の破壊力。仮にまともに受けようものなら、後には炭も残らない。
ただ予兆があるだけに、見抜くことが出来れば対処は簡単だ。神格でなくとも手を焼くことはない苦し紛れの一手。

しかしマシュマロは一人で戦っているのではない。これも全て、後に友となるであろう少女を信じての、何としても彼女につなげるための希望の灯火。

>>洩矢諏訪子、セリィ

7ヶ月前 No.1186

ヴィクトーリア・ダールグリュン @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『歴史是正機構本部/牢屋/ヴィクトーリア・ダールグリュン』

ナイフの少女はヴィクトーリアの間合いに入る前に、地面を蹴り背後をとり三連撃を浴びせてくる。
だがヴィクトーリアもだてに上位選手やっておらず、すぐに後ろをむいて持っている斧槍型デバイスを相手の攻撃にあわせて動かして防御を行う。

味方の攻撃によってナイフの少女は今一度死亡し何事も無かったように無傷で復活した。
やはり「死んで復活」というサイクルを繰り返しているようだ。
そして知らない攻撃が来るとどうも動きが後手後手になるようだ。

「流石にスローペースが過ぎましたわ。それは謝罪します」

「でも、良いかしら?なにも殺すことが何も全てではありませんわ」

殺すか殺されるかの2択しかない命の懸けた戦場では確かにヴィクトーリアの考えは綺麗事で邪魔でしかない。
この場にいる人間の中では一番殺意が無いのはヴィクトーリアであるのは事実。

「さて、これからは私(わたくし)も本気で行かせてもらいますわよ」

様子見も手加減もヴィクトーリアはもうしない。
胸の内に秘めた相手を殺さないという意思は変わることはない。
それがヴィクトーリアの決意でもあるのだから。


「(今のは・・・?)」

不可解な事に戦闘中にも関わらずナイフの少女は誰かと話している姿を見せた。
そして一瞬だけだったが、青いセーターを着た別の人物が見えたような気がした。
スケルトンの反応を見るに彼の知り合いと思われる。
そうだとするならヴィクトーリアは協力を惜しまない。ヴィクトーリアもお人好しな人だからーーーーー

>>Chara、Sans、蓼科祈

7ヶ月前 No.1187

豪腕剣士 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/マロン・アベンシス】

死んだと思っていた主との再会。まさか、パージルクも未来へやって来ているとは予想外であった。喜びに胸を躍らせるマロンだが、返ってきた反応は期待していたようなものではなかった。
憎悪に染まったパージルクの声。あの優しかった頃の面影が、どこにも残っていない。心の奥底まで邪悪に染まり果てた、女帝におおよそ相応しくない存在がそこにいる。
覚えのない罵倒、ショックを受けつつも後退するマロン。この状態で攻撃に対処するのは至難の業であり、魔力を持たない彼女がパージルクの魔法を喰らえば、一撃で瀕死に追い込まれても不思議ではないだろう。
もはや、為す術なしかと思われたその時、不意に飛来した雷撃が、光を相殺する。攻撃が放たれた元に立っていたのは、レイヴン・ロウ。否、今はアラン・レイクルードと名乗っている、元魔道帝国所属の青年。

「あ、ありがとうアラン……お前のお陰で助かった」

マロンは彼の今の人生に敬意を称する意味で、以前使っていたレイヴンではなく、アランという呼び名を使っている。その彼によって、マロンは命を救われる形となった。
どうやら、対話は意味を成さないようだ。未だ決心がしきれていない状況ではあるが、マロンもアランに流されるような形で、大剣を構え、戦闘態勢を取る。
早くも味方の攻撃は始まっていたが、彼女は動かなかった。心のどこかで、パージルクを信じたいという気持ちがあったのかも知れない。それは、つい今現れた盟友、エストも同じようだ。

「エスト……! そうだ。パージルク、こんなのはお前らしくない。なんでこんなことをしてるのか、ちゃんと私にも分かるように説明してくれよ」

古代でも散々顔を合わせてきたエストだが、彼女も自分を追って未来へ? いや、国を護ることを承諾したのだから、その約束を破るなんてことをするはずがないだろう。
ということは……なるほど、エストは7000年経っても、まだ生きているということか。マロンはその事実に気付いて嬉しくなると同時に、少し悲しさも感じた。
どう足□いても、自分はそこまで一緒に生きることが出来ないからだ。それは、彼女の隣にもう一人の自分がいないことから、図らずも証明されているといえる。
とにかくだ、まだ刃を振るうには早い。まずは、訳を聞こう。一度構えた大剣を降ろし、話を聞く姿勢を見せるマロン。前衛での戦いは、しばらくの間アランとニケに一任されることとなる。

>パージルク・ナズグル、エスト、アラン・レイクルード、ニケ・エタンセル

7ヶ月前 No.1188

『世界』を視る者 @x5mas☆sECYEVcUXiI ★iPhone=eTU9Mm3Uj5

[歴史是正機構/資料室/【リプレイサー】]


テレポートの直後から、試しに間髪入れずに言葉を掛けてみたところ。片方には感性を基準に事務的処理で受け入れられて、もう片方には道化の譫言だと切り捨てられた。此方からしてみれば、両者ともに大方“予想通り”の反応だ。

「ま、そりゃそうなるわな……。」

奇術師は溜息混じりに呟きながら、態とらしく首を横に振う。
相手が相手なら、口先だけで談笑の時間までは持っていけるかも知れない――淡い希望もあるにはあったが、交渉は決裂。仕方あるまい。一瞥、二瞥もした辺りで、“それ”が乗ってくるようなタチじゃないのは分かってた。変に裏をかかれるよりかは幾分かマシ、とでも受け取るほかない。

盗賊王の感性は、交わす言葉よりも遥かに鋭敏だった。分かり切った結末が訪れた、そうもでも言いたげにミラノは口角を僅かに上げ、馬鹿げた交渉はバッサリと切り捨てられた。中々に『面白い』性格をしているな――奇術師もまた小さく笑みを返し、首を銀狼の居場所へと傾ける。

「ああ、そうだったみたいだな。けどまあ、なんだ。俺にあるのは、口先の妙と搦め手ぐらいのもんで。俺に“躾”なんて任せたら、どうなっちまうことやら。だから――」

天へ向けて、“それ”の手が掲げられる。魔力が移ろい、充填されていく。不気味に歪む“それ”の貌を前に、しかして奇術師は笑みを崩さない。魔力が七色の帯へと変わり、数多の流星が天井を覆う。その、正にその瞬間――

「お前が先に行ってきなッ――!!!」

――奇術師の姿は、忽然と立ち消えてしまった。

弾幕を避けるにはどうすればいい? 答えは単純、主に二通りだ。弾そのものを無力化するか、自らが隙間に滑り込むか。銀狼は“運任せ”の戦法により、その両者を採ったと言えよう。彼の“運勢”は凄ぶる良好、運否天賦の理も、疾駆する銀狼の桎梏とはならず。星屑は道を譲り、沿道を豪勢に飾り付けるのみ。

だが――他にも一つ、方法がある。
銀狼が偶然を騙るなら、奇術師は必然を謳うのみ。『弾幕の外側』に退避してしまえば、それは絶対の回避に他ならない。枠に囲まれているわけでもあるまいに、正面切って挑む義理はさらさら無いのだ。


これは無論、無意味な責任の放逐ではない。確かに銀狼へと負担は掛かるかも知れない、だが彼にしてみれば誤差の範囲の筈だ。盗賊王と同等にとは行かずとも、奇術師にも人を見る目はそれなりに備わっている。

――そう。奇術師の目が捉えるモノは、場の景色だけには留まらない。目を通して見出すモノは、空へと残る意志の残滓。

《いきなり周りの景色が変わってて――》
《10秒なー。それまでに、ほら、あっち――》
《――ビンゴ。三文芝居ご苦労ォ、ってな――!》
《俺は全てをリセットしたい。ただそれだけ――》

空間へと無数の文字列が像を成し、脳裏へと焼き付いていく。
万物万象は例外無く、語り、動き、考えを為し――その度に、世界へとその破片を遺す。口が何を騙ろうと、遺した事実は誰にも誤魔化せやしない。奇術師の《千里眼》は澱みなく、銀狼と“それ”とが起こしてきた行動を読み解いた。その上で、“単騎でも問題ない”……と、銀狼の実力を信頼した上で、暫しの消滅を選択した。ただそれだけのことだ。

それはつまり、“戻る算段”があってのことでもあるわけで。



星弾が一頻り降り終わり、最期の止めとばかりに煌々と輝く、巨大な五芒星が現れる。空間を圧迫し、大気をも震わせて、いざ地を砕こうと輝きを増し――

刹那。

「さあて、俺も動くかねッ!!」


無空を劈き、黒い影が着弾地点へ躍り出た。影の手には二本の鉄塊。数多の戦地を駆けたソレは、目前の明星にはあまりにも非力に映る。

――しかし。奇術とは、それ則ち道理を嗤う者の秘法。
紫電一閃。ダガーが薙いだその先から、星の姿は『消失』した。

見えずとも、聴こえずとも、“それ”には分かる筈だ。敵対者の息の根を止める筈の散弾は、今や己の喉元に突き返されたのだと。正面からは盗賊王の必殺の二撃が無数の流星と共に迫り、そして背後では奇術にて運ばれた星屑のカーテンが移動の自由を奪い取る。

如何に絶対の力を誇示するとも、この『挟撃』に『安易な逃げ道』は存在し得ないのだと。

>>アズリエル、ミラノ

7ヶ月前 No.1189

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_q5x

【どうも空気読まず突っ込んだ感じになってしまったみたいなので、配置転換をば。 気づいたら絡みなおして頂いて大丈夫ですので!】

【時空防衛連盟本部/屋上→屋外/Cluster E装備型】

「……チッ」

幻覚、目に見えぬ撤退、あるいは。
いや、どれにしろ、この場に留まるのは面倒ごとを引き起こしかねない。 ここに敵が居ないのならば、後は下に存在する対空砲、アレを破壊して悠々と爆撃するとしよう。

少なくともクラスターはそう脳内で切り捨てて、狙いを地上へと移した。
目立つ高高度からの爆撃、それは基本的に良策に思えるかもしれないが、対空陣地があると分かりきっている状態でそれをやるのは馬鹿のやる事だ、そして、回避しつつの爆撃など、それこそ効率が悪い。 メガニカに戦術兵器を搭載している訳でもないのだから。

クラスターは振り返ってビルから飛び降りるかのように下へと降下、途中でメガニカの平たい上部に乗って、そのまま地面に激突しないように勢いを落として高度を下げた。

「もう少し、マトモな奴は居ないものかな」

その時目に映ったのは雑兵であった、そもそも降下が成功することから、対空砲をこちらに向ける余力すら無いように見える。
それだけ味方がかく乱を上手くやっているという事でもあるのだろうが、それでも、新たなボディをマトモに試せないと言うのは、技術者であるクラスターにとっては何とも喜びがたい物だった。

だが、武装のテストは出来るし、何よりこのまま帰っては、ヘルガ様の期待に背く事になる。
故に……兵士たちへと向けられたレッドガンが眩く輝いたかと思うと、一気に火炎が放たれ、その一帯を焼き尽くした。

>ALL

7ヶ月前 No.1190

蓼科祈 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4


【 歴史是正機構本部/牢屋/蓼科祈 】

 近接戦闘には慣れていない――いいや、出来るけど次からやろうという顔で再び"死んだ"。

 両手両足を切り飛ばす。汗が頬を伝い、舌先に乗る。
 塩味がハッキリと感じられる前に、目の前に再び現れるChara。

 距離を詰めるために踏み出すのを確認。それと同時に後方へ大きく跳躍。
 そして手首の一瞬の捻りの後、人智を超えた速度と手際で放たれる斬撃。
 だが届かない。ナイフの射程距離は足と急所を狙われた際に把握した。

 あざ笑うCharaを見ていてその全てを手に取るように理解する。
 相手の思考を自身の内に落とし込み<トレース>、脳に蓄積<インプット>し行動に反映させる<アウトプット>こと数度。
 結論として出したのは、コイツには最大の武器”しか ”ないという致命的な欠点。

 付けいる隙はある。
 己が至高であり、絶対たる存在であると自負している者。
 自身の絶対的優位<アドバンテージ>に依存している者。
 己の足元すらも、光が照らしつくし無敵だと考えている者。
 それらすべてに共通して言えるのは盲点とも呼ぶべき弱点。
 発想の転換一つで無明の奈落へ突き落される不安定さ。

「……」

 挑発には乗らない。
 やはり証明された通り、初見の攻撃には追いつくことは出来ない。
 コイツが出来ることは無限の復活を除けば一つ。

(――相手の攻撃にパターン立てをして、実行できる力)

 必然的にそれに頼り切りの戦いというものは、崩れ去れば後には何も残らない。
 強固で堅牢な警備システムを張り巡らせるほど、中にいる住民の意識は「安全だ」と低くなるような。
 そう、――突き崩せば動揺の余地を生み出せるのは間違いない。

 ヴィクトーリアは不殺を徹底している。運動能力は高く、継戦は可能と見た。
 だが先ほどの二度三度の攻防、殺意の無さをCharaに見破られ対処すら放棄された。
 一方Sansは殺すつもりだ。何度か相手にしたという台詞は伊達ではなく――根幹からの対処を知っているようだった。
 だが明らかに息が上がっている。下手な長期戦を続ければ、どうなるかは分からない。

「……?」

 次手を打とうとして――様子がおかしい。
 Charaが怒り狂い叫び、虚空を切り裂きはじめた。
 ノイズが走る。蒼いセーターを着た何者か。フリスク、そう呼ぶSansの声。

 ははぁ、そういうことか。
 ならば一芝居撃つ価値はあるか――そう、こういう感じだっけ。

 雷光を走らせる。露骨に、意識的に、それも過剰に。大地を抉り大気を抉り浸食していく。
 思い返すたびにロクな記憶はなかったと思える”そういう生活 ”だが、――使えるものは全て使う。
 自分でもよく分かるくらいに冷え切ったドスの効いた声だった。

「モノを壊すってどんな気持ち?
 楽しい? 面白い? 悲しい? 辛い?」
   、   、   ・・・・・・
「まぁなんでもいいわ。そこのアンタ、聞こえてるんでしょ?」

 友情や、親身な言葉や、その他諸共の情けは一切掛けてやらない。
 掛ければかけるだけ、こういった手合いには重荷にしかならないからだ。
 掛けてすぐに出てこられるのであれば、最初からとうに抵抗出来ている。
 罪を許すのは他者ではない。己自身が自覚し、許さなければ永劫にわだかまりは残り続ける。

   、   、   、   、   、   、 、殺す
「何でもいいけど、コイツらの話無視して出てこないなら消すから」
「それと――世界を破壊、だっけ」

 態度を変えず、しかしハッキリと告げた宣告は誰に宛てたものか。
 何れにせよ甘い言葉だのを吐くのも、説得をするのも性に合わない。
 それは後の二人に任せればいい。

 みしり、とどこかから音が聞こえた。そろそろだ、と牢屋が自分に伝えてくるようだった。
 狙いが定まらないように立ち回る。
 自然に距離を詰め、しかし気取られぬ程度のものへ。



「いい趣味ね。くたばれ」



 その瞬間――Charaの真上の天井が崩落した。
 瓦礫の山が彼女めがけて降り注ぐ。
 大量、かつ広範囲だ。それこそ真上の部屋の天井が露わになり、吹き抜けになってしまうほどのもお。

 初見の攻撃にはほとんど対応できない。その情報を得た祈が真っ先に思い付いた手。
 回避されることを前提で、支えになる部分を<破壊>し創り上げた罠だった。

「ご高説垂れてるようだけどこっちはモノを壊すのも、皆殺しも、全部経験済みなのよ。
 自分が特別だって酔い痴れてるのなら、足下だけはちゃんと見ておくことね。掬われるから」

「――元破壊者舐めんな」

 ・・・・・
 無へと還れ。
 消えろという命令形の最上級――それが蓼科祈、私の力。
 その光に触れたが最後、世界から無へと削り取られる。
 世界を壊す、ただその一点において神々の手で行使された、創造と対を成す「破壊の権能」。

 瓦礫の山が降り注ぐ中、Charaの足元に破壊の光を集束させる。
 作動。展開、――竜が立ち昇るように、稲妻<破壊>の柱が彼女を飲み込み壊しつくさんと発生する。

>Chara ヴィクトーリア Sans

7ヶ月前 No.1191

血に飢えた玉兎 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【時空防衛連盟本部/食堂/雪葉】

気配を消した相手に対応するのは難しいが、視界に入れ続けることによってその能力は無意味となる。ならば、そもそも居場所が曖昧になるほどの気配を発したら?
結果は、ご覧の通りだ。彼らは高速で動き回る雪葉の正確な場所を把握することが出来ず、立ち往生している。その状況が丸分かりの彼女は、にやりとほくそ笑んだ。
脳を揺さぶるほどの強烈な気配は、吐き気すら催すことだろう。いい気味である。彼らは何人も分身したように感じられる自分の攻撃によって、死を迎えることになるのだ。
もはや、勝利は疑いようのないものであると、雪葉は確信する。それと同時に彼女の心に芽生えてくるのは、慢心だ。負けはあり得ないと本能が囁いた瞬間の、気の緩み。
高速機動のままブラスターを乱射すれば、敵は反撃の機会を一切得られないはずであった。にも関わらず、雪葉はわざわざ接近し、攻撃時に停止する必要のある光学ナイフを選んだのだ。これを慢心と言わずして何という。

「へ?」

動きを見通した、という戦兎に対して、驚きの表情を隠せない雪葉。しかし、思わず静止している間にも、攻撃が迫る。避けなければ。直ぐ様跳躍するも、残滓が僅かに脚を掠めた。
思わぬ被弾に顔をしかめる雪葉。だが、これで終わりではない。ようやく最初の傷を負わせたユスティーツが、一瞬の隙を突いて反撃へ打って出てきたのである。
意趣返しの如く放たれる連撃。最初の二つこそ、間一髪で躱すことに成功したが、最後の脳髄へと突き立てられた爪を、雪葉は避けきることが出来なかった。
結果として、首に刻まれる傷。偶然の産物か、それは相手に自分が刻み付けたものと瓜二つであった。完全に同じことをし返されたことに、焦りと同様を覚える雪葉。
自分の能力が通用していない訳ではない、何か大きなミスをした訳でもない。なのにどうして、勝利が勝手に逃げていくのだ。分からない、勝てない理由が見当たらない。

「おっ、お゛っほっ……私一抜けた! パスパス! 無駄な殺生やめましょう! 降参します、降参しますから!」

恐怖を覚えた雪葉は、そんなことを口走りながら、後ずさりを始める。時空防衛連盟の看板を背負っている者達が、無抵抗の者に危害を加えるはずがないと判断したからこその行動。
だが、悪に染まりきった彼女が、ただで撤退を選ぶはずがない。こうして相手を間合いにおびき寄せた後に一撃を食らわせてやろうと考えるのは、必然の理である。
震えて自然に後ろに引かれたように見える手。背中に隠したその手に携えられたブラスター。二人が一歩を踏み出しそうとしたその瞬間、雪葉の気配が消え、彼女の姿も見えなくなる。

「でも、ただで逃げるなんてごめんなんすよねぇ!」

一瞬で背後へと回り込んだ雪葉は、ここぞとばかりにブラスター連射する。これで倒せなければ諦めて撤退するしかないが、一泡吹かせてやらないと気が済まなかった。

>ユスティーツ・シュタルク、桐生戦兎

7ヶ月前 No.1192

受け継がれし凪の系譜 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/食堂/セリィ】

即興ではあるが、この場に駆け付けてくれた味方との連携。それが功を奏したのか、遂に諏訪子は被弾を許した。確かな手応えを感じると共に、地表へ降り立つセリィ。
それでもなお、笑ったまま余裕の態度を崩さないのは、伊達に神をやってはいないというところか。どちらにせよ、排除すると決めた相手だ。今更手加減するつもりはない。
相手を挑発するつもりで吐き捨てた啖呵は、あろうことか称賛された。まさかの結果にセリィは少しだけ拍子抜けするが、すぐにそれが全てではないことを察する。
どでかいマイナス。セリィは諏訪子の価値観を汚れきっていると表現した。勿論、それはわざと敵を愚弄する意味合いなどがあった訳ではなく、全て本心からのものだ。
神だろうが人だろうが知らないが、別の世界から好き勝手に破壊していいなどという理論を押し通そうとする相手を、セリィは認めることなど出来ない。認める価値すらもない。
元の世界でどれほどの信仰を集めている相手だろうが、今目の前で対峙している自分からすれば、気まぐれで世界に迷惑を掛けている、ただの害悪な存在でしかないのだから。

「その言葉、そっくりそのままあんたにお返しさせてもらうわ」
「あんた、自分の世界じゃさぞかし尊敬されてるのかも知れないわね。けど、だからって他の世界で考えなしに暴れ回っていい権利がどこにあるのよ?」
「これはあたしの価値観だからどうぞ聞き流してくれて結構。それでも、あたしからすれば、あんたに神を名乗る資格なんてないわ。暴れたいなら自分の世界でやりなさいよ、小心者」

お前なんぞ恐れるに足らないと言わんばかりに、セリィは地雷を踏み抜いたばかりであるというのに、更にもう一つ踏み抜いてやるという勢いで、そう吐き捨てた。
諏訪子が己の世界で人々から集めているであろう尊敬。あの様子からして、それは実に素晴らしいものなのだろう。だが、それは他者の世界を破壊する権利と直結しない。
そもそも、気晴らしがしたいのであれば、自分の住んでいる世界でやればいい話だ。まさか、出来ないということはないはず。こうしてここで実演しているのだから。
それなのに、そうしようとしないのは、今まで得てきた信仰を失うのが怖いのだろう、とセリィは考える。あるいは、自分のよく知る世界だからと、情が芽生えているのか。
どちらでも構わないのだが、"らしいことを思う存分やれない"憂さ晴らしを別所でされるのは、本当にただただ迷惑なだけなのだ。だから彼女は、諏訪子を断じて認めようとしない。

黒い渦が周囲を呑み込んでいく中、セリィは姿を再び光の霧へと変えて空間を飛び回り始める。予想以上に祟りの進行が速いが、最速を出せば逃げ切れるはず。
あと一歩でも反応が遅れれば終わっていたところであったが、間一髪それは免れた。安全圏へと脱出した彼女であったが、背後からは追撃が迫りくる。
ふとマシュマロの方を見ると、彼女は魔手の展開に失敗し、勢いよく後方に吹き飛ばされていた。致命傷を負わなかっただけでも幸いだったが、自分への攻撃の対処で精一杯になっており、味方にまで気を回せなかったのは失敗だ。
白蛇の牙を既の所で躱し、マシュマロと並び立つような位置へ。そのままセリィは太陽の光を宿したエネルギーブレードで斬り掛かるが、その前に一言彼女に声を掛ける。

「無理はしないでちょうだい。危なくなったら、あたしの腕を掴むのよ!」

セリィの使う光の霧に姿を変えての高速移動、及び回避は、自分の身体に触れている者達も同時に行うことが出来る。次にマシュマロに危険が迫った際は、それで共に切り抜けようという提案だ。
仮に攻撃を受けた際は二人分のダメージが両方に襲い掛かることとなるため、リスクもある。しかし、本性を現した祟り神の前では、なりふり構ってはいられないだろう。
最初に太陽の光の刃、次に月の光の刃で二連撃を放ち、直ぐ様セリィは大きく後方へと飛び退く。先程のように、近距離の間合いを保って命を危険に晒す訳にはいかない。まずは安全を確保しつつ、敵の出方を窺うべきだ。

>洩矢諏訪子、マシュマロ・ヴァンディール

7ヶ月前 No.1193

赤色 @prismriver☆kFuUk0otHg5u ★TZkXkdft22_YP8

【時空防衛連盟本部/屋外/RED】

時空防衛連盟に敵が侵入する。戦いの始まりだ。その瞬間、REDのプログラムは起動した。普段は部屋の隅で縮まって動かないような彼女が、凄まじい速さで走り出したかと思ったら、次の瞬間には敵兵を焼いている。実戦に投入されるのはほぼはじめてなので、彼女のことを知っている人は驚いただろう。今のREDは、そうした周りの目線も気にせずに、ただ目の前に現れた敵を黙々と殺し続ける戦闘兵器だ。世界政府によって生み出された被害者の1人は今、時空某連盟を守るためにその力を振るっていた。

屋内は多くの仲間によって守られているが、外はどうだろうか。どちらかというと、中を守ることで精一杯という現状もあってか、それほど警備は厳しくない。そんなこともあってか、リヒトザルーンの市街地には多くの敵が侵入している状況であり、このままでは市民が危険にさらされることになる。恐れも疲れも知らない戦闘兵器の状態でも、REDは人間らしい思考を保っているようだった。

「ここにいる人たちが……まともじゃないとでもいうつもりですか……」

そんなREDの敵意がクラスターに向くのは当然だった。つまらなそうに時空防衛連盟の兵士を焼いていくその姿は、彼女であっても不快であることは間違いなく、希薄な感情の中でもREDはわずかな怒りを感じていた。対空砲を壊されると、航空戦力への対応が難しくなる。たった1つとはいえ無視できない。彼女は目を赤く光らせ、能力を発動する。意趣返しのような、強烈な火炎。それがクラスターの装甲を焼こうと、無数の弾となって分裂して遅いかかっていった。

>>クラスター

【だいぶ間があいてしまいましたが、復帰します】

7ヶ月前 No.1194

指輪の女帝 @kyouzin ★XC6leNwSoH_q5x

【時空防衛連盟本部/周辺市街地/パージルク・ナズグル】

「羽虫が。 第一人種と第二人種の区別も付かぬような愚か者であったのならば、力があれど外道に落ちたのも已む無しか」

新たに現れた敵、この中ではニケと同じく元より敵だったレイヴン・ロウに対してパージルクが掛けた言葉は、かなり冷たい物であった。
だが、その冷たさには理由がある、それは彼が引き合いに出した名前だ。
目の前に居る、自身の娘を殺害するという暴挙に出ながら、のうのうと生き続けている奴らが、自身の唯一無二の忠臣の名前を使う事など、到底許されるものではない。

事実として、パージルクの表情はレイヴンが来てからより険しい物になっている。
さらにレイヴンは追加で、この行いは忠臣を侮辱する物であると語った。

「黙れ。 一度帝国を裏切った者が、妾を最期まで信じ、貴様らと戦った者の言葉を借りるか。 お笑いだな、だが、同時に、実に。 実に不愉快だッ!!」

彼女の両手から発生した膨大な魔力が、彼女の真上で一つの球体となる。

それは、莫大なエネルギーの塊となる……その構えは、明らかにギリダンでの最後の戦いで使った、最も強力な魔法の前兆であった。
そのまま行けば、レイヴンの魔法と相殺しあい、いや、あのギリダンでの破壊力を考えるに相殺にすらならず、一方的に敵対者を破壊しつくすかに思われた、その時だ。

何かが割り込んだ、そして、それは自身を守った。
……あぁ、この時代にももしかするならば、自身の意思を正しく理解してくれる者が居るか。 ならば、巻き込んで殺すと言うのは、あまりにも愚かな事だ。
パージルクの生成した光の球体が一瞬で消滅し、魔法行使は中断された。 さて、味方してくれた者は……と、魔力が放出されている方を向けば、それは、あまりにもパージルクにとって気分が悪くなるような人物。

「茶番だな」

パージルクはそれだけ吐き捨てた。
その後も会話を聞いてみれば、何があっただの、誰に吹き込まれただの、自分が"間違っている"ようなことを叩きつけてくる。 違う、これが真実なのだ、夫を第二人種共に殺された憎しみ、そして臣下と娘を失った憎しみが合わさった者、それこそが女帝なのである、とパージルクは内心断じた。 ……それは真実であるが、同時に、それだけが全ての真実ではないと言うのに。

「誰に? あえて言うならそこの二人だよニケ。 その二人は、妾がこの世を去った後、エスメラルダを殺した。 歴史がそう語っている。 故に妾は――ん、待てよ。 あぁ、なるほど、そういう事か、噛み合わぬ訳だ」

この時、パージルクはあくまでこの場に居るエストは「今までずっと生きていたエスト」ではなく、自分が去った後、即座にマロンと一緒に「飛んできた」と誤認した。
だが、パージルクの目線では、そうであれば納得できる事があった。
……あぁコイツらは"まだ"エスメラルダを殺していない。 さらに言うならば、まだ謀反を企んでも居なかったのかもしれない、そう"現段階"では。 もしかしたら、片方が現段階で既に謀反を計画していて、もう一人がそれに乗せられる。

あるいは……憎たらしい第二人種のクズ共に乗せられたという可能性もある。
あぁ、そうだ、きっとそうだ。
パージルクは喜んだ、ヘルガの言う事は紛れも無い事実、だが、幾ら複数人によって心を壊されても、彼女は信じきれない所があった。

だが、そう、この考えが正しいならば、二人は"まだ"潔白だ、殺す必要が無い。

「……あははははは、そうか、そうか。 すまない、お前たちは"過去の人間"で、妾はお前たちの"未来"の話をしていた。 ……だが、だからと言って、信じるわけにもいかん、お前たちは、確かに、未来で、妾の娘を殺したのだ。 ……マロン・アベンシス、魔大老エスト。

――殺せ、そこに居る第二人種の屑を。 いや、この世界に居る全ての第二人種を。 その首を信頼の証としろ。

パチンとパージルクの指が鳴ったかと思うと、二機しか存在しなかったビットがそれぞれ分裂、四機の、それぞれ違う属性を司るものに変わった。 その意味は単純に手数が増やしたかった、と言うのも大きいが、それ以上に大規模破壊魔法で"もしかしたら、いや、確実に"第二人種に乗せられた二人を殺すのを嫌ったからだ。

「いや、もしも、ニケ、レイヴン、貴様らもまた、元の鞘に戻るというなら……退かせてやろう。 何人でも、何百人でも良い、第二人種を殺して来い、そうすれば妾は再びお前たちを迎え入れよう」

元の"慈悲深さ"といった側面が、これ以上に無いほど邪悪な言葉となって紡がれる。
幾ら歪められようとも、そこは変わらない、きっと彼女は従う者には今まで通りの女帝として振舞うだろう。

ただ、第二人種への憎しみのみが強調され、民の幸せや、臣下の事が二の次になった、ただ、それだけだ。

彼らには選択権が与えられた、もしも、攻撃してくるのならば、その瞬間に氷、炎、雷、水の四属性のビットが一斉攻撃を開始するだろう。
また、彼女はレイヴンとニケには一定の注意を払いながらも、その実、残った二人にはほとんど警戒を払っていなかった。

本気で、理解して貰えると思っているのだろう、第二人種は未来の彼女らを惑わして自分の娘を殺させたのだと、だから、今度こそ、第二人種を殲滅しつくさないといけない、そんな歪んだ考えを。

>ニケ・エタンセル マロン・アベンシス レイヴン・ロウ エスト

7ヶ月前 No.1195

もう花の姿はこりごり @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/資料室/アズリエル・ドリーマー】

そもそもの前提として、今のアズリエルに交渉、会話といった行為を試みること自体が間違っている。彼にとってこの世界の全ては、どうでもいい存在であるからだ。
いずれ壊すだけの、ガラクタ同然の代物の言葉に耳を傾ける者が、果たしてどれだけいるか、という話である。彼を止める術は唯一つ。力づくで止める以外の方法はない。
彼が呼び寄せた流星群は、二人の敵に対しては大きな効果をなさない。盗賊王に対してはまるで当たっている雰囲気がないし、むしろ軌道そのものが逸らされている。
奇術師に対してもそれはほぼ同じで、奴はこちらの攻撃をそのまま反撃に利用するという手に打って出てきた。なるほど、自爆させるつもりか。初手にしては考えたと称賛してもいいだろう。
ただし、奴らは一つだけ決定的な過ちを犯している。それは、己の攻撃の性質すらも分からないほどアズリエルは幼稚ではなく、更にいえば、仮に被弾したとしてもこの程度なら余裕で耐えられる体力を有するということ。
斬撃を余裕のある動きで回避し、後ろから迫りくる流星に視線を向けるアズリエル。その瞬間、怒涛の勢いで地面へ疾走していたそれは消え失せ、辺りには静寂が帰って来る。

「自分の攻撃で死ぬ奴がどこにいるんだよ! 折角のチャンスを無駄にしたね」

実に可笑しくてたまらないという表情で、敵を挑発するアズリエル。こいつらの攻撃に当たってやるつもりなど全くないのだが、だとしても今の選択は稚拙過ぎる。
これでは、わざわざ無意味にターンを渡してくれたようなものだ。逃げ道がない? ならば、無理矢理作り出してやるのみ。今の自分のは、それが出来るだけの力がある。
わざとらしいくらいに緩慢な動きで、二人を同時に見渡せる位置へと移動したアズリエル。彼は再び笑ったかと思うと、異空間から二対の大剣を取り出し、それを両手に構える。
これは恐らく、接近戦を挑んできたミラノへの意趣返しも含まれているのだろう。あるいは、魔法攻撃だけではなく、近接戦闘も出来るということを誇示したかっただけかも知れない。

「お前達、俺のことを舐めてるんじゃないか?」
「もっと本気で掛かってこないと、きっと後悔することになるぞ! 『カオスセイバー』!」

どうも見下されているような感覚がしたアズリエルは、その態度を改めた方がいいと忠告すると共に、敵陣の中央へと飛び込んで大剣を勢いよく振り回す。
左と右、タイミングをずらして放たれる連続斬りがミラノを、そしてリプレイサーを襲う。大柄な体格には似つかない軽快な動きも相まって、反撃の機会を見出すのは至難の業だろう。
それぞれの胴体を一刀両断することを狙った一撃を放った後、そのまま両者の背後へと走り抜けたアズリエルは反転し、カオスセイバーを渾身の力で地面へと叩き付ける。
すると、斬り裂かれた空気が、無数の星となり、追撃とばかりに二人に殺到する。圧倒的な力と余裕を見せつけるアズリエル。彼に、死角は存在しないとでもいうのか。

>ミラノ、リプレイサー

7ヶ月前 No.1196

ごきげんよう @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/牢屋/Chara】

殺す度に、賢くなって戻る。相手のことを理解して、戦闘をやり直す。それはCharaの最大の強みであると同時に、彼女の抱く"破壊の決意"の強さを示すものに他ならない。
同時にCharaは、三人よりも自分の方が強いという自信も持ち合わせている。その根拠がどこにあるのかは不明だが、恐らくは敵が自分を絶対に殺せないということを理解しているからこそだろう。
あの世界で、数え切れないほどの回数、サンズに殺され続けても折れることのなかった彼女の決意。それを失わせるのがどれほど難しいものかは、説明せずとも分かる。
罪の意識など、疾うの昔に消え失せている。そんなものは必要ないから。Charaにとってこれは当然のことであり、言い換えれば自分が生きる意味でもあるのだ。

「その通り、私に友達なんていない。だって必要ないだろう?」
「……どうせ、そんなものはすぐに消えてなくなるだけだ」

いつもの調子でサンズの挑発を受け流していたCharaであったが、今回ばかりは少しだけ違う反応を見せた。友達というワードに対し、少しだけしおらしい様子を見せたのだ。
もしかすると、彼女は過去に友達に関する何らかのトラウマを抱えているのかも知れない。二つ目の言葉からは、どこか諦めにも近いような感情が漂っていた。
そう、友達などどうせいなくなる。それなら、はじめから作らない方がマシだ。下らない友情に時間を割いている暇があるなら、自分はその間に世界を破壊し尽くしてやる。
一瞬の静寂の後、Charaの顔には再び狂気が宿る。部屋を包み込んでいく明確な殺意。ナイフを握る右手に力が籠もる。話している場合ではないのだ、こんな連中と。

出来れば早いところ蹴りを付けたいのだが、こちらの異変を察知したのか、敵はもうこの世にはいない存在に対して語りかけ始めている。馬鹿め、そんなことをしても無駄だというのに。
応えようとするフリスクを、Charaは無理矢理抑え込む。お前に主導権はない。お前に主導権はない。お前に主導権はない! 表に出ようとするな、鬱陶しい!
邪魔な存在を振り切るかのように走り出すChara。未だ、相手に攻撃は命中していない。ただ一方的に殺されるだけのも癪だ。この辺りで一発、お見舞いしてやる。
その途中で、祈の能力によって頭上が崩落した。降り注ぐ瓦礫の中に消えていくChara。ソウルが割れる音が聞こえた。やがて、彼女がいたであろう場所に殺到する光。
しかし、もうそこに彼女がいない。彼女がいるのは、三人の背後。また死んで、また帰ってきた。余裕を象徴するかのように、板チョコを頬張りながら。

「サンズ、それに君達も何も分かってないようだから教えてあげるよ」
「フリスクは……死んだんだよ! この身体は、私のものだ!」

―――ヘヘヘハァッ……! これまでで最も邪悪なCharaの嗤い声が、牢獄に響き渡る。次の瞬間、彼女はヴィクトーリアの前へと瞬間移動し、首、右手首、胸、左足を四連続の斬撃を放つ。
次に狙いを定めたのは、祈。ここでCharaは、自分が完全にフリスクを乗っ取ったのだということを示す作戦に出た。こうでもすれば、あいつは、サンズは嫌でも気付く。
―――ナイフしか使えないと思ったら大間違いなんだよ。Charaが取り出したのは、以前フリスクが使っていたであろうピストル。それを祈へ向けて乱射している。突然の遠距離攻撃には、敵も面食らうことだろう。
そして彼女はやはりサンズに対して人一倍強い敵意を抱いているのか、最後に彼の元へと向かう。ピストルをしまい、素手に。そのままCharaは、眼前のスケルトン目掛けて殴り掛かる。
回し蹴り、空中で身体を回転させながらの踵落とし、そして締めに懇親の右ストレート。だが、まだそこで邪魔が入る。結果として、三発目の攻撃の威力が落ちてしまった。

「……お前が横槍を入れなければ、奴を殺せた。煩わしいことをするな、消えろ!」

再び怒りを露わにし、空中をナイフで斬り付けるChara。同時に、青いセーターの何者かがノイズのようにちらつく。何故だ、どうしてお前はそうやって私の邪魔をする?
鬱陶しくて仕方がない。これだけ分からせてやったというのに、まだ抵抗を続けるというのか。お前がそうするというのなら、こちらにも手がある。お前の友人が殺される瞬間を、その目に焼き付けてやろう。あの時と同じように。

>Sans、蓼科祈、ヴィクトーリア・ダールグリュン
【もう少ししたら目と口から黒い血を垂れ流した本気形態になる予定】

7ヶ月前 No.1197

紅炎 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

7ヶ月前 No.1198

Futo・Volde @nonoji2002 ★gLBoRrfVfo_ubH

【歴史是正機構本部/牢屋/Sans】

「これで3回目だな」

崩れ落ちる天井、ソウルが砕け散る音。少なくともこれで3回目ってわけだ。
だが、それくらいじゃコイツが諦めないことくらいはわかっている。もし、コイツが10回以上死ぬことがあれば、その時は少しくらいお祝いしてやっても良いかもしれないな。

「Heh, 汚い笑い方だな」
「ま、薄汚い相棒殺しのお前にはお似合いだ」

ヘヘヘハァ、なんて汚い笑い声はコイツだからこそ、為せる技とでも言ってやろうか。
にしても、つくづくコイツの煽りレベルは、コイツのLevel Of ViolencE同様、高いと言える。
俺だけでなく、この場に居る他の2人でさえ、今、コイツにイラついているのが目に見えてわかるんだからな。こういう奴をなんていうかは忘れてしまったが、人をイラつかせ、人を怒らせる才能がずば抜けて高いのは、もはや天性の才能かも知れない。

だが、こっちから煽り返せば、コイツはムキになる。つまり、コイツの精神はまだまだ幼い子供ってことなんだろう。

「ぐッ……!」

回し蹴り、踵落とし、そして右ストレート。
問題なく躱せるかと思っていたが、やはり疲れが自分でも目に見えてわかるように溜まってきているようだ。それとも、思いもよらない攻撃に少し戸惑ったのかもしれない。
コイツはナイフしか使わないとばかり思っていたが、他の攻撃もしてくるとは。それが少しばかし俺を戸惑わせたのか?
不覚を取った、そのまま右ストレートを喰らって後ろに吹き飛ばされる。

アイツが武器を使って攻撃して来なかったのが不幸中の幸いか。そして、“フリスク”がアイツを寸前で鈍らせたのもまた運が良かった。もし、アイツが武器を使っていたら、俺はそのまま殺られちまっていた事だろう。

「Heh, 死んだって言う割には、相変わらずフリスクがお前の中で暴れてるように見えるぜ」
「なあ、相棒。まだ中に居るんだろう?」
「お前ならきっとコイツに勝てる、俺はそう信じてるぜ」

再び先ほどと同じく、少しブレるようにして、チラつく“フリスク”の幻。コイツは確かにフリスクは死んだと言ったが、そんなものはまやかしなことぐらい、一目でわかる。

きっと、フリスクは必至にコイツに抗おうとしているのだろう。フリスクにどれだけの力が残っているのかわからない。もしかしたら、もう殆ど“主導権”を取り戻すほどの力は残ってないのかもしれない。
だが、俺は僅かな望みに希望を賭けて、コイツの中に居る“フリスク”に話しかけた。

「まだやり直せる」
「なあ、頼むぜ、相棒」

今やり直せば、コイツは、フリスクは“元の正しい道”に戻れる。
きっと、フリスクも幸せになれる正しき道へと戻れる。確証はないが、すべて“ケツイ”次第でどうとでも変わる。“ケツイ”は堅ければ堅い程、強くなる。

もし、フリスクに力が残っているなら。どうか、動かないでくれ。

僅かな希望に賭けたまま、対となっているガスターブラスターをいくつも出撃させる。
すべてを焼き尽くすと言わんばかりにブラスターからビームが照射されて行く。僅かな逃げ道さえも残さない程に。もし、僅かでも“善良な心”が残っているなら、この攻撃を“アイツ”は喰らうことだろう。

>Chara、蓼科祈、ヴィクトーリア・ダールグリュン

7ヶ月前 No.1199

ヴィクトーリア・ダールグリュン @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『歴史是正機構本部/牢屋/ヴィクトーリア・ダールグリュン』

味方の少女の攻撃で相手の少女は三回度目の死亡。
そして復活と同時にヴィクトーリア達三人の後ろに板チョコを頬張りながら現れる。
その姿にヴィクトーリアは非常に冷静に「その余裕、いつまで持つかしらね?」と、まるでその後どうなるかを知っているかのような口振りで相手に言い。
そして口には出さなかったが、「年相応な一面もありますのね」と思っていた。

そして今までの中で最も邪悪な笑い声をあげると、
瞬間移動で一気にヴィクトーリアの前に迫り、首、右手首、胸、左足へと攻撃を行おうとした。
それに対しヴィクトーリアは飛行魔法を使い、すぐに空中に回避をする。


「外式! ガンフレイム!」

ナイフ以外にも射撃武器を持っていたのは少々驚いたが、ヴィクトーリアも斧槍型デバイスを持っていながら射撃魔法使っているのでお互い様だが。
ヴィクトーリアの左手に青白くなっていく。砲撃魔法を放つために魔力を集中させているのである。
やがてヴィクトーリアの左手から青白い雷の光線が相手に放たれようとした。
時間を掛ければ本来の使い手と同様に炎の砲撃になるのだが、相手が相手なのであまり時間を掛けれないため、雷の砲撃となった。
相手に当たれば高威力による大きいダメージを受けるのは間違いはない。
形だけならヴィクトーリアもようやく殺しにいく気になった様にも見える。
しかし不殺という考えは全く変わっておらず、デバイスの非殺傷設定を解除はしていない。
その為ヴィクトーリアのデバイスが凶器化しておらず使う全ての魔法で殺すことはなく、相手が死ぬこともない。
戦闘での一連の流れだけで判断するならば、相手の能力が発動するのは死ぬときだけ。
つまり相手が死ななければ、能力が発動しないとヴィクトーリアは思っているのである。
死ぬと発動するのは分かっている。だが、逆に死ななかった場合どうなるかはヴィクトーリアは知らない。だが、やってみるだけ無駄ではない。

>>Chara、Sans、蓼科祈

7ヶ月前 No.1200


切替: メイン記事(1845) サブ記事 (316) ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

 
 
レスが1845件あります。2000件を越えると記事が終了します。
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…進行相談・設定はサブ記事をご利用ください(テスト中)。