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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/07/13 02:23 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_ouC

―――現在は、最終章です―――


最終章:「Chrono Crisis」

激しい戦いの末、歴史是正機構に打ち勝った時空防衛連盟。晴れて時空を護り抜くことに成功したかに思われた矢先、それは始まりを告げた。

まるで世界そのものが崩壊するかの如く、ひび割れていく空。その向こうから現れしは、正しき歴史を紡ぐ使者。

彼らは、人類の捻じ曲げた歴史を修正するべく、この世へと降臨した。これこそが、時空断裂。積み重なった歪みが、限界に達した瞬間であった。

改変に改変を重ねた今の世界が正史に塗り潰されれば、そこに生きる者達は"もしも"の存在と化してしまい、歴史の闇へと葬り去られてしまう。

それは即ち、世界の崩壊といっても過言ではないだろう。時空断裂による時間の連続性消失を防ぐためには、彼らに戦いを挑み、勝利するしかない。

人類が罪を犯したのは、疑いようのない事実。歴史を変えるなどという禁忌を犯した種族には、当然の報いであるかも知れないが……そんな人類も、生きている。

生けとし生ける者、全ての願いは、今日を、明日を生きること。黙って死を受け入れるなどということが、出来るはずがない。生きたい、と願う限り。

これは、明日を手に入れるための戦い。自らの存在を世界線に、時空に刻み付けるため、時空防衛連盟は次元を超える。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

最終章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-286#a


・現在イベントのあるロケーション

狭間世界:最終決戦

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Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【時空防衛連盟本部/通路/万丈龍我、葛城、桐生戦兎】

「……ん?」
三人で騒ぎの元に向かっているとき、戦兎は気づいた。
どうも騒ぎの規模はだいぶ大きいようだ。なので三人一緒では解決できないおそれがある。

「ここからは別々に行動するぞ、だいぶ広い範囲で起こってるみたいだ」
「わかった! 俺はこっちだ!」
「んじゃアタイはこっちだ!」
そこで別々に行動することにした。
別々に行動すれば戦力は低下するものの、より多くの騒ぎのもとを叩くことができるようになる。
三人はそれぞれ別の場所に走っていった――――

【時空防衛連盟本部/食堂/桐生戦兎】

「大丈夫か!?」
たどり着いて戦兎が目にしたもの、
それは見るも無残な姿に変わり果てて折り重なった人々と、うめき声を上げて苦しむ人々だった。
戦兎とっさに駆け寄り、声をかける。

しかし戦兎はまだ気づいていなかった。この部屋に敵が潜んでいると言う事に。
いや、まだ気づけないだろう。相手は気配を消すことが出来るのだから――――

戦兎は意図せず、相手に隙を晒すことになってしまった。

>雪葉および周辺all

【絡みます!】

4ヶ月前 No.1001

改変の副産物 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/通路/マシュマロ・ヴァンディール】

ここ通路に於ける戦いは、単なる連盟と是正のぶつかり合いなどという単純なものではない。様々なシチュエーションによって友人関係を築いた者同士が、皮肉にも争い合うという悲劇の舞台。
そして災難の火は、あろうことか友達同士のはずのシエンタとキラーにまで燃え移る。口論が引き金となり、すれ違う。罵る。果ては意思疎通もままならなくなったらしく、キラーの放った火炎をシエンタが受け止めるという、なんとも混沌を極めた惨状が広がる。
あまりのことに言葉を失うも、マシュマロは二人が口にした言葉の数々をしっかり耳に入れていた。ネットの知り合いとはいえ、孤独に苛まれる中で掛け替えのない友人を失いたくないという、シエンタの切な望み。
そしてそんな我儘に付き合っていたら、彼女のようにいかない自分がどうされるかわかったものじゃないという、キラーの必死の叫び。
ショパンも心を酷く痛めている。レーザーの傷は決して浅くないはずなのに、我を忘れてシエンタの側に駆け寄る。そんな彼らの姿を見たとき、マシュマロはもう一つの決心を固めた。

「もうやめよう!こんなの続けたって、誰も得をしないよ!」

氷弾の発射を切り上げると、残りのレーザーを氷魔法の壁で防ぎ、決壊と同時に二人とキラーの間へ割って入る。そう、誰も幸せになれないのだ。どちらが勝利しようと、友人を失った悲しみしか残らない。
ならばこんな戦いを続ける理由はない。互いに身も心も傷ついてボロボロではないか。ショパンには悪いが、彼の術もやめるように懇願する。
これらの行いは、シエンタと友達になりたいだけでやっているのではない。『人が友達を失うところを見たくないから』やめさせるのだ。今のマシュマロには、友人という存在の大切さが身に染みてわかっている。
例え他人であっても、友人同士で傷つけあうところは見たくない。ましてや死別など以ての外。

「そんなの私が許さないよ…しーの友達がいなくなるなんて嫌だから!」

自らが辿りかねない運命を憂うキラーに対し、そんなことはさせないと言い切る。これに関しては感情に任せた無責任な物言いでしかない。ユーフォリアやシフォンに嘆願こそ出来ても、最終的な判決を下す権利などないのだから。
それでも気持ちは本物。彼からすれば嫌悪の対象でしかないだろうが、マシュマロは決して悪感情の類は抱いていない。シエンタとの関係に嫉妬こそすれど、どこか憎めないキャラは素直に好いている。
故に本気で停戦を申し入れる…これ以上誰も傷つかないことを祈って。

>>シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラ―、ショパン

4ヶ月前 No.1002

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_Xn5

【大統領官邸/シチュエーションルーム/ユーフォリア・インテグラーレ】

いずれ、この時がやって来るのは確実であった。ユーフォリアとフォルトゥナの本質は、とても良く似ている。その辺りは、さすが血縁者といったところだろう。
単なる姉妹の話であればそれで終わりなのだが、この場合は事情が違う。本質が似ているということはつまり、こちらの行動が、相手に筒抜けも同然ということを意味しているのだ。
フォルトゥナはユーフォリアの行動を予測する時、自分ならばどうするかを基準に考えたことだろう。実際それは間違っておらず、両者はシチュエーションルームにて、遂に邂逅を果たすこととなる。
この再会が喜ばしいものではないことが、どれほど辛く切ないものであるかは、他人には想像出来ない。表面上は普段と変わらぬ表情をしていても、彼女の心は今なお激しく葛藤を続けていた。
ゆっくりと振り返るユーフォリア。そこには当然のように、フォルトゥナがいる。明確な敵意を向けながら、自分を見つめている。彼女の瞳を覗き込む度に、胸が締め付けられるように痛い。
しかし、時空防衛連盟の総統として、ここで感情を露わにする訳にはいかない。あくまで冷静に、まるで何も感じていないかの如く、平静を装いながら彼女は口を開く。

「……フォルトゥナ。ずっと、貴方を探していた」

嘘偽りのない、真実の言葉。この瞬間に抱いた素直な気持ちを、フォルトゥナにぶつける。されど、これが通じることはないだろう。今の二人の溝は、あまりにも深い。
様々な事情が絡んでいたとはいえ、ユーフォリアがあの一件以来、一度たりともフォルトゥナと顔を合わせていないのは事実であり、穿った見方をされれば、疎ましく思っていたと捉えられても仕方がない。
政治家になってから積極的にコンタクトを図ろうとしなかったのも、全ては彼女を父親と同じような目に遭わせないようにするため。フォルトゥナのためを思っての選択が、結果として今裏目に出ている。
消息が不明となっていたのは知っていたが、まさか歴史是正機構に所属しているなど、思いもしなかった。聡明な彼女が、そのような"過ち"を犯すはずがないという確信が、ユーフォリアの中にはあったのだ。
だが、考えてもみれば、ダグラスですらも道を踏み外しかけたという前例がある。今の腐った世界政府が存在し続ける以上、こうした事態を完全に回避することは不可能なのかも知れない。

刹那、踏み込んできたフォルトゥナの攻撃を、ユーフォリアは横に飛び退くことによって回避する。だが、それよりも早く、二人の間にダグラスが割り込んでいた。
まだ相手も本気は出していないだろうが、威力は相当なものであるらしい。もしまともに喰らっていれば、それだけで骨の数本は持っていかれてもおかしくないだろう。
流れの中で行われる、ダグラスの反撃。フォルトゥナの背後へと集中する攻撃は、敢えて当たらないように計算しているのか、それとも退路を塞ぐ狙いがあったのか。
敵が自分の妹であるということもあり、ある程度は配慮してくれているのだろう。このような無理を強いることになってしまったことには、後で労いの言葉を掛けなければならない。
一方のユーフォリアが、反撃を行うことはなかった。戦わずに説得出来る可能性を、未だ捨ててはいないからだ。しかし、そんな彼女の出鼻を挫くかの如く、どこからか飛来した魔力弾が視界を零に変える。
乱入者。時空防衛連盟の増援か、あるいは歴史是正機構か。フォルトゥナの安否を心配し、その名を呼びながら思わず一歩前に出るユーフォリア。だが、目的の人物を見つけるよりも早く、更に意外な人物の姿が飛び込んできた。

「アルカディア。何故ここにいるのかしら?」

やや怒りも感じられる口調で、魔力弾を放った少女、アルカディアに語り掛けるユーフォリア。それもそのはず、彼女は本来、食堂にて他の民衆達と待機しているはずなのだ。
言いつけを護らず、飛び出してきてしまったのだろう。敵を恐れない勇気は天晴であるが、組織として考えれば命令違反以外の何ものでもない。だからこそ、ユーフォリアは厳しい態度を取る。
とはいえ、今は悠長に叱っている場合でないことも、彼女は重々承知していた。一先ずはその一言に留め、ユーフォリアは再び煙の向こう側にいるであろう、妹へ視線を移す。
姉妹の絆を取り戻すのは、険しい道のりとなるだろう。失われた10年以上の空白期間を埋めることが、ユーフォリアには求められている。一つ、確実なことは……今の二人には、"本気のぶつかり合い"が必要であるということだ。

>フォルトゥナ・インテグラーレ、ダグラス・マクファーデン、アルカディア・クアドリフォリオ、(ヴァイスハイト・インテグラーレ)

4ヶ月前 No.1003

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【時空防衛連盟本部/武器庫/アリア=イヴァンヒルト】


 ―――そういう、話じゃないんですけども。
「しませんし、出来ません」


 素っ気なく、突き放すように口にした言葉に、目前の少女は軽口の一つも交えて来る。
 なんとも………良く分からない相手だった。第一印象からそうは思っていたが、奇怪さと不思議さがある。戦う前に軽口すら交えながら、それでいて結局やることは変わらない。彼方と自分は敵同士、元々言葉を交わす状況そのものが異様だろう。理解しようとするなら理解することに意識を割けば良いし、殺すならば殺した方に意識を割いた方が時間が掛からない。
 何より、手が鈍らない。二十にも満たない小娘の経験で申し訳ないが、“本当にどうでもいい”と判断したならどうでもいいままに殺してしまった方が早い。そっちの方が手間がかからない、いちいち何かを感じる機会がない。つまるところ、楽だ。
 好みなのが口数の少ない方だというのは、要はそういう話。口を開いて来た相手に付き合うこと自体は嫌いでなくとも、それと“仕事”を両立するほど自分という生き物は器用ではない。器用ではないので………正直、ぽんぽんと言葉を乗せて来るこの少女との距離感はやや掴みがたいものがあった。あるいはそれも戦士のやり口というやつなのだろうか、分からないし、どうでもいいが。

 ところで。
 継ぎ接ぎと称したのは、外見は自分とそう変わらない様子だというのに、言動のそれは酷く成熟したようにも捉えられるからだ。それでいて、どことなく割り切らない、大人とは決して言えないようなちぐはぐさが散見されたからだ。
 外見不相応の成熟さと練達、外見相応の性格と言動、性別には合わぬ男勝りな言動の数々。
 そうした“外見と中身が釣り合わない”事例をアリアは知っていたが、それとこれは明らかに違う。彼女の知っている外見詐欺に子供のような側面は本当にない―――こういうちぐはぐさについて、実のところアリアは全く覚えが無かった。
 有り体に言うところの興味で言葉を発したわけであり、つまり、ザーシャが“そう”だと判断したわけではない。………強いて言うならば戦闘前の様子からして幾つかの奇妙さは感じられたが、それまでだ。別に一度でそれを言い当てるほどにはならない。そのはずだったが、言葉のすれ違いか、あるいは彼方の意図があるのか―――。


「さあ。知らないことは、知ったかぶれません」
「どうであっても、関係もない」


 だから。
 造られた、という言葉に、妙に残るものを感じながら。
 しかし、知らないものは知らないのだと、素っ気なく言い返して戦いに集中する。

 ―――思っていたより動きが早い。

 先程の突風は何かと思っていたし、実際それは剣風の類だと思っていたが。
 あの不自然なベクトルの加わり方は、間違いなく魔術だ。それも系統は風だろうか―――応用の利く系統ではある。使い方からして、威力頼みで広範囲に振り回して来るタイプではないだろう。
 戦い慣れしている。正直に言って面倒な手合いだ。ただ力を振り回すようなタイプなら、どれだけ強くても対処の仕様がある。有体に言って単純な馬鹿ならば処置の仕様がある。そういう輩ほど力を誇るし、これも直前までそのケがあるとは思っていた。

 だが………。


「(前―――違う、後ろ。狙いは手と足)」
「(なら―――)」


 そうではない。
 勢いよく振り回しているように見せて、その実態は此方の反応を見ているのか。
 どのくらいならば倒さないのか、あるいはどのくらいなら此方を取れるのか。
 実際のところ、余計な直撃など貰えない。非力なのは承知の上、真っ向からの衝突など御免だ。

 ならば―――と。
 空いている左腕を、あの少女が切りかかる直前に上に持ち上げる。
 斬り落とされる直前に、上に展開したままの、先程まで座っていた自分の領域《セカイ》と糸を繋げる。伸縮させて自身を上空に飛ばし、斬り掛かられた刃を躱す―――躱すとは言うが、実際のところは少し掠めた、が正しい。単純な最高速では彼方が上だ。打撃力の意味でも彼方が上だろう。
 肩口に付いた中くらいの切り傷には頓着しない、更に上空を取ったら今度は距離を離す。
 天井を蹴ってザーシャとは反対方向に、そのまま方向転換しながら。今度は、彼女が破壊せずそのままにした壁と、自分が移動用の足場に使った壁の計二つへと意識を向け―――。


 ―――瞬間、それらが文字通りに爆ぜた。


 青白い光の壁がかたちを変え、無数に分解されてそれぞれ刃になる。
 領域《セカイ》は幾らでもカタチを変える。
 自分の内側くらいは自分で弄れると、要はそういう話だ。

 極小単位かつ無数に別たれたそれは、それぞれ下方向と横方向へのベクトルを加えられ、無数のナイフか針のような鋭さを以てザーシャへと強襲を掛ける。上と正面からの十字砲火は、単発威力よりも手数と足止め重視。
 数秒は降り注ぎ、叩き付けて行く二方向からの斉射は弾くにも手間がかかる、防ぎ続けるにも億劫だろう。あるいは飛び越えて来るのも良いが―――それならそれで考慮はする。
 着地した彼女は足元に手を突いて“仕込み”を終えると、その爆撃じみた光刃の雨が降り注ぐ先、つまりザーシャの居る先をじっと見ていた。

 序でに―――“創られた”と述べる彼女だが、それでも初戟は躱した。
 あれが戯れではないなら、要は人間離れしていようが殺せば死ぬということだ。
 どの程度の威力ならば傷が付くのか、どの程度の手数ならば両立できるか。
 こちらも見極める良い機会だろう。

>ザーシャ

4ヶ月前 No.1004

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【大統領官邸/核シェルター/ミラノ】

 獲った。
 確信を持って、振り下ろした武器の先を彼は見ていた。
 叩き付けられる音がする、亡霊の消える音がする。けっこうな大駒の《カード》を使ったのだ、成果が出てくれなければ以前のような綱渡りも辞さない構えではあったが―――上手くは行った。
 呪詛だけならば、ミルグラムのそれは相当なシロモノだ。それぞれは芥のように脆く薄いが、しかし塵も積もれば………なんて言葉があるように、やつのそれは実際にその薄さと脆さを圧倒的な人海戦術でカバー出来る。迂闊に距離を引き剥がして波状攻撃を仕掛けられたならば、ミラノの手札では正直なところ骨が折れるというものだったのだ。

 重力に押し潰されながらも飛んで来る矢が衣服に刺さる。
 入り込む呪詛とダメージに少しばかり顔を顰めながらも、ミルグラムの方へと意識を向けた。

「………チェックだぜ、山羊頭」

 どうも見たところ、攻撃の隙間を狙って、言葉通り一矢報いようとして来たわけだ。
 ………正直、そこだけは見上げた執念だろう。命乞いなんぞするでもない、何かを嘆くでもない。呪い、憎しみ、吠え立てるその感情と態度は純粋なまでにマイナスに偏っている。正しく“おまえなんぞに”という言葉で彩るのが相応しいか。
 これは殺意だ。憎しみだ。目に映る全てを呪った感情だ。
 持てる者が真に受けようものなら、余計彼の神経を逆撫でするような。
 あるいは、彼にとって起死回生の好機になるような………そういう感情だ。
 そしてある意味、酌量の余地がないと断じたミラノに向けるには全くと言っていいほど意味の無い感情だった。彼は重力場を展開しながら、それを消すタイミングを見計らいつつ―――ミルグラムの方へと意識を向ける。

「に、しても―――」
「ああ。お前、ひょっとして“生きたい”だけとかそういうクチ? じゃないよな。
 先に聞いておくけどよ」

 それは、疑問だった。
 素朴な疑問。どちらにせよ、彼がブン殴る条件には合致しているからこその疑問。


「殴られンの、好きでも嫌いでもないんだろ」

「まあ、こりゃ自己防衛でも何でもねえんだろうけど………要はハナ明かしたかったワケだ。
 そこ自体否定はしねーよ。オレもあの連中嫌いだもん」


 だから盗るもん盗ったし、と。
 別に共感でもなんでもない、自業自得の結末を迎えさせようとしたミルグラムに対するそれは、
 接触するでも突き放すでもない言葉だった。

 そう、極論他人の思想や信念など“どうでもいい”のだ。

 持たざる者の少年は、生きることに意識を向けて。
 それ以外のことなど、気にする余地もなく“銀狼”になったのだから。
 彼は成り行きで戦って来たが、人間なんぞそんなものだろうという割り切りは何処かにある。


「―――で、だ。此処からオレが何言いたいかっつーと」


 ただし。

 それとこれとは話が別、と言わんばかりに。彼は処刑人のように斧を向けた。
 何も弁明が無ければ、じゃあそのまま振り下ろすぞと言いたげに。しかもご丁寧に、至近距離に接近するような隙など晒さない―――投擲して叩き殺せるような位置で、彼はミルグラムを見ている。
 言葉の割に、同情も何も一切ない。先程までの言葉を“それはそれとして”で片付ける横暴さ。それで居て、最後に反撃などしようものなら躊躇いなく切り捨てるだろう意図が垣間見えた。


 ・・・
「奪ったんだろ? 顔も知らねーヤツから」

「じゃあ、顔も知らねーヤツから奪われる覚悟くらいしろよな。
 おまえの目つき、そういうツラだ。おまえがさっきから奪ったヤツとなんも変わんないの」


 つまるところ、彼がミルグラム・ゴートを殴って良いと判断した理由はこれだ。
 正確には………先に黒谷平助という男を“殴って良い”と結論した理由も、これだ。


   、・・・・・・・・・・・・・
 彼は、奪わない相手からは奪わない。


 ただしその逆に………何かを奪う相手からは、本当に躊躇うことなく何かを奪う。



 生粋のアナーキストで、生存に意識を傾けた、盗賊王の名を冠するに相応しい男だ。
 それは盗賊の流儀だ。奪うなら、殺すなら、同じことをされる覚悟もする。
 彼にはその弁えがある。その前提があっても、道が少なくとも、そう生きて来たのだ。
 自覚はあるから行動は変えない。
 戦争も似たようなものだろうと―――内心では弁えている。人の心情なんぞそう変えられはしないし、実際のところミラノは万人に手を差し伸べるような輩ではない。ただ彼の中で“奪われる輩”にだけは手を出すだけだ。
 恐らく悪党にカテゴライズされる少年で、
 なおかつ世間知らずに該当するだろう少年だが、しかし。
 彼はきっと、自分の元いた世界ではそうした輩に居場所を作って来た。
 彼は他人の為に手を差し伸べるような男ではない。
 自分の価値観で、結果的に他人へと手を差し伸べる類の、風のような少年だった。

 その上で、そうであっても。

 ………そうした前提のない相手と、彼の視点で判断出来たなら標的だ。
    盗賊王は常識知らずでもあるし、他者への酌量余地が比較的ない方でもあるからだ。

 ミルグラム・ゴートが果たして本当に“そう”なのかは彼のみぞが知るだろう。
 彼は人間の業を嘲笑い、呪い、見下し、蹴落としてきているだけで、奪うという行動は結果だ。

 ただ、そう見えた。
 どんな思想と心情があろうが関係はない。彼は奪い、蹴落とし、押し付けて嘲笑った。
 ………そう見えたから、ミラノはそう言い放つのだ。

 おまえも多分、おまえが奪って来たヤツとなんも変わんないよ―――と。

>ミルグラム・ゴート

4ヶ月前 No.1005

贖罪の山羊 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【大統領官邸/核シェルター/ミルグラム・ゴート】
「っ!」
 殴られるのは好きでも嫌いでもない。
 汚職に染まる議員を出し抜きたかったのか。
 その言葉にミルグラムは苦痛に満ちたけれども、鋭さは決して絶さない表情で睨んでいた。
 確かにここに赴いた理由は自己防衛でもない、自己満足に近い感情でここに来た。
 それに利害の一致で雇われている身だ、穀潰しで終わるわけにはいかないと自ら赴いたのだ。
 話は続く。斧を見せた少年に対して、ミルグラムは相変わらず睨んでいた。
 敵に媚びない、乞わない、隙を見せるわけにはいかないと言わんばかりの気迫に満ちた表情で、山羊特有の目玉を鋭く光らせているとお前は、議員と同じ剥奪者だと言い放たれた。
「……はっ、ははは。このガキ。俺はとっくに『奪われてんだよ』だからこそ何千年も『奪ってきた』し、『奪われた』奴らの王になったんだよ。ああ゙っ……!」
 狂笑、狂笑。世の不条理により普通の山羊として生きる権利を奪われた。
 魔なる者へと変貌した時、自身と同じ目に遇わせてやる。
 だから力を持たない同類を統べる者として、自分は王と表現した。
 自分が今までしてきた事は正当なる復讐だと、数千年の間。大粛清の仕掛人、暴君の黒衣役、独裁者の育成者として突き動かされて来た。
 最期まで抵抗してやると立ち上がる物のやはり、重力の鎖には解き放たれない。
「なんで俺なんだよってな」
 そう端的に自分が抱いた感情を漏らす。
 これで分かったか、自分は人間達の和解なんて一生こない、態度は軟化する気はさらさらないという意思表示。
 それで殺されるなら悔いはない、人間に飼い慣らされる方が敗北よりも屈辱だと。
 殺すなら殺せと、贖罪の山羊は少年に屈せずただ戦意を灯した瞳でそう語ってた。
>ミラノ

4ヶ月前 No.1006

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【時空防衛連盟本部/通路/キラー・テンタクラー】

「ならば私よりも、あんな顔も合わせたことが無い奴との友情を優先するというのかお前は!? 初めて会えてご満悦、その過程で私が消えても良いと語るか!!」

シエンタの言葉に対してキラーが激昂する、本来彼はそれっぽく怒ったりといった感情表現は豊かなほうだが、これほどシエンタに対して剥き出しの怒りをぶつけるのは極めて珍しい事だ。
と言うのも彼自身、シエンタの事はよく理解した上で接しており、どんなことを言われようとも、彼はそれが当然と言った風に受け止める……だからシエンタから"姉"としての役割を少しだけ求められたのだろう、そんな包容力も彼にはあった。
しかし、自分が削除される、と言う恐怖心に駆られたキラーは、冷静さを失い、シエンタは敵であるショパンを倒さない、つまりは和解するつもりだと結論付けて、彼らと仲良くするためには、その過程で自分が削除されても良いと考えているに違いないと錯乱していた。

そして、そんな憶測は次のシエンタの行動と言動で確信めいた物を持たせてしまう。
こちらの攻撃を、敵を庇った、そして自分をポンコツ呼ばわり。 そしてその背後で準備される敵の攻撃。

「ひぃっ……! その力は、そうか、シエンタ、お前は、最初からこのつもりで私を……あんな事を。 デコイシステム! ランダムテレポーテーション!!」

この場には複数の彼の子機とも言えるドローンウィルスが展開されている、そのため、敵の攻撃準備をよく観察することが出来た。
そのため、シエンタがネットの友人だと言ったあのショパンという者が準備している攻撃が、コンピューターウィルス殲滅に特化した攻撃であると言う事は、高度な演算、解析能力を持ち合わせるキラーにはすぐに分かった。
キラーは恐ろしい想像をしてしまう、まさか、今までの全てが、自分を完全に滅するための物だったならば、と。

恐ろしい、怖い、もう嫌だ。 そんな言葉がキラーの中に羅列される、妄想の中とはいえ、信じきっていたシエンタがあちらに寝返り、そして、まるで計ったかのように、自らを滅ぼすことに特化した攻撃を相手が準備していた事、これはキラーを酷く恐れさせた。

とにかく当たる訳には行かないと、キラーはドローンに指令を下し、全ての機体を自分とまったく同じ姿に化けさせる。 さらに追加で、ランダムで他の固体と位置を入れ替える機能を発動させて、五線譜の輪より逃れ、その上でさらに敵を観測する。
本気だ、本気で奴らは自分を滅ぼす気なのだ、そう思ったその時だった。

「消し炭にしてやる裏切り者――」

"「もうやめよう!こんなの続けたって、誰も得をしないよ!」"

キラーが、怨嗟の叫びをあげようとしたその時、自分、正確には既にドローンと位置が入れ替わっているのだが、そのドローンと相手の間にあの女が割って入ったのだ。
だったらどうした、奴らは自分の親友を偽ってまで自分を滅ぼそうとしているのだ、そんな猿芝居に今更だまされるものか、と、キラーは地上に降下して、敵の認識外から攻撃を加えようとする、が。

続けて放たれる「しーの友達」と言う言葉に、さらに心を揺らされる、だが、だが、そんなものは嘘だ。

「煩い黙っていろ! 貴様とシエンタは、いや、そこの男とシエンタも、友人なのは事実だろうよ! だが、私と貴様は友人でもなんでもないのだ、敵だ! 敵の言う事など信じられるか、私を消そうとする敵など、ここで相打ちになろうとも皆殺しにしてやる!! ファイナルフォーメーション! 連結式対消滅砲!!」

喋っていなければ、他のドローンと区別が付かず、相手の狙いから外れられたと言うのに、キラーはマシュマロの言葉に心を揺らされ、ついには叫んでしまった。
その中で、あくまで自分と他の者たちは友人ですらない、それを信じられる物かと、ドローンに最も強力な攻撃命令を下す。

すると、先ほどまでキラーに化けていたドローンが元の姿に戻ったかと思うと、キラーが腕を変形させた砲身に次々に同化して、巨大な大砲を作り上げた。
さらに、キラーは追加のドローンを次々と射出して、破壊範囲を広げるべく、ドローンたちに無茶苦茶に"転移ゲート"を形成させる。 ここで対消滅砲と呼ばれる物を放てば、ここだけではなく、ゲートで繋がった場所にすら破壊が及ぶ、そういった魂胆だ。

もちろん、それに使う電力は莫大で、キラーはハッキングによってこの基地から電力を急速に吸い上げていて、やっとこの砲を維持している。

その砲のチャージが開始し、発射される、そう思われたが。

「撃つぞ……撃つぞ。 ――こ、来いよ、その瞬間貴様らは吹き飛ぶ!!」

皆殺し、彼が言った言葉。 だが、そのキラーから漏れている感情は、殺意でもなければ怒りでもなく「恐怖」だった。
友人に捨てられたくない、友人を撃ちたくない、折角得た"自分"を消されたくない、そういったもの。

きっと彼はトリガーを引けないだろう、絶対に。
シエンタとの付き合いは、殺戮ウィルスであるキラーには長すぎて、マシュマロの言葉は、人格を持ち、臆病で人を信じるキラーにとって優しすぎたのだ。

>シエンタ・カムリ ショパン マシュマロ・ヴァンディール

4ヶ月前 No.1007

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_GwQ

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ギルバート・トムフール】

明らかに戦闘慣れしていない様子の少女。更にいえば、彼女は何か信念があって戦場に立っている、などという訳ではなく、単純に命令に従っているだけのようだ。
衣食住を保証する代わりに、作戦への参加を強制されているというところだろうか。なるほど、戦闘が前提となっている組織においては、ありがちな契約だろう。
ルーシャは自分が人間に作られた存在であり、元々は蜘蛛であったことを話す。ギルバートはその言葉を聞いて、彼女がすぐに、彼の最も嫌っている事件の被害者であることを悟った。
あんな人間のエゴによって多くの虫達が人形に改造され、飽きればゴミのように捨てられた。計画を立ち上げた者には申し訳ないが、最悪の所業であるといわざるを得ない。
これは恐らく、氷山の一角だろう。彼女以外にも、人間の捨てられ野生化、あるいは悪しき者に拾われて兵器として扱われている元ペットは、大勢いるはずだ。
そうした者達の全てを救うことはギルバートにも出来ないが、少なくとも今目の前にいる、ルーシャへ手を差し伸べることは出来る。ここですべきは戦闘ではなく対話であるのだということを、彼は深く実感した。

「見た目が嫌悪感を煽る、か。俺はそうは思わん」

危険性と腕力については、まだ確認していないので不確実なことは言えない。しかし、見た目に関しては、何も悪いところはないというのが、ギルバートの意見だ。
その認識は、彼女が蜘蛛の足を生やしたところを見ても変わらない。決して虫好きだから、という理由ではなく、単純にこれを嫌う必要が見当たらなかった。
無論、虫嫌いの人間からすれば恐怖の対象であるかも知れないが、ルーシャの出自をろくに知りもせずにそのような言葉を投げかける者は、悪魔か何かだと、彼は思う。
誰からも受け入れられないという過去の記憶があったからこそ、彼女は歴史是正機構の甘い言葉に乗ってしまったのだろう。そして今彼女は、組織の都合のいいように使い捨てられようとしている。
ライドウの言う通り、敵はルーシャの命と引き換えに大量虐殺を実現するつもりでいたに違いない。駒でしかない者の存在価値は、その程度でしかないと突き付けるかの如く。

「お前には幸せを掴む権利がある。もし、お前自身がそれを望むのなら、俺はその手助けをしてやれる」

射出された糸を生成した重力刃で振り払いながら、ギルバートは語り掛ける。優しく前に出された左手。これを彼女が取る決意をしてくれれば、その瞬間戦いは終わるだろう。
時空防衛連盟は、歴史是正機構とは違う。ここには、今の社会においては世界政府の方針によって爪弾きにされている、魔族の者達も多く勤務しているのだ。
どのような人物であろうと、どのような過去を持っていようと、隔たりなく活躍の機会が与えられる場所。それが、時空防衛連盟。だから、ルーシャが最初の一歩を踏み出す勇気さえ持ってくれれば……あとは自然と、幸運が訪れるはずだ。

>ルーシャ・コバルト、17代目葛葉ライドウ

4ヶ月前 No.1008

ピアノの詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【因みに。チョッちゃんの声優さんは鳥海浩輔】

【時空防衛連盟本部/通路/ショパン】

 赤い滝を流しつつ体を震わせながら立ち上がるショパン。
 ムジークを解析できるとは、今初めて知ったと一瞬潤んだ目はぱちくりとするが直ぐに思い出された暗い記憶に囚われてしまう。
 ベットの上で喀血する少女と鷲鼻の美少年は静かに見下ろしている映像と、喪服を纏った父母と姉達と墓場で見送る映像。
 キラーを妹の命を奪った死病と認識してしまったショパンは悲しみと恐怖のあまり錯乱していた。
 キラーを模したドローンが展開されて、攻撃は躱された。
 音の激流が終わったあと今度は静かな旋律が展開に合わせて、タクトを振り下ろさんとした時。
 悲痛な叫びと氷の粒子が飛び散ったかと思うと、ゴスロリ少女が間に入りショパンの端正な顔立ちは悲哀から憤怒に変わる。
「ーーーーっ!」
 白い歯を食い縛り、高い声で唸るショパン。
 3人のうちショパンの思想はキラーに近かった。
 自分に害すれば友達だろうとも関係ない。
 音羽館の同居人に苛立ち、同居人の騒動を自分に見立てたキャラが諌めるという漫画を描き上げたり、静かな環境を望んでいたと思っていた友達に対して、その原因であるネット友達の動画を荒らして炎上を仕掛けた等と、他者に対しては非常にシビアな短所をここで露にしていた。
 それを抜きにしても、ショパンは否定していた。
 敵に屈せれば自身の存在その物が消滅する。
 クラシカロイドのショパンとしてでも敵対者だという発言に同感していたのだ。
 重い前科を持った者はどう周囲を説得し、共生するのだろうか。
 人格の書き換えを代償に住ませるべきだという声もあるだろう。
 自分が自分でなくなるのも嫌だから、歴史改変には反対していた。
 どんぐり眼は怒りを宿して、ゴスロリ少女をシエンタの端末へと閉じ込めようとするが。

 "そんなの私が許さないよ…しーの友達がいなくなるなんて嫌だから!"

「……!」
 その言葉でショパンははっと我に返りぴたりと演奏とタクトを止めた。
 そうだ。彼女はもう一度シエンタと友達になる為に戦っていた。
 乞うてもできない自分に対して、そうできる彼女が羨ましいと思ったのは他の誰でもないショパンだろう。
 そんな彼女の切なる願いを、かつて抱いた虚しさと深い悲しみの感情で潰えるつもりか。
「でも……どうすれば……」
 自分がやろうとしていた事はショパンなりに考えた途端、すうっと昂った感情は風船のように萎み、荒ぶっていた精神が鎮まる。
 そしてキラーをどうやってユーフォリア達を説得させるのかという意味を込めての台詞を吐き、体はだらんと力が抜けて再び膝を屈するとキラーの怒声を浴びて巨大な大砲に変形し、ぽかんとその様子を見ていた。
 精神的余裕があれば「変形きたー!」と少し興奮するだろうが、今はそれすらも沸かなかった。
 怒声を黙って聞いていて、分かった事がある。
 キラーは恐怖しているのだ、よく知らない人が怖い、人間なんて信じないと恐怖していたかつての自分と同じ恐怖を。
 そう考えれば、もしかしたら話せば心が通じ合うのかも知れない。
 かつて友達だと思っていたドヴォルザークと同じ様に。
 知らない人に怯えて、閉じ籠もってた自分を照らし合わせながら、ゆらりと立ち上がると、コツコツとブーツの音を立てながら体をふらつかせながらキラーに向かって歩く。
「さっきは攻撃してごめん……謝るよ」
 まずは消滅させようとした事に謝罪をし、紫の光の粒子を拡散しながら、ムジーク衣装から白いライダースーツへと変身を解く。
 もう攻撃をしないという意思表明である。
 苦しい、痛い。けど耐えなければ銃口を納めてくれない。
 息を荒くしながらも静かに進む。
「ここから先は……信じてもらえないかも知れないけど」
 恥じらいを感じつつも柔らかな声色でそう前置きをすると、憂い気な瞳に生気が宿り真っ直ぐとキラーを見た。
「僕の名前はフレデリック・ショパン。
 生まれた年は1810年か1809年、死んだ年は1849年。みんなから『ピアノの詩人』って呼ばれている。それが……僕だよ」
 自分の身を明かしたのは上層部以来だ。
 もちろん本人だと名乗るショパンを上層部は怪しんだ。
 ここでいう4000年以上前に存在した人物が、なぜ生きているのかと上層部はざわついていた。
 コツンコツン。白いブーツは赤い轍を踏みつつ、ショパンは苦しそうに近寄っていく。
「僕がなんでここにいるのか……それは」
 ぴたりとキラーと距離を取った状態で止まる。
 これ以上近づけば引き金を引く、自分もそうだ。知らない人間を見ればダンボールで遮断したように。
 だから怯えさせないよう、近づくのをやめた。
「……こちらとあちらの私が消滅して、クラシカロイドとして"造られていなくとも"。私は……あちらと違わないこちらの私と私の音楽が消滅するのは黙って見過ごせなかった」
 表情は真剣なものへと変わり、儚げで柔らかな声色と一変して、低く渋い声色で先程よりも詳しく、動機を語る。
 クラシカロイドと名乗っても上層部はただの人間にしか見えないと言われた事があった。
 死者だと思い込み、クラシカロイドという胡散臭い存在と名乗るショパンは、頭がおかしい存在として一部の人間に扱われていた。
 だが人間嫌いで極度の人見知りのショパンからすれば、あまりショックではなかった。
 恐らく3人もそう思うのだろう、だから信じてもらえないと自信なさげな言葉を選んでしまったから。
 ここで一旦倒れそうになるが、ショパンは踏ん張ると話を続ける。
「だから……その……僕と君は……自分が消えちゃうのがこわい……だけだよね?」
 声色は再び柔らかく儚げな物へと変わると、たどたどしく言の葉を紡ぎ終えると、がくりと体は俯きはじめる。
 床に落ちる赤い花、まるであの時のような感覚だと意識が朧気になっていく。
 自分ができることはやった、後はと限界が来たのかふわりとショパンは床に伏し、少しずつ意識が失いつつあった。
>マシュマロ・ヴァンディール シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー

4ヶ月前 No.1009

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_zuX

【大統領官邸/正門/ストラーヴ】


避けられた、そう認識すると同時に追撃をかけようと再び紫電を迸らせる。が、空中で隊長は氷の弾丸を二発放った。彼女に向かず見当違いな方へ飛ぶそれは本来であれば気にする必要はない物だ、だが彼女は見て分かるほどに狼狽した。
そう、狙いはエステル。追撃を取りやめ、そちらへ駆けようとするも。だが銃弾に追いつくほどの速度へ至るには少し紫電の蓄積が足らなかった、間に合わない。だが彼女の心配は杞憂でしかなかった、その氷の魔弾は何も貫かなかった。
エステルは容易く避けた、それを視界に捉えれば彼女は安堵の息を吐く。もし、あれでエステルが死んでしまえばどうすればいいのか分からなくなってしまう。漸く見つけた愛してくれた存在が、いなくなってしまう。
その恐怖は彼女が隊長へ向ける獲物に力を入れるには十分であった、視線だけで射殺すような瞳を隊長に向ける。何故、エステルを狙った。何故、刃を向けた自分にその銃口を向けないのか。
果てにはエステルと引き離すような位置取りを取り始めている、そんなにも邪魔をしたいのか。歯軋りの音が響く、ただ愛されたい事がそこまで許されない事なのか。盲目の獣、そこには愛が何かなど知らぬ少女しかいない。

「―――上辺だからって悪いの!?エステルは私を受け入れてくれた、身体の隅々まで愛してくれた!それが愛でしょ!?」

絶叫に呼応するように剣槍からは紫電が迸る、周囲を焼く稲光は見ようによっては紅にも蒼にも映る。それが意味するところは彼女の出力を超えてまで剣槍を扱っている、紫電に纏めるに至らないほどの雷撃。
自身すら灼く自壊の稲妻、本来の彼女であればそれほどの無茶は絶対にしないだろう。だが、愛している存在へ脅威を与えた存在がいることへの恐怖で限界の枷を容易く外してしまった。失いたくない、愛されていたい、あるのはその心だけ。
その心は確かに真実だろう、愛するものを失いたくないと思うのは当然の事。そうだとも、彼女の心は正しい。だがその愛を正しいとは言い切れない、無論全てが間違っているとも言い切れない。
しかし、求めることが愛だろうか?肉欲の繋がりだけが愛だろうか?本当の愛、それを正確に語らえる人間など殆ど存在しないだろう。それでも彼女の語る愛が全てではない、そう教えられる存在はいる。例えば、目の前に。

「"あんなもの"だなんて言わないでよ!あれが私が、私がエステルから貰った愛なの!それ以外の愛なんて私は知らない―――」

―――本当に?そんな疑問が、ふと欲望に蕩けた思考に冷たく染み渡る。知っているのはエステルの愛だけ?本当に?彼女が周囲を遠ざけた理由は何のため?守りたかった過去をそう願った理由は?
疑問が脳内を埋め尽くす、隊長の言う愛とエステルがくれた愛は違う。それは理解している、ではあの時に抱いたあれはどちらに属していた?熱く火照る劣情は冷やされた思考に熱を持たせる、響いたのは愛する存在の声。
負けては駄目と、応援する愛するエステルの姿が目に映る。そうだ、何を迷っていたのだと。愛するエステルの為に頑張るのだ、そうして頑張ればまた沢山愛して貰える。冷たさより、温みを彼女はこの時は選択した。

「―――ッ!大丈夫、エステル!私頑張るから!」

言い淀んだ間を取り繕う様に、元気を装う。だが確実に、冷えた疑問は残り続ける。欲しかった愛は何なのか、知っていたはずの愛は何だったのか、答えは出ない。だから今だけは、肉欲に溺れることにした。
肉体の負荷を無視した雷撃の放出、真の稲妻に見紛うほどの速度で宙へと舞い踊れば穂先を隊長へと定める。一息、僅かな間が空けば空に咲くは紅に蒼に彩られた紫の大輪。空に咲く花の如き電撃は余波に過ぎず。
突進とは速度と重量によっておよそ威力が定まる、彼女自身の重量など高が知れているが、剣槍と重力を加えればそれだけで先に吹き飛んだトラック程度両断されるだろう。では、そこに絶大な推進力を以ってした速度を加えればどうなるか?
答えは単純だ、直撃すれば跡形も残らぬ威力を得る。そして避けようと大地にそれだけの威力が衝突すればただではすまない、勿論エステルも巻き込みかねないのだが今の彼女は少し冷静ではない。
愛する存在への影響、次の一手への余力、自身の肉体への負荷、それら全てを考慮せず放たれている。強力無比な一撃には違いないが、明確な動揺を孕んでいることを彼女をよく知るものがいれば理解できるだろう。
迷い、恐怖、あらゆる感情が鬩ぎ合う彼女の今の行動原理はエステルの為でしかない。だがそれは隙間だらけの城壁だ、突けば崩れ押しても崩れる。ただ、在るだけの壁。愛で満たされていたその壁は僅かな疑問で変貌した。
果たしてそれで崩れる愛とは、如何なものだろうか?

>>エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール フォッサ・セントライト

4ヶ月前 No.1010

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_zuX

【大統領官邸/大統領執務室/イルグナー・シュタウンハウゼン】


「この程度、大怪我でも何でもないデスよ。ただ腕が一本使えなくなっただけデスよ?ボクには腕はもう一本あります、退く理由には程遠いデスね。」

関節が一つ増えたように見える左腕、折れて僅かに時間が経ったことで内出血による膨張が始まる。華奢であった腕など見る影もなく、青く腫れた患部は控えめに見ても治療が必要なレベルだろう。無論、多大な痛みを感じているだろう。
だがイルグナーは眉一つ動かさず使えなくなっただけと称する、重力で垂れ下がりながら揺れ動く腕を見せるようにしながら。目的の為には銃か異能が使用出来れば問題はない、目的に支障が出るのは両腕が使えなくなってからだ。
だから、止まる理由はない。腐敗の一掃に片腕が使えないと言う薄っぺらい障害が一つ増えただけだ、銃が使えれば汚職官僚は殺せよう、異能が使えればもっと楽に始末できよう。ほら、何の問題もない。
創られた門から出でた騎士は半数を投擲された斧で鉄屑へと粉砕され、残る半数はミシャールの剛腕により物言わぬ屍へと化した。地へと崩れる騎士たちは黒い粒子へ身体を変えながら、何の痕跡も残さず消え失せる。
イルグナーが放った三発の銃弾も、投擲された斧の軌道上で二発を叩き割り、残る一発は騎士を粉砕した腕をそのまま振るい砕く。破片が足へと刺さったが身体を機械へ変えたミシャールには傷の内にも入らない。
反射神経、身体能力、常人など比べ物にならないそれは強者。イルグナーがどれだけ努力しようと届かぬ頂であり、確かに銃一つで埋められるものではない。だがイルグナーはこう言った、埋めるのはあくまで自身だと。
人の意志、それは時に大きな力を引き起こす。しかし本来は無意識な枷により抑えられる、身体が耐えられないからだ。だがその枷を意図的に外されたのが今の彼女であるとしたならば、決して手の届かぬ差であっても飛び立てば届かぬ道理はない。

「地獄?可笑しなことを言うのデスね、私は目的は夢であると思いますよ?言うなれば輝かしい空へ飛び立つだけデス、ただ―――」

即答、考える余地が僅かに入る隙間すらなかった。斧を交差させ、通常の退路を塞ぐミシャールを眺めながら右腕の銃は躊躇わず引き金を引く。思考はただ、腐敗を一掃するだけの為に。
放たれた銃弾は三発、それと同時にミシャールへと駆けだす。その距離の合間に、片手で空の弾倉を床へと転がし、腿に着いたホルスターから新たな弾倉を取り出し、装填する。何故、目の前でやったのか。それは目を引く為、銃での射撃から何かあるのではと思わせる為。
そこに繋げるはイルグナーではない、ミシャールの死角を突く様に創られた三つの門。そこから出現する獣の姿をした機械、それらは背後、左後方下、右後方上の三方向から牙を剥く。そしてこの機械は雷を受ければそのまま放電を行う、ミシャールの斧を見てから門を創り出した天敵。
斧で両断されるだろうが襲い掛かる数は三、二つの斧では間に合わず、欲を出して一振りで多く仕留めようとすれば迫るイルグナーの対処は遅れるだろう。それを見越した上での接近、そして僅かにイルグナーを討つ事に迷いがあると判断したからでもあった。

「―――そこに至る為に何があろうと、止まるつもりがないだけデスよ。」

そのイルグナーが繰り出すのは、折れた左腕を鞭のようにして振るう打撃。機械の身体であるミシャールには人間の力ではどれだけ多く見積もろうとも、表面を歪ませる程度だろう。だが、何度も繰り返せばどうなる?
歪ませ続ければ何時かは折れよう、殴れば折れるならば折れたものを使えばいい、何度でも、何度でも、振るい続ければ機械だろうと破壊できよう。そして今のイルグナーの腕力は、華奢な見た目からは想像できないほどの剛力、防がねば少なくとも大きな衝撃は受けよう。
捨て身、そうとも取れるだろう。本来のイルグナーであれば既にこの状況にない事は知己であれば想像に容易い、だから知識があれば誰が動いてこうしたかも予想できよう。だが、それが分かったところで今どうすることもできないのだが。
侵蝕する影は肩口を通り越し首を黒く染める、そこに留まらず顔面の半分も立体感の捉えられぬ異形へと変貌していた。瞳はただの赤い光源と化している、服に隠れた右脚も影になっているだろう。今まで最低限にしか使わぬ能力を全力で使えばこうなると、知っていたから抑えていたのだ。
だがそれすらも取り払い、ただ腐敗の排除へと文字通り全てを費やす。大切なハウゼン運輸も、守り通してきた立場も、何もかも薪にして太陽へ飛び立つ。その輝かしい光を求めたいがために、夢へと向かうのだ。

>>ミシャール・ルクセン

4ヶ月前 No.1011

Futo・Volde @nonoji2002 ★gLBoRrfVfo_sgc

【ディンカ/海底洞窟入口/アーチ上/魔獣ヴァグネル】

“人間”の力は侮れない。火事場の馬鹿力という言葉があるように、極限状態に置かれた人間は相応の能力の上限を超えた能力が発揮される場合がある。

魔獣に痛手を負わせながらも、もがくアンリエットもまたその“極限状態”と言えるだろう。彼女の原動力はその戦意もさることながら、“プライド”ではないだろうか。彼女なりの彼女が持つ、自尊心。
矢を受け、魔獣の魔術による追加攻撃で体はボロボロ。だが、それは気を抜いていた魔獣もまた同じ。アンリエットを見下すあまり、彼女からの攻撃を生身で受けたのだから。

「お前こそ我の何がわかるというのだ。これでケリを付けてやる!」

きっとアンリエットもまた、ヴァグネルと同じく虐げられた経験があるのだろう。
人は人ならざる者だけでなく、時に同じ民族、同じ人間通しでも差別し、忌み嫌うのだ。それは弱さの裏返しとも言えるだろうが、一番の問題は、彼らはいつだって“自分が一番偉い”のだと勘違いするところだ。自分たちが一番正しいのだと。

彼女が魔獣の言葉で覚醒したように、魔獣もまた“人ではない”だけで差別に苦しんできた過去を知らない彼女の無知さに対して、怒りにも憎しみにも近い感情を抱く。
それを言葉ではなく、力で示すように彼はユリエルズ・エッジの柄をしっかりと握りしめ、膝立ちから一転、立ち上がれば剣先を稲妻の如く、火球さえも貫き、此方に迫ろうとするアンリエットに向けて、タイミングを計って大きく剣を振りかざす――。

「ぐあっ!!」

振りかざした際の感触などわからない。ユリエルズ・エッジが彼女を裂いたのかさえも。
勝敗の差は“志”の差だろうか。寸前に顔に来るとわかった時点で、咄嗟に体を背けたが、時は既に遅し。顔面への直撃こそ免れたが、代わりに胸部に強い衝撃を受ける。雷にも撃たれるような、その感覚。彼が雷に打たれた経験などないが、おそらく雷に打たれると言うのはこういうことを言うのだろう。

そのまま大きく後方へと吹き飛ばされ、どさりと音を立てながら、地面に倒れ込む魔獣。背中を強く打ちつけたものの、かろうじて意識は保っている。
そして不幸中の幸いとでも言うべきなのだろうか、骨は折れていないようだ。元々強靭な優れた肉体と、彼に合わせて作った甲冑のおかげ、とでもいうべきだろうか。
だが、もう、彼女に対してもう一度牙を立てようと言う気力はもうない。胸を大きく膨らませたり、へこませたりしながら、ぜーはーと大きく息を吸ったり吐いたりしながら、自身を打ち破ったアンリエットの方へと首を回す。

「ふん……降参だ。お前のような人間もおるのだな。……さあ、先へ進むも勝手。向こうもそろそろ決着が着く頃だろう」

降参は屈辱的だ。だが、アンリエットに対してはあまり感じない気がするのは、それだけ“強い者”と戦えたからこそだろうか。それとも、自分に近い何かを感じたからなのか。

ヴァグネルはそれを告げるや否や、相手の返答も待たずして元の鉄製の剣に戻ったユリエルズ・エッジを握ると共に、それを杖代わりにして起き上がり、一度アンリエットの姿を目に焼き付けるように、じっと見つめてから、それ以上は何も言わずに、そのまま大きく跳躍してその場を離れて行く。
あれだけの傷を負いながら、引き上げられるだけの体力と治癒力を持っているのは、紛れもない、彼が“魔獣”である証拠だろう。

>アンリエット・エクレール


【これにて撤退させます、レス返しに時間がかかって迷惑もかけましたが、お相手ありがとうございました】

4ヶ月前 No.1012

中二病でも人付き合いが分からない @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_GwQ

【時空防衛連盟本部/通路/シエンタ・カムリ】

己を護るために身を挺して傷を負い、地面に倒れ伏したシエンタを見て、ショパンは何を思ったのだろう。悲痛な声と共に、戦闘中であるということすらも忘れて駆け寄ってくる彼の姿は、見ていて痛々しかった。
最良の結末は和解だが、状況はそれを許さない方向へと傾きつつある。涙をこぼしながら、攻撃を放とうとするショパン。それはキラーに対して特攻となるものであった。
彼を庇った時点で、このような展開となるのは予想出来ていたことだ。だが、シエンタはこれっぽっちも嬉しくなかった。あの攻撃が当たったら、本当にキラーは消えてなくなってしまうだろう。
ポンコツ呼ばわりは、確かにした。しかし、それはいつもからしょっちゅうしている喧嘩の延長線のようなものであり、何もキラーに消えて欲しいとまでは願っていない。
とはいえ、敵であるはずのショパンに手を出すことを拒み、あまつさえは攻撃を仕掛けた彼に暴言を吐いているようでは、本気でそう思っていると勘違いされても仕方がないだろう。

いても立ってもいられなくなったのか、マシュマロが"もうやめよう"と、両陣営の間に割って入る。彼女の言う通り、これを続けたところで、誰も得はしないだろう。
だが、完全に冷静さを失っているキラーは、なおも止まらない。マシュマロの言葉に反応したことにより、ドローンを分裂させた意味がなくなったのは幸いだったが。
少なくとも、この状況で二人が望んでいるのが決着ではなく、和解だということは理解した。しかし、発端を作ってしまった自分に、それが出来るのだろうか?
あんなことを言っておいていきなり態度を変えたところで、キラーからは全くもって信用されないだろうし、余計に敵意を抱かせるだけだろう。一体、どうすればいい?
尻餅をついたまま、何をすればよいかを模索し続けるシエンタ。そんな最中、彼女の視界に、今まさに攻撃を放とうとしているキラーの姿が飛び込んできた。
一見脅しのようにも取れる口調だが、長い時間彼と接してきたシエンタにはすぐに分かった。むしろ恐怖を抱いているのはキラーの方で、彼が引き金を引くことを躊躇っている、と。
ならば答えは一つとばかりに、彼女は立ち上がる。そのまま怒ったような足取りで、キラーの眼前へ。撃たれるかも知れない、と他の二人は思うかも知れないが、それはあり得ない。彼は引き金を引けない。

「キラー、あるいはアイシス。ボクをその手で殺せるなら、やってみるんだ。さあ、来たよ。その瞬間、ボク達は吹き飛ぶんだろう! ならその言葉通りにしてみせるんだ!」

以前までのシエンタが、このような行動を取ることなど想像出来ただろうか。彼女は二人の友人と、一人のこれから友人になるであろう少女を護るため、自らを危険に曝した。
全員生還を果たすための方法は、実質的にこれしか残されていない。もし、キラーが恐怖に打ち勝って引き金を引いたのなら計算が狂うが、それは出来ないと断じている。
何故なら、自分は彼の"親友"であり"妹"であり……誰よりもよく、彼のことを理解しているから。真っ直ぐな視線で、キラーを見据えるシエンタ。もう彼女は、人との関わりを恐れる引き籠もりなどではない。

>キラー・テンタクラー、マシュマロ・ヴァンディール、ショパン

4ヶ月前 No.1013

失敗作 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【本当は一戦交えようと思っていたけどこれ断って戦闘開始させる理由がルーシャに無いな、ってことで方針転換を】

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ルーシャ・コバルト】

ルーシャは相変わらずガタガタと震えていた、もちろんそれは寒さから来る物ではなく、二人と……一体に対する恐怖である。
彼女にとっては、見た目からして強そうと判断できるライドウとギルバートだけではなく、明らかに自分より弱そうなモコイすらも恐怖の対象に入る、それが似たような見た目だけは弱そうなセキュリティビットに追い回されたからか、それとも、人形や小さな虫を使って人間に誘き寄せられた経験故か、とにかく、信頼とは程遠い状態であるのは確かだった。

ルーシャに対して、ライドウの掛けた言葉は、彼女目線からもある程度納得の行く物ではあった。 "鉄砲玉"、それはまさしく自分に相応しい言葉なのだろう、今まで一度も部下の一人もつけて貰った事はないし、共闘らしい共闘もしたことが無い、ルーシャは常に単独運用されており、それは『何時でも切り捨てられる戦力だから』と言うのは彼女から見ても明白な物だった。

"でも、それでも、居場所があそこしかないから"。
そのような気持ちでルーシャは糸を放った、放ったが、糸は一瞬の内に焼かれ、それを突破した一部も、ギルバートの刃で引き裂かれ、無駄な行動に終わった。

さらにライドウはガス兵器が起動から何分で発動するか聞かされたか? と問いかけてくる、それに対してルーシャは咄嗟に口を開いた。

「聞かされて、無いです」

ライドウの考えは間違いなく当たっているのだろう、ガタガタとルーシャの手が震える、今すぐにでも捨ててしまいたい、でも、捨ててしまったらもう戻れない、と。
だが、馬鹿正直に起動しても自分は死ぬ、万全な準備を整えてから起動して、何とか逃げ出しても、是正機構の人たちはこう思うだろう「なぜ戻ってきてしまったのか」と。

愛されたい、人間と仲良くするために蜘蛛の本分も忘れさせられて、身体までおかしくさせられたのに、その上で腫れ物扱いされるのはもう嫌だった。
そして、彼は選択の時だと断言して、こちらに手を差し伸べた。 それでも、ルーシャはガクガクとするだけで、あまり良い反応をしているとは言えないだろう。

しかし、その時に聞こえてきたのがギルバートの声だ。

「えっ……」

珍しいことだった、自分の見た目が嫌悪感を煽る、そうは思わないと言った人と会ったのは。 少なくとも、蜘蛛の足を晒してからもそう言ってくれる人間は、ルーシャにとって少なかった。
それでも、ルーシャは幾度となくそのような言葉を掛けられ、そして裏切られた事を思い出し、咄嗟に拒絶の言葉を口にしようとしたが、その時彼女は思い出した、古代で自分と戦った二人の相手のことを。 彼らも、自分を受け入れようとしてくれていた、もしかしたら、あの言葉に偽りは無くて、自分は……こういう機会を、ずっと自分から拒んでいたのかもしれない、と。

なら、もう一度だけ……そうしてルーシャは両手を差し伸べられた二人の手に伸ばそうとした、だがその時、彼女はさっと手を引っ込めてしまった。

「あぁぁぁっ、やっぱり駄目です。 私分かってます、そういう事を言ってくれるのは異世界の方ぐらいですよね、私は、貴方たちは信じます、でも、もし帰還の時が来たら、私は一人じゃないですか、だから、だから駄目です」

……彼女は錯乱していて、酷い勘違いをしていた、さらに言うならば、世間知らずがその勘違いに拍車を掛けていた。
確かに、ライドウに関しては異世界人、幾ら彼の説得がルーシャにとって魅力的で、彼女を説き伏せて、手を取るまでの道筋を開いたと言っても、彼女からすればいつか帰ってしまう、と言うのは事実かもしれない。 だが……ギルバートは、別に異世界人でも何でもないのだ。 それこそ、居ようと思えば、ずっと彼女の傍に居れる、それにルーシャは気づいておらず、拒絶、とは行かなく、攻撃もしてこないが、駄目です、とだけ叫んだ。

>17代目葛葉ライドウ ギルバート・トムフール

4ヶ月前 No.1014

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 決着か――バビロンの撃ち放った迅雷、千兆ボルトの神の鉄槌はしかしシフォンが展開する氷壁により弾き返される。
 実に複雑<カラフル>な戦法だ。素晴らしい、土壇場でそこまで思いつき覚醒させ続けるその思考回路が。
 世界が赤熱する。収束する威力の雄叫びは、燃え上がる電子を崩壊させ原子レベルに還していく。強烈なプラズマ現象。
 しかし柔良く剛を征する二重のシフォンの壁が彼女に着弾する衝撃ごと逸らし、何もない世界へと弾き返してゆく。

 対象にレオンハルトは覚醒してみせた。バビロンの期待通り――覚醒に対して覚醒で応えた。
 魂の深奥から引きずり出した力が、大爆発の威力を大幅に底上げし……相殺した。
 ぶつかり合う超新星と超新星。輝く熱量の光は、もはや立っているだけで身を焼き滅ぼすほど。

 両者共に一歩も譲ることはない。
 だが、試合の是非はともかく……勝負の決着はすぐそこまで来ていた。

 想いを轟かせありったけの魔力を振り絞り――シフォンが形成するは虹の刃。
 極大の一刀。レオンハルトごと、バビロンを両断すべく構えられ振り降ろされる。
 五大属性と元素を一度に織り込んだ刃には何物も阻むことを許されない。
 魔術属性におけるその全てを束ねるということは、基本の埒外の属性を優位に切り飛ばす――。

        ・・・・・・・・・・・・・・・
 ――ことはなく、レオンハルトの赫熱によって蒸発して消えた。

「――ハ、ハハハハハハハハハッ!!!!」

 やっ
 覚醒た――聖火がこの世に生まれ落ちた。
 ダン・マッケーニ=バビロンが丹精を込めて火炉に薪を投げ込み、空気を送り、燃やしに燃やした成果が出来上がった。
 雄々しく宣誓をするその姿、その背中、立ち振る舞い――まさに英雄だ。
 ならばこそ、応えなければ漢が廃るだろう。
 何時だって夢を目指して戦う漢の背中は美しいのだから。

「行くぞッ、英雄――俺の夢を叶えさせてくれよォッ!!!」

        ・・・・・・・・・
 ――だから本気で応えるために、気合と根性で虹の力を捻りだした。

 形成される超圧縮された――虹で創られた光星。
 段違いに跳ね上がった速度で次々と繰り出される絶殺の連撃へぶつける。
 首へ至る刃を弾き横薙ぎをねじ伏せ、元の彼からは考えられぬ五臓六腑をミンチに変える突きと切り上げに拳を撃ち込んだ。
 引き裂かれる拳はもはや原型をとどめていない。しかしバビロンはそれも、気合と根性で"虹の拳"を創造しそれでもって代替。
 四肢を落とすその刃。右足が落とされる。だが気合と根性さえあれば、足がなんだ。
 こんなもの――"創ってしまえばいいだろう"。右足に魔力を集中させ、虹を展開し足として適合させる。

 そして、連撃を前に――バビロンも、出来うる限り以上の返礼の態勢をとった。

「昇進祝いだッ、俺からのプレゼントをやろうッ!!!
 受け取ってくれよぉ――英雄、輝かしき者よッ……!!!」

 集うは虹の恒星。
 巨大流星を打ち砕く、崩壊の一撃。
 一切合切全てを焼き払い――天上天下を無へ還す消滅の波動。


  スペクトルハイエンドブラスター
「《極大滅殺虹彩消滅波》ァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ――!!!」


 ――撃ち込まれるのは天地開闢にして天地終滅の一撃。
   世界が震えおののき泣き叫ぶ。限界だと悲鳴を上げ、崩壊を開始する。

 天墜の末路を背負いし英雄の妄執へ――それは、応えるように撃ち込まれた。

>レオンハルト シフォン

4ヶ月前 No.1015

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【時空防衛連盟本部/訓練施設/17代目葛葉 ライドウ】

彼女は酷く錯乱していた、これは言葉で鎮めるのは難しいだろう、だからといって力づくで捻じ伏せるのは論外だ。
ライドウは悪魔召喚士だけではなく交渉人としての一面も持つ、仲魔の力を借りればその場限りの錯乱は鎮められるだろう。
ジャックランタンを一旦封魔管に戻して別の封魔管を取り出す。

「来い、ジャックフロスト。彼女は少し混乱しているようだ、『頼むぞ』」

『ヒホホのホ〜』

今度は青い帽子の雪ダルマの妖精、ジャックフロストを呼び出して簡潔に合図を送る。
ピョコピョコとコミカルな足音を立ててルーシャに無防備に近づくジャックフロスト、悪魔としての力こそ高いが外見はかわいらしいものだ。
口調こそふざけていると言われてもおかしくないが、そこはライドウの長い付き合いの相棒だ、交渉などの経験(スキル)は積んでいる。

『オイラ妖精のジャックフロストだホ。お姉さんどうしたホ? 頭痛いホ? アメちゃん食べるホ?』

ライドウの代わりにゆったりとした口調で話しかけるジャックフロスト。丸っこい手には包み紙に入った飴玉が乗っかっている。
一見なんの変哲のない会話だが、この会話自体には大した意味はない。ただジャックフロストは”接近さえすればいい”のだ。
氷銀属の仲魔の交渉スキル、『冷却』をかけることにより、混乱・高揚などのバッドステータスをうち消して冷静さを取り戻させるのだ。
ちなみに『冷却』の逆の『高揚』のスキルをジャックランタンは持っていた、こっちは絶望に沈んだ心などを奮い立たせることができる。
閑話休題(それはそれとして)。

「そういえば、まだ俺の名を言っていなかったな。俺は17代目葛葉ライドウ。妖精や精霊、人外の総称である『悪魔』を使役する悪魔召喚士(デビルサマナー)だ。
 よければ君の名前も教えてはくれまいか? 相互理解の最初は自己紹介と相場が決まっているのだ。
 もし戦いが終わって一人きりになった時は、俺の世界に連れて行ってやる、似た境遇の持ち主が葛葉の里には多い、君も打ち解けられるはずだ」

そう言って今度はギルバートの方を見やる、その視線は『あと一歩だ』といっていた。。

>ルーシャ・コバルト、ギルバート・トムフール、ALL

4ヶ月前 No.1016

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【大統領官邸/公邸/シフォン・ヴァンディール】

恐怖。軍人として、連盟司令官として、数多の戦場を駆け抜けてきたシフォンが慄いている。魔道帝国の超戦士にも、魔帝軍の猛将にも、決して怯むことのなかった彼女が。
それほどまでに恐ろしかったのだ…変わり果てたレオンハルトが。振り下ろされた光刃を一笑に付し、己が道を突き進む狂戦士の姿が。
熱と衝撃の煽りを受けて宙を舞う最中、必死に手を伸ばすシフォン。だがもう届かない。痛みと様々な感情に震える白い手は、大切な仲間を連れ戻すにはあまりに細く、短すぎた。

気付けば再び横転の身。倒れ込んだ地面は冷たい土と叩き割られた床材が混じり、身体を横たえるにはまるで向かない。視線の先…ほつれた髪の間から覗く戦場には、依然激闘を繰り広げる二頭の猛獣がいた。
もう一度、全身に力を込めて立ち上がる。今彼らの下へ舞い戻れば、戦いを続行することが可能だ。相当な力を出したとはいえ、食い下がるだけの魔力は残っている。
しかしシフォンはそれをしなかった。ふらつく足取りで目指すは、彼らとは逆の方向。崩落した公邸の天井が、一人と二頭の道を別つ。

額からの出血に気付いて手で押さえる。顔を覆う傷だらけの指。その隙間から漏れるのは血だけではない。悔恨の念に満ちた大粒の涙。押さえども溢れ出す感情の結晶。

「ごめんなさい、レオンハルトさん。私―――」

―――もう貴方がわからない。


夢を見すぎていたのかもしれない。無責任な期待や願望を押し付けていただけなのかもしれない。それでも、例えそうだったとしても、シフォンには今のレオンハルトが理解できなかった。
レオンハルト・ローゼンクランツという熱血漢の根源を辿れば、そこにあるのは正義と使命のために動く心。激情に駆られようとこの一点だけは変わることなく、いわば彼にとっての支柱であった。
しかし今の彼は"違う"。それらの感情を失ったとはいかないまでも、決定的な何かが変わってしまった。それは些細な容姿の変化よりよっぽど大きく、今後彼が歩む道を大きく歪めてしまうだろう。

魔王の双眼が、獅子の瞳に宿る炎を貫いた瞬間。それは、中世を救った英雄レオンハルト・ローゼンクランツが死に、死を振りまき破滅への歩みを進める塵殺の狂戦士が生まれた瞬間でもあったのだ。

酷く覇気の欠けた排出音と共に、小さな戦闘機が庭園を離れる。白銀の機体が映すのは、眼下に猛り立つ紅炎。その上を悲しげに一周した後、シフォンは戦場を後にした。

>>ダン・マッケーニ・バビロン、レオンハルト・ローゼンクランツ

4ヶ月前 No.1017

流水 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【時空防衛連盟本部/エントランス/ツバキ・オオトリ】

上空からの銃撃。地上からの大波。想定しうる限り万全の攻撃。例え傷を与えられなかったとしても確実に機兵が持つ対処法を一つ引き出せるだろう、とツバキは踏んでいた。そして相手が選んだのは――予想外にも大波への徹底した対応だった。

ばらまく様な機銃の射撃。機先を制する様な足元狙いのそれ。本気で当てるつもりではないであろう、あくまでも接近を抑制するためのもの。それだけであれば回避は難しくは無かったが、機兵はこれに重ねて拳だけの幻像を生成して射出……要するに先程幻像が消える直前に繰り出した鉄拳を繰り出した。これでは小手先の手法でどうこうするのは無理だ。特別な防御手段のないツバキでは、それは大きく避ける以外の選択肢はない。
"波の上を走りながら"機兵を中心に弧を描いて大きく回り込む。空を切って進む幻像の拳が波を貫いて床へ衝突し、爆発四散したのはその直後の事だった。爆風に煽られ、飛沫が舞い散る。弾ける波飛沫を頭から被りつつ、ツバキは機兵の次の動きに注視する。
それにしても妙だ。何故、明らかにダメージを負わされると分かりきっている彼方ではなく、分かりやすい程の陽動である此方への対処に走ったのか。あの機兵であればどちらも対処してなお余る程の思考速度があったのではないか。それとも、"誘った"のか――その答えは、その直後に……実にあっさりと出た。

「……! 成る程、そう言うものか」

機兵が高々と跳躍した直後、ツバキのすぐ頭上を膨大な熱を放つ光輪が通り抜けた。詳しい原理は不明だが、どうやら先程投擲した光輪は『機兵の手元に戻る』性質がある――言い換えれば"視界の外から襲われる"危険性がある。
今回は相手に狙われていなかったから良かったものの、次回避するならば、戻る軌道をも計算に入れなければならないだろう。現に、追撃に走ろうとした相方は危うく胴体を輪切りにされかねないところだった。しかしあの状況でもギリギリ回避しきる辺り、武装だけでなく戦闘のセンスも優れていると見て良さそうだ。

――これは……別の案が必要か。

ツバキは機兵討伐の為の道筋を既に幾つか立てていた。一つは機兵の足を止めた上で扇形に部隊を展開、火力を集中させて仕留めると言うもの。だがこれはあの光輪が展開された時点で下策になった。単なる掃射ならば兎も角、あれだけの破壊力と柔軟性のある兵器があってはいくら足止めが出来たとしても一般兵士を並べるだけ被害が増える。
もう一つは相方の火力に期待して、此方が相手を惹き付けて隙を作ると言うもの。相方にあの機兵に有効な攻撃があり、そしておそらく彼の火力で機兵を倒し得ると解った時点でその案を練った。だがこれも没だ。機兵が完全に彼方狙いに転換している上、相方の様子からしてどうにもまずい状況になっているらしい。先程までは自発的に動いて状況を作っていたのに、今は此方に併せようとしているのを見ても不味い状態であると分かる。彼に過度の期待は出来ない。

……もう一つ、最初から考えていた案はある。ツバキ一人でも成し得るものだ。……だが、彼女は"それ"を使う気はない。可能ならば他の手で、等と言う怠慢ではない。そもそも最初から手として案じておきながら、最初から"それ"を使うつもりが無いのだ。

――さて。

何はともあれ、相方が動ける状況を作るのが此処でのツバキの務めだ。機兵の狙いが彼方になったのは明白だが、それならそれで"此方から目を放したくない"状況を作れば良い。
再び機兵を中心に円を描きながら走る。今度は常に機兵を挟んで相方と正対の位置をキープし、加えて二、三度腕から大砲の様な勢いで水流を放つ。いくらあの機兵だろうと当たれば体勢を崩しかねない威力の水撃だ。此方を片手間に往なそう、等と考えようものなら間違いなくその慢心を突き崩す。
あとは、相方の動き次第ではあるが――果たして。

>>ワーロック、清太郎

4ヶ月前 No.1018

サンタさんへ お友達ください @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/通路/マシュマロ・ヴァンディール】

この場に於ける最良の決着とは何かを問うたとき、自ずと和解という選択肢が浮上してくる。状況が状況なだけに、誰かの流血で幕を下ろすことは好ましくない。
しかし現状はそうもいかず、むしろ和解とは正反対の方向へ動いていく。被弾を回避すべく周囲のドローンを変化させ、ますます警戒心を剥き出しにするキラー。
一触即発。不用意な言動は最悪の事態に繋がる。自身の発言によって彼の位置は把握出来たが、そんなものは何の解決にもならない。為すべくは対話、目指すべくは和解。

あろうことか付け足した言葉が激昂を招き、展開されるは複数のゲート。それらの具体的な働きはわからなかったが、三人を滅するための代物であることはまず間違いない。
防御のためにもう一歩前に出るが、ここで新たな問題が生まれた。それはキラーを刺激してしまうのではないかということ。防御魔法を展開するためには魔力が必要不可欠。もし魔力を充填するところを見られれば、ますます警戒と恐怖を煽ってしまうに違いない。
加えて彼と付き合いの浅いマシュマロには意思疎通も難しい。まさに八方塞がり、どうしたものかと頭を悩ませた…そのとき。

「し、しー!?」

なんとシエンタが動いた。先程マシュマロがしたように間へ割って入り、挑発するかのような言葉を並べ立てる。感情を逆撫でされたキラーの暴走を恐れ、慌てて彼女を止めようとするマシュマロだが…何かに気付いたように立ち止まった。
様子から見るに二人は親友。きっと互いのことをよく理解していて、どういう言葉が心に響くかもわかっているに違いない。キラーの方も、既に準備が出来ているのに発射しない様子からして、少なからず心に葛藤が生じているのだ。
"きっかけを作る"という役目は自分とショパンが果たした。そこで生まれてしまった拗れも、まだ十二分に取り戻せるレベルにある。あとは最後のピースをはめ込むだけ。言うまでもなくシエンタがその役割だ。

彼女を信じて任せることに決めたマシュマロは、ショパンの顔を見て小さく頷くと、そっとシエンタの隣に並ぶ。そしてその肩に手をまわし、優しい緑の瞳でキラーを見つめた。
友達計画に分け隔てはない。電子生命体だろうと、エイリアンだろうと、魔族だろうと、心が通えば全てマシュマロの友達だ。

>>シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、ショパン

4ヶ月前 No.1019

未来のウィザード @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/フリードリヒ・ガーデルマン】

「クラリス。僕らはその歴史是正機構に所属しているんだ。発言には気を付けた方が良い。何時、誰が見ているか分からないんだから」

愚痴を言うクラリスの元に、彼女の軽率な言葉を窘めながら一人の若者が歩み寄る。如何にも魔法使い然としたローブを身に纏う、やや時代錯誤な格好が特徴的な若者。
彼の名は『フリードリヒ・ガーデルマン』。世界政府上院議員、ガーデルマン夫妻の一人息子。世界政府と険悪な歴史是正機構に何故そんな人物が所属しているのか――端的に言ってしまえば、親への反抗心と、そして今目の前にいる彼女が理由だった。

「……まあ、気持ちは分かるよ。こんな事をしている暇があるなら……と、僕は思っているしね」

そもそも、クラリス・ツァクトユーリは義があって機構に与しているのではない。機構が成そうとしている事業に理解がある訳でも無い。家庭からの束縛を嫌って飛び出しただけの……言わば反抗期の跳ねっ返り娘だ。
そして、そんな彼女と今親しげに話しているフリードリヒもまた……機構に所属こそしているが、その事業に同意はしていない。彼が此方にいるのはクラリスがいるからと言っても過言ではない。
フリードリヒは友人が少ない……と言うよりは一人しかいない。幼少期から徹底して『政治家』となる為の教育を受けて歪んだ人間性が、他人を寄せ付けなかった。学生時代はそれで酷い虐めを受けていた程だ。そして、そんな彼が唯一心を許し本音で話し合えるただ一人の友人が、このクラリスなのだ。
自身を『壊れ物』の様に扱う両親への反抗心と、唯一の友人であるクラリスがいるから――そんな理由で、この歴史是正機構に所属している。それが、何を意味するかも深く考えずに。

>>クラリス

4ヶ月前 No.1020

"銀細工" @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【時空防衛連盟本部/食堂/ユスティーツ・シュタルク】

 避難して来た多くの民間人達の姿が見られる、連盟本部の食堂。警護を務める戦闘員によって安全を確保されていた筈のその場所は、然し突如として現れた気配無き侵入者の手で、瞬く間に地獄絵図へと塗り替えられて行く。渇いた銃声が響いた刹那に戦闘員の一人が物言わぬ亡骸となり、続け様に食堂の一角にて起きた大爆発が数多の人命を奪い去り、屍山を築き上げる。
 姿見えぬ襲撃者に狙われる恐怖に怯え、発狂し出した者へと撃ち込まれる銃弾。それは生存者の心を弄ぶかの如くに恐怖を伝播させ、更なる発狂を促していく――数分すら経たぬ内に、食堂は完全に制圧されるだろう。凄惨極まる光景だけを残して。

「確かに――彼等が敵の侵入を察知できなかったのは、未熟であったとしか言い様が無い。どれだけ言い訳を重ねようと、及ばなかったのは事実」

 それを阻止すべくして、食堂へと足を踏み入れるは銀外套の男。目深に被ったテンガロンハット、襟の長さと相まって、その風貌は隠匿されている。彼の正体は、つい最近になって連盟へと加入した新参、食堂勤務の"ユスティーツ・シュタルク"という男――の裏の姿である、"銀細工"と呼ばれる、スラム街を根城とする犯罪組織の数々を単身で潰した神出鬼没の戦士である。
 物怖じせず、堂々たる足取りで室内を歩き進む彼。広がる視界の中には、既に敵の姿を入れており。間合いを一定まで詰めたその瞬間、地を蹴り疾走を開始する。

「だが、そんな彼等にも無念を継がせる資格はある。彼等に代わって、俺がお前を斃すのだ」

 肉薄と同時に放つは右拳の一撃。悪人に対して容赦は無用、それを信条とする彼が狙うは、その顔面を。続けて放つ左拳が狙うは、腹部。内臓を衝撃で蹂躙し尽くす、強力な打撃で攻め立てる――此処までなら、両腕が健在である限り誰もが可能とする普通の戦い方。"銀細工"と言う仇名の由縁とは程遠い物である。
 第一の本領はまだ、発揮しない。先ずは使うに値する敵であるかを否かを見極める為の小手調べ。使わねばならぬと判断した瞬間から、"只人"から、"銀細工"としての戦いが始まるのである。

>雪葉 桐生戦兎

4ヶ月前 No.1021

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_zuX

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


何もない、抱いた想いは己のものではなく、この肉体も何かの写し見。これまで歩んだ道筋は元より少なく、その僅かな軌跡ですら他者によって創り上げられたもの。全てが崩れ去る、私を構成していたのは誰かの思惑によるもの。
この身体から溢れる悍ましい呪いを詰め込むだけ詰め込まれ、放り捨てられた意志を持った廃棄物。何故、自身の存在を明確に理解できるようにしたのか、どうせなら痛む心など始めからなければ良かったのにと、どうにもならない事を思う。
心がなければ、自身がどんな存在であっても揺らがなかった、呪いで死に追いやる存在を見ても何も感じなかった、光を見てああなりたいなどと思いはしなかった、人間を助けるなどと思い至らなかった、自刃に躊躇いも生まれなかった。
でも、私は呪いの塊であることに衝撃を受け、目の前の女性が呪いの餌食になる可能性に怯え、光の一部にでもなりたいと救済を掲げ続け、理由のない感情であろうとも人間を助けたいと思い、存在すべきでないと分かっていても死にたくない。
助ける為に命を落とすことに恐怖は一切なかった、私が死んでも誰かが助けられるならば喜んで生贄にでもなろうとしていただろう。どうしようもなく、自己満足で浅ましい愚かな考えではあったがそれが正しいと信じて疑わなかったから。
しかし、必要のない存在として消えたくはない。災厄として、生きていてはいけないものとして処理されたくない。私は生きている、身体は何も感じなくとも心は多くの機敏を感じ取る。女性が排除すべき存在と見ているのも、何となく理解している。
それでも、私は私として存在していたい。今は只消えたくない、私は他の全てを諦めても良いから存在する理由が欲しい。人を呪う事しか出来ない出来損ないの存在は嫌だ、だから助けたいと願ったのかもしれない。

「わ、私は貴方を助けたい……こんなことはしたくありません……でも、でも―――」

先までとは意味合いを持った助けたいという言葉、これ以前の言葉が理想の為の手段の一つが助けたいと意志であったならば、今発した助けたいと言う言葉は何かを残したいが為だろう。
しかし言葉とは裏腹に呪いは徐々に地に広がっていく、一面の生を呪い殺しながら命の存在しない空間へと塗り替えていく。動かぬ身体はその中心に残されたまま、手で這って女性へ向かおうとしても進まない。
いや、呪いに沈み込み身体が前へと進まない。水溜まり程度の深さしかないはずなのに底無し沼のように私を逃がさない、黒い触腕のように変化したそれが身体へと纏わり付く。お前は此方側だと、示す様に。
女性へと向かった槍の形をした呪いは破裂する弾丸により形を保てず飛散する、その先で草花が煙を上げながら溶け落ちていく。数多の黒槍はそれを遥かに上回る炸裂する銃弾によって破片を散らす、銃口は私を捉えていた。
咄嗟に腕で庇おうとするもそれすらも黒い触腕は許さない、地に縛られるようにして抑えつけられれば腕を僅かに動かすことすら許されない。呪いが感情で動くのは理解している、それでも私を逃がさない理由が分からなかった。
迫る銃弾、死にたくないとそう願って漸く呪いが迎撃の体勢を取ろうとするも遅い。右の脇腹、そこが銃弾に貫かれた。次の瞬間には視界と、肉体が爆ぜていた。飛び散る黒い液体、結合部を失い吹き飛んだ右腕。私の身体の半身は食い破られたように円形に無くなっていた。
痛みはない、そんなことは分かっている。血の代わりに溢れ出る黒い粘性のそれは地へと零れ落ち、体積を広げていく。僅かに繋がった肉のような部分が耐えきれず千切れる、泥に倒れこんだような音と共に上半身が呪いに浸される。
それが胴体を両断されたものだと気付くのに時間は必要なかった、同時に私はそう簡単に死ねぬものだと気付いた。まだ意識はある、まだ視界もある、死ぬ瞬間その最期までこれが続くのだと理解できてしまった。

「助けたいのに、そうじゃないと存在する意味がないのに、嫌……消えたくない、死にたくない……」

懇願するように女性を見上げる、私の身体を逃がさぬように黒い触腕は再び纏わり付く。死にたくない、だってまだ何もしていない、理由も分からず助けたいと思った、照らす光を見てそうなりたいと願った、でもまだ何も出来ていない。
誰も救えていない、誰も助けられていない、あの光に手すら届いていない、それなのに消えたくない。ただの不要物として消えたくはない、何かを残したい。誰かを助けた、そんな証が欲しい。
生にしがみ付く感情に呼応するように呪いは活性化する、さらにこの空間を穢していく速度は加速していく。そして、助けたい対象であり命を狙われている存在である女性を排除しようと再び形作るは槍。
女性に向かう数は五十を容易く超えていた、そしてその全てが女性に接近した途端に爆ぜる。爆発して無力化されてしまうのであれば先に爆ぜてしまえと、元々接触さえすれば生を奪えるのであればこれで良いのだ。
黒い水飛沫のように浴びせかける、女性の攻撃手段が銃弾であることを学習し最適な手段を導き出す。まるで意志があるかのように呪いは進化する、私の意思など介入する余地などないように。
見ているだけしか出来ない、ただ死なない事を祈るしか出来ない。だがこの場で私が生き延びると言う事は女性の命を奪う事を意味する、排除すべき対象として女性が認識している以上撤退は除外されるだろう。
助けたい、でもそうすれば私は消えてしまう。生き延びたい、でもそうすれば女性を殺してしまう。僅かに前であればどちらを選ぶか明白であったそれを、即座に決断できるほどの余裕が私にはなかった。

>>リアーナ=レッセント

4ヶ月前 No.1022

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_zuX

【大統領官邸/シチュエーションルーム/フォルトゥナ・インテグラーレ】


放たれた拳、狙いである総統の回避より早くダグラスによって受け止められる。彼女は魔力の動きから同じ身体強化だと判断する、しかし衝撃を殺し切れていない。ならば脅威と見るにはまだ浅い、だからこそ押し返す力をそのまま距離を取ることに利用する。
その狭間に出現するは岩壁、即座に総統への追撃を防ぐ為の物だろう。砕くには一手あれば十分、しかし相手の両足に魔力が集う事を見逃す彼女ではなかった。合わせて追撃が来る、その結論に達するには容易い。
故に背後から迫り来る六種の不規則な属性弾への対処も同様、この身に当たる軌道を描くものだけを的確に弾いていく。振り向きざまに魔力を宿した拳とその余波によって服に汚れ一つ付くことなく、この程度は当然だと行動が示していた。
着弾の黒煙の中、彼女は口を開く。攻撃の最中にも語られていたダグラスが離反した理由、着地と共に語り終えたそれに対して明確な結論を出す。理由が如何あれ、彼女のやることに変わりはないのだから。

「―――成程。
理由は把握した、世界を率いるものが腐っていること、その排除は此方でも出来る事ではある。だが手段が異なる、いや間違っていると判断した故か。
情に絆された訳ではない、いいだろう。これ以上の否定は必要ない、何方にしても敵に寝返ったこと変わらん。」

語られた理由、それは彼女にも理解できるものであった。世界政府の腐敗は歴史是正機構の上層部であれば周知の事実、丞相の目的故に知らねばならない事だろう。彼女自身、閲覧できる資料には目を通してある。勿論、そこにはインテグラーレの名もあった。
だからこそ理解は出来た、そしてその排除する方法が歴史是正機構では武力であることも知っている。だが離反を許容できるかどうかは別である、その程度で裏切りを容認してしまえば組織は成り立たない。
恐らくは情報は幾らか提供されているだろう、総統が彼女がこの場に居ても驚愕しなかったことからそれは明らかだ。それだけ損害を与えておきながら無罪放免、そんなことは許されない。将官として、裏切り者の粛清は決定事項であった。
だからこそ着地した隙を見逃す訳もない、再び掻き消える様に踏み込みを行う刹那、彼女は魔力の収束を感知した。それと同時に聞こえる少女の声、聞き覚えのないそれは乱入者を示していた。少なくとも増援の要請はしていない、であれば結論は一つ。
踏み込みに回した脚、それを軸足へと変えながら振り向きざまに魔力を帯びた拳を振るう。白い魔力塊、無属性を示すそれは彼女の裏拳によってオペレーションルームの壁を砕くに留まった。その衝撃で晴れた黒煙、視界を閉ざす物が無くなり不意打ちの主を見据える。
その姿を見て目を細める、表情は不可解さを表していた。声に違わぬ少女、背負い鞄の様な銃を携えたその姿は見覚えがない。隊長格でもなければ、司令官でもない。送り込むにしては幼く、放たれたそれも無属性、疑念は深い。

「……子供か、魔力は十分だが戦場には早い。逃げるならば、今の内だ。」

総統が呼ぶ名前にも聞き覚えはない、だが何故と問う行動をしていることは察せられる。蛮勇か、無鉄砲か、何方にしても子供を狙う理由はない。標的は総統と裏切り者に依然変わりなし。
だがここまで来て尚敵対者に攻撃を行える行動力と胆力を持つ少女だ、言葉だけで引き下がらぬ可能性も十分にあり得る。仮にこれで逃走を選択しなければ痛い目を見る必要があるかもしれない、何方にしても障害にはならない。
少女から視線を外し、岩壁の向こうにいるだろう総統へ視線を移す。探していたとそう宣い、魔力塊が飛来した時も名を呼んだ。まだ姉だと言うつもりなのだろうか、自身は総統を殺害せよと命じられた歴史是正機構の将官であるのに。
それが分からぬ総統ではないだろうに、反撃すら行わない。眼中にないのか、未だ説得が出来るなどと夢見ているのか、彼女には判断がつかない。いや、正確に言えば同じだからこそ分かる。分かるからこそ認めたくはない、認めてはいけない。
あの汚職した父と同じ道を歩んでいるあれが、自身と同じ状況に置かれていたであろうあれが、その選択をしていることを認められない。あれはまだ説得を捨てていない、対峙して尚そんな幻想を抱いている。
握る拳に力が入る、彼女はただ許せない。父の汚職、その結末を間近で見ていただろうに同じ道を歩み、剰えまだ友好的であると思っていることが。同じ道を歩んだ時点で彼女は止めるべき存在、同じ結果を齎す腐敗だと。
首に掛かるドックタグを外すと同時に岩壁へと放る、魔力を込められたそれは宙で闇を纏う。空間が捻じれて見えるほどの高濃度の魔力、闇へと昇華したそれは別つ壁を粉砕すべく衝撃波を放つ。黒き波動、それは隆起した壁を塵へと変える。

「名で呼ぶ関係ではないと思っていたが、探していた事には同感だ。私がこの場にいることが何よりの理由、貴様になら分かるだろう。」

塵と化した岩壁を突っ切る様にして総統へと踏み込む、先よりも幾分か早いそれは身体強化の度合いを徐々に引き上げている証拠であった。即座に総統の眼前へと躍り出た彼女が繰り出すは右腕。
闇を帯びて振るわれるそれは打撃と魔法の混合によって放たれる身を穿つ一撃、それが狙うは胸部。目的こそ先の一撃と変わらぬが過程が異なる、此度の拳は呼吸を阻害することを予測されたもの。
一撃で屠ることが難しいのは先で述べた通り、だからこそ追撃を狙える部位へ蓄積する。内臓は鍛えようがなく、呼吸は訓練すればしばらくはしなくて済むが動きに支障が出る。その双方を狙える胸部へと打撃は効率的だろう。
そこに加えて闇属性の魔力を体内へ注ぎ込む、これは謂わば魔法扱う者にとっての毒へとなる。魔力の流れを阻害し、それを感知する度に体内で小爆発を起こすそれは確実に肉体を蝕む。落ち着いた状況下で徐々に魔力へ分解すれば無力化されるがそんな隙は与えない。
介入の隙も与えない、裏切り者は背後におり少女も未だ距離がある。彼女の踏み込みに追いつける理由はなく、またそれ以外にも妨害の手を取ってある。放られたドックタグは未だ宙に浮き、闇を纏い続けている。
先の衝撃波は副産物でしかない、魔力を分解するそれはこれから放たれるそれの余剰。集う闇は空間を歪め、その大きさを増していく。いつしか岩壁以上の規模となったそれは、黒き閃光の後に放たれた。
黒き奔流、オペレーションルームの残骸を文字通り消しながら放たれる圧縮魔力は一直線に裏切り者へと向かう。仮に防ごうとすれば残骸と同じ結末を迎えるだろう、そして性質上魔力を用いた防御も得策ではない。
この魔法は周囲の魔力を吸収し、それを増幅することで放たれる。先に放たれた衝撃波は魔力を分解する為の物、岩壁に宛がわれた魔力を吸収しその威力を増したのだ。そして、性質は放出した後も変わらない。魔力は分解し吸収される。
これも彼女の魔法の才が成せるもの、近接格闘に傾倒した欠点を補う為の魔法への対処法。放たれた魔法に合わせ、その結合を崩し魔力へと還元する。大規模な魔法であっても同様、机上の空論でしかなかったそれが今現実になっていた。
これまでに至る全てを勉学や鍛錬に費やしてきた彼女だからこそ可能なそれ、己を極限まで削り只管に努力を重ねて来た結果だろう。実戦経験の差こそ埋められはしないが、それを無に帰すほどの実力を得ていた。

彼女は確かに総統を殺すために動いている、そこに偽りはない。だが探しているとそう言われ、心が揺れ動かなかった訳ではない。愛憎、愛するが故に憎む、またはその逆。彼女は憎んでいる、そして同時にまだ愛している。
彼女は止めたかった、父と同じ道を歩む姉をそうさせたくはなかった。そう、彼女は判断するしかなかったから。知っているのは父の汚職、その裏を勘付くには当時は幼く、年を重ねて気付くには周囲の影響が強すぎた。
だから、ダグラスが語るある男の濡れ衣が誰を指すかなど分かりはしなかった。彼女にとっての父は、憧れではなく家族を引き裂いた汚職議員で、姉はその道のりを辿る止めるべき、今は殺すべき存在なのだから。

>>ユーフォリア・インテグラーレ ダグラス・マクファーデン アルカディア・クアドリフォリオ (ヴァイスハイト・インテグラーレ)

4ヶ月前 No.1023

葛藤 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【→大統領官邸/シチュエーションルーム/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

中世での激戦を終えた後、ヴァイスハイトは一度ユーフォリア達と別れて支度を整えていた。
彼は戦闘者としては凡人も良いところだ。血液から毒物を精製すると言う奇っ怪な能力こそあれど、ユーフォリアやダグラスの様に直接戦闘に用いる事は出来ない。攻撃は拳銃頼りであるし、防御など出来ないから"避ける"スタイルを突き詰めただけ。他の精鋭達の様に、身一つでは戦えないのだ。
拳銃のメンテナンスを行い、弾薬を補充。それに加えて、中世で使用した毒物を予備のケースから補充する。
それから自身の体に異常が無いかをチェックして、漸く二人を追って出撃した。


大統領が暗殺され、テロリストである歴史是正機構に制圧された大統領官邸を駆ける。幸い道中では敵の兵に出会す事もなく、また機械兵器と遭遇はしたものの何故か動きが悪く容易く振り切る事が出来た。
ユーフォリアとダグラスの端末の反応を追い、シチュエーションルームへと駆け込む。其処には予想通りの二人と、全く予想だにしない人物"達"がいた。

「ユフィ、ダグラス! 此処にいたのか……っと、ルーティ!? お前、何故――」

『ルーティ』と呼んだのはアルカディアの事だ。彼女は確かユーフォリアからの言い付けで本部待機を命じられていたと記憶している。それが何故、此処にいるのか――と言う疑問は、直後に視界に入った人物の為に全て消え去った。


「――な……嘘、だろう。……フィル……!」

視線の先にいたのは、かつて"自分が見捨てたも同然の少女"が――ずっとヴァイスハイトの心にわだかまりを残し続けていた家族、『フォルトゥナ・インテグラーレ』がいた。
だが、彼女の眼差しは暗く濁っている。躊躇い無く実の姉であるユーフォリアに凶刃を向けている。それが、何を意味するのか……理解出来ないヴァイスハイトでは無かった。

彼は、信じられないと言うような表情を浮かべていた。この場にいる誰よりも険しい顔で、誰よりも悲しげな眼差しで、フォルトゥナを真っ直ぐに見つめる。

――どうして、お前が"其処"にいるのか。一人で逃げて、済まなかった。それでもずっと、会いたかった――。

伝えたい事は山ほどあったのに、何も言葉が出ない。体が言葉を紡ぐ事を拒否しているかの様に硬直し、語らせない。何を言ってもフォルトゥナを傷付けるだけかも知れない――そう思うと、どうしても口が開かなかった。

「っ……!」

腰から二丁の拳銃を抜き、臨戦体勢を取る。だが、それを使う気は無い――いや、使えない。"ヴァイスハイトはフォルトゥナに攻撃出来ない。"
実力の差の話ではない。彼はずっとフォルトゥナに後ろめたい気持ちを抱えていた。だから、彼女の心だけでなく体まで傷付ける様な真似を、彼は出来ないのだ。
ぎり、と痛い程に歯を食い縛る。思えば"あの日"家を飛び出して以来の再会だった。だと言うのに……考えられる中で最悪の再会だ。

……彼はまるで自分が蚊帳の外にいるような心持ちで、実の姉に殺意を向ける大切な家族を見ていた。伝えたい事、謝りたい事が次々に頭の中に浮かんで来るのに、どうしてもそれを口に出来ないでいた。

>>ユーフォリア、フォルトゥナ、ダグラス、アルカディア

4ヶ月前 No.1024

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【時空防衛連盟本部/通路/キラー・テンタクラー】

「ひぃっ、近寄るな、人間がぁ……ぁ、あ?」

まずキラーが最も過敏に反応するのはショパンに対してだ、何せ、通常の攻撃手段では戦闘不能にすることは出来ても、完全に消滅させる事は極めて難しいキラーを消滅させかねない能力を持っているのは、先ほどの攻撃準備段階でキラーが感知していたからだ。
その彼が、突然攻撃手段であろう演奏を中断して、こちらに近づく素振りを見せたのだ、当然キラーもそれに対応しようとする。

だが、対応と言っても、がちゃりと音を立てて、彼の頭に砲口を突きつけるように照準を定めるだけで、決して射撃は行わない、それこそ、対消滅砲でなくとも、ドローンを追加射出して攻撃する事も可能であったはずなのにだ、そして彼にはその選択肢が見えている、だが、それをしないのは……やはり、シエンタの友人を傷つけて、シエンタとの関係が壊れるのを酷く恐れていたからだ。

だから、言葉で威嚇する、するのだが、その直後にショパンから発せられた謝罪の言葉を聞いて、キラーは間の抜けた声をあげる。

「……偉人の名前か? このキラーの記憶量は凄まじい、知らぬ事など――死んだ年? 貴様は同姓同名と言うだけなのか? ならば何故わざわざ思わせぶりに名を語る」

"知識量"だけならばキラーのスペックは極めて高い、それらは全て、少し検索サイトで検索した程度の物ではあるが、言葉を聞くと、すぐにその情報を引き出す事が出来る、故に、ショパンが語った言葉の意味も何となく理解できる、だが、ただ同姓同名というだけなのか? と問いかける。 本人でないのならば、わざわざ思わせぶりなことを言う必要は無い。

彼の歩みが止まる、それと同時に、キラーも多少は安堵したのか、冷静に話を聞いていた。
彼の言葉を逐次検索するキラー、クラシカロイド、偉人を再現したクローンか? などと推測を立てるが、検索してもやはりそのような事実は、この世界の歴史に『存在しない』。 ならば疑うのが当然であるのだが、相手の態度を見て、そして状況が状況なのでキラーは、それに対する疑問の言葉を投げかける事も無く、そして、相手の最後の言葉を聞いた。

「怖い、さ。 私は元々無機物だ、やっと得たこの人格を、誰かを好きだと思うこれを、捨てたくは無い」

気を失いつつある彼に対して返答するように、キラーはそう言った。
そして、砲口の行く先が少しブレた時、シエンタが自分の前に立ちふさがった。

突然接近されたため、反射的にキラーは砲口をシエンタに向ける。 収縮されたエネルギーは既に十分であるため、余剰エネルギーがバチバチと音を立てて放出されている中、彼女は自分の目の前に来て、そして撃ってみろと言った。
ガタガタとキラーの砲口が震える、そして、そのシエンタの肩に手を回してこちらを見てくるマシュマロも視認する。 これは、おそらく、シエンタと言う友人を彼女に奪われたことを意味するのではなく――

「……私は、友人を撃てないよ」

静かにキラーがそう呟いて、砲口を地面に下ろして、幾つかのドローンと、自分の触手のような腕へと分裂させた。
つまり、発射は取り消し、もう、キラーに戦闘意欲は無かった。

この後、キラーは心に沸いてきた物があったが、それよりもと、一旦感情を押し殺して、腕を変形させる。

「ショパンと言ったな、今は悠長に、どちらの勢力の医務室も使える状態ではない、が。 私が人一人……いや、クラシカロイドとやらの生命も左右できない存在と思ったら大間違いだ、よいせーっ!!」

一瞬の内に腕を注射器に変形させ、相手に抵抗の余地も無くぶっ刺し、そして抜く。 その一瞬の早業により、痛みも無く彼は栄養剤を注入して見せた。
ジャキンと音を立ててカメラ目線っぽく振舞って見せると、キラーは腕を触手状に戻してから、再度シエンタに向き直る。

仕事が終わったのなら……後は、感情の処理に走っても良いか。
そうキラーが、戦いが終わったと判断し力を抜いたせいで、シエンタのプログラムに対する対抗プログラムが停止し、あのアイシスの姿に戻ってしまう。

人間らしい感覚が戻ってきたせいで、キラーが抱いていた感情は一気に人間の身体で放出される。
がばっと腕を広げて一気にシエンタに掴み掛かるような勢いで抱きつき、キラーは瞳から涙をこぼした。

「シエンタああああ! お前、お前なぁっ、私は、お前がっ、誰かに取られて、捨てられると思ったぞ、何だポンコツって、私は最強コンピューターウィルス、キラー様であり、アイシス・カムリ様だぞ……っ、良っ……良かった、私が、お前に捨てられなくて、私の人格が、要らないって、言われなくて」

そんな風に、怒っているのか泣いているのか、いや、おそらくその両方の感情を表に出しながら、キラーはシエンタに抱きつきながらもぽかぽかと彼女の背中を叩き、泣き崩れる。
……見た目だけ見れば、シエンタより明らかに年上の見た目をしているキラーがシエンタに泣きついているという奇妙な構図ではあったが。

>シエンタ・カムリ ショパン マシュマロ・ヴァンディール


【と言う事で、戦闘終了と言う形にしたいと思います、お相手、ありがとうございました!】

4ヶ月前 No.1025

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【大統領官邸/核シェルター/ミラノ】


「………そうかい」


 山羊頭と呼んだそいつは、それを特に否定もしなかった。
 たぶん、開き直りだ。聞いていて、いっそ清々しいレベルの開き直りだった。
 とっくに奪われた―――奪われたから、奪い返した。撃ってはまた撃ち返す、戦争の基本だ。
 やられたからやり返す。やったらやり返される。そんなことは子供だって分かる。力を持たない人間は、力を持つ人間にただ蹂躙されるだけだから………それを前にして、あらゆる生物は二通りの考えを持つ。
 ひとつは、やられた分をやり返して外側から変える。ひとつは、力のある者になって内側から変える。

 そして9割ほどは、前者だ。
 後者は酷く悠長で、奪われたものが選べるような選択肢ではない。よく言えば清廉だが、悪く言えば自己犠牲的なのだ。悲惨なことがあって“それでも”と言える者が居たとしたら、その半分程度は何処かに諦観や達観があるのだろう。
 こいつは、前者だ。どうしようもなく前者だった。
 ミルグラム・ゴートの考えは酷く正論に満ちていて、同時にどうしようもないほど自分本位だった。
 確かに彼の復讐は正当だとも。奪われて、その分をやり返してやろうという発想はどうしようもなく人間だ。別にミラノ個人としてもそういうのがないわけではない。だが、だからこそ―――。


「なら、オレの言ったことだって分かるだろ。
 なんでお前なのか、なんて知ったこっちゃない。お前のそれは単に間が悪かっただけだよ」

「単にたまたま、理由もなく、理不尽に奪われただけ。
 そこから先で何したかは別に知ったこっちゃねーけど、お前のは正しいとか間違いとか以前にやり過ぎ」


 これも、当然の理屈だ。
 彼らにとって“奪うもの”は、今や贖罪の山羊、ミルグラム・ゴートその人である。
 奪うならば奪われるだけの覚悟が要る。他者を踏み躙り、蹴落とすというのはそういうことだ。
 恨まれる自覚なんてものは当然のことであるし、いざ自分がそうなった時に文句も言えない。ミラノだって、彼が奪う相手は“だれかから奪うもの”と決めているが―――その人間から報復を受ける程度のことくらいは考えている。
 逆に言うと、少年が良識を持つ部分はそこだけだ。

 古代で彼と共に戦った将軍のような高潔な人物ならば、此処でミルグラムを見逃しただろう。
 そうでなくとも、確りとした法の上に意識を置く人間であるなら、彼を拿捕したに違いない。

 だが―――。


「奪ったら奪われるってだけ。お前、散々ばら奪ったんだろ?
 じゃあこの辺で満足しとけよ。そういうの、多分死んでも終わらねーんだから」


 此処にいるのは、盗賊の王だ。奪う人間だ。
 そうした人に寄り添うような利他など持ち合わせない。
 利他の裏に隠した利己のような偽善性など持ってさえもいない。
 彼に在るのは、利己が結果として招く利他だけだ。それを、否定することさえしない。

 だから、単に自分が見ていて気分が悪いから―――。
 ただそれだけの理由だ。ミルグラム・ゴートを“殴って良い”と結論した最大の理由だ。正論であるかなど関係ない。“おまえのそれには興味ないけど、オレの理屈に当て嵌めたらおまえは多分奪われてもしょうがない”と、彼は言っているだけだ。
 盗賊の少年はゆっくりと斧を振る。
 ミルグラム・ゴートの、復讐者たちの王としての渇いた道を。
 “因果応報”という、あたりまえの理屈で終わらせるために。


「………そういや」
「お前、さっきからなんかずっと勘違いしてない?」


 ………ところで。

 彼は、別に気に入らないことはとことんしない主義だ。
 この場で、本来なら有無を言わさず殴り倒すつもりだったミルグラム・ゴートの言葉に対して、実際のところミラノが何らかの共感を懐いたのかと言われると………しかし、答えは紛れもなく“No”だろう。
 分からんでもないが、それはそれというやつだ。
 だが同時に、彼は命を背負えると思うほどミルグラムを知らない。



「―――風裂くサエザル………お前の出番だ」

   >The shadow of the wind Snatches all...

 つまり、彼が果たして何を言いたいのかと言えば。

「―――派手に、何か盗ってきな」

   >Even the treasure of the Gods.

 ・・・・・・・・・・・・・・
 別におまえの命なんぞ要らない、という。極まった解答だった。



 斧を遠くから薙ぐ。
 最後のタクティクスカード《スティール》がかたちを為す。

 風が舞う。
 比喩を抜きにして、無風の戦場に、突然疾風が舞う。
 風を斬り裂くようにして不可視の突風が吹き荒れる。
 ミラノの背後から、ミラノの視界に入る全てをなぎ倒し、打ち壊し、切り払って去っていく。
 さながら神出鬼没の盗賊のように、すれ違いざまに“ほしいもの”を奪い取る無法者《デスペラード》。

 命中したのならば、さてどうなるか。
 ミルグラム・ゴートは、紛れもなく“何か”を奪われる。
 あるいは力の“一部”か。あるいは武器か。あるいは、もっと予想もつかない概念か。
 あるいは………彼を報復者たらしめる何かか。そうでなければ、彼の引き連れる亡霊たちか。

 ………撃つに撃つなり、ミラノはそれで十分とでも言わんばかりに身を翻した。
 彼は良く分からない、良く知らない誰かの命を背負うほど責任を取る男ではない。
 気に入らないことはしない。ミルグラムが信条を曲げなかったように、ミラノも信条を曲げなかった。

>ミルグラム・ゴート


【スティール命中で何が持っていかれるのか、
 そもそも“なにか”を持っていかれるかどうか、
 それ以上に「スティール」に命中するかどうかの有無はすべてお任せします〜。】

【また、ぶっちゃけて“そのまま追撃するのか”もお任せします。お待たせして申し訳ないm(._.)m】

4ヶ月前 No.1026

ワーロック @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【時空防衛連盟本部/エントランス/ワーロック】

 武装、粉砕完了。
 巧く引っ掛けた―――引っ掛けたが、ワーロックとしては確実に“殺す”つもりだったのだ。
 その点においては、この黒鐵、正確には黒鐵を動かすAIであるG.O.Dは当てを外したと言わざるを得ない。しかしその上で判断の鋭さに関しての結論と、攻撃に際しての優先順位は十分に付けられる。即ち“頭数を減らす”意味合いでの優先順位だ。
 あくまでもツバキに寄せた攻撃は、威力と密度に関して十分なものこそあれど牽制………要は“余計な邪魔”さえされなければ良かっただけだ。回避の技術は非凡なものがあるが、正直に言ってどうでもいい。結果として落胆すべきものであり、修正の余地があると感じられたのは、あの白い機動鎧………つまりは橋川清太郎を一撃で処分できなかったという事実だ。

 だが………気になる行動が見えた。
 先程より何処から武装を転送しているのか分からなかったあの白い機動鎧だが、武装を破壊された前後に動揺が見て取れる。行動を精査してみればそうだ、あの相手は先程から“転送した手持ち火器”以外での攻撃を一切行って来ない。
 そのほかの内蔵兵装を秘匿している可能性もある。だが、その割には駆動範囲が極めて柔軟だ。動きの精密さを重視したというならばそうした火器は搭載出来ない。現にワーロックの運動性をあの機体は若干であるが上回っている―――決戦兵器として製造され、ポテンシャルという意味でこの世界の兵器技術すら文字通り“一蹴”出来るだろうワーロックが、だ。


「パターン、修正」
「修正、愚か、修正、愚か、修正―――処理続行」


 そして、次の行動で確信に至った。
 相手は武装を散乱させ、大雑把に幾つもの武器を展開した。
 どうやらこの相手、手持ち火器を損失すれば残りの兵装は一切ないと見える。
 機動力と汎用性を重視したが故の弊害だ―――であるならば、最早今の手持ち武装に集中してしまった方がいいだろう。武器のインターフェースと規格の合わなさを考えれば破壊してしまった方がいいが、それに掛けている時間もワーロックにはない。
 手持ちの兵装はシールドタイプと、恐らくは装甲破壊用の重火器………先程までのそれと比べれば取り回しには欠けるが、被弾時は一撃で機体の装甲を持っていくだろう。此方の機体を撃破しようというなら、成程正解ではないが完全な間違いでもない。
 直線的な射撃がワーロックに当てられると思っているなら良い度胸だが、それを補うための不確定要素が戦場には幾つも存在する。“事故待ち”の射撃戦を行うだけの時間も、十分。
 なにしろヤツはもう動き出した、此方の狙いをもう把握したのか、それとも。

 ―――ワーロックは、兵器だ。
    AIであるG.O.Dは、人間の始末を至上目的にしている。

 そこに余計な感情を挟むことはない。邪魔なプロセスを入れるほど非効率なことはない。
 だから、ワーロックは気付かなかった。


「処分する、殲滅する。汝らに価値なし―――」


 ツバキ・オオトリの真髄も、彼女が一切表情や態度、まして心にすら見せない“渇き”を。
 この場の誰が気付くわけもないが、特にG.O.Dが気付くことはない。
 感情を持つことのないAIプログラムは極論、人間ではないのだから―――同僚たちや上司にさえ、欠片たりとも理解させないツバキの隠刃を見抜くことはない。最も、見抜いたところで意味などあるまい。

 彼女の昂りを誘うほど、ワーロックは戦士ではない。
 ワーロックは、兵器だ。殺し、壊し、砕き、全てを平らにする殺戮兵器だ。
 戦いに高揚を覚えることはないし、作業を作業以上に捉えることはない。で、あるならば―――。


「“ファイナルサクリファイス”」
「殲滅」


 人間のように、煩わしい感情で“切り札”を躊躇う理由はない。


 両腕を振り上げてから振り下ろして構え、胸部を突き出すようにしてエネルギーを収束。
 放たれた水流を確かに認識しておきながら、この場で行動をとらなかった清太郎が撒き散らした武装の数々と、同時に清太郎を巻き込める位置で。しかも、“自身に注意を引くべく”行動したツバキを序でに巻き込めると判断した瞬間………彼は防御行動だの回避行動だのを放棄した。
 砲弾のような水流が機体に齎す物理的衝撃とダメージによる小破さえも、イミテーションや防御行動に割くエネルギーさえ度外視し、収束させたエネルギーによる殲滅を敢行したのである。

 エネルギーのそれは、先程まで投擲していた“フォビドーンフォース”によく似ている。
 超高密度、かつ熱量を誇るリング状のエネルギーをそれぞれに分解し、自分の機体を中心として高速で旋回・増殖させながら幾つも広げ、極彩色のエネルギーを無数に散らばらせる。自機を中心に、球体状の広範囲をその熱量で文字通り“消し飛ばす”ような最終攻撃だ。
 半径にして10mほどの対象ならば構わず攻撃範囲に巻き込み、その熱量とエネルギーの暴力で焼き払う。それは相方との連携を考慮していた白い機動鎧………つまり清太郎も例外ではないし、彼が大雑把に展開した武装のうち大半も構わず中心にとらえて焼き尽くすだろう。投与したリソースには果てしない量が存在するし、何より―――。


『ワ………ワーロックが暴走したッ! クソッ、これだから異世界の兵器だの戦士は!』
『ひィッ、撤収、撤収を………!』
『ダッ、ダメです、他の機体が俺達の退路を塞いで―――うわーーーっ!!!』


 同じように連れて来て、対策本部の人間たちと交戦していた有人部隊までも。
 それらを範囲内に認識しているが故、結果的な撃破数が上回るからという理由で巻き込むが。

 別に、仕留めてしまえば何の関係もない。
 この場での彼らの命の価値など、ワーロックからすれば芥も同然だ。
 優先するべき攻撃目標を―――人間殲滅の為の障害を排除するためならば、ワーロックは行動を選ばない。ゆえに、攻撃範囲から多少逃れた程度ならば構わず焼き払い、吹き飛ばし、消し飛ばす。

    ・
 ―――彼は歴史是正機構の協力者などではない。
    ・
    彼は、流れ着いた先において尚、人類の粛清を至上目的とした殺戮AIだ。


>清太郎、ツバキ、(ALL)

4ヶ月前 No.1027

迅馬 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

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4ヶ月前 No.1028

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【……あれ? よく考えればビーム撃たれたら血出ないよね……お相手感謝です。ちょっと希望を投下する】
【時空防衛連盟本部/通路/ショパン】

 嫌だった。
 確かにいたのに、いなかった事にされるのが。
 音羽館のみんなにいたのにずっと気づかれないままになるのが嫌だった。
 嫌だった。
 音楽に出会ってから、脆弱な魂を薪にくべて燃え尽きるまで書き綴った作品達を、故郷の様に何も知らない輩に奪われ蹂躙されると考えると耐えられなかった。

 葬送行進曲の如く、死は暗く儚く行進していく。
 在りし日の悼みを思い出したせいだろう、その音色がだんだんと遠のいていく意識と共に満たしていく。
 ハママツに帰れない。
 もう二度、203号室の扉は開かれないのだろう。
 自分がいた事すらも気づかれないまま日常が進むよりも、行方不明扱いされて帰らぬ自分を待ち続けてくれる方がまだ救われる。
 そう自分の死を受け入れようとした時、無事だったらしいシエンタが動き始めた。
「……」
 良かった生きていると安堵して、黄緑の瞳から涙を流す。
 赤茶けた髪先は焦げている
 細く白い手は黒く染まっている。
 血を吐き痩せ衰えて死に逝くよりも、無惨な姿だと自嘲する。
 死を受け入れようとした時、シエンタが無謀な事を言ってきたので、死んでたまるかと覚醒した。
「……っ!……っ!」
 寝たきりで首をなんとか全速力で振り、声にならない叫びを上げる。
 シエンタとキラーの信頼関係を一番知らないショパンからすれば、自分が刺激しないよう事を運んだ苦労が台無しだと。
 動揺と焦燥に満ちた表情を浮かべていると、キラーは問いかけてくる。
「……『僕』がショパンだって、思い出しているから」
 こう真剣に問われた事はなかったので、一瞬口を閉ざし、困惑した表情で長考し自分なりの答えを出す。
 先程もそうだ。自分がピアノ詩人だと語る記憶だと、心の奥底から語りかけてくるのだ。
 本人だろうとも別人だろうとも、僕は、私はフレデリック・フランソワ・ショパンに変わりはない。
 それがショパンの答えだ。
 そして、次の返答。どうやらキラーと失う恐れの方向性が違ったらしい。
 頬を紅潮させて穏やかに微笑むと、優しげな声色で言う。
「僕も僕でなくなるのが、怖かった。
 今まで感じてきた事と僕の曲は、全部いらないって……歴史是正機構に馬鹿にされるのが嫌だったんだ」
 理不尽な感情で約40年間、失っては求めた月日の中音楽を描き続けた事をなかった事にされるのは、自分を馬鹿にされているようで耐えられなかった。
 同時に創り上げた作品は所詮作り物、けれどもそれらに感動した観客や読者の気持ちは本物である。
 その気持ちすらも歴史是正機構は、偽物だと踏みにじる行為だとも思っていた。
 答えられる事は全て答えたあと、キラーの撃てないという言葉を聞いて安堵すると。
 役目は終わったと思っていたのだが、キラーが注射器に変形したので神経質なショパンはぎょっと目を見開く。
「ゔあ゙ーっ! おしりはやめてーーーっ!!」
 そう射さないで欲しい箇所のリクエストを悲鳴に近い甲高い声で叫ぶが遅かった、瞬く間に注射器は刺されたが痛みはなかった。
 治療はありがたいのだが、射すなら一声かけて欲しい。
 そう荒治療に不満を感じているとキラーは女性の姿に変身し、シエンタに抱きつき泣いていた。
「……解決した」
 とマシュマロに視線を向けて、元の鬱屈した顔に戻ってぼそっと呟く。
 これでキラーとシエンタの話は大団円だ。
 もし、マシュマロが止めに入っていなかったらキラーは人格は愚か存在そのものが消失していただろう。
 だからこの戦果はマシュマロの物である。
「……」
 ショパンはこの二人を見て、思い出しうっすらと涙を流していた。

 "ねえ、私の曲好き?"
 "うん、好きだよ"

 消滅寸前、次元を越えて自分の手を取り合った気がした電子の愛人とのやり取りを思い出していた。
「……ところで、みんな……どう……するの?」
 と抱擁の水を差すところ悪いとショパンは申し訳なさそうに問う。
 和解でこの場を納めたが、まだ戦いは続いている。これから先どうするのだろうだろうか。
「……僕は、その……動画ファイル……」
 自分はこの戦いに参戦しない。
 この時代を変えても支障がないからだ。
 なので、コツコツと撮り溜めている動画を守る為にここに残るという意味を含んだ言葉をたどたどしく伝える。
 もし、中世にて大通りの欲望に駆られた暴徒を聴衆に変えた事を知った誰かに強要された場合は、仕方なく向かうつもりだ。
 その出来事を知った誰かが心の灯火としての英雄を具現化できるムジークで、魂の薪としての英雄を具現化させられた人間の救済の可能性に気づけば、恐らく強要される事にショパンはまったく気付いていなかった。
>マシュマロ・ヴァンディール シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー

4ヶ月前 No.1029

スパルタの代名詞 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_GwQ

【大統領官邸/正門/フォッサ・セントライト】

二人の間にフォッサが割り込んだことに、ストラーヴは激しく怒っているようである。彼女にとって、エステルとはそこまでの存在であるのかと、一瞬目を疑った。
それにしても、あれが本当に愛であると、今のストラーヴは思っているのか……フォッサは彼女の言葉を聞いて、哀れだと感じると同時に、短い溜息をついた。
寂しかったのなら、正直に言えばよかったものを。それを拗らせた挙げ句にエステルのような悪女に引っ掛かり、間違った概念を教え込まれるとは……だが、今責めるべきなのは彼女ではない。
批判されて然るべきなのは、悪魔のような手段でストラーヴを籠絡したエステルの方だ。実際、フォッサはそちらに強い憤りを抱いているし、狙いも完全に彼女を向いている。
問題は、これを続けることによって余計にストラーヴを誤った方向へ進ませてしまうことにならないか、ということだ。無理矢理に引き剥がそうとする行為が、更なる歪みを招く可能性がある。

「あんた、本当にあんな愛しか知らないっていうのかい? だとしたら、随分残念だね。世の中には、もっと美しい愛もあるんだよ」

確かに、エステルがもたらしているものが一種の愛であることは否定しないが、あれは愛の中でもかなり欲望に塗れたものであり、美しいものであるとはいえない。
ストラーヴはこの世に存在する愛が一つではない、ということを忘れてしまったのだろうか。いや、あの様子からすれば、肉欲に溺れて全てを見失っているのも頷ける。
両者を分断し、直接的な連携を不可能としたのはいいが、声まで遮ることを出来ない。エステルの応援を聞いたストラーヴは、俄然やる気を出してこちらへ迫ってくる。
だが、出しすぎだ。あんなペースで攻撃を続けていたら、自分自身を壊してしまう。フォッサの表情が曇る。彼女はエステルのためであれば、己の身すら擲つ覚悟なのかと。

「ストラーヴ、考えてみるんだ! あんたを本気で愛してる奴が、あんたをわざわざ危険に突っ込ませるようなことをすると思うかい!?」

紫の突風を既で回避し、しかし爆発的な余波によって身体を宙に舞わせながら、フォッサは叫ぶ。こんなものは、真実の愛ではない。エステルは、ストラーヴを利用しているだけなのだ。
本気で愛おしいと思っているならば、彼女を護るために何かしようとするはず。少なくとも、自分が今まで見てきた限りではそうだった。愛し合う者同士は、パートナーを本気で気に掛ける。
当然、守る力がない者も中にはいるだろうが、進んで危険に突っ込ませようとするなど、絶対にあり得ない。それをするということは、エステルの愛情は偽りであるか、愛情を利用してストラーヴを駒としているかのどちらかである。
空中で体勢を立て直して着地すると同時に、フォッサは熱い炎の弾丸と、大地を抉る土の弾丸をそれぞれ五連射する。炎の弾丸は、まるでフォッサの心の炎を象徴するかの如く燃え上がり、思いを乗せてストラーヴへ。土の弾丸は性悪女の正体を剥ぎ取るべくしてエステルへ、それぞれ向かう。

>ストラーヴ、エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール

4ヶ月前 No.1030

目指せ王子様 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

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4ヶ月前 No.1031

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_zuX

【時空防衛連盟/武器庫/ザーシャ】


「んだよ素っ気無え、と言うか選り好みしねえのは褒めてえが出来ねえのは良くねえな。組織替えでも考えてみたらどうだ?」

何だかんだ反応は返す辺り付き合い自体は良いのかもしれねえな、まあそれが何によるものかは興味もねえが黙っている奴と戦うのは気味が悪い。何て言えばいいんだろうな、生き物を戦っている気がしないって言えばいいか。
化け物でも化け物なりに唸ったり吼えたりする、人間も言葉を発するし意味の有無問わず声は出す。だからこそ何にも喋らねえ奴は苦手だなあ、何かしら意図が分かれば理解はそれなりに出来る。そういう点ではこのガキは戦いやすい、会話は続くからな。
会話さえありゃ何を思ってるかは取り敢えずは分かる、まあガキはさっきの言葉通り喋る敵は苦手なんだろうよ。少し調子を乱されていると見た、だとしても動きに鈍りが出ねえ辺りは仕事人ってところだろうよ。
さて、ガキは大曲剣を避けやがった。反応速度の良さが分かる対応だな、青白いあれを蜘蛛みてえに使って天井へと即座に飛んだ。掠りはしたがあんなもんで動きが止まる訳はねえな、残る真空波は俺に当たっても問題無い。自分の魔術でやられるとか、阿呆でしかねえ。
避ける以上は当たったら不味いってことだろうよ、ガキの見た目に違わず丈夫ではねえんだろうな。俺が避けねえのとは違う理由だな、戦いやすさ以前に命に関わるなら正しい対処だ。何にせよ、ここを制圧するだけの判断能力は本物ってことだ。
しっかし、知らないものを知ったかぶれないとはその通りなんだが勘が外れたかこりゃ。気付くってことは大体は思い当たる節があるもんだから、てっきりちぐはぐってのはそういう事を示してんのかと思ったんだけどなあ。ちぐはぐ、意味することが違えのか?
どっちにしても関係ないで言い切るのは年齢相応じゃあねえな、少しくらい不安がってもいいだろうがなあ。……なあんで俺は昔の俺とガキを重ねてんだろうなあ、ああ嫌だ嫌だ、そこまでお節介じゃねえっての。

「知らねえことを知ってるのは賢い証拠だがなあ!もうちょい興味を広く持てよガキィ!」

天井で反転、背後を取られた以上俺も向くしかねえんだが飛び越えた青白い壁と同じ天井のが引っかかる。残す理由、能力の使い方、少し考えりゃあ幾らでも手段が出てくる。詰まる所、何かある訳だ。判明したガキの能力は青白い何かを操れるだけだ、まだ底があるとは思ってねえ。
追いかけようと反転し、壁を飛び越えようと跳躍するが案の定壁は迎撃の形を取った。爆発と共に降り注ぐは針みてえな青白い何か、そして仕込んだように上と前方からの十字砲火、確かにこれはうまいやり方だなあ。
だが、こんなことでやられる程度があの人の最高傑作であってたまるか。十字砲火ってのは回避を制限し、防御も考えなければ突破されるもんだ。今回は上からってのが幸いな点だ、横に避ける余地があるからなあ。
しかしそれじゃあ駄目だ、今まで見えてきた中でもガキにペースを握られれば不利になるのは想像できる。あれは形が自在で、その場に残すことが出来て、さらに配置した後も形状の変化が可能だ。仕掛けられればそれだけ不利になる。
だからこそ選択するのは正面突破しかねえ、十字砲火の交差点で障壁で斜面を作り僅かな時間を生み出す。一秒、そんだけありゃあ十分な準備が出来る。風の推進力、船型の力場、準備が終わりゃあ突っ込むだけ。
突風を巻き起こしながら正面へと突っ込む、向かってくる針は船型に整えた力場で左右へ反らしながら後方へ受け流していく。そうすれば地面に手を付いているガキに剣が届く、なら振るしかねえよなあ。

「手前がなんだかは俺も知らねえが、もう少し年相応になってもいいんじゃねえか、なあ!」

突風の勢いのまま下方向へ大曲剣を薙ぐ、狙いは両足を一文字に断つこと。勿論それだけじゃあ終わらねえ、風の刃を大曲剣とは異なる軌道で振り下ろす。両肩から裂く様に地へ直角に振り下ろされる。
言うなれば三方向からの斬撃、避けるなら後方に下がるだけでいいがそうすれば勢いに乗った俺がまた追撃する。かといって横へ避けりゃあ振るった風の刃のどちらかには当たる、飛ばなきゃ足を狙った大曲剣も脅威だろうよ。
これも手傷で済ませるようならもうちょっと詰めていかなきゃなんねえ、そうなると糞親みたいな戦い方になっちまうから気に食わねえんだが、ガキの仕置きするにゃあ殺しは駄目だからなあ。狡いやり方も使いようってな。
腕位飛んでもくっつけてやれるし、医療の進歩ってのもすげえからなあ。ま、俺がやると患部の痛み以上に痛いらしいからな。たまに治療してみたが大体目を覚まして恨み言を言われる、そんだけ痛いんだろうなあ。
殺しはしねえ、ガキだしまだ知らねえこともあるだろうよ。殺すとしたならばガキに仕事を頼んだ奴だ、勘が間違っていなきゃあまあ作られてるだろうよ。もしそうなら探し出すし、そうでなくとも遊びも知らねえガキをこう使うのはまあ許せねえ。
あの人?あれは、まあ……別だ。……いややってることは変わんねえけど俺の親だし、まあちょっと色々あるからな。だからと言ってまた子供を拾って実験するなら一言いうけどな、ここに最高傑作がいるだろ?ってな。
閑話休題だ、何が言いたいかって言えば見た目らしく振舞えってこと。人を殺すために色々考えるより、同年代とどう遊ぶかってのを考えた方が健全だろうからなあ。原因が別にあるんなら、ごめんなさいさせた後に潰しに行ってやるよ。
だから、俺にとってこれは戦闘じゃなくて遊び。ガキに楽しさを教える為のな、逃げ出さねえ限りはしっかりと相手してやるよ。俺と違うだろうが、俺に対して何か感じたならそれが運命って奴だろうよ。教えられることは教えてやりてえ。

>>アリア=イヴァンヒルト

4ヶ月前 No.1032

____ @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【いえ、こちらこそ描写不足すみませんでした!
そしてお相手感謝です】
【大統領官邸/核シェルター/ミルグラム・ゴート】

 確かにそうだ。だから自分のした年月を明かした。
 積み重ねてきた罪を明かした。
 そんなのはとうの昔に感じている。
 ただ、罪悪感ではなく悦楽感としてだが。
 罪なきものになりすりつけて、破滅を迎えた人間に自業自得と嘲笑する娯楽。
 それだけが生き甲斐だった。
 だからその欲望は少年の言うとおり、死んでも終わらない渇望。
 満足しろ死んでも終わらないと言葉を投げ掛けられても、あまりにも長く囚われているミルグラムには届かず、ただ「はっ」と渇いた笑みを浴びさせると、勘違いと言われて怪訝な表情をつくりミラノの詠唱を聞いていた。
「あ? 何言ってやがる?」
 そう呟いた途端、突風がモノクルの鎖を揺らした。
 ここまでの用だ、紀元前に生まれ落ちた贖罪の亡霊はようやく裁きの手が迫る。
「忘れるな、ガキ。見えないとこで、俺みたいな奴等が大勢いるって事をな」
 ここに来たという事は、自分を倒しに来たのだろうだから命を取られると思うと、妙に清々しい気持ちになった。
 あらゆるものを薙ぎ倒しながらも風は迫りやがて自分に当たる。
「……!」
 何かが失う感覚がした。
 命ではない、もっと違う何かが奪われるような感覚。
 勘違いの意味がようやくわかった、こいつは己の命を『奪わない』つもりで戦いに挑んだ。
 『奪ってきた』のは自業自得だと、もしかしたら消滅よりももっと酷い物を自分に『与える』つもりだ。
「ああ、そういう事か……」
 目を閉じて風が通り過ぎると、自身の体から黒い霧が大量に吹き出して、人の形が崩れていく。
 全てが崩れ終わるとそこにいたのは、痩せ細り衰弱している黒山羊が一頭立っていた。
  奪われたのは自身の魂を構築する魔そのもの。
 荒野で死んだ時、魔は引き寄せられ贖罪の山羊として生まれ変わったのが事の発端。
 それが奪われた今、ミルグラムはただの生贄に戻った。
 人を呪わば穴二つ。
 まさに自業自得、その言葉通りの結末を迎えた。
「めえ」
 弱々しい声で一鳴きすると、少年を見据える。
 まるで自分はまだここにいると言わんばかりに、だが
その場でどさりと倒れて息絶えると、止まっていた時間を取り戻すかのように肉は爛れ落ちて骨と化した。
 もう黒い山羊による責任転嫁の怪物は生み出されない。
 だが、人類が存在している限り燔祭に操られ利他を貪る怪物は現れ、無実な人間達に罪を押し続ける。
 それがミルグラム・ゴートが少年に向けてそれを忘れるなと最期にはっきりと述べた言葉だった。
>ミラノ

4ヶ月前 No.1033

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_GwQ

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ギルバート・トムフール】

ルーシャの心には、捨てられる恐怖が嫌というほどに刻み込まれているのか、ライドウが手を差し伸べても彼女は震えるだけであり、その手を取ろうとはしない。
恐らく、歴史是正機構以外には居場所がないと考えているのだろう。どこへ行っても邪魔者扱いしかされなかった彼女は、今の居場所に留まることに固執しているように感じられる。
どんな形であれ、彼らが一応ルーシャを必要としているのは間違いない。だからこそ、彼女は悩みつつも、この作戦を引き受けることとしたのだろう。それこそが、自分の存在意義であると思って。
しかし、ギルバートはそれが誤りであると断定する。これまでは散々な道を歩んできたかも知れないが、彼女は"一人の人間"として、幸せを掴む権利を持っている。

ギルバートの嘘偽りのない言葉もあり、一瞬だけルーシャは心を開きかける。彼女は両手をこちらに伸ばそうとしたが、すぐに思い直し、手を引いてしまった。
突然の出来事に錯乱しているのか、彼女には落ち着きがない。どうやら二人を異世界人であると思っているらしく、結局別れの時が来るのであれば誘いに乗っても無駄であると思っているようだ。
確かに、ライドウに関して言えばそれは間違いではない。彼はいずれこの一件が解決し次第、元の世界へと帰還を果たす可能性が高いだろう。だが、ギルバートはどうか。
彼は元よりこの世界の住人だ。たとえ戦いが終わったとしても、どこかへ消え去る心配はない。別の世界に呼び出されるような事態がない限り、永遠にここに存在し続けるだろう。
ライドウが新たな使い魔を呼び出し、ルーシャを落ち着かせる。その目線に込められたメッセージを読み取ったギルバートは、改めてルーシャへと手を差し伸べ、語り掛ける。

「俺は異世界人ではない。この手を取ってくれるのならば、お前を決して一人にはしないと約束しよう」

まるで愛の告白であるかのような言葉になってしまったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。ここが、彼女を助けられるかどうかの瀬戸際だった。
ここまでして、なおも拒むというのであれば、もはや手立てはない。だが、異世界人ではないということは、きっとルーシャにとって重要な意味を持つはず。
彼女が望むのであれば、出来る限りその要求には応えてみせよう。ギルバートはそんな決意と共に、ルーシャの返答を待つ。

>ルーシャ・コバルト、17代目葛葉ライドウ

4ヶ月前 No.1034

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 ――まずは一撃。

 リアーナ=レッセントの異能<デュナミス>の真価は、農民を容易く兵に変える銃の応用だけではない。
 真実、あらゆる局面において最適解をたたき出すという発明の真理が刻まれている。
 何をどうすれば、これをどうやって、その全てを組み合わせ次第で叶えてくれる万能兵装。
 臆病者だからこそ想定外という言葉を撃ち消したい。そのために成し遂げるは、万能の鍛冶師であればいい。
 神の火でもって神の鉄を撃つ、神威の武具師。それこそが彼女の異能。

 炸裂する魔弾はクズノハの腹を穿っていく。飛び散る黒い何か。呪いあれとこの大地に汚染を刻みつける理。
 恐らく自分自身でもその異能を制御しきれていない。それはリアーナに限らず誰の目から見ても明らかだろう。
 だが救いの手は差し伸べない。英雄<ヒーロー>ならば手を伸ばしていたのだろうが――リアーナは何処までも臆病者。

「じゃ、潔く死になよ。運の尽きって言葉があるなら此処だね」

 この官邸はもうダメになるだろうし、呪いが撒き散らされたところで知ったことではない。
 他者のためにリスクの天秤を傾けないリアーナにとって――この戦闘は後のリスクの排除でしかない。
 飛ぶ槍は五十を超えている。
 数で攻めてきたか。四面楚歌で囲めば出来るとでも。
 こんなもの連射でどうにかしてしまえばいい――。

   ・・・ ・・・・
 ――いいや、何かある。

Aegis   Eis
「<守護>、<凍結>――ッ!」

 臆病者の予感が知らせた。分解――再構築。銃身の硬度を大幅に増強。
 更に凍結弾を作成。正面に複数発撃ち込み、凍らせて運動能力そのものを停止。
 氷とはそれすなわち時の棺なり。永劫安らかに眠れ砕け落ちろ。
 そして、――殴り切り払う。
  、  、   ・・・・・・
 先に殺せばいいと炸裂を始める黒腕を悉く薙ぎ払い、吹き飛ばしながらクズノハの真後ろまで駆け抜ける。
 停止、転換<ターン>。分解、再構築。組み込んだ金属は<凍結>、<爆裂>。

 次手、更にその次と思考を回し張り巡らせる。
 狙いは周辺環境ごとクズノハを凍らせること。
 トリガーを引くたびに撃ちだされる神威の魔弾は、着弾と同時に極冷を周囲にまき散らす。
 何時までも動き回るというのならば凍らせてから砕いてしまえばいい。

 その意図――通じるか。
 時間はない、何れの結果にせよ既にこの戦闘そのものが博打と化しつつあるのだ。

 撃ちだされた弾丸は真っすぐに彼女の胴体へ向けて駆け抜けた。
 結果を見る前にすかさず分解、再構築。装填された次弾は<炸裂>、<貫通>。

 凍らせて――粉々に砕く。
 凍てつく榴弾の射出後、内側から木端みじんに破壊せんと貫き穿つ魔弾を撃ち込んだ。

>クズノハ ALL

4ヶ月前 No.1035

裁定者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【大統領官邸/シチュエーションルーム/ダグラス・マクファーデン】

 敷いた岩壁の境界線を飛び越え、背後を狙い不規則に撃ち放つは六種の属性弾。単発の威力が敵を仕留めるには心許無く、総ての軌道の終着点が必ずしも敵を捉えるとは限らず。それは即ち、現時点に於いてはフォルトゥナの殺害を最終目標として定めていない事を意味する。官邸まで移動する最中に親友へと宣言した通り、殺害へと踏み切るのは最後の手段。和解が完全に潰える瞬間が訪れるまで、ダグラス・マクファーデンは決して彼女に殺意を抱かない。

「理解が早くて助かる」

 語る理由は、凡そ問題無く彼女に伝わった。そして叛逆を許容しないのも、想定するまでも無く当然の結末、既に是正機構へと損害を与えている以上、粛清の手からは逃れられない。それよりも、重要であったのは、此方の言葉に対して然程疑いを抱いている様子は見えなかった事か。真面に取り合って来ている分、滞りなく会話は続けられると判断出来る。

「……では、引き続き足掻くとしよう。インテグラーレの名を貶めた腐敗の一つ、マクファーデンの末裔として」

 先の発言で気付かれなかった部分を強調するかの様に――改めて、汚職の濡れ衣を着せられた"ある男"の正体を明確に示して行く。それは、この場に集結する者達、特にユーフォリア、フォルトゥナの二名にとっては最も関わり深いと言える人物。腐敗し切った政府上層に疎まれ、謂れなき冤罪によって投獄させられ、死に追いやられた一人の男――そう、彼女達の父親である。

「フォルトゥナ・インテグラーレ。お前には、我が血筋を失墜させる正当な権利がある。
 謂れなき罪を被せた罪科に対する報いは、行われて然るべきものだからだ。
 ――だが、その前に。心身共に穢れ切った父に代わり、俺なりのやり方で贖罪を果たさせて貰おう」

 無論、これらの言葉はあくまでダグラス自身の意志表明でしかない。フォルトゥナ自身の認識が如何なる物であるかなど、当然彼は知り得ぬ事。だが、その言葉が恐らくは、大きな波紋を引き起こす事だろう。大衆が示した表側――偽りしか知らぬ彼女に告げる、一部のみぞ知る裏側――真実を示すのである。

「――それまではこの命、くれてやる心算は無い。まこと、身勝手な理由ではあるがな」

 親友を狙って放たれる拳の間へと介入し、庇えるだけの距離は無く。同時に、それ以外の術での干渉を阻害するかの如く、放られた認識票を媒介として、此方を目掛けて放たれる漆黒の奔流。室内の残骸を消滅させる圧縮魔力が描く軌道は一直線。取るべき対処は防御――否。瞬時に行われる判断が告げる、これは避けるべきものだと。
 先に岩壁を破壊した際、それを構成していた魔力が吸収して力を増幅させていた。其の性質が今も継続しているのであれば、魔力による防御は不可能も同然、反って自らを貶める羽目になりかねない。他に、魔術を用いない防御手段も存在せず。
 故に行うは、回避。闇が自らに届くよりも、魔力吸収に巻き込まれるよりも疾く――先と同様、両足に魔力を収束させての極小爆発によって横方向へと大跳躍。そして滞空した状態で、碧に輝く風を全身に纏い、空中での疾駆を開始する。

「行くぞ」

 再びその背後を取るべく、不規則な軌道を描きながらも肉薄。その背中に目掛けて繰り出すは、黄雷を纏った右腕。幾重にも渡る身体能力の強化を施した肉体によって放たれる一撃は、重く。然し、身体強化を重ねた敵に少しの手傷を負わせるのであれば、これで漸く最低限のラインに立てる程度と言った所。その威力は、必殺に到底及ばない。

>フォルトゥナ・インテグラーレ ユーフォリア・インテグラーレ アルカディア・クアドリフォリオ ヴァイスハイト・インテグラーレ

4ヶ月前 No.1036

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【時空防衛連盟本部/武器庫/アリア=イヴァンヒルト】

 降り注ぐ刃、打ち付ける光。
 物理法則を無視したそれらは自分が編み込んだ小さな“セカイ”だ。
 アリア=イヴァンヒルトという少女の、不確かなれども自由に編み込める世界。
 仕込みの一つを終えながら、紅蒼のオッドアイが光刃の飛び交う戦場を見つめ………―――耳に入り込んで来る言葉の羅列を意味に変える。戦っている最中も良くしゃべるものだと思うが、しかし、付き合わない理由も無かった。
 いちいち、気が紛れる。本音を言えば打ち切りたいところだったが、打ち切ってもこの女は喋るだろう。
 それに“何が何でも殺す”という腹つもりではない。あくまでも殺すだけ殺せば帰還するのが此方の目的だ―――で、あるならば。“どうでもいい”ままの彼女を、どうでもいいなりにその好奇心で突き立てるだけの時間はある、はずなのだ。そう言い聞かせてしまっても問題はない。戦うに当たって、最終的に始末出来るならば問題はない。


「(効率的、ではないのだろうけど………)」
「決めるの、わたしではないですから。何処でも誰でも、関係ありませんよ」


 突っ込んで来る。
 狙いは正面突破―――十字砲火に留まるでもない、ペースを握らせる気もない。
 此方の力は変幻自在で攻防一体だが、一撃で勝負を決めるほどの火力があるでもない。そのための手数で、同時に“どのくらい”のイメージならば敵対者に傷を付けられるのかも、自分の中で折り合いを付けて行く必要がある。
 アリアにとって破壊出来ないと断じたものは壊せない。これは彼女の世界の一部。定まらない自分の、閉じた世界の造形物だ。決まった世界のかたちを弄繰り回すことなど出来ないし、するつもりもない。どうでもいいものに時間を費やすことの無意味さと非効率さは、彼女に技術を仕込んだ“親”代わりが教え込んで来たものだからだ。
 今だって、そう。彼女は何かを決めて来たわけではない。
 始まりがないから、何処に走るのか分からない。
 始まりが定まらないから、自分という存在のルーツについても掴めない。
 立っている基点が見つからないのだ。だから、熱を持てるようなことだって見つからない―――こんなことだって興味があるでもない。だが、何かしないよりはマシだった。探す探さないで言えば、此方の方が遥かに。


 ………アリアの行動を定めているのは、ストライフ・ロスチャイルドだ。
    彼女の手足であると同時に、
    、   、   、   、   、    ・・
    ストライフにとっても彼女はそれなりに重要なモノだった。


「二度は、言わせないで貰えますか」
「知らないことは、知りません。変わらないものも変わらない」


 愚直ながらに最短効率で向かって来る彼女を迎撃するように。
 地面に突いた手に合わせて、せり立つ青い刃がその大曲剣を迎撃した。
 訂正―――迎撃した、というが。しようとして破壊された、だ。彼女の中で“ザーシャ”という個人の膂力は明らかに自分より上で、そうした感覚が付いたのであればそう易々と覆せない。
 戦い慣れしている、それだけに鬱陶しい動きだ。狙いは脚、展開した刃で迎撃した僅かな時間に、地面を蹴って横に飛ぶ。後ろは論外、上空は相手も予想済み。予想されている行動の繰り返しで虚は突けない―――定石が定石足り得るのはそれが最適解だからこそ、相手にとっての定石と自分にとっての定石が嵌って千日手になる前に殺すのが戦いの上策だ。
 あの分なら、もっと詰めるだけ詰めて来るだろう。そうなる前に殺しに掛かる。
 吹き荒れる風刃が腕を狙う。斬り落とされては困る、此方の身体はそう頑丈ではない―――だからそれより早くに、反対方向に造った壁を蹴り抜いて飛び上がる。二度掠めた刃の傷は浅くない、風刃が掠めた先は銅、微かに流れる赤い血と痛みに表情を顰めている余裕もない。次々壁を蹴り抜いて飛び上がり、その両手に青光を編んで兵装を形造る。


「年相応も何も」
「貴女が一番、年に不相応でしょう」


 年相応とは、言う。
 彼女が一番ちぐはぐだろうに、それを当人から言われるというのは何ともまあ、滑稽だった。
 だから、ちょっぴり皮肉も込みで。
“それはおまえに返って来る言葉じゃないのか”って返しながら相手を見据える。
 ………何処かが違う。似ているようで、違う。このちぐはぐさは自分の知っている違和感とはまた違う。その上で、そう自分とも変わらないだろう外見年齢の少女は、まるで多くの出来事を体験したみたいな態度だ。自分で何かを決めて、自分の世界が形造られたまま変わらない人間の、表情だ。だから―――。

 ―――だから、この少女は何の為に戦っている。

 すこしだけ。ほんの少しだけ、興味の沸いたことだったが。
 どうでもいい相手に“どうでもいい”以上の感情は懐かない。懐けない。

 であるに―――。


「それにしても―――良く、口が動く」


 自覚した。どうでもいいまま殺さなければ、この女はわたしに踏み込んで来る。
 何が創りたいかたちなのかも分からない自分の領域《セカイ》に、ずけずけと。

 ―――ならば、対応の仕方は決まっている。
    ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・
    分からないものは、分からないまま壊すのだ。


 形造った兵装は“槍”だった。長い、棘を思わせるような槍。
 オーバーヘッドの要領で蹴り抜いて、空中から斜め下に居るザーシャを狙ったそれは―――一定の距離までを進むと不規則に分裂し、無数の青い光の棘になって降り注ぐ。いったい何処のどのタイミングで分裂するかさえも彼女は把握していない、“そうなる”ように造って仕向けただけだからだ。あの手数の凌ぎ方を見る以上、必要なのは先の壁を射貫く貫通力だ。
 そうしたイメージのものに生まれたものだ。正面突破の彼女を縫い止めるに必要なものが貫通力と速度であるなら、必然そうした武器になる―――降り注いだ槍は、その周囲に立ち止まっていれば構わず彼女を串刺しにするだろう。


>ザーシャ

4ヶ月前 No.1037

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【時空防衛連盟本部/オペレーションルーム/ナイトローグ、葛城】

「……」
無数のモニターやPC、更には職員が作業を行うためのデスクが並べられている部屋。
それを無言で見つめているのは『ナイトローグ』と呼ばれる一人の男。

「ない、か……」
すでに別働隊がセキュリティやら何やらを丸裸にしていたため、潜入は容易だった。
しかし、まだ自分の目的に関わるものを何一つ手に入れられていなかった。
もちろん、このオペレーションルームも例外ではない。

(なら……)「タイムマシンの場所を教えてもらおうか……」
そこでナイトローグは情報を聞き出そうとした。
持っていたトランスチームガンを職員に突きつけることで。

「おっと、そこまでだ!」
「何の用だ? 小娘……」
「お前が何考えてるかは知らねぇが、舞い忍ばせてもらうぜ!」
運の悪い事に邪魔が入ってしまった。
ナイトローグに横槍を入れたのは金髪ロングの少女『葛城』。
騒ぎの元に向かっていたところ、たまたまナイトローグに出くわしたのだ。
少女は構えを取り、ナイトローグに啖呵を切った――――

>周辺all

【設定的に問題があった場合、言ってくれれば修正します】
【あとこんな流れですが乱入は大歓迎ですのでご自由にどうぞ〜】

4ヶ月前 No.1038

フラナガン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【時空防衛連盟本部⇒放送局/応接間⇒放送室/ニール・フラナガン】


 ………羨ましい、と。彼は素直に感じた。

 電池が半分を切った端末から受信された映像で、朗々と意思を歌い上げる女性を。
 これが終わった後、何をするのかが政治家の務めなのかと語る彼女を。
 この動乱に対して、最も誠実に自分の意思を民に伝え、向き合うことを促した一介の人間を。
 それは別に派手なことではない。偉業と言うことでもない。
 ただ語るだけだ。議員ならば誰だってやる。堂々と言えるか言えないかの、そんな違いくらい。
 羨ましい、と。心の底から感じた。自分にもあんな頃があっただろうか、それとも自分は最初からこうだったのだろうか。思い出すことは出来ないし、そんなセンチメンタルに浸る時間の余裕はなかった。

 ………ここまでされる謂れはない、と。彼は何度目かの愚痴をこぼした。

 連絡が来たのは、ついこの間だ。
 戦闘状態の本部から抜け出して、放送局に襲撃を掛けろという議員たちの言葉。

 ―――いや、何故私に?
    疑問を呈してみたが、聞く様子さえなかった。

 切羽詰まった様子の壮年の議員たちは“良いから早く鎮圧して来い”と言いたげな様子で迎えを寄越して来た。
 たったそれだけだ。そんなことをすれば、自分たちが汚職議員なのだと伝えるも同然だろうに。
 なんとも理屈の合わない行動だ。まるでだれかに命じられ、脅されたかのような指示を押し付けられたフラナガンは、しかしそれを断る事も出来なかった自分に憂鬱気な感情を覚えていた。
 鎮圧のために議員たちの私兵を押し付けられる。数は三個小隊ほど。
 議員一人が居る放送局を鎮圧するだけならば十分だが、相手は“連盟の協力者”だ。そんなものでは済むまい。例え、ニール・フラナガンという男のある異能力を込みにしても………鎮圧というには、あまりにもちぐはぐな戦力の配備だ。

 彼を乗せた車が、放送局に到着する。
 遠くで上がる火の手と喧騒を見ながら、彼はふと思った。

「(………悪いことを、しているのだろうなあ。私は)」

 分かっているが、止める勇気はなかった。
 彼にそれを“止めよう”とする心意気も、力もなかったからだ。


――― ◇ ◆ ◇ ―――


 彼は、放送室へと到着した。
 三個小隊のうち二個小隊は警戒に回し、一個小隊を自分の護衛に回す。
 借りた部隊だ、傷は付けられない。付ければ大目玉だ―――それはフラナガンの良心でもあったが、彼が小心者であることを示す証拠でもあった。凛と佇み、市民たちとの放送を終え、移動を開始しようとしたショコラより大柄なフラナガンだが、大きさは逆転して見えた。彼女の雄姿に対して、自分や自分に命令した議員たちのなんと矮小なことだろう。

 だが………来てしまった以上、止められないのだ。
 フラナガンの仕事は決まっている。放送局の襲撃と鎮圧。
 本来議員である彼がするべきではない仕事のはずだったが………大人とは、上の命令に逆らえない生き物なのだ。残念なことに、上下関係は社会の基本であると言える。

「そこまでだ。ショコラ・ヴァンディールくん」

 だから、彼は“如何にも”と言った様子で声を掛ける。
 威圧的になれないのは、何処までもフラナガンという男の性質を示していた。

「上からの指示だ。………大人しく投降してはくれんかね。
 悪いようにはしないとも。私の権限だと、あまり、保障というヤツは出来んが―――」

>ショコラ・ヴァンディール


【もしも誰かと絡む予定が無く、よろしければ〜】

4ヶ月前 No.1039

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【大統領官邸/???(ホテル屋上)/ストライフ・ロスチャイルド】


 街中の巨大スクリーンや各家庭のモニター、果ては個人の端末。
 未来当代の人間が情報を得るために必須のものだが、これらを管理するのは放送局だ。
 ………彼らは情報を整理、統括する。好きなように濾過し、真実を捻じ曲げる。市民たちを先導し、歪曲した事実によって人間を熱狂させる。メディアとは身も蓋もないがそういうものだし、ストライフはそれを良く知っていた。
 知っているから、彼女は其方にもパイプを持っている。“創った”パイプだった。
 世界を好きなように弄繰り回し、利用できるものを利用して弄ぶ。彼女の十八番で得意技術。であるに、そのモニターから受信された映像と、姿を現した少女の気風に関しては、ストライフの中では常識という言葉にはカテゴライズされるものではない―――むしろ逆だ。歪曲し、好き勝手に弄繰り回して情報を送り付けるのが基本のメディアで、馬鹿正直に自分の居場所を伝えて、あまつさえ素直に内容を告発しようなどと考える輩を、ストライフは幾人しか知らない。正確には、二人。


「ユリちゃんじゃないなら………ははぁ? ショコちゃんか。
 何してくれてんのかと思ったけど、いやー元気ねー、相変わらずかわいいことしてくれるわー」


 別に、痛くも痒くもない。むしろ“ありがたい”話だった。
 ストライフ・ロスチャイルドにとって世界とは獲り続けても残っているものではないのだ。
 自分の財産が湯水のように湧いてくると誤認する馬鹿は居ない―――持つ者は、持つための行動をするから持つ者なのだ。世界も同じ、好きなように種を撒いて育てるのはいいが、その分のケアもしなければならない。自分の足場を削るなら、その分足場を補填しなくてはならないのと同じだ。此処こそ、彼女がダン・マッケーニ=バビロンを人間ではなく災害呼ばわりする理由だった。

 そして同時に………ユーフォリアや、
“ショコちゃん”ことショコラ・ヴァンディールらに対して、あるレッテルを張る理由だった。善意と善行、キレイゴトだけで全てが回るとでも思っているような彼女達に、あるレッテルを。

 それに、今のままならばありがたい話ではあるが。
 放置し続けても無害なまま終わるタイプの話ではないのを、ストライフは分かっていた。


「私が行くのもなぁ。フリーにしておかないと後が面倒だし、
 なんだかんだって言って、ショコちゃんが対策しないはずないし………」

「というか、バロさんが何やらかしてるかの方が重要だし………。
 なんかヘンな玩具見つけてハイになってたりしないかな、あの歩くミサイル発射装置」


 先に言っておくが、ストライフは公正明大な女ではないし、計算された行動をするでもない。
 感情を疎むようなことを言うが、その一方で人間と感情が切り離せないことを自覚している。
 欲望、感情、精神、そうした不確定要素と付き合うしかないのが人間なのだ。
 であるに、彼女の行動理由とは至ってシンプル―――最後に自分が立って笑っていれば勝ち。その為の所業において、必要であるならばリスクを侵し、必要でないならば徹底してリスクを侵さないのが傀儡たちの女王だった。

「ま、いいや」

 その一方で………ストライフの行動パターンというものは、結構決まっている。
 彼女は感情に関して別に否定をしない。
 であるに、自分の行動には損得勘定の“次に”私情が入る。

 何が言いたいのか、と言うと―――。

   ・・・
「私、あんたのことも嫌いなんだよね」
「だーかーらー。あんまり構ってる暇ないんだけど、邪魔して落として穢してやろっと。
 空いてる手は―――ああ、そうだ、居た居たっ―――」


 自分が出るでもないが、気に食わないから嫌がらせの一つはしてやろう、と。
 つまりそういう話だった。

 ―――ニール・フラナガンが別の議員たちに有無を言わさず、
    放送局の鎮圧を押し付けられる、丁度10分ほど前の出来事である。


>(ALL)

4ヶ月前 No.1040

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【時空防衛連盟本部/エントランス/橋川 清太郎】

ツバキはこちらの意図を察してくれたのか、黒鐵に隙を作らせるようなフットワークと攻撃を敢行。振り撒かれる水飛沫が照明の光を乱反射して煌めく。

(流石だなぁ)

まるで動揺など見せない彼女の姿に舌を巻いた。基礎能力でほぼ勝っている相手に対して、全く怯むことなく立ち向かうその高潔さは只管眩しいばかり。それに比べて自分ときたらどうだ、先程からミスを重ね醜態を晒すだけではないか。

(――考えるな! 今は戦闘中だぞ!)

不要な思考を広げる己に渇を入れ、黒鐵の隙を探ることに集中する。が、次の瞬間バイザーが超高密度のエネルギー反応を捉えた。

「またさっきと同じ……いや、違う!?」

てっきりあの光輪を打ち出すかと思いきや、どうもそれとは別の攻撃らしい。
極限にまで高まった電熱が、一種の鮮やかさすら伴って破壊の暴風と化す。あらゆる生命を拒絶するといわんばかりの裁光、それは殺意の具現とでも評すべきか。

(こいつを仕留め損ねたら、他の皆はどうなる)

ならば挑もう、戦い抜いて見せよう。





――鋼の狂気に。

「いくぞ」

選んだのは退避ではなく抗拒。そしてどちらにしろツバキを気にかける余裕などない、まあ彼女のことだ、上手く範囲外に逃れるだろう。左肩装甲に付けてあるシールドを構えその場で踏み止まる、そしてパワーサポートと必要最低限の機能だけ残しあとは全てのエネルギーをシールドに回した。NoneActiveTortoiseは実体装甲と、それを覆うように展開するエネルギーフィールドの二重構造だ、実体部分は手の施し様がないが、エネルギー部分は出力調整が可能である。

「く……う……あ……っ!!!」

瞬く間に実体部分が熔解し、削られ始めた。限界までエネルギー部分の出力を上げてもこのザマか、我ながら情けなくなってくる。
程なくしてNoneActiveTortoiseは消失、次は本体装甲への侵攻が始まった。バイザーにポップアップされる『耐熱値超過』のウインドウを見て冷や汗が流れる。体勢の関係上、攻撃に晒されるのは左半身のみ。右側に及ぶことがあるとすれば、それは脳と心臓が破壊された時だろう。
特殊合金製の堅牢な鎧が、紙細工の如く吹き飛ばされる。そして秒と経たない内に暴風は次へ――何の強靭さも持たない、無防備な肉塊へと到達した。

「うぉおおおオォおああアああ!!!!」

左手足の皮膚が瞬時に焼き尽くされ、一切の遠慮もなく真皮が蹂躙されていく。神経がショートを起こすのではないかと思える程の痛覚認識を受けながらも、まだGrandSmasherは手放さない。そして次の瞬間――


――嵐が、止んだ。
刹那が悠久に感じられる獄悶は終わりを迎えた、機神に一泡吹かせる時だ。
焼け爛れた皮膚は未だ激痛を訴えているが、声にならぬ怒号で押し殺し、損傷の殆どない右半身――GrandSmasherとそれを保持した右腕を構える。

この時を待ちに待っていた。GrandSmasherは破壊力こそ頭抜けているが、取り回しの悪さが目立つ。それに加えあちらは分身とかいう優秀な防御手段を持っている、普通のやり方ではまず当たらないだろう。
しかし……比較的近い距離、それも高出力武装の使用直後なら? 今の距離はせいぜい10mといったところ、バズーカ型武装の弾速でも奴の行動前に間に合う確率は低くない。

「これでどうだああああ!!」

ロックオンの時間すら惜しみ、目測による照準合わせだけを済ませてトリガーを引いた。

これが報いの一矢となるか、それとも徒爾(とじ)な足掻きで終わるか。

>>ワーロック、ツバキ・オオトリ

4ヶ月前 No.1041

紅焔の塵殺者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【大統領官邸/公邸→移動開始/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 天墜の末路へと誘う深紅を、獅子の瞳が捉えた刹那――彼を"人間"の領域へと繋ぎ止めていたあらゆる枷が外れて行く。純化されて行く赫怒の一色に染められた意識は、狂気に満ちた理性を取り戻し。人たる己の身体を、細部に至るまで在るべき形へと再構成して行き。飽くなき闘志、果てが存在しない意志の強さが、"英雄"の宿す力を爆発的に増加させる不条理を巻き起こす。
 魔王の一手が齎した結果は、正に天変地異と称するに相応しく。その成果を明確な形で示すかの如く、凄絶なる光景は展開される。獅子に向けた想いを乗せて振り下ろされる、全ての属性を束ねた虹の刃。万象を統べる性質を持つ事は即ち、阻む事を赦されるのは同じ万象を統べる物のみ。道理に従うならば、"人間"の焔では決して打ち勝てない。
 だが――此処に在るのは"英雄"。万象すらも踏み躙り、進軍を続ける怪物。属性間の優位性を、単純な出力の差で強引に打ち破る不条理を以て、揮われた赫熱の剣は虹の刃を一笑に付す。齎される熱と衝撃とが、嘗ての仲間さえも蹂躙する。吹き飛ばされながらも、必死に自らへと伸ばされる手が意味する物を、遂ぞ獅子は気付かない。彼が見続ける物は常に"前"、掴み取るべき"未来"、至るべき"太陽"だけ――

「来い、魔王――貴様の総てに引導を渡してくれるッ!」

 暴虐的な炎熱を収束させる緋色の剣が、超圧縮された虹の光星と激突する。常軌を逸する数段違いの疾さを宿す殺戮の絶技へと叩き込まれる拳撃の数々。断頭の刃を弾き、横薙ぎを力任せに捻じ伏せ、五臓六腑を蹂躙し尽くす突きと切り上げを相殺し。刃に裂かれ原型を止めぬ魔王の拳は、気合と根性で創形し直す虹の拳で代替され。断たれた右足さえも、虹の魔力で再度創り直して取り戻す。これで再び互いに五体満足、無傷の状態へと元通りになり。

 ――最大限の返礼として、魔王が撃ち込むは天上天下、森羅万象を虚無へと還す消滅の波動。

   Hyper Nova
「万象滅却、極超新星ァァァァァァァ――!」

 応える獅子の叫び。掲げる焔の意志の強き事を雄弁に語るが如く、咆哮は大気を轟かせながら――同時に引き起こされるは、万象を同じく虚無へと滅却する、極超新星爆発の如し超絶の一撃。戦場一帯に甚大では済まされない程の損害を齎す災禍同士が、世界を震動させ、唸り慄き泣き叫びながら、激しく衝突を繰り広げる。既に人智を越えた窮極同士の激突、その凄まじき事を言葉で表現しようにも、陳腐を重ねる以外に道は無く。
 それ故、その結果だけを告げるとすれば――勝負の末に、戦場である公邸から獅子の姿は消えていた、それこそ跡形も無く。
 では、獅子は死んだのか。否、"生きている"。此処より遠く離れた場所へと吹き飛ばされながらも、瀕死へと追い込まれた己の身体を、即座に修復し直している――だが、此の場へと戻って来る事は、無い。

「我が聖戦の刻は、まだ遠い――次に相見えた時こそ、雌雄を決させて貰うぞ」

 ――今は雌雄を決するべき時に非ず。魔王との決戦よりも優先しなければならない事が、存在するが故に。だから、次に相見えた時こそ"聖戦"であると。衝撃に吹き飛ばされる寸前、獅子は魔王に向けて言葉を残した。

>ダン・マッケーニ=バビロン (シフォン・ヴァンディール)


【返信が遅れました、申し訳ない。一先ず此方もこれで一旦撤退という形とさせて頂きます、お相手ありがとうございました!】

4ヶ月前 No.1042

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_zuX

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


運の尽きだと、潔く死になよと女性は告げた。酷く冷たい言葉であった、何の躊躇もなく淡々と告げられたそれは心からの言葉だろう。この女性は、本心から私が排除されることを望んでいる。
このままいれば存在の消失は確実であった、逃げられる脚もなければ手段もない。周囲を穢しながら生者を殺し続ける呪いも、私の生存を視野に入れていない。ただの入れ物を重視する理由はない、そういう事なのだろう。
なのに、逃がそうともしない。依然絡み続けたままの触腕は緩む気配はない、反転して這いずってでも逃げようとしても黒いそれは私の腕を押さえて離さない。自身の身体を構成していたものなのに、その行動原理が未だに分からない。
この地へ貪欲に広がり続ける理由も、女性に執拗に襲い掛かる理由も、私には分からない。分かったところで既にどうにかできる状況でもない、それでも僅かな気休めにはなったかもしれない。だって、死は眼前に迫っている。
黒の水飛沫を凍結させ砕く、一瞬動きが止まったそれを見逃さずに払った女性はそのまま背後へと消えた。動けぬ私は視界から消えた彼女を視線で追うことは叶わない、見えるのは凍り砕かれた後蠢きだす黒い破片。
呪いは止まらない、凍り付くのは僅かな間のみ。少しでも間を置けば再び動き出す、呪いを止める術は私には分からない。只分かるのは、存在する以上周囲を穢し、殺し、蹂躙し続ける劇物であり生けるものの天敵である事だけ。

「……いやだ、いやだよ。何も残してない、まだ消えたくないよ。」

嗚咽交じりの情けない声、泥沼の様な呪いに半身を沈めながら響く。こんな私を助けてくれる存在が居るならば助けて欲しかった、全てが創りもので呪いと言う厄物を抱える私を誰でもいいから助けて欲しかった。
そんな都合の良い英雄なんていない事は分かっていた、でも私はそんな英雄になりたかったんだと思う。誰一人助けられず、自身から漏れだす黒泥に縛られて助けを求める存在がなれるわけもなかったけど、そう望んでいた。
しかしもう遅いのだ、どうにか身体を捩りながら少しでも迫り来る死から逃げようとする矮小な存在でしかない私。もがけども一向に動かず、上半身のみで地を這う芋虫に迫る弾丸。
発砲音に気付き、首を最大限に後方に向けながらどうにかして視界に収めたのは極冷の魔弾。黒い飛沫を停止させたあれと同じ性質を持った弾丸は私の胴に着弾し、呪いも同時に凍らされていく。
寒さを感じぬ身体にこれほど感謝したことはない、あれば動かなくなっていく身体に加えて痛みすら感じる冷気を受けていたのだろう。きっと、痛みに耐えきれずさらに無様な姿を晒していただろう。
胴がまず動かなくなり、末端の腕部が凍り始めたころに聞こえたのは新たな発砲音。どう足掻こうとも動けぬことに変わらない、受け入れかけた私の脳裏に浮かんだのは先の女性の行動。黒い飛沫を凍らせた後に何をしていた?
その考えに至ったと同時に、私の身体は宙を舞っていた。視界の端に移った自身の身体は胸部より下はなく、腕も肘より先は無くなっていた。そして共に飛び散るのは黒い破片と、肌色の破片。
着弾と共に爆ぜ散った弾丸、それは凍った私の身体を砕きながら未だ熱を持った身体との結合を断った。故に凍った部分は砕け散り、手遅れでない部分のみが残っていた。もう三割程度しか残っていないのに、まだ死んでいない。
少し離れた地面に叩きつけられる、数度転がり漸く勢いが収まった。背の低い草が視界を邪魔するも、女性の姿は運良く、あるいは悪く視界に捉えていた。もう抵抗のしようがない、どうなれば死ねるのかすらも知らずに殺され続けるのだろう。
凍った呪いはじきに動き出すだろう、先のようにまた蠢きだし周囲へ侵蝕を始める。そうなれば再び女性へ襲い掛かるだろうが、もう終わりにしたい。私は諦めた、都合の良い英雄などいない、私は消える、きっとそうなる。

「―――助けて、そう願ったら貴方は助けてくれますか?」

だから、女性の答えは分かり切っているけれど聞きたかった。都合の良い英雄は本当にいないのかと、どうしようもなく消えることを受け入れた私でさえ救ってくれる存在はいるのかと。
これが結末ならもうそれでいい、私が死ぬことで女性が生き延びるとそう思えば何かを遺せたと錯覚できる。胸像のようになった私の身体はもう動けない、女性は嬲るようには見えないがどうも私の身体は丈夫すぎる。
まだ生きてしまっている、これだけ身体を失っても尚意識もあるし会話もできる。でもそれだけ、生き残れば残るだけ周囲を傷付けてしまう。ならば死んだ方が綺麗だろう、傷付けずに済むだろう。
納得した訳ではない、諦めただけ。死にたくない、消えたくない、未だにその気持ちは私の中に強く残っている。でもどうにもできない、傷口が凍り呪いが溢れ出ることもなく、何れ蠢くとは言え今は凍り付いている黒い沼。もう守るものはない。
目を閉じ、最期の時を待とう。この呪いが詰められていた身体はただ何も感じない、気味の悪かったそれが今では心地よく感じていた。心残りは大いにある、それでも残された道はもうないのだから。歩んできたものも、これからもない。

>>リアーナ=レッセント


【次で退場を予定しております、しっかりと殺してくださると嬉しいです。確ロルが必要ならばどうぞお願いします。】

4ヶ月前 No.1043

一介の議員 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【放送局/放送室/ショコラ・ヴァンディール】

演説を終えたショコラは、市民の保護と連盟の手助けをすべく、放送局から立ち去ろうとしていた。彼女は世界政府の議員でありながら、持ち前の異能を活かして協力者としての活動も行っている。課題は山積みだ。
まずは連盟本部に向かい、精兵達の救援を…と考えたところで、局内の様子に無視できない違和感を覚える。先程は慌ただしいことこの上なかったというのに、シンと静まり返っているではないか。
状況が状況なだけに襲撃の可能性も大いに有り得る。急いで局員達の安否を確認しよう、そう決めて放送室を出ようとするショコラの前に立ちふさがる、年配の男性。
驚いて後ろに飛び退くも、すぐに見知った顔であることに気付く。

「フラナガン議員!」

重ねた歳月と苦労の証が刻まれた顔は、少なからずショコラを安心させてくれた。彼の名はニール・フラナガン、彼女と同じ世界政府所属の議員だ。腐敗が蔓延る中で貴重な良心的存在であり、彼女は知る由もないものの、時空防衛連盟への支援も行っている影の協力者。
彼ならば頼りにできる。この切羽詰まった状況下で、数少ない信頼できる人間に会えたことを喜ぶショコラだが…そんな彼女の認識は、いささか"甘かった"と言わざるを得ない。
彼の後に続いて、武器を携えた兵士が踏み入ってくる。四十前後という人数は、議員を護衛すべく手配されたにしては多すぎる。局内を支配する静寂の原因も彼らだろう。まだ同規模の部隊が幾つかあるはずだ。
警戒の色を浮かべて後ずさるショコラ。投降を促す言葉が、彼女の疑念を現実のものとする。『上からの指示』というワードからして本心でやっているわけではない可能性もあるが、いずれにせよもう彼を頼ることはできない。
加えてこれは、彼女に敵意を向けていた議員達が、遂に排除に乗り出したという動かぬ証拠でもある。政府を追われたも同然だ。

ユーフォリアとその父に憧れて政治家になったショコラだが、皮肉にも二人が歩んだのと寸分違わない道を辿ることとなってしまった。

「お断りします。私は政治家として、間違ったことに屈するわけにはいかないのです。

それは貴方も同じでしょう」

しかし白旗を揚げるわけにはいかない。腐敗の魔の手に絡め取られるなど以ての外だ。フラナガン議員に続いて自分まで悪に負ければ、もう政府を正しい方向へ導くことのできる人間はいなくなってしまう。その思いと覚悟が彼女を奮い立たせる。
兵士に銃を向けられようと毅然とした態度を崩さず、自らの決して曲げることのない意志を述べる。その佇まいからは、力で押さえ付けようとするのなら、あくまで抗い抜くのみだという、鋼鉄のような信念が見て取れた。

>>ニール・フラナガン


【絡み感謝です!】

4ヶ月前 No.1044

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_zuX

【時空防衛連盟/武器庫/ザーシャ】


「へぇ……見た目だけじゃなくて中身もガキか?手前一人じゃ何も出来ねえってか、それこそ何処の誰だって関係なく自分で決めて見ろってなあ!」

決めるのは自分じゃねえ、か。何か言われねえと出来ねえ、とは違うだろうが敢えてこう言い方をするしかねえな。何て言えばいいんだろうなあ、このガキは感情が豊かじゃねえって言うか、興味はあってもそれだけって言うか、よく分かんねえ。
考えてることが読めねえわけじゃねえ、だからと言って分かりやすいわけでもねえ。見えにくいってのが一番しっくりくるな、ガキはガキなんだろうがそれ以上が見えてこねえんだよなあ。仕事人とは言ったが、これこそ本当に機械みてえだな。
ま、血が出てる時点でそれはねえな。それはそれとして、予想こそしてたが本当にガキを使う奴がいるとはな。しかも話の限りじゃあ逆らえねえようにしてるみてえだ、これは遊びの後に潰しに行くのは確定だなあ。
何故かって?んなもん当然だろうよ、ガキがそれらしくなるために一番の邪魔になるからなあ。お節介結構、俺はあの人の娘であると同時に誇りを持った戦士にもなる。その戦士は子供がこうなってりゃ助けるだろうよ、……理由付けはこれでいい、俺の意思だとかは似合わねえからな。
さあて、手を合わせたかと思えば青白い刃が大曲剣を防ごうと出現しやがる。が、呆気ねえほどに簡単に砕けた。壁として設置するほど固いのかと思ったらそうでもねえのか、一瞬振りぬくのをやめようかとも考えたがこの強度なら問題ねえ。
で、ガキは横へ跳んだか。時間は稼がれたってわけだ、下がって距離を取るかと思ったがそこまで単純じゃあねえだろうよ。現に壁を作って三角飛びで距離を取り始める、まあそれでも風の刃は避け切れねえ見てえだが。

「手前も二度言わせんじゃねえ、それとも分かんなかったか?なら、分かりやすく言ってやる。」
「分かんねえことを理解できんのは、賢い。そしてガキらしくなれってんだよ、その年で変われねえとか年寄りに失礼だっての。」

やれやれと、そんな擬音が出そうな姿勢を取る。両手の平を上に向けて、左右に広げるあれだ。首も適度に振ってやろうかとも思ったが流石に視線を外せるほど簡単な相手じゃねえ、強さは間違いなく本物だ。
ほおら、壁作ってどんどん飛んだかと思えば青白いあれで武器を形成してやがる。しっかし年不相応はお前だろうと来たもんだ、年齢のこと話した覚えは無いんだけどなあ俺ぁ。目が良いのは間違いねえな。
んー、いや似てんのかな。ちぐはぐって表現、あれを最初に思った奴と。だから見た目と年齢が一致しねえことに気が付いた、そう考えりゃあまあ理解できなくはねえ。ま、どっちにしても観察眼に優れてんなあガキは。
んで、口が良く動くって言った後に雰囲気が変わったな。一線超えちまったか?気に障る事でも言ったのか、それとも時間がねえのか、ガキの中で許容できない存在になったか、まあどれだって構いはしねえ。やることに変わりはねえからな。
形成した武器は槍、大方障壁での強引な防御を貫通するためだろうな、若しくは力場の逸らしの無効化か。ちゃんと戦況を見て動けんのは実力がある証拠だ、うん褒めてやる。確かにここの連中がやられるわけだ、一筋縄じゃあ行かねえな。
だが槍は蹴り飛ばすものだったかなあ、なんざ考えてたら空中で分裂しやがる。先の十字砲火の純粋な強化版ってところか、合計数じゃあ劣るだろうが手数も大して減ってねえ、その割にゃあ貫通力も速度も上、いいじゃねえの。

「人は見かけによらねえって言うだろうよ、それと同じだぜ。」
「俺は年には相応してるが、なあ!」

このタイプには力場を形で誤魔化しても貫通するのが先、かといって素直に障壁で受ければ砕ける方が早い。じゃあどうすればいいのかって?単純だ、素直に受けなきゃいいだけだ、鋭いものに壁が直角に受けりゃあ簡単に砕ける。
なら斜めにすればいい、物理法則は当てになんねえ能力かもしれねえが障壁で防げた以上は同じことが出来る。障壁に角度をつけて衝撃を逃がして、逸らす。突破するに十分な防御力だろうよ。
大曲剣を右手へと持ち替えながら、突風を追い風にして再び駆けだす。いや、吹っ飛ぶって方が正しいなあ。障壁を盾のように構え、斜面を作りながらガキへと距離を詰める。
……筈だったんだが、まあガキの方が一枚上手だった訳だ。障壁が砕けた、そうなりゃあどうなるかは明白。迫る棘が俺の身体を貫く、だが推進力のついた身体は止まらずに距離を詰めていく。ま、前面ハリネズミって言えば分かる状況だろうよ。
満遍なく突き刺さる棘、点の傷のせいか行動に対して支障が出ねえのが幸いだな。血は出まくるがな。痛みがない以上支障が出る出ないだけが重要だ、詰まる所どれだけ傷を負っても距離を詰めるって言う目標は達成してるわけだ。

「口を動かしゃ、心も動くもんだ。そうだろうよ、なあガキ?」

接近の中途で大曲剣に風が纏う、同時に俺の右腕は手袋から零れ落ちる。触手の腕、骨なんざ残ってねえ軟体動物みてえなそれ。気味の悪いもんだし糞親のせいとありゃあ気分も良くねえ、だがまあ、あの人に証明する為に有用だったのは確かなその身体。
俺が触手を使うってことはそういう事、俺の十八番。大曲剣に纏った風は真空の刃、視認できずにリーチを得るそれは不可視の刀身へと変貌する。そして関節のない触手で読めない剣筋、最後に避けたと思わせても当てに行ける力場、それを合わせた自慢の業。
ぎりぎりまで迫る必要はない?馬鹿言え、利点の一つが消える上にガキならそれだけで全部避けかねねえ。だから避けられねえようにする、今までも手傷は負ってもガッツリ喰らってはいねえからな。
そう、繰り出すは不可視の多重斬撃。狙いは四肢、避けようと力場で無理矢理触手を弾いて刃を当てに行く。この距離であれば如何に大きな回避をしても避けんのは至難の業、それが狙いだからなあ。
ああ、そうそう。今の俺の姿は常人なら致命傷を受けていると判断されるほどの傷、場合によってはガキが抱いている何かもこれで解決するかもしれねえな。悪い方向にだがなあ、そりゃあこんな化け物関わり合いたくはねえだろ。
急所も含めて全身に棘が刺さってても生きてんだ、化け物以外の何物でもねえ。全身ズタズタにされて高高度から落下して漸く死にそうになるくらいだ、まだ死にはしねえ。最高傑作の名は伊達じゃあねえからな。
それでもやることは同じ、ガキと遊んでガキに命令している奴をぶっ飛ばす。出来ればガキにガキらしくさせてえが、……まあ俺には難しいだろう、やれるだけはやってみるがなあ。
なあに、ガキの雰囲気が変わったってことはもう少しってことだ。拒絶は理由があるし、それだけの存在になったってこと。結果はどうであれ、見つけた以上は最後まで見てやるよ。あれと違って、見捨てるつもりはねえ。

>>アリア=イヴァンヒルト

4ヶ月前 No.1045

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 怯えはあった。当たり前の、人としての恐怖だ。気を抜けばあの悍ましい黒腕に捕まり×される。
 その分かり切った結末から逃げたいというだけのもの。だからやった、私は何も悪くない。
 私に関わってきたお前が悪いという究極の責任転嫁。そして私は抵抗するというだけの簡単な結論。
 だからリアーナ=レッセントは引き金を引く手を止めない。
 誰であろうがお上であろうが同僚であろうが、それこそ神であろうが。

 読み通りだ。
 あの黒腕は凍らせてしまえば多少ではあるが動きを止めることが出来る。
 凍気が走り、腕を縛り付けていく中で術者<クズノハ>に叩き込んだ魔弾もまた――同じく効力を発揮した。

 容赦は要らない。
 コッキング音。再装填。狙いは一人。
 砕けて果てろ。体の内側に必ず食い込み――そして必ず脆い内側から炸裂して殺しつくす殺戮の弾丸。
 舞い上がる肉体。飛び散る黒い汚泥。そして目の前にぼとりと落ちてきた顔付きのパーツ。

 倒れこんだ物体へ銃口を向けた。
 異能展開中は肉体に負荷がかかるから、全ての鉱石を外してポケットにぶちこんだ。
 見上げるクズノハ。助けて、と彼女は言った。

「いいえ」

 肩口に撃った。

「いいえ」

 右目に撃った。

「いいえ」

 左目に撃った。

「――いいえ」

 トドメに脳天に執拗な位叩き込んで――完全に死ぬのを待つ。
 臆病者は、最後の死ぬ瞬間が見れなければ意味はない。

>クズノハ ALL

【確定ロールの許可をいただきましたので、確定ロールとさせていただきます】

4ヶ月前 No.1046

フラナガン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【放送局/放送室/ニール・フラナガン】


 答え等、分かり切っていた。
 フラナガンという男は気弱だが、別に、阿呆ではないのだ。
 あの演説は覚悟の上、あの言葉は“政府の腐敗”を暗に示すも同然のもの。
 大衆のために、不特定多数のために、安寧の染み込んだぬるま湯から飛び出した彼女に、まさかこの期に及んで投降などと………言ってしまえば、それはただの希望的観測でしかなかったのだ。“せめて”、せめて従ってくれるならば、自分も手を出すことはない。あの演説自体も、まだ直球で腐敗を示したものではない―――風当たりは強くなるだろうが、命の保障は出来るだろう。
 若気の至りだ。それは、大人たちからすれば鬱陶しさを感じるような………大人になったばかりの、清廉な輝きだ。


「………若いな」


 フラナガンからすれば、それは羨ましいものだった。
 呟きと表情自体は然程変わらなかったが、それは彼という人間の良心が零した羨望だった。


「む、う。残念ながら否定出来ん。否定出来んが………秩序は、秩序なのだ」
「百万を越える人間が住んでいる限り、これを崩せんのが政治というものなのだ。
 不完全な秩序でも、護っていくしかない」


 心の底からそう思う。
 この状況で、誰よりも早く、何よりも変えることなく民を案じたのはこの女性だ。誰が適役だとか、誰が一番だとかの話ではない。この状況、そうした側面において、最も一般市民に近付いたのがショコラだ。
 力で止めるとか、そうした行動以外を取ったのは、彼女だけだった。
 あの言葉が、いったい何人の心を動かしただろうか。十人程度ならば無意味だが、百人ならば意思とミームは連鎖を起こすだろう。千人ならばそれは表面化する。それをやったのは、他の誰でもない―――彼女なのだ。ショコラ・ヴァンディールなのだ。

 彼女は、人の上に立って、人を幸福にするという意味ではこれ以上ないほど適役だろう。
 自分やリアーナは小さな世界の人間だ。魔人たちは、“自分達”以外を人間とだって思っていない。

 そして………これは、言うべきか悩んだから、口にもしないことだが。

“誰か”を明確に定義しないまま理想を掲げて走る人間を見て、共感する者などいないのだ。
 その背中に清廉なるものを感じても、着いて行きたいとは思えない。
 決して横を見ない人間の隣に―――全うな神経をした人間が隣に行きたいとは思えない。
 英雄の後背にあやかりたいものは居ても、英雄と友達になりたい人間がいるのか、という話である。無論彼ら彼女らも人間だが、そこには無意識の大きな壁が出来る。憧れと羨望で構築された先入観は、同時に負の要素も固着させていくからだ。

 そうした意味で………純粋で、普遍的な彼女は、きっと潰れるのが早い。
 ある意味で無鉄砲な行動でもあるのだから、悪く言えば世を知らぬのだ、この女性は。
 しかしだからこそ―――知らぬからこそ、大人たちと違って立ち向かうことを選んだのだ。

「(………これから先は、否が応でも変わるのだろうか。だとしたら―――)」

「(私は、我が身が可愛いだけなのかも知れん。
  君らはどうかなぁ、イルグナー、リアーナ………後の面子は、分かっているとして………)」

 考えて、………否、それを考えている時間ではないな、と。フラナガンは結論付けた。
 仕事であるのだ。任されてしまったのだ。
 我が身が可愛いだけの建前かも知れないが、政府というかたちを切り崩すわけにはいかない。もう全てが手遅れであるとしても………ニール・フラナガンは良くも悪くも“現状維持”と“安定”に力を費やす男だった。そう、良くも悪くも。


『議員、ご指示を』
「あ、ああ………状況を開始したまえ。殺しはしないでくれよ」


 そこで、殺す行動に振り切れないのも、またフラナガンの弱さではあった。
 そして………“そこで流される”のも、彼という人間のある意味の性質ではあった。

 兵士たちが銃なり鎮圧用の兵装なりを構える。
“殺しはするな”という彼の指示を何処まで護る気かはさておき―――。
 実際のところ、この狭い空間、人の壁という名前の陣形は近接戦闘の能力者相手なら覿面だ。もちろん、彼女はそうではない。臨時には戦いに出るショコラ・ヴァンディールは、戦闘データを閲覧した限りでは凡そオールラウンダーと呼ぶべきものだろう。


「恨んでくれていい。憎んでくれていい。命以外の保障は、出来ん。が」
「君も、覚悟の上だろう―――」


 彼に戦いの経験はない。だが知識はある。
 臆病で、風見鶴だが、仕事は完遂して来た男だ。
 何をどうすればいいのか、という局地的判断だけで言えば、彼は上等な男だ。

 兵士たちの後ろに立ち、彼らが鎮圧用のスタン・ロッドを構え、
 幾ら能力者と言えども“人間”であるショコラを気絶させようと振りかぶる中で―――。


「―――攻撃を開始しよう」
 ナイト
「騎士」


 彼も、手を打った。
 自ら前に出る能力があるでもない。フラナガンは孤独な一人の王だ。
 故に彼を守る“十五騎”の兵がいる。
 気付けば―――そう、気付けば、何の前触れもなく。彼の手持ちの“軍隊”が姿を現す。

 一騎は女王、二騎は司祭。二騎は騎士で二騎は戦車。残る全ては名も意思も無き兵士。
 彼に許された、彼よりも屈強にして揺らぐことのない兵士たち。
 チェスの駒に見立てて名付けられた、顔の無い、人間大の“質量を持つ虚像”そのもの。
 本人の能力がどれだけ低かろうが、動くのは駒だ。
 彼は遠くで傍観し、その都度選択をするだけでいい。弱い自分の代わりは、彼らがやってくれる。

 それだけならば、なんと楽に引き金を引けることか。
 多少の憂鬱さを覚えながら、彼は駒に指示を出した―――騎士が、狭い室内に似つかわしくない戦馬を駆り奔る。連れて来た兵士たちが先手を打つのに合わせ、あるいはその兵士たちを抜き去りながら繰り出す、正直な突撃《チャージ》だ。
 騎兵の基本は、その圧倒的な速度と質量に寄る突進と言える。
 回避は安易だろうが、二メートル後半もある大柄な虚像の騎士が繰り出す突撃は易々と防御を許さず………また、後からの突撃であるにも関わらず兵士たちを抜き去るそれは、その図体に他の名がある兵士たちを隠し、死角を作るだろう。

 当たり前だが、それを抜き去って彼に攻撃を仕掛けること自体は不可能ではない。
 ない、が―――さて。


>ショコラ・ヴァンディール

4ヶ月前 No.1047

あわあわガール @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【大統領官邸/シチュエーションルーム/アルカディア・クアドリフォリオ】

不意打ち気味に放たれた魔力の弾丸は、標的が繰り出した裏拳によって軌道を変えられてしまう。兵士一人を瞬殺する破壊力があっただけに驚きだが、アルカディアは『惜っしー』と悔しがりながら次弾発射に備える。
まだ未熟ながらも宿す魔力は強大、将来性も十分。そこに彼女の潜在能力を引き出せる代物が加われば、攻撃面だけなら精兵並みの戦闘力を手にすることができる。
きっと次は決まるだろう、そんな楽観的な思考と共に敵の出方を疑う…が、すぐにユーフォリアからの叱責を受けることになった。当然だ。彼女の身を案じての待機命令を破り、工廠に迷惑をかけてまで前線に飛び出してきてしまったのだから。
アルカディアの自由奔放な振る舞いには、従兄弟のヴァイスハイトも驚きを隠せないらしい。しかし端末には『食堂が襲撃を受け、避難していた市民に多くの犠牲者が出た』との情報が届いている。結果論に過ぎないものの、命令違反が良い方向に転んだと言えよう。

「まあまあ、今回はファインプレーってことで!あそこにいたら死んでたかもなんだしー。それより見ててよね、次こそはアイツに風穴開けてや……

ってぇ!あれがフォルトゥナお姉ちゃんなの!?」

ユーフォリアとヴァイスハイトに向かって軽口を叩きながら、次こそは命中させてみせると息巻く。しかしその標的こそが、探し求めていたフォルトゥナ・インテグラーレその人であることを知ると、アルカディアの顔は驚愕と焦燥で満ち満ちていく。無理もない。シチュエーションがそうさせたとはいえ、実の従姉妹に向かって発砲してしまったのだから。
おまけにフォルトゥナが自分達の敵であり、恐らく歴史是正機構に所属しているという事実も、彼女を震え上がらせるのに十分だった。

「やっば、どうしよう!これってスゴいシリアスな感じだよね…?

ちょっとダーさんもダメだって!攻撃しちゃダメーッ!」

『発射シークエンスをお伝えします』

「お伝えすんな!このポンコツ!

ね、ねえお兄ちゃん!私どうしたらいいの…!?」

自分の軽率な行動を悔いつつダグラスを止めに入ろうとするも、とても彼らのスピードには追い付けない。後方に取り残されたアルカディアは、禍々しいオーラを纏うドッグタグを前に後ずさりするしかなかった。
その最中にまた双銃が音声を流すが、もう一度フォルトゥナを撃つなどとんでもないと怒鳴り声をあげ、取り付けられていた端末を引っぺがして床に投げつける。完全に冷静さを欠いてしまっているらしい。
おろおろと辺りを見回し、視界に入ったヴァイスハイトに助けを求める。彼もまた混乱と葛藤の渦中にいるのだろうが…幼いアルカディアに、そこまで考えられる余裕はなかった。

>>ユーフォリア・インテグラーレ、フォルトゥナ・インテグラーレ、ダグラス・マクファーデン、ヴァイスハイト・インテグラーレ

4ヶ月前 No.1048

失敗作 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ルーシャ・コバルト】

彼女の前に、さらに追加で新たなよく分からない生き物が呼び出される、相変わらず初回のルーシャの反応は生粋の臆病さを感じさせるような物で、びくりと身体を跳ねさせて、少しだけ距離を取る。
しかし、あくまで呼び出された物が、ライドウの手によって呼ばれた物であり、自分を傷つけるための存在ではないこと、またそれこそ"悪魔然"とした見た目ではない事で、最初こそ飛びのいたが、最終的には相手を凝視するぐらいで落ち着いている。
そして相手が声を掛けてくると、そもそも人語を喋れる事にルーシャは驚くが、すぐに冷静を取り繕って。

「へ、えあ……私は、大丈夫です。 飴……飴、食べていいん、でしょうか?」

ジャックフロストの手の平にある飴を見て、ルーシャは彼の主であるライドウに視線を送る、一応ライドウと、この……彼? は別固体なのだから、もしかしたら毒物かもしれないし、また、そもそも他人から物を貰うという事にも、いちいち神経を使う、そのような環境にあったのがルーシャと言う人物だ。
ひとまず、手に取るだけなら大丈夫だろう、責められたら返せば良い、とひとまず飴だけ受け取る。

そして、ルーシャは冷静さを"取り繕う"のではなく、本当に冷静さを取り戻した頃に、ライドウはこちらに話しかけてくる。
そういえば、まだ自分は名前を知らなかったし、悪魔召喚士なんて職業であるのも初めて知った。 ここで改めてルーシャは、彼は最初から気を使ってこちらに下手な警戒心を持たせないように、まさに"悪魔"の名に相応しい恐ろしい見た目をしたものではなく、モコイやジャックフロストのような、ルーシャでもビビるぐらいで済むぐらいの悪魔をあててくれた事を認識した。

「あっ、えっと。 ルーシャ・コバルトです、ルーシャが人間としての名前で、コバルトって言うのは、元々の蜘蛛の名前の一部です、コバルトブルータランチュラ。 異世界、ですか……でも、その」

ルーシャは目を合わせるのを恥ずかしがるように視線を少し下に向けながら、名前と、苗字側の由来を語る。
そして、もしこの世界で一人きりになりそうな時は、ライドウの世界に連れて行ってくれると言う、しかし、突然異世界と言われても、流石にルーシャではなくともまず考えるだろう、特にルーシャは同じ世界とは言え、時代が違うだけであれほど考え方が違うことを古代に行って経験している、きっと一人ぼっちになるよりはずっと良いだろう、でも、大変な事もいっぱいあるだろう、と。

その時、自分の耳に驚愕すべき言葉が聞こえてくる。
もう一人の人物は、異世界人ではない。

さらに付け加えて彼は、"一人にはしないと約束しよう"と言ってくれたのだ。
ルーシャの目が輝いて、彼に飛びつくように手を取って問いかける。

「あの、あの! 本当に良いんですか? 私、あんまり大した事は出来ないです、それこそ歴史是正が私に求めたような事しか。 それでも、受け入れてくれますか? ……あの、お名前を、聞かせて貰って、いいですか?」

ルーシャは興奮した様子でギルバートに話しかける、しかしその言葉は、幾度と無く拒絶されてきた過去を証明するような、自信の無い物であった。
最後にルーシャは彼の名前を聞く、もしも、もしも彼の言ってくれる事が本当なら、覚えないといけない名前だから。

「……ライドウさん、もしかしたら、私、この人と一緒になるかもしれません、お誘い、ありがとうございます。 もし貴方が居なかったらこれほど冷静にお話できなかったでしょうし……殺し合いになったり、これを起動したかもしれません。 でも、この世界に、まだ私を受け入れてくれる人が居るなら」

そしてルーシャはライドウ側のほうを見て、感謝の言葉を伝える、そして、彼女は懐にしまっておいたガス兵器をゆっくりとその場に置いて、まだこの世界に自分を受け入れてくれる人間が居るなら、残ると、そう宣言した。

>17代目葛葉ライドウ ギルバート・トムフール


【たぶんほとんどこれで終了となります! お相手ありがとうございました!】

4ヶ月前 No.1049

バビロン/イスマリア @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 想いの強さが違えば――相性差など意味はない。
 互いに高め合う魔神同士の戦場を前に、闇の涙は零れ落ち……空へと舞って消えゆく。
 だがそれでも終わらない。どちらも信じている。戦いのその先に、遍く闇は蹴散らされ素晴らしき世界が舞い降りるのだと。

 原子同士を引き合わせる核力だけを純粋に高め、クーロン力という概念を破壊する万象を司る虹の力。
 即ち超新星爆発に他ならない。火薬反応を無から生み出す爆破魔術とは違い――天地開闢を齎した宇宙創造に至る力。
 恒星の終わり。人はおろか、国一つをゆうに飲み干し喰らう極超新星爆発がぶつかり合う。

 それでも漢達は止まらない。
 互いの夢を叶えるために、その信念を貫き通すのだ。
 それを些事一つで止めるなどとはあってはならない――想いの純度が高い方が勝つ。

 何億何兆もの言葉を文を並べ立てても、陳腐にしか聞こえない火力同士の衝突。

「ハッハァ――――ッ!!!」

 光輝が満たし――。

「待っているぞ。
 俺は信じている、何でもしよう、何でも尽くそうッ――お前が夢を叶えられるならばァッ!!!」

 そこにレオンハルトはいない。だがバビロンは信じている。何時の日か、己の首を獲りに来ると。
 光の中へ去り行く好敵手を前に惜しみない称賛の拍手を送り――。

 ――物皆全てが灰燼へ消え果てた後の公邸に、バビロンは一人笑っていた。

 さて、面白いものを見つけることも出来た。
 流石にこの短時間で決着はついていないだろうが、手足たるソレへと通話をかけ――。

>ALL

【お二方、お相手ありがとうございました〜】

【 時空防衛連盟/作戦会議室/イスマリア・ザルヴァトール 】

《どうなっている。イスマリア》
「――送った通りですが。バビロン会長?」

 屍の山の上に女性は一人立っている。
 革命家を志、遍く全ての不浄を未来のために排除し尽くす殺戮姫。軍服は既に飛び散る鮮血が断片的に朱色に染め上げている。
 その貌に表情という色は何処にもありはしない。散らばる人間だった肉塊を容赦なく踏みつぶし、零れ落ちた臓物と血痕を踏みにじる。
 全ては未来のために――邪魔なものを悉く殺しつくそう。たったこれだけの意志で、命令が下った彼女は容赦なく防衛連盟に乗り込み虐殺劇を繰り広げた。

 ・・・・・・・・
 お前達は要らない。
 狂信とも呼ぶべき執念は、命の尊厳だとか人としてあるはずの当然の倫理観だとか、そういうものを一切合切無視して繰り出される。

「開戦のその後、親友たちなどが次々と集結を始めています。
 説得を試みているようですが、さてどうなるかは知ったことではありませんから」
《ックク――俺もそっちへ車を飛ばそうか。到着する頃には戦局も進んでいるだろうさ!》

 そして、今は仰せつかった命令に従い監視カメラの一部を異能で盗聴している。
 鳴りやまぬ戦火の嵐の中――家族の復縁を賭けた一大決戦を繰り広げているシチュエーションルームを映像越しにずっと見続けている。
 無論イスマリアには興味はない。己のやりたいことを思うがままに実践し、それでもって未来を良くした。他の区域は他に任せよう。
 後のことは――戦火の外になってからじっくり理詰めで食い荒らしていけばいい。

《ではなイスマリア・ザルヴァトール? 夢を叶えろよ》
「……了解」

 通話は切れた。
 何時か間近で寝首を掻かねばならない存在だが――災厄は利用するに限る。
 最も、自分も狂い果てているのは重々承知の上だ。何故なら、あの男の異能は……。

「……ま、コトが終わったら考えましょうか」

 一太刀にて斬り捨てられた名も知らぬ一般隊員たち。
 名付きを殺れなかったのが心残りではあるが――構わない。よりよい未来を、あの世から見守っていてくれ。

>ALL

4ヶ月前 No.1050

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_YPO

【時空防衛連盟本部/武器庫/アリア=イヴァンヒルト】


「ハッキリしない人」


 相応にしろと言ってみれば、今度は此方を餓鬼扱いか。
 何となくむっとしたので、当然の権利のように空を駆け昇りながら言い返した。

 ………でも、それが、普通だ。自分のことくらい、自分で決めたらいい。
 何処かの誰でもない、自分の道くらいは自分で考えるべきだった。
 それはどうしようもないくらいに、正論だ。痛いくらいに正論だ。

 それが出来たのなら、どんなに良かったか。
 何処に居場所を創ればいいのかも自分は知らない、何処に立てばいいのかも知らない。
 知っているのはこういうことだけで、それ以外のことを知らないし、やることもないというだけだ。
 自分の世界はきっと狭かったし、それ以上を広げる余地もなかった。

 光槍を放つ直前に聞こえた言葉が頭の中を駆け巡る。
 刹那の間で灰色の思考に埋没する―――それらは闘う最中には不要だ。
 だから切り離してしまえれば簡単だけど、どうも切り離してしまう理由が見出せない。切り離す気がないから、それにいちいち応対しなければならない。………それはきっと、モノを殺す上では無駄な一手間でしかない。そもそも、どうでもいいモノに彼女は共感も否定もしない。関わらないなら幸せにやっていれば良いし、関わるなら目的に応じて接するだけだ。

 だから―――それが無駄に思えない相手は、たぶん“どうでもよくない”相手だろう。
 それはあの少女が踏み込んで来た結果なのか。
 あるいは自分が興味を持って踏み込んでしまった結果なのか。
 そもそも、何を以て、自分がこれを“どうでもよくない”にしたのか………最初にも言ったが、自分で自分を精査するのは上手く行かない。不確かなものを、こうだ、と定めることほど億劫で難解なことなどない。自分にとってのアリア=イヴァンヒルトはそういうものだ、何に執着をすれば良いのか、何を得ることに喜べるのか、何を手放すことに悲しめるのかが分からない。


「始まりを、わたしは知らない」
「だから、何処で曲がって、何処で終わるのかも、知らない。わたしに、後と先はないから」

「………たったそれだけ。満足しましたか」


 最初に彼女に感じたのは、好奇心と興味だ。
 だが………口にして見ると、もう少し違う気がする。
 自分の口を衝いて出た言葉は、恐らく小さな反発心だ。
 会ったばかりの癖に、良くもまあズケズケと人の中に入る―――と、いう形の反発心だ。口にしている自分がびっくりするくらいの小さな理由だ。多分、言葉で当て嵌めてしまえば、苛立ちから来る癇癪みたいなものなのかも知れなかった。

 そもそも、こんなことを口にしていること自体が無駄で無意味で非効率だ。
 上司が聞いていれば、またぞろ目の前の彼女とは違うベクトルの軽口と共に否定しに掛かるだろう。

 ………じゃあ、その反発心の出処は何処なのか。考えようとしても見つからない。
 此処まで調子が狂うのも久々で、僅かな時間の間にそれを精査し続けた。

 最初はちぐはぐな相手だと思った。年不相応の態度で、曰く異形。
 いちいち軽口を叩く癖して、さっきから狙いの程は感心するくらいに正確。その上で、彼女が誰に命じられたでもないというのはすぐにわかった。

 動きで分かるし、表情で分かる―――アレは間違いなく生きている。

 ただ生きているのではなかった。此処で自分と対峙しようとするのも“やりたいこと”だろう。
 何かが癪に障ったのか、それとも単純に敵だからか………どっちでもいい。分からないことは分からないままだし、それを決めつける仮定に意味はない。だから大事なのは、目の前のどうでも良かったはずの敵に何故こんなに自分が意識を向けているのか、だった。

 こうやって考えているだけでも。
 自分の意図しないところで自分の領域《セカイ》が紐解けて、崩れるような気がして、酷く煩わしい。
 そうなった時のことを自分は知らない。
 だけど、そうならない為のやり方だけは教わって来た。


 ―――分かりたくないものを、分からないままに殺すやり方だけは。


 蹴り落とした蒼光の棘。
 降り注ぐそれらは斬撃と刺突に分類できようが、齎す効果は爆撃に等しい。
 槍であるから刺突とは形容出来ないような広域と速度、貫通力の合一は、間違いなく彼女を狙い定めた。調子の狂うモノを排斥するために襲い掛かったそれに対する対処も早い。動揺の一つもしなければ、防戦に回るような真似もしない。

 得意距離と手数の差だ、彼方は先程から自分への接近を先ず大前提に考える。
 つまり得意分野は白兵で―――そうもなって来れば、防戦一方の状況は嫌うだろう。あの剣が届かない距離から撃てるだけの要素は手元に揃っているし、それを使うだけの余地は十分ある。だから彼方の行動がああなるのは必然だ。
 必然だが、だから完璧に抑え込めるという話でもない。それが出来たのならば初手で殺せているだろうし、此処まで好き放題されることもなかったはずだ。………飛び込んで来るまでは想定していたし、これで終わらなければ次を考えてはいた。
 そもそも、終わらなければと言うが。先程から彼女の身を護る障壁を射貫くために形を創った一撃だ―――防ごうとすれば手傷は避けられないし、回避しながら攻め込むにしても、そこに生じる時間があれば対処は容易だった。どうあっても、順当な対応をして来るならば此方も順当に行くまでだ。


「―――!」


 だから、正直に予想外だった。
 貫いた上でそのまま突っ込んで来ることまでは、理解の範疇を一瞬越えた。

 無謀にもほどがある。そもそも、それは人間が出来る行動ではない。
 貫いた箇所の痛みなど最初から気にしていないような―――死兵じみた突撃。
 冗談みたいな有様だ。全身、前面だけが針鼠になったかのような彼女は、そのまま突っ込んで迫って来る。射貫いた上でなおも此方を狙うその牙は………しかし、止まる気配を見せない。あの傷ならば間違いなく致命傷だ。

 必ず死ぬはずだ、人間ならば―――そう、人間ならば。
 先程言っていた通り。ザーシャは“創られた”異形だ。
 その真相について、アリアは理解をしていなかった。脅威だとは理解しても、それ以上は。

 大曲剣が唸りを挙げる。
 物理的に波を打つそれは、漣のように刃を震わせ、不可視の風を纏って解き放たれる。
 軌道の予測は不可能、回避も無理。力技どころの騒ぎではないが、近距離において視覚で捉えられないというのはこれ以上ないほど凶悪だ。その特性を利用して先程から作業を続けて来たアリアは、同時にその危険性を良く知っている。
 避けられはしない―――あれが避けられるようなモノは、人智を越えた速さの持ち主か、あるいは行動先の未来が読めるような輩だけだ。そのどれでもないから、アリアの行動は決まっていた。どうあっても避けられないなら防ぎ、凌ぎ、死なないようにするまでだ。
 手元の光糸を手繰り寄せて収束して、盾のように光を編んでカタチにする。
 領域《セカイ》を踏み分け、斬り込んで、自分に触れに来る彼女を排するように薙ぎ払う。衝突させたそれは―――当然砕ける。砕けるが、勢いを失った刃は四肢狙いで即両断になりかねない一撃を、どうにかこうにか深い切り傷程度で済ませるに至った。


「―――づ、………!」
「(冗談じゃ、ない………!)」


 あの間合いに入るわけにはいかない。アレは間違いなくキルゾーンだ。
 風を伴う斬撃のベクトルに身を任せながら、片腕で飛ばした青光の糸を後方に引っ付けて無理矢理距離を引き剥がす。事此処に至って体勢等は気にしている暇もない、何故ならあの剣を前にして自分が得たものは、予感どころか確信だった。

 あそこに留まっていれば自分は間違いなく死ぬ。
 避けられない、その上でそう自分が判断した以上は防げない。
 でも―――死ねとは言われていない。それに、まだ死にたくはない。

「………あ、ぅ………ッ!」

 理解して、だから後退最優先で飛んだが―――視界が霞んだ、手元が狂う。
 散々ばら斬られたせいだろうか。
 途中で地面を転げ落ちるように転がって、そのまま壁のぎりぎりで停止する。

「………っ、は、………はぁ、っ、はぁ………―――」

 ひどい、ざまだった。損傷が酷いのは右の腕、下手に動かせないどころか力が入らない。
 脚は、まだ動く。どうにも流した血が多いのか、視界が霞むせいで立つのに時間がかかる。
 利き腕ではないのは幸いしたが、先程の真似は両腕が動いて初めて出来る真似だ。であるに二度目のアレは流石に耐えられない―――耐えられない、が。彼方も似たようなものだろう。次に狙いを定めれば仕留められないこともない。


 ………時に、彼女はこれを“怪物”と呼んだ。
    確かに、常人の価値観で語ればザーシャが見せたそれは間違いなく怪物の腕だ。
    なにより全身針鼠の状態で普通に喋り出す人間など、恐ろしくてしょうがない。


 アリア自身もそう思う。そう理解している。が。

 ………だから、思うのだ。それを見た真っ当な人間は、たぶん彼女を排斥する。
    人間は知らないものを恐れる。彼女はきっと、排斥されて来たもののはずだ。

 にも関わらず、此処で戦う彼女はいったい何者なのか―――と。


「………呆、れた………」


 問いを投げかけながら、ゆっくりと立つ。
 足元の感覚も少しおぼつかないから、体制を整えるのにだって時間がかかる。
 揺らいだ紅蒼の瞳が、ザーシャを捉え、そして―――。


「死ぬの、怖くないんですか。怖くないとして、なんで戦えて………―――」


 何故、そんな真似までして、戦っていられるのか。
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 それはおまえが自分で決めたことなのか、と。
 言いかけた疑問が形になる前に、言葉を切った。


「………―――いいえ、良い。どうでも、良い。余計なこと」

「本当に、調子の狂う人。
 おまえは、どうでも良いはずなのに、どうでも良くない―――」


 ―――彼女に与えられた指示は、あくまでも陽動だ。
    此処で何が何でもザーシャを倒せ、という話ではない。だというのに。


 片腕を揺らす。先程貼って、足場代わりにした壁を手繰り寄せて形を変える。
 それらを、ザーシャを阻むように二重、三重の障壁に変貌させて展開する。微かな時間の余裕を創りながら、しかし―――もう一度先程の剣が来るのに備えるように、武装を編んだ。一枚、二枚で破られるなら、より多く壁を創ればいい。
 短い距離で踏み越えられるなら、もっと強く突き放せばいい。単純な理屈だった。彼方が間合いに飛び込めば終わるのだから、飛び込まれても対処出来る状況が出来れば良い。

 再度形成したそれは、一本の刀だ。
 あまり重いもの、大きなものは片腕だと握れない。
 重さ自体は感じないが、そうしたものを片腕で振るうイメージは自分には出来ない。

 仕掛ける意味はない。こと近接戦で強いのは彼方だ。
 その優位が分からないほどアリアの調子は狂っていない。

 ………ただ。アリアの中から“逃げる”は失せていた。消さないとならない。壊さないとならない。
 自分がこのザーシャという人物に何を感じているのかも分からないが、
 その分からなさが酷く自分の調子を乱しているのが分かっているから、消さなければ話は始まらない。

 ―――だから、切り捨てる。完膚無きまでに。

 幾つも地面から、空から突き出した青い光の障壁はそのまま。
 上も正面も左右も、ザーシャの突進と剣を阻む、狭くも完璧なる閉じた庭。
 構えはそのまま。彼女の飛んで来た方向を、後の先で斬り払うだけでいい。
 あるいは別の手を使われてもいいが、今までの様子からそんな奥の手の空気はない。
 そして、彼方が手を止める気配もない。
 だからこその、待ち構えてからの反撃に転ずる一手だった。


  ―――ところで。彼女がザーシャの言葉を徹底して跳ね除ける癖に。
     彼女の言葉に素直に応答するのは、単純な理屈だった。


 人間は分からないものを恐れるが。
 人間は、知りたいという欲求を捨てきれない生き物だ。

 アリア自身が気付こうとしないから理解出来ないことだが。

 彼女はザーシャに始め、微かな好奇心を懐いた。
 外見は自分と変わらない年頃で、ちぐはぐな言動で、自分で自分の選ぶ方向を決めた彼女をだ。

 ………それはちょっとの羨望と、同時に理解することへの恐怖だった。
    自分の立ち位置が鮮明ではないのに、
    他者を自分の領域《セカイ》に入れることへの警戒心だった。

 繰り返すが、彼女には過去がない。始まりがないから、終わりも無い。
 そうなるだけのものを持たないから、彼女は自分が“こう”だと証明できるものを持たない。
 そうなるだけのものを知らないから、彼女は自分の領域《セカイ》に自分以外を入れる余地がない。

 そんな彼女にとって。化外なれども、踏み込んで来る彼女は良くも悪くも鮮烈だった。
 ………たったそれだけの、単純な話で。
 ………決着が付くまでは。あるいは、付いた後でさえ―――少なくとも本人は、まだ理解しない話。


>ザーシャ

4ヶ月前 No.1051

血に飢えた玉兎 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_GwQ

【時空防衛連盟本部/食堂/雪葉】

自らを死に追いやった者の姿すら見ることも出来ずに絶命していく者達を見て、雪葉はこれ以上ない優越感に浸っていた。姿なき者に殺されるという恐怖が、食堂を支配する。
隅っこに固まって震えている弱者達。また、その内の一人が頭を撃ち抜かれて死んだ。同時に聞こえてくるのは、襲撃者の笑い声。悲鳴が、室内にこだまする。
元より雪葉は暗殺の任務に就いていたこともあり、こういったことには手慣れている。気配のない自分に殺されていく相手の様子を見続ける内に、彼女は"それ"に快感を覚えるようになっていったのだ。
結果として、それが月の都で史上最悪として語り継がれることとなる玉兎の誕生であった。快楽のままに殺人を繰り返した雪葉は、いつの間にか血で汚れ、月には相応しくない存在と成り果てていたのである。

「わーお、見事なまでに隙だらけの奴がいますねー。これじゃ殺してくれって言ってるようなものじゃないですか」

そんな折、窮地に駆け付けたヒーロー。食堂に駆け込むや否や、倒れ伏した者達に声を掛ける姿は実に勇敢で、彼らからすれば救世主のように光り輝いて見えることだろう。
だが、雪葉の視点から見れば、飛んで火に入る夏の虫に過ぎない。気配は消したままである以上、こちらを一度も見なかった彼が敵の存在に気付いている可能性はない。
簡単な仕事だ、後ろから頭を撃ち抜いて終わり。どんな実力者だろうと、死角からの攻撃には反応出来ない。もっと慎重に入ってくれば、長生き出来たかも知れないというのに。
彼女は気味の悪い笑みを浮かべながら、戦兎にとどめを刺そうとする……が、それは背後から響いてきた声と、その声の主が放った連続攻撃によって遮られることとなった。
まさか、視界に入れられてしまったか。これはいけないと判断した雪葉はこれでもかというくらいに距離を取り、再び相手の見えない位置に移動することで優位に立とうとする。

「挨拶もなしにいきなり暴力とは感心しませんねー? まあ私も乗っちゃいますけど」

部屋の頂点を飛び回るようにして動き回る雪葉が、あらゆる方向からブラスターを二人の敵へ向けて撃ち込む。まるで分身しているかのような速さから放たれる波状攻撃は、驚異そのものだ。
とはいえ、これだけでは変化に乏しい上に、見切れる実力の持ち主なら簡単に躱してしまうだろう。だから、彼女は音を立てずに接近し、それぞれ三発ずつ、ナイフでの斬撃を見舞う。
前回のような敗戦を繰り返す訳にはいかない。今回は最初から油断はなしだ。雪葉はそんな意気込みで戦いを始めたものの、彼女の傲慢な性格が簡単に改善されるかというと……

>桐生戦兎、ユスティーツ・シュタルク

4ヶ月前 No.1052

執心名誉顧問 @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

【魔帝城/魔将軍の間/シャル・ド・ノブリージュ】

 自分が乗っていた道化から放つ、雑音交じりの奇怪にして不快な笑い声。あれは既に人間でなく、さりとて魔族でもなく、もはや邪悪の概念であり、混沌である。一体どれほどの人間を手にかけてきたのかは知りようもないだろうが、少なくとも無数であるのは間違いない。笑みを絶やさず奪ってきた得物をひけらかすその姿は、激しい怒りを心の底から生じさせた。憤怒の炎は体を纏い、使用者さえ焦がすほど苛烈に燃え上がる。
 魔術師が、戦場を共にする同盟者が混沌の飛来させた矛と術とに阻まれ、斃れてゆく。雷撃の槍は確かにかの混沌を貫いたが、その一方で陽炎の中でさえ無数の刃に貫かれた彼女の姿はくっきりと映った。彼女が自らを囮にしてこちらの攻撃を通したのと同様に、あれはまだ死なないのだろう。生命が途絶えると即座に蘇生する技能を有していると見えたが、死からの逆行は魔術において外法である。そう何度と使えるものではあるまい。
 既に壊れたか、最初から壊れていたか、混沌は雷槍に風穴を開けられてなお狂った笑いを止めない。混沌はまだ生きている。そもそも最初から生きているとは言えないのかもしれないが、何かを害そうという意志がある。それが生きている限り、この炎は燃え尽きることはない。

「お前を倒そうと散っていった者達の遺志さえこの炎に込めよう! 無念の遺志を業火で味わうがいい!!」

 自分の体が焼ける痛みも気にならない。これはただ怒りを纏っているだけだ。この混沌に蔑ろにされてきた全ての生命の怒りだ。炎は彼らを糧として燃える。混沌が放つ刃を飲み込み、より規模を増して激しく燃える。何者にも止められはしない。混沌はただ、彼らと同じ末路を辿るだけだ。ただ一つ違うのは、向かう先が永劫の苦痛であることだ。死の先で、それは己の罪を贖うことになる。重ねた咎の数だけ燃える炎で、己の愚行を清算するのだ。
 混沌は灰燼と帰してゆく。散々乗り回した傀儡ごと粉塵となり、掻き消えた。最後までその奇怪な笑みが絶えることはなかった。つまりそれは、邪悪において正真正銘の傑物だったということだ。それについてもはや語ることはない。既に物言わぬ灰燼と化したのだ。大剣を払い、混沌だったその黒粉を、言葉を遮るように吹き飛ばす。
 体を覆っていた炎が消えていくと共に戦闘の高揚は冷めてきて、全身を激しい痛みが襲った。混沌の置き土産は肩口に突き刺さっていたようだ。全身が火傷を負うなか、そこだけが激しく焼け爛れている。

「……撤退する。迷惑を……かけたな」

 痛みで体がまともに言うことをきかない。継戦は不可能であろう。魔術師にも痛手を負わせた。確認する限りでは二度、命を失っていたはずだ。生命を消費することが立ち回りに含まれていたとはいえ、自分の動き次第でそれを減らすこともできたであろう。
 炎で襤褸となった体を引きずりながら、それでも彼は仏頂面を崩すことはない。ただ、味方に対する己の未熟を恥じ入り、この場を去っていった。

【度々遅れて申し訳ありません……】 >>フィラッサ、エスト

4ヶ月前 No.1053

一介の議員 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【放送局/放送室/ショコラ・ヴァンディール】

ショコラ・ヴァンディール…しがない役人。彼女の長所と短所は誰の目にも明らかだ。腐敗を憎み、市民の生活を第一に考えて動く正義の味方。反面、世間知らず。志は見上げたものだが、若い。青い。拙い。
決して腐りきった議員達が正しいと言っているのではない。ショコラには賢さが、いや"狡猾さ"が足りていない。それこそが彼女の良さであり、他の議員との明確な違いでもあるのだが…悲しいかな、如何に清廉潔白であろうと、今の彼女は身の丈に合わない理想を掲げる青二才。老獪な狸共からすれば、いつでも化かして掌で転がせる子鼠。
政治家に求められる姿勢を取っていながら、まだ完全に政治家になりきれてはいない…とでもいったところか。

年端もいかない彼女の半分は、清く正しいからこそ危うい少女の心によって構成されている。

貴重だ。尊く、間違いなく世の中に必要な存在。しかし、今のままでは破滅するだけ。

「その不安定な秩序がどのような結果を招いたか、フラナガン議員もご存知のはずでしょう」

政府官僚の間に蔓延る腐敗。ユーフォリア・インテグラーレやその父のような、政治家として正しい在り方を体現した者への仕打ち。歴史是正機構の跳梁。それらの果てに待っていたのが今の惨状。
理屈を抜きにした感情論になってしまうが、こんな世の中を黙ってみているわけにはいかないのだ。政治家として為すべきことに背を向け、果たすべき使命に興味を示さない者達が作り出した、このどうしようもない世の中を。
陰謀と暴力という望ましくない形によってだが、世界は間違いなく変わっていく。腐敗が招いてしまった血の結末。ならばせめて、平和が取り戻された暁には、為すべきことを為そうではないか。在るべき姿でいようではないか。
そういった想いを込めて放った言葉が、どれだけの効果を上げられたかはわからない。あんなちゃちな文言で風向きを変えられるほど、事態は甘くないかもしれない。

それでもショコラ・ヴァンディールは止まらない。世界を知り、経験を積んでいく中で、多少の変化をきたすことこそあれど、根本にあるものが変わることはない。

「……残念です」

下される攻撃開始の命令。フラナガンが指示するのはあくまで鎮圧、命を奪うことは想定に無いようだが、それも修羅の中でどこまで守られるかわからない。
狸共の狙いは、ショコラを"黙らせる"こと。彼女がこれ以上下手なことを喋れないようになればそれでいい。投降だろうが、鎮圧だろうが、死だろうが。彼女の口を閉ざせれば、それでいいのだ。
フラナガンと敵対することを悔やみながらも、ショコラは本気で抵抗する構えを取る。彼女に突き付けられるスタン・ロッドやその他の様々な武器…その矛先や銃口を見た彼女の心は、恐怖や憎悪よりも悲しみに満ちていた。同業者にこんなものを差し向けられるとは、いよいよもって世紀末だ。
さらに追い打ちとばかりに展開されていくのは、チェスの駒のような姿形をした造兵。フラナガンの異能によるものらしい。ただでさえショコラの戦闘スタイルと相性の悪い密室、そこに圧倒的な数の差まで加わると逼塞を自覚せざるを得ないが、正義に燃える若者は鋭い動きで打って出た。

迫りくる騎兵。猛烈な重撃は、命中に紐づけられた敗北を匂わせる。咄嗟の横っ飛びで難を逃れるが、まんまと罠にはまってしまった。騎兵の体躯が作り出す死角…兵士達に奇襲の成功を約束するトロイの木馬。
やっと体勢を立て直したショコラを、容赦ない攻撃の波が襲う。振り下ろされたロッドを躱し。発射されたテーザー銃の針を、間一髪放つことのできた魔力塊で撃ち落とし。
当然、防戦一方の立ち回りなどすぐに綻びを生じる。立て続けに突き出されるエレクトロ・スタッフが、無防備な彼女の左腕に命中した。凄まじい痛みと痺れに歯を食いしばる…が、この程度で折れることはない。
トレードマークでもある肩掛けを掴み、引き千切らんばかりの勢いで剥がして投げつける。対象は今しがたショコラに手傷を負わせた兵士。一瞬とはいえ視界を封じられた隙を突き、対象の股間目掛けて繰り出されるは、強烈極まりない蹴り。
男性ならば誰もが聞いただけですくみ上る激痛、当然得物を握り締めてなどいられない。緩んだその手から武器を奪い取り、逆襲を開始する。

「ハァァァァァァァァァッ!」

自身の士気の鼓舞と、敵対者への威嚇を兼ねた叫び声。エレクトロ・スタッフの両端には強い電流が流れており、扱いに不慣れな者が振り回しても一定の効果が約束される。
そこに彼女の身体能力が合わされば、最早牽制程度では収まらない。立派な凶器だ。事実、兵士達は一人、また一人と倒れていっている。
しかし兵士を退けたところで、あの騎兵軍団をなんとかできなければ打開は不可能。フラナガンを倒すことはおろか、ここからの逃亡すら許されない。
故にショコラも異能を解禁する。それがどのような効力を発揮するかは、壁を突き破って侵入してきたものを見れば一目瞭然。外壁に開いた大穴から覗くのは、彼女の指先一つで自在に操ることのできる"大地の尖兵"。この度は強靭な蔓と巨木が選ばれた。
蔓は先程突進してきた騎兵の拘束を、巨木は対象の粉砕を目的に突き進む。兵士の対処と騎兵への攻撃を両立するのはもちろん、異能の使用に割かれるリソースも大変な負担となってのしかかるが、これが彼女にできるベストであった。

>>ニール・フラナガン

4ヶ月前 No.1054

流水 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【時空防衛連盟本部/エントランス/ツバキ・オオトリ】

大波を伴って走るツバキ。"これを無視はしまい"と言う予測からの行動だったが、結論から言えばその予測は全くの外れ――即ち機兵の目は全く相方から離れる事は無かった。否、それどころか、機兵は躊躇う事無く切り札を切った。

「……チッ」

放出されるのは、先程の光輪と似た、しかしそれとは比にならない莫大な熱量。直ぐ様後退しなければ灰にもならずに消し飛ばされるであろう文字通りの必殺技。
致命的な一撃が来ると解った瞬間、ツバキは踵を返し範囲外へと逃れるべく逆走する。彼女にそれと真っ向からやり合う能力は無い。それでも爆熱が迫る方が早い。後背へ大量に放水して、ギリギリ身を焼かれない程度まで熱を奪う。背を焼かれる様な感覚に襲われるが、眉一つ動かさずに距離を空けることに徹する。
熱が去ったを確認して振り向けば、急激な蒸発で発生した多量の水蒸気が白く視界を染め上げ、黒光りする機兵が陽炎でゆらゆらとぼやけて見える。その様はまるで、地獄の御使いの様にも思えた。

……だが彼奴は強者でこそあれ、地獄からの使者等と言う高尚な者では無い。人智こそ遥かに超えるが、突き詰めれば単なる『漂流物』だ。何処ぞの世界から流れ着き、元の世界の目的を、全く迷惑な事に此方で果たすべく行動する、まるで下らないただの鉄塊だ。恐れる事は、無い。

相方が大きく吠え、決着の意思を込めて一撃を繰り出す。彼の様子からして、これ以上長引かせるつもりは無いのだろう。痛々しい半身が何よりも雄弁に語っている。

「消耗は……いや、気にしていられないか」

であれば、と。ツバキもまた、この交錯を最後とすべく手を打つ。機兵が相方の攻撃に対応するよりも早く、小手先の目眩ましでなく、必ず仕留めると言う意思を籠めて。

相方が攻撃するのに合わせ、三度水流を展開する。しかし今度は"波"と言う量ではない。相方と機兵を取り囲む様に展開されたそれは、さながら水の城壁。消耗を度外視した膨大な水量で、機兵の逃げ場を断つ。前後左右の何処にも奴が動く余地はない。無理にでも水壁に突っ込めば幾ら奴と言えど押し流されて身動きが取れなくなる。加えて言うなら、ツバキから離れて行く程に水壁は崩壊し、機兵に向かって迫る大波となる。動かなければ大波で体勢を崩され、相方の攻撃が直撃する。正しく完全包囲とも呼べる状況――だがしかし、ある一点だけはその水激はカバーしていない。

"頭上"だ。液体の性質上、どうやっても機兵の上だけはがら空きとなる。であれば、相方の攻撃を嫌って機兵が待避行動を取るとすれば其処しか無い――そして、それすらツバキは織り込み済みでいる。

「滾りはしなかったが」

放水を止めないまま、彼女は水壁を垂直に駆け上る。放水を止め、途端に荒れ狂い崩壊する水面を蹴り上げて大きく跳躍――機兵の真上を取る。ある意味無防備にも見える行動だが、しかしあれほどの大技を使った直後ならば二度は無いと判断しての事だ。

「少しは運動になった」

右脚を、爪先が天上へ向かう程に大きく振り上げる。渇いた視線は、ただ機兵の無機質な頭部へと向けられる。
右脚の爪先から水激を放ち、それを推進力として機兵の頭部目掛けて振り下ろす。小柄な体躯から繰り出されるのは、天を砕かんばかりの威力の踵落とし。人類を滅殺せんとする機兵を地の獄へ叩き落とすように、しかし何の感慨も無く、それは激槌が如く振り下ろされた。

>>ワーロック、清太郎

4ヶ月前 No.1055

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【時空防衛連盟本部/訓練施設/17代目葛葉 ライドウ】

「食べても大丈夫だ、というかその『チャクラドロップ』どこから拾ってきた?
 そのアメは食べたら少し魔力が回復するだけの甘い飴玉に過ぎん、決して害ある物ではない。糖分くらいは摂れるだろう」

『前に異界でチョロっと拾ってきたモノだホ』

仮にもまだ味方と完全に言い切れない人物に『食べても大丈夫か』と聞くルーシャにライドウは苦笑を零した。もう完全に戦いの空気ではない。
やはり彼女は根が善良なのだろう、ますます時空是正局などという場所に置くには惜しい人物だ。
ちなみにジャックフロストの言葉は嘘ではなく、”ヒロ右衛門”というスキルで偶に役立つものを拾ってきたりする。
高価な骨董品や回復アイテムを拾ってくることもあれば微妙なモノを拾うこともある、今回はどちらかと言えば微妙な物に分類される。
魔力を回復すると言ってもその回復量は多いとはいいづらいので初級サマナーでなければあれば助かるが携帯必須というほどでもない。

「ルーシャ・コバルトか、悪くない名前だ。だがその名前が嫌だというなら、その名が忌まわしい過去を想起させるというなら名前を変えるというのもアリだぞ。
 事実葛葉の里……俺の故郷で保護された君のような人物は過去との決別を込めて名を変えた者もいる、俺が知る限り12人ほどが名を変えて新たな人生を歩んでいる。
 まあいきなり異世界と言われても確かに躊躇いはあるだろう、ゆっくり考え、ゆっくり決めればいい、それが君の権利であり義務でもある」

ライドウの言葉は終始ルーシャを気遣うものだった、それはもう彼女を敵としてみていないということの証左でもあった。
最初から彼女を敵として見ていたらクイックドローで頭と心臓に加重弾を撃ち込んでいたことだろう。
それでも最初に交渉を選んだのは彼女の中に確かな”善性”を見たからだ、人間として当たり前の価値観、倫理観。
それらが欠落している連中が時空是正局だ、少なくともライドウが見てきた時空是正局の連中には人として当然の倫理観が欠如している連中しかいなかった。
狂っていなければそのような事業に手を出さないだろう、そう思っていた。だがルーシャのように弱みに付け込まれた人物も居ることをライドウは知った。
ルーシャには忘れられているであろう変な動きを続けているモコイは結局ルーシャの嘘を伝えなかった、それが答えだ。

そしてギルバートの言葉を聞いてルーシャは目を輝かせてギルバートの手を取った。これで決着だ。
役目を終えたモコイがライドウの元へ戻ってくる、ライドウはそれを見てモコイを封魔管に戻す。
ライドウに向けて言われる感謝の言葉にライドウは差し出していた右手をヒラヒラと振って答えた。

「良い、それで良いのだ。君が今まで見てきた世界は辛く汚いモノだけだったかもしれないが、この世界にも、どの世界にも確かに綺麗で正しい輝きがある。
 それを大切に抱えてこれから生きていけばいい、俺の提案は何かあった時のための保険とでも思えばいいさ。
 ヒトがヒトである所以の輝きを守るのが我ら葛葉一族の使命だ、何かあったら遠慮なく頼るがいい、葛葉ライドウの名に懸けて君を助けよう」

交渉は終了だ。我らの勝利という形で、誰一人として敗者を出さずに言葉と言葉のみを交わした戦いは終わりを告げた。
ルーシャはここに二人の仲間を得た、例え時空防衛連盟が彼女を認めなくてもライドウとギルバートが居る限り彼女の未来は保証される。
ライドウが知る限り此処のトップは切れ者であり寛容な心を持っている、彼女を追放するという命令は出さないだろう。

「さて、話も一息ついたところだ。その毒ガス噴霧装置のスイッチを渡してもらえまいか? 俺が屋上で安全に解体してくる。
 見たところ複雑な機構をしているわけではないし、きちんとした手順を経れば解体は充分可能だ、俺の仲魔にはそういったことに精通した奴がいる」

感動的でいい話で終わらせたいところだが、結局のところこの毒ガス噴霧装置をどうにかしなければならない事には変わりない。
雷電属の仲間を呼び出せば解体は充分可能だ、だが今は暴発に備えて疾風属の仲間を呼び出すことにしよう。
呼び出す仲魔が”天使”ならば彼女は怯えずに済むだろう。

「来い、サンダルフォン、装置を運び出すぞ」

『召喚に預かり参上しました。話は聞いておりました、貴女の未来に幸多からんことを祈らせてもらいます』

次にライドウが呼び出したのは高位の天使サンダルフォン、その静謐な雰囲気と神聖な装束を纏っているのをみれば誰もが一目で天使だと言うであろう容姿だ。
そのサンダルフォンが目を閉じた穏やかな表情でルーシャに祝福の言葉を掛ける。悪には容赦ないが善なるものには祝福をというのがこの仲魔の考えだ。

>ルーシャ・コバルト、ギルバート・トムフール、ALL

【こちらこそお相手ありがとうございました、次のレスで毒ガス装置を持って移動しようと思います】

4ヶ月前 No.1056

首刈りヴァルキリー @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【大統領官邸/大統領執務室/ミシャール・ルクセン】

「馬鹿言っちゃあいけないねえ、そいつは労災や保険がおりて尚且つ療養期間として休みがドカッと入るレベルの怪我だ、仕事が出来なくなるんならそれは大怪我の範疇だろう、ん? だから失せろってんだよ分かんない子だねえ」

退く理由には程遠い、大怪我にも値しない、そう語るイルグナーに対してミシャールはからかうように、手術でもしないと仕事が出来なくなるレベルなら大怪我の範疇だろう、と問いかける。
その上で、そんな怪我をしてれば退けるんだからとっとと引き下がれと促す。

しかし、彼女は自分の鎌かけに対して、これ以上に無いほどの『確信を持てる返答』を即答した。 地獄ではなく、"夢"と来た。
さらに慎重さを欠いた正面からの攻撃、そこにどんな意図があろうとも、こういう戦術は生きて帰る必要が無い奴か、あるいはよっぽど実力に自信がある奴が使う物だ、そして、自分との戦力差が分からない"本来のイルグナー"ではないだろう。

放たれた三発の銃弾、それは既に電撃を発生させている斧から自動で発射される迎撃用の雷撃で蒸発する。
それだけならば、無駄な攻撃だ、またイルグナーはこちらに向かってくるついでにリロード。

さあて、仕掛けてくるのは『何処からか』と思いながらも、ミシャールは今までの笑いを崩して、それこそ痰の一つでも吐きそうな不愉快極まると言った表情を浮かべて。

「けっ、あのクソガキか。 アタシの仕掛けが遅かったって事か、あんたは生きる、アタシの無能の象徴だよ、自分の鈍さに嫌気が差すね」

ミシャールはイルグナーがこうなった原因を特定して、その面を思い浮かべて悪態を付く。
もう少し早く仕掛けていれば、こんな事にはならなかったってことだ。

そうミシャールは結論付けて、目を細め、彼女こそが自分の無能さを証明する人物であると語る。

「おっと、コイツは失礼。 ちゃんと会話をしなくちゃあね、老人の脳みそはすぐに明後日の方向に話題が飛ぶから困る。 あぁ、夢だったかね」

――拒否だ、お前の夢の価値は知らんが、少なくともアイツのエゴで装飾された夢に価値は無い。

ミシャールはそう冷たく突き放した。
彼女にとってはちょうどいい話だ、元世界政府高官様の能力対象を辱めて元に戻してやる。 直接ぶっ殺せなくとも、多少は自己満足になる。

正面からの殴り合いでは絶対にイルグナーは勝てない、故に死角を突いてくる、そんな事は織り込み済み。
だが出てくるヤツのスペック、これが問題だ。

自動迎撃が作動して雷撃が発射、それが即座に自分に跳ね返ってくる、これをミシャールは斧本体で受ける。
しかし、ミシャールにとって問題なのは……イルグナーがそろそろ不味いと言う事だ、無計画な長期戦は、あのクソガキの手の掛かったやつらしい、満足するだけして死ぬって流れが容易に想像できる。

「……ハッ、予定していた「ただ負けること」より難しいなこれは。 ま、腕の見せ所かねえ、実力差と言うよりは」

使用可能な戦術と武器は限られている、怪物を片付けるにしろ、放電を行う関係上、下手に大電力を使った砲撃を使おうが、イルグナーどころか自分も危ない。
なら……相手の策に乗ってやるか。

と、ミシャールは両手の斧を振るって、まさに"欲を出して"一振りで、怪物たちを切断する。
当然、そこの隙を見逃すイルグナーではなく、振るわれるは自分の腕を使った鞭のような打撃。

ミシャールの人工皮膚を叩き潰し、血を再現した部分をぶっ壊した上で、中身の機械にもヒビが入る、だが。

「アタシに接近戦をやるなら一撃離脱に拘るべきだなあイルグナーよぉ! ……死にたいなんて言わせないからね、アタシは人の話を聞けない自分勝手な叛乱者なもんでね!」

ミシャールが一度近づいてきたミシャールの腕を掴んで、ぐいっと引き寄せようとする。
とは言え、掴めるのは折れかけてるほうの腕だ、相手の精神状態次第では引きちぎって逃げる事も考えられる、これは一種の賭けだ、それも分がかなり悪い。

だが、ミシャールの脳裏に浮かぶ、あの不愉快な顔を引き剥がすには、この方法が一番良かった。

殺傷に至らない低出力電撃を直接流し込んで気絶させる事。
これが出来なければ、相打ちか、一方的に殺してしまうか、時間切れか、どれにしろ、アイツの"想定通り"だ。

ミシャールの斧に電流が流れる、と、同時に、刃の役割を担うレーザー刃を消滅させ、単純な電流の流れる棒としてイルグナーに叩き付けた。

>イルグナー・シュタウンハウゼン


【可能な限り『どっちでもいける』感じでやらせて頂きました、結末、あるいは継続はお任せします】

4ヶ月前 No.1057

箱入り娘 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/クラリス・ツァクトユーリ】

愚痴をこぼした上に、時には欠伸もしながら、実に暇そうな雰囲気を醸し出しながら敵の到来を待つクラリス。既に集中力は切れており、再度スイッチを入れるためには何か切っ掛けが必要だろう。
あまりにもやることがなさすぎるため、たまに独り言も出て来る。それは大抵が「今日の晩ご飯どうしようかな〜」や「やっべ、明日予定何もないわ」といった他愛もないものだ。
実に緊張感に欠けるものであることは間違いなく、この場に他の戦闘員や将官がいたら大変なことになっていただろうが、クラリスはそんなことを気にする人物ではない。
後ろから聞こえてきた声に対しても、どこ吹く風。彼女にとっての歴史是正機構とは、自分を縛り付ける親への当てつけでしかなく、忠誠を誓う存在などではないのだ。

「別に見られたところで、ってやつじゃん? てか、出来ることならこんなことやめてもっと別のことやりたいし」

フリードリヒの言葉に反応を返すクラリス。彼女は今の地位を失うことを何ら恐れてなどいなかった。むしろ、こんな無意味なことをやめられるのならプラスとすら考えている。
歴史是正機構の目的は人類の昇華らしいが、こんな方法でそれが成し遂げられるのかどうかは疑問だ。革命など起こしたら、余計に反発が強まるだけではないのだろうか。
いや確かに、世界政府は正直いって信頼の置けない連中ではあったが……クラリスには政治が分からないが、それでもこれは間違っているのではないかと、何となく感じていた。
そしてそれに加担している自分が、どのような目を向けられるのかも気になる。単なる一端の戦闘員として見られるか、それとも計画に関わったとして同様の扱いを受けるか。
親の敷いたレールを走りたくなかったから選んだ道とはいえ、犯罪者のレッテルを貼られてしまったら困ったことになる。将来のことを考えても、それだけは何としてでも避けたいところ。
どこかでタイミングを見計らって見切りを付けるべきかも知れない。若干の眠気を覚えながらそんなことを考えていたクラリスだったが、それは突然の爆音で吹っ飛ぶことになった。

遂に敵襲か? 思わず身構えるクラリス。炎の中から現れたのは、馬耳の少女。直接見るのは初めてだが、知っている。これが、俗にいう魔族というやつだろう。
クラリスは魔族に対して何ら偏見を持っている訳ではないが、実際に近くで見てみると意外と人間に近い。違うのは精々、動物の特徴が見られるかどうかくらいだ。
そして、その少女を追うようにして現れたのは、まあまあここはコスプレイベント会場ではありませんよ、と声を掛けたくなるような出で立ちをした少年。
彼は馬を探しているようだが、馬ならそこにいる。いや、馬って言ったら失礼か。ようやく敵がやって来たかと思ったらこれ。あまりの展開に、脳の処理が追いつかない。

「あー、えーっと? そのー……ここは聖地でもないしコスイベもやってないから帰った方が……ってか何なのあんた達!? バリ意味不明!」

ようやく出てきた言葉を自信なさげに紡いでいたクラリスであったが、最終的には本音が出てしまった。自分は、こんな奴らの相手をしなければならないのか。
初陣が不思議ちゃん二人というのは幸運なのか、それとも不幸なのか……取り敢えず、殺意剥き出しの敵ではなかったという事実を喜ぶべきなのかも知れない。

>コーマ・アンダルーシャ、フリードリヒ・ガーデルマン、ルシウス・アルトリウス

4ヶ月前 No.1058

慎重で臆病な上位種 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

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4ヶ月前 No.1059

イスマリア @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 時空防衛連盟/作戦会議室/イスマリア・ザルヴァトール 】

 ちく、たく、ちく、たく、ちく、たく――。

 徹底的な殺戮により生者は己を除いて零と成り果てた作戦会議室。
 床に張り巡らされた静謐にして蛍光灯の無遠慮な照りによりにより輝くタイル。
 しかし今や、美麗なはずのそれは流れる血により不透明な紅色に染め上げられている。
 今もなお、死体より零れる血河に映る己の貌。無表情を通り越して機械的とすら思えるほどの冷たい顔立ち。
 思うところは何もない。
 ただ未来<ユメ>のために駒を進め、そして突き進み続けるのみでしかない。そのために必要な努力を積み重ねず、何が未来か――。

「……」

 ――静寂だからこそ、声は余計に良く響く。

 想定しえないものを見たかのような声。鮮血の戦場を前に立つ殺戮姫を見たときの声。
 何をしに来た。慣れていないのか。この程度の殺戮を前に怖気づくのは兵士としてはまだ半人前か。
 零れ落ちる数多の命。積み重なる数多の屍。それらを潜り抜けていないものが発する声というものは実に、初々しい的。
 だから、イスマリアの攻撃<アクション>も早い。

 >>二頭の黒狗よ、招来せん――

    Blitz Schwarz
「《黒雷よ、果てより来たれ》」

 無造作に掴んだ死体。起動する異能――数千ボルトの電光。
    ・・・
 付与、死体に。電光を炸裂させる肉爆弾の完成。
 瞬間的に力を入れ、扉が開け放たれた瞬間に蹴りだし宙へ――爆裂する肉壁として展開。
 容赦の無いフルオート射撃。過剰なまでに撃ち込まれる銃弾を前に死体は瞬時に肉塊へと変えられていく。
 そして仕込みは起動する。肉壁の破壊と同時に、襲撃してきた当人――フランネルへ降りかかるは稲妻の波動。
 複雑に絡み合う雷糸。衝撃が狭い室内にて炸裂。
 撒き散らされるプラズマ。目と体を焼く白光を目くらましに、横に身を投げ射線より退避。

「――ふッ!」

 かけるは牽制。右手に形成するは電光の槍。三本作成<装填>――スコープは右手で代用。照準合わせ<ロック>。
 狙いは一点。扉より見えたフランネルへ向けて撃ちだし、殺到させる。

>フランネル

4ヶ月前 No.1060

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【歴史是正機構/監視室/ランサー】

 ランサーは次の戦地へと赴いた。
 次の戦いは連盟と機構の全面戦争。
 ランサーは前線へ志願した。
 朱い槍を引っ提げて、向かうのは高層ビル。
 大統領が暗殺され、連盟が攻められ、ある議員の演説が始まった。
 これを受けたランサーの答えは、事が大きく動いたと思った。
 まさに動乱。果たして世の激流に呑まれるか呑まれないか、既に終わった者の意見は、溺れかけた存在に背中を押すのが役目だと思っていた。

 ■

「ついに尻尾だしやがったな、敵(やっこ)さん」
 と朱い槍を担いでそう呟き、物足りなさそうな表情でモニターを見るランサーがいた。
 ライドウの言う通り、そして自分の言う通り、敵はどうやら一人ではなくこの機と思ったのか機構の施設内は騒がしかった。
 侵入は容易で階段から一走りでかけ登り、持ち前の俊敏さで廊下を走り、出会った職員をかたっぱなしから悶絶させながらもたどり着いたのは監視室。
 ドアを蹴破って監視室内にいたスタッフ達は、床に横たわり悶絶させ今に至る。
 出会った人間が悶絶しているのは槍の石突で鳩尾を突いたからだ。
 命令されていないし、流石に命までは取るつもりはないとランサーは判断してこうして眠らせている。
「さてと。こいつぶっ壊せりゃあ、少しは大人しくなるかね」
 ここは謂わば敵の眼、戦法螺だ。赤い眼に映る映像がそれを物語っている。
 これを頼みに戦況把握していたのならば、間違いなく敵は混乱する。
 敵の数を知らないまま戦場に挑むという事は、引き際が分からなくなるからだ。
 だから勝利に導くならこういった細工は必要だと、ランサーは思っていた。
 屠る為ならば、物理的干渉しないという仕組みを利用して霊体化して室内の獲物を屋根上から攻めたり、背後からの奇襲は当たり前。それがランサーの戦い方のひとつでもあった。
 取り敢えずこの機械怖そうと、槍を縦に振り下ろさんとして。
>ALL

4ヶ月前 No.1061

紅焔の塵殺者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【歴史是正機構本部/実験室/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 深紅に染まりし長髪を靡かせながら、揺らめく輝赫の焔を帯びた緋色の魔剣を手に戦場を闊歩するは、覚醒を果たした塵殺者。先刻、公邸を舞台に繰り広げた神威の激突にて、半身が消し飛ぶ程の重傷を負ったにも関わらず、驚異的な速度で治癒し、今ではこうして五体無事の姿を保ったまま、悠々たる足取りで歩み続けている。
 それは人間を逸脱し、異なるモノへと変貌したからこそ為せる業――未だ高度な同調に留まり、どういう訳か完全なる融合は果たせておらず、総てが安定しているとは言い難いが。その不安定さが露呈する要因が此処には無い以上、それは大きな問題とはならない。理想として定め、遂に型として嵌めた"英雄"で在り続けられる。尊き者に繁栄を、悪しき者に破滅を齎すものとして、居続けられる。

 ――だが、果たして。本当にこれが、"レオンハルト・ローゼンクランツ"と言う人間が、真に渇望した結末であったのか。ほんの少し前に交わした会話の時から、激しく歪んでしまった"英雄"と言う言葉。ただ他者の指標となる存在か、それとも幸福も命も捨て去ってまで、総ての悲劇を終わらせる存在か。彼が本当に望んでいたのは、どちらなのか――それが明らかとなる瞬間は、まだ訪れない。

「遅い、そして足りん」

 侵入者を迎撃する機構の戦闘員達。怒涛に浴びせられる無数の銃撃。発動する異能、魔術。殺意を具現するが如くに、徹底的な死を与えるべくして乱舞する襲撃の数々を前に、塵殺者は断言する。捉えるには遅く、仮に捉えたとしても手傷を負わせるには何もかもが足りないと。真実、彼等の一撃が届くよりも疾く、彼の姿は消え去り――同時に、彼等の背の向こう側へと姿を顕して。其処から遅れて、彼等の身体から血飛沫が大量に迸り、通路の床と壁とが血の紅へと染まり行く。消滅と出現の間の刹那に為した早業で、障害を容易く蹴散らした彼は、引き続き戦場を突き進む。

「此処が、奴等の実験室か――」

 辿り着いた一室。脱走を妨げる鋼鉄の扉を、焔の一振りで溶断して内部へと侵入し。室内に居た数々の研究者達へと、容赦する事無く焔球を撃ち込み、灰すら残す事無く滅却する。万が一を想定して配備されたであろう攻撃装置による迎撃、それらも一瞬で総じて無力化させる。そうして制圧を完了すると、内部に居た被験者達を解放して行き。

「――心底、気に食わん。こんな物は不要だ」

 最後の一人が部屋を出たのを確認すると、焔の魔力を引き出して空いた左手に集束、直後に解放。引き起こすは唯一つ、室内を完膚無きまでに破壊する大爆発。暴虐的な熱と衝撃が、空間一帯を蹂躙し尽くした果てに――死骸も残骸も総てが焼失して、虚無が広がる。其処に居るのはただ一人、この凄絶なる光景へと塗り替えた"英雄"のみ。

>ALL

4ヶ月前 No.1062

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【大統領官邸/シチュエーションルーム/ユーフォリア・インテグラーレ】

今現在の状況は、最悪といっても差し支えないだろう。フォルトゥナはダグラスは勿論、ユーフォリアの言葉を聞いてもなお止まる気配がなく、あくまでこちらを殺すために動いている。
時空防衛連盟の総統として、この場で成さなければならないことは理解しているが、相手は実の妹だ。簡単に踏み切れるはずがなく、彼女は冷静を装いながらも葛藤を続けていた。
殺したくはない。だが、説得では止められないというのであれば、本気でぶつかり合わなければならない。幼少期のフォルトゥナを間近で見ていたユーフォリアには、彼女の素質と高い能力が痛いほど分かる。
あくまでそれは当時のことで、現在もそうかは不明であったが、最初の攻撃を目の当たりにした時点で疑問は確信へと変わった。順調に成長を続けたフォルトゥナは、数多の能力者と互角以上に渡り合える力を身に着けていたのだ。
だからこそ、その矛先がこちらへと向いている現状は驚異そのものである。同時に、誤った道を進んでいる彼女を正したいという気持ちが、ユーフォリアを突き動かす。
まさか、妹も同じ目的で戦場に立っているとは、夢にも思わないだろう。フォルトゥナからしてみれば、ユーフォリアは父を追うようにして"汚職"の道を突き進む、憎むべき存在なのだから。

ユーフォリア達に遅れる形で、ヴァイスハイトがシチュエーションルームへと足を踏み入れる。やはり、彼が浮かべるのは驚愕の表情。仕方のないことだ。ここで再会を果たすなど、予想出来るはずもない。
叔父の家へと引き取られたフォルトゥナは、幼少期をヴァイスハイトと共に過ごしている。その後、どうなったかは不明だが、近しい存在であることに間違いはないだろう。
もしかすると、膠着した状況を打破するための突破口となってくれるかも知れない。彼は相手を攻撃することを躊躇っているが、ユーフォリアがそれを叱ることはなかった。
何故なら、当たり前のことであるからだ。親族を容赦なく撃ち殺せる人間など、普通は存在しない。いるするならば、それは大半の場合異常者に分類される者達である。
フォルトゥナがそうであるとは思わないが、一体何が彼女をここまで頑なにさせているのだろうか……長い間離れ離れになっていたことも影響したか、ユーフォリアはまだその真意を読み取ることが出来ずにいた。

「いいえ。聡明な貴方がそちらを選んだ理由が、私には分からない。歴史是正機構の取る手段が間違いであることくらい、貴方なら簡単に気付くことが出来たはず」

闇の衝撃波の中から現れたフォルトゥナの攻撃を、ユーフォリアは的確な動きで往なしていく。真っ直ぐに突き出された右腕の手首を掴むと、その勢いを殺し、軌道を逸らす。
彼女の主戦場は遠距離戦だが、それは即ち接近戦が苦手である、ということにはならない。近距離においても、ユーフォリアの実力は群を抜いている。
ただし、フォルトゥナとの比較においては、さすがに不利であるといわざるを得ないだろう。能力は同程度の二人である以上、得意戦法に持ち込めるかどうかが勝敗の鍵を握る。
戦いの最中で、ユーフォリアはダグラスから聞かされた時からずっと理解出来ずにいたことを、妹へとぶつける。何故、歴史是正機構に協力することを選んだのか、と。
風の噂程度に聞いた限りでは、フォルトゥナは決して頭の悪い人物ではなく、むしろ良い方に数えられる人物であったらしい。ならば、歴史是正機構の急進的なやり方が誤りであると悟っているはずだ。
にも関わらず、彼女はあちらに与した。その訳を知りたい。誰かに脅され、仕方なく従っているだけなのか。あるいは、ダグラスのように別の目的があるのか。
まさか、本心から彼らに賛同していることはないだろう。そうであって欲しい。回答次第では、総統の役目として、実の妹と本気で殺し合わなければならない可能性すらもある。
ユーフォリアは反撃を行わない。ただ、敵の攻撃を見極めることだけに集中している。彼女が攻撃に移るまでには、まだいくらかの猶予がある。しかし、それもいつまで持つか―――

>フォルトゥナ・インテグラーレ、ヴァイスハイト・インテグラーレ、アルカディア・クアドリフォリオ、ダグラス・マクファーデン

4ヶ月前 No.1063

慎重で臆病な上位種 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

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4ヶ月前 No.1064

イスマリア @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

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4ヶ月前 No.1065

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【時空防衛連盟本部/食堂/桐生戦兎】

「!」
敵がブラスターの波状攻撃を仕掛けてきたが、すぐに反応できた。
先ほど攻撃しようとしていたことは気づかなかったが、こちらは気づいたようだ。
とっさにラビットボトルを取り出して振り、身を翻して攻撃を捌く。

「ふっ!」『ラビット!』
華麗なムーンサルトを決めつつラビットボトルをビルドドライバーに挿す。
幸運なことにナイフ攻撃のうち2発をこれで回避できた。

『タンク!』『ベストマッチ!』
「くっ……」
そしてそのままタンクボトルを装填する。
そこから地面に着地してレバーを回そうとするが、敵の斬撃の残りの一発が足にかすった。

『Are you ready!?』
「変身!」
『鋼のムーンサルト! ラビット・タンク! イェーイ!』
「さぁ、実験を始めようか!」
それでも立ち上がり、レバーを回してラビットタンクフォームに変身。
これで感覚が強化されたが、気配を完全に消すタイプの敵と戦ったことはなかった。

>雪葉および周辺all

4ヶ月前 No.1066

フラナガン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【放送局/放送室/ニール・フラナガン】


 ―――ああ、そう返すだろうなあ、君は。


 その不安定な秩序がどのような結果を招いたのかと言われれば、答えは明白だ。
 御存知も御存知であるし、そもそも彼は当事者だった。
 歴史是正機構の存在を知っていたし、ユーフォリア・インテグラーレの父が魔人たちから受けた仕打ちの是非についても彼は良く知っている。知っていて、なお動くことが出来ないのがフラナガンの限度であるし、大人という者のサガだ。
 彼が悪党で、私利私欲のために生きているのかと言われるとそれは否である。否であるが、それでもフラナガンは大人なのだ。現実を知り、諦めを知り、妥協と挫折を味わい尽くし、停滞し切った大人なのだ。昨日に戻る愚行はせずとも、明日に向かう勇気はない。現実という名前の今日に打ちのめされたから、そこにしがみ付くことを選んでしまった者達だった。


「知っておるよ、痛いほど知っておる………だが、我々は大人なのだ」


 対してショコラ・ヴァンディールは大人でも、子供だ。
 あの若さで政治家と成った彼女は、悪く言えば身の丈に合わない、自分を焦がすような理想を掲げている。理想というほどではない、些細なものかもしれないが、それでも清廉な願いであることに関して一切の間違いはないだろう。
 これがきっと違いなのだ。若さという名前の力だ。そこに危うさがないとは言わないし、大人の全てを否定するものでもない。ものでもないが、民のことをどちらが思って行動しているのかは明白だった。

 そして………民への隣人になれるのがどちらなのかも、ある意味で明白だった。
 それが正しいのだ。恐らくは。
 正しさだけで人が救えないとしても、きっとやらねばならないことなのだ。
 本当に善き民の代表になるというならば、あれは間違った解答ではないだろう。

 だというのに我々は………―――。


「それが政治というものなのだ………」


 突撃する兵士たちと騎兵を見ながら、彼は嘆息と共に状況を俯瞰する。
 嘆息は、現実を理解しないショコラへの言葉なのか。
 それとも、最もらしいことを言っただけの自分への感情なのか………それを語ることは、ない。

 一般的に狭い戦場において、数の暴力とは諸刃の剣である。
 彼女が本当にただ一人の若い娘なのであれば、借りて来た兵士たちによってにの一番に沈黙させることが出来ていただろうが、そうではない。そこまでショコラは軟ではなければ、抵抗をしないほど彼女は甘えた相手ではない。
 騎士を隠れ蓑にした攻撃は確かに成功したが、兵士たちはそれまでだ。
 有り体に言って男児ならばどれほど頑強だろうが御免被る箇所への熾烈な蹴撃が彼らを襲い、奪われたスタン・ロッドは逆に兵士たちへと猛威を振るった。倒れこそはしなかったが見事なまでの全滅だ。………聊かの脅威より前に、借りて来た兵士たちを死なせなかったことへの安堵だけはあった。それ以上に、あっさりとした壊滅に危機感を覚えるのが彼だったが。


「む、む―――!」


 そして、異能力の持ち主は別にフラナガンに限った話ではない。
 むしろ扱いと戦闘の経験においては、当たり前の話であるが何歩かショコラが勝っている。
 壁を突き破り、大穴から飛び出して来た世界樹《イグドラシル》もかくやの巨木と蔓。騎兵への拘束と対象の粉砕を目的に突き進んで来たそれを、なまじ突進からの方向転換が効きづらい騎士には如何ともし難いものがあった。
 こと騎兵の弱点と言えば言わずもがな。無防備な脇腹より攻め込まれ、殴り付ける巨木の一撃がいかほどの打撃力と破壊力を持つのかは、素人である議員にも理解出来ることだった。だから、彼は騎士《ナイト》の駒を手痛い犠牲として払った。わざと払ったのではなく、そうしなければならなかったのだ。
 彼の駒にはある制限がある。チェスの駒に見立てたそれは、ひとつ致命的な弱点がある。
 だからこそだ。騎士の消滅を待って、空間が空いてから―――。

   、   、 ルーク
「これならば―――戦車!」
   、  ビショップ
「ならびに、司祭!」


 次が、ショコラへと突撃した。
 巨大な鉄の要塞を思わせる戦車だった。真っ直ぐに突っ込むことしかしないそれは、逆に言えばそれだけに関して言えば圧倒的なまでの攻撃力と防御力を兼ね備えた鋼の塊だ。突撃の威力は騎士の比にならず、その攻撃範囲も比較にならない。
 しかしその代償は速度だ。力で押し潰すそれは、騎士のそれとは速度という意味で逆に比較にならない。本来ならば誰かの補佐があって初めて機能する攻撃だろうに、これでは回避も対応の準備も容易だろう。

 それを補うのが、フラナガンと同列に立つ司祭の駒だ。
 中世の魔術師風に描かれたそれらは手をかざすと、次々と薄紫の光を弾丸のように整形して連射する。機関銃もかくやの勢いで横殴りに叩き付けるそれは、威力こそそうでもないが、戦車の突撃が来るまでの間絶え間ない牽制の雨として横殴りに敵を襲う。対処に手をこまねいていれば前者の壁のような威容が対象を押し潰すという算段だった。

 ………彼の手元にある歩兵《ポーン》たちは使わないのではない。使えないのだ。
 十五騎の精鋭たちにはある欠点がある。チェスの駒ならではの、致命の欠点が。
 最も司祭の存在ある限り、それはあって無いような欠点だったが―――。

>ショコラ・ヴァンディール


【おまたせしましたm(._.)m】

3ヶ月前 No.1067

ワーロック @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【時空防衛連盟本部/エントランス/ワーロック】

 殲滅。殲滅。
 吹き荒れる力の奔流は、ありとあらゆる全てを焼き焦がして消し飛ばす。
 まごうことなき破壊の渦に貴賤はない。老若男女の区別も無ければ、敵味方の判断さえ。
 彼にとっての敵は人間だ。何処に流れ着こうとも、何処でその牙を振るおうとも、ワーロックという黒鐵の齎すものは徹底的な破壊と破滅。人間という存在の徹底した駆除に他ならず、そうした行動に出るのは遅かれ早かれ見えていたことだった。今まで組織的行動に助力をし、奇跡的にそれらが噛み合っていたという状況こそが逆に奇跡的だったのだ。

 ワーロックの演算には、敵の行動に対して三つほどの想定があった。
 ファイナルサクリファイスの熱量に呑み込まれて撃破される―――この場合は想定、対処の必要無し。
 攻撃の隙間を狙った不意打ちを繰り出す―――想定済み、対処行動についても考慮。
 此方の攻撃を止めるべく防御的行動を繰り出す―――想定してあるが可能性は低い。

 第一の問題に関しては、ワーロックという機体の性能を見れば明らかだ。
 決戦兵器にして最終兵器たる鋼鉄の処刑者は、どんな相手だろうが真っ向から打ち砕くだけの攻撃力と手数、そして機動力を兼ね備えている。その戦闘能力に関して言うならば、例えこの時代の兵器が如何に進歩していようが比較にすらなるまい。故に7割方撃破を確認出来るだろうとG.O.D.の演算プログラムは結論を導き出しており、だからこそ“そうでない”可能性を考慮する。

 第二の問題はこれが恐らく最適解だ。最適解/定石だからこそ、対処は容易かった。
 エネルギー放出の合間に生じる隙間があると躊躇うことなく踏み込んで来れば、それがワーロックの毒牙に掛かるということだ。近接攻撃を仕掛ける暇は幾らでも存在するし、何より遠隔からの射撃であれば熱量感知と同時にエナジードレインの機能を適用させてしまえばなんの問題もない。有り体に言って、仮に仕留めきれずともこの行動は想定の範囲内に過ぎない。

 では第三の問題だが、これは“ない”だろうとワーロックは断定していた。
 見たところあの白い機動鎧の武装は外付けの携行タイプのみ。出力差ではこちらが勝っているし、投げ出された武装の数々にも然して気になるものはない。一発で状況をひっくり返すのがやつの火砲だとしても、対処は容易い。
 ならば後者の水使いはどうなのかと言われると、此方は更に“ない”。攻撃性能と動きの機敏さでは賞賛するべきところがある、あの落ち着き払った表情分析からしても何某の切り札がある可能性は数%ほど残っている。だがそうであるとしても、そうでないとしても―――その防御性能があるならば、わざわざ移動の手間を掛けずに腰を据えた射撃戦を展開しようとするだろう。

 であるに、ワーロックは躊躇いなくリソースを使って押し潰すことを選んだ。
 選んだからこそ、第四の選択肢に対して一瞬理解を拒んだ。


   ―――それは、特攻と呼ばれる類の行動だった。
      ファイナルサクリファイスの過剰なまでの熱量に正面から突っ込む自殺行為。


「―――愚か、愚か、愚か、愚か………」


 有り得ぬ。
 なんたる愚行―――なんたる蛮勇、なんたる狂気、なんたる愚直さ!

 こんなものは最早戦略でも適解でもない。
 そんなものですらない。装甲頼みの突撃というわけでもない、現に破壊確率は80%を越えている。エネルギーフィールドの装甲が如何に堅牢であろうとも、そこには確実な保障など何処にもなかったはずなのだ。
 ハイリスクハイリターンどころではない。ワーロックが仮に回避を選んだのならばどうだ?
 ワーロックのエネルギー放出がそこで止まったのならばどうなる?
 そうなった時は確実な詰みだ。


 それは戦場のカードが幾つも見えない状態から侵すべきではなかった無策無謀。
 されども、そう為さねばならぬことがあるからこその………乾坤一擲の一打。
 効率性とはかけ離れた、感情と意思の儘に在るべきものだった。


 だからこそ―――ワーロックは、理解出来ない可能性を排除していた。
 戦闘行為はあくまでも排除の延長線上に過ぎないワーロックは、そこに“何かの意味を持たせる”ことがないからこそ、リスクリターンでの状況判断しかしなかった。


 それがAIの限界だ。
 同じ駆動兵器でも、白銀の機体と、黒鐵の殺戮者にあった決定的なほどの違いだ。


 ………しかし、この火砲の一撃がただの無意味な足掻きに終わる可能性は、確かにあった。
 誤解を招かず言うならば、彼一人ならば恐らくは高確率で無駄な足掻きだ。
 ワーロックがエネルギー放出を終えた直後、フォビドーンフォースの一撃でも間髪入れずに投擲していれば容赦なくこの機体は爆散したに違いない。それだけで、あの愚行にも似た乾坤一擲の突撃は無為に終わっていたはずだ。

 あるいは、それをさせない為の彼女なのか。
 真上より鉄槌じみた蹴撃が放たれた時、ワーロックの機体は大きく揺らめいた。
 一撃だ。たった一撃。ある意味、ワーロックと同様に一切の感慨なく狙い澄ました蹴打。
 トドメにはならないが、清太郎が放つ必殺にして終幕の火砲が命中する隙を作るには十分すぎる。

     、  スマッシュ
 それは紛れもない鉄槌だ。

 黒鐵の抹殺者に、因果応報の一矢を叩き付ける勝利の号砲だった。


 嵐は止み、処刑の刀は錆び付いた。
 であるに後は、引かれた引き金に合わせた砲撃がコアへと直撃するだけ。



「コア損傷、甚大………60%、70%、ダメージコントロール―――、――――――」



 打ち所が完璧ならば、その砲火はワーロックの機体を叩き壊すに何の労力も掛けない。
 どんな機体だろうがなんだろうが、中枢となるべき部分が吹き飛ばされてしまえば後は鉄屑だ。

 清太郎の機体がほぼ半壊に等しい状況でも。
 彼という人間の行動を決める部品が守られているのに対し。

 ワーロックの機体は5割も損壊しておらず。
 しかし完膚無きまでに人類殲滅を掲げたG.O.D.の頭脳は見事粉砕の憂き目に遭っていたように。


   黒鐵の末路は、決まっていた。
   カメラアイから光が失われ、機体を駆動させる心臓《コア》は爆散した。
   あとは物言わず、ブラックボックスだらけの鉄屑が横たわるだけだ。


>清太郎、ツバキ、(ALL)


【遅くなりましたがこれで退場とさせていただきます〜】
【お二方、お相手ありがとうございましたm(._.)m】

3ヶ月前 No.1068

慎重で臆病な上位種 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

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3ヶ月前 No.1069

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ギルバート・トムフール】

異世界人ではないというギルバートの言葉を聞いたルーシャの目の色が変わった。どうせ、自分を受け入れてくれる者などこの世界にはいない、と思っていた彼女にとっては衝撃だったのだろう。
とても興奮している様子だが、彼はそれを咎めたりなどしなかった。大したことは出来ないというが、何もする必要はない。ただ、ルーシャは幸せを掴むだけでいいのだ。
ペットとして生み出され、歴史是正機構に拾われてからも役に立つことばかりを求められてきた彼女。力を示さなければ認めてもらえないという意識が、どこかにあったのかも知れない。
どんなことがあろうとも、ギルバートはルーシャを受け入れるつもりであった。彼女が名前を教えるように頼むのを聞いて、彼は僅かに笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。

「俺はギルバート・トムフール。時空防衛連盟、一番隊隊長だ。ルーシャといったな。今後よろしく頼む」

淡々とした口調で自己紹介を行うギルバート。その様子はさすが手慣れているといったところだ。役職柄、こういったことを行う機会もそれなりに多かったのかも知れない。
さて、これでルーシャも望まぬ仕事をせず、こちらの言葉に従ってくれたので一件落着……といきたかったのだが、どうやら事態は予想外の方向へ進んでいるようだ。
先程、彼女を救うべくして投げ掛けた言葉が勘違いを生んでしまったのだろうか。ルーシャは時空防衛連盟に入るのではなく、ギルバートと一緒になると言い出したのだ。
これはどうしたものか、と一瞬彼は困惑するが、一人にはしないと約束してしまった以上、無碍にすることも出来ない。恐らく、独身でなければこの時点で詰んでいた。
まさかこんな形になるとは思いもしなかったが、覚悟を決めなければならないだろう。ルーシャが本気でそれを望むというのであれば、その気持ちに応えない選択肢はない。
正直な話、ギルバートは仕事を続けながらも、自分がそろそろ身を固めなければならない時期に差し掛かっていることを自覚していた。出会いとは突然訪れるものだ。こういう展開もまた、人生の一部だろう。

「ライドウ、噴射装置の処理を任せてもいいだろうか。俺は彼女を安全な場所まで送り届けたい」

まだ任務は終わっていないことをしっかり理解し、ギルバートはライドウにそう告げる。自分がルーシャを護衛している間に、噴射装置の処理を任せるという意味合いだ。
周囲ではまだ戦いが続いている。ここへやってきた敵が、放置された装置を起動しないという保証はどこにもない。不確定要素は、出来る限り早めに排除するべきだろう。

>ルーシャ・コバルト、17代目葛葉ライドウ

3ヶ月前 No.1070

未来のウィザード @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/フリードリヒ・ガーデルマン】

……クラリスが懐く感情は尤もなものだ。まともな思考をしている人間ならば、この歴史是正機構と言う集団のやっている事がおかしいと分かる。彼等は紛う事なくテロリストだ。そして、それに所属している自分達もその同類と見られてもおかしくはない。
クラリスが内心で機構を見限ろうと思っているのと同じように、フリードリヒもまた瀬戸際では此処を離反しようとは考えている。

「ク、クラリス……発言にはもう少し気を付けた方が良い。ただでさえ此処は危な……こほん、変わった人が多いんだ。もし目を付けられたらどうするんだ。君の身に何かあったら、ご両親が悲しむよ」

だがそれはそれ、だ。組織に所属している以上、おおっぴらな組織批判は避けなければならない。組織の為では無く、自分の身を守る為に、だ。
歴史是正機構はただでさえ気の触れた様な者が多くいる組織なのだ。中には機構を信奉している者がいてもおかしくない。もしもそんな連中にクラリスの発言が知られたらどうなる事か。ある種、能天気とも言えるクラリスの発言には、フリードリヒは頭を痛めざるを得ないでいるのだ。

其処で引き合いに出したのが、彼女の両親の話だ。クラリスが両親を疎ましく思っているのはフリードリヒも知っている。此処で家族の事を話題に出すのは彼女の機嫌を損ねかねないと言うのも理解している。だがそれでも、彼女に万が一があってはならないと……そう思っているからこそ、それを口にしなければならないと思っての事だった。それで彼女の意識が変わるか、と言われれば……全く、怪しいところではあるが。


クラリスが眠気を覚え始め、フリードリヒもまた退屈に殺されそうになった頃。ついにその静寂を破る者が現れた。
甲高い馬の様な嘶きが響き、何かが爆炎と共に勢い良くエントランスに激突して爆風を上げる。揺らめく炎から現れたのは、馬ではなく――魔族。

「馬ァ!? ……い、いや、魔族か! 全く、魔族って言うのはこれだから……!」

フリードリヒはクラリスと違って、人並みに魔族への偏見を持っている。それは、似て非なる彼等への恐怖。人ならざる力と似て非なる容姿故に、彼等への"恐れ"を懐かずにはいられない。いくら愛らしい少女の姿をしていようと、魔族は魔族なのだ、と。

魔族の少女が突撃した後を追うように現れたのは――魔族では無いだろうが、しかし奇抜な装いをした少年。少女以上に能天気なその振る舞いが、フリードリヒを無意味に混乱させる。

「ああ全く、次から次へと! 警備は何をやってるんだ! 此処まで敵の侵入を許すなんて……あ、いや、何でもない」

困惑しているクラリスと同じく、フリードリヒもまた訳の分からない相手が現れた事に動揺を露わにする。警備は何を――とは言うが、自分達がその役である事すら一瞬忘れかける程に混乱していた。

「……こほん。まあ、良いとも。連盟の者だな。此処まで来た事だけは誉めてやる。だがお前達の快進撃も此処まで! 先へ行きたいと言うのなら、この私達が相手になる!」

一つ咳払いをし、くいと眼鏡のブリッジを中指で押し上げる素振りをして――今さら遅いが――冷静さをアピールする。口調も心なしか強気だった。

「炎か……ならば、此処はセオリー通りに行かせて貰おう。『アクアブラスト』!」

左手で懐から魔導書を取り出し、ぱらぱらと捲って適当なページを開く。右手の平を開いたページに翳して、魔法を詠唱する。
放つは魔法の水流。フリードリヒの正面から湧き出した波涛が、魔族の少女と奇抜な装いの少年を呑み込まんと迫る。
彼は魔法使い(ウィザード)だ。その時代錯誤な装いは伊達ではない。

>>クラリス、コーマ、ルシウス

3ヶ月前 No.1071

一介の議員 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【放送局/放送室/ショコラ・ヴァンディール】

世間を良く知るからこその悪。幼く無知だからこその善。互いに不完全だ。見識を深めたうえでなお善に留まれればそれが一番なのだが、世界政府や地球軍の現状を見ればその難しさは一目瞭然。
そもそも視点によって善悪の基準は全く異なる上に、他の立場にいる者の心情を慮ることができるほど、人間は上手く作られてはいない。富もうが貧しかろうが、第一に己の幸福を追求して動く。
この一事だ。暴政を敷く王を廃した英雄ですら、時が経てば同じ過ちを繰り返す。自分さえ気分を害することがなければ、玉座から追われることがなければ、それでいいのだから。

衝突する二勢力間には、埋めようのない溝がある。上に立つ者が投げかける言葉を、下から見上げる者が受け入れることはない。その逆もまた然り。弁論で戦うはずの政治家が、あろうことか武力を以て衝突するとは…なんと物悲しいことだろうか。

「だったら私は…貴方方の言う"政治"に、真っ向からぶつかる覚悟です」

如何に不安定であろうと秩序は秩序、政治は政治だと説くフラナガン。その言葉を聞くショコラの顔に、怒りや反骨精神の類は浮かんではいない。ましてや腐敗の原因を消し去ろうなどとは夢にも思わない。
ぶつかる。真っ向から。自分を排除すべく謀略を巡らせた者達に対し、政治家として在るべき姿で以て立ち向かう。身の程を知らない小娘と言われればそれまでだが、ショコラ・ヴァンディールという大志を抱いた人間が止まる理由にはならない。
仮に歩み続けた果てに破滅が待っていようと、彼女は先へ先へと進んでいく。憧れの人物の背中を追って、自らの理想とする世界を目指して、進んでいく。

「よし!」

大振りすぎるだけに一か八かの作戦だったが、蔓と巨木を用いての騎兵撃破に成功する。兵士達もあらかた返り討ちにできたことで俄然勢いづくショコラ。しかし敵が操る駒は全部で十五、その布陣はいまだ盤石。騎兵の破壊は第一関門の突破に過ぎない。
次なる手は二つ。十二分な重厚さを湛えた戦車に、その鈍重さを打ち消す役割を背負った司祭。奴の働きは同胞の短所を補って余りあるもので、左右からの熾烈な光弾が確実にショコラを追い込んでいく。
次々に蔓を差し向けて叩き落とし、脱出のチャンスを作り出そうとするも、圧倒的な手数がそれを許さない。当然迎える最悪の結末…重戦車との対峙。
最早避けては通れない道と見るや、彼女が展開するのは大地の障壁。壁を突き破って飛び込んでくる土砂が、蔓が、木々やその根が、絡み合い混じり合うことで強靭なバリケードと化していく。
だが要塞の進撃を阻むのに土くれとは、誰もが威力不足を疑うことだろう。その疑念に間違いはなく、程なくして障壁は決壊。飛び散る残骸と共にショコラの華奢な身体も投げ出され、自らの未熟さを痛みで以て思い知らされる――

が、やはり彼女は立ち上がった。ふらつき、身体の随所に血を滲ませながらも、まるで信念を曲げる素振りなど見せはしない。

「私は…負けない!」

意地から絞り出すような一吼え。空気を煮え立たさんばかりの気迫。全身から溢れ出る魔力に呼応してか、障壁の残骸達が宙に浮かび上がる。
この構えから繰り出されるは、土砂や木屑の集合とは思えない破壊力を誇るガトリング・キャノン。例の二体以外にもほとんどの駒を攻撃範囲に収め、速度の面で見ても申し分ない。
さらに追加の能力行使によって生成するのは、半面に鋭利な結晶を幾本も生やした岩石塊。これをあろうことか、補助の蔓二本と共にオーバーヘッドキックの要領で蹴りだす。
標的は今しがたショコラに手傷を負わせた戦車でも、未知数の能力を秘めた他の駒達でもない。司祭ただ一点。強大だが必ず何らかの弱点を抱えている精鋭達…彼らの戦いを補助し、これ以上にない潤滑油となるであろう司祭こそが最優先目標だ。

>>ニール・フラナガン


【お気になさらず〜】

3ヶ月前 No.1072

"銀細工" @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【時空防衛連盟本部/食堂/ユスティーツ・シュタルク】

 力無き弱者達の生命を思うがままに弄び、襲撃者は悦楽へと浸る。姿見えぬ殺人鬼に命を狙われている現状が、彼等の心に恐怖を生み出して行き。部屋の隅へと固まって、無力にも打ち震える彼等の姿。其処へ撃ち込まれる銃撃が、容赦無く一人の頭部を射貫いて絶命へと至らせる。刹那に木霊する悲鳴と、邪悪なる狂笑とが食堂で共鳴し合う。
 その直後に現れるは、窮地へと追い詰められた者達の心を今一度勇気付けんとする青年の姿。状況に臆する事無く、勇敢にも斃れ伏した者へと声を掛けて行く様は、さながら救世主と呼ぶに相応しく。然し、襲撃者の存在に気付いていないとなれば、それは更なる恐怖を伝播する火種としかならない。死角からの一撃で葬られ、悲劇の死を遂げるのである。
 だからこそ、その様な末路を辿ってしまうよりも疾く――視界に捉えた襲撃者の背後から、連続で仕掛けるは強襲。大気を乱しながら放たれる右拳の一撃、続け様に放つ左拳の一撃。徒手空拳、鍛え上げられた五体を以て打ち放つ拳撃は、敵を捉えず。それは手応えを感じる事無く、空を裂くのみに終わった。
 距離を取られ、視界から消失する敵の姿。殺気を始めとする気配の類は当然感じ取れず、死角に入られた事で、その位置は正真正銘の不明となり。部屋の中を自在に飛び回る敵の攻撃が、四方八方より放たれ、此方を殺しに掛かって来る。

「悪に情けは無用と言う事だ。礼節を弁える行為もまた、無用」

 その場から一歩も動かずに、言葉と共に展開するは無数の金属障壁。障壁の一枚一枚が堅牢と呼ぶに相応しいだけの強度を誇り。分身を疑うかの如き素早さで放たれる波状攻撃を、標的に代わって悉くを受け止め、そして無効化する。これによって、既に銃撃へと意識を向ける必要性は無くなった。すぐに切り替える思考、開かれた退路へ向かって移動して仕切り直す。途中、三度に渡ってナイフの刃に襲われたが、外套が纏う銀を越えるには能わない。無傷を保ったまま、反撃の手番へと移らんとする。

「――其処か」

 纏った外套の背中から形成されて行く、非常に細き無数の金属腕。総数、十に渡るそれらの先端に取り付けられているのは幅広な金属刃。鋼をも容易く断ち切って見せる程の切れ味を有するブレード、生身で喰らえばどうなるかは瞭然。見事に綺麗な切断面を残して、敵の身体を削ぎ落して行く事だろう。
 視界に再び捉える敵の姿。一瞬で消え去ってしまうよりも疾く、手傷を負わせて仕留めるべく、力強く一歩を踏み込むと同時に、金属腕は流体の如く伸びて行きながら敵へと肉薄して。射程へと入ったその刹那、極めて精密な動作でその五体を切り刻まんと、刃を揮い。
 その傍らで、空いている右手に形成するは巨大な金属杭。それを全力で敵に目掛けて投擲すると――杭は分離して、幾多もの棘へと姿を変え。その身体を貫き、そして殺さんとして、更なる怒涛の猛襲を仕掛ける。
 これが、彼の身に宿せる異能。金属を自在に生成し、自在に操作する能力。積み重ねて来た過去、辿って来た歴史の量を物語るが如くに、猛威が姿を顕す。

>雪葉 桐生戦兎

3ヶ月前 No.1073

迅馬 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/コーマ・アンダルーシャ】

敵地の只中であることを失念し、初めて仲間の役に立てたことを喜ぶコーマ。つい数分前までは迅馬として戦場を駆け抜け、破竹の勢いで防衛網を突き破っていたはずなのに、その佇まいからは覇気の欠片も感じられない。
揺らめく炎を背に闊歩するという、如何にも強者(つわもの)らしい登場を果たしただけに残念なところがある。と、そんな一長一短な彼女に声をかけてくる者がいた。
銀髪に透き通った青い瞳、貴族そのものな衣類の着こなし。まさに絵に描いたような美少年であるが…容姿の後半部分に関しては時代錯誤と言わざるを得ない。
しかし彼を見つめるコーマに違和感の類はないらしく、むしろ質問に答えるのも忘れて目をキラキラ輝かせている。そう、彼女の生まれは中世だ。眼前の少年も、単なる歴史書の中の存在ではない。
王族…元居た時代では、身分の差や立場の違いで近づけなかった憧れの存在。それが触れられる距離に現れたとなれば、興奮を禁じ得ないのも仕方ないだろう。

「はいっ、コーマがそのお馬さんです!

この通りお耳も尻尾も…あっぷぷぷ」

しばらく少年の全身に熱視線を注いでから、やっと思い出したように質問に答える。その通り、彼女こそが件の馬。亜人の姿になったことで大部分の特徴は失われたが、耳と尻尾に関しては健在である。長い髪を後ろで束ねているのもタテガミリスペクトのようだ。
両耳に手を添えてパタパタと倒し、さらに少年に背中を向けて尻尾を振る。高く振り上げているのは喜びの感情表現らしい。最早連盟の食堂や自室で羽を伸ばしているかのような気楽さ。
だがここは敵地、繰り返すが敵の本拠地なのだ。自陣でくつろぐような振る舞いをしていれば、当然報いを受けることになる。襲い来るは大口を開け、敵対者達を沈めんとする大海原の具現。
極限まで気が緩んでいたコーマは、傍から見ていても痛快なまでの喰らいぶりを披露してしまった。水中で幾度も転がされ、やっと解放された頃には馬どころか濡れネズミ。艶のある髪も自慢の尻尾も台無しだ。
小さな口で必死に空気を吸い込むと、今度は身体をプルプル揺すって水滴を振るい落とす。そうしてようやく体勢を立て直すと、攻撃を仕掛けてきたと思わしき二人組に向けて一吼え。

「ひどいです!コーマ、死んじゃうところでした!」

…何十人と撥ね飛ばしてここまで来たのはいったい誰なのだろうか。ともかく『完全な自業自得によって先制攻撃を受ける』という最悪の形で戦いが始まった。
やはり攻撃力に富んだ馬の姿で戦うのかと思いきや、彼女が軸とするのは亜人形態。張り切って火炎魔法による握りこぶしほどの弾幕を展開し、4、50に届こうかという中々の手数で以て攻め立てていく。
しかし例の猛突進に比べるとどうも見劣りしてしまう。決して威力が低いだとか、技術が足りていないだとかいうわけではないのだが…

>>クラリス・ツァクトユーリ、フリードリヒ・ガーデルマン、ルシウス・アルトリウス

3ヶ月前 No.1074

中二病でも友達は欲しい @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【時空防衛連盟本部/通路/シエンタ・カムリ】

自らの身を犠牲にする覚悟でキラーを止めることを選んだシエンタ。自分でも、何故こんな行動に出ているのかは説明が出来なかった。きっと、昔の彼女なら、こうはしていないだろう。
人間と元コンピュータウイルス、明らかに出自の違う二人であるとはいえ、奇妙な共同生活を続けている内に両者の間には、一種の愛情のようなものが芽生えていたのかも知れない。
だからこそ、キラーが、アイシスが自分を殺すなどという選択をするはずがないと確信していたし、実際その通りになった。ガクガクと震えていた彼は、やがて戦意を失い、砲口を下ろす。
そこからの展開は早かった。もうキラーの中で決意は出来ていたのか、彼は直ぐ様負傷したショパンの治療に入る。何かショパンが悲鳴を上げていたような気もするが、面白いので放っておこう。
ふと、シエンタは隣に並び立つマシュマロを見やる。全くの初対面で、以前から友人であった記憶は一切ないが……彼女がいなければ、きっと自分はあのままキラーを殺していただろうし、こんな展開にはならなかった。

「不思議と、君とは本当に友達だったような気がするよ。もしよければ……その……モゴモゴモゴモゴ」

知らないはずの相手なのに、どういう訳かそうとは思えない。出来ることなら、彼女とは今後も変わらぬ関係……つまりは友達でいたいと、シエンタは望んだ。
あとはその意志をマシュマロにも伝えるだけであったのだが、面と向かっていうのが恥ずかしいのか、肝心なところでシエンタは顔を赤らめながら視線を逸らし、声の音量を下げてしまう。
結果として、最後の方の言葉はよほど耳を済まさなければ聞こえない状況となってしまった。「と、友達でいて欲しいね……」と言ったつもりのようだが、果たして伝わっているのだろうか。

だが、そんなムードをぶち壊すかのような出来事が起きた。突如としてアイシスの姿になったキラーが、怒涛の勢いで抱きつき、ぽかぽかと背中を叩き始めたのだ。
はじめこそ釣られるようにして笑っていたシエンタだったが、段々とうるさくなってきた。これ、いつまで続けるつもりだ。ここは戦場のど真ん中だというのに。

「おい、いい加減にしないか。まだ戦いは続いているんだよ? 全く、これだから君はポンコツなんだ。ぐずで、のろまで、何の役に立たないボクの大切な相棒であり姉! でも、礼を言うよ」

褒めているのか貶しているのか分からない言葉を吐き捨てながらも、シエンタはキラーに礼を言い、逆にその頭を撫でて最後にぽんぽん叩く。胸が邪魔なのがちょっと腹立たしい。
自分で体型を設定しておいて何を言っているのか、といった感じであるが、このボディそのものがシエンタのコンプレックスも同然なので、仕方ないのだろう。
平和的解決に喜ぶのも束の間、倒れたままのショパンがこれからどうするのか、と問い掛ける。たった今より、シエンタとキラーは時空防衛連盟の所属となった。ならば、やるべきことは一つである。

「ボクはこれから歴史是正機構のおバカ共の顔から笑顔を消してやるつもりだよ。まあ、少し待っているんだ」

そう呟くとシエンタはいつの間にか外れていたフードを被り直し、スマホを取り出す。だいぶボロボロになってしまっている。帰ったら、この前買った新品(ただし同じもの)を下ろそう。
無数の文字が羅列された画面を見つめながら、コマンドを入力していく彼女。その速さは驚愕以外の何ものでもなく、複雑なプログラムの構造を完璧に把握していた。
一通り作業を終えたシエンタは、三人に対してこれ以上ないドヤ顔を見せ付ける。今頃、歴史是正機構の本部はシステムの暴走で大混乱になっていることだろう。
シエンタは自らの能力を見せ付けたことで、歴史是正機構のネットワークを完全に掌握していた。彼女が味方である限り、それは鉄壁の護りを誇ったのだろうが……いざ敵に回った場合は、当然ながらこうなるのである。

>キラー・テンタクラー、マシュマロ・ヴァンディール、ショパン
【長らくお待たせ致しました。ここからも同行するかどうかはお任せします】

3ヶ月前 No.1075

イスマリア @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4

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3ヶ月前 No.1076

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【大統領官邸/正門/ストラーヴ】


紫光の残滓が流星のように尾を引いた彼女の突進、手応えは想像よりも幾分か軽かった。大地を穿つばかりで穂先を向けた隊長の姿はそこにない、見上げれば宙へと飛んだ一つの影が見えた。それが意味するのは突撃を回避されたことだろう。
故に彼女が選択するのは追撃の他ない、エステルを狙い脅威に晒した相手、そしてエステルからの抗い難い褒美もあれば当然だろう。だが本来であれば異常なく移行できるはずのそれは叶わない。
何故か、それは単純な事であった。彼女は先の突撃で余力を残さずに全てを放ってしまっていた、剣槍に纏っていた紫電は僅かすら輝かない。稲妻を溜めて、放出する。それが彼女の基本的な攻撃の順序だ、使い切れば放てるものはない。
だからこそ着地地点へとその足で駆ける他ない、限界を越えた放出は彼女の肉体を着実に削っている、それでも彼女は痛みなど振り切って駆ける。それが愛だから、エステルから愛されるために必要だからと。
エステルから頼まれたのだ、追い払えと。さらには声援まで受け取った、それに応えればエステルも愛してくれる。もう我慢しなくていいと、そう言ったあの時のように。また満たしてもらえる、あの温かみと熱で。
着地した隊長が炎の弾丸を彼女へと放つ、しかし問題はもう一つの土の弾丸であった。それは寸分の違いもなくエステルへと向かっていた、先は容易く避けていた。でももし当たってしまったら、失望されてしまう、愛されなくなってしまう、嫌われてしまう。
そんな彼女の独り善がりな感情に引き摺られるように紫電が迸る、いや引き摺られるのではなく引き千切られるようにと形容したほうが正しいだろう。常と異なる散漫した紫電、明らかに反動を無視して無理に引き出している。
そう、彼女の稲妻は溜めて放つ。溜めると言う動作が不可欠であり、溜めながら放つと言うのは危険極まりない。だが今の彼女はその危険を冒してでもエステルを守らなければならないと、そう思っている。そう思わねば、この愛を偽りだと認めてしまうから。
肉の焦げる嫌な臭いが広がる、駆けながら僅かに蓄積した紫電を開放しエステルを土の弾丸から身を挺して防ぐ。剣槍で防ぐには焦りが先走り、稲妻で相殺するには時間が足りなかった。故に、彼女に五つの洞穴が創造された。

「―――どう、だろうね、私は他の愛を知っていたのかもしれない。」

地面に広がる紅い液体、胴と四肢の幾つかから流れ落ちるものと口から零れたそれは、剣槍を杖のように何とか立っている彼女の下に溜まっている。肩で息をしながら、その足は震えながら、身体が危険だと発する痛みから耐えながら、言葉を紡ぐ。
身を焼く稲妻は確実に彼女の命を削っていき、穿たれた弾丸でそれはさらに加速する。それでも彼女は倒れることを良しとはしない、疑念を抱こうとも、例えそれが美しくなくとも、今彼女を愛しているのはエステルだから、その愛に応えなければいけない。

「美しい、愛。愛に美しいとか、綺麗だとか、あるなんて私は知らない。」

ぽつり、ぽつりと零れていく言葉は滴る紅いそれとは異なる音色を奏でる。過去が大事だった、それが愛であったとしても綺麗だとか美しいだとかは思わなかった。ただ、共に居れば満ち足りていた。
現在を蔑ろにした、心が誰かを求めても過去を優先した。そんな中エステルと出会った、柵を解き放って熱く愛し合った。それも過去のそれと違う満ち足り方であった、それがあんなものと称されることなど知りはしなかった。
双方の愛は彼女にとって掛け替えのない愛、それは違いないのだ。だがそれが良くないものだと声をあげるのであれば何が正しいのかを教えなければならないだろう、彼女は愛を知っていても、正しい愛が何かとまでは知りはしないのだ。

「知らない、私は知らないんだよ。危険へと送り込むことが愛だと言われれば、そう思っちゃうかもしれない。エステルの愛が偽物だと言われたら、違うかもしれないと疑ってしまう。」

言い聞かせるように、訴えかける様に言葉は続いていく。それが愛だと言われたから、エステルから与えられた物を愛だと感じた。過去に抱いたそれを誰かに愛だと言われれば、そう信じただろう。彼女は、愛が何かを知らない。
愛、そう形容されれば認識する。では彼女はこれまで愛されなかったのだろうか?時空防衛連盟、その中では浮いていた彼女ではあったが気にかける人間はいた。それも表現次第では愛と言えよう、だからこそ彼女は正しい愛を知らない。
愛を愛と知らないまま、大切なものとしてしまいこみ過ぎた。欲しているのが愛だと知らずに、過去を想うあまりに抑え込み過ぎていた。違う形の愛を、それだけが愛だと思い込んでしまった。それが今の彼女だ。
紫電に交じり黄金色の稲妻が迸り始める、蓄積する速度は明らかに異常でありこのような状況でも自身を顧みずに行っていることが分かるだろう。言うなれば、愛する者の為に全てを捧げられるのが彼女の愛なのだろう。

「ねえ、隊長。隊長は知っているんでしょ、私が知らない愛を。―――教えてよ、全部。」

紫電の変質、それは彼女の意図するところではない。能力の由縁、その権能に等しい神の雷を引き出し始めている。全てを滅する浄化の雷光、人の身に余るそれは変質しきれば扱う彼女自身も無事では済まない。
それを無意識化で引き出し始めているのは、何らかの作為か、はたまた意識外の彼女の意思か、それとも別の何かか。この場で知る術がない事だけは確か、願わくば人が人であるままを望もう。
不器用な泣き笑いをふと浮かべたかと思えば、身を低くして刺突の構えを取る。纏う紫電は徐々に金色へと染まりながらも辛うじてその色を保っている、だがその秘めた力は先の比ではない事が容易く想像できよう。
それは身を灼くことも同じ、絶えず襲う苦痛に歯を食いしばりながらも彼女は止まらない。運が良かったのは傷も焼かれたことで出血が止まったことだろうか、意識を手放してもおかしくないそれをただ彼女の愛の為に持ち堪える。
そして構えから突きが繰り出される、狙いは隊長。紫電を放出しながら一直線に突き進む、避けることは容易い。大きく避ければ放出した紫電も回避できるだろう、だがこれは凡百の攻撃と同じではない。
これは彼女の問いなのだ、愛とは何か、知らない愛とは、美しい愛とは、愛について殆ど知り得ない彼女が知るための一歩。この攻撃への対処こそその答えとなる、無論避けても良い、言葉だけで愛を伝えられるならばそれも彼女に届くだろう。
愛、それは何だろうか?彼女が知る愛とは何だろうか?それは隊長の答え次第だろう。

>>フォッサ・セントライト エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール


【大変遅れてしまい申し訳ありません、他にお待たせしている返信も出来る限り早く返させて頂くのでもう少しお待ちください。】

3ヶ月前 No.1077

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


答えは分かり切っていた、最後まで女性の真意は分からなかったけれどもきっと英雄は何処にもいない事は知っていた。だから、それでよかった。生きることで誰かを傷付けるならば、死んでしまえばいいのだと分かっていても、自分では踏み出せはしなかった。
臆病者、そう罵られることはなかったけれども、きっと自分を表すならばそれが適正だと思う。助けたいから、そう理由を飾り付けて死なないように、生きていていい理由を探し続けていたのだろう。何も知らない私も、全て知った私も、自分の手で死ぬことは出来ない。
酷く短い走馬燈を見た、人の温みを知って、人でない悪意に触れて、人を脅かす脅威と出会って、人を照らす光を見て、私を拒絶する女性を見た。それだけ、私が生きてきた道はこれだけで、それも全て作られた上に乗っかっているものだ。
どれだけ願っても、私は作られた存在でしかない。どれだけ祈っても、これより先の道を創る都合の良い英雄は現れない。戻れない、進めない、そして自分から道を捨てる事も出来なければ、誰かに消してもらうしかない。
肩口に衝撃が走る、貫かれた銃弾の衝撃で地面へと叩きつけられた。揺れる感覚、痛みなど発しない身体で分かるのはそれぐらい。瞳を閉じた視界では見えなくても、なんとなくわかる。きっと、女性は無表情だろう。

「そうですか」

いいえと、女性がそう答えたから私もそう返す。命を乞うほど大切なものでもなく、泣き叫べるほどの感傷もない。ただ死ねる、私自身も良く分からない嬉しさの様なものが込み上げている。
死は解放されること、そう称することもあるかもしれない。最大の逃避と称するかもしれない、逃げ出したいと確かに思っていたけれども。間近に迫った死はただ、近付いているだけの様な気がした。それが創られたが故の欠陥かどうかは、私には分からない。
創った存在に恨みもある、助けたいと言う気持ちは呆れるがまだ残っている、死にたくない、消えたくない、思い残すことはたくさんあるけれども、諦めるしかないし、もう疲れた。私は、存在してはいけなかったとそう思うだけで、少し楽になる。
頭部に衝撃が走る、これは右目だろうか。少し、思考が狭まった気がする。呪いの塊の癖に、思考が集うのは変わらず脳だと言う事だろうか。悪趣味、だろう。ここまで人間と同じにしなくても、良かっただろうに。

「それでも―――」

いいえと繰り返す女性、喋る前に拒絶されているような気もするが構わない。私は最後に女性に伝えたいことがある、きっと訳が分からないだろう。もしかするとさらなる拒絶を呼ぶかもしれない、それでも私は伝えたい。
再び頭部に衝撃が走る、多分左眼だろう。また、考えづらくなった。どうして創ったのか、どれだけ考えようとも思い至らない。創るならば只の傀儡でいいだろうに、人の形を取る意味はないだろう。

「―――ありがとう」

またいいえと言われた、それでも良い。私は感謝を伝えたかった、きっと自分では死ねなかったから、誰かを殺す罪を背負わせてしまったから、人間が殺してくれたから、多く伝えられないけれども、一言で表すならば感謝だろう。
ああ、また衝撃が走る。思考が黒く塗り潰されていく様だ、何度も脳を貫かれれば死ねるのだろうか。きっとこのままなら死ねるだろう。
なんども、なんどもうちこまれている。それだけきょぜつされていたのだろうか、わたしにはわからない。
でも、これで。だれもきずつけないですむ、そんざいがつみではなくなる。
よかった、わたしはきっとしあわせなのだろ―――――

―――――――――

これまで人の形を保っていた呪いは溶け始める、生命を蝕むことなくただの黒泥のように地面へと広がっていく。すると突如黒煙を上げて蒸発するように消え始めた、まるでこの場には初めから何もなかったかのように、何も遺らなかった。
ここにクズノハと称された呪い袋は消えて無くなった、人を脅かす呪怨の権化は人によって消滅した。誰一人傷付けられず、誰一人恨むことなくその存在を消した。ここに生命の敵は打ち倒されたのだ、めでたし、めでたし。

【クズノハ(オリジナル)@構造的弱点を執拗に攻撃され続け、その機能を停止する。呪いへと還る前の表情は穏やかであった。】

―――しかし、呪い袋は生れ落ちる。また、何処かで……

>>リアーナ=レッセント

3ヶ月前 No.1078

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【時空防衛連盟本部/エントランス/橋川 清太郎】

起死回生を狙った重砲の一撃。危うく対処されそうになるも、ツバキが最良のタイミングで援護に入ってくれた。
水流によって勢いを増した踵落としは黒鐵に命中、一瞬だけ体勢を揺るがす。
だが、その一瞬で十分だった。踵落としとほぼ同時にGrandSmasherの弾頭が直撃する。黒鐵は大破こそしなかったものの、中核部分を完全に破壊され機能を停止した。

「………………」

爆煙が晴れ、乾いた静寂が去来する。緊張から解き放たれると同時に右腕をだらりと垂らし、力無くGrandSmasherを落とした。
勝利の余韻など無に等しい、今はただ焼けた部位が痛くて堪らない。一時的な興奮状態で誤魔化されていた痛覚が、今になって働きだしたのだ。嗚咽を漏らすことも、のたうち回ることすらも億劫である。

「………………」

バイザーからがなりたてるように表示される、装甲の損失度や火傷のレベルもまるで情報として頭に入ってこない。仲間の見ている前でこんなザマでは全く格好がつかぬだろう、だがやはりこの拷痛は思考を削り支配するばかりだ。

(けどまあ、及第点かな)

それでも奴を倒せたことに変わりはない。あの恐るべき武装の塊が同志を脅かす可能性は消えたのだ。まだ戦いは終わっていない、やるべきことは残っている。けれども眼前の火の粉を振り払えた事実は大きい。
神経のデモ行進に耐えかね意識が薄れる、程なくして膝から崩れ落ちる形で倒れ伏した。

(ちょっとだけ休ませて貰うよ)

降って湧いた睡眠欲のなすがまま、瞼を閉じ自我を夢の世界へと沈める。

>>ツバキ・オオトリ


【お疲れ様でした!】

3ヶ月前 No.1079

フラナガン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【放送局/放送室/ニール・フラナガン】


「ぶつかる………か」
「(ここにリアーナ、君が居たなら、なんと言い返すかは見えているなあ………)」


 こんなものは政治家の闘いではないものな、と。彼は内心で同調し、苦笑しそうになった。
 苦笑などという表情は彼の苦労を刻んだ顔には浮かばず、相も変わらず嘆息するだけだ。
 板挟みの中間管理職にはない発想だ。つくづく勇ましく、何よりも羨ましい輝きがある。賞賛だの羨望だのというヤツが、たとえ理解からはほど遠く離れたものだったとしても………ショコラ・ヴァンディールの真っ直ぐな姿勢は捨て去るべきではない価値あるものだ。そして同時に、これが行き過ぎてしまうことほど恐ろしいものはない。
 光あるものは確かに素晴らしく、真っ直ぐな輝きは礼賛されて然るべきものだろう。
 だが真っ直ぐが過ぎるもののことをなんと言うのか………フラナガンは知っている。暖かな光には人間も寄り添いたいと思うものだが、人を焦がすような熱量に対する接し方など決まっている―――“敬いながら遠ざける”のだ。

 羨ましいが、先が不安になる。
 先など考えている暇が自分にあるのかは知らないが、フラナガンが彼女に対して覚えた感想はそんなものだった。何故なら彼女は自覚の有無に関わらず、危ういバランスの上に立っている人間だ、その熱と理想が人に適応するかは神でさえ分かるまい。
 政治も人間も、善悪も難しいものだ。なにひとつとて正解がない癖に、無数の失敗と末路だけは用意されている。
 例えば熱され過ぎた末路は言うまでも無く。そして冷まされ過ぎて、妥協し過ぎた場合の末路も言うまでもない。


「(それが、私か………私になるよか、余程良いんだろうな)」
「ぶつかって、そこからどうする」


 目の前の自分こそが、理想という熱を只管妥協の風で冷ませてしまった男だ。
 政治家としての本分を失っていると糾弾されたとて否定はするまい。自分は最後の最後で決定が出来ない男なのだ。流されて流されて、低い所へ低い所へとやって来ただけの男だ。こんなことを言う筋合いも恐らくはないだろうとも。
 しかし彼は言うのだ。戦車《ルーク》の突撃を見守り、次の手を吟味しながら、淡々と。


「もう一度言う………ぶつかってどうする。ぶつかった後、どう他の全てを説き伏せる。
 魔人たちと、どう接する? やがて待つ混乱をどのように収める? 難題は幾つもある。“それでも”と言って解決できたのならば、ユーフォリアくんの………彼女の父がとっくに世界を平穏に収めていただろうさ。こんなことだって、起きはしておらん」

「過分な期待も、反骨精神も………理想も。薬が毒になるほど、世は変わってしまった」


 淡々と、こう言うのだ。自分の諦めを、冷めた感情を、しかし僅かに未練がましく。
 未来への理想も期待も、不完全な秩序を崩す為の決意も。それはもう薬ではなく毒だ。
 未来へのビジョンがないまま、不安定で不完全な王権だから崩せ崩せと叫んだところでいったい何になる―――市民たちは、結局のところ善悪に関心などないのだ。自分の安定が欲しい、つまるところ“現状が現状のまま”ならなんでもいい。

「(あるいは。それを毒と思う民衆とは、結局のところは私自身なのかもしれないが………)」

 それは、言うまでもないことだった。
 自分のことを棚にあげて、と言われても否定はすまい。“それはそう”なのだ。
 そして同時に、言葉を語る事に現を抜かすほどニール・フラナガンという男は傲慢ではない。
 彼女への攻撃を確認し、上がる気勢に警戒を強めながらも、更にその手を巧みに捏ね繰り回す。先程のような安直な突撃であるならば彼女とて対抗はする。幸い撃ち貫くことは出来るようだが、まさか二度も掛かるほど彼女はおろかではあるまい。
 年の差を理由になど出来ない。
 チェックではなく“チェック・メイト”になるまで、攻めは確実にだ。

 さて。司祭の占める重要さは語るに及ばない。
 チェスの駒には、チェスの駒ならではのルールというやつがある。彼の異能力にある最大の欠点はそれだ。だからこそ、遠距離攻撃可能な駒という存在がどれほど貴重かは言うまでも無く―――であるに、必要なモノが出て来る。
 悲しきかな犠牲駒だ。
 しかし気絶した兵士たちの回収と護衛に回っていた歩兵《ポーン》たちを割くわけにも行かない。

 で、あるならば答えはひとつ。それから突撃をかけていた戦車《ルーク》たちだ。
 土砂に木片、その合一によって繰り出されながらも、打ち付ける攻撃力は爆撃のそれに等しい残骸の機関砲―――これに対する盾となるのは、突撃を仕掛けたルークに加えてあと一台。
 機関砲の攻撃は速度と範囲、手数と威力、その全てに優れた面制圧の暴力だ―――戦車《ルーク》一台程度ならば易々と打ち砕いて見せるだろう。だからそれを数秒ほど遅れて補う。被弾を二騎のルークで肩代わりし、損壊しながらも攻撃を司祭《ビショップ》には通さない。とはいえ、進むルークの挙動は単純、もう壁以上の役割など期待は出来まい。


「(大した火力だ………う、ううむ、侮っていたつもりはないが!)」
    ナイト
「―――騎士!」


 更に攻撃はそれで終わりではない。
 むしろ彼方が本命だろう。司祭《ビショップ》こそが管制の要であることをもう理解したか。
 あるいは単に行動の阻害のため、延々と魔法弾をばら撒く砲台を鬱陶しく感じたか―――蹴り出されたその弾丸に駒の動きは間に合わぬ、司祭の一体は今ので陥落した。残るはもう1体、もう1体が失われてしまえば状況は一気に劣勢だ。
 しかし“司祭を近距離で護衛させる”ことは出来ないのだ。だから騎士の駒を何時でも護衛に駆けつけられる状況ではあるものの、やはり離れた位置に配置するしかない。しかし、ルークとナイトの壁を越えてビショップの残り1体を討つのもそう簡単な話ではないだろう。接近は2騎のルークで阻む。ルークたちに攻撃の欲は出させない、戦車程度の速度ならば彼女はすり抜けて来られるからだ。
 その上で弾丸と、無理矢理の強行突破はある程度なら二段構えの盾としたナイトで防ぐ。

 徹底した守りの布陣は、逆に言えば後列の二騎を守れば勝利が見えるという判断からだ。

 ビショップが、再度の牽制代わりの広範囲攻撃を撒く。
 魔法弾は再び、スプリンクラーのように範囲を制圧し、逃げ道を阻害する手段を取った。威力に重きを置かないのは、やはりというべきか本命が別にあるからで―――彼が投入したその駒こそが、ある意味本命と呼ぶべきものだった。

      クィーン
「更に―――女帝!」


 最大の大駒を、一歩進めたのだ。
 事と次第によってはフラナガンより遥かに指揮官らしい出で立ちの女帝の駒。

 彼の中において、最も“光の英雄らしい人物”を模した、女の駒だった。

 彼女の四方には地水火風の色彩を宿した砲弾のような魔力が塊となって収束しており、
 その出力はなまじ火力だけならば随一だったルークの駒さえも比較にならない。それどころか機動力のほども―――残りの駒と比較しても単騎だけその力において抜きん出ている。チェスにおけるクィーンが法外な力を持つのと一緒だ。

 それが、号令と共に放射される。
 砲弾のような魔力がクィーンの背後に巨大な方陣を作り出し、四の色彩を伴う巨大なレーザーを砲として発射する。お誂え向きに左右をルークの巨体とビショップの弾幕で塞いだ上で、高い確率で火力勝負を強要する陣形だ。先程の防御力を見て、判断して、“防いでも手傷は免れず、防がなければ良くも悪くも瀕死手前”となるように調整した上での火砲だった。


 彼女のような気迫もない、意地もない。
 彼は確かに合理的に、淡々と戦闘を進めるが、その裏には諦観と停滞しかない。
 ニール・フラナガンは結局のところ傍観者だ。
 それは、責任を取りたくないのではない………。
 取るための立場から、気付けば取り残されていた一つの末路なのだ。


>ショコラ・ヴァンディール

3ヶ月前 No.1080

サンタさんへ どうもありがとう! @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/通路/マシュマロ・ヴァンディール】

下ろされる砲口。失われていく敵意。恐怖を原因とした激昂が収まると同時に、通路に於ける戦いに幕が下りる。口論や負傷こそあれど、命を落としたり重傷を負ったりしたものはいない。
既に関係を築いていた者は、それが崩れることもなく。架空の世界を通じて繋がっていた者は、絆をより固いものに。そしてシエンタを友人と信じて訴えかけた者は、なんと彼女から受け入れられるに至った。
不審者に遭遇したも同然の邂逅から比べて相当な進歩だ。この出会いが、そして結ばれた絆が、二人の少女を同時に孤独から救った。

「うんっ!ずっと友達でいようね!」

恥じらいを隠せないシエンタの手を両手で包み、握手にしては激しすぎる勢いでブンブン振る。最後の方は聞き取れないところがあったが、自分を友達として認めてくれたと見て間違いなかろう。
幼馴染の彼女にすら忘れられていたショックは、この瞬間を境に跡形もなく消し飛んだ。一人友達が出来れば、もう怖いものはない。二人、三人、四人とどこまでも増えていくことだろう。
まさに幸福の絶頂、そう言わんばかりのフワフワとした表情のマシュマロ。この喜びを次はどんな形で伝えようか…そう思案していたところで、後ろから飛びついてきたキラーに気付いて飛びのく。
僅かにヒヤリとしたが、二人の様子を見ていれば案ずる必要などないとわかる。恥じらいもせず感情を溢れさせるキラーに、恥じらいながらも彼(彼女?)への愛と感謝を伝えるシエンタ。いいコンビだ。
一時は危ういかと思われたものの、すれ違いによって生じた小さな溝程度では、二人を引き裂くことなどできはしない。喧嘩するほど仲がいいとはこのことだろう。
これで一件落着、そう確信しショパンへ向けてVサイン。シエンタと繋がりがあり、彼女の勇気を引き出すきっかけとなった彼こそ、この場に於ける最大の功労者だ。加えてシエンタの心情の変化にも大きく関与している。

「えーい!」

しばらく幸せそうな二人の様子を眺めた後、マシュマロもその輪に飛び込んだ。抱き合う二人の肩に手をまわし、額をゴリゴリと擦り付ける。そこまでやってようやく照れ臭そうに笑うと、晴れて連盟の一員になった幼馴染の働きを見守る。
電子機器など動画の視聴や連絡のためにしか使っていなかった彼女にとって、電子の海を悠々と泳ぎまわるシエンタの姿は驚愕に値するものであった。当然何をしているのかサッパリだが、可愛らしくも自信に満ち満ちた顔だけで十分というもの。
これからは彼女が一緒だと思うと、どれ程心強いことか。友情という翼を得たマシュマロには、もう恐れるものなど存在しない。

>>シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、ショパン


【お相手いただきありがとうございました〜〜〜】

3ヶ月前 No.1081

洩矢諏訪子 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【歴史是正機構本部/食堂/洩矢諏訪子】

 歴史是正機構の内部は大混乱。
 今までは警備の音以外は静かなものだったというに、それが一気に喧騒に包まれ始めた。
 鉄壁を誇るネットワークが突然の掌握、今までの攻勢が一気に逆転と来れば当たり前だろう。聞こえて来た反撃の狼煙と想定外の粘りに、歴史是正機構の兵士たちは、おもに二つほどに分かれ、それぞれの様子を醸し出していた。
 即ち、今までの“優勢である”ということに胡坐を掻いていたは良いが地金が外れて錯乱する者達。あるいはこれも想定内と、自分たちの信念と理想に殉じて行動を継続する者達………良くも悪くも彼らは人間だ。人間だから、そうした対応は十人十色なれども常識の範疇を出ない。彼らの視野はあくまでも人間のものだ、敵味方に分かれていようが、それは時空防衛連盟の兵士たちも途中までは概ね似た反応だっただろう。あるいは異なる世界からの来訪者たちでさえ、人間ならば変わるまい。

 人は逆立ちしても神様にはなれぬ。これは当然の理屈だ。
 そうしたものに全ては分からぬ。身の回りと見えるものだけに意識を割くより他にない。
 だから、自分の思想と理念で武器を取った者達であればあるほど、このような状況でも屈せぬ抗う、我らの大義は不滅なりと吠え立てるものだった。歴史を“是正”するとまで宣った者達が如何に敗残者たちだろうと、その覚悟を侮ってはならぬ。


「おーおー慌しい。攻めるのは好きでも攻められるのは嫌いかなー?
 にひひ、なんと身勝手なことかしら。別に知ってたが、そこんところの詰めは甘いよね」

「はてさて、不測の事態を予想してたのは何人いたのやら………別になんでもいいけどさ」


 ………しかし、しかしだ。
 世の中、どんな場合でも例外はある。常識という言葉の反対には必ずそうしたものが潜んでいる。

 人間の枠組みと言葉でものを考えてはならないような事例が。

    、   、   、   、    ・
 例えばこの襲撃状況でも、のんびりと食堂の席のひとつに座ってぱたぱたと脚を動かしている女。
 訂正、少女。けたけたと笑って、頬杖一つ付きながら、慌しく動き回る者達の状況を見守っているそいつは紛れもなくこの世界の住民ではない。異なる世界からの来訪者であると同時、彼らの協力者にして客将として居座っている者だ。であるに本来ならば戦う必要があるのだが、しかし。彼女はいましがた此処に陣取って、ぼんやりと外の趨勢を伝聞している。
 正確には―――。


「最も、それはあんたたちも同じかな? 甘いんだよなぁ考え方が」
「どのくらい甘いかってーと、そうさね。
 自分たちが対策出来たことが、相手には対策出来ないと思ってる頭の辺りが特に甘い」


 此処に入り込んで来た兵士たちを徹底的に蹂躙し、その上に座りながら、だ。
 是正機構本部のセキュリティが解除されて数分、異世界からの精強なる尖兵や、単身でも突破が行えるような特記戦力に続いた一般部隊が投入されたわけだが、制圧のために乗り込んだ一個大隊ほどが、見事にご覧の有り様と化している。
 そう、蹂躙と言っても、何も殺したわけではない。徹底的に、の意味合いは言うまでもない。

「ま、言っても聞こえちゃいないかなー?」

 手にした武器やアーマーは赤錆に覆われて朽ち果てている。
 両腕と両足の骨は大概がへし折れて辺りに転がっており、酷い場合は切断とまで来た。
 傷口は黒く変色しており、流し込まれたものは推定呪詛。魔術系統や物理的な毒とも違う、正真正銘の“タタリ”が成せる浸蝕の術だ。それは彼らを苦しませているし、同時にそれらを瀕死間際で生かして繋ぎ止めるものになっている。
 もしも呪詛と呻き声に合わせて解除などしようものなら、彼らはにの一番に絶命するだろう。
 その命は自分達を足蹴にし、愉快そうに語りながら何処までも内心醒め切った、この得体の知れない何某の掌の上だ。生殺与奪はほぼ握られたに等しい。

   、    いかさずころさず
 つまりは文字通り、不生不殺。


 もはや彼らに抵抗の気力も精気も残ってはおるまい。
 あるのはただ、目前の少女の皮を被ったなにかへの徹底的な“畏れ”だけだ。

 ………なんのために? 聞かれたところで、彼女は快活に笑ってある回答を返すことだろう。

>ALL

3ヶ月前 No.1082

シャプール @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs


【歴史是正機構本部/監視室/シャプール】


 それは、稲妻のような槍だった。
 鋼鉄の瞳を串刺しにせんと繰り出される槍の一撃。

 それが稲妻である以上、
 怒涛の勢いで繰り出されるそれを人間が防ぐことは適わなかったのだろう。
 であるに、此処の制圧は時間の問題。赤枝の騎士を前にして、先ず監視室は機能を停止する。


「これはこれは―――用途不明の物体は見るなり破壊、とはね」


 されど。
 その瞳を潰そうとする稲妻は。
 その瞳を守ろうとする黒風によって弾かれていた。

 どこか不遜な物言いと共に、ランサーが振り下ろした高速の槍戟を黒い剣が弾いている。
 縦に振り下ろされた槍戟を的確に弾き、それを凌ぐと同時に即座に追撃に打って出る。
 短く区切った詠唱から放たれた炎槍―――中級精霊魔法の、炎属性に該当する魔法《フレイムランス》の一撃だった。ランサーの足元を狙って放たれたそれは、監視室の機械から彼を徹底的に遠ざけようとする行為に等しい。
 その場に留まれば、炎槍の貫通力と、着弾と同時に燃え広がる炎の両方を受け、手痛い手傷を貰うことだろう。クー・フーリンと呼ばれる大英雄が英霊であるが故に―――サーヴァントであるからこその対魔力の機能を備えていようが、最低限の痛手は負わされるに違いない。

 そいつは、騎士だった。
 竜鱗を思わせる緑黒の鎧に身を包んだ、隻眼の男。
 なにより特徴として呼べたのはその角だろう。二本の、魔性を思わせる化外の角だ。

 だがそんなものよりも、彼と言う人間を決定づける要素があった。眼、である。
 片方の目から放たれる傲岸な雰囲気は、彼が相応の自信家であることを示していた。
 同時にそれは、冷淡にして他者を見下す、何処までも悪意と敵意に満ちた瞳。戦士としての力が如何にあろうが、それは著しいほどに相手への礼節というものが欠けていた。有体に言って、敵対者を芥か何かのようにしか見ていないのだ。


「実に野蛮だ。そして、こんなものに頼らねばならぬ連中も哀れとしか言いようがない」
「ですが、中々力のある戦士とお見受けした。
 なるほど、此処のクズどもではロクに対処も出来ないのも窺える………」


 あるいは、赤枝の騎士の力を認めても、赤枝の騎士という存在の人格を目に入れていない。
 力のあるない以外の一切でモノを判断していない。それは敵味方関係ない。
 現に―――此処を通る最中で気絶していた兵士たちの全ては、“用無し”と判断したシャプールによってトドメを入れられ絶命している。序でに多少の魔法トラップまで仕掛け、後から通る時空防衛連盟の兵士たちが踏んだ時に爆発を起こすように仕掛ける程度の用意周到振りだが、役割を果たせなかったものに対する酌量の余地など、この男には無かった。

 何故なら、どうでもいいからだ。どちらが勝とうが極論興味はない。

 力のあるものが力のないものを食いつぶすのは当然の理屈だ。
 彼はそれに従って時空防衛連盟の兵士を殺し。
 同様に、役に立たない是正機構の者を切り捨てたに過ぎない。
 赤枝の騎士がもしも、戦士でなければ―――こうやって語りかけることさえ、男はきっとしなかっただろう。他の兵士たちと同様に、雑に切り捨て、適当に罠代わりにしていただろうか。


「であるに。排除、と行きましょう」


 そして。
 赤枝の騎士が戦士であるからこそ、彼はこう相手を捉えたのだ。

 この世界のことはどうでもいいが、この世界で見受けられる“力”には興味がある。

 だから―――この異世界の槍兵は。
 自分の力を高みへ導くための、踏み台には丁度良いだろう………と。

>ランサー


【よろしければ〜】

3ヶ月前 No.1083

一介の議員 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【放送局/放送室/ショコラ・ヴァンディール】

再度の問い――衝突の先にあるものとどう向き合ってみせるのか。
ぶつかるだけなら結構結構、そんなことは誰にだってできる。問題はその後だ。強大な悪が、最初の一手すらかけさせてくれない絶壁が、そして渦を成す不条理が彼女を待ち受けている。
この魔窟に飛び込むのはショコラが初めてではない。遥か昔から数多の勇者達が挑んできた。中には見事踏破し、理想の世の中を築いた者もいる。ただし次代の悪と成り果てるオチが付いているが。
それでも残りの者達よりは遥かにマシだ。彼らは敗者。夢破れ、志半ばにして堕ちていく渡り鳥。かつて邪鬼の罠にかかり、翼をもがれたユーフォリアの父…彼の名を耳にして、初めてショコラの表情に変化が起きる。
心情の具現としては本当に慎ましやかな、小波にも満たない揺らぎ。それでいて雄弁に語る、少女の内心。彼女は"危うい"。清廉潔白にして公明正大、政治家の鑑であるからこそ危うい。
身の丈に合わない理想を掲げ、偉大な先人達ですら頓挫した道程をなぞる未熟者。自覚していたつもりでも、自分より世の中を知る者に諭されたとなると、効き目は相当に大きい。

「全ての障壁に立ち向かいます。命を懸けて。政治家として在るべき姿で。

例え私が敗れても、後に続く者が生まれるように」

見事なまでに青さに満ちた解答。決意を語れど、具体性のある案は出てこない。今のショコラはまだ赤く灼けた鉄だ。理想を熱に煌々と輝いている。そんな彼女が現実という槌に幾度も打たれ、見事新たな姿を手に入れた時こそが勝負。
そうなれば、例え挫折したとしても後続が誕生する。ユーフォリアの父が成し得なかったことを、彼の娘が成そうとしたように。そして今のショコラのように。
言い切ってしまうが、今のままでは絶対に不可能だ。目標の完遂はおろか、同志すら生まれない。今の彼女には、フラナガンを唸らせるような返答はできない。

だからこそ。

「そのためにも、ここで終わるわけにはいきません」

先へ進まなければならない。生き抜き抗い抜き、真に必要なものを身に付けるために。
確かに時代は変わった。ショコラの原動力の数々も、民衆からすれば毒になってしまったのかもしれない。彼らにとっては善悪などという壮大なテーマより、自身を取り巻く狭い世界の方が大切だろう。
しかしだ。現状のような不安定な秩序の下では、いずれ小さな箱庭ですら平和を保てなくなってしまう。その兆しが是正の台頭であり、取り返しのつかない結果として今がある。
これを否とせずしてなんとするか。故にショコラ・ヴァンディールは歩みを止めない。

砕け散った防壁の残骸から成る掃射が、二機の戦車に深い傷を負わせる。双璧の砦に護られた他の駒に損傷はないが、一度に二騎を制圧したと考えれば上々だろう。司祭の片割れも撃破でき、風向きが徐々に変わり始める。
とはいえなおも前進を続ける巨体は厄介の一言、直接的な攻撃こそしてこないものの存在自体が脅威と成り得る。本丸への肉薄を阻む意味でも、追撃する駒を視認できなくする意味でも、規格外のサイズというのは何かと"ニクい"働きをするのだ。

素早く自陣を整備するフラナガン。彼が新たに築くのは守りの布陣。攻防を両立した上で重要戦力の保護にも手を回し、万が一突破された時の保険も忘れない二段構え。
司祭の対処に意識を傾けすぎることの危険性は承知している。手痛い被弾から学習していたショコラは、この退路を断つかのような攻撃に対し回避を徹底。能力で対抗はしない。
続けざまに放たれるは、四属性が融合した極彩の砕弩。読みが当たった。本命はやはり女帝、盤上に於ける最強の駒。ショコラにとって印象深い外見をしたそれは、防御が充実した状況下では最恐最悪のアタッカー。
残る一体の司祭とどちらを優先すべきか瞬時に判断し、次の手に打って出る。

「ドラゴニックバイト!」

宣言と同時に壁を、床を、天井を突き破って現れるのは、鋭利な尖端と無骨な側面を併せ持つ無数の岩石。ビッシリと並べられた様は、竜の口に並ぶ牙さながら。
そして後部に先程の大地のバリケードが追加されたことで、いよいよもって竜の頭部を彷彿とさせる外見に仕上がった。だが驚くことなかれ、本当に凄いのはここからだ。
主の魔力に呼応して大口を開けた竜頭は、迫りくる火砲の全てを飲み下してしまった。数秒後には限界を迎えて爆発四散するも、バリケードの残骸すら戦いに組み込むショコラからすればプラスの範疇。蛇尾には終わらない働きぶりである。
ふわりと宙に浮かび上がる竜の大牙。土くれや木屑の集合体ですらあれだけの成果を挙げたのだから、先の尖った岩石ともなれば大戦果が期待できる。
ここに20を数える岩石塊も追加し、一斉に狙い撃つは女帝ただ一点。もう一度攻撃のチャンスを与えれば、完全に防ぎきることは難しい。そう読んでの集中攻撃が展開される。

気迫と信念、理想に意地…若さの塊のようなショコラだからこそ、逆境に喰らいついていける。心身共に進化を遂げることができる。その"強さ"が、いつの日か世界を救うと信じて。

>>ニール・フラナガン

3ヶ月前 No.1084

"赤い糸"掴んで @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

【先ほどで〆、みたいな本体文を書きましたが、これで返信しないのは不自然なので、短いながらも返信を】

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ルーシャ・コバルト】

「あっ、そうなんですか、じゃあ、この辺りが安全になったら、頂きますね、ありがとう」

"食べても大丈夫"と言う言葉を聞き、ルーシャは、流石にこの場で頂くのは無用心で失礼な事だと思ったのか、ひとまず懐にしまって、この辺りが安全になったら頂きますね、とライドウだけではなく、直接これを自分に手渡してくれたジャックフロストに目線を合わせてお礼を言う、そんなルーシャの見た目は少女と言うには成熟しているが、言動その物は無垢な少女のようだった。
そして続けて言われる、もしもこの名前が気に入らないなら改名するのもアリなのだと、故郷の例を出してライドウは言ってきてくれる。
しかし、それについては、ルーシャは少し困ったように返答する。

「い、いえ、この名前は、私のお気に入りでもあるんです。 この足も、この名前も、私が人間に嫌われる原因と言うよりは、その、見た目の原型がなくなっても蜘蛛なんだって言う証明な気がして」

ルーシャはただそれだけの言葉で済ませたが、ここには一つの非倫理的なクローン作成の事実が潜んでいる。
あくまで、彼女は頼んで人間に近い身体を手に入れた訳ではなく、人間の都合でペットを飼いたい人間にとって都合のいいように気質を書き換えられ、その上で容姿すら大きく捻じ曲げられた。 そんな中、ルーシャは元々の種の名前の一部をそのまま使っているこの名前を気に入っていた。
だから、改名をする気は無いという意思だけ伝えて、その上で、もしこの世界に居場所が無かったら……ゆっくり考えていいとライドウ自身が言っているので、もしも、そういう事になったら。 そうルーシャが考えているとき、ギルバートの返答が来た。

"今後よろしく頼む"。 その言葉を聞いて、ルーシャは目を輝かせた、もし、もしも自分の意図を汲んでくれたのならば、と。

すすすっとルーシャはギルバートの傍に近寄って、蜘蛛の足と自分の手を使って彼にしがみつくように抱き付いた、それが女性としての物であるか、飼い主をようやく見つけられた小動物の物であるか、それはある意味今後次第とも言えるが、とにかく、その時点で、争う理由も、彼女が未来に不安を感じる必要もほとんど無くなった。

「く、苦しくないですか? 私の力加減、おかしくないですか? ……お、お二人とも、私なんかを、受け入れてくれて、ありがとう、ございます」

ルーシャはギルバートへ気遣うような言葉をかける、その力加減は何もおかしくはないし、苦しみも感じないだろう、彼女はそのように設計された、力加減がおかしい、苦しいなどは、彼女を捨てたかった人間たちの虚言に過ぎない。
そして彼女は二人にお礼を言った後、ライドウが毒ガス兵器の処理を申し出てきた、これを断る理由などもちろんルーシャには無く、すぐに了承の言葉を返した。 解体の際には、間違いなくライドウの言葉通り"使い捨てに渡す"にはちょうどいい、ほぼノータイムで発動するガス兵器である事が簡単に分かるだろう。

その解体のために続いて呼び出されるのは、まるで天使のような姿をした存在、その祝福の言葉にルーシャはある物を思い出す。

"教会でやってた結婚式みたい"
ルーシャはにっと笑って、満足そうにギルバートに抱きついていた。

>17代目葛葉ライドウ ギルバート・トムフール

3ヶ月前 No.1085

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【時空防衛連盟/武器庫/ザーシャ】


「それだけ、で終わる話じゃねえと思うんだがなあ。それなら手前の方がよっぽどハッキリしねえじゃねえか、……まあ事情は分かったよ、満足してやる。」

始まりがない、そうガキは言った。生まれを知らねえのか、最初の言葉通りに作られたのか、それだけじゃあ判別はつかねえ。もしかすれば違う理由の可能性もありゃあ、思い浮かんだ中に正解があるかもしれねえ。ま、俺はそれを探すつもりはねえよ。
何故ならこのガキは考え過ぎだ、確かに始点がなきゃあ物事が不安定になるのは確かに道理に違いねえ。自分のルーツってのは大事なもんだよ、俺で言うならあの人の事だ。もし無くなっちまえばと思えばぞっとするさ、代え様がないもんだからな。
だから、その不安を理解できるとまで言いはしねえが分かる。俺はガキじゃあねえし、ガキも俺じゃあねえ。互いの考えなんざ分からねえ、それぞれの生い立ちがあって考え方がある、どれだけ知っていても完全に理解なんて出来やしねえ。
それでもだ、言えることはある。何処の誰だって自分の進む道が何時曲がるのか、何時終わるかなんざ知りようはねえんだよ。人の道を外れることもあれば、人生を左右するほど大きな経験をすることだってある、それは誰にも予想はつかねえ。
ガキは後も先もねえなんて悲観してるが、正しくは後は無くとも先は見えねえだけだ。もっと言っちまえば後を無くしてるのはガキ自身だ、生まれがどうであれ、その生きた道が何であれ、ガキが経験したそれは全部ガキの物だ。そうでなきゃあいけねえ。
それでもまだ分からねえならガキの道標になってやろうじゃねえか、ここで手前が生まれたんだと、その証になってやる。始まりがねえなら作ればいい、自分で決めちまえばいい、出来ねえなら出来るまで支えてやってもいい。手を差し伸べるってのは、最後まで面倒を見るってことだ。
なら俺のやることは決まっているようなもんだ、ガキと最後までぶつかり合う本気の遊びだけ。ガキの思ってることを全部吐き出させて、俺も全部ガキにぶつける。救うなんざ大層な事は出来ねえが、道を進む手助けくらいはしてやりてえからな。
なら、この大曲剣を振るう腕を緩める必要はねえ。咄嗟に青白い盾を光の糸を手繰り寄せて編み出す、切断を避けたが深手を負ったのは間違いねえ、その手応えは確かにあった。しっかし、ぶった切るつもりだったんだがなあ。ガキもなかなかやるじゃねえの。
んで、そのガキはそのまま斬撃に逆らわねえで後方に飛ぶ。僅かに見えた光の線、同じように糸で移動したんだろうなあ。だが、傷が予想以上だったのか床を転がって壁の間際まで吹っ飛ぶ。ま、死にたくないって思えるだけマシだろうよ。ちゃんと、生きる意志はある訳だ。
傷に関しちゃあ俺も人の事は言えねえがな、常人なら死んでるか痛みで芋虫になってるだろうよ。だけどまだ死なねえし、死ねねえ。ガキの言葉になぞらえるなら、俺の始まりがくれた大切な言葉があるからな。その言葉を穢せねえし、守りてえ。
一歩、また一歩とガキへと近付く。どうするかは知らねえが多分、立ち上がるだろうよ。それが命令によるものか、ただ生きたいからかは知らねえけどな。ここでへたばるようならとっくに逃げ出してる、それをしねえならまだ終わりじゃねえんだろうよ。
ふらふらしながらどうにか立とうとしてやがるな、右腕は俺の穴あき胴体くらいには酷い怪我だな。脚は動くようだが血が出過ぎてんのか動けても立つのがやっとだろうよ、そんな中口を開き始める。俺が言えた義理じゃねえがよく喋るもんだ。

「……はぁ、手前にとってどうでもよくねえ話だからしっかりと聞いておけガキ。」

呆れたはこっちの台詞だ、死ぬのが怖くないか?怖くても戦える理由?挙句の果てにはそれをどうでもいい事たあいい度胸してるじゃねえか、俺でも溜息がでるわ阿呆。どうでもいいなんて言ってる時点でどうでも良くねえんだよ、知りてえならはっきりと言えばいいんだ。
腕を振って足場にした青白い壁を障壁として使うつもり見てえだな、何重にも重ねれば時間を稼げる。何を考えてるかは知らねえが作戦としちゃあ間違っていねえ、だがガキの能力じゃあきっと俺を殺せねえよ。確証はねえ、だが確信はある。
能力の詳細が分かった訳じゃねえ、あの青白い糸や壁が何かなんざ未だに見当もつかねえ。見て分かるのは結構自在に操れることだけだ、そして武器として使われりゃあ殺傷能力を持つ事か。非物質ではあっても防壁として使えることもそうだ。
だがそれなら俺の攻撃は悉く防ぎれてはいねえ、だからあくまで過程でしかねえが俺はそうに違いねえと思っている。ガキの能力は価値観に影響しているってな、だから殺し切れねえ。俺が人の目にどう映るかなんざ嫌でも分かってる、多分ガキも例外じゃあねえ。

「俺だって死ぬのは怖え、手前と変わらずにな。それでも戦える理由、んなものは手前が持ってないものを持ってるからだ。」

阻む障壁、きっとこれも俺が大曲剣を振るえば容易く崩れる。何故ならガキは一度も防ぎきれていない、俺の腕力に敵わねえと思ってるからだろうよ。能力の仕組みなんざ分からなくても、ガキがどう思ってるかはそれとなくは理解できる。
力では勝てない、そして今怪物に等しい生命力を見ている、仮定の話でしかねえがあの能力は出来ねえと思った事は出来ねえんだろうよ。じゃなきゃ盾を作ってんのに簡単に割れる訳がねえ、壁を作ってるのに砕ける理由がねえ。
だから、こうやって何重に重なった壁でもそれなりに力を入れて振れば……ほらよ、砕ける。で、ガキが構えてんのも只の刀。殺傷能力を考えりゃあ大きく鋭い武器の方が適してる、片手じゃ振るえないからか大きな武器を振るえるのが想像できねえかは知らねえが、そういう事だ。
邪魔な壁を砕いてまた歩みを進める、まだ刀の範囲には入らない。まあどっちにしても、歩みを止めるつもりはねえ。だって、人間に怪物は殺せねえ。少なくともガキはそう思ってるだろうよ、必要なのはかもしれないじゃなく、仕留めるという決意だ。

「手前の言う始まりじゃねえ、そんなもの後から幾らでも定められる。必要なのは大切に思える存在、それだけでいいんだよ。」
「誰かの為なら命を賭けられる、そんな存在が手前に居んのか?」

きっと居ないだろうよ、だってこのガキは始まりがねえからと言って自分の進む道すら決めてねえ。しかし、それでもガキは知ろうと少しだけ踏み出した。だったら俺が言える言葉は決まっている、それは―――

「なら、決めちまえ。命を賭ける相手でも、始まりでも、手前自身が自分で決めたならばそれが正しいに決まってる。」
「何処で曲がって終わるかなんざ、誰も知らねえよ。知らねえから、悩んで、考えて、自分で決めて進むんだろうよ。」

手前で決めろ、ただそれだけだ。俺はガキの保護者でもなければ救世主でもねえ、ただ戦場で出会って相対しただけ。その中で俺が興味を持って踏み込んだだけだ、赤の他人で間違いねえ。だが、もし伸ばした手を取るならば道案内くらいはするつもりだ。

「手前は、手前じゃねえのか。これまでがなくても今を生きてんだろ?これから先も生きんだろう?」
「―――なら、決めりゃあいいじゃねえか。やりたいことでもいい、言ってみろよ。俺が一緒に手伝ってやる、手前が自分で決めた事ならな。」

ほぼ眼前、その距離まで迫った俺は大曲剣を構えず左手を差し出す。返り血か俺の血かは知らねえが、まあ互いに血塗れだ、気にすんな。無防備ともいえるがさらに踏み込むなら今しかねえからなあ、それに俺にはこんなやり方しか思いつかなかった。
ここまで近付けば刀の間合いだろう、ガキにまだやる気があって振ってくるならそれでもいい。まあ、何だかんだ話は聞いてて返してくるから俺の思い違いがなければ大丈夫だろうよ。ガキに必要なのは始まり、俺がそれになれりゃあいいが自分で決めなきゃ意味がねえからな。
だから、もしこの差し出した左腕を掴むんならやれるだけのことはやってやる。ガキを縛るそれは全部叩き切ってやる、何かやってみたいなら全力で手伝ってやる、必要ねえと言われるまで傍にいてやる。
保護者になろうって訳じゃあねえが、ガキが自分のやりたい事をして、どうでもいい余計な事を馬鹿真面目に考える様な、見た目相応になって欲しいだけ。もし、ここまで踏み込んだ俺を殺すことが始まりになるんだったら、……少し考えるか。
何であれ、これで斬られようとも構わねえ。仮定があってんなら死にはしねえし、間違ってても胴体両断くらいじゃあ多分死なねえ。なら、少しくらい無謀な事をしても問題ねえってことだ。
遊びはそろそろ終わり、ガキも俺も限界は近い。だとしても俺が出来る事をやるだけ、ガキが何か決めたならその障害は排除する、やれることはたかが知れてるが出来る限りはやってやるさ。

>>アリア=イヴァンヒルト

3ヶ月前 No.1086

プライドへの大災厄 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

【時空防衛連盟本部/通路→移動中/キラー・テンタクラー】

「……モノを創る事、か。 ……すまない、私は破壊から生まれた存在、あまりその辺りの気持ちが分かるほうでは、ない――いや、何故尻に刺す必要がある、腕に刺したぞ、誤解を招くような事を言うな」

ショパンの言葉を聞いて、キラーはただ、それだけを返した。
もしも、本気で励ましたり、同感の意を返すならば、様々な装飾の言葉はコアにインプットされているものの、キラーはこれを使う事をしなかった。
少なくとも、言葉を偽って、ガワだけの無責任な物を彼に送る事は嫌だと思ったからだ。

それはさておき、ショパンの注射器に対する悲鳴のような懇願の言葉に対してキラーは冷静に誤解を招くような事を言うなと返した。

さて、少し時間は経って、キラーがアイシスの姿でシエンタに抱きつけば、彼女は何時もの様に憎まれ口を叩きながらも、自分の存在を認めるように"姉"だとか"相棒"だとかの言葉を並べてお礼を言ってくる。
これに対してキラーは、やはり何時も通り反論の一つでも返してやろうと思っていたのだが、その直前に不意打ちのような形でマシュマロが抱きついてくる。

「ちょっ、不意打ちは卑怯だ。 私はアレだ、シエンタ以外は慣れていない、あぁ触るな、こっちの身体は色々慣れてないんだ!!」

別に拒絶している訳ではない、ただアイシスという身体は、まともな触覚も持ち合わせていなかったコンピューターウィルスに与える身体としては敏感であり、不意打ちされると彼にとって未知の感覚で少々おかしくなる、ただそれだけの話である。
いい加減にしないか、とシエンタに言われた事もあり、キラーは自分の姿を、何時もの柔らかさの欠片も無い機械触手を持ち、水晶で構成された化け物のような見た目に戻って、シエンタだけではなく、新たな友人と認めたマシュマロの頭を優しく撫でた。

とにかく、この姿だとキラーも思考が良く働き、また、感情が多少抑制されるようで、今までの動揺や号泣は嘘のように、シエンタの仕事をしっかりと見届けた上で、ショパンの、少なくとも他の連中よりはよほど小さな音量で発せられた言葉を聞き逃す事も無かった。

それを聞いて、キラーは少しの思考を挟む、本来ならば、このままシエンタやショパン、マシュマロと行動を共にするべきなのだろうが、と。

「……私には少しやる事がある、シエンタにも出来ない事でもある、だから、それを済ませてくる。 ……ありがとう、私を友人と認めてくれて」

彼の脳裏に浮かぶのはこの場に居ない友人。
どうせ、間に合いはしないかもしれない、色々な物が破壊されている今、場所を特定して移動するというだけであまりにも時間が掛かる、それでも、やれる事があるかもしれない。 そうキラーは考えて、無数のドローンに転送門を生成させて、この場に居る者たちに礼だけを言って、その中に消えた。

>シエンタ・カムリ ショパン マシュマロ・ヴァンディール


【お相手、ありがとうございました!】

3ヶ月前 No.1087

フラナガン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【放送局/放送室/ニール・フラナガン】

 世界は白と黒だけではない。善と悪の二元論でものは纏まらない。
 正義の反対は正義であるし、そもそも“それだけ”で世界を語るというのが間違っている。
 ニール・フラナガンは、ショコラよりも少なくとも、ずっと長い年月を生きて来た。若い頃の理想が妥協という名の風にあおられて熱を冷まし、その顔に代わりに苦労を象徴する皺を刻んでいくように………彼は現実に打ちのめされて来た。
 現実に打ちのめされ、流され、逃げて逃げた、男はれっきとした敗残者で傍観者。その言葉は痛いものだが誤解してはならぬ、変わらない現実に彼は文句を言わないだけであり、変わらない現実を見つめながら行動を起こさない卑怯者と罵られたところで何も間違いはない。ニール・フラナガンが卑怯者に見えないのは、彼が根本として“善人”であるという一点だけだ。


「そ、そうか………」
「何年掛かるか分からない。君が思っているほど、人は熱に惹かれない………。
 ああ、だがそう言っても、変わらんのだろうなあ………」

「(しかし律儀に、応えるものだなあ………君は若い。未来もある。
  私程度の言葉なんぞ“知るか”で済ませ、蹂躙することも出来たのだぞ)」


 この状況でショコラ・ヴァンディールを案じ。
 何があろうと拿捕に留め、最悪の場合でも殺さないという想定を守っていることからして、そう。

 彼女の言葉を頭ごなしに否定せず、先ずは通した上で考える点からして、そう。
 気弱であるし、そこには気迫も熱意も薄いものしか存在しないが、彼は間違いなく善人だった。
 善人だから分かっているのだ。不完全な秩序に守られた世界とて、そのまま行き着く先が破滅ならば誰かが動くより他にない。ただそれは再三のように繰り返し断っておくが、指標あってこそのものだ。
 明確なビジョンのないものに、現状維持を尊ぶ市民たちは靡かない。そして彼女の今に、それを返すだけの力などない。力はなくとも、だがその眼と決意だけは真だ。フラナガンは、多くの若人を、多くの同輩を、多くの老人を、魔人を見て来た。

 だから………これがただの反発心や利己的な感情から来るものではないのだと、知っていた。
 ことばを突き付けるだけ突き付けるなら、例え寝そべって責任を果たさない男にだって出来るのだ。
 流されて、流されて、責任を持つことのできない男にだって出来るのだ。
 そこに律儀に返して来る言葉の意味を、壮年のフラナガンに分からないと言う道理はない。


「(………いや。それをしないから彼女はまだ、“魔人”でも“英雄”でもないのか………)」
「(そして………)」


 火砲が衝突する。四の色彩を伴うマナの閃光は、彼の持つ最大の大駒が繰り出した一撃だ。
 それに相対するは一体の威容、其は護り神か、あるいは破滅をもたらす悪竜なのか。
 竜を思わせる牙が立ち並ぶ。ヒカリのすべてを呑み下して撃ち滅ぼされた大地の竜は、されどもその牙を後に残した。例え竜が潰えようとも、その咢が、その礎がそこには残っていた。
 撃たれる大牙、二十を越える岩石塊を伴う一斉放射。ルークの盾は片方しか間に合わぬ、そして女帝《クィーン》を瞬時に庇える位置にいるのは騎士《ナイト》だけ。付け加えて言うなら、それらには唯一にして最大の弱点がある。
 一点集中、各方位からの射撃は騎士だけでは防げない。―――そう、駒と駒は同じ場所には並び立てない。十五騎の精鋭たちは、一騎のただ一人孤独な王と並び立つことは出来ぬ。まして、同じ戦場でさえも。だからこそ、結果が見えている。


「(私は………―――)」
「いいや、止そう」


 降り注ぐ岩石塊を、戦車《ルーク》が受け止める。防げなかった部分はそのまま通す。
 残るは半数。その半数を騎士《ナイト》が弾き、弾き、そして―――直撃と共に駒が崩壊する。

 残るは、六発。
 今度もまたそれぞれの色彩を宿した魔弾が地面に叩き付けられ、火柱のようにマナを噴出させる。
 防ぐ、五発。だが最後の一発、浮かび上がる竜の大牙の吶喊は司祭ではなく女帝狙い。
 大駒さえ崩せば後の布陣は崩れる。そう理解した上での判断は見事だが、状況を詰めに持って来たのならば話は早い。敵陣の深くまで刃を躍らせた者ほど、そのわき腹を突くには容易いものだ。
 女帝を撃ち落とすだけの威力と速度はあるだろう。
 現にその牙はある者に似た一つの大駒を貫き崩壊させる。

 だが、だからこそ。

  ・・
「(此処だ。見えたぞ!)」


 それがチャンスだった。

 崩壊の間際、最後に残る司祭と合わせて女帝は一発の魔法弾を放つ。
 あからさまなほどに二騎のマナを収束させたそれは、
 巨大な玉体を思わせる、さながら“魔力の爆弾”だ。
 着弾時の威力を想定すれば、絶対に回避する必要が出て来るだろう。
 死に際の一撃、一矢報いるだけの攻撃としては上等で、しかしケリを付けるには薄い。


 ところで。
 ニール・フラナガンは今まで一度もある駒を使わなかった。
 それは確かに“兵士たちの回収”のために使われ、護衛のために回されていたものたちだが、何も全体の半分以上を占めるその駒全てを使うほどではない。そこまでする意味など欠片もない。

 ………だが一度も使わなかった。
 それは、盤面に居るのは騎士と戦車と司祭と女帝なのだ、と誤認させるには十分。

 それがチェスになぞらえたものである以上、残りが歩兵だと分かっていても―――大駒の存在を見せれば、其方に注意が行くのが当たり前だ。彼女は最大戦力であり、万人の眼を引き付けるものであり、だからこそフラナガンは最後に“これ”に頼る。

     ポーン
「―――《歩兵》!」


 名も無き、兵士たちだった。
 特にめぼしい力も装飾もない。ただ槍を構え、直線的に突くだけの歩兵たち。
 それはショコラが回避するだろうと見込んだポジション―――上空、背後、斜め両方、左右。
 2体の歩兵は相変わらず負傷した部隊の援護に回っているが、彼らは回避、対応を行うだろう位置に構え、置いて当てるように槍を振っていた。もしもその威容と派手な攻撃に目を奪われようものなら、必殺の、不可視の一手が待っている。

 ニール・フラナガンにとって最も恐ろしいのは。
 人間にとって最も恐ろしいものは、得体の知れないもの、分かっていないものだからだ。


 どんな戦士でも。初めて見るものには、絶対に対応が遅れる。


   、  、 チェック
 それは断じて、詰みを宣誓する行為だった。

 彼女に奥の手が、フラナガンを圧倒するものが無ければ、此処で倒れる。
 倒れたのならば、命だけは保障されよう………命だけは。だが、そうでないならば―――。



>ショコラ・ヴァンディール

3ヶ月前 No.1088

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_sgs

【時空防衛連盟本部/武器庫/アリア=イヴァンヒルト】


 もう一度。何度だって繰り返そう。
 人には、過去というものがあるのだと言う。


 積み上げられたもの。
 自分の始まりになるべきもの。
 始まりを定めて、駆け抜ける為の指標にするもの。

 それの無い人間は、持つべきものがなんであるかも理解出来ない。
 白にも黒にも染まるだろうが、白にも黒にも理解と興味を寄せられない。
 それが少女の欠陥で、それが少女の欠落で、それはザーシャとの最大の相違点だった。

 どんな存在だろうが、零から何の手掛かりもなく走ることは出来ない。
 暗闇の荒野に道を切り拓くことこそが、人間にとって生きることであるのだとしても、最初からそれが出来るような輩などいない。そんなものが居たら余程強い心の持ち主か、あるいはただの破綻者か、本人が誰かの介助に気付いていないだけだ。
 それはきっと、どんなに強く在ろうが生きているとは言えないものだろう。

 アリアという少女が真っ当な思考回路をしているのかはさておいて、
 彼女にとって始まりの有無というのはそれだけで重要なものだった。

 だから、何度だって言うのだ。自分に後も先もないのだと蜘蛛糸を手繰り寄せ、自分だけの殻《セカイ》に引き篭もりながら、他人をどうでもいいなりに興味だけで判断し、人を見て知った気になる。触れることが一番の近道であると理解しておきながら、それをしない理由などただ一つ―――それを行えるだけの自分という明確な器を、彼女は持っていないからだ。

 だから、多分彼女は羨んだのだ。見かけと中身が継ぎ接ぎのように一致しない少女は、あれだけ傷だらけになって、きっとあの異形故の困難もあって。しかしそれでも戦う理由と、それだけの芯があるのだとすぐに理解したから。それを理解しておきながら拒絶の路を選んだ理由などただ一つ―――自分の精査がへたくそな少女でも、そろそろ何を自分が考えたのかに気付くからだ。

 だけど、理解して触れようと思えば、何かが変わるだろう。
 それが良いものか悪いものかは分からない。分からないから、恐ろしい。
 どんな生き物の敵意も殺意も、先ずは“不可解”と“疑惑”からその悪意を形成する。そうして拒絶と排斥は完成する、当たり前の感情だ。彼女にとっての上司《おや》によるある意味唯一の教えは、分かりたくないものをそのまま殺すことだけだった。

 その感情のかたちを正しく理解出来るのは、ただ始まりを後から知った人間だけ。
 アリア=イヴァンヒルトが今まで殺しの道具として使われて来た最大の理由こそがそれだった。


「………だから、なに」


 ………壁が割れる。その中で聞こえて来る言葉を、刀を構えながら受け止める。
    受け流せば、きっと楽なのだろうけど。“良く聞けよ”と言われたから受け止めた。


 壁の崩壊については理解はしている、承知済みだ。
 自分が手繰り寄せた糸によってつくられた領域《セカイ》は、自分のイメージで全てを作る。
 であるに、他でもない自分自身がアレは無理だと思ったものを、幾らなんでも完璧にせき止められるわけがない。幾つも幾つも、必死に遠ざけるように重ねて貼ったのは、出血多量で眩暈もして、それでも一撃振るうだけの余裕を作るためだった。
 構えることだって手間が掛かる。片腕は機能してるのかさえも怪しい。
 片手で振れるようなイメージのかたちもなれば、後はそういうものになる。
 やるのはただ一つ、瀕死の重傷で構うことなく突撃して来るあの少女を迎え撃ち、切り倒し、分からないままにして遠ざけることだけだった。
 こんなことを考えている時点で、自分の調子はもう狂いっぱなしだ。普段ならばこんなことなどない、あっさりと振るって、あっさりと殺せていただろう。事実この距離からでもそれは出来たのに、確実に仕留めるためと自分を誤魔化した。


「知りません、そんなもの………わたしは知らない。教えてくれなかった。
 わたしの領域《セカイ》に入れられるものは、わたしだけ―――」


 ………壁が、割れる。その中で聞こえる言葉が、どうしようもなく耳ざわりだ。
    受け流せば、きっと楽なのだろうけど。どうしたって流すことが出来なかった。


 誰かの為なら命を賭けられるのかと言われて、そんな顔などひとつも浮かばない。
 浮かばないようにしてきたし、浮かぶほど近付いて来たものは揃って遠ざけて来た。
 知る気もない。どうでもいいという言葉は、心底からの興味も関心もない相手に向けるモノだ。そうだからこそ、簡単に殺せるし、気まぐれで救えるし、適当に共感したような言葉を言える。その日に敵対したかと思えば、明日に共闘も出来る。どうでもいいという言葉の究極系とは、実際のところ、そうした周りを芥のように扱う性質だろう。
 自分一人だけを抱いて―――少なくとも自分が見た“大人”とはそうだった。
 ただその大人と自分の明確な違いは、自らには進む道とやるべきことがなかったことだった。


「だから―――此方に、来るな」 ・・
「知ったような口聞いて、わたしを壊しに、来るな………ッ!」


 ―――壁が、割れる。想定済みのはずなのに、冗談みたいに愚直な突撃だった。
    予測していたはずの行動なのに、一瞬手元が狂う。
    声の調子までおかしい。頭まで、ぼんやりとする。たぶん、失血のせいだろう。


 何もない。自分の命だって大事だと思えないから、易々と人の命が奪える。
 何もない。始まりというかたちの芯が置けないから、どんなことにも執着できない。
 そのはずだった。そうやって生きて行きながら、空っぽの器に何かを埋めるように執着/終着を探した。何処で曲がって終わるかなど知らないし、見えても来ない。なにも見えない暗闇の中を一歩踏み出せるほど、自分は勇敢でもなかった。

 踏み込んで来るそいつは、断じて知っている相手ではない。
 赤の他人だ。目の前の異形と少女が混同したようなだれかは、別に保護者などではない。
 隣人でもなければ、宿命の相手でもない。偶然のように衝突した、赤の他人でしかない。
 それ以上でもそれ以下でもない。彼女にだって、いちいち無形の小娘に付き合う義理などあるまい。
 分からなかった。分からなかったし、分かってはいけないような気がした。
 そのはずなのに、手元は動かなかった。もう“間合い”だ、此処から振るえば躊躇いなく剣が彼女を切り裂くだろう―――回避する可能性もある、反撃に出る可能性もある。
 少なくとも、アリアにはそう見えているが、だからこそ一発限りの“騙し”がある。だからこそ、何時でも振るうことは出来るだろう、近くの方が確実に仕留められるだろうと、アリアはアリア自身を無意識のうちに騙していた。


 しかし。いや、あるいはだからこそか―――。


「………―――ッ!」


 ほぼ眼前で差し出されたものが。
 傷だらけで血塗れで、無防備で、構わず蜘蛛糸の繭に踏み込んで来たもの。

 それが………予想していたものと全然違ったから、わたしは一瞬思考の硬直を理解した。
 だって心の底から分からなかった。
 何故剣を振るいに来ない。何故自分で間合いに飛び込んで来て、やることが手を差し出すことなのか。なんで、まるで手を取れと言わんばかりに此方に手を差し出している。見て分からないのか、おまえは今間合いに飛び込んで来ただけだ。

 ひょっとしてこの女、心底の阿呆なのか。
 ああ、いや、だが、しかし、なんで、どうして―――。


「―――ふざけないでッ!!!」


 ないまぜになった何かが、自分を圧迫するより前に。
 溜まり切ったものを吐き出すように叫び散らして、刀を振るった。

 それは、切実なほどの防衛反応だった。

 ………本当に?



 構えの割に躊躇ったそれは、しかし身体が誘導するが故に正確に水平を薙ぎ、引き裂く。
 碧光によって編まれたそれは、結局のところ彼女のイメージだ。“振れる”と思っていれば如何なるものだろうが振れるし、その射程範囲だって結局のところイメージでしかない。
 だから―――だからこそ、その光刃は瞬間的にその射程距離を“拡張”するような芸当も出来る。
 距離にして十メートルほど、予兆なく一気に伸びた刀身が武器庫の半分ほどを諸共両断して切り裂き、剣風が辺りを荒らして火粉を撒き散らす。有り体に言って至近距離に居たザーシャであるならば最早避けようのないものだっただろう。


 ………そのはずだった。
    しかしだ、左手を差し出したザーシャの身体には。
    もしも回避していようが命中していまいが、傷一つ付いてはいるまい。

 もう一度だけ言うが。彼女の閉じた領域《セカイ》は彼女の認識だけで構築されている。
 一般的な物理法則など知った話ではない。

 何処が切れて何処が切れないのか。何処まで延び、どのように振り、どのような威力があるのか。
 すべて、彼女がその頭で認識した通りだ。あるいは、その虚ろな心で想った通りだ。
 だから、どうでもいいものをどうでもいいままに斬り捨てようとして。


「―――ぁ」


 ―――実際に、その通りになった。

      、  ・・・・・・
 ザーシャだけを、斬れなかった。
 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・
 斬ったつもりだったのに、斬れなかったのだ。


 それで………ようやく理解した。
 やっと、苦手だったことが初めて自信を以て正解だと言えた。

 わたしは、このどうでもよくない、自分の歯車を狂わせた誰かを。
 羨んだのだ。よくも好き勝手言ってくれたなと怒りながら、少しだけ。だがどうしようもなく。
 羨んだから、斬れなかった。まだ知りたいと心の中の何処かで思って、切り捨てられなかった。

 言ってみろ、だなんて。やりたいことがないからこんなことをしているのに。
 好き勝手に、おまえはおまえだ、なんて言い出した彼女が。
 自分の中で、結論はどうあれどうでもよく無くなってしまったのだ。だから、斬れなかった。


  ―――さて。此処まで口にしてしまったのならば、なんのことはない。
     アリアはザーシャの姿勢に“拒絶”を選ぼうとして。
     だがしかし、心の内側でそれを選べなかっただけだ。

  理由は、口にしたことへの興味なのか。好奇心なのか。それとも。

   分からずとも、例えば彼女が一度でも姿勢を翻していたら。
   その一閃はザーシャを切り裂いていただろう。それが出来るのがこの少女だ。

   彼女以外の人間だったのならば―――ちぐはぐの継ぎ接ぎでなければ。
   そもそも、アリアは興味も懐かなかっただろう。話すら聞きはするまい。

 それがちょっとの親近感と、だからこその相違点への興味だったことは、誰も知らない。
 アリア=イヴァンヒルトになく、
 ザーシャという少女にあるものは、自分にとっての始まりである親の顔というわけだ。
 序でにもう少し正確に言うならば、形はともあれ、そこに込められた情の有無だった。



「………それが、分かってるなら………こんなこと、して、ない………」
「わたしには、………なにも、ないから―――」



 ―――視界が、霞む。
    ぽつりと落ちた刀が、光子になって消えて行く。

 決めてしまえばいいとは、言うが。
 自分のやりたいことなど、結局のところ無かった。
 見つけられたこともなければ、執着の手掛かりさえも探せない。


「(眼が、霞む………死ぬのかな、ああ、でも、わたしは―――)」
「だから―――」


 元々身体性能の補正に魔力を回したアリアの身体は、
 常人とは違う瞬発力と機動力を持つが、その一方で耐久力に関して言えば年相応だ。
 一撃振るうまで意識を保たせていただけでも上等だっただろう。だから、ゆらりと崩れ落ち。


「見つける、まで、………死にたく、ない………―――」
「………期待なんか、してませんけど………―――それでも―――」


 たった一言、二言。それだけを零した。

 期待などしていない。意識が掠れて行く中で、自分は死ぬのだろうと達観した。
 だから“期待はしてないけど責任を取れ”を盾にしながら、小さな本音だけを零した。

 じゃあ言ってみろという言葉に対して―――否。そもそも、最初から相手の問いには素直だった。
 何しろ彼女は自分を精査しているつもりで、その実誤魔化すようにピントをずらしていただけだ。

 ………知りたかった。そんなにまでなって戦える理由を。
    こんな煩わしく、どうしようもない痛みを許容できる理由を。

 空っぽの器を抱いたままというのは、苦しいからだ。
 何もやるべきことを懐けないまま走れるほど、少女は壊れていないからだった。

 これまでがなくとも今を生きて、これから先を生きるというならば。
 先ずはそれが欲しかった。それだけは今までと変わらなかった。

 ずたずたに引き裂かれ、幾つも拒絶するような碧光の壁がガラスのように砕けて散る。
 蜘蛛糸の内側、一人だけの領域《セカイ》からアリアは踏み出して。

 そこから最初に見た、荒野の中の微かなものに―――。


 少女は、手を伸ばした。
 霞んだ視界で、意識を失って倒れ込む瞬間まで。
 先程まで左手があった先の場所へと、無意識のうちに手を伸ばして。

 ………眠るように意識を落とした。手が掴めたのかどうかを、把握する前に。


>ザーシャ


【少々分かりにくい表現あったかと思われますが、
 お相手誠にありがとうございました。楽しかったですm(._.)m】
【アリアの今後はどうして下さっても比較的大丈夫ですが、とりあえず(うっかりザーシャを退場させたくないので)気絶というかたちにします。イマダタダカーツ! トドメヲサセー!】

3ヶ月前 No.1089

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【サイシュウカーイ!!クラシカロイドオワッターーーー】

【時空防衛連盟本部/通路/ショパン】

 薬が効いてきたところで、ゆっくりと立ち上がると。
 シエンタは恥ずかしそうにマシュマロを友達として受け入れた。
 それを見たマシュマロは自分に向けてVサインしたあと、マシュマロは二人の輪に入り戯れ合うのを穏やかな表情で静かに見守っていた。
 そして、ふと思った。この三人は、自分が元の世界に帰らなくてはいけない事を知らないのだろう。
 けど、今はシエンタには自分以上に大切に思ってくれる人がいる。
 突然の別れが来ても大丈夫だ。
 恐らく、これがシエンタとの最後の会話になる。
 シエンタが端末をいじって、電脳空間へと介入する様子を無言で見たあと機構に何をやらかしたのかとひきつった表情を見せてからしばらく経つと、よたよたと歩きながら、素っ気なく三人の輪を通り過ぎる。
 因みに三人の輪に飛び込んで戯れる事はシャイなショパンにとっては、とてもできないので、どうしてもこのような態度を取ってしまう。
「こっちも治療ありがとう。それと、さっきの返事……そのうち、分かるよ」
 キラーもといアイシスはやる事があると言い立ち去ろうとした時、治療の礼として軽くお辞儀をした後に、はにかみながら呟くように言う。
 物を創る意味はこの先生きていればそのうち分かると、アイドルという華やかな世界を知ったバーチャルクラシカロイドを生み出したショパンなりの言葉を贈って水晶体を見送った。
「……部屋に戻る」
 そして自分はこの先は自分から戦わないという意思表明をする。
 そもそも自分はあまり戦闘が得意ではない、自信がないのだ。
 あの時現れた魔法使いしかり、マシュマロしかり。
 ムジークの使いようによっては強力な攻撃になるかも知れないが、性格上それがない。せいぜい、心を通わせた凶暴な犬軍団を率いるぐらいしかできない。
 その事実がここから来た時からずっと後ろめたく感じていた。
 だから一緒に戦おうと誘われても、自信満々に受託できないし、自分から自信満々に誘えないのが心情(ほんしん)である。
(……出されそう)
 紫の肩布をはためかせて、自分の部屋に戻ろうと歩き出し、ふとマシュマロの性格を思い出す。
 あの性格だと同行する時にかつて開かず間の幽霊として噂されていた為に、部屋を割り出してこんな自分をお構い無しに仲間として誘いそうな予感がすると思っていた。

>マシュマロ・ヴァンディール シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー

3ヶ月前 No.1090

クランの猛犬 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【絡みよろしくお願いいたします】
【歴史是正機構/監視室/ランサー】

 ガキン。黒と赤がぶつかり合い火花と金属音を撒き散らす。
  お出ましかと不遜な台詞を聞きながらぎろりと視線を向けて、体を方向転換させると同時に炎を放ってくる。
 ランサーの世界で言えば一工程の詠唱にも関わらずその効果は見合わなかったが、ここはたくさんの異世界が混雑する場所。
 あちら側の自分と師匠がいる通り、自分の世界の法則から外れた者も当然いる。
 "角を持った黒騎士のように"
 だから、好戦的なランサーはその事を恐怖ではなく薄く微笑んで受け止めた。
 火炎を躱す為、分厚い操作盤を蹴って体の捻りを加えたバク転を決めると、黒騎士の頭上を通過し背後へと着地した。
「オレはこれの内部破壊だとかガラじゃねえ、コイツで壊しちまった方が性にあってる」
 と黒騎士の指摘通り野蛮で粗野な一面を露にした発言を、青髪を掻きながらそうきっぱりと示すランサー。
 腰を沈めて魔槍を構えると、相手が紡いだある単語について言葉を投げ掛ける。
「そこはクズはクズなりに抗ったって言うべきじゃねえのか、なあ黒騎士!」
 敵に対しては最低限の礼節を払うランサーにとっては、役立たずと言った事が引っ掛かったので苦い顔から凛々しい表情へと変わり、地面を蹴りあげて風穴空けようとその突きは砲弾の猛進と化として。
 何せ、英霊である自分の槍を受け止めた相手だ手練れだと感じるが、戦いに敗れた相手の扱いが気に食わなかった。
>ALL

3ヶ月前 No.1091

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【時空防衛連盟本部/訓練施設→屋上/17代目葛葉 ライドウ】

『どういたしましてホ、それじゃバイバイホ〜』

ルーシャに向かって元気に手を振りながら緑色の粒子と化して封魔管に戻っていくジャックフロスト。
ライドウが普段同時に使役する仲魔は二体まで、サンダルフォンは毒ガス暴発の時の対処に必要なためジャックフロストは自主的に封魔管に戻った。

「気に入っているというなら是非もない、その名前、大事にすると良い」

ライドウが口出ししていいのはこの程度だ、本人が気に入っているというならば無理に変えさせる必要もない。
ちなみに葛葉ライドウというのは一種の役職名のようなもので、ライドウにも親から授かった名前が別にある。
しかしその名を名乗るのは18代目の葛葉ライドウが現れた時だ、そういう覚悟をしてこの男は葛葉ライドウの名を襲名した。
それはさておいて、ルーシャはギルバートに蜘蛛の足と手を使って抱き着いていた。

「待て待て、嬉しい気持ちは分かるがまだそこかしこで戦闘が起きているのだ。そういうことはこの騒動がひと段落してからだ」

やんわりと宥めるような口調でライドウはルーシャに語り掛ける、建前は”まだ危険だから今は止めておけ”というものだが本音は”ギルバートを気遣って”という感じである。
彼女自身が怪力を自称していたし、蜘蛛の足にも相当な力があるのだろう。その力で抱きしめられ続けるとギルバートが体を痛めかねない。
コホン、と一度場の空気をリセットするように咳払いをするとギルバートの方を向く。

「では改めて、この装置は俺が責任をもって解体して処分する。彼女のことは頼むぞ。
 行くぞサンダルフォン、スイッチは俺が持つから本体を運んでくれ」

『了解しました、では皆様、またいずれお会いしましょう』

ライドウは黒いマントを翻してその場を立ち去った、サンダルフォンもそれに続いて宙に浮いて装置を運搬する。

――ー―――――

「ご苦労だったサンダルフォン、戻ってくれ。来い、ピクシー、アガシオン」

『はいはーい、擬態以外で呼ばれるのは久しぶりねライドウ!』

『ヤッホーサマナー君、久しぶり』

屋上まで装置を運び出してサンダルフォンを封魔管に戻し、続いて技芸属のピクシーと雷電属のアガシオンを呼び出す。
ピクシーは可愛らしい妖精の姿をしており、アガシオンは黄色い金属の樽に入った小鬼だ、どちらの役目も主に戦闘ではない。
こういう小細工や潜入工作に特化したライドウの昔なじみの仲魔だ。早速だがこの二体には解体作業に従事してもらう。
封魔管の中で一連のやり取りを聞いていた二体の仲魔は、器用なピクシーと機械に精通しているアガシオンと役割を分担して解体作業に取り掛かる。

『おっと、その回線は触れちゃダメッス、反対側のボルトを外してからパッケージを開けて――――』

『了解、ってちょっと! この装置スイッチ入れた瞬間に毒ガスが出るようになってるわよライドウ! スイッチ押してたらあの子死んでたわよ』

「やはり、か。あの腐れ外道共め……」

ピッタリ息を合わせて解体作業をしていく仲魔達、その過程でやはりルーシャは鉄砲玉として送り込まれたことを確信した。
ライドウは必要とあらば冷静さを崩さないし、冷酷に敵を葬るが、それでも根は善良な人間だ。
人の弱みに付け込んだこの外道行為に怒りの一つも抱くというものだ、そしてついに毒ガス噴射装置を完全に解体した。
毒ガスの封入されたカプセルを見るに、規模はそれほどではないが発動していたら確実に死者が出ていたであろうものだ。

「戻っていいぞアガシオン、ピクシーは残ってくれ、『メギドファイア』でこのカプセルを消し飛ばす」

『了解』

アガシオンが緑の粒子と共に封魔管に戻るとピクシーはライドウにマグネタイトを流し込む。
ピクシーは下級悪魔でありどんなに強化を重ねても上級悪魔には及ばない、だったら別の方面で活躍してもらおうとライドウはピクシーに補助や援護の魔法を継承させていた。
今から行う『メギドファイア』はライドウの切り札の一つ、この屋上では今は誰かに見られているわけではないので堂々と切り札を切れる。
毒ガスのカプセルを力強く上空に放り投げて、即座にリボルバー拳銃のコルトライトニングを抜き放つ。

「『メギドファイア』、発射!」

メギドという万能属性の魔法がある。それは如何なる耐性をもった悪魔でも完全に防ぐことは叶わない魔法だ。
メギドファイアとはその万能属性魔法を銃弾に込めて発射する合体奥義だ、コルトライトニングより放たれた虹色に輝く極光が毒ガスのカプセルを飲み込み、塵一つ残さず消滅させた。
後に残ったのはバラバラに解体された機械の部品のみだ、これにて毒ガス噴射装置は完全に無力化された。

>ルーシャ・コバルト、ギルバート・トムフール、ALL

3ヶ月前 No.1092

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【大統領官邸/大統領執務室/イルグナー・シュタウンハウゼン】


「クソガキ、ああ……察しの通りデスよ。バビロン議員に教えられました、だからこそボクはこの夢を選んだ。デスが―――」

ミシャールが想像したことに間違いはない、バビロン議員の異能によってイルグナーはあらゆる枷を外され、純粋な夢へと障害を身体と共に砕きながら突き進んでいる。縛るものなどない、躊躇うものもない、ただ自らも含めた全ての汚職を消し去る事が夢だ。
だとしても、その切っ掛けがバビロンのエゴだとしても、それが本来のイルグナーであれば辿り着かぬ妄言の類だとしても、紛れもなくイルグナー自身の願いであり、祈りであり、夢には変わりない。道筋を幾ら歪められようと、その終着点だけは価値あるものだ。
故に、止まらない。斧からの迎撃用の雷が放たれた三発の弾丸を蒸発させようと、本命がそれではないから止まる理由にならない。例えその迎撃用のそれがイルグナーを狙っても止まらない、意志ある限りは夢へと飛び立ち続けるのだ。
ミシャールの浮かべた苦々しい表情も、今のイルグナーには何も響きはしない。目の前に居るのは排除すべき汚職を成す存在、それ以上でもそれ以下でもない。ただ、あらゆる全てを無視して笑顔のまま夢へと羽ばたく。身体も、地位も、大切なものも、全てはその燃料。

「―――それは誰かに価値を決められるものではないデスよ、ボクの夢には、変わりない。」

だからこそ、今のイルグナーは正気であっても正常ではない。ただの風見鶏が抱いた夢と、太陽を目指す鳥が目指す夢が同じであっても、その意味合いは全く異なるのだ。風見鶏は風に流されるのが定めであり、一定の方向へ向き続け、挙句の果てに飛び立つのは異常でしかない。
風見鶏は飛べはしない、風に乗ろうとも何れ地に堕ちる。身の丈に合わぬ願いは破滅を齎し、それは無謀と呼ばれる。飛べていると思えるのは当の本人だけ、周囲から見れば堕ちることなど分かり切っているのだ。それでも、それでも太陽を目指す、縛る柱は無いのだから。
機械獣へと放たれた迎撃用の雷、それは直撃したかと思えば同じだけの出力を以って放出される。ミシャールはそれを斧で弾く、腕の見せ所と言う言葉を発したかと思えば明らかに攻撃を誘う様に機械獣を両断する。
だが誘われていようとも関係がない、排除の為には攻撃は必要であり、何らかの思惑の上とは言え攻撃の好機には違いない。だからこそ、折れた腕を鞭にして枷の外れた力を以って叩きつけた。確かな手応えと、人間の血液を模した何かが飛散する。
追撃の為にもう一度振り上げようとしたその時、垂れ下がった腕をミシャールが引き寄せた。本来ならば激痛が走るだろうその行動であってもイルグナーは怯みすらしない、ただそれすらも好機と見ていた。明確に弱点を持つ相手が、必殺の間合いにまで引き寄せたのだ。

「生身がまだ存在する貴方が、不用意に接近を許すのは甘く見すぎデスよ。それに死ぬつもりはありませんよ、ボクは夢まで止まりませんから。」

引き寄せる力に逆らわず、むしろそれに追従するようにさらに接近する。ミシャールは身体の大半を機械化している、だがそれにも頭部と言う例外はある。遠くから拳銃を放とうと雷で迎撃されるならば、至近距離で発砲をすればいい。
顎の下部、銃口を脳天へと定めながら押し付ける。これだけの至近距離であれば防ぎようはない、皮膚へ食い込むほどに銃口をめり込ませる。そう、後はこの引き金を引けば目の前の腐敗を排除できる。徐々に引き金が押し込まれる中―――

―――イルグナーの身体は予期せずに跳ねる。

胴に打ち付けられた金属の棒、それはエネルギー刃を発生させていない斧であった。しかしその打撃が原因ではない、それに纏わせている電撃がイルグナーの動きを阻害していた。身体を焼くほどではなく、かといって治療用程弱くもない、無力化の為のそれ。
引き金を引く直前であった右手からは拳銃が零れ落ちる、肉体を動かすのは微弱は電気信号。それ以上の電流が肉体へと影響を与えたのであれば、意識しない形でそれは動くだろう。現にイルグナーは視界の明滅、感覚の変異など気絶に近しい状況にまで持っていかれている。
口をパクパクと開けるも声は発せない、だがその表情は笑顔のまま変わらずその瞳には闘志が灯っている。顔半分を覆う平面的な影の侵蝕も変わらずに揺らめき、紅く輝く瞳も笑みを形作っている。そう、まだ諦めてなどいない、まだ殺せる手段はあるのだ。
だからこそ、ただ気力だけで右腕をミシャールの首へと動かす。拳銃は零れ落ちたがまだ腕はある、絞め殺せなくとも首を折れればとその腕に力を籠める。だが、その手に力が入ることなくその意識は途切れる。掴まれた折れた腕に吊られる形で床へと崩れ落ちた。
幾度かの痙攣の後に僅かな呼吸音が聞こえる、生身の肉体に電流は致死量でなくとも莫大な負荷を与える。もし、意識を手放すのが後数十秒遅れていれば心臓の鼓動に影響が出ていただろう、それだけ耐えていた精神力は常人のそれではないだろう。
電流を浴びる最中でさえ、腐敗の排除の為に動いていた。諦める素振りなど欠片も見せずに、銃を取り落としてもまだ腕があるから立ち向かっていた。それでも、肉体の物理的な限界には耐えられなかった。黒く揺れる平面的な半身は侵食された証、それも要因の一つだろう。
ここに、風に飛ばされた風見鶏は墜落した。また太陽を目指すが今は地に伏せたままだろう、一時の休息はそれなりに長い、だがそれは夢を諦める理由になりはしない。目を覚まし、腐敗がまだ存在するならばイルグナーはまた飛び立つだろう。

>>ミシャール・ルクセン


【これで気絶とさせていただきます、残ったイルグナーはお任せします。お相手、ありがとうございました。】

3ヶ月前 No.1093

目指せ王子様 @zero45 ★h2BOlEz4kD_sgs

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/ルシウス・アルトリウス】

 揺らめく紅蓮の炎を背に闊歩すると言う、何とも強者であると認識させるかの様な演出と共に、正面からの敵地への侵入を果たした馬耳の少女。そんな彼女に続く形で姿を現したのは、興奮覚めやらぬ様子をこれでもかと見せ付ける、何とも時代錯誤な貴族風の恰好に身を包んだ少年――ルシウス。勇猛さの具現とも言うべき迅馬の疾走に心を惹かれてしまっていた彼は、真っ先に目に付いた二人が敵であると気付かずに、馬を見なかったかと問い掛けて行く。
 そして返答を待たずして周囲を見渡しては、その視界に入れたのが、かの少女の姿。彼はその容姿を一目見てから、もしやと推測を立てて、真相を確かめるべくして問い掛ける。一方で、少女の方は質問が耳に入っているのかどうか疑わしくなる様子で、その瞳を輝かせては彼の全身へと熱い視線を浴びせている。そんな彼女の視線に、彼は気恥ずかしく思いながらも、返答を待ち――

「なんと……! あの見事なまでに勇猛な走りを魅せた馬が、こんなにも可憐な子だったとは……!」

 ――コーマ、そう自らを呼んだ彼女が、問いに対して返した言葉。正真正銘、自分こそが貴方の探し求めている馬であると、肯定で答えたその瞬間。彼の未だ覚めやらぬ興奮は、更なる昂りを見せて。この心を射止めるだけの、名だたる名馬達に匹敵するが如き、猛烈な走り様を魅せ付けたあの迅馬が、これ程までに愛嬌を感じさせる可憐な少女であった事実に驚きながらも。いよいよ、これは運命であると確信を覚えるに至ったのである。

「コーマと言ったね。もし、きみさえ良ければ是非とも一度その背に乗せ……って、うわああああああああああ!」

 だからこそ、彼女の背に乗ってみたいと願い、熱烈なアプローチを仕掛けようと言葉を紡いで――その途中、彼もまた襲い掛かる大海嘯に呑まれた。敵地でありながら、気を抜いていた事に対する当然の報い。無様にも水流に押し流されながら、必死にもがき続けて。解放される頃には、全身が水浸しになってしまい、綺麗に整えていた銀髪も衣服も、そしてこれまで稼いだ彼女からの印象も、総てが台無しになった……かもしれない。

「……はぁ……はぁ……ひ、酷い目にあった……」

 自業自得と言う形で先制攻撃を喰らってしまった二人。彼女は、これまた時代錯誤な衣装を身に纏った青年に対して非難の声を浴びせている。一方、ルシウスの方は自分の非を素直に認め、敵を非難する様な言葉は口にしない。あくまで、酷い目に遭った、それだけである。とにかく、此処は敵地なのだからと、改めて気を引き締め直すと。

「……ふ、不覚を見せてしまったが、此処から先は簡単にやらせないぞ。悪事を働く是正機構の者よ、覚悟しろ!」

 右手に握られた小さな筒から現出するは光輝の刃。悪しきを挫きて、弱きを救う英雄が握るそれは、聖なる剣。彼はそれを"エクスカリバー"と呼ぶ――実際は連盟から支給されたレーザーソードである事には突っ込んではいけない。(未来の)白馬の王子様との約束だ。
 コーマが展開する弾幕、四十から五十に渡る手数を宿したそれに合わせ、ルシウスもまた剣を高く掲げると、背後に光の魔法陣を展開する。刃を振り下ろしたのを合図に、陣から放たれるは輝かしき無数の光線。これまでの印象から、実力の無さを疑ってしまうかもしれないが。決して侮る事なかれ、爆破魔法は演出専用だが、光魔法は彼の十八番とも言える実戦用の魔法だ。喰らえばそれなりの傷を負う事に相違無し。
 正面に見据えるクラリスの方へと放たれる光線の数は九、先制攻撃を仕掛けて来たフリードリヒに対しては十四。其々が撃ち抜かんとする部位は、いずれも急所を狙ったものではない。あくまで戦闘不能にまで追い込む魂胆である様だ。

>クラリス・ツァクトユーリ コーマ・アンダルーシャ フリードリヒ・ガーデルマン

3ヶ月前 No.1094

血に飢えた玉兎 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【時空防衛連盟本部/食堂/雪葉】

絶対にこちらの動きを悟られることはないという、ある意味は慢心ともいえる自信が、雪葉の積極的な動きを支える。わざわざ前に出るというリスクを犯した理由もそれだ。
気配を消している以上、死角から接近することによって敵は不可視の相手に詰め寄られるという恐怖を味わうこととなる。その先に待っているのは、常人であれば発狂だろう。
人は誰しも、想定を超える恐ろしさを味わった時、自己を防衛するために何らかの反応を示す。個人差はあるが、それらは大抵悲鳴や叫びといったものに集約される。
雪葉は、そうした他人の姿を見ることに快楽を感じていた。訳も分からず殺されていく者達を眺めて湯悦に浸るのはいつだって最高だし、それだけでご飯3杯は食べられるというもの。
だから、今宵の任務もそんな自分の欲望を満たしてくれるものになる。そう思っていたのだが、どうもこうして夕飯の支度をしているのが気に食わない連中が何名かいるらしい。
まあこれはいつものことなのだが、その中に彼女は若干の違和感を感じていた。それは、敵方の一人である銀細工師が、こちらの能力へ的確に対処している点。
以前、どこかで会ったということはないはずだ。となれば、古代で相見えたあの女が自分のことを話したのだろうか? 確かに雪葉の能力は、冷静になれば隙を突くことも可能なものだ。
故に、戦いにおいてはとにかく相手に余裕を作らせないことが重要となってくるのだが……これだけでは敵の牙城を崩せないというのなら、他の戦略を練る必要があるだろう。

「辛辣ですね〜。でも私、二対一って卑怯だと思うんですよ〜。だから、そのアドバンテージ、消すことにしますね〜」

金属を操り、次々と繰り出されるユスティーツの猛攻を凌ぎながら、雪葉は軽口を叩いてみせる。未だ彼女も余裕を持って戦いを進めているという証拠だろう。
再び視界から消える雪葉。相変わらず、気配はない。しかし、彼らほどの熟練者であれば、すぐにでも気が付くことだろう。先程までそこにあったはずの、味方の気配までもが消失しているという事実に。
勿論、味方が倒れ伏した訳ではない。視線を投げ掛ければ、確かにそこにいる。だが、気配そのものだけがまるで感じられず、連携を図ることが全く出来ない状況になっているのだ。
そう、雪葉は自らの能力を二人にも作用させ、お互いの気配を消した。こうすることによって、目視以外では味方の立ち位置を把握出来なくなり、同時攻撃などをする際には必然的にタイムラグが生じることとなる。
当然ながら、息を合わせるのも不可能に近い。わざわざ相手とお見合いをしてから攻撃をしているようでは、雪葉に「今から攻撃します」と教えるようなものだろう。
人気のない、されど三人の人影が見える空間を、雪葉が飛び回る。ユスティーツの背後に突如として姿を現した彼女は、首を狩るようにしてナイフを二度振るう。
戦兎に対しては、一度目の前に姿を現して注意を引き付けてから横へ回り込み、そこからブラスターを連射。食堂という空間は、徐々に雪葉の支配下に置かれつつあった。

>ユスティーツ・シュタルク、桐生戦兎

3ヶ月前 No.1095

スパルタの代名詞 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_YD6

【大統領官邸/正門/フォッサ・セントライト】

ストラーヴが戦う理由がエステルにあるということは、当たり前のように察していた。だが、それがこれほどまでのものであったとは、さすがのフォッサも想定外である。
間に立ったフォッサによって、両者が分断されたこの状況。こうすることによってエステルの干渉を防ぎ、ストラーヴとの対話に集中するというのが、彼女の作戦だった。
そのための足止めも兼ねて、フォッサはエステルに土の弾丸を放ったのだが……次の瞬間、その視界に飛び込んできたのは、驚くべき光景であった。背後にいたはずのストラーヴが、代わりに攻撃を受けている。
ここまで距離を離せば、よもや乱入はないと思っていただけに、フォッサは面食らっている。ストラーヴにとって、エステルはそこまでしても護る価値があるものなのか、と。
明らかに、彼女は無理をしている。穴の空いた体は、思わず目を背けたくなるほど痛々しい。焦りで正しく能力を制御する時間がなかったが故の、身を挺するという選択だったのだろう。

続いて放たれる言葉に、フォッサは反応を返すことが出来ない。流れ落ちる血が、紅い溜池を地面に作る。愛は人を狂わせるというが、それがこれだとだというのか。
だが、これが真実の愛というのなら、自分はそれを否定してみせよう。エステルがストラーヴに何をした? 彼女がこの場でしたのは、声での応援だけである。
結局、ストラーヴはエステルにとって、都合のいい駒でしかない。利用するだけ利用して、飽きたら捨てるだけ。今は本気であったとしても、それは長くは継続しない。
ストラーヴは愛を知らぬが故、エステルから与えられたそれが愛であると誤解してしまった。彼女は、自らの命を擲ってでも、愛する者を護ろうとしている。
苦痛に歪む彼女の顔を見て、フォッサは覚悟を決めた。全てを受け止める覚悟を。愛を知らぬストラーヴに、本当の愛というものを教える覚悟を秘め、彼女は目を見開く。

無抵抗で受ければ、確実に命を落とす。ストラーヴに愛を教えるためにもそれはあってならないと、フォッサは土壁を出現させ、彼女の攻撃を防ごうとする。
しかし、威力が先程までとは段違いである以上、完全に勢いを殺すまでには至らず、壁を突き破ったストラーヴが、そのままの勢いで自分へ向かって突っ込んでくる。
満身創痍のストラーヴを前に、フォッサはそれ以上抵抗することなく……それを受け入れた。身躯に突き刺さる突き。口から血が流れ出すが、彼女は倒れることなく、目の前にいる少女の背中に手を回す。

「もういい……あんたはもう無理する必要なんてないんだ。どんな愛も、死んだら感じることは出来ない。そんなの、悲しいだろう」

ストラーヴを抱き締めながら、フォッサは優しくそう語り掛ける。これで、彼女が目を覚ましてくれるのであれば最高の結末だが、そこまでうまくいくかどうかは限らない。
愛の形は人それぞれだ。彼女にとっての本当の愛になるのかは、正直にいえばまだ分からない。だが、少なくともフォッサにとっての愛とは、こういうこと。
これ以上、後輩が傷つく姿は見たくないという一心で、フォッサはストラーヴの全てを受け止めた。死んでしまっては、どんな愛も感じることも出来ないのだということを示すために。

>ストラーヴ、エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール

3ヶ月前 No.1096

慎重で臆病な上位種 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

【時空防衛連盟/作戦会議室/フランネル・サザンル】

よし、弾いた。
ひとまずそんな安心感がフランネルを包んだ。 確かに相手の刀は振り下ろされたものの、見事に自分の繭はそれを弾き返し、纏っていた電気すらも通す事は無かった。
しかし、そこからフランネルが使った手段と言うのは悠長であった、いや、自分を繭で包んで防御しているのだから、視界が無く、相手の動作だけではなく、自身が召喚したワームの状況すら把握し辛いのだから。
事実として、フランネルは今まさにイスマリアが稲妻の槍を生成したと言う時、悠長にアサルトライフルのリロードを行っていたのだから、機動力だけではなく、こういった所も重大な欠点である。

アースワームに稲妻の槍が突き刺さる、その威力は本物で、ワームの厚い皮膚すらも貫いたが、今度は先ほど使ったサンダーワームと違って、十分な時間があった。 既に彼らは体内に大量の毒を蓄え、それを撒き散らす準備は完了していた、ブレスとして吐き出すことは間に合わなくても……稲妻を受けて肉塊を撒き散らすのと同時に、その猛毒の瘴気を撒き散らしたのだ。
瘴気が少しずつ部屋に充満していく、そしてここでようやくフランネルが「アースワームの消滅」を認識し、イスマリアがどのような行動に出たのかを把握する。

だが、彼女からすれば、アースワームが撃破されていようと毒が撒き散らされているというのは容易に想像可能な事である、幾ら気合を入れてワームを倒そうと、こちらは繭の中で魔法行使に集中し、猛毒の瘴気の中に大量のワームを放り込み、相手をじわじわと消耗させればいい、そう思っていた。

「次のアースワームを――足元!? ファイアワーム!!」

追加のワームを召喚しようとしたとき、フランネルは地面の異変に気づいた、間違いなく繭で覆われていない地面から攻撃が来る、かと言って、今補強するのは間に合わない。
故に、内部から自分の魔法、外部からはファイアワームの炎のブレスで繭の一部を突破して脱出する他無い。

ほぼ一瞬の内に命令は発せられ、ファイアワームは、その巨大な口から、まるで火炎放射器のように大量の火炎を吐き出した。
それと同時に、フランネルは繭へと魔法を発射、この二つの攻撃によって、繭を突破して脱出する……が。

「ひぐぅ! いっ……ったぁ……もう容赦しない、やれ!!」

結局それは、吐き出された炎の中に飛び込む形となり、また、完全に逃げ切るにはあまりにも時間が掛かりすぎたために、前からは炎、後ろからは雷の脅威に晒され、色んな所が燃える。
すぐにフランネルは翅を広げて飛び上がるが、一瞬だけでも炎と雷を受けたおかげで、かなりのダメージを負ってしまっていた。

ここでフランネルは、ファイアワームの攻撃手段をブレスから火球に変更する、その理由は次の攻撃の邪魔にならないように、だ。

ファイワームが相手の注意を引くように何発かの火球を吐き出す、その間にフランネルは、高い機動力を持って、大量の糸を吐き出しながらイスマリアの周囲を高速で周回する。
すると何が起こるか、簡単だ、中心部に居るイスマリアは大量の糸に絡みつかれ、繭に変えられ、先ほどの自分と相手とはまったく逆の状況になる、はずだ。

さらにフランネルは、無駄な魔力消費を嫌ってか、高威力の魔法ではなく、繭を貫通するには何発か撃ち込まないといけない、つまり相手に"時間の余裕"を与えてしまうが、消耗が抑えられるアサルトライフルで、先ほどの糸による拘束がうまく行っていれば身動き取れないであろう相手に対して射撃を浴びせた。

>イスマリア・ザルヴァトール


【糸による拘束攻撃は普通に避けて貰っても大丈夫ですー】

3ヶ月前 No.1097

リアーナ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iR4


【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 ――最後まで、気味が悪いとしか思えなかった。

 リアーナ=レッセントの世界における基準においてはそうなのだ。クズノハはその程度でしかない。
 いいや、寧ろ殺そうとしただけでも有情だとは自分でも思う。
 空に溶けて消えていく呪い。
 それに合わせて汚染された土壌からまるで絞り出されるが如く、溢れ出す真っ黒い何かが消えていく。

「……」

 今日は何を食べるかな。
 ヒトガタを保っていた何かが消滅した次の時。
 まだ残っている建物の影にもたれかかってタバコをふかすころには、思考は何時もの日常に切り替わっていた。

>ALL (クズノハ)

【お相手、ありがとうございました】

3ヶ月前 No.1098

指輪の女帝 @kyouzin ★XC6leNwSoH_YD6

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3ヶ月前 No.1099

一介の議員 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【放送局/放送室/ショコラ・ヴァンディール】

この世界の未来を案じる。在り方や思想は違えど、その一点に関してはショコラもフラナガンも変わらない。元より、彼が拿捕に差し向けられたのは、ショコラにとってこの上なく運がいいことであった。
引き渡された後の扱いまでは保証できないが、少なくとも戦闘で致命傷を負うことはない。仮に夢破れても、魔人達の思想を受け入れれば助かる可能性はある。
長いものには巻かれろとはよく言ったものだ。自分の思想や信念を主張するのは良いが、行き過ぎると制裁を受けることになる。その仕組みが正しいか否かはさておき、ショコラの現状は"地雷を見事に踏み抜いた"と言ってよかった。
もちろん今ならまだ間に合う。引き返せる。孤独な反乱などやめてしまえば、それだけで不安定ながらも安寧を得ることが出来る。
しかし彼女が白旗を揚げる日は来ない。徹底抗戦の横断幕を掲げ、あくまで公明正大の徒として戦い続けるだけだ。先人の労苦が刻まれた、老いさらばえた顔を見て、言葉を受けてなおこの選択が出来るというのは、常人から見れば異常に違いないだろうが。

「そこへの道のりに、命を懸けます」

一度言い放ってしまった、もう修正する気も無い言葉に付け足す。義を見てせざるは勇無きなり。されど、器から溢れ出る程の、身の丈に合わない"勇"は、栄華と破滅のどちらかを強制する。
言うまでもないが、前者は狭き門。艱難辛苦の果てに広がる極楽浄土。その道中に数千、数万と待ち受けるのが後者。ショコラはまさに破滅の渦の真っただ中にいる。

大地を穿つ岩石塊に、死を迎えてなお威容に満ちた竜牙。鈍重さに紐づけされた破壊力と、鋭利さが約束する絶大な殺傷力。立ちふさがる要塞と巨兵の、大山の如き守りすら貫いて進撃する。
続けざまに展開される火柱で壊滅的な被害を受けるものの、熾烈な迎撃網を潜り抜けたものが一つ。吸い込まれるように女帝へと突き立てられたそれは、盤上に於ける最大戦力を死へと誘う――

が、勝利には直結しない。少なくともあと1ターン、敵方には反撃の余地がある。そして相手はこの機会に一点集中、まさに持てる全てを注ぎ込んできた。
崩壊の間際、司祭と並び立って咲かせる死に花。智と力が手を取り合った賜物。しかしこれで終わりではない。
立っていることもままならないような魔力の突風の中、追い打ちをかけるは6体の歩兵。無名であることは決して弱小さと結びつかない。主戦力が大戦果を挙げる裏側には、いつだって名も無き兵士達の剛勇さがあるのだから。

塞がれる退路、閉ざされかける栄華への道。無謀な挑戦を避けて通れない試練へと昇華させる布陣。それでもショコラの目は、澄んだグリーンガーネットの瞳は、一切の曇りや躊躇を見せない。

全力には全力で。女帝の死に花には、意地と執念の結晶で以て応える。

「私は……先へ進む!」

握り締めた右の拳に、残る魔力のがほとんどが結集する。収縮した後に弾けるバネの如く、腰を落としてからの大跳躍。振りかざした拳が床に食い込むと同時に、地中奥深くからの刺客が姿を現す。
それは土砂であり、岩石であり、張り巡らされた木の根であり…大地が内包する全てを集めたかのような防壁。石が積み重なった隙間は土が埋める。土の脆弱性は木の根が絡むことで解決される。
まさに自然の強大さを謳う守り。床のほとんどを突き破って聳え立つ要塞が、迫る魔弾を真っ向から受け止める。飛び散る残骸、必死に魔力を送り続け修復を図るショコラ。果たしてその結果は―――



相殺。しかし飛び道具を迎撃したという関係上、その衝撃はショコラのみを襲う。土煙の中に倒れ込んだため姿は見えないものの、苦し気なうめき声と、空気を求める掠れた呼吸音だけで被害の甚大さが伺える。

だというのに。彼女はまだなお勝利を目指していた。生き延びるために。先へ進むために。
震える右手を前方へ翳す。極限の状況で研ぎ澄まされた感覚が、視界に頼らずともフラナガンの位置を教えてくれる。そう、彼女は初めて王≪キング≫に狙いを定めた。
勝負を決めるべく飛び込んできたのは向こうも同じ。あらゆる駒を攻撃に差し向けた今、孤独な王を護る者はいない。

突如として飛来する岩石の残骸…土煙の中から飛び出したそれは、杭のように鋭く砕けた殺傷力の塊。生身の人間を穿つには十分すぎる。
完全な奇襲。無言のチェックメイト。無骨な岩の破片でしかないというのに、ショコラの意地と執念の結晶に思えて仕方がない。

>>ニール・フラナガン


【遅くなりました*_* 抵抗する方を選びました】

3ヶ月前 No.1100


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