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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】No.1136 だけを表示しています。

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_8gk

 世界の外は、真っ暗だった。
 閉じ籠っていた小さな箱庭の外側に、自分から飛び出した癖に。
 最初に自分が覚えた感想は、ただ只管に“暗い”だったことを、覚えている。

 足元も覚束ない。視界の先も上手くいかない。
 ただ分かるだけの範囲から飛び出した先は、ひたすらに現実感が無かった。
 何より確かな感覚を持たなかったのは自分自身だ。何も持たない、道標になるような灯など一つもない。それがないから、後ろにも先にも進めないのがわたしなのだと、ほかでもない自分が知っている。
 だから、一歩を踏み出すにもひどく労力を使った。それでも、一歩を踏み出した。

 暗闇の中で、声を聴いた気がする。
 その方向に、また一歩踏み出す。踏み出すだけなのに、普段と違う。
 知らない場所、分からないもの。理解できないところ。
 そうした場所に踏み出すことの痛さと怖さを、自分は良く知っている。


“知っているのに。なら、自分は何故”
“あの灯火のもとへと、歩いているのだろう?”


 自問に対する解答は、自分で打ち出すしかない。
 不慣れな自分の感情の精査をしながら、もう一歩踏み出す。


 灯が、見えたのだ。歪だが、自分はきっと初めて知るかたちの灯火を。
 触れたいと思って、知りたいと思った。
 ちぐはぐだと思っていた少女が、それでも尚そう在ることができる。
 という事実だけが、たぶん羨ましかった。
 まっすぐに立つ芯があって、どこか知っているものに近いちぐはぐさの持ち主だった彼女が………名前も知らない、どうでもいいはずの他人が、どうでも良くないと思えた。たったそれだけだ。

 本当に調子の狂う相手だった。
 だって、アレは別に知人でも、今までわたしの内側に在ったものですらない。


“赤の他人だ。そのはずだ。今まで、どうでもいいって言って来たものだ”
“なのに斬れなかった。わたしは、どうして………―――”


 それは、もう語るに及ばない結論だった。
 だったが………そこを導き出すほど、“アリア”の感情にわたしは詳しくなかった。


 一歩、踏み出す。考えとは関係なく、世界の外側へと飛び出す。
 寄る辺のない自分には、寄る辺に出来るものが必要だった。
 なんでも良かったのだ。少なくとも今は、なんでも。

 ………だから、だろうか。
    手元にその灯火が見えて、触れた時に、ほんの少し■■したのは―――。




【時空防衛連盟本部/武器庫⇒救護室/アリア=イヴァンヒルト】




 目を、開けた。
 白い天井が見えていた。見慣れないことはない、殺風景な白い架空のソラだ。

 それが先ほど戦っていた場所のものではないことも、概ね察しは付いた。
 周囲20mほどのモノの気配なら、力の応用ですぐにでも感じ取れる―――そこに、覚えのあるかたちの少女は居なかった。代わりに、覚えのない人間のかたちは幾つかあるが、そこに関しては比較的今はどうでも良い内容だ。
 見覚えのない場所で目を開けた時、確認するべき内容は複数。
 力が行使できる状態か、周囲に人の気配はないか、そもそも此処は何処か………左から順番に、可能、居る、恐らく連盟本部の救護室か治療室―――ある程度の辺りを反射的に付けたところで、次に反射神経が動かすのは身体だった。動くか、そもそも動けるかどうかの確認をしないとならない。頭が考えるより前の、体の反応だ。

 だから、体を起こす。訂正………起こそうとした、だ。

「………ッ―――」

 ずきり、と走る痛みに、押し殺すような小さな声をあげた。
 痛みに耐え切れなかったというよりは、それを予想していなかったからこその感覚だが。

 その痛さが、今まで断続的にしか繋がっていない自分の状況を接続する。
 自分が何処で何をしていて、何故此処に居るのか。そこまでの状況を繋げていく。

「(そうだ、わたしは………)」
「(負けたんだ。なのに、生きている―――)」

 有体に言って、自分は敗れた。
 あの後目を閉じて、次に起きる先が何処なのか………―――そもそも、“起きている”という状況さえも確約できない状況で、諦観と一緒に負け惜しみめいた台詞を吐いて、そのまま意識を失った。
 次に目を開けることがあるとしても、ロクな場所ではないだろうと思っていた。
 ………それなのに、この待遇だ。捕虜という空気でもない、周囲の自分を見る眼は“襲撃者”への反応ではない。どうでもいい相手への対応でもない。では他のベッドはどうなのだ、と意識を割いても、それらの負傷者と、そもそも負傷者からの対応さえも、ほぼ一緒だ。


“武器庫での騒動に巻き込まれたらしいが………大丈夫かい、お嬢ちゃん”


 続いて聞こえてきた声に、思わず振り返って。
 その言葉が疑惑を確信に変えたものだから、小さくうなずいた。
 白衣の、大人だった。おそらくはここのドクターかなにかだろう。
 様子からしても敵意は見えない。………それが何を意味するのか、分からないわけではない。

“そうかい。暫くは安静にしていないとダメだが、親御さんは?”

 いません、と答える。
 嘘を吐いているわけでもない。そもそも、自分に“親”などと呼べる人間はいない。

 必要でもないことは応じず、聞かれたことだけに応じる。
 ―――その繰り返しで、やがてその大人は退散する。
 ベッドの上だけとはいえ、狭いながらもパーソナルスペースのある身だ。周りの視線を意識せず、時折来る言葉に“敵意を持たれない程度に”返してやれば、これから先のことを考えるのには全く問題はない。呆けている余裕があるとは思えない。そこまで自分は楽観的ではない。

 運の良いことに、自分の居る場所は抜け出そうと思えばいつでも抜け出せる場所だ。

 ………そして。運の悪いことに、何時気取られてもおかしくない場所だ。
    わたしだって阿呆じゃない。殺したのだから、殺される可能性を考えないわけじゃない。

 リスクとリターンの採算は合わせるようにと、彼女は言っていた。
 その点でいえば、本当なら負傷した身体を引き摺ってでも逃げ出すべきではある。

 だが―――。

「(………逃げ出して、何処に?)」

 逃げて、どうする。何処に戻って、何をする。
 失敗した。連絡を取ることも出来ない以上、自分はおそらく死んだ扱いになるだろう。
 何処にも居場所はない。戻ったとして、あの合理主義の女性が自分を再び扱うとは思えない。

 かといって、此処に居場所があるでもないだろう。
 いまの自分の領域は、人を殺す場所ではなく、この身体を横たわらせるベッドの上だけ。

 ………どうする、という自問に応じてくれる他人などいない。
    だから、少なくとも今は、自分で考えて、解答を作るしかなかった。

 少なくとも、傷が癒えるまでは。

>(ALL)


【ではお言葉に甘えて。重ね重ねお相手ありがとうございました〜m(._.)m】

2018/04/11 00:01 No.1136

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