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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】No.1121 だけを表示しています。

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_iR4

【大統領官邸/正門/ストラーヴ】


短く持った剣槍を構え一直線へ隊長へと突き進む、黄金色へと変質しつつある紫電を引き連れたそれは阻む土壁を容易く貫いた。それでも尚勢いが衰えることなく、土の破片が舞う中をただ怯むことなく進み続ける。
痛みを堪える為に歯を食いしばり、血塗れの身体に鞭打ちながらも失速する気配はない。これが彼女の愛だから、愛してくれた存在を守り通す為ならば全てを投げ打てる愛。それを彼女が気付いていなくとも、今彼女を動かしているのは愛に相違ない。
隊長を刺し貫くことに抵抗が無い訳ではない、それなりに交流はしていたし気にかけていたことも忘れてはいないのだ。それでも、彼女にとって今この瞬間優先すべきはエステルであったのだ。だから、その為に、その命を奪う事すらも考えていた。
握る柄に伝わる感触は肉を貫いた確かなそれであった、先端が僅かに肉へと埋もれただけであったがそれで充分であった。後はそれを押し込めば終わりなのだ、隊長を討って、エステルにご褒美を貰って、また愛して貰えればそれでいいのだ。
結局、隊長も大層な事を言っただけであって愛など教えてはくれなかった。ただ土壁で防いだだけで、それも防御にすらならなかった。だからエステルが愛してくれたことは間違いではなかったのだ、そう思い、剣槍に力を籠める。
―――ふわりと、何かに包まれた。

「……隊長?」

そう問うた相手は口元から血を流し、胴に剣槍の刺突を受けても尚ただ抱き寄せた。優しく語り掛け、腕に優しくも力強い温かみを感じた。ふと、口に出たのは純粋な疑問であった。何故、そんなことをしたのかが分からないと言う意味のそれを呼び名で表す。
無理をしなくていいと、死んだら愛を感じることはできないと、それは悲しい事だと、そう告げた。ただ、そう告げただけであった。理解が出来なかった、愛を教えろとは確かに言った、それが敵対している自身の攻撃を受け、致命傷を受ける事なのか。
疑問が生じた困惑は、ただ不明の拒絶へと変化する。彼女は隊長に敵対して、エステルを傷付けられそうだから、お願いされたから攻撃をしている。それを何だ、受け止めて抱き寄せて無理をするな?訳が分からない、そんなものが愛なのか?
それが美しい愛だと言うのなら、それが正しい愛だと言うのならば、それに殉じて死ねばいい。彼女の知る愛はもっと直接温かみと熱をくれた、エステルが与えてくれたそれは悦楽と充実をくれた、なのに隊長のそれは今の彼女には感じない。
だから、追い返すだけでいいとエステルは言ったが殺さねばならないとそう思った。あれだけエステルとの愛を馬鹿にして、挙句に教えるのがこの程度であった。ただ惑わすだけで、エステルの愛を疑っただけで、それだけであった。

「―――それだけ?隊長の言う愛って、その程度なんだ。」

冷たく突き放された言葉、抱き締められたことに何の感慨もないような声色で淡々と告げる。その色は失望と呆れと侮蔑が込められていた、結局知っているとは口だけであったと、言葉にしなくとも伝わるほどであった。
空間に金交じりの紫電が迸る、剣槍で貫くなんて生温い。身体の内側から稲妻で灼いて、エステルの愛を揺らがそうとした罪を償ってもらう。破裂音を立てながら紫電は貯蓄される、これを放出すればそれで終わり。
終わりなのだ、彼女自身も巻き込まれても構わないと思っているのに一向に放出されない。溜めども、溜めども、放出できない。隊長を灼くための稲妻が溜まるばかりで、放出されない。僅かに彼女の表情に焦りが伺える、何時もの様に能力が扱えないのだ。
ならばと今度は剣槍に力を籠める、ただ押し進めれば幅広の刃が隊長の胴を深く傷つける。そう、全力で押し込めばいいだけなのにびくともしない。抱き締められていることが行動の阻害に繋がっている訳ではないのに、どうしようとも動かない。

「……なんで」

焦りと共に吐き出された言葉、それを皮切りに帯電と剣槍を押し進めることを交互に行うも一向に隊長を傷付ける気配はない。感覚的に行える放電が一切行えず、ただ突き刺すだけの剣槍も壁に突き刺さったかのように動かない。

「なんで、なんで!」

帯電を示す稲妻が空を灼く、その余波すら隊長に向かう事がない。ただ、蓄積されるばかり紫電は黄金色から徐々に通常の薄紫へと戻っていった。それが何の切っ掛けにもならず、ただただ蓄積せども放出されず。
再び剣槍に力を込めども僅かばかりも押し込むことが出来ない、押すだけで殺せてしまうのにそれが出来ない。ただ抱き締められているだけなのに、押し進められない。理解できなかった、何故自分がこうなっているのかも、何も分からない。

「なん……で、なんでよ……どうして―――」

分からないのは、分かってしまえば壊れるものがあるから、分かりたくないのだ。だって、それを認めればそれも愛だと認識してしまう。エステルから与えられたもの以外を知ってしまう、それを良い事かどうかが判断できなかった。
抱き締められた温もり、体温以上の温かみを感じるそれはエステルの抱擁とは全く違っていた。身体を重ねる為に、お互いを高める為の前戯ではない。ただ暖かかった、言葉では言い表せなかったがただただその温もりが恋しいと感じた。
彼女の瞳から一筋の光が流れ落ちる、ぽつりと地に落ちたそれは朱い血溜まりの中に透明の膜を作った。ぽろぽろと、最初の一筋から止めどなく溢れ出てくるそれは涙であった。切なくて溢れるものではなく、あの過去より初めての本来の涙であった。

「―――温かいの……分からない、分からないよ……」

紫電は霧散し、剣槍を取り落とす。抱き締め続ける隊長を思いのまま抱き締め返した、まだ分からない、それでも何故かこうしたかった。エステルとは違う、その温かみをもっと感じていたかった。それが何かは分からないけど、ただ心地よかった。
隊長の肩へと顔を埋め少女のように泣き続ける、年不相応であるがきっとこれが彼女のあの時だろう、あの時から止まっていた時間は漸く針を進めだした。過去を写し続けていた氷漬けの時計を溶かしたのはエステルの愛であったのは間違いない、だがそれでは前には進めなかっただろう。
堕落し、与えられる愛を求め続ける奴隷のままであっただろう。彼女が進むためにはその愛では駄目だったのだ、ただ大切に、真剣に、彼女と向き合って想ってくれる存在こそが必要だったのだろう。きっと彼女にとって、それが必要な愛だ。
どれだけ鎧を重ねても、心の底から望んでいたものには無力だ。それがエステルと出会った時には愛であっただけで、この瞬間は彼女を想う愛を望んでいたのだろう。だから、愛してくれていた存在を消せなかった。

「でも、これが愛なら……私は―――――」

その言葉を紡ぎ終える前に彼女は意識を手放した、度重なる限界を無視した能力使用、身体を穿った五発の魔弾、そして何よりも愛を求めるあまり休まずに酷使し続けた肉体の疲労が限界に達していた。愛の為ならば、本当に投げ捨てられるのが彼女だ。
その彼女が意識を投げ捨てたと言う事は、きっと心から望んでいた愛を得たと言う事だろう。この愛ならば寄り添っても良いと、この愛ならば頼っても良いと、本能的に感じ取ったのだろう。だからこそ、傷だらけの彼女の寝顔は、とても穏やかであった。
一つ、補足するならばエステルに対して悪感情を抱いている訳ではない。彼女にとっては間違いなく愛をくれた人物には変わりはない、ただ求めていた愛が此方であると気付いただけなのだ。目を覚まし、また会うことがあれば謝罪と共に別れを告げるだろう。
どちらも彼女にとっては愛であったが、隊長の愛が望んでいたものだと知った、ただそれだけだ。愛を与えてくれた人物を悪く思うことなど彼女にはきっと出来ないだろう、それが気まぐれなものであってもだ。
だから愛に包まれておやすみなさい、きっと目が覚めれば世界は見違えて見えるはずだから。そんな声が何処からか聞こえた気もするが、聞き取れる彼女は夢の中。それで、いいのだ。

―――漸く、見つけられた。
その言葉は続かずとも、想いは届いているだろう。だって愛とは、そういうものだろう?

>>フォッサ・セントライト エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール


【ここでストラーヴは気絶とさせて頂きます、間を空けてしまい申し訳ありませんでした。お相手ありがとうございました!】

2018/04/06 22:16 No.1121

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