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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/07/13 02:23 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_ouC

―――現在は、最終章です―――


最終章:「Chrono Crisis」

激しい戦いの末、歴史是正機構に打ち勝った時空防衛連盟。晴れて時空を護り抜くことに成功したかに思われた矢先、それは始まりを告げた。

まるで世界そのものが崩壊するかの如く、ひび割れていく空。その向こうから現れしは、正しき歴史を紡ぐ使者。

彼らは、人類の捻じ曲げた歴史を修正するべく、この世へと降臨した。これこそが、時空断裂。積み重なった歪みが、限界に達した瞬間であった。

改変に改変を重ねた今の世界が正史に塗り潰されれば、そこに生きる者達は"もしも"の存在と化してしまい、歴史の闇へと葬り去られてしまう。

それは即ち、世界の崩壊といっても過言ではないだろう。時空断裂による時間の連続性消失を防ぐためには、彼らに戦いを挑み、勝利するしかない。

人類が罪を犯したのは、疑いようのない事実。歴史を変えるなどという禁忌を犯した種族には、当然の報いであるかも知れないが……そんな人類も、生きている。

生けとし生ける者、全ての願いは、今日を、明日を生きること。黙って死を受け入れるなどということが、出来るはずがない。生きたい、と願う限り。

これは、明日を手に入れるための戦い。自らの存在を世界線に、時空に刻み付けるため、時空防衛連盟は次元を超える。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

最終章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-286#a


・現在イベントのあるロケーション

狭間世界:最終決戦

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カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【狭間世界/血塗られた島/海底洞窟/橋川 清太郎】

再度の連携攻陣、ロコは少女の立っている地盤を液体へと変質させた。それだけでは少女を打倒出来はしない、どころか掠り傷一つ付けることさえかなわないだろう。
しかしそれこそが正解。この場には攻撃を担当する者が二人もいる、一人くらい拘束に専念している方が丁度いいのだ。

(よし、直撃入ったぞ!)

そして作戦は見事功を成し、少女は鉄球の烈撃をモロに受ける。
が、血肉を惨たらしく撒き散らすことはなく、幻惑的な漂光となって霧散。程なくして元の姿へ戻る。別段それについて驚きはしない、元より常なる生物でないことはHUDからの生命反応である程度把握できていたし、以前も似たような存在に会ったことがある。それよりも注目すべきなのは、奴が大して消耗していない点だ。どうも物理干渉では有効打を与えることは出来ないらしい。

(完全な魔力生命体か)

そう結論付けた直後、凄まじい攻性エネルギー群体がこちらに殺到してきた。するとゲイルが相変わらずの即決即断で的確にそれらを処理していく。

(よし、体勢を整えて次の好機を……いや、待てよ)

確かにここで少し待ち、彼が斬撃を全て打ち消してくれる間に、次の攻撃の準備なりしておくのが定石だろう。しかしそれでは駄目なのだ、奴の戦士としての勘や判断力はずば抜けている。普通のやり方ではまず埒が開かない。故に、ここで取るべき選択肢は――

「……突撃する!」

瞬間加速用大出力ブースター・SolidFeatherを全開で吹かし、一瞬で音速の壁を突破。
取った決断はやはり攻勢、それも今度は後先考えないような事実上の特攻といえるものだ。だが奴との技量差を埋める為には、確実な勝利を掴む為にはこんな無茶でも押し通すしかない。

「おおおおおおおお!!!」

この鋼鎧を迎え撃つは神域の剣閃、数にして八。それでもなお前進を躊躇しない。そして剣閃が迫り装甲を抉り取らんとする瞬間、

(今だ!!)

SwordPackをパージした。全身を包む灰と赤の装甲が弾かれるように勢いよく切り離される、そして内蔵機能で発生した高出力バリアフィールドと共に、身代わりとして斬撃を甘んじて受けた。
大破、とまでは至らなかったもののやはり損傷は深く、もしパージせずに突っ切ろうとしていたら間違いなく勢いを崩されていただろう。

最期に盾としての役目を果たした大鎧の内より現れるは、白き軽鎧。
久しく戦場(いくさば)に形貌を晒していなかった、PS-M-3352-GAWND本来の姿だ。

少女へ肉薄しクロスレンジに入ろうとする直前、ある内蔵装置を起動した。
本来の武装はオーバーホール中、SwordPackもたった今切り離したこの状況でも使用出来る、最後の切り札。

「届けえええええええ!!!」

その名はWitchJudgment。胸部装甲に内蔵された特殊フィールド発振装置試作型。自機を覆う範囲で一定濃度以上のあらゆる魔力に反応し、その作用を完全に抑制する。
その性質上、通常の生物には何の効果も無いが、全身が魔力で構成されているこの少女ならば、致命傷を与えることが出来るのではないかと考えたのだ。
そしてショルダータックルという形で、少女をフィールドの範囲内に入れようと更なる加速を行う。
計らずもそれはゲイルとの連携、それも挟み撃ちとなった。

>>周辺all

1ヶ月前 No.1777

亡国の末裔 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_rxQ

【狭間世界/大雪原/ソレミア・ラガルデール】

戦いの結末が近付いているのが、嫌というほど感じ取れた。お互いに体力を消耗し、身体に刻まれた傷の量も少しずつ増している。どちらが先に倒れるか、耐久力の問われる局面。
ぶつかり合う剣と剣。グランドナイトとの激突により、互いの得物が火花を散らす。指先に伝わる確かな感触で、ソレミアは攻撃が敵に命中したことを悟った。
されど、それは致命的なものではない。明らかに追い詰めつつある状況とは言えども、戦いの流れはたった一つの出来事で変わることもある。だからこそ、相手に立ち直る隙を与えず、攻め続けたいところであったのだが……
先に反撃に動いたのは、グランドナイトの方であった。ギラードをアイスソードの形に戻し、炎と氷の剣を天へと向けて掲げる敵。すると、予め生成されていた針に属性が宿る。
次に彼女が剣を振り下ろすと同時に、それらはまるで無数の流星の如く、地表へと降り注いだ。所狭しと敷き詰められたそれに、回避の余地などほとんど存在していない。
防御をしなければ、確実に命がなくなるであろう状況。恐らく、ツバキも攻撃を仕掛けず、まずは防御に徹するであろう……そう考え目を横にやれば、そこに広がっていたのは予想だにしない光景。

まさか、あの攻撃を前にして突貫を選ぶとは……それでいて、しっかりと敵に到達しているというのだから、末恐ろしいものだ。少しだけ苦笑いを浮かべつつも、ソレミアは彼女に続く。
自分にはあのような芸当は出来ないと理解しているからこそ、防御を展開しつつの進軍であったが、攻撃が熾烈なこともあって、なかなか思うように進むことが出来ない。
ようやくグランドナイトの眼前へと躍り出た頃には、ツバキは攻撃を放ち終えていた。追撃を加えるような形で、ソレミアは両手に最大限の魔力を結集していく。
そのまま両手の剣で斬りかかると見せ掛け、白金双剣を消失させると、地面に手を当て魔力を注入する。彼女の魔力に呼応し、敵の足元に召喚されたのは、水銀の無限地獄。

「悪く思わないでちょうだい。この戦いには、私達の存亡が懸かっているのよ」

別世界とはいえ、知己の人物を死に至らしめるかも知れない攻撃を放つのは、大いに心が痛む。だが、そこで躊躇すれば、待ち受けているのは逃れようのない運命。
故にソレミアは心を鬼にする。このグランドナイトという存在は、別世界のカシュタン・コルーカルは、何らかの力によって意識だけがこの世界に呼び出された、もしくは再現されたに過ぎないと、彼女は考えた。
ここで倒されたとしても、きっとカシュタンは元の世界に戻ることが出来るはずだ。あるいは、本当は来てすらいないのかも知れない。敵対者の身体を蝕む、荒れ狂う水銀の波。一度溺れ、その液体を飲み込もうものなら……致命傷は避けられないだろう。

>グランドナイト、ツバキ・オオトリ
【見落としにより長きに渡りお待たせしてしまい、本当に申し訳ございませんでした……!】

1ヶ月前 No.1778

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『狭間世界/終末/ジークリンデ・エレミア』

時空神クロノスは全員の攻撃を受け止めてみせると宣言した。
ジークの生成した魔力球の内、半分に対しては同じような魔力を硬めた球をぶつけることで相殺。
残りの半分を高い機動力により無傷で全て回避した。
その後ジークの攻撃を含め、各々が放った攻撃を時空神クロノスは容易く防いでみせた。
それらの状況を見ていても尚、ジークは諦めていない。折れず、曇らず、絶望に染まらない。
しっかりとした瞳で相手を捉え、見続ける。
やや遅れる形で新たにもう一人、時空神との戦いに姿を見せる。見ない顔だが、今は一人増えるだけでも十分心強い。

「出来る!人間に出来ないことなんてない!」

時空神はこの場に居る者達に今のままでは世界を護れないと吐き捨てる。
そして時空神は攻撃のために動く。
その瞬間何かが割れるような音がした。ふと、上を見ると終末の天井が崩落を始め、降り注いでいた。
ゆっくりと落下はしてはいるが、回避では対処出来ないほどの空間攻撃であった。
ジークはすぐに自身の右手に魔力を集中させる。

「エレミア流外式! パイルバンカー!」

魔力の集中が完了し、右手を上に向けて伸ばすと、1発の固定プラズマ砲を放つ。
元々の威力自体は高い方なので少なくともジークに向かって来ているものは壊せる。
この魔法は元々ジークのものではないが、以前異世界に飛ばされた経験を考慮し、仲間から教わっていたものである。
そしてジークは危険を顧みず、姿勢を低くし時空神クロノスに向かって一気に接近してインファイトを仕掛けようとした。
先ほど何が起こったのか、ジークは忘れた訳ではない。
が、少しでもチャンスがあれば接近して攻撃をしようとしたのである。

>>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、
シフォン・ヴァンディール、フォルトゥナ・インテグラーレ、レオンハルト・ローゼンクランツ、ボルヴェルク

1ヶ月前 No.1779

忠犬 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_rxQ

【狭間世界/血塗られた島/ロコ】

やった。ロコは、心の中でそう声を漏らす。ゲイルが放った熱風は、奴にとってはまるで脅威とならなかったらしく、敵の取った対処はただその場に立ち尽くすこと。
続く鉄球も、何事もなければ魔法を用いずとも、簡単に避けられた攻撃だろう。だが、ここでロコが敵の足元を液状化させたことが生きてくる。突如として沼と化した地表に、バランスを崩すファントムメサイア。
脱出が遅れたところに、静太郎が放った鉄球が容赦なく炸裂する。人間であれば、間違いなく一撃で死ぬであろう破壊力。事実敵は、魔力の光となりて霧散し、消滅の時を迎える……かに思われた。
魔力の再結合。打ち倒したはずの相手は、次の瞬間そこに立っていた。それを目の当たりとしたロコは、確信する。彼女はもはや、人間のアンナローズとは全く異なる、別の存在であるのだと。
人間と魔族の大きな違いは、身体にあるといえるだろう。人は死んだとても、何らかの形で処置を行わない限り、肉体はその場に残り、腐乱はしても骨までもが消えることはない。
対して魔族は、生命が尽きたと同時に身体を構成していた魔力が解き放たれ始める。魔法による保存がされない限り、遅くとも数日の内にその者の痕跡は消え去ってしまうのだ。
そのような観点から見れば、魔力が再結合することによって"復活"を果たしたファントムメサイアは、もはや人ではない。むしろ、魔族に近い存在であると言わざるを得ないだろう。

「正真正銘の化物なのであります……ですが、我々と同じならば、倒せない道理はないのであります!」

ロコは自らを奮い立たせるようにそう言い放ち、敵の攻撃に備える。敵が魔族に近い存在であるならば、無敵ではないはずだと、彼女は決死の表情を浮かべながら考える。
風に姿を変えたファントムメサイアが、三人にそれぞれ複数回の斬撃を浴びせる。いつ、どのタイミングで襲い掛かってくるか分からない、不可視の攻撃。
直ぐ様石の要塞を作り出すことによって、ロコは対処しようと試みるが、本気の片鱗を見せた敵を止めるには至らず、結果として彼女の身体には、二つの傷が刻まれる。
それも、かなり深いものだ。正直、ゲイルが自分に向かってきた斬撃のいくつかを掻き消していなければ、死んでしまっていただろう。こんな局面で足手まといになるなんて、一体何のためにここにいるのだろうか。

味方は既に反撃に打って出ている。だが、自分があの領域に付いていけるのか? たとえ攻撃をしたとしても、先程のような奇跡が起こるとは到底思えない。
残された猶予は僅か。ロコは、己の存在意義を自分自身に問う。考えろ、考えるのだ。自分は何故、何を果たすために、この戦場に立つことを決意したのか。
暗中模索の中、彼女が一つの答えに辿り着いた瞬間、辺りに衝撃波が撒き散らされ、その身体が光に包まれる。

「そなたが生きていれば、いずれ私の時代に、そしてアンナローズ殿危害が及ぶのであります。故に私はそうなる前に、この場にそなたを止めてみせるのであります!」

―――それは、狭間の世界にてロコが抱いた、従者としての揺るぎなき覚悟であった。上級魔族にすらも追い縋ろうかという速度で疾駆した彼女は、上空へと飛翔し、そこから敵へ最大限の魔力を向ける。
外面上の変化はない。相手からすれば一見無害で、何をしたと勘繰りたくなることだろう。しかしこの時既に、見えないところで"それ"は進行し始めていた。
ファントムメサイアの足だ。ロコは敵の足裏から根を生やし、身動きを封じようとしているのである。いくら暴虐的な力を持つ者であろうと、地中深くに張り巡らされた根を引き千切るのは骨が折れることだろう。
勿論、常識の通用しない相手である以上、容易く切断される可能性も大いにある。だが、そうなったら次なる作戦を考えるだけ。ロコはもう、逃げも隠れもしない。
この戦の結末は、未来だけではなく、中世や古代、ひいては時空そのものの運命を左右する。愛する世界、そして主人を護るため、一人の魔族が、限界を超える。

>ファントムメサイア、ゲイル・ベネルド、橋川清太郎

1ヶ月前 No.1780

新時代の象徴 @sable ★n7HCgrYll9_keJ

【狭間世界/時の墓標/アーケオルニ・ランドグリーズ】

 ペッと、血混じりの唾を吐く。引き裂かれた右肩と脇腹が痛むのだ。ヒトだ魔族だ以前に彼女は生物、幾ら鍛えようが被弾は生命を蝕む。痛みは顔を歪ませる。
 しかし戦意まで削がれはしない。むしろ燃える。掻き立てられる。削り取られた命は油となり薪となり、瞳に灯る炎を永久に消えることのない業火へと育て上げるのだ。
 面白い。狂気の沙汰ほど面白い。極限状態というのは最高だ。化けの皮が剥がれる。取り繕った冷静さや、仮初の個性が消し飛ぶ。どんな輩が最後まで居残るのだろうか?それが知りたくば、時の墓標を訪れるがいいだろう。

 剛剣の三連撃に対し、肉薄を以て応じる幽鬼。普通なら恐れをなして退避、よくて防御一辺倒というところだ。ここまでの流れから接近を試みるのは読めていたが、その速度と積極性は予想の遥か上を行っていた。
 初撃で弾かれつつも即座に復帰、続く斬り上げは長剣を以て受け流す。分断を目にするなり構えを変えたことからして、再度剣で受けるつもりか。そう読んで振り抜く双腕に力を込めるも――次の瞬間には、驚愕の色が張り付いていた。

 僅かに右へ揺れる幽鬼。変わらぬ軌道を描く刃。手ごたえはあった。漆黒の破片と血飛沫、そして目で追わざるを得ない物体。腕だ。交差する刃は、幽鬼の左腕を穿った――

 それだけだ。

 考えてもみるがいい。幽鬼ほどの猛者が、腕の一本に勝敗を左右されようか。失ったからといって泣き叫び、その場にくずおれようか。
 おまけにこの喪失は、単純な競り負けの末に起きたことではない。あくまで計算され、勝利のための必要経費として差し出されたに過ぎないのだ。

 確かな手ごたえ。視界を遮る血飛沫。掲げられた右腕。一つ一つは小さな要素だとしても、積み重なれば確実に敵の気を引く。
 仕掛けたのが幽鬼ともなれば、瞬きほどの隙も必要ない。ほんの一瞬――狙いに気付かせなければそれでいいのだ。

「つあッ……!」

 左の脇腹に走る痛み。遮られた視界の中、陽の光を受けて煌めく刃。鎧を砕き、肉に食い込む冷たい鋼。
 咄嗟に左手で掴み、これ以上の進行はさせまいと食い止める。力のかかる方向からして、狙いは右の肩までを射程に捉えた刺突だ。まともに受ければ、身体を二分されてしまう。
 暫しの競り合いの後、再び鉄が宙を舞った。どちらの鎧でもなければ、得物でもない。義肢だ。そう、竜騎士の左腕は精巧な模造品へと置き換えられている。
 幽鬼のソレと違って戦闘に大きな役割を持つ故、喪失の痛手は大きいが背に腹は代えられない。一度阻まれた切っ先は、脇腹を数センチほど刺した後、切り裂いて外へと逸れていった。
 幽鬼ほどではないものの、肩の傷の比にならない量の血が溢れ出る。思わず傷を押さえ、数歩後退る――

 が、しかし。

「満ちるために死ぬ……死ぬために生きる、戦う!

なんておもしろい、奇妙な世界だ!!覇ァーッ覇ッ覇ッ覇ッ覇ッ!!!」

 狂笑。尻尾までもがビシビシと地面を打ち据え、面白くてたまらないのだと全身で表現する。
 ひとしきり笑い終えるなり、反撃。腕の代わりに尻尾で剣を束ね、翼を限界まで広げて突進。
 両の得物を身体の側面に沿わせて繰り出すは、粉微塵になるか三枚下ろしになるかの二択を迫る凶悪なタックル。
 炸裂と同時に全ての勢いを双刃に乗せ、あくまで殺傷力を追い求める。技巧の欠片もない蛮行だろうか。勝負を白けさせる禁じ手だろうか。

 否、持てる全てを注ぎ込んでいるに過ぎない。

 幽鬼は既にそれを成している。手傷を躊躇わない姿勢が何よりの証拠だ。そうとあらばどこに出し惜しむ理由があろうか。
 最早恥も外聞もない。翼は雄々しく広げ、尻尾は下品に打ち据える。膂力は限界まで引き出して刃に沿える。
 使えるものは全て使うのだ。そうでなくては飢え続ける。勝っても満たされない。負けようものなら、未練に満ちた魂は永久に地上を彷徨うことになるだろう。

 それを理解しているアーケオルニにとって、命など片道の燃料でしかなかった。

>>魔剣士


【お待たせしましたT T】

1ヶ月前 No.1781

迷う者 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【狭間の世界/狭間の最果て/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

至近からの連続射撃をまともに受け、しかしバビロンは当然の如く止まらない。ヴァイスハイトとしても、こんなモノで奴を倒せると思ってはいない。
血を流しながらも猛るバビロン。変わらず不敵な笑みを浮かべるその男の眼が紅く染まる。"成し遂げようとする意思"だけであらゆる理不尽を踏み越える怪物が、ヴァイスハイトと再び見える。
対して、ヴァイスハイトは……表情こそ固く真剣だが、しかし心の幾何かを、目の前の怪物とは異なる"何か"に奪われている。怪物が楽しげに語る言葉より、何時か聞いた誰かの言葉が脳裏にこびりついて仕方がない。

何もかもを粉砕せんばかりの威圧感を伴って繰り出される拳の連打。一つ一つに先に放たれた銃弾が稚戯に思える程の破壊力のそれらは、一撃受けただけでも痛手になるだろう。
であれば当然、ヴァイスハイトが取るのは避けの一手。全く憎らしい事に、バビロンの眼を直視した彼には、それを可能とするだけの力が備わってしまっている。
顔面目掛けて打ち出される右の二発、上体を左右に揺さぶって避ける。一撃かわす度に耳元を駆け抜ける風切音が彼の脳を揺さぶる。
重ねて繰り出される胴体への左の二発、片足に重心を掛けて滑る様に動いて直撃を回避する。かすっただけで体を持って行かれる圧倒的な膂力に気圧されつつも、追撃を凌ぐために体勢を崩すまいと堪える。
だが五発目の右、体勢を戻すより僅かに早く繰り出されるそれを避けるために無理に重心を移動させたのが間違いだった。待ってましたとばかりに打ち込まれんとする強烈な膝蹴りは、もう避けるに間に合わない。

「――っ!」

腹部への直撃だけは避けなければと、苦し紛れに右足で蹴り出して相殺を狙う。だが両者の力の差は歴然で、受けるどころかヴァイスハイトが一方的に吹き飛ばされてしまう。

「ぐっ……!」

たたらを踏んで後退し、仕切り直そうと――所詮、悪足掻きだと分かっていながら――右手の拳銃を数発バビロンの胴体目掛けて撃つ。
幸い右足の痛みは鈍く、十全に動く。折れてはいないか、或いは、そんな事を気にしていられる余裕も無いだけか。どちらにせよ、直ぐにでも苦痛に倒れるような事が無いだけ上等だろう。

……ヴァイスハイトの動きには未だに迷いが見える。脳裏に過る"何か"を振り切れないまま、仇敵を前に散漫としている。

>>バビロン

30日前 No.1782

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_sxd

【 狭間の世界/狭間の最果て/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 空を切り裂き、地を砕き、海を割り裂くバビロンの拳。
 神話の始まりを自称するに相応しい超人的な身体能力が惜しげもなく行使される。
 だが、それは――まだ慣れていないとはいえ、黄金の果実を喰らわされたヴァイスハイトも同じこと。

 ダン・マッケーニ=バビロンの所持する異能<デュナミス>は他者にも感染する。
 まさしく、朗々と詠唱<ランゲージ>された通り、彼は黄金を喰らった英雄であり、同時に黄金の果樹園の支配者。
 その域に踏み込まされたことにより、以前の戦闘と比べ両者に大きな差は発生することはない。……本来ならば。

「いいねッ、その意気だ」

 連続して放たれる格闘術のコンビネーション。
 右で放つジャブ二発、鋭い風切り音。胴体への二発、掠るだけで致命傷――肉体が削り取られる。
 上体を左右に揺さぶり、更にすり足を駆使して複雑な左右移動を組み合わせることで、凌いでいくヴァイスハイト。
 だが、無理な重心移動を狙ってバビロンが放つは……着弾地点を衝撃で貫く強烈な膝蹴り。

 当たれば最後、内臓が蹂躙されて抉り抜かれる――寸でのところへ、差し込まれるはヴァイスハイトの右足。
 だが、足りない。膂力の差……ひいては、隔絶された威力の差をいいことに、バビロンはそのままヴァイスハイトを吹き飛ばした。
 深黒の大地に転がりそうになるもすり足で踏ん張り、後退して距離を取りつつ、此方へ向けて来たのは拳銃。

「――おいおいどうした? へこたれたわけじゃあないよな?」

 銃声――暗黒空間に鳴り響く。やはり回避をせず、胴体を射抜かれるバビロン――倒れるわけではない。
 衣服は出血により既に真紅へと染まっている。まるで、真上から塗り潰されるかのように。
     、     、   ・・・・・・・・・・・
 されどバビロンは止まらない。銃器如きで俺は死なない、馬鹿げた妄想を実現。
 だってそういう漢の方が恰好いいだろう?


 ――本気で夢を叶えようとする男がいるんだ、今更銃器如きで膝を付いてやれるかよ。


 明らかにヴァイスハイトが押されているこの状況。
 無理もない。ヴァイスハイトの目に宿っているのは迷い。
 ・・・
 精神力――気合だの根性だのという非合理にして理に叶っていない感情こそが直接の力に繋がるのがバビロンの異能。
 両者の間にある、簡単なようでいて根深い溝。精神性を超越し、化け物の領域に至っているバビロンの出力は無尽蔵。

「いや、そうか。……そういうことか、なるほどいいだろう!」

 バビロンが取り出すは、片手で扱うには反動が大きすぎる大型拳銃。
 しかし、彼は片手で持つ。支える手もいらない――英雄はこれも容易く出来るんだから、俺にだって出来るはずだと。
 踏み出す。
 爆――まさに、縮地とも呼べる加速。一瞬で肉薄してみせたバビロンが振るうは、今しがた取り出した"拳銃"。
 ヴァイスハイトの眼前に現れる頃には、それを振り上げて――。

「銃器でやりあおうってことだな!?
 ハハハハハ、なら付き合ってやるよ――見せてくれよ、俺も見せてやるからよ……」

   、    、  ・・・・・・
 ――その頭上目掛けて振り下ろした。

 鈍器でブン殴るのとほぼ同じ要領。当たれば頭蓋骨陥没で済むかはやや怪しい。
 間髪入れずに、バビロンはもう片方のポケット――膨らみより、拳銃を取り出した。

「二丁拳銃ってやつだッ――練習してきたんだ、これでもなァッ!」

 事実上の二丁拳銃スタイル、まさに鬼に金棒と呼べる程の出力発揮。
 相手が態勢を立て直すよりも早くその腹部へと銃口を突きつけた。
 何か大きなものが襲来してきたかのような轟音/大口径の弾丸――迷う男へと、射出。

>ヴァイスハイト・インテグラーレ

30日前 No.1783

理”想”の騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_rxQ

【狭間世界/大雪原/グランドナイト】

属性が付与された針による絨毯爆撃、本来ならばその場に居て生き残れる者など居ない、まさしく"必殺"の大技である。
だが、それを見ても相手は取り乱すような事はしない、ここまで戦ってきたのだ、当然の事だろう。 だからこそ自分も死力と言う物を尽くす価値がある。
剣を振り下ろした瞬間、ツバキはこちらに向かって一気に距離をつめてくる、おそらく、この広域攻撃の中で唯一の「攻撃範囲外」にあるのが自分の周囲であると気づいたのだろう。 その上で、大振りな動作で隙を晒した自分に接近攻撃を仕掛けるには絶好の機会と言える。

だが、彼女も流石に無対策と言う訳ではない、口角を釣り上げ、まさしく「眼の色を変えた」相手に怖気ずく事もなく、身体に備わった魔力を二つの魔剣に流し込み、迎撃用の技を使う。
魔力が注がれた二本の魔剣がそれに反応して、火炎と氷塊をほとんどグランドナイトが身体を動かすこともなく、ほとんど一瞬の内にツバキに向かって襲い掛かる。

しかし……それは迎撃にはならなかった。
本来であるならば、グランドナイトの攻撃が当たるほうが早く、相手の攻撃を中断させる事ができたのだろう、だが、この場においては相手の一撃の方がずっと早かった。
咄嗟の判断が裏目に出るも、すぐにグランドナイトは素早く後ろに後退して敵の攻撃を避けようとした、ただの回避ではない、アイスソードから撒き散らされる氷の力で相手の動きを妨害しつつの物だ。

幸いにして、それが功を奏す形で、胴体が一刀両断されることは防いだが、それでも、大きく、また深い傷が彼女の胴体に刻み込まれた。

「くっ……っっ!!」

そして、ほとんどその大きすぎる傷だけで勝負は付いているのだが、ここで引き下がるつもりもなければ、相手がわざわざ逃すはずも無い。
ソレミアから言葉が掛けられる、ならば。

「いえ……私など、この世界から見れば幻のような物、気負いしないでください。 私個人としても、勝負の結果で恨むなどと。 ですが、私は勝ちたいッ!!」

その言葉と共に彼女はフレイムタンを地面に突き刺して、巨大な火炎を呼び起こす。
傷を負って尚抵抗する様は立派な物であったかもしれないが……この状況の前では、ただの付け焼刃にしかならなかった。

数秒もすれば、火炎は水銀に押し負け、そのまま勝敗は決した。

「なるほど……こうなりますか。 いえ、必然だったのでしょうか。 まぁ、いいです、負けたのは心苦しいですが、これほどならば――」

声は確かにその場に響いた、だが、ソレミアが放った攻撃が消えた頃には、グランドナイトもまた、そこから姿を消していた。
隠れて一撃を狙っている訳でもない、ただ、負けてこの場から消滅したのだ。

かくして、騎士は敗北した。

>ソレミア・ラガルデール ツバキ・オオトリ

29日前 No.1784

奇術師は謳う @x5mas☆sECYEVcUXiI ★iPhone=zKMThhEDc1

[狭間世界/終末→一時移動中/【リプレイサー】]

「……こいつは、なんとまあ。」

 空が荒び、魔が唸り、土塊が跳び。光が差し、闇が貫き、神速が穿ち。砲塔が灼け、虹が降り注ぎ、それでも神は佇んでいた。風の猛りには風の嘆きを以って、魔の唸りには魔の涙を以って、奴はひたすらに人々の足掻きを否定した。あの御神体に返す意趣なんざあるかは知らないが、それでも敢えて言うなれば『意趣返し』というヤツなのだろう。或いは、試練の壁の不壊なる所以を示しただけかも知れないが。

 なるほど、コイツは人が絶望するに相応しい。剣を振るって得られたものが些かの身の疲れだけだとは、馬鹿馬鹿しいにも程がある。最初からそうと分かっていたのなら、全て放り出していた方がよほどマシだった。抗うことが苦難でしかないのなら、最初から全てを諦めていた方が余程“賢い”選択だった。

 夢の彼方で奴は問う。お前は何が為に抗うか。何を思い、何を抱いて此処に居る。己の罪過に答えを示せ。愚昧と修羅に堕ちてまで、苦役に挑む理由を示せと。


 しかし――人々の認識(せかい)というものは、諦観には若すぎる。そして、かくいう奇術師の心情というやつも、悠々と楽に逃れるほど老獪でありはしない。最初から『無駄』だとか、抗っても『意味が無い』だとか、そんなことまで識れるほど、人は世渡りの“道理”を賢しく弁えてなんかいないだけなのだ。

 であれば、元より示せる理由などただ一つ。『諦めたくない、諦められないから、諦めない』。答えなどそれで十分。酷い喉の渇きの他に、問題などありはしない。勇士達の渾身が徒労に終われど、それがほんの僅かでも変化を齎したのなら、道が絶えることは決して無い。奇術師は地面のダガーを拾い上げ、『なんでもないさ』と言いたげに再び両手を構えてみせる。


 そうら、早速道が拓かれたろう。非力極まる奇術師の名の下、世界の壁をも隔てた先で、一つ奇妙な縁が繋がった。逢魔時の赤光に舞う大鴉は、いつかの“魔女”がそうしたように、神に仇なす“賢者”の姿を象って地に降り立った。
 金の瞳をチラと覗けば、視えるべきものは其処にある。千里の瞳が語るには、白鬚か、太陽か、或いは“アレ”の置き土産。とかく彼は味方に分類されるらしかった。《観測者の瞳》は対象が為してきたことを識る力。故に彼から視えることは決して多くはないが、しかし。

「そういうお前さんは、“アイツ”の差し金ってワケかい。それじゃ早速、茶会でもしながら自己紹介を……って言いたいとこだが、ま、ソイツはこの後にでも考えよう。そら、来るぜ! 上方注意だ!」

 『問題ない』、そう判断する。きっと、彼は信頼に足る存在だ。『歴史の重圧』に堪えうるほどには。奇術師はその“賢者”の背に向けて、ほんの少しだけニヤリと笑みを返してみせた。


 さて、笑ってばかりもいられない。熾天を仰げば、ノイズ塗れの天蓋が空を劈き……否、『空間そのもの』として此方の頭蓋を叩き潰しに迫っていた。余りに突拍子も無い理不尽は現実味を薄れさせ、かえってそれが焦燥の発露を促してくる。
 第一に立ち向かうは絶対の障壁。空間へと氷河を築き、絶対の概念すら清流の内に封じ込めた金剛の結界は、しかし。ほんの一分ほどの拮抗すらも経ることは叶わず。概念は意味を喪い、粉微塵に打ち砕かれた。空間は尚も迫り、止まる気配はまるで見られない。

 が、『問題ない』、そう奇術師は判断する。空間を防ぐなど、それは完全なる概念でしかあり得ないことだった。だが、あの氷塊は食い止めた。ほんの数瞬の事であれ、障壁は概念を形而下にまで叩き落としてみせたのだ。ならば何を嘆くことがある。盾は明確に機能を果たし、次への道を切り拓いたのだから。

 あとはこちらで処理をすれば良いだけだ――言うだけならばなんと簡単であることか。大幅に威力を削がれても尚、奇術師にアレを防ぐ手段は無いらしかった。相手が空間そのものとなると、十八番の【再置換】も機能不全を起こし得る。加えて密度が圧倒的だ、身を滑り込ませられる場所が何処にもありゃしない!

 受け止めるのは駄目、避けるのも不可能。諦めるなど以ての外。それじゃどうするか、解決法など無い問題だが、それでこそ奇術師の日常茶飯事。道理が通せぬというのなら、無理矢理にでも“奇跡”を起こしてみせるとも。

 何も問題はない。確かにこの地に逃げ場は無いだろう。が、それは僅かなこの空域にのみ限られた話。幸い、裂目の入口から終末の園に掛けては、全て一続きの『世界』。天の崩落が過ぎ去るまで外領域に退避して、頃合を見計らって戻ってくれば良いだけだ。ここに集っているのは、全員が相応の実力者。勢いの削がれたアレならば、何とでも耐える算段はあるはずで――――


――そこまで考えてみて、ようやく気がついた。

「………なあ、嬢ちゃん。」

 奇術師が知る限り、この空域内に機械の類はほぼ皆無。となると……《眼》の情報が確かなら、多分、彼女はこの攻撃を耐えられる手段を持っていない。恐らく、彼女はこの攻撃から逃げられるだけの異能を持っていない。或いは、彼女と並び立つカラクリが威勢良くブッ飛ばしてくれると期待したいものだが、それだけでは何れ“底”をつくのが見えている。

「グレードF−、落第圏内の奇術師から一つ質問させてもらうが――」

 視線を合わせることはなく、奇術師の視点は時の氏神に据えたまま。それでも言葉は明確に、一人の少女に向けられる。誰よりも己の中の恐怖を認め、それでも必死に堪えている存在に。己の非力を知りながら、それでも懸命に立ち向かおうとする存在に。

 杞憂であれ、何事もそう願うのは容易いこと。それでも後悔は先に立たず、終わってしまえば後の祭り。そんな光景はもう飽き飽きなんだ。なあに、コイツはほんの老婆心。ほんの悪戯心を込めて、勝手に少し状況を弄ってやろう。仕掛けるならばきっと今、絶好のタイミング。

 だから、今度は。

「――奇術の助力は必要か?」

 この俺が、道を拓く番だ。


 問いかけを放つとほぼ同時、奇術師の姿は虚空へと掻き消える。たとえ見回してみたとしても、終末の園に彼の姿は無いだろう。それもそのはず、今さっき奇術師は、自らの肉体をこの空域から【転移】させたのだ。

 恐れを為しての敵前逃亡? 否、そう捉えるのは時期尚早。奇術師の消失から一秒足らず、とある少女の背後から、コトリ、と小さな音が鳴る。カチカチと音を立てて動くソレは、7000年代にはちと古いデジタル式の電波時計。
 一体どうしてそんな物が? 疑問が湧き出てくる前に、も一つゴトリと音が鳴る。時空防衛連盟にも配備されている、如何にもな形状のコンピュータ。ガタリ、次に音を立てたのは古風なアンテナ付きの通信機。ガタリ、コトリ、バタリ、カラン――何も無いはずの空間から、あっという間に十数個、大小様々の電子機器がゴロゴロと転がり出してきたではないか。

 理由など語るに及ばず、然りとて語らねば判るまい。『必要そうだったから』、“兵役逃れ”の奇術師からはそうとだけ答えよう。狭間世界の入口辺りに踏み入っていた、補給班からの一方的な贈り物。手当たり次第に送ったもんだからほんの気休めにしかなるまいが、無いよりはずっとマシだろう。さて、コイツをどう使うか……それはお前さん達が決めること。

 盾が虚空に滅ぶとも、全てが虚構に還るとも、未だ道は潰えない。待ってろ、すぐに土産でも持って帰ってやる。次へ、次へと道を繋げ。道の果てに待つ未来を信じて――!

>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、キラー・テンタクラー、シエンタ・カムリ、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

29日前 No.1785

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_sxd

【狭間世界/時の墓標/魔剣士】


長剣から伝わる手応え、それから魔剣士が感じ取るは浅いの一言のみ。鉄を砕き、柔肉を穿つ中で心の臓までには至らぬ。阻むは人間の、いや仮初の腕。人の作りし人の腕、それが長剣を掴み塞き止めていた。
やはり、限界を越えてくる。そう魔剣士は歓喜する、確かに一瞬であれど空白が生まれ、それを正確に突いたのだ。並どころか名立たる戦士であろうとも、容易く屠れるだけの虚を突く一撃。それを無傷でなくとも、手傷で抑えている。
だが、受け止める気ならいざ知らず、咄嗟の防御で止め切れるほど魔剣士は鈍らではない。脚に力を込め、再度深く突き刺さんと押し通せば拮抗は容易く崩れる。結果、金属のそれは耐えきれずに宙へと舞う。
しかしだ、長剣は臓腑を犯すことなく人間の肉体を僅かに裂くのみで逸れていく。直前にずらされた、そう判断する。なれば素早く剣を引き戻し、懐に入った代償を受けるために再度構える。それは人間が後退るのと同時であった。
肩の傷よりも深く、内臓が集中する故に血が多く流れる。流石の人間も傷を押さえている、だからと言って戦意が失われたか?答えは本人に聞かずとも魔剣士は理解している、むしろ逆だ。これでこそ、滾る。
狂ったように笑うそれは歓喜であり、愉悦。魔剣士が先に吐いた言葉を噛み締めるように反芻する、奇妙な世界だとも、そんな奇特なものに意味を見出した人間と魔剣士こそ、最も奇妙だ。ただ笑いと表現するには烏滸がましい、歓声が響く。
全身で悦を示す、尾で地を叩くそれは続く攻撃の予兆に過ぎない。残る右腕と尾で剣を携え、身体の側面へと構える。背の大翼を雄々しく広げ、その勢いを身体全てに乗せる突撃。体勢を崩す生易しいものではない、屠る為の竜騎の突進。
間合いが後数歩あれば長剣を前へと構えるだけで、ただ串刺しにする容易いものであった。だが、そんなものはないのだ。長剣を振るえば側面の剣に弾かれそのまま四散しよう、生半可な回避や退避は逃げた先から穿たれよう、尤も後者だけは有り得ないが。
なれば魔剣士は身体を人間に対して水平にずらし、長剣を逆手に持ち、城塞を踏みしめ突進の衝撃に備える。真面に喰らい、刃をその身に受ければ致命傷になろう。だが、刃さえ受けなければどうにでもなる。
故に、迫る人間、その側面に沿うようにして構えられた刃の狭間。人間の胴体の幅に魔剣士は身体を滑り込ませる、その最中刃が掠ったのみで鎧が穿ち吹き飛び、欠片となって飛び散るも意に介さず。例え腹と背に一文字が深く刻まれても同様。
耐えるべきは次の瞬間、攻撃への布石の為に腕を失った左肩で衝撃を受け止める。鎧もなく、傷口を曝け出すのみの場所であってもそれが最善手であり、人間を喰らう為の有効な手段であれば何ら問題はない。
そして、人間と魔剣士の影が交わり―――

「――――――ッ!」

―――拮抗した、いや魔剣士が徐々に押されていようか。
体躯の差は当てにはならぬ、幼子と見紛えるほどの魔剣士であってもその身に秘める力は尋常ではない。これまでの戦闘を顧みても真っ向から打ち合っての力負けはない、その魔剣士が今人間の突撃を受け、確かに押され続けている。
左肩周辺はさも紙屑のように拉げ、首や胸元にまで潰れる様に肉が皴寄せられている。未だ弧を描く口元からは瞳よりも暗く濃い紅が溢れ出て、紅き髭のように彩っている。そして未だ尚、人間の突進を受け続け、城塞を脚で削りながら機を見ていよう。
瓦礫の破片を撒き散らしながらも人間の勢いが僅かにも緩む気配はなく、刃を真面に喰らっていればそれこそ身体は四散していたと断言できる威力。だが、魔剣士はまだ生きているのだ、何の策もなく受ける訳はない。

「善い!好い!世は全て死へと向かう、その果てに満ちる事の何と素晴らしき事か!」

血に染まった口内を人間の眼前に見せつける様に、大口を開けて歓喜を示す。言葉には喜色が乗り、目は見開かれ、口は三日月を描く。生きている実感、死が迫る確信、そして人間を屠ると言う執念、その全てが悦を色に染まり行く。
その為には何も惜しむことはない、同じ思いで殺意に溢るる突撃を人間も行ったのだろう。否定などするものか、生きてさえいればどんな手でも使えよう、卑劣だの卑怯だのは結果の先にしかない。今この瞬間では技の一つだ、故に―――

―――魔剣士の背後に広がるが、城塞の崩落した場所であっても何の問題はない。
それは魔剣士が二度、人間に読まれた故の余波。一度は大崩落を起こし、二度は直線状に城塞を断ち切った。二度目の後に背後に回られた故、魔剣士が後退できぬ状況となっていた。それを今は人間が押し込む形で崩落へ導いているのだ。
従来ならば落下は戦闘の支障が出る程度にしかならない、しかしここは狭間世界、その中で敗れ去った者が集う墓場。この城塞の下に広がるが地面である筈がない、何処かもしれぬ時空の果てに繋がっていよう、運が良ければここに留まれるやも知れぬ。
無論、魔剣士の狙いはそこではない。地を無くし、中へと躍り出た一瞬に攻め立てる。翼があれど羽ばたかねば宙へは飛べず、翼を広げれば滑空は出来ようと体勢を崩せば墜落しよう。だが、それは魔剣士も同じこと。
宙へ躍り出た一瞬は此方も無防備に違いはない、読みの先を超えられれば死するは我が身。加えて空中では明らかに人間に利がある、未だ対処の札を隠しているとは言えど、それを差し引いても空中での勝算は低い。

「なればこそ、私は貴様を喰らうのだろうな。」

一転して静かに呟いた瞬間こそ、その時であった。魔剣士の右脚が宙に躍り出れば、残る左脚で跳躍する。この一瞬、崩落の真上で人間よりも空に近い場へと魔剣士は存在していた。宙へと舞う朱交じりの金糸は、まるで天の使いのようでもあった。
その天使は逆手に携えた長剣を、慈悲もなく全てを乗せ振り下ろす。狙うは首と鎖骨の間、臓物を穿ち串刺しにするこれもまた殺す為だけの一撃。空中での上部からの攻撃、あらゆるを乗せた重撃、足場のないこの場に防げる手段などありはしない。
それでもだ、魔剣士も人間も死してはいない。生きているのだ、まだ燃やせよう、腕はまだ動く、脚も動く、腕が千切れても口で剣を握ればよい、何なら足でもいい、ああそうだとも、生きてさえいればどうにでもなる。
命ある限りは不可能など存在しない、全てを投げ捨てても命さえ残っていればどうにでもなる、だからこそ命を燃やし続け、欠片ほどになるまで削り続け、全てを使い切った時満ち足りて死ぬのだ。
であれば、まだ互いに満ちてはおらず、命も有り余っている。
それこそが血を流す理由になるならば―――

―――その剣は未だに血を求めているのだ。

>>アーケオルニ・ランドグリーズ

28日前 No.1786

Another Messiah @zero45 ★pB1cyTl1jZ_6UX

【狭間世界/血塗られた島/海底洞窟/ファントムメサイア】

 人の形を模した存在。言うなれば"ヒトモドキ"と呼ぶに相応しい正体を表した魔人は、強大なる魔力を宿す所以たる精霊の力を解き放ち、一時の遊戯の終わりを宣言すると共に"風"となり、不可視の刃を揮って空間を蹂躙し尽くして行く。迸る剣閃の数は二十一、同じく神速を為す騎士には躱され、翡翠色の刃に迎え撃たれたが、残る斬撃が鋼鎧を、少女の身体を引き裂いて行く。
 そして再度その姿を露わにした時、騎士の次なる策として放たれた深緑の風が強襲を仕掛ける。総数七十に渡る怒涛の連打を前に、魔人もまた神速の剣閃で悉くを弾き返し、刹那の内に総てを相殺して見せた。
 だが、その間に肉薄して来た清太郎の動きから逃れるには至らない。初動を間に合わせるだけの時間の余裕はあり、確実に避けられた筈の状況にも関わらず。

「魔族め、小癪な真似を……!」

 魔人の足裏から地中の深くへと張り巡らされる根。命に代えても主を守り抜く従者の覚悟を宿した少女の策が、その初動を封じ込め、断崖絶壁の窮地へと立たせたのだ。その結果、彼女の身体は清太郎の展開したフィールドへと入り込み、反応した魔力を抑制しようとする効力が即座に発揮されて行く。ほんの一瞬、ただそれだけで魔人は"詰み"へと追いやられる事となる。
 しかし、彼女は執念深く、諦めの意志を見せようとはしない。僅かな猶予の内に、自身を構成する魔力を変質させ、魔力に近しい"別の何か"へと変化させる事で、抑制の働きを強制的に中断させて、足裏の根を強引に引きちぎって後退を開始する。
 "別の何か"へと変化させた弊害か、その動きは先程と比べてやや劣る。魔人にとって、精霊の力にとって、最適格の形が"魔力"であったが故だ。

「誰にも邪魔させはしない……この力で、この世界を、破壊し尽くすのだ!」

 殺意を昂らせながら、魔人は叫ぶ。自らの周囲に膨大な水を湧き起こし、万象を洗い流す津波として三人へと仕向け。それを上回る勢いで水上を駆け抜けながら、風となって不可視の刃で其々を切り裂かんとする。そして津波が過ぎ去り、刃を振り終えたならば。その場に静止したまま、大地の力で巨大な地割れを引き起こし、遥か奈落の地底にまで三人を引きずり落とそうとする。
 彼女は今、最大限の応酬を持ってこの戦いに幕を引かんとしていた。運命は果たして勝者の座をどちらに明け渡すか――それが決する時は、近い。

>ゲイル・ベネルド 橋川清太郎 ロコ

26日前 No.1787

中二病は世界を救う @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_rxQ

【狭間世界/終末/シエンタ・カムリ】

シエンタは弱い。勿論、能力を持たないそんじょそこらの一般人よりは強いだろうが、この場においてはまず間違いなく、足手まといにしかならない。それは言い訳しようのない事実だ。
彼女は自らの能力がクロノスには通用しないであろうことを、本能的に理解していた。真正面から戦いを挑んだところで、結果ははじめから分かりきっている。
だからこそ、シエンタはこのような回りくどい手段に打って出たのだ。後方支援に徹することこそが、この戦いで自らの力を活かす唯一の方法。一人戦線を離れ、彼女はそのための準備を進める。
幸いなことに、時空神の注意は前線で戦っている者達が引き付けてくれている。この分であれば、自分に攻撃が飛んでくることはない、と思っていたのだが……やはり現実は、そうも上手くはいかないようだ。

「物理法則も何もあったものじゃない! こんな奴が相手だなんて、事実は小説より奇なりだね!」

轟音を立てながら落ちてきたのは、歴史そのもの。それがどれほどの重みを持っているかなど、想像に難くない。押し潰されれば、一瞬で死に至るのは確実だろう。
防御に定評のあるシフォンとやらの魔法ですら防げていないことを見るに、この攻撃の規模は凄まじいものであるらしい。周囲には機械もない状況、シエンタが単独でこれを打破する方法はない。
もはや、万事休すか。そう思われた矢先、不意に自分に向けた声が響いてくる。こんな大変な時に一体何のつもりなのだ、と彼女は少し怪訝そうな表情で声がした方を向く。
だが、そこにいるはずの彼はいなかった。奇術の助けだと? その意味を考えるよりも早く、シエンタの背後で小さな音が鳴る。振り向けば、そこに落ちていたのは、古ぼけた電波時計。
それだけではない。彼女が怪しんでそれに手を伸ばすよりも早く、ゴトゴトと音を立てコンピュータが、通信機が、電子レンジが、冷蔵庫が。ありとあらゆる電子機器が降ってくる。
なるほど、これを使えと、リプレイサーはそう言いたいのか。にしても、どうやって持ってきたのだか。彼の言葉の真意を理解したシエンタは、思わず呆れたように笑いながらも、次の瞬間には自信満々な表情を浮かべる。

「フフフ……クハハッ……! これだけあれば、ボクの真骨頂を披露することが出来そうだ! 礼を言おうじゃないか!」

気取ったような、気持ち悪い笑い声を上げながら、シエンタはそれらの電子機器から吸い上げられるだけの電子を吸い上げ、剥がれ落ちてくる天空へ向けて射出する。
それは、誰もが見たことがないと断言出来るほどの、強烈な雷であった。両手から放たれた稲妻が、勇者達を押し潰そうと迫ってきていた歴史を、尽く粉砕していく。
仮にもシエンタは、電子と会話出来る少女。そんな能力を持った彼女の"零距離"に、これだけの電子機器があるとなれば、その攻撃の威力は推して知るべし、ということだろう。
完全に天空の脅威を消し去るとまではいかなかったが、これで味方もだいぶ動きやすくなったはずだ。そしてこの電子機器達には、もう一つ、してもらわなければならない役目がある。

「ジャンクで作るより、ずっと効率的だね。おい、君! 聞いているのか! まだあるなら、それを全部寄越すんだ!」

いくつかの電子機器を解体し、取り出したパーツで、自分の背丈ほどのアンテナを一つ完成させたシエンタ。だが、これだけでは足りない。彼女の計画を実行するためには、これと同じものがあと最低三つは必要だ。
シエンタはクロノスの丁度真後ろにアンテナを突き刺すと、どこにいるのかも分からないリプレイサーに対して話し掛ける。戦闘力という意味でも、素材という意味でも、電子機器は沢山あった方がいい。
敵の右横へと向けて走るシエンタ。それほど遠い距離ではないというのに、彼女は今にも死にそうなほどに息を乱している。こんなに走ったのはいつ以来だろうか。少なくとも、ここ数年は運動などしていなかったので、かなり堪える。
そこにあったジャンクの電子機器を拾い上げ、それを持って元の場所へと戻るシエンタ。運動不足のため、足がもつれ彼女は転倒、激しく顔を地面に打ち付けた。
だが、今の彼女の闘志を折るには、その程度では不十分過ぎる。泥まみれになりながらも、お気に入りの服を真っ茶色に染めながらも、彼女はこの場にいる他の皆のため、己の得意分野で奮戦を続ける。

>リプレイサー、時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、キラー・テンタクラー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

24日前 No.1788

もう一つの秘剣 @sable ★05fpQN9itV_keJ

【狭間世界/時の墓標/アーケオルニ】

 浅い、確かに傷は浅い……が、一度死の淵から蘇った身には重すぎる。それも縫い合わせたばかりの腹とあっては、思わず押さえよろめくには十分。
 だが、この程度で終わるはずもない。咄嗟の判断で生命は守られた。片腕に加えて得物まで健在とあっては、むしろ恵まれすぎているといっていい。
 精神面に関しても同様だ。闘志はもちろんのこと、敵愾心すら遥かに超越した感情が燃え滾る。熱い勝負がしたい。その果てに勝利を掴みたい。
 相手が幽鬼ならば、例え負けてもこの魂は満たされよう。その上で多くを望んでしまうのが人情というもの。当然だ。
 正と負なら正。光と闇なら光。双方に意義があると知ってなお、より好ましい方へと手を伸ばす。地を蹴り、翼を広げて掴み取ろうとする。
 足掻けば足掻くほど、勝利は輝きを増し。つぎ込めばつぎ込むほど、敗北すらもが潤いを湛える。潤いは滝となり雫となり、骸を満たしてくれる。

「ああ!死を待つなんてシケてやがる!」

 激突。ヒトも魔族も飛び越える力を秘めた幽鬼。ヒトと魔族が混ざり合い、歪に固められた竜。その競り合いは、意外な展開を迎えていた。
 僅かにだが劣勢に立たされる幽鬼。拉げた左肩。波打ち皺寄せる肉。口元から滴る血は、紛れもない重撃の証明。
 鎧、肉体、背後の城壁……全てが砕け散ろうと、戦いは続く。生きているから。死んでいないから。
 後に引けないことが撤退の言い訳になろうか。否、進撃の燃料へと昇華されるのみだ。それを証明せんばかりに幽鬼は笑い――羽ばたいてみせる。
 地に残った片足での跳躍。空を目指す様は、竜よりも竜らしく。天を舞う姿は、さながら天使のようで――

 ――最後はハゲタカの如く襲い来る。

 それは己の持てる全てを乗せた一撃。急降下と共に切っ先を突き立て、獲物を穿ち葬り去る。
 防御の手段はおろか、逃げ場まで奪われてしまったのだ。最早九死に一生などという、生温い表現は相応しくない。
 ただ敵を殺めることのみに振り切れた絶技……十死零生の修羅場を生み出す、細くも剛を体現した鋼の柱。

(命あっての戦い。死して初めて得られる充足。

アタシは――)

 崩れゆく狭間の地。宙に投げ出されるなり、翼を開く。右手に構えるは刃。尾にしかと握らせるも刃。

「生を選び、お前を喰らい尽くす」

 嫌に冴えていた。痛みと熱の波の中、深みへ没したはずの理性が、この瞬間だけは主導権を握り返していた。
 最も、その理性ですらもが死闘を望んでいたのだが。それでも妙な冷静さのおかげで、見るべきところがより深く見える。
 幽鬼の降下速度。迫る剣先の正確な位置。狂えど熱すれど死に絶えはしない理性が、最後の最後で"生への執着"という最大の力を引き出した。
 それも敵に背を向け、武器を捨てて逃げた末の帰還ではない。真っ向から立ち向かい、敵を叩き伏せた上での凱旋だ。

 突き上げる刃。切っ先に切っ先をあわせる。刹那、崩落の最中にある大地を更に細かく砕くような、暴虐的な衝撃派が迸った。
 強烈な痛み。砕ける――刃も、腕も。絶対の死をもたらす急降下。その切っ先を弾き返した代償に、竜の右腕の骨は粉々に砕けていた――

 ――が、しかし。

 間を置かずに突き出される靭尾。握り締めたもう一振りの得物は健在だ。横に倒した刃が狙うは左胸、激しく胸板を叩いているであろう心の臓。
 豪速の刺突。勢いを殺さぬまま刃を縦へ返し、断ち裂かんと切り上げる神速一斬。瞬き一つも許さない間隔に詰め込まれた、絶技二連。

 突きを始点に死という名の破滅をもたらす秘剣、それこそが――

  ツバメ
「突破滅返し」

>>魔剣士

24日前 No.1789

ジェノヴァの風 @sable ★05fpQN9itV_keJ

【狭間世界/血塗られた島/海底洞窟/ゲイル・べネルド】

 勇者の本性、それはヒトならざる魔の結晶。精霊を従え、その魔術を思うがままに操る彼女は、既に人間などという小さな器に相応しくない存在に変貌していたのだ。
 空間を、物体を、敵対者を蹂躙する風――正確には刃。回避し迎え撃つも、味方への被害を抑えるには至らなかった。引き裂かれる鋼鉄、魔族といえど血の通った皮と肉。
 圧倒的な手数を以て行われた反撃も、怒涛の剣閃によって全て防がれてしまう。だが、続く二人までをも阻むことは能わなかったらしい。
 展開されるは、魔力の作用を抑制する領域。最終手段にして最善手だ。肉体そのものが魔力で構成された魔人にとって、これ以上になく刺さるに違いない。
 問題は如何にして"詰み"へと持ち込むかだ。青年の肉薄は図らずも挟撃となったが、魔人の動きを封じ込めるには不十分というもの。

「見下し嘲ったはずの魔族がお前を追い詰めた。

勝負に"絶対"は無い」

 詰めの一手たるは、伏兵の如く張り巡らされた木の根。地中より忍び出で、魔人の抵抗を否とする。
 たった一つの命に代えて、大切な主人を守り抜く……悲痛でも無謀でもない、実力と勇気に裏打ちされた決意が成しえたこと。
 今こそ、青年の奥の手が牙を剥く。その成果は目に見える形で現れた。疑うまでもなく、効果覿面だ。
 それでも諦めない魔人は、魔力自体を変質させるという離れ業で窮地を脱する。今の彼女は、純粋な魔力とは明らかに違う、別の何かによって構成されていた。
 生き延びたとはいえ、代償は小さくないはずだ。最適解から逸脱したとあっては、戦闘に多かれ少なかれ支障が出てもおかしくない。
 これは千載一遇の好機。ここを突く、いや突き崩さねば勝利はない。魔人には立ち直る時間を与えてはならないのだ。

「いい顔になったな……俺達と同じ顔だッ……!」

 激昂。殺意、敵意、必死さ。あらゆる感情を隠そうともせず、吠え叫ぶ魔人。あの余裕も、嘲る笑みも、今や跡形もなく消え失せ――敵対する我々と同じ顔になった。
 同じ土俵へと引きずり降ろした、他でもない証拠だ。ますます今が勝機との判断に確信が持てる。持てるのだが……先ずは怒りの猛襲を耐え抜かなければ話にならない。
 天地万物を無へと還す荒波。受け止めるなら、同じく一切合切を消し飛ばす突風だ。全身全霊を込めての迎撃。しかし、どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだった。

(くそっ……この程度は……!)

 決壊。間もなく濁流に飲み込まれる。全ての魔力を集結させ、なんとか押し流されることなく持ちこたえるも、味方の支援は全くと言っていいほど出来ていなかった。
 それにこの程度で魔人の怒りが収まるはずもない。立て続けに振るわれる風の刃が、脆弱なヒトの身を容赦なく苛んでいく。
 出涸らし同然の防御はいとも容易く打ち破られ、その最中に愛刀までもが失われた。砕け散る。細く美しく鍛えられた鋼が。騎士の魂が。
 血反吐と今にも途絶えそうな呼吸が、傷の深さを物語る。あらゆる抵抗の策を奪い去られというのに、なおも攻撃は終わらない。
 大地をも隷従させる力は、最早神権も同然。叩き割られた大地が何よりの証拠。一度落ちれば二度と這い上がれない、死という名の奈落が口を開けて待ち構える。

 絶体絶命。立ち上がるなら、立て直すなら今しかない。舞い戻るのだ。宿敵の眼前へ。奈落とも冥土とも縁のない、陽の光の差す地上へ。

(地上、に?)

 ふと、淡くも確かな疑問が浮かんだ。どうして自分は、地上なんかに戻りたいと願うのだろうか。何か大切なことを忘れている気がする。
 自分にはもっと相応しい舞台があったはずだ。自由で果てしない、どこまでも続く世界が。

 そうだ。思い出した。その世界の名は――

「空だ!」

 強く叫んだ瞬間、何かが目覚めた。温もりの中に秘められた、獣のような強かさ。耳に、心に囁きかけてくる。全身に力が流れ込んでくる。
 例えるならそれは、安らな眠りに就くような心地よさ。もう恐れることはない。無限大の空に翼を広げ、どこまでもどこまでも飛んでいこう。

 諦めず立ち向かう三人の勇者。彼らの背中には翼がある。例え嵐が吹き荒れても、挫けず飛び立つ心の翼が。

 彼に宿った新たな力――それは風の精霊魔法。魔人に反旗を翻すに足る、願ってもない最高の力。

「ヴォルテックゥ……ストライクッッッ!!!!!!!」

 地の底より吹き抜ける深緑の風。ゲイルのみならず、青年と魔族の背中をも強く押す。その勢いに身を任せ飛翔し、腰に提げていた"もう一振りの剣"に手をかける。
 他でもないフロレの形見だ。かつての栄光と潔白を塗り潰す、底の見えない漆黒。それでも構わない。中世を、いや全ての時空を襲う脅威を跳ね除けるべく、今一度正義の刃として振るわせてもらう。
 身に宿る力の全てを注ぎ、練り込み、やがて刀身を中心とした超巨大台風が巻き起こる。本来なら人の身には負えない、天を衝き崩そうかという烈風の柱。
 高く掲げ、振り被り――突進。風より速く、雲より高く。

 神速を超えた超神速。勢いのままに叩き斬った。

 ジェノヴァの風、吹く。

>>ファントムメサイア、橋川清太郎、ロコ

24日前 No.1790

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_iGf

【狭間世界/時の墓標/魔剣士】


―――魔剣士と言う存在を語ろう。
それは魔剣を扱う者、そして魔剣そのもの。一度抜けば全てを殺すまで鞘に戻らぬ魔性の剣、それが鞘を失い、それでも尚血を求め続けた。剣には振るう物が必要だと、魔剣を魔剣たらしめる存在として魔剣が生み出した担い手。それが、魔剣士だ。
ある世界を朱に染めようと満たされることはなく、幾度も世界を跨げども一向に満ちる様子はなく、時と共に飢えるばかり。戻るべき鞘がないのならば文字通り全てを殺そうとも、きっと満ちはしないだろう。それでも胸躍る死闘を繰り広げるものは、最初は居た。
しかし、時の積み重ねは存在の強度を増し、奪い続ける魂の重さは存在を強大にしていく。剣技も同じこと、数多を見て取り入れるものもあれば発展させもする、繰り返すうちにただ満ちぬ飢えを僅かに慰めるだけの作業となろう、それが強者であってもだ。
次第に、求める強者の中には死の淵まで追い詰められた生者を求め始める。単純な話だった、弱者が追い詰められた時に魔剣士に手傷と言えど与えたのだ。これが強き者ならば、どれほどだろうかと。そうして、繰り返すうちにまた作業へと戻りゆくと言うのに。
時の永さは既に数える必要すらなくなり、奪った魂など最早覚えてなどいない。魔剣士の前に立つものは悉くが朱に倒れ伏す、たまに相見える強者も拍子抜けする者ばかり。その感傷を抱くのにすら飽いて来た頃に―――龍と人間がとても甘美に見えたのだ。



それは、走馬燈だったのだろう。これほどまでに死が近付いた死闘において珍しくはない、されど魔剣士においては初体験の事象。動揺はない、ただただ、歓喜するのみだ。人間が、これほどまでに自身を追い詰めている事実に。
見よ、この瞬間を。宙に躍り出る一瞬、その隙を狙った魔剣士の刺突に合わせるは同じく人間の刺突。翼を広げ相対するは濁らず絶えぬ執念、死中に活などではなく死して殺すとまで感じる強大な意志。互いの僅かな生が潰れそうなほどに衝突する。
先に砕けたのは刃だ、それでも離さずに魔剣士の切っ先を弾くために耐えていた右腕も砕かれた。これで人間は両の腕を失った事になろう、しかしこの戦いにおいて、いやこの瞬間においては魔剣士こそが追い詰められている。
空中での攻防、空では決して自由に動けぬ魔剣士にとってこの刺突を逸らされたことは何よりの隙だ。それを理解しているからこそ、逆手に持つ長剣を腕ごと身体へと引き、人間の首を背から断つために既に動いている。
だが、魔剣士が気付かぬはずがない。人間の剣は右腕と、尾にあることを。そして、どれだけの速度で反応しようと、どれだけの技量を持って隙を消そうと、狙いを絞り貫くために放たれた技に後の先を取ることなど不可能であることを。

「ああ、この身体を存分に味わえ―――」

魔剣士の拉げ、既に肉塊とも呼べる左胸に刃が深々と突き刺さる。小さく語る言葉は敗北を認めた―――訳などあるまい。続く言葉は、その魂は私が喰らおうであった。
突き刺さる刃を支点とし、長剣を振りぬく速度に磨きをかける。まだ、生きているのだ。魔剣士はまだ生きている、腕は動く、剣は振るえる、ならば勝敗などまだ決まっていないだろう。どちらも生きているならば、死ぬまで終わる筈もない。
長剣の刃が人間の首、その薄皮を裂かんとする時。魔剣士の身体は浮遊感を得る、なれば長剣も身体に引き摺られ狙い定めた首から遠のき、宙を断つばかり。そもそも、続く言葉を魔剣士は言わなかったのではない。その暇すら、身を断つ技は許さなかった。
魔剣士の視界に僅かに映ったのは一筋の光、己が身体から噴き出る鮮血に塗れる事なくあらゆるを断ち切った刃。人間の尾によって放たれた絶技、肉も骨も鎧すらも大気を裂く如くただ閃光を彩る剣戟。この墓標に似合わぬ、されどここでしか生まれない美しさすら感じる秘剣。

―――私は、負けたのだな。否、死んだか。

剣が振れれば戦える、されど魔剣士の身体は意思に従いはしなかった。緩やかに流れるような時の中、宙へと切り上げられた感覚が未だ抜けず、空を舞うようにも思えた。剣を振るえぬならば、死んだも同然だ。そう、己も切り捨てる。
しかし、何とも奇妙だと魔剣士は思考する。悔しいのかと、情けないのかと、そして満ち足りたのかと。だが、魔剣士は答えを得られない。初めて負けて、初めて死ぬのだ、勝って殺すならば幾度も幾千も経験したのだが、同じ感覚ではない。
満ちる、満ち足りたのか。時も世界もあらゆる存在さえ屠り、血に染めて尚満ちぬこの魔剣士が。心躍る死闘であった、それは間違いない。悦に塗れ、最早上回られようとただただ歓喜に震えていた、それも間違いはない。
それを、満ちたと言えるのか。魔剣士にはそれが理解できなかった。

―――呆気ない、いやこれ以上は望めぬか。少し、死へ夢でも見ていたか。

次に視界へ移るは鎖の破片、この身を縛り封じていた神の概念。この身が朽ちて用済みとなったか、……いや人間が断ち切ったのだろう。魔剣士はそう判断した、あの剣技ならば何物でも打ち倒せようと。己が斃れた相手故に、色眼鏡が掛かっているやも知れぬが。
人ならば、これを恋だの愛とでも表現するのだろう。しかし魔剣士は、剣だ。打ち合い、斬り合い、互いに血をぶちまけて命を奪う。その行為こそが魔剣士の感情そのものだ、寧ろそれ以外を彼女は知識以上で知り得ない。
徐々に浮遊感が落下へと切り替わる、短き想いを巡らせるには十分なほど。身体は動かずとも、その長剣を離すことなくただただ墜ちて行く。掴める足場もなければ、掴める身体はもう動かない。ただ、身体の死よりも長く意識が残っているだけ。
その時だった、堕ち行く肉体で僅かに見えた人間の、アーケオルニの姿。翼を広げ宙に存在する傷だらけの竜、両腕は潰え、肉体も激しく損傷しながらも、勝者としてそこにいる。見下ろす姿が、魔剣士に何かが響いたのだろう。
僅かな微笑を浮かべ、墜ち行く身体のままアーケオルニを見上げた。

―――ああ、成程。貴様なら、いや。アーケオルニなら不足はない、寧ろ十分すぎるほど。

朱色の軌跡を描きながら時空の果てへと吸い込まれていく、何処へと流れゆくかも分からぬ時の牢獄。墓標の如く集まる残骸の果ての果て、世界の果てなど生温い最果てへと何れは流れ着こう。
最早死んでいる身、なればと逆らえぬ流れに任せたまま。最期に魔剣士は、アーケオルニへと腕を伸ばそうとする。されど、左腕はない。動く身体はもうない。これが末路かと、鼻で笑う。しかしそれでいいとも、何故か感じられたのだ。

―――私の鞘、戻るべき場所。アーケオルニ、竜狩りのアーケオルニ。お前を忘れぬさ、忘れぬとも。

これが満ち足りたと、魔剣士は漸く思い至った。それでいいと、心安らかに思えることがそうなのだと。ならば、最早思い残すことは……一つ出来てしまった。やっと見つけた鞘、戻らねばならぬのに死が邪魔をする。
だが、今はこれでいい。アーケオルニに喰らわれ、魔剣士は満ち足りた。さすればアーケオルニはまた飢えるだろう、今度は己が満ちるために。だから、これでいい。

【魔剣士(オリジナル)@永き果てに見出した人間に敗れ、戻るべき場所を見出し満ち足りる。その後、時空の果てへと呑み込まれた。】

―――何れ、何れは

>>アーケオルニ・ランドグリーズ


【ここで退場とさせていただきます!長い間の絡みありがとうございました!とても楽しく書かせて頂きました!】

22日前 No.1791

約束を果たす為に @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【狭間の世界/狭間の最果て/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

力の差は歴然としていた。きっと、誰かに憧れ追い越そうとしていたのだろう、バビロンの体術は常軌を逸した冴えだった。それに対して、ヴァイスハイトが繰り出す体術など稚児の遊戯に等しい。結果としてヴァイスハイトはただ無意味に負傷し、苦し紛れの射撃で茶を濁すしか出来ない。
銃弾は腹部に直撃した。だが怪人は止まらない。きっと、あれを殺すには、ヴァイスハイトには決定的に足りないものがあるのだろう。だが、今の彼にはそれが分からない。

余裕綽々と言った体でバビロンは大型の拳銃を取り出す。到底片手で扱う大きさではないそれの威力は、傍目から見ても絶大だろうと良く分かる。
食らう訳には行かない、何としてでも避けなければ――とヴァイスハイトが考えた直後。
正しく神速、縮地が如き素早さでバビロンは彼の目の前へと距離を詰め、あろうことか彼の脳天目掛けて銃底を振り下ろした。
当然、当たれば重傷は免れない。ヴァイスハイトは予想外の攻撃に度肝を抜かれつつも、咄嗟に横に跳ねてそれを回避した。だが、次の瞬間。

「ぐっ……」

バビロンが隠し持っていた、もう一丁の拳銃から放たれた凶弾が彼の腹部に直撃した。予想外に予想外を重ねられ、迷いだらけの彼では全くこの怪人には追い付けなかったのだ。
土手腹に特大の風穴を開けられ、堪らずよろよろと後ずさる。手で押さえても、大量に血が溢れ出して止まらない。
両足の踏ん張りはすぐに利かなくなり、どたりと力無く倒れ込んでしまった。

「はっ……がっ……」

焼けるような痛みと、多量の出血で意識が朦朧とする。顔を上げる事さえ出来ず、ヴァイスハイトはただ暗闇に突っ伏す。

「俺、は……」

……此処まで、か。

体中の感覚が遠退いて行く。きっとけたたましく囃し立てているだろうバビロンの声も聞こえない。
指先は冷たくなり、目の前が白く霞んで行く。あとはもう、止めを刺されて終わるのだろう。

……ああ、俺には、やはり、出来なかったのか。

思えば最初から分かりきっていた事だ。世界すら食らうあの怪人を相手に、自分の様な凡人が敵う訳が無かったのだ。世界の為に討たねばならない巨悪に対して、出来る事など有りはしなかったのだ。だから、きっと、当然の結果なのだろう。



「……………………違う」

・・・・・
世界の為に?


「俺が、お前の前に立った理由は……そうじゃ、ない」

そんな、御大層な名分ではなかったろう。
大義でなく、それは、むしろ私怨に近しいものだった筈だ。

……では、何の為に? それを考えた時、ある言葉がふっと脳裏に過った。


――二人を悲しませればそれで満足かい?


不意に頬に痛みを感じて、急激に意識を現実に引き戻される。それは、ずっと彼の胸中にあった小さな"支え"。それが無ければ、彼はきっとあの男が望んだ通りに身を燃やしていただろう、最後の"迷い"だった。

「そうだ……そうだったな……。お前の言う通りだ……」

――二度と、フォルトゥナを一人にしないで――。

――それでも、共に過ごせるならば――。

心の何処かでずっと響いていた、誰より大切な人の声を思い出せば、彼の心臓は激しく脈打ち、再び立ち上がる活力を与える。

「どうして忘れていたんだろうな。俺にとっての全てだったと言うのに……」

脾腹から血が流れ出すのも気に留めず、ヴァイスハイトは今一度立ち上がる。

「――ああ、思い出した。もう、二度と迷わない」

その双眸は、真っ直ぐにバビロンを見据えている。既に満身創痍の躯とは裏腹に、その眼差しは強い意志の炎を宿していた。

「名前も知らない誰かの為に死ぬ英雄としてじゃなく……! 俺の大切な家族の為に――ただ"その為だけ"に!」

慣れた手付きで両の拳銃の弾倉を交換し、対峙する怪人へ銃口を向ける。狙い澄ます眼光はさながら戦神が如く、先刻見せた迷いの色はとうに消え失せていた。

「――バビロン! 俺はお前を殺す! そして必ず、生きて帰る! それが、俺が果たすべき約束だからだ!」

躊躇いなく、迷いなく、双銃の引金を引く。バビロンの頭部目掛けて寸分の狂いなく放たれる弾丸は、正しく漆黒の殺意を宿していた。

>>バビロン

22日前 No.1792

Scarlet Flame @zero45 ★pB1cyTl1jZ_iGf

【狭間世界/終末/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 時間操作。始まりから現在に至るまで、総ての時代を俯瞰していた神が宿す権限は絶対的、人から勝利の二文字を遠ざけるに相応しき御業。強力無比な一撃も、一度零に帰してしまえば、それは無意味と変わる。恐れを抱こうが無かろうが、神がその力を戦いに用いる限りは、人類が明日を掴む事は叶わない。
 逆に言い換えるならば、その力さえ行使されなければ、人類に勝ち目はまだある。神を恐れずに挑む覚悟と、数が生み出す物量の両方が兼ね備えられているならば、必ずや誰かの一撃を神へと届かせる事が出来る筈だと信じて、烈火の光弾を奔らせ、灼熱の閃光を迸らせる。

「護れないだと……」

 だが、その見通しは甘かった。時を操る権限が無くとも、神には神を豪語するだけの力がある。刹那の内に叩き込んだ己の三連撃を含め、この場にいる総ての者達の攻撃が容易く一蹴されてしまう。現実と共に見せ付けられた神の威厳、今度こそ恐怖と絶望に打ちひしがれる者が出てくるのではないか、そう悪い想像を膨らませざるを得ない。
 瞬く間に崩落を開始する天井。歴史の重みが込められた無数の瓦礫が降り注ぐ中で、レオンハルトは静かに眼を閉じて待ち構える。傍から見れば、さながら圧死の運命を諦観し、受け入れるかの様に。
 やがて、歴史の瓦礫の一つが身に触れる寸での所にまで行き届く。それが合図となって、閉じた眼を一気に見開くと、爆発したかのような勢いで魔力を全身から解き放ち、球状に広がる紅焔の大結界を展開する。

「……そう断言するのは、まだ速い……!」

 落下する歴史を包み込む灼熱。獅子の心を具現するかの様な炎熱を宿したそれは、刹那の苛烈な攻防を繰り広げる内に打ち勝ち、灰も残らず消滅させる。自らを襲う脅威が去ると、続け様に灼熱の閃光を幾つも迸らせ、結界の届かない遠方の瓦礫を的確に狙い撃ち、破壊して行く。
 脅威を完全に打ち破ったとは言い難いが、瓦礫の多くを減らし終えると、そのまま反撃へと転ずる。右の掌へと集中して蓄えられて行く焔のエネルギー。真紅の粒子が形を為すのは、獄焔を宿した魔剣。

「それを今から証明してやる……」

 真紅の光を纏いながら、獅子は天空を駆け抜ける。一瞬の残像すらも残さない超速度、最大限の力を解放した状態での移動で神の間近へと急接近を果たすと、すれ違い様に放つは袈裟の一閃。背後へと回ると続け様に一閃、斜めから、横から、正面から、と無数の方角から攻め立てる斬撃の数々。
 そして最後に姿を現したのは、神の真正面。魔剣へと注ぎ込む多量の魔力が、巨大な灼熱の刀身を生み出し、神を目掛けて真っ二つに切り裂かんと迫りゆく。

 未来への第一歩を進むが為に、不撓不屈の精神は尚も燃える。

>時空神クロノス ユーフォリア・インテグラーレ フォルトゥナ・インテグラーレ シフォン・ヴァンディール リプレイサー ジークリンデ・エレミア シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー ボルヴェルク

21日前 No.1793

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_6UX

【 狭間の世界/狭間の最果て/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 型などあったものではない。否、――野に生き、弱肉強食の世界の頂点に立ち続けた獣が人の技を行使すればどうなるかの実演だった。

「ハハ、ハハハハハハァッ――!」

 輿が乗ったバビロンの強行をヴァイスハイトは防げない。
 大口径銃の持つ肩が外れかねない反動を、知ったことかと抑え込む。
 更にそれを二丁振り回すことに対してはそもそも"俺なら出来る"という荒唐無稽な理屈で実現。
 結果として出来上がるは対人の領域を遥かに上回る、一個人では到底身に余る兵力だった。
 絶速の踏み込みから繰り出される重打。
 直撃すれば頭蓋陥没の振り抜きは宙を切り裂くだけに留めるも、続く砲火をヴァイスハイトは回避出来ない。
 零距離の銃口、生存確率零、されどお前なら出来るという根拠のない魔王的信頼。引き金にかけられた指が躊躇いなく引かれた――。

 直撃。螺旋を描き突き進む魔弾、肉を穿ち臓腑を蹂躙し、骨まで砕いて突き抜ける。
 咲くは一輪。大輪の紅、ヴァイスハイトの腹部より鮮血が花開いた。
 衝撃の蹂躙と多量の失血。即座に回ったその影響ゆえに、ヴァイスハイトは立っていられない。

「ヒットだァッ……!」

 一方、バビロン――常人からみれば大差ない有様であるにもかかわらず、呵々大笑。
 ヴァイスハイトを見下ろす真紅の眼光は、深黒の世界の中で際立つような主張を続けている。
 その瞳に侮蔑はない。期待、期待、切望、歓喜。何処をどう探ったとしても、負の感情は見当たらない。
 されどその寵愛を一身に受けられるものなど、ハッキリ言ってしまえば砂粒程度しかいまい。
 過ぎたる願望、……そう、故にこそ、ヴァイスハイトが倒れ伏したままであるのも無理はない。

 凡人、常人、――あるいは、戦いにさえ関わらなければ平凡な日常を過ごしていたであろうはずの男。
 彼は立ち上がらない。されどバビロンは信じている――この男は必ず、次の位階に辿り着くであろうと。

 さあ立ち上がれよ。

「……そうだ、その眼だ」

 俺の英雄。

「それこそが人間だ、それこそが人類だ、それこそがッ、人だ……!」

 俺が待ち望み、恋焦がれ憧れた男。


「――さァッ、俺を満足させてくれェッ!
 ・・・・・・
 やれば出来ることを、この俺にィッ、証明してみろよォォォォオオッ――!!」


 ・・
 銃声。
 それはどちらのものだったか――結果を視ればそれは明らかだ。
 ダン・マッケーニ=バビロンの頭蓋を撃ち砕き、脳を蹂躙し花開く鮮血の大輪。
 漆黒の殺意と一つの迷いなく、ゆるぎない覚悟を持って撃ち抜き、確かにこの魔人の脳天をブチ抜いた。
 即死。そう、――いかなる者であれ、破壊されれば身体機能の全てを喪失して朽ち果てることが約束される。
 事実、バビロンは己の支えを突如失ったかのように。後ろに崩れ落ちる。漆黒の世界に膨大な血が、どくどく、どくどくと。

「……は、ハハハ、ハハハハァッ」

 ・・
 大笑。
 おかしくてたまらないといったような声は――バビロンより、零れていた。
 そう、即死してもおかしくないはずのバビロンからだ。

「……認めなくちゃあなぁ。ああ、お前は素晴らしい、掛け値なしに素晴らしい。
 黄金の果実を喰らっておきながら、驕らず、此処までたどり着いた奴なんざ初めてみたよ――」

 ダン・マッケーニ=バビロンは真面目だった。
 真面目だからこそ、己の限界を感じたとしてもただ頑張ることが出来た――それは、異能<デュナミス>に目覚める前から。
 きっとそれが世界のためになると信じたのならば、何でも出来る男だった。
 狂気の力さえ発現していなければ、誇張抜きに時空防衛連盟の助けになっていただろう――何故なら、それがヒトのためだったのだから。

「いい、いい、いいねェッ、いいなァッ。俺は今ッ、ヒトの光を一身に浴びているゥッ!
 ――テメェは底辺で腐りきってる奴らとは断じて違うと俺が証明してやるッ!」

「他の誰にも馬鹿にさせやしねェッ、もちろんテメェ自身にもだ!
 俺は、俺が信じた輝きを否定させるのが大嫌いなタチなもんでなぁッ!」

 彼は、飲み込まれた。飲み込まれた上で――己の手にした果実でもって、大いなる実験を始めた。
 即ち、ヒトの輝きを取り戻させること。腐りきった世界政府でも、スラム街でも、きっとのし上がることは出来ると信じていたのだから。
 どんなに腐敗し、堕落しきった闇の現実を見つめ続けても、男はそれだけは絶対に諦めなかった。

       、   ・・・・・・・・・・
 だってそうだろう――何も無かった俺ですら、本気でやってここまでこれたのだ。
 ならば、お前達にだって出来るはずだと。俺も高みへと昇ってやるから、本気で此処までのし上がって来いと。

 ぐぐ、――ゆっくりとバビロンの肉体が持ち上がる。脳天から流れた鮮血は、留まることを知らず。
 されどそれがどうしたと捻じ伏せて、今、迷いを振り切った者の前に立ちはだかった。
 即死相当の損傷を、気合と根性――総じて非合理な力で「知ったことか」と無視をする。
 ・・
 覚醒――不条理を体現する、黄金の果実の力。

「俺たちは互いに黄金の林檎を喰らった同志だ。
 故にこそ、英雄たる素質を持っているッ! 俺に夢を視させてくれよ。さぁッ――」

 それこそがダン・マッケーニ=バビロンの真価。人智を越えた力を、人の身で意図もたやすく引き摺り出す。
 そう、男は今、極限の領域にまで己を高めている。焔の獅子とやりあった時と、同じように。
 今のバビロンは不条理を不条理で叩きつぶし、さらなる不条理を人の身で具現化させるだろう。
 バビロンの不敗神話の全貌が開花したに等しく、此処から先は互いに死ぬまで止まることはない死闘と化す。
 一点、違うことと言えば――。


「――殺し合おうかァッ!」


 ――バビロンは、人生最大の喜びを味わっているということだが。

 ヴァイスハイトの顔面へと繰り出されるは絶速のジャブ――秒間36発放たれるそれは、目で追える速度をとうに超えている。
 威力も先ほどの小手調べとは比べ物にならない。弾丸だ。機銃よりバラまかれる弾丸を、拳だけで再現するという異常な領域。

 更に織り交ぜられるように、肩と腹部へ向けて放たれる強烈なストレート。
 その威力はもはや、砲弾と呼んで差し支えあるまい。
 事実、殴られた大気が文字通りはじけ飛び、衝撃波が撒き散らされているのだから。
 されどバビロンには予感があった。目の前の男は、自分のこれすらも軽々と上回ってくれるだろうと。

>ヴァイスハイト・インテグラーレ

21日前 No.1794

約束を果たす為に @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

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21日前 No.1795

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【狭間世界/血塗られた島/海底洞窟/橋川 清太郎】

ゲイルとの歪な連続攻撃が少女を責め立てる、しかし彼女は焦りなどまるで感じさせない身のこなしでそれらを迎え撃つ。数による押し潰しとでも評すべき剣撃の暴風雨を、正面から全て打ち払った。
続いて自分が攻撃する番だが、ゲイルと示し合わせたわけではないため彼女に幾らか猶予を与えてしまった。これでは回避なり迎撃なりで対処されてしまう。
万事休すかと思われたその時、またも少女の足元に異変が起こる。否、違う。足元ではなく足そのものに変化が起きたのだ。
まるで見えない釘にでも打たれたように彼女の両足は地面へ縫い付けられる。HUDに表示された魔力反応からすると、どうやら根っこのような物が形成されたらしい。
この拘束も秒と経たない内に破られるだろう、だがそれだけあれば十分。

(よし、フィールドの範囲内に入れたぞ!)

計略は成功、とうとう射程距離内に詰め寄ることが出来た。そして目論見通り抑制作用が発生し少女の肉体を蝕んでいく。今度こそ決定打になる、そう確信した矢先に彼女の体が変質を始める、同時に拘束を解かれ有効範囲から逃げられてしまう。

「こ……これは!?」

どのような原理かは全く不明だが、魔力とは違う完全別種の物質へと変貌した。これではWitchJudgmentが意味を成さない。
戦術的優位性の無くなったフィールドを消し、次の手段を脳内で最速模索する。
だが少女は思案の時間を許してはくれない、渾身の底力で引き起こされた局地的災害を差し向けてくる。

(どうする、飛んで避けようにも無理な加速をしたせいでバーニアが焼け付いてるし……)

この状態では回避してやり過ごそうなど夢のまた夢、たちどころに飲み込まれ圧殺されるのがオチだ。

「でも」

希望が絶たれたかといえば、そうではない。HUD上のレーダーに表示される『Uncollected(未回収)』の文字、それが活路を拓く鍵になる。
すかさずそのポイントへ向けMistyFrog――内蔵式ワイヤーガンを発射、ものの数瞬で三つ爪クローアームが食らいつき『それ』を引き寄せた。
鍵の名はMirageAttack、先程放った鉄球式ハンマーは少女を突き抜けたまま遠方の壁面へ激突、半ば埋没していたのだ。
当然、MirageBlow共々引き寄せる際にハンマー形態は解除、手元へ来る頃には別の形状へと変えていた。

「これで何とかなるかな……っと!」

引き伸ばされたような板状の楕円形、つまるところはサーフボードである。
既に目の前まで迫っていた大波に対し、迷うことなく乗り上げる。間髪入れず放たれた高密度攻性エネルギーの弾幕を、形だけのボードテクニックでくぐり抜け、駄目押しとばかりに起こされた地割れに対しては、天井へMistyFrogを撃ち込みぶら下がることで難を逃れる。

「本当になんて奴だよ、反撃の隙がまるで見つからない」

バイザーの下で冷や汗が流れる、津波の余韻か水飛沫が白装甲を叩いた。Mirage三本に関しては適当な形状で背部に固定してある。

「!?……何だ、ゲイルの魔力反応が……」

猛攻を凌ぎ一息ついた直後、風の騎士に不可思議な事態が起こった。もう残り僅かな筈の彼の魔力量が、突然爆発的に跳ね上がったのだ。
理解が追いつく前に事態は進む、強い追い風が吹き宙吊り状態のまま無遠慮に煽られる。

「くぅっ!」

振り子よろしく揺さぶられるのを避けるため、堪らず少女目掛けて飛び込む。『何故』こうなったのかは分からないが、ゲイルが『何を』しようとしているかは嫌でも分かる。ならば出来る範囲でその手助けをするまでだ。
背部、両腕部のMistyFrogを構え、それぞれ少女の逃げ道を塞ぐ形で後方、左右に撃ち込む。そして加速の瞬間WitchJudgmentを再び起動、これで巻き添えを食らう心配は無くなる。
少女からすればこの包囲から抜け出すには『撃ち込んだ方向を見切り』『その隙間から駆け抜ける』という過程が必要だ。そしてそれが達成される頃にはゲイルのフィニッシュブローが決まっていることだろう。
Gladiatorを失い戦闘力は低下したものの、それは魔力の肉体を手放したあちらも同じこと。膝をつくには、まだ早い。

>>周辺all


【予定より大幅に遅れてしまい申し訳ありません】

20日前 No.1796

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_iGf

【狭間世界/終末/フォルトゥナ・インテグラーレ】


神を騙る存在へ対面するこの場にいる者たち、それらは彼女も含め何らかの得手を持ち、この世界の中でも稀有な強さを持つ存在ばかり。その一斉攻撃を喰らえば大よそ無事ではあるまい、彼女自身も手立てはあれど可能性は低いと導き出す。
しかしだ、目の前の存在は神を名乗るだけの力を持ち得てはいるらしい。時を巻き戻すことなく、全ての攻撃に的確な対処を行い傷一つなく凌ぎ切っていた。尤も、時を巻き戻す行為に姑息などと言う人の価値観を元にした小さなことを気にするとは思わなかったが。
さて、そうなればと彼女は闇の槍への魔力付与による性質変化を急ぐ。昏く輝く闇に様々な魔力が重なり、その残滓が彼女の周囲を彩る。付与する性質は追尾と貫通、それを幾重にも付与し続け性質そのものを強固にしていく。
手を翳し、魔力操作に加えて変質を行う。その傍らでさえあの存在への警戒を怠らない、だがそんな警戒など無意味かのようにこの空間そのものが落ちてくる。何の比喩でもない、世界そのものが降り注いでいると言い換えても良いだろう。
この時空の狭間と言う空間故に起こせる規格外の攻撃、歴史や正史の大切さを説いて尚それすらも攻撃に扱う傲慢さは神らしくもある。だが、彼女は狼狽えない。最初に言ったはずだ、只の障害でしかないと。空間如きが、阻めると思うな。

「その程度で此方を測った気になるとは、貴様こそ勘違いが過ぎるな。姉さんなら、あのくらいはやってのけるぞ?」

姉なら容易く突破できると言いたいわけではない、恐らく傷つき地に伏せることもあるだろう。だが諦めはしない、どれだけの窮地であっても必ず立ち上がるのだ。この場所へ傷だらけになっても、歩んできたようにだ。
空間を削る虹の光、拳の乱打、そして轟く雷鳴。他にも己に降りかかるそれを魔力を杭打機のように放ち、灼熱にて灰燼と化したものもいた。恐らく空間を最も削ったのはあの眩き轟雷、だが数を減らしてもまだ押し潰さんと降る空間は残っている。
彼女は不敵に笑んだまま、首から下がるドックタグを一つ宙へと放る。狙いは単純だ、キラーと姉さんに攻撃へと専念できる状況を作り、そして何らかの準備を行っているシエンタと良く分からない男を守らんとするため。
降り注ぐ空間の瓦礫へと向かう金属の板、それを中心に一瞬、周囲の光を呑み込んだかと思えば広がるは深淵の波動。暗黒の先触れは武器にまで落ちぶれた憐れな歴史を粒子の如く分解する、それだけで排除できぬものは闇の流星が深淵から打ち貫き破壊していく。
多くの人数が合わさることで降り注ぐ歴史と言う脅威を漸く排除できた、恐らく彼女一人であるならば入念な準備をしている合間に押し潰されていただろう事は想像に容易い。仲間など、意識したことはなかった。だが、少しばかり口元が緩む。
あの時の、いやあの時までの彼女は一人だった。キラーとも、何処かで違えていた可能性すらある。しかし、姉と和解して、己の間違いに気づき、今こうして多くの人達と共に世界の窮地に立ち向かっている。少し前の彼女に伝えても信じはしないだろう。
―――お前は大好きな姉と大勢の仲間と共に、世界の為に戦ったんだ。なんて。

「何より、貴様などに世界を護る見定めなどされたくはない。世界を乱す元凶がそれを言うか、傲慢さだけは神らしいな。」

淡々と語る中、宙に浮かぶ闇の坩堝が漆黒の瘴気を纏いながら臓物の如き脈動し、膨張する。光を呑む暗黒の太陽の如き様相、地を睥睨するかのように漂うそれは束の間、黒い点の如く収縮し―――――爆ぜる。
澱み、濁り、全てを呑み込む黒き奔流。分解した粒子を取り込み巨大化したそれは人一人、いや十人でも容易く飲み込む闇の渦としてかの存在へと襲い掛かる。さらに溢れ出るその余波は光線になり、周囲へと飛散しながらも偽りの神を食い散らかさんと迫る。
媒体を使用した遠隔発動、その利点を今最大限に発揮している。あれだけの視界を奪う攻撃、回避を強要する範囲、それが彼女の放ったものではなく姉の親友までもが放っていた、一つならまだしも光と闇の対極が示す視界の暴力は計り知れない。
だが彼女にとって本命はあくまでも手に持つ槍、未だ三割にも満たない完成度。されど性質付与と変質の速度は増していく、例え小さな効果であっても幾度も重ね続ければそれは絶大な効果を生む。時すら超える必中、絶対すら打ち破る貫通、目指すはその域。
まだ足りない、されど時間を積み重ねればかの存在が気付くのも時間の問題だ。これ以外にも決め手を持つ者はいよう、されどその手札は多いに越したことはない。ならば、既に攻撃へと移るが吉。完成は、攻撃する一瞬に間に合えばいいのだ。
最早ただ魔力で形作られた武器ではなく、名立たる名槍の如き風貌にこの段階ですら至っていた。闇の魔力を固めて作られていたはずのそれは、黒曜の如き輝きを放ちながらも極彩色の魔力の残滓を帯びる、一つの美の形にまで昇華されていた。
それでも未完成、今尚魔力の循環速度は劇的に上昇し、完成への道は刻一刻と近付いている。彼女が額に汗を浮かべるほどの作業、しかしその思考はどうこれを使用するかに割かれている。接近への手段がこの身一つ、彼女一人ならばここで終わっていただろう。
しかし、彼女は気付く。仲間がいると、自身を助けに来てくれた純粋な彼が。神と名乗る存在を前にしてもその自信を失わずに、どこか彼女の心も前へと向かせてくれている彼が。魔力操作を緩めずに、その彼へと振り向く。

「キラー、君は投げると言う行為は得意か?得意なら―――」

彼女が滅多に見せぬ、子供が悪戯を企むような笑顔でキラーへと語り掛ける。耳打ちをするように、キラーの傍へと寄って小さく囁く。これは彼女が見つけ出した、最良の方法。そして初めて誰かと共同で行うものでもある。
キラーが承諾するのならば、彼女は身体を委ねるだろう。何分これは、息を合わせる必要はないが機を見る必要はある。シエンタとキラーのように阿吽の呼吸とはいかない以上、ここは彼女がキラーへ合わせるが吉と判断した。
未だに槍への施しは四割を超えた程度、されど問題はない。完成へ至れヴぁかの偽神を貫き、人間の世界を平穏へと戻せるだろう。
―――そう、これは神殺しの槍。神など居ないと語る彼女が、神を騙る存在へと贈る決別の儀式槍。

>>時空神クロノス ユーフォリア・インテグラーレ シフォン・ヴァンディール キラー・テンタクラ― シエンタ・カムリ ジークリンデ・エレミア リプレイサー レオンハルト・ローゼンクランツ ボルヴェルク

19日前 No.1797

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_6UX

【 狭間の世界/狭間の最果て/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 繰り出される拳の乱打。当たり前のように引き出され、更新され続けるダン・マッケーニ=バビロンの最高出力。
 大気を粉砕しながら解き放たれる無限大の暴力を、しかしヴァイスハイトは冷静に対処し続けてゆく。
 後退、後退に次ぐ後退。銃撃の強みを最大限に活かすための距離にして、バビロンの必殺が届かぬ距離を維持する男。
 対極、ヴァイスハイトの思惑通りこれは正反対の理念を掲げる超越者同士の血戦。

 されどバビロンは吠えるのだ。俺の信じた輝きは、誰にも穢させはしないと。
 その眼を見て、その魂を感じ取って、打ち震える己の心のままに叫ぶのだ。

「ハハハハッ――謙虚で結構だ!
 だが、お前は地べたで這い蹲っていた弱者を脱したのは紛れもない事実ゥッ!」

 俺を殺すために本気で生きて、俺を殺すために本気で培って、それでも極致へと至らぬ第三の選択肢を選び取る。
   、   、・・・・・・・・・・・
 その選択すら、本気でやれば実現出来る。何故なら、その行いそのものが前人未到の極致であるのだから。
 それが出来たならば、きっとお前は讃えられるべき存在となる――ほかの誰も褒めずとも、俺だけが褒めてやろう。

「だからこそ、俺だけでも全力であたってやるッ!
 俺を殺してみせろ、本気で生き続けたこの俺に、人の輝きを見せてくれぇッ!」

 執拗に頭部を狙い続ける弾丸。炸裂、炸裂、炸裂!
 何度も撃ち抜かれ、夥しい量の血を流そうとも――その上からバビロンは己を進化させ続けてはヴァイスハイトの前に立つ。
 己の限界を叩き壊すこと数度。
 傍目から見れば既に死んでいてもおかしくない領域であるがレオンハルトらとの戦闘を繰り返し、バビロンもまた成長していた。
 彼らのようになるのだ。彼らのように高みへと昇り続け、俺の信じた輝き<本気>を穢させない雄姿を見届けるのだ。
 その礎たる己が、本気でない怠けた肉体で死ぬという体たらくを晒すことはあってはならない。
 その思いだけが、バビロンを突き動かし続ける。そう、何処までも。

 とうに停止していてもおかしくないはずの機能を、まだ動けるだろうがと強引に叩き起こしては走る。
 この程度でへばってみろ――極致へと至らずに俺を殺すと決意してみせた男が情けなく映るだろうがッ!
 英雄の片鱗にすら至っていない俺を殺したところで、奴には何が残る。
 奴の男気は、ただの殺戮というものだけで語らせることは許されない――断じてだッ!

 故にその場から飛ぶ――銃撃を受け続けながらも、神速とも呼べる勢いで肉薄してみせた。
 強引な姿勢から装填される拳は二発。されど、バビロンはその勢いを保ったまま、後一歩分は踏み込める用意を整えている。

「ハハハハハァッ――!」

 距離を取られるのならば、踏み込みながら拳を放てば逃げられまい。
 誰でも行き着く理屈、ゆえに難題を軽く突破。
 踏み込みながら、全力の右ストレートでもってヴァイスハイトを殴りつけんとする。
 更に追い打ちの左アッパーが、銃撃の腕を叩き壊すべく振り抜かれた。

>ヴァイスハイト・インテグラーレ

19日前 No.1798

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_NqW

【狭間世界/終末/キラー・テンタクラー】

「はああん!? このキラー、常に全身全力、やる気と同時に危機感を失った害虫の如し阿呆な人間とは格が違うッ! 故に、戦いには集中している!」

まず彼が反応したことは、シエンタが言い放った言葉であった。
君は負けたばかりなのだから、啖呵を切る暇があったら戦いに集中しろと、それはある種正論ではあったが……色々と手遅れな彼に通用する物ではない、しかしそれはある程度までは事実でもあり、キラーと言う人物は常に多数展開されたドローンウィルスから視界情報などのバックアップを受けており、常にそれの処理を行い、戦闘に生かすキラーは、はっきり言って集中した人間よりも優れた感知能力、反射速度に秀でているのだ。
まぁ……それでも集中しろ、と言いたくなるような言動をしているのは確かであり、もっと集中すれば色んなところに気が付くだろう、と言うのも事実ではあるのだが。

さて、幸いというべきか、ユーフォリアの決死の挑発の甲斐あってか、相手は先ほどの防御手段を使ってこないようだ、だが、あの能力だけで成り立つハリボデの戦闘力ではないようで、放たれた多数の攻撃を、ほとんど無傷でやり過ごしてしまったのだ。
これは大型兵器を形成して放つなりしないとまともなダメージが入らなさそうだ、他の奴らを囮にして巨大兵器を使わせて貰おうとキラーが下がろうとした時。

「クソッタレが! 意味不明な物質で圧死狙いなんてゴッドっぽい事を。 そういうことされると私が本当に神じゃないかとビビるハメになるだろう!? だが構成物質など知らん、撃ち落してやる!」

八つ当たりにも等しい理不尽な怒りを相手に叩き付けた何とも言えない阿呆さを露呈するキラーであったが、それでも先ほどの攻撃の生き残りであるドローンを呼び戻し、さらなる形態変化を持って迎撃準備は整えるという、本当にやるべき事はやっていたために、ほとんど隙を見せずに、すぐさま次の指令を下す。

"無差別攻撃型自律式対空多連装誘導弾"展開ッ!!

一瞬の沈黙、音声認識に対応していない命令。
折角人間には出来ないような素早い判断で動いていたと言うのに、これのせいで結果的に反応速度が後手に回る。

「……ハイパーディフェンダー!!」

その指令と共に、キラーは全身から大量のミサイルを展開、それをほとんど狙いもつけずに乱れ撃つ。
それらの仕事は一つ、他の者が取り逃がした一部の物を爆散させること、あるいは軌道を変えて当たらないようにする事だ。

ひとまず、それが効果を発揮したのか、あるいは他の者の防御が優秀だったが、目だった被害なく攻撃に移れそうだ、と言う時に。
ほぼ二方向から同時に提案が来る。

「えぇい頭がショートする! 私の精密計算の上に成り立つクリスタルボディは一つだ! だが、無論、どちらも出来る、私だからな!!」

シエンタとフォルトゥナからの支援要請に「身体は一つだ」と叫ぶキラー、しかしその直後には「私だから出来る」と快諾した。
とは言え、シエンタのほうは半分解決しているようだ、故に、バッテリー代わりになれるように、大量の電力を彼女に分け与えられる準備をメインに、一応数本の触手で部品を拾い集めて乱雑にシエンタに投げておいた。

そして、フォルトゥナの投擲して欲しい物があるという言葉に対しては。

「任せろ、新しい機械を作れなど言われたら構造把握と再現に時間が掛かってしまうが、旧時代の単純な物など容易に再現可能!!」

などと言いつつ、微妙に途中で手間取っていたが、彼は残った触手を一箇所に固めて、巨大な投射機を作成する。
これを作っていたために、攻撃には参加できないが、そこは何か考えがあるフォルトゥナがどうにかしてくれるだろう、キラーは何時でもフォルトゥナが投げ込んできた物を発射できるように集中する。 あまりにも集中しているために、驚愕するような物が入ってきても、彼はすぐさま投射するだろう。

>時空神クロノス フォルトゥナ・インテグラーレ シエンタ・カムリ リプレイサー 周辺ALL

17日前 No.1799

忠犬 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_NqW

【狭間世界/血塗られた島/ロコ】

ロコは中級魔族だ。魔物でしかない下級魔族とは違い、しっかりと人の形を取ることこそ出来るが、当然ながら上級魔族との間には、如何ともし難い実力差が存在している。
元は人であったファントムメサイアも、今となってはその身体が魔力で構成されていることからして、その成り立ちは上級魔族に近しいものであると考えてよいだろう。
本来であれば、絶対に覆しようのない結末。だがそれは、二人の味方の存在によって、不確定なものとなる。彼らの尽力もあり、ロコは自らの得意分野である"支援"に徹することが出来たのだ。
敵の足元から張り巡らされた根は、地中深くまで生い茂り、その行動を完全に阻害する。目に見えて明らかな、詰みの状況。誰もが勝利を確信するであろう状況であったが、魔人はそれすらも、無理矢理な方法で掻い潜ってみせる。
見れば、相手の足は魔力とも、そうではない何かとも取れる、謎の物体と化していた。己の肉体の構成を変質させることによって、魔力の作用を止めたのだろう。
掴みかけた勝利があと少しのところですり抜けていったことに、ロコは多少の焦りを感じるが、自らの両隣にいるゲイルと清太郎の存在が、折れそうになる心を繋ぎ止める。
彼らはまだ諦めてはいない。必死に、勝利を手繰り寄せようと戦いを続けている。だからこそ、弱音を吐くことなど出来ない。自分も二人と共に、最後まで戦い抜くのだ。

「これは……お二人をお守りしなければであります! ……うっ!」

全ての魔力を開放した敵による一撃は、凄まじいの一言に尽きるものであった。津波、不可視の刃、地割れ。ありとあらゆる自然の脅威が、最大の力を以て牙を剥く。
何としても、仲間を守らなければならない。そんな使命に駆られて動くロコであったが、本当に守らなければならないのは仲間ではなく、自分の身であった。
二人の存在があったとはいえ、付いていくのがやっとであった彼女が、この状況で他人の心配をしている余裕など、あるはずがない。荒波がロコの身体を押し流す。風の刃が、その頬に切り傷を刻む。
圧倒的な暴力の前に、為す術もないロコ。このまま彼女は、地割れに飲み込まれ、姿を消してしまうのか? 結局中級魔族程度の力で、上級魔族に匹敵する力を持つ者に対抗することなど不可能だったのか?
違う。そんなこと、誰が決めた。力の量だけで全てが決するというのなら、中世の人類と魔族の戦いがあのような結末を迎えることもなかっただろうし、自分がここまで生き残ることも出来なかっただろう。
立ち上がる。負ける訳にはいかない。力こそが全てなどという世界は、ごめんだ。そんな世界、皆のために、主人のために、訪れさせる訳にはいかない。

「そなたに……世界は渡さないのであります!」

今一度その身体を光で包み込み、津波を飛び越えるロコ。護ることばかりを考えていては勝てない。攻撃を二人に任せてばかりはいられないと、自らも打って出る。
ああ、得意分野ではないことは分かっている。それでも、あの敵を乗り越えるためには、全員が力を合わせなければならない。そのためであれば、たとえ向いていないことであろうとも、やれる限りのことはやってみせよう。
自分に出来る最大限を、その両手に込め、ロコは魔力を解き放つ。魔人の頭上に出現した大量の土……それは、稀代の悪を封じ込め、空気を奪い、死へと誘う墓標。
図らずもそれは、ゲイルの一撃と合わせ、ファントムメサイアがこちらに行った攻撃の意趣返しとも取れる連携となった。自然は、誰に対しても牙を剥く。精霊を味方に付けた彼女であろうと、決して例外ではない。

>ファントムメサイア、ゲイル・ベネルド、橋川清太郎

16日前 No.1800

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_NqW

【狭間世界/終末/ユーフォリア・インテグラーレ】

神を相手にし、恐れを抱くことなく啖呵を切ったユーフォリア。それに反応してか、相手は次は"姑息な手段"を用いず、正々堂々としたやり方で攻撃を受け止めると宣言した。
僅かな希望が芽生えた瞬間。甚大な力を持つ相手ではあるが、全力を尽くせば攻撃が通ることもあるかも知れない。しかし、そんな期待も束の間、彼らはクロノスの神たる所以を、これでもかと見せ付けられることとなる。
シフォンの放った暴風、ジークリンデの魔力球、リプレイサーの奇術、レオンハルトの連撃、フォルトゥナの槍、キラーの砲弾、ユーフォリアの虹。その全てが、真っ向勝負によって打ち砕かれたのだ。
絶望的な力の差が、そこにはあった。正面から受け止めて無傷で切り抜けられるとなっては、いよいよこちらに打てる手がなくなってくる。やはり、神に勝負を挑むなど、傲慢でしかないのか?
否、そうは思わない。人には、無限の可能性が宿っている。この試練を簡単に乗り越えられるということはまずないだろうが、この程度で怖気付くほど、彼らは弱くなかった。

崩落する天井。歴史そのものが、物理的な形で時空防衛連盟の面々に牙を剥く。轟音と共に崩れ落ちてくるそれは、さしずめ人類が犯してきた罪の象徴といったところか。
いち早く動いたシフォンが、不敗神話を有する絶対防御を展開する。……が、均衡は長くは続かない。彼女の防御は勢いを削ぐのが精一杯で、苛烈な攻撃に耐え切れず、崩壊を迎えた。
それでも、勇者達が立ち止まることはない。皆、各々の方法で攻撃に対処し、この場を切り抜けようとしている。最高とも言えるタイミングで、援軍も駆け付けた。まだ、彼らの闘志は死んでいない。
上空の歴史へ向けて虹の魔力を放ちながら、ユーフォリアは周囲の状況を観察する。すると、クロノスの遥か後方にて、何やら作業をしているシエンタの姿が目に入った。
彼女が何を目論んでいるのかは分からない。だが、成功すれば、劣勢を跳ね返す切っ掛けとなる可能性も大いにある。既にリプレイサーが支援に向かっているようだが、出来るだけ神の意識をあちらから逸らす必要がありそうだ。
次々に反撃へと打って出る味方達。粉々に粉砕された歴史の破片をすり抜けながら、ユーフォリアが駆ける。再びクロノスと肉薄すると同時に、戦場を吹き抜ける風。
その風が、立ち向かう者達の活力を漲らせる。傷を癒やし、秘められた力を引き出す追い風を受けながら、彼女は敵の眼前に無数の白い魔法陣を展開していく。

「貴方こそ、勘違いをしている。たとえ神だろうと、世界を好き勝手に弄ぶことは許されない」

世界を乱す元凶。フォルトゥナの言い放ったその言葉こそ、今のクロノスにお似合いのものであった。彼女は時空神でありながら、一つの時空を消し去るという暴挙を犯そうとしている。
人間が時空を乱すことを良しとしないのであれば、神もまた、同じことをするべきではない。もし人と神は違うという理論でそれを押し通すというのなら、それこそ傲慢に他ならないだろう。
白く輝く魔法陣から撃ち出されるのは、月の光を纏う矢。視界を埋め尽くすほどの量で降り注ぐそれは、神相手に向ける攻撃としては、力不足なものであるかも知れない。
しかし、自らの力で勝負を決することだけが、戦いではない。ユーフォリアの狙いは、敵の意識を引き付けること。後方で支援を進めるシエンタ達、そして攻撃を放った他の味方。この一撃は、そのいずれをも助ける鍵となる。
人の力。一つ一つでは矮小なそれも、集まれば神にすらも匹敵する強大な力となり得る。終末に集った者達の意志は、未だ折れず。神の傲慢を打ち砕くその時まで、彼らは抗い続ける。

>時空神クロノス、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

16日前 No.1801

遥かなるスエズ @sable ★05fpQN9itV_keJ

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16日前 No.1802

時空神 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_NqW

【狭間世界/終末/時空神クロノス】

歴史そのものが落ちてくるという光景。今まで彼らが汚し、冒涜し、葬り去ってきた存在の復讐。その重みは、人類程度の力では、到底乗り越えられるものではない。
絶対防御も、所詮は神に届かぬ者達の間での話だ。文字通り、格が違うクロノスの攻撃に対しては意味をなさず、アイスエイジシールドの不敗神話は今宵、終わりを告げた。
先程は一斉に攻撃に打って出ていた者達も、今回ばかりは行動が分かれた。当然だろう。上から降ってくる歴史に対処しなければ、次の瞬間には押し潰されて死を迎えることとなる。
ボルヴェルクの乱入によって多少状況は改善したようだが、依然として圧倒的に優勢なのは時空神。彼女は一人一人の動きを、じっくりと観察するほどの余裕を残していた。
クロノスは防衛行動に走った者達からは視線を逸らし、自分に対して反撃を仕掛けてきた者達を注視する。最初に飛び込んできたのは、レオンハルトであった。

「それで人の力を証明したつもりですか? 貴方の考えは甘すぎます」

真紅の光を宿し接近してくる敵を前にそう言い放ち、自らも右手に光を束ねて剣を形成、斬り掛かってきた相手と対峙する。すれ違いざまの一撃を、彼女は刃を接触させることで受け流す。
背後に回り込んでからの斬撃も、一閃、斜め斬り、横斬り、正面からの一撃と見切り、それぞれを最小限の動きで捌いていく。神速の打ち合いの中でも、時空神は余裕を失わない。
最後に再度正面に姿を現し、膨大な魔力を注入しての灼熱の一撃に、クロノスは神聖なる光を結集させて対応する。轟音を鳴り響かせると共に、激突する二つの攻撃。
接触と同時に辺りを包み込んだ光が晴れ上がると、そこに佇んでいたのは無傷の時空神。レオンハルトの渾身を無駄な足掻きであると言わんばかりに、彼女はさも当然のように、そこにいた。

続く膨張した闇による連撃に向け、クロノスは見る者全ての目を眩ませるほどの光を放つ。たったそれだけのことで、あれほどの勢いを持っていた闇が、半分は容易く掻き消された。
フォルトゥナの狙いには気付いていないのか、あるいは泳がせているだけなのか。彼女がまだそれに対し、何らかの行動を見せることはない。あくまで、自分に飛来してきた攻撃に対応するのみだ。

そして、彼らは気付くことだろう。この二つの攻撃を支援する形で放たれていたユーフォリアの月の矢が、まるで機能していなかったことに。神に小細工は通用しないと言わんばかりに、クロノスは気を高めただけで魔法陣を粉砕した。
驚く間も与えず、ユーフォリアの頭上へと移動した彼女は、そこから真下へ向けて巨大な光のレーザーを射出。柱の如く立ち上るそれに呑み込まれ、ユーフォリアの姿が見えなくなる。
まだ死んではいないかも知れない。しかし、甚大なダメージを受けたのは間違いないだろう。彼女がどうなったかすらも分からないが、煙が晴れ上がる前に、クロノスの視線は眼前の敵へと移る。

「私は正しき歴史を護る者。貴方達が創り出した偽りの歴史に、ここで終止符を打つのです」

クロノスがそう宣言すると同時に、彼女の瞳が光り輝き、天空から光弾と光線が尋常ではない勢いで降り注ぐ。地面に着弾する度に大地は揺れ、粉砕された小岩が飛び散る。
次に彼女は右手を後ろへ向けると、作業へ集中していて警戒が疎かになっているシエンタに向けて、その首を跳ね飛ばす光の鎌鼬を放った。なんと卑怯な、と人間達は言うかも知れない。
しかし、忘れるな。先に時空を乱し、取り返しの付かない事態を引き起こしたのは、お前達であるのだと。元凶を取り除き、平穏を取り戻すことこそが、時空神としての務めなのだ。
卑怯であると叫びたければ、叫ぶがいい。そして、神にそうさせるだけの所業を重ねた己を恨むがいい。時空を護るため、クロノスは如何なる批判を受けようとも、神として君臨し続ける。

>ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク
【繰り返しとなりますが、返信順を遵守していると展開にかなりの時間が掛かってしまいますので、クロノスが投下され次第、各々自由なタイミングで返信をして構いません。よろしくお願い致します】

16日前 No.1803

鬼司令官 @sable ★05fpQN9itV_keJ

【狭間世界/終末/シフォン・ヴァンディール】

 アイスエイジシールドの決壊――戦術的な面のみならず、精神的にも影響を及ぼす被害だ。"柔よく剛を制す"の理屈で鍛えられたこの技は、単純な力の押し付けには滅法強い。
 これ一つで防御を済ませられることで、他の面々が攻撃に集中に出来る。言うなれば最大の盾にして矛。それを失った今、全員の負担が増えることは疑いようもない。
 加えてこれから先、時空神の攻撃を防ごうとするなら、剛に振り切れた技の打ち合いになってしまう。力の差は歴然。どちらに分があるかなど、誰の目にも明らかだ。
 それでも味方の攻撃が成果を上げているならいいのだが……生憎、初動と同様に全ていなされてしまった。あのレオンハルトとの正面衝突すら、余裕の表情を崩すことなく凌いでいる。
 際限なく膨張するのではないかと思わせる闇すら、光の一波のみで減退させてしまった。そして驚くべきは、ユーフォリアの後方支援が機能していないこと。
 目立つほどの力も割かずに魔法陣を粉砕したのだから、神の前では小細工など通用しないことが見て取れる。おまけに助けに入る間もなく、彼女の姿は光の柱の中へと消えてしまった。
 今すぐ駆け付け、安否を確かめたい……が、神の追い討ちがそれを許さない。一人ずつ消されてゆく。次はお前だと言わんばかりに――

「護るわ……護ってみせるの……!」

 煌めく神の瞳。麗人の瞳も燃え滾る。今度こそ盾として機能し、仲間達を、時空をも護ってみせるのだと。
 降り注ぐ光弾と光線。数で攻め立てられている手前、再びアイスエイジシールドに頼るわけにはいかない。そうなった以上、代打に据えるは『ランパートウォール』。
 氷雪と流水が幾重にも層をなし、堅牢な要塞を築き上げる。味方全員を範囲に含め、歯を食いしばっての展開。
 徐々に圧倒されることがわかっていても、惜しげなく魔力を注ぎ込む。貫通した幾つかのレーザーが、大地を揺るがそうと。飛び散った岩石が直撃しようと。
 せめて仲間達には危害を加えさせるものか。その一心で粘り続ける。結果として、豪氷の要塞は驚異の大半を退けた。あまりに多くの魔力を費やした上、シフォン自身へのダメージはほとんど軽減出来ていないのが現状だが。
 ともかく危機は去ったものと判断し、反撃に転じるべく虹の魔力を充填した――その矢先、新たな脅威が視界に飛び込んでくる。
 時空神の次なる手は、裏方に徹するシエンタを討つことだった。彼女は完全な無防備。警戒も疎かで、とてもではないが対応できるとは思えない。
 即座に攻撃を打ち切り、身体強化による速度を得て回り込む。今から大ぶりな技を展開したのでは間に合わない。二人まとめて首をはねられるのが関の山だ。
 故に使えるのは、先程蓄えた魔力のみ。両腕に込め、前方へ突き出す。

「っ……!?」

 当然ではあるが、このような破れかぶれの防御は意味をなさない。強大な虹の魔力を叩き付けているにも拘わらず、劣勢は火を見るよりも明らか。
 だが、その守りが突き崩される寸前――異変が起きた。一瞬、ほんの一瞬ながら、終末を満たす黄金。暗夜を白昼へと塗り替える極光。
 何人が目撃しただろうか。麗しくも勇ましい、戦女神の姿を。まだ不完全ながら、いずれ大神に比肩しうるであろう威容を。
 二度と起こりえぬ偶然かもしれない。それでも少女の命を救えたことに変わりはない。鎌鼬の力を半分近く削ぎ、軌道を僅かに変えることに成功したのだ。
 左肩の肉を少しばかり持っていかれたが、これで危機は回避できた。生憎これ以上畳みかける力が出ないため、反撃は仲間達に任せる他ない。

 荒い息をつき、傷ついた肩を押さえながらも神を見据える。絶対に覚悟を示す。仲間を守り抜く。不退転の覚悟が籠ったまなざしは、戦いの果てに待つであろう未来へ向けられていた。

>>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

15日前 No.1804

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_iGf

【狭間世界/終末/フォルトゥナ・インテグラーレ】


またしても、だ。神を名乗るだけのシステムへと向かう攻撃、その全ては此方への土俵へと上がった上で掻き消されていた。烈火の如き斬撃の応酬も、全てを呑まんとする暗黒の奔流も、月の光を宿す矢雨も等しくだ。
だが彼女に諦めの姿勢など一片もない、この神と名乗る存在はどうにも中途半端であると理解したからだ。システムの如く対応するでもなく、傲慢さを糧とする神の様相でもなく、ましてや人への試練であろうともしない。どれも、半端だ。
システムであるならば、有無を言わさず流し尽くしてしまえばいい。人間を待つ道理もなければ、慮る道理もない。ただ時空を管理する者として情も抱かず、思考すらも固定して粛々と役目を果たすだけでいいのだ。そもそも、戦いにはならない。
神であるならば、その心の傲慢さを正しきことと示し力を存分に振るえばいい。卑怯など考える必要もない、態々此方の土俵へと上がる必要もない、己が神だからと思うがままに振舞うだけでいい。温厚な神?そんなもの神である時点で人間の温厚など当て嵌まらない。
そして試練であるならば、余りにも不十分だ。力ある存在を不屈の心で打ち倒す、成程確かに聞こえはいい。それが全人類ではなく、一部の人間であることを除けば。謂わば、選民にも等しかろう。乗り越えられるものだけが次の段階へと進む、だがこの存在は人類と括っているのだ。
だからこそ彼女は何度でも繰り返そう、あんな存在は神ではないと。ただ力を持っただけの存在、ましてや人と違う次元に生きて、違う価値観を持つと言うのに余りにも人間味があり過ぎる、故に彼女は恐れぬし諦めない。
手を止めずにいた彼女の黒槍への魔力付与は六割へと届き始める、幾重にも重ねた効果に一つ新たに効果を加える。それは毒、身体を蝕むものでもなければ精神を蝕むものでもない、この毒は存在を蝕むもの。僅かに、僅かに毒を与えた存在を衰弱させていく毒。
一つ要素を加えるだけでその調律難度は桁違いとなる、積み重ねた石に新たに砂を加えるような物。過剰魔力を抑えながら、如何にその要素を余さずに盛り込むかが要点となる。それでも、彼女は額に汗を浮かべながらも失態を犯すことはない。
それを示すかのように黒曜の輝きを得ていた槍は、禍々しさを感じる昏い紫水晶の煌めきを発している。同時に放たれる極彩色の残滓もその量と輝きを増し、冥界の槍の如き風貌の中に神々しさすら感じるほどだ。
されど、まだ足りない。時空を操る存在に確実に命中させ、確実に傷を負わせ、何らかの傷跡を残すためにはまだ足りない。狙うは消滅ではない、この押され続けている現状を打破する一手。それに相応しいだけの最善を込めた。

―――だからこそ、彼女は最愛の姉が光に飲み込まれた姿を見ようとも、飛び出そうとする脚を抑え込めた。
姉なら大丈夫と言う心に、あれだけの怪我を負ってもしもがと言う不安が重なる。すぐさま安否を確認したい、出来る事ならば姉さんを連れてこの場を離れたい、姉さんに死んでほしくない、そんな思いが彼女の内を巡る。
だが、姉はそんなことは望まないだろうと、彼女は何故かそう思えてしまった。この場から連れ出しても、這ってでも戻ろうとするだろう。もし彼女自身がそうなったとして、姉は心配こそすれど目の前の敵を優先するだろう。そうしなければ、多くの犠牲が出るから。
これも彼女の思考で考えただけの、姉本来の考えではない。ただ、きっとここで二人で逃げ出せば後悔することだけは確か、彼女にだってそれくらいは分かる。ならば、姉さんなら大丈夫と痛い程に自身に言い聞かせる。今この場でやるべきは、偽神を討つ事だけと。
そう心に決めた彼女を襲うは天からの光の群れ、光芒が空を埋め尽くすほどに降り注いでいる。その中に、キラーの親友を狙う一撃があったことを彼女は見逃さない。だが、視界の端に映る姉の親友の姿を見て任せることにする。
彼女の役目は状況の膠着、それを吹き飛ばすこと。二人からの要請に応え、特に彼女の提案によって動けないキラーの下へと駆ける、その触腕が固まり巨大な投射機が形成されているのが分かる。僅かに微笑みながら、首にかかるドックタグを降り注ぐ光へと放る。
瞬間、展開されるは闇の外套。彼女とキラーを覆うように纏われたそれは光を弾きながら、その体積を減らしている。これはキラーが腕を解除するまでに傷を負わぬようにするもの、本当ならばさらに強固なものをとも思ったが彼女にそこでの余裕はない。
依然として槍への魔力付与を欠かさずに行っている、八割弱の完成度であるが気を抜けるはずもなくキラーへ駆けながらもその作業を止める事はない。既に、その槍は人智を超える存在になっている。無知であろうとも脅威を覚えるほどの威容、それが一振りの槍に宿っている。
これだけのものを練り上げた彼女への代償は大きい、二振り目どころかその後の戦闘にも間違いなく支障をきたす程だ。だが耐える、彼女は耐えるとも。これは無茶は無理などではない、姉の望みの為に懸命に励むだけの妹の努力だ。

「流石キラーだ、助かった。これは一つ貸しになってしまうな。」

魔力の過剰循環、既に身体強化を最大の状態で維持している彼女にとって、身が裂ける痛みが常に駆け巡っている。魔力量が多く、それを扱えるだけの才能があろうとも所詮は人の身体、限界は存在してしまう。きっと彼女の身体は魔力に喰い破られているだろう。
だが、膝など突かない。それどころか身体の動き一つ鈍らせるものか。寧ろ魔力付与の回転数をさらに上げて見せよう、さすれば完成度が九割を上回る。苦痛など、今の彼女には障害にならない。彼女を止めるならば、まだ足りはしないのだ。
平然を装いキラーへと声を掛ける、集中しているようだが寧ろ好都合だと思う事にする。何故か、彼にはこの平然すら見抜かれてしまうような気がしてならないから。きっと、そう思える彼だから私も笑えたのだろうと、少し前の出来事を思い出す。

「―――キラー、帰ったらシエンタも誘って、スイーツとやらを奢ろう。……約束だ。」

投射機へと飛び乗るのと、彼女が言葉を言い終えるのは同時であった。その答えを彼女は聞くことはない、射出のタイミングに合わせて身体強化を重ねた脚力で蹴り出す。弾丸の如き速度で飛び出す彼女、その僅か後に闇の外套は光に耐えきれずに霧散する。
光の雨の中、直撃するもののみ障壁で相殺しながら魔力付与を続ける。身を抉り、焦がす光に意も介さずただこの一槍を窮極へと至らしめんとする。最高の機会の為に、身体の反動など無視をして更に魔力付与の速度を増していく。
そして秒に満たぬ間に、神を騙る存在の前へと躍り出ることになる。
同時に、その時は来たる。彼女が携える暗紫の煌めきを放ち、虹の残滓が迸る神殺しの槍。神を屠るものでありながら、神を上回らんとする存在の圧を放つ人の身に余る武具。幾重にも重ねられた魔力は、最早魔力とも物質とも異なる存在へとまで昇華されている。
定めるはかの存在、それ以外は必要なし。僅かに穂先を向ければ、最早それは運命の如く定まろう。
速度を殺さず、勢いを乗せたまま彼女は振りかぶり―――

「正しさなど、唯一の存在が決められるものか」

―――終局へと一手を投じた。

避けるならば避けるが良い、身を動かす程度では何度でも喰らい付こう。
防ぐならば防ぐが良い、あらゆるを貫き穿つこの槍を止められなどしない。
別の存在を盾にしても良い、この槍が狙いを違え、貴様以外を貫く事はない。
時空を歪めても良い、時を遡ろうと時ごと穿ち、空間を操作しようとそれすら貫く。

さらに、この槍によって傷を負えば蝕む毒に苦しむだろう。
その毒は存在を蝕む毒、貴様が神であるならば苦痛に悶え、神でなければ意味もなさぬもの。
人には効かず、魔族にも効かず、この世界に存在する生命に効かぬ毒。これ以上に神の存在を証明するものもないだろう。

時を遡ると言う脅威を最初に見せ、その対策をしていようと見逃した傲慢さこそに足元を掬われる。
その報いはこの槍となって貴様を貫く、人間を見下すが故に、神を騙るが故の悲劇にならぬ喜劇となろう。

そして、これを神殺しと名付けた所以は只一つ。
―――人と同等に、神を神から引きずり下ろすため。
   貴様を屠る役目は私ではないのだからな―――

>>時空神クロノス ユーフォリア・インテグラーレ シフォン・ヴァンディール キラー・テンタクラ― シエンタ・カムリ ジークリンデ・エレミア リプレイサー レオンハルト・ローゼンクランツ ボルヴェルク

15日前 No.1805

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_NqW

【狭間世界/終末/キラー・テンタクラー】

「きひっ!? この私を除けば、誰もが疑いようも無い最大戦力の消失……確率を再計算した結果危険領域っ、即ち必要とされるは戦線離脱」

先ほどまでは立派に啖呵を切っていたキラーであるが、それでも恐ろしい物と言うのはどう頑張っても恐ろしい。
それを助長させるような事が起これば尚更だ、この場合それに当たるのは、彼は自分が最高と思っているが、他者から見ればどう見てもこの場において最強の戦力であるユーフォリアの消失。
死亡確認までは出来ないが、少なくともすぐに姿を見せないと言う事はそれなりの手傷を負ったことはもはや明白、だとするならば、数の利を得てキラーは今まで闘争心を奮い立たせて強大な敵を相手にしていたが、その優位すらもアテにならないと来れば自ずと怖気づく。

さらに相手は他の者たちを簡単になぎ払えることを証明するかのように無数の光や岩石が放たれる。
真剣に撤退を検討するキラーであったが……それに割り込む物が一つ。 壁だ、それも氷の塊、これは明らかな人工物。

"護る"。

一番死ぬ危険性が高い位置で壁となる人間が居る、自分は結果として彼女に守られた、勿論彼女が自分一人を守った訳ではないのは分かっている。
だが、それでも。

「……やはり、私だけと言うのは、気に入らない!!」

キラーはその場で残った触手を地面に突き刺して投射機を安定させる、それは解除するには一定の時間が必要な、逃げを考えぬ不退転の覚悟の証明。
フォルトゥナがやれると信じて自分に頼んできたのだ、それぐらいやらねばキラー・テンタクラーの名が廃る、そして、前方の人間のおかげでその時間が稼げていると言うのに、そこでやらないなど、言語道断。

その時だったクロノスが明確に「特定人物」を狙ってきたのは。 そして、その対象はシエンタだった。
思わず身体が動きかけた、だが……対応できる人間は、居る、だとするならば。

「任せたぞ、人間――賞賛の言葉は終わった後に耳が溶けきる程に聞こうフォルトゥナ! さっさと片付けて……あぁ、スイーツパーティーと行こう!!」

彼はシエンタの方を振り返りはしなかった。
人間如きに何かを任せるというのは癪に障るが、きっと、自分が手を下さなくても、あれほどの覚悟がある人間ならば、と。
そして、何かが乗った感触がした瞬間、キラーは投射機の力を使って一気にそれを打ち出した。

何かが乗ったことを認識してはいたが……それがフォルトゥナだとは思いもしなかったために、キラーは一瞬呆気に取られた。
だが、槍を構え、身体強化を伴って敵に突っ込んでいった彼女は、特攻のそれではない。

「ぶっ……ふはははははは! 無茶苦茶な戦術だ、さすがは私がシエンタの次に友人と認めた人間、私の追撃に当たるんじゃないぞ! 腐れゴッド、貴様はこの私を怒らせた、死因も敗因もたった一つ、このキラー様の友人を傷つけようとした事だ!! 精々天使か鬼にでも自分はくだらない死因だったと泣き付け!」

その言葉と共に彼は投射機を複数の触手とドローンに分離させ、さらに再度結合し、近づいて行ったフォルトゥナに警告を出しつつも、今度は全触手とドローンを合体させて、古代で一度使用したレールキャノンによって敵を一撃粉砕しようと試みたが。

「いや、もっと良い物を思いついたぞ、流石私! 新技披露と行こう、新技で外道を蹴散らす大覚醒、素晴らしい!! 消し飛ぶがいい! 泣き喚くがいい! ――クリスタル・オーケストラ」

相変わらずの自己評価の高さを思わせる台詞を垂れ流した後ではあるが、彼は新技を思いつく、それは簡単に言うならば思いつくあらゆる攻撃手段を使った複合攻撃だ。
ナパームキャノン、レーザーライフル、ドリルミサイル、そういった特殊な兵器を次々に自身の身体に取り付けて、少しの時間を置いて、ほとんど「ハリネズミ」と言う表現が相応しい武装の山となったキラーがクロノスを睨む。

そして――渾身のネーミングセンスの新技が放たれる。

構造としては初手に使ったレーザーとメガキャノンによる複合攻撃と変わらない、だが、先ほどよりもずっと高出力で、攻撃に使った武器種は増えている。
ドリルミサイルと呼ばれる回転ミサイルが敵の肉を裂き、そこにナパーム弾によって傷口を炙り、それが届かなくとも、同じタイミングで襲来する全く性質の異なるレーザーやビームと言った光学兵器。
一つ一つの攻撃は小粒であり防ぐのは容易い、この中の誰でも出来る事だ、だが、それらが同時に、複数で襲い掛かる以上、必ず何処かは対応しきれない穴が出てくる。

そう踏んだ攻撃がこの地に乱れ飛ぶ、標的はたった一つ、自分の友人を狙ってきた憎い自称神。

>時空神クロノス フォルトゥナ・インテグラーレ シエンタ・カムリ シフォン・ヴァンディール (ユーフォリア・インテグラーレ) 周辺ALL

15日前 No.1806

約束を果たす為に @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【狭間の世界/狭間の最果て/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

幾度と無く頭部を撃ち抜かれて尚動くその姿は正しく怪物そのものだ。生物の限界をとうに超え、バビロンと言う怪人は未だに吼え続けている。
改めて、その男の異常さと執念を――そしてその真摯さをまざまざと見せ付けられる。背筋が寒くなるほどに奴は愚直で、全力だ。
だが、否、だからこそ、必ず殺す。守るべき人の為に、バビロンを此処で殺す。そして必ず、愛する家族の笑顔を見るために生きて帰る。その決意だけは、決して揺るがない。揺るがさせない。

銃撃を受け続けながらバビロンは全く止まらない。最早銃弾程度意にも介していないかの様に、ほんの少しも怯まない。
瞬く間に距離を詰めたバビロンは、"打てば下がる"と理解したのだろう、踏み込みながら拳を突き出す。重ねて対手がヴァイスハイトの腕を狙って振り上げられる。同じように下がれば食らう。だが真っ向から対処するなど愚の骨頂。加えて安直な逃げを封じた的確な追撃の魔手。正しく狩りの様相を呈した、鮮やかな打ち込み。

――此処だ。

それに対し、ヴァイスハイトは、"敢えて一歩踏み込んだ"。

最初から分かりきっていた事だ。退くばかりでは絶対に追い付かれる。そもそも、基礎能力が違い過ぎる。
・・・・・
だからこそ、この展開を予想していた。必ず、奴は自分に追い付き、そして追い抜くだろうと。限界知らずの怪物であるが故に絶対に自分を超えて来るだろうと。
だから、勝つ為に裏を掻く。力で敵わないならば技で、技で敵わないならば知恵で勝負する。
前進を伴う拳は、逃げる相手には致命になる。だが言い換えれば、懐への接近にはそれでは対応出来ない。更に言えば、左の拳も既に振り出してしまい、両脚は踏み込みの為に地面から離れられない。――目測を狂わされたこの瞬間に対応する術は、物理的に無い。

即死級の破壊力の拳を潜り抜け、風切音を耳元に感じながら、ヴァイスハイトはこの瞬間を逃すまいと擦れ違い様にバビロンの腹部目掛けて拳を繰り出した。
ただの鉄拳ではない。威力など奴からすれば大したものではないが、その手の内にこそ切り札が握られている。
拳の内に秘めるのは、自分の血液から作り出したアンプル2つ。一つは止血を阻害する抗凝固剤。もう一つは強心剤だ。無理矢理に心臓の動きを活発化させ、銃創からの出血を激しくさせるのが狙いだ。無論、どちらも即効性の劇薬。拳さえ当たれば同時に打ち込み、即座に奴の体に異変をもたらすだろう。
尤も、バビロンがそんな小細工で死ぬ男で無いと言うのは分かりきっている。前回はこれよりも強烈なアンプルを打ち込んで、しかし無理矢理に打ち破られた相手なのだから。

ヴァイスハイトの目論見はもう一つある。むしろ、そちらが本命とも言えるだろう。
……何をしようと、バビロンと言う男は限界を超えてしまう。それこそ何度でもだ。どんな手を使おうと必ず乗り越える。奴はそう言う男だ。
二度の邂逅で理解した。確かに奴の精神に限界は無いのだろう。だが肉体は別だ。何度も限界を超えて酷使され続ければ、何時かは崩壊する――止まる事を知らない怪人の魂にとっては、人間の体では小さすぎるのだ。

だから、ヴァイスハイトは確信している。限界を超え、超え、超えた果てに必ず、"その時"が来ると。
拳を打ち込んだ後はそのまま前進し、距離を開いてから向き直る。何時終わるか分からない、だが必ず終わりは来る。その瞬間を信じて、両手に拳銃を握る。

>>バビロン

15日前 No.1807

Scarlet Flame @zero45 ★pB1cyTl1jZ_iGf

【狭間世界/終末/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 何処までも人を貶め続ける傲慢の神へと宣言するは、力の証明を為す事。真に時空を護るに相応しいのは、果たして何方であるのかを明らかとする。降り注ぐ歴史の瓦礫を焔で焼き尽くし、反撃の手筈を整えること数秒。右の掌に烈火の剣を携え、戦場を照らし出す真紅の光輝を身に纏って挑むのは、正面からの激突。
 多方向から幾度となく斬り掛かる烈焔の応酬は、神の意志へと叩き付ける否定の意志。踏み躙り、葬り去った正史の逆襲を認めず、神の存在もまた容認しない。人の歴史は、人の手で切り拓き、護り抜いて行くもの。其処に干渉し、妨げようとする者は例え神であろうとも万死に値するのだと。

「甘いのはお前の方だ。たかが剣を受け止め切った程度でそう断言できる浅はかさ……それが末路への第一歩だ」

 交差させる剣撃の数々。神速を以てしても、神は余裕を崩さないままに真向から打ち合い、見事なまでに捌き切って見せる。膨大な魔力を込めた大烈火の一撃さえも、結集させられた光と激突し合い、完全に往なされる形で終着を迎えるなど、一向に傷を与えるに至らない。渾身を込めた猛撃は徒労に終わった。
 だが、激突の余波に巻き込まれ、後方へと吹き飛ばされる中でレオンハルトは嗤う。剣撃を受け止め切った、闇を掻き消した――成程、確かに圧倒的だ。そして戦力の中核を為していたユーフォリアの姿も消え、その安否は解らない――悲観的に思える状況だ。徐々に追い詰められている事が実感できる。
 しかし、それを踏まえても、既に力の証明を為したものと決め付けた神の態度には同調しかねる。力の有無の証明が為されるのは、自分も味方も、この場の全員が最期の瞬間まで力を出し切った時だけだ。これを理解せずして、そのような態度を取った神の傲慢さ。それが必ずや墓穴を掘る未来に繋がるであろうと、彼は強く確信する。

「躊躇いもない独善ほど害悪なものはない。未来にとって、真に終止符を打たれるべき存在がどちらなのかを知れ……」

 余波の勢いを相殺すべく後方へと焔を放射して態勢を整えると、神の瞳が煌くのを合図に降り注ぎ始めた光芒の隙間を潜り抜けつつ、来るべき好機に備えて焔剣へと注ぎ込ませて行く魔力。目指す完成形は核熱の魔剣。遍く森羅万象を悉く尽滅させ、神であろうとも灰燼に帰させる窮極。嘗ての魔王に見せた純粋な赫怒はとうに失われたが故に、理想そのままを具現させるには及ばないかもしれない。例えそうであったとしても、未来を切り開く為ならば最大限を尽くす。

「誓うぞ……俺達の歴史は誰にも否定させない。それが例え神であろうと……!」

 何も為せない己の無力を嘆き呪い、いつしか失われてしまった誇り。受け継ぐ資格は自らに無いとして託された物から目を背け、燻る未練に心を委ねて独善を突き進み続け。そんな己を身を呈してまで止めに掛かり、本当の強さとは何なのかを教え、新しい道を示してくれた者達。その名前を心の中で反芻しながら、ここに誓う。瞳の真紅を燃え滾らせ、睨む視線には殺意を込め――終焉を齎す新星の剣を呼び起こす意志を、増幅させ続けて行く。

>時空神クロノス ユーフォリア・インテグラーレ フォルトゥナ・インテグラーレ シフォン・ヴァンディール リプレイサー ジークリンデ・エレミア シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー ボルヴェルク

15日前 No.1808

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iGf

【 狭間の世界/狭間の最果て/ダン・マッケーニ=バビロン 】

「ハハハハハァ――どうしたどうしたどうしたァァアアッ!」

 破壊と暴虐を齎す一方的で独善的な怪物であるが故、バビロンは止まらない上に、学習を続ける。
 拳銃の間合いに逃れることを許さないと言わんばかりの踏み込みから放つ拳打。打てば下がるのならば、下がったところへ追撃を加えればよいというあまりにも単純な理屈。人体の可動域を遥かに上回った打撃の嵐がヴァイスハイトへと降り注ぐ。一発一発が砲弾。直撃すれば臓腑、骨諸共抉り取られるのは必至。
 だがヴァイスハイトは逃げなかった。それどころか一歩踏み込み、腹部へ向けて強烈なアッパーを叩きこんできたのだ。
 そして予想通りにバビロンの腹部へと突き刺さる。ありったけの土産と共に、全霊を込めて。

 アンプル、即効性にして致死量の劇毒を叩きこまれる。
 心臓が一瞬にして鼓動を止め、抗凝固剤は出血を大幅に促進させる。
 されど、黄金の果実を喰らった海竜<リヴァイアサン>はこれまでと同じように、止まらない。

「足りないんだよォッ。
 もっと、もっとだ、もっともってこいッ――俺はお前の輝きが見たいんだッ!!」

 覚醒、覚醒、覚醒、――起きろという叱咤のみで心臓の鼓動を再開させる。
 失血に至ってはそれより多い血液を生成すれば問題無いと増幅<ブースト>。
 自己の進化<アップデート>を繰り返し続けるバビロン。そのままの勢いでヴァイスハイトへと返礼をくれてやろうとして――。

(――ッ、何!?)

 ――己の内に走る強烈な雷鳴と共に、全身が軋むような悲鳴を上げた。

 否、軋むだけならどんなに良かっただろう。進化を繰り返し続けた肉体は、もはや人間の領域からは完全に逸脱しきっている。
 全身に走る激痛が、全身を襲う虚脱感が、神経が、血管が、ありとあらゆる部位が砕け散り弾け飛んでいることを表していた。

 レオンハルト、シフォン、オーネット、ショパン、――そしてヴァイスハイトとの激戦。
 そのたびにバビロンは進化を繰り返してきた。本気で夢に突き進む者達に負けるものかと、その一心だけで立ち上がってきた。
 人間という肉体の容量限界すら更新し続けて来たバビロンの異能<デュナミス>であっても、限界を訴えるかのような合図。
 それこそがダン・マッケーニ=バビロンの終着点。太陽を喰らい、世界に座していた男の終点であるとでもいうかのように。

 その場に崩れ落ちる。
 息は荒い。体は動かない。喘鳴、吐血、痙攣、ありとあらゆる不調がバビロンを襲っていた。
 立ち上がろうとしても、立ち上がれない。アップデートを行う度に、体が悲鳴を上げる。
 ヴァイスハイト・インテグラーレの目論見はここに成就した。
 止まれない怪人の容量限界を引き出してやることにより、肉体限界へと到達させる。
 その時が今、やってきたのだ――。

「……ハ、ハハ」

 だというのに、笑っている。
 可笑しくて悔しくてたまらないというかのように、バビロンは笑っている。

「ここが、俺の限界だというのか。
 ここで、覚醒<めざめ>ることが出来ずに倒れるというんだな」

「いや、……俺は最初から間違えていたのか――?
 俺が超えられない限界を、英雄の役目を、よりにもよって誰かに押し付けようだなどとした時点で……」

 自嘲気味な笑みは止まらない。この領域にまで辿り着いて、初めてバビロンは"納得"という言葉を覚えた。
 誰もたどり着けない領域に辿り着き、命燃やしてでも夢を叶える姿を見たいと望んだ男。
 されど、――夢を持たない自分を、内なる凡人としての己の諦めを、誰かに押し付けていただけにしか過ぎなかった。
 その結果がこれだ。英雄ならば簡単に超えられる限界を、よりにもよって限界を超えなかった男によって妨げられた。
 人類を憂いて、一人でやって、一人で納得した。それこそが、誰かのための私怨で戦う男と己を分けた決定的な差。

「……礼を言う、ヴァイスハイト・インテグラーレ。
 どうやら俺は、殴られ返されるまでこんな単純なことにも気づけない愚図と化していたらしい」

 再び立ち上がりヴァイスハイトへと向き直るバビロン。憑き物が落ちたような顔で告げる謝礼。

「俺は数々の過ちを犯した。
 反省はしない、後悔もしない、されど詫びなければ愚図のままだ。そのために――」

  、 ・・
 それを理解した瞬間に、バビロンは文字通りの覚醒を果たした。
 容量限界という最後の壁でさえも、こんなところで立ち止まれないという意志の力で叩き壊して。


「――今だけは、俺自身が剣を執り、英雄を演じてみせよう。
 だからどうか見ていてくれ、凡人代表よ。此処まで辿り着かねば気づけなかった哀れな男の英雄譚を」


 ――宿敵<とも>に無様な姿を見せたまま死ねるものかよ、と。

 砕け散りかけの肉体の出力を増強<ブースト>。全身を何度も粉砕する激痛を知ったことかよと捻じ伏せて突き進む。
 今だけは、俺は黄金の果実を喰らった英雄<ヘラクレス>であると。
 異能の効力を自分に叩き込んだうえで、ヴァイスハイトへと再度肉薄する。

 零距離で引き抜いたのは拳銃。
 腹部に押し当てるようにして――零距離で――引いた引き金より弾丸を射出。
 間髪入れずに放つは回し蹴り。ヴァイスハイトの首を刈り取る勢いで振り抜かれた右足が空を切り裂く。

 更に、後ろへと引くことも見越した上での左ストレート――一歩踏み込み。
 その上で、先ほどと同じように前へと踏み込んでくれば……待つのは一つ。

「ハァッ!」

 眼前から迫る砲弾――ではなく、バビロンによる強烈な頭突きだ。
 その技のどれもが必殺級。そして、肉体の容量限界を叩き壊した上で放つ以上、速度は音を置き去りにしている。
 しかしバビロンも長くはない。どちらの勝利で幕を下したところで、死ぬのは分かり切った事項である――。

>ヴァイスハイト・インテグラーレ

14日前 No.1809

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『狭間世界/終末/ジークリンデ・エレミア』

時空神クロノスの空間攻撃は仲間たちそれぞれのやり方で切り抜けていく。
余裕の表れか、時空神クロノスは一人一人の行動を観察するような動きを見せていた。
そんな中ユーフォリアが放っていた矢が機能していないことと、
彼女が展開していた魔法陣が時空神クロノスの攻撃により、簡単に破壊され粉々にされてしまった。
直後、彼女の頭上に移動したクロノスは光のレーザーを放った。
攻撃によって発生した煙で視認が出来なかったが、煙が晴れるとユーフォリアの姿がなかった。
見たままだけのことを言うのであれば生存の見込みはない。
生死不明で安否確認を行いたいところだが、今のジークには神を相手に集中する余裕しかない。
彼女が無事であることを願うしかない。

「何が正しくても、偽りの歴史であっても、過去も、現在も、未来も、今を生きる私(ウチ)らが護る!」

「相手が貴女みたいな神様であっても、人間の歴史を絶対に終わらせさせへん!」

何が起ころうとも、誰が来ようとも、例え神だろうとも、
目の前に君臨する時空神クロノスにも人間の奇跡を見せるまで、ジークリンデ・エレミアは諦めない。
するとクロノスの瞳が光り輝くと、天空から光線と光弾が尋常ではない速度で降り注ぐ。
地面に着弾する度に地面を揺らし、小岩が飛び散る程のものだった。
するとシフォンが氷雪と流水を何層も重ねて堅実な要塞を築き上げ、この場にいる仲間たちを囲み防ぐことを試みる。

「「鉄腕」解放ーーーーー」

その掛け声と同時にジークのバリアジャケットが変化。
彼女のオープンフィンガーグローブの指先全てに爪状のものが覆い、両腕の肘上まで黒の布が覆う。
ジャケットの変化が完了すると、出遅れる形だったがジークはダッシュで時空神クロノスまで近づき、
部位破壊を目的として相手の両肩の関節と股関節を先に攻撃した後、両手パンチの10連打、最後にアッパー1発という流れで攻撃しようとした。

>>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、フォルトゥナ・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、
リプレイサー、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、ボルヴェルク、レオンハルト・ローゼンクランツ

14日前 No.1810

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_NqW

【狭間世界/終末/ユーフォリア・インテグラーレ】

味方の尽力を信じ、後方支援に回ることを選択したユーフォリア。しかし、この場に限っては、その判断は完全なる間違いであったと言わざるを得ないだろう。クロノスには、小細工の一切が通用していない。
月の矢を打ち出していた魔法陣は、相手書きを高めただけで粉砕されてしまった。それに反応して次なる行動を取ろうとする間もなく、敵の姿が前方から掻き消える。
次に、時空神が現れたのは、ユーフォリアの頭上であった。目にも留まらぬ高速移動から、敵は殲滅の光を放つ。為す術もなく、ユーフォリアはその光に呑まれ、地面へと叩き付けられた。
彼女を中心として広がるクレーター。深さはユーフォリアを他の味方達から視認不可能とするには十分過ぎた。甚大なダメージを受けたのは間違いないが、まだ彼女は、時空の守護者は、死んでいない。
しかし、想像を絶する衝撃によって、一時的にではあるが身体が麻痺している。何とか手を動かせることを確認し、彼女は立ち上がろうとするが、足に力が入らなかった。
視界に映るのは、相も変わらずあの時空神が上空に君臨している姿。後方からは、味方の声も聞こえる。時折、弾幕も行き交うのが、その場からも確認出来た。
戦況は良いとは言えない。こちらが未だ一度も敵に有効打を与えられていないのにも関わらず、負傷者の数は増え続けるばかり。このままでは、いずれ敗北を喫することは避けようのない運命だろう。
劣勢を覆す策は、方法は。痛みで朦朧となる意識の中、ユーフォリアは思考する。不意に、遠方のフォルトゥナの声が耳に届いたのは、まさしくその時であった。
上空を駆ける、妹の姿が見えた。手に携えられしは、もはやこの世の理では説明の出来ない物質で構成された神殺しの槍。それが相手を貫いた時、クロノスは人と同じ領域まで降りてくる。
さすれば、人類が神に勝利を収める可能性も僅かではあるが生じるだろう。まだ足は動かない。だが、フォルトゥナの攻撃をより確実なものとするためにも、出来る限りのことはしておくべきだ。

刹那、彼女を包み込むようにして虹の光の柱が立ち昇る。その瞬間、他の味方は認識することだろう。まだユーフォリアの命運は、尽きてなどいないという事実に。
体内に秘められし魔力を解き放ち、彼女は真っ直ぐ右手を伸ばす。前方に描き出される魔法陣。そこから放たれたのは、敵の四肢を絡め取り、動きを封じる虹の鎖。
先端が刃の形状となっているそれは、ユーフォリアの意志を汲み取って不規則に動き回る。たとえ躱そうとも、着弾するか破壊されるまでは、執拗に標的を追い続けることだろう。
紙一重で避けようものなら、先端の刃に貫かれて傷を負う。何もしなければ、身動きが取れなくなる。前者でも支援としてならば十分、後者であればこれ以上ない形だ。
だが、ユーフォリアの真の狙いは別のところにある。もし、槍が直撃してもなお、クロノスが空中に留まっているならば……この鎖は、傲慢な神を、人間の土俵へと引きずり下ろす決定打となることだろう。
徐々に戻りつつある足の感覚を頼りに、ユーフォリアはクレーターの底で静かに立ち上がる。この時空に生きる全ての尊い命のため、彼女は守護者の宿命と共に運命へ挑み続ける。

>時空神クロノス、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、キラー・テンタクラー、シエンタ・カムリ、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

13日前 No.1811

観測者の瞳 @x5mas☆sECYEVcUXiI ★iPhone=5H3aaI41BD

[狭間世界/???→終末/【リプレイサー】]

 目の端に『視えた』高笑い、轟音爆音エトセトラ。音を無くした者は無く、地に倒れ伏す影も見当たらず。奇術師が戦場を離れたあとで、歴史の破片に押し潰されて、その命を散らした者は無いらしかった。

 そこまでは至極当然の話だった。寧ろ、あの崩落での離脱最有力候補は奇術師当人だったのだ。ほんの一部の人員に、ほんの僅かな梃入れをしてやれば、形而下のモノの崩落なんぞ容易く捌いてくれるだろう。そこまで見込んで場を離れたのだから、そうであってくれなきゃ困ってしまう。

「通信機に冷蔵庫、電子レンジにコンピュータ。こんな闇汁紛いでも役立ってくれりゃあ良いんだが――っと、これ以上送るとコッチの補給線に支障が出るか……。」

 『視界』に映る少女の要請に応え、手当たり次第に三、四個の機械を送る。そこまでしてみて辺りを見渡せば、もう粗方の電子機器類は消し飛んでしまっていた。
 どんなに優れた奇術にも必ずタネは付き物だ。無から有を創ることなど不可能な話。となると、これ以上の必需品すらも不用意に持ち去って、補給路を完璧に絶ってしまうのは賢明な判断では無いらしい。

 そうと決まれば話は早い。一人でも人員は多い方が良いだろう、せめて援護にでも回らねば。“しばらくしたらまた戻ってくる”、隊員に遠回しな補給要請を出し、『視界』を神の庭へと集中させる。空間が収束し、無数の歴史が文字列となり――


それから僅か一秒足らず。何の前触れもなく、まるで映写機でも回したように、ソイツは酷く唐突に、脳裏でフラッシュを焚いたのだ。

 光に呑まるる虹色の嵐。月影を砕く魔の奔流。嫋やかに砕ける金剛の細氷。空に舞う蛍火の揺めき。数多を紡ぐ機神の複腕。

 繰り広げられる光景は、来るべき未来の図。今は空想のままでいて、何れは現実となるだろう絵巻物。理由も根拠も無いけれど、何故かそうだと確信できた。千里の瞳が見せたことだと、素朴な理解がそこにはあった。

 限界を超える者。限界を認める者。執着に囚われた者。終着を見出した者。使命を守る者。機を駆る者。風を纏う者。

 終末の園だけではない。知りもしないはずのイメージが像を結び、無数の文字として顕れる。過去を、未来を映し出し、須臾の現実を映えさせる。狭間の現在(いま)を駆け抜ける、無数の『勇者』達を照らし出す。


 ――しかし、そのイメージの何処を探ろうが、最早。

「……………………へぇ。」

 そこには敬愛すべき神など居らず。ただ唾棄すべき傲慢だけが、厚顔を晒して立っていた。

━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━

 砂塵が舞い上がる。クロノスの双眸が光輝を宿し、麗人の要塞が顕現するとほぼ同時。終末の庭園を包む輝きの中に、一つの影が現れた。
 影の瞳が軌跡を描く。翡翠によく似た輝きがクイと傾き、天蓋を埋め尽くす魔塊の群を拝見し……何かを確かめたように頷いたその影は、カツリ、カツリと一歩ずつ、その白髪に歩み寄る。

 襲い来る光弾の雨嵐、光柱の裁き。堅牢なる氷晶を穿ち、尚も数十閃は威光を以て大地を濡らす。天の嘆きに呼応するように、地は石塊を撒いてその身を揺らす。

しかし、奇妙なことだ。その影は、まるで見知った散歩道を行くかのように、歩みの調子を変えはしない。彼の行く道に、ほんの小岩ほどの障害物も現れない。
 “これから何が起こるか”なんて、最初から皆知っているのでは――そんな寒気も憶えるほどに、彼の凍りついた眼差しはまるで歪むことがなく、ただ一点を見定めていた。

「――はあ、“正しき歴史を知る者”ね。そりゃまた随分と大きく出たもんだ。」

 小賢しい鎌鼬が空を飛ぶ。それを横目に流しながら、影ははたと立ち止まった。口を開いてみせたのは、今しがた“見定めていた者”の御足下。影は口角を吊り上げて、如何にも詐欺師らしく言葉を放つ。

「そうかい。そりゃまあ、人に失望もするわけだ。終止符を打とうって気にもなろうさ。大いに共感しよう、守護者サマ。」

 影の視点が鎌鼬の後を追うことは無かった。何故って、そんなこと決まってる。“行き先が分かりきったモノ”までわざわざ取り上げて見ていられる程の暇が、彼に無いだけのこと。
 だから手を貸すことといえば、ちょいと片手を標的だったろう少女の方に向け、ほんの少しばかり安全そうな道を整えてやるだけだった。送った電子機器の類も、その先にある程度は集中させた。彼女であれば、きっとそれで十分だ。

 となると、影の仕事は凡そ一つ。今しがた敢行している問答という奴だ。不遜な態度はより大きく、僅かばかりに示された慈悲をも足蹴にするように、言葉は次々と放たれる。

「でもな……言わせてもらうが。ソイツは、こ っ ち だ っ て 同 じ なんだぜ。俺たちは今しがた、アンタに心底失望したのさ。人っ子一人もマトモに手にかけられねぇ、世界の一つもマトモに保てねぇ、批判の一つも聞き入れられねぇ。人でもない、神と呼ぶにも烏滸がましい、卑怯者のロクデナシなんぞにはな。」

 “でなけりゃなんだ、今の不意討ち気取りの一撃は?”……そう重ねるように、爛々と影絵の瞳が残光を増した。深謀遠慮の瞳が語る。その倨傲と憤怒、白痴の塗り重ねが、聾で瞽の厚顔から神の化粧を拭い去ったのだと。

「如何なる批判も受け入れる? 結構、そりゃあおめでたい! い〜や、俺から敢えて弾劾しようとは思わんな。それは相手に期待していてこそ成り立つ話だろう。神様気取りの蒙昧に期待することなんてありゃしない。雷神にでも聞いたらどうだ。“神とは如何なる者なりや”ってな。」

 魔力充填率七割を突破。そろそろお披露目の時間だろう。火焔の収斂、此方はまだまだ先の話。光の雨が降り注ぐなか、影はその時を認知する。その胎動に伴って、語勢は少しずつ増していく。それらの全ては布石の為に。瞳は只管にその時を待つ。

「……ってわけで、だ。前言撤回。俺にとって、お前の存在は覚悟(みち)を示すべき対象(あいて)じゃない。なるほど、確かに俺たちの征くべき道は一つじゃなかろうさ。けど、そのどれを選び取ったって、お前の存在はもう必要ないだろうよ。」

 背後に迫りくる弾幕。ガンと地を蹴る音がした。この世ならざる存在を感じ……未だ晴れぬ砂塵の中に、消えぬ風の息吹を聞く。

 無数の光芒の螺旋の中に、勇士の紡いだつるぎを視た。そのときになって、この影はようやく理解したのだ。己の瞳が顕れた本当の存在意義を。瞳が宿す“真の力”というやつを。

「ところで……仮にも時を司る者ならば、知っているよな。どれだけ時を戻そうが、どれだけ時を変えようが、『ある視点』から『観測』され、一度でも時間軸の中で『確立』されちまった現実だけは、どうしてみたって根本的には変えようが無い。ある形の記録として、『世界』に刻み込まれちまう。」

 無数の機械が展開された。魔槍が宙を飛翔した。絶えぬ虹の輝きを視た。そのどれもが鋼の如き意志を宿し、一方向に突き進む――だというのに、何故だろう。目標(ターゲット)の眼前に佇むこの影には、弾丸の一つとして掠りもしない。

「けど、本来『世界』ってのは、無限大の可能性未来を内包した存在だ。だから、ほんの少しばかり『視点』を弄ってやれば、お前はその中から“自分に都合の良い展開”を自在に選び取れる。だからこそ、お前は無敵の存在なんだ。どんな現象が起きようと、好きなように時空を超えられる――」

 この大詰めにまでやってきて、影が語り聞かせてみせるのは、余りにも抽象的・概念的な世界のロジック。何を唐突に、或いはそう思うのかも知れない。何を悠長なことを、そう見下すのかも知れない。
 ……だが、考えてもみろ。無力な葦が使えるものは、掌に収まる程の知恵ばかり。わざわざ口を開いたのだから、意義が無い方が可笑しかろう。

 何故この影には、乱撃の一つも当たりはしないのか。何故この影は、攻撃が行われない位置を『知っていた』のか。何故この影は、これから起こるべきことを『知っている』のか。“正しき歴史を知る者”よ、神と云うなら見抜いてみせろ。見抜いて、今の状況が――


     ・・・ ・・・ ・・・・・・
「――――他にも『観測者』が居なければ、の話だけどな。」


 ――とうに時間切れであると知れ。もう気が付いたのかも知れない。或いは気付いていたかも知れないが、ここまで来たならもう遅い。


 極彩色の槍はたった今、『ワタシの横を通り過ぎた』。
 その事実は、この『観測者』の視点から確かに『観測』され、
 この世界の『記録』へと、確かに文字を刻みつけた。
 故に、この神槍はどれだけの時を遡ろうが、 必 ず この世界に出現し、
 神を律する鎖達は、 確 実 に この世界に躍り出て、
 神を罰する鉄腕は、 絶 対 に この世界の空を切り、
 神に仇為す絡繰は、 必 殺 の 芸術をこの世界に描き、
 神を焼かん窮極は、 必 滅 の 超新星をこの世界に喚び起こす。

 そうだとも、最初から最後まで、この『観測者』の狙いはコレだった。どれだけの時を遡ろうが、どれだけの改変をこの世に加えようが、曲げようのない『真実』をこの世界に刻むべく、この奇術師は現れた。
 『観測』の真価とは、即ち『事象の確定』だ。難しいことはない、特別なことをしたわけでもない。ただ、『起こるべきこと』が確実に起こるよう、神の権能に待ったをかけただけのこと。『時への干渉』すらも観測し、それすら時の流れに嵌め込んでみせる、一世一代の大奇術。

 代償は小さくない。この計略を始めた時――白髪の厚顔目掛けて喧嘩を吹っかけたその時から、神の所業を再現しようと脳は悲鳴を上げていた。所詮は人の身、キャパオーバーなど百も承知。たとえ上手く行ったとしても、本当に意味があるかも分からない。『この手番』を逐えたとき、自分はきっと倒れ臥す。

 それでも、それでも続けることが出来たのは――気絶して地に倒れる、そのほんの数瞬前に、驚愕に揺れる御尊顔を見てみたくなったから。わざわざ目前で時を巻き戻し、わざわざ此方にヒントをくれた、その高慢さに応えたくなったから。

 ――そして何よりも、奸計を巡らせて少女の命を脅かした、その罪の清算をさせるため。

「…………『不敗神話』はこれまでだ。さあ、来るぜ。」

 視界が揺れる。足元が崩れてゆく。『観測』が確定するまでの時間稼ぎが目的だったが……まあ、言いたいことは言えたろう。
 グラリ。『観測者』からの餞別はここまでだ。眩む視界の中、矢鱈と輝かしいその顔に向けて、最後にニイッと嗤ってやった。

>>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、キラー・テンタクラー、シエンタ・カムリ、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

13日前 No.1812

中二病は世界を救う @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_NqW

【狭間世界/終末/シエンタ・カムリ】

シエンタが着々と進める中、戦いは激化の一途を辿っていた。ちらと後ろを見やれば、そこに広がっていたのは衝撃的な光景。彼女はこの空間における最大戦力、ユーフォリアが光に呑み込まれる瞬間を目撃してしまう。
あまりの出来事に開いた口が塞がらない。彼女が戦闘不能、ないしは死亡などという事態になったら、本当に勝ち目はないのではないか? いや、諦めるな。まだ可能性はある。
マイナス方向に向かいそうな思考を振り切ろうと、シエンタはブンブンと頭を横に降って作業を続ける。いつの間にか、いつも被っているフードは取れてしまっていた。それでも、彼女は気にしない。
既に取り付けられればアンテナは三つ。後は仲間達の元に戻って最後のアンテナを突き刺せば、彼女の目論見は完成する。これがあれば、あの傲慢ちきな神気取りを、人間の領域へと引きずり下ろすことが出来るかも知れない。
そうと決まれば早速行動だ、シエンタが意を決して振り返った瞬間、眼前で人が吹き飛んだ。シフォンが何故ここに? 彼女の撃ち抜かれた肩、そしてこちらに向けられた時空神の手。
その二つと見たシエンタは、自然と答えに行き着いた。作業に夢中になって周囲の警戒が疎かになっていた自分を、奴は狙い撃ちしたのだと。シフォンはそんなお馬鹿な自分を護るため、犠牲になったのだと。

「どうしてさ。どうして、ボク程度のために、君がそこまで……」

はっきりいって自分はこの場においては単なる足手まとい。助けた方がいい人間は、他に沢山いる。まして、ユーフォリアがあんな状況なのだから、そちらを優先するべきだろう。
今まで、他人のために行動を起こすなどということはほとんどなかったシエンタだ。故に、シフォンの行動に困惑し、思わずその理由を問い質してしまうが……
なんだろう、この気持ちは。とても暖かくて、心地いい気持ち。どういう訳か、頑張らなければという気にさせられる。自分も、彼女の尽力に報いなければならないという使命感。
こんな自分でも、彼女は仲間だと思ってくれているのか。思わず、息を荒げるシフォンに手を差し伸べようとするが、身長差がありすぎて肩に手が届かなかった。
……クソ、何をしているんだ自分は。こんなところで立ち止まっている場合ではないだろう。仲間を信じるとは、そういうことだ。彼女は大丈夫だと信じて、己の役目に集中するべきだ。

「今日のボクはいつもにも増して機嫌が悪い。おバカな神め、生きて帰れると思うなよ」

彼女は敵の背中からそう啖呵を切ると、光が降り注ぐ中を駆け抜け、皆の元へと向かう。そこが、最後のアンテナを立てる地点。リプレイサーが送ってくれた電子機器からも、ありったけの電子を吸い上げていく。
地面に落ちていた小石に躓いて転倒、地面を転がりながらも目標地点へと辿り着いたシエンタ。土に汚れた顔を神へ向けながら、彼女はニヤリと笑う。
アンテナを突き刺すと同時に、四本のそれらが共鳴。激しい雷を顕現させる。だが、それは攻撃を目的として放たれたものではない。言うなれば、このアンテナに囲まれた空間は、シエンタの"場"。
相手が神格だろうと、知ったことではない。この限られた場においては、ボクが神だ。ルールを決めるのはボク。どんな神だろうと、シエンタに逆らうことは出来ない。

「もう逃げられないぞ。お前はそこで無様に、散々見下してきた人間様に屠られるんだ!」

勝ち誇ったような顔でそう宣言するシエンタ。いつもの一万倍は軽く動いていることもあって、息も絶え絶えだ。本音を言えばここらで休憩を取りたいところだが……
彼女は視界の隅で、自分を支援してくれたリプレイサーが倒れかけるのを見てしまった。全く、どいつもこいつも無茶をする。って、それは自分が言えたものではないか。
急いで彼の元へと駆け寄ったシエンタは、倒れかけたリプレイサーの腰に手を回して、その身体を支える。重い。貧弱な彼女の腕には、あまりにも酷な重量。
それでも彼女は、意地で彼を支えた。仲間に助けられてばかりではいられない。たまには、自分にもかっこつけさせろ。そんなことを思いながら、シエンタはリプレイサーに語り掛ける。

「倒れるならボクの視界の外でにしろ! そうじゃないと、ボクは君が倒れる度にこうやって駆け付けきゃいけないだろう!」

実に滅茶苦茶な理論だ。勿論、視界の外でなら無茶をしていいということを言っているのではない。これは、シエンタなりの、リプレイサーを気遣う言葉であった。
観測者の彼が確定させた事象、フォルトゥナの放った神殺しの槍が着弾する運命は、もはや変えられない。神の力を用いて逃げようとしても、無駄だ。今クロノスのいる空間の神は、このGOD_SIENTA様だから。
さあ、大人しく貫かれろ。そして降りてこい、人間と同じフィールドに。上から見下されるのは、もううんざりだ。覚悟覚悟と宣うなら、お前も同じ条件で戦う覚悟を決めてみせろ。

>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

12日前 No.1813

What is Evil? @libragreen ★iPhone=ZEqy7Fn7Md

【狭間世界/終末/ボルヴェルク、(餓狼ゲリ)】

「茶会も悪くないが、どちらかといえば酒宴を所望したい。 ワインに蜂蜜酒、サングリアがあれば尚更のことよ」

 その奇術師はボルヴェルクの正体や”兄者”との関わりなどを概ね看破し、戦いが終わった後の予定について悠長に語る。
 そして数多の電化製品をこの場に転送するという形でシエンタに奇跡を賜った後、黒風を伴って再び終焉の地へと踏み入れた。
 兄者が認めたこの男は、天魔を導く術を持たずとも柔軟な思考をもって知略や奇策を尽くし、戦線を引っ掻き回す。
 それ故に交換を為すもの、【リプレイサー】が奇術師の二つ名を持つ所以なのだろうとボルヴェルクは納得した。

 歴史そのものに押し潰されぬよう、ボルヴェルクをはじめとした防衛行動に移るもの達は時空神クロノスの眼中から外れる。
 その代わり時の氏神が狙いを定めたのは、攻勢に転じたもの達だ。
 レオンハルトとフォルトゥナの乱撃、ユーフォリアの補助攻撃を圧倒的な力で傷一つなく無効化。
 クロノスはその上で味方側のリーダーであるユーフォリアの頭上まで転移すると、強大な質量をともなう極光線を放ち彼女を地べたに激しく叩き落としてのけた。

 天から自分たちを見下ろす時空神は、白痴と罵られようと決して間抜けの類でなかった。
 周りが見えなくなる程に集中して4つのアンテナ作成に徹するシエンタを狙った光の飛ぶ斬撃は、戦術の理としてはたしかに適っていることだろう。
 しかし卑劣に見えかねなかったその行為は覚醒の片鱗を見せたシフォンが身を挺したことによってどうにか阻まれ、水晶イカことキラーをはじめとした彼女に縁ある人たちの逆鱗に触れてしまうことに繋がる。

「…ぽっと出である某が物申すのもなんだが。 考える葦として無限の可能性から自ずと道を選べる、混沌の世界に棲まいしものの歩みに正も負も、無かろうよ」

 今は亡き父上が如何なる使命や大義よりも後世に託せる「叡智」を全てにおいて優先したように、ボルヴェルクは何事も「納得」しなければ気がすまない性格をしている。
 更に彼は悪意に対して人一倍鋭い感性を持っているのだが、自身が味方する挑戦者たちとただ1人断固立ち向かう時空神からは、全くそのような気配を感じ取れない。
 たしかに避けられない真実として連盟と機構や古代と中世の者たちは、多くの未来を正史より良いものとすべく時空に干渉し過去の事象を塗り替える禁忌を犯した。
 今の時空神の心を満たす憤怒が至極納得のいく真っ当なものだとしても、それを機械仕掛けの女神が怒りのままに全否定し、リセットを行おうとしているのだけは認められない。
 彼らが創って切り開いた人の為の歴史よりも、クロノスが望むこの世界の正史とやらの方が悪くないものだとは限らないから。

 ユーフォリアを光線の中へと掻き消した間も無く、時空神クロノスは他のものを容易く一掃しにより本気を出し始める。
 次に空から降り注ぐ猛攻は、極光が瞬き地を穿つ流星群だ。
 拳の状態では埒があかないと判断したボルヴェルクは、即座に剣槍〈ガングニィル〉の形状を籠手から一対のグレイブへと分解・再構成する。
 石突き同士を合体させて両剣のような形態をとり、凄まじい速度で回転させれば小規模の嵐が巻き起こる。
 そして光の流星群や飛び散る瓦礫をも防ぐどころか、むしろそれらをクロノスの方まで撥ね返す盾と化した。
 絶対防御と謳われた氷河の盾が破られたとしても尚折れぬように食いしばり、ただ仲間たちを守護し抜くその一心で豪氷を折り重ね、硬くて丈夫な要塞を築き上げたシフォン。
 その二つの守りが合わさったおかげで、軽傷を負いながら致命傷を受けるのを免れた。
 更に身体を岩石で抉られながらその大半を凌ぎきった矢先、彼女は覚醒の片鱗が垣間見え、シエンタに迫った凶刃をも肩を切り裂かれながら防ぎってみせる。

「…恩にきる。 返礼として後の戦況に備えるべく、直ちにこの飴玉を服用しておくことを推奨する」

 わずかではあるが体力を回復する緑の葉型ドロップス”グリーン ハーブ”、わずかではあるが魔力を回復する紫の蝶型ドロップス”パープル バタフライ”。
 シフォンは防御に専念したあまり満身創痍となり、時空神を見据える形で待機している。
 敬意を払わずにいられない仁王立ちを見せつけた鬼司令官の彼女を労おうと、守りの回転を振り終えたボルヴェルクはそれらのアイテムを一つずつ惜しみなく手渡せば、前を向いて最終決戦の前線へ颯爽と躍り出た。
 しばしの間に眼帯をずらし、右の金眼とはまた異なる青紫色をした左の魔眼をよく凝らしながら改めて戦況を確認する。
 未だにこちら側が不利な方に傾きつつある中、己が為せるであろう最適な行いは何かを考えようと素早く思考を巡らせ始める。

 フォルトゥナは全身が裂けるような痛みを堪え、至高天の玉座に佇む神を引きずり下ろそうと黒曜の槍を射出する。
 キラーは親友シエンタに神の魔手がかかろうとしていた事に憤り、多彩な武装兵器の管弦楽をもって純然たる殺意と憎悪を神に差し向ける。
 鏖殺と迷走から立ち直ったレオンハルトは、核熱の魔剣を完成させようと紅蓮の炎の振幅をより溜めて燃え滾らせる。
 決意とともに黒鉄の拳を解ち放った魔法少女、ジークリンデの強力な突きの連打が唸りをあげる。
 辛うじて命を取り留めた時空の守護者、ユーフォリアは紆余曲折あって遂に分かり合えた妹を支援すべく神を繋ぎ止める虹の鎖を放つ。
 【リプレイサー】はいつもの奇術と異なる、《観測者》として新たに目醒めた力を行使してそれらの攻撃がいかに時を操ろうと絶対に当たると確定させ、その反動で不敵な笑みを絶やさぬまま崩れ落ちる。
 シエンタは不慣れな激しい運動の末にようやく完成した四つのアンテナを、終焉の地に突き穿つと同時にそれらが発する稲妻が生み出した領域の中で、小さな雷神へと進化する。
 とある並行世界の決戦において、星の意思と交信を図るべく用いられたかの操意針。
 それとほぼ同じ原理で神域の場をクロノスからシエンタへと塗り替えたその技量、感嘆せずにはいられない。

「餓狼ゲリよ、あの二人の守護を頼めるか」

 そうして次は、ボルヴェルクの手番へと回る。
 どこからともなく取り出した黒い烏羽を、非力の身でありながら倒れた奇術師を支えようと励むシエンタの方へと投擲。
 二人に着弾しようとしたその瞬間に羽を中心として闇の穴が生み出され、中から疾風を伴って白き餓狼”ゲリ”が召喚された。
 ボルヴェルクが自らの使い魔として使役する一対の狼のかたわれ、ゲリと対をなす白き貪狼”フレキ”は別件で派遣させているため、今回は餓狼のみの参戦とあいなった。
 主命をたしかに承ったゲリは、流星群に当たらぬよう不規則に軌道を変えながら疾駆する。
 そうしてシエンタと【リプレイサー】の元まで辿り着けば、貧弱な少女ひとりでは支えきれない奇術師の身体をくぐり抜け、ゲリ自身の背中に負ぶろうと協力をはじめた。

 使い魔一匹の行動を確認し終えれば、ようやくボルヴェルクは時空神と対面しようと天を仰ぐ。
 両手に携える一対のグレイブの刀身に、左腕から迸る闇の魔力を滾らせる。
 最大まで溜め終えたのを実感した直後に地面を強く蹴り込み、その勢いのまま踊るようにグレイブを振るう。
 そして六回も発された飛ぶ斬撃および闇の衝撃波が、数多の攻撃を確実にくらうという事象を決定付けられた時空神の動作を更に阻害しようと繰り出された。

(さて、仮に時の氏神を対等に引きずり落としたとして……某らの勝率が高くなるとは限らないだろうな)

 ユーフォリアたちが虹の力を行使するのを目撃する度に思い出す知識がある。
 今なお生きている母上からの受け売りだが、極東の北国に住まうとある民族にとってラヨチと呼ばれる『虹』は、不吉の象徴であるそうだ。

 ボルヴェルクという名の人造悪魔は、常に『最悪』や予想の斜め上となった事態を想像する。

  敵対するクロノスも、味方側である連盟と機構も自身が狩るべき『悪』の類じゃないととうに分かっている。
 しかし自分たちは無意識のうちに墓穴を掘っている気がしてならない、曖昧な胸騒ぎを感じていた。
 祈りを力とし、力を祈りとしてきた時空神がその程度で力を削ぎ落とされるのだろうか?
 阻害目的の攻めを終えてからすぐ様後方へと退き、次に如何なる事態に備えられるようシフォンたちと共に神を見据えて待機する。
 …この次からが決戦の本番と見て、覚悟しておいた方がいいだろう。

>>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、【リプレイサー】、ジークリンデ・エレミア、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー

10日前 No.1814

時空神 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_NqW

【狭間世界/終末/時空神クロノス】

神の圧倒的な力の前に、必死の奮戦を続ける人間達。普通であれば既に全員消し炭にされていてもおかしくない状況だが、幸いにも彼らは未だに全員健在である。
それだけでも凄まじいことであるのだが、攻撃が通る気配がないことを見せ付けられてもなお、戦意を失った者が一人としていないことも、特筆すべきことだろう。
クロノスにも、その覚悟は十分過ぎるくらいに伝わってきていた。彼らであれば、時空を護ることも出来るかも知れない。まだ確証には至らずとも、徐々に希望が生まれつつある。
意地悪く、神に相応しくないと言われることを理解しつつも行った、シエンタへの不意打ち。彼女が一人であれば、まず間違いなく貫かれていたであろう、悪魔の一撃。
避けようがないかに思われた惨劇は、身を呈して間に割って入ったシフォンによって回避された。結果として彼女は手傷を負うこととなったが、そうまでしてでも、仲間を守る覚悟があったということだ。
更にいえば、彼女の行動は、光に呑み込まれたユーフォリアの生存を"信じた"からこそ生まれたものであるといえる。あの状況であれば十中八九、ユーフォリアの安否確認を優先する場面だろう。
しかし、彼らは絶望的な光景を突き付けられても、己の役目に徹し続けた。助けに行くことだけが、信頼関係の現れではない。そしてユーフォリアは、生存証明という形でそれに応えたのだ。

一連の流れに、クロノスは人類の可能性を見出しつつあったが、彼女を取り巻く状況は既に楽観視出来ないものとなりつつあった。人類は、こちらを神の座から引きずり下ろすことを狙っているらしい。
フォルトゥナから放たれた、神殺しの槍。真っ向勝負の形ではどう足掻いても避けようのないものであると、クロノスは瞬時に判断する。彼らに対して行うのは不本意ではあるが、時空操作をせざるを得ないか。
そう思って能力を発動しようとする彼女であったが、直ぐ様異変に気付く。この槍は、如何なる時空の改変を行ったとしても、自らを狙って飛来し続けてくるではないか。
これには、さすがの時空神も一瞬ではあるが驚愕の表情を浮かべた。受け止めるしかないとなった以上、クロノスも無駄な足掻きはせず、槍を片手で掴み取り、その勢いを削ごうとする。
金属が擦れ合うような音が数秒間鳴り響いた後、爆発が巻き起こり、クロノスの姿は余波の中へと消える。キラーの弾丸の雨嵐、レオンハルトの魔剣、ジークリンデの体術、ボルヴェルクの闇の衝撃波が次々に炸裂するが、中の様子は確認出来ない。
最後にユーフォリアの放った鎖が命中し、何かが地面に叩き付けられる轟音が、終末全体へと響き渡った。巻き上がった砂塵によって、再び勇者達の視界は遮られる。

「貴方達の覚悟は確かなもののようです。現に、貴方は私を人間の領域へと降ろしてみせた」

明瞭になった視界の先にあったのは、神の領域に居座っていた時よりも遥かに神々しさを増し、存在するだけで全てを怯ませるほどの威圧感を放つ、クロノスの姿であった。
時空防衛連盟の面々は、神を人間の領域に引き摺り下ろすことで、対等な勝負が出来ると考えたのだろう。だが、忘れてはならない。神はかつて、人と同じ領域で共存し、そこで崇められていたのだということを。
つまるところ、神が最大限の力を発揮するのは、神の領域などではなく、人間の領域なのだ。彼女が後光をまとっているかのようにすら錯覚する神聖さが、終末を支配する。

「しかし、如何なるものを前にしても、貴方達は本当に時空を乱さずにいられるか。それをこれより確かめさせて頂きましょう」

その言葉と共に、クロノスは動く。まず右手を敵へと向けてかざすと、空間が振動し、その揺れが物理的な斬撃のような形で、全員へと襲い掛かる。
牽制の一撃を行うと同時に加速した彼女は、右手に時空を司るロッドを出現させると、それを振るって時空を裂き、一時的にではあるが断裂を生じさせる。
直後にクロノスの力によってそれは修復されるが、その際に発せられる衝撃波が攻撃となり、相手へ放たれる。まるで竜巻の中心にいるかのような強烈な風が、空間全体を駆け巡った。
人間と同じ領域にて、神たる所以を、これでもかと見せ付けるクロノス。だが、これはまだ序の口に過ぎない。時空防衛連盟の面々は、本当の戦いは今ようやく幕を開けたのだということを、痛いくらいに認識させられることだろう。

>ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク
【実質第二形態。これより、ラストスパートです……!】

9日前 No.1815

麗人 @sable ★05fpQN9itV_keJ

【狭間世界/終末/シフォン・ヴァンディール】

 前進、挺身、奮戦。常に全力でかかるのが守護者たる者の使命。投げ出し背を向けてはならない。強大な敵が立ちはだかろうとも。状況が絶望的であろうとも。
 そうでなくては意味がない。一度妥協という名の偽りの安寧に身を委ねれば、一生逃げ続けなければいけなくなる。逃避を重ねる者の言葉など、誰の胸にも響きはしない。
 一切の重みを失った空虚な文字の羅列では、神はおろか人一人を頷かせることも出来はしまい。なればこそ、この身を薪に。この血を油に。
 そんな時空防衛連盟の生き様は、僅かずつだがクロノスの心を変えつつあるようだった。そうだ。皆よくやっている。彼我の圧倒的な実力差にも怯まず、各々の役割を果たそうと必死だ。
 戦闘を得意とする者。知恵を働かせ流れを手繰り寄せようとする者。裏方に回る者。不要な戦力など存在しない。密に連携してこそ勝利がある。

「"ボク程度"は訂正なさい。一人欠ければ戦線は維持できないのよ」

 無理をしてまで自分を庇う意味が分からなかったのか、困惑気味に呟くシエンタ。息を整え諭すように返す。彼女には悪いが愚問だ。
 配られたカードで勝負というのは、何も手札を乱雑に切っていくことを指すのではない。一枚一枚の性質をよく理解し、最適な局面で投入する。
 無意味な損失を避けられるのならば、何としてでもその可能性にすがるべきだ。シエンタを立派な戦力と、何よりも仲間と認識しているからこそ、身を挺して庇った。それだけのこと。
 そしてユーフォリアもくたばってはいなかった。彼女を中心とした痕跡の巨大さ。自由に動かせないのが傍目にも明らかな身体。手放しには喜べないが、彼女もまだまだ戦える。
 妹の飛翔に呼応し放たれるは、先端に鋭利な刃を携えた虹の鎖。神殺しの槍がその力を遺憾なく発揮し――雪崩れ込む。弾丸の雨、魔剣、体術、衝撃波。
 ここまで一矢報いることすら能わなかった技の数々が、垂れ込める暗雲を打ち払うかのように炸裂する。引導を渡すかの如く一連の攻撃を締めくくったのは、親友の放った鎖であった。
 終末を揺るがす轟音。巻き上げられる砂塵。間違いなく効果はあった。神は人間の土俵へ引きずりおろされ――


 ――その輝きを増した。


 神を神たらしめるもの……それは比肩しうる者のない圧倒的な能力。人間は当然のこと、魔族ですら神の領域には至れない。
 かつてその力を振りかざし、現世に君臨していたからこそ。人間は神を恐れ、崇め奉るのだ。
 時空神を人間の領域に立たせたところで、決して弱体化などとは結び付かない。むしろその威容は、留まるところを知らず膨れ上がっていくかのよう。
 ここからが本番だ。最終戦第二幕の火蓋が、切って落とされる。

「如何なるものを前にしても、私の――私達の覚悟が変わることはありません」

 静かに呟き、傷ついた肩から手を放して前に出る。ボルヴェルクが託した甘味を口に放り込むと、僅かながらだが力が湧いてきた。
 あともう一発。完全に防ぎきれなくてもいい。相殺でも構わない。味方の進撃を阻む脅威を、一つでも多く塞き止められれば、それでいい。
 特攻精神ではない。神に覚悟を示すなら、これしかないのだ。

 右手を翳すなり、打ち震える空間。そこから生み出される斬撃は牽制に過ぎない――が、それでも力を増した神によるもの。直撃は死を手繰り寄せる。
 勢いづく時空神は、続けざまに杖を振るい、小規模な時空の断裂を引き起こした。修復すれども掻き消せぬ波が呑み込まんとするのは、他ならぬ時の守護者達。
 それだけは許してはならない。故に展開する、七色の防壁。シエンタを護った時と同じ要領で立ちはだかり、踏み込み――放出。
 しかしその守りは酷く不安定で、熾烈かつ数段に及ぶ猛攻を凌ぐには、あまりに力足らずだった。

「うあっ……」

 覚悟や努力とは裏腹に、いとも容易く打ち破られる防壁。時空神の思惑の奔流が、堰を切ったように溢れ出した。
 悲鳴も上げられないほどの痛み。斬撃は柔肉を切り裂き、衝撃波は無慈悲な突風の如く、脆弱なヒトの身体を責め苛む。
 挙げられた成果といえば、僅かに侵攻を遅らせたに過ぎない。盾の役目を果たすどころか、攻撃の勢いを削ぐことも能わず、地面に叩き付けられてしまった。
 まるで引かない鈍痛と、赤い軍服を上書きする鮮血。親友同様に手痛い傷を負ってしまったことを意味している。
 これが神。手の届く距離にいるが故に思い知らされる、如何ともしがたい実力の差。

 だが、そんなものは歩みを止める理由にはならない。ここで引き下がれば、仲間は当然のこと、神にすら示しがつかない。
 覚悟と闘志の再燃の証たるは、両の手に生み出された氷剣。黄金の雷電を纏う必殺の鋭刃。
 一気に態勢を立て直すと同時に、大きく跳躍し肉薄。魔力による身体強化を最大限に活かし、豪速の二連斬を繰り出した。
 えぐり抜いた地表にまで広がる硬氷。四方に飛散する電流。そして荒波の如く押し寄せる七色の煌めき。

 守りが立ち行かないのなら、攻めに切り替えるまで。自分に出来る最高かつ最善を、限界が訪れる瞬間まで叩き付け続ける。
 それだけだ。

>>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

9日前 No.1816

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_NqW

【狭間世界/終末/ユーフォリア・インテグラーレ】

あらゆる世界線を超えて飛行する神殺しの槍は、時空神を貫くとは至らずとも、彼女をその場に釘付けにし、直後に起きた爆発の中にその姿を呑み込んでみせた。
ユーフォリアの倒れている場所からでは、距離が離れていることもあり、中の様子は確認出来ない。だが、味方の攻撃の行く末を見る限り、命中はしているようだ。
自らの放った鎖は、連撃の最後を飾り、神の領域に居座り続けていたクロノスを、人間達と同じ領域へと引き摺り下ろす。轟音と同時に、揺れ動く地表が、その何よりの証であった。
されど、まだ戦いは終わっていない。足の痛みを堪えながら、どうにか味方の元へと舞い戻ってくるユーフォリア。満身創痍の身体に鞭打ち、彼女は立ち上がる。その胸に、時空の守護者としての決意を抱き。

クロノスは人間の領域へと降りてきた。対等な条件に持ち込んだことにより、形成はこちらの有利に傾くか? 否、晴れ上がった視界の先にいたのは、目も眩むほどの輝きを放つ神の御姿。
これこそが、時空神の真なる姿であった。かつて、神は人間と同じ領域において、その力を示したからこそ、畏れ崇められる存在になったのだ。つまり、彼らが最大の力を発揮出来るのは、人間の領域。
今まで領域という名の壁に阻まれていた相手の力が、一気に増大する。近くにいるだけでも圧倒され、気を失ってしまいそうなほどの存在感は、彼女が神である所以というべきか。
まさしく窮地。優位を手繰り寄せると思われていた策は、逆に相手の本気を引き出すだけの結果となった。こんな状況の中、自分達時空防衛連盟がするべきことは、一体何なのか。己に課せられた使命とは、神が求めていることは何なのか、彼女は思考を巡らせる。
そこで、ユーフォリアは一つの答えへと辿り着く。あくまで自分達がここへやって来た理由は、時空を護るためであり、決して神を打ち倒すためではないということに。

「神を恨んではいけないわ。私達は、あくまで罪人。時空を乱した罪は、認めなければならない」
「大切なのはそれを受け入れた上で、前へ進むこと」

味方の足並みを揃えるかのように、彼女は凛とした声でそう呟く。たとえ、どのような言い訳を並べたところで、時空を乱したことは紛れもない罪であり、それが消えることはない。
それを棚に上げ、こちらの言い分を押し付けたところで、クロノスは考えを変えてくれないだろう。大切なのは、人類が何を出来るのかを、彼女に示すこと。

「殺意を向けるのではなく、覚悟を向けるのよ」

ユーフォリアがそう告げると同時に、時空神の攻撃が始まった。激しく振動した空間は斬撃となり、神の力によって生じた一瞬の断裂は、凄まじい衝撃波となって、味方を襲う。
彼女はそれを前に虹の壁を展開するも、拮抗は僅かな時間のことで、暴虐的な力の前に押し負けてしまった。咄嗟に屈むことによって攻撃を躱し、事なきを得るものの、判断が遅れていれば、間違いなく絶命していただろう。
視界の隅で、親友であるシフォンが吹き飛ばされるのが見えたが、彼らは先程、自分が光の中に呑み込まれた際も生存を信じ、自らの役目に徹してくれた。故に、自分がここでそれに背く訳にはいかない。
先んじて攻撃へと転じた親友へと続き、ユーフォリアも飛翔、彼女に並び立つような位置から、眼前の時空神目掛けて、背後に展開した魔法陣より無数のレーザーを放つ。
それは、シフォンの二連斬に対する大きな支援となるだろう。未来を掴み取るその瞬間まで、決して立ち止まりはしない。それこそがユーフォリアがクロノスに向ける、覚悟の形だ。

>時空神クロノス、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、キラー・テンタクラー、シエンタ・カムリ、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

8日前 No.1817

約束を果たす為に @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【狭間の世界/狭間の最果て/ヴァイスハイト・インテグラーレ】

まだ動く。まだ立ち上がる。常人ならばとうに死んでいても可笑しくない出血に加え心臓への攻撃を受けて尚、奴は立ち上がる。――立ち上がり、そしてついにその時を迎える。

「終わり……だ」

どたり、と。バビロンが膝を突く。両手を地面に着いて立ち上がろうともがくが、最早奴の肉体はその精神に着いてこない。奴が最も嫌悪した"限界"が、奴自身に訪れたのだ。
男は嗤う。まるで自嘲する様に嗤うその姿は、酷く憐れに、とても小さく見えた。……或いは、それこそが、バビロンと言う男の真実だったのかも知れない。肥大化するばかりの、英雄への憧憬に執着し続けたその男が至るには、きっと相応しい結末なのだろう。

――だがしかし、だからと言って、其処がそいつの終着では無かった。

「な――」

一度は崩壊した肉体を、バビロンは意地だけで再び動かす。ヴァイスハイトが驚愕するのも束の間、再び奴は武器を取る。

「――っ!」

零距離の銃撃。咄嗟に銃身を手で払いのけ身を翻すが、完全には避けられずに銃弾が脇腹を掠める。
続け様に放たれる、死神の鎌もかくやと言わんばかりの鋭い回し蹴り。腕で防御を試みるも纏めて薙ぎ払われ、体勢を大きく崩す。
間髪入れずに繰り出されるのは踏み込みを伴う左のストレート。退けば致命になると判断したヴァイスハイトが咄嗟に取った行動は前進――だが、悪手。
直後、脳天を叩き割る様な衝撃が走る。バビロン渾身の頭突き――威力は最早人間が出せるそれではない。

「がっ……!」

正しく必殺の一撃をまともに受けたヴァイスハイトはふらふらと後退し――だが、倒れる事無く踏み留まった。
夥しい量の血を流し、満身創痍でありながら、ヴァイスハイトは未だ其所に立っていたのだ。

「俺には……負けられない……理由がある……!」

互いに全力を尽くし、此処に雌雄は決された。二人を別けたのは、実力の差でも、その身の限界でもない。ただ勝利への意志が、生きる事への執念こそが、ヴァイスハイトにこの戦いを制させた。

「お前が……間違っている、だとか……ぐっ。俺が、正しいだとか……そんな事を言うつもりは……無い。お前には……お前なりの理想があったんだろう。それを否定する事は……俺には出来ない」

ふらつきながらもヴァイスハイトは二本の足でしかと立ち、全てを出し切ったバビロンの前へ歩み寄り、その額に銃口を突き付ける。

「だが――お前は、俺の家族に手を出した。俺がお前を否定するには……それだけで十分だ」

ただ一つ、だが何よりも大切なその一つ。ただ、その為だけに、ヴァイスハイトは戦った。そして、それが報われる時が来たのだ。

「……今度こそ終わりだ、バビロン」

静かに、確かに、ヴァイスハイトはその引金を弾いた――。

>>バビロン

6日前 No.1818

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_iGf

【 狭間の世界/狭間の最果て/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 男は、飢えていた。

「いいぞッ――全力でぶつかってきてくれッ、俺の唯一の友よ!」

 適切な努力さえ積めば、どんな無茶でも必ず叶えられてしまうということそのものに。
 そして本気で生きて、この世界を変えようと努力を続けて来たという行為が、周囲から見れば異常極まりないということに。
 誰もがダン・マッケーニ=バビロンを恐れた。誰もが、ひがみの眼で見た。いいよなお前は、頑張れば出来るんだからと。

 何を言っているお前達。お前も、俺も、貴様も、あなたも、同じヒトだろう――何故そこで諦める、何故そこでやらない。
 死ぬ気で生きて、本気で努力を続ければ、この灰色の空にだって晴天はやってくるはずだ。
 だが、真面目に生きて、本気で世界を変えようとした男の執念は、終ぞ男を孤独にするだけに終わった。
 嗚呼、と嘆いた。ただ黙々と努力を続けて来ただけなのに、なぜここまで言われる、なぜやれない。
 何故誰もかれもが、俺を立役者のように褒め称える。阿呆か貴様ら、少し違えば俺の位置にはお前がいたはずだぞ。

 なんたる堕落、なんたる零落、輝かしき光はもう何処にもないというのか。
 それから、男の旅が始まった。

 ――怒涛の連続攻撃。真に英雄としての覚醒を果たし、ヴァイスハイトを圧倒するバビロン。

 彼は彼自身に宿った――皮肉にも、才能など何一つ無いという男が持つ、"人の才能を引き出す権利を与える"異能で以て。
 この退廃した世界で、ありとあらゆる富を牛耳った。あらゆる兵を手に入れた。あらゆる輝きを手に入れた。
 そしてそこにかけた情熱にも、行いにも、何一つ足りとて後悔したことはないし、今もしていない。

 ――だが、時間はやってきた。

「……っぐ、ごほっ、がっ……」

 覚醒を続ける己の肉体に、気を抜けばすぐに弾け飛んでしまいそうな負荷が常にかけられている。
 それこそがバビロンの終着点だった。だが、悔いはない。何故なら――目の前から銃を持ち、迫るあの漢を見つけられたからだ。

    、      、  ・
「……ハハ、ハハハハァッ――俺はまだ、負けていないッ……。
 人の世から光が消えれば、また、俺は現れる……その時、今度こそ、俺は英雄として輝くのさ……」

 血涙が。血反吐が。血だらけの腹部が。
 そのすべてが、暴食竜<リヴァイアサン>が満身創痍であることを表していた。

「ヴァイスハイト・インテグラーレェッ――俺を殺す者よ、俺に幕を引くものよッ……!
 本気で俺と相対し、俺を討つという偉業を成し遂げた漢よッ」
「どうか、俺が愛した世界に光をッ、俺が美しいと思った人々に笑顔をッ!!!
 これが成し遂げられなければ、俺は死んでも死にきれないさ……!」

 最後の最後まで、男は言葉を紡ぐことをやめなかった。
 男は満足していた。飢えはもう、満たされていたのだ。
 大事なもののために戦いきるという、ただヒトとして当たり前のことを成し遂げたその雄姿にあらんかぎりの激励を。


「その魂の輝きを、どうか絶やさないでくれェッ!
 お前が俺が誇る、唯一の漢なのだからッ――ハハッ、ハハハハハハハハッ、ハハハハハハハハ――ッッ!!!」


 ――銃声。

 男の旅路は、此処で終わった。
 暴食竜は、深い水底に身を潜め――二度と、浮上することはなかったという。

>ヴァイスハイト・インテグラーレ

【これにてダン・マッケーニ=バビロンは死亡となります】
【お相手、ありがとうございました〜】

6日前 No.1819

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_iGf

【狭間世界/終末/フォルトゥナ・インテグラーレ】


放たれし潰滅の槍、幾重にも魔力を練り上げた末に神にまで及ぶ域へと達した不可避の一撃。防ぐ術もなければ避ける術など存在しえない、文字通りの必殺。渾身の力と、友人の助力を加えた至高の煌めきが偽りの神へと襲い掛かる。
槍への対処を寸前で成功するも、続く味方の連撃によって爆炎の中へと沈む。苦痛と疲労感に苛まれながらも、どうにか着地し次へと備える彼女は警戒を緩めない。手応えはあった、だがそれだけだ。
最後に直撃した姉の鎖、その余波で巻き起こる砂塵の中から健在を示すかのように声が聞こえた。覚悟を示したと、そして人間の領域まで己を降ろしたと、そう語る声が。だが彼女は臆さない、怯えもしない、例え砂塵から現れたその姿が神気に溢れたものであっても。
その強大な力は確かに危険だ、だが先の攻撃で少なくとも神ではない事が分かった。あの毒は、この世界の生命には効かぬ毒、なれば目の前の存在は少なくともこの世界で生きる生命体の一つであり、人の理の中で存在する。
そして、例えどれだけの脅威を示そうともこの神とやらが偽りを騙らぬのであれば、怖れることはない。神は神ゆえに唯一性を保持する、人の記憶から薄れようとも個の神として残ったのならば、この存在が神と言う過程が前提であれば間違いはない。
それが態々人間の領域まで下った、そして力を増している。人と同じに在り、人よりも優れるが故に崇められ、それを力としているのであれば簡単な事だ。人間の領域に降りたとして、その脅威を目の前にしているのはこの面々だけ。
詰まる所、目の前の存在に対して恐れを抱かねばいい。恐怖が、畏怖が、畏敬が力となるならば、どこまでも神ではなく人と変わりない存在と思えば力を持った人でしかないのだ。最早、崇める存在が居なくなった神が人の下へ降りようと、無力でしかない。
だからこそ彼女は、次の策へと取り掛かる。かの槍と同じものを再度創り上げれば解決するが、その為には己が命を差し出しても僅かに足りないだろう。姉との約束があり、無茶も死ぬことも出来ない以上それは選択から外れる。
なればと痛む身体に鞭を討ち、構えを取る。小細工を用意できるほどの余裕はない、だが捨て身も許されないのならば実直に攻めるしかない。魔力が食い荒らした身体は再度魔力を通すだけで激痛を発するが、表情には出さぬと歯を食いしばる。
徐々に魔力の循環を上げていき、闇の魔力を身体に纏い始めた時聞き逃せぬ声が聞こえた。それは姉の声であった、本来であれば耳に入ろうとも警戒を緩めるには至らぬはずが、その内容の衝撃によって彼女自身に確かな隙を作ってしまった。
恨んではいけないと、我々は罪人であり時空を歪めた罪を償わねばならないと、そしてそれらを受け入れて前に進み、立ちはだかる神へ殺意ではなく覚悟を向けろと。何の聞き間違いでもなく、さも当然かのように語った。
神を恨んではいけない?神など居るはずがないのだ。居たならば彼女の父が悲惨な目に遭うはずもないだろう、だって神なのだ、そんな人為的な不幸を見逃すはずもない。だから、目の前の存在は神では何でもない。そのはずなのに。
罪人?時空を乱した罪?罪など、償いなど人が勝手に定めだものを神が下すと言うのか。誰がそんなことを語ったのだ、その神が時空を乱すことへの言及をしたのか、人間達はただ歩みを進めただけ。そのはずなのに。
それらを受け入れろ?その理不尽に殺意を見せずに覚悟を見せろ?姉が言う以上、正しい事なのだろう。だが、正しいと分かっていても納得が出来ないことだってある。何故身勝手な神とやらを受け入れて、傍観者風情に人間が左右されなければならないのだ。
その思考の乱れを突くかのように、不運にもかの存在が力を振り翳した。彼女の立っている場所は、この場の誰よりもかの存在と近い場所であったことも、不幸と言えよう。

「くっ、……まだ―――ぐあっ!があっっ!!!」

反応速度によって闇の魔力を纏った拳で急所への直撃を逸らすも、続く斬撃にて彼女の腹部には朱の一文字が刻まれる。それだけでは留まらず全身を余すところなく斬り刻み、更に止めを刺すかのように吹き荒れる嵐にも勝る衝撃波が防御の構えを取っていた彼女を弾き飛ばした。
地へと叩きつけられる度に紅い飛沫を撒き散らし、この世界に赤い斑模様を彩らせていく。ただでさえ強力な攻撃を近距離で受けたこともあり、傷は深く、彼女の勢いが弱まるのはキラーの隣へ叩きつけられた頃であった。
叩きつけられた場所を認識すると同時に、キラーとシエンタに対して闇の膜を展開する。咄嗟なもの、そして魔力を正確に編めない事を加味すればあくまで直撃を防げる程度のものでしかない。その代償は大きく地面を滑りながら、その口元からは赤が溢れ出していた。
深紅の帯を地面に描きながら、全身裂傷塗れの中どうにか立ち上がろうとする。彼女が着用しているスーツは赤黒い液体に侵食されており、僅かな間でもその足元に血溜まりが出来るほどの重症。
肩で息をしながらみ、揺れる視界とふらつく身体をどうにか抑えつけて立ち上がる。視界に赤が混じったかと思えば、叩きつけられた時に多少の傷を負ったようだ。身体の裂傷に比べれば微々たるものではあるが、視界が塞がれるのは邪魔なことこの上ない。
だがここで倒れ伏すわけには行かない、一人倒れればその補助の為に倍以上の人数が必要なのは自明の理。それに加えて決して死ぬわけには行かないのだ、姉と交わした約束がある以上は死んでも死に切れない。
さらに姉とその親友が覚悟とやらを示すために果敢に挑んでいる、未だに姉が言った言葉が理解も納得も出来てはいない。それでも、死地へ飛び込んだ姉を見捨てる理由にはなりはしない。
ドックタグを放る為に腕を振り上げようとするも持ち上がらない、裂傷の一部が筋肉にまで達しているのだろう。よく見れば腹部の傷も腸が今にも溢れ出そうだ、全身に痛みが襲うあまり痛覚が麻痺し始めていると気が付いたのはこの時だ。
思うように動かない右腕を、左腕で支えながら手の平をあの存在へと向ける。滴る血の感触、歪み始める視界を余所に魔力を編んでいく。身体の内から突き刺すような痛みに悶えながらも、徐々に手の先へと球状に闇が集い始める。
全身に凍えるような悪寒を感じ、呼吸さえ震え始めても彼女は膝を折る事すらしない、最早意識を保てていることが不思議なほどの様相。それでも彼女の視線は未だにあの存在を射抜くように見つめている。眼光の鋭さは変わらぬどころか、増すばかり。

「覚悟、か。私が持てる覚悟など、姉さんの為の物しかないが―――貴様にも見せてやる」

闇の珠が瞬間に収縮し、膨張の後破裂と共に数多の光条を描きながら暗黒の流星として飛来する。その数は五十にも満たない上、威力も決して高くはない、しかし姉とその親友への補助としては多大な効果を発揮する。
レーザーの隙間を埋めるように飛び交う漆黒、斬撃に合わせて反撃を牽制する為に機を見て飛来する闇の流星、絞り出した魔法であってもこれだけの精度を保てていることが彼女の実力を示している。しかし、身体の限界は既に迫っていた。
喉奥からせり上がる粘度の高い液体を、堪え切れずに吐き出す。最早血化粧を施していない個所など見当たらぬ程に、彼女は満身創痍であった。緑がかった金髪も血に染まり、決して美しいと言う感想を抱けなくなっている。
それでも尚倒れる事を自身で許しはしない、魔力を通し簡易的な治癒を行うも表面的な傷は僅かだが治療されるも、深い傷と魔力の過剰使用による体内の傷は治る気配はない。特に後者は治癒に魔力を使用しているため悪化している。
足元に広がる深紅の華は花弁をまた広げていく、そこへと倒れ伏す時は近くとも、彼女が姉の為の覚悟を持ち続ける限りは有り得ぬことだ。

>>時空神クロノス ユーフォリア・インテグラーレ シフォン・ヴァンディール キラー・テンタクラ― シエンタ・カムリ ジークリンデ・エレミア リプレイサー レオンハルト・ローゼンクランツ ボルヴェルク

6日前 No.1820

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_NqW

【狭間世界/終末/キラー・テンタクラー】

「生きて……いや、知っていたとも、私の完璧な演算能力の前には、この程度の結果は当然の如く予測されていた、あえて言うならば、動揺したフリをして友軍の奇襲をサポートすると言う完璧な行動!!」

視界に広がった虹の柱、それを見て思わずキラーは本心を口から出してしまいかけたが、すぐに何時もの態度を取り繕って「当然だ」「知っていた」などと自分の評価を上げようとするような発言を繰り返す。
その姿は偉大さと言うよりは滑稽さだったり、アホさが浮き彫りなるような物であるが、彼の性格上もっと詐欺めいた発言は到底出来る物ではない。
とにかく後ろから聞こえてくる声からして、信用して託しただけあってシエンタは当然生存しているようだ、そしてこちらから叩き付けられるのは最大火力という言葉では表現しきれない苛烈な飽和攻撃、地球上の生物のどれであっても耐えられるはずも無く、仮に戦艦だろうと粉砕できるようなそれを前にして……奴は何も抵抗しなかった、いや、出来なかったと言って良いかもしれない。

ユーフォリアの放った鎖に引き摺り下ろされるかのように、奴は砂煙の中に消えた。
一人勝ち誇った笑みを浮かべて今にも胸を張って笑いそうなキラー。 だが、そんな彼のあまりにも楽観的な思考は聞こえてくるクロノスの言葉によって粉砕される。

"覚悟が足りてるならもう退いてくれ頼むから"そんな胃がミンチになりそうな言葉を胸に秘めつつ、キラーは再攻撃の準備を行う。
その際、シエンタの様子も振り返って確認する、先ほどシエンタを守ってくれた者は、明らかに守勢に回らせるには限界が近い、だとするならば。

いや、しかし、攻撃こそが自分の役割であると。
などと考えている内に、ユーフォリアの言葉を受けて、キラーは混乱する。

「あぁ? 神への殺意、私は親友を傷つけられ……えぇい面倒くさい! 知った事か、私は"友人を守る"、それだけだ!!」

計算を繰り返す、大した答えは出ない、殺意を向けるなと言われようともキラーにとっては友人の存在が全て、故に、友人を傷つけた者は何であっても破壊しなくてはならない。
だが、それが誤った事だと言うのなら。
これ以上傷つけられないように勝手にやらせてもらう、そんな捨て台詞を残して、キラーは武器を無数のドローンと触手に分解して折角作った不退転の体勢を解除、そのまま後退してシエンタの前に躍り出る。

「シエンタ、お前は人間だ、人間ならばさっきの言葉の意味が分かるのか? 私には分からん、神など、罪など、人間など、私の知った事ではない。 ……勝手だと笑うが良い、私はお前がそう言ったように振る舞い、友を自分本位に守る!! 電力が要るなら早めに言え、攻撃が激しくなったら聞くのすら厳しいからな!」

そして、呟くようにシエンタに問いかけた。
ユーフォリアの言った事の意味は分かるのか? と。
だが、その直後に、自分は分からないと断じて、勝手に、自分本位に、世界など、時空など、知った事ではなく、自分にとって大事なのは唯一無二の友人なのだと、だから、殺意を向けるのはやめる、だが、自分がやる事は懺悔でも何でもなく、守ることだ、と。

――何時も通りだ、好きに動け、私もそうする。

無数のドローンが一斉に同じ形態「シールド」に変形する、勿論それらに衝撃波一つすら止める力は無い、だが、既にフォルトゥナが作り上げてくれた防壁がある、近接戦を挑んでいる彼女がこれを作る労力など、自分が防壁を作るよりも何倍もの消費があるだろうに、だ。 それを中心に防壁を強化するため、シールドを何重にもそれを展開しキラー本体は対空砲を形成して、シエンタを絶対に守るための防衛陣を作り上げた。

>時空神クロノス シエンタ・カムリ (フォルトゥナ・インテグラーレ) 周辺ALL


【おそらくこの後はキラーのレス回数少なめになるので、放置して進めてくれても大丈夫ですー!】

5日前 No.1821

黒翼 @kyouzin ★XC6leNwSoH_2YW

【→狭間世界/???→終末/Cluster】

かち、かちと時計が音を刻む。
一秒一秒が緩やかに流れるこの時、ようやく自分の戦いが終わったのかもしれないとある種の安堵を覚える。
元世界政府科学者ノイス・ヘルメラは、最高傑作と最高傑作の戦いを終えて、ようやく戦いから離れる事が出来た。

あの後彼は真っ先に、ザーシャをベットに担ぎこんで治療を行った。
もしこれが初回であったのなら、損傷の激しさもあって相当な時間が掛かっただろう、しかし、一度中世から戻ってきたときに既に治療した事がある身体だ、クラスターにとって彼女の治療は容易い。
もちろん、大部分は彼女自身の驚異的な再生能力のおかげであるため、ただ出血を止めて、治りが早くなるように計らったり、ベットを用意し、「おやすみ」なんて面白みに欠ける言葉を口に出すぐらいしか出来なかったが。
ともかく、もはや是正機構が無くなった以上は、生活空間はテロリスト時代に使っていた拠点になる、使えるようにしなければと雑ではあるが整理を行っていた時、ふと、クラスターは空を見上げる。

裂けた空、異常気象では片付けられぬそれを見て、クラスターは「もはや関係の無いこと」と吐き捨てようとした、しかし。

「"そうじゃねえだろ、全部が両立出来ねえもんだと考えていることが間違いだろう!?"だったかい? ……有象無象が幾ら死のうと僕の知った事じゃあない、でも、そうだね、僕と君しか生きれないような世界と言うのは面白みに欠ける、それに何より――あの方の世界を壊すような真似は許さない」

ザーシャの言葉を復唱して、クラスターはゆっくりとザーシャを寝かせた部屋に入る。
まだ目は開いていない、覚めるはずがない、まだ回復するほど時間は経っていない、傷口を見れば、まだ生々しいそれが残っている。 少しマシになっているだけ、驚異的な再生能力なのだが。
一緒に行くのも一興、と思ったけど、無理をさせるのは趣味じゃない。 だから。

――行って来るよ、ザーシャ。 是正機構幹部としての仕事がある。

黒翼は再び舞う。

そして、時刻は"現在"。

「――及第点の戦いぶりだ勝利者諸君、そして裏切り者共。 恨みではなく覚悟か、ならば僕もそうするとしようかッ!!」

聞き覚えがある者も数人居るような声がこの場に響く、そして、時には耳障りにすら思えるようなエンジン音が唸ったかと思うと、凄まじい速度で全ての者を置き去りにするようにクロノス側に突っ込んでいく物が一つ、それはどう見ても戦闘機の見た目をしているが、ただの戦闘機などでは決して無い。
一気にそのままクロノスに突撃する訳でもなく、衝撃波の合間を縫うような奇怪な軌道を描いてクロノスの側面を駆け抜けて背後に行ったかと思うと、その場で変形。

その歪な前傾姿勢と漆黒のボディを現し、反応の隙も与えず、全身に内蔵されたミサイルを見せびらかすようにハッチを開く。

「歴史是正機構副将"黒翼"Cluster。 戦闘を開始するよ」

この歴史是正機構が壊滅した今、狂信者のように歴史是正機構を名乗り、ヴァルガス亡き今、該当者は一人しか居ない副将を語る者。
黒翼のCluster、語る単語一つ一つが悪名となり、"有象無象を見下ろす黒き翼"、"無知なる民を焼き殺した火器の数々"、"その言動"全てが「大多数の敵対者」の風格に相応しいもの。

次の瞬間には、こんな状況であるにも関わらず連盟の誰かを血祭りにあげんと攻撃を開始してもおかしくない狂人、だが、彼が今狙うのは、ひとつ。

「そうとも神よ! 人間は罪深い、時空改変に限らず、過去の人類と言う枠組み全て、全てがだッ! だが、それを正そうとした"あの方"は、罪を犯していたとしても、間違いは決して犯していない。 最初から正解など引けはしない、だが同時に、一度の罪がこれほど大きな物だと語るならば、次はより上手くやれるのだと言う事を、僕は貴方様に一方的に伝え、そして――今日だけは退かせるッ!!」

全身に内蔵されたミサイルが一斉に彼の身体から離れ、轟音と煙を撒き散らしながらクラスター本人のように予想の付けづらい奇怪な動きを取りながらクロノスへ向かう。
彼はヘルガがどうなったかなど知らない、連盟に殺されたのかもしれないし、そうでないのかもしれない。

だが、彼はこの時だけは、連盟の味方、は無理でも、クロノスへの敵対者として姿を現した。

>時空神クロノス (ザーシャ) 周辺ALL

5日前 No.1822

Another Messiah @zero45 ★pB1cyTl1jZ_iGf

【狭間世界/血塗られた島/海底洞窟/ファントムメサイア】

 絶対である筈の優勢が崩れ去り、散々見下して来た人間や魔族風情に追い詰められている不可解な事実を前に、魔人の表情は激しく歪んで行く。強者の余裕は既になく、対等なる土俵へと引きずり降ろされた彼女は、猛烈な殺意を露わとしながらも激昂し、不条理な現実を打ち砕くべくして一手を投じる。
 総ての人類の抹殺を図った神の大洪水の如く、天地万物を洗い流す大津波。激しく荒れ狂う水の上を風となって駆け抜け、濁流に飲まれようとしている脆弱下等に死を齎すべく距離を狭める。無様にも自らを護る事で手一杯な騎士の姿を見て、下衆な笑みを浮かべて嘲り喜びながら。
 不可視の風は刃となって敵を切り裂く。魔族の身体に紅き一筋を奔らせ、騎士の身体を苛み、魂にも等しき鋼を打ち砕く。裂ける大地に呑まれて奈落へと沈み行く二人。残る一人は機転を利かせて逃れたようだが、その足掻きもいずれ無駄となる。堕ち行く者達へと引導を渡した後、然るべき末路を辿らせてやるのだ。

「まだ、足掻くのか! 脆弱な下等風情がぁぁぁぁぁっ!」

 だが、そうした決意とは裏腹に、誰一人とて未だ死に至らない。主を、世界を護り抜く勇敢なる意志を宿した魔族は、力を振り絞って津波を乗り越え。絶体絶命の中で、真に相応しき舞台を思い出した騎士は、力強く立て直して地の底から再び舞い上がる。
 その光景を前に憤る魔人は叫びをあげながら突撃して行き――その最中、騎士が手をかけた一振りの剣を一瞬だけ注視する。忘却の彼方へと追いやり、微かな物となった筈の記憶がこの瞬間、急速な勢いで蘇り始める。
 かつては師と敬いながらも、堕ちたその末路を侮蔑し、引導を渡したその相手。彼女が振るった、栄光と潔白から遠くかけ離れた漆黒の剣が、どういう訳かこの騎士の手元にある。そして、誇り高き勇者の意志を継ぎ、正義の刃として振るわれようとしていた。
 刹那に巻き起こる烈風の柱。新たなる風の精霊魔法によって放たれる、神速を超えた超神速。

「おのれ……こんな事が、こんな事があって……」

 既にその疾さは魔人のそれを遥かに凌駕していた。肉薄されたその刹那、魔剣で受け止めようとするも、意識を騎士に集中せざるを得ないこの状況に於いて、それは不可能に等しい物であった。後方へと退いて距離を稼ごうにも、敷かれた包囲がそれを阻害する。
 それでも最大限を尽くして魔剣を構えて防御の姿勢を取り――次の瞬間、その刃は折れ、魔人の身体は維持する魔力ごと殺され、大きく消し飛ばされる。辛うじて残ったと言えるのは、頭部と両足。見るも無残な姿となった彼女だが、まだ確実な死は訪れない。その魂を維持するだけの魔力が尽きぬ限り、魔人の執念もまた尽きる事はない。

「……あるものかぁぁぁぁっ!」

 しかし、勝負は決している。彼女の頭上から出現した大量の土が、その悪しき魂を墓標へと封じ込めるかのようにして落下し、身体を悉く呑み込んでゆく。最中に響かせるは断末魔の叫び。見下し、侮蔑して来た者達からの報復を為すかの様な終末が今、魔人に訪れようとしていた。

 そして――土が最後まで積もったその時。墓標へと封じられた魔人は死を迎えた。二度と蘇る事なく、この狭間世界と共に完全なる消滅を迎える事だろう。

>ゲイル・ベネルド ロコ 橋川清太郎


【大分遅れてしまいましたが、これでファントムメサイアは死亡とさせていただきます。
 お相手ありがとうございました!】

5日前 No.1823

Scarlet Flame @zero45 ★pB1cyTl1jZ_pcO

【狭間世界/終末/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 神との覆し難き地力の差。八方塞がりの苦戦を強いられる只中で、立ち込める暗雲を吹き払う逆転の一手は遂に完成を遂げる。幾重にも重ねられた魔力、異質の理へと昇華された"それ"が成すは、虹の残滓を迸らせる暗紫の槍。
 時空を歪める権能さえも打ち破り、大気を突き抜けて行った烈槍は"神殺し"の魁を為した。炸裂する爆発の中へと雪崩れ込んで行く勇士達の一撃。暴雨の如し弾丸の嵐、未完を冠す核熱の魔剣、神を屠らんとする烈拳、滾る冥闇の衝撃波――そして、神を人の領域へと引き摺り下ろす虹の鎖。
 地表へと叩き付けられる轟音と共に舞い上がる砂塵。晴れた先に待ち受ける姿は――

 ――"神殺し"は為された。されど、光輝は絶えず、尚も輝きを増す。

 対等の領域へと引き摺り下ろしたとして、必ずしも神の力を貶める物とは限らない。遥か古の時代、神は"人の領域"に存在し、その威光と力で人々を畏れさせ、崇めさせて来たもの。故に最大限の力を発揮できるのもまた、"人の領域"なのである。
 尤も、かの時空神を筆頭とする格上の神々との繋がりが途絶えた現代はおろか、古代にまで遡っても、その答えに行きつく事は出来はしないだろう。邂逅の瞬間を迎え、漸くその存在を初めて認知した程に、神が去った後の人々は"神"を知らないのだ。
 後光を纏うかの様な錯覚を引き起こす神聖さを宿す威容を前にして、レオンハルトの心は僅かながら気圧される。魔王との激突を為した時の様に、如何なる存在であろうと対等の敵として、ただ塵殺の一端として切り捨てる存在として扱うだけの意志があったならば、微塵も揺れ動く事はなかっただろう。
 しかし、今の彼は違う。純然たる赫怒に心を支配される事なく、外れた枷に再度枷を付け、人を越え神をも越える超越する意志を捨て去った。幾らか人には近づいたが、依然としてその身体が"人擬"である事にも変わりはないが、その胸に秘める心は間違いなく"人"の物だ。

「……この程度か?」

 右手を合図に振動する空間、其処から生じる斬撃。牽制の一撃でありながらも、秘めたる力は並大抵ではない。回避するなり、防御するなりと脅威を耐え抜く術を講ずるのは必然と言えよう。だが、彼はその必然に反し、真正面からそれを受け止める。
 肩を裂く斬撃。揺らめく焔の代わりとして、吹き出るは鮮血。纏う衣服を血で濡らし、足元の大地を紅く染め上げる。
 間髪無く続く、時空断裂の風。駆け巡る衝撃波を一身に受け、その身体の悉くを切り刻ませ、真紅を迸らせる。既に傍から見れば満身創痍と疑う様相、瞬く間に嘗ての戦いでの重傷を連想させる姿と化した彼だが――その足取りは尚も力強く、前進し続ける。

「この程度で、覚悟を折る事は出来などしない……!」

 我が身を襲う激しい傷の痛みすら物とせず、烈火の剣に絶やさず送り込み続ける魔力。滾らせる紅蓮は一際燃え広がり、天高く掲げれば、焔の刃は天を衝く程までに伸び広がる。それ程の様相を見せながらも、鍛造の段階は半分にすら到達していない。
 そして、その間にも攻めは滞らせる事無く続かせる。剣先を神の心臓へと向け、跳躍した勢いのままに肉薄を果たして、放つ刺突の一撃。間髪入れずにそのまま地を蹴り上げて、心臓から頭頂部にかけてを断つ切り上げの一撃。火焔を散らしながらも空中での高速回転の末に放つ振り下ろしの一撃、計三連に渡って放つ猛連撃。
 "人の領域"へと引き摺り下ろされ、真の力を発揮した神。"それがどうした"と言わんばかりの威勢を保ったまま、挑み続ける。

>時空神クロノス 周辺ALL

4日前 No.1824

中二病は世界を救う @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_2YW

【狭間世界/終末/シエンタ・カムリ】

この場に集った全ての者の力を結集し、遂に神を人間の領域へと引きずり下ろした。砂塵の向こう側で件の人物が墜落した音を聞いたシエンタは、思わずにやりと笑う。
人間の力も捨てたものではないだろう。そんな考えを脳裏に浮かべる彼女であったが、次の瞬間視界に飛び込んできたのは、全く予想だにしていなかった光景であった。
自らの領域から蹴落とされ、その力を失うとばかり思っていた神は、むしろそれまでよりも激的に輝きを増し、より強大な存在となって、眼前に君臨しているではないか。
これにはさすがのシエンタも、己の目を疑うしかなかった。電子のフィールドを作るという盛大なことをしでかしたというのに、それすらも徒労に終わるというのか?
大地を踏みしめる二本の足が、ガタガタと震え始めた。絶対に逃げ出さないと誓ったはずなのに、心は逃げるという方向に傾きかけている。歯を食いしばらなければ、今にも敵に背中を向けてしまいそうな精神状態だ。
そんな中、彼女を踏み止まらせたのは他でもない、キラーの言葉であった。あいつは、こんな状況でも逃げないで戦っている。なのに、自分だけが退散するなんて、あってはならないことだ。
彼は、ユーフォリアの言葉の意味についての質問を投げ掛けてきた。覚悟、か。自分にとっての覚悟とは、どんなものだろうか。それをキラーにも分かるように示すなら……

「君が今抱いた感情、それが覚悟ってものさ。ボクとフォルトゥナのことを護るんだろう? それで十分だ、君はもう覚悟の意味を知ってる!」
「キラー、君はそのままでいい。正直、ボクにも罪とかそういうものは分からないさ。でも、そういうのは大人に任せておけばいいんだ。今何をすべきかなんて、聞かなくても分かるだろう?」

シエンタはドヤ顔でキラーにそう告げ、笑ってみせる。彼は、友人を、自分とフォルトゥナを護ると、そう宣言した。それこそがキラーなりの覚悟であり、神に向けるべきものであるのは間違いないだろう。
フィールドの維持で精一杯のシエンタに降り注ぐ攻撃を、キラーがシャットアウトする。いつもと何ら変わりないことのはずなのに、何故かたまらなく嬉しかった。
人類が犯した罪、きっとそれは時間遡行に関係するものなのだろうが、いくら天才と呼ばれるシエンタであっても、精神面が13歳の子供であることに変わりはない。
故に、彼女はそれをはっきりとした形で理解することは出来なかった。だが、いいのだ。やるべきことに集中すれば、きっと神もそれを認めてくれるはずだから。

「いつまで寝てるんだ君は! ボクはこいつを保つので精一杯なんだ! 早く起きないと丸焼きにされるぞ!」

そう言って、腕の中で倒れたままのリプレイサーを叩き起こそうとするシエンタ。彼女も攻撃へ加わりたいところであったが、残念ながら全ての力をフィールドに注がなければならない状況。
こんな重要な局面で役立たずになるのは恥ずかしいし、グレードA失格だとも思うが、まあいい。たまには、見せ場を他の奴らに譲ってやろう。今回の自分は、裏方に徹させてもらう。
覚悟の証明を望む時空神。シエンタにとって覚悟とは、誰かのために必死になること。今までは自分本位で、他人に迷惑を掛けてばかりだった彼女は、自らを制し、皆を支えることに全力を尽くす。

>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、シフォン・ヴァンディール、レオンハルト・ローゼンクランツ、フォルトゥナ・インテグラーレ、キラー・テンタクラー、リプレイサー、ジークリンデ・エレミア、ボルヴェルク

23時間前 No.1825

ジークリンデ・エレミア @infernity☆ABoQ4DiOf0I ★PSVita=66hUEMgB70

『狭間世界/終末/ジークリンデ・エレミア』

この場に集う仲間達の攻撃が次々と時空神クロノスに当たっていった。
最後にユーフォリアの鎖により地面に叩きつけられる音が響き渡ると、煙が立ち込め、時空神クロノスの姿が隠れる。
時空神クロノスを人間の領域へと降ろすことが出来た。
しかし、相手の姿を見る事が出来ないものの、ジークはこのままでは終わらない気がすると思っていた。
次第に煙晴れていくと時空神クロノスの姿が見えてくると、初めよりも神々しさと圧倒的な威圧感を放っていた。
「…っ!?」
その圧倒的な威圧感にジークは当てられるが、彼女は泣き喚いたり逃げ惑う事はせず、
ジークはしっかりと相手を見据え、この場から立ち去ることはしなかった。

相手は右手をかざすと、空間が振動を起こし、斬撃がこちらに迫ってきた。
クロノスは更にロッドを出現させ、それを振るうと時空が一時的に断裂が発生した。
直ぐに修復されたようだが、それにより衝撃波が放たれ、竜巻の中にいる様な強烈な風が吹き荒る。
いつぞや戦った事がある人物が起こした風とは比較にならない程のものだ。
斬撃はジークの友人に刀使いの居合剣士がおり、以前戦った事がある為か冷静に対応。
再び「ゲヴェイア・クーゲル」を使用。15の魔力球を生成して全てを斬撃に放つ。
その後、衝撃波は飛行魔法を使い上手く回避行動をとる。

「そんな簡単な・・・。いやでもヴイクターも似た様な事言うとった様な・・・」

ユーフォリアの言葉には考えさせられる。罪を認め、受け入れて前に進む。そう簡単にはいかないもの。
ジークは思い出すように独り言を呟く。
「人間の奇跡を見せる」とはジークは言うが、それはこちらの世界でのこと。
覚悟をしめたとして、本来いた世界に帰った場合も同じ考え、同じ気持ちでいるとは限らない。
わからない。惑い、迷い。ジークはまたしても揺らぎと浮わつく。

「どうしてやろうな・・・わからない・・・中途半端やから私(ウチ)はこんなにも迷う。
それでも、私(ウチ)は! 私(ウチ)自身を、人間の奇跡を信じる!」

今はただこれしか言えないが、この戦いが終わる頃にはきっとジークも、はっきりとした覚悟を示し、成長する事だろう。
「エレミア流外式!パイル・バンカー!」
ジークは右手に魔力を集中させ、それが完了すると右手を時空神クロノスに向けると固定プラズマ砲を放とうとした。

>>時空神クロノス、ユーフォリア・インテグラーレ、フォルトゥ・ナインテグラーレ、リプレイサー、レオンハルト・ローゼンクランツ、キラー・テンタクラー、ボルヴェルク、シフォン・ヴァンディール、シエンタ・カムリ、Cluster

8時間前 No.1826
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