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【ALL】World of Chronicle【戦闘】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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スレ主 @vtyjf ★A4upMHBbLt_AkG

2072年、気温は上がり続け、環境破壊は留まるところを知らず、富める者と貧しき者の差は広がるばかりであった。世界各地で紛争が勃発、富める国は己を守るために隣人に銃を向け、貧しき国は被害者面をして隣人から略奪を行おうと戦争を仕掛ける。地球人口は減少の一途を辿り、人類が滅びるのも時間の問題かと思われた。

バベル、神へと手を伸ばした塔と同じ名前を与えられた巨大建造物。

・・・・・・・・・・・
ある日突然そこにあったように突然現れたバベルと、そのバベルの施設を作動させることが出来るノアと名乗る自動人形。世界は「斯くあるものではなく、斯くあるべし」、手を取り合い死と苦痛がない世界を共に作ろうと願うのならば、世界はその通りになるだろう。そう言いながらノアは人々の救済に奔走する。

暗黒の時代を照らす一筋の希望に、人々は寄り添い、力を合わせて幸いの下に新世界を作り出そうと集い始める――その希望の光が、何であるかも知らずに。

【クリックありがとうございます。当スレは一章完結形式の戦闘スレとなっております。ご興味のある方はサブ記事までどうぞ】

1年前 No.0
メモ2017/06/17 21:07 : スレ主 @vtyjf★GFYUJuZycW_VuR

【本編開始しました】

【三章開始しました】

三章概要

ノアが本格的な新世界の創造に乗り出し、旧世界に残された時間はあと僅か。

焦燥、不安、自暴自棄、様々なものが渦巻くレジスタンスは、持ち帰られた情報を下にノアのルーツ、始まりの場所と目される研究機関へと目をつける。

奥多摩にて閉鎖され、廃墟となったその場所に、希望があると信じて――


一方新世界派、ノアへの猜疑心、恐怖、怒り、様々な想いが交錯し内部に不和を生じ始める。

新世界創造の最終段階として眠りについたノア、その監視の目が届かぬうちに暗躍する者たちも現れ――


レジスタンスを追い研究施設へと向かう者、ノアの目を掻い潜りノア内部を調べる者、希望を信じ突き進む者、様々な想いが入り交じる。

異世界への研究が進められていた研究施設、その奥に広がる様々な世界、最奥で目覚める意思。ノアの過去が眠るこの地に何があるのか。


賽は投げられた、もはや後戻りの道はないのだから――


三章終了条件

・研究施設最深部への到達


【ロケーション】


以下のロケーションには症の最初に強制転送され、各場所の敵を倒すことで最深部へと移動可能になります。


・灼熱の世界

辺り一面溶岩と炎が吹き出す死の世界。僅かにむき出しになった岩石の山も高温を発し、ただ人であれば長居するだけで命を落としかねない危険な場所。足を踏み外せば溶岩の革へと真っ逆さまということもあり、常に死がつきまとう地獄である。


・極寒の世界

雪と氷が延々と続く氷獄。あらゆる生き物が時間を止めたそこは、まさにアイスエイジ。止むことのない吹雪と、吹き付ける氷点下の寒風が刻一刻と訪れたものの命を削る。緩やかな死が支配する世界は、一体何を内包しているのだろうか。


・滅んだ世界

崩れた町並み、未だ消えぬ炎、下敷きになった人々の死体に、もはや機能を失った道路。人類の終末があるとするならば、こんなものなのかもしれない。

…続きを読む(100行)

切替: メイン記事(393) サブ記事 (134) ページ: 1 2 3 4 5


 
 

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 帝都情報蒐集院/地下禁書庫/立花・ァ 】

【レベル3→4 残存2】

 >佐山

 語られる希望は、なるほど確かに夢物語ではないだろう。整合性があり、道理があり、あるいは可能なのだろうと思わせる力があった。

「……無理です」

 だが――ァは俯き、否定する。猜疑ではなく、心底から思うがために。
 ァはずっと願い続けてきた、宗茂の目覚め。想いの強さならば、この世の誰よりも勝るという自負がある。だが、ァの願いが世界を満たす概念に届いた試しなどなく、それが戻らない原因を定義付けするという工程がなかったためだとしても、彼女には佐山の言葉を否定せざるを得ない理由があった。

「……私は貴方がたを裏切りました。既に一人、かつて仲間だった方に怪我を負わせています。こんな私と……私たちのために願ってくれる人がどれだけいるというのですか」

 離反という負債。事ここに至っては浅慮と言わざるを得ない、宗茂を救うためという意志のもと行われた愚行。
 声を震わせながら、初めから仲間を信じていればこうはならなかったのだと、ァは痛いほどに理解した。目先の希望に縋った結果が、どん詰まりの現在(いま)。
 宗茂のためなら何でもしてみせるという思い上がりが、結果的に彼を救う手立てを失わせたのだ。

「……私にそんな資格はありません」

 挫けそうな心が、己の喉に刃を突き立てたい衝動に駆られる。

「ですから、」

 差し出された右手を、握り返すのではなく、そっと両手で包んで押し返す。

「暫く時間をください。出戻りとあらば手土産が必要でしょう。情報にせよ首級にせよ、相応のものを得るまでは戻れません。それに宗茂様を置いてはいけないですから」

 ……それが彼女の意志。彼女なりのけじめのつけ方。
 己の浅はかさに恥じ入り、折れかけた心は、それでもと希望に縋るからこそ立ち上がる力を得た。それは決してァがひとりでに得たものではない。彼女と、彼女の愛した男が、また並んで立つことができるようにと救いを探し、道を示してくれた者がいたからだ。

1年前 No.301

獅子心王 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_VuR


【 帝都情報蒐集院→撤退/地下図書庫→撤退/セイバー(獅子心王リチャード) 】(レベル4/残:3P)

 やはり獅子心王と同じ認識のとんちきは他にも数名いたらしい。外からも中からも聞こえてくる轟音。彼らもやはり、図書館の耐久力は星の聖剣を叩き込んでも壊れやしないという自信があったのだろう。古書や蔵書の幾らかは犠牲になるかもしれないが――そこはあれである、名誉と栄誉にかけて必ず償えばいい。現にこの場所であっても、貴重な古書などの八割は消え去り学者諸君が血の涙を流して慟哭、五体投地しかねない有様になってはいるが……そこはどうにでもなる。そう信じたい。
 で、あるところまではよいが――。

「――何?」

 名乗られたその真名に目を見開くこととなる。
 今、目の前の騎士王は一体何と名乗った?
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 ブリテン王アルトリア・ペンドラゴン。よもや、自分は憧れの騎士王に己の真似事の聖剣を向けていたとでもいうのだろうか。残念ながらそれは事実のようである。にわかには信じがたく、疑わしき自体。しかしそういえば――あの聖剣、どう考えてもこの世に二本とない本物の聖剣エクスカリバー。
 肩が震える。
 こんな奇跡と偶然があるものだと神に感謝する。

「……いいだろう!
 まだ物足りないところはあるが、今度は互いに何も気にすることのない戦場で撃ち合おうではないか。
 我が敬愛する騎士王よ。――俺の真名は獅子心王リチャードである!」

 そして、彼は風のようにこの場から立ち去っていった。
 嵐の如く、吹く台風のように。
 この場に大破壊の結果だけを残しながら。

>アルトリア

【ヴォー……レス遅れて申し訳ありません。お相手、ありがとうございましたー】

1年前 No.302

教祖 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【帝都情報蒐集院/1Fサーバールーム→撤退/黒火のミルカ+浄罪歩兵+浄罪火兵+黒龍大公突撃兵】

極めて幸運な事に、この1Fサーバールームはまともな戦場にはならなかった、いや、ある意味当然と言えば当然の事だったのだろう。
多数の場所にて強力な能力者たちによる激戦が繰り広げられ、その衝撃や連絡はミルカの持っている通信機で十分すぎるほどに伝わってくる。 途中で五月蝿くなって電源を一度落としたほどに。
とにかく、この場だけは、平和その物で、非常に強盗紛いの行いをするにはちょうど良かった。

何せ、敵陣営の大半は、無差別殺戮兵器「バグ」か、或いはこちら側の能力者に足止めされるか、殺害されており、たまに生き残りが迷い込む事はあっても、そんな連中は常人外れた戦闘能力を持つ、監視として待機させている"冥王"から借りた不死兵の敵ではない。

最初こそ緊張感を持って作業に当たっていたミルカであったが、すぐに椅子に座って部下に雑な指示を下すだけの存在と化していた。
彼女の言葉を借りて言うならば、まさしく「左団扇」でくつろぐだけで成果が出る素晴らしい状態であった。

そして、自分はここにあったデータをある程度保存したUSBメモリや貴重品らしき物をばっちり持って、部下たちには無学なのをいい事に、明らかに価値が無いが、彼らの立場からすれば「珍しい」物を寛大にも持ち出し許可を与える。
そんな事をやっていると、通信機から入ってくる情報が変わり始める。

何でも、あまりにも非現実的な報告だが、はるか上空にデカいのが現れたとの事。 デカいのはこっちに居る化け物だけで十分なんですけどねえ、なんて考えながら報告を聞き続けていれば、どうもバグや他の能力者共が撤退し始めているらしい、それに勢力の区別も無い、との事。

「よぉーっし! 全員、十分にモノは漁り終えましたね。 早速ですが悲しい報告です、制空権取られてます。 おそらく敵が引き上げ終わったら爆撃かそれに類する物が始まります。 よって、敵の引き際に乗じて私たちも引き上げますよ。 なに、玄関でやりあってた連中は消えましたし、主力がやりあってる所避けて退けば万事問題なく済みます」

そのように、ミルカは部下たちに指示を下し、開いていた古びた冊子を閉じて、展開していた不死軍を本の中へと戻して、我先にと外に飛び出して、来るときに使っていた騎兵をまた五人呼び出した。
やはり、外に人は居ない、居ても、撤退途中だったりと、こちらとの交戦意志があるのはほとんど居ない、と言うか、これほどの戦場で、偶然とは言え、無傷の部隊規模を有するこちらに仕掛けてくるのはよっぽどの馬鹿だ。

そんな中で、部下の一人が「では他にも連絡を」なんて言って来るが、すぐにソレをミルカは撤回させる。

「は? 何言ってるんですか、この期に及んで退かないお馬鹿ちゃんには好戦的な新世界派を引き付けるって大儀があるんです。 情報を持ち、帰還せねばならない私たちの盾になって貰います、本人はそう思ってないでしょうがね。 ほら、この騎兵たちは私の兵、乗り遅れても迎えに来てはくれませんよ。 分かればとっとと撤収!!」

心底人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、ミルカは他の者にも撤退勧告を出さない理由を説明する。
……それは、言い方はともかくとして、一応、正しい事ではあった。

そして、黒火の兵士に、この状況で、騎兵と言う逃げ道をわざわざ自分から潰すような勇気あるもの、あるいは無謀な人間は居なかったようで、すぐに全員が馬の背中に飛び乗って、それを確認してミルカは内心満足。
そのままこの一団は逃げ出したが、ミルカが近くに怪我をした敵兵が居る事を確認すると、玄関から出る直前に、戯れに部下に指示を下す。

「浄罪火兵! 天井に魔法をぶち込みなさい! 崩れた天井すら退けられないような怪我してる連中はここで敵味方問わず囮になって貰うとしましょう! 敵なら私たちを殺すより他の元気な敵兵はそいつらを先に助けようとします、味方なら敵をひきつけてくれます! ははは!」

その命令を忠実に遂行する魔法兵は、戦闘によって崩れかけている天井に魔法を叩き込み、入り口を塞ぐ。
勿論、不死騎兵の名馬に乗るミルカたちの一団は、一切の被害無く、「一番弱ってる連中」が通れて、尚且つ集まってきそうな出入り口を塞いでから撤収した。

幸いなのは、周囲に確認していたのは敵兵のみで、味方は確認できなかった、と言う点だろうか。 勿論、その後から味方がそれによって足止めを食らう可能性も無くはないが……まあ、能力者の類ならばこじ開けるだろう。

そんな事を行ってから、ミルカたちはこの戦域からいち早く脱兎の如く撤退した。

>ALL

1年前 No.303

魔法少女 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

【帝都情報蒐集院/2Fサーバールーム/巴マミ】


 強引だが、道は拓けた。後はどれだけ離れられるかと、ノアが起こすであろう破壊の規模次第。
 足は空回っていないか、二人も問題なく走れているか、例え自分一人が脱出できたとしても、それでは意味がない。
 だからこそ力付くでの突破を選んだ。道中で足止めを食う訳にもいかないし、アレだけ派手に音を出しておけば、一刻を争うこのタイミングで音の原因を確かめようと寄り付く者もいないだろう。
 残るは純粋に速力──瞬間、脇目も振らずに脱出口を目指して進む背中を、後押しするような風が奔った。

(風? いったいどこから……)

 建築物内で、しかもこんな都合の良い風が偶然に吹くはずがなく、人為的に発生した物なのは明らかだった。
 其れはシスティーナ=フィーベルが持つ能力。風を用いての速度強化───此れが、この世界に根付いた理によって、
 更なる進化(レベルアップ)を遂げた物。撤退をより確実な物とするべく放たれたもう一押し。恩恵を受け、直走る。僅かな残時間が過ぎてしまわない内に。

 これならば間に合う。少なくとも、蒐集院からの脱出が失敗することはないハズと確信出来る。


 そうして駆けながら──思うことがある。


 座していたノアが、自ら動き出し、概念核を奪い返さんと強硬手段に出た。圧倒的な武力で以て──
 これまでは、言い方は悪いが、いち駒である私達に任せていたものを──いや、そもそも彼女は本当に自分達の行動を杓子に入れていたかすら、
 今日の行動を見る限り定かではない。いずれにせよ、あの方舟と宣言は、最早私達がノアの代理人として行動する必要が無くなったという事を暗に示しているようで、

        ・・・・・・
 其れはつまり、残された時間がもう殆どないのだと。かつて夢見た新世界は目前に在りながら、然し今は拭えない疑念が其れを嬉々とはさせない。


 刻まれ始めたタイムリミットは、この蒐集院が破壊されるまでと示された時間のように、ハッキリとはわからない。
 "ノア"、"バベル"、"平行世界"───足りない欠片を集めて、バラバラだった真実がパズルのように完成した時、見えて来るのは一体何か。


 ───ノアが望む新世界は、誰の為の物なのか。


 其れが開示されない限り、ノアの世界を形にさせるのはまだ早過ぎる。
 確かめなくては成らないだろう、同じ道を進んでくれる人達と共に。

 次に向かうべき先が何処か、それは……

>>マリア、システィーナ



【これにてマミさんは撤退扱いと致します、半端な描写になってしまい申し訳ありません……; 御相手ありがとうございましたー】

1年前 No.304

アルトリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【帝都情報蒐集院/地下図書庫⇒(地下禁書庫)/アルトリア・ペンドラゴン(Lv4/2P)】

 名乗ると同時、はじめて男の視線が明確に驚嘆を示す。
 先程までの興味とは違う、微かなものではなく、明確な動揺を示したもの。
 動揺―――そう、動揺だ。願ってもなかったと言わんばかりの様子は、先程までの言動を耳にすれば理由も分かるというもの。どうあれ信奉の対象じみた物言いをされるとは思っても見なかったし、それを逆手に取るような物言いはあまり好ましいものではなかったが………それをせざるを得ない理由はいくつかあった。
 そもそも、アルトリアの望みは別に戦うことではない。
 あくまで此処に来たのも、果たしてこの戦いがなにを意味するものなのか、それを見極めるためだ。その上でこのような宝具同士の衝突などという凶行に及ばざるを得なかった以上の消耗は大きく、長引けば長引くだけ目的を果たすための時間が減るという事実。
 宝具の開帳をする瞬間まで気付かなかったということに、我ながら察しが悪いものだと辟易するが、こんなものを想定している人間が居るとすればそれはそれで問題だ。そこは割愛としておく。

 尤も、そうは言うが結局のところ、時間切れと呼んでいい状況にはなってしまった。
 頭の中に響く無機質な声―――それが新世界派の首領であり御旗であり象徴でもあるノアのものだということに気付き、これが10分後に明確な攻撃を行うことを伝えて来た以上、此処に留まることはこれ以上出来ない。
 頭上からどのようなものが襲い掛かろうとも斬り伏せる自負はあるが、肝心の資料だの情報だのまで守り切れるかと言われると不可能だ。それを弁えているし、そもそもどれだけの位階と霊基を確保しようが、そんなことが出来るほどサーヴァントは万能の存在ではない。頂に立つような例外ならばともかく、死ぬ時はあっさり死ぬものだと理解があった。そこを弁えず慢心するものほど、死に場はあっけない。


「………良いでしょう、貴公の名前は確かに覚えました。また来るというなら是非もない」


 風のように去って行ったそれを見送る。追撃は無意味かつ、無謀だ。
 此方はあのセイバーと同じ程度の消耗で、死力を尽くす場がここかと言われると断じて違う。
 獅子心王と名乗った男が、最後まで此方の意図とは若干ズレた思考と結論を出していたこと―――それは、先程の宝具の使用によって思い切り塗り替えられた彼への印象を思い出す度、脳が、意識が警鐘を鳴らすところからもお察しだ。
 ………厄介な相手に捕まった。なにがと言われたら、それは彼が力量の伴う悪童というところか。
 行動に理屈がないから、なにが目的かも判別し難い。即ち何をしでかしてくれるか分からないのだから、悪人ではないが自走する危険物程度には思っておいた方が精神衛生的に良好である、というのがアルトリアの結論だ。

 少女は嘆息しながらも、せめて持ち帰れるものだけ持ち帰るべく歩き出す。
 時間は―――ない。なにも見つからなければ速やかに脱出する必要があるが、そこは問題ないだろう。
 あまり言いたくはないが、先の衝突で見事に地下から地上へ通ずるように開いてしまった大穴/近道がある以上、脱出にそこまで時間は掛からない。多少の猶予は残されているはず。
 なにもなければ………無論、撤収するだけだが。誰かが居ないとも限るまい。

>セイバー(獅子心王リチャード)


【いえいえ、こちらこそお相手ありがとうございました】

1年前 No.305

シンク @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【方舟/教会/シンク】

「大したもんだよ、アンタにとってアレらは敵ですらなかったワケだ、
 しきりに帰還者―――それと、投降者も出たには出たって報告がある。あっちは散り散り、士気ガタ落ち。今後鬱陶しいちょっかいが出されることは少なくとも今までと比べれば減るだろうね」

 ―――ぱち、ぱち、ぱち。
 じつに乾いた拍手を鳴らすと共に、教会の扉を乱雑に開ける少年の姿が一人。

「ただ、狂王が逝った。まあ、つまんないヤツだったし、突っかかるところでも間違えたんじゃない?
 あ、いや………こんなの大して興味はないか? アンタには」

 烈風のシンク、新世界派の上位戦力のうち一人。
 先の蒐集院に派兵された魔王や狂王と比べれば確実に格は落ちるとはいえ、少なくともその内部の戦闘能力から上位に位置づけられるのは間違いない人物―――それが、少年の軽い声色で微かな皮肉じみた言葉を乗せて、眠っているノアに語り掛けている。

 場が場であることを考えれば、眠っているノアのもとに単身、それも敬意もなにもないような、むしろ挑発じみた態度すら感じさせる物言いでやって来たこの少年を新世界派の純真な人間が見れば、何事かと激怒されても文句は言えなかった。
 先程の戦場に参加せず、別口の任に就いていたシンクだが。そも、彼は前回のような乱戦状態に飛び込むような人種ではない。
 隠密・破壊工作・暗殺………“烈風”の名を冠する少年の職務がなにかと言われたら、基本はそんなところだ。前回のそれだって、たまたま帰還して来れば襲撃があったから、面倒だが点数稼ぎをやっていた程度に過ぎない。
 その彼がわざわざ、最大戦力である魔王と狂王を差し向け、最初から乱戦状態にある蒐集院での戦闘―――あまつさえ、最終的にはこうなると分かっていた状況で自分から降りて積極的な戦闘を行うなど、有り得ないと言っても過言ではなかった。彼はそういう余計なことをしない人間だからだ。

「さ、て。………それでどうする。いいや、どうして欲しい?」

 閑話休題。内側で眠っているノアに対して不遜な態度で語る彼は、状況の確認に来ただけだ。
 先の通りだが狂王は落ちた。仮にも実力の数値を位階として例えて基本レベル5に達する波濤の獣(クリード)は、しかし無謀極まりない前進の果てに討伐されたというわけだ。心底つまらない結果に終わった上に、ラフレシアと名を冠する巨大兵器を抑えてみせ状況の均衡を維持した魔王と比較すれば状況への貢献度は雲泥の差だが、これのせいで手駒としてはノアが出なければつり合いが取れない状況になったこともまた事実。
 尤も結果は、むしろその逆。
 方舟の存在がすべてを変え、どのみちあと数分であの地域は塵と化す。
 つまるところ、これから先の戦闘状況に関して、シンクはなにかいちゃもんを付ける気はない。

「ボクが言うのもなんだが、連中はまあアンタの要求には従わない。
 抗戦するだろうね。醜く足掻くことに関して、人間っていう生き物は一流だからだ」

 故に、シンクとしてはその先のことについて指示を受けねばならないとも考えていた。
 受けたからどうするとも限らないが、しかし少なくとも彼女の思想と自分の目的は合致している。
 思想と思想が、ではない。思想と目的が合致するのだ、少なくともこの場においては。

 ―――かつ、かつ、かつ。靴の音が、やがてノアの眠る場所の近くにまで響く。

「間違いなく、いずれ放っておけば連中は打って出る。
 だからその前に位相空間より引き摺り出して焼き殺して、概念核を取り戻して方舟を完成させる。
 そう言うのは結構だけどね………ボクらとしてもこの先について聞きたいわけさ。分かるだろ? ボクらがアンタに付き添っている理由は新世界の完成、誰も苦しまない世界っていうお題目なんだから」

 彼女の語る理想を信奉する輩は多い。
 指示さえ出せばあっという間に大衆は靡いて、悪よ死すべしと感情は傾くことだろう。
 ただ、シンクはそうではない。
   、   、   ・・・・・・・
 彼はもともと、そんな都合の良いものを信じていないから、真っ先に懐疑心を持った人物だった。

「つまり………ノア、アンタがこの先“ボクら”にどうして欲しいのか。ボクはそれを聞きに来たのさ」

 しかし、その懐疑心の結果がバベルへの残留という一点を導き出したこと。
 其れに関して―――いまは、なにも語るまい。

>(ノア)


【不都合でしたら蹴っていただいて構いませんので〜】

1年前 No.306

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 帝都情報蒐集院/2F図書庫・西側/セイバー・リリィ 】

 >バッツ、人修羅、クー・フーリン・オルタ

 霊基消滅――狂王クー・フーリン・オルタが光の粒子となって崩れ去っていく。既に息絶え、倒れ伏した彼は片膝をやや曲げ先を指差すような格好で。完全に消え去る直前、なにか喋っていたような気がしたが、それは果たして現実か幻聴か……。

 終わったのだという実感と、勝利したのだという確信。激突の余波でもはや見る影もないほど荒れ果てた図書庫へ、再び静寂が訪れる。

「やった……」

 静寂を破る少女の声。

「やった、やりましたよ皆さん……! 全員で力を合わせたから勝てたんです! こんなに嬉しいことはありません!」

 どこにそんな元気が残っているのか、飛び跳ねんばかりの勢いでリリィは勝利を言祝ぐ。が、「ぁ、」と小さく声をもらしたかと思えば、膝がかくんと折れ、リリィはその場にへたりこんだ。
 限界に達した疲労のせいだろう。腕をあげるのも億劫なほど身体は重くなり、片腕に至っては麻痺して指一本も動かせない。
 それくらいで済んだのはむしろ僥倖、意識があり、現界を維持していられるのだ。本来ならば、あれで消えてもおかしくはないような無茶をした。短時間に宝具を二度も使うなど、リリィの燃費の悪さではとても出来ることではない。
 斯くあるべし――この世界を満たす概念のおかげだろう。概念の働きによって限界突破した身体は、魔力の回復もそれだけ早めていたらしい。戦闘終了と同時にブーストは解けたものの、おかげで現界していられるだけの魔力が残された。
 ともあれ、これにて一つの山場は終了。喜びのあまりリリィは周りが見えなくなっていたが、二人は無事だろうか。宝具発動に際して降り注がれた治癒の光が、人修羅へ届いていればいいのだが――。

1年前 No.307

バッツ @antinomie☆yzl4MFL1dRLB ★sLdIAtRTAq_VuR

【 帝都情報蒐集院/2F図書庫・西側/バッツ・クラウザー 】

かくして、少年少女と青年一人の三人パーティは狂王を沈めることに成功した。
その散り様を直視したわけではない。当然だ、今の今まで自分は必殺の一撃を通すための撹乱を買って出ていたわけであって、トドメとなる攻撃を通したのは二人になる。
この世界に敷かれた所謂概念とやらを利用した、大規模な魔法が消えていく感覚を肌で感じる。そのまま、バッツは音を立てながら倒れ込んだ。
一呼吸おいて、更に大きく息を吸い。一、二回深呼吸を繰り返した後、仰向けに寝返りを打って顔だけを二人に向ける。

「……お、終わったぁ。二人とも、無事―――なのは、必須だな」

凄まじい疲労感はあるが、少なくとも外面だけで見れば最年長である自分が事後処理の一つでもこなさねば、という思いがあったのだろう。
飛ぶように起き上がりながら、騎士剣を支えにその場に立ち尽くして唱えるのは回復魔術『ケアル』だ。
残念ながら、魔術適性が高いわけではない上に先ほどまでの立ち回りで体力も魔力も枯れ果てている自分では焼け石に水程度の回復力しか提供できないのだが……まあ、ないよりはマシだろう。
これで、残る問題は。

「こっからどうするか、だな……凄い、物騒なこと言ってるけど」

ちょいちょい、と天井を指差す。
無論、この施設の事を言っているのではない。脳に響く声と、その内容に関してのことを言っているのだ。
脅迫のようなものだ。従わなければ此処は消し飛ばされてしまうらしいし、正解なのはさっさと二人を連れてこの場から離れることなんだろうけども……。

「……動けるか?動けないなら俺が二人とも抱えちゃうぜ」

せめて、足があれば良いんだけどなぁ。なんてことを考えながら、一先ずの同意を求めながら二つの人影へ少しずつ歩んでいく。
此処に来て元の世界の相棒が恋しくなるとは思わなんだ。

>リリィ、人修羅、クー・フーリン[オルタ]

1年前 No.308

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

帝都情報蒐集院/大階段/藤原妹紅】

【レベル3 残り4ポイント】

>>櫻井螢、(壇黎斗)

炎に耐えきれず蒸発した味方に罪悪感を覚える余裕もなく、妹紅は一瞬の空白に叩き込まれた。紅と蒼の炎が鬩ぎ合い、互いに引くことなく互いを喰らい尽くそうとした結果起きたのは爆砕。右腕の肘から先を真っ黒に炭化させ、爆風に弾かれる形で妹紅は爆心地から大きく後退した。

「カ、ハ――ッ」

痛みを感じる暇もなく焼き尽くされた右腕はもちろん、全身重軽問わず無数の火傷が出来ている。常人であれば命に関わる傷を受けて、しかし妹紅が浮かべたのは笑みだった。

「やっぱり、想像以上だ――私が炎で傷を受けるなんて何十年かぶりだ」

さあ、続きをやろう、と。剣を手にした少女へ再び襲いかかろうとした妹紅は、ぴたりと動きを止める。

そこにあるのは、一瞬前の笑みとは真逆の感情。落胆と失望。猛り狂っていた炎も、妹紅の心情を表したかのように火勢を弱めていく。

「――萎えた、もういいや」

己の想いが永遠たらんとする少女の炎、その情熱にこそ妹紅は焦れた。永遠のような刹那を、共に楽しめる。そう期待したのに、と白けた様子で妹紅は一人つぶやく。

「自分すら騙せないような、そんな信念を持った奴と闘ってもつまらない」

吐き捨てるように、炎の少女へと告げる。十分後に吹き飛ばされるというこの場所に、これ以上長居する必要も感じない。妹紅は無造作に少女へ背を向け、地上へ降りるように翼をかき消すとそのまま歩き始める。

「がっかりだよ、所詮そこらにいる薄っぺらい口先だけの奴らと同じじゃあないか」

その背中に、警戒心はない。もはや少女は妹紅の敵ですらなくなった。

最後に、八つ当たりのような辛辣な言葉を吐き落とし、妹紅はその場を去っていく。次こそは永遠へと焼き付くような相手と出会うために――

【強引ですが撤退させていただきます。お相手ありがとうございました!!>>螢様】

1年前 No.309

烈槍ガングニール @cube☆PjfbxfTdjqg ★8jCPFrgLSZ_ZFe

【帝都情報蒐集院/2Fサーバールーム/マリア・カデンツァヴナ・イヴ】

 刻一刻と迫る破滅の時。
あの遥か上空に滞空する巨大な方舟から齎される破壊規模は容易にこの蒐集院全域を収めて有り余ることだろう。
より遠くへ、可能な限り遠くへ。一刻も早くこの場を離れなければ――。
焦燥に駆られながらも一同は蒐集院から脱出のため、サーバールームを後にせんとしていた。

 疾走の中、自分の身体が風に乗せられ、身軽になった感覚を抱く。
追い風が背を押し、疾走に拍車を掛ける。それはシスティーナ=フィーベルの魔法によるものだった。
新世界派にも、レジスタンスにも、様々な特異を持つ者たちが戦端を開き、こうして鎬を削り合っている。
その中で、概念核争奪戦において対峙した櫻井螢の炎剣であったり、先程、巴マミがみせた魔砲であったり、と。
そして、彼女もまたそれらに連なる超常たる力の一端をマリアとマミへと示した。

 「これなら――ッ!!」

 最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に――。マミの拓いた道を辿り、ただ走る。
皆で無事に脱出を果たすこと、そしてこの蒐集院で得た情報を持ち帰ることこそ、己の最たる使命であり、レジスタンスの次なる指針へと繋げるものであり、真相究明への一歩だ。


――――――


 力に溺れかけていた自分がいた。
それと同時に、ふと最初に対峙した敵を思い返す。
純然たる剣技を以て真摯に打ち合いを臨んだ女剣士の姿。
剣に炎を纏いし魔業を成し、己に確たる殺意を露わにした軍服の少女の姿。
概念が齎す進化の過剰行使で辛うじて乗り切った一戦だったが、あの時ほど己の無力さ、非力さを痛感することはなかった。
それ故に更なる力を得ればと、この蒐集院へと赴いた背景もあったが、それはもう過去の話。分かり合えた者、志を同じくする者との交流を通して、マリア・カデンツァヴナ・イヴはこの先へと歩みを進ませる。

もし、この先の戦いで“嘗て対峙していた彼女たち”と再会を果たす機会があれば、語ろう。
あの時はただ敵と断じて、闘争で応えた。しかし、それではいけなかった。憎しみが憎しみを呼ぶように戦いは更なる戦いを呼ぶ。
今更だけれど、マミやシスティーナとの出会いがあったからこそ気づけたこと。だからこそ次に再会を果たしたその時には、矛ではなく言葉を交わそう――。

>>マミ、システィーナ
【恐らく次章でもコバンザメと化すかもですが、いちおマリアもこれにて撤退扱いとさせていただきますね。此方こそお相手ありがとうございましたー!】

1年前 No.310

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【帝都情報蒐集院/地下禁書庫→撤退/佐山・御言】

【レベル2 残り3ポイント】

>>立花・ァ、(アルトリア・ペンドラゴン)

けじめをつけたいと、そう申し出を断った立花・ァに嘆息一つで佐山は応じる。

「君がそう決めたのなら、私もそれに従おう」

もう心配はしていない。仮に再び敵対することがあろうとも、今度は彼女自身無理を重ねて焦りに任せたゆえの理由ではないだろう。ならば、今ここで出来ることは――

「だが、私も一つ手土産を用意しよう」

懐から取り出すそれは概念核。レジスタンスの、そしてノアの、今最も欲しているものだ。ノアが動いた時点でこの概念核も補足されていると考えてまず間違いない。となれば、このまま逃げ帰ったとしてもレジスタンスキャンプごと吹き飛ばされるのがオチだ。

ならば、せめて彼女に預けることで彼女がノア内部でスムーズに行動しやすいようにしてもらう法が良いだろう。

「持っていきたまえ、どちらにせよノアに補足されている以上ここに置いていくしかなかったものだ」

右手を押し返した両手へ、拳大のそれを乗せる。やるべきことは済ませた。幾つかの資料は頭に叩き込んであるし、非公開の様々なデータも手に入れた。残すは迅速な撤退のみだ。

「それではまた、ァ君」

さよならではなく、再会の誓いを最後に禁書庫の出口へと一目散に走り出す。

建物を揺らす振動は洒落にならないレベルのものがいくつかあったが、通路が塞がれていなければ良いが――

などと、思案しながら書物の間を駆け抜ける。と、地下で感じるはずもない風を感じてふと視線を巡らせる。
その正体は探るまでもなく、天井に空いた大穴だ。どれほどの戦いがあったのだろう、頑強なこの建物をぶち抜き地上へと続く大穴を開けるとは。

「ここより奥には誰もいない、君も早く撤退したまえ!!」

地上より流れ込む大気を受けてプラチナブロンドを揺らす彼女に、そう一声だけかけて大穴へと取り付く。建材やコンクリートの凹凸を利用し、ロッククライミングの原理でさっさと地上へと登り出て逃走を開始する。

殿を任せる形になったアーサー王その人には申し訳ないが、彼女の身の心配をするなどそれこそ失礼というものだろう。

1年前 No.311

ゼファー・コールレイン @faketanisi☆8cfl5/j3VDw ★XZOLTACqTn_jCr

【帝都情報蒐集院/1F図書庫→拠点帰還/ゼファー・コールレイン】


 ――蒐集院、激動。

 施設の内外を問わず繰り広げられているレジスタンスと新世界派の激闘は暴力的な振動で建物を揺らし、状況が開始されてから結構な時間が経った今ですら、殆ど絶えることなく誰かの怒号が聞こえてくる。
 まさに第一線の戦場だ。互いの大義を懸けた戦争と呼べば聞こえはいいが、結局の所、こんなものはただの殺し合いでしかない。敵の大義や事情なんて、殺された側にしてみれば糞ほどの価値もない塵なのだ。耳触りの良い理屈など、死者には何の手向けにもならない。その事をよく知っているから、ゼファーの表情は芳しくなかった。
 思い出すのはあの時の記憶だ。元の世界で繰り広げた、本来なら絶対に関わり合いになりたくない人種……英雄と神星との決戦。やっとの思いで勝ち取った優位を理不尽な覚醒と意味不明の理屈でねじ伏せてくる、救いようのない悪夢。この世界に対しゼファーが強い嫌悪を抱いているのは、此処が余りにも奴らにとって生きやすい世界であるからだった。

 意思の力さえあれば道理は押し潰せる。対価を支払う代わりに、奇跡に等しい力を自らに発現させる事が出来る。
 謂わば覚醒現象がルールとして定められた世界。ゼファーのような只人にしてみれば、こんなもの、地獄以外に何と言えば良いのか。一言、終わっている。狂っている。こんな場所、一分一秒とて長居したくない。

「……こんなもんか」

 今日の彼は幸運だった。
 激戦の渦中に居ながら誰と出会すでもなく、黙々と情報収集に徹し、とうとう最後まで誰かの邪魔が入る事はなかったのだから。膨大な図書の山の中から"それらしい"資料を探すのは手間だったが、何とか成果らしいものも手にする事が出来た。それが、今ゼファーが右手に握っている一束の論文である。

 題名を――"概念創造研究論文"。

 曰く、概念創造にはその元となる概念の"核"が必要なのだという。核はその世界が持つ概念を抽出したものであり、世界そのものであると言っても何ら間違いではないらしい。劣化複製の成功例こそ有るが、あくまで劣化止まり。其処から先にはあちらも到達出来ていないのが現状なようだ。
 また、この世界から概念核が失われれば、途轍もない事態が発生するのは間違いないとも書かれていた。何しろ世界の核を抜き取るようなものだ。何か、どうしようもなく致命的な何かが起こる事なんて誰にでも容易く想像が付く。
 ……せめてもの救いは、概念核はそう簡単に完全破壊する事は出来ないらしい事だろう。

「――よし。とっととずらかるか」

 ゼファーは暗澹とする気分を無理に押し殺し、一人悠々と蒐集院を後にするのであった。


>(対象なし)

1年前 No.312

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 帝都情報蒐集院/地下禁書庫/立花・ァ 】

 >佐山

「これは……」

 手土産という言葉に首を傾げたァは、両手に乗せられた輝きに瞠目した。概念核――今となってはもう随分と昔に思えるが、かつてレジスタンスとして活動していた際、概念核の略奪作戦に加わったことがある。作戦は成功し、その成果はずっと佐山が保管してきたが、今それはァの手にあった。
 成る程たしかに、手土産としてこれ以上のものはない。仕組まれた功績にせよ、降伏兵という外様の立場を覆して余りあるほどだろう。

「……Tes. また、いずれ」

 できることならば、宗茂様と共に。
 再会を願う言葉を交わし、相対は結論が出ないまま……否、佐山の説得勝ちという形で結末を迎えた。
 遠ざかっていく背中へ、ァが首を垂れる。厳かに、密やかに。まだ伝えることのできない感謝を、今できる最大限の形で示す。
 ――救いはある。反感を覚えずにはいられなかったその一言が、今はどうしようとてなく心を打ち震わせた。

 そうして。幾拍もの間を置いて、崩落の予兆を見せる禁書庫からァも立ち去った。その小さな背中はもう憔悴の色を背負うことはないだろう。

1年前 No.313

櫻井螢 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【帝都情報蒐集院→移動中/大階段→移動中/櫻井螢】


 炸裂する炎の煙幕の中から彼女の声が聞こえる。爆心地の踊り場を蒸発させ、階段はなだらかな坂となっていた、その下手からは五体に火傷を負った少女の姿がある。愉しげに語る相手の声で螢ははっとして相手へ向き直った。
 どうやら相打ちに終わる程度には痛打を与えられていたようだ。咄嗟に剣を構えるも、相手は何を視たのか途端に戦意を喪失した。

「……、え?」

 思わず呆けたような声で、突如として戦いを放棄した妹紅を視る。その白髪の少女の眼からは、これまでのような生の渇望に飢えた爛々たる輝きは消え失せて……まるで路傍の石くれを見下ろすかのような失望の念がありありと窺えた。
 ただ一人、置き去りにされたように螢は茫然と立ち尽くし、一方的に吐き捨てられる言葉を耳にする。

 ――自分すら騙せないような、そんな信念を持った奴と戦ってもつまらない。
 ――所詮そこらにいる薄っぺらい口先だけの奴らと同じじゃないか。

 如何にもつまらなげに叩きつけられたその言葉。その言葉だけは断じて聞き捨てならなかった。

「何を――!!」

 知った風な口を、と。螢はここに来て初めて激昂を露わにして怒声を上げた。しかし言葉を継ぐより先に少女は去っていく。その背に未練はなく、反駁する言葉を聞く気も無い。
 おまえなんぞに用はない。そう、見棄てるように立ち去っていく。
 好き勝手に挑みかかり、死にたがるように襲い掛かったと思えば、挙句勝手に失望して、言うだけ言って去っていく。酷い身勝手さだ。
 ……しかし、自覚している。何時もならばそのような言葉、眉を引きつらせるか強気に笑って返すだけの余裕はあった。今あのように怒声で返した事自体、己に余裕がなくなってきていることの証明だ。

「――――っ」

 間違いない。あの少女は、己がノアを前にして怯懦を見せたことに失望したのだ。なんて、情けない。ほんの少しでもそれを疑う余地があるならば、戦い続けていても無意味であろうに。その迷いを見せてしまった。
 もう言い訳はできない、己は今……新世界派という存在に疑念を抱いてしまった。己は今、揺れている。

 時間は七分を過ぎようという所。螢はふと空を見据えた。その先には今にも滅びの光を解き放たんと力を滾らせる戦艦ノアがある。新世界派と呼ばれる、あまりに空虚な集団の拠点であった鉄の方舟。
 そうだ。ノアの恩恵に縋ろうというばかりで、圧倒的な力を誇るノアが己たちに何を期待しているのか、一瞬だって考えたことはなかった。

 そもそも、何かあの少女人形(ガイノイド)から一言だって直接的な命令を受けたことがあったか?
 どれもこれも、漠然とした内容のものばかりでなかったか?
 ――それは、初めから何も期待していなかったのではないかと、考えたことはなかったのか?

 或いは、ノアにとっては新世界派など、せいぜいが餌の運搬を手伝う蟻のようなモノでしかなかったのかもしれない。
 その真相を、真実を……ついに確かめねばならない時が来たのかもしれない。
 未だ迷いを引き摺りながら、半ば自棄気味に螢は意を決して戦艦ノアへ転移する。
 その跡には、姿が消失する刹那に散った火の粉の燐光だけが、淡く周囲を照らして散っていた。
>妹紅、ALL


【こちらこそお相手ありがとうございました】>妹紅本体様

1年前 No.314

@mistnack ★Android=GSNUYecoxY

【帝都情報蒐集院/2F図書庫・西側/人修羅】

 ―――収束、そして終結。
 たとえ少年がそれを図らずとも、各々の想いでもって重ねられた光の海は………黒き獣の歪んだ狂気さえ呑み込んで、粒子となって弾け、共に天へと融けていく。
 狂王、反転した光の御子。おそらくは、この分霊では良くて相討ちがせいぜいであろう、新世界派が誇った最大戦力が一角。

 しかし、それを打ち倒してなお、少年の顔は晴れなかった。いや、一貫して彼の表情に変化など見受けられなかったが、これはそういった話でもない。
 無論、痛みのせいでもなかった。死ぬ思いも今や慣れたものだし、何よりもリリィが、そしてバッツが注いでくれた癒しの光が僅かながらもその深い傷すら塞いでくれる。

 消失していくクー・フーリン・オルタの霊器と共に、人修羅を貫いていた無数の棘もほどけていく。
 気力が切れたのか、彼はその場で片膝をついて………しかし、歓喜と安堵に綻ぶ二人を見ることもなく。

 ただ、空を見上げて“してやられた”と、そう言いたげに舌を打った。


「………悪いけど、君達の相手をしている時間はもうないみたいだ」


 思わぬ乱入がなければ為されていたろう、覚悟を問うための戦い。
 少年をして死闘の直後だろうと始めるのも吝かではなかったそれも、いまとなっては些事だろう。
 何も、この瞬間に限った話ではない。きっとこの一戦以降、世界を廻す歯車は加速度的に回転を速め、だれが足を止めることも許さない。


「この期に及んで君達の理想を止めはしない。………いまは“あれ”とまともに戦うこともままならない以上、互いに利のあるうちは、望むのなら力も貸そう。
 ………だが、最後には必ず、僕はあれを破壊する。それを阻む者も全て、例外なく。この光景を見て、まだ君達があれと相互理解を求めるのか知らないが―――」


 分け身に過ぎない肉体で強引に本来を引き出した弊害か、動作のぎこちない掌を見つめながら少年は語る。
 ―――こんなものではない。この程度の窮地で満身創痍に追い込まれるなら、ノアを止めることなど土台不可能だ。
 それを最後まで口にすることなく、少年は立ち上がる。もう何をしている暇もない。ノアは指定した刻限通りに、何の淀みもなく此処を更地に変えるはずだ。


「バッツ、君は彼女を。此処を出るまでは共闘者なんだ。二人揃ってつまらない死に方をするなよ。―――《スクカジャ》」


 けれど、他ならぬそのノアに対するのだ。思想はどうあれ、対抗勢力は多いに越したことはない。
 そうした打算を少なからず覚えながら、少年は機動力増強の魔術を二人へ与えて………その二人よりも先行すると、徐に床を殴り付けて盛大に粉砕してみせた。
 次いで何食わぬ顔で空けた穴を顎で指し示し、肉体的にも精神的にも限界が近いだろうバッツを容赦なく急かすのだった。


「最短距離で脱出する。急ごう」


>>バッツ、リリィ


【遅れに遅れまして申し訳ありません。お相手ありがとうございました!】

1年前 No.315

システィーナ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r


【帝都情報蒐集院⇒/システィーナ=フィーベル(Lv2/7P)】

 走る、走る。
 なにも考えず、前だけを見た上での全力疾走と魔術制御への集中。
 残る10分のタイムリミットが迫りくる、一秒一秒ごとに背筋に走る悍ましい感覚を抑え込みながら、彼女はしかし加速分を込みとしても彼らについていくのが精一杯だ。
 そもそも、システィーナは戦うひとではない。戦う術があっても、それを活かす方法を知らない。
 身体的には、ある事情もあって一般的な学生のそれより多少上だがあくまでそのくらいで、それが分かっているから彼女はただの逃亡一手にさえ妥協はしなかったのだ。理由は―――ただ一重に死にたくない、その一言に尽きるのだろう。

 そうだ、死にたくない。
 ようやく手がかりが見つかったのだ、それを得たのにむざむざ死ぬわけにはいかない。
 そんな義務感が少々あるが、それ以上に彼女は元々居場所が此処ではないのだ―――故に元の居場所へと帰りたい、生きたい、そうあって欲しいと願う彼女のそれは、一見するとあまりにも戦う場所ではない地点にて概念強化の恩恵を与っていた。
 無論、それはノーリスクのものではないが、この程度の変化ならばせいぜいが軽い疲労で済む。

 彼女は拓かれた道を走りながら、これから先へと想いを馳せていた。
 次に行く先があるとすれば、それは間違いなく先程見つけることが出来た研究施設だ。
 そこになにかがあると確信したわけではなく、ただ手がかりがそこしかないから行くしかない。要はその程度で、しかし研究の内訳が本当に並行世界の何某というなら、そこで帰る手段を探すことだって出来るかも知れなかった。

 それが分かっていれば、あとはシスティーナ=フィーベルのなけなしの勇気を振り絞る番だ。
 だいじょうぶ、と。自分の心の中に言葉を呑み込んで、彼女は蒐集院を知り合えた仲間たちと後にする。

>(巴マミ、マリア・カデンツァヴナ・イヴ)


【こちらこそ、最後に遅れましたがお相手ありがとうございました〜】


―――


【帝都情報蒐集院/⇒撤退/アルトリア・ペンドラゴン(Lv4/2P)】

 着いた先は、概ね外れ。
 地下書庫での戦闘がよほど長引いたのか、それとも此処は此処で最深部だったのか。
 ふと扉が開き、禁書庫の内側から、みごと開いた大穴へと駆け出して来た男へと視線をやる―――よもやそこに、現レジスタンスの首領の顔があるとは思いも寄らなかったが、多少の手傷があるとはいえ彼は無事らしい。この様子を見る限り襲撃があったか、はたまた防衛していた何かと抗戦したかのどちらかだ。
 そして奥には誰もいないと言って退けた、この様子から考えるに………。


「………時間切れか。―――ええ、では其方から先に」


 時間切れだ。すばやくアルトリアは結論を出した。
 そもそもこの人物が、よもやこの先の調査を済ませていないはずがない。見落としはなく、概ねのものを探り切った後ということだろう。その上で残る生存者が大概撤退した後だと言うなら、アルトリアにとって内側にまた踏み込む理由は無くなった。
 此処から別口の調査を行おうにも、ノアの砲撃が行われたならば全てが水泡だろう。
 少なくとも此処で悪足掻きのように何かを探しに出向くには、あまりにも時間が足りなさすぎる。少女がその認識をするのは素早く、故に彼女は撤退という結論に関して是非もないと応答した。
 さっさと合理的な撤退行動を開始した佐山を横目に、他の撤退者が居ないかを確認する。
 残り時間は僅かだが、この程度の距離ならば自分でもすぐさま撤収出来るだろう。尤も―――。


  ―――あの方舟(ノア)とやら、どうしたものか。


 壊れた大穴から微かにその姿を覗かせる、大きな巨きな方舟。
 あの存在を見た瞬間に感じるざわつきは、果たしてただの気のせいか。事と次第によっては自陣営の人間すら情け容赦なく焼き払う見積もりだったのだろう人造救世主ノアとは、本当にただ崇められるだけの存在なのか。
 どうにもパズルのピースが嵌り切らないような違和感に、手がかりの足りなさを痛感し。
 彼女はそのまま、撤退する佐山の殿を務めるようにしながらも、崩落するだろう蒐集院を後にした。

>(対象なし)

1年前 No.316

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【方舟(ノア)/教会/ノア】

>>シンク

闖入者を前に、ノアは閉じていた瞳を開く。その瞳はシンクの姿を映し、しかしなんの感情も写さない。

「現在の総合的な戦力比で言えば、レジスタンスは敵にすらならないかと。――以上」

ですが、と言葉を続けてノアは言う。

「ノアは優秀です。ノアの観点では至らぬ可能性を他者が持つことを認め、留意する事ができます。――以上」

ノアは機械である。ノアは道具である。それ故にオーダーをこなすために必要なことを、自己に依った絶対的な価値観をもって判断して行う。だからこそ、それは時には無慈悲な裁きにもなり、時には慈悲深い救済にもなる。

すなわち、この世界の救済も、そうした方が結果への近道であると判断しただけなのだ。もしも、ノアがこの世界を滅ぼすことが目的への最短ルートだと判断したならば、ノアは間違いなく全てを滅ぼすだろう。

しかしノアは、万能たれと創られた自分が未だ万能でないことを知っている。だからこそ、他者の意見を留意し、取り入れ、自らを変革する。創造主のオーダーを最適に果たすために、己が求めるものを得るために。

「高確率予測の結果、レジスタンスがノアに対抗する可能性は限りなくゼロに近いかと……しかし、あなたがそう判断したのならば、あなた自身の判断に従いましょう。――以上」

ぺこり、と頭を下げる。優秀であることを自負する彼女は、恩は必ず返すし、頼みがあれば頭を下げる。それがたとえどんな相手だろうと、だ。

「ノアが概念創造に全施設の作業を集中させ、99%以上の処理能力を傾けます。その間、内部の管理をお願いします。――以上」

それは事実上の全権委任。ノアによる管理が消え失せ、ノアの目が届かなくなる概念創造の間の守備を任せる、と。

【三章の間はノア内部の管理、監視を任せてもよろしいでしょうか?>シンク様】

1年前 No.317

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【これにて三章開始です。参加者の皆様はそれぞれのボスのいる世界、もしくは敵対者のいる世界へと転送後戦闘を開始してください。また、新世界派でノアの内部へと残留した方々も行動を始めてください>>参加者ALL様】

【量子力学的多元並行世界研究所→/玄関→移動/佐山・御言】

>>対象なし

概念核をノアに返還してから一週間が経った。帝都蒐集院を消滅させ、関東狭域に渡って震度五弱の地震と、最大深度一キロメートルに達するほどの巨大なクレーターを残したノアは、その後その場に留まり動きを止めた。

システィーナやマリア、ゼファーによって持ち帰られた情報を纏めた資料を下にこの場所を割り出したのが三日前。奥多摩の片隅にひっそりと存在するこの研究所を見つけ出し、この研究所以外は『消滅している』ということ、閉鎖後にも人の出入りが確認されていたことを踏まえて調査を決定。

不安と諦念、抵抗する意思をなくし離れていく者も多い中、レジスタンスは前に進むしか道がない。

「――平行世界、か」

研究所、マミと名乗る新世界派の少女との意見交換の末に二人の少女が導き出した推論、ノアに縁ある人物が所長を務めていたというこの場所に、ノアの過去が存在するのだろうか。

懐中電灯を片手に玄関の扉を押し開け、薄暗い室内を照らす。埃っぽく、しかし小奇麗に片付いたロビーが白い光に切り取られて姿を表す。

「ふむ、長い間人の出入りはなさそうだね」

床に積もった埃がその事実を裏付け、しかし部屋の片隅にある違和を懐中電灯の光が捉えた。それは、

「寝袋、と……これは、缶詰と水か」

無造作に転がっているそれらは、誰かがここで生活していたことの証左だ。ロビーの長椅子の周辺にぞんざいに置かれたそれらは、即ち――

「研究所が封鎖された後、誰かがここに入り込んで生活していた……?」

疑問は、しかし確信に変わる前に佐山の思考は中断させられた。
寝袋の置かれた長椅子、その傍らの壁に書かれた文字。

『――覚悟は試しの場を得る』

それを認識した瞬間、佐山の脳内に己の声が響き渡った。覚えのある感覚は概念付与。何者かがこの場所を訪れると知った上で、この場所に誰かが残していたものだ。

警告も撤退の指示も出す暇がない。一瞬の浮遊感の後、足元が消える感覚。それを認識し、理解する前に佐山の視界は白へと塗りつぶされた――

【最深部/???】

>>対象なし
・・
ソレは、静かに身じろぎをした。
大気が揺れ、久しぶりに世界に動きが生まれる。風だ。
身を動かすことで生まれた風は、ソレの全身を撫で、ゆっくりと落ち着いていく。

ソレは思う。約束を果たす時が来た、と。

懐かしい匂いとともに、幾つかの知らぬ匂いがあるが、しかし確かにあの男の言った通りになった。ならばこそ、あの男への問いかけを、今一度繰り返そう、ソレは思う。

試練を乗り越えた先に待つ最深部、そこでソレは静かに待ち構える――

1年前 No.318

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【ノア/教会/ノア】

>>対象なし

教会の奥、最も大きなステンドグラスの前で祈るように座り込んでいる少女がいる。ノアだ。
無機の羽を持ち、しかし天使を模して作られたと言っても過言ではないその姿は、一種の神秘さえ纏っていた。

概念創造のベース、新たなる概念の構成骨子を組み立てるためにノアの全処理能力のほぼ全てを使い、作業を行うノアは、人で言う眠っている状態に近い。

外部からの刺激があればほんの僅かな処理能力を回し、応対程度ならば行うことも可能だが、激しい動きはもちろん歩くことすら難しいだろう。

ノアが何を想い、何を目指すのか。静かに座すその姿からは何者も伺うことは出来ないだろう――

1年前 No.319

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 荒れ果てた世界/極ラーヴァナ 】

 >all

 渺漠――吹き荒ぶ風に煽られるものもない、荒れた地平。
 そこへ四本の巨大な刀が飛来し、大地を破り、抉るように円周を描いて高速回転する。円陣はやがて高熱を帯び、螺旋の炎柱を成し……轟々と逆巻きうねる焔はやがて細微な形を得、武神へと変生した。
 月光を帯びた四刀。薄光る翅。鎧めいて荘厳な甲殻と、天を指す一対の角。虫と人とが合わさったような姿は、けれど強大であり、群れるものどもの如き矮小さを微塵も感じさせない。

 昏迷と混沌と困迫の時代。斯くあるべしの世。
 表舞台に立つことも、裏方で暗躍することもない、路傍の者たちがいた。力を持たない彼らにも魂はあり、希望を挫かれた民草の絶望は、やがて渇望へ変生した。
 武を……
 脅威を払い、安寧を導く、絶対なる武の力を!
 願いは概念核の力の一部を著しく食い潰しながらも、斯くあるべしの摂理に従い、蛮神召喚は果たされた。
 かの名は極神ラーヴァナ。
 人心によって顕現しながら、ただ在るだけで人心を惑わせるもの。偽りにして真なるもの。星の生命がヒトの願いのカタチで顕れたもの。

《――真、くだらぬことよ》

 声は厳かに大気を震わせ、聴く者の魂へ伝播する。

《――この世の武は我に在り》

 言葉は信託のように。武の顕現は、荒涼の地にて敵を待つ。

1年前 No.320

鏡飛彩 @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【方舟(ノア)/居住区/鏡飛彩】

起動した文字通りの『ノアの方舟』。
その中の居住区の病院で飛彩は負傷者の手当てをしていた。
負傷者の手当てがひと段落したところで飛彩は戦果に被害状況の確認をする。

「クー・フーリンが死亡、ボードウィンが重傷か…」

前回の戦いではマルスが斃され此度はクー・フーリンが死んだ。死亡した二人はどちらも飛彩以上の力量を持ち、後者に至っては我が方、新世界派の最大戦力の一角でもあったのだ。
それが、死亡。相手も相応の強者であったのか、油断したか、それとも不慮の事故か、同席していない飛彩は与り知らぬ事だし、遺体の回収もされていないとのことだ。

ガエリオに至っても飛彩と力量については同等というところ。彼の実力は飛彩も認めているし彼はレジスタンスには苛烈だが仲間内には気のいい男と評判だ。

「ボードウィンと戦った者は、確か相当に頭の捻子が外れたような奴だったらしいな」

記録によるとその者の最期は凄絶な文字通りの『自爆』、ガエリオは命からがら逃げ延びたという。

「やはりレジスタンスは切除すべき、か」

飛彩は病院内の患者を見ながらそう呟く。しかしながら前回の戦いはノアが圧倒的な力を見せつけたことにレジスタンスの敗走に終わった。
だが、飛彩にはこれで全てが終わりだとはとても思えなかった。
今のノアにとってレジスタンスなど障害ですらないのかもしれないが本当の平和が訪れるまで飛彩は油断しない。安静だった患者の容態が急変するのと同じだ。

故に飛彩は今はノアの内部に残留し、患者のケアに尽力する。

>ALL

1年前 No.321

キバ @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

【灼熱の世界/キバ】

降り注ぐ岩石は焔を纏い、触れるものを焼き尽くしながら粉砕してゆく。
荒れ狂う溶岩はあらゆる生物を死に包み込み、唸りを上げるようにして這いずってゆく。
唯一残る岩石の山は触れれば直ぐに離すほどの高熱を発し、あらゆる生物を受け入れずに聳え立っている。だが、その岩石の山の上に唯一人、いや――ただ一機、そこに居る。立っているではなく浮かんでいる……そう思わせるようにして、人の形をした鋼鉄の巨神が舞い散る火の粉の隙間から垣間見えた。
、      、      、      、     、     アイアンカイザー
燃え盛る焔に紛れるようにして邪悪な赤色の装甲を曝け出す巨神――否、鋼の皇帝は何かを待つかのように佇んでいた。その頭部。円板状のパイルダーから身を乗り出し、灼熱の世界で焼けただれた肌を晒す荒々しい男は、生命を死へと還元する轟轟とした灼熱の世界を見渡していた。

「イイねぇ、イイねぇ……最高じゃねえか。これこそが地獄ッて奴だ」

男、キバは傷だらけのマントを靡かせながら嗤った。下卑た笑みだ。この笑みは、やがてこの世界へと訪れる者達が見る最初の光景であり、そして、その者たちが見る最後の光景でもある。例え人であろうと、例え神であろうと、例え悪魔であろうと。例えなんでもあっても、戦いたいから戦い、潰したいから潰す。ご大層な使命だとか、そういう大義名分は一切存在しない。
そんな無法の世界を“地獄”と呼ぶ。キバは地獄を見て、地獄に落ちた。そして再びまた、巡りに巡ってまた“地獄”に来ている。キバは一度死んでそれを知った。どうせこの世もあの世も、あっちもこっちも、何もかもが地獄でしかないのだから。

「さぁ来いよッ! 来やがれッ! 青臭え勇気で突っ込んできやがれッ! そして俺がそれを叩き潰してやるッ! ハハハハッ!」

キバは雄叫びを上げ、高笑いを轟かせた。
野蛮極まれり。アイアンカイザーは灼熱の世界でただ佇み、そして、皇帝に挑みかかってくる敵を待ち続けている。

>ALL

1年前 No.322

シンク @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

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1年前 No.323

ガエリオ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r


【方舟(ノア)/居住区(病院)/ガエリオ・ボードウィン】

 ほぼ大破、本人も重傷。
 敗走じみた有り様で任地から帰還したガエリオが最初に聞いたのは、あの後の戦闘の顛末だ。
 世界そのものと戦えるだけの力を持つノア自らの登場、バベルそのものの出撃による戦闘の即時終結。結果的に見れば大勝ではあるのだが、道中におけるセリュー・ユビキタスの自爆、新世界派の最大戦力の一つである狂王の事故じみた死亡報告、また魔王が抑えていたとはいえラフレシアなる新兵器による大量虐殺………出た被害の数は、考えれば考えるだけ洒落にならない。
 そもそもの話だ。ノアがああして出て来れるならば、余計な戦力の消耗など必要なかったわけで。
 ノアがああして戦いを挑み、すべてを塵殺出来るのならば、これらの被害のうち二つは確実に抑え込めただろう。戦闘力の格差など言わずもがな、あの場の全てを粛正出来るだけの威力があったことは戦闘報告で聞き及んでいる。

 ならば―――何故? 微かな疑問を、しかしガエリオは否定した。
 今更疑ってどうする、これが多くの民にとっては正義なのだ。そう信じて止まないガエリオはそれを断言するが、しかし正義という言葉に薄ら寒いものすら感じるのは何故か。
 あの女のせいか。それとも、ノアが行った行動を自分が疑っているとでも言うのか。
 いずれにせよガエリオは行動出来ない。機体の損壊が激しい以上、再度の換装に時間がかかるのは事実だ。本人のダメージもある以上は、キマリスの修復と自身の療養も含め、先の通信通り“余計なこと”をせずに黙っているより他になかった。
 その上で、病院の一区画を闊歩していたところ、ガエリオはふと気になる者の姿を見かけた。

「飛彩か………」

 戦士である以上に医者である、仮面ライダーの男。
 先の戦線とは他の任地についていた、ないし負傷者の医療に勤めていたと思わしきこの男は、現在膠着状態に陥ったノアの内部でも、自身を含めた重傷者たちの治療作業に専念していた。
 いまはその患者が一段落した、というところだろうか。
 あまり話すと医者の業務を邪魔してしまうから難だが………話をする時間の猶予くらいはありそうか。
 ゆっくりと近付き、彼はその男へと声をかける。

「すまないな、世話になっている。………他の負傷者の様子はどうだ?」

>鏡飛彩

1年前 No.324

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 ノア/教会/立花・ァ 】

 >ノア

 教会。神の家。祈りの場。そこへ、目を伏せ口を閉ざし、静穏を成す自動人形がいた。教会を厳かに飾るステンドグラスの美しさと、有翼の乙女の神秘性は、不可侵的な光景を創りあげている。
 であれば、教会へ足を踏み入れる行為は狼藉以外の何物であろうか。
 狼藉者――名を立花・ァ。義腕の少女は、仮面の男へ「ノア様に先日の報告にあがりました。お通しください」という言葉と会釈一つ残して、すり抜けるように教会に踏みこんだ。視線を左右に巡らせ、内部に警護がいないことを把握。
 ……居たところで、何がどう変わるわけでもないが。ァは寝込みを襲いにきたのではなく、報告≠フためやって来たのだから。
 ただ、個人的な交渉も含まれる以上、第三者の介入は望ましくなかった。

 眠りから微睡みに引き上げるべく、ァはノアのもとまで歩み寄り、跪くことで座る彼女と目線を合わせた。感情の機微が希薄な美貌が二人分。うち幾分か表情のわかりやすいほうが口を開く。

「お忙しいところ失礼します。こうしてお目にかかるのは初めてでしたね。私をご存知ですか? 夫、立花・宗茂の保護を条件に降伏した者です」

 声をかければ反応すると分かっているからこそ、ァは淡々と言葉を繋いでいった。どこか早口なのは、それが彼女にとって本題ではないからだろう。

「これを――」

 十字架を象ったような、巨大な義腕がノアに差し向けられる。大きな手のひらの上、器用に収められた輝き――概念核の片割れ。本来ノアが持つべきものであり、一週間ほど前までレジスタンスが占有していたものだ。

「貴女に献上するために、此処へ」

 しかし。言葉とは裏腹に、す、と概念核を乗せた手を引く。

「……その前に。これを我が功績と認めていただけるのであれば、褒賞を。一つで構いません、どうか私の願いを叶えてください」

 厚かましい申し出。ァの遠慮を知らない性格からくるものだったが、目の前の自動人形はそれを咎めはしないだろう。正当な取引として受理し、ァの望みを聞き入れるはずだ。……それが実現可能なものであるならば。

1年前 No.325

教祖 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【植物の世界/黒火のミルカ+浄罪歩兵+浄罪火兵】

さてと……状況の整理を始めるとしよう。
自分は確かに、レジスタンスキャンプに帰還して、情報を纏めて提出、その後は同僚には尊敬の眼差しで見られ、信者の数は大増殖! となるはずだった。
というか、その最中だったはずだ、別に、度を越して酒を飲みすぎた訳でもなければ、末端に渡しているような植物を使った訳でも無い。

だと言うのに、突然目の前に広がるのは、なだらかな丘陵が広がり、青々とした世界だ。
試しに頬をつねってみても、夢からは覚めやしない。

幸い、単独ではなく、自分の引き連れていた兵士共は何人か確認できるし、最低限、黒竜大公との不死軍を呼び出す冊子は所持している。
ここまで来て思い至る可能性があった「元の世界じゃないか?」と。

元々、ここの世界に呼び出された立場、何らかの理由でその「契約状態」が解除され、強制送還という流れは十分にあり得る。 確かに、彼女の立場からすれば、突然異世界に飛ばされるなど、二度目とはいえあまり考え付かない物なので、この考え自体はさほど不自然な物ではないだろう。

周りに人の姿は今のところ見えない、そこまで確認すると、ミルカは懐からパイプを取り出して、煙草に魔法で火をつけて一服……できずにむせる。 彼女にこれの上手い使い方は分からない。

「ゲホッゲホッ……あー、マジで幻覚じゃないっぽいですねえ、これは。 地形的に、東帝国の辺りに出ましたかねえ、だとしたら最悪です。 貴族にしろ神聖同盟にしろ、我々の味方ではない。 周囲警戒、何処の軍にしろ、旗見えたらとっとと引き上げて、その後現在地確認して、砦通って大寺院に帰りますよ」

ひとまずミルカは、帰ってきたと言う事を前提にして話を進める、それは間違っているので全て無意味だが、帰ってきたら帰ってきたで、地形から判断して敵地のド真ん中に帰ってきてるので、警戒するのも無理はない。

そして……まぁ、それらしい一団も、東帝国にある建物の数々もないと言う報告が帰ってきた、勿論、人一人ぐらいならば見逃す程度の雑な探索ではあったが、それだけでも、この世界と自分たちの世界はまた違うと分かった、が、となると、あの世界の別の場所に飛ばされたと考えるべきか、それともまた別の異世界と考えるべきか。

「あー、面倒臭いですねえ、せめて情報寄越してくれる人間が居りゃあ話は早いんですが、勿論会話可能な奴です。 これで会話はできるけど話は通じない魔女や不死者が出てきたらもうサイアクです」

そんな愚痴を言いながら、ミルカはその辺に腰掛けて、探索は部下に丸投げする。
別に、何処かで犬死しても、その時は不死騎兵を使って自分一人で逃げれば良い話だ、元の世界の東帝国でないのなら、追走してくるような騎兵に出くわす心配もない。

>ALL (ハザマ)


【冷静に考えてみたらボスより先に落としてよかったのだろうかと思うトコロ。 問題あれば無視してくださって大丈夫です】

1年前 No.326

アルトリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【白い世界/アルトリア・ペンドラゴン(Lv4/3P)】

 それは、見渡す限りの白だった。
 静謐を讃える世界の中、転移直後の浮遊した感覚を戒めるように、騎士は地を足で強く踏みしめる。尤も、彼女がいま踏みしめた大地すらもこの世界においては純白のインクに塗り潰されたかのように………否、インクという表現すら似つかわしくない。その白い平原は何物にも侵されることのなく、言外に美しいとさえ零してしまいそうで、しかしどこかが息苦しい。
 何しろ、此処にはなにもない―――そうだ、何もない、何もないのだ、この世界は。
 白い一枚の紙、なにも描かれることなく、影すらも見えない、清く澄んだ世界には生命の息吹など存在しない。此処には何も存在せず、何の流れも存在しない。ただ光が瞬いてそれで終わりなど、それこそ虚無と呼ぶべき有り様だろう。

 つまるところ、此処は人間が住める世界ではない。
 清過ぎる水の中に沼で生きるものは適応出来ないし、淡水魚を海水に放り込めば後は死ぬだけ、正しく輝く太陽に蝋の翼を広げて飛び立てば、その羽は焼けて果てるが道理であるが故に、この先の途絶えた異空間に人間は“美しい”以外の価値観を見出すことは出来ない。
 息苦しさの正体はこれか―――少女はそう結論すると、再び不確かな白き平原を歩き出した。
 封鎖された研究施設から、推定擦る限りでは何らかの概念によって転送されたのだろうが、その声は試しの場と口にしていた。果たしてそれが何を意味するものなのか、言わずもがなというところだが、そこに何故か得体の知れない違和感が混ざっている。

 あの概念はこの場に誰かが残していたものだ。
 レジスタンスの何人かが持ち帰って来た情報を基にしたのはいい。
 だがその上でこのような概念が遺されていたとなれば、つまり何者かが此処に、知っていてアレを仕掛けたという事実に他ならないのではないか―――確信を得られる材料もなし、白い平原の果てに何があるとも分かったわけでもない。

 しかし………それでも往くしかないのだ、少なくとも待って強請ることが自分の召喚された意義ではない。
 徒労感さえ感じさせる白き大地を、彼女は凛とした面持ちでひた進み―――。

>(対象なし)

1年前 No.327

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【植物の世界/ハザマ】


 穏やかな微風が吹き、柔らかな日差しが緑と青の世界を撫でるように照らした。
 一度見れば争いの気配など欠片すら感じられず、ただ緩やかに刻を流すだけの世界。
 そこを踏み荒らすように複数形を保って現れた者達は、そこにはなんともまた似つかわしくない武装した兵団である。浄罪の名を冠する赤黒い狩猟兵団、不死身の軍勢の先頭に立つのは黒火の名を冠する女、ミルカの姿だ。レジスタンスと呼ぶには聊か以上に気概が欠けるとはいえ、その状況判断能力と扇動の才能、そして(ある意味)諦めの悪さにかけては非凡と呼ぶべき人物である。
 異界に飛ぶという事態は彼女の想定通り、基本的には二度も三度もあるべきものではない。
 そもそも違う世界があると言う理屈を何度も振り翳したところで陳腐が過ぎる、そのような御伽噺など常識的な発想が出来る人間ならばまず切って捨てる理屈だ。そして仮にそう考えるなら、非常識なことは二度も三度も起こらない。
 故に地理を即座に把握しようとした彼女の判断はどうしようもなく凡庸ながら正着手。

 しかし―――。

「おや―――ならば私、ご期待に半分答えて半分沿わないというところでしょうか?」

 そんな常識とか、当たり前とか、そういう理屈が罷り通る時間は過ぎ去っているのだ。
 そもそも並列する位相空間において、その全ては悉く極端だ。前述したとおりの穏やかさを含んだ世界など此処しかなく、仮に此処以外の場所にミルカが脚を踏み入れていたのであればすぐに事の全てを理解していたことだろう。
 その上で、有り得ないという言葉そのものが、この世界においては有り得ない。斯くあるべし―――そう希えば極論なんでも叶うというのが概念<ルール>ならば、確率だとか非常識だとか、そういう否定の色眼鏡を挟むことこそ阿呆の所業だ。それでも然程不自然ではないが、少なくとも“彼”との遭遇は違う世界ならば此処まで穏便なものにはなっていなかったに違いあるまい。

「や、意外と人に会えるものですねぇ。どうも初めまして、名も知らない軍人の方々。
 私、まどろっこしい階級は抜きにして話しますが、ただのハザマと申します」

 その男の第一印象は“薄い”の一言に尽きる。
 糸のような眼と緩んだ口元、端正の取れた顔つきは柔和な笑みを刻んでいて、
 黒いテンガロンハットにスーツの出で立ちは如何にも交渉人かなにかのような社会の枠組みに生きる人間のそれだ。少なくとも戦う人間の装いではないし、堂々と真っ向から歩いて来た辺りからしても、怪しいには怪しいが脅威と呼べるものはない。
 余裕綽々と言った様子で、口からべらべらと自己紹介をばら撒きつつの接近。
 態度や雰囲気はどうあれ、そこまですべてが本当に違和感なく、溶け込むようにミルカの前へと男は現れた。

 そう、薄いのだ。
 なにかが欠けている、なにかが足りない。
 目の前にいるものを人間として認識するには、どうにも存在感と呼ぶものがない、影法師のような青年。
 しかしミルカがこの青年をどう思うにせよ、彼は会話するに不自然ではない近距離へと足を踏み込んでいた。

「さて、どうやら揃いも揃ってお困りの様子………。であれば如何なさいましょうか?
 私見ての通り、現在は手に職もない旅人ですので、物理的資源的な意味でお力になれるかと言われると答えは当然“No”なのですが―――ああいやなに、ちょっと待ってください喋るの止めようとしないで。ええ、此処でお会いしたのも何かの縁かと思いましてね」

「すこし話をしませんか? 私、なにせその程度しか楽しみがないものでして。其方もこの地に出向いた理由がないわけではないのでしょうしね。
 対価は、ええ、迷い路の最中と見受けましたので情報と。それくらいはお約束しますが―――」

 その男は、実に飄々とした態度で、人のペースなどお構いなしに物を言い始める。
 口を挟ませる瞬間すらない、流れをそのまま掴むような態度でありながら、しかしその態度は比較的友好的であり、同時にハザマと名乗った人物からは敵意も、場慣れした人間の雰囲気も感じさせることはなかった。
 そう、只管になにかが薄い。違和感を覚えるとしたら精々その程度のものだ。

>ミルカ


【いえいえ、実は誰か一人を出待ちしていたので助かります】
【他の方も良ければどうぞ、Lv5ムーブの匙加減に震えながら頑張らせて頂きます】

1年前 No.328

獅子王 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【白い世界/獅子王(Lv5/1P)】

 何処までも白く、果て無く、押し寄せる波のように空白の世界が広がる白い世界。
 まるで世界の最果てのような無垢な風景だ。万物の生存を許さない、清浄極まる善の世界。それはかつて、神代と呼ばれた世界の裏側へ沈んだ場所と酷似していた。
 ――いや、或いは。この風景自体が、最果てそのものなのかもしれない。


 希人が迷い込んだ中に一陣の旋風が吹き抜け、草原の葉が散った。その刹那に、それは"居た"。
 眼前に音もなく現れたのは純白の大理石で築かれた、絢爛なる玉座。その上に、王者の風格を漂わせて君臨するものがいた。
 その特徴を一言で言い表せば、純白の王者であった。
 威風堂々たる白い外衣。清廉潔白たる白い甲冑。
 純白の獅子を象った兜はその正体を覆い隠すも、溢れ出る荘厳な神気の程は相手が何者であれ畏怖の念を想起させよう。泰然自若と頬杖をつき、こちらへ視線を投げかける様は宛ら審判を下す神の如き風格だ。
 事実、この王は前述したとおりの存在であった。


「――答えよ」


 ただ一言。箴言の如く厳かに、問いを投げる声は響き渡った。
 有無を言わさぬ迫力を持った一声。その威圧感は、単に語気の強さだけによるものではない。――神霊の域に至ったものが害意を示せば、即ちそれは上位種からの命令(order)となる。彼女の一言は、既に誓約(ギアス)に匹敵するだけの制圧力を発揮していた。
 まさしく神の宣告。小癪な虚偽や言葉など、微塵も返させぬプレッシャーを秘めている。
 ……されど。その鎧の奥からする声は、どこか聞き覚えがあることだろう。
 幾度となく耳にした。何度となく耳にした、聞き馴染んだその声は――。

「――答えよ。
 おまえは何者か」

 疑問をかい挟む余地など与えず、箴言は続く。
 全身を甲冑に包み、表情さえ兜からは窺い知ることが出来ない。ただ冷酷に、冷淡に、王は問いを投げる。


「何をもって我が世界に。
 何をもって我が前にその身を晒す者か」


 無論それは、和解の為の下らぬ些事を問い詰めている訳ではない。
 要は覚悟。己らの覚悟は如何程か、を訪ねている。
 如何なる道理があれど、獅子を前にした生物は生死の覚悟を余儀なくされる。百獣の王たる玉座の主を前にした時点で、その覚悟は持ち合わせて当然のものであろう。無粋な言葉は不要。ただ、圧に負けぬ喝破で以て応えるがいい。
 王は、己が名を厳かに告げる。



「我は獅子王。嵐の王にして、この最果ての主である」




 それは神霊、神域の王。太古の神々に匹敵する『権能』を有する、紛うことなき大神格。
 かつて■■■■■・■■■■■■と呼ばれたもの。
 嵐の王の問いは、魂そのものを揺さぶるかのように騎士王へ、諸人へと響き渡る。
>アルトリア、ALL

【お相手宜しくお願いします。ボス戦を行うに足るだけの一定の戦力が集うまでは、こうした問答のスタイルで問いを投げてキャラの覚悟を確かめ合おうと思います。参加を所望する方は、その場に居合わせていたという描写を挟んで会話の間に割り込んでいただければ幸いです】
>アルトリア本体様、参加者様ALL

1年前 No.329

教祖 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【植物の世界/黒火のミルカ+浄罪歩兵+浄罪火兵】

かー、しっかし敵も味方も全くのゼロとかどうなってんですかねえ、ここは。
なんて部下に話しかけるも、勿論、無知な信者だからマシなのを抽出しただけの浄罪兵の中にミルカを納得させるような言葉を発する者は一人も居らず、結局答えを出せるのは自分ひとりで、他には期待するだけ無駄と言うのを再認識させられるだけであった。

とにかく、奇妙なのは敵にしろ味方にしろこの場に存在しない事だ、どちらの陣営にも突然別の場所に弾き飛ばせそうな手合いが居ても全くおかしくない。
だが、罠にかけられたとしても、体よく実験台にされたとしても、何のアクションも起こしてこないのは奇妙にも程がある。

さらに言うならば、先ほどまでは、まぁ荒れた戦争で満ちているような世界だったのに、今居る場所はそんな事からは無縁そうな、呆れ帰るほど"普通"で"平和"と言う印象を受ける場所と言うのも、夢か何かか? と思ってしまうような状況に拍車をかけていた。
しっかし……気が抜ける場所だ、そう思いながらも、ミルカは欠伸をひとつ。

本来、教祖たる彼女がこんな事をやっていてはいろいろ問題があるが、浄罪兵の名を与えられるのは、それなりに黒火を「理解」した馬鹿に限られる、少なくともこの世界でこしらえた浄罪兵は全てそのケースだ。
だからこそ、一目を気にせず彼女は傍若無人に振舞う。

などと考えていると、こちらへと誰かが近づいてくる、その服装を見るに、やはり「こちらの世界の人間」ではない。
彼が発した言葉に、ミルカは咄嗟に言葉を返した。

「あーん? んな訳ないでしょう、私が言う魔女や不死者ってのは、片や知識や興味を、片や友愛や意味不明なこと言いながらぶっ殺しに来るようなデンジャラスな連中です。 奴らの挨拶は大体の場合攻撃で……」

どうせ浄罪兵の誰かが言ったんだろう、そう思って相手を小馬鹿にしたような口調で返答するが、途中で気づいたのか、言葉を引っ込めた。
一瞬沈黙したミルカだったが、相手が名乗ったのを確認すると、一呼吸置いてから自分もまた話し返す。

その間にも浄罪兵は一気に警戒態勢を取り、何時でも戦闘に入れるようにスタンバイしているが、それを統率するミルカは、やはり「強者の貫禄」と言うのを意識しているのか、非常にフランクな態度だ。

「いえいえ、軍人などと。 そのような大げさな物ではありませんよ、私の名は黒火のミルカ。 この世界で効力のない名ではありますが、黒火浄罪機関の教祖をやってます。 ひとまず、未知の地で、幸いな事に会話可能な"人"と出会えた事に感謝を」

等と言って、ミルカは大げさな手振りで迎える。
相手が近づいてきていようとお構いなしだ、勿論、まだ攻撃してきていないと言うのもあるが、それ以上に数において圧倒的に優位なのと、最悪の場合でも大公の不死兵をまだ露呈させていない事が、彼女に余裕を与えていた。

そして相手は、口を挟む余地がないような口調で喋り始める。
だが、口で負けるようなミルカではない。

「えぇ、えぇ、しかと全文余すことなく聞きましたとも。 まずは一つ、縁、と申しましたが、それは私も思う所ですねえ、世には類は友を呼ぶと言う言葉がありまして、あぁ、いや、これの本来の意味と今の状況は違うと理解していますが、本質的に、聡明な人間の下には似た人間が必然として現れると考えておりましてね? 見たところあなたはこの辺りに詳しいご様子、ですが、このご時勢周りの事に気を配り、ある程度「情報」の扱い方を心得る者は少ない。 多くは目先のことに囚われ、何も知らぬのに頼んでもない法螺を吹いて金を巻き上げたり、あるいは馬鹿ゆえに力で金銭を、なんてよくあるお話です」

相手が名が台詞を吐くならば、このミルカと言う人物も長台詞を吐く。
相手を持ち上げながらも、理解に困るような長文を並べる、これこそが人心を動かす物だと考えているか、ただクセなのか。

だが、ミルカの語りはまだ終わらない。

「ですからね、思うワケです、会話を楽しむのは知識人の特権。 そんな知識人がたまたま出会った、ここの一般教養がどんな物かは知りませんが、大体の場合は奇跡に近い確率、であるからこそ、必然。 しっかりと私と会話を行い、情報を引き合いに出せる貴方は、会話相手にとって申し分ない……あぁ、長くなりましたね、すみません、クセな物でして。 回答はOKです、話し相手ぐらいなら問題ありませんよ」


「おっと、ですが、その前にお一つだけ。 貴方、レジスタンス、あるいは新世界派と言う物はご存知ですかね? あぁいや、何処に属してるとかは興味ないんですがね、どっちにしろ未知の場でやりあう気はありませんとも」

そんな長ったらしい了承の後に、ミルカは相手の素性と、この世界が別世界であるかどうかを見極めるために質問を一つ。
これで、相手がレジスタンスと言おうと、新世界派と言おうと、それとなく話を合わせて乗り切れば良い。

重要なのは、二つの勢力を知らなければここが異世界だと確定する事、そしてもう一つは、突然殴りかかってくるような奴か、と言う危険性の確認だ。

>ハザマ

1年前 No.330

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【ノア/教会/ノア】

>>立花・ァ、(シンク)

薄っすらと瞳が開く。一度沈み込むように、深く目を閉じ、ゆっくりと瞼が完全に開く。覚醒の動きだ。

「現状、ノアはほぼ全ての力を概念創造へ傾けています。その報奨があなたの概念核奪還という功績に見合うのであれば、今すぐにという確約は出来ませんがあなたの願いを叶えます。――以上」

ちらり、と向けた視線は違うことなくァの手のひらの中の概念核へ。 一瞬の空白の後、応えたノアの要求は簡単なものだ。

ノアにとって、概念核の再抽出というプロセスをスキップできたのは立花・ァがこうして概念核を奪還し得たおかげである。ならば、その恩に正当な報酬をもって応える責務がある。恩を仇で返すものが完全な救い手足り得るはずがないからだ。

「また、その概念核は報奨を待たずこちらに引き渡して頂きたいと判断します。運搬には感謝を以て応じますが、それは元よりノアのものなので。――以上」

ゆっくりと、その右手を差し出す動きは、返還の要求だ。この段になり、初めてノアの瞳に僅かな色が映り込む。道具であるはずのノアが持たぬはずのもの、感情。その色は悲哀とも、執着とモ似た未練の色。

もしも、立花・ァが返還に応じないのであれば――ノアの僅かな、しかし確かな感情がノア自身に何をさせるのか、させてしまうのか。それは彼女自身にも判断出来ぬ大きなノイズだった。

1年前 No.331

煉獄騎士 @antinomie☆yzl4MFL1dRLB ★sLdIAtRTAq_VuR

【 ノア/居住区(通り)/龍炎寺タスク 】

鎧が擦れる音と、石畳とぶつかる音。
やや早歩きで動く黒金の影は、小気味の良い音を放ちながら道を歩いていく。
その頭部を覆う鉄仮面は、最早存在していない。代わりにあるのは、歩みに合わせて揺れ動く空色の長髪とあどけなさの残る顔。
全体的に見て、アンバランスだ。こんな厳かな鎧を着用しているのが少年だという事実も、少年が浮かべるにはやや違和感のある陰りがある瞳も。

「……世界は、生まれ変わるのか……」

ノアは、その力を見せた。
あの時は考える暇がなかったが、改めて考えれば妙な話だ。
方舟は、正しく世界を牛耳れるような力を持っていた。それを、見せつけられた。
自分は大人になるべく此方側に立っている。子どものままでは、家族の一人も救うことは出来ず―――例え世界が生まれ変わっても、そこが変わらなければタスクにとっての意味はない。
結局のところ、最後に待ち受けているのは自分の問題なのだ。

「“新世界”で僕に出来ることは、あるのか」

守られる立場ではなく、守る立場に。
その信念こそあれど、先の施設では結果的に方舟に命を救われる形になった。
このままでは、何も変わらないんじゃないか?家族を封じてまでやっている今の行動は、全部ただの『無駄』になるのだろうか。
ついには歩みを止めてしまったタスクはその場でうつむき、深く息を吐く。違う、無駄じゃない。確かに世界は、良い方に向かっているはずなのだ。
そう考えながら、人通りのめっきり減った避難区域を眺め、耽る。

>ALL

1年前 No.332

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 ノア/教会/立花・ァ 】

 >ノア

 緩慢な動作で返還を求めるノア。そこに、感情の色を見た。情念めいて、ひどく複雑な色彩を。

「……Tes.」

 了解を示す言葉は、絞り出すようなか細い声で唱えられた。
 ノアが露わにした感情――付け入る隙だと思った。要求を釣り上げる好機だとも。しかし、何か言いようのない不安に諌められて、ァは大人しく概念核をノアの手へ返却した。

「貴女は――」

 ふと、口を滑らせた。端的に済まされるべき言葉が装飾を得て、一人歩きする。

「幸いの世界を創るのだと。悲哀もなく、苦痛のない……ですが、私にとって幸いとはそれ≠ナはないのです」

 ただ一言、宗茂を救ってほしいと告げれば済む。相手がどれだけ特異であれ、自動人形という性質は揺るがない。余計な言葉を挟むのは得策ではないと分かっていながら、言葉はつらつらと滑り抜けていく。

「宗茂様が健勝で、この身と共に在るのならば、そこが何処であれ私にとって幸いの世界です。ノア様が我々のために幸福に満たされた新世界を創ろうというのなら、まずは宗茂様をお救いください。私の望みはそれだけです」

1年前 No.333

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 ノア/居住区/セイバー・リリィ 】

 >対象なし

 質素な部屋がある。生活を成り立たせるために必要な最低限の範囲を出ないが、窓辺に飾られた野花が素朴な雰囲気を持たせている。そこに住まう少女の人柄を表したような部屋。だが、当の部屋主といえば、今は頭からシーツを被って出てくる様子がなかった。
 時折漏れる吐息は重苦しく、憂鬱さを滲ませている。立ちはだかる壁を前に、リリィは懊悩していたのだった。

 ……あの死闘から一週間が経った。共闘を経て、心を通わせた二人の戦士を想う。敵から始まった二人。底抜けに明るい笑顔で支えてくれた青年と、厳しい言葉と裏腹にずっと助けてくれていた少年を。
 二人には道がある。揺るがず、崩れることのない確固とした道。それはリリィにもあって、直向きに進んでいる。
 だが、終着点が見えてない。それが二人との間にある決定的な差だった。

「……わたしは――」

 相互理解の道を模索するという、その意思は変わらない。だから新世界派とレジスタンスのどちらも知らねばならないと、まずはノア側へ着いた。だが世界はリリィの楽観を嗤うように、どんどん事態が急変していた。
 ……さきほど全域文章が送られてきた。遂にノアの計画が最終段階に差し掛かったようだ。
 幸いの世界。苦しみも悲しみも取り払われた、新しい未来。それはきっと多くの人々が夢に見て、焦がれながらも諦める無垢な夢そのもの。
 けれどそんなことがあり得るのかという猜疑と、ノアの創る世界が真に幸福なものであるのかという疑問も理解できる。
 できるからこそ、選ばねばならない。新世界の創造と阻止、どちらへ剣を捧げるのか。もはや双方を知るには時が経ちすぎ、残された時間はあまりにも少ない。
 個と個の問題を解消するという目先の問題にばかり囚われていたリリィは、世界の命運が掛かった選択を前に途方に暮れていた。

「……どうすればいいんでしょう」

 答えは出ず、行き詰まる。だから、何かしようと思った。レジスタンスの拠点にいるであろうバッツを捜すか、バベルの何処かにいるであろう人修羅を捜すか。いっそノアに直接話を聞くのもありかもしれない。
 逡巡。黙考。深慮。静まった室内に、すぅと深い呼吸の音がする。

「よしっ、何はともあれ考えタイム終了です! 為せば成りますが、為さなければ何も成りません!」

 てーい、と包まっていたシーツを放り投げてリリィは個室から飛び出した。後先考えず、あるいは後先に後悔を立たせないために。

1年前 No.334

鋼鉄探偵 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

【→灼熱の世界/柴来人】


 施設での戦いで破損したライトが修理を終えるまでの間にも、世界の状況は大きく動き始めていた。
 最早、小競り合いを続けている時間は過ぎ去った。人造人間・ノアが遂に行動を起こし、運命の歯車は音を立てる。
 巨大なる方舟の浮上、迫るタイムリミット、追い詰められたレジスタンスはノアの起源を探るべく、これまでに得た情報から、ある場所へと向かった。

 "量子力学的多元並行世界研究所"

 ───変革の刻が近いなか、切り落とされた腕を応急的に修復し終えたライトもまた、其処へと足を運んでいた。のだが……



「……なんだったんだ、今のは」


 気がつけば、其処は"地獄"だった。
 灼けるような熱が辺りを支配し、流れ出る溶岩はあらゆる物を喰らうようにどろりと地を這う。
 その光景は正しく万人が想像する一種の地獄の様と言って差し支えないだろう。後は此処に閻魔大王でも居れば、
 今自分は死んで、あの世にでも来たのだと勘違いしても仕方がなかったかもしれない。だが実際にはそうではない。
 機械の身体は此処が現実であるとハッキリ理解させてくれているし、そもそもライトの視界に居るのは地獄にて審判を下すようなモノではなく。

 高らかに嗤い笑う餓鬼が一匹。
 其処には余計な物など何一つとして付随していない、
 正義?自由?平和?知らぬ存ぜぬ、ただ只管戦いに狂喜する事だけを目的とした修羅。

 共に立つ機Χ──鉄の皇帝を従えた悪鬼は、己を満たせる相手を待ちわびて、この地獄に在るのだ。

>>(キバ)

1年前 No.335

酢橘 @karasu1010 ★0gkYBdXyN1_giC

【ノア/格納庫/灰原】

2キロに及ぶ巨大な格納庫の中で灰原はサングラスをかけ損傷部分の修理をしていた。腹部の装甲部分はほぼ崩壊、また一部機能損傷、或いは凍結。腕は何回か貫通されておりいくつかの穴が確認された。スーツは腕の部分が破れているが気にはしない。それよりも灰原はノアの外部探査用端末にアクセスした後に外部端末が得た情報を閲覧することを目的に格納庫へ来ていた。灰原が調べようとしているのは疑念核について。ノア内部以外の疑念核についての情報が灰原は必要としていた。灰原は未だに疑念核の全貌について知っていない。彼にとって疑念核以外の情報は重要では無い。ノアの過去やノアが導こうとする新世界、それを阻止しようとするレジスタンスも灰原にとっては空しさしか得ていない。灰原は疑念核をコントロールする方法を模索する。別に疑念核を支配しようとは考えていない。また新世界派を裏切るつもりも無い。ノアの思想とやらを新世界に向けて乗せた上で自分の目的もついでに乗せればそれで構わない。そう、灰原が今此処で存在するのはそんなついでな理由である。灰原は所属していた組織の意思が継げれば今現在存在している目的は完了する。だが組織の守護は必要な為、自分の寿命を迎えるまで疑念核をコントロールしてかつての組織の技術を取り戻さなければならない。とはいえこの疑念核だけでオオガミテクノロジーと呼ばれる人工有機生命体、つまり親が研究所以外人間と何も変わらないまでに発達しなければならないアンドロイド、さらにアンドロイドに関して身体能力向上を目的としたサイボーグ身体の一部或いは全身を機械に変更する技術に関しては問題が無いと見ている。ちなみに一部のアンドロイドにはさらなる身体能力向上の為にとある事を行う。そして結果的にだが寿命が人間よりもかなり短くなってしまう。灰原はその点に関しては不明だが自身にその可能性はある。だが灰原は組織の事しか考える事は無い為、自分の寿命がどうなろうか関係無い。
しかし灰原が生きている内に組織再建を叶えないといけないので、灰原はとにかく疑念核についてコントロール方法を考えないとならない。だが疑念核についての情報が少ない。疑念核を完全に活用出来ているのは灰原が見る中ではノアのみ。教会へ向かいノアに聞けば疑念核のコントロール方法が分かるかもしれないと思ったがコントロールに関しての用途についてや灰原自身の目的を聞かれる可能性がある為、なるべくノアの知らない所で疑念核調査を行わなければならない。誰にもバレない様に新世界を創る事が組織を継続させる事に結果的繋がるのが灰原の大きな目的。だが疑念核を操作出来なければちゃんとした意思は継げない。ノアを神輿として奉りその裏で暗躍しなければ本当の意味でのオオガミは戻って来ない。それは飽く迄も最終的な理想だが。
灰原は外部の情報を元に疑念核の調査をしていたがその前に緊急事態に備え、武器の手入れ、修理をしなければならない。銃口等の部分が凍結して危険な状態になっている拳銃を修理を行う。日本刀についてはオオガミにより開発された重金属で出来た刀に関しても非常に手入れが重要。
「……ふむ、この無限に近いエネルギーはオオガミの再建、進化に大きく貢献出来そうだな」
かつて少なくとも灰原には人間だった時は無い。今、運命を変える為に懸命に戦う者を余所に灰原は淡々と武器の手入れを続ける。

>対象無し

1年前 No.336

ファヴニル・ダインスレイフ @faketanisi☆8cfl5/j3VDw ★XZOLTACqTn_jCr

【滅んだ世界/ファヴニル・ダインスレイフ】

 嘗て文明が栄えていたのだろう街並みは荒れ果て、寂れ、死と退廃の匂いだけが満たしている。
 これは、文字通りの滅んだ世界である。ヒトの驕りと増長が際限なく続いた結果、予定調和のように自壊した世界。一つの失敗譚の形であり、人類賛歌という概念の行き着く果てと表現出来よう。
 終焉の底に落ちた領域に、生命らしい物は一切存在しない。
 人間、動物、昆虫、それどころか目視不能の微生物類に至るまで、真実一切、此処には生命の息遣いがない。有るのは死と、静寂と、頑然たる事実のみである。

 その死界に、例外として佇む者が有った。誰が見ても善性の存在ではないと一目で理解出来る、ぎらつく双眸の偉丈夫。
 鮮血で染め上げたような頭髪に、化生のそれを思わせる刺青。ギチギチと耳障りな音を奏でているのは鋼の篭手剣(ジャマダハル)。数多の命を摘み取ってきた邪竜の魔爪に他ならない。
 彼こそ、この異界の支配者。力に耐え兼ね滅亡した世界に降り立った、後天性の法則超越者である。
 あくまでも彼は元を辿れば人間であり、人体改造と不断の努力のみで最高ランクの概念を内包している彼は紛れもなく規格外。それどころか、道理が通っていないと言ってもいい。
 では――彼はどのようにして此処まで辿り着き、第五の段階にまで上り詰めたのか。

        .   ・・・・・
 答えは簡単だ、そもそも道理が有ると考えている時点で的外れ。
 自身の強靭な意志力を概念として定義し、理屈も何もない根性論で強引に力の規格を引き上げたのである、この邪竜は。
 無論、普通の世界では通らない理屈だ。だが、概念システムが世界の根源に位置している、極めて人類の限界が胡乱な世界である以上、光の血族は容易く怪物になる事が出来る。

「おいおい……何だこりゃあ? 天下無敵に狂ってやがるなァ、最高じゃねえかよ」

 そして当然、この男はそれを絶賛していた。
 彼は光の信奉者。気合と根性、理屈のない覚醒をこそ是とし、本気で生きる姿勢を何より愛する悪竜。
 網膜を焼き、魂を沸騰させる出会いから魔道に入った彼が、前に進もうという意志さえあれば幾らでも限界を突破出来る世界なんてものを愛さない筈がない。
 加えて、愛すればこそ欲が出る。システム化された覚醒に甘んじている腑抜け達を、もう一度目覚めさせてやらねばならんと竜爪が軋む――その為にはノアが不要だ。新世界など知った事か、この手で奪ってやるのが悪竜の道という物だろう。かと言って、レジスタンスに与する気もない。竜は暴れ、破壊を尽くすからこそ恐れられるのだ。斯くあるべしと自らを定義した彼だ、誰かと手を取り合い仲良しこよしなどあり得ない。

 宝を寄越せ、すべてを寄越せ        .        . おれ
「Her den Ring,Her den Ring――ヒハカカカカッ、そら来いよッ。邪竜は此処に居る!
 世界がどうこう吠えるんなら、まずはその光をこの俺にも見せてみろやァッ」

 その名、ファヴニル・ダインスレイフ。
 英雄殺しの滅亡剣……あるがままに破壊と殺戮を尽くす、人の姿を持った鋼の機竜である。


>ALL

1年前 No.337

鏡飛彩 @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【方舟(ノア)/居住区(病院)/鏡飛彩】

物思いに耽りながら飛彩は手持ちのビニール袋から一口サイズのシュークリームが幾つも詰まったパックを開封、口の中へと放り込む。
疲労回復のための糖分補給だ。飛彩とて、人間である自分自身の状態管理も手を抜かない。
そんな時だ。飛彩に声をかけた者がいた。

「ボードウィンか。
歩けるくらいには回復したようだな」

そういう飛彩は事実を淡々と確認するような声音で愛想無しだったが飛彩は別にガエリオの事が嫌いなわけでは決してない。
むしろ今の飛彩にとってガエリオは患者であり飛彩の信条は患者の治療である。

「気にするな。患者の治療がドクターの仕事だ。
俺は自分の仕事を果たしているに過ぎない。俺は一般市民だろうがお前達のような戦士だろうが患者を区別するつもりはない」

飛彩は一般市民も兵士も患者として同等に扱う。兵士だからといって特別扱いはしないし戦う力のない市民だから見捨てるなんてこともないのだ。

「今すぐ処置が必要な患者への処置は概ね終了だ。
とはいえ急患が運ばれてくる可能性もあるから油断は出来んがな。
ボードウィン、お前も身体が痛むなら無理せず寝ておく事だ。
自身の傷もそうだがお前の機体…確かキマリスだったか?
あれが直るまでは動けないだろう」

後半部分の言葉には幾何か、労る感情があった。
冷静な飛彩であるが冷酷ではない。患者の心情を配慮することも出来るドクターなのである。

>ガエリオ

1年前 No.338

シングレン @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【滅んだ世界/シングレン・シェルブリット】

「フン」

眼前に広がる景色を見て彼、シングレン・シェルブリットはつまらなそうに鼻を鳴らした。
シングレンの眼に映るのは文字通り終末を迎えた世界の風景である。
この世界には弱者も強者もいない、いるのは死者だけだ。
自分を除けば――いや、もう一人いた。

「ほう?」

シングレンが視界に捉えたのは紅き髪に長身の逞しい体つきにまるで竜の爪のような篭手を備えた男。
あんな男、これまでの新世界派で見たことは一度もない。そして一目見てシングレンは確信した。奴は『強い』。

「ふふ、一時はどうなるかと思ったが退屈しなくて済みそうだな」

シングレンはレジスタンス敗走の知らせを受け、此度は自ら出撃した――のだがどういうわけか見知らぬ世界に迷い込んでしまっていた。そこにいた謎の男、シングレンはあの男が何か鍵を握っていると踏んだ。
シングレンは己の機攻殻剣を握り、己の愛機を解き放つ。

「『原初たる大海、力渦巻いて臨界せよ。天照らす神意の裁きを下せ、《リヴァイアサン》』」

シングレンがその身に纏うはまるで海竜を彷彿させる蒼き装甲を持つ機体。
これこそシングレンの神装機竜『リヴァイアサン』だ。シングレンは自らを邪竜と称した男に相対する。

「邪竜よ、光ではなく洪水ならば見せてやれるぞ?」

シングレンは不敵に笑いながら邪竜に言い放つ。『蒼の暴君』にして海竜が邪竜に対して宣戦布告した。

>ダインスレイフ

1年前 No.339

鉄仮面 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【帝都情報蒐集院→撤退/蒐集院玄関(外部)/ラフレシア(カロッゾ・ロナ)+バグ】

無数の攻撃がパムに対して襲い掛かる。
しかし、しかしだ、決め手には至らない。 かと言って相手を消耗させられた訳でも無い。

戦いは平行線……となれば、やはり機械であるこちらが優位であるかのように見える、しかしそうではない、上空にあの巨大戦艦が居座っている以上、どう戦況が動いても、最終的にはこちらが不利なのだ。
だが、ここで引き下がれば、レジスタンスはあの巨大戦艦に対するレベル5という抑止を失う。

仮に、あれが砲撃を開始したとしても、ラフレシアは実弾が来た場合は無数の弾幕を展開する、あるいは光学兵器が使われたときは搭載されたIフィールドで自軍を強固に保護する事が出来る、となれば、味方の撤退が確認できていないというのに退くと言うのは、ほとんど味方を見捨てるような事なのだ。
……その一つ一つの命に価値を感じる鉄仮面ではないが、こういった貴族らしい行動と言う物には価値がある。

そう思い、次なる攻撃に移ろうとしたその時……友軍撤退完了の報が届いた。

「なるほど、退いたか。 ならば、ここに居座る理由も無くなったか。 お互いが持つ力が力だ、何れまた合間見える事だろう、その時は……倒させてもらうとしよう」

ラフレシアの拡散メガ粒子砲が放たれる、だが、それらは無茶苦茶な狙いで、明らかに当てるつもりではなく、相手の目を潰すための物と言うのは誰の目からも明らかであった。
そうして時間を稼いでいる間に、ラフレシアは周囲に展開されていたテンタクラーロッドやバグを収容してから花弁形態に変形して、追撃されぬように急速にこの戦域を離脱した。

>魔王パム


【灼熱の世界/ラフレシア(カロッゾ・ロナ)+バグ】

そして、時が流れ、現在、死を告げる赤い花は、その真紅に似合う地獄のような灼熱が支配する世界にて、再び咲き乱れた。
突然現れた、脈動するように触手"テンタクラーロッド"をうねらせる巨大な花の化け物と言い表すべき存在は、その巨体とあわせて、おそらくこの世界にいる者のほとんどから確認可能であろう。

いささか突然の事であったが、カロッゾは一切の焦りを見せない、と言うのも彼とてレジスタンスの中でもトップクラスの実力を持つ者の一人、それなりの情報と言うのはある。
計画が、ただ実行されただけだ。

と、なれば、こちらで自分がやるべき事は分かりきっている。
調査可能な人員を護衛しつつ、ラフレシアとバグの殲滅能力をフルに活用して、敵対勢力を殲滅する、一度は機械と言われた男には相応しい任務と言えよう。
そして、こちらからも確認できる物が一つある、それは、こんな大地の影響をまるで受けずに疾走する、一つの人型兵器。

モビルスーツとは違い、また、レジスタンスにも、新世界派にもおそらく居なかった戦闘兵器だ。
そして、それの搭乗者は、先ほどから挑戦者を待ち望むかのように挑発し、笑う。

明らかに、話し合いが出来るタイプではないだろう、そう考え、ラフレシアの巨大な花弁の一つに搭載されたメガビーム砲の砲身が向けられ、他の花弁からは、無人殺戮兵器、バグが展開される。

だが、先手は取らない。

「こちらはカロッゾ、異世界の戦域に到着した。 ラフレシアも問題なく稼動している。 おそらく現地の機動兵器を確認した、本部からの応答無き場合、独自に対処を行う。 ……もし、同じ世界に到着した者が居るならば、ファーストコンタクトはそちらに一任する。 万が一の場合はこちらが砲撃で敵を引き剥がそう」

カロッゾは、届くかは分からないが、一応レジスタンス本部と、周辺のレジスタンスの無線に向かって現状を報告する。
とはいえ、おそらく異世界というだけに、本部への通信は通じていないだろう、通じているとするならば、同じ世界に居る者だけだ。

もし、奇跡的に同じ世界に到着した者が居るならば、あの地獄の鬼、そんな表現が似合うような者に対するファーストコンタクトは……それこそ、交渉が出来ると思っているならば一任するとだけ言っておいた。

巨大な花は未だ動かない、目標がどのような動きを見せるかはまだ分からない、もし、敵対的でないというなら、先手を取って戦闘が不可避な状況に持ち込むのは避けたいのだ。
……もっとも、そうは思えないが。

>キバ 柴来人 ALL


【という事でパム本体様、お相手ありがとうございました。 そして続けて異世界にラフレシア投下です。 とはいえ、相手がボスという事で一対多になるでしょうし、レベルは同じですが、基礎スペックでは若干ラフレシアが見劣りする程度に描写するつもりです】

1年前 No.340

キバ @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

【灼熱の世界/キバ】

蠢くマグマが波を作り、爆ぜ、容赦無く辺りを燃やしてゆく。
岩山に立っているだけでも地獄だと感じてしまうほどの熾烈な熱――この地獄を耐え抜き、且つその上で自分と戦える者達をキバは求めている。
それは闘争の世界へと飛び込んだキバの願望の一つだ。戦いたい。心の底から湧き上がってくるその欲望だけが今キバを突き動かしていた。
そしてその欲望に反応するようにして、地獄へと堕ちてきた来訪者をキバは見た。

「ふんッ……人形兵器(アンドロイド)か? 随分とイキが良さそうじゃねえか……ゾクゾクしてきやがる!」

だが、まだキバは動かない。目の前の鋼鉄の男の力の強さを全て測り切ったわけではないが、何せアイアンカイザーの持つパワーは強大なものだ。うっかり殺してしまっては戦いを楽しむことはできない。殺すにしても最後の最後、痛めつけた後に一思いに殺してやらねばならない。
闘争を望むあくなき探究心は灼熱の世界をさらに地獄に変えるため、「その時」を待っているのだ。故に。だからこそ、「その時」が訪れたキバの顔は、歓喜に満ち溢れていた。
この燃え盛る業火に包まれた地獄に咲いた花。それはまるで不吉な予感をさせる彼岸花のようでもあり、或いは、キバに向けたザクロの花のように見えた。
しかし、キバの心は喜びで震え上がっていた。つり上がった口角はとめどなく笑い声を漏らし、キバの体を弾けさせた。ズタズタに焼けただれた肌は若々しく躍動し、キバは「ヒャッハアァァァッッ!!」と叫びながらパイルダーに飛び込んだ。

「いいぜ、いいぜ、いいぜ!! エビで鯛を釣るってのはこういうことか? えぇっ?
 だがそんなこたァどうでもいい! 歓迎するぜバカ共! ここはな……地獄って奴だァァァッ!!!」
、  、  、  、  、  、  、  、  、  、  、  、  、  パイルダー・オン
キバが飛び込んだ円板状のパイルダーが高速回転しながらアイアンカイザーの頭部へとドッキングする。
それを合図としてアイアンカイザーの双眸が黄色く発光した。真紅の色で染め上げられた鋼の皇帝は両腕をあげ、雄叫びのような、或いは産声のような音をあげる。それは鉄が軋むかのような歪な音だ。
合わせるようにして灼熱の世界のマグマの動きが活発化した。降り注ぐ火炎弾は勢いを増し、地獄の鬼の目覚めを歓迎する。そしてアイアンカイザーは飛び上がり、高所から鋼鉄探偵と、巨大な花、基、機動兵器へと狙いを定める。ついでに花弁から出た、アイアンカイザーのパイルダーに似た円板状の兵器(バグ)にもだ。
両腕の装甲が上へとスライドし、袖口よりガトリング砲が出現する。アイアンカイザーは、それを容赦無く放った。

「カイザーガトリングゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!! 蜂の巣になっちまいなァァァァッ!!」

一発一発が生半可な装甲ならば抉ってしまう大口径のガトリングが両腕より容赦無く吐き出され、無数の弾丸の雨が地面を打つ。
その雨はやがてライトとラフレシアへと迫ってゆく。機動兵器のサイズで拡大されたガトリングの弾一発一発の大きさなど、最早考える必要性すらあるまい。地獄の歓迎は手厚く、そして、容赦無く。鋼の皇帝の『挨拶』にしては、まだ生ぬるいほうと言えるだろう。

>>ライト、カロッゾ

【絡みありがとうございます。同レベル帯ですし、こちらも圧倒しすぎないように描写できていければと思います。よろしくお願いします】

1年前 No.341

各務・鏡 @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

【白い世界/各務・鏡】

白。
辺りを見回しても、一面白い世界が広がるだけ。
白、白、白、白、白――――そこに、一切の色彩は存在しない。闇を齎す黒も。火を齎す赤も。水を齎す青も。雷を齎す黄も。
まるで白紙のような世界。あらゆる異物がここには存在しない。暗い何かを引き立てる白の役目を放棄した、怠惰の世界だ。インクをつけてペンを滑らせる前の世界(ページ)はきっとこのような光景なのだろうと、各務は珍しくこの世界に来てから妹を回想した。
ふとした切っ掛け、というわけでもなく。気づいたら此処に居た。それだけの話だ。だから此処が何処かなど、各務にとっては別段気にする話でもない。異世界を渡り歩いて来た放浪者故に、ここもきっとそういう異世界で、恐らくは何も物語の始まっていない世界なのだろうと、そう思っただけの話だ。
異物の存在しない白い世界というのは、裏を返すと異物が非常に目立つ。故に、異物である各務は、同じく異物である騎士王の存在に気がついた。感じるのは膨大なエネルギーだ。弟子のように膨大な流体をプールしているのかと思い、気になって、話しかけようとしたところだった。

「む、一体……」

一瞬、身体に電流が走ったような感覚に陥った。
威圧。感じるのは各務にすら一筋の汗を垂らさせるほどの圧。それは旋風という形で体を迸った。顔をあげれば、それは既に居た。この世界に君臨していたのだ。ただの白紙の世界にたった一つだけ存在している獅子、いや――“神”、だろうか。
神は問う。それは覚悟を問うもの。その言葉は前にいる騎士王に告げられたようにも思えるが、恐らくはこの世界に来ている全ての来訪者へと向けられた言葉なのだろう。そして、それに応えなくば一瞬で消される。それまでの順序を一瞬で想起させるほど、意志の篭った声だ。
ならばこそ其れに応えるべきだ。応えなければならない。あれを超えねば未来はないとでも告げてくるのだ。何も分からずじまいに、何もできずに、こんなところで朽ち果てるのが己の末路などとは、ありえないのだから。

各務は右手をかざす。まばゆい光が白い世界に迸った。(最も視認するのは難しいだろうが)。射出された“それ”は、各務の手に高速錬成されていく。

白。
それはこの世界と同じ、不浄の白を纏う身の丈以上の大剣だ。そして、剣というよりも打撃武器のような強引な刃が内包するのは――砲弾成形式の加速砲。これが、ノーマルデバイスというもの。本来ならば使役体という流体を高密度化し、精霊として個性を与えた人工生物を武装に召喚転化することで術者の負担軽減と武装の洗練が行われる。
だが各務は違う。肩に乗る竜属の力を使わずにして、彼女はそれを召喚している。そして、同時に各務の体に組み上げられていくのはノーマルフォーム。
、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、フロギストンハート
胸部装甲前に浮いた術式陣にはギリシャ文字があしらっており、“燃素信念”の文字がある。左右対称。青と白の聖騎士型。振るう大剣はディカイオシュネ(正義)。もう何度も纏った衣装。


「――――――――各務・鏡だ」

その言葉は、響く。
聖騎士の声は、真っ直ぐ、剣のように。しかし、広い自由を内包した澄んだ声だ。

>>獅子王、アルトリア、ALL

【絡ませていただきます。順番の関係上、名乗りが先か後かはお任せいたします。よろしくお願いします】

1年前 No.342

鋼鉄探偵 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

【灼熱の世界/柴来人】

「そういうお前が乗っているのは"スーパーロボット"とかいうヤツだろう。俺の世界にも、似たようなモノがあった」

 問いに対して、返答ですらない確認のような言葉。会話は互いに一方通行で、ぶつけ合うだけ。
 しかしそれも得てして当然、皇帝の上に立つ地獄の餓鬼の如き男は、人の姿こそしているが、その実価値観の全く違った生命体(なにか)だ。
 一目でわかる。こんなヤツ相手に話し合いの余地など、ハナから有りはしない。相手を喰うことだけしか考えていない獣と、交渉のテーブルに付く馬鹿はいない。

 そうしてライトは、改めて男が駆る鋼のマシンへと目を遣る。
 米国が海底遺跡から発掘した古代の巨神を現代の技術で復元した三機のマシン──スーパーロボット・NUTS。
 動力にバイオデストロイヤーと呼ばれる超人をも殺傷する事が可能な、危険だが高いエネルギーを持つ液体を使用する事で、
 長時間の稼動と極めて高い戦闘能力を併せ持った──力を持たない只の人間が、神にも悪魔にも、超人にもなる事が出来る、機Χすら上回る兵器。

 あの人型の機Χには、それに近い印象を感じる。そしてそれはあながち間違いでもないのだろう。
 厄介なのは、それに乗り込む男。牙の銘を持つ餓鬼が螺子の抜け切った狂者であることか。
 ・・
 髑髏の亡霊に振り回されていただけの連中より、余程タチが悪いと言える。

「……どうやら、この妙な世界に送られたのは俺だけじゃないらしいな」

 対峙しつつも、向こうは動きを見せない。何かを待っているのかと疑問に思いつつあったライトの耳に、聞こえて来たのは同じようにこの灼熱地獄へ誘われた者の声。

「鋼鉄探偵だ。──あんなもの相手に、コンタクトも何もないだろ。アレは、」

 あちらの無線が通じているのなら、こちらのも通じているのだろうと、ライトは返答を送る。    ・・
 しかし面倒事を押し付けてくれる。あの悪鬼とのコンタクトがもたらすのは、誰が言うまでもなく──戦いしかないだろ。

「───、チッ!」

 それは突然の事だった。
 時はきたれりとばかりに、喉が張り裂けんばかりの絶叫で餓鬼は地獄を震わせながら、鉄の皇帝を機動させる。
 それまで(比較的)大人しく佇んでいたのが嘘のように、荒々しい野生を剥き出しにしながら──この戦場に訪れた者達を祝福する弾丸を、雨霰の如く大地へと叩き込む。
 感情の侭に、熱情の侭に、本能の侭に、理性なんて物はとっくの昔に蒸発しているに違いない。

 無線を途中で切り上げれば、ライトは駆け出した。
 その砲撃の苛烈さと言えば凄まじく、単純に走っていては自身の身体は只では済まない。
 足先からブースターを噴かせながら、まともな人間であれば通れない溶岩流の上を文字通り飛び越しながら、忌々しげにライトは思う。

 もう一つ厄介な事があった、と。
 それは───あのスーパーロボットは、かつて自身が見たそれより、確実に"強い"という事だ!

>>キバ、カロッゾ

1年前 No.343

アルトリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【白い世界/アルトリア・ペンドラゴン(Lv4/3P)】

 ―――ふと、光が見えた。

 どれほど歩いて来たのだろう。病的なほどに白く、病的なほど欠けた世界。
 なにかを描く前のキャンパスを彷彿とさせるソラと大地の元を、歩んで来たはずだった。
 その場所は時間と空間、いずれも定かではない。
 あくまでも少女が頼みに出来たのは、この空間が何処か位相を隔てた場所であるという直感のみ。不確かで、根拠もないながらに、しかしそこには確信めいた感情すらあった。試しの場が何を意味するものか、分からないアルトリアではない。

 澄みきった広い空間の中。ふと、風の向きが変わる。
 その風と、最果てに輝けるひとつの異物(ヒカリ)をようやっと認識して―――すぐ、気付いた。


 問いは静かに。それでいて、鉄槌で殴られたような衝撃を伴うもの。
 それを投げかけた第三者が、瞬き一つもしない間に、いつの間にかこの地の果てへと立っていた。
 絢爛なる玉座に君臨したそれは、白い外衣と甲冑を纏った騎士―――兜の意匠はどことなく百獣の王を彷彿とさせ、ただそこにあるだけであらゆるものを捻じ伏せ、屈服させるだけの威をそれは持っていた。
 有無を言わさぬ声は機械じみた無機質さを持ち、害意はしかし元来人間が放つものではない。
 目前に立っているにも関わらず、兜越しから感じられる視線は何処かが噛み合わず隔絶する。
 ………それはまるで、荒唐無稽な理屈を取り出せば神と呼ぶべきものだろう。

 それで騎士王が怯むのかと言われたのならば否だ。
 しかし………この瞬間にアルトリアは、ほんの僅かな違和感をこそ覚えた。
 何故なら見えぬ兜の内側が、あまりにも―――あまりにも、なにか聞き覚えのあるものだったからだ。
 それにすぐさまあたりを付けられるほどではない。
 それには幾度となく触れたものであるようで、しかしその印象は決定的に合致しない。

 ………なにかが、ざわつく。おくびにも出さないが、第一印象はそれだった。

 この獅子王が、白き最果ての王であることは言わずもがな。
 それは言葉を交わすでもなく、魂からそう直感できる真実だ。
 だが、これに覚えがあるなどと一瞬でも感じたのは如何なる理屈か。微かに思考を巡らせるも―――そこで、ようやく他の第三者の姿に気が付いた。
 気付けば凛と歩みを進め、何時の間にか声を発し、名を挙げる女の姿がそこにある。
 正義の名を冠した剣を担うその人物の声が、確かに強く聞こえた。
 振り向きはしなかったが、少なくとも害意の類は感じない。少なくとも今集中するべきは目前だろう。

 どちらにせよ、これは対話を望んでいる。アルトリア・ペンドラゴンの疑問を挟む余地もない。
    、    、    、   、ワイルドハント
 魂を揺さぶるように名を告げた獅子は、嵐の王と自らを銘打った。
 最果てに住まい、錨を担うもの。
 その言葉に、二度目の疑問が浮かぶも打ち消して―――毅然と、凛とした瞳で白き獅子を見据える。

「―――ならば応えよう。我が名はアルトリア・ペンドラゴン」

 その問答に、柔らかな意思があるはずもないことは最早誰しもが分かる事実だろう。
 この神威を放つ獅子の王が、要は此方の意思を問わんとしているのは自明の理だ。
 そして、そうなれば彼女の返答は何処までも迷いがない。


「真実を見極めるために、この人理を護するために馳せ参じた」


 それ以上には何もない。
 召喚された騎士の王は、元よりその意味を見極めるために。
 そしてそれ以上に、この地に生きる全ての人間を護するためにこそ歩みを進めたのだ、と。
 故にそれは、
 言外に例え神威纏う者なれどおまえの問答に付き合う道理はないという確かな感情の発露でもあった。


>獅子王、各務・鏡


【申し訳ない、遅れました。他も順次返信させて頂きます。】

1年前 No.344

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【植物の世界/ハザマ(Lv5/1P)】

 ハザマの次々回転するような言葉に対して、彼女もまた臆することなく対話を返す。
 歩み寄る青年を不審がることもないのは、数の圧倒が故の余裕か、
 それともハザマが未だに何の敵意すら発することがないという事実あればということなのか。いずれにせよこの瞬間から、会話の最中に至るまで、ハザマは全く害意や悪意と言ったものを発露させることなくミルカへと接していた。
 それはいっそ、気味が悪いくらいに。にこやかな笑みのままに、彼女の言葉を受け止め流して処理する。
 彼女の長い話は多少の煽ても交えながら、しかし決定的に自分が主導権を握るためのものだ。唯我の意思を捉えたハザマは、それでもなにも動かない。この世界同様に只管穏やかなまま、隠し持った牙の存在どころか、そもそも牙があるかどうかすら判明させない。

「ほう、ほうほう。これは中々世渡りが上手な様子。ええお気持ちは分かりますとも!
 此方に出向いた理由は全く存じ上げませんが、その様子では未だ手探りの最中とお見受けしますよ。その状態、その手探りの最中に誤ったレールへ導かれ、気付けば奈落真っ逆様………そんな事態を怖れるのは、真っ当な人間の特権というやつです。
 いやあ誰だって死にたかないですからねェ。どんな色を並べ立てても、結局感情はそこに集約される」

 そして相槌を打っているのか、それとも会話のドッジボールなのか分からない返答をしてくるのも彼だ。
 しかしそれでいて決定的に的を外したわけではない。
 基本的に人間が安全を求め、リスクを避け、対話だの宥和だので穏便に済ませたがる理由は何時だってそういうものだ―――即ち死にたくない、すなわち未知と呼ぶべきものへの忌避。それが避けられるものならば、頭のまともな人間であればあるほどその落とし穴、人生という長いレールの何処かにぽっかりと空いた奈落への行き先を回避しようとするものだ。

「ええ、であれば少しの間対話と洒落込ませて頂きますが………」

 故にまず、会話が出来るかどうかを判断したミルカの反応と、
 この状態でなおハザマという人物が会話の通用しない狂人か否かを見定めるミルカの判断は的確なものだ。
 的確と言っても最善ではないかも知れないが、彼女の目線でそれはリスクを極力排除したものであることは言うまでもなく、故にハザマは此処まで何も起こさない。少なくとも、ハザマは。
 その証拠に彼は、相変わらずの飄々とした態度で、まず彼女の問いを聞き留め。

「おやおや。残念ながら、どちらも存じ上げませんねぇ。
 私は先程ただのハザマと名乗ったつもりですが、アレつまりそういうことですよ。いちおう仰々しい階級名とかありますが、意味もないものを名乗ったところで時間の無駄でしょ?」

 そこから、まず大前提を殴り壊した。
 けらけらと笑いながら、正体不明というアドバンテージをいきなり投げ捨てる。
 そのある種堂々とした立ち振る舞いは、まるで他になにかを秘めて潜んでいるかのようだが―――。

「そしてその問いの意図、なるほど把握させて頂きました。
 ですのでぶっちゃけて申し上げますが、此処は異なるカタチの事象にして世界と………まあそういうことです」

 そこに、もう一度ためらいもなく“もしや”と断じかけていたのだろう情報を捻じ込む。
 そこで次にミルカが考えるのはなにか。
 帰還するための方法? あるいはハザマという男の素性? 此処から、自分で殴りかかる?
 どれもあり得る話ながら、しかし………得体の知れなさとある種の無防備さが、思考を錯乱させるのは事実だ。

>ミルカ

1年前 No.345

ガエリオ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r



【方舟(ノア)/居住区(病院)/ガエリオ・ボードウィン】

「お蔭様でな、それにこれでも軍人だ、そう易々とダウンは出来んよ。
 しかし………生真面目だなぁ、おまえ」

 そこが信用出来るところだとは思うが、と付け加えながら、事実確認のような声に応答する。
 ガエリオとしても、この人物はそれなりに信が置ける性質だ。
 むしろ―――上位の戦闘能力者ほどなにかが捻じ曲がっている節すらあるバベルの面子のうちでも、凡そ真人間と呼べる人材は限りなく少ない。ガエリオの視点からしてみれば、現在上位枠を占有する華騎士も烈風も凶手も曲者揃いだった。
 前者はそもそも小娘というだけだからまだしも、残る二人は仮面と素の表情からして何を考えているか分からないような奴腹で、同じ目的と理想を目指した人間なのか疑わしさすら感じてしまうほどである。そんな中で、主義と主張が理解しやすいこの人物に対しては、味方であるという前提も相まってガエリオからの評価はそう悪いものではなかった。

「それでも俺らは治せる立場じゃない、精々おまえの仕事を減らせるように善処するくらいだ。
 ホラ分かるだろ、ノブレス・オブリージュ―――この場合は戦えるやつの義務って意味になるんだろうから、こんな気取った言い回しをする必要はなさそうだがね」

 むしろ、あの周辺地域の重傷者を救助してくれたというところからして有難い。
 それが仕事だと言えばそれまでだが、被害を被るのは誰かと言われたのならば一般的な兵士だ。
 凡そ価値観の振り切れない中庸な人間ほど被害を被りやすいものだから、自分達は精々力のある側として出向いて、可能な限り被害を減らすより他にない。少なくともガエリオが護るものは、このノアに避難した無辜の民たちだ。
 それが自分の正義―――と、考えると。やはり誇らしいものがある。少なくとも間違っている感情ではない以上、だからこそレジスタンスという勢力に飼われていたあの怪物を思い出すわけだが………。

「しかし、ノアの新世界も完成間近だ。
 キマリスの修理が終わったとして、もう次に戦う場所があるかどうかだよ」

 しかしそれよりは、今後の話だ。
 ノアの新世界が、痛みも苦しみもない幸福な世界であることは知っている。
 それが目指せるというのはどんな人間でも共通して喜ばしいことだろう。そこに厭はない―――問題は軍人の職務は当然、下手したら医者の仕事もなくなるのではないかという酷く現実的で小さなことくらいだ。

>鏡飛彩

1年前 No.346

魔法少女 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

 あの後──

 結局、巴マミは方舟への帰還を果たさなかった。
 不信と取られても致し方のない事だが、然し、今の侭ではどうにも戻れない。
 内部から協力してくれそうな人を探してみるという考えも、ノアの覚醒によって御破算。
 此処まで急転した事態の中で、今更疑惑と疑念を確かめようと云う思考を持つ者は、そうもいない。

 それに……戻れば、もう外に出る機会を与えられることもない事も察せた。

 そもそも万事ノア一人が動けばカタが付くのならば、私達が駒代わりにあくせく走り回る事もない。
 新世界創造まで、いよいよ大詰めとなった以上は、其処に属する者達を表に出す必要性は皆無。後は時が訪れるのを待てばいいのだから、
 それまでは億万が一が起きないよう、防衛に徹すという判断を下すであろう事は見えていた。人間の自分からして、其れが利口であると判る。

 ──だから、戻っても意味はないと。

 成らば残された時間で、少しでも全てを知る為に動くべきと少女は思った。
 今更単なる駒に過ぎなかった自分一人がどうこうしたところで、何かが変わる訳ではないだろう。それでも、
 ……それでも、蒐集院での出遭いを無駄にはしたくなかったから。ノアの正しさが何処にあるのか、せめて其れを知らない侭では居られない。
 ノアが創り上げる世界で、旧世界を生きている人が今のバベルに住まう人のように永遠に幸福であり続けられるのか、それとも──あの時抱いた悪寒こそが、真実なのか。

 答えに近しきは、院で手にした情報にあった施設───並行世界研究所。

 恐らくはレジスタンスの面々も向かうであろうその地に、少女もまた走った。


【→荒れ果てた世界/巴マミ】


「──此処は、」

 見開いた眼に映るのは、何処までも乾き切った大地だった。
 瑞々しさや潤いといったモノを失って干乾びた地面に、肌に触れる風も冷たく寒く──何より寂しい。
 例えば、このまま二つの勢力による戦いが際限なく続いた果てに待つ世界とは、こういう物なのかもしれないと巴マミは思った。

 そこで我に帰る。
 何が起きたのか、自分は確かに研究所に。つまりは、建物へと足を踏み込んだハズだったのだが、
 気が付いてみれば"此れ"だ。幻覚でも見せられているのか、何か防衛機構が働いて何処かに飛ばされてしまったのか。
 とにかく、尋常ならざる仕掛けに自分が嵌ったのは間違いないだろう。そして……、

 もう一つ真実があるとすれば、此処に居るのは自分一人ではなく──凡そ信じ難い圧を持った、"何か"が佇んでいるという事。


>>(極ラーヴァナ)

1年前 No.347

土方歳三 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【滅んだ世界/土方歳三(Lv3/5P)】

 そもそもの話をすると。
 洋装を着込んだ幕末の狂戦士にとって、新世界もレジスタンスも何ら興味はなかった。
 彼が戦場に出向く理由は止まらないため―――即ち、勝つまでは死ねぬという狂奔以外には有り得ない。であれば大前提からして、この英霊がわざわざ調査などというまどろっこしい行為を好むのかという問いには、当然“No”以外の言葉はないわけだ。
 彼は確かに冷静沈着な戦術家としての側面と、疾走し続ける戦鬼としての側面を併せ持つ。
 即ち勝利のためならば如何なる手段さえも効率の二文字の元に選択する可能性を有しておきながら、それ以外の物事に対する優先度が出鱈目に低い。戦う場にしか生きられない狂人というには相応の真っ当さを残しているが、それでも彼の本質はバーサーカー―――土方歳三、新選組の戦鬼にとってしてみれば、いったい世界の裏側、真実の探求になんの意味があったのかと言う話だ。

 応とも、最終的に敵なのだから諸共塵殺すればいい。
 これはそういう話で、だからこそ彼はレジスタンスの中でも抜きんでてノアの存在を脅威とすら感じていない。
 当初の小競り合いにおいて、魔王として刃を振るったある男を、強大な壁としか認識しなかったように………彼我の戦力差について残酷なまでにそれを認識する地頭を持ち合わせておきながら、しかし“だからどうした”以外の返答を返す気はない。
 故に彼は、本来ならばこれらの世界へと足を踏み入れることはなく―――しかし、しかし、しかしだ。

 試しの場として選ばれた滅びの世界へと、男は偶然にも脚を踏み入れた。
 軍靴の音鳴らし、闊歩するは戦華が狂い咲く幕末へと生きた、勝利に狂うバーサーカー。
 停滞を一切知らずに疾走(はし)ることを良しとした一種の狂人が、
 他の何処でもなく、そこに飛び込むことになったというのは最早因果と言ってよく。

「―――おう」

 故に、開幕なんの躊躇いもなく発砲した。
 魔力を乗せた弾丸は炎華を纏って疾走し、狙い定めた邪竜の頭蓋を容赦なく襲撃する。
 ・・・・・    、  ダインスレイフ
 こんなもので目前の魔人、滅亡剣を叩き潰せると土方が考えているのかと言えば、答えは否。
 恐らくだが推定では弾く。ならばその推定が間違いではないかどうかを試すため、それもあった。
 何も語らず初手射撃、しかも場合によっては容赦なくその頭蓋骨を消し飛ばせるだろう砲撃じみた長銃の射撃攻撃をブチ当てに掛かった理由は一つ―――そして横で同じく飛ぶ、大きさと種別(ジャンル)は違えど決定的武を誇る鋼鉄の魔竜に対して一切射撃をしなかった理由も、また一つだった。

 要は、彼は此処に呼ばれる時“試しの場”という前提が付いていたことを覚えており。

「まどろっこしいのは好きじゃねえんだ、別に返答なんざ求めちゃいねえが………。
 要はテメェが敵と、そういう話で良いんだな」

 その中で、最も強いだろう存在を退かせばこの事態にも一応のケリが付くだろう、と。即座にアタリを付けたが故の………開幕の問答すら容赦なく無視した上での横殴り、必殺必倒の先制砲撃に他ならぬ。
 即ち順番を決めるための要素でしかなく、位階として見れば間違いなくこの場では最弱に入るはずの土方歳三にとって、シングレンを狙わなかった理由は協調などではなく優先順位の違いでしかなかった。
 勝利することを考えるなら、即ち狙うべきは滅亡剣ただ一本なりと、そう確信したがゆえに。

 ある意味では正解だろう。
 彼は敵味方の理屈を語る前に、そもそもが邪竜、ヒトと相容れぬ本気に生きる怪物。
 そしてこの男は、勝利のためだけに只管前進する狂戦士であるがゆえに―――初手は必然こうなる。

>ダインスレイフ、シングレン

1年前 No.348

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【ノア/教会/ノア】

>>立花・ァ

問いかけの返答は沈黙だった。それは思考を生む間でもあり、ノアの取捨選択を行うための間でもある。瞳を閉じて熟考しながらも、迷うようにノアは口を開く。そこにおおよそ感情らしいものが篭もることがないノアにおいては非常に珍しいことであったが、しかし言いよどむような迷いは言葉を放つ頃には消え失せていた。

「確かに、ノアの力を一部行使すれば救うことは可能です。」

閉じていた瞳を開き、ァを見据える。先程の迷いが幻であったと思えるほどの無機質な瞳は、まさしく機械のソレだ。それは公正に、厳格に、そして無慈悲に、出した結論をァへと告げる。

「しかし、それでは概念創造に遅れが出ます。そして、死のない概念を創り出した後には死と生の狭間にいるものは救うことは出来ません。――以上」

だから、諦めてほしい。とみなまで告げずにそう言い放った。

「申し訳ありませんが、別の報奨にしていただきたいと判断します。――以上」

再び道具に戻ったノアからは、迷いも感情も見出すことは出来ない。そしてそれは、ノアの決断が決して覆せないものであるという証左でもあった――

1年前 No.349

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【植物の世界/藤原妹紅】

>>ミルカ、ハザマ

暇だから、とついて来たのがいけなかった。
一面の草原が広がる世界で、妹紅は寝そべりながらぼんやりと考えていた。刺激を求めてついて来たのに、よりにもよってどこをどうしたのかこんなにも長閑な場所に落ちることになるとは。

「少しの間ならのんびりするのも良いかもしれないけど――」

もしもこれがずっと続くのならば、暇で暇で仕方がない。

くぁ、と軽くあくびを一つ。ちょうど遠方の風上の方で会話をしているのを風が運んでくるが、知ったことではない。あのミルカという女の執念染みた意思は嫌いではないが、そのために取る方法は正直に言って大嫌いだ。正直積極的に顔を合わせたい相手ではない。

甘ったれた者を戦いに扇動するその手口、将としての才よりも詐欺師に向いているのではないだろうか。などと胸中で愚痴りつつも、ミルカが相対する男には警戒を払っておく。

どこまで行っても危機感がない、薄っぺらい男。相手を知覚出来ないのは、相手が小さすぎるから、相手が特殊すぎるから、相手が巨大すぎるから、のどれかしかない。前者であれば問題ない。

絶好の昼寝日和なのだし、のんびりしていこう。だが、後者二つであった場合――

あくび混じりに髪に結びつけた札を引きちぎり、弄り始める。その数五枚。
もしもの備えくらいはしておいたほうが良いだろう――もちろん、もしもの場合ミルカを助けることは考慮に入れていないが。

【一触即発になるまでもこたんお昼寝タイムです】

1年前 No.350

鉄仮面 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【灼熱の世界/ラフレシア(カロッゾ・ロナ)+バグ】

目標の発言を聞いている限り、やはりと言うべきか、アレは対話可能なタイプの人種ではなかったようだ。
いや、もはや"目標"などと、詳細をぼかした表現をする必要もあるまい、あの"敵"はただ笑っていた、あの距離からでもこのマシーンが自分のマシーンよりも巨大である事には気づけるだろうに、それがどうした。 否、それでこそやる価値があると言わんばかりに歓喜しているのだ。

あの兵器に何かが合体した……どうにも、アレがコクピットに当たる部分らしい、こちらが言えた話ではないが一目見てコクピット位置を分かるような構造をしているという事は、それなりに堅いと考えておいた方が良いだろう、そうでなければ古い国が作り出した旧式機動兵器と同レベルだ。

そして、敵対者に呼応するかのようにマグマの動きが活発となり、降り注ぐ噴出した物の数は増えるが、一定以下の攻撃ですらない「災害」など、ラフレシアの装甲を傷つけるには至らない。
こんな場所に居座っているという事は、相手も同じような物だろう、この場にいる二人の強者にとって、こんな物は精々視界を遮る物程度の価値しかない。

さて、周りに味方がいなければ、単機でやる事になるか……等と考えていると、無線に返答が返ってくる。
その相手は幸いな事に味方のようだ、こんな所で新世界派の妨害に合いたくは無い、そして味方が一人でも居ると言うのは良い事だ。

「何時の時代も、和解不可能な相手に和解を求める人間と言うのは存在する物でな、所詮は予防線のような物だ、私は機会を与えた、とな。 其方がそのような手合いで無ければ問題は無い」

あんなものにコンタクトも何もないだろうと常識的に返してくる鋼鉄探偵に対して、カロッゾはその冷淡さと「そのような手合い」に対する呆れを感じさせる言葉を放ち、ファーストコンタクトを任せると言う発言については取り消す。
いや、もう"ファーストコンタクト"も何も無いか。

敵は空高く飛び上がり、こちらに向けて両腕に格納されたガトリングガンを発射した。
挨拶にしてはあまりにも物騒な行動、だが、その程度で驚くカロッゾでもなければ、対応できないラフレシアでもない。

ラフレシアはその全身に搭載された大量の火器の内、支部メガ粒子砲を、相手と同じような弾の「壁」を思わせる程の連射速度で乱射する。
さらにその次の瞬間には、花弁の裏側に隠されたテンタクラーロッドが自分とバグを守るように布陣する。

撒き散らされるメガ粒子砲は多くの敵の攻撃を捉え、相殺する。 そして通り抜けた敵弾はテンタクラーロッドで防御。 そんな作戦は見事成功し、本体と無数のバグは無傷だ。
だが……一つの懸念点が浮上する。
テンタクラーロッドの耐久度であるならば、生半可な銃弾は「弾ける」と考えていたが、存外相手の火力が高かったのか、一定の損傷が見受けられる、ただ守っているだけではジリ貧になるのは明白だ。

「……やれやれ、このマシーンは大多数の弱者を殲滅するための物。 それで強者の相手ばかりする事になるとはな。 だが、それでこそこのマシーンの価値が証明されるという物だ」

バグが一斉に高速回転しながら様々な方向へと散る。 纏まって突撃しないのは、相手の大火力攻撃で一掃されないためだ、だが、正面から突撃を掛けた一部は、次の瞬間には、アイアンカイザーの身を引き裂くべく、回転刃を持って襲い掛かるだろう。

そして、既に敵に向けられていた花弁のメガビーム砲の光が灯ったかと思うと、数秒の間も開けずに、そこからビームにしてはかなり太く、高出力なビームが放たれ、周囲の地表を抉りながら敵対者へと一直線へと向かってゆく。

初撃にしては、少数のバグによる突撃に加えて、メガビーム砲による砲撃と、二段構えのかなり過剰とも言える火力を叩き付けた形となるが……異世界の相手だ、警戒して相応の手を使う方が良い結果が出るだろう。

>キバ 柴来人 ALL

1年前 No.351

獅子王 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【白い世界/獅子王(Lv5/1P)】

「成程」

 相手方の名乗りと姿勢に、静かに王派相槌を打った。
 片や抜剣と共に踏破せんと意気込みを見せて。
 方や言葉通り、問答無用と口にするよう敵意を向けている。
 箴言を受けて尚も屈さず立ち向かう勇者たちを前に、王は何ら感情を傾ける様子もなく……寧ろ、物分かりの悪い生徒を窘めるように落ち着いた口ぶりで告げる。

「ならば我が加護を受け入れよ。ここで座して待てば、望む結末が訪れよう。おまえたちは、ノアの救済を拒む筈だ。我が手に収まり、時を待つと言うのであれば望む通りに致そう」

 座して待て、加護を与える。その言葉の意味するところを仔細にするように、王は語る。

「方舟の新世界の完成まで数日。その数刻先に、この錨は抜き放たれる。
 この領域で作り続けた《最果て》が基の世界へ浮上し……択ばれたものを収容する。
 猶予からして、以て数人。両手で数えられる程度だが、それでもないよりかは幾分か救いがある」

 兜の奥から感じられる視線が僅かに緩んだ。その視線の先に何があるかは、人の身では到底理解できまい。
 徐に語るその口振りは、相手に言い聞かせるというより予定を復唱するようだ。
 審判者の視点であるが……同時にその眼は常に真実を見続けている。
    、    、    ・・・・・・・・・・・
 そう間違いなく。この王は、事の顛末を知悉していた。

「ノアは此方に頓着しない。あれは究極的には、基盤が何であれ構わない。ノアの方舟とはそういうものだ。
 古の世界の最後の生き残りにして……世界の最後となる洪水神話の漂流者。故に我が救済は、何者の疎外を受けることはなく進んだ。
 ――人の身で、人の視点に在りながら。貴様は真実を見極めるため、と口にしたな。
 ならば見るがいい。これがおまえたちの真実、この世界の真実の姿だ」

 外衣をはためかせ、背後を指し示す。その先には背景の白に紛れるように、淡く輝く光の柱があった。
 ……淡く、というのはあくまで外から見た故の錯覚。単に距離が離れてそう見えるだけであり、裏を返せば地平線の彼方に在りながら此処へ届くまでの途方もない光輝、熱量を孕んだ何かであった。

「あの塔こそこの世界の裏側と表側を繋ぎとめる楔。これが表と繋がったと同時に、我が最果ては"本来の世界"をこじ開ける。本来あるべき世界は白く染まり、限られた善の魂の持ち主だけが永遠を享受する聖都が完成する。
 何者も立ち止まり。変わらず。穏やかである世界の最果てが築かれることだろう。
 かの者の洪水神話、その再現が成される、その前に」

 未だ、その言葉の意味するところは不明瞭だが、王の語る言葉の端々から感じられるのは一種の諦観であった。
 この王は、新世界に属さない。かといって、抵抗(レジスト)する意志もない。
 そのいずれとも異なる第三の答え、選択肢を持ち、それを実行しようとしている。

   、   ・・・・・・・・・・・・・・・
 それはまるで既に世界が滅ぶことが確定しているというかのようで――。



「――答えよ。
 おまえたちは私を呼ぶ者か。
 おまえたちは私を拒む者か。
 真におまえが人を救うというのであれば。我が加護に与せよ。限りある命、定命なるものを、永久の碑として築き上げよう」

 王は変わらず、構えを取ることなく悠然と玉座に座して新たな問いを投げかけた。
 ……或いは、今が最も攻め時であるかもしれない。王は見る限りにおいて何の武装も構えておらず、その姿勢は完全に弛緩している。戦闘態勢とは言い難い。
 その覇気は虚仮脅しでも何でもない。何せ、この王の語る言葉を額面通り受け取れば、それこそこの界そのものを捻じ曲げるだけの力量を持つ。全力を出させる前に、一気に潰しにかかるべきかもしれない。
 だが……この王は、ともすればこの場の何より背景を知っている。真実が視えている。敢えて話させてやることも選択肢の一つだろう。
 少しでも勝利に近づくため先制するか、或いは勝利のチャンスを削って問答に乗ってやるか。各々の判断に任される。

>アルトリア、各務・鏡

1年前 No.352

キバ @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

【灼熱の世界/キバ】

死の機関砲によるスコールの挨拶は、奇しくも双方に大打撃なしという結果で終わった。
先制攻撃が失敗したとも取れるが、キバにとってはそれが己の中の熱を高めるだけでなく、モチベーションを上げていくものであった。
アンドロイド 、 サイボーグ
人形兵器、否、改造人間は、溶岩流の中を軽やかに駆け出す。いくら装甲を抉り取るほどの威力を持った弾であろうと、溶岩の中に飲み込まれてしまえばそれまでである。
そして、ラフレシア。その真紅の装甲と、散らばった死の兵器は無傷。唯一損害を与えることができたものといえば、敵の粒子砲の一部のみ。パルスビームと撃ち合うガトリングガンを持ってして無傷、あるいは損傷軽微とは、なかなか堅牢な装甲だ。

「中々ぶっ飛んだロボじゃねえか! こいつは壊し甲斐があるってもんだぜぇ……!」

操縦席から憎たらしく、そして嬉しそうにラフレシアを睨むキバの顔は歓喜で歪んでいた。直後、アイアンカイザーはカイザーガトリングの斉射を中断する。モニターを通して視認できるのは、ラフレシアから展開されていた死の円盤兵器。丸鋸のように回転する凶悪な刃は、さすがのキバも冷や汗をかく。
黄色の双眸が輝くと同時、両腰の装甲が展開し、中から二本の細い刃が出現する。それを両手で持ち、連結させ、それを一本の槍とする。演舞するようにそれを回転して振り回した後、アイアンカイザーは地面へと降下。おおよそその機動兵器からは考えられない驚異的な運動性能と持ってして正面から迫るバグへ、キバ自身から肉薄した。

「そんな雑魚供のお掃除ロボットがどうしたァァッ!」

双頭の槍は歪な金属音を立てながらバグの回転刃の間に挟み込まれる。軋むような金属音を立てながら、アイアンカイザーは槍を複数のバグの刃の間に、串刺しのようにして割り込ませた。槍に裂傷は残るにせよ、強度に問題はない。何故ならこの槍は地獄の魔神が担ぐ金棒と打ち合い、そして折られなかった強靭な槍だからだ。
だがキバの野生的直感は“これで終わりではない”という事実を強く感じさせた。アイアンカイザーは槍を強引にバグから切り離し、二基のバグを踏み台にして跳躍する。一直線にアイアンカイザーめがけて放たれたビームはアイアンカイザーの右肩を掠めてゆく。装甲が歪むほどではなかったが、やはり粒子砲などは直撃すれば大ダメージは免れまい。
跳躍したままアイアンカイザーは浮かび、ラフレシアと来人を見下ろす。歪んだアイアンカイザーの顔と共に両肩のパーツが展開される。パラボラアンテナのような二つのパーツは再び一機と一人に狙いを定めてゆく。

「ショルダァァァブラスタァァァァァァッッ!!!!」

叫んだ瞬間。アンテナから赤黒い稲妻が放出される。グラビトンリアクターによって生成される重力エネルギーを転用した雷はもはや光線といって差し支えなく。無数の黒い光線が、直撃する溶岩石を消滅させながら、不規則にジグザグの軌道を描きながら地面へと急襲してゆく。もちろん、来人にも。もちろん、バグにも。もちろん、ラフレシアにも。

>>柴来人、カロッゾ、ALL

1年前 No.353

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 荒れ果てた世界/極ラーヴァナ 】

 >巴マミ

《――来たか》

 呼応する声は峻厳と、荒れ狂う風をも破って空間を支配する。それほどの存在感、威圧感。そして己は揺るがぬ山の如く、しかして他を水面のように易々と波立たせる、絶対感。

《待ち侘びていた者が、まさか斯様な小娘とは思わなかったが。……未だその魂幼き者よ。我が支配に抗う覚悟はありや?》

 月光を帯びた四刀の一が、音もなく少女・巴マミを指す。語る言葉は少なく、断片的ではあったが、彼女の直感――本能と言い換えてもいい――はその主旨を捉えたことだろう。
 戦え。戦わねばその魂を奪い、隷属させると。
 それは冷徹さからくるものでも、まして非道さからでもない。ただ蛮神ラーヴァナとして顕れたモノとして当然の行いに他ならなかった。

1年前 No.354

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 ノア/教会/立花・ァ 】

 >ノア

 この女は何を言っている?
 ァは絶句した。
 言葉の意味は分かる。理解している。宗茂を救うことはできないと、ノアはそう断言したのだ。解釈の余地もないほど明確に、この女はこう言ったのだ――宗茂には新世界の創造を一時的に止めてまで救う価値などないと。

「――――」

 眩暈がする。浮動感を帯びるほどの嚇怒など、これまでァは味わったことがなかった。なんということだ。この感情は――屈辱の味よりも苦く、憎悪の色より濁り、殺意の音よりも煩わしい……!
 十字砲火を構えたい衝動を、けれど寸前で止めたものがあった。守るべきものの存在と、佐山との約束だった。
 ……深呼吸。ァはどうにか手繰り寄せた冷静さで、思考した。
 そうしてやっと、ここで武器を抜くことは自殺行為に他ならないと、遅い理解を得る。
 教会の外でノアの護衛に勤める男はァの謀叛を見逃しはしないだろう。何より、ノアという自動人形。今この時こそ赤子めいて無防備な姿を晒しているが、バベル内部は彼女の支配下。眠る宗茂を人質に取ることなど造作もないはずだった。
 ……これでは自殺どころか心中ものですね。
 内心で呟いて、ァは俯かせていた顔をあげた。再び視線がノアとかち合う。

「では要求を変えましょう。宗茂様の搬送の手配をお願いします。自動運転が可能で悪路に強く、頑丈な車輌を」

 即物的な要求。これが不可能ならば何ができるのだというような、面白みのない願いを告げるァ。これで彼女の用事は済み、会話はそこで終わりかに見えた。

「最後に一つお聞かせください。……貴女の言う、幸いの世界。それは貴女が救いたい人間の一人を見殺しにしてまで創る価値があるものなのですか」

 そう、それだけは聞かねばならない。自動人形は迷いもせず肯定を返すだろう。機械として最善の選択だと、疑いもしないのだろう。それをノア自身の言葉で明らかにさせることは、自ら怒りに油を注ぐ行為だと分かっていながら、それでもァは問うた。
 ――この先、来るべき戦いに際して、新世界などという幻想を持てる全てで否定するために。

1年前 No.355

鋼鉄探偵 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

【灼熱の世界/柴来人】

 歓喜する"牙"──彼からすれば、相手は強ければ強い程喜ばしい。狩るべき対象は活きが良い方がより楽しめる。ただの蹂躙では物足りない。
 だから鋼鉄探偵一人の時には襲い掛かろうとはしなかった。考えてみれば単純な結論。直ぐに終わってしまっては詰まらない──生けるか死ぬか、
 殺し合いという刹那こそ、男には何物にも代え難い瞬間なのだろう。全く以て傍迷惑な奴としか言いようが無い。真実、地獄の餓鬼と呼ぶが相応しいと云える。

 一方で、鋼鉄探偵の表情は優れない。
 当然だ。来人は戦闘に生き甲斐を覚えた戦狂いでも何でもないのだ。
 圧倒的強者とのぶつかり合いに昂りを感じ、生命の遣り取りにこそ快楽を見出しているような奴とは根本からして違う。
 ゆえに、あのスーパーロボットの強さは脅威以外の何物でもない。先ほどの、恐らくあのマシンからすれば挨拶代わり程度に放たれた弾丸だけでも、
 一撃当れば来人にとっては決定打──致命傷に成り得る、その確信があった。それはつまり、あの餓鬼が駆る皇帝がこの先放つ攻撃、そのどれ一つを取ってもまともに浴びてはいけないという事であって。

 何より最悪なのは、この場を切り抜ける選択肢が奴を討つこと一択しかない事だった。
 周囲を見る限り此処は、恐らく閉鎖された空間、何処まで行っても溶岩と灼熱によって支配された地平が続いているだけの。
 元いた研究所に戻る為の足がかりに出来そうなものは、あのスーパーロボットだけときた。もしかすると何処か遥か遠くに脱出するための抜け穴があるのかもしれないが、
 奴が立塞がる限り、この戦場からの離脱すら容易ではない。無線の相手であるあのあまり趣味がいいとは言えない花弁型の機Χを操る男とぶつかり合って、なおアドレナリンを分泌させるような雄叫びを上げる始末。その上、

「そう簡単に目を離しはしないか、化物が!!」

 技名と共に放たれる赤黒く禍々しく曲々しい雷の如き光線は、
 今正に直接対峙する機Χ花と鋼鉄探偵とを平等に捉えていた。
 頭を沸騰させておきながらも、決して獲物は見逃さない。言動通りの単細胞であればいいものを!!

 言葉にならない文句を胸中で吐き棄てながら、回避に徹する──が、

「うお、っ」

 来人が一旦の足場にしようとした地面を、それよりも一足早くショルダーブラスターが抉り削り消滅させる。
 着地点を失った彼は必然体勢を崩し、地を転げるという無様を晒すが──そんな事はどうでもいい。一瞬でも隙を見せれば、塵殺されるのは此方である。
 動き続けていなければ免れない死が訪れるという状況で、足を止めてしまった状態をリカバリーするべく、来人は手袋の下に隠した指に備わったマシンガンをまともな姿勢を保てないながらも撃ちだす。

 まともに胴体へ命中させたところで掠り傷にもならないだろう、ゆえに狙うのはあの光線を放っているアンテナだ。
 破壊は出来ずとも、せめて照準さえずらす事が出来れば──ッ。

>>キバ、カロッゾ

1年前 No.356

魔法少女 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

【荒れ果てた世界/巴マミ】

 息を呑む──少し前、方舟と共に現れたノアを見上げた時に酷似した感覚。
 否、こうして直に、自分一人のその意識が集中しているという点で言えばあの時以上の重苦しさがマミに圧し掛かった。
 鎧武者のようにも見える異形は、しかし強き意志の篭った声を放ち、その手に携える得物はさながら月明かりに照らされたかのような輝きを帯びている。その数──四。当然、人間には不可能な領域。

 この何もかもが乾きに満ち充ちた世界において、異彩とも云うべき存在感を、"ソレ"は持っていた。

 風を切る音すらなく、向けられた死の威圧の一振りを前に、未だ身竦む事もないまま立っていられているのは正直奇跡だとしか。
 絶ち合うまでもない──あの異形の武者は自分よりも遥か上の域に在るのだと、本能で悟る。

 武者は短く、問う。
 戦う意思はあるのかと。
 立ち向かう気概がないのであれば、その先はない。

「……少し前までの私だったら、対峙しただけで挑む気力も失っていたかもしれない」

 言葉を発している今も、頭の中では警鐘が鳴り響いている。
 自分とて何度か危険な橋を渡ってきている。わからないはずがない。恐らく、勝機は万に一つか、億に一つあれば良い方──
 これから立ち向かわなくてはならない、抗わなくてならないあの武者はそういう類の怪物だ。
 挑むことなく諦めてしまった方が、きっと楽な道に違いない。

「けれど……!」

 虚空に顕現する十二挺のマスケット/───意思を見せろと言うのならば、これこそが答え。

 真実を知る為に、此処で立ち止まる訳にはいかないのだから。

>>極ラーヴァナ

1年前 No.357

ファヴニル・ダインスレイフ @faketanisi☆8cfl5/j3VDw ★XZOLTACqTn_jCr

【滅んだ世界/ファヴニル・ダインスレイフ】

「――ほぉう」

 闘志の爛光を湛えた竜の双眸が、興味深げに歪む。
 過去も未来も朽ち果てた無人の世界に、足を踏み入れる者が有ったのだ。比喩でも誇張でもなく滅び去ったこの世界が抱えている死の波長は決して生半な物ではない。それなのに、常人ならば一足一呼吸で圧迫感に歩みを止められるような領域の中を悠々と進み、竜の前に立つ男が居る。これに無感動で居られる程、ダインスレイフは枯れた男ではなかった。
 竜はその眼で値踏みをする、彼の価値を。口先とちょっとの実力で自分は無敵の勇者だと勘違いした哀れな莫迦ならば興醒めも甚だしいが、よもやそんな落胆に終わる事はあるまい。
 自ら戦地を駆け、本気で戦い続けてきた戦徒だからこそ解る。此奴は、撫でただけで壊れるような木偶ではない。覇を吐くに足るだけの研鑽と才能、何より屈強な意志を宿す戦士だ。

        リヴァイアサン
「上等じゃねえかよ海王竜。新世界(はこぶね)を押し流す洪水を竜殺しの為に呼ぶ何て、全く唆るシチュエーションだ」

 ああ、これで燃えないのなら其奴は論外だ。どうしようもない敗残者か、不能者かの二択だ。
 新たな世界を望むノアの方舟を水底に鎮めんと滾る大洪水、それを焼き去らんと猛る己――良いじゃないかとダインスレイフは猛る。この男は言ってしまえば単純なのだ。真っ直ぐで力強く、雄々しい輝きを見れば闘志が漲る。
 彼にとってこの世界は楽園だ。意志の力と、返り風の存在を無視すれば誰でも自由に覚醒出来る世界。此処に召喚された、迷い込んだ、生まれた者は数え切れない程存在するが、彼ほどその法則、在り方を愛している者はまず居まい。

 この状況を見ろ。自分から回りくどい殺戮工作(アプローチ)をするまでもなく、早速強敵が現れてくれた。素晴らしい以外の言葉がない。後は、これで頗る魅せてくれれば最高だ。
 期待外れで終わってくれるなよ、輝く力を見せてみろ。何、諦めなければ世の道理など紙屑同然。人間に限界は存在しないのだから心配はない。傷付き、朽ち、それでも未来を目指して立ち上がれ。そう、あの英雄のように――

 歓喜と高揚に子供のように胸をときめかせながら、ダインスレイフは引き裂くような笑みを浮かべた。
 竜の頭蓋を吹き飛ばさんと、烈風を思わせる魔弾が迸ったのは、その直後の事である。

 それは言ってしまえばたかが銃弾。だが、超常の存在……サーヴァントと呼ばれる種の霊体が放ったのなら、弾の規格なんて常識の枠組みは無視される。まして相手のクラスは狂戦士(バーサーカー)、正気を担保に力を得ている手合いだ。掠めただけでもヒトの頭蓋を機能不全に追い込む程度は造作もない。
 三桁後半の速度には達していようそれを、然しダインスレイフは目視する事が出来た。篭手剣を怪音を響かせながら掌のように開き、壮絶な火花を散らしながら掴み取る。当然、竜の掌には抉れたような損傷が生まれるが、次の瞬間には傷口自体が意思を持っているかのように蠢き、塞がっていく。

「ハハハハハッ、賑やかになってきたなあオイ! 良いぜ、大歓迎だ。
 二人纏めてかかって来いや、邪竜(おれ)は逃げも隠れもしねえ。
 ああそうだ、邪竜は此処に居るッ! 煌めく財宝が欲しけりゃ、この心臓を抉ってみろやァァッ!!」

 刹那――ダインスレイフを中心とした廃街の地面が、オブジェクトが、有機的にメリメリと隆起し始めた。
 自然現象では決して有り得ない異様な光景は、さながら竜の邪念が齎す大災厄だ。
 悪竜の出現に世界は平伏し、歩道も、塀も、家々も、竜の鱗を思わせる剣の群れに転じていく。あらゆる無機は、咆哮と共にダインスレイフの爪牙となり、同時に二人の挑戦者の敵となった。
 津波のように波打っては左右から板挟みに押し寄せる剣鱗の群れ。当然、まともに喰らえばズタズタに切り裂かれた見る影もない肉塊になるのは必至だ。竜の顎に咬まれた者は、何人であれ決して逃れられない。
 物質文明そのものを侵略しながら、邪竜戦記此処に再臨。輝くものを喰らう為に在る滅亡剣は今、災禍の権化として終焉した世界に君臨した。

>シングレン、土方

1年前 No.358

烈槍ガングニール @cube☆PjfbxfTdjqg ★iPhone=jdYGPUrC9T

【荒れ果てた世界/マリア・カデンツァヴナ・イヴ】

こうして無事に情報を届けられたのは彼女たちの知恵と機転のおかげだった。
蒐集院が焦土と化してから一週間の月日が流れた。
レジスタンスが次に目指す場所は事の始まりとなった研究室。
平行世界という存在。ノアの真意。何の事柄はこの世界の核心を突くもの。
人はこれまで抱いていた常識、当たり前が覆された時、果たして何を感じるのだろう。多くは恐怖や困惑、中には正気を失う者もいるはずだろう。
この先の真相を迫ろうとするのは、つまりその事態に直面すること。
果たして全てを知った時、自分は自分でいられるのか。
ふと、そんな不安を抱きながら、マリアもまた真実の一端に触れた者として、その地へ赴いた……はずだった。




「…………」

目の前に広がる光景に思わず絶句する。
だが、己の身に起こったことを理解するよりも先に、この荒れ果てた大地に立つ、禍々しき威容の存在への戦慄が走る。

アレは、これまで見てきた者とは明らかに一線を画した異質な存在だ。対話の余地も無い相手、穏便に済むとは決して思うまい。

そして、その場にはもう1人、この異世界へと招かれた存在が見受けられた。
巴マミ。新世界に連なる者であり、蒐集院での一件にて、共に真相を解明せんと分かり合えた少女だ。
強大な威圧感を発する蛮神と対峙するマミへと、マリアは叫ぶ。

「マミ!」

偶然か必然か。しかし、再会を喜ぶ余裕などない。
構えなければ。その手に聖遺物のカケラ、神槍となる力の源であるペンダントを握り締め、マリアは戦いの覚悟を決める。

 “Granzizel bilfen gungnir zizzlーーーー”

聖詠を歌い紡ぐ。
その身に纏うは烈槍ガングニールのギア、それは黒を基調としたマリア・カデンツァヴナ・イヴのバトルフォーム。

「……お前の相手は一人じゃない」

乱入と共に、恐怖に苛まれそうになる気持ちを殺し、マリアはマミの傍へと並び立ち、宣戦布告を果たす。
彼女とは立場は違えど、真相への旅路を共にする仲間だ。立ちはだかる大いなる存在を前に、マミと共に戦う意思を固めた。

>>マミ、極ラーヴァナ

1年前 No.359

鏡飛彩 @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【方舟(ノア)/居住区(病院)/鏡飛彩】

「当たり前だ。
ドクターとは患者と真摯に向き合う心構えが必要だ。
それを欠いた者など俺はドクターとして認めん」

ガエリオの言葉に飛彩は冷静な調子を崩さず答える。
飛彩がガエリオを評価しているようにガエリオもまた、飛彩を評価している。
バベル側の戦力は上位者であるほど曲者揃いだとは下位、ガエリオや飛彩のような中堅級の者達がしばしば考えることだ。
その点、飛彩には特段打算のようなものはない。
ノアのやろうとしてることに少々の疑問等を感じている事を除けばドクターとバベルの戦士としての職務を果たしているだけだ。

「傷を負って帰ってくるのは構わない。
戦士とは戦い、血を流すものだからな。
だが命を粗末にするのはドクターとして許さん、と言っておこう」

戦う者の義務――――ノブレス・オブリージュについて語るガエリオに対して飛彩は自らの意見を述べる。
ドクターとして飛彩は他の者より数段命というものに重みを感じている。故にそれを軽視する者は例え同じ派閥であっても快く思わない。とはいえ後ろからその者の騙し討ちをしようなどとも考えないのが飛彩という男であるが。

「ノアの作る新世界か…
それは、戦争もなければ病気もない世界なのだろうか。
ボードウィン、俺は本当にそんな事が可能かと時々思うんだ。
先の戦いで見せたノアの圧倒的な力を見ても、な。
とはいうもののここまでバベルのドクターとして、戦士として戦ってきた身だ。
今更降りようとは思わないがな」

飛彩は時々思っていた疑問をガエリオに対して打ち明ける。彼にならば話しても良いのではないかと飛彩は考えた。
そこで飛彩は一旦言葉を切り、ガエリオの応答を待つ。

>ガエリオ

1年前 No.360

アルトリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【白い世界/アルトリア・ペンドラゴン(Lv4/3P)】

 獅子の王は此方の解答に相槌を打つようで、その実なんの考慮もしていなかった。
 あるいは彼女の視点で考慮こそされているのかも知れないが、少なくともアルトリアは獅子の瞳から概ねそうしたものを感じた。即ち視点の決定的な違い、人という生き物と、そうではない別の身、別の目線にこの存在が身を置いているという事実に他ならない。
 それもそのはず、そもそも青き騎士王からしてみれば、あるいは隣に立つ聖騎士も態度のそれは問答無用だ。その状態で会話を続けようとするのは余程の大物か、あるいは阿呆か、それとも根本からして見えているものが違うかの三択だろう。

 そしてこれの解答は、恐らく三つ目………彼女の言葉は、物分かりの悪い生徒を窘めるかのように、
 聞き分けのないものを理路整然と宥めるかのような色合いすら含まれていた。だがそれは此方の身を案じるというものではない、むしろ復唱するような物言いは、此方の意見がどうであろうとその行いを捻じ曲げる気のない者のそれだ。
 微かに緩んだ視線と共に、澄んだ声が最果ての界へと響く。
 方舟が齎す新世界、その真実を彼女は淡々と語り始めている中で、アルトリアはほんの少し眉を顰めこそしたが、別に何かしらアクションも敵意も懐くことはなかった。望む結末とはいかなるものか、何を以て“望む通り”と考えるのか。只管に施すような物言いを耳に留めながらも、しかしアルトリアからして見れば虚偽の見えない獅子王の箴言は微かな手がかりでもある。
 故に此処までなにもしなかった。むしろ、彼女の語りをアルトリアなりに真摯に聞いていた。
 見るが良い、と―――その背後に見えたヒカリと共に、王が結論を述べるまでは。

「―――」

 その言葉が意味するところを、すぐさま少女騎士は理解する。
 嵐の王が錨と称したその巨きな光―――それを見た時、もう一度最初の違和感が顔を出したような錯覚があったが、それよりも彼女の語る言葉は、薄々疑惑に感じていた部分の薄皮を凄まじい速度で剥ぎ取るような力強さと衝撃があった。

 ノアは此方に頓着しない。
 あれは究極的には、基盤が何であれ構わない。

 方舟とはそもそも、世界そのものを洗い流す大洪水からヒトを救うために作られるものだ。
 すべての文明を洗い流し、すべての痕跡を焼き払う洪水から、新たな世界の礎を作るために。
 だが………その方舟に乗せるための礎を、究極的には頓着しないという話が事実ならば、事情は大きく異なって来る。そこから浮かび上がって来る真実、それは獅子王が宿した微かな諦観の意思を見れば明らかだった。

   、   ・・・・・・・・・・・・・
 ならば―――もしそれがすべて事実ならば、待っているのはただ一つで。


「………。成程、委細は理解した。
 その上で貴公の語る言葉が全て真であるならば、もはや一刻の猶予もない」


 彼女は世界を救う。新たな世界のかたちを作り上げる。
 だが、その過程で古き世界はひとつの末路を辿るだろう。

 ………全てを理解した後、彼女は刹那の間だが底知れぬ肌寒さを感じた。

 獅子王が諦観と共に語る救済の理屈に、ではない。この存在の理屈は確かに異形ではある―――仮に語った話が全て事実だったとして、限られた善の魂だけが永遠を得ると語った王の言葉には、見落としてはならない穴がある。
 だから、そもそもこの理屈は、“人を救う”という点においては一つの矛盾を孕んだもので。

 なにより、微かな悍ましさを感じたのは。
 これを、ほんの僅かでも合理的であると認識しかけたことだった。
 その言葉が全て真実だったとするならば、嗚呼―――それは悍ましくはあるが、最悪ではない。

 人間は残る。あの楔が最果てを築いたとして、そこは確約された未来として在るのだろう。

 痛みもなく、
 苦しみもなく、
 不幸の一滴すらもなく。善き心、善き人は必ずや残るだろう。
 それはある種の人理への救済手段だということは、まず事実として認めるべきだった。が、しかし―――。


「ならばこそ、答えの代わりにこう問おう。
 その停滞の何を以て救済とする。限られた救いの何を以て民を護ると説くのだ、獅子王」


 彼女は、立ち止まり変わらず、永久の碑として築き上げると述べた。
 それこそが、アルトリアの感じた悍ましさの正体だ。それは確かに人間を救うだろうが、極論この時代を生きる人間にとっては恐らくはノアと変わりあるまい。
 しかし、同時に彼女は方法論など小賢しいと言える有り様ではなかった。
 他の手段など皆無に等しいと勘付いてはいるからこそ、語調こそ変わりなく、思想こそ変わりないが、恐らくは好機であろう瞬間でさえ手を出すことはしなかった。何ゆえそうすると、問い詰めた。

 彼女はこと戦闘行為においては冷徹かつ合理的で、比較的遊びはない方だ。
 故に普段ならば容赦なく先制に入り、弛緩した獅子王を討たんと疾駆していただろうアルトリアを………しかしほんの僅かどころか、ひとつ好機を削ってまで躊躇わせた理由とはなにか。
 そこには前述した内容もあれど―――やはり、最初の微かな違和感も含まれていた。

>獅子王、各務・鏡

1年前 No.361

櫻井螢 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

 その後帰還した彼女は数日治療を受け、持ち前の回復力によってすぐに治癒すると、ノアの真実に関して自分なりに調べを付けるべく行動を始めた。
 しかし、幾ら内部にいたとしても得られる情報はたかが知れていた。当然ながら報奨を賜るに足る戦果もない螢には謁見など許される筈もなく、訊いて素直に答えるとも思えない。たとえ彼女が答える気でいても、その場で他の幹部たちの手に掛かるのが関の山だ。
 概念創造まであと数日。綻びが出るとすれば内部からで、その点新世界派も緊張状態にあるということだろう。今の段階であの中で手に入れられる情報は少ない。
 だからこそ、裏切り者として粛清対象となった巴マミを尾行することで、レジスタンスの立場からこちらの知らない真実について探ることにした。先に文献調査へ赴いたことを考えても、ノアに関する情報を集めていることは容易に察しが付く。
 そしてこうすれば粛清の他、斥候として敵レジスタンスの動向を図る、という名目も立つだろう。そう考えて、今まで行動を続けてきた。


【荒れ果てた世界/櫻井螢(LV2/8)】


「な――」

 そうであるからこそ、この展開は予想外だった。突如として転移した先に、それはいた。
 勇壮と立ちはだかる様は、後姿でも圧迫される。その威容を目の当たりにし、螢は状況の変化など気にも留めず、ただ戦慄した。

 話に聞いたことがある。かつて概念施設を占拠した民衆を粛清にあたった時耳にした伝聞(カルト)。封鎖された状況で暴徒化した市民が、人身御供をしてまで数多の犠牲を払い召喚しようとしていたモノがいる。それは英霊を越え、神霊の域に達した人々の狂信(イノリ)が築き上げる究極幻想。
 結局、半端な儀式によって召喚は失敗。施設は無事に奪還され、己も大過なく帰還できた。
 制圧後、施設の儀式場にて数多の賛歌と共に崇め奉られた神、その名を……ラーヴァナという。
 ラーヴァナ。インド神話におけるアスラ族の王、神々や聖仙(リシ)を相手に戦争を仕掛けた大魔王。其れ本人ではないにせよ、これはその名に恥じぬ最高位武神だった。

 そう。余計な念を抱けるような相手ではない。眼前に聳える羅刹王(ラークシャサ)を前にすれば斯様な世迷言など考える余裕はないのだ。その強大さは、ただ生き残る"だけ"でさえ余りに至難の存在だった。
 己の炎を大地焦がす燎原火とするなら、あの炎は地殻活動する大地の姿に等しい。翅を思わせる超高温の魔剣は岩盤(プレート)を引き剥がしたかのような威容を誇り、屈強な四肩から放たれる威圧感は噴火直前の火山のよう。奮う獄剣の一枚一枚が、大地を焦土に還して尚有り余る大焦熱地獄の顕現である。一撃でも触れれば、その瞬間に魂は一片も残らず焼き尽くされる。
 ……断じて、真っ当な生命が勝てる相手ではなかった。なまじ魂の質を測ることのできる立場なだけあって、その強大さはハッキリと分かる。
   、   、  ・・・・・
 その規模は、己より三段階上だ。根性がどうとか、そういう域を超えてしまっている。

 あれこそが神。太古の神代において無双の武を矜った戦神。『最強であれ』と望まれ、降臨した。滾り狂う焦熱は、ただ見ているだけで両目が砕け散りそうになる。

 ――怖い。胸の内を打ち明ければ、今にも逃げ出したい程に。今にも恐怖で押し潰されそうなぐらい、目の前の壁は巨大すぎる。
 傷んだ心を、『勝てるわけがない』という怯懦の念がじわじわと浸蝕していく。
 己はラーヴァナの背後にいる。そのため巨躯が死角となっていたためか、マミには己の姿が未だ気付かれていない様子だが……その中で螢は確かに目にした。
 立ち向かうマミの姿、その傍らに現れた黒衣の少女。
 よりによって真正面から、あの地獄が形を成したかのような魔神と相対する……かつて己が戦った少女の姿を。

「――マリア・カデンツァヴナ・イヴ」

 己が対峙し、初めて心を揺るがされた相手。
 思えばあの時感じた焦燥感が、己を揺るがしたきっかけだったかもしれない。
 彼女は。変わらず黒衣をまとい、あの壁を前にして一歩も譲らず戦意を向けていた。

「……、」

 今にも砕けそうな心が、少しずつ火をともしていく。
 そうだ。どんな壁があったところで、こんな所で立ち止まる訳にはいかない。
 何より、この少女に。マリアに後れを取るようなことが、我慢ならない。己の祈りは、命を懸けて一時たりとも止まらず燃え続けてきた己の魂は、誰にも後れを取るものか。
 螢は、間合いを図るように右方へ歩み、その姿をマリアとマミに晒した。お互い知らぬ顔ではない。マリアは言わずもがな、マミは先程まで戦闘担当の人間として何度か面識がある。螢は毅然とした態度で二人に向かい合う。

「本来なら、粛清を優先したいところだけど――今は協力してあげるわ」

 先程まで震えを止めるのが精いっぱいだったものを、外目ばかり取り繕うのは巧いものだ。我ながら呆れるような意地の張りっぷり。
 しかし、そうだ。ただ力を求めて、そのためにすべてを捨ててきた。ただ一人、あの陽だまりを……二人を甦らせる、その願いのために燃え続けた。
 武神だか何だか知らないが、己の途を阻めると思うな――!
 その気炎を滾らせ、創造の詠唱を唱え出す。手加減無用の全力全開、創造位階を用いて一気に畳みかける。
 マリアとマミを正面に、螢は背後から。つまり挟撃の形で陣取りながら、螢は己が炎剣を迸らせた。

>巴マミ、マリア、ラーヴァナ

1年前 No.362

各務・鏡 @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

【白い世界/各務・鏡】

各務は、ノーマルフレームを展開したまま、目の前の王が語る言葉に耳を傾けていた。
その圧を含んだ言葉が紡ぐのは、真実。ノアと呼ばれる存在が執り行う新世界の解説。白く、真っ新なページは何も描かれていなかったというわけではなく。そして、この神が存在する時点で、このページに紡がれた一つの物語(せかい)は、既に今、語られている最中だった。
それは、物語を渡り歩いてきた各務にとって、「あっていいのか」と思わせる答え。理解するのに余りにも時間が必要になる程の情報。驚きこそしないものの、その答えは各務の口を閉ざすには十分すぎたと言える。だが、真っ先に分かったことはある。
……つまり、そういうことかね。
諦観。言葉の端々から感じ取れるのは、それだ。諦めているのだ。おそらく。最初から。諦めた者が取る手段などただ一つ。それは物語において多く見られる性格。それは逃げること。そして、王の背後にある“それ”が、言葉を借りれば最果てであり。その最果てに…数人を収容する。謂わば、少数のみを助け、多数を切り捨てる。
選別。あの最果てに保護されなかった人類は滅ぶ。消極的な絶滅を遂げる。結果的に、「人類」は絶滅しない。それは最果てに保護された数人が生き残っているのだから。
だがそれは救いと言えるのだろうか。幸せな結末(ハッピーエンド)と言えるのだろうか。否、否である。
――――王は問いを投げる。呼ぶ者か。拒む者か。

各務は、口を開いた。

「否、拒む者である」

キッパリとそう言い放つ。
騎士王が語る通り、この神の言う言葉が真実であるならば猶予はない。ノアの語る新世界。獅子王の語る救済。どれもこれも、人からすればどちらも同じだ。それが、望まれている世界の平和だとは言えない。
停滞。足を踏み出さず、立ち止まる。立ち止まった世界で人類を生かす。絶滅こそせずとも、「人」はそこで死ぬ。「人」の役割はそこで放棄される。停滞とは破滅への一本道だ。いつの世も、人類は一歩足を踏み出すことで運命を変えてきた。
各務は、ディカイオシュネを構えた。直後、騎士王が逆に問いを投げかけていた。
……何故、攻撃をしない?
目の前の“敵”は無防備だ。武装も展開していない。確かに、敵の持つ情報は有益なものであるし、それを得ようとするのもわからない話ではない。だが――今それを問う時間があるのか、という話だ。
この異世界から脱出しない限り、ノアを止めるなどという事はできない。そして、ここから脱するにはあの獅子王が鍵を握っているのも確かである。物語的に言えば、ボスキャラ。あれを倒さないと進めない、そんなもの。
だからこそ、無防備なうちに攻撃を仕掛ける。先手必勝とも言うのだから。今は、いかなる事情があれど、そうしなくてはならないのだと。
各務は静かに、問いに続く様にして騎士王へと一声謝罪をいれつつ。加えて、それが空気の読めていない行動であると自覚しつつ。

「申し訳ない。―――主砲、そこだ」

次の瞬間、ディカイオシュネの外装は展開され、中の砲身を露わにする。
楽器に様に構えられた大剣から、流体で成形された砲弾が放たれる。その一発は不意に上半身を狙ったもの。穿つことができればそれでよし。もし無傷であったら――――。
……なんとかしてみせるとも。

>>獅子王、アルトリア

1年前 No.363

スレ主 @vtyjf ★GFYUJuZycW_VuR

【ノア/教会/ノア】

>>立花・ァ

激昂しかけ、しかし踏みとどまった立花・ァを無感情に双眸が写す。予測演算や蓄積経験からの理解により、感情や感情から生まれる行動をノアは理解している。否、理解しているだけなのだ。

そこに伴う実感はなく、合理的な判断基準を常とする自動人形は感情を判断のための一要素としか考慮できない。だからこそ、

「了承いたしました。自動運転の小型艦を一艦差し上げます。格納庫から発艦させますので、後ほどそちらへ。――以上」

立花・ァの葛藤を、ただただ無感情に眺めていた。それこそ、己が怒りに身を任せた彼女によって攻撃されるとは考えてすらいない。そうすることで被る不利益を考えれば、攻撃などしない、と。

決定的に食い違う。人と自動人形では、互いに埋めようと歩み寄らねばいけない決定的な差がある。
だが、その差を埋めるにはもはや遅すぎる。人々はノアを都合の良い救世主として崇め、利用し、また一方的に信頼した。だが、一体どれほどの人間がノアを理解しようと努力しただろうか。

「――新世界ですか」

だからこそ、これは食い違い。最初のボタンの掛け間違い。大前提が違うからこそ、見せかけの救世主は救世主たり得たというだけの話。

「少し、誤解があるようなのでまずは訂正を。貴女が救いたい方は――いえ、貴方がたはそもそもノアが救いたいと願う対象ではありません。――以上」

これまで幾人かに話してきた事実を、淡々と告げる。

「ノアはスリープ状態で不活性化していた各施設、駆動系を再び起動するための時間を貴方がたに守ってもらう。貴方がたはその代わりにノアからの恩恵を受け取る。そうした契約関係以上のものは存在しません。――以上」

なぜ、なんの見返りもなく救ってもらえると思うのか。それがノアには理解できない。

かつて差し伸べた救いの手を――

  ・・・・・・・・・・
――振り払ったのはそちらだというのに。

「もっとも、この契約関係もノアが起動した以上終わりです。概念創造がある程度完了し次第、ノア内部に暮らす非戦闘員の方には地上へと降りてもらいます。――以上」

1年前 No.364

獅子王 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【白い世界/獅子王(LV5/1P)】

     、    、     おまえたち
「……理由か。どんな時代であれ《 人 間 》はそれを訊きたがる」

 敢えて問いを投げる騎士王に対して、獅子王はどこかつまらなげに相槌を打ち答える。
    、      、 おまえたち
「私が世界を閉じるのは、《 人 間 》を残す為だ。
 かの者の大偉業によって、この世界の歴史は終了する。人理は焼却され、人類史は無に帰される。
 だが、それは私の存在意義に反する。
     おまえたち
 我らは《 人 間 》によって生み出されたモノ。神は人間なくして存在できない。
    おまえたち
 故に《 人 間 》を残す。何を犠牲にしても護る。

 ――これは私の意思だ。
    すき    、    すき
 ノアが自由にするのなら、私も自由にすると決めた。

 そう。すべてが失われてからでは遅い。
 ・・・・・・・ ・・・・
 失われたものは、戻らない」

 騎士王の問いに対し、最後の言葉を強調するように続ける。
 まるで誰かを指し示すような口振りで、淡々と。

「すべてが失われた後では遅い。代替(かわり)など、この世には二つとない。
 失われたモノは決して戻ることはない。たとえ何もなくなった場所に新たな秩序(もの)を育もうと、それは同じものでは有り得ない。たとえそれが同じもので、同じ機能を有していたとしても、只の代替物でしかない。
 損われた後に求めても、既に遅い。
 故に留める。永劫に停滞するものとして収める。それの――何が間違っている?」

 相手へ投げかけられる言葉は、内容とは裏腹に熱はない。既にそうした人間らしさは喪失している。変わらず超然とした態度であり、寧ろ当然の道理を否定する相手を不思議がる趣すら感じる。
 されど言葉の端々に混ざるものは、確実に諫める意図が感じられた。
 それも彼らのみならず、まるで己と同じ所業を成そうとする方舟の主に対しても投げかけられているようで……

 折しもその時、各務の砲弾が痺れを切らしたかのように主砲から放たれた。
 王が泰然と語り続ける、その絶好の機を見計らっての不意打ちだ。
 その奇襲に対して、王はやはり不動。玉座に座したままだ。頬杖を突く左手はそのまま、ゆっくりと右の手を掲げた。
 被弾した瞬間、爆轟が周囲を席巻した。ぱらぱらと粉塵が舞い散り、朦々と幕を作る。
 手ごたえはあった。しかし、ダメージは軽微、いや皆無と言っていい。獅子王は相手の攻撃がくる、その直前で己の武装を現出させて防いでいた。……いや、それは防いだと言っていいのか。ただ王は武器を掲げただけに過ぎない。それだけで、相手の攻撃の九割が相殺されていた。
 残る一割。その僅かな火力は王の兜に直撃し、そのすべてが防がれる。同時に獅子を象った兜が、ピシ、と軋みを上げた。
 僅かに入った亀裂は、壮麗な獅子の兜を真っ二つに断裂させ。
 そうして、煙る粉塵の中で純白の兜が砕けた。


「良い判断だ。あくまで敵と定めたなら即断する。短慮ではあるが私でも同じことをするだろう。見所はあるな、娘。
 それに引き換え――座につき、聖杯を求めて争って尚……その浅慮は変わらぬか、騎士王。
 やはりおまえは、聖剣(それ)に相応しいものではない」


 兜越しに響いた声が、今はっきりと響いた。立ち込める煙の中から最初に見えたのは、王が手元に出現させた武器だ。
 その手に握られしものは、白い螺旋状に巻かれたような特異な意匠の騎乗槍。
 誰しも知るもの、とある聖剣に並んで世界的な知名度を誇る武装だ。
 名を『ロンゴミニアド』別名ロン。またの名を『聖槍(ハイリゲランゼ)』。
 アーサー王伝説に登場する、臨終時まで騎士王が奮い続けた槍――

 立ち込める煙が、風に吹かれて晴れていく。吹き抜けた一陣の旋風は『風王結界(インビジブル・エア)』と称された精霊の加護。
 風と共に立ち上がった獅子王と名乗ったものは、その貌を遂に晒した。



「 故に――私が生まれたのだ。アルトリア・ペンドラゴン……我が夢の幻影よ 」



 編みこんだ金の髪。凛々しい顔立ち。爛々と翠に輝く双眸。
 凛然たる声は、雰囲気こそ違えど騎士王のそれと寸分も違うことなく。
 もはや見紛う筈もなし。誰の目から見ても明らかだ。



 兜の奥の素顔は他ならぬ――アルトリア・ペンドラゴンの貌そのものだった。



 瞬間、大気が震えた。世界を覆う白の景色が、まるで大波が押し寄せるように動き始める。
 それは聖槍が抜き放たれた合図。この世界を築き上げた最果ての槍を引き抜いたが故に起きた超大魔力の鳴動に他ならない。
 かつて神代と呼ばれた世界の裏側、最果ての世界。そこで今こそ支配者の武威が発揮される。


「――質問には答えた。
 私を否定するのなら、私もおまえたちを否定するまで。
 いずれ死ぬもの。もう死ぬもの。命の限りを嘆くものたちよ。
 その限界を知り、我が庇護を受け入れよ」


 厳然と告げ、獅子王は槍を煌かせた。純白の槍から迸るのは太陽の如き眩い白光(ひかり)。
 獅子王、臨戦態勢に移行。そうでありながらあまりに穏やかで超然とした立ち振る舞いに見えるのは、それだけ相手の有する力が強大極まるものゆえか。
 どうあれ、此処に戦端が開かれようとしていた。
>アルトリア、各務

1年前 No.365

教祖 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【植物の世界/黒火のミルカ+浄罪歩兵+浄罪火兵】

ミルカは謙ったような態度で相手の言葉に対しては一切言葉を割り込ませない、少なくとも自分にとって都合の良い事をこの男が言い続ける限りは、むしろしっかりと「話を聞いていますよ」とアピールして、好感度を稼ぐ方が自分にとって有益だと、さらに言うならば貴重な情報源であると考えているからだ。
正直なところ、普段のミルカであれば、相手がどんなに喋ろうとしても、それを封殺するように煽り文句を並べて都合よく思考を誘導しようとする、そうしないのは、少なくともそういった単純な手段に流されるようなタイプではないと理解しており、同時に封殺する必要があるほど「邪魔」な事を言わないからだ。

まぁ、数的有利を保っている現状では、あちらがこっちにとって邪魔な事を言ってくれば、即座に殺してやるのだが、中々どうして、彼はミルカの機嫌を良くするような事しか言わない。
だからこそ……ミルカの認識する「差」と、実際の「差」の違いはあれど、絶対的な戦力差が付いている状況の中でも、奇妙な均衡状態が保たれていた。

何せ、ミルカは持ち上げられると単純に喜べるタイプの人間ではあるが、そういった「手段」をよく使い、理解している人間でもあるので、口で戦っている限りは、相手側が特段有利になるというケースも中々起きないのだ。

「えぇ、えぇ、理解してくれますか! これはありがたい、何たってこっちに来てから話の分からないロクデナシとばかり会話させられてましたからねえ、とっとと私に馬鹿共からかき集めた生贄寄越して私の主呼べば勝てるっつてんのに、支配者が神様気取りから冥王に挿げ代わるのがよっぽど気に入らないボケ共ばかりでもう。 おっとと失礼、愚痴が漏れましたね、そう、極端な話"私は死にたくない"、死なないためならあらゆる手を尽くす所存」

こちらの言葉を概ね全肯定するハザマに対して、ミルカは元の世界でも「馬鹿」か「賢い馬鹿」としか会話できなかった事を嘆き、そして愚痴る。
その内容は、レジスタンス内部の一部に彼女が進言した内容をほぼ満場一致で拒否された事に対しての物であった。 生贄、どーせ価値も無い人民諸君を使えば勝てるんですがねえ、などとミルカは足元の影を見ながら呟く。

と、ここで話が逸れてしまった事を認識して、軌道修正して、相手の言葉に同意するように「自分は死にたくない」と答えた。
これは間違いなく、本気で思っている事だ、何せ黒火のミルカと言うのは、自らの不死のためだけに、無数の人間を生贄として差し出し、人間の世界を"影に潜む者"に手渡そうとしたぐらいの人間なのだから。

……もう一人いる「レジスタンス」の人員にミルカがこの時気づいていなかったのは、おそらく不幸なのだろう。 何せ、自分の所属する陣営への陰口所か、秘密裏に罪も無い人間を生贄にして「何か」を使い勝てば良いなどと考えていた事を露呈させたのだから。

そして、やはり相手は、本当に異世界の住民であったようで、レジスタンスも、新世界派も知らないと言った、そう、その察しが付いたから愚痴ったのだ、むしろここでどっちかに所属しているなんて言われちゃあ困る。

「あぁ、なるほど。 では私も教祖と自己紹介しましたが、こっちでは意味の無いことなんで、無視しても構いませんよ。 勿論、後々黒火に興味が出てきたら親しみを込めて教祖と呼んでくださっても構いませんがね? さて、つまり私は異世界の異世界なんてややこしい所に来たって事ですか。 ……あん? 異世界? ……あー、思い出しましたここに来た理由、って言うか私の"仮の"上司の理由ですけど。 ノアとか言う神様気取りの情報探るために施設の力がどうこうとか……あーくそ、せめて連絡してから飛ばせっての。 まぁいいです、こっちがここに来た理由はそんな所ですね」

一応補足しておくならば、ミルカはそれについての会議時間中は、信者に対する演説で潰していた。
別段、レジスタンスの連絡体制が彼女の言う通り杜撰な訳ではない、おそらく。

とにかく、めでたくここに飛ばされた理由が思い出せたので、それを隠す事も無く言う。 これで相手が追加の情報を出してくるなら儲け物と考えているからだ。
この長話の間に、少しずつ自分の配下の浄罪兵は、ハザマを取り囲むように布陣させつつある。 この情報で手のひらを返そうと、最初に飛ぶ首は目の前の男の物だ。

>ハザマ (妹紅)

1年前 No.366

システィーナ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【荒れ果てた世界/システィーナ=フィーベル(Lv2/8P)】

 事態は最悪の一歩手前を極めていた。   、   、  ・・
 システィーナ=フィーベルは数分前に降り立った世界にて、それを回想していた。

 先程まで見ていた風景とは決定的に異なる荒廃した大地に、ひとつの魔神の姿がある。
 あまりにもヒトとは隔絶した武の到達域。
 彼女がこれと遭遇した理由は、その実全くの偶然。
 再び調査だからという理由で―――しかし今度は、敵との遭遇という危険性を呑み込んだ上で研究所へと飛び込んだシスティーナの微かな勇気を、しかし根底から揺るがすかの如く転送という概念は牙を剥いた。
    、 ・・
 その結果がこれだった。
 突然の事態に頭が真っ白になったかのような感覚を覚えながらも、彼女は不幸にも、あるいは幸運にもソレを目にする。荒ぶる御霊、幾つもの手に剣を携えた阿修羅―――この位相空間の主の存在を見た時、彼女は比べ物にならないほどに恐怖したのだ。
 荘厳なる黒く巨きな武神は、まず魂の位階からして格というものがおおよそ隔絶している。
 その大きさを、一瞬だけ巨大な山かなにかのように錯覚する程度には魂魄の質が、あるべき力の総量が違う。その上で、これは以前会ったマミとは違う。彼女のように話が通じる存在とは、外見を考えればどうしたって思えなかったのだ。

 厳然な実力差とは如何なるものか。
 ―――それを雄弁に語る武神の存在に、彼女は真実脚を竦ませ思考を停止させた。

 ………出て行けばどうなる。立ち向かえばどうなる。
 なまじ地頭の良い少女だったからこそ、それをすぐに気付いた。出向けば即ち、死ぬのだ。
 自分程度の人間が前に歩み出たところで、その結末が如何なるものになるかなど即座に判明した。
 そう、死ぬ。
 何も果たせず、彼女らや“先生”の元に帰ることも出来ず、人知れず無惨に殺されるだろう―――と。その事実をすぐに受け止められるほどシスティーナ=フィーベルは勇敢ではない。肉体的にも精神的にも、これはあくまで年若い少女の延長線に過ぎなかった。

 だから、動かなかった。
 しかし、彼女が最悪の一歩手前を究めていたと断じたのは―――その問答にこそある。

 よりにもよって、同じく屈強なる武の極み、蛮神ラーヴァナへと果敢に挑んでいた人物がいる。
 問答を交わし、明らかに単身挑めば死しかないだろう現実を前にして、尚立ち向かっている。その少女の横で、同じく果敢にも共同戦線を張り、巨山の如き存在であるラーヴァナへと挑みかかる歌姫の姿がある。
 その歌姫に何か借りでもあったか、果敢にも剣を取り疾駆していく若獅子がいる。

 そのうち二人が、よりにもよってと言うべきか。
 彼女が、あの蒐集院で約束を交わし、あまつさえ助けてくれた二人だったということ。
 その助けてくれた二人を見殺しにして、胸を張って帰れるのだろうかというちっぽけな感情が芽生えたこと。

「―――そこまで」

 それは………少女が心の中に秘める恐怖10割の感情に、1割の“見捨てたくない”を生じさせるには十分。
 精一杯地を踏む脚を気張らせて、意識をぴんと立たせながら、彼女はマミたちとは丁度反対の方向、要するに偶然此方に回り込んで来たと思わしき螢の位置へと立って、一、二節の詠唱を前以て起動させる。
 最も距離の近い炎剣の彼女とは完全な初対面、どころか推定新世界派の人間なのだろうが、この状況でまさかこちらに切りかかることもないだろう。そもそもラーヴァナとはそうやって団結した上での集団戦(レイド)でなければ人が土俵に上がることすら許さない怪物であるし、少女の心情はまずここでの潰し合いを考慮していなかったから、初対面かつ本来敵対陣営の共闘はこうして成立する。

 ………そのまま遠くで隠れていれば、間違いなく戦うことはなかっただろうに。
 にも関わらず、システィーナ=フィーベルにとって今最も身近になった死の象徴へと、しかしこうやって姿を晒せた理由とは、即ち―――。

「その二人と戦うなら………わたしも、戦います」

 この少女が好きな《だれか》ならば、放ってはおかないのだろうと思った。
 自分よりずっと毅然と、自分よりずっと素早く、決断を下せたのだろうと思った。
 たったそれだけだが、それだけでも、その1割のこころにシスティーナが従うには十分すぎたのだ。

>極武神ラーヴァナ、巴マミ、マリア、櫻井螢


【アルトリア、ハザマ、ガエリオの各位はもうしばらくお待ちください、
 早くて今日の夜か、あるいは明日の夜かと思われますm(._.)m >各位と絡んで頂いている方々】

1年前 No.367

シングレン @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【滅んだ世界/シングレン・シェルブリット】

邪竜と海竜の決戦の火蓋を切ったのはダインスレイフでもなければシングレンでもなかった。
では誰かと問われれば答えは単純な話、『もう一人』この滅んだ世界に参戦した者が現れたからだ。

「土方か。俺以上の血気盛んさはこんな辺境でも変わらんか」

土方の最早砲撃と称しても何ら過言ではない射撃をダインスレイフは異形の手甲で以て阻む。ダインスレイフの手に抉れた痛々しい傷が生まれるもソレは明らかに生物の域を逸脱した速度で回復し傷が跡形も無く消える。
歓喜する邪竜の咆哮によりダインスレイフが攻勢に入った。不協和音を奏でながら変貌する周囲の地形。
その形状はまるで竜の鱗を模した剣のようでありその切っ先は全てシングレンと土方に向けられている。

「なるほど、それが貴様の爪牙か。
では、俺も見せるとしよう」

邪竜の胎動に呼応し、海竜もまた目覚める。
リヴァイアサンの周辺より幾つもの波濤が吹き出し、渦巻き始める。
リヴァイアサンは搭載された特殊武装『水槽(バラスト)』で水を集めそれを神装『王権(リーニング)』で自在に操る。それがリヴァイアサンの特性だ。

渦巻く波濤が、剣鱗を阻む壁と化すが完全遮断とはいかず、リヴァイアサンの装甲に傷が生まれる。

「リヴァイアサン以上の出力か…面白い!」

シングレンは不敵に笑い、次はこちらのこちらの番だと言わんばかりに水を操作する。ダインスレイフに放たれるは大質量の幾条もの鉄砲水だ。古来より人々を苦しめてきた水害が、ダインスレイフという邪竜ただ一人を葬るために放たれる。

なお、ここまでシングレンは一切土方を庇っていない。それもそのはずシングレンの思想は弱者の切り捨てである。ここで負けて死ぬならそれまでのこと。
弱者を省みない、それが『蒼の暴君』だ。

>ダインスレイフ、土方

1年前 No.368

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 荒れ果てた世界/極ラーヴァナ 】

 >巴マミ、螢、マリア、システィーナ

 魔法少女。若獅子。歌姫。白猫。ここまでの道程で縁を結び、絆を育んできた少女たちが、互いのため共に立ち向かう。
 その足を竦ませるほどの脅威を前に、けれど挫けそうな心を懸命に奮わせて。それを武神は茶番だなどと嗤いはしない。どのような形であれ、奮い立つ心は正しく武に通ずるものであるが故に。しかし――

《その意気や好し……だが甘い。脆き身の上で何故先手を打たぬ。覚悟だけで我を打破しうると思うてか……!》

 そう。死地に挑む覚悟がどれほど重かろうと、実行しなければ寝入り前に耽る空想と何も変わらない。
 無謀無策、大いに結構。そも逃走より闘争を選んだ時点で千は死んだも同然、なりふり構わずかかってこいと――死に物狂いならばあるいは届くやも知れぬと、武神の戦意は暴風じみた実体となって少女たちへ浴びせかけられる。

《穿つぞ小娘……耐えてみせよ》

【武神閃】――頭数で緩衝される二刀交差の斜十字一閃が、踏み込みの挙措もなしに放たれる。敵視(ヘイト)の矛先は銃の魔法少女。蒼月の燐を帯びた刃光は、過つことなく少女を裁断せんと迫る。

1年前 No.369

魔法少女 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

【荒れ果てた世界/巴マミ】

 十二──

 それは抗うのに必要な数字。
 死を齎す四の刃に対抗するに当って、同数では蹴散らされる、二倍では圧し潰される。
 三倍。其れも"最低"三倍だ。そうでなければ拮抗もできない。何をどうしようと、巴マミという存在はたちまちの内に刀の錆びと化してしまうだろう。

 然し……
 対峙すると決めた、
 立ち向かうと覚悟した、
 それでも、頭の中で勝利の映像を画けない。
 細く細く、極めてか細い勝利の糸をゆるりと着実に辿り寄せていく展開を何度想像しようとしても、必ず何処かでぷつりと切れる。
 考え得る最善を尽くしてなお勝てるとは思えないその存在に──だとしても挑む。そう、巴マミという名の少女は挑まなければ為らない。

 戦わないまま屈するなんて事は、絶対にあってはならない。


 諦めない事を選択した───だから、交わした"約束"が再会のレールを創る。


 背中から聞こえて来たのは、

「イヴさん……」

 黒き烈槍を纏った歌姫の声。

 元々、研究所にはレジスタンスの面々が向かっていた。
 その事を考えれば、彼女が自分と同じように異常事態に巻き込まれている可能性は決して低くはない。
 とはいえ、マミにとっては与り知らない話だが、この何もかもが乾いた地の他に四つの舞台が用意されている。
 その中で彼女──マリア・カデンツァヴナ・イヴが此処に現れたのは、奇跡的な偶然としか言いようが無い。しかし、
 偶然だろうと何だろうと、そんな事は当のマミにとっては関係なかった。所属の垣根を越えて、信頼出来るといっていい二人のうちの一人が、今こうして共に並び立ってくれている。

 それだけで、どれほど頼もしく感じられることか。
 其れは単純に二対一なら勝算が上がるからだとか、そういう計算めいた事ではない。
 この身体が軽くなるような不思議な感覚、僅かだが圧し掛かっていた重圧が緩んだような気がした。勿論、武者が発する気迫を弱めたというワケではなく、そして──、



 始まりに紡がれた因縁が、もう一つの"再会"を呼び寄せた。



「さ──櫻井、さん…!?」

 マリアの登場と較べれば、彼女の登場の方こそ、マミからすれば予想外もいいところだった。

 ・・・
 櫻井螢。彼女はレジスタンスではなく、列記としたバベルに属する人だ。
 おおよそ殆どの新世界を望む人間が方舟の守護に就いているであろうこのタイミングで、何故此処に。
 口振りからして、離反者として認定されたのであろう私を追って来たのだと見るのが一番妥当な線なのだろうけれど、
 どうにも釈然としない部分がある。あまり褒められた遣り方ではないが、私とマリアが奴と戦っているところを、漁夫の利を狙うような形も取れたハズ。
 それが不可能と見て共闘を申し出るにしても、今暫くの間様子を見てからでも問題はなかったとも思うのだが……

 ──いや、真意を考えるのは後でいい。

「……ええ、当てにさせて貰うわ」

 今は所属も思想も関係ない。この怪物を打ち倒さない限りは、全てが水泡だ。だから力を貸してくれるというのなら、拒絶する理由はない。


 そうして続いた"連鎖"は、更に一人の少女を奮い立たせる。


「フィーベルさん──」

 蒐集院で出会った、信頼出来るもう一人。
 視線の先に、システィーナ・フィーベルはいた。

 ……ほんの数秒前までは自分と武者の二人しかいなかった。
 しかし、最早単なる偶然と切って棄てるのは出来ないという程に。
 思想は当然、所属も違えば、世界の枠すら越えた複雑怪奇な縁で結ばれた者達が、この枯れ果てた終焉の大地に集ったのだ。
 状況は変化する。先ほどまでは絶望しか見えなかったが、今なら光を見出せる。戦う前から切られていた勝利に繋がる糸を手繰り寄せる事が出来るかもしれない。



 ───無論、だからといって油断も予断も許されない事に変わりはない。



「…言ってくれるわね。それで仕留められるのなら、私もそうしたかったんだけれど…!」

 決死の覚悟で挑むのと、捨て鉢でやけを起こすのとでは話が違う。
 初手に全開の一撃を叩き込んで、それで勝ちを□ぎ取れるのだと判じたのなら、形振り構わずにそうしていただろう。
 だが現実は其処まで甘い物じゃない。それだけではどうにもならない敵だという事は、相対した時に察している。
 まして身体には限界がある。否、限界を突破する為の法は確かに在るものの、アレは密閉したビンの中で火薬を爆発させるようなモノ。
 蒐集院でやったように、一時的には凄まじい火力を得られるが、一歩間違えれば器である自分の身体が保たなくなる。常に限界を突破し続けて戦える化物なんて、此の世にそうはいない。
 少女は勝つために戦うのだ。相討ちではダメだ、意味がない。だからこそスペックが劣っている以上、殊更慎重を期さなくてはならない。

 確実に討つ事の出来る一発を、正確に撃ち込まなければならないのだから──

 ……尤も、一対一のあの状況ではそうも悠長に構えてはいられなかったが。

 だが、今ならば。




        一、二、三、四、五/───右方から迫る神速の刃に展開。刀の"面"目掛けて一斉射を放ち、その後銃身も
      、    、   、  其の侭、攻撃を阻害するよう空中に固定。少しでも刃が到達するタイミングを遅らせて、
     、    、    、  退路を無理矢理に創り上げながら、同時に身を屈めて低くし、少しでも身体の面積を狭
     、    、  、  、 めてから回るようにして回避。上手くいったかどうか、成立したかどうかをを見てから
      、   、     、 動いては間に合わない。目論見が成立すると信じて、殆ど見もせずに行動開始。
        六、七、八、九、十/───同じく左方から来る断頭の一閃目掛けて撃ちだす。初手五発とやる事に変化は
    、    、   、   、ない。/十一、十二/───そして残る二発は反撃として我武者羅に撃ち込んだ結果、地へと減り込んだ。



(───ッ、わかっていたことだけど…!)

 複雑な事はしていない。武者はただ十字に刃を振るっただけ───だというのに、これだ。
 防ぐのに総力を割くのに手一杯で、まともな反撃手を練ることすら叶わない。

   ・・ ・・・・・・・・・・
 ……だが、それは私一人ならの話だ。


>>極ラーヴァナ、マリア、螢、システィーナ

1年前 No.370

立花嫁 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【 ノア/教会→移動開始/立花・ァ 】

 >ノア

 ふら、と。今度こそ眩暈に耐えられず、ァは膝をついた。

「そんな……」

 そんな馬鹿げた話があるか。
 新世界を求めて、彼女に尽くした人々は少なくなかった。困迫した世から脱却したいと、あるいは胸に巣食う絶望を払いたいと願って。
 そうした中で、新世界に抗った者たちもいた。ァの始まりもそこにあった。苦痛のない幸いなどあり得ないと断じて、新たな世界に向けた働きかけに抵抗を示した。
 だが、ノアを取り巻く争いはすべて無意味だった。無価値だった。いつか覆される盤上で小競り合いをしていたに過ぎない。
 何より馬鹿げているのは、それが騙されていたからではない。ただの行違い。勝手に都合のよいほうへ捉えた人々と、誤解されているなどと思いもしなかった機械の、相互不理解が招いた結果。
 やるせない思いに駆られて、ァは唇を噛んだ。どちらが悪いという話ではないと、頭では理解している。怒りがないと言えば嘘になるし、感情から言えばノアが諸悪の根源という風にしか今は思えない。

「――、――――」

 明確な形を得られない言葉を嚥下する。面罵も説得も、おそらく届きはしまい。断絶は深く、そも溝を埋める意思はァにない。それは彼女の手には余る難行だからだ。

「……お忙しい中ありがとうございました。いずれ降ろされるのなら今自ら退出しても同じでしょうから、私は宗茂様と共にお暇させてもらいます」

 立ち上がり、礼をして教会を後にする。扉にかけ、射し込む陽射しに目を細めたところでァは一瞬立ち止まった。
 ちらりと後ろへ送った視線が、自動人形を捉えた。
 ノアが救いたい対象ではない……その言い回しを想起する。つまりは、彼女にも救いたいと思える相手が存在するということ。

「……ああ、では」

 ……何も変わりません。
 今までと同じだ。ァは宗茂を救うために、復讐に心を燃やす少女と、レジスタンスを率いる男と戦った。互いに譲れないものがあって、是が非でも我を通すために力を行使する。それはノアの目論見を阻止することにおいてもさほどの違いはないだろう。
 ノアが彼女の救いたい人々のために新世界を創造するのなら、ァは誰よりも側にいたい人のためにその骨子を砕く。それだけのこと。
 今度こそァは教会を後にした。今すぐにでも宗茂をここから離し、佐山の元へ行かねばならない。

1年前 No.371

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【植物の世界/ハザマ(Lv5/1P)】

 ………時に、ハザマという人物の第一印象はなにか―――それは“薄い”だ。
 すべてに対して余裕を醸したその態度は、言い換えれば何事にも興味・関心を懐いていないという事実に他ならない。本気で打ち込む物事など彼の周囲には存在せず、こうして会話を続けているのだって、よくよく聞いていればすぐに分かることがあった。
 彼の口にしている話は、少し考えれば自分で気付くことも出来る程度のものだ。
 ハザマとは目の前の人間が語る感情を乱反射させる音又でしかなかった事実に、この場の誰もが気付かない。
 異世界がなんだという、ハザマの名がなんだという。それは判断材料になるかも知れないが、少なくとも事態を解決に導く情報にはなり得ないし、ましてや彼の会話は終始、ミルカのある一点を探り出そうという部分にこそ向けられていた。語った内容に真実があるのかと言われたのならば、ハザマはにこやかに笑って、普段と一切変わらぬ語調で“そんなものはあるわけない”と回答するだろう。
 この人物にとっては、ミルカの語った“極端な話”でさえ微かな羨ましさがあった。
 あらゆる手を尽くすということは、手段を選ばない程度には黒炎のあるじは自己保存へ尽力出来るのだろう。

「なるほど―――ああ失礼、ようやく貴女という人間の全体が見えた気分だ。
 死にたくない、なるほど死にたくないという言葉にこそ同調してくれますか。ええ、それならばこの状況、貴女がたは比較的運が良い。他の位相空間は何処も彼処も、話を聞かない聞く気のない怪物だらけですからねェ。ホント、お気の毒ですよ」

 会話を続けながらも、この瞬間ですらハザマは一切行動を起こさなかった。
 正確には行動を起こす予備動作すら見せなかった。
 にこやかに、普段の調子で、しれっとある致命的な事実を口にして………。

「―――ところで」

 そして、彼はまるで軽い世間話でもするかのようなノリのまま。


   、   、   、  ・・・・・・・・・・・・・・  、   、  、  ブレイブルー
「お話ありがとうございます、おかげさまで全員射程圏内です。―――コードS.O.L、“碧の魔道書”起動」



 その致命的事実を、確信に変えるような一言を口にした。

 そして、それから事態が動くまでの時間はコンマ数秒、その詠唱を止める手段は誰にも存在せず―――故にミルカにせよ浄罪火兵にせよ、あるいは遠くで寝そべる藤原妹紅その人すら、拡大されるウロボロスの円環と共にとある異常事態を感知することだろう。
 広範囲へと拡大したリングの内側に入り込んだ生命全て、重大な虚脱感と悍ましい寒気、内側のなにか………言葉として例えるものがあるとすれば“たましい”とでも呼ぶべきものが、凄まじい勢いでがりがりと勢いよく削れていくような錯覚。
 足元の草木は容赦なく枯れ落ち、小さな生命は一瞬で分解されるように掻き消えて、周辺の空気すら速やかに淀み出す。その一方で、それをかき集めたハザマの戦闘位階は速やかに上昇し、本来の位階に相応しいほどの格を一瞬にして露呈させた。

 それこそがハザマという器の本体………無差別に生命を吸引・簒奪する魔道書の本懐。
 言動の薄さ、立ち振る舞いから見せる空虚な有り様は変わらない。
 だがこの円環は大蛇<ヨルムンガンド>の身体、とぐろを巻いたハザマという魔道書のキリングフィールドだ。その内側において、ハザマの位階は基本数値にして五―――魔王や妖華、破壊の大王とすら真っ向勝負で殴り合える規格外ぶりを発揮する。

    、   アークエネミー
「続いて―――《事象兵器》・ウロボロス」

 ハザマを此処まで内側に入り込ませたということは、数の利を活かせる状況などではない。
 毒蛇の牙という最大規模の凶器を振るわせる機会を許したという、ただ一点の致命的なミスだ。それはミルカという人物が数の暴力を有するスタイルである以上、極めて致命的なマイナス状況を作り出す。
 その証拠は、いつの間にか地面から、植物の隙間から、空間を隔てて襲い掛かる蛇の牙を象る鎖の存在だ。
 数にして百を越える勢いで、ハザマの展開したフィールドから逃れようとするだろう火兵を、あるいは先程まで戦闘態勢ですらなかった藤原妹紅を、あるいは正面にいる黒炎のミルカを容赦なく押し潰すように、左右、足元からアンカーが群れを成して殺到する。それは命中すればひとつひとつの威力はそれほどではなくとも、肉体と同時に精神へ直接衝撃を与え、魂身ともに穴だらけにされるだろう毒蛇の牙だ。

 ………その中で一歩も動かず、ハザマは対話を一通り終えたミルカへと視線を向けていた。
 藤原妹紅へ攻撃を掛けたのは“ただの勢い”でしかないかのように。
 彼の興味は、極めて利己的な理屈を動機として持ち上げた彼女にこそ向いていた。

「いやあ、得るものはあった。なるほど貴女“生きたい”わけだ。
 さっきも言いましたが、それ人間の基本的な根底ですからねェ。単純な理屈だからこそ、そう必死になる人間はいない………そこへ行くと貴女は確かに聡明だ! 私などでは考えられないほど、ある種臆病なほどに自分の生命の価値を重く見ている」

 そう。誰しもがこの段階まで、ハザマという人間、否、魔道書にして虚数の怪物である男の底を把握しない。ただの怪しいだけの、同時に白痴じみた危機感の無さで友好を求めて来るだけの薄い男としか、誰もが思わない。
 だからこそ。この瞬間から、すぐに理解出来るだろう。この男が対話を求めた意味とは如何なるものなのかを。
 この薄く、何事にも感情というイロを見せることのない毒蛇がなにに喝采し、なにを蹲らせようとしているのかを。

「しかし、しかしだ。話は変わりますが、私はですね、今まであるものを感じたことがない。
 ええ、痛み、憎しみ、苦しみ、どうにもこうにも理解出来た覚えがありませんが、それだけが私を確立させた。
 ああだから、そうした願いが羨ましい、尊いと思う序でにふっとこう考えたんですよ………それを私のようなぽっと出に! 挫かれ嘲笑われて踏み潰され! そうした時に生じる痛みと憎しみには、さぞや得られるものがあるのではないかとね」

 そう、この男が対話を求めた理由。それは―――。

「ですので、さあどうぞ存分に叫喚を! その為ならば幾らだって蹂躙してやりますからねェ。
 キ、ヒヒヒ、ヒャハ―――イヤァーッハッハッハァーーーーッ!!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・
 おまえの願いを今から踏み潰すから、その痛みを教えてくれよ―――と。ただそれだけ。

 そんな極大の下衆じみた感情こそが………ハザマというかいぶつの本性にして、動機だった。

>ミルカ、藤原妹紅

1年前 No.372

土方歳三 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【滅んだ世界/土方歳三(Lv3⇒Lv4/5P⇒4P)】

 やはり大した手傷にはならない。
 撃ち放つ射撃は長銃から発射されたものだが、それが齎す効力として近いのは大砲の砲撃だった。
 空気を引き裂き烈風もかくやの勢いで進撃する弾丸は、バーサーカーのクラス補正も相まって単純な撃ち合いでは手数と威力が高水準で両立するもので―――されど、目の前の滅亡剣がそんなもので朽ち果てるほど易しい生物なのかと言われると否だ。
 古来より西洋の竜とは怪物。
 人間の鎧を容易く引き千切り、その財貨を貯め込みながら悪意を振り撒き、英雄にしか討伐出来ぬ最強の壁にして最悪の化外。それを自ら僭称するダインスレイフは、しかし名実ともに意思と気合の二つだけで邪竜ファヴニールとして君臨するに値する正真正銘の怪物だ。
 敢えてこの表現を使うならば、例え土方歳三が英霊であることを考慮しても“格”が違うというもの。
 本人としては小手調べの領域で使用したのだろう数百に及ぶ剣麟の暴風………歩道、塀、家々すべてを再整形させて津波のように襲い掛かるそれは、しかし命中すれば間違いなく霊核諸共押し潰すに足る破壊力があった。竜の爪牙とはそもそもそういうもの、人間が出す一度や二度の奇跡(クリティカル)など易々と叩き潰す絶対値という名の暴力を振るう怪物こそ、竜を名乗るに相応しい。

 邪竜が吼えれば、次は海竜が応ずる。
 人間など割り込めぬ鋼鉄の化外、水流と剣麟、それぞれの権能を存分に生かした衝突合戦。鋼鉄の竜どもは紛れもなく格が違い、ただひとつの激突でさえ滅んだ世界に死体蹴りでもするかのように世界を震えさせ続けている。
 なるほどこの場においてただの人間、ただの英霊なんぞ押し潰される餌でしかない。
 だが………。

 ・・・   、   、  、 お れ
「上等だ―――手前が竜だろうが、新選組の前進を阻めると思うんじゃねえッ!」

 そんな一言、一つの事実で脚を止めるほど土方歳三の底は浅くない。
 ましてや、そんな顛末こそ邪竜からしても興醒めというものだろう。
 戦場の鬼は自らを以て流れを変える。
 決して退かず、その闘志と覇気を以て、狂奔するが如く進撃を続けるのが土方歳三だ。
 圧殺するように左右から迫りくる剣麟、侵略の星辰を前に狂戦士は跳躍した―――その身体能力を用いた白兵戦と同時に、広範囲攻撃である剣麟を回避する手段の両立だ。言い換えれば、土方が遠距離戦を続けるというのはあまりにも分が悪い。
 弓矢一つの鉄砲一つ、それで竜の吐息(ブレス)と同じ殺戮効果を期待できるかと言われたならば、答えは当然否だ。故に総合値における敗北は当たり前のものとして、まだしもバーサーカーの得意とする近接戦へと捻じ込む、その方が“まだ”勝算があるだろう。その前提を以て瞬時に行われた行動に一切のラグはなく、偶然にもシングレンが放つ鉄砲水と次の攻撃は完全な十字砲火を形成した。
 跳躍と同時に斜め上を取り放つ四発の銃撃、高密度の魔力を伴って放たれたが故に炎弾とすら呼べるようなそれは再び滅亡剣の左肩と右肩へそれぞれ二発。彼の周辺ごと撃ち抜くように放たれた弾丸は、さながら流星のように失墜していく。

 実際のところ、彼らに協調の意思は断言するが10割ない。
 お互いがお互いに合わせてやろうと言う気兼ねなどない以上は当然の道理だ。
 土方歳三は海竜にすら“ついてこい”以外の結論を出す気はない。そして邪魔をすれば恐らくは容赦なく打ち抜く。彼はそういう人物だから狂戦士である以上は当然の結論だ。
 逆に彼方は弱者を一切省みない。死ぬならそれまで、委細興味もなし。
 そう割り切る以上、此処に示し合わせたような連携は一切ない―――ただし。

 その関係でも、互いが互いを利用するという状況だけは存分に在り得る。
 十字の放火、空陸双方からの竜に対する面制圧じみた集中射撃が降り注ぐ中………土方はと言えば、落下による遠心力と重量を存分に乗せ、本命となる白兵戦へと移行せんとしていた。
 一通りの連続射撃を終えた後に、その刀剣が鬼気すら乗せて瞬けば―――。

「―――おらぁああああああっ!」

 狙うは唐竹割り、構造が人体である以上頭部とは紛れもなく急所だ。
 カウンターすら恐れぬが故に、土方歳三の攻撃はその全てが乾坤一擲。
 開幕からの概念強化を躊躇いなく行使しながら、幕末の戦鬼が魔剣をへし折らんと猛る―――。

>ダインスレイフ、シングレン

1年前 No.373

鉄仮面 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【灼熱の世界/ラフレシア(カロッゾ・ロナ)+バグ】

「そちらにこれを壊させる訳にはいかんな、このマシーンにはまだ大事な役割があるのだ」

こちらの戦力を確認しても尚、その戦闘意欲を強くし、むしろだからこそ壊し甲斐があるのだと語る敵対者に対して、カロッゾはそれとは対照的に、酷く冷めている口調で、まだラフレシアには真なる敵対勢力である新世界派の一掃という「役割」があるために、ここで壊させる訳にはいかないと返答する。
相手は「戦い」そのものが目的だったとしても、カロッゾにとってはそうではない。 彼は戦士ではなく、貴族であるが故に、目的は常に戦いの先にあるのだ。

そんな風に、カロッゾは何時も通りの口調で喋っている物の、相手が取り出した槍によってバグを破壊された事は予想の範囲内だが、バグを足場として使って空高く跳躍して、凄まじい速度であちらへと向かったメガビームを掠める程度の損傷で済ませた事には少なからず驚きを感じていた。

だが、一度回避した程度ではラフレシアを追い詰めるには至らない、ラフレシアが何故レベル5であるかを最も簡単に言い表すとするならば、それは「手数」
一撃を回避したり往なしたりする程度では、ラフレシアの攻撃を防御したことにはならない、事実、空高く飛び上がったアイアンカイザーの背後からは、既に生き残りのバグが襲い掛かろうとしているのだから。

とはいえ、バグが敵の攻撃を止める前に、既に相手の攻撃は放たれてしまったようで、こちらに向かって光学兵器が放たれた。

明らかな光学兵器、普通ならばIフィールドで軽減可能な武装だと考えるのが自然だ、だが、ここは異世界、ビームとは違う別の技術でアレを使っているのが自然だ。
そう考えて、カロッゾは一応Iフィールドの幕を展開しながらもラフレシアに回避機動を取らせる。

ぐるんと横に一回転するように雷撃を回避するも、数が数であるため、やはり何発かは被弾し、爆炎が上がる、そしてその様子を見るに、やはりIフィールドで軽減は不可能らしい。
さらに言うならば、周囲に展開していたバグも数を大きく減らした、だが、当然ながら射程範囲外に居た背後のバグは健在だ。

「ちぃっ、ビーム兵器であれば対処は容易だったが……まぁいい――付き合うとしよう」

その時、視界の端に味方の姿が映った、それを見るとカロッゾは遠距離からの砲撃戦を中止し、ブースターを使って空高く飛び上がったアイアンカイザーの目の前に現れる。
そして、一斉にテンタクラーロッドを「前方」に展開して、一斉射撃を浴びせる。

何故包囲攻撃が可能であるテンタクラーロッドで一方向からの攻撃しかしないのか、それは単純に前方へと意識を逸らすためだ。

そう、大量の赤いビームによる火線すらも、囮に過ぎない。
その間に、バグたちが一斉に敵の背後から順次突撃をかける、だが、その軌道は明らかに"もう一人の味方"の位置を悟らせないように撹乱するような物であった。

主目的はバグによる攻撃、だが副目標として、敵の死角を大量の攻撃手段によって作り出し、そこに上手く味方の存在を隠す事なのだ。
勿論、この目論見が露呈すれば、何の意味もなく、また、味方がそれにあわせて火力を出してくれるかは別問題だ。

だが、これほど敵に接近すれば、テンタクラーロッドによって味方のフォローは十分に可能、そうカロッゾは考えたのだ。

>キバ 柴来人

1年前 No.374

烈槍ガングニール @cube☆PjfbxfTdjqg ★8jCPFrgLSZ_ZFe

【荒れ果てた世界/マリア・カデンツァヴナ・イヴ】

 威容に気圧されまいと果敢にも肩を並べ、強大な神威へと挑まんとする。
そして、この場に集う者達は、何れもマリアにとって見知った顔触れだった。

 横合いからその姿を現した軍服の少女。
遥か高位の存在たる蛮神が制する大地で、果たした宿敵との再会。
そう、最初に打ち合った因縁のある敵の一人。櫻井螢、その人だった。
忘れるはずもない。あの凍りつかせるような冷たい殺意を纏った目つきは――。

 「システィーナ……!」

 そして、蛮神の後方にもう一人の少女が映る――。
システィーナ=フィーベル。この先、真実を迫るために共に歩むと誓った掛け替えのない仲間。
偶然の再会は重なり、こうして再びあの時のメンバーが集ったのであった。

「…………っ」

 螢は告げた、協力してくれると。――――そうだ、今は彼女と敵対している場合ではない。
この異世界に立つ者であれば、立場が違えど、討つべき敵が何であるかを理解できるはずだ。
炎剣を迸らせ、共闘の意思を示す螢に対して、マリアは静かにその意思を汲み取り、倒さねばならない強敵へと視線を戻した。




 蛮神が刃を向けた先は巴マミ。
想像を絶する程の刃の暴威に十数の砲撃で捌き、防戦を展開する間に、マリアは蛮神ラーヴァナとの距離を縮めるため接近を試みた。
この闘いは決して一人じゃない――。たとえ遥か高位の悍ましい神が相手であろうとも、共に闘ってくれる仲間を思うと戦意が湧き上がる。

 《この胸に宿った信念の火は――誰も消す事は出来やしない――永劫のブレイズ♪》

 湧き上がる闘志に共振し、闘争の旋律が脳裏へと浮かび上がる。
マリアは闘う為に歌を紡ぐ、その力強い歌声は、ギアの秘めたる力を更に引き出し、能力を十全に発揮させる。
両腕のガントレットを変形させ、烈槍たるアームドギアを利き腕で握り締め、弧を描くように疾走。

 「意気込みや覚悟だけじゃない――ッ! それを今、お前に示すッ!!!」

  『――HORIZON†SPEAR――』

 ラーヴァナの右方へと迫れば、至近距離でガングニールの矛先を突き向け、先端から収束させたレーザーを放つ――。

>>極ラーヴァナ、マミ、螢、システィーナ

1年前 No.375

ガエリオ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【方舟(ノア)/居住区(病院)/ガエリオ・ボードウィン】

 医者とは人間の心身を問わない傷と病を癒すものだ。
 生命の価値と重さを理解し、その上で真摯に向き合う心構えが必要になる。
 その点においては、きっと鏡飛彩という男は医者こそが天職だったのだろう。
 ストイックな言動の内側には、彼は確かに、他者の命を救うということに対して極めて真摯だ。歪んだ誇りを懐くこともなければ、命に携わるということから奇妙な全能感に浸るような傲慢な素振りもない。ましてやその逆、萎縮し過ぎるような様子もない。
 仮面ライダーという戦士としての技術も恐らくは兼業に過ぎぬのだろうし、彼の根底にあるものが無辜の命に対する職業柄の誇りであるということは見れば分かった。これはそういう誠実な男なのだとすぐに理解したからこそ、ガエリオの高い評価がある。
 信ずるに値する人物、と。そうした男だからこそ―――。

「それは分かってる………どこの連中だって自分の命は惜しいさ、基本的には。
 可能な限り犠牲など出さん、それが軍人の役割だ。そのために俺たちは居た………そう、居たんだ」

 彼は、不意にそんなことを口にした。
 ガエリオの言葉は、自分たちが無辜の民を守って来たという誇りと飛彩が述べた理論への同意、そして何より微かな感傷じみたものが見て取れた。それがガエリオ・ボードウィンという男の性格を知っているなら少々らしくない発言だったかもしれない。

「出来るさ。前例がもうある、眉唾ものではない。
 死も痛みも苦しみもない、そういう概念を実際にノアは創れるかも知れない。それは喜ばしい話だろう」

 そんな様子も一瞬、彼は軽口を叩くことなく、時折感じていたらしい飛彩の疑問を受けた。
 新世界そのものへの疑問………先の戦地に出向く前のガエリオならば、一笑に付していたものではあった。疑う理由などあの力を見れば何処にもない、概念という恵みを齎し、文字通り世界を救う手前にまで在る人造救世主に疑いを貼り付ける要素なぞない。

「………と、思ってたんだがな」

 そのはずだった。

「―――俺が遭遇したレジスタンスの輩は、文字通り命を粗末にした奴だったよ。
 最後が自爆だぜ? 仲間諸共容赦ナシだ、本気でイカレてると思った。
 それに巻き込まれる寸前だった俺がなんで生きてるのかも分かりゃしない、下手すりゃノアがやった一撃みたいな、何もかも吹っ飛ばせちまう威力だった………ああ、何が言いたいかって言うとだ」

 そのはずだったが、しかし、尚更に思うところがある。
 セリュー・ユビキタスの鮮烈すぎる正義を前に“引いた”ガエリオは、しかしこの一時だけ思考をクリーンにしていた。あんなものが正義だと語る彼女への嫌悪と、それが罷り通る今の世の中を変えるべきだという前提ありきとはいえ、僅かだが視野を広げた。
 そうして、ふっと気付いたのだ。

 ・・・・・
「そんなことが出来るなら、なんで最初からやらなかったんだろうな。
 脅しでもいい、一発どっか海にでもブチ込めば抑止力になったぜ? 結果として犠牲は減る」

 あれだけの力を持っているのであれば、自分達の意味とは何なのか。
 そんな、単純な話に。

>鏡飛彩

1年前 No.376

イヴァン @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【滅んだ世界/イヴァン・ストリゴイ】


 その時、無数の瓦礫が無軌道に荒れ狂う戦場を一閃の光芒が瞬いた。青白く輝く電子の奔流は、災厄のように荒れ狂う市街地の瓦礫をバターのように溶かしてダインスレイフへと逼迫する。
 一度見たものは忘れない、英雄譚の最後を彩る光の如き荷電粒子砲。そんなものを軽々と扱えるものは一人しかいない。

 崩れ落ちた瓦礫を踏みしめ、遠方数十メートル相当離れた小型のビルの頂上に、男は魔砲と化した左腕を掲げて立っていた。
 イヴァン・ストリゴイ。生粋の闘争の魔人もまた、この場に姿を現した。

「悪い悪い、道が混んでたもんでよ。ちっとばかし出遅れちまった。
 よう副長。こうして話すこともそうねぇと思ったが、また共同戦線とはなぁ。あんたみてェな"本物"と戦えて俺は心底嬉しいぜぇ?
    リヴァイアサン
 そこな海王竜も、初めて会うが中々どうして気骨ある英雄の気風だ。
 そして……」

 童のように呵々と笑いながら、敵となる邪龍の姿を改めて捕捉する。
 傍目から分かる、恐るべき自負の念。二者を相手取って尚、絶対的な余裕があるのは単に並外れた力だけによるものではない。
 俺なら出来る。本気で生きれば人間に不可能はないのだと、毅然として言い張る圧倒的自負がある。
 イヴァンは一刹那、その在り様に見惚れるように溜息をついた。こいつは何という、何という漢なのか。軽く計器を通してみただけでも、とうの昔に人間など辞めてしまう程の歪な改造が窺えた。

「よくやるぜ……素直にそう思う。おまえさん、それ"何回死んだ"?
 まともに生きてりゃあンな無茶な改造しねぇだろ。俺も刻鋼人機(イマジネイター)やってる身だが、その域に至るにゃ一回や二回じゃ済まねえよなぁ。五回か、十回ってとこか……?
 ああ、今夜は良い日だぜ。棚ぼたとはいえ、辺境の異世界くんだりまで来た甲斐があったってもんだ!」

 心底楽し気に、これこそ戦場の醍醐味だと、心の底から歓喜しながらイヴァンは快哉の声を上げた。
 あの途方もない自我からは、己の求めた『英雄』の片鱗が窺える。輝ける戦場の華。
 或いは、その真逆の存在か。是なるは人の形をした邪龍(ファブニル)にして、人の手に鍛えられた魔剣(ダインスレイフ)。ならば此処に開かれる戦端は英雄同士の決闘ではなく……

「成程なぁ、だからこそコイツは龍退治ってワケだ。
 古典すぎて俺の好みからはちと外れるが、悪竜殺しの英雄ってやつも悪くねぇ。護るモンも救う姫さんもいやしねぇが、まあどっちも俺達にゃ似合わねぇわなァ! カッハハハハ!」

 即ち三対一の龍退治。軍戦闘ということになる。
 尤も子の三者は三様に我が強く、真っ当な共闘など望むべくもないだろう。それは乱戦に近い共同戦線。宛ら敵味方の入り乱れる戦場の霧に満ちた原始闘争となることは疑うらくもない。

「ま、そんなわけでこっからは三対一だ。いや或いは乱戦(ゴチャマン)か?
 夢にまで見た英雄譚の幕開けだァ、共に燃え尽きようが骨の髄まで灰になりつつ疾走しようぜ――!!」

 歓喜と狂騒のまま雄叫びをあげ、呼応するように砲門が再び煌き出す。
 再発射までのインターバル、僅か数秒。充填の速度は兎も角、砲自体の冷却も必要であろうにそんなことなどお構

いなしの二発目の荷電粒子が火を噴く。ただ出力をのみ執心的に求めた武装は、
 一発目と二発目、連続する必滅の破壊光線が、邪龍の驕慢を穿たんと炸裂する――!

>ダインスレイフ、土方、シングレン

【乱入させて戴きます。お相手よろしくお願い致します】>ダインスレイフ本体様、土方本体様、シングレン本体様

1年前 No.377

キバ @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

【灼熱の世界/キバ】

アイアンカイザーのパイルダーの中でキバは漸く敵機動兵器の性質を理解しつつあった。
敵の機動兵器が重点を置いているのは「手数」に他ならない。それはあの島に長く住み着いていたキバにとって、手数で勝負してくる阿呆などたった二人しかいなかったからだ。いや、厳密にはその二人のうちの片割れ。運命に縛られることを嫌ったある男だが、手数重視というのはそれに近いものを感じる。
まあ、そんなことを気にしている余裕はねえが――!

「チマチマやってんじゃねえぞドアホがァッ!」

背後から迫るバグの回転がアイアンカイザーの背中に直撃する。いくら堅牢な装甲に包まれた鋼の魔神でさえも、直撃を受ければダメージを受ける。双頭の槍を振るい、バグの動きを反らすと、またもそれを足代わりに跳躍する。今回は距離を取るための空中バック転であるが……。
ここでキバは舌打ちをかました。己の誤算に対してだ。ラフレシアもまた空中高く浮上し、前方へ奇妙な光学兵器を展開する。キバは一瞬動きを止めてしまい、それに連動してアイアンカイザーも動きを止めてしまう。それが第二の誤算となったのは言うまでもない。
触手の様な武装がキバの知る武装とは大きく異なる運用方法をしていたというのが大きいが、これに関してはキバ自身の驕りも混じっている。一斉砲撃された触手のビームを槍で逸らしてなお、その目的に気がつかない。
ショルダーブラスターの発生装置は展開され、かつ、地面に放射し続けている。それが、仇となる。

「そうかッ、てめぇら連携なんぞ! ぐううッ!!」

アイアンカイザーが背後を振り向く直前にバグが背中の装甲を切り裂いていく。深く抉られたわけではないが、結構なダメージをもらったと言える。このまま直撃を受け続ければ最悪破壊されるし、同じところを重点的に攻撃されるのも非常によろしくないだろう。そして、だ。
あのアンドロイドの放ったマシンガン……それはショルダーブラスターの発信器を狙っていた。それは破壊することはなくとも、確実に位置をそらした。黒い稲妻はマグマに直撃し、噴火させる。舌打ちをかましながらキバはアイアンカイザーを後退させ、ショルダーブラスターを格納する。
アイアンカイザーは急降下し、岩山の表面を走る。そのまま上空へ浮かぶラフレシア目掛けて――――

「アイアントルネェェェェドッッ!!!」

口の無数のスリットから、砂嵐の様な轟轟とした竜巻が吹き荒れる。それはラフレシア目掛けて一直線に飛んでゆき、且つ、岩山の表面をえぐり飛ばしてゆく。落ちゆく火山岩を飲み込み、それらをラフレシア目掛けてぶつけるために飛ばしてゆく。
――――キバ自身も気がつかなかったことであるが。左胸のグラビトンリアクターは著しい反応を見せ……それに合わせて。灼熱の世界のマグマが躍動しつつあった。

>>ラフレシア

1年前 No.378

ファヴニル・ダインスレイフ @faketanisi☆8cfl5/j3VDw ★XZOLTACqTn_jCr

【滅んだ世界/ファヴニル・ダインスレイフ(LV5→6)】


「クハ――水、か。何ともお誂え向きなのを使う野郎だ」

 シングレンの迸らせた鉄砲水の光条が、ダインスレイフという悪竜神話を押し流す為だけに終末の空を駆ける。
 それに対しダインスレイフが振るったのは、またしても物質文明を蹂躙する剣鱗の波濤だ。
 余りにも芸がない直情的な破壊であるが、それもその筈、ファヴニル・ダインスレイフという男は出力で圧倒的なものを持つ故に、搦め手に訴えるという能力値が欠乏している。奇しくもそれは、彼が憧れ、魂を焼かれたさる英雄と同じ性質。だからこそ、言ってしまえば彼の打つ手は読みやすい。
 だが……

「しゃらくせええッ!!」

 読みやすい、というのは、だから楽勝に打ち倒せるという意味ではない。
 降ってくる核爆弾の軌道と被害は確かに読みやすいだろうが、だから簡単に攻略出来るなんて理屈が存在しないのと同じだ。力とは、瑣末な事情を踏み潰して君臨するものを言う。
 傍若無人にして悪逆無道の暴虐手――ダインスレイフは星の出力を押し上げ、自身の篭手剣をシングレンの鉄砲水へと叩き付ける。激突を合図に地を盛り上げて生じた剣鱗が、下から喰らい付く牙のように水を圧迫し、威力と軌道を乱していく。そうなれば、後は力技でも突破可能という寸法だ。
 然し、無茶の代償は高く付く。次の瞬間には、狂戦士……土方歳三の放った十字砲火が、ダインスレイフの両の腕を猛烈な速度と威力で以って暴力的に引き千切り、均整の取れない無様な姿へと変じさせていた。シングレン達に連携も糞もありはしないが、されど、シングレンの攻撃がなければ竜が穿たれる事はなかったろう。

 否々、それでもまだ終わらない。
 悪竜を討伐せんと姿を現したのは、もう一人居た。
 それこそが、戦場を駆ける闘争者、イヴァン・ストリゴイ。
 土方を副長と仰ぐ、レジスタンスの暴力装置である。

「知りてえか? "合計三十七回だ"――まあ、大小ひっくるめた数ではあるが。吹かしとしては上等だろう?」

 滅亡剣は戦闘狂であると同時に、極めて優れた指揮官であり、戦略家でもある。
 元は堕落した怠惰な若者だった彼は、当然血の滲むような経験の中でそれを身に付けた訳だったが、宿敵を本気で討ちたいと思えばさして苦にはならなかった。
 その彼には解る筈なのだ、自分の置かれた状況の分の悪さが。
 敵は三人、自分は両腕を削がれている。レベル差があるとはいえ、これで勝利を掴むなどさしもの自分でも難しい。なればこそ利口なのは撤退、或いは戦況の立て直しの筈だが、彼は頑としてそれを選択しない。


「天昇せよ、我が守護星――鋼の恒星を掲げるがため」


 刹那、須臾の内に紡がれる詠唱(ランゲージ)。それは滅びを齎す竜の嘶きであり、暗天に浮かぶ魔の恒星の軋り。


「美しい――見渡す限りの財宝よ。父を殺して奪った宝石、真紅に濡れる金貨の山は、どうして此れほど艶めきながら、心を捉えて離さぬのか。
 煌びやかな輝き以外、もはや瞳に映りもしない。誰にも渡さぬ、己のものだ。
 毒の息吹を吹き付けて、狂える竜は悦に浸る」

 悪寒、殺意、そして凶兆――みなぎり荒ぶる死の気配。
 紡がれる人外特有の起動詠唱。理性の判断を嘲るごとく、悪意の祝詞が天に轟く。
 そう、彼の戦いはいつだって理性的なように見えて狂気に満ちている。セオリーというものの存在しない、ただ喰らって奪う事を突き詰めた悪竜譚。

「その幸福ごと乾きを穿ち、鱗を切り裂く鋼の剣――
 巣穴に轟く断末魔。邪悪な魔性は露と散り、英雄譚が幕開けた。
 恐れを知らぬ不死身の勇者よ。認めよう、貴様は人の至宝であり、我が黄金に他ならぬと」

 故にこそ、彼はこの瞬間、戦いの定石をちり紙でも放り捨てるように排除した。
 概念強化……俗にレベルアップと呼ばれる力が、この世界には存在する。
 身を滅ぼす程の反動を対価に、一時的な限界突破を自らに齎す諸刃の剣。上手く使えば格上狩りも格下のより確実な殲滅も思うがままであるが、その対価の重さから、易々と抜かないのが良しと一般的には言われている。

「壮麗な威光を前に溢れんばかりの欲望が朽ちた屍肉を蘇らせる。故に必ず喰らうのみ。誰にも渡さぬ。己のものだ」

 ダインスレイフは、五月蝿え黙れ、そんな理屈(くさり)は知らねえと、戦闘開始から三十秒と経過していないこの瞬間に概念強化を実行した。彼のコマンドワードは星の祝詞。オリハルコンの胎動こそが蘇った邪竜の心音なれば、当然、星光の強まりは驚天動地の異星現象の出現を意味する。
 この瞬間より、彼の位階は六。これで足りるか、それともまだか。竜は釁れの身体で悪辣に笑む。
 そう。シングレン、土方、そしてイヴァンの三名は、ダインスレイフに評価されてしまった。自分という悪竜を討ち果たし、黄金の財宝を手に、英雄として帰還するだけの力が有ると看做されてしまった。それはこの男が下す評価では間違いなく最高のものであり、同時に、ある性質が発露する引き金でもある。

「滅びと終わりを告げるべく、その背に魔剣を突き立てよう」

 即ち――敵を評価するが故の"本気"。理論も理屈も倫理も常識も、あらゆる既存の枠組みを粉砕する人類種の真髄、手段化された輝ける奇跡。自由自在に自分を覚醒出来る異常者(かいぶつ)は、三人の竜殺しを"こいつらならやれる"と絶賛しながら、礼を返すが如く己の箍を外したのだ。
 始動する邪竜戦記。光の性質を持ちながら、輝くものを撃滅せんと涎を垂らす滅亡剣(シグルズベイン)。

Metalnova
「超新星――」

 終末した世界に光が射す。
 イヴァン・ストリゴイの荷電粒子砲だ。
 良いな、とダインスレイフは素直にそう思った。これは敵の実力に悦びを覚えたというのもあるが、それ以上に、その網膜を焼くような煌きが、風聞に伝え聞いた"奴"の雷霆のイメージと重なったからだ。新西暦にはあんな技術は存在しないが、あるのなら一も二もなく量産していた。
 破壊の光に対し張り巡らせた剣鱗は圧倒的な出力、集束性にぶち抜かれ、竜の上半身と下半身を一瞬にして完全分離させる。其処に飛び込んできたのが、東洋の鬼人――ダインスレイフの世界に存在していたなら、その身に流れる血統だけで一生遊んで暮らす事すら可能だったろう、日本人(アマツ)の血そのものを体内に宿す男。土方歳三の狂相だ。


 Sigurdbane
「 邪 竜 戦 記 ―――― 」


 それをダインスレイフは、避けようともせず迎え入れる。
 胴の分離により多少軌道がズレはしたが、土方の唐竹割りは竜の首筋部分に命中。
 そのまま勢いに任せて邪竜を両断し、見事竜殺しを成し遂げる……筈だった。
 然し、その刃はダインスレイフの体内で停止する。強靭な何かの顎で噛み締められたみたいに、動作を止める。
 それは杞憂でも、土方が手緩かったのでもない。ファヴニル・ダインスレイフは、その体内の殆どをアダマンタイトに置き換えている。いわば改造人間。それが魔星化した事により、彼の体内はほぼ異界に等しいのだ。
 故にあり得ざる事態が起こる。肉が、骨が、鉄で出来た何もかもが、捕まえたぞと言わんばかりに土方を止めに掛かるという意味不明の事態が。



        .        .   .        .   .D a i n s l e i f
        .        .        .「 ―――― 英 雄 殺 し の 滅 亡 剣 ゥ ゥ ッ  ! ! 」



 生も死も、等しく凡てを飲み込まんと炊ける我欲に限りなし。
 喰らえ、喰らえ、欲するままに――討ち滅ぼせよ、勇者ども。
 ここに貴様らが滅ぼすべき魔物がいるぞ、見逃すなと、邪悪を見せつけるかのように鱗を波立たせる。
 自然を征服せし人意の信奉者は、己が生命さえも人造し、渦巻く欲望はいつしか硬化して剣と化した。
 ならば彼こそ邪龍にして魔剣、魔剣にして邪龍――生命体を超越した新西暦最強の人造兵器なり。

 吹き飛んだ両腕が、落ちた胴体が、内部の殆どを鋼鉄に置き換えた無機物である筈のそれらが、まるで意思を持った生き物のように蠢き、ダインスレイフの本体と再結合を開始した。
 意図せぬ連携と奇襲により与えた手傷が、ものの数秒で完全な無へと帰る。
 ――ファヴニル・ダインスレイフは、他の戦柱達に比べれば地力で二歩は劣る存在だ。だが、彼はある概念においてのみは他を凌駕している。それは"不死性"。最初に、破損した竜爪を瞬く間に修復してのけたように。ダインスレイフは死という概念を、本気の改造と意思の力で事実上克服している。

「さあ、俺は抜いたぜ本気(ほし)を。刮目して見ろ、俺の魔剣は凄えだろう?
 尤も正真の英雄なら軽々飛び越えるだろうが……ヒハッ、落胆だけはさせてくれるなよォォッ!!」

 シングレンとイヴァンに、左右から挟み潰すように襲い掛かる剣鱗の津波。
 そして至近の土方には、特殊合金をも柔肌のように切り裂く邪竜の篭手剣が豪速で迸る。
 逃しはしない、誰一人。竜の巣穴を侵したからには、誰かが死ぬ以外に終幕はないのだから。
 邪竜戦記、此処に再演。鋼を擦過させ咆哮する滅亡剣は、今や至高の星光を撒き散らす災禍の権化と化している。

【色々強そうな事書いてありますが、普通に本気で剣を抜いたとかで解決してくれて大丈夫です】
>土方本体様

>シングレン、土方、イヴァン

1年前 No.379

櫻井螢 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【荒れ果てた世界/櫻井螢 (LV2/8P)】


   Briah―
『 《 創造 》―― 』


 位階差の時点で差が付きすぎている。故に、螢は惜しむことなく創造(カード)を切った。
 詠唱を終え、意志力の概念強化で再び此処に創造位階を発動させる。
 【LV2→3/8→7P】


   、  Man sollte nach den Gesetzen der Goetter leben.
『 ――《 爾 天 神 之 命 以 布 斗 麻 邇 爾 ト 相 而 詔 之 》―― 』



 爆発的な熱量と共に、螢の身体が透ける。端麗な黒の長髪は、燃え盛る朱に染まり、携えた剣は太刀へと変ずる。
 マミは己より等級が上だが、己は一段階下にあたる。三段階も等級が離れれば、それは蟻と象の争いに等しい。何億群がれば話は別かも知れないが、現実は一匹と一頭。奇策でどうにかなる域をはるかに超えている。縦しんば与えられる損害があったとしても、せいぜいが1か2程度。千発万発与えれば致命打になるやも知れないが、その前にじり貧がくることは見えている。
 ならば早々に己を追い詰めてでも限界まで力を行使した方がいい。平時では全く勝負にならないが、全力を出せば辛うじて刃が届く。10にならない1を何発撃ったところで意味が無いのだ。
 そしてそれは同時に己の生存率を高める方向にも効果が出る。少なくとも螢はその類の能力を持っている。

「はぁッ!」

 螢の創造、それは自らを炎と化して如意とすること。それは純粋な火力の向上のみならず、自身の機動性や攻撃の多様化などにも影響する。
 そのうえ炎となった身体は、相手の格によるとはいえあらゆる攻撃をすり抜ける。相手の格が圧倒的に上な以上、その能力は期待できそうもないが、こうした共闘の場においては一定の効果を発揮する。

 例えばこのように。
 螢は吶喊し、岩石を思わせて巨大な刃へ横合いから斬りかかる。
 透過能力を応用し、"マミの放った弾丸をすり抜けて直進し、向かいの腕へ剣戟を放った"。
 これは自軍の流れ弾を防ぐことにも有効となる。数の暴力と言えど、集団戦闘とは常に『味方が邪魔になる』という危険性を孕んでいる。そのリスクを螢は最小限に抑えることが出来る。
 横合いから撃ち落とす形で振るった剣は、衝撃を受け流す形となり螢への損傷は軽微に抑え、同時に攻撃を確実に防ぐという功績を挙げていた。
 先の攻撃は、いわゆる頭割りだ。多数の腕を持ち、その腕を利用した戦闘術を備えるが故に、防ぐには複数人の迎撃が必須となる。先のマミの迎撃ではまだわずかに足りない。あのままでは回避しきれなかった巨刃が一気に彼女の総身を膾に切り刻んでいたであろう。
 マミの傍らに着地し、黒の外套を風にたなびかせて螢はマミへ端的に纏めて用件を告げる。

「巴さん。
 分かっているとは思うけれど、この戦いは連携が不可欠になる。地力で足りていない分、効率的に力を発揮しないことには順当に各個撃破されるだけよ。
 貴女は見た所この中で一番地力が高く、加えてアウトレンジからの攻撃もできる。常に距離を取って、後方支援と動的な指示を頂戴」

 地力が高いということは、瞬間的に出せる限界もまた高いということだ。10にならない1や2を何発も足していたところで埒が明かない。マミの必殺の機を、他三人で作るという方式が一番効果的になる。
 故にマミは司令塔として、要所要所での迎撃や火力支援が望ましい。状況判断もしやすく、生存率を上げることで決め手となる攻撃を放ちやすくなる。何より、見かけによらず彼女は聡く、判断力も優れている。
 ……尤も、この場にいるレジスタンスの面々の得手、螢は正しく把握している訳ではない。その部分はマミに役割分担を任せるとして。

   まえ
「――"盾"は、私が引き受ける」


 最も苛烈な攻撃に晒されるであろう、所謂『楯(タンク)』の役を、螢は名乗り出た。
 マミからしてみればとんでもない発言だったことだろう。先程まで、敵であることを考えていた螢が、自ら最前線に向かうというのだから。
 返答を聞く猶予も無い。螢は言うことだけ告げると、再び武神と向き合って天高く飛び上がり向かって行った。

 勿論螢が絆された訳でも、裏切る機会を探っている訳でもなく、これは単に余裕が無いのだ。
 繰り返し告げるが、この武神は強すぎる。     、      ・・・・・・・・・・・・
 全力に全力を出し、各人が最大の戦果を挙げることで、漸く……漸く"一割ほど勝ちの芽が見える"程度の、絶望的な差がそこにはある。
 四対一の数の差? ――たった四匹の羽虫が、獅子を仕留められると思うのか?
 脅しでも何でもなく、彼我の間にはそこまでの差が開いていた。
 そしてこの異空間という閉ざされたロケーションの中、逃げ場など無ければ斃す以外の手段で脱出は不可能。選択肢は二つに一つ。殺して生き残るか、殺されて死ぬか。
 この戦はそういうことで。余計な打算を一々考慮に入れようものなら、即ち一瞬で全滅する。

 そうして、宛ら燃える恒星のように己が身を燃やして螢は飛び上がり、炎の特性を利用して空中で方向を転換。宛らロケットのブースターのように噴炎で推力を付け、一気呵成に蛮神へと突撃する。

「喰らえェェッ!!」

 剣を振るった直後の隙を突いた、袈裟懸けの一閃。上空から急降下して放たれた炎の一斬が武神に襲い掛かる。全身全霊。だが、相手にはどれほどの損傷となるのか……先ずは、それを見極めよう。
 蛮神の武威充ちる前線。その中で振り返りもせず、同じく敵の刃圏の渦中に居るマリアへ言葉を投げる。

「一応言っておくけれど」

 冷たく、研ぎ澄ました殺意の念。それが籠った瞳でありながら、口許に浮かんだのは何処か得意げな笑みで。

   ・・・・・・・・・・・
「私、負けてなんかいないから。
 そこは勘違いしないで」

 そう告げて、螢は再びその身を躍らせた。
 ずっと言ってやりたかった。その身で証明してやりたかった。
 『意志で負けた』などという、一番耐え難い屈辱を晴らしてやりたかった。
 己より遥かに過酷な障害を経てきた人間は幾らでもいる。より凄惨な覚悟を以て、『まだだ』の一言と意志力だけで物理法則を捻じ曲げるような手合いも過去には居たという。
 だが彼女は違う。普通の少女だ。先程までは庇護下に在り、戦場に出るのもこれが初めてのような、只の偶像(アイドル)。それに、己が唯一誇ってきた覚悟が負けたことが我慢ならない。
 二人掛かりで、それに負けたという事実が何時までも何時までも胸の中で燻り続けていた。
 だから証明する。この身に滾る炎を見せつけて、証を立てる。そうすることで、櫻井螢という存在意義(レゾンデートル)は保たれる。己の意志の炎は。11年、ずっと心の裡で燃え滾り続けてきた意志の炎は、決して後れを取るものではないのだと。

 それはまるで子供の意地のような言葉で、およそ今までの螢からは考えられない発言だ。常に仮面をつけ、本心を覆い隠した少女……その地金が、ほんの少し窺える瞬間だった。
>ラーヴァナ、マミ、マリア、システィーナ

1年前 No.380

アルトリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【白い世界/アルトリア・ペンドラゴン(Lv4/3P)】

 それでも、と。敢えて投げかけた問いに、獅子王は何処か失望の色を瞳に含ませて応じた。
 どんな時代であれ、人間は“何故”と問いたがるものだと語るその物言いには、真実ヒトという存在と比較した上での霊格の違い、視線の違いこそがある。分かってはいたこと、今までの様子を見れば熟知出来ていたことではあるのだが―――しかし。それでも。
 アルトリアには彼女の言葉の節々に、言いようのない悍ましさと妙な違和感を感じて仕方がなかった。
 その諫めるような、“おまえは何を言っている”とでも言いたげな態度には明らかな意識のすれ違いを感じさせながらも、しかしどうにも意識がそちらに行く。節々に理解出来る範疇の物言いが散りばめられ、節々にこの獅子が根本より人の守護を望んだことを理解させておきながらも………しかし、その視点はひどく独善的だ。
 それはまるで、たまたま彼女のやりたいことが、人を護るという方向に合致したというだけ。
 まるで―――獅子の王にとっては人間など、自分とは種を隔てた別のナニカに過ぎないとでも言うかの如き物言いは、総じてこれより先、彼女が語った言葉をその通りに受け止めるならば“ノアが好きにした”結果は止めようがないということなのだろう。
 人理を破却した上に成り立つ新世界が完成する前に、この最果てを以て人間を永遠に保管する。なるほどヒトという種を残す分には合理的ながら、これは絶対に続かない。当人が停滞を望んでいるのだ、そこから先は永遠こそ在れど未来など存在するまい。

 だが―――そうだ。同時に失くしたものは戻らない。
 アルトリアにとって………もっとも、意識の虚を突いて飛来した言葉は“それ”だった。

 道理と言えば、なるほど道理だ。
 そんなことが若しも起こるとするならば、それは奇跡に縋るより他になく。
 彼女とて、そうした理想を夢見なかったわけではなかった―――だから、だからこそだ。それはまるで、自分の内側にあった悔恨を意図して撃ち抜かれような錯覚すらあって、見透かされたが如き物言いだったからこそ、再び彼女は初動を遅れさせた。
 元々、アルトリア・ペンドラゴンは過去に執着した王だ。
 滅びた国のやり直しを求めた。定まった滅びを、せめて緩やかなもので在るべしと希った。
 それは、彼女にとって慈しむべきものが、多くの穏やかに笑うだれかだったからで―――彼女の語りもまた、恐らくはその“だれか”を思うが故のもので。しかし決定的に、此処には隔絶したものがある。

 だから………このヒトとは隔絶した獅子の王が、そうした結論を見出した理由はなんなのかと疑って。
 否、まるで“知っている”かのような物言いに聞こえた理由はなんなのか、と思考を巡らせて。

 ………そんな彼女と獅子王の問答に、しびれを切らしたのか。
 それとも、この瞬間においては、各務・鏡の方が戦闘状況においてクレバーな判断を下すことが出来たのか………軽い謝罪の後に行われた砲撃は確かに不意を突いた以上十全な火力を発揮するに違いなく、しかし砲撃が不動の王を動かすには至らなかった。
 その砲撃は、終ぞ彼女に一切の傷をつけることはなかった。
 ただ兜を破壊しただけ。それ以上でもそれ以下でもなく、現に獅子の霊格には傷一つすら残っていない。隔絶した“格”を証明するに至ったものは、彼女が掲げた武装だ。ただ掲げたのみで威力の八、九割を軽減させるもの、その武器に―――。

「―――馬鹿、な」

 その武器に、アルトリアは見覚えがあった。
 其は最果てにて輝く錨、星の聖槍にして世界の表裏を繋ぐ嵐の錨。
 複数の拘束を以てなお純然たる輝きを放ち、白い螺旋を描きながらも莫大な魔力を放つもの。
 すべてが砕けたあの丘で、騎士を討った星の燐光―――それに覚えがあったからこそ、信じられないと瞠目した。続く兜の正体と違和感のかたちが連鎖的に勢いよく姿を現して行くことに気が付いたから、一瞬だけ思考が停止<フリーズ>したのだ。

 なるほど、節々だけは理解出来たのもうなずける。
 出会い頭に響いたその声を、何処かで聞いたことがあると感じたのも当然の理屈だ。
 どれもこれも、目前の王の相貌を見つめ、手にした槍のすがたを理解すれば即座に理解が及ぶものでしかない。

「………だが、そうか。漸く合点が行った」

 なにせその獅子は―――その王の顔は、他ならぬ自分のソレだったのだから。

「なるほど、気分が悪いわけだ―――そんな結論<どくぜん>で人を導いた最果てにこそ何もない。
 ただ止まっているだけだ、過去にも未来にも行きはしない。それはもはや生存ではなく、ただの保存でしかないと………気付かずに述べているのが、よりにもよって私なのだから」

 まさか自分の声に聞き覚えのない人間など居るわけがなく。
 鏡を見るのが好きなのは自己愛に酔ったような人間だけで、あまつさえそれが自分の最も嫌うような真似をしているというのだから、ざわつくような不快感とは即ちそういうものだった。
 故にこの正体に気付いた時………頭を再び鉄槌かなにかで殴られたような衝撃が襲う。
 が、すぐに意識を留める。努めて冷静に振る舞うべく、同時に臨戦態勢となった彼女(じぶん)を切り伏せるべく聖剣を抜刀した。同じように風王の鞘が紐解けて、風が吹き荒れる中―――騎士の王は獅子となった自らの果てへと、その矛先を向ける。
 彼方はこれ以上対話の余地なしと刃を構えているのだ、もはや悠長にものを述べては居られない。
 それに、彼我の戦力差が分からないほど彼女は冷静さを失っては居なかった。
 神霊へと昇華された聖槍を駆る嵐の王が霊基は自分の一段階上に達するが故に、余談が許される状況ではない。


「ならば―――道を違えた私の虚像は、此処で斬り伏せよう」


 故に、この女は捨て置けなかった。
 自分の過ちだというなら尚のこと。
 そして同時に、その“善い”と告げたものが、人にとってはどうしようもなく破綻したものだから。

 ………後ろで砲撃を撃ち込んだ聖騎士へと一瞥する。
 アレから注意を逸らせば疾く死ぬより他にない以上、言葉を交わす猶予はそうない。
 だがしかし、手を借りるという意識は確りと持たねばならない。単身で斬り伏せられるほどの格差ではない以上、その判断においては彼女も務めて合理的だった。
 即ちその視線は、後方を任せるという意味合いで。後は即興でも共に合わせて剣を向けるより外にない。

「―――風よ、吼え上がれッ!」

 開幕は速やかに。
 突き出した剣を覆った暴風の鞘が一瞬にして紐解かれ、正面を薙ぎ払う嵐の鉄槌と化した。

 一帯を玉座含めて薙ぎ払うような暴風の一撃は、しかし彼女の聖剣を即座に晒すことに他ならぬが―――とはいえ、あれが自分と同位の存在ならばそもそも射程を惑わすことに全く意味はない。むしろそれによる威力の減退こそが致命的だと即座に判断したが故の強烈な第二撃を叩き込むと同時、残留した風はアルトリアと各務・鏡の両名へ前進するに当たってのみ強力な加速の恩恵を与えるものとなる。
 残った風の残滓を踏み散らすようにして、魔力放出のブーストを乗せて騎士王は疾駆した。

 全く同じ表情ながら、熱<イロ>を宿さぬ獣の王へ。
 道理は同じながら、その善意の行き先が決定的に食い違った嵐の王を此処で討ち果たすべく、初動より最高潮の勢いで魔力を解き放てば、それによるジェット噴射じみた加速も相まって中距離を詰めるに必要な時間はほぼコンマ1秒にも満たない。
 そのまま接近すれば、両の腕で携えていた聖剣を、即座に振り上げるようにして足元から頭部へ。臨戦態勢となったにも関わらず、未だ超然とした立ち振る舞いを崩さぬ獅子王の呼吸を乱すべく、開幕からの全力突撃だ。

>獅子王、各務・鏡

1年前 No.381

各務・鏡 @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

【白い世界/各務・鏡】

戦端は切り開かれた。
各務の放った砲弾は頭部へと着弾。白煙が視界を包む。霧散してゆく煙を見つつ、少しは効いたかどうか……確かめようとしていた。しかし、そんな浅はかな考えは容易く綻びを見せる。
無傷。
そう、全くの無傷なのだ。強いていうのならば身につけていた兜にヒビを入れ、割っただけのこと。しかし、それだけではダメージになる筈が無い。隔絶された領域、質。全てが規格外。自分とはかけ離れた領域。それは黒の魔女を退けてしまうのではないかと、淡い可能性を抱いてしまうほどに。それを可能としているのが、神々しい輝きを放つ槍。
そして、同時に各務は、騎士王の狼狽を聞いた。直接会話したことはないものの、その武勇からして余程の事がなければ狼狽えるなど無いと思っていたのだが、つまり、あの槍は騎士王にとって「余程の事」なのだろう。
その余程の事――は、槍というよりは、目の前の獅子王の風貌の方が大きいのかもしれない。
……似ている?いや、あれは……!

そう、正しくそれは、対峙する騎士王と同じ顔。同じ双眸。同じ声。同じ髪。似ているなどという言葉で済ませられるものではなく――正真正銘の同一人物、と言わざるを得なかった。
かと言って、騎士王が戦意を失うわけでも無い。寧ろ、身に携えた聖剣を抜刀して構えている。それもそうだろう、と各務は分析する様に思った。あの獅子王のやり方は到底受け入れられるものではない。ましてや、それが(例え別の可能性としても)自分の所業というのであれば止めない道理はない。
それを裏付ける様に此方を一瞥してくる。その目ははっきりと、「後方を任せる」と向けられている。言葉を交わす余裕がないのはどちらも同じ。各務も承諾の意を込めた視線と頷きを向ける。よそ見をすれば即、死に繋がる。それが今の状況だ。

「さて……!」

滑る様に前に出る。先陣を切った騎士王の暴風の一撃を見、「おお…」と感嘆の声を漏らせば、その暴風の一撃によって齎された恩恵を受ける。その追風の加速を以って、白の騎士は飛翔する。ディカイオシュネは全高6mにも及ぶ大剣だ。剣戟を交わすにしても、一対一でなければ邪魔としか言いようがない。
勿論、質の話では騎士王の方が上だ。差はあれど、自分が剣戟を行うよりかは適切といえる。となれば自分がすることは砲撃による支援であり、一瞥された際に向けられた視線からも、そう行動するのが適切だ。
自由に、とはいかない。それが死に直結するからだ。

飛翔した各務は、全力で斬りかかった騎士王に合わせてディカイオシュネの切っ先を向ける。再び外装が展開され、砲撃用の銃身が露わになる。それを、二発。立て続けに発車する。それは獅子王の後方。直撃させるわけでなく、逃げ場を奪う。周りを囲み、擬似的に袋小路に追い詰めるために。
そして――――あの二人の戦いを持って、杖を召喚するための力を蓄えなくてはならない。

>>獅子王、アルトリア

1年前 No.382

鋼鉄探偵 @recruit ★wpcVrEAf3F_M0e

【灼熱の世界/柴来人】

 確かに───俺の持つ攻撃手段では、奴に傷を負わせることは先ず無理だろう。
 理由としては先ず、隔絶したスペックの差があると言っていい。
 こんな世界に飛ばされる直前まで相対していたレッドジャガーと呼ばれる機Χが、自身を遥かに越えた性能を持っていて、それ故に傷一つ負わせられなかったように。
 その上この世界に敷かれた法則───意志力によって限界を越えた力を引きだす事が可能な概念、此れがよりあの超機とその使い手を厄介な存在へと押し上げている。
 戦いたいから戦い、潰したいから潰す。其処に大義名分といったような小賢しい思考は一切ない。ある意味、自分の中の正義に迷いを持たない機械以上に純粋な存在。
 純粋な性能差、戦闘に対する考えの違いと其処から生じる力───相乗した二つ。此れが在る限り、"来人"の侭の彼ではまともにダメージを与える事は出来ないだろう。

 ・・ ・・・・・・・・・・・・・
 そう、俺の装備じゃあ奴を倒せない。


 なら勝率は零かと訊かれれば───断じて否だ。

 悪の超人とその超人が駆るマシーン。そんな物に負けるなど、例え此処が異世界であろうと認めん。

 切欠を作ったのはあの花弁型の機Χだ。
 此方を助けようという考えがあったのか、それとも偶然そういう風になったのか。
 どちらでも構わん。あのまま放たれていた光線に身を焼かれればどうなっていたかを予想すれば、奴のアシストは最高のタイミングで行われている。
 放った弾丸も上手く事を成した。勿論、この機を逃さずに来人はもう一度ブースターを吹かせて疾走を開始する。
 全てはあのスーパーロボットと其れに乗る小僧に、一泡吹かせてやる為。重要なのは位置取りだ。適当に仕掛けて、外しては意味がない。何せ一度きりの策だ、見切られれば次はないだろう。

 更に運が良いことに、地獄の餓鬼は眼前の敵を相手にするのに集中し始めていた。
 鉄の皇帝が野獣の如き荒々しさで攻め立てるなら、宙を征く大輪の花は手数と機械的正確さとで渡り合い、拮抗している。
 故に無視が出来ない。来人の事を忘れているのかどうかは兎も角、優先順位としてダメージを与えて来た敵をより高い物とするのは自然な事。
 そう、だからこそ今が機だ。短い間だろうが、それでも充分。此処で来人は相手の背後を取り、そして───反撃に出た。

 来人の修復された右腕が、関節部から折れて開かれる。
 空洞から撃ち出されるのは施設での戦闘の時同様に、高火力のミサイルだ。
 一発、二発、三発───それらを躊躇なく放つ。然しそれは眼前のスーパーロボット目掛けて放たれたモノではない。

 ───マグマ。
 そう、来人の狙いは辺りそこら中で音を立てて湧き、支配するようにして流れ出るこれ。
 あらゆる物質をその熱量で以て溶かして喰らう天然の災害、燃え滾る灼熱地獄を彩るマグマへと、何度も何度もミサイルを叩き込んでいるのだ。

 初手───奴が放った弾丸が溶鉱炉の如きマグマに入った瞬間、その他有象無象と同様に溶けていく様を、来人は見逃さなかった。

 確かに、そう確かに柴来人の力ではあれを破壊する事は出来ない。
 しかしこれならば? 大自然の脅威を利用するのであればどうだ。
 撃ち込んだミサイルは爆発し、世界を燃やし尽すマグマを無理矢理力付くで噴き上がらせて、夢中になって戦う奴の背後から押し寄せる──!


>>キバ、カロッゾ

1年前 No.383

鏡飛彩 @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【方舟(ノア)/居住区(病院)/鏡飛彩】

鏡飛彩はどこまでも『医者』である男だ。仮面ライダーブレイブとしての力も医療器具等の延長と捉えている。
飛彩がガエリオを評価しているように、ガエリオも飛彩を評価しているのだ。
そもそも、ガエリオはレジスタンス連中には苛烈で嫌悪感を抱くが新世界派――すなわち仲間には聞き分けも面倒見もいいため評判はよく、飛彩もまたそんな彼をよく思っている人物の一人だ。

飛彩はガエリオが一通り語り終えるまで、口を挟まず彼の話を聞いていた。
ガエリオ自身はノアの掲げる世界自体は賛成であり、喜ばしいものであると考えている――と思っていたがどうやら彼にも先の戦いで疑念が生じたらしい。先の戦いで戦ったレジスタンスの者との顛末、そしてノアがとった行動。

「お前と戦った者の最期が自爆だというのは記録で閲覧した。
そいつの自爆のおかげで傷を負って担ぎ込まれたのはお前以外にもいたからな
やはり、ボードウィンから見ても理解し難い奴だったようだな」

ガエリオはそこで何かに気付いたかのように言葉を続け、そこで飛彩同じ疑問を覚える。

「確かに妙だな…
非武装で平和維持は不可能だ。平和を守るためには、何かしら武力は必要になる。
使わない、もしくは使えない理由があったのか…?
場合によってはノアへの疑問が伝播していきそうなものだが」

幾ら平和を謳おうが武力は絶対に必要だ。そうしないと有事の際、何も護れはしないから。ノアだってそれはわかっているはずだ。
ノアと目指す新世界、その正体は一体何なのだろう。

>ガエリオ

1年前 No.384

シングレン @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【滅んだ世界/シングレン・シェルブリット(Level4→レベル5)】

シングレンの鉄砲水が、土方の火砲が、ダインスレイフに襲い掛かる。
更に、付け加えるならば新たな種類の攻撃がまた一つ。それは高出力の荷電粒子砲だ。
直接見るのは始めてたがシングレンはその男の話くらいは聞き及んでいる。

「イヴァン・ストリゴイか。
ここはどうやら血気盛んな連中が集まるような因果があるらしいな」

戦争狂、イヴァン・ストリゴイ。参戦するのであれば歓迎だ。余裕と冷静さをシングレンは保っているものの、シングレンはダインスレイフを一切侮ってはいない。この男と戦うのに、戦力が多すぎるということなどあり得ない。
助けてやるつもりもないが使える限りは周りの連中に働いてもらおうではないか。
ダインスレイフは篭手剣と剣鱗で鉄砲水に応戦するが土方の火砲に腕を飛ばされる。

位階の違いこそあれど、両の腕を失ったダインスレイフは明らかに不利――のはずなのだがシングレンにはわかっていた。
ダインスレイフがまだ『底』を見せていないことに。

次の瞬間だ。ダインスレイフの口が詠唱を唄い始めた。

「貴様ら、ここからは一瞬たりとも気を抜くなよ。
抜いた奴から死ぬぞ」

冷笑的な調子でシングレンは周りの土方とイヴァンに警告を飛ばしながら備える。
紡がれる詠唱は次第にダインスレイフの力を高めていき、魔剣が鞘からその刀身を露わにしていく。
しかし、それが完全に抜かれる前にイヴァンの荷電粒子砲がダインスレイフの半身を分断させた――のだが邪竜はそれでも止まらない。そこに更に土方の刀が飛んでくるがダインスレイフを止めるどころか『刀の方が』止められていた。

「それが、37回の肉体改造の賜物か、邪竜よ!!」

詠唱が終わる。するとどうだ、分断されたダインスレイフの身体がひとりでに結合し、あっという間に戦端が開かれる前の状態に戻ってしまったではないか。
子供が玩具を自慢するようにダインスレイフは自らの力を誇らしげに語る。
再度襲い掛かるは剣鱗の津波。シングレンもまたこの世界における自らの位階を強引に引き上げ、滅亡の剣に答える。

「クハハッ!自慢されっぱなしは面白くないな!
ではこちらも見せてやろう、海竜の力をな!」

シングレンの周囲の波濤の勢いが更に増す。荒れ狂う激流の中で海竜が邪竜に牙を剥く。

「《真戦陣劫火―――蛟》」

瞬間、シングレンの周囲の波濤から多数の巨大な水の刃が放たれ、剣鱗とぶつかり合う。『真戦陣』、それはシングレンが編み出した機竜のエネルギーと神装を完全に支配下に置き、その力を一点集中して放つ絶技。同時に水の壁でダメージを軽減しながらシングレンは更に水を操作する。

シングレンは水流を今度は上空に放ち、それをダインスレイフの頭上からまるで中空に滝が生まれたかのように叩きつける。

>ダインスレイフ、土方、イヴァン

1年前 No.385

イヴァン @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【滅んだ世界/イヴァン・ストリゴイ(LV3→4)】

「ク――ハハハハハ! その結果がこれかッ!! 最高だぜ戦友ゥ!!!」

 三十七回もの、臨死するほどの身体改造。その果てに得た、魔竜と呼ぶにふさわしい超常の再生能力を目の当たりにして、イヴァンは感動のままに叫んでいた。
 今抜き放たれる魔剣。それを前にしてイヴァンは一切の怯懦を抱くことはなかった。相手の在り方があまりに輝かしく見えて、興奮が止まらないのだ。包帯に包まれた貌に覗く、紅い瞳が爛々と燃え滾る。まるでそれは英雄に憧れる少年の如き純真さであり、紛うことなき狂気に他ならぬ。
 傍らの海王竜の戦士も、恐れることなく檄を飛ばす。実に頼もしい、英雄の如き在り様に、イヴァンの心は強く打たれる。

「アイサー、言われるまでもねぇぜ。
 これで全員ハンデなしってわけだ。思う存分食らい合おうぜェ、戦友!」

 己の左右から迫る断崖絶壁、大地の牙を前に、イヴァンは今一度宣誓する。
 そも英雄とは何か。英雄の強さとは何か。
 天地乾坤へ向けて告げるだけの、英雄たる自負とはいったい何だ?
 不屈の闘志? 否。
 不撓の決意? 否。
 誇るべきもの、護るべきもの、そのいずれとも異なっている。
 その答えは……

「愚問だよなァそんなこと! 男の強さとはッ、心の強さとはッ、古今東西いつでもどこでも変わらねぇ!
   ・・・・・・・・・・・・・・
 ――己が抱えた闇と向き合える勇気ッ! それこそが、英雄に相応しき精神の資質ってやつだろうがァ!!
 だからァッ――」

 同時に概念強化が発動する。イヴァンの意志力に呼応して、その変化に耐えられるよう自らの格を一段階引き上げる。
 概念強化による負荷と影装による心的負荷。その双方がイヴァンに襲い掛かることとなる。確実にイヴァンの命を削る行為だが、既にエンジンのかかった彼にはそんな道理など知ったことではない。
 己が英雄たらんと欲し、求められるのであれば応えるが筋であろう。
 【LV3→LV4/5→4P】

「出てこいや俺の怪物ッッ! 穢らわしい無意識の底なし沼からよォーーッ!!」


       イド
《認証――汝が陰我を問う》

     キーボイス
 無機質な起動音が響く。
 それはどこかの世界で機神と呼ばれた男の声。何処までも人の強さを信じたが故に、人の強さを抉り出す永久機関(ごうもんきぐ)を創り出した科学者の声。
 男は奇遇にも、本気を謳う邪龍と同じく『人の強さ』を妄信し、それを作り世に放った。だからこそ、これは単なる都合のいい強化アイテムなどでは断じてない。
 同時にイヴァンの全身から聖痕現象(スティグマ)が発現する。いたるところから血が噴き出し、裂傷が内側から発生する。


『人の御業は栄光を失い、戦場に充ちるは醜き真実。

 英雄は斃れ星は墜ち、不滅なるは只心なき機械』


 永久機関とは名前に反して人の精神性という有限性がある。だがこれは、それを信じなかった科学者の産物であり、故にこそ人の底を抉り出す為に所有者の心の闇を引き摺り出す。
 己が輝かしいと感じたそれを、真っ向から否定する言葉。それを自ら引き出し形とする……影装位階とは、その責め苦に耐え切らねば起動する事さえできない。


『されば我、人の御業を擲ち醜き不滅を勝ち取らん。

 我欲するは栄光なき勝利――我は墜ちたる英雄なり』

 精神に潜む猛毒を、しかし真実己の一部であると認めた先に在る力。二律背反の宣誓。
 それを終えることで、機神の時計は所有者の覚悟を認め、新たな力を授ける。


《受諾――素粒子生成》

《影装展開開始》


 瞬間、イヴァンの胸中に眠れる永久機関が稲光さえ纏って回転する。生成される心装素粒子が身体髪膚より発され、瞬時にイヴァンの全身を変貌させる。
    ・・
 そう、全身だ。それは人型であることの放棄、人間であることの否定である。彼は闘うために、人であることを棄てる選択をした。

『――心装ォッ』

 素粒子の霧が晴れる。
 此処に、イヴァンの闇が紐解かれる。



 、  、  、 ア レ ク ニ ド・ チ ャ リ オ ッ ト
  、 「影装・《  鋼 脚 戦 車  》ォ!!!」



 ――それは醜く、戦士の誇りとは無縁のひたすら武骨な機獣の姿をしていた。
 イヴァンの姿は、顔を残して原形をとどめていない。全身が鋼と化し、鋼の爪を持つ四本の腕と四本の脚を持つ鋼の大蜘蛛と化していた。
 戦場に英雄はなく、強者にヒトの貌は不要であるという苛立ち。
 愛した世界を駆け抜けるための、効率性を重視した究極系。それは鋼で作られた蜘蛛。
 高機動性を手にした、多脚戦車であった。

 迫る竜鱗、天変地異を引き起こす大地の波濤のうち、イヴァンに向かう一側面を眩い破滅の光が消し飛ばす。先までの一方向へ向けられた光と異なり、多方面に拡散して遍くすべてを蒸発させる。
 影装で追加された副装備(サブウェポン)、三叉に分かれた小型荷電粒子砲。拡散と集束を状況に応じて切り替えられる蜘蛛の腕。只でさえ超熱量を誇る荷電粒子を拡散放射する過剰火力が、双方から迫る大地の竜鱗のうち、片方の大部分を消滅させていた。
 だが無論、《本気》を出した邪龍を前にしては一度ですべてを焼き尽くすことは不可能。一万度という熱量の破壊光を、知ったことかとばかりに無尽蔵な大地の鱗で飲み込まんと迫り続ける。それで尚、蒸発させきれなかった分は――
 四脚となった鋼の脚が一息に十数メートルを飛び越えて回避する。強化された四脚は、このように肥大化し重量面でも軽快な動きを可能とし、密室空間に於いて壁や天井を利用した三次元機動が可能となる。人の姿を棄てたが故に得た、魔獣としての力であった。

「ハッハァ、どうだァ!! 人間のカタチを捨てるってだけで、こんなことも出来るんだぜェ……くそったれがァッ!」

 さらに上空から、影装の展開によって大幅に出力の増加した左腕の主砲、荷電粒子砲を放出する。他のすべての要素を擲ち、攻撃性だけにひたすら特化した魔砲は位階差さえも覆す超火力の息吹。
 それはシングレンの起こした滝に紛れる形で内へ入り、相手の虚を突くように大水の中からダインスレイフを狙い撃つ。
 先のシングレンの攻撃を滝(カタラクト)とするなら、これは天より降り注ぐ雷霆。
 大渦と雷が荒れ狂う様はまさしく嵐。
 大地が隆起し、潮が逆巻き、雷が降り注ぐ。
 英雄譚と口にしたものの、それは開幕早々にして神話の再現とさえ言えた。邪龍(ファブニル)、海竜(リヴァイアサン)、複合獣(キマイラ)の、神話の怪物が紡ぐ狂騒曲。
 まさしく鉄風雷日の地獄の様相を呈していながらも、イヴァンの貌に浮かぶものは掛け値なしの笑みであった。
 歓喜していた。狂喜しているのだ。この時代に、これほどの漢と出逢えた至福を、今この瞬間にも。
 影装の展開によって内に生じた負の念も、この歓喜の前では瑣末事。
 彼は愛している、戦争を。戦場を。その中で懸命に、本気で生きる英雄(ほんもの)を。
 敬愛すべき戦友たる邪龍、共に戦う戦友。
 嗚呼、今己は――紛れもなく楽土の渦中にいる。ならばこそ燃やし尽くし、共に英雄となろう。万感の念を込めて、己の魂を削りながら、歓喜のままにイヴァンは戦場を駆け抜ける。

>ダインスレイフ、シングレン、土方

1年前 No.386

鉄仮面 @kyouzin ★XC6leNwSoH_jCr

【灼熱の世界/ラフレシア(カロッゾ・ロナ)+バグ】

無数のバグが背後から飛来しても、相手は十分にそれに対処してみせる。 初撃に関しては当たった物の、それ以降はまたもやバグを足場として回避行動を取り、回避の難しい追尾してくるバグたちを往なし、さらにそれでも尚こちらを視界に捕らえ続け、テンタクラーロッドによる一斉射撃にも大槍で迎撃。
普通のパイロットにはとてもではないができぬ芸当だ。 やはり、異世界の戦力というのも侮れぬ、そう心底カロッゾは思いながらも、その攻撃の手を緩めない、全力攻撃でなければ、注意を引くなどできる訳がない。

だが、相手は上手く飛び上がって動きを止めてくれた、おそらく相手は高い機動力をもつが空戦機ではない、となれば、おそらく飛んでいる間は重力に従って落ちるか、あるいはブースターで滞空してもさほど瞬間的に加速する事は出来ないだろう。
となれば……やってくれるならば今だな。

そう思った絶好のタイミングで、味方が仕掛けた。
勿論、それに気をとられる形で振り向いたキバに対しても、容赦なくバグは襲い掛かり、その視界の穴に滑り込むように、回転刃によってダメージを蓄積させる。
黒い雷撃はマシンガンの直撃によって位置を逸らされ、大地に広がるマグマを刺激するという結果に終わり、相手はこれ以上は不味いと判断したのか、雷撃を放っていた機械を格納してから急降下、地面に降りる。

「地上に降りたか……本来の機動力がまた使われるが、それよりも、次の攻撃の準備と考えるのが自然、か」

その予想通りに、敵は口から竜巻のような攻撃を放った、だが、それを無駄に回避しようとする訳ではない。
というより、ラフレシアの機動力は高い物ではあるが、何せ巨体が巨体だ、こういった攻撃は早々回避できる物ではないのだ、なのでカロッゾは、ラフレシアの触手を伸ばして、触手だけは敵の攻撃の範囲外から強引に外す。

そして……その触手の伸ばした先は、それぞれが別々で、ちょうど、多数の方向からキバに攻撃を加えられるような状態であった。

敵の攻撃がラフレシアに直撃する、流石にそれで吹き飛ばされる訳ではないが、その際に与えられたダメージはかなりの物で、そもそも「想定しない攻撃」故に、装甲もあまり役立っていない。
そのため、ラフレシアにはばちばちと漏電のような物が見受けられ、また、一部の装甲が引き剥がされていると言う状態であった。

だが……極端な話にはなるが殺られる前に殺せば、何の問題もない。

「ほう……よかろう、支援するとしよう」

その時、マグマが吹き上がる、どうやら、味方がこのために動いていたようだ。
ならば、こちらのやる事は逃げ道を塞ぐ事だ、与えられるダメージを考えるならば、テンタクラーロッドの損出も仕方がない事だ。

そう考え、展開していたテンタクラーロッドを絡み付けるように敵に向かわせる。 あわよくば先端のチェーンソーで敵を引き裂く目論見だが、やはり本命はマグマを直撃させるための陽動だ。

>キバ 柴来人

1年前 No.387

土方歳三 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【滅んだ世界/土方歳三(Lv3⇒Lv4/4P⇒3P)】

「―――おう、イヴァンか。丁度良いとこに来た、アレにゃ手前の火力が要る」

 轟、と音を立て、雷霆が戦場の空気を引き千切る。
 現れた第三者、悪竜に鋼の剣を突き立てんとする勇者の姿―――勇者と呼ぶには聊か以上に闘争に狂ったジャンキーとしての性質が強かろう鋼装を纏う移動砲台、イヴァン・ストリゴイのエントリーが状況を組み替えた。
 彼の特異性はその粒子砲という火力一辺倒の兵器にこそある。ある意味ジャイアントキリングを成し遂げるにはうってつけであり、海竜や狂戦士と比較しても顕色はなかったどころか、その一点においては同位階どころか多少の格上すら食い潰すだろう。
 空から砲撃じみた弾丸の嵐を捻じ込む土方は、こと戦場の把握という点においては狂戦士にあるまじき冷静さと視野の広さを有している。戦場を前進し続けることしか出来ないが、戦場には何処までも適応できる人型のかいぶつこそがこの男だ。その介入が、邪竜にして滅亡剣、文明世界の侵略者ダインスレイフとの戦力差を埋めるに適した存在であるということは言うまでもなかった。
 最も繰り返すようで難だが、それは息一つ乱れぬ連携が完成するが故のことではない。
 土方の性根を知っている隊士たちならば話は違うだろうが彼は前進しかしない。海竜(リヴァイアサン)を駆るシングレンは只唯一と呼ぶべき強さを以て進軍する孤高の人物だ。いま現れたイヴァンならば戦場の思考を読んだ行動も出来ようが、そもそもからして彼も我は強い―――というより、その援軍であるイヴァン・ストリゴイその人がこの乱戦じみた有様を歓迎しているのだ。
 これで完全にこの戦闘の基本形態は完成したと、そう言っても過言ではない。

 とはいえ数の利とは怪物を狩り殺すにあたっては最も合理的であり、尚且つ有用なファクターだ―――それを証明するが如くシングレンの弾幕に合わせた長銃の射撃数発、それが確かに邪竜の腕を叩き壊すことに成功した。
 滅亡剣がいかに人外じみた膂力とスペックを有していようが、人型である以上両腕の損壊は致命的だろう。あらゆる物質を剣麟のように整形させる能力こそ健在だろうが、これで間違いなく敵対者の戦力は削ぎ落とせるというわけだ。格上の相手だからこそ確実に部位と戦力を減らし、確実に勝利を収めに掛かる、土方は戦闘者だが傾奇者ではないのだから、狙いの付け方という点に関してはきわめて合理的な側面を持っていた。

 あとは首を断つだけ。人であるならば、例え英雄殺しの邪竜でさえ討って見せよう。
 対するダインスレイフ、本気のただ二文字による、セオリーを諸共放棄した覚醒で以て迎え撃つ。
 長く紡がれた詠唱、始動する最凶の邪竜戦記が幕開けの予兆。
 美しき絵空事、輝かしい英雄譚を、しかしその咢で喰らい尽くすが如き星の光。
 鼓動する殺意を間近で浴びておきながら、土方歳三は“知るか”と柳のように殺意を受け流し、その首を情け容赦なく断とうとした。………そう、断とうとしたのだ、間違いなく。事実これが滅亡剣でなければ、殺害かあるいは重傷に持ち込めたに違いない。

 ………だが。しかし、それでも。

「―――ッ、チィ………!?」

 滅亡剣、未だ健在。
 数がどうだの、セオリーがどうだの。そんな人間の理屈で邪竜は止まらない。
 英雄殺しの滅亡剣は、そんな本気とはかけ離れた賢しい理論を秒で食い潰す。
 狂戦士の膂力と技巧を併せ持つ必殺の剣戟は、竜の首を叩き落とすには及ばない。首筋を引き裂いたにも関わらず、刃はダインスレイフの体内で停止した―――そして事此処に至って、彼が吹聴していた改造が紛れもない事実であることを証明する。

「なるほど、フカシ通りのカラクリ細工か………!」

 そう、土方歳三が切り裂いたのは鉄だ。
 人間の人体に入るはずのないものは、しかしダインスレイフが彼の知識では与り知らぬ改造人間だということを証明する。
 ………その内側に潜むもの、それは本気の執念で追い縋り、その身体に納めたありとあらゆる技術(たから)に等しい。骨格、臓器、果てはもしや心臓までもか―――冗談のような改造回数で以て不要なパーツを全て強いパーツに入れ替えたその男は、己の星をさらけ出したことも相まって紛れもない人造機竜(ファヴニル)の名を欲しいままにしていた。
 真っ当な人間が見れば間違いなく“いかれている”と断言できる有り様だが、それを言えばこの場の大抵の人間はそうした性質を持っている。端的に言って目的方向に進む分の妥協がない連中ばかりで、だからこそ土方はその異常性を“難敵”以上には認識しなかった。それは即ち思考に余計な停止を挟まないということであり、続く一手をラグなく導き出せる戦士としての適性を存分に振るえるという意味だ。

「ッハ、どこの誰に向けて言ってやがる海竜(リヴァイアサン)!
 俺は止まらねえ、勝つまでだ………! そうだ、まだ終わってねえッ」

 故に飛んで来た激に不敵な笑みすら浮かべて応じ、零距離から進撃する邪竜の咢に応答する。
 不埒な侵入者を食い潰さんとする邪竜に対し、背後に応ずるは海を統べる魔竜と合成獣―――神話もかくやの有り様に巻き込まれた戦鬼は、それでも闘志を微塵も失わない。彼の狂化とは圧倒的なほどに、その一点にだけ向いている。
 止まらない、勝つまでは終わらない。勝つまではなんとしても死なぬ。
 執念じみた感情は、この戦場と概念という理屈の恩恵を最大限受けるが故に―――。

「ああそうだ、手前だ邪竜とやら! さっきから一人で好き勝手に―――」
「気持ちよくなってんじゃねぇぞォ―――ッ!」

 人造機竜、極まった格上の狂気/本気に対して、同じような理屈で迎撃した。
 豪速で迫りくる必殺の篭手剣を前に、もう一度概念をかち上げてまずは剣を引き抜く―――だけではない。彼の手に構えられたもう一つの武器は長銃、そして男という人種には拳と脚という原始的な武装ないし言語形態が存在する。
 それを二つ揃って用い、零距離からの射撃と、命中するならば蹴撃を打ち込みながらの高速離脱。
 長銃から限界を越えた魔力が弾丸として放出され、炎華を散らしつつ至近距離のレンジを一旦引き剥がす。別箇所から第二第三の撃として迫りくる雷霆の一撃、粒子砲の閃光から逃れつつの、原始的肉弾戦を交えた、さる魔王にやったものと同じ超攻撃的な仕切り直しだが―――それよりも僅かにダインスレイフの方が早い、篭手剣の一撃が胴体を掠め、掠めたとは思えぬ傷と血飛沫が吹き上がる。

 だが―――その程度で男の前進は止まらない。
 至近距離のレンジからの引き剥がし、再度の突撃までの微かな猶予に彼が見せた鬼気迫る表情、
 それは微塵も闘志が失われていないということの証左であり………戦鬼が未だに健在という事実の証明だ。

>ダインスレイフ、シングレン、イヴァン

1年前 No.388

システィーナ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r

【荒れ果てた世界/システィーナ=フィーベル(Lv2→Lv3/8P→7P)】

 前に躍り出た彼女は、しかし一歩だけ動きが遅れる。
 当然のことながら、彼女は集団戦闘のセオリーも、ましてやこんな規格外の怪物との戦闘における定石を頭に叩き込んでいるわけではないからだ。歩みを止めずにいられたのはあくまでも、捨て置くわけにはいかない二人の存在が居たが故のことだ。
 そのうえで、阿修羅の如き魔人の視界は自分には向いていない。
 つまるところ今なら引き返せるわけだが、再度の足を止める猶予などもう振り切った後だ。彼女はこの場で初めて顔を合わせた少女の言葉に耳を傾けた―――同じ程度の年頃だろうに、そこに存在するのは明確な戦闘経験の違いだ。そして同時に彼女が語るのは、唯一自軍の中で一人位階を一歩上に出した巴マミを主力に据えること。理路整然とした、彼女はまず意識を傾ける。
 他人の言葉に流れて、思考を寄せるというのはある意味では思考停止であるとは言えたが、そもそもシスティーナ単体にこの武の極地へ立ち向かうだけの度胸はない。事前に詠唱しておいた黒魔改《ラピッド・ストリーム》の詠唱で、マミたちの居る方向への一旦の移動を合わせて行いつつ、彼女は自分のマナがカオス状態からロウ状態に戻って来るのを見計らってから、二度目の詠唱を開始した。


「―――《その剣に光在れ》ッ!」


 むりやりそれをロウ状態に引き戻してから、全体に纏めて強化(エンチャント)の魔術を施す。

 もともとの魔力量ではやったところで微力と言える強化ではあるが、レベルの瞬間的な増加による保有魔力の増大も当てにすればその効果はそれ相応のものになる。
 要するに先制して攻撃を叩き込んだマリアと、そこに肩を並べた螢が保有する武器・および攻撃の威力強化だ。そして、以後からはマミが行う攻撃にも一定の強化が乗る。真っ向から打ち合えるのかと言われるとそれは否だが、補正の積み重ねに意味がないとも言えないだろう。
 どのみち後衛からの魔術連発が主戦術になるシスティーナだが、四者の中では恐らく総合的な火力に劣るだろうことは分かっていたつもりだった。これで自分が軍用の攻性呪文(アサルト・スペル)でも網羅していれば話は別だが、そうではないのだから机上の空論だ。故に彼女は自分の役割を後方支援と当て嵌めて行動することにした。

「………知らないわよそんな理屈、知ってるわけないじゃない。
 お生憎さま、こんなふうに戦ったことなんてないもの―――だけど」

 同時に飛んで来る武神の叱咤、なるほど、ぐうの音も出ない程度に当然の理屈だ。
 先手を打たずに受動的に構えていたのならば、象が蟻を踏み潰すように易々と殺されるだけだ。
 その点は何処かに脅えがあることを否定出来ない彼女からすればなるほど耳の痛い話だが、そもそも戦う人間の理屈など彼女にとっては極めてどうでも良かった。自分はそういう人間ではないし、向いていないことを自覚しているからだ。
 だから―――その上で、戦うと決めたのだから。凛と、精一杯前を向いて。

「―――死にたくも、見捨てたくもないから、今此処にいるのよ!」
「《我は射手・原初の力よ・我が指先に集え》―――ッ!」

 吼えると同時に、左方より、十発程度の魔力による光弾を精製して投射する。
 単発単発はそうでもないが、連射される弾丸(バレット)の乱射は確実に手傷を負わせるだろうと同時に、両者が狙った攻撃先からやや外した地点を狙っていた―――要するに誤射の危険性を考慮した上で、尚且つ注意を振り撒く必要がある程度の遠距離魔術狙撃だ。マリアが閃光を解き放ったのは相手の右方、螢が飛び込んだのは相手の頭上。これで丁度三方面からの仕掛けになる。

 ―――そのくらいで倒れるとは思えない辺りが怖いところだが、だからこそ考えるのは“次”だ。

 なにをしてくるのか、何が有効なのか。
 頭で考える時間はそうないのだから、最適解を探し続けるより他にない。

>極武神ラーヴァナ、巴マミ、マリア、櫻井螢

1年前 No.389

ガエリオ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_R9r


【方舟(ノア)/居住区(病院)/ガエリオ・ボードウィン】

 そう、おかしい。
 ノアの理屈は確かに正しいし、彼女の作る世界には武力は必要ないのだろう。
 だがそれまでは話が別だ。叛逆的な勢力がこのバベルの内外には幾つも転がっていて、それこそ極端な例なのだろうが“彼女”のように此方を悪と断じて、すべてを燃やし尽くすまで止まらないような人種だって存在する。
 結局のところ、それらと対話をするのは不可能だ。ガエリオはそう弁えていた。

「ああいう連中は話し合えない。自分の中で理屈が決まってる“イカれ”なんだよ。
 俺がそう思うだけで、他のヤツならなんとかなったのかも知れんが………ああ、ともかくだ」

 ガエリオの言葉になにか疑問を持ったのか。
 飛彩の反応に、“な? おかしいだろ?”とガエリオは普段の調子で冗談っぽく言い返す。

「最終的には必要ないとしてもだ、今この時点で武力は必要なんだよ。理想だけじゃ何も出来ん。
 ノアが動けなかった………例えば奪われた概念核絡みのなにかがあったとして、その間を俺達に当て込んだ。
 そう考えたらある程度はケリが付くが、あくまである程度だ。これですら疑問が残っちまう」

 例えば、概念の創造のためにノアが動けないとすればどうだろうか。
 それならば、新世界派という面々を維持と防衛に回していたことも合点が行く。自身の戦力を振るわなかったことも理解が及ぶ。動けないのだから代わりに自分達を当て込んだ、それでノアの戦力を振るえる状態まで治ったから動き出した。
 こう考えるならば問題はない―――だが、それでもある程度だ。

「10分もすれば味方は全員撤退できると信頼していたのかね。まあ、ここは良い。
 何故自分達に追撃命令を出さない? レジスタンスの拠点を突き止められると口にしたのにも関わらず」

 口にしただけでこのくらいだ。
 敵は絶対殲滅するべし―――ガエリオがそうした思想を持っていることは間違いないが、しかし位相空間の補足が出来るにも関わらず、後はもう何もしなくてもよいと言いたげなノアの行動は何を意味するものなのだろうか。
 もちろん、ガエリオは彼女の理想を信じている。ノアが目指す新世界は、多くの人間を救うだろう。
 それに手を貸すことこそ、戦士の義務だ。彼は自分の立場が軽いものではないことを理解し、軍人であることに誇りを以て向き合っているからこそ、そこに疑いの余地を挟むことはない。

「………まあ、流石にまだ俺は出れないんだが………。
 レジスタンスの鼠ども、そのスタンダードがアレなら、本気で俺は殲滅した方がいいと思ってる。
 だからこそ、そう思うわけだ。実際新しい世界を作ったって、そのままにしとくとなにするか分からんだろうし」

 そして、彼は基本敵には苛烈だ。ノアに対する疑問より、結局のところはそっちが優先する。とはいえ“もしも基本形がセリュー・ユビキタスのような手合いだらけなら”という前提を付けた辺り、ガエリオにも思うところがあった。
 そして、だからこそ、こうした疑問はふっと湧いてくるわけだ―――。

>鏡飛彩

1年前 No.390

獅子王 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★ukoRJzRfdG_R9r

【白い世界/獅子王アルトリア・ペンドラゴン(LV5/1P)】

 ついに明らかとなった獅子王の正体、それに臆することなく、騎士王と魔砲剣士が相対す。
 真っ向から否定されながらも、獅子王は変わらず涼しい顔で応えを返した。

「業腹だが同意見だな。私も貴様の貌を眺めていると、奇妙な感情が湧く」

 威風堂々たる風格を示しながら、迫る風の鉄槌に対して聖槍を奮う。
 荒れ狂う暴風に対して、獅子王もまたその身に纏いし風の精の加護を一閃と共に放った。
 同じく荒れ狂う風王結界の暴風が衝突し、同等同種の力がぶつかり合って相殺された。吹き抜ける強風に、煌びやかに輝ける金髪がなびいた。

「消え去るべきはおまえだ。
 遠い日の理想よ。人の幸福を知らぬままに人の幸福を祈った愚か者よ。
 おまえがなるべき姿は此方であった」

 真っ向から突撃する騎士王の姿を前に、王者の如き立ち振る舞いで聖槍を携え迎え撃つ。
 風王鉄槌によって加速した、迅疾極まる聖剣の一閃……その一閃を、横薙ぎに聖槍を振るうことで受け止めた。
 究極の宝具と、最強の聖剣。
 神の理の象徴と、人の理の象徴。
 その双方が衝突することで、轟然と途方もない魔力の火花が散った。
 無垢な白き世界を、目を灼くばかりの輝きがぶつかり合う。じりじりと両者の黄金の刃物がぶつかり合い、途方もない魔力が周囲をさざめかす。そうして互いの貌が、呼吸さえ届くばかりに近づいて鍔迫り合った。
 その中で、獅子王の瞳は揺れず、静謐を保ったまま淡々と語り続ける。

   、  ワタシ
「認めよう。《王》に人の心は理解らぬ。
 理解らぬが、その幸せを祈っている。
  、  、  ワタシ オマエ
 その点において獅子王と騎士王は同じモノの筈。

 故に私は選んだのだ。好きだから"そうすると決めた"。おまえたちを失うことが耐え難いから、そうすると決めた。
 ……そうだ。告白しよう。私はずっと、そうしたかった」


 それはまるで人であったころを回顧するような口振り。
 或いは女神に連なるもののみが持つ、遍く人々に向ける慈愛の情(アガペー)か。
 剣と槍、その魔力と魔力の壮絶な競り合いの末、落雷の音を思わせる途方もない金音を響かせて二人の王は弾かれる。


「おまえたちを愛している。おまえたちが大切だ。
 だから、おまえを失うことが耐えられない。
 私は人間に永遠を与えると決めた。後世に残すにふさわしい魂たち――
 悪を成さず、悪に触れても悪を知らず、善に飽きることなく、また善の自覚なきものたち。
この清き魂を集め、固定し、飼料とする
この先、どれ程の時間が詰まれようと、永遠に価値の変わらぬものとして、我が槍に収める」

 双方の間合いは二間、僅か一息で縮まる程の差であり。次は獅子王から打ち込みに突撃する。
 轟然たる槍の刺突(チャージ)。徒歩でありながら、風の精の力を借りずともこの速度。それだけでは終わらず、猛火の如き槍の連撃が畳みかけるように騎士王を襲う。
 本来格の差が開いている二者だが、真っ向から撃ちあえるのには二つの理由がある。
 一つは二人が同一人物であること。共に同一人物であるが故、互いの得物の勝手は食器を扱う如くに知悉している。相手がどのような手で攻め、またどのように護るかは、程度の差はあれお互いがお互いに熟知している。
 しかしそれだけでは足りない。双方の手の内が割れており、実力も伯仲しているならば、格の差という絶対的な法則が大きく聳え立つこととなる。共に奇を衒わず、相性など考慮せぬ万能型であるが故、地力の差が如実に露わになるのだ。
 その差を埋めるのが各務の援護射撃である。退路を囲うように射撃する各務の砲撃は、獅子王を少なからず圧迫していた。無論、獅子王に撤退の二字はないとはいえ、それは単なる猪突猛進ではない。攻めには緩急が必要であり、とくに槍という間合いを重視する得物を執る以上は距離を意識して立ち回らねばならない。わざわざ剣の間合いで斬り込んでいるのには、そうした側面があった。


「故にもはや止まらぬ。我は嵐の王、獅子王。この世の最果て、そのものである」


 宣言と共に、一際猛き一閃が放たれんとする。後退が許されぬ故に、前進することで相手を退かせる腹積もりなのだろう。獅子王に撤退はない。
 そして……大振りの一撃を放った、その最中に。外衣をはためかせながらも、傲岸なる獅子王の双眸が、ふと各務を捉えた。

「それが間違っていると。そう思うか?
 おまえもそう思うのか。魔砲剣士よ」

 そう問いを投げながら、空いた左手をゆらりと相手へ向けた。開かれた五指で、相手を指せば――そこに、凄まじい速度で光が集束した。
 ……それもただの光ではない。只指先に集まったというだけで、大地が震えあがる程の高出力の魔力。並の対軍宝具を百集めても届かないであろう、異常なまでの輝き。

「死すことの恐ろしさ。死ぬことの悍ましさ。定命なる身なればこそ実感することも多かろう。
 だがノアの人理焼却はそれすらない。
   、  ・・・・・・・
 そこには『死さえなくなる』。

 死のない新世界という訳ではない。あの所業は、成された段階で既知世界の一切の概念が残らない。
 そもそもからして、概念創造という法則は彼方が方舟と共に持ち出してきた産物だ。その時点で既知世界の浸食は始まっていた。分かるか。私が何もせずとも、世界にはとうに人理を転覆させる楔が深々と撃ち込まれていた」

 相手に真実の一端を告げながらも、獅子王の反撃が始まる。
 大熱量の指先から放たれたのは、大地を抉り取りながら直進する極大魔力の射撃であった。
 この獅子王は聖槍を握り続けたことで、聖槍と半ば同化している。言うなれば女神ロンゴミニアドと言うべき存在だ。聖槍から放たれる攻撃は彼女の全身どこからでも発射できる。

「これを基点として、本来異なった概念を共存させる新たな法を創り出す。そうすることで新世界は誕生するが――
 その所業は既に完成した絵画に上から新たな絵を記す行いに等しい。元あった絵は痕跡さえ残らない」

 魔光は相手を飲み込むほどの極太の破壊光と変じる。太陽のフレアを思わせる膨大な熱量を発して各務へと襲い掛かった。この程度でさえ、彼女の力の片鱗でしかない。
 その神々しい光を解き放ちながら、無表情のままに獅子王は真実を告げていく。

「おまえの価値観で言うなら、『物語を丸ごとなかったことにして、その上から新しい物語を始める』と言っていいだろう。
 果たして、そうして描かれた物語に過去の物語が介在する余地があるか?」

   、   ものがたり  、 ものがたり
 既に終わった 絵 本 が、次の 絵 本 に関わることはない。
 それらは別々の物語であり、それが上から塗り潰すということは……元あった物語は一切残る余地などないということに他ならぬ。
 それはともすれば、ただ滅びるより余程悍ましい終末。
 死後もない。信仰もない。後に継ぐべきものもない。あるのは掛け値なしの無であり、ただ一人ノアと、その真の乗組員たる■■■■の影が残るだけ。




 ノアの新世界とは、即ち……『新しい物語で、古い物語を一掃する』まさしく洪水神話の再現なのだ。



「理解したならば、疾く我が手に収まるがいい。
 真に絶望に打ちひしがれる、その前に」

 獅子王の声は相変わらず淡々として揺るがず、両者に向けて叩きつけられる。
>アルトリア、各務

1年前 No.391

ファヴニル・ダインスレイフ @faketanisi☆8cfl5/j3VDw ★XZOLTACqTn_jCr

【滅んだ世界/ファヴニル・ダインスレイフ】

「応ッ、見せろや海王竜! てめえの水を見せてみなァ、それごと食い破ってやるからよォッ!!」

 人造物に置き換えた骨格、心臓に埋め込まれたオリハルコン、特殊な才能を備えたダインスレイフという素体。達成されていた条件は一人の人間を魔の恒星へと変貌させ、一桁を下回る成功確率を溢れんばかりの本気でねじ伏せ成し遂げた。人から星への新生は英雄に並ぶ為の必須条件であるのだから、故にこそやれない筈はない。
 そうして降り立った人造機竜に、最初に覇を吠えたのはシングレン・シェルブリットであった。
 傷を付ければ付けた端から修復され、尚且つ相手は一切パフォーマンスを落とすことなく攻撃をし続けられるという悪夢じみた彼我の差に、海王竜が臆している様子は真実微塵も見られない。
 シングレンを囲む波濤がコマンドワードの発声と共に勢いを天井知らずに増幅させ、海竜は己が権能を解放する。
 押し寄せる剣の山を水刃と水壁で堰き止めながら、海王竜は天高き鉛の空へともの皆総てを押し流す水流を放った。

 それは宛ら、神の裁きを招く呼び水が如く。
 天を引き裂きながら邪竜へ降り注ぐのは、滝のそれを何倍にも強めたような蹂躙する大水流だ。金属の素体を持っていようが、この威力を前にしては常人離れした耐久力もさしたるアドバンテージにはならない。精々せめぎ合えて数秒。それ以降は、敢えなく見る影もないスクラップに変えられてしまう事だろう。

 そして――ダインスレイフが戦わねばならない敵はこれに加えて後二人。

 先に動いたのは刻鋼人機(イマジネイター)、戦場を駆ける勇猛なる戦士であった。
 意志力の駆動。己が元々持つ力と相俟った多重負荷は紛れもなくその生命を縮める行いだが、常人ならざる意志の力を秘めたる者にとって、力の代償とは総じて些事と決まっている。
 醜く、誇りや譽れといった概念とは只管無縁に思われる機獣へと、イヴァン・ストリゴイの姿が変化してゆく。
 深い情念、陰我の魔性。人としての原型を差し出して得た化生の姿と力は、先程までの彼とは比べ物にならない。
 ダインスレイフが放った第六位階の剣鱗を、イヴァンは網膜すら焼く勢いの破滅光で以って苦もなく消し飛ばした。
 たとえ全てを破れずとも、大部分を消せたなら十分大金星だ。それさえ成れば、鋼の蜘蛛はその命を繋ぐことが出来る。
 十数メートルにも匹敵する跳躍距離は星の異能者はおろか、魔星ですらも実現不能な領域だ。人の姿という枷を棄てることは、かくも大きな力を戦士へと齎すのか。

「良いぞ――素晴らしいッ! それでこそ人間、それでこそこの世に生きる価値がある!!」

 攻撃性だけに特化した科学の破滅光は最早二の位階差すら物ともしない。見事なりと、ダインスレイフは心の中で柏手を打ち鳴らす。この男もまた、素晴らしき本気の力で現実をねじ伏せてのけたのだ。
 新たなる神話か叙事詩の顕現めいた雷霆は、清浄の滝と合わさって光の邪竜を滅さんとする。
 歓喜しながら、狂喜しながら、己の魂すら闘志の炎の薪と焚べて咆哮する複合獣(キマイラ)。
 その存在を、光の亡者たるダインスレイフが愛さない筈はない。加え、至近から竜の魔殻へ牙を剥く漢がもう一人。

「ははははッ! なら手前も覚醒しろや、出来ねえとは言わさねえぞォォッ!!」

 新撰組――古代ならぬ近代、神ならぬ人の身で、遍く困難を踏破する市井より出た狂戦士。
 覚醒しろ、覚醒しろ。気合と根性さえ備わっているなら誰にでも道理を踏み潰すくらいのことは出来るのだから、勝負はそれを見せてから漸く始まるのだ。
 それは誰が聞いても無茶苦茶な、凡人の心を折るには十分過ぎる無理難題だが、成せぬ凡愚は此処には居ない。
 概念強化は最早呼吸。篭手剣の掠めた傷口からとても軽傷とは言い難い量の血潮を噴き出させながらも、位階を一つかち上げて反撃へと打って出る。
 肉体を過負荷で破損させる域の力がなければ到底抜け出せない拘束をぶち破り、試みるのは再度の突撃だ。先んじて放った魔力弾で零距離からダインスレイフの機体を破壊、おまけに隕石めいた蹴撃をヒットさせつつ高速離脱を実現しと、人の身に余る滅茶苦茶を成し遂げる事も忘れない。

 当たり前のようにその傷を修復しながら嗤う人造機竜へと、土方が取る手段は例の如く突撃だ。
 白目を剥き、鬼気に満ちた形相で空を軋ませながら、微塵の闘志も捨て去る事なく戦鬼は尚も猛り狂う。
 斯くして覆した戦況は再び元通り。ああ、ならばどうする。此処で散ってしまうのか、ファヴニル・ダインスレイフよ。


        .       ヒカリ        . おれ
「――いいや、まだだ。すべては英雄を超える為、今こそ邪竜は道理の鎖をぶち壊そう!」


 水を限界まで詰め込んだ風船が弾けるみたいに、爆発的な勢いでダインスレイフの足元の地面より剣鱗が出現。
 数は数千を超え数万に達し、空から来る天墜の水を喰らい殺さんと、蠢き嘶く鋼の鏃として天へ駆ける。過剰な出力の反動で脈やら内臓やらが一気にお釈迦になるが、まだ止まれない。まだ終われない。滝と入り混じりながら此方へ墜ちてくる滅びの息吹があるのだから、慢心等という概念は切って捨てる以外にない。
 ――ダインスレイフはイヴァンやシングレンのように、集束性に優れた非実体攻撃を持つ訳ではない。
 如何に位階差があろうと、根本の威力で遅れを取る剣鱗の力で五と四の位階の合成攻撃を打ち破るのは不可能だ。六まで概念を高めてしまった以上これ以上の伸び代はなく、故に取れる手段は本来回避以外にはない筈。

        .        .        .       ワイルドハント
 にも関わらず、邪竜の鱗がこの期に及んで尚勢いを増し、天より来る竜殺しの嵐を食い破らんとしているのは何故なのか。
 その答えは単純にして明快。
 ファヴニル・ダインスレイフという男は、世界の概念に頼るのではなく、己自身の純粋な力として覚醒現象を引き起こしているのである。
 そしてこれこそ、ダインスレイフが四柱の敵対者の一角として召喚された理由であった。システム化されていない、全く理屈のない覚醒。気合と根性、それ一つにより起こされる不条理。然しながら、嘗て見た英雄の光を喰らいたいと願うのならば、選ぶ一手は当然これ以外には有り得ない。

「クハハハハカカッ、おまえらは良いよなァ。つくづくそう思うぜ、最高だッ。
 人の可能性を、人生の価値を、この上なく尊重した勝者共。俺がこの命を燃やしてまで世界に刻みたかった、あるべき人の姿ってもんを揃いも揃って体現してやがる。
 誇りに思うから喰らってやる。俺という魔剣を、おまえらの臓腑に突き立ててやらァァァァッ――――!!!!」

 天から来る嵐が、"内側から弾け飛んだ"。
 地より伸びた剣林が水と破滅光の中に入り込み、其処で更に自己増殖を引き起こし、寄生虫が宿主の体を破るが如く、遂にその全体像を瓦解させる事に成功したのだ。
 窮屈な殻を破った剣は指向性を持った鏃となりて、イヴァン・シングレンの両名に三桁後半にも達そうかという埒外の速度で迫っていく。滅亡剣の出力は、既に十数秒前までのそれとてんで一致していない。

 至近の土方に対しては、突撃を正面から迎え撃たんと篭手剣を迸らせた。
 此方には、小細工は何もない。純粋な力任せ、されど出力で限界を超えているからこそ最も恐ろしい攻撃手段として幕末の鬼を襲う。鉄を引き裂くどころか、粉砕するレベルの剛力が其処には込められている。
 これぞ邪竜、英雄殺しの滅亡剣。光の亡者と呼ばれる人種の真髄。
 度重なる肉体の過剰駆動で内臓は心臓を除き全損、皮膚や鋼鉄に置き換えた筋肉が物理的にひび割れて鮮血を噴き出させているが、知った事ではない。
 傷は癒えるし、そうでなくとも振り返るべきものではないのだから。希求するは只勝利――煌めく栄誉と惨禍のみである。


>イヴァン、シングレン、土方

1年前 No.392

キバ @mintiaz☆Gh5HfK9Wyzo6 ★h3SZ81NMLL_cck

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1年前 No.393

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