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  君といた記憶 

 ( 感動小説投稿城 )
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紗憂@nanairo ★4pn438OG.oU







   笑っていた

   君の笑顔を見てきたから.





   泣いていた

   君の涙を見てきたから.







   俺はいつも君のすべてを見てきたから、

   誰よりも君のことを知っている.

   君が辛いとき、傍に居てあげることができたから.



  
   焦ることもあったけど、

   隣で笑ったり泣いたり怒ったり

   君のすべてと俺のすべてを重ねてきた.





   これからもきっと、

   君の隣に座っていることができる.




   君の笑顔も涙もすべて受け止められる.









  
   だから、俺の永遠は君といた記憶.









                     君といた記憶 / 、紗憂 ★





2008/10/29 17:32 No.0
メモ2010/09/19 02:53 : ゆい @tiara★hSCQfUPXhGU_9u

 .


 君といた記憶 .


 */゚... ゆうやside       */゚... あやside


 001 君の隣で        001 自分のきもち


 002 君を見つめて     002 好きなのに


 003 キモチ          003 嘘


 004 一歩           004 regret .


 005 あふれて        005 kiss love


 006 想い           006 ばいばい


 007 笑顔           007 悲しい恋


 008 忘れた記憶


 009 本当の君が.


 010 君だけを


 011 永遠の二人


 012 愛した人


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時逢。 ★gv9yA9OQfXM






私の知らないとこで、
こんなことが…ッ!!←


ってか、
カイクン切ないね^^←
でも…
亜矢ちゃんの気持ちも
わかるかも★、



更新がんばれノシ
楽しみにしてるよw


2009/04/03 13:07 No.220

夏帆 ★4rLtQ1fDTrw




ゆいちゃんっ !


番外編は亜矢ちゃん視点なんだねっ
なんか懐かしい場面が… ←


亜矢ちゃんいめちぇんとか
すごーい懐かしい 笑


あかうんと見たけど、
めびお休みするんだよね ?


かほ、その間にたくさんあげとくからねっ


この日記流れたくないし !



待ってるからね(^ω^)




2009/04/03 17:28 No.221

夏帆@mitsuno ★4rLtQ1fDTrw

 ゆいちゃん(^ω^)
 あげておくね@

2009/04/19 09:41 No.222

時逢。 ★pQwWmJ3mJFc




あげーッ

どうしたの?
でも
待ってるよノシ


2009/05/09 10:30 No.223

夏帆@mitsuno ★4rLtQ1fDTrw


 時逢ちゃん。
 ゆいちゃんめび卒しちゃって、
 でも高校生になったら
 戻ってくるらしいです★.
 だからそれまで一緒に
 上げてあげましょう!←

2009/05/10 10:53 No.224

時逢。 ★pQwWmJ3mJFc






夏帆 様



そーなんですか!!
わざわざ報告
ありがとうございますw

2009/05/24 10:26 No.225

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w









 ありがとう !
 小説続けられます(^ω^)




 *


 あたしは、咄嗟に教室へ行った



 …… ねえ、ゆう君

 あなたの隣にいたあの人は

 誰なの ―――― ?



 教えてください




 かのじょ ?





 「 あーかーぎーさんっ 」




 …… どくん



 この声は、顔を見なくても

 わかる恐ろしい声




 「 ちょっときな 」




 あたしは樋口さんたちに無理矢理

 連れていかれた



 恐いよ ……




 連れて行かれた場所は、

 前まで通常の教室だったと思われる場所

 若干錆びているし






 ―― あたし、外見は変わっても

 あたし自身は変わらず弱虫のままだね






 「 あんたさ …… どうゆう事 ?

   しかも何そのイメチェン

   めっちゃむかつくんですけど 」




 樋口さんは見下すように言い放った

 目が恐すぎる



 その視線が ――――――





 「 てめえ、まじふざけんなよ …… ? 」

 「 ほんとだよ ! 」





 樋口さんが大声で叫んだ

 その言葉に取り巻きたちが同意する




 なんで ?

 あたしはただイメチェンしただけじゃない ……

 ふざけてるつもりなんかない ――――




 「 言っとくけど〜 カイは

  あたしのしんゆうの元カレだし、

  未だ未練あるんだから ……

  勝手にとんなよ ?! 」



 …… もしかして

 沫菜ちゃんの ――――――――



 樋口さんに睨まれた




 「 ごっ ごめんなさい …… 」




 あたしは咄嗟に謝った








 

2009/08/11 17:40 No.226

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w

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2009/11/01 15:14 No.227

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w






 あたしは ……

 あたしは ……


 ただ、普通に過ごしたいだけなのに




 「 まりかちゃん !!! 」

 「 沫菜っ …… !? 」



 沫菜ちゃんが樋口さんを呼ぶ

 けれど樋口さんは混乱した様子でいて ―――― 、



 「 み、みんな ! 行くわよっ …… !!! 」




 そう言って樋口さんとあとの取り巻きらも

 この教室から去っていった





 あたしはただ、普通に過ごしたいだけ

 誰かに振り回されず、普通の人生を歩みたい

 この高校生活も、普通に過ごしたいの


 " 普通 "  でいたいだけだよ ……




 「 …… ゆ、ゆうやくん ―――― 」




 あたしはよろっ、としてゆう君に近づいた

 そして ―――― 目に溜めていた涙は

 ぽろぽろと流れ落ち


 …… あたしは声を上げて泣き喚いた




 そんなあたしをゆう君は、

 強めでありつつ 優しく抱きしめてくれた





 「 亜矢ちゃんごめんね ……

  あたしが全部話すから

  ほんっとうにごめんね っ …… 」




 沫菜ちゃんがうるうるとした目で

 あたしを見つめながら話し始めた





 ( ※ 詳しくは >>37  )






 「 ごめん …… ほんとにごめん …… 」






 沫菜ちゃんは話し終わってから

 このままの状況で謝り続けていた




 ごめん ……



 ごめん ?

 ごめん ?




 だから ―――― 何 .




 「 ふざけんなよ ……

  お前に人の痛みわかんのかよ !!! 」




 ゆう君はあたしを離して勢いよく沫菜ちゃんに詰め寄った

 そして、沫菜ちゃんの胸倉をつかんだ



 その勢いは、さっきの樋口さんのようなものじゃない

 ものすごい剣幕さで、ゆう君の"男"ってゆうのを感じさせた




 「 ご、ごめんなさい !

  ほんとに悪かったと思ってる …… !

  ごめんなさいっ !!!!! 」



 だめ ……



 これ以上、ゆう君に迷惑を掛けたくないし

 沫菜ちゃんが傷ついてしまうのも見たくない




 「 雄哉君っ もうやめて …… 」




 そう言うと、雄哉君は静かに沫菜ちゃんの胸倉を放した

 沫菜ちゃんは呆然と立ち尽くす ―――――― .




 「 もういいよ …… ありがと、沫菜ちゃん。

  あたしが ―― カイと別れればいいんだよね ?

   ごめんねっ …… 」





2009/11/14 16:43 No.228

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w




 ごめんなさい.

 上げます!


 久々すぎてごめんなさい



2010/04/26 19:22 No.229

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w





 「 いいの !! しかもそんな事しちゃだめだよ ……

  あたし、忘れられるように努力するから !!!

   ほんとう、あたしの方こそ …… 本当に本当にごめんね 」




 あたしは、そんな沫菜ちゃんの言葉に

 何も返すことができなかった。



 その後も沫菜ちゃんは謝り続けていて、

 漸くというところで教室を出て行った。




 あたしとゆう君だけの空間が作られた。



 一番後ろの席に隣同士で座る




 「 ゆうや君 …… 今日はありがと 」




 そう言うと、ゆう君は小さく頷いていた。

 そしてゆう君はそのまま下を向いた。



 あたしはあえて " ゆう君 " と呼ばなかった。

 呼んだところで、また気持ちが戻ってくるだけだから。


 それに、あたしにはカイとゆう存在が傍にいるから ……






 「 ―― 亜矢 」

 「 なに ? 」




 「 俺 …… 亜矢の事、 






 ガラガラッ



 ゆう君が何かを言い掛けたとき、

 教室の戸が開いたので

 その言葉はかき消された。





 「 亜矢 !! 」

 「 カイっ 」



 教室の戸を開け、中に入ってきたのはカイだった。



 …… どうしてカイが ?




 「 あれ ゆう ? 」




 カイはあたしに向けていた視線を

 ゆう君へ移した。




 そのカイの表情はどことなく悔しげで。





 そして再びカイはあたしに視線を向けた。




 「 …… 沫菜から聞いたけど

  亜矢 大丈夫だったか …… ??

  守れなくってまじごめんなっ ―― 」



 カイはあたしに近寄り、髪を優しく撫でてくれた。



 これは、カイの優しさ。

 この優しさに あたしは惹かれている。



 惹かれている。




 …… ―― 本当に惹かれているの ?




 惹かれているの ?






 あたしの心には ―――――― 。














 

2010/04/27 20:25 No.230

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w






 本当は、きっと 好きなんだ .

 カイではない、あの人のこと .



 あたしを守ってくれた あの人 .





 

2010/04/27 20:31 No.231

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w







 *. 003 嘘




 教室に戻ると樋口さんたちが

 いなくてラッキーだなと思っていたら ……


 ♪♪ 〜



 携帯が鳴った


 開いてみるとケイ君からだった



 〈受信:ケイ君 今日みんなでカラオケ集まるから!

        もちろん行けるだろ?〉




 みんな …… ということは、ゆう君もいるんだよね ――――




 気まずいと思う気持ちと、

 嬉しいと思う気持ち ―――― 。



 この気持ちは一体なんなの ?






 放課後になると、みんな校門に集まった。

 カイ、ゆう君、ケイ君 ――


 そしてもう一人。



 梨花ちゃんではない女の子が一人いた。



 見知らぬ女の子。


 なんだか話しづらくて、カラオケに着くまで

 その子とは一言も喋れなかった。



 …… もちろん、ゆう君とも話せずにいた。







  

2010/04/27 20:57 No.232

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w

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2010/04/29 18:32 No.233

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w






 「 亜矢、どうかした ? 」




 暫くの間、2人とも喋ったりしなかった。



 ―― 沈黙があまりにも長かったのか、

 その静けさに耐え切れずに言葉を出したのはカイだった。




 「 何でもないよ。早く行こう ! 」



 そう言い放って先に歩いて行った。




 あたしは明らかに動揺してる。

 行動と焦りの言葉で、カイも察知しただろうな ―― 。




 「 …… 俺はそんなに頼りない ? 」




 背後から、弱々しく儚げな声を発した …… カイ。





 あたしはぴたりと足の動きを止めた。

 だけど振り向いてはいない。



 振り向いたら ―――― カイに飛びついちゃうだろうから。





 「 ごめん …… あたし、なんて言っていいかわからないよ 」

 「 どうして ? 」

 「 今は何も言えない …… 」

 「 …… 」





 あたしの目からは、一粒の涙がこぼれ落ちた。




 背後からはカイの足音がしている。






 ―――― 別れを告げられるような、そんな感覚だった。






 あたしは最低な女。

 カイの気持ちを踏みにじるような事をした。



 最低 …… 。







 「 …… え、 」




 どくん 。







 言葉が出なくて。




 ―― だって、後ろからカイに抱きしめられているから ………… 。











 

2010/04/29 21:12 No.234

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w_KD







 「 なんとなく、亜矢の気持ちには気づいてる。

   でも俺はここで諦めたりしない。

   …… ゆっくりでいいから、

   俺のこと好きになってくれるまで待つよ ―― 」




 カイはそれだけ言うとあたしを離して

 走って先に行ってしまった。





 胸がどくん、どくん と 高鳴っている。




 こんなにも想ってくれる彼氏が傍にいて 。

 優しく 大事にしてくれる 。


 それはきっとこれからも変わるはずがない ……




 だけど あたしの心の中には ――

 彼氏ではない、 あの人がいて 。


 あの人と他の女の子が一緒にいるだけで、

 心に大きな棘が刺さったような、そんな感覚が生まれる 。





 今、あたしは試されているの ?






 ―― 葛藤するふたつの気持ち …………





 どうすればいいの …… 。







 ―――― 翌日 。







 いつもより早く起きていた。

 何でかは自分でもわからない …… 。




 だけど、この時に起きていなければ ――



 傷つくこともなかったし、苦しむこともなかった。






 「 おはよう。 今日は早いのね ? 」



 リビングに行くと、朝食を作っている途中の

 お母さんがいた。



 「 うん …… 。

  今日は早く出るつもりだから 」


 「 なんかあるの ? 」

 「 別に、 」



 最近、お母さんとは話さない。

 …… と言うか、話したくなかった。


 反抗期は過ぎているんだけど、あたし自身が拒絶しているみたいで。





 顔を洗って、朝食を食べた。

 その後は軽く化粧をして髪をアイロンでストレートにした。



 洗面所の鏡に映った、自分の真っ黒く重々しい髪。



 真っ黒なんて嫌。

 まるで、自分の心の中を感じるから。



 重々しいのも嫌。

 まるで、自分の気持ちが表れているようだから。



 美容院に行こう …… 。





 そして鞄に教科書や筆箱やお財布を詰めて、家を出た。





 いつもの歩調で歩き始めたとき、

 家を出て急ぐように走っていくゆう君がいた。


 すると、ゆう君の制服のポケットから

 紙の切れ端のようなものが落ちた。

 あたしはそれを拾い、ゆう君に追いつけるように走った。



 「 ゆうや君っ ! 」


 ゆう君は足を止めて振り向いた。



 「 亜矢 …… 」


 ゆう君は、どこか切なそうだった。







2010/05/02 17:30 No.235

ゆい@tiara ★dObmTKNlV4w_KD






 ゆう君の切なそうな顔を見て、

 あたしまで切なくなった。


 キュンとする 胸の痛み ……




 「 あ、あの …… 落ちたよ、これ 」



 あたしは我に返ってゆう君に

 紙の切れ端を渡した。



 「 あ、まじ ? 塚なにそれ 」



 ゆう君はこの紙の切れ端に何の記憶もないみたいだった。

 くしゃっとなっているこの切れ端。

 折れ畳んであったので、あたしはそれを広げて

 そこに書いてある文字を読み上げようとした。




 ―――― え …… 。




 「 なんか …… 亜矢が好き ―― 」




 言葉が出ないかと思っていたけど、

 あたしの口からは無意識にも言葉が出ていた。



 そこには確かに書いてあった ―― 。




 " 亜矢が好き。 "





 少し癖のある字。

 この字は絶対にゆう君だ。





 「 え、 ―― 」



 声が漏れる。

 そして何度も何度も読み直す。




 ゆう君が、あたしを ……―――― 。





 「 ゆうや君 …… あたしの事 ―― ? 」

 「 ちげぇよ ! ―― 漢字間違えたんだよ ! 」




 漢字 間違えた …… ?



 それって ――――

 ……





 「 え …… じゃあ、もしかして ―― 」





 真っ青になってる自分がわかった。

 鏡も見ずにわかった。

 誰かに言われなくてもわかっていた。





 「 そうだよ ――

  お前みてぇなブス好きになるわけねぇだろ? 」





 あたしみたいな、ブス。




 そうだよね ……

 どうせあたしはブスなんだ。




 だけど だけど 。

 そんな真正面から言われたら傷つくよ ……

 ブスだってことはわかってる。

 でも、傷つくことは確かで。




 「 、そう…だよね 」

 「 …… 当たりめぇじゃん。イメチェンしたって意味ねぇし 」

 「 ―― …… 」



 「 悪いけど、お前まじうざい。じれってぇし。うせろよ 」





 あたしはこのゆう君の言葉のおかげで

 どうにかなってしまった。



 怒りを抑えきれなくなった。





 「 じゃあ、前に沫菜ちゃんに言った

 ―― " お前には人の痛みわかんの ? "は !?

  ゆうや君こそ ……

   人の痛みなんてわかるの ―― っ !? 」





 あたしの目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。

 すると ――



 ゆう君はあたしの頬を強く叩いた。


 ―― 瞬間、激痛が走った。





 「 うぜぇんだよ ! まじふざけんな …… 」





 ゆう君はそう言い放ち、歩いていった。

 あたしは …… その場に膝をつき、泣き喚いた。




 ―― 涙が止まらない。

 苦しくて、苦しくてどうしようもない。

 言葉は出ない。ただ、泣く声が響くだけ。





 そうしていると ……

 あたしの横を物凄い勢いで走っていく人が居た ……








2010/05/08 17:37 No.236

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u









 中々更新できず…
 ごめんなさい.


 夏休みなんで
 書ける限りでは
 書いていこうと
 思います.


 ぜひ少しでも
 読んでくださると
 嬉しいです★.





      ゆい .





2010/08/01 23:37 No.237

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u













 「 お前 …… 何やってんだよ ! 」



 あたしの横を走っていったのは、

 カイだった。




 カイはゆう君に殴りかかった。

 ゆう君はその衝動で地面に倒れ込み――。



 あたしは座り込んだまま、

 ただただその状況を他人事のように

 見ているだけだった……。



 しかし、再びカイはゆう君を

 ムリヤリ立たせると

 殴ろうとし――――。






 あたしは見ていられなくなり……



 「 カイっ ! 辞めて !!! 」




 あたしはそうカイに叫ぶと、

 カイは動きを止めた。





 「 亜矢 …… だってこいつ ―― 」

 「 ゆうや君 ―― もう行って 」

 「 亜矢? どうした? 」





 ゆう君はあたしの言葉を聞くと、

 言われるがままに行ってしまった。





 「 亜矢、ごめん …… 」

 「 謝らないで ……

  あたし、あたしは ―― 」

 「 亜矢は、やっぱりゆうのこと …… 好きなんだよ 」

 「 えっ …… 」



 あたしは、カイの言葉に動揺した。

 カイは悲しそうな顔をする ……



 自分が嫌になるよ。

 本当に最低だな。

 カイはこんなにもあたしを

 想ってくれているのに。



 どうして ?

 どうしてカイを好きになれないの ?

 どうしてあたしは ……



 どうしてあたしは、ゆう君が



 好きなの ?




 もう、止まらないよ。


 あんなに酷いことを言われたのに、

 頬を叩かれたのに、

 どうして嫌いになれないんだろう。



 それは ……



 切なくて

 どうしようもなくて。




 「 カイ …… あたしは、カイが

  カイが好きだよ 」


 「 無理しなくていいよ 」


 「 無理してないよっ …… 」



 あたしはカイに抱きつき、

 涙を流した。



 涙は、止むことを知らずに

 次々と流れ落ちていった。

 涙の跡が、カイの制服に残ってゆく ……













2010/08/02 11:35 No.238

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u










 こうやって、

 自分に嘘を吐き、

 傷つけ、傷つけられ ――――



 どうして

 本当の気持ちを

 受け止めないんだろう .








2010/08/03 14:53 No.239

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u













 */゚... 04 regret .








 「 おはよ〜 ……

  って亜矢、どうした ? 」



 学校へ着くと、廊下でケイ君に会った。

 あたしはその前にカイと保健室に

 行って、保冷剤を貰って頬に当てていた。

 ケイ君はその事で気に掛かったんだろう。



 「 …… ゆうに、殴られたんだよ 」


 あたしの代わりにカイが答えた。

 あたしが今、一言も喋りたくないことを

 わかってくれているから …… きっと。


 「 は !? なんだよそれ……

  なんかあったの ? 」


 「 俺は事情は知らないけど ……

  ゆう、最低だよ。

  女に手挙げるなんて ―― あいつ …… 」


 もう、誰も喋らなくなった。




 それからそれぞれ自分の教室に入った。

 あたしは …… 相変わらず一人。



 そんなときに、ゆう君の言葉を思い出した。



 『 …… 当たりめぇじゃん。イメチェンしたって意味ねぇし 』




 そうだ。

 結局あたしは ……

 変わったのは、外見だけで

 中身は変わっていなかった。


 弱虫のままだった。



 強くなりたい ―― 。



 強くなりたいよ。




 そうしていると、後ろから肩を叩かれた。

 ヤバイな …… と思い恐る恐る振り向いた。



 そこには、俯いた顔をした樋口さんと沫菜ちゃんがいた。






 それから、授業をさぼって

 あたしと樋口さんと沫菜ちゃんは

 図書室へ行った。





 「 あたし ……

  ちゃんと、赤木さんに謝りたいんだ。

  だから、今日 …… カラオケで、

  赤木さんの友達とか彼氏とか連れてきて、

  謝らせて。お願い 」



 樋口さんは、目に涙を浮かばせながら話した。

 それに次いで、沫菜ちゃんも話す。



 「 あたしも、けじめつけたいから。

  あたしからもお願いする 」





 樋口さんや沫菜ちゃんの気持ちが

 すごく伝わってきた。




 でも ―― 謝られても

 本当に許せるかな。



 『いいよ』 って 言えるかな …… ?







 あたしは、カイ、梨花ちゃん、ケイ君、彩にメールをした。

 でも …… ゆう君にだけはメールが

 できなかった。

 だから、梨花ちゃんに頼んでもらった。


 ゆう君と顔を合わせるのは気まずいけど ……

 ゆう君にも助けてもらったりしたから、

 ちゃんと話したい ――








2010/08/03 16:00 No.240

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u










 皆が集まり、カラオケへと入った。



 「 じゃあ、自己紹介からっ 」



 梨花ちゃんが進めてゆく。



 「 俺、木下隆久っ ! タカって呼んで 」

 「 川原慶介 ! 俺のコトはケイで★ 」

 「 菊池梨花だよ〜 」

 「 あたしは高野沫菜 」

 「 …… 樋口まりかっ 」

 「 俺は伏見カイ 」



 あたしと彩とゆう君以外の自己紹介が終わり、

 ゆう君が自己紹介をした。



 「 えっと …… 井上雄哉、 」



 ゆう君は冷静だった。

 そんな冷静なゆう君がかっこ良くて、少し見惚れた。



 そして、次はあたしの番というとき。

 あたしは緊張して声が出なかった。



 「 伊藤彩ですっ ! ちなみにこの子は

  赤木亜矢ちゃん ! 名前一緒なんだっ 」



 そんなとき、彩はあたしの様子を見て

 代わりに言ってくれた。


 彩 …… かっこ良いな。

 彩みたいに、自分に自信が持てたらいいのにな。

 名前は一緒なのに、こんなにも違うんだね …… 。

 改めて思った。



 「 で、話の内容なんだけど ――

  亜矢ちゃん、まりかのコト ……

   ごめんなっ !

  まりか、反省してるから許してやって ? 」



 タカとかいう、樋口さんの彼氏が言った。


 なんで ?

 なんで樋口さんの彼氏が謝るの …… ?


 そんなんじゃ、許す価値さえないよ。



 そんな事も正直に言えず、

 あたしはただ黙って下を向いた。




 「 あんたに謝られても困るから。

  本人がちゃんと謝ってくんない ? 」




 ゆう君 ―― 。

 ドキッとしたのが自分でもわかった。


 あれほど酷いことを言われたりしたのに、

 それ以上にゆう君の優しさを知っているから。




 「 え ―― もしかして君が

  亜矢ちゃんの彼氏くんですかっ ?!

   まじごめんなさいっ !! 」




 タカ君はゆう君を見ると

 床に膝をついて土下座をした。



 それを見て、皆は驚く。




 ゆう君が、あたしの彼氏 ……

 そうだったらいいのに。



 だけどゆう君は言っていた。


 『 ちげぇよ ! ―― 漢字間違えたんだよ ! 』


 …… ゆう君は、彩が好きだということ。



 あたしは、樋口さんたちの事よりも

 ゆう君の事で頭がいっぱいになっていた。




 「 俺が亜矢の彼氏だけど 」

 「 えっ ?! 」



 カイ ―― 。


 そうだよ。

 どうしてどうして。

 どうしてゆう君の事で頭がいっぱいになってるの。

 ダメだよ。

 カイを好きになるって決めたのに。



 「 タカっ ―― もういいわよ。

  土下座なんて辞めてよ …… 」



 すると、今まで黙っていた樋口さんが

 口を出した。



 「 赤木さん、あたし ――

  一生償えない罪を犯した。

  謝っても許されないコトだから

  もう関わらない。

  それに、あたし転校するの。

  だから最後にって思って。

  ごめんね、もうホント …… 」



 樋口さんは、全てを伝えると泣き崩れてしまった。



 何て言えばいいの ?

 樋口さんが反省している事くらいわかる。


 だけど …… 今は、気持ちが混乱していて

 ぐちゃぐちゃで ―― 。

 何も整理できないよ。




 「 もう気にしないで ―― 」

 「 さよならっ …… 」




 樋口さんは鞄を持つと出て行ってしまった。



 部屋の中は、一気に静かになった。




 そんなとき ……

 ゆう君が突然立ち上がり、部屋を出て行った。



 ―――― ゆう君 。

 あなたは一体、何を言いにいったの ?



 ゆう君。教えて。



 こんなにもあたしを守ってくれるのは、

 あたしのことが好きなの ?


 自意識過剰だけど、そう捉えちゃうよ …… 。







2010/08/05 11:02 No.241

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u











 「 俺、帰ります。

  亜矢ちゃん、ごめんな。それじゃあっ 」



 タカ君はそれだけ言うと

 その場で頭を下げ、

 部屋を出て行った。



 「 …… あたしも、帰りますね。

  色々と迷惑掛けちゃってごめんなさい 」



 沫菜ちゃんはカイの様子を

 気にしているような感じがした。

 あたしはそんな沫菜ちゃんを見ると

 申し訳ないというか ……

 なんだかそういう感じのよくわからない感情がこみ上げてきた。



 「 あたし、トイレ行ってくるね …… 」



 彩は少し気まずそうにしながらも、

 イスから立ち上がり、沫菜ちゃんと一緒に

 部屋を出て行った。



 部屋に残ったのは、あたし、カイ、梨花ちゃん、ケイ君。




 「 亜矢ちゃん、大丈夫 …… ? 」




 梨花ちゃんは、あたしの肩に手を置き、

 心配そうに聞いてきた。


 梨花ちゃん …… 。



 梨花ちゃんは、あたしを助けてくれた事があった。

 あたし、まだお礼言ってなかった …… 。




 「 心配掛けちゃってごめんね。大丈夫だよ。

  梨花ちゃん ―― あたしが樋口さんたちに

  色々言われてたりしてた時に助けてくれてありがとう。

  それから …… 」



 梨花ちゃんがそのときに言っていた言葉。




 『 ふざけんなっ !

  亜矢ちゃんはあたしの大切な友達っ !

  勝手に傷付けてんじゃねえよっ ! 』




 「 ―― あたしのこと、大切な友達って

  言ってくれてありがとう 」


 「 亜矢ちゃん …… 何言ってんの !

  大切な友達とか当たり前っしょ ?

  てか親友だもん 」


 「 うん ―― 」



 梨花ちゃんは、あたしの親友だ。

 これから先、ずっと。



 あたしと梨花ちゃんのことを、

 カイとケイ君は優しい表情で

 見守ってくれているようだった。



 あたしは、この時に初めて " 友達 " の形での

 幸せを感じた。



 すると、部屋のドアが開いた。

 ゆう君だ。



 「 ゆうっ ! もう楽しもうじゃんっ 」

 「 ―― ああ、 」




 ゆう君、樋口さんに何か言ったのかな ?

 気になるよ …… 。

 ねぇ、ゆう君。



 「 やっぱいつもの5人が一番だね♪ 」




 梨花ちゃんは笑顔で言った。




 いつもの5人 ……


 あたし、カイ、梨花ちゃん、ケイ君 ...

 ―― そして、ゆう君 。




 よかった。

 仲間がいてくれて。

 あたしは、4人という少ない人数に

 しっかりと支えられていた。

 改めてこうして思うことができてよかった。




 「 だよなあ〜 」




 ケイ君が頷いていた。



 すると ――――――




 部屋に、彩が入ってきた。

 彩は目に涙を浮かべていて、それは瞬きしたら

 こぼれ落ちてしまうだろうというくらいに ……




 「 あ、え …… 彩もだよっ !

  ただ、昨日入ったばかりだから ――

   そのっ …… 」





 あたしは悲しくなった。



 傷つけた、という事に。




 「 やっぱり、あたしが

  きたら迷惑だったよね !!

   ごめんなさい 」




 彩は涙を拭うと、即座に鞄を手に取った。



 そして ……




 「 さよならっ !! 」



 それだけ言い残し、

 部屋を出て行ってしまった。











2010/08/06 23:56 No.242

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 「 お、追い駆けてっ 」



 梨花ちゃんの一言により、皆は

 慌てて自分らの鞄を持って

 カラオケを出た。





 「 ケイとあたしこっち行くっ !

  カイはそっち行って !!

   亜矢とゆうはあっちね ! 」



 梨花ちゃんは手分けすることにしたのか、

 それぞれ行く方向を指差して分かれた。


 梨花ちゃん ―― どうして

 あたしとゆう君を一緒にしたの ?

 そんな疑問が浮かんでいた。



 ゆう君は走るスピードが速く、

 追いつくことができなかった。


 「 ゆうやっ …… 君 !

  待って ―― ! 」


 あたしは遂に息を切らしてしまった。


 すると ……



 「 速くいくぞっ ! 」

 「 ちょっ …… 」



 ゆう君は、あたしの手を引いて

 走り出した。




 ゆう君の手と

 あたしの手が繋がっている。

 それだけの事で。

 たったそれだけの事で

 胸が温かくなってゆく。



 ―― 好きなんだ。

 あたしはこんなにもゆう君のことが好きなんだ。




 そして ……



 「 彩っ 」




 彩が見つかった途端、

 ゆう君はあたしの手を放した ……



 ズキッ 。



 胸が痛いよ。



 ゆう君。



 やっぱり ……

 ゆう君は ――――




 だけど、今はゆう君のことじゃないんだ。


 彩 ――



 彩は公園のベンチに座って、

 一人泣いていた。



 ゆう君は先に彩と話している。



 「 あたし、迷惑だよね 」

 「 は ? 」

 「 やっぱ無理だった 」



 彩 ……



 「 そんな事ないよ ……

  まだ、慣れてなかったんだ 」



 あたしは彩の隣に座り、

 優しく彩の手を握った。



 「 あたしじゃ無理だよ 」

 「 無理じゃない 」

 「 ムリだって 」

 「 思い込み激しいよっ !! 」




 あたしは怒鳴った。

 自分でも驚くくらいに。



 だって、こんな事っておかしいと思う。

 友達の人数、範囲が限られているという事。


 確かに彩を傷つけることは言った。

 だけど、それはまだきっと皆慣れていなかったから。

 だから決して"無理"なんかじゃない。



 「 亜矢 ―― 」

 「 あたしは彩がだいすきだよ ? 」



 これは、あたしの本当の思い。



 彩は、可愛くてかっこ良くて優しくて。

 そんな彩はあたしの憧れなんだ。



 その後、カイたちにも連絡して来てくれた。


 「 彩っ ―― ごめんなさい !! 」

 「 まじでごめんな、伊藤 …… 」

 「 ごめん …… 」


 梨花ちゃんとケイ君とカイは

 深く頭を下げて謝った。


 「 …… あたし、これからも皆の傍にいていい ? 」



 彩は少し躊躇いつつも聞いた。

 すると梨花ちゃん、ケイ君、カイは顔を合わせて、


 「 もちろんっ ! 」


 と言った。



 「 2人は ―― ? 」

 「 彩がいなきゃダメだよ 」



 あたしは満面に笑顔を浮かべた。



 ゆう君は言葉を詰ませたまま、

 中々言おうとしない。

 あたしはそんなゆう君を心配した。



 「 ゆう君 ? 」




 ―――― あ 。



 あたし、" ゆう君 "って呼んじゃった ……

 呼ばないって決めてたのに。



 ゆう君はぱっ、とするが

 落ち着きを取り戻した。


 「 いいよ …… 」






 彩 ―― 。

 これからは、彩も友達だよ。







2010/08/07 15:34 No.243

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 「 じゃあっ ……

  帰ろっか ?   」



 少し落ち着いてきたころに、

 梨花ちゃんがそう言った。

 そして皆で歩き出した。



 「 なんか ……

  色々あったけど、これもきっと

  いつか笑って話せる日がくるんだろうね 」



 梨花ちゃんは切なそうに

 儚げな表情を浮かべていた。



 確かにそうかもしれない。

 今、そしてこれからはもっと大変なことがあったり、

 悩んだりすることがある。

 けれどそんな日々もいつしか思い出になり、

 笑って話せる日がくる ―――― 。


 それは、いつになったらくるのかな ?



 「 …… あたしたちは、

  今その日々を作ってる途中なんだよね ―― 」


 「 そうだね。

  …… まぁ、そうとわかったら

  めいいっぱい楽しもうね !! 」


 「 うんっ 」


 「 お前らさぁー …… 」



 梨花ちゃんとあたしが話しているところを

 ケイ君は少し呆れたように見ていたけど、

 一緒に笑っていた。




 あたし、今、心から笑うことができている。

 それは ―― 傍にいてくれる友達のおかげだね。

 友達がいなかったら、仲間がいなかったら、

 今のあたしはどうなっていただろう。



 …… あたし、ずっと自分が不幸だと思っていた。

 自分がこの世で一番不幸なんじゃないかって思うほど。

 生きていることさえも嫌になったことだってある。

 だけど違ったんだ。あたしは影ながらでも

 友達に支えられていて、そして今こうして

 心から素直に笑うことができるんだ。


 ―― ねぇ、だから今は違うよ。

 自分はこの世で一番幸せなんじゃないかって思う。





 そういえば、ゆう君と彩がいない …… 。


 あたしは、何処にいるのかと思って

 後ろを振り返ってみた。


 ... 振り返ってみた。



 彩がゆう君の腕に抱きつき、

 何かを言っていた。


 そのとき …… 一瞬、ゆう君と目が合った。

 あたしは咄嗟に逸らすように前を向いた。




 ―― なんで ?

 もしかして ? まさかね。


 まさか、あの二人が付き合ってる …… なんてね。

 そんなわけないよね ?


 あたしの胸は、静かに震えた。



 「 みんなっ ! ごめんね。

  ちょっと雄哉と話しててっ 」



 彩が来た。



 「 平気平気♪ てか彩さ〜 」



 彩と梨花ちゃんは二人で話し込んでいた。


 …… 今すぐにでも聞きたい。

 " ゆう君と付き合ってるの ? " って。


 聞きたくてしょうがない。

 口から今にも出てきそうな言葉なのに ……

 やっぱり聞けない。あたしは意気地なしだから …… 。




 それから、梨花ちゃんとケイ君と彩と別れ ――

 幼馴染3人 …… 気まずい雰囲気となった。



 するとカイが喋った。



 「 ゆう、今日はごめん 」



 ゆう君は少し気まずそうにしながらも

 返答した。



 「 ―― 俺こそ、カイの彼女 ……

  ってゆうか、亜矢のコト殴ってごめん。

   亜矢 …… まじごめんな 」



 ―― 気まずい。気まずすぎるよ。

 今日のことももちろんあるけれど、

 それ以上に ……

 さっき、彩がゆう君に抱きついていたこと。

 それをあたしが見たのは、ゆう君も気づいている。



 「 ―― いいよ ……

  別に        」



 あたしは、無愛想に言い放った。



 これからあたしは、"自分"を作る。

 あたしのことを ……

 あたしとカイのことを、

 ゆう君に見せつけ

 そして、一時的な快感を求める。

 その為に自分を作るんだ。


 …… こんなことしたって、

 意味のないことくらいわかってたのに。


 あとから後悔し、虚しくなることくらい

 わかってたのに。




 「 おい亜矢っ

  なんかあったのか …… ? 」



 カイはあたしの両肩をゆるく揺さ振った。




 「 あたしってホント不幸だよね

  謝られてばっかり ――

   こんなのヤダ …… 辛いよ 」



 あたしはその場でカイに抱きついた。



 「 カイっ …… 」

 「 亜矢 ―― 」



 カイはあたしのことを優しく抱きしめてくれた。


 ごめんね、カイ ……

 カイのこと利用してごめん。



 あたしはどれだけ最低な女なんだろう。


 もう、死んでしまいたいくらいだよ ……











2010/08/07 22:22 No.244

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 自分が最低な女だとわかっていながらも

 あたしは続けた。




 「 ヤダよ …… 」

 「 俺がいるだろ ? 亜矢、 」

 「 カイ ―― 」

 「 俺が亜矢を愛してるから 」

 「 あたしも愛してるよ 」




 " 愛してる " ?



 こんな簡単に言ってしまってよかったの ?




 あたしはゆう君の方を一瞥した。



 …… どうして ?



 ゆう君は、一粒の涙がこぼれ、

 頬がその一筋によって濡れていた。


 それは、本当に哀しそうで ――



 なんでそんな顔をして涙を流すの ?



 ゆう君 ……





 「 ―― 俺、彩のトコ行くわ !

  心配になったし、俺いたら

   邪魔だろ ? じゃあなっ 」




 「 おいゆうっ …… 」




 ゆう君はすぐさま涙を拭うと、

 それだけを言い残して

 走って行ってしまった。






 ―― ゆう君 ?

 あたしたち、素直になっていれば

 幸せな未来が訪れていたかな ?






 もう、これでゆう君とは終わったんだ。

 遠い遠い、距離ができたんだ。








 あたしはそれから髪を栗茶色に染めて、

 まだよくわからなかったメイクなどを

 梨花ちゃんに教わり、ちゃんとしたメイクができるようになった。

 ピアスを両耳に2個ずつ開けて、オシャレをみにつけていった。


 親友と呼べるほどの友達も数人できたし、

 普通の女子高生として過ごしていた。



 カイとは相変わらず続いていて、

 毎日一緒にいるからか、段々と

 カイに気持ちが向いていくようになった。




 ゆう君 ――

 ゆう君との行動は避けていて、たまに

 廊下ですれ違ったり、家を出たらばったり会ったりしたけれど

 会話もしなければ挨拶もしないし、メールも全くしなくなった。

 苦しくて胸が張り裂けそうになったりもしたけれど、

 日に日にカイへの気持ちが大きくなっていくにつれて

 ゆう君への気持ちはしぼんでいくように小さくなっていった。





 12月になった。

 寒い日が続いていき、それは強さを増していった。




 今日は平日。

 普通なら学校に行かなくてはならないけど、

 カイと二人でさぼっていた。








2010/08/07 22:48 No.245

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u










 近くの公園で、カイと色々話していた。


 だけど、朝からカイの様子が少しおかしい。

 だるそうで、目が虚ろになっている。


 「 カイ …… 大丈夫 ? 」

 「 え ? 何が ? 」

 「 なんか、だるそうだよ ? 」

 「 そんなことねぇよ ―― っ、 」



 カイは目眩を起こし、その場で倒れてしまった。



 「 カイっ !! 起きて !! カイっ ―― !! 」




 あたしはその後、すぐに正気に戻ったが

 頭の中ではごちゃごちゃしていた。

 取り敢えず救急車を呼んで病院まで運んでもらった。



 ―― もし、カイが何かの病気に侵されていたら ……



 あたしはそんなことばかり考えていて、

 落ち着きを取り戻せなかった。



 「 こちらで待っていてください 」

 「 はい ―― 」



 あたしは医師に言われるがまま、

 待合室で待った。



 あたしは誰かに連絡しなきゃと思い、

 携帯を開いた。

 携帯を操作する指は、ガタガタと震えていて ――――


 どうしよう。

 誰に連絡すれば ……



 そんなとき、ゆう君のメモリが目に入った。



 ゆう君 ――




 もう、今は気まずいだとか言ってる場合じゃない。

 ゆう君は、あたしの幼馴染で、カイの幼馴染なんだから。




 震える指で、発信ボタンを押した。



 プルルルル ……

 プルルルル ……

 プルルルル ……



 『 もしもし ―― 』

 「 ゆうや君 …… 」

 『 なんだよ ? 』

 「 か、カイ ―― 」



 パタンッ



 あたしは携帯を閉じた。



 やっぱりゆう君に電話したら迷惑だよね。

 それに、ゆう君は学校にいるんだし ……



 すると、先程の医師が来た。


 「 伏見さん、ちょっと貧血を起こしたみたいです。

  心配することないですよ 」


 「 そうですか …… ならよかったです 」


 「 それで …… もし、伏見さんの親御さんへ

  連絡ができましたら、お願いできますか ? 」


 「 あっはい ! 今しようと思ってて 」





 あたしは医師が行った後に、すぐさま

 携帯からカイの家電へ発信した。




 『 はい、伏見です 』


 「 あ …… あの、亜矢です。

  カイが突然倒れちゃって、救急車呼んで

  病院に行ったんですけど、貧血起こしたみたいなんです。

  それで、今から南総合病院まで来れますか ? 」


 『 そうなの ? わざわざありがとうね。

   じゃあ今から行くわね 』


 「 はい …… 」



 電話を切って、看護士さんに

 カイがいる病室の番号を教えてもらい

 小走りで向かった。


 …… でも、何でそんなに心配しないの ?

 確かに貧血だったらそこまで心配は

 しないかもしれないけど ――

 親なのにだよ ? ちょっと、冷たい気がするよ。

 ……そんなこと、思っちゃダメだね。

 人は人なりの考えを持ってるんだから。

 あたしは自分に言い聞かせた。



 病室へ入ると、カイがベッドで眠っていた。

 医師と軽く話し、あたしに気を遣ってか

 医師は病室を出て行った。



 あたしはイスに座ってカイのお母さんが来るのを待った。




 何分か経った頃、病室のドアが開いた。

 そこには、カイのお母さんと ――

 ゆう君がいた。


 …… なんでだろう。

 でも、理由を聞かなくてもわかる。

 ゆう君のことだから、きっと ―――― ね。




 「 亜矢ちゃん、

  ごめんなさいね …… 」




 カイのお母さんはあたしの隣に座った。



 「 カイに何かあったんですか ? 」

 「 特に何もないと思うんだけど ―― 」



 あたしはまた、心の中で色々と

 思いそうになったけど

 それを停止した。

 さっき自分に言い聞かせたんだから。



 「 亜矢ちゃんと雄哉くん、もう帰りなさい 」

 「 ―― でも、 」

 「 ちゃんと学校行ってね 」


 あたしとゆう君は素直に言うことを

 聞くようにして、病室を出た。



 「 …… あの、 」

 「 ―― 何 ? 」

 「 貧血くらいで電話してごめんね 」

 「 …… 」



 ゆう君は何も言わなかった。

 あたしは、そんなゆう君を横目に話した。



 「 今日はカイと学校さぼってたんだ。

  けど、カイが突然倒れちゃって ……

  取り敢えず救急車呼んで病院

  行ったんだけど ―― 最初、誰に

  電話すればいいのかわかんなくて。

  頼れるのは雄哉くんしかいなくて ……

  でも、突然言われてもわかんないよね。

  だからすぐ切って、カイのお母さんに

  電話したんだ ―― でもね ……

  カイのお母さん、全然動揺してないんだよ ?

  ただの貧血くらいかもしれないけど、

  普通 …… 親なんだから、心配するよね ? 」



 長く話しすぎたかもしれない。

 ゆう君は、何か考えているようだった。


 「 ―― とにかく、学校いこうぜっ 」



 あたしの話には何も触れず、

 その言葉に承諾して

 病院を出た。










2010/08/08 17:56 No.246

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u










 ゆう君のこと、これでもう

 忘れるって思ってたのに。


 隣で歩くゆう君に

 ドキドキして、

 結局忘れられないよ ……





 ♪ 〜



 携帯の着信音が鳴った。

 だけど、これはあたしの携帯の着信音ではない。

 ゆう君の携帯だった。


 ゆう君が誰かと会話をしている間、

 あたしはぼーっと空を見上げていた。

 今日は、青空が広がっていて

 暖かい日差しが注いでいる。

 けれど気温は低く、風の冷たさを感じる。

 これからが、冬本番なんだろうな …… 。



 ゆう君は、話し終わったのか

 携帯を閉じるとあたしの方を見た。



 「 あのさ ―― 」

 「 ん ? 」

 「 一緒にどっかいかねえ ? 」



 えっ ――


 一緒に何処か行く ?

 …… デートってこと ?


 嬉しくて嬉しくて堪らなかった。

 だけど ――



 「 いいよ、でも ―― 」

 「 え ? 」

 「 彩はいいの ? 」



 ゆう君は、彩が好きなんでしょ ?

 それなのに、あたしなんかと ……




 ゆう君は少し考えたようだった。

 その結果 ――



 「 彩はただの友達だし 」

 「 ―― そっか、 」




 そう答えたゆう君の表情は、

 少し嘘っぽくて

 ちょっと悲しくなった。



 だけどそれよりも

 ゆう君と一緒に出かけられることが

 嬉しくてそんな悲しい気持ちは

 どこかへ吹っ飛んだ。

 あたしは自分では気づかないけれど

 その嬉しさを笑顔にしていたと思う。



 「 じゃあ、どこ行く ? 」

 「 いろんなところ ―― 」

 「 いいよ 」



 色んな所。

 あたしは、本当に色んな所へ行きたかった。



 街へ着くと、あたしは早速

 お気に入りのショップを見つけ

 自然とゆう君の制服の裾を引っ張って言った。


 「 あそこのお店入ろっ ! 」

 「 あっ ―― うん 」


 友達とよく行くファッションの専門店へ

 入った。

 実は、前から目につけていた服がある。



 「 どうしても

  この服欲しかったんだ ! 」


 ピンクのチュニックとジーパンのセット。

 友達も、みんな欲しいと言っていた。


 「 いくらすんの ? 」

 「 えっと ―― 4500円っ 」

 「 買ってあげるよ 」

 「 えっ …… 」

 「 遠慮すんなって 」


 ゆう君は、優しかった。

 本当に、本当に優しかった。


 あたしはそんなゆう君の優しさが大好きで。

 確実的に、気持ちが戻ってきている。

 叶うことのない恋なのに。

 もっと辛くなるだけなのに ――




 ゆう君は会計を済ませると、

 袋を差し出した。

 あたしはそれを受け取りお礼を言った。




 こんなふうに、ゆう君と一緒に

 過ごせるのも、最後なのかな ?

 それならあたしは、思い出作りしたいよ。




 「 次プリ行ってもいい ? 」

 「 ―― カイがいるのに ? 」



 あたしはその言葉を聞いて

 立ち止まった。



 そうだ。

 あたしにはカイがいるんだ。

 プリなんて、ダメなんだよ。


 好きなのに、ね ――



 「 …… 亜矢 ? 」

 「 ―― ごっ、ごめん ! そうだよねっ 」



 あたしはゆう君に名前を呼ばれ、

 我に返った。



 「 …… 昼飯食おっか 」

 「 そうだね ! 」


 ゆう君の言葉に微笑みながら頷いた。





 心の中で泣いていた。

 ずっと ずっと 。


 本当は涙が溢れそうになった。


 でも堪えたよ。


 好きだから。

 本当に好きだから。


 心で泣くことで精一杯だった。













2010/08/08 20:35 No.247

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u









 あたしとゆう君は、

 ファーストフード店へ入った。




 「 どうする ? 」

 「 あたしはーハンバーガーセット 」

 「 じゃあ俺も 」

 「 わかった ! 」



 あたしはレジの方へ向かった。


 レジで店員に注文をする。



 「 ハンバーガーセット2つで ! 」

 「 お飲み物をお選びください 」

 「 ゆう君っ ! 飲み物は ? 」



 ―― もう " ゆう君 " と呼んでも

 許されるよね ?

 …… これが最後かもしれないけど 。



 ゆう君はコーラで、あたしはジンジャエール。

 お金はゆう君が出してくれた。

 ゆう君はいつだって優しい ……



 食事が済むと、店を出た。

 家路を辿っている間は、他愛無い会話をした。


 家の前へ着いた。



 「 じゃあ ―― 」

 「 おう 」

 「 今日はありがと 」

 「 …… またな 」

 「 うん ! 」



 ゆう君に別れを告げ、

 手を振りながら家に入った。



 リビングに入ると、

 お母さんが少し不機嫌そうに台所に立っていた。


 これから言われることはなんとなくわかるけど。



 「 あんた今日学校行かなかったんだって ? 」

 「 …… うん 」

 「 何してたの ? 」

 「 ちょっと ―― 」

 「 これからはちゃんと行くのよ 」



 お母さんは意外とさっぱりしていた。

 もっとしつこく問い詰めるかと思った。


 お母さんとはこの頃ずっと話していない。

 勿論お父さんとも。

 まぁ、元々お父さんとはここ最近会ってないから

 話さないことなんてもってほかだけど。



 家族 ってなんだろう ?

 あたしはそんなに深く考えたことがなかった。

 家族がいるのは当たり前。

 その程度にしか思っていない。

 あたしには兄弟がいない。

 兄弟がいない事が寂しいだなんて、

 あたしは一度も思ったことがない。

 むしろいなくてよかったと思う。

 兄弟がいるだけでうるさくなるし、

 比べられるし …… 結局邪魔なだけなんだから。



 冬休みに入った。

 クリスマスは、カイの家で過ごしていた。

 プレゼント交換をした。



 あたしは、十字架のピアスをプレゼントした。

 カイからは、ハート型のネックレスを貰った。



 「 メリークリスマス ! 」

 「 メリークリスマス 」



 カイと、ファーストキス以来のキスをした。

 でもファーストキスとは全然違う。


 ファーストキスの時は少し触れる程度だった。

 けれど …… このキスは、とろけてしまいそうな

 熱く長いキスだった。




 クリスマスなら、普通はイルミネーションを

 見に行くのかもしれない。

 だけど、あたしたちは見に行かない。

 こうやってカイの部屋で甘い時間を過ごす。

 それが一番だと思った。


 …… でも、これが 最後 だなんて

 あたしは思いもしなかった。










2010/08/09 22:58 No.248

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u














 …… 朝 。

 まだ5時半だった。

 隣では、気持ちよさそうに眠るカイの姿がある。

 あたしはベッドから起き上がった。



 そんなとき、

 ゆう君の笑顔が頭の中で浮かび上がった。



 ゆう君、

 あなたは今何をしていますか ?

 誰と笑い合っているのですか ?

 …… あなたの心の中には、誰がいるの ?



 どうして 。

 なんで 。


 なんでゆう君なの ?



 カイがいるのに。



 あたしは、声を押し殺して泣いた。

 苦しくて悲しくて、どうしようもなくて。



 「 亜矢 …… ? 」




 後ろから、優しい声がした。




 「 苦しいよ …… 」

 「 …… 」



 カイはベッドから下りて、

 そっとあたしを抱き寄せた。



 「 ―― 全部話してほしい 」

 「 …… え ? 」

 「 亜矢の気持ち、全部俺に話してほしい 」

 「 だって、全部話したらカイのこと傷つけちゃうよ …… 」

 「 それでもいい 」



 カイの真っ直ぐな眼差しを見て、

 あたしは意を決して話した。



 ずっとずっと、ゆう君が好きだった。

 カイがいたのに、あたしの心の中には

 いつもゆう君がいた。

 ゆう君のことばかり気にしてた。

 ゆう君と二人だけで出かけたこともあった。

 でも、それがゆう君と楽しく過ごすのは最後だった。

 それ以来は、本当にカイのことが好きだった。

 だけどやっぱり、さっき気づいたんだ。

 あたしはこんなにもゆう君のことが好きだったんだって。



 話し終えたとき ――

 あたしも、カイも 泣いた 。



 それぞれの気持ちを抱えているから。




 恋をすれば、楽しいことや嬉しいことはたくさんある。

 だけど ―― それ以上に、苦しくて悲しいことも

 たくさんあるということを知った。



 泣き終わってから暫く何も話さなかった。


 そして ――



 「 …… 別れよう 」

 「 ―― え、 」



 " 別れよう "



 そんなカイの言葉が、

 頭に響いた。



 ―― 別れる ?



 「 俺のせいで、俺がいるから

  亜矢は苦しい思いをしてるんだよ。

  ……ごめん。俺と別れれば、亜矢は自由に恋ができる。

  結局、俺の存在が亜矢を苦しませてた。

  それに俺だって ―― 正直、亜矢と付き合ってても

  苦しいよ …… 」



 ―― カイは、あたしのことをこんなに

 大切に想ってくれていた。

 それなのにあたしは ……

 自分勝手だった。



 カイがあたしを苦しめてたんじゃない。

 あたしがカイを苦しめてたんだ ―― 。




 「 ごめんね …… 本当にごめんね ……

  カイは、あたしのこと大切にしてくれてたのに ―― 」


 「 謝んなよ ……

  俺、亜矢のこと大好きだった。ありがとう 」


 「 あたしもだよ。あたしもカイが大好きだった 」


 「 無理しなくていいよ 」


 「 本当だよ。カイこそ ―― こんなあたしのこと

  どうして好きだったの ? 」


 「 亜矢は …… 優しくて、友達思いで ―― っ …… 」



 カイの堪えていた涙が、ぽたぽたと床に落ちて

 小さな雫が作られた。



 ―――― 悔しいよ。

 カイのことは好き。

 でもそれ以上に …… ゆう君が好きなの。



 ごめんね

 ごめんね



 あたしは、カイの涙で濡れている頬に

 そっとキスをした。

 すると ―― カイがあたしの手を引いて、

 昨日のように …… 長いキスをした。



 でも ―― 昨日みたいに甘さがなかった。

 涙でしょっぱい、悲しいキスだった。







 好きだったよ 。

 大好きだったよ 。



 でも …… あたしは、それ以上に

 好きな人がいます。



 こんな自分勝手で最低なあたしを

 好きになってくれてありがとう。

 気持ちに応えられなくてごめんね。



 あたしは何もかもカイが初めてだった。



 付き合うこと。

 デートすること。

 キスすること。





 あたしがいじめられてるときには、

 助けてくれたよね。


 ありがとう。





 カイにはたくさん迷惑をかけちゃったね。

 ごめん。

 苦しい思いをさせちゃってごめんね。



 これからは、また前のように幼馴染として

 仲良くしようね。




 本当にありがとう。



 好きだったよ

 大好きだったよ





 さようなら 。













2010/08/13 19:28 No.249

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u














 気づけば年が明けていた。




 あたしはカイと別れてから、

 心にぽっかりと穴ができていた。



 いつもカイが一緒にいたから、

 今になって存在の大きさに気づいたんだ。

 失ってから気づくなんて ――

 なんてバカなんだろう。




 「 亜矢ー 入るわよ 」




 部屋に篭っていると、

 ドアの向こうからお母さんの声がした。



 …… なんだろう ?




 お母さんは、お重を抱えながら

 部屋に入ってきた。




 「 これ、おせちだから。

  お腹が空いたら食べなさいね。

  それと、喉が渇いたら言ってね 」



 お母さんはお重を小さなテーブルに置いた。



 …… お母さんは、

 あたしのことを心配していたんだ。



 あたしはカイと別れてから部屋に篭りっきりで

 食事もあまり取っていなかった。


 そんなあたしを、お母さんは心配して ――

 目頭が熱くなり、思わず涙がこぼれそうになった。

 あたしはそれを堪えた。



 「 …… ありがと 」

 「 うん 」




 お母さんは目尻を垂らしてにこっ、と笑い

 部屋を出て行った。


 堪えていた涙が、頬を伝っていった。



 不器用で、素直になれない。

 親に対してはいつしかそうなっていた。

 でも …… 見放されてはいなかった。

 親には、いつも見守られていたんだ。



 あたしは家族の大切さなんて

 わからなかった。


 でも ―― わかったよ。



 こんなにも温かいものだということを。




 あたしはおせちを全部食べた。

 おせちは、今まで食べてきた中で一番おいしかったと

 言えるほどおいしかった。









 けど ……





 あたしは、段々と

 崩れていったんだ 。








 〈受信:梨花ちゃん カイと別れたんだって?

          カイから事情は聞いたけど…

          亜矢ちゃん、ゆうのことが好きなんだよね?〉





 そんなメールが届いていた。

 カイ …… 梨花ちゃんに話したんだ。

 ―― っていうことは、ゆう君も知ってるのかな ?





 〈送信:梨花ちゃん うん、好きだよ〉



 あたしはストレートに返事をした。



 ♪ 〜



 そして ――――

 このとき届いた梨花ちゃんのメールを見て、

 携帯を床に落とした。




 〈受信:梨花ちゃん 言ったら傷つくかもしれないけど、

          見たほうがもっと傷つくと思うから

          前もって言っておくね。

          ゆうは今、彩と付き合ってるよ〉





 ゆう君が ――――

 彩と付き合ってる …… ?




 嘘でしょ ?




 だって、だって ……



 どうして ?




 でも確かに、ゆう君は彩が好きなんだ。

 それはわかっていた。


 だけど …… 彩もゆう君が好きだったの ?



 ―――― 二人は両思いだったの ?








 あたしはそれから ……





 変わっていった 。


















2010/08/14 20:55 No.250

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u













 あたしは栗茶色だった髪を金に染め、

 派手なメイクをするようになった。


 " ギャル " をみにつけていったんだ。



 そうすることで今の気持ちを

 発散することができると思ったから。


 ―― ヤケになっていた。



 お母さんはそんなあたしの姿を見て、

 少し戸惑ったがいつも通りに

 優しくしてくれた。


 お父さんはよくわからない ……

 だけど夜中にお母さんとお父さんが

 深刻に何かを話しているのを

 盗み聞きした。

 『なんで亜矢はあんなふうになったんだ』

 と泣き声で言っていた。



 あたしは、最低な人間。

 人を困らせることしかできない ……




 そして ―― 3学期になった





 「 えっ …… もしかして 」

 「 …… 亜矢 !? 」




 暫く会ってなかった友達に驚かれた。

 あたしの外見のことだ。


 そして、いじめがなくなってからも

 全く話していなかった樋口さんを取り巻く

 ギャルの子たちも話しかけてきた。

 樋口さんはもう転校してしまったけど。



 「 マジで赤木さん ? 超可愛い !!

  亜矢って呼んでもいい ? 」


 「 ヤバイ ! ねぇ、南さんたちもうちらと仲良くしようよ 」



 南さんたちというのは、あたしが

 普段一緒にいる友達のこと。


 あたしたちのグループはそれなりに

 オシャレだけど ……

 樋口さんたちのグループの子には敵わなかった。

 それに、少し対立してる感じだった。


 でも、こうしてみんなで仲良くなれて

 よかった。





 始業式が始まった。

 校長の長話や、校歌斉唱。

 面倒くさい。ダルイ。


 早く終わってほしい ……



 あたしたちは、後ろの方で固まっていた。

 先生たちはうざそうにあたしたちを見ていた。




 「 つうか亜矢は恋は ?! 」




 …… 恋 か 。

 もう、あたしにとって恋なんて ……


 ただの儚いものだ。


 「 あー、もう終わった 」


 「 だよね〜 カイって奴に

  フラれたんでしょ ? 」


 「 カイはどうでも良かった

  もう1人の幼馴染の方が

  …… 好きだったけどいいし 」






 ―― そうだよ 。




 本当はカイのこと、

 どうでもよかったとは思ってない。


 だけど ……





 「 元気出しなよ ! 」

 「 わかってる〜 」





 皆、あたしを励ましてくれた。

 それでも ……

 心の穴は、埋まらなかった。






 ―― バタンっ !!






 「 …… 何 !? 」

 「 きゃああっ !! 」






 周りがざわめいた。







 …… ゆう君 ―― ?







 ゆう君が倒れたの ?

 どうして ?




 ゆう君の傍に ……



 彩がいた 。




 「 雄哉っ ! しっかりして ! 」





 彩はゆう君を揺さ振っていた。

 そして、保健室の先生と男の先生が来て

 ゆう君は運ばれていった。





 「 みなさん落ち着いてくださいね。

  それでは、始業式の続きを ―― 」





 みんなは平気な顔をして、

 平静を取り戻していた。





 どうして ?

 ゆう君 ……



 大丈夫なの ?






 あたしは心配で心配で

 溜まらなかった。








 ―― 好きな証拠、

 だよね …………













2010/08/21 23:36 No.251

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u














 始業式が終わり、生徒たちはぞろぞろと

 教室へ向かって行った。




 「 あれ ? 亜矢どこ行くのー ? 」

 「 …… ちょっとね。先戻ってて ! 」



 梓(南さん)にそう伝えて、

 あたしはみんなと違う方向へ向かった。




 ―― ゆう君の元に、行きたかった。

 行っちゃいけないと思いながらも

 心配でどうしようもなかった。



 高鳴る胸の鼓動 ――




 あともう少しで保健室というところで ……

 保健室の中に、彩と梨花ちゃんとケイ君が

 入っていくところを見た。

 その途端に、あたしは足を止めた。




 「 ゆう君 ……

  ゆう君には、もうちゃんとした幸せがあるんだね 」





 一筋の雫があたしの頬を伝った。






 もうあきらめようと思った。

 だけど、気持ちは溢れるばかりだった。



 どんなに好きでも、叶わない恋はある。




 好きでした。


 大好きでした。





 ―――― 違う 。


 " でした " なんて

 過去形じゃない。





 好きです。


 大好きです。




 少しでも望みがあるというのなら ……

 期待してもいいですか ?






 *







 「 亜矢ちゃん ! 」




 放課後 ……

 下駄箱でローファーに履き替えていると、

 梨花ちゃんから声を掛けられた。

 隣にはケイ君もいた。




 「 …… 聞きたいことがあるんだけど 」





 聞きたいこと ?

 …… 何のことだろうか。



 あたしは梨花ちゃんを無視した。

 ―― 今のあたしは、あたしじゃないから。

 ヤケになって不良のようなギャルのような

 よくわからない自分になっているから。





 「 亜矢ちゃん ! 聞いてる !? 」




 梨花ちゃんはあたしの肩をつかんだ。

 ―― あたしはその手を強く払いのけた。

 そして早歩きで昇降口を出ようとすると ……




 「 …… 亜矢っ ! 」




 初めて、ケイ君に大声を張り上げられた。

 周りにいる数人の人たちが、キツイ視線であたしたちを見た。





 「 お願い、答えて …… 」





 梨花ちゃんの弱々しい声 ―― 。

 あたしはそんな声を聞いて、胸が苦しくなった。




 「 …… 好き、だよ ―― 」





 あたしはそれだけ言い残して、

 走って昇降口を出た。






 涙が溢れ、それは静かに流れてゆく。






 もう、こんな辛い思いしたくないよ ――

 あきらめたいのに、あきらめられないよ 。



 どうしたら、嫌いになれるの …… ?





 ずるずる引きずる想い。






 あたしは いつまでこうしているのでしょうか 。

 この先 どうすればいいのでしょうか 。




 あきらめることを …… 教えてください













2010/08/22 23:10 No.252

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u











 「 亜矢ー弁当食べよっ ! 」

 「 あ、うん ! 」




 あたしは梓、由希、愛、奈々と特に仲良くしていた。

 梓と由希は前からの友達で、

 愛と奈々は樋口さんの取り巻きだった子。

 他にもいつめんの子や、他の樋口さんの取り巻きだった子とも

 もちろん仲いいけど。





 後ろのほうで席を囲み、

 昼食を取る。



 「 このつけ爪かわいくない ?!

  1000円もしたんだしっ 」


 「 超可愛い !! どこで買ったの ? 」


 「 ドンキだよん ♪ 」



 会話が盛り上がり、みんなで大声で笑った。

 真面目な子たちが、そんなあたしたちを

 睨みつけた。

 でもそんな視線、あたしたちは全く気にしていなかった。





 ―――― すると 。

 沫菜ちゃんがあたしたちのところへ来た。



 「 なんだよてめー 」

 「 こっちくんなっつうの 」

 「 亜矢に謝りにきたん ? 」



 みんなは次々と沫菜ちゃんへ

 愚痴を言う。

 それを聞いて、戸惑う沫菜。



 …… あたしの心の中は真っ黒に塗り潰される。



 あたしは席を立ち上がった。




 「 ちょっといいってば

  こんな女、相手にしたって

   無駄だしさー ? 」




 ふっ、と鼻で笑った。



 惨めになれ。

 あたしの前のような気持ちを味わえ。



 そんな気持ちが湧き上がった。



 「 だよねぇ !! 亜矢最高ーっ ! 」

 「 超ウケるっ 」



 みんなと一緒にゲラゲラと笑った。




 なんて愉快なんだろう。

 この気持ち ……


 ストレス発散、という感じ。


 気持ちが軽くなった ――

 と思うのに、なんだか

 心が汚くなっていく感じがした。




 どうなってるの ?

 自分がわからない。

 言葉にならない。





 「 亜矢 ! 」






 …… どくん 。




 ずっと聞きたかった人の声が、

 あたしの名前を呼んだ。



 声のする方を向くと ――――



 ゆう君が苛立った様子で

 此方に来た。



 「 …… ゆう、君. 」



 無意識にも呟いていた。

 驚いて、ゆう君から目を逸らせなかった。



 「 ―― ちょっとこいよ 」




 ゆう君はあたしを睨みつけると

 腕を引いた。

 あたしは引かれるがままに

 ゆう君へついていった。





 着いた場所は、屋上。

 何も話さず、暫く黙って俯いていた。




 「 なんで ――

  ... お前、

   誰なんだよ …… ? 」




 ゆう君は曇っている空を見上げて聞いた。

 あたしはそんなゆう君の横顔を見た。



 「 、あたしは …… 」





 ゆう君。

 今は、心がおかしいんだ。


 ずっと会いたくて、

 ずっと想ってた人が

 目の前にいる。


 もう、無理だよ。

 あきらめられるわけないよ。










2010/08/28 11:01 No.253

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u











 「 亜矢じゃねえよ ―― 」




 小さな声で言い放ち、

 ゆう君は少し苦しそうだった。



 あたしじゃない ……

 確かに、今のあたしは

 本当のあたしじゃない。




 もう、気持ちが抑えきれない。

 あたしは ―――― 全て話そうと決心した。



 「 ―― 辛いんだよ ……

  あたしの好きな人 ...

  付き合い始めちゃって。

  でも、その人は言ってた。

  前に紙にあたしのコトが

  好きって書いてたけど

  漢字間違えたんだって。

  で、ほんとうの漢字のほうの

  子と付き合った。

  あれは本当だったんだって

  実感したよ ――

  ... ゆう君    」





 言い終えた自分が意外にも冷静で

 落ち着いていることに

 心の中で驚いた。




 ゆう君は暫く黙って、何か考え事をしていた。




 あたしはゆう君の返事も聞かず、

 ―――― あたしが、本当に伝えたいことを

 言った 。






 「 ねえゆう君 ……

  あたし、カイと付き合っても

  ゆう君が好きだった。

  本当はずっと、小さい頃から

  好きだったんだよ。

  ゆう君はどうだった ?

  本当のきもちを教えて ―― 」




 あたしは両手でゆう君の手を握った。

 もう、自分が抑えられなかった。

 止まらなかった。

 気持ちが大きくなるばかりで ……




 ゆう君は何か、意を決したように

 あたしを真っ直ぐ見つめた。



 「 ... 好きだったよ

  亜矢のこと、

  ずっとだいすきだった 」


 「 、ゆう君 …… 」




 あたしは、同じようにゆう君を真っ直ぐ見つめた。

 ゆう君の瞳に、吸い込まれそうになる ――


 時間が止まったような感覚に陥った。


 しかしそんな感覚もすぐに消え、

 時間は進んだ。

 それは …… ゆう君があたしを抱きしめたから。




 「 …… ほんとに

  好きだった

  ―― でも、俺には

  大切な人がいる

  だから ... 」




 ゆう君はあたしを離した。

 その言葉に頷き、ゆう君はごめんと謝って

 屋上を去っていった。





 ―― 両思い だったんだ。




 ずっと ずっと

 両思いだった。



 なんで気づかなかったの ?




 ずっと両思いだったけれど ……

 ずっとすれ違っていた。



 そして、今両思いと気づいても

 ゆう君には大切な人がいるんだ。




 もっと早く気づいていればよかったのに ――





 一人取り残されたあたしは、

 その場で膝をつき

 一人泣いた。




 苦しくて、

 悲しくて、

 悩んでばかりだった。


 本当は両思いだったのに。



 もっと早く気持ちを伝えていれば、

 結ばれていたかもしれないのに ……





 こういうのを

 " 後悔 " というの ?






 ―――― でも、あたしはあきらめない。

 あきらめられないから。


 頑張るよ ……





 あたしは適当な理由をつけて早退し、

 美容院へ向かった。



 この髪色、それから化粧も。

 全部、前のように戻そう。


 " 我 " を取り戻すために。





 常連である美容院で、

 いつも担当してもらってる美容師さんに頼んだ。

 エクステを取り、髪色を栗茶色に染め直し

 カットも少ししてもらった。


 そして近くのデパートのトイレで

 化粧を落とし、前のように

 落ち着いたナチュラル系のメイクをほどこした。



 …… 前のように戻ったのは

 いいものの ―― 愛や奈々はいつも通りに

 仲良くしてくれるだろうか。

 あたしがギャルっぽくなったから

 愛や奈々たちはあたしに近づいてきた。

 ギャルっぽくなくなった今、離れたりしないだろうか ?



 あたしは少し不安になった。

 そして、みんなをデパートの喫茶店へ呼んだ。




 「 亜矢何処だろう〜 ? 」

 「 金パだしすぐわかるっしょ 」



 愛と奈々の大きな声がした。

 周りの人は少し迷惑そうに見る。



 きっと ―― 気づかないかもしれない。

 だけど、梓と由希は気づくかな ……


 すると ――



 「 あれっ、もしかして亜矢 !? 」



 最初に気づいたのは、梓だった。




 「 亜矢だ ! 亜矢でしょ ? 」

 「 え、マジで ? だって ―― あ、亜矢じゃん ! 」

 「 髪とメイク …… !! 」



 愛と奈々は、目をぱちぱちさせていた。

 逆に梓と由希は、嬉しそうな顔をしていた。



 「 …… 全部、前みたいに戻したんだ。

  ―― これじゃあ、もう友達辞めたい …… ? 」



 愛と奈々へ問い掛けた。

 きっと " 辞めたい " って言うだろうな ――





 「 は ? なんで友達辞めなきゃいかんの ? 」

 「 そうだよ。亜矢がギャル辞めても

  友達は辞めないっしょ ! 」



 あたしは愛と奈々の言葉に、驚きが隠せなかった。

 同じような容姿じゃなくなったら

 てっきり友達を辞められると思っていた。



 「 だって梓と由希だってギャルじゃないし、

  しかも折角仲良くなったのに

  友達辞められんよ ♪ 」



 「 よかったー …… 」




 ふぅ、と溜息交じりに言うと

 みんな一斉に笑った。



 その後、みんなでたくさん語って

 ショッピングをし、夜ごはんを食べた。




 このときは悲しいことは全部忘れて、

 みんなとたくさん笑い合った。

 みんなといると、気持ちが軽くなるし

 心から笑えた。

 こんなに笑ったのは久しぶりだった。











2010/08/29 02:03 No.254

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u












 */゚... 05 kiss love







 気づけば夜になっていた。



 それぞれ別れ、

 一番家が近い梓と家路を歩いていた。



 「 よかった 」



 梓がぽつりと呟いた。

 " よかった " ?



 「 どういう意味 ? 」


 「 亜矢が前みたいに戻ってくれて。

  きっと何かあったんだろうなとは

  思ったんだけどね 」


 「 …… 」



 言葉が返せなかった。

 そんなあたしを見て、

 梓は続けて喋った。



 「 ギャルの亜矢も可愛かったけど ……

  なんか、離れていきそうな感じがしたんだ。

  態度とかもいつもの亜矢じゃなくなって

  それでも仲良くしてくれたからよかったけど ――

  やっぱり、今の亜矢の方がいいよ。

  由希ともそう話してたんだ 」




 そっか。だからあたしを見つけたとき、

 梓と由希は嬉しそうな顔をしていたんだ。


 そんなふうに思っててくれたなんて

 あたしはこれっぽっちも知らなかった。


 嬉しくて、涙が出た。



 「 …… 亜矢 ? 泣いてるの ? 」

 「 嬉しくて ―― 迷惑かけて、ごめんね …… っ 」

 「 何言ってんの。迷惑なんて全然かかってないよ ! 」

 「 …… ありがとうっ 」



 あたしと梓、二人で抱き合いながら泣いた。



 友達ってすごく大切なもの。

 友達がいるから、あたしはこうして

 崩れそうな気持ちを支えられる。


 友達の大切さを改めて感じられた。





 そして、落ち着いた頃に梓が

 ―― 聞いてきた。



 「 一つ気になったんだけど、

  今日お昼してるときにきた男の子 ……

  井上君 ? だっけ。何か言われたの ? 」



 いつかちゃんと話そうと思っていたことだった。


 今 ―― 話してもいいかな。

 それとも、もう少し経ってからの方がいいかな。


 梓は信頼できる最高の友達だ。

 だけど …… それでも言えないことだってある ――



 「 ―― もう少し、落ち着いてから話すね 」

 「 そっか。わかった ! 」

 「 ごめんね 」

 「 ううん。でも、最近ずっと亜矢様子が変だから

  何かあったら話してね 」

 「 うん。ありがとう 」



 梓には迷惑や心配ばかりかけている。

 いつかちゃんと話さないと ――――



 そして、梓と別れて

 いつもお気に入りのミルクティーを買っている

 自販機へ向かっていった。









2010/08/29 10:12 No.255

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u













 ―― あたしは足を止めた。

 その光景を見て、息を飲んだ。



 ゆう君が、彩を大切に大切に抱きしめていた。




 やっぱり、2人はちゃんと付き合っていた。

 こういう光景を目にしたことがないから、

 付き合ってることなんて本当はただ誰かが

 勝手に流した噂なんじゃないかって

 思っていたから。


 2人が付き合ってるということを、

 この光景を見て初めて実感した気がした。



 気持ちは悲しくなるだけで、

 虚しかった。




 あたしは結局自販機に行かず、

 家路へと歩き出した。




 そして ――――




 「 亜矢っ 、 ! 」




 ゆう君の大声が、あたしを呼んだ。

 あたしは立ち止まって振り返った。



 「 …… ゆう君 」




 ゆう君との距離が縮まり、

 ゆう君はあたしの髪に触れた。


 一瞬、ドキッとした。



 「 髪 ―― 戻したんだな

  こっちの方が似合ってるよ

   ギャルとか亜矢じゃないし 」




 どくん ――




 そんなこと言われたら、

 もっともっと

 ゆう君のことを好きになってしまうよ。




 「 うん …… ありがとう 」





 そう伝えて、笑みを浮かべた。

 ゆう君といると、悲しかった気持ちも

 吹っ飛ばされて ……

 自然と笑顔になれる。





 ゆう君は下を向いていた。


 どうしたんだろう ?






 「 ... ッ ?! 」




 ―――― 一瞬のことだった。





 ゆう君の唇が、あたしの唇に触れた。

 それは一瞬だったけれど ……

 その一瞬の中で、甘い感覚に陥っていた。




 「 ―― ごめん 」

 「 …… 」





 …… どういうこと ?

 ゆう君は、あたしにキスした …… ってこと ?




 キス 。




 胸の鼓動がうるさく鳴っていた。

 ドキドキする気持ちは、ますます大きくなっていた。





 「 亜矢 ... 」

 「 や、やっぱりあたし …… 」

 「 何 ... ? 」

 「 ゆう君のこと、諦められない ―― 」






 正直な気持ちだった。

 素直に伝えたかった。



 ゆう君のことをあきらめられるわけがない。

 ゆう君のことを嫌いになれるわけがない。



 ずっと好きだったから。



 これからも好きでいたいんだ ……




 あたしの目には、自然と涙が浮かんでいた。





 「 俺も …… まだ好きだよ 」





 ゆう君は少し切なそうだった。




 もっと早く気づいていればよかったね。

 今は、もう遅いんだね。

 すれ違ってたんだね。



 悔しいし、悲しいよ。




 もう遅い ――――




 だけどあたしは、ゆう君のことあきらめないよ。

 好きだから。

 自分の気持ちに嘘つくことなんて

 もうできない。





 「 ―― もし、彩と別れたら

  あたしのとこにきてね ……

   ずっと、ずっと待ってる ! 」






 精一杯だった。

 一生懸命だった。





 「 先いくね …… 」









 ゆう君、いつかあたしの元にきてください。

 あたしはずっと待っています。


 ずっとずっと、変わらず好きです。


 大好きです。






 *










 「 おはよ ! 」

 「 おはよ〜っ 」



 いつもと変わらない、日常。

 学校にはちゃんと行っていて、

 友達とも楽しく遊んでいる。




 「 マジ寒すぎっしょ !

  ありえんわ〜 」


 「 愛だってスカート短すぎじゃん〜 」


 「 まぁね ! そーゆう由希も最近短いじゃん♪ 」




 みんなが楽しく話しているとき、

 あたしは窓から校庭を眺めていた。



 2月に入り、相変わらず寒さは続いていた。

 そして、あたしの気持ちも相変わらずだった。



 好き。いつも好き。毎日好き。



 でも ―― ゆう君とは会わないようにしていた。

 きっとあたしと会ったら、ゆう君の

 気持ちを混乱させてしまうから。


 そう思っていながらも、

 あたしは会いたいなって、

 会えたらなって願っていた。



 「 亜矢ーっ ! こっち来なよーっ !! 」




 梓に呼ばれて我に返り、

 みんなの元へと向かった。


 みんなの輪の中に入って、

 いつものように楽しく話した。


 みんなといると、笑顔が絶えないよ。

 気持ちも落ち着くし、安心する。

 みんな大好きだよ。













2010/09/03 23:44 No.256

ゆい ★hSCQfUPXhGU_9u













 今日は、2月7日。

 1週間後はバレンタイン。


 あたしは梓と二人で

 チョコの材料を買うために

 デパートに来ていた。



 「 亜矢は本命作る ? 」

 「 うん 」

 「 そっか ! あのさ ……

  私の話、ちょっと聞いてもらっていいかな ? 」



 梓は、真剣な面持ちだった。

 きっと、軽いことなんかじゃないんだ。


 あたしと梓はデパートを出て、

 誰にも聞かれないようにと

 カラオケに入った。


 「 長くなると思うけど …… 平気 ? 」

 「 うん。何でも話して 」


 梓は一旦深呼吸をして話し始めた。


 「 ―― 私、好きな人が二人いるんだ。

  元カレと、元カレの友達。

  元カレとは、1月の半ばごろに別れたんだ。

  それは、元カレが二股をかけていたから。

  私が一人で近くのコンビニに行く途中、見たの。

  元カレと、二股の相手が仲良さそうに

  腕を絡めて歩いてるところを ――

  私はそれを見たとき、意外にも冷静だった。

  それはまだ実感がなかったからだと思う。

  だけど段々と頭の中で理解できた。

  私はそれに気づいたとき走って逃げた。

  その後電話で聞いたんだ。

  元カレは『ごめん。二股かけてた。別れよう』って

  言った。そのとき私は泣きそうになったけど

  必死で堪えた。元カレと話してるときに

  泣いたら情けないと思って。

  でも電話を切って ――

  私はもう涙が堪えきれずに泣いた 」



 一旦話を切った。

 それは ―――― 梓が涙を流しながら

 苦しそうに話していたから。


 「 無理しないで …… 」

 「 …… ありがとう 」


 梓は涙を拭いて、再び話し始めた。



 「 私は、嘘でも二股なんかしてないって

  言ってほしかった。そのまま二股してくれても

  構わないと思ってた。

  結局別れても、元カレのアドレスも写メも

  消せなかった。なぜかって ? 好きだから。

  知らぬ間に二股されていてたけど ……

  やっぱり嫌いになれなかった。

  それで、二日経ってから元カレからメールがきたの。

  だけどそれは元カレじゃなかった。

  元カレの友達だった。

  『拓海(元カレの名前)が色々ごめん』って。

  全く知らない人だったから少し躊躇ったけど

  優しかった。それから一緒に会ったり、

  アドレスも教えてもらってすごく仲良くなった。

  それで …… いつの間にか好きになってた。

  もういっそのこと告白しようと思った。

  だけど ―― 元カレから会おうと言われて会った。

  そしたら『ヨリ戻そう』って言われたの。

  そのとき、心に閉まってた気持ちが一気に

  あふれた感じがしたんだ。

  やっぱりまだ元カレが好きだなって思った。

  でも …… 元カレの友達のことも好きだったから

  何も答えられなかったんだ 」



 梓はテーブルに置いてあるお茶を取って

 何口か飲むと、続きを話した。




 「 私、今でもすごく悩んでて

  どっちがいいのかわからない。

  でも14日までにはなんとか答えが出したいの。

  亜矢 …… どうすればいいと思う ?」




 初めて聞いた。

 梓とは恋の話なんてしたことがなかったから。

 梓はたくさん悩みを抱えていた。


 あたしは、ゆう君とカイのことで

 色々と迷ったり悩んだりしているとき、

 こんなに苦しい思いをしてるのは

 あたしだけなんじゃないかって思ってた。

 でもそれは違っていたんだ。

 恋をすることで、

 悲しんだり苦しんだりすることは

 みんな一緒なんだ。



 「 あたしがもし梓だったら ……

  元カレと元カレの友達のこと、

  それぞれ1人として考えるよ 」


 「 …… ? 」



 梓は、いまいちあたしの言った言葉の意味が

 わかっていないようで眉を顰めていた。



 「 2人を比べるわけじゃなくて

  元カレだったら元カレ、

  元カレの友達だったら元カレの友達って

  いうふうに考えるの。

  それから ――

  梓は、誰に助けてもらったの ?

  支えてくれたのは ? 傍にいてくれたのは ? 」



 それから1時間くらい、何も喋らなかった。

 歌うことなんてもってのほかだし、

 目も合わせなかった。


 ただ …… 梓は、時折涙を流しては泣き、

 苦しそうに悩んでいた。

 あたしはそんな梓を慰めたりなんかしなかった。

 それは、ちゃんと梓に答えを見つけてほしいから ――



 「 …… 亜矢 」



 梓の声は、少しかすれていた。



 「 梓 …… 」

 「 私の好きな人はね 」

 「 うん 」

 「 すごくすごく優しくて、本当にいい人だよ 」



 梓 ―― たくさん悩んだよね。

 きっと今でも、少し迷っている気持ちがあるかもしれない。

 だけど、梓が出した答えならそれはきっと

 輝かしいものだと思ってる。


 だからあたしも、いつか絶対に話すよ。

 ゆう君のこと。










2010/09/04 19:00 No.257

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u












 その後、カラオケで少し歌って

 デパートでチョコの材料を買った。

 そして、梓と別れた。






 ガチャッ

 鍵を開けて家に入り、リビングへ向かった。



 「 ただいまー 」

 「 おかえりなさい。ご飯できてるよ 」

 「 ありがとう 」



 最近、お母さんとよく話すようになった。

 正月、おせちをもらったあの日以来、

 閉ざしていた心を開いたような気がする。


 あたしは手を洗い、ご飯を食べて

 部屋へ行った。



 「 …… ゆう君 」



 机に飾ってある写真立てを取った。


 写真には、幼い頃のあたしとゆう君とカイが

 写っていた。

 あたしが真ん中で、右にゆう君、左にカイ。

 みんな、すごくいい笑顔をしていた。

 今じゃきっと ―― 考えられない。


 あたしは、声を押し殺して泣いた。

 涙が次々にあふれでた。




 *






 2月14日。



 徹夜してチョコを作っていたから、

 寝坊してしまった。

 もう10時だった。



 「 早く起こしてよ〜 ! 」


 「 ずっと起こしてたけど ?

  だから徹夜するんじゃなくて

  朝早く起きてやりなって言ったのよ 」


 「 もう最悪っ 」


 「 学校に連絡しとくから 」




 あたしは少しだるいながらも準備を始めた。

 顔を洗って、朝食を済ませると

 ぼさぼさの髪をアイロンでストレートにし、

 ずれないように丁寧に化粧をした。




 「 いってきます 」

 「 あっ亜矢 ! 車出すから 」

 「 いいの ? 」

 「 その後買い物に行くから丁度いいでしょう 」



 車に乗って、学校へ向かった。

 いつも徒歩で15分かかるけど、

 車だと5分程度で着いた。



 「 いってらっしゃい ! 」

 「 いってきまーすっ 」



 車を降りて、裏門から入った。

 下駄箱で上履きに履き替えていると ――


 1Bの生徒たちがぞろぞろと来て、

 スニーカーに履き替えていた。

 きっと体育の授業だろう。

 1Bの顔見知りのない人には怪訝そうに見られたが、

 友達とは軽く挨拶を交わした。


 そして ……


 「 久しぶり 」

 「 …… うん 」


 カイに声を掛けられた。

 別れのとき以来だった。

 家が隣だから顔を合わせることは何度かあったけど、

 言葉を交わすのは久々だから ――


 「 遅刻 ? 」

 「 寝坊しちゃったんだっ 」

 「 亜矢も寝坊するんだな 」

 「 まぁね 」

 「 あのさ …… 」


 カイは少し躊躇うような様子で、

 何かを話そうとしていた。


 そのとき ……


 「 カイっ ! 早く行こうぜ 」

 「 …… あぁっ すぐ行く 」


 カイは友達に軽く伝えた。


 「 また今度話す。ごめん。じゃあな ! 」

 「 うんっ …… 」


 カイは走って行ってしまった。



 ―― カイがなんだか少し変わったような気がした。

 大人っぽくなったというか ……

 また一段とかっこ良くなっていた。











2010/09/04 21:41 No.258

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u










 教室の前に着き、中を覗いた。

 今は確か4時間目。国語の授業だ。

 愛や奈々たちのギャル系の子は

 みんな話したり寝たりしていた。

 梓や由希たちは、一生懸命

 ノートを取っていた。


 「 気まずいなぁ 」


 あたしはそう呟きながらも、

 堂々と教室の中に入った。


 「 あっ !! 亜矢が来たぁ ! 」

 「 亜矢だぁ ! 」


 愛と奈々は即座にあたしのところへ来た。

 他の子もみんな近づいてきた。


 「 みんな座りなさい !

  赤木さんも早く席に着いて 」


 「 はーーいっ !!!! 」


 みんなで返事をして、席に着いた。

 こうしてみんなで騒いだりすることで

 すごく心が安らぐんだ。





 放課後 ―――― 。





 「 友チョコだよーんっ♪ 」

 「 さんきゅ ! うちも〜 」


 みんなで友チョコの交換をした。

 計15個ほど。


 「 亜矢 …… 私、今日言うよ 」

 「 梓 …… 頑張ってね 」

 「 ありがとう。夜また連絡するね 」

 「 うん ! 」



 梓は今日、自分の答えを

 しっかりと伝えるんだ。

 あたしも頑張らなきゃ ――――



 みんなと別れて、

 あたしは教室に残っていた。


 今日、ゆう君の家に行って

 チョコを渡すんだ。

 そして、まだあきらめてない気持ちを伝えよう。



 あたしは、少し気持ちの整理をする為に

 鞄を持って屋上へ向かった。




 屋上の扉の前に着いた。

 重たい扉を、ゆっくりと開き ――――――





 「「 ―― あっ 」」





 重なった二つの声。

 それは ――――

 ゆう君とあたしの声。




 「 ゆう君 ... 」




 ゆっくりとゆう君へ近づいて行った。


 ―― 今がチャンスかもしれない。

 あたしは意を決して、

 チョコを渡そうと思った。





 「 亜矢 ……

  どうして

   こ ... ―― 」






 ゆう君が何か言いかけようとした

 その瞬間 ……





 空から雪が降り始めた。




 それは、綺麗で静かで、切なくて儚くて ……




 あたしはぱっ、として

 鞄から小さな箱を取り出した。

 それは、ゆう君へのチョコが入った箱。




 「 あのっ ...

  ゆう君 ―― 」




 ゆう君にチョコを渡した。





 「 …… 」

 「 まだあきらめてないから ―― 」





 ゆう君は黙ったまま箱をじっと見て、

 何か考えているような様子だった。



 嫌だったのかな ?


 少し不安になった。


 それからも暫くゆう君は黙っていた。

 あたしは少し怖くなってしまい



 「 じゃあっ ―― 」



 そう言って屋上を出ようと足を進めた。

 しかし、それをゆう君が止めた。




 「 待てよっ 」

 「 ... どうしたの ? 」

 「 ―― さんきゅ ! 」




 ゆう君は

 優しくてかっこいい笑顔を浮かべた。


 あたしはそんなゆう君の笑顔を見て

 嬉しくなり、笑顔を返した。





 先に屋上を出た。

 階段を下りていく途中、

 あたしは嬉しくて一人

 変な笑みを浮かべた。



 ゆう君があんなに喜んでくれて

 笑顔を見せてくれて

 すごく嬉しかったんだ。





 家路を歩いている途中、

 新着メールが届いた。



 〈受信:梓 亜矢、私すごく幸せだよ。
      こんなに幸せなのは、亜矢のおかげだよ★
      本当にありがとう。亜矢大好きだよ^^〉



 梓は、自分の幸せを掴むことができたんだ。

 友達の幸せは、あたしの幸せで

 あたしもすごく嬉しくなった。



 今日は、嬉しい気持ちでいっぱいだ。

 こんなに幸せで温かい日 …… いつぶりかな ?




 ―― だけど、こんなふうに思えるのは

 今だけだったんだ。





 家に着くと、リビングでお母さんと

 珍しく早く帰ってきたのか、

 お父さんがソファに座って深刻そうに

 何かを話していた。



 「 …… ただいま 」

 「 あ、亜矢じゃない ! おかえりなさいっ 」

 「 …… おかえり 」



 お母さんは少し焦っているような感じで、

 お父さんはいつも通り無愛想だった。


 何を話していたんだろう。



 「 何かあったの ? 変だよ 」

 「 何でもないから。気にしないで ! 」

 「 嘘 …… 絶対なんかあるでしょ 」



 あたしは、誤魔化すお母さんに

 少しムカついた。



 すると ――


 お父さんが口を開いた。


 「 この街を、離れることになったんだ 」













2010/09/05 20:59 No.259

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u












 */゚... 06 ばいばい










 「 何それ …… 」

 「 引っ越すんだ。亜矢は転校することになる 」






 何を言ってるの ?

 引っ越す ?

 転校 ?



 「 亜矢 …… ごめんね。

  お父さんの仕事の関係で ―― 」




 知らない。

 そんなこと聞きたくない。





 あたしは何も言わず

 家を出た。


 お父さんとお母さんは、それを引き止めなかった。




 そして ――



 ゆう君の家の方を見ると、

 ゆう君と彩が抱き合って髪を撫でていた。





 あたしの視線にゆう君が気づいた。

 彩も、ゆう君につられてあたしを見た。





 ゆう君は彩を離した。

 気まずくて、視線を逸らした。




 「 亜矢 …… え、嘘 ―― 」




 彩は、何も理解できずにいるのか

 絶句しているような様子だった。






 それから、あたしとゆう君とカイが幼馴染のことや

 家が隣同士ということを彩に説明した。





 「 そうなの …… 」

 「 だから ―― 気にしないでね 」

 「 亜矢と雄哉は、ただの幼馴染ってコトでしょ ? 」




 ―― やめてよ



 ただの幼馴染じゃない。




 あたしは彩の言葉や引っ越しのこと、

 そんな色々なことばかりが

 頭の中で混乱して、怒りが沸いてきた。





 「 ... 当たり前じゃん

  ただの幼馴染 ―― だって彩は

   俺と付き合ってるだろ ? 」





 そうだ。

 ゆう君にとってのあたしは、ただの幼馴染なんだ。



 あたしだけだった。

 ゆう君を大切に想っているのは、

 あたしだけだったんだ。



 勝手に恋してたんだ。






 「 …… そ、そうだよ ... 」


 「 亜矢 …… ちょっと、

  きてくれない ... かな ? 」


 「 いいよ ―― 」

 「 雄哉ごめんね。また今度っ 連絡するから ! 」






 それから彩につれていかれ ――

 街の外れの翠丘に着いた。




 翠丘は、大きな木が一本植えてあり、

 ベンチが数個あって

 自販機もある。

 そして芝生が広がっていて

 自然豊かな場所だった。


 だけど …… 場所とは裏腹に、

 これから悲しい事が起こるなんて

 思いもしなかった。


 でも、そんなこともなかった。

 こうなるのは、少しだけ目に見えていた。




 「 …… 」




 翠丘に着いてから、何一つとして

 言葉を交わしていない。



 ―― すると 。



 突然、彩があたしを木に押し付けた。






 「 …… なんで ?

  なんであんたが ……

  雄哉は ――

  なんでよっ !!

  幼馴染なんてずるい ! 」



 どくん ……




 「 どうして教えてくれなかったの !?

  酷い ……

  あんたが雄哉を振り回してるんだよ ! 」




 あたしがゆう君を振り回してるの ?



 それなら、あたしはどうすればいいの。

 だって、好きな気持ちは抑えきれないよ。



 「 ―― あたしとゆう君は、

  ただの幼馴染なんだよ ? 」


 「 そんなわけない !!

 あんたは雄哉が好きなんでしょ !? 」


 「 …… 」


 「 やっぱり、ね …… 」



 彩は悲しい表情を浮かべた。

 今にも泣きそうだった。


 泣きたいのはこっちだよ ……



 彩は、ゆう君と両思いなのに ――

 付き合ってるのに ――



 「 雄哉は、きっとあんたのことが好きだよ 」

 「 …… 何言ってるの ? 」

 「 あたし、雄哉のこと見ててわかるから。

  最近の雄哉、なんか変だなって思うんだ。

  だって …… 前も、笑ってくれないことがあったりした。

  だけど、あたしは雄哉のれっきとした彼女。

  だから ―― あんたにはあきらめてもらう 」



 彩は悲しい表情から

 怒りの表情へと変わった。


 こんな彩を見たのは初めてだった。

 でも、あたしはそれを見て恐くはならなかった。

 切なくなったんだ。

 彩が、こんなにもゆう君を想っていたことを

 初めて知ったから。

 あたしだってすごくゆう君のことが好き。

 だけど ―― 彩があたし以上にゆう君を好きだという気持ちが

 すごく伝わってきたんだ。


 切ない気持ちや、悔しい気持ちが混じり合って

 どうにかなりそうだった。



 「 彩 …… あたしは ―― 」

 「 黙って !! 」

 「 ちょっと ! やめなよ ! 」



 彩の後ろから、誰かが彩を押さえた。

 見たことがある顔 ……

 確か、内山さん ……




 「 放して !! 関係ない奴は引っ込んでよ ! 」

 「 今まで見てて黙ってたけど、

  もうそんなことできない ! 」

 「 放してって言ってんでしょ !! 」




 激しい言い合いで、

 周囲の人はみんな迷惑そうだった。


 どうしよう ……


 気持ちや、頭の中が混乱していた。










2010/09/12 21:28 No.260

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 彩は内山さんに後ろから押さえられながらも、

 あたしの方を向いた。



 「 ねえっ !! あきらめてよぉっ !! 」


 「 …… 」


 「 あんたなんかよりあたしのほうが

  絶対絶対 ... 雄哉を

   愛してるよっ !! ねえ ――

   もう雄哉に関わらないでよ …… 」




 あたしの頭の中で、何かがプツっと切れた。

 そしてその何かが崩れ落ちるような

 そんな感覚がした。



 「 …… あきらめきれないよっ !!

  あたしだって ―― あたしだって、

   ゆう君のこと、愛してる ... 」




 心に溜めていた言葉を大声で出した。

 今まで大人しくていたけど、

 あたしの気持ちだって

 彩に伝えたかったから。



 そうだよ。

 あたしだってゆう君が好きなんだ。

 あきらめられないんだ。

 誰かに言われて、

 気持ちを制止するなんて

 そんなのおかしいから。




 すると、誰かが近づく気配がした。

 でもそのときあたしは、

 見なくても誰かをわかってた。

 それは ―― きっと好きだから ……



 「 雄哉 ―― 」 「 ゆう君 …… 」




 あたしと彩の声が重なった。



 切なそうで、苦しそうで、

 それでいて逞しいゆう君の姿だった。



 「 …… ごめん、亜矢 」




 ゆう君はあたしの方を向いて謝った。



 ―― すごく、嫌な感じがした。

 不安になった。




 「 な、に ―― 」


 「 俺も、すんごい亜矢の事

  愛してた。それに、いまでも

   そのキモチは変わらない 」



 ゆう君はそのまま言葉を続けた。




 「 けど …… いまさら

  遅いよ ―― 俺はずっと

  待ってたけど、亜矢は

  結局きてくれなかった。

  でも、彩は違ったんだ

  ずっと亜矢を好きな俺を

  一生懸命愛して、待っててくれた。

  そんな彩が好きになった。

  それで付き合ったんだし ...

  なのに、そんな今更になって

  好きって言われても無理だよ

  前にも言ったけど ……

  俺には、大切な人がいる 」




 あたしは、フラれたんだね。

 そっか。


 ゆう君は、やっぱり彩だったんだ ……


 叶わない恋だった。

 もう少し早かったら ――

 叶う恋だったのに。



 どうして、あたしはちゃんと

 自分の気持ちと向き合えなかったの ?


 今更じゃ遅かったんだよ。



 でも ―― もういいんだ。

 もう、きっとゆう君と会うことはないから。




 「 わかったよっ ... 」




 あたしは、ぐっと歯を噛み締めた。




 「 忘れるからっ ……

  もう、関わらないよ ――

   どうせ、引っ越すし ... 」




 「 亜矢 …… ? 」






 落ち着きを取り戻した彩、

 傍で見ている内山さん、

 あたしの方を向いているゆう君、

 みんな同じような驚いた表情で見ていた。




 「 っ ... さよなら ! 」




 あたしはその言葉だけ残して、

 走って翠丘を去った。


 近くに梨花ちゃんやカイがいて、

 すれ違い際に何か言われたけど

 耳に入ってこなかった。





 *






 雪が降っているその景色は、

 綺麗すぎて涙がこぼれた。


 ボロボロになった心に、

 さようならの言葉だけが

 響いていた。


 素直になることが

 どれだけ大切なことか。


 思い出はいつまでも

 輝いているのかな。

 けれど、思い出なんか

 結局一つもなかった。


 最後の苦しかった

 思いだけが、

 今も心に残っていた。













2010/09/16 12:57 No.261

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 「 マジで …… 」

 「 やだよぉ …… 」



 翌日、学校でみんなに引っ越しすること、

 そして学校を転校することを言った。

 みんな嫌そうにグチグチと言っていた。



 「 なんで ? 」

 「 なんか、お父さんの仕事のせいで ―― 」

 「 はぁ ? なんだし親父 !

  マジ意味不じゃん !! 」



 こうやって、みんなと話すのも

 あとちょっとなんだ。


 3月には、この学校を辞める。

 そして、新しい高校は私立へ行くことになる。

 近くの高校は公立と私立があって、

 公立は転入生を受け入れてくれなかった。

 私立は受け入れてくれて、

 軽めの試験を受けて合格した。

 4月からは、その高校に行くんだ。

 私立だから学費が高く費やすと思いきや、

 割とかからないようだった。





 「 ねぇ ! 今度お別れパーティーしようよ ! 」

 「 いいね ! 亜矢、どうよ ? 」

 「 うん。じゃあ、うちでやらない ? 」

 「 OK〜♪ んじゃ、春休みやろ !! 」




 春休みに、うちでお別れパーティーを

 やることが決定した。


 梓、由希、愛、奈々はもちろん、

 他にもたくさんの友達が

 パーティーの計画を立ててくれた。




 *





 そして ――

 3月1日。



 帰りのホームルーム ――




 「 えーっと、赤木が引っ越すということで

  今日でこの学校を辞めます 」




 友達みんな泣いていた。

 あたしはそんな友達の涙を見て、

 改めて友達がどれだけ大切かを感じた。





 「 それじゃあ赤木、最後に一言 」





 あたしは、前に行った。





 「 えっと …… 一言じゃないけど

  最後に、話します 」




 小さく深呼吸をして、

 思いを話した。





 「 私は、最初地味で冴えなくて

  クラスでも影の薄い存在でした。

  軽度ないじめも受けました。

  クラスにも全然馴染めないし、

  親友だった子にも絶交されて、

  学校がすごく嫌でした。

  でも、私は変わりました。

  外見を変えてから、今まで

  話したことのない可愛い子に

  声をかけられ、仲良くなりました。

  もちろん、内面も大切だと思います。

  だけど、外見を変えるだけでも

  話しかけることができたりします。

  だから私は、内面も外見も

  どちらも大切だと気づきました。

  すごく嫌だった学校は、今では

  すごく大好きで、居心地がいいです。

  このクラスで、まだ話したことのない子も

  いるけど、私にとってその子も

  大切な仲間です。このクラスになれたことで

  色んなことを経験しました。

  辛いことも楽しいことも。

  色々あったけど、全部大切な思い出です。

  今まで本当にありがとうございました 」




 あたしは、話し終えると一歩下がって、

 深く頭を下げた。


 ありがとう。


 またいつか会えるよね。



 たくさんの思い出が作れました。










 最後にあたしは、屋上へ向かった。

 ここでも、大切な思い出が詰まっている。




 ―― ここで、初めてあたしの気持ちを

 ゆう君に伝えた。



 ―― ここで、バレンタインのチョコを渡した。





 幸せな思い出だけが残っていた ……





 「 …… 好きだったよ。

  今でも好きだよ 」






 あたしの目からは、あふれんばかりの涙が

 こぼれ落ちていた。



 この学校で色々なことがあった。

 それも、たった1年の間に。




 辛くて、悲しくて、寂しいこと。


 それでも


 楽しくて、嬉しくて、幸せなこともあった。








 だけど ――

 もっと、もっといっぱい



 思い出作りたかった 。

















2010/09/16 13:54 No.262

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 それから、引っ越しの準備に

 取り掛かることになった。


 学校がないのは、楽だとも思ったけど

 やっぱり少し悲しかった。


 友達に会えないことが、

 あたしのストレスの原因でもあった。

 学校があって毎日あっていたけど、

 今は会えない。

 メールや電話はするけど、

 何かが物足りない感じがしたんだ。

 これからみんなと離れるのに ――

 そんな生活、耐えられるのかな ?



 それと ……



 ゆう君のこと。

 どうせ離れるんだから、

 きっとその内忘れるはず。


 だけど ―― あたしは忘れたくなんてなかった。

 今も好きだから。





 *






 そして …… 高校が春休みになった。

 今日は予定していた、お別れパーティーの日。

 この街を離れるのは、明後日。

 もう2日しかないんだ。

 今日は思いっきり楽しもう。

 みんなと騒ぐ ―― 最後の一日だ。



 「 亜矢ぁぁ !! 」

 「 会いたかったよー ! 」




 たくさんの友達が来てくれた。




 とにかく思いっきり騒いで楽しんだ。

 引っ越しのことなんか、

 これっぽっちも頭の中になかった。

 幸せな時間だった。


 みんなでゲームしたり、

 お菓子を食べたり、

 恋バナしたり ――――



 このまま時間が止まってほしかった。









 「 元気でね …… 」

 「 メールするね 」

 「 忘れないから ! 」

 「 また会おうね 」


 みんなそれぞれ一言ずつ、

 言葉を残してくれた。


 その一言一言が心に刻まれて、

 涙を流した。

 数人ほど、同じように涙を流す子もいた。

 だけど最後にはみんな笑顔だった。


 「 みんな ―― 今日は本当にありがとう。

  すごく楽しかったよ。

  みんなのこと忘れない ……

  大好きだよ 」





 友達の温かさ。

 友達の言葉。

 友達の存在。


 どれだけ大切なのかを、

 みんなに教えてもらった。



 最高の思い出が作れました。














2010/09/19 02:11 No.263

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 「 亜矢ー ! 行くよー ! 」




 1階から、お母さんの声が聞こえた。

 あたしはそれに軽く返事をした。


 そして ―― 何一つない

 がらがらの部屋を見渡し、

 最後に目に焼きつかせた。




 家を出ると、引っ越しの業者のトラックが

 先に行ったところが丁度見えた。



 「 それじゃあ亜矢 ……

  もう行くけどいい ? 」




 お母さんは少し切なそうだった。

 既に車に乗っているお父さんも、

 同じように切なそうだった。




 あたしは自分の家ではなく、

 隣の家を見つめていた。



 隣の家 ―― それは、ゆう君の家。




 ゆう君とは、

 何か大きな出来事がなければ

 もうきっと会うことはないだろう。





 「 …… ばいばい 」






 まだ少し寒さのある風が吹いた。

 だけど、それにはほんの少し

 春の匂いがした。












 *









 */゚... 07 悲しい恋








 今日は、新しい高校の始業式。

 あたしは今日からそこへ行くんだ。




 「 大丈夫か ? 」

 「 うん 」

 「 何かあったら、言うんだぞ 」

 「 そんなに心配しなくてもへーきだよ 」




 学校へは、お父さんと来ていた。

 お母さんはお腹が痛いと言っていたから。

 だけど全然元気そうだったし、

 きっと仮病だなと思った。

 お母さんは結構面倒くさがりだからだ。



 お父さんとは、前まで全く会話をしていなかったけど

 最近になって漸く会話をするようになった。

 特に理由なんてなかった。

 自然と、会話をするようになっていたんだ。




 職員室に入ると、担任である先生が

 あたしを迎えてくれた。

 お父さんは早く仕事に行かなきゃならないから

 その場で別れた。



 「 赤木さん、よろしくね。

  私は峰田良子です 」


 「 よろしくお願いしますっ 」



 担任の先生は、若くて優しい女の先生だった。

 クラスは2年4組。

 教室の前に着いた。



 ガラガラッ



 先に先生が教室へ入っていき、

 あたしは後からついていった。

 クラスは最初からざわついていたが、

 それは更に増していった。



 「 今日から2年生ですねー

  また担任が私の人もいると思うけど、

  1年間よろしくね ! 」




 先生は明るい笑顔で言った。

 生徒たちは、そんな先生よりも

 あたしの方へ視線を向けていた。




 「 えーそれで、今日からこの学校に

  転入してきた ――

  じゃあ、赤木さん自己紹介して 」


 「 はい 」



 周りは一気に静まった。

 あたしは小さく深呼吸をする。



 「 東京から来ました、

  赤木亜矢です。

  よろしくお願いします 」




 短く自己紹介をして、軽く頭を下げた。




 「 じゃあ、空いてる席に座って 」




 空いてる席 ――

 窓際の、前から2番目の席だった。

 あたしはそこに座った。



 すると、後ろから

 人差し指で肩をちょんちょん、とされた。

 あたしはゆっくり振り向いた。



 「 うち、相川ゆか ! よろしくね 」



 相川さんは、茶髪に金のメッシュが入っている

 ロングストレートで、化粧も濃くて、

 いかにもギャルって感じだった。

 だけど、話し方や雰囲気が優しし感じで、

 なんだか落ち着いた。

 笑うと八重歯が見えるのが印象的だった。














2010/09/19 02:52 No.264

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 授業は3時間で終わった。



 「 赤木さん、色々渡したいものがあるから

  職員室に来てね 」


 「 はい 」



 あたしは、手早く帰りの支度をした。

 すると、後ろから相川さんの声がした。



 「 亜矢ちゃん !

  先生の用事終わったらどっかでお昼しない ? 」


 「 いいよ ! 」


 「 じゃあ下駄箱で待ってるね 」



 相川さんと約束を交わして、職員室へ向かった。

 ―― 相川さんと、仲良くなれるかな ?




 職員室で、先生に書類など受け取って

 軽く話して用事を済ませた。

 そして即座に下駄箱へ向かった。




 「 あっ亜矢ちゃん ! 早かったね 」

 「 うん。じゃあ行こっか ! 」




 相川さんと街へ繰り出した。

 この地域は、田舎のように静かだけど

 街へ出れば都会の雰囲気があった。


 そして、中高生が行き交うような

 ファーストフード店でお昼を食べた。



 「 亜矢ちゃんは東京から来たんだよね ?

  いいねぇ、都会 ! どうしてこんな田舎に来たの ? 」


 「 東京の田舎だったけどね。

  お父さんの仕事の都合で ―― 」


 「 そっかぁ 」


 「 相川さんはここが地元 ? 」


 「 うん ! てか相川さんとか堅苦しいっしょ !

  ゆかでいいよ ♪ 」


 「 わかった。じゃああたしも亜矢でいいよ ! 」


 「 ありがとっ 」




 それからゆかにこの街のことを

 色々教えてもらった。

 交友関係のことも教えてもらい、

 今度紹介してくれると言ってくれた。



 よかった。友達ができて。

 前のいじめのこととが少しだけトラウマだった。

 だから少し不安な気持ちがあったんだ。

 でも ―― こうして友達ができたからよかった。





 「 じゃあねー 」

 「 また明日っ ! 」





 ゆかと別れて、家へ向かった。

 駅から家への道は大体覚えた。

 まだ慣れないけど、これから

 頑張ってこの街に慣れよう ――




 家へ着くと、誰もいなかった。



 リビングも寝室も、まだどこも

 全部片付けきれていなかった。

 唯一あたしの部屋だけが

 少しは綺麗だった。




 リビングのソファに腰かけ、

 CDプレーヤーで曲をかけた。

 お気に入りの曲が次々に流れてゆく。




 すると ――

 インターホンが鳴った。

 あたしは少しめんどくさいながらも

 受話器を取った。

 そして …… 画面を見ると ――



 「 はい ... って ―― 」




 画面の向こう側には ――

 ゆう君が映っていた。




 『 亜矢 …… ? 』

 「 と、とりあえずオートロックドア解除するねっ !! 」




 あたしは焦りと困惑が行き交う中で、

 オートロックドアを解除した。




 ―― どうしてゆう君が ……

 住所も教えてないのに。

 何かの錯覚 ? 夢 ?

 頬をぎゅっとつねると、そこからは

 現実ということを示す痛みが伝わってきた。



 あたしは家の扉の前でゆう君を待った。



 そして ―― ゆう君が現れた。

 制服姿で、雰囲気も少し変わっていた。

 凛々しくなったというか ……

 大人っぽくなった感じがした。

 また一段とかっこよくなっていて

 ドキドキした。





 「 ひさしぶりっ、だね …… 」

 「 ああ そうだなっ、 」





 目の前にゆう君がいるというだけで、

 こんなにも胸の鼓動が高鳴っている。

 それは、恋をしているという証拠 ――――



 だって、ずっと会いたかったから。

 会えなくて、本当は寂しかった。

 忘れようってあきらめようって

 心の中で決意しながらも、

 結局忘れられなくて、あきらめられない

 自分がいたから。




 「 中 ―― 入る ? 」

 「 入っても大丈夫か ? 」

 「 いま誰もいないから大丈夫だよ 」





 ゆう君を家へ入れた。

 リビングがまだ片付けていないことを

 少し後悔した。



 「 汚くてごめんね …… お茶入れるね 」

 「 ... さんきゅっ 」




 あたしはキッチンで2つのコップに

 お茶を注いだ。







 ゆう君 ――



 あのときの気持ちがよみがえってきています。

 また、好きになりそうな予感がします。











2010/09/25 13:29 No.265

ゆい@tiara ★hSCQfUPXhGU_9u









 お茶の入ったコップを持って、

 リビングへ向かった。




 「 ゆう君っ お茶もっ ... ―― 」





 ゆう君へコップを渡そうとしたとき、

 ゆう君は涙を流していた。


 どうしたんだろう ……




 「 ご、ごめんっ …… ついっ 」

 「 ゆう君 ? どうしたのっ …… ?! 」




 ゆう君は涙を拭って、あたしを見た。

 少しドキっとし ――――




 「 この歌 …… いいな 」

 「 ほんとっ ?! あたしもそう思うよっ ! 」

 「 なんか泣けてきた 」

 「 沢尻エリカのFREEって曲なんだよ〜 」





 嬉しかった。

 ゆう君が、あたしと同じ気持ちだったこと。

 " いい曲 "

 それだけの些細なことだけど、

 でも、だからこそすごく嬉しいと思った。

 些細なことだけでも嬉しくなれたんだ。








 携帯が鳴った。

 メールの受信音だ。

 携帯を開いて、新着メールを見た。



 〈受信:お母さん 今日、仕事やるために色々
         紹介してもらってるから
         帰れそうにないの
         お父さんも事情があって
         帰れないって
         だから戸締りしっかりね!
         夕飯は適当に食べていいよ〉



 えっ ……

 帰れないって ――



 「 ―― どうしたんだよ ? 」

 「 ... お母さんとお父さん、帰って来れないって、 」

 「 えっ …… まじで ? 」


 あたしは携帯を閉じて机に置いた。


 「 なんか、お母さんがまた仕事始めるみたいで …… 」

 「 そっか …… 気を付けろよ。俺、帰るから ―― 」



 ゆう君は鞄を持って立ち上がった。



 ―― 嫌だ。

 行ってほしくない。

 でも、ゆう君に迷惑かけたくない。

 だけど …… これで、次いつ会えるかわからない。



 …… 行ってほしくない 。



 その気持ちの方が大きかった。




 「 、待って ! 」




 ゆう君の腕をつかむと、

 こっちを向いた。




 「 …… ? 」

 「 あたし一人じゃ不安だから ... と、泊まっていかない ? 」




 " 泊まっていかない ? "


 これは ……

 ダメだったかな。



 ゆう君は困惑した表情を浮かべていた。


 嫌、だよね ……



 「 ごっごめんね ―― でも、よければ、だから 」




 ゆう君の腕をつかんでいた

 手を放した。




 「 …… いいよ、まだ明日は授業ないと思うし 」

 「 あ、ありがとうっ !! 」




 ゆう君、ごめん。

 いつも自分勝手で、わがままで。

 こんなあたしが幼馴染でごめん。

 もっと可愛くて優しくていい子だったらな ――




 その後、近くのファミレスへ行って

 夕食を済ませた。

 家に帰って、あたしはゆう君に

 親へ連絡することを勧めた。



 ゆう君が連絡を終えると ――




 「 …… 平気だった ? 」

 「 ... ああ、平気 」

 「 ごめんね ―― 今日から高2っていうのに 」




 ゆう君に迷惑をかけ、

 その上ゆう君の親にまで迷惑をかけてしまったことになる。

 改めて自分の行動達に罪悪感を感じた。



 「 先にお風呂入ってくるね ! 」



 この場にいるのが、少し苦痛になって

 お風呂へと逃げた。



 罪悪感を感じながらも、

 ゆう君と一緒に過ごせることが嬉しかった。

 ゆう君といるだけで、こんなにも

 幸せを感じることができる ――

 好きという気持ちは、どんどん大きくなっていた。



 素早くシャンプーとトリートメントをし、

 体を洗った。



 パジャマに着替えていると ……

 ゆう君の声が聞こえた。

 誰かと電話してるのかな ?

 盗み聞きになってしまうけど ――

 あたしは、耳を澄ました。




 「 んだ―― やっぱり ...

  彩のことは、友達関係としてしか

  見れなかったんだ ... 本当、まじで

  ごめんな …… 俺の事好きになって

  くれて、ほんとにサンキューな …… 」




 途中からだったけど、

 誰と話しているかがすぐにわかった。


 あや。


 一瞬、あたしのことかと思ったけど

 電話をしているなら ―― 彩、だから。



 ゆう君は …… 彩と別れる、の ?




 あたしはリビングの前の扉に立って、

 ゆう君の背中を見つめた。


 ゆう君の背中が、泣いてるように見えた。



 静かにリビングの戸を開け、

 声をかけた。



 「 ―― ゆう君 ! もういいよっ 」

 「 ―― あ、ああっ さんきゅ 」



 ドライヤーが壊れてるため、

 タオルで髪を拭いていた。

 きっとそれが少し不自然なのか、

 ゆう君はあたしを見ていた。

 ―― 恥ずかしいなぁ。



 「 ... あ、今の聞いてた ? 」

 「 えっ なんのこと …… ? 」




 あたしは、咄嗟に知らないフリをした。

 ゆう君にバレていないかな ――――




 ゆう君がお風呂に入っている間、

 重く静かな雰囲気が嫌になり

 テレビをつけた。










2010/10/10 17:28 No.266

ゆい@tiara ★KCc0WnalEa_9uK












 ドキドキしてる。

 さっきから、ずっと。

 ゆう君といる時は、いつだってドキドキしてる。




 テレビを見ていると、

 背後から足音が聞こえた。

 振り返ると、髪が濡れているゆう君がいた。

 初めてかもしれない。

 髪が濡れているところ、

 そしてお風呂上りというゆう君の姿。

 初めての一面だからもっとドキドキした。



 ゆう君は不思議そうな顔をした。

 それはあたしがゆう君を見据えて

 「あっ」と声を漏らしたからだ。



 「 どうかした ? 」

 「 いやっ …… あの、タオル使って ! 」



 慌てて傍にあったタオルをゆう君に渡した。


 すごく、すごく変だ。

 こんな自分がゆう君の目に映っていると思うと、

 恥ずかしくて溜まらなかった。


 だけど、ドキドキする気持ちは変わらないから ――



 「 さんきゅっ 」



 ゆう君はタオルを返した。



 恥ずかしいけれど。

 だけど好きだから。



 「 ―― ねえっ 」



 手に持っていたタオルが落ちた。





 ゆう君に抱き着いて、

 気持ちを告げた。




 「 …… あ、や ? 」

 「 ... 好き ―― だいすき …… 」

 「 ―― …… 」

 「 傍にいて。隣にいてほしいよ ... 」





 ゆう君しかいない。

 あたしが想えるただ一人の人。

 それはゆう君だよ。


 後悔したくない。

 自分の気持ちに嘘を吐きたくない。

 素直になりたい。




 好き。

 大好き。





 ゆう君はあたしの背中に

 腕を回した。




 「 俺も …… 」




 ゆう君が言いかけたとき ――

 ガチャッとドアが開く音がした。










2010/10/30 14:41 No.267
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