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廃墟旅館からの脱出

 ( ホラー小説投稿城 )
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紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

若い男性が“廃墟旅館”に訪れたときの話である。
男性は片手にスマホ、もう一つの手には懐中電灯を持って道と足元を照らしながら慎重に廃墟旅館を歩き回っていた。

「なんだ、何もいねぇじゃん。そろそろ帰るとすっか!」

男性は何事にも怯えることなく廃墟旅館を後にした。



____と思いきや、


「お兄さん、どうか私を助けてはくれませんか?」

背後で女性の声が聞こえ、すぐさま振り向いた。
そこには確かに女性の姿があり、足や腕は痣だらけ、顔には傷、服はボロボロで今にも破れそうだった。
あまりにも酷く醜い姿の女性を放っておけなかった、というお節介から始まった出来事。
その出来事はやがて“悲劇”になる。

メモ2018/05/21 18:43 : 紀田臨海☆V7aNUNRHqr6 @kidarinkai★iPhone-9BKRwR8VlG

◎ 第 一 章 ◎

登場人物:

主人公(俺)、シノ、姫様

あらすじ:

肝試しという好奇心に抗えずに廃墟旅館にたどり着く主人公。

だが、そこには女性がひとりポツンと座っていた。

助けを求められたものの歪な思いを抱き、複雑な気持ちになるところをシノという従業員に部屋を案内され、廃墟旅館で泊まることになる。

だが、ここを抜け出し、普通の生活を取り戻そうとする主人公は手がかりを探すも結局何も見つからない。

ある日、生死を彷徨っているという理由で廃墟旅館を訪れた新しいお客(四月朔日このは)に出会って___?


→ 第 二 章 ←

登場人物:

主人公、シノ、姫様、四月朔日(わたぬき)このは

関連リンク: 忌み子と鬼の子の物語 
ページ: 1


 
 

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 呪い

「えっ!?何!?」

驚きを隠せず声を上げてしまう。
廃墟旅館に何故女性がいる?という疑問が浮かぶ。
だが、女性は続けた。

「ずっと、ここで1人でいました。誰にも助けを求めることも出来ず、ここに1人でいました…ずっと。」

女性は片手に彼岸花を持っていた。
赤く不気味だが、その彼岸花は綺麗に凛としていた。

「不思議ですよね…生きてることができるなんて。貴方はどうしてここへ来たんですか?」

「あ、えっと…旅の途中でして。宿がないか探していたらここに辿り着きました。」

肝試しをしていた、なんて幼稚なことは言えず嘘をついた。
“どうしよう、すごく怖い”
今更になって芽生え始めた恐怖心。
最初は怖くも何も無かった。
遊び半分のつもりだった。
でも、幽霊よりも人よりもこの人と話してること自体が怖い。
そう思ってしまい、身震いしてしまう。

「あら、震えているんですか?大丈夫ですか?」

「あ……その…」

あれ、声が出ない!?
と、言うよりは思うように話せない。
口に出すことができない。

「可哀想に。震えちゃってる───」

「ヒィッ!」

ピタ、と腕に触れられた。
それは死人のように冷たかったのだ。
まるで、死人に触られてるみたいだ。

「あ、あの…?」

「もう、逃げないでくださいね───」

「えっ!?ちょ…何?」

腕を掴まれる。
骨が見えそうなくらいに細い腕なのに握られている感触は大きく捕えられたような感覚に囚われた。

「や、やめ…」

「やめない。お客様、貴方は私という呪いから逃げることはできませんよ。」

不敵な笑みを浮かべ、こちらを見つめる。
どこか満足そうな表情だった。


# 呪い 【完】

11ヶ月前 No.1

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 歪

「お客様、何を怯えているのですか?怖くないですよ、此処は貴方の求めている“宿”ですよ?」

「だ、だからやめろって!」

あまりの恐怖に叫んでしまう。
叫んだって、足掻いたって助かりはしない。
誰かが助けに来るわけでもない。
でも、助けがほしい。
“ 誰 か 助 け て ──── ”

「そんなに怒らないでくんなまし。お客様のことを煮るなり食うなりはしませんよ。」

「殺そうとしてるんだろ…?」

「しやせん。お客様は仏様、あ、いえ、神様ですから。それに放っておけない、と思ったのはそちらなのでは?」

「……」

図星、だ。
確かに俺は、この女性を放っておけない、と最初は思った。
けど、この調子なら何も心配ないだろう。
そして何故か俺のことを“お客様”って呼んでるし何なんだ…?

「ここから出ましょう?2人で一緒に助かりましょうよ。」

「……すぐに出口に向かえば出れるだろ。俺は出る。」

「ここの扉、出口等はもう既に閉まっております。」

「は、何で?」

そのとき、俺は歪な予感を感じた。
この旅館の空間ではない、増しては何かが壊れているわけでもない、そんな予感がした。

「……もう出れねぇってことかよ。お前はそれが言いたいんだろ?」

「はい、お客様!」

何で嬉しそうにするんだよ、こいつ。
だが、どうなろうと最終的にはここから逃げて外の世界へ帰ってやる。

「絶対帰ってやるからな…!」

そんな熱い気持ちを忘れずに俺は脱出のための手がかりを探すことにした。

# 歪 【完】

11ヶ月前 No.2

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# シノ

「そういや、お前って何で此処にいるんだっけ?」

「…気になりますか?」

「そりゃあな。俺のことも最初、お兄さんって呼んでたのに、お客様になってるし。」

「此処は昔はちゃんとした旅館でした。でも、今はちょっと変わった旅館なんですよ。廃墟旅館、いつしか人間たちにはそう呼ばれた。」

「はぁ?だって、どう見ても廃墟旅館でしょこれ。しかも“人間たち”ってまるで人間じゃないみたいに言ってるし。何があったの?」

「此処はね、もう人間のお客様が来れるような場所じゃないってこと。でも、貴方は此処へ来れた。どうしてか分かる?」

「……知らねぇよ!迷ったんだよ此処に!」

「うふふ…お客様、そう仰らずにノリに乗るのがベターですよ?」

“もう訳わからねぇ”
現実なのかも夢なのかも分からねぇ。
怖いという気持ちは無くなるものの頭が混乱していたのである。

「姫様!お客様ですか?」

「えっ…姫!?」

後ろを振り向くと黒いゴスロリのような服を着た女性が立っていた。
前髪ぱっつんのボブヘアーで色白の綺麗な女性であった。

「シノ。お客様がいらしたわ。案内してあげて。」

「はい、姫様。お客様、どうぞ後ろへ。」

「は、はぁ…」

泊まりに来たわけじゃねぇ……!!
案内されるのは部屋じゃなくて出口が良いわっ!!

「どうぞ、お客様。古くて汚い部屋ですが自由に使って構いませんわ。大声で歌うのもあり、暴れるのあり、煮るなり焼くなりあり。こんな好条件なお部屋、滅多にないでしょ?」

古くて汚いって分かってんなら掃除くらいしとけよ!よくこんな部屋をお客様に勧める気になったな!!
内心そう思いつつも口に出さずに「ありがとう」とだけ言っておいた。

「あ、あとお客様。早くこの旅館のから逃げることね。どうせ馬鹿どものやる遊び、肝試しでもしたんでしょ?」

「は、はぁ…」

図星だ。
っていうかここ営業してるの!?
普通にこの人従業員だよね!?ねえ!?

「まあ良いわ。好奇心から始まることはよくあることよ。でも逃げなさいよ。ここから必ず───」

「お前も迷い込んだのか…?そうか肝試しでもして…」

「……食べられる前に早くここから逃げなさい。それと姫様には近付かないようにね。───殺されたくなければ」

脅迫されたかのような気持ちだ。
姫様、言わば俺に助けを求めてきたやつが何かを握っているのだろうか。

「姫様に殺されるたまじゃねぇ…!覚えておけ、絶対出口ぶっ壊してでも抜け出してやんよ。」

「ふうん。せいぜい楽しみにしておくわ。お客様。」

シノは見下すかのように言い放ったあと、嘲笑して部屋をあとにした。
俺は真っ暗闇の部屋に1人取り残された後、頭を抱えて悩んでいた。

# シノ 【完】

11ヶ月前 No.3

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 旅館

部屋に手がかりがないかを探す。
此処も掃除したら綺麗になると思うんだけどな…と思いホコリを払って何か書かれてないか、窓を開けて外の様子はどうなっているか、怪しいところはないかを調べる。

「ん?てか、これ閉じ込められたわけじゃないよね!?」

襖を開けようとするも、向こう側から誰かがそれを防いでいるかのように開かない。
(くそ…これじゃ閉じ込められた同然だ!)
どうにかしてでも開かせないと出れない。

「なあ、おい!誰か助けてくれよ!」

叫ぶものの従業員は2人だけ。
そもそも従業員なのかも謎である。
何でこんな廃墟旅館に人がいるわけ?って疑問はさておき足音も何も聞こえない。
ましては誰かが此処へ来る様子もない。

「はぁ…」

溜息をこぼし壁にもたれる。
もたれてすぐに壊れちゃいそうな壁。
来た道を辿れば良いものの何が何なのかも分からない。

「好奇心から始まって結果コレかよ…」

「もし、お客様。失礼しますよ。」

襖が開く音がした。
パッと目を覚ますと目の前には姫様がいた。

「ひ、姫様…」

「お客様、私のことを姫様だなんて…。もしやシノの影響ですか?」

「実際姫様じゃないの?」

「シノが勝手に呼んでるだけですよ。でもお客様に姫だなんて悪くないかもですね!」

「おうよ。これじゃあどっちが営業なのか分からなくなるけどな。」

「そうですね…!お客様のお名前、聞いても良いですか?」

「俺の名前は─────」

(あれ、何だっけ?確か俺の名前は───)
記憶が曖昧だし名前が分からない。
何を言おうとしたのかすら分からない。

「俺は……えっと…」

「姫様、お食事の準備が整いました。お客様も早く来なさい。」

「ありがとう。さあ、行きましょう?」

「お、おう…」

(てかお食事!?何それ、本物の旅館そのものじゃん!!!)
(ここ廃墟旅館だよね!?)

「あ、あの…食事って何ですか…」

「あら、お客様は食事を知らないの?」

「いや、その…何でこんなとこで食事できるのかって話!」

「此処は廃墟旅館となってからは、あの世のお客様がご利用しているの。」

「……はあ?」

「……馬鹿」

「いや聞こえてるから!」

何気ない会話を交わしながら食事のお座敷に向かう。
あの世の人たちがこの旅館には集まるってことか……場違いな気がしてきた。
怪しい薬とか入ってそうで食べたくないがお腹は空腹だ。空腹を満たすには此処の旅館の飯を食うしかない。
そう決意した。

# 旅館 【完】

11ヶ月前 No.4

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 暗黒物質

「それとお客様。お客様に手を出す方はいないと思われるが万が一の場合があったら、すぐにシノの方へ来なさい。最近ここは荒っぽいから気が立ってるあの世の方が多かったりする。」

「ちょ、怖いこと言うなよ…」

「何も怖い事じゃないわ。無様な面だけは見せないでちょうだいね。」

「あっ!シノ、私もお客様とご一緒して良い?」

「なっ!姫様!?だめです、姫様にはシノといてもらわないと…!」

何故かこっちを睨んでくるシノ。
(てか、シノの目怖すぎだろ……そんなに姫様と離れたくないのかよ…!)

「でも、心配なの。シノは1人で平気だろうけど、お客様を放っておくことはできない。」

(姫様良いやつすぎ…!)
姫様の人間性に感心していると、諦めたかのようにシノは溜息をつき、「どうぞ好きにしてください」と言わんばかりの顔をした。

「シノ、この恩は必ず返すわ。ありがとう!」

「…っ!ああ、もう知りません!早く奴と一緒に座敷の方へ向かってください!これからシノは営業します!」

「うふふ……頑張って!」

「は、はい!」

これはまるで先輩後輩の関係のようだった。てか、シノ姫様の前だと随分対応違うのな。
俺には絶対営業スマイルも見せないくせに!

「シノ、照れ屋さんなんです。お客様、さあ、座敷へ向かいましょうか。」

「おう、そうだな。そういや、此処の飯って上手いのか?」

「んー…口に合わなくてもシノの前では美味しいですって言っておかないと、シノに殺されちゃいますよ?」

「あー…確かに。まあ、自分で味は確認するか!」

「そうそう、自分で確認しないと分からないですからね!」

他愛のない話をしながら歩いて行く。
するとあっという間にお座敷に着いてしまった。

「うえっ!?」

その光景に驚いを隠せなかった。
運ばれてきた飯は外観良さそうで美味しそうなのだが匂いが酷かった。
鉄と何かが混ざり合った匂い、そして周りの客は美味しそうに食べている。

(え!?待って、俺って幽霊見えちゃうの…!?)

「お客様、どうぞお召し上がりください!」

「……いただきます。」

まずは白米を口に入れる。
(ん!?何これ!酷すぎだろこれ!)
ジュクジュクした感触、だけどどこか芯があるように固い。
(見た目はすっごい良いのに何この味!詐欺だろ!)
次に味噌汁を飲もう……としたが、ここでふと気付いた。
(これ…味噌が赤い!?ん、てかこの匂い…)
さっきの鉄の匂いとやらは、きっとこの味噌汁から匂ってきたものだ。
(これ、血じゃん…血でしょこれ)

「ご馳走様でした。とてもと言うほど味が個性的で面白いですね。」

棒読みになってしまった。
でもその言葉を真に受け取った姫様は何故か喜んでいる。

「シノに早速報告しなきゃ!味を気に入ったってことですよね!!」

「はい、色々な意味で凄かったでーす」

「これ、シノが作ったやつなの!シノの料理って本当凄いのね!!」

いや、天然ですか姫様。
とりあえず味は不快だ、コンビニの弁当を食べたい気分だ。
家事ができない俺はずっとコンビニ弁当で生きてきた。
だからコンビニの食べ物は俺にとっての生き甲斐なんだ。
……これほど不味いものは食べたことがねぇ。

「もう部屋に戻って寝る。おやすみ。」

とりあえず今日は諦めよう。

# 暗黒物質 【完】

11ヶ月前 No.5

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 部屋

「ん…」

何か時計の針が動いている音がする。
チクタクチクタク…
さて、この部屋に時計なんてあっただろうか?
それに時計の針で起きるほど睡眠は浅くない。
まあちょうど良い、起きて時計があるか確認しよう。
そう思い、体を起こして辺りを見回す。

「…え、何あれ…」

よく見ると壁には掛け軸が掛けられてあった。
それだけならまだ普通だろうけど問題は、その掛け軸がズレており、そこから何か部屋のようなものが見えるのだ。

「隠し部屋…?に、しては狭すぎるかな…?」

掛け軸に近付くとやはり隠し部屋のようになっており、奥に奥にと続いている。
ちょっとした好奇心でまた心が揺らぐ。
(ちょっとだけ、バレなきゃ良いだけだろ)
そう思い、掛け軸を外して奥の部屋に進む。

チクタクチクタク…

時計の針の音が一層大きくなってる気がする。
原因はこの部屋なのか…?

「…たく……どう、して…」

(こ、声がする!?)
声の主は分からない。
でも、この廃墟旅館にいるのは姫様とシノの2人だけなはずだが……もしや、この旅館に遊びに来ているあの世の者なのだろうか。
恐怖心より気になる気持ちが大きくなっていく。

「シノ、どうしたの?」

「姫様を寝室に連れ込むとは…お客だからといって甘えないでほしいのよ。」

「寝付きが悪いから、リラックスして寝ようとして隣に来てもらっただけなのにか?ここの従業員はタチが悪いな。」

「お客様、大変申し訳ございません!」

声の主は男性であり、恐らくあの世の者だろう。
(てか、シノ……お前それ嫉妬なんじゃねぇの…)
心の中で呆れながらも会話を聞こうと必死だった。

「姫様に触るなんて許せません!姫様、シノは何も悪くないんです!」

「シノ、落ち着いて。お客様、大変申し訳ございませんでした。お詫びとして何ですが“彼岸室”の方で休眠をお取りになりますか?」

「彼岸室…!」

「シノ、案内してあげなさい。お客様にお詫びとしてなんだから!」

(ん?てか、こっち来る!?)
やばい、寝室に戻らねぇと!
咄嗟に慌てたせいか、逃げようとしたときにギィと床が音を立てる。
(あ、やば…)

「誰なの!?」

シノが叫んだ。
うわ、これは殺されるかな…?
でも仕方ない、時計の針が大きすぎたから!

「…お前!起きてたの?」

「お客様!どうなさいました?」

「シノ、姫様……こりゃ盗み聞きじゃねぇんだ…!」

「お客様、寝室に戻ろうとしたのね。けど掛け軸が外されてるから帰りは帰れない。」

「え!?何それ?」

「あの掛け軸は人間のお客様と、死者…言わばあの世の方との部屋を境とするためにあるのよ。それをお客様は外した。お客様でいう玄関の鍵のような存在なんだよ、アレ。」

「え、いや。シノ、冗談?」

「冗談じゃないわよ。ま、シノはあの世でもないこの世でもない人だから、行ったり来たりすることできるのよ?」

「だったら掛け軸と戻してくれよ!怖いんだよ正直言って!」

「はいはい…じゃあ、姫様。仕方ないですが、この馬鹿なお客様の付き添いに行きますのでこちらのお客様の面倒は見ることができないです…」

「分かった。じゃあ、ついでにシノはお客様の部屋を監視しておくと良いわ。────お客様が震えているから。」

11ヶ月前 No.6

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 部屋

「はい、姫様。では、おやすみなさい。」

客である俺と姫様とは大分態度が違う。
(普通は客である俺に改まるべきだろ…)
なんてことは言えず、心に留めておく。

「シノ、監視って言ってもお前はまた別の部屋で寝て良いよ。そうか姫様のとこに戻ったら?姫様の方が心配だろ?」

「さっきまであんなにビビりだったくせに。いきなり調子上がったようなツラ見せないでほしいのよ!」

「え、ああ、悪ぃ…。でもアレはアレじゃん、本当怖かったんだよ!特にシノ、お前あの世の人間だろ?あの世でもこの世でもないとか何者って感じだし。宇宙人だってあの世かこの世かってのはハッキリしてんじゃん?宇宙人越えるわけないでしょ…」

「……お客様、宇宙人はこの世の人なの?」

「え、そうなんじゃないの?」

「え、あの世でしょ?」

「え、この世でしょ。ハッキリとした理由はないけどさ、この世じゃん?」

「くだらない……言い争ってる間に部屋に着いちゃった。お客様、今晩シノは襖越しからお客様の様子を見るとする。だから変なことしないようにね!」

そういうとシノは襖を開けて部屋から出ていった。
相変わらず汚い部屋だな、と実感してしまう。
とりあえず、今日も寝よう。
身を包むことができる布団があれば充分だ、そう思いながら瞼を閉じたのだった。

# 部屋【完】

8ヶ月前 No.7

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=9BKRwR8VlG

# 四月朔日このは

「お客様、起きて!」

「おい、起きろ!」

「んーっ〜?」

視界がぼやけつつも目を開けると鬼のように恐ろしくこちらを睨んでるシノと優しい眼差しで顔を覗かせる姫様の姿が見えた。
に、しても起こしに来るなんて珍しい…(ちなみに初めて起こされた)

「シノと姫様、おはよう。何か騒がしいけど何かあったのか?」

「これでお前はひとりじゃないのよ、お客」

「新しいお客様がこちらへ足を運んでくださいました。どうぞ」

シノ…お前なぁ…もうちょっと接客について考えた方が良いのでは?
というのは置いといて姫様が声をかけると襖が開き、顔を覗かせたのは女性だった。
身長は小柄でもなさそうな程よい高さで体が引き締まっていておまけに顔が整っている。
まるで彫刻で描いたかのような顔つきだったのだ。

「初めまして。四月朔日このはって言います。どーぞよろしく!」

少々上からな態度ではあるがこれは社交的と思っておこう。
に、しても足を運んだ…ってことはあの世のお客なのか?
それとも俺みたいに好奇心でこの旅館に迷い込んだのだろうか?

「四月朔日様は生死を彷徨ってらっしゃる方だ。完全に死んでるとは言いけれないからあの世のお客様ではない。まあ、お前よりはマシな理由でここに迷い込んだ方だ。」

「シノ、何か俺の扱い酷くないですか」

「第一、お前の名前なんて知らないのよ。お客様ってほど大層な人でもないし?」

「俺の名前____は、、、、」

何故だろう。
ここに来て数日経っているものの名前のことをすっかり忘れていた。
というか俺の名前って?

「シノ、思い出せないのも無理はないの。お客様、名前は思い出せないのですよね?」

「名前のこと自体、忘れていた____なあ、姫様、こういうのって珍しいこと?」

「いいえ、案外そうでもないの。お客様みたいに生きた状態のままここに迷い込むことは珍しいこと。だけれど名前を思い出せないお客様は他にもいたりするの。わたしも___いいえ、何でもない。このはさんのように名前をしっかり覚えてるってことは自我があるってことなのかも!」

姫様は言いかけた言葉を慌てて訂正したものの何も無かったかのように話を進めた。
_____姫様もここに迷い込んだのか?
初めて出会ったときは姫様に助けを求められ、歪な空気を漂わせた。
だが、姫様は案外普通の人でこうして今は普通に会話を交わしている。
どっちかっていうとシノの方が謎めいている。
そしてここに新しくきたお客様の四月朔日このはさん。
俺はこれから四月朔日さんと共にここで過ごしていくということなのだろうか。


# 四月朔日このは 【完】

3ヶ月前 No.8

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=9BKRwR8VlG

# 経由

「そういえば、姫様とシノって長い付き合いなの?」

朝食(仮)を食べながら二人に尋ねる。
とはいえ、朝食(仮)とは言ったもののここではれっきりとした朝食である。
味はお世辞でも美味しいとは言えないが食べないわけにもいかないので仕方なく食べている。

「長い付き合い…かは分からないけれど……そういうことにしておきましょう。シノとの出会いは唐突だったもので、ね?」

「へぇ。何か意味深だなぁ。」

「やましい意味なんてないのよ。姫様の申した通りなんだから。」

「出会いが唐突って……それも2人ここにいたわけだろ?よく飽きずにいられるなぁ。もしかして夜逃げ、とか?」

「馬鹿。シノのこの性格でどこが夜逃げできるように見えるのよ。っていうか前にも言ったと思うけどシノはこの世でもあの世の人間でもない。この世にシノなんて人物は存在してないのよ!」

「もちろん、私も夜逃げなんかじゃないよ?んー・・・なんて言えば良いのかな。あまり思い出せないや…」

姫様は考える仕草をするものの曖昧な表情だった。
姫様と呼ばれるものだから名前が姫に関係あるのかと思ったけどそうでもないようだ。

「ふぅん。理屈は分からないけどとりあえずわかったよ。俺みたいな好奇心で迷い込んだわけじゃないんだね…」

「そんな馬鹿な理由で迷い込むやつなんてそうそういないわよ。ここの旅館は廃墟だけど宿泊費とらないし焼くなり煮るなり叫ぶのもオッケーな旅館だからこう考えたら良い物件だと思うのだけれど、そこのところどう思う?」

「廃墟って時点でまずダメだろ。焼くも煮るもまずそれすらできないくらいボロボロじゃん。しかも幽霊のお客さんが主に泊まりに来てるんでしょ?都市伝説化…っていうか心霊スポット化しちゃってるじゃん、テレビで取り上げられてもおかしくないよ!!!」

「めっちゃ言うじゃん、何でそんなに否定しちゃうの?」

背後から話に割り込む声が聞こえた。
後ろを振り向くと四月朔日さんがいた。
……四月朔日さん、ここを否定しない方がおかしいと思うぞ。

「四月朔日様、さすがです。」

いや、うん…まあシノからしたらありがたい存在でしかないんだろうな。

「四月朔日さんはこの旅館についてどう思ってるんですか?」

「え?あたし?んー・・・別になんとも!つか敬語じゃなくていーよ!あたし思いっきりタメで話しちゃってるし。」

3ヶ月前 No.9

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=9BKRwR8VlG

「え、そうですか?じゃあタメで。」

「うんうん!そっちの方が良いよー!で、あんたの名前は?」

「思い出せない……っていうか最近まで名前の存在自体を忘れてて…」

「へぇ。変わったこともあるもんだね。あとさっきの話聞かせてもらったよ。好奇心で迷い込んだってすごいね!」

キラキラと目を輝かせる四月朔日さん。
意外と馬鹿にしたりしないんだな……そこが心外だ。
四月朔日さんは勝ち気な性格で気が強くプライドも高そうな話し方から相手を見下すことの方が多いと思っていた。
けど案外単純なのかもしれない……肝試しの経由でも話してやろうかな。


# 経由【完】

2ヶ月前 No.10

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=uUV9OUzKz5

# 迷い

俺は幼稚園から大学まである私立のエスカレーター式のところに通っていた。
今は大学一年生である。
その大学はセレブで偏差値はそこそこ高く、金持ちが多いため、夜になると豪遊してる人も珍しくないくらいだった。
全体的に弾けていて教授も今を生きる若者のような生活を繰り返していた。
そんなある日、心理学科の教授から廃墟旅館の話を聞いた。
それがこの廃墟旅館である。
マイナーな心霊スポットではあるが、入ったものは何か歪な雰囲気を感じてしまい、帰りたくても帰れなくなってしまう、そして最終的には人生の幕を閉じてしまう恐怖の心霊スポットだとのこと。
ありがちだ────俺はそのとき、そう思った。
こんなのやらせホラー番組でもあるあるのこと、俺は作り話のような心霊スポットに興味が湧いた。
作り話にしてはめちゃくちゃだがそんなこと関係なく、俺はただひたすらに心霊スポットに惹かれた。
だが、その結果がコレだ。
確かに帰らぬ人となった、色々な意味で。

「・・・と、いう経由でここへ来たんだよ。」

四月朔日さんに一連の流れを説明した。
はぁ、心にない言葉を言われたらどうしよう。
メンタルが弱いから丁重に丁寧に扱ってほしいものだが…

「へぇ。ってことはお兄さんは大学生?」

「そうだよ。四月朔日さんは?」

「あたし、高校生。っていうかお兄さんの方が年上だったんだね。同い年かと思ってた!」

触れるところそこかってツッコミを入れたくなるほどどうでも良いところに触れられた。
ん、まあでも四月朔日さんは年下だったってことが分かった。
年上だと分かってもへらっとした口調で話し続ける四月朔日さんに少し安心する。
かしこまったりしないところが彼女の長所でもあるだろう。

「てか、今更なんだけど敬語が良いなら言ってねー?めっちゃ馴れ馴れしく話しちゃってるけどさ、普通に敬語話せるから。」

「いや、そのままでお願い。四月朔日さんはどこに住んでたの?」

「あたし、神奈川県民。お兄さんは?」

「東京都民。っていうか神奈川からここに迷い込むってことあるんだね!」

「んーこれも夢かもよ?だってあたし、本来なら病院にいるはずだもん。まあ、医者と親がいうには私は生死をさまよってるらしいしー?植物状態的な?だからここ、天国なのかも。」

「え、ええ…」

四月朔日さんはヘラヘラしながらそういった。
怖くないのかな、死ぬこととか。
まあ、恐怖の心霊スポットに死ぬ覚悟なんて考えずにここに来た俺が言うのもなんだけど、もう死ぬってことを分かってながらもこのキャラだ。
寂しさを紛らわすためにそうしてるのかもしれないが俺からしたら寂しさを隠しきれていないようにも感じた。

「別に怖くないよ。だってもういつ死ぬかなんて分かってることだもん。つかスッキリした!!!だれかにこういうこと、話してみたかったんだよね……ありがと、お兄さん。ごめんね、重くしちゃって。別に私は平気だよ、お兄さんがいてくれたからさ!」

「四月朔日さん…」

「ここに私人間ひとりで従業員2人の状態だよ?そっちの方が怖いからある意味お兄さんの好奇心には助けられた。」

「たしかにそうだね。俺も四月朔日さんが来てくれなかったら怖かったかも…」

「はは。慣れてるようにも見えるけど、まあ良いや。ご飯美味しかったね。シノちゃん、ありがと!」

四月朔日さんが襖の方に声をかける。
すると襖が開き、シノが顔を覗かせ「こちらこそ」と言い、お辞儀した。


────あれ?

────ご飯美味しかったね…?

敢えてそう言ってるのだろうか。
それとも───

いや、シノが四月朔日さんを気に入って美味しいご飯を作り、それを食べさせた可能性だって考えられる。
そうだとしたら、シノは最悪な人だ。

「じゃ、あたし寝るね。今日はぐっすり眠れる気がするんだ。」

「あ、おやすみ…」

四月朔日さんは反対側の襖から出ていった。
それにしても嫌な予感がする。
何かが変わってしまいそうな気が───


# 迷い【完】

2ヶ月前 No.11

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=uUV9OUzKz5

# 悲劇

「ん…」

子鳥のさえずりに目を覚ます。
朝から騒がしいのは苦手な俺からした子鳥のさえずりはちょうど良いアラームのようなもの。
なんて優雅な目覚めなのだろう───ここから1日が始まるのだから……

─────だと良いけど。
何者かによる涙が水滴のように俺の顔へと落ちてくる。
微かに嗚咽が聞こえる、きっと泣いているのだろう。
重い瞼を少しずつ開けてみる。
すると案の定、俺の視界に映ったのは泣いている姫様であった。

「え!?姫様!?」

眠気なんてものは吹っ飛んだ。
何せ姫様が泣いている。泣き顔隠すことすらしようとしておらずただひたすらに泣いている。

「姫様!!!どうしたの?」

「わ、ぁぁ……わたっ、四月朔日ざんがぁ…!」

涙ぐみながらも必死に話そうとする姫様。
恐らくだが、四月朔日さんと言ったのだろう。
でも四月朔日さんがどうかしたのか…?

「四月朔日さん?」

「もうっ…死んじゃった…死んじゃってたの、四月朔日さんを救えなかった…」

死ん、じゃった?
俺の知る限りの情報だと確か、ここの廃墟旅館はあの世のお客様が主な利用者だったような……んで俺みたいな生きてるやつが迷い込むのはごく稀に起こることで普通ならちゃんと引き返せたはずだ。

「姫様、でも四月朔日さんはまたここに来ることだって────」

言い終える前に俺はハッとした。
死んでも会えるとか、死んでもここに来ることができるから、とかそんなんじゃない。
俺の予想だと、生死をさまよってる四月朔日さんを姫様は生きたまま帰したかったのだろう。
だが、現世に帰す前に四月朔日さんは帰らぬ人となってしまった。
だからその事に対して悲しみや自分への罪悪感を抱いている……きっとそうに違いない。
まあ、生きたまま帰してもきっと四月朔日さんは生きたまま植物状態のまま苦しむだけだろう。
そう考えると───いやでもそうにはいかない。
いくら廃墟旅館だからとはいえ、姫様もここの従業員だ。
従業員であるからには宿泊客に最低限のおもてなしと思いやりを持たなくてはならない。
それに人の命を軽く思うことは人間として酷いことでもあり最低なことでもある。
四月朔日さんが死んだ、現世には存在しない人となった。
そりゃあ、人だからいつかはみんな亡くなってしまう。
だけど、俺は────

「四月朔日さん、ごめんなさい。どうか安らかにお眠り下さい……少しの間ですが話せて嬉しかったです。」

そしてこの報いは必ず俺がここを出てから果たしてみせます。

報い────それは俺がここを出て四月朔日さんの分まで生きること、そして生涯を終えたときに四月朔日さんに会いに行くこと、ただそれだけだ。


# 悲劇 【完】

2ヶ月前 No.12
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