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廃墟旅館からの脱出

 ( ホラー小説投稿城 )
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紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

若い男性が“廃墟旅館”に訪れたときの話である。
男性は片手にスマホ、もう一つの手には懐中電灯を持って道と足元を照らしながら慎重に廃墟旅館を歩き回っていた。

「なんだ、何もいねぇじゃん。そろそろ帰るとすっか!」

男性は何事にも怯えることなく廃墟旅館を後にした。



____と思いきや、


「お兄さん、どうか私を助けてはくれませんか?」

背後で女性の声が聞こえ、すぐさま振り向いた。
そこには確かに女性の姿があり、足や腕は痣だらけ、顔には傷、服はボロボロで今にも破れそうだった。
あまりにも酷く醜い姿の女性を放っておけなかった、というお節介から始まった出来事。
その出来事はやがて“悲劇”になる。

関連リンク: 忌み子と鬼の子の物語 
ページ: 1


 
 

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 呪い

「えっ!?何!?」

驚きを隠せず声を上げてしまう。
廃墟旅館に何故女性がいる?という疑問が浮かぶ。
だが、女性は続けた。

「ずっと、ここで1人でいました。誰にも助けを求めることも出来ず、ここに1人でいました…ずっと。」

女性は片手に彼岸花を持っていた。
赤く不気味だが、その彼岸花は綺麗に凛としていた。

「不思議ですよね…生きてることができるなんて。貴方はどうしてここへ来たんですか?」

「あ、えっと…旅の途中でして。宿がないか探していたらここに辿り着きました。」

肝試しをしていた、なんて幼稚なことは言えず嘘をついた。
“どうしよう、すごく怖い”
今更になって芽生え始めた恐怖心。
最初は怖くも何も無かった。
遊び半分のつもりだった。
でも、幽霊よりも人よりもこの人と話してること自体が怖い。
そう思ってしまい、身震いしてしまう。

「あら、震えているんですか?大丈夫ですか?」

「あ……その…」

あれ、声が出ない!?
と、言うよりは思うように話せない。
口に出すことができない。

「可哀想に。震えちゃってる───」

「ヒィッ!」

ピタ、と腕に触れられた。
それは死人のように冷たかったのだ。
まるで、死人に触られてるみたいだ。

「あ、あの…?」

「もう、逃げないでくださいね───」

「えっ!?ちょ…何?」

腕を掴まれる。
骨が見えそうなくらいに細い腕なのに握られている感触は大きく捕えられたような感覚に囚われた。

「や、やめ…」

「やめない。お客様、貴方は私という呪いから逃げることはできませんよ。」

不敵な笑みを浮かべ、こちらを見つめる。
どこか満足そうな表情だった。


# 呪い 【完】

2ヶ月前 No.1

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 歪

「お客様、何を怯えているのですか?怖くないですよ、此処は貴方の求めている“宿”ですよ?」

「だ、だからやめろって!」

あまりの恐怖に叫んでしまう。
叫んだって、足掻いたって助かりはしない。
誰かが助けに来るわけでもない。
でも、助けがほしい。
“ 誰 か 助 け て ──── ”

「そんなに怒らないでくんなまし。お客様のことを煮るなり食うなりはしませんよ。」

「殺そうとしてるんだろ…?」

「しやせん。お客様は仏様、あ、いえ、神様ですから。それに放っておけない、と思ったのはそちらなのでは?」

「……」

図星、だ。
確かに俺は、この女性を放っておけない、と最初は思った。
けど、この調子なら何も心配ないだろう。
そして何故か俺のことを“お客様”って呼んでるし何なんだ…?

「ここから出ましょう?2人で一緒に助かりましょうよ。」

「……すぐに出口に向かえば出れるだろ。俺は出る。」

「ここの扉、出口等はもう既に閉まっております。」

「は、何で?」

そのとき、俺は歪な予感を感じた。
この旅館の空間ではない、増しては何かが壊れているわけでもない、そんな予感がした。

「……もう出れねぇってことかよ。お前はそれが言いたいんだろ?」

「はい、お客様!」

何で嬉しそうにするんだよ、こいつ。
だが、どうなろうと最終的にはここから逃げて外の世界へ帰ってやる。

「絶対帰ってやるからな…!」

そんな熱い気持ちを忘れずに俺は脱出のための手がかりを探すことにした。

# 歪 【完】

2ヶ月前 No.2

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# シノ

「そういや、お前って何で此処にいるんだっけ?」

「…気になりますか?」

「そりゃあな。俺のことも最初、お兄さんって呼んでたのに、お客様になってるし。」

「此処は昔はちゃんとした旅館でした。でも、今はちょっと変わった旅館なんですよ。廃墟旅館、いつしか人間たちにはそう呼ばれた。」

「はぁ?だって、どう見ても廃墟旅館でしょこれ。しかも“人間たち”ってまるで人間じゃないみたいに言ってるし。何があったの?」

「此処はね、もう人間のお客様が来れるような場所じゃないってこと。でも、貴方は此処へ来れた。どうしてか分かる?」

「……知らねぇよ!迷ったんだよ此処に!」

「うふふ…お客様、そう仰らずにノリに乗るのがベターですよ?」

“もう訳わからねぇ”
現実なのかも夢なのかも分からねぇ。
怖いという気持ちは無くなるものの頭が混乱していたのである。

「姫様!お客様ですか?」

「えっ…姫!?」

後ろを振り向くと黒いゴスロリのような服を着た女性が立っていた。
前髪ぱっつんのボブヘアーで色白の綺麗な女性であった。

「シノ。お客様がいらしたわ。案内してあげて。」

「はい、姫様。お客様、どうぞ後ろへ。」

「は、はぁ…」

泊まりに来たわけじゃねぇ……!!
案内されるのは部屋じゃなくて出口が良いわっ!!

「どうぞ、お客様。古くて汚い部屋ですが自由に使って構いませんわ。大声で歌うのもあり、暴れるのあり、煮るなり焼くなりあり。こんな好条件なお部屋、滅多にないでしょ?」

古くて汚いって分かってんなら掃除くらいしとけよ!よくこんな部屋をお客様に勧める気になったな!!
内心そう思いつつも口に出さずに「ありがとう」とだけ言っておいた。

「あ、あとお客様。早くこの旅館のから逃げることね。どうせ馬鹿どものやる遊び、肝試しでもしたんでしょ?」

「は、はぁ…」

図星だ。
っていうかここ営業してるの!?
普通にこの人従業員だよね!?ねえ!?

「まあ良いわ。好奇心から始まることはよくあることよ。でも逃げなさいよ。ここから必ず───」

「お前も迷い込んだのか…?そうか肝試しでもして…」

「……食べられる前に早くここから逃げなさい。それと姫様には近付かないようにね。───殺されたくなければ」

脅迫されたかのような気持ちだ。
姫様、言わば俺に助けを求めてきたやつが何かを握っているのだろうか。

「姫様に殺されるたまじゃねぇ…!覚えておけ、絶対出口ぶっ壊してでも抜け出してやんよ。」

「ふうん。せいぜい楽しみにしておくわ。お客様。」

シノは見下すかのように言い放ったあと、嘲笑して部屋をあとにした。
俺は真っ暗闇の部屋に1人取り残された後、頭を抱えて悩んでいた。

# シノ 【完】

2ヶ月前 No.3

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 旅館

部屋に手がかりがないかを探す。
此処も掃除したら綺麗になると思うんだけどな…と思いホコリを払って何か書かれてないか、窓を開けて外の様子はどうなっているか、怪しいところはないかを調べる。

「ん?てか、これ閉じ込められたわけじゃないよね!?」

襖を開けようとするも、向こう側から誰かがそれを防いでいるかのように開かない。
(くそ…これじゃ閉じ込められた同然だ!)
どうにかしてでも開かせないと出れない。

「なあ、おい!誰か助けてくれよ!」

叫ぶものの従業員は2人だけ。
そもそも従業員なのかも謎である。
何でこんな廃墟旅館に人がいるわけ?って疑問はさておき足音も何も聞こえない。
ましては誰かが此処へ来る様子もない。

「はぁ…」

溜息をこぼし壁にもたれる。
もたれてすぐに壊れちゃいそうな壁。
来た道を辿れば良いものの何が何なのかも分からない。

「好奇心から始まって結果コレかよ…」

「もし、お客様。失礼しますよ。」

襖が開く音がした。
パッと目を覚ますと目の前には姫様がいた。

「ひ、姫様…」

「お客様、私のことを姫様だなんて…。もしやシノの影響ですか?」

「実際姫様じゃないの?」

「シノが勝手に呼んでるだけですよ。でもお客様に姫だなんて悪くないかもですね!」

「おうよ。これじゃあどっちが営業なのか分からなくなるけどな。」

「そうですね…!お客様のお名前、聞いても良いですか?」

「俺の名前は─────」

(あれ、何だっけ?確か俺の名前は───)
記憶が曖昧だし名前が分からない。
何を言おうとしたのかすら分からない。

「俺は……えっと…」

「姫様、お食事の準備が整いました。お客様も早く来なさい。」

「ありがとう。さあ、行きましょう?」

「お、おう…」

(てかお食事!?何それ、本物の旅館そのものじゃん!!!)
(ここ廃墟旅館だよね!?)

「あ、あの…食事って何ですか…」

「あら、お客様は食事を知らないの?」

「いや、その…何でこんなとこで食事できるのかって話!」

「此処は廃墟旅館となってからは、あの世のお客様がご利用しているの。」

「……はあ?」

「……馬鹿」

「いや聞こえてるから!」

何気ない会話を交わしながら食事のお座敷に向かう。
あの世の人たちがこの旅館には集まるってことか……場違いな気がしてきた。
怪しい薬とか入ってそうで食べたくないがお腹は空腹だ。空腹を満たすには此処の旅館の飯を食うしかない。
そう決意した。

# 旅館 【完】

2ヶ月前 No.4

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 暗黒物質

「それとお客様。お客様に手を出す方はいないと思われるが万が一の場合があったら、すぐにシノの方へ来なさい。最近ここは荒っぽいから気が立ってるあの世の方が多かったりする。」

「ちょ、怖いこと言うなよ…」

「何も怖い事じゃないわ。無様な面だけは見せないでちょうだいね。」

「あっ!シノ、私もお客様とご一緒して良い?」

「なっ!姫様!?だめです、姫様にはシノといてもらわないと…!」

何故かこっちを睨んでくるシノ。
(てか、シノの目怖すぎだろ……そんなに姫様と離れたくないのかよ…!)

「でも、心配なの。シノは1人で平気だろうけど、お客様を放っておくことはできない。」

(姫様良いやつすぎ…!)
姫様の人間性に感心していると、諦めたかのようにシノは溜息をつき、「どうぞ好きにしてください」と言わんばかりの顔をした。

「シノ、この恩は必ず返すわ。ありがとう!」

「…っ!ああ、もう知りません!早く奴と一緒に座敷の方へ向かってください!これからシノは営業します!」

「うふふ……頑張って!」

「は、はい!」

これはまるで先輩後輩の関係のようだった。てか、シノ姫様の前だと随分対応違うのな。
俺には絶対営業スマイルも見せないくせに!

「シノ、照れ屋さんなんです。お客様、さあ、座敷へ向かいましょうか。」

「おう、そうだな。そういや、此処の飯って上手いのか?」

「んー…口に合わなくてもシノの前では美味しいですって言っておかないと、シノに殺されちゃいますよ?」

「あー…確かに。まあ、自分で味は確認するか!」

「そうそう、自分で確認しないと分からないですからね!」

他愛のない話をしながら歩いて行く。
するとあっという間にお座敷に着いてしまった。

「うえっ!?」

その光景に驚いを隠せなかった。
運ばれてきた飯は外観良さそうで美味しそうなのだが匂いが酷かった。
鉄と何かが混ざり合った匂い、そして周りの客は美味しそうに食べている。

(え!?待って、俺って幽霊見えちゃうの…!?)

「お客様、どうぞお召し上がりください!」

「……いただきます。」

まずは白米を口に入れる。
(ん!?何これ!酷すぎだろこれ!)
ジュクジュクした感触、だけどどこか芯があるように固い。
(見た目はすっごい良いのに何この味!詐欺だろ!)
次に味噌汁を飲もう……としたが、ここでふと気付いた。
(これ…味噌が赤い!?ん、てかこの匂い…)
さっきの鉄の匂いとやらは、きっとこの味噌汁から匂ってきたものだ。
(これ、血じゃん…血でしょこれ)

「ご馳走様でした。とてもと言うほど味が個性的で面白いですね。」

棒読みになってしまった。
でもその言葉を真に受け取った姫様は何故か喜んでいる。

「シノに早速報告しなきゃ!味を気に入ったってことですよね!!」

「はい、色々な意味で凄かったでーす」

「これ、シノが作ったやつなの!シノの料理って本当凄いのね!!」

いや、天然ですか姫様。
とりあえず味は不快だ、コンビニの弁当を食べたい気分だ。
家事ができない俺はずっとコンビニ弁当で生きてきた。
だからコンビニの食べ物は俺にとっての生き甲斐なんだ。
……これほど不味いものは食べたことがねぇ。

「もう部屋に戻って寝る。おやすみ。」

とりあえず今日は諦めよう。

# 暗黒物質 【完】

2ヶ月前 No.5

紀田臨海 @kidarinkai☆V7aNUNRHqr6 ★iPhone=pXr7qk8ug5

# 部屋

「ん…」

何か時計の針が動いている音がする。
チクタクチクタク…
さて、この部屋に時計なんてあっただろうか?
それに時計の針で起きるほど睡眠は浅くない。
まあちょうど良い、起きて時計があるか確認しよう。
そう思い、体を起こして辺りを見回す。

「…え、何あれ…」

よく見ると壁には掛け軸が掛けられてあった。
それだけならまだ普通だろうけど問題は、その掛け軸がズレており、そこから何か部屋のようなものが見えるのだ。

「隠し部屋…?に、しては狭すぎるかな…?」

掛け軸に近付くとやはり隠し部屋のようになっており、奥に奥にと続いている。
ちょっとした好奇心でまた心が揺らぐ。
(ちょっとだけ、バレなきゃ良いだけだろ)
そう思い、掛け軸を外して奥の部屋に進む。

チクタクチクタク…

時計の針の音が一層大きくなってる気がする。
原因はこの部屋なのか…?

「…たく……どう、して…」

(こ、声がする!?)
声の主は分からない。
でも、この廃墟旅館にいるのは姫様とシノの2人だけなはずだが……もしや、この旅館に遊びに来ているあの世の者なのだろうか。
恐怖心より気になる気持ちが大きくなっていく。

「シノ、どうしたの?」

「姫様を寝室に連れ込むとは…お客だからといって甘えないでほしいのよ。」

「寝付きが悪いから、リラックスして寝ようとして隣に来てもらっただけなのにか?ここの従業員はタチが悪いな。」

「お客様、大変申し訳ございません!」

声の主は男性であり、恐らくあの世の者だろう。
(てか、シノ……お前それ嫉妬なんじゃねぇの…)
心の中で呆れながらも会話を聞こうと必死だった。

「姫様に触るなんて許せません!姫様、シノは何も悪くないんです!」

「シノ、落ち着いて。お客様、大変申し訳ございませんでした。お詫びとして何ですが“彼岸室”の方で休眠をお取りになりますか?」

「彼岸室…!」

「シノ、案内してあげなさい。お客様にお詫びとしてなんだから!」

(ん?てか、こっち来る!?)
やばい、寝室に戻らねぇと!
咄嗟に慌てたせいか、逃げようとしたときにギィと床が音を立てる。
(あ、やば…)

「誰なの!?」

シノが叫んだ。
うわ、これは殺されるかな…?
でも仕方ない、時計の針が大きすぎたから!

「…お前!起きてたの?」

「お客様!どうなさいました?」

「シノ、姫様……こりゃ盗み聞きじゃねぇんだ…!」

「お客様、寝室に戻ろうとしたのね。けど掛け軸が外されてるから帰りは帰れない。」

「え!?何それ?」

「あの掛け軸は人間のお客様と、死者…言わばあの世の方との部屋を境とするためにあるのよ。それをお客様は外した。お客様でいう玄関の鍵のような存在なんだよ、アレ。」

「え、いや。シノ、冗談?」

「冗談じゃないわよ。ま、シノはあの世でもないこの世でもない人だから、行ったり来たりすることできるのよ?」

「だったら掛け軸と戻してくれよ!怖いんだよ正直言って!」

「はいはい…じゃあ、姫様。仕方ないですが、この馬鹿なお客様の付き添いに行きますのでこちらのお客様の面倒は見ることができないです…」

「分かった。じゃあ、ついでにシノはお客様の部屋を監視しておくと良いわ。────お客様が震えているから。」

2ヶ月前 No.6
ページ: 1

 
 
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