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友情が輝き始めるこの瞬間

 ( リレー・合作小説 投稿城 )
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美月 @mituki13 ★ZavXIHvZJs_MGe

私は、砂魂霊夏。
今年の春から、私は中学生になる。
嬉しいけれど、かなり不安。
小学生の時との友達とも、お別れだから。

入学式の当日。
ドキドキしながら学校へ向かう。
そして、クラス表をチェック。
1年…2組だ。
自分の名前を確認後、もう一つの名前も探す。
「た…た…、あった!」
1年1組に、その人の名前があった。
少しがっかり。でも、しょうがないね。
小学生の時、ずーっと同じクラスだったんだもん。
そして私は、校舎内に、一歩足を踏み出した。
その日は知らなかった。
今まで欲しくもなかったものが、できるなんて…。

1年前 No.0
メモ2016/08/25 19:38 : 静香★wMa6pMeQbp_nHx
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ページ: 1


 
 

静香 ★PfKigtdhAR_nHx

澄みきった青い空。優しく心地よい春風が、真新しい制服のスカートをなびかせる。
期待と不安を胸いっぱいに詰め込んで、一歩一歩、進んでいく。
わたし、春川藍花は今日から中学1年生。
緊張すると前日の夜はよく眠れなくなるタイプの女の子です。
おとなしめで、初対面の子はちょっぴり苦手かな。
そんな性格のせいで、大きく環境が変わる4月は毎年ゆううつ…。
それでも、毎年頑張ってきた。去年も、一昨年も、その前も学校はほとんど休まない健康体。
今年だって、自分なりに勉強も部活も友情も恋もぜ〜んぶ頑張ってみせる…!!!

…なんてことを考えていたら、もう昇降口についていた。
扉には、それぞれ4枚のクラス表が貼られている。
すぐに駆け寄って、自分の名前を探した。
「え〜っと、春川だから…」
つい、小さく声を出してしまったことを気にしつつ、1組から順番に目をやっていく。
1組には…名前がなかった。
それにはさすがに驚いてしまった。なんせ、わたしは幼稚園のころから怖いくらいずっと1組だったから。わたしは永遠に1組にしかならないのか、などと思っていたけど、そんなことなかったみたい。
まるで満員電車のように詰め合っている昇降口を、そろそろと横にづれていく。
今度は、2組のクラス表の前に立った。
だいたい、は行の人は名簿番号が後ろの方だから、下の方から見ていく方が早いかもしれない。
すると、やっと見覚えのある名前が見つかった。
「あ、あった…」
また思わず声が出てしまったが、今度はもう気にしない。
昇降口の人口密度がやっと減ってきた。
みんな多分、教室に行くのかな。
わたしも早くいこう。
新しいクラスメイトが待っている教室へ。

少しゆっくりめに、そしてさりげなく3組のクラス表へ目をやりながら、わたしは校舎内へと歩を進めていった。

1年前 No.1

美月 @mituki13 ★ZavXIHvZJs_MGe

教室の前に着いた。
心臓の鼓動が高鳴る。
私は、ゆっくりと教室内に一歩足を踏み出した。
その瞬間集まる、無数の視線。
全て、知らない人だった。
その視線を避けるようにして、自分の机を探した。
机の前の所に、自分の名前の書いた磁石が貼ってある。
「砂魂霊夏」
あった、これだ!
私は、自分の机に座って、かばんをおろし、教室内を見渡した。
黒板には、「入学おめでとう」という字が、赤いチョークで書いてあって、黒板付近では、茶色っぽい髪の女子が、黒髪の女子と話している。
窓の近くには花が飾ってあって、そばでは、男子4人が集まって話をしている。
「…あいつが砂魂霊夏か」
「…名前も変だけど、見た目も変だな」
そんな声がちらほら。
きにせずに、立ち上がって教室を出ようとした。その時…
セミロングの髪に、カチューシャをつけた子が、私の前を通り過ぎていた。
ふわっと風を切る。好きになる男子は好きになるだろうな…。
私はそう思って教室を出て、1組の方へ進んでみた。

1年前 No.2

静香 ★PfKigtdhAR_nHx

窓から差し込んでくる、やわらかな日差し。日光に反射してピカピカと輝いている床板。見るからに日頃の掃除でよく磨かれているのがわかる。
わたしは教室に向かって、今にも飛び出しそうな心臓を抑えながら歩いていた。
階段を上りきって、少し歩いた廊下を右に曲がった。
2回体育館に一番近い1年塔の廊下は、保護者の人たちで溢れかえっていた。
また人の波にのまれなくてはいけないのか、と思いながらも思い切って入っていった。
多目的室、学年室、1年1組…と部屋が続き、ついに1年2組の教室についた。
もう、結構人数がそろっているようだった。
ドアに貼ってある座席表を確認して、ゆっくりと教室に入ってみる。
あぁ、ここが新しいクラス…。ここで、これから中学1年生という時を刻んでいくんだ…。
ふと、顔を上げると、去年まで仲がよかった美郷ちゃんが窓際にいた。
その隣に視線をやると、そこにいたのは違う小学校の子だった。
一瞬、もう新しい友達ができたのかとびっくりしたけど、よく考えてみたら美郷ちゃんは、確か習い事を5つくらいやってるって聞いたことがあったから、違う学校に友達がいてもおかしくないだろうと自分なりに解釈しておいた。

私の席は、廊下側から2番目の列の1番前だ。
ふぅ…。とりあえず、入学式が始まるまであと10分はある。
再び美郷ちゃんの方を見ると、もう違う小学校の友達さんはいなかった。
美郷ちゃんはなぜか窓の向こうの下側に見惚れていた。
どうしたんだろう…?
わたしはそれほど重くもなかった、新しいカバンを机の上において、美郷ちゃんに話しかけようと教室を横切った。
窓際に近づくと、そこからは色とりどりのきれいな花が咲き誇った、花壇があった。

1年前 No.3

美月 @mituki13 ★ZavXIHvZJs_mDm

1組の前に着いた。
人でごった返しているドアの前をくぐりぬけて、やっと教室が見える位置に着いた。
私は、そこから人を探した。
やがて、その人が見つかった。
席に一人で座っていて、つまらなそうに指を動かしている。
その姿をじっと見ていると、その人がこっちを見た。
目が合ってしまった。私は、慌ててその場を立ち去った。
あの人は元気でいるのだろうか。これからあの人と話せる日は来るのだろうか。
2組の教室に戻る途中、あの日の光景がよみがえる。
《『れいちゃん、助けて!』
助けを求める手。
『待っててあゆくん』
そう言ってその手を引く私。その手の持ち主を、私は川からひきあげた。
その途端、私は川に落ちた。
『きゃあ!』
『れいちゃん!』
『来ないで!また溺れちゃう』――――
そして気づいたとき、私とあの人は、森にいた。
その時に聞こえてきた声。言葉。
それは…》
「おーい新入生たち。教室に戻れー」
その時、男の先生の声がした。私は、慌てて教室に入った。
私は、席に座ったままため息をついた。
まだ時間に余裕がある。
窓の近くにある花が見たくて、そこに向かった。
その花を見ていると、その下に目線がいった。
私の目線の先にあったものは、花壇だった。

1年前 No.4

静香 ★PfKigtdhAR_nHx

「あいたん、どったの?」
「あっ、ご、ごめん!」
思わず、ハッとした。花壇に見とれてしまっていたみたい。気づいたら、美郷ちゃんが私の顔を不思議そうにのぞき込んでいる。
”あいたん”とは、いつか美郷ちゃんがつけてくれた私のあだ名。今では、小学校のクラスが同じだった女子はほとんど私のことをそう呼ぶ。
「…ん?」
美郷ちゃんの視線も窓の外の下側へ行く。
「あぁ、花壇?」
「あ、うん…」
「きれいだね〜!何の花だろう?」
ここからはよく見えない。
けど、鮮やかで可愛らしいピンクや白、そして紫色の花。
入学式が終わったら、帰りに見ていこうかな。
「あっ、あいたん!式始まっちゃうってよ!並ぼう!」
「えっ、あ、うん…!」
またボーっとしていたみたい。私、こんなんでちゃんと中学生になれるのかな…。

いよいよ入学式が始まる。
体の中に異様なくらいの緊張が満ち溢れてくる。
入場の音楽が鳴り始めた。
さすが、中学校。なに、この緊張感。
足が…震える…。
きっちりと列がそろえられたパイプ椅子に一人一人座っていく。
ややうつむきながら、なるべく音をたてないようにゆっくりと座った。
長々しい校長先生のお話や来賓の方の挨拶を経て、2、3年生の歌う校歌を聞き、無事入学式が終わった。
一気に緊張がとけてくる。
運動したわけでもないけど、なんだか、すごく疲れた。

自己紹介や教材配りを終えて、やっと下校時間。
しかし…なんなんだ、この教材の量は……。
キューブ状態になったカバンを力を込めて持ち上げ、無理やり背負った。
……ひっくりかえりそうだ。
「あいちゃん、行くよ」
聞き覚えのある声…。振り返ると微笑んだ母が立っていた。
「うん…」
そう言って私は母についていく。
ほかのお母さんたちの香水の香りが入り混じった校内を出て、再び昇降口に着いた。
左へ目を向けると、さっき教室から見えた花壇があった。
登校してきた時は、緊張ばっかり頭にあって気が付かなかった。
「わぁっ…!」
カバンの重みなどとっくに忘れ、小さい子のように花壇に駆け寄る。
そこにいきいきと咲いていたのは、ライラックの花だった。
「花言葉は、友情、青春の思い出…、それから…」
小声で言いかけたとき、ふと隣を見ると、三つ編みをしていてどこかで見たことがあるような女の子がいた。
その時、一瞬時空がゆがんだような、不思議な感覚になった。
「…確か、同じクラスの……」

1年前 No.5

静香 ★PfKigtdhAR_nHx

「あいたん、どったの?」
「あっ、ご、ごめん!」
思わず、ハッとした。花壇に見とれてしまっていたみたい。気づいたら、美郷ちゃんが私の顔を不思議そうにのぞき込んでいる。
”あいたん”とは、いつか美郷ちゃんがつけてくれた私のあだ名。今では、小学校のクラスが同じだった女子はほとんど私のことをそう呼ぶ。
「あの花壇、きれいだよね〜」
美郷ちゃんがにっこり微笑みながら言う。
「…そう、だね…」
軽度のコミュ障なせいでこんな返し方しかできない自分が申し訳ない。
「何の花だろうね?」
ここからはよく見えない。
けど、鮮やかで可愛らしいピンクや白、そして紫色の花。
入学式が終わったら、帰りに見ていこうかな。
「あっ、あいたん!式始まっちゃうってよ!並ぼう!」
「えっ、あ、うん…!」
またボーっとしていたみたい。私、こんなんでちゃんと中学生になれるのかな…。

いよいよ入学式が始まる。
体の中に異様なくらいの緊張が満ち溢れてくる。
入場の音楽が鳴り始めた。
さすが、中学校。なに、この緊張感。
足が…震える…。
きっちりと列がそろえられたパイプ椅子に一人一人座っていく。
ややうつむきながら、なるべく音をたてないようにゆっくりと座った。
長々しい校長先生のお話や来賓の方の挨拶を経て、2、3年生の歌う校歌を聞き、無事入学式が終わった。
一気に緊張がとけてくる。
運動したわけでもないけど、なんだか、すごく疲れた。

自己紹介や教材配りを終えて、やっと下校時間。
しかし…なんなんだ、この教材の量は……。
キューブ状態になったカバンを力を込めて持ち上げ、無理やり背負った。
……ひっくりかえりそうだ。
「あいちゃん、行くよ」
聞き覚えのある声…。振り返ると微笑んだ母が立っていた。
「うん…」
そう言って私は母についていく。
ほかのお母さんたちの香水の香りが入り混じった校内を出て、再び昇降口に着いた。
左へ目を向けると、さっき教室から見えた花壇があった。
登校してきた時は、緊張ばっかり頭にあって気が付かなかった。
「わぁっ…!」
カバンの重みなどとっくに忘れ、小さい子のように花壇に駆け寄る。
そこにいきいきと咲いていたのは、ライラックの花だった。
「花言葉は、友情、青春の思い出…、それから…」
小声で言いかけたとき、ふと隣を見ると、三つ編みをしていてどこかで見たことがあるような女の子がいた。
その時、一瞬時空がゆがんだような、不思議な感覚になった。
「…確か、同じクラスの……」

1年前 No.6

美月 @mituki13 ★ZavXIHvZJs_mDm

やっと式が終わった。
教室に戻った時、やっと終わったんだと思った。
その瞬間、新たな不安が出てきた。

色々面倒くさい事を終えて、下校時間が来た。
階段を下りている途中で、さっき見た花壇を思い出した。
花にはまるで興味がないけど、すっごく綺麗な花だった。
ちょっと見ていこうか。そう思って、花壇を探した。
意外にすぐ見つかって、私はそこへ向かった。
うわ、なんかちっちゃい花。何ていうんだろう、この花。
じっと見ていると、隣から声が聞こえた。
「花言葉は、友情、青春の思い出…、それから…」
びくっとして隣を見ると、そこには、私と同じような表情をした、あのカチューシャをつけた女の子がいた。
誰だっけこの子。あ、確か…!
すると、その子がこう言った。
「…確か、同じクラスの……」
「砂魂霊夏さん…!」
「春川藍花!」
2人同時に相手の名前を言ってしまった。自己紹介の時に覚えておいてよかった。
「この花、好きなの…?」
その子が話しかけてくる。少し目が輝いている。
「いや、好きじゃないけど、ただ、綺麗な花だなあって」
本音を言った。
「あ、そうなんだ…」
彼女は下を向いた。
「この花はね…ライラックっていうんだよ」
「へ〜え、そうなんだ」
思わずうなずいてしまった。花には全く興味がないはずなのに、私はなぜか、興味津々だった。
「この花の花言葉はね、友情と、青春の思い出と、あとね…」
そこまで聞いたとき、背後から声がした。
「あいちゃん、行こう」
見ると、彼女の母親らしき女性が立っていた。
「あ、じゃあね…」
その場を去る彼女。
「またね」
私は彼女に手を振り、しばらくその花を眺めていた。
友情と、思い出と、それから何なんだろう。
そんな事を思って、私は家に帰ることにした。

1年前 No.7

静香 ★PfKigtdhAR_nHx

「あ、じゃあね…」
砂魂さんにそう伝え、少し小走りに母の後を追いかけた。
振り返る途中に「またね」と小さく砂魂さんが言ったのもわかった。

家に向かって車が走り出す。
そんな中、私はあのことがまだ少し気になっていた。
なんだか…不思議な子だったなぁ…砂魂さん。
それにしても、なんだったんだろう。あの感覚…
砂魂さんと目があった時の、あの……
そう思いかけたとき、信号が赤に変わった。
車は少し急ブレーキで止まった。
「あ〜良かった……あいちゃん、ごめんね。ママ、運転上手じゃなくて…」
母が後部座席に乗っている私を、ミラーから見て申し訳なさそうに言った。
「ううん、大丈夫だよ」
ちょっと口角を上げて言ってみた。
そうだよ。事故らなければ、それでいいよ。ママだって今日の校内の人混みで疲れてるはず。
…でも、ここの信号長いんだよなぁ……
ふと窓の外を覗くとどこかのお宅の庭にニリンソウが咲いていた。
花言葉は確か、友情、協力、ずっと離れないだったような…
…花言葉って、その花を見た人の未来とか暗示してたり……するってことあるのかなぁ
……まぁそんな奇跡みたいなことあるわけないか!
勝手に話を終わらせると、信号が青に変わり車が再び走り出した。

次の日。
ぽかぽかと暖かい日差しが窓に差し込むなか、1年2組の教室は2時間目の真っ最中。
「じゃあ、自分がやりたい委員会に名前を入れてくださーい」
委員会名が書かれている黒板の前で先生がそう呼びかけている。
みんながわらわらと黒板前につめ寄るのを見て、私も後ろからついていく。
全体を見回すと、砂魂さんも後ろの方にいた。
…意外と性格が合うのかもしれない。
そんなことを考えながらチョークを持つみんなの手を見ていた。
私は小学4年生のころから、ずっと緑化委員会。といっても、5年生の時に環境委員会と統合して環境緑化委員会に名前が変わっちゃったんだけどね。
勉強も運動もあんまり得意じゃないこんな私でも、一応6年生の時は環境緑化委員長だったんだからね!自然を愛するこの気持ちは誰にも負けないよ!
……とーかなんとか心の中で語っていたら、ほとんどの人がもう名前を書き入れて席に戻ろうとしていた。
私と、砂魂さんと、他数名がまだ書いていない。
私はもちろん緑化委員会!!
チョークをもって緑化委員会と書いてある下に名前を書き入れた。

1年前 No.8

美月 @mituki13 ★ZavXIHvZJs_Mor

入学式の次の日。
この日の2時間目は、委員会を決める日だった。
「じゃあ、自分がやりたい委員会に名前を入れてくださーい」
先生が呼びかける。
こういうの、マジで面倒くさい。
小学生の時は、放送とか図書とかだったから、そこにしよっかな。
そう思って黒板を見ると、その2つは埋まってた。
やがて、書いてない人は私と、あと4人くらいになってしまった。
ああ、どうしよう…。
委員会の名前がずらっと書いてある黒板を見渡して、私はある委員会のところに目が留まった。
「緑化委員会」
…ああ、環境委員会みたいなやつか。
そこには、昨日会った春川藍花の名前が書いてあった。
ここにしよっかな。
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
そして、下に名前を書いた。

そこで席に戻った。
そのあとで、先生がばばっとまとめてくれた。
人数が多すぎるところはじゃんけんで、0人の所はそういうのから移って。
でも、私と春川藍花は緑化委員会になった。
業間休み。
春川藍花に何か言っておこうと思って彼女を探したが、いつのまにか姿が消えていた。
そこで、窓の下をさりげなく覗くと、昨日のあの花壇に、彼女がいた。
あの子、本当に花が好きなんだなあ…。
私は、教室を出た。
急いでいると、誰かにぶつかってしまった。
「いたっ」
「あ、ごめんなさい」
返ってきた声に、思わず私は上を見上げた。
すると、そこにいたのは…。
昨日私が見にいった男子…
立川渉だった。
私は、そいつをよけて花壇に向かって走った。

花壇では、まだ春川藍花がいた。
…つーか、春川藍花ってフルネームで呼ぶのもなあ…。どこぞの六道君みたいでw
「あのお、春川、さん」
声をかけると、彼女は、ちょっとびっくりしたみたいで、若干警戒気味の顔でこっちを見てきた。
「あ、えっと、緑化委員会、これからよろしくね!」
とりあえずそういうと、春川藍花は、こっちを見て軽く微笑んだ。
「うん、よろしく…」
は〜あ…。私って、何でいつもみんなにひかれ気味の態度取られるんだろ。
春川藍花に関してはよくわからないが、これは小さい時からずっとだ。
みんな、わざと視線を泳がせて、私を見ないようにして、わざとらしく言葉をとぎれとぎれにして、いかにもドン引きって態度で話してくる。
それが私は大っ嫌いだった。この世で一番嫌な態度だった。
…でも、この子は違う。こういう性格の子なのかな。
「昨日も花見てたよね。花、好きなの?」
とりあえず聞いてみる。
「うん…!小学生の時はずっと緑化委員会だったし、家でも花育てたりしてるの」
突然、彼女の目がキラキラと輝きだした。
「そうなんだ〜」
そこで、チャイムが鳴った。
私達は、慌てて教室へ戻った。

それからしばらくたったある日。
朝学校に来て教室に入ると、私の机の上に、一枚の紙があった。

1年前 No.9

静香 ★wMa6pMeQbp_nHx

気づいたらもう3時半。
帰りの学活が終わって、みんなも次々に教室を出ていく。
…ちょっと疲れたかも……
そんなことを思いながら小さくため息をついた。

まだ、空が明るい…。
そっか、春ってこんな感じだったっけ
いつもこの青空が、私を笑顔にしてくれる。
私の気持ちを、パステルカラーに彩ってくれる。
私は、そんな空が大好き。
いつでもみんなを見守っている空が………あっ!!
危ない 危ない…
向かってくる小学生の列とぶつかるところだった…。
私ったらまた自分の世界に入り込んでたみたい…

「ただいまー」
少しチョコレートに似ている色と形のドアを引いて、やっと家の玄関にたどり着く。
やっぱり中学校までは距離があるなぁ…。
靴を脱いで、ちょっと気だるい感じで廊下を歩いた。
「あ、おねえちゃんおかえりー!」
リビングのドアを開けると、私を迎える幼い声が聞こえてきた。
顔を上げると、満面の笑みで私を見る女の子がいる。
「ねぇねぇ、このおようふく かわいいでしょー?」
胸元に小さなリボンがついたピンク色のワンピースの裾を広げ、くるっと一回転する。
そう、この子は私の妹。春川 結里花。
おしゃべりで甘えん坊で、キラキラしたものやかわいいもの、絵本や外遊びが大好きな子。
私たち家族は、その子を”ゆりちゃん”と呼ぶ。
低いところで二つしばりをしていて、お気に入りのピンクと水色の宝石みたいなハートがついてるヘアゴムは欠かせない。
時々ヘアゴムが、ラメが入ったお星さまやイチゴに変わってたりもする。
「ゆりちゃん、ずっとその格好で待ってたの?」
ゆりちゃんは今年から小学1年生。
入学式は今日の午前中までだったはず。
「ゆりね、このおようふく、おねえちゃんにみせてあげたかったの!ねぇ、かわいいでしょー?」
あぁ、そっか。私のために…
「うん、すっごくかわいいよ。お姫様みたい!」
ちょっと話を盛りすぎたかなぁと思いつつ、中腰になって頭の位置を合わせる。
「ほんとー!?」
よほどうれしかったようで、思いっきり顔を近づけてきた。すると、机の周りを
「やった、やったぁー!おねえちゃん わらったぁー!!」
といいながらスキップし始めた。
…まぁ、一応朝も見たんだけどね。

ゆりちゃんが着ているあの服は、私のおさがり。
やっぱり、新品のを買ってあげたほうが喜ぶんじゃないかなぁと思っていたけど、そんな心配はいらなかった。
《『えぇ!?これきるのー!?』
『…うん。でもそれ、お姉ちゃんのおさがりだよ』
私がそう言ったとき、ママが一瞬焦った様子でこっちを向いて人差し指を口に当てて「しーっ」とジェスチャーをした。
一生に一度の小学校の入学式という晴れ舞台に、おさがりのワンピースはかわいそうだと思っていたのだろう。
それでもゆりちゃんは
『わぁー!かわいいー!これでゆりも、おねえちゃんになれるねっ!!』
と笑顔でこたえた。
あの笑顔で私とママの心がどれだけホッとしただろうか…》
…あっ、そうだ!早く宿題やっちゃわないと!
「ゆりちゃん。お姉ちゃんちょっと、宿題やってくるね」
「はーい!」
手を挙げながら元気のいい返事が返ってきた。
少し微笑んで、2階にある自分の部屋に向かった。

階段の途中で、あることに気が付いた。
『やった、やったぁー!おねえちゃん わらったぁー!』
さっき、ゆりちゃんが言った言葉…。
お姉ちゃんが笑ったって…。
もしかして、ゆりかはずっと………
…そういうことかぁ…。
まだ6歳といっても、あの小さな頭でいろいろ考えてるんだなぁ…

1年前 No.10

美月(*^^*) @mituki13 ★ZavXIHvZJs_Mor

なんだ?この紙。
めくってみると、そこにはこんな事が書いてあった。
『お前は無理をしている。
準備はできたか、あいつはいるか。 杜斗&雷音』
は?私は思わず声をあげてしまった。
誰のいたずらだろう。
周りを見たけど、それらしき人はいない。
まず、名前がおかしい。
何だよ、杜斗と雷音って。
あと、あいつって誰なの。
それより、何よりもおかしいのは、文面の字。
墨で書かれてる。筆を使ったのだろう。
何なんだろう、マジで。
その日はずっと、その紙の事を考えていたままで、全然授業に集中できなかった。
なんやかんやで、家に帰った。
「ただいま〜」
誰もいない家に、私の静かな暗い声が響く。
「母さん、父さん、ただいま」
お仏壇の鐘を鳴らして、その前で手を合わせた。
私の両親は、私が生まれてすぐに他界してしまったらしく、今うちにいるのは母さんの叔母さんで、それもいっつも仕事で家にいない。
仏壇の写真の中の母さんと父さんは、にこっと笑っていた。
自分で言うのもなんだけど、母さんは美しく、父さんは男らしい。
こんな両親から、なんでこんな不細工が生まれたのか。
一生解けない謎だ。
小学校低学年くらいの時はいたけれど、高学年になってから、ほとんど叔母さんに会っていない。
卒業式と入学式に来てくれたってだけで、しかも、途中で帰られた。
それで、自分で言うのもなんだけど、家庭科の腕は結構いい方。
小学生の時から、みんなのお手本だった。
基礎的なことは叔母さんにおそわり、あとは叔母さんが買ってきてくれた本と授業で身に着けた。
今日も、早速夕食作りに取り掛かった。
野菜を切りながら、ふと、さっきの手紙を思い出していた。
あれは、一体…。

1年前 No.11

静香(●´ω`●) ★wMa6pMeQbp_nHx

中学生になってから初めての月曜日がやってきた。
ふと目を向けた目覚まし時計は、ちょうど6時を差している。
…なんか、いつもよりちょっと早めに起きちゃったな…。
部屋のカーテンを開けると、空は灰色の雲で覆われていた。
こんな日はあんまり調子が出ない。
……はぁ…
小さめのため息をついて、リビングへと向かった。

階段を下りるときにも、台所から包丁とまな板が奏でる軽快なリズムが聞こえてきた。
リビングのドアを開けて「おはよう」と一言。
するとママが手を止め、少し驚いた様子でこちらを見た。
「あいちゃん、今日早いね〜。よく眠れた?」
心配している声色だ。
「うん、大丈夫ー」
あえて語尾を伸ばして軽い感じで言ってみた。
食卓では、パパが新聞を読みながら食後のコーヒーを飲んでいる。
…もう食べ終わったんだぁ…
「パパ、おはよう」
私がリビングに入ってきてからも、ずっと新聞に夢中なパパに声をかけてみた。
「おぉ、おはよう、あいちゃん」
返事はしてくれたけど、ちょっとそっけない。
でも、それが私のパパ。無口で、人見知りで、ちょっと照れ屋さん。だけど、自分の意見は率直に伝えてくれる。
私がコミュ障なのは、パパゆずりなのかな…

早起きすると朝の時間が、なんだかゆっくりめに感じられた。
朝ごはんを食べて、歯を磨いて、制服に着替えて、学校の準備をして…、
庭のお花さんたちにもお水を、と思ったけど、気づいたら外は雨が降っていた。
今日は水くれしないでも、大丈夫かな。
…時計は7時20分を回っている。
ゆりちゃんは準備済んだかな…
食卓のほうへ目を向けると、ゆりちゃんの姿はなかった。
…あれ、いつの間に…
リビングを出て、階段を上がろうとする。
「ゆりちゃーん、準備できたー?」
そう呼びかけると玄関のほうから
「おねえちゃーん、こっちー!」
と、ゆりちゃんの高らかな声が聞こえてきた。
…なんだぁ、もう行く気満々じゃん
そう思いながら私もカバンを背負って、洗濯をし始めたママに「じゃあ、行ってくるね」と声をかけて玄関へ向かった。
早く動きたさそうにうずうずしているゆりちゃん。
よっぽど楽しかったんだろうなぁ、入学式。
「おねえちゃん、おそい〜」
ほっぺをぷくっとさせて、ゆりちゃんはドアを開けようとする。
「あ、ゆりちゃん待って。…ほら、傘持たないと」
小学校にあがるとみんなもらうであろう、帽子をおそろいの黄色い傘を手渡す。
「えぇ〜、ゆり これいらな〜い」
「そんなこと言わないでさ、かわいいよ〜 そのお傘」
そういいながら、ゆりちゃんにはまだ重たいドアを開けるのを少し手伝う。
「行ってきまーす」
私が言うと、ゆりちゃんも続けて「いってきまーす!」と大きな声で言ってくれた。
…はぁ、月曜日に雨降りかぁ…明日は晴れるといいなぁ…
あ、そういえば今週は放課後に部活見学があるんだっけ。
一人で…回ることになるのかなぁ…。美郷ちゃんとか、誘ってくれたり…しないかなぁ…
「あ、ふーちゃんとくらたせんせいだぁー!」
一人でボーっと考えていたら、遠くでゆりちゃんの声が聞こえてきた。
前方向を見ると、そこには横断歩道の前で待つ小学校の淡雪区の登校班の子たちがいた。
「ゆりかちゃん、おはようございます」
青色の服を着て横断旗を持っているのは、今年度からできたと噂の”朝凪っ子見守り隊”の先生だろうか。
「ゆりちゃん、あのね、きょうね、6ねんせいのおねえさんがね…」
やたらと文節に”ね”が多いあの子は、去年も幼稚園の行事で度々見たような…
…そう、確か名前は…文月ちゃんだったはず…。

ゆりちゃんはもう、登校班の輪に入って楽しそうにはしゃいでいる。
その後ろ姿を見て、ちょっと寂しい気もしながら学校に向かった。

1年前 No.12

美月(*^^*) @mituki13 ★ZavXIHvZJs_Mor

月曜日、手軽に作ったサンドイッチを食べた後、まだ寝ている叔母さんの部屋の机に給食費の袋を置くと、家を出た。
そういえば、今日から部活見学だった。
何部に入ろうかなあ…。
ふと、そんな事を考えていた。

教室に入って、自分の席で本を読む。
私の毎日の日課だ。
この時間は、絶対に絶対にぜえったいに誰にも邪魔させない。
そうしているうちに、授業になる。

退屈な日が終わって、放課後。
事前に配られた部活のリストを見ながら、私は、文芸部の様子を見に行った。
ここは確か、詩とか小説とか随筆とかを書く部活、だったような…。
でも最近は、オタクのたまり場って呼ばれてる。
見てみると、確かに先輩たちは漫画キャラの妄想的な話を書いていたりする。
季節の詩を書いてる人もいるけど、そういう人は少なめ。
まあ、私は純粋に小説が書きたいだけだから。
家だとできないけど、ここなら、出来る気がしてるんだ。
私は、文芸部に入ることを決意した。

次の日。
この日は、委員会がある日だった。
緑化委員会の部屋に向かう。
席に座って、説明を聞く。
どうやら、花の水やりをしたり植え替えをしたりで、夏には緑のカーテンなど…。
これから春川藍花とこれができるのだろうか…。

1年前 No.13

静香(●´ω`●) ★PfKigtdhAR_nHx

「起立。これで帰りの学活を終わりにします。さようなら」
日直がそう言うと、クラスのみんなも「さようなら」と言って次々にカバンを背負い、教室を飛び出す。
それと同時に一気に教室内がにぎやかになり、張り詰めていた空気もフッと溶けだした。
―時刻は4時30分。
部活って、何時までやっているんだろう。
そう思いながら、配られた部活リストに目を落とし、ゆっくり廊下を歩いた。
…どの部活、見に行こうかな…。
気になる部活はいろいろある。
合唱部に技術部、文芸部、家庭園芸部…
今日だけでこんなに回れるかな…。
まぁ、1週間あるから急がなくてもいいんだけど…
一人って心細いからなるべく今日だけで終わらせたいんだよね。
…場所、間違えちゃったらどうしよう…
中学校って広すぎて、怖いよ…。
美郷ちゃんとどこかで会わないかな…
迷わないように、どこに目印になりそうなものがあるか見渡しながら、ゆっくり、ゆっくり歩いた。
リストには部活名だけ載っていて、活動場所が載っていない。
名前が分かっても、場所が分からなければ意味がないのでは?
そんな疑問もあった。
でもまぁ、今更しょうがない。
場所が分からないんなら、誰かに聞けばいいよね。

――今日の宿題は、生活記録と漢字練習、それから算s…じゃない、数学のワーク。
どれからやろうかな…。
私は勉強机にまだ表紙がピカピカ反射する教材を並べて、じっくり考えていた。
まだ言い慣れない”数学”のワークは小学校のおさらい。
漢字練習は1ページか半ページ。
…う〜ん……
よし、生活記録からやろう。
【今日は、部活見学がありました。私は、家庭園芸部や文芸部を見に行きました。家庭園芸部では、
 部員の人たちがそれぞれキットを注文して思い思いの作品を作り上げようとしていました。文芸部
 では、一人一人小説のアイデアを広げていました。他にも入ってみたい部活がたくさんあったけど
 やっぱり私は家庭園芸部に入ってみたいな、と思いました。】
…と。…できた…!
じゃあ次は…、漢字練習やろうっと!
やる気に満ちた気分で漢字ノートを取り出した。
表紙を飾る、ピンクッションの花。
…きれいだなぁ…。この花って、南アフリカでも豪華で美しい花の一つなんだよね。
すると、花つながりで脳裏に学校の花壇が浮かんだ。
…そうだ…そういえば今日…
ふと思い出す、今日の出来事。

《昼休み。やっと食べ終わった給食の食器を給食室に下膳し、ふくれた胃袋をさすりながら廊下を歩いていた。
気合を入れて中学校の量の給食を食べた。
せっかく小学校の量を克服できたのに…また増えるんだ…。
もともと食が細い私。
それでも6年生の時、自分に与えられた分は頑張って食べようと決めた。
給食の先生たちが私たちのためにつくってくれているんだもん。
しっかり食べよう…。
…そうは言っても、多いもんは多い。……苦しい…
窓辺から見える外の景色。
朝の雨はすっかり止んで、晴れ間が出ていた。
……外、出てみようかな。
昼休みは、あと15分ほどあった。ちょっと急ぎ足で昇降口に向かった。
外履きに履き替えて、外の風にあたる。
疲れや苦しさが一気に吹き飛ぶ感じがした。
自然の力ってすごい。人をリラックスさせてくれるんだ。
もちろん、しゃがんで花壇のお花も見た。
…お花さーん、元気?これからもすくすく育つんだよ
なんてことを心の中から呼びかけてみたりもした。
すると、遠くからだんだんと近づいてくる男子の声が聞こえた。
ジャージ姿の1年生の男子たちが昇降口に帰ってきたところだった。
…外で遊んでたのかな…。
ボーっとその人たちを見ていた私の心は、あるとき一瞬ドキッと高鳴った。
…その団体の中に、私が想いを寄せる男の子がいたから…。
日向 遥紀くん…。私にとって、一番かっこよくて、優しくて、キラキラ輝いているような男の子。
遥紀君は、何部に入るのかな…。もう、クラスには慣れたかな…
…やっぱり私、まだ遥紀君のことが好きなんだ…。》

ライラックの花言葉。友情、青春の思い出、そして…
初恋、愛の芽生え。



11ヶ月前 No.14

静香(●´ω`●) ★PfKigtdhAR_nHx

〈第1回生徒会開始5分前です。生徒のみなさんは活動場所へ移動しましょう。〉
澄んだ声がスピーカーから学校中へと響き渡る。
制服に着替え、カバンを背負い、筆箱を手に委員会場所へ向かっていた私は、その放送を耳にしてハッとしてから少し歩くスピードを速めた。
今日の6時間目は今年度初めての生徒会。
いつもとは日程が違って生徒会がある日は、6時間目の前に清掃や帰りの会を終えるみたい。
こういうところは小学校と一緒でちょっと安心する。
そして、緑化委員会の活動場所は2年1組。
お昼の放送で確かそう聞いた。…といっても本当にあっているかはわからない。
自分自身、耳が遠いのか、いっつもなにかを聞き落とす。
これまでも話しの重要点を聞き落として、全然違う意味として伝言してしまうことが結構あった。
私にとって、伝言ゲームなんて地獄でしかない。
美郷ちゃんには「天然でかわいらしいじゃ〜ん」とかよく言われるけど、天然とはまた違うんじゃないかな…。

なんてことを考えていたら、もう2学年塔についていた。
…あ、あそこが1組か!
階段から見て右から、談話コーナー、2学年室、空き教室と続き2年1組の教室が見える。
後ろのドアから入り、少し教室内を見回した。
黒板には、副委員長とみられる女子がチョークで今日の活動内容を書いている。
その前の長机にノートを広げ、熱心に目を通しているのは委員長だろうか。
ポニーテールで、見るからに活発系な女子だなぁ…
窓側に並べられた2列の席には、緑色の線が入った上履きをはいている人たちが座っている。
あれは、我らが夕凪中学校を引っ張っていく3年生。
真ん中の2列に座っている人たちの上履きには赤色の線が入っている。
あれは私たちより1歳先輩の2年生。
そして、廊下側の2列に座っている人たちの上履きには、青色の線。
私の上履きと同じ色。ってことは、この列が1年生。
前から3番目の席には砂魂さんが座っていた。
三つ編みにしばった黒髪が少しつやめいている。
なんのシャンプー使ってるのかなぁ…ついそんなことを考えてしまった。
隣の席は空いているみたい。
私は、嫌がられちゃうかなと思いつつも、勇気を出してその席に座ってみた。
時計は3時24分を差している。
…もうそろそろ始まるのかな。
そっと左に目を向けると、砂魂さんは委員会ノートに文字を書き込んでいた。
少し考えて、やっと状況がわかった。
…そっか…砂魂さん、板書してくれてるんだ…!
見た感じ、ちょっと近寄りがたい雰囲気もあるけど、ホントは優しい子なのかも…
そう思ったとき、チャイムが鳴ってスピーカーから起立の指示が流れた。
言われるままに立ちあがると、生徒会歌の前奏が聞こえてくる。
生徒手帳で歌詞を見ながら、先輩たちを手本に歌った。

そして、いよいよ生徒会が始まる。
第1回目の今日、自己紹介や年間を通しての活動の説明があった。
とりあえず、毎朝学年内の委員で分担して学校の花壇に水くれをするみたい。
1学年の水くれ場所は、あの昇降口の花壇。
1年生の委員は全部で12人。どこか2日間が3人になる。
話合いの末、私は砂魂さんと3組の女の子と金曜日の水くれ当番になった。
3組の女の子とは小学校も違って、お互い初めましての関係。
前髪を上げていて元気そうな子。
ぼーっと視線を送っていたら、やがてその子が気が付いてこちらに向かって来てくれた。
「はじめまして!」元気に言葉を投げかけてくる。
反射的に私と砂魂さんも「はじめまして」と一言。
「私、浅野ひまりっていいます!よろしくね!」
ちょっと首をかしげて彼女はそう言った。
ニコッと笑うとえくぼができて、いっそう可愛らしくなる。

これから頑張ろう!!
3人は、そう言葉を交わした。

9ヶ月前 No.15

美月(*^▽^*) @mituki13 ★ZavXIHvZJs_cy3

5月の早朝。
カーテンを開けると、キラキラきらめく光が私の部屋に優しく入り込んできた。
暖かくて、空は水色で、とってもいい天気。
思わず表情が和らいだ。
そういえば、こんな表情になったの、久しぶりだ…。
なんだか今日は何でもできそうな気がしてきた。
軽く浮かれていた私は、いつも夕方に作っているみそ汁を作って食べて、家を出た。

学校に行って、席に着く。
ボーっとしていて気づいてなかったけれど、今日は、金曜日だ…。
金曜日って言ったら何があったっけ。私は黙考に入った。
金曜日、金曜日…。
13日の金曜日?…違う。今日は4日だ。
…そんなくだらないことじゃなくって…。
「あっ!」
思わず大きい声が出てしまった。近くにいた子が驚いてこっちを見る。
思い出した、花の水くれだ…。
今朝あんなに浮かれてたくせに、こんな大事なことを忘れてしまうなんて…。…バカだ。
場所は確か昇降口にある花壇で、時間は…。
「砂魂、さん…」
と思ったら、真上から声がした。
驚いて上を見る。
春川藍花だ。びっくりした。
ずっと考え事してて、気配に気づかなかったのだ。
「あ、春川藍花さん。何?」
いけない。またフルネームで呼んでしまった。
人から話しかけられることにあまり慣れていないせいか、こういう時私は、いつも声が低くなってしまう。
相手の目なんてもちろん見れない。見るのは首のあたりだ。
「あの、さ…。今日、緑化委員の…」
「ん?…ああ、あれか!」
わざと今思い出したような事を言う。
「そう。浅野さんが待ってるから…」
彼女はそういうと、教室を出た。
私も、慌ててそのあとに続いた。

花壇には、もうすでに浅野ひまりさんがいた。
浅野、さんだ、浅野さん。
親しくない人をフルネームで呼んでしまうこの癖、何とかしたい…。
「えっと、確か水くれと草むしりと、あとは花の世話だっけ?」
浅野さんが聞いてくる。
「うん、確かそんな感じだよ」
私が答えると、
「でもあまり時間ないし、今日はとりあえず水くれと草むしりだけでいいかな?」
浅野さんが聞いてきた。
「いいんじゃない?」
私が答えると
「私…草むしりやるね」
それを聞いていたのか、春川藍花が草をむしり始めた。
そのあとで浅野さんと相談して、私が草むしり、浅野さんが水くれということになった。
花壇の両端から、2人でむしる。
これ、どういうふうにやるんだろう…。
困ったけど、適当にむしっていた。
すると…
「砂魂さん。そこだけとってもまた生えてくるよ」
いつの間にか、そこに春川藍花がいた。
「こういうのは、下の方を掴んで」
彼女は、雑草の下の方を掴んだ。
「根っこからとらないと…」
そういって、しっかり根っこまで雑草を取った。
「そっか。ありがとう」
そう返して笑った見せた。
でも、こんなの、当たり前の事だよな…。
私、家事や物語書きばっかりで、こういう事全然やってなくて…。
だから分からないんだな。
そう思っていると、それを察したように、彼女が言った。
「大丈夫だよ。こういうの、慣れてるから」
そして、さらにこう言った。
「花って、人の気持ちが分かるんだよ。
だからね…大きくなあれって、丈夫に育てって思って育てると、綺麗な花が咲くんだよ…」
そう言って、彼女は愛おしそうに花壇に咲いている花を眺めていた。
それからも草むしりを続け、今朝の仕事は終了した。

あとは確か、掃除の時間にパンジーの植え替えだっけ。
そんな事を考えながら、教室に戻っていった。
と同時に、あの言葉も思い出した。
「花って、人の気持ちが分かるんだよ。
だからね…大きくなあれって、丈夫に育てって思って育てると、綺麗な花が咲くんだよ…」

8ヶ月前 No.16

静香(●´ω`●)ぱそこん? ★wMa6pMeQbp_nHx

ちょっと、暑くなってきたなぁ…
薄っすらと頬ににじんできた汗を感じながら、しなやかでいて細い剣のような草たちをひたすらむしり続ける。
ごめんね…こんなに立派に育っているのに…
草だって生きてるのにね…
何度踏まれても大空に向かって立ち上がる、
言わば、私たち人間よりも強い心をもった草たちを、私たちが引っこ抜いてしまう。
しかも「雑草」なんて名前を付けられて、周りからは邪魔者呼ばわり。
…なんか、わかる気がするんだ。
この子たちの気持ち…
過去のことを思いだしそうになりながら、もくもくと作業を進めていた。

――ここは中庭。
金曜日は掃除の時間にも当番活動があるみたい。
学校でもこんなにお花さんたちと一緒にいられるなんて…!
やっぱり、緑化委員になれて幸せだよ〜!!
心中で歓喜の声を上げてしまう。
ふと顔を上げると、浅野さんがじょうろでお花に水をくれている。
お馴染みのきみどり色のじょうろ。―きっと、どの学校にもあるんじゃないかな?
その横では、砂魂さんが一生懸命に草むしりをしている。
頬には汗がまるでダイヤモンドのように輝いていた。
やっぱり、春とは言えども暑いよね…
良かった…私の体感機能はおかしくなかった!
《掃除終了3分前です。バケツの水は側溝に捨て、雑巾・ほうきをしっかり片づけましょう。》
スピーカーから響く放送委員の声で我に返り、思わず立ち上がってしまった。
やはり視界に変化を覚えたのか、砂魂さんと浅野さんがこちらへ目を向けた。
すると、なにかを思い出したかのように浅野さんの眉がピクッと持ち上がり、やがて口角を上げてから口を開いた。
「そろそろ時間だよね。終わりにしよっか!」
そう言うと、水道の方へ駆けていった。
きっと、じょうろを片づけにいくのだろう。
私と砂魂さんは右手にはめていた軍手をはずし、日の陰った場所にある箱の中へしまった。
大きな窓からは教室に帰っていく生徒たちが見える。
背の高い人も低い人も、頭には手ぬぐい、手には雑巾を持って、口々に会話を交わしながら教室へ向かい歩いている。
ボーっとその集団を見ていると、無意識に私の目を惹き寄せる人がいた。
――遥紀くんだ。
その周りにいるのは見知らぬ顔ぶれだけど、なんだかもう、すっかり馴染んでいるようだった。
すごいなぁ…すぐ、友達できちゃうんだもんなぁ…
楽しい会話をしている中で、度々見せる笑顔。
周りの雰囲気をも、ぱぁっと明るくできる遥紀くんの笑顔。
ただ、それを見ていただけなのに、私の心がドキッと鳴った。
とたんに、目線を足元へとおろしてしまう。
ほっぺたが、ちょっと熱くなる。
私…まだ遥紀くんのこと、好きなんだな…
過去の私は、遥紀くんの言葉に、行動に、あの笑顔に、何度助けられたんだろう。
ずっと私の心の中で、マリーゴールドのように輝き続ける、遥紀くんに……
ちょっとのときめきと、ちょっとの後悔と、ちょっとの切なさが混ざり合って、モヤモヤと心を覆う。
「…ゎさん」
やっぱり、私なんて…
「春川さん…!」
「…あ、はいっ!」
とっさに顔を上げると、浅野さんと砂魂さんが不思議そうに私の顔を見ていた。
「大丈夫?顔、ちょっと赤いけど…」
砂魂さんが心配そうに声をかけてくれる。
「あっ…ぜ、全然大丈夫だよっ!」
慌てて両手を前で振って、自分の気持ちを誤魔化した。
「学活始まっちゃうし、2人とも早く行こ!」
浅野さんが笑いながら、私と砂魂さんの背中を押してくれる。

……ホントは大丈夫じゃない…
忘れられない6年生のあの日は、まだ私の心の傷を癒してくれない。

6ヶ月前 No.17
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