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秘蜜の花園

 ( リレー・合作小説 投稿城 )
- アクセス(292) - ●メイン記事(37) / サブ記事 - いいね!(1)

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

※※このスレッドは性的、またはショッキングな表現が含まれます。
18歳未満の方は『必ず』プラウザバックしてください。


此方の花園は種類問わず迚甘く、濃厚な蜜を持つ花々を
色んな方が咲かせる(投稿する)貴重な花園です。
薔薇も百合も、それ以外の花も萎れることなく咲き誇っております。
色んな花が咲き乱れておりますので、来園者の方も十二分に楽しめるかと。

それでは、秘蜜の世界をどうぞごゆるりとお楽しみくださいませ……。

1年前 No.0
メモ2017/02/14 22:46 : 花月☆ZBkQks5N3Gm1 @runa43100★iPhone-nzfWep6ZnL

こちらは私に許可を受けた方が、性的な内容を含んだ小説を投稿する場です。

リレー小説の投稿も構いませんが、必ず完結させるようお願い致します。

ご自分で花を咲かせたい、つまりこちらで小説を投稿したい!というガーデナーの方はこちらにお声掛けを。

当園のルール等も書いてありますhttp://mb2.jp/_gsd/1708.html

―――――――――――――――

ガーデナーの皆様並びに作品、感想の可否、作品一覧早見表

―――――――――――――――

名前:花月(kagetu)

作品名:血と快楽と、永遠と

感想の可否:可

作品一覧:>>1 >>3-5 >>7-35

―――――――――――――――

名前:総姫(souki)

作品名:女装男子が美少女並みに可愛かったらすきになっちゃいますよね?(現在休載中、再開未定)

感想の可否:可

作品一覧:>>2,6

―――――――――――――――

ページ: 1

 
 

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

ここは2016年日本の原宿と渋谷。若い女性が多く集まりやすい場所の一つ。
特に摩訶不思議だったり、ファンタジー的なものは存在しない。
科学が進歩し、自動化が進む世界。


…貴方の眼で見る限りでは存在しない。


「あぁん…やっ…あ……」


「お利口さんだ。…それじゃあ、とっても気持ち良くなるご褒美をあげようか。」


ここは、とあるホテルの一室。大きなベッドの上で裸の女と男が体を、快楽を求める場所。
整った顔、程よく筋肉のついた体に甘い声と計算されて造られたような容姿端麗の男は、
自分程ではないものの総合的に整っている可愛らしい黒髪の女の上に跨がり、体を弄って悦ばせている。
男は彼女の汗ばんだ顎を爪先までも整った指先でスッと持ち上げれば、耳元でそう囁く。
その言葉に女性は目を瞑ったままでコク…と小さく頷けば、
男は彼女を抱きしめ、片方の手で指先を絡め合いながら無抵抗に晒された首元を見つめる。


「さあ、動かないで…いくよ。」


すると男は合図の後、すぐに彼女の首元に噛み付いた。途端に部屋中が女性の甘い声にまみれる。
痛がってはおらず、体を激しく震わせる訳でもなく彼と繋いだ指先をキュッとより強く握って、
もう一方の腕で彼の大きな体を抱き締めているだけ。

少しして男は息を一拍も乱さずに満足そうな笑みを浮かべ、首元から離れる。
同時に解放されたように女性の身体に入っていた力は、そこから少しずつ和らいでいく。
男の血のついた前歯の二本は、犬のように鋭く尖っていた。
その眼は鮮血のように赤く染まっている。
そして、男は快楽の余韻から抜け出せないでいる女性の
小さな円の二つ空いた首元の傷をそっと撫でる。

傷口は縫い合わせた様に繋がり、傷痕も残らず治った。
そして、傷の治る際に出た一筋の血を見ればそれを舐めとって。


「美味しかったよ。それじゃあ、バイバイお嬢ちゃん。」


快楽に浸ったままの女性を見据え、ベッドからスッと気だるさも感じさせずに起き上がり、
自分の着ていたシャツのボタンをスラスラ閉じ、
服を着終えれると男は殆ど動けない彼女の頬に口づければ、全身白い霧になり一瞬で姿を消した。

それはまるで吸血鬼のように。





いや、彼らは吸血鬼なのだ。

1年前 No.1

総姫 @souki18 ★77g9hT2X5J_8yY

女装男子が美少女並みに可愛かったら好きになっちゃいますよね?

1.二重人格
〜巴京と土方俊〜

キーンコーンカーンコーン

「おっはよー京!」
「おはよ、美穂」
さわがしい教室。京と呼ばれた女子は周りにいるどの子よりもかわいかった。
腰までとどく亜麻色の髪。すらりと伸びた手足にくびれたウエスト。
紺のブレザーとチェックのスカートがよく似合っていた。
「ねぇ聞いてよ。今日ね俊くんと話したんだ。おはようって言っただけなんだけどね。
 マジうれしかったぁ。」
「そっか。よかったね。けどそれってさぁあ?土方くんが生徒会長で仕事だから言ってるだけでしょ?」
「あぁもう京。夢こわすのやめてよー。それでも私は嬉しーの!」
「ごめんってば、美穂〜」

キーンコーンカーンコーン

「はぁすっかり遅くなっちゃた。職員会議長引きすぎだよ。」
時計は下校時刻である6時を過ぎていた。京は廊下を小走りに急いでいた。
「あっあ・・・うっああ・・・」
いきなり胸の心臓あたりをおさえて倒れこんだ。
「大丈夫ですか!?」
遠くの方から長身の男が駆けてきた。少し長めの黒髪を乱しながら京に近づいて抱え込んだ。
「この人・・・巴さん・・・?」



1年前 No.2

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

吸血鬼、ヴァンパイアと呼ばれる者達は色々な人種から生まれているために、
人種ごとに肌色や顔つき、体型、性格には個体差があるものの、
一貫して鮮血めのような赤い瞳と吸血する場合のみ現れる牙があり、
キュートであったりセクシーだったりと外見は如何なるものでも必ず異性に好感を得られやすい姿をし、
個性豊かな性格であるものの人間に対して実に友好的。

不死身の彼らは人間の生き血を吸うことにより、人間にはない恩恵を授かる。
それでも雑食性で野菜、肉といった普通の人間達が食すものも食べるが、
彼らには人間の生き血の方が満腹感と幸福感をより大きく与える。


彼らの始祖は普通の人によって産み出された。決して創作における産物などではない。
最初に発生したの齢は500歳を超え、今なお彼は同じく吸血鬼の弟と共に生きている。
彼らを始めアメリカやロシア、アフリカ、日本でも性別問わず発生し繁殖、
次々とその数を増やしていき、世界人口の4分の1が吸血鬼だ。
だが、その存在を人類は殆ど認知していない。

吸血鬼を題材とした人類初の小説は1987年から世に出回る。
つまり、吸血鬼は其よりも昔に実在している。
にも関わらず、何故彼らの存在が500年以上の間表に知られていないのか?
それは彼らが他の生命体では持ち得ない摩訶不思議な力があるからだ。
全ての吸血鬼は宇宙の法則を無視した魔術を使うことができ、
炎や水は勿論人間一人一人の視界に映るものも、感情や記憶まで思いのまま操ることができるから。
吸血鬼であった自分の記憶を消しているので、絶対に自分が吸血鬼であることが分からない。

中でも、強大な魔力を保持する最古のヴァンパイアは全ての仲間を率い、
人間に感知されることも、食料でない人間が出入ることができない、
吸血鬼の楽園である小さな異世界を造り出せば、その世界の王として世界を治めた。
面倒事を嫌い、美味な人間の生き血を効率良く摂取するために、
王は人間との戦争を絶対に避けるべく人間への殺害を禁忌とすれば、
人間と同様の暮らしをし、なるべく不具合が生じない形で生き血を吸うようにしている。
そのため、吸血鬼は身近な場所にも当たり前のように生活している。

日本にいる男女2人の吸血鬼と、彼らと付き合うことになる人間2人がこの物語の主人公達。
その出会い方は異なるが出会う日も、キッカケは同じ。

1年前 No.3

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

渋谷は言わずもがな、東京を代表する区の一つ。
辺りには大きな広告がところ狭しに貼られている洒落た建物の群衆が建ち並ぶ。
人波は日時を問うことなく、絶えずを行き交う。
その中に紛れ、彼らは美味たる『エサ』を求めて眼を光らせている。


――――――――――――


2016年、2月20日午後4時過ぎ。その日はパラパラという静かな音と共にアスファルトが濡れる。
そんな中傘を持たずに建物の影で雨宿りをする、
肩甲骨の辺りまで漆のように美しいロングヘアーを伸ばし、
厚手の白いフリルスカートを履きこなす一人の女子中学生がいた。

彼女の名前は天宮美月(あまみやみつき)。
成績は平均的で性格は物静かだが、容姿は14才であるがスタイルが良く非常に愛らしい。
その性格も相まって、学校中の男子生徒に絶対的な支持を得ている中学三年生。
そんな美月は不安げな表情で曇っている空を見上げて一人ポツリと呟いた。


「…雨、止まないかなぁ。」


天気予報では一日中晴れである筈だったが惜しくも外れ、
どしゃ降りではないものの、傘が必要なくらいには降っている。
近くにビニール傘を売っている店もなく、このまま雨足が弱まるのを待っていた。
だが、彼女は誰から見ても可愛らしく、その可愛らしさに行き交う人々が視線を向ける。


そして、雨宿りしている美月を反対側のビルの屋上から、誰かが興味深く観察していた。
背が高く足も長いモデル体型の口髭を生やしてワインレッドのYシャツ、
黒のダンディなスーツを着こなし、黒い手袋を着けた日本ではあまりいない変わった出で立ち。
世の女性の大半が美男子と称すであろうモデル顔負けのイギリス人と思わしき、
温厚で優しそうな顔をした30歳程の男。


「ほう…、非常に美味しそうな子だ。」


男は妖しげな笑みを浮かべると、誰にも知られることなく霧になって姿を消す。
一方雨が収まるのを待っている美月の元に、
何やら派手で、且つ物々しい格好をした自分よりも三つ四つ年上と思われるチンピラ男衆が、
3人寄ってきたと思えば下心丸出しで興味ありげに話し掛けてきた。


「おっ!お嬢ちゃん。こんな所でどうしたの?」


「あ、君可愛いね。年幾つ?」


「え、えっと……。」


絡まれることなど予想だにしていなかった美月はどうすれば分からず、言葉を詰まらせてしまう。
すると髪を金髪に染め、顔に切り傷のある男の一人が突如として彼女の手を掴んだ。
勿論手を振り払おうとするも、無力。男達は無理矢理有無を言わせず、彼女を連れていこうとする。
彼らはこの一帯では名の知れているチンピラのため、周りの通行人達もこちらは向いても無視していく。


「あの、はっ、離して下さい!」


「あぁ、大丈夫大丈夫。いいところに連れてってあげるから。」


美月は勇気を出して言い出してみるも男はその言葉も気にする素振りなく流すと、
彼女の手を引っ張り、何処かに連れ出そうと歩き出す。
力の差は明白で、強い力には逆らえず引き摺られるように彼らの言いなりになる。

1年前 No.4

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「…Good success,」


ビルの上にいたその男はいつの間にか傘を片手に美月のすぐ近くにおり、
渋谷の街並みには不似合いな何とも気品ある仄かに妖しげで不敵な笑みを浮かべ、
小声で流暢な英語を呟やくとそちらに向かって歩みを進める。
グッドサクセス、その言葉の意味は『上出来だ。』

美月は男達の傘下でボロボロと涙を流すも、その雫は雨一つになって地面に落ちる。
恐怖に苛まれ、叫び声一つ出せず助けてくれる者は一人として辺りにいない、そう思っていた。


「失礼、その娘は待ち合わせの相手でね。申し訳ないが他の女性を誘って欲しい。」


場の空気を乱しかねない声が4人全員の耳に入った。
それはこの状況下、焦せることなく平常心を保っている落ち着いた声。
その声に美月はこの状況から脱することができると一瞬期待し、
ハッと泣き顔を上げると、目の前には場違いな程に顔の整った男性が一人。
プロポーションもモデルのように見映えの良い。黒い傘を差した姿も絵になる程。
だが、彼に比べると自分を取り囲む3人衆の架台の差は一目瞭然で圧倒的に不利。
物理的な解決は望めないと思った。だが、この3人が話し合いで何とかなるようには見えない。
美月は自身よりも、彼を心配しているがやはりこの状況で声を掛けることはできず。


「あぁん?だったら少し待っとけよ。ヘナヘナのオッサン。」


「済まないが遅らせることができない程の大事なんだ。それでも彼女は渡せない…と。」


「さっきからしつけぇなぁ!一発殴られてぇのか!?」


軽く貶されようと全く気にせず、依然として余裕綽々な態度の紳士的な男性。
すると、三人の中から本当に日本人なのかと疑う程ゴリラのような巨体を持った短気な一人の男が、
のしのしと僅かに地面を揺らして彼の前に立ち塞ると、そちらに顔を近づけて眼を飛ばす。
尚も男は怖じ気づく事はなく何故か彼を見てクスクスと笑い出している。
目の前で無礼に振る舞う男に激怒した巨漢は遂に彼の顔目掛け、容赦せず拳を振り降ろした。
振り下ろされた拳を見、美月は思わず、両手で目を塞いだ。
まず最初に聞こえたのは何故かあの殴り掛かった男の動揺、怯えているような声。


「なっ、何なんだこいつ!?」


「はははっ、そんなに驚くことかい?
まだ彼女を渡す気がないのならもっと見せても、私は一向に構わないんだよ?」


「ひっ、ヒイィ!!ありません!この子にはもう用はありませんん!!」


「ごめんなさい!ごめんなさい!!」


「失礼しましたああぁあ!!」


男達の声が悲鳴に変わる中、あの男性の落ち着き切った声は変わらない。
何が起きているか分からないが、あの三人が遠ざかっていくのが分かる。
何より大男が歩く振動がすぐに自分から離れていき、雨の雫が服や肌に当たる。
が、すぐに雨の雫が当たる感覚がなくなった。

1年前 No.5

総姫 @souki18 ★77g9hT2X5J_8yY

1.二重人格
〜秘密はなしで〜

「うぅ、ここ・・・は・・・?」
京がうっすらと目を開けるとそこは見知らぬ部屋だった。
全体的にしろとこげ茶でまとめられた部屋。
一番隅に今日が寝ているベッドがあった。
ガチャッと音がしてドアが開く。
「あっ目を覚まされましたか?巴さん。一度ご両親にお電話したのですが
 お留守のようなので失礼ながらわたくしめのベッドに寝かせていただきました。」
沈黙がおとずれる。
「えっと、おまえ、公立N高の高3生徒会長、土方俊だよな?」
「?さようでございますが・・・。えっとあなた様も巴京さんですよね?」
「あぁそうだけど」
「「・・・・」」
「「えええええええええええええ!!!」」
近所迷惑までいきそうな叫び声。
「いやいやウソだろ!学校とまるっきりキャラ違うし!!なんでクール系がいきなり『執事』つーか
 尽くし系に変わってんだよ!?マジ意味わかんねー!!!!」
「それを言うなら巴さんもですよ!?学校じゃあんなに品行方正でいらしたのに何でここではそんなに男勝りなのですか!?」
頭を抱え込んで叫ぶ京に負けじと礼儀正しく言い返す俊。
「はぁ?何言ってんだ?そんなのあたり前だろ。だって俺、男なんだし。」
だから?という顔で京はキョトンとする。
「えええええええええええええええええ!!!!!」
確実に近所迷惑な声。
「そんなに驚くことねーだろ。最近ハヤリの男の娘ってやつだよ。まぁぶっちゃけ俺の一族女しか生まれねえぇんだけどよ。
 稀に男も生まれちまうんだ。そういうやつはだいたい養子に出されるか女装で一生過ごすかどっちかなんだよな。」
そういって少し苦笑いをする。
「でも家にいばしょなんてなくてさ。こんなとこまで家出してきたのさ。」
そんな京の話は少しも聞こうとせず、俊はほかのことを考えていた。
―――巴さんは、男。じゃあ俺とんでもないことしちゃった?


数分前。
俊は寝ている京を自室に運び込むとベッドに寝かせた。
「巴さんまじかで見るとより一層かわいいです。
 今なら変なことしてもバレませんよね…?」
そうつぶやくとかがみこんだ。そして俊の頭で京の顔が見えなくなったと思うと俊の口が京の口にそっと触れたかと思うと
すぐ離れた。俗にいうフレンチキスだ。

1年前 No.6

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=qpg7RLCAlP

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1年前 No.7

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=qpg7RLCAlP

「そうでしたか。良ければ、お名前を教えてもらっても?」


「天宮…です。えっと……。」


まともに目も合わせられず相手の名前を聞けないまま言葉を詰まらせていると、
彼はにこやかに自ら名前を教えて美月をリードする。


「ギルバート・クロフォード。イギリス人だよ。」


「ギルバート…先生?」


ギルバート…響きの良い立派な名前で、性格も正に英国紳士。
それに日本語も流暢で外国人独特の訛りもない。
美月は高校での教員の名を一番最初に覚える。入学する前に忘れることは絶対にないだろう。
入学前の学校の教師に遭遇してしまったら先生と呼ぶべきなのだろうか、
それともさん付けで呼べばいいのか。美月は困惑ながらも、彼を先生と呼ぶ。


「今はまだ貴方の先生ではありません。ですから、先生と呼ばないで。いいですね?」


「はっ、はい!」


ギルバートは敢えてさん付けするよう表情も変えず、
声色も優しいまま彼女に伝えると、小さい声ながらも緊張のあまり固まった返事をしてしまう美月。
それに伴い、彼女の歩調も短くなる。彼女の様子を見たギルバートはクスリと笑えば、
教師らしく彼女にアドバイスを送って。


「肩の力を抜いて。落ち着きなさい。」


「はい……。」


何故か、彼に指導されると急に冷静さが戻ったような気がした。
普通男性でも女性でも、美人にあの様な接し方をされたら誰もが落ち着かないだろう。
美月の場合には彼が正に理想の相手になりつつあるからより無理な話なのだが…
…寧ろ彼と色々話をしたいのかもしれない。それで冷静さが戻った、という風な自己完結をしておこう。


「ギルバートさん、凄い日本語が上手なんですね。日本人と変わらない喋り方でびっくりしました。」


「実に嬉しいお言葉です。私はイギリス生まれなので英語も話せますが、
2年ほど前日本語を習得したので国に合わせて日本語を使っていますよ。」


彼の話に、美月はそうなんですかと言ったところで話が切れてしまう。
落ち着いたとて緊張が解けたわけではないのだ。
次はなんの話題を振ればいいか、急ぎ脳内にて考えをぐるぐる巡らせていると彼が口を開く。


「天宮さんはとても可愛らしい方ですね。」


「!そ、そうですか?先生…いえ、ギルバートさんに言われると嬉しいです。」


穏やかな表情のままでそう言われるとやはり恥ずかしい。
ただ、先ほどよりも羞恥心は感じず、寧ろ嬉しさが込み上げている。
それに、何となく彼と打ち解ることができそうな気がして。

美月はコンビニの前に着くまで、自分の知らないうちに彼と楽しく話をしていた。
あの様なことがあっても、絶世の美男性に遭遇しても楽しく話すことができるなど、
普段ならあり得ない。まるで、ギルバートに魔法に掛けられたようだった。

1年前 No.8

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

「ありがとうございました、ギルバートさん!」


彼の傘から離れ、コンビニの前で頭を下げる美月。
出会った当時と違い、声を張って礼を言うことができた。
何より知らないうちににこやかな笑みを浮かべており、
緊張はすっかりほどけてしまっている。だが、頬はやんわりと赤めたまま。
彼女の表情を見つめ、ギルバートもフッと柔らかな笑みで彼女に言葉を掛けた。


「貴女は笑顔の方がお似合いですよ。それでは、今度は教師と生徒として4月にお会いしましょう。
それと…今日遭ったことは二人だけの秘密にしてくださいね。…では。」


ギルバートは彼女に背を向けて一人彼女から離れていき、雑踏の中へ姿を消した。
だが、最後に後ろを振り向き様、こちらにあの笑みのままで手のひらを軽く振ってくれていて。
彼との別れを名残惜しいと思うも、手を降り返す美月。



――――――――



ビニール傘を買って雨の中を一人帰るのだが、誰にも絡まれることなく無事に帰宅した。


「ただいまー。」


と、特に何事もなかったかのようにいつも通りの声の調子で帰宅したことを告げる。
だが、誰の返事も帰ってこず、部屋は静まり返っている。
両親は買い物に出掛けているようで、家には自分以外に誰もいない。
そんな彼女の頭の中は帰宅中でも家に着いても四六時中、彼のことでいっぱいになっている。

家に一人だけ、つまり誰にも見られることはないので、
美月はギルバートと会ってからのことを存分に思い出す度、顔を赤らめることを繰り返す。
まるで危ないところを王子様に助けられたお姫様気分。
…勿論彼の年齢などは全く持って考えておらず。
何より、彼に掛けられたあの言葉がぴったり張り付いて頭から離れることを許さない。



『今日遭ったことは二人だけの秘密にしてくださいね。』



それから大体15分後に両親が帰宅、そこからは平常心を保った風に見せてなんとかやりきる。
トイレやお風呂など、一人きりになる時間はすぐに彼のことを思い出していたが。


「ギルバートさん…かっこよかったなぁ。」


今日やることは全て終え、ふわふわした白いネグリジェで床に着けば、
シーンとした物音一つ聞こえない部屋でそんなことをぽつりと呟く。
雨はすっかり止んで窓からは星空が見える。
都会の空には数えられるくらいの星しか顔を見せていない。
今日1日あったことを思い浮かべるも、やはりギルバートのことを考えてしまう。
歳上好きが悪化しそうだなぁ…と染々思っているものの、
色々あって疲れていた美月はこんな思いも保てぬまま、
布団に潜って10分足らずで静かに寝息を立ててそのまま夢の中へ誘われた。
当然、今夜の夢にはギルバートが現れるのだった。

1年前 No.9

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

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1年前 No.10

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

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1年前 No.11

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

「…ふう、これで今日教えるべきことはお終い。
あら、まだ30分も経ってない…覚えが早いのね、早い生徒でも一時間くらい掛かるのに。素晴らしいわ。」


一つ息をついてから、教え切ったことを伝えると予想よりもかなり早いことに気付くも、
大人の対応でさらっと褒めただけ。あの怪しげな口振りであったが、
実際は竜の期待したようなことは何一つなく実に確り教えてもらった。
美女に褒められた経験のない竜は内心でとても喜んでいたり、恥ずかしがっていたり。
ガリ勉もやし系男子な彼は短時間で難なく記憶で覚えられた。
というより何故今まで覚えられなかったのかが不思議なくらいだ。


「いっ、いえ!先生のお陰…です……。」


「まあ、竜君ったら…そんなに謙遜しなくていいわ。ちゃんと胸を張って良いのよ。」


辿々しくも相手の面を立てるようなことを言えば、彼女に注意を受けた。
注意と言っても母性的な優しい注意の仕方で、何とも表現し難い気持ちになる中…


「胸を…張る……。」


思い出したように先生の胸元をチラチラリと目を泳がせながらも見つめる。
集中していたので胸元を見る暇もなく、その強烈なものがあることすらも忘れ、
ただただ勉強に打ち込んでいた。これが竜の凄い所だろう。だが、勉強はもう終わり。
が、胸元は見えずとも、彼女の艶やかな声が片時も離れず此方の鼓膜を刺激し、
自分の顔を覗き込むように見つめてくるため、集中を切らさない程度に興奮していたが、
我慢していた分、段々と箍が外れつつある。


「もぅ…ちゃんと集中しないとダ・メ・よ?」


「うぁ……!」


テーブルで向かい合っていたアイリーンだが、スッと立ち上がったかと思うと、
竜の隣に来て見事な曲線美を描く脚を見せつけるように曲げて座れば、
たわわに実ったそれを強引に彼の腕へと押し付けた。まるで、竜を誘うように。
それは肉厚でありながらとても柔らかく、マシュマロの様に弾力がある。
揉んだり顔を挟まれる姿を想像したくなりそうだ。
彼女の大胆な行動に着いていけず、驚きのあまり情けない声を漏らして体を石のように硬直させる。
段々と下半身の一点に熱いものが集まりつつあるその衝動を辛うじて抑えるが、
代わりに額から汗が吹き出す。そんな危うげの彼を妖しい笑みを浮かべて見つめながら、
アイリーンは留めを刺しに入った。


「あと少しで高校生…ねぇ、竜君?高校に入学したら、私と付き合いましょう?」





「恋人 として、ね。」

1年前 No.12

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

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1年前 No.13

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=nxmqliULoU

そう言うと反論を言わせないようすぐに竜手を引っ張り、
母がいるであろう下の階へと降りていく。
母親はこの時間帯なら、我が家の豪勢で健康にも気を使った、
スペシャルな夕食を作る支度をしている頃だろう。


「この時間、母は買い物で家にいませんよ。」


が、今日は客人が来ている。あれは人目を気にするタイプで、業と買い物に出掛けている。
彼女と一緒には降りたくないので、気だるそうに先生に告げた。
素っ気ない態度だが、内心竜は母親がいないことを確信しており、冷静だった。

が、一階に近づくにつれ、リビングからトントンサクサクと軽やかなリズムを刻む
まな板の上で何かを切っている様な音が聞こえてから、急に自信が無くなり不安が募り始めるも、
そんな不安を他所にアイリーンはリビングの半透明な硝子が張られた戸を、静かに開ける。


「あら、竜にアイリーン先生。勉強は終わりですか?」


「はい、他の生徒は一時間程掛かるのですが、竜君は30分程全て覚えてしまわれました。」


予想が裏切られた。母は、いつものように食材を切って夕食をつくっており、家庭教師が家にいることをすっかり忘れている様な振る舞いのようだが、
妙に甲高い抑揚のある声を出しながら先生に話している辺り、それはまずない。いや絶対に有り得ない。
そう思いたかったが階段を降りた辺りから既に自信を折られており、
何故こんな日に料理をしているのかよく分かず、呆然として母親に訊いた。


「母さん…なんで、なんで料理してるの。」


「いやね、竜。そんなに驚くことないでしょ。
今日のメニューは普段より手間が掛かるから、早くから作ってるの。」


こんな時に手間の掛かる料理をするなんて可笑しい。当然来客が訪ねてくることは前以て知っていたし、
品格のある金持ちを演じたい母は一般的なものとは異なる人見知りをする。
その振る舞いを夫にまで細々要求するほど、周りから見た自分のイメージに固着しているのが母だ。
竜は母親がついに頭がおかしくなったと思いながら黙っていると、
空気を読まずに、アイリーンが早速本題をぶつけた。


「突然ですがお母様、この度竜君と恋人として付き合うことになりました。」


『は、はい?それは冗談…ですよね?まぁ、先生ったら!オホホホホ……。』


どうせ、そんな濁した返事が返ってくる来るのだろうと思いながら、
口出しせずに母の返事を待つ。ーーが。


「ええ、うちの息子で良ければ是非!」


竜のメガネが再び外れ床に落ちたが、すぐ拾い上げかけ直して母に猛抗議する。
未成年の少年が、出会ったばかりの20代半ばか後半の女性と付き合うと聞いて、
反対1つせず付き合ってくださいませ!と店員のような接客の対応をする親がどこにいるか。
忽ち竜の脳内は有り得ない筈の現象が目の前で起きていることを直視して、様々な可能性が忙しなくぐるぐると馳け廻る。

1年前 No.14

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=1iL6MqWFCu

「母さん、冗談も大概にしてよ!」


「冗談?私は本気よ。
こんな美人で優秀な方と付き合えるなんて、嬉しいと思わないの?
今日はお祝いしなきゃ…先生も今夜一緒にどうですか?」


言う通り、とても冗談には見えない形相でそう訴えてくる母だが、
先生に対しては息子以上に気配りをしている。
目の前に立っている彼女が何を考えているのか全く想像できないし、理解したくもない。
それとも自分の隣に立ち、欲情したように頬をぽっと染めて
こちらに卑しい視線を送ってくるこの女教師は、
実は良いところのご令嬢なのではないかと思えてくる。
我が家は金持ちのため大した財力や学歴がなければ、
男女交際なんて断固として認めないだろうし、胡麻を摺っているのも納得がいく。
確かに美人でセクシーで、色んなことを教えてくれそうな先生だが、
いきなり付き合えと言われて素直にうんと頷けるものではないだろう。
僕はそこまで自惚れていない。

目に見えていたが、アイリーンは母の誘いを断る気などなく喜んで返事を返せば、
息子さんと色々話したいことがあるからと言って、
頭を下げてから母親の前で竜の手を引いて彼の部屋に戻っていく。
とても上機嫌な母親はどうぞ寛いでくださいね〜!と、
雇った家庭教師に掛けるべきではない言葉をさらっと去り際に掛ける。
それを聞いて僕は腸が煮え繰り返ったと同時に、人生で最高に母親を軽蔑した瞬間だ。
階段を上がっていく間は互いに一言も喋らず、鼻歌を口遊む鬱陶しい母親の耳障りな声が聞こえるだけだった。

しかし、部屋に戻って部屋のドアを閉めたのを確認すれば、間も無く彼女の方からこちらの心情も考えずに話し掛けてくる。

1年前 No.15

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=MVMdMFfAr4

「これで文句はない?」


「ない訳ないでしょう!…考えたんですけど、先生は良家育ちなんですか。
母があんなに自分から推して勧めるってオカシイですよ。」


瞬間的に躍起になった竜だが、自分を落ち着ければ彼女について迫っていく。
まるで最初から母の行動を見通していたような、
彼女の振る舞いがどうしても受け入れられないでいると、
彼女は彼の発言に少しばかり驚いた仕草を見せるも、至って冷静非常な真実を竜に伝えた。


「あら、私のことをお母様から伺っていなかったの?
竜君は3年後の誕生日を迎えたその日から、私の夫になることに決まったのよ。
何ヶ月か前ご両親からお誘いを受けて、
今日貴方に指導することとお見合いも兼ねて来たのだけれど?」


「は……?」


美人先生の前でも構わず素っ頓狂な返事を返す竜。そもそも、構っていられる事態ではない。
戦国時代であれば全く気にすることはない。
現代では男性は18歳になってから結婚を認められるというのに、
15歳で妻となる女性が既にいるという、遠くかけ離れた事実を伝えられたのだから、
当然といえば当然の反応だ。あまりのことの大きさに眼鏡が三度落ちる事は無かった。
代わりに口を何十秒か閉ざしその間自分が思い付く限りの、
あらゆる理由を考察しようと試みるも、結局は無意味でしかなく。
彼女が我が家以上の良家育ちでなければ、母のあの活き活きとした様子にも納得がいく。
…ただ、彼女が喜んで頭を下げるような家柄の人間が、自分の様なまだまだ尻も青くて、
何の取り柄もなく本当に財力を持っているとはどうも言い難い家系の息子に、
嫁ぎたいというのは不可解だ。其処だけに疑問を持つと、竜はすぐ先生に質問してしまった。


「何で夫が僕なんですか?先生と歳も近くて…かっこよくて、
ウチよりお金のある男性なんて世の中に沢山いるでしょう。」


こんなに綺麗で歳の離れている(であろう)女性が、僕の奥さんになる人だなんて信じたくない。

まだ結婚なんて考える年でもないし、
高校生というのはハッチャケられる人生最後の三年間だというのに。

彼女は愚か友達と呼べる相手もいないで、
コミュ障だとか影薄いとしか言われて来なかったヤツに、
美しい未来の妻がいることが知れた暁には、
学校中で苛められてもおかしくは無いのに。親は金の事しか頭にないのか。

1年前 No.16

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★PSVita=HAw8Ong5UW

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1年前 No.17

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=3TDRwH9oxX

それから時は流れ、1ヶ月半。季節は春へと移り変わり、
温かな陽気に包まれる日が大半。今日は4月10日、渋谷四ツ葉学園高等学校の入学式。
絶好の晴れ日和だが、桜の花はあまり残っておらず、葉桜が顔を出しているのが目につく。
中学とベースカラーは臙脂色と同じだが、より洗練されたデザインの新しい制服を身に纏って、
新一年生が続々と見慣れた校門をくぐっていく中に彼、彼女はいた。
同じ高校での同じ入学式ですぐ近くにいながら、人気者と日陰者とでは別空間に生きているような、
目に見えて対照的なシチュエーションを味わっていた。


「美月〜!」


「あっ、真実、ちい。おはよう〜。」


美月の親友で髪を後ろに結わえ、使い回しのスクールバッグにどれも目立って汚く見えるくらい、
大きなストラップをジャラジャラつけているが、
当人は美人で活発そうな172センチメートルの壁バスト、元バレー部キャプテン北野真実と、
肩につかない長さのふんわり内側にカールしたショートヘアを、コテ(ヘアアイロン)を使ったり、
シャンプーや、ヘアジェル、スプレーも厳選し、毎日欠かさずケアしているらしい
高校一年生としては痩せていて無駄な脂肪がない、
元美術部部長をしている天然天使、巻原ちいが駆け寄ってきた。


「いやぁ、高校生活楽しみだねぇ、美月君」


「うん!超楽しみ!」


馴れ馴れしく美月の肩に手をのせて、わざとらしくそう話すのは真実。
美月は素直に心を体で存分に表して、頷く。彼女はこの日をずっと、待ちあぐねていた。
前までは高校生活をあまりエンジョイする気になれなかったが、
あの日を境に、心境は瞬くよりも早く一変してしまった。


「イケメン外人先生楽しみだなぁ〜」


「でも美月が言うんだ。どぉーせ、おじんでしょ?」


「おじんじゃないよ。それが、ヤバイくらいカッコいいんだって話だよ。」


そんなやり取りを交わしながら、気持ちを新たに校舎へと向かっていく三人。
今年の渋谷四ツ葉学園高等学校には、超絶イケメンの外国人の先生が来るらしい。
そう美月は噂ではない噂をでっち上げて、もう二人に話していた。
先生に言われた通り、いざこざについては何一つ、親にも話していない。


「マジかよ。本当だったらアイツ、ぜってーオジン好きが悪化するって。」


「今度こそオジキの称号が与えられんぞ〜、天宮。」


オジキとはオジさん好キと美月を掛けたものだ。
叔父貴とはイントネーションが違い、美月と同じ発音をする。
外野から、その話を耳にした中学時代同じクラスメイトだった男子達5人が、
ゲラゲラと青らしく下品に笑いながら、こちらに野次を飛ばしてきた。
彼女のそれは、ずっと前から男子にも知られており、授業中もネタにされることがある程。
しかし、真実はそれを嫌がらせと判断すると、
彼女を守る番犬のように男子達を近づかせまいと威嚇した。


「入学式早々うっさいわね、男子ども」


「おへぇ〜、早速巨壁が登場かよ」


馬のような出っ歯に、腫れぼったくて細い目、
普段の顔を見ただけで笑いそうな独特の顔で坊主頭、背は真実よりも少し高く、
若干痩せ細った体型の浅岡がそうからかえば、周りの男子も笑って。
誰が巨壁だ、と声を荒げて大勢の一年生達の間を、まるでスケートをしているような、
非常に滑らかな動きで人との間をすり抜け、男子の群れに突っ込み追い回そうとする真実。
男子達は真実に追われる形で逃げていき、追い払ったところで彼女は校舎前からUターンして、
呆れ顔でぶつくさ文句を言いながら、こちらに戻ってきた。


「進学しても騒がしいまま。…ったく、これだから一貫校は嫌だ」


「仕方ないよ。今年は卒業生全員同じ高校だし、卒業して一週間しか経ってないからね。
あんまり環境が変わらないから、態度も変わりないんじゃない?」


腹を立てている真実を何も考えず宥める美月。
幼稚園からの腐れ縁は、神経質な真実への対応をスムーズにしてくれる。
中高一貫校というのは中学卒業後、
必ず指定された高校へ入学するような決まりはない為、
毎年何人かは別の高校へ行くことが普通だが、
今年の新一年生のような、卒業生全員同じ高校へ行くことが稀に起こる。

1年前 No.18

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=LPUdD0Xfvw

浅岡って、北野に惚れてるんじゃなかったっけ。


そんなことを考えながら、騒いでいた美月達の方を一人見つめている竜。
独りなのはもう慣れっこで、自身や友達がいる相手にも妬んだりもしなくなった。


「ねぇ、あの車何?」


「ベンツのマイバッハ!しかも、エクセレロじゃん、スゲー!!」


「どんだけ、金持ちなんだか……」


周りにいた女子が、校門の前に停められている黒塗りの高級車を見つけ、
その声で振り向いた車マニアの男子達がやたら騒いでいる。
その車は8億という莫大な金額の車で、所有者は世界で30人もいないと言われる程の車だ。
しかも送迎車なのか、通常通り二人乗りのものが五人乗りになっているため、
オプションも含めたら通常よりもっと掛かっているかもしれない。
そんな中、容姿端麗で制服を着こなした男性運転手が出てきて、後部座席側のドアを開ける。
途端、女子生徒達が騒めき始め、その声に釣られて美月達も竜も振り向いた。


「なんで、俺だけ特別送迎なんだよ…ドン引かれんだろが……」


「偶には、この様なシチュエーションも良いではありませんか。
それでは、私は車を校舎内に駐めに参らねばなりませんので、これで失礼します」


中から出てきたのは高級車が似合わない、制服を着崩しているうっすら赤い黒髪が目に付く、
喧嘩も出来そうな今風の男子生徒。だが、今風なのは性格と服装だけで、
十分端麗な運転手を遥かに上回る、それはそれは見事な容姿で、美形の部類でありながら、
青年らしい格好良さもあり、また年に不相応な鋭い眼光を携えている。
美月にはなぜか彼を、全然違う容姿や性格の印象と捉えていながら、
ギルバートとどこか似ている様に思えたが、
年上好きな美月は彼よりも、運転手の男性の方が好みであった。
だが、彼を目にした女子生徒は美月を除いて、
皆が皆立ち止まって無意識に視線を奪われていた。
そして、彼に一礼すれば運転手は車に乗り込み、
高級車を正門の裏側にある駐車場へと駐めに向かった。


「カッコいい〜!本当に高校一年生!?背も高いし、いかにも強引なオレ様系ってカンジ!」


その男子生徒を見てテンションが跳ね上がったちいに、真実は溜め息をついた。


「ホンットに面食いよね、ちい」


「えぇ〜、真実も見惚れてた様に見えたけどなぁ〜」


生徒の方ばかり見ていたちいだが、一定のプライドがありながら、
純情持ちな真実のことを見逃してはいなかった。
理由は、純粋な彼女をひたすら弄り倒すことができるからだ。


「なっ!わ、私は、見とれてなんかないから!あの車が気になっただけだ!」


「あっ、あの人こっちに来る。中学にはいなかったし、絶対転校生だよね」


この時、竜はアイリーンが来たのではないかと思ったが、そんなことはなく一安心していた。
ただ、雰囲気も彼女とは全く異なっているにもかかわらず、
美月と同じように、竜も彼がどこかアイリーンと似ている気がしたものの、
それは気のせいだと考えを振り払い、全く気にしなかった。
そして、その青年は自分に集中している目線を何とも思っていないのか、
カバンの柄を右手で持ち、右肩に掛けるように提げれば、
校門の真ん中を抜けて真っ直ぐ、美月らの方へと歩いてくる。真実とちいは期待しているが、
ギルバートが気になっている美月は、青年にあまり興味を抱いておらず、
二人の手を引っ張って校舎に入ろうとするも、二人共その場から動こうとはしない。


「(ケンカ強そうだなぁ…近寄らないのが妥当だろう)」


彼女達の隣で初めて見る青年に対し、この中で警戒しているのは竜だけだった。

1年前 No.19

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=LPUdD0Xfvw

彼は、真実の目の前で足を留めると、彼女を目を見つめて話した。
勿論、変わった事は一切ないただの会話だ。


「おはよー。ねぇ、キミ。新入生の校舎って、コッチであってるっけ?」


「はっ、ハイ!!」


話し掛けられると彼女の頭は真っ白になり、緊張の一点張りで、質問に返事だけで答えた。
中学のバレーボールにおける全国大会ですら、
張り詰めた様子がなかった彼女が、男に話し掛けられただけで、
顔全体を赤くし、ぎこちない返事を返して動揺する姿は、ちいにも、美月にも新鮮なもので、
この男子生徒が如何に凄いのかを実感している…のは、美月だけ。


「ねぇ、君。転校生だよね?名前はなんて言うの?」


真実と違い、普段通りを装って気軽に話し掛けるちい。
中学から友人関係になったちいはこれと言う程驚いておらず、
新年度が始まった初日から、異性と付き合おうという腹積りでいる。
彼が現れなければ、普通に高校生活を送れていただろうが、
独占欲が人一倍強いちいに火がついてしまえば、
無意味なのは親友の二人は、良く分かっているものの今回のちいは今までと違い、
彼に対して好意が無いよう、複数の男子生徒にアプローチを掛けるところまでを、
この転校生を一目見てから、ものの数分で画策していた。


「あぁ、俺は橘ナル。」


「へぇ〜、ナル君かぁ。カッコいい名前!」


そのまま話題を広げて、家のことやどこの国のハーフなのかなど、
気持ちいいくらいズバズバと聞いていくちい。
そして、すっかり蚊帳の外に置かれてしまった美月と、
今のほんの一時が頭から離れず、拭い切れていない真実。


「ちい、完全にスイッチ入っちゃったね」


「あ!あぁ…うん」


スイッチのオンオフは見分けられるのだが、
本気のスイッチに切り替わっていることには、やはり気づいていない二人。
そんな一方で、同年の女子を狙っていた男子達は、彼の出現によりかなり落ち込んでいる者も多数。


「…あぁ、女子は皆あいつに持ってかれそうな予感がして来たぞ」


「こうして、俺の高校生活は幕を閉じた……」


「(なんで、皆そんなに落ち込んでるんだろ。
可愛い同い年の女の子なんて、高校の外にだっていくらでもいるじゃないか)」


異様なまでの男子落ち込みように疑問を感じている竜だが、
アイリーンという女のせいで、彼の女性に対する価値観が大幅に狂った模様。
そんなことを考えながら、一度止めていた歩みを再び進め、
一人で校舎前に立っていた教師にクラスの組み分け表を貰えば、
下駄箱で他と比べてスローなマイペース靴を履き替える竜なのだった。


そろそろ、入学式が始まる頃合いだ。

1年前 No.20

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=Lqh9CjHUxp

それから三人は体育館について、指定された席に座る。
入学式は保護者代表でない限り参加ができないので、
殆ど生徒だけが集まっており、開始十五分前の体育館はまだ空席が目立っている。
美月、真実、ちいの三人は全員一年A組であったが、 横列は名前順になっており、
離れ離れとなったものの開始前ということで、まだ近くで話す事ができたため、暫く三人で話し混む。


…開式十分前になると、教員が体育館に七人入ってきた。
すると、教員席に最も近いD組の女子達が、一人の教師を見てきゃあきゃあと騒ぎ始める。


「ねぇ、あの先生顔もキレイだし、八頭身でチョーかっこ良くない!?」


「私、絶対あのセンセー担任がいい!」


その言葉に釣られた女子生徒が皆そちらに注目していき、
黄色い声は益々広がっていくと、やはり美月達も教員席に目を向けた。そこには彼の姿があったのだ。


「(あそこにいるの、ギルバート先生だ…!)」


教員席に黒いスーツ一式と、赤と黒のシックなネクタイを締めた彼の姿を見つけた。
見間違えることは絶対にない。教頭は司会進行なので、校長の隣に座っている。
彼は間違いなくクラスを持つ担任だ。
一学年5クラスのため教員は五人座っており、ギルバートは一番最初の席に座っている。
ただ、ここの一貫校は席順の並びに従って担当するクラスが決まっている訳でなく、
先輩達曰く完全にランダムなようで、運の要素が絡んでくるのだ。
担任は教頭に名指しをされるまで分からない。
美月は担任呼名のトップバッターでミスをしようものなら、
大恥をかくポジションにいたのだが、今は彼女は体が疼きそうなくらいに興奮していた。


「うわ、あれ美月の言ってた先生か?」


「やだぁ、私にも通用するイケメン……」


二人共美月の言葉に期待していなかったようだが、それは間違いだった。
真実は普段通りで驚いているも、若年層にも受けそうな顔だったことに驚いていて、
同年代がストライクゾーンのちいが、彼に釘付けになっているのだから、周りの反応もいいわけだ。


「開始五分前です、皆さん席に座ってください」


「えぇっ、まだ五分経ってないような…あ、五分前だ」


「じゃあ、続きは教室でね」


恐ろしい程早く流れる時間に、ちいは不服ながらも渋々と、
あとの二人はあまり気にせずに、元の席に戻って着席して始まるのを待つ。





「只今より、平成28年度第80回渋谷四ツ葉学園高等部入学式を始めます」


それから五分後の九時に60歳前後の白髪で生え際が上がっている、
平均的な体型の教頭白井が開式の辞を述べ、演台から一歩後ろへ下がって一礼すれば、
生徒一同も合わせて礼をし、入学式が始まった。

1年前 No.21

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=E1CA0t4WW2

まずは、国歌斉唱。教頭の一同起立の合図で、
式に参加した全員が一斉に椅子から腰を上げれば、君が代が流れる。
静粛なムードの中、殆どの生徒が口パクで口ずさむ生徒は殆どおらず、
美月と真実は数少ない方で、ちいはより少ない口を開けもせず、ただ突っ立ってるだけ。


「生徒呼名」


その言葉を聞いた美月は、胸を他の誰よりも強く高鳴らせる。
それを合図に一人教師がスッと立ち上がると、
同クラスの女子達が入学式という静粛な場にも関わらず、微かに歓喜の声で騒めく。


「やったわ〜、これで癒される…そして、ナル君をGETよ!」


「(美月が気になるけど、そこまで気にするのもないか)」


美人先生で割と満足しているちいだが、本命は転校生のようだ。
真実は担任については何も思っておらず、美月の心配をした。
美月は、教頭が司会進行をする演台へと黒と赤いネクタイをつけた彼が向かえば、
名前順のあから始まる最初の生徒の名を、備え付けのマイク越しに口にする。


「一年A組、天宮美月」


「ハイッ!」


名前を呼ばれて起立をする。明りが灯った瞬間の街灯のような、
愛らしくてにこやか、そんな笑みを浮かべながらの活き活きとした返事は、
今までの15年間で一番気持ち良かった。
自分からも、周りから聞いても気持ちの良いものだったろう。
隣にいる同クラスとB組の、美月に密かな好意を抱いている男子生徒が、
彼女の表情を間近に見れた喜びによって、内心舞い上がっている。

それから4人の呼名が続き、次は真実の番だ。


「北野真実」


「はい」


校内に響いても耳障りにならない、場を弁えているきっぱりとして爽快な返事。
それから6人目の呼名が終わると、いよいよ彼の呼名が来た。


「橘ナル」


「…はーい」


冴えてなさそうに、頭をポリポリ掻きながら気怠そうな返事をしたが、
先生の時よりも多くの女子生徒の声が上がっていたところを見ると、かなりの人気なのだろう。
それから11人後に、ちいの番が回ってきた。


「巻原ちい」


「はぁ〜いっ」


ぶりっ子じみている無理をした可愛い声を出す。
男子達の気を引こうとしたのだが、それは失敗だった。場の雰囲気によって、寧ろ浮いてしまった。
それでも、美月とどっこいどっこいの人気があるので、彼女を好きな男子には喜んで貰えてはいる。
ただ、その中にはちいの狙う本命の相手はいなかったり。


「咸神竜」


「は、ハイ!」


ガタッとよろけながら立ち上がって返事をする竜。
普段、人前に出るのを憚っているだけあって、親も来ているわけでもないのに、
全生徒の中で一番緊張していたことが、返事にも現れている。

それから20分近く掛かって漸く、全生徒の呼名が終わり、
高校に限らずとも、毎年話の最中に眠ってしまう生徒が現れる程、
長いように感じる生徒が殆どであろうプログラムの校長の辞が始まる。

1年前 No.22

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=3ei5BBtmhb

一礼後に演台へと上がった、気優しそうな垂れ下がった瞼に、全て真っ白な髪の山崎校長先生は、
辞を述べる前に新しく向かい入れた生徒達に対して、もう一度頭を下げる。合わせて新入生達も返礼した。
礼を終えて顔を上げると、全ての新入生をざっと見渡してから、歓迎の言葉を口にして。


「皆さん、ご入学おめでとうございます。
中学時代とあまり変わらない顔触れで、高校に入学したという実感があまり湧かない方もいるでしょう。
ですが、授業は中学と違いより難しい分、スマートフォンのような携帯電話を持参することができたり、
昼食も弁当か食堂かを自由に選択でき、中等部よりも優先的に、
コートなどを使うことが許されるなど、目に見える大きな違いが幾つもあります。
高校というのは夢を叶えるための重要な通過点です。ですから勉強も頑張って、
貴方方が有意義に高校生活を楽しんで行くことを心より思っております。
ですが、あまり力を入れるのも良く無いですから、時に気を抜くことも忘れないようにしましょう。
また、今年度で我が校も遂に、記念すべき80回目の入学式を迎えることができました。
これも保護者様や地域ボランティア、教育委員会様からの、
温かいご支援があったからこそ、迎える事ができたのです……」


五分程校長の話は続き、話が最後の方になるにつれて、生徒の集中力も途切れていったが、
幸い不良らしい不良はいなかったので、何の問題もなく苦行の一つが終わった。
続いては高等部の音楽担当の女教員一人と、男教員一人による校歌斉唱。
壇上のピアノ に教師が座り、C組とD組の間には指揮台が用意されると、
また別の教師が指揮台の上に立った。


『燦めく 町光りを夢見て 希望の光を見つめる
生い立った若い芽を育て 満開を目指し 日々突き進め
大きな幸運(しあわせ)を その手に掴み 強い意志で高みへ歩む 我ら 渋谷四ツ葉学園 』


曲調は同じでも中等部とは歌詞が異なっているのが、評価すべき点だろう。
歌は二番まであったが、校歌なんて何れ音楽の最初の方で教わると、
頭の片隅に挟んでおく生徒が大多数を占めている。

これ以降入学式は、どこの高校と大差なく何事もなく進んでいき、
閉式の辞が教頭の口から告げられると、新入生達は緊張から解放されたが、
すぐにA組から教室へ向かうよう指示が出た。


「順番は気にせず、男女二列で並びなさい」


担任教師は、素早く自分が面倒を見る生徒達を統率すると、
体育館を抜けて、一年と二年のクラスが置かれたA棟へ向かった。一年生の教室は、全クラス3階にある。

1年前 No.23

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「ここが一年の教室です。席は出席順に並びなさい、席替えは後日行ないます」


階段を昇り切れば、直ぐ目の前にあるA組の教室まで誘導して彼が指示を飛ばし、生徒が室内に入ると、
列はすぐにバラけて全員がゾロゾロと教室に入っていき、次から次へと着席する。
創立80年記念に改装が行われた室内は真新しく、どこの高校とも大差なかった校舎は、
どこのお嬢様学校だと目を疑わんばかりの、教会の様な洗礼されたデザインの校舎に様変わりした。
中学校の方も同様に改装工事が行われており、
此処に比べて幾らかマシなものとはいえ、やはり洋式で、高校と雰囲気を似せてある。
机や椅子はどこの学校にも置いてありそうなものだが、内装は滅多に目にかかることができない。
先頭の美月は、すぐ目の前にある最前列の自分の席に座ってから、室内を眺めていた。
竜の方はといえば後列の方で、隣には巻原ちいが座っているのだが、
彼女の視線は前方に席のある橘ナルしか捉えておらず、実に退屈だ。早くうちへ帰りたい。
全員が座り終わると、ビニーカラーの一般的な教卓の後ろへ教師が立ち、
生徒達を一通り見回しながら、柔らかい笑みを浮かべてまず、彼彼女達に労いの言葉を掛ける。


「さて皆さん、入学式お疲れ様でした。早速ですが、私は今日から君達の担任になった…」


生徒達に背を向けて、黒板に置かれたチョークを手に取れば、誰から見ても読み易く、
小学校時代のカタカナドリルに載っていそうな字体のカタカナと、英字をスラスラと深緑の黒板に書き込んでいく。
書き終えると、再び生徒達の方を少し右側に寄って向き直し、黒板に書いた字を生徒達へ見せた。


「ギルバート・F(フェアファクス)・クロフォードです。
新任したてなので、君達を困らせることもあるかも知れませんが、どうぞ宜しく」


「センセー、質問でぇす!結婚してますか!?」


至って真面目な自己紹介をしていると、茶目っ気たっぷりな男子生徒が、
横から教室内の誰でも聞き取れるくらいの声量を出して、質問を飛ばしてきた。
それにはギルバートも予想しておらず、数秒気が抜けて目が真ん丸になったが、
すぐに持ち直すと『していません。君達の思うようなガールフレンドもいませんよ』と、
男子生徒にも穏やかな笑みを向けて、はっきりと答える。
それからというもの、彼が未婚で彼女もいないことを知ったからか、
彼のスマイルに落ちたのか、多くの女子生徒による質問が一斉に、大量に飛び交う様になった。


「先生は幾つなんですかー?」「趣味はなんですか?」「どんな女性が好き?」


それは、美月にとってもかなり気になることなのだが、
あくまで教師なので答えず にスルーするだろうと、少し肩を落としていた。
しかし、彼は普通の教師であれば、まず答えない様な質問にも、気にせずに全て答えたのだ。


「今年で32歳です。趣味ですか、そうですね人助け、でしょうか。
優しくて、包容力もある愛らしい女性が好きかもしれません。
勿論、だからと言って生徒達を選り好みするようなことは断じてしませんよ。
さて。私の紹介はこれくらいにして、次は皆さんの紹介をしてもらいましょう」


その言葉に一部からえぇっと驚きの声が聞こえてきた。
彼らは皆殆どが顔見知りのため、自己紹介なんて必要ない、だとか、
自己紹介がかったるいなどと思っているようだ。


「私や橘さんは君達の事が分からないので、お願いします」

1年前 No.24

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=wj65Vmf0n4

「いや、まずは転入生の紹介からしましょう。橘君、前へ出なさい」


「へーい」


ずっとダルそうな返事をして彼が前に出てくれば、美月を除いた女子生徒全員の視線は彼に奪われて。
クラスの殆どの女子生徒による好意の眼差しが向けられていても緊張一つせず、
先程美月達が見たままの変わりない明るい紹介だった。


「ハーフの橘ナルでーす!親はドイツと日本人。か弱い女子大好きなんで、そこんトコよろしくぅ!」


「ということで、君達もクラスメイトとして仲良くするように。
それと、君達に一つ重要なことを話します。
橘君はEMコンツェルン社長、ハンスヴルストさんのご令息、つまり息子さんです」


「エエーーッ!!?」


真面目な表情だが、何気なく口にしたギルバートの一言で教室の其処らじゅう、
男女問わず驚嘆の声が一斉に上がるとドミノ倒しのように次々と広がっていった。

EMコンツェルンというのは世界最大のコンツェルンであり、
自動車やバイク、電化製品の製造販売を始め、
新薬開発や生活を豊かにするとされる化学研究、貧国や紛争地域への物資及び金銭での支援、
果ては宝石の発掘から販売までと凡ゆる世界中の企業を手中に収めており、
年商は日本円にして70兆円と、年商世界一の企業で1804年創設。
創設者は、初代ハンスヴルスト・フォン・エルレンマイアー。
ナルの父親は世界一の企業として偉大な功績を納めたために彼の名を継いでおり、
二代目のハンスヴルスト、四代目社長である。
そんな企業の社長令息となれば、一生働かずとも楽をすることが出来るほどの大金を、
毎月小遣いとして貰っていてもおかしな話では無いし、
8億以上するであろう超高級車を送迎車にしているのも頷ける。
衝撃的なカミングアウトに、美月と竜も声を出して驚かずにはいられなかった。
大金持ちの坊ちゃんが、近所の高校よりは少しくらいグレードが高いだけの高校へ、
突然転入生としてやってきたのだから。


「家の都合で学校に来れないことも多いが、仲良くするように。
あと、君達と違って彼は口約束だけでは放課後や休日遊ぶ事ができないので、
予め、遊ぶ時はなるべく早く前以て話し合うことを忘れずに」

1年前 No.25

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=QqG9MbSzpC

「(EMコンツェルン社長の子供のニュースは度々出てたけど、
今まで顔や名前も表に出たことないのに、ここで出しちゃっていいのかな)」


「(ナル君って凄い家の人だったんだ。
そういえば、ハンスヴルストさんってとってもハンサムダンディーで、
先生みたいに紳士的なかっこいい人だったなあ。
あんな人とお付き合いできたら〜なんてよく思ってたっけ)」


驚いただけで一人盛り上がらずに彼の社会的な立場を気にしている竜に、
美月は彼とはまだ接してもいないのに緊張しつつ、
テレビに出ていたナルの父親を疑似恋愛の対象にし妄想に耽けていた、
まだまだ記憶に新しい中学時代を思い出していたのも束の間。


「それでは、天宮さんから横に自己紹介を。橘君への質問は全員の紹介が終わってからに」


「えっ、あ、はい!…天宮美月です。趣味はこれといって特にないかな?
好きな教科は国語です、よろしくお願いします」


一度椅子から立ち上がってギルバートやナルの方を見、一般的でシンプルな挨拶を済ませ、
再び席についたのだが、ナルが明るいというよりは少し抜けているような、
和やかといえば和やかな、突飛で頗る場違いな質問をヘラヘラと口にする。
その質問に美月以外のクラスメイト達の多く、特に女子は目を丸くした。


「美月ちゃんってさ、彼氏いる?いなかったらタイプ教えて?」


男子達は竜と、彼の様な自己主張に乏しい男子数名を除いてほぼほぼ大笑いしていたのだが、
彼女が本命な生徒たちは場の空気に合わせながら笑っているものの、目だけは真剣そのものだった。
本命男子が注目する中、美月は盛大に焦って目を泳がせていると、
目線のあった真実が口パクで、適当でいい。本当のことは言わなくていいと言ってきたので、
真実の言う通りではなかったが、好みの性格は本当の事を言い、年齢だけ言わないようにした。


「優しくてとっても紳士的な人…かなぁ」


「それで、オジンな!」


しかし、男子はそれを見逃さないで、折角隠しておいたことを大声で口にしてしまった。
その声にギョッと体を震わせその場で驚くと、男女問わず教室内が笑いで包まれたのだが、
折角のアドバイスを台無しにされ、それを言った男子を真美は睨みつける。
美月が座ったまま肩を竦め、顔全体を紅潮させているのを見たナルはふっと笑い、彼女に声を掛ける。


「へぇ、ということは彼氏いないんだ。
真っ赤な顔が可愛いなぁ、美月ちゃんは恥ずかしがり?付き合っちゃいたいなー」


ナルの言葉が追い打ちとなって、紅潮が増して混乱し始める美月を、
ナルはより追い詰めそうだとギルバートは考え、宥めるように彼女の順を終わらせた。


「踏み込んだ質問は、友好関係が築けてからにしなさい。続いて、伊東さんお願いします」

1年前 No.26

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「ハーイ、イトウデース…」


次の生徒は容姿も成績もごく普通なのだが、
プレイボーイ気取りで顔の色は正常にも関わらず生気があるのか如何わしく、
見ている側が不安になるような程に頬を痙攣らせて、一音一音機械的で感情がまるで篭っていない。
それでも、体調が悪い訳ではないことを知っているため、教室内はそこら中で笑い声が聞こえる。
美月も竜も、話を聞いているだけで彼には全くの無関心だ。
自己紹介には目もくれないで、中央の後列にいた二人の男子がヒソヒソと話していた。


「転入生事件最大の被害者だな、あいつは」


「つーか、転入生が男だって知ってたろ。フツーそこまで落ち込むか?」


「世界一の大富豪の息子で顔も良かったら、女子が俺らに近づいて来るわけねえじゃんか。
只でさえ、うちの学年は恵まれてるっていうのに」


「えー、金持ちなんだし、もっといい子が知り合いにいそうじゃね?」


その言葉で、伊東は豹変した。この手の話に対してだけいつも、
彼の聴覚はとても良くなっているようで、大勢の生徒が発する雑音の中でも、
聞き漏らすことがない程精度が高い。


「宜しくお願いしまーす、橘クン!」


「はいはいよろしくー。で、君は?」


素早い手の平返しを見たナルはまるで無関心で、
次に控えている隣の女子に関心があるのか、これまた人当たりの良さげな応対をしている。
その彼女もナルに夢中で舞い上がっていて、
出会って間も無いというのに、何をされても嫌がらない程すっかり陶酔し、
男子への冷たい対応には気付かないでいる。それも美月と真実以外は全員だ。
次の次に順は巡って、真実の番が来た。
彼女には珍しく、照れくさい様な仕草をしているが、それはかなり緊張していることと他ならない。


「きっ、北野真実だ!あ、あっ、あんま変なことすると容赦しないからっ!覚悟しとけ!」


「いやぁ〜、堪らないなぁ。俺、顔にいっぱい痣作っちゃいそ〜う!宜しくッ」


ナルは美月の時よりも舞い上がっているようだった。
女子の自己アピールが予想していたよりも遥かに長かったため、
竜を最後に自己紹介は中止することとなった。8人飛ばして、次はちいの番だ。
彼を本命として狙っているちいは、お決まりのぶりっ子で彼にアピールする。


「巻原ちいでぇ〜っす!好みのタイプはお喋り上手でカッコイイ人だよぉ」


「へー、まぁ宜しく」


誰から見ても媚びていることは明白で、砂糖を入れ過ぎたクリームの様な、
しつこさのある甘えっぷりを見たナルは、さっぱりとした返事をしただけ。
ちいの挨拶は彼にはウケなかったようだ。
それでもちいはエヘッと、最後までぶりっ子を貫き通して着席した。
もしかすると、彼の好みとしてちいは含まれていないのかもしれない。

1年前 No.27

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=WgFsPrUhmi

「それでは、咸神君で最後です」


「は、はい。み、咸神竜です。よ、宜しく」


周りの視線やナルにビクビクと怯え、声を震わせながら竜は直ぐに挨拶を終えた。
自己紹介が終わると授業に使われる教科書やファイル、
これからの授業に必要なものが記載された用紙等が配布された。
据え置き可能なものは机の中に入れ、それ以外のものはスクールバッグや予め持ってきた手提げに詰める。
殆どの教科書は持ち帰りなので、メインバッグしか持って来ていない、
またはサブバッグ等を忘れた生徒のバッグは、ぱつんぱつんに張っている。
しかし、それさえ終わってしまえば下校だ。


「明日から本格的な授業が始まるので、今日の内にしっかり体を休めるように。
以上でHRを終了します。気を付け、礼」


ギルバートの号礼で下校可能になったにも関わらず、
教室を出たのは竜と美月に真実、数名の男子生徒だけで殆どの生徒が教室の一点に集まっていた。


「私、石橋美琴です!」


「俺は吉田だ。な、今日帰らねえか?」


その一点とは橘ナルの席で、彼の机と椅子を取り囲んだ。
様々な角度から見て、優秀な彼と交流を深めるべく近づいている者が殆どだろう。
その中には、美月達と帰る筈のちいも混じっていて、
戻ってくる気配もなく二人は敢え無く待ち惚けを食らう羽目になっていた。
一方で過剰な程羨望の眼差しを向けられる状況に慣れ切っており、
その様な訓練をしていたのではと疑わんばかりの澄まし顔で、ナルはスマートな対応を行う。


「ああ、悪い。俺送迎だから一緒には帰れないんだ。
初日だし、特に知らない人を車に乗せるのはウチじゃタブーだから」


パンパンのスクールバッグをひょいと背中に掛けるよう提げると席を立ち、
やや強引に人混みを抜けていく。一声も掛けられなかったちいは唇を噛み締め、
悔しげな表情で過密地帯から抜け出したナルを見つめていると、
なんと美月達の方へ近づいていくではないか。


「おっ!俺に興味ない女子が二人もいた!!いやぁ、初体験だな〜!
やっぱ、俺の女子を見る目は正しかったんだなぁ…。ああ、こんなこと言ってる場合じゃない。
早く行かないとルーベルチに怒られるから、先行く。バイバイ、美月ちゃんと真美ちゃ〜ん」


「あ、うん。ばいばい」


一人でペラペラと喋り続け、二人が良く状況を理解しない内に、
ナルは走ってはいけないことが暗黙の了解な筈の廊下を疾走し、去って行った。
彼が帰ったことを知ったらば、直ぐに男子生徒達は自らの欲を互いに吐き出し、
女子達の中には美月と真実を羨ましく思う者が所々いた。


「君達。クラスメイトとはいえ、相手に迷惑が掛かる行動は慎みなさい」


見兼ねたギルバートは集まっていた生徒へ注意をするのだが、
特に怒るといった表情はなく、静かで普通の日本人教師にはあり得ない紳士的な叱り方だった。
今年の新入生には不良じみた者がいないので、愚痴は言うものの、
注意を受ければすぐに円状の塊は散り散りになり、殆どの生徒が荷物を持って退室していった。

1年前 No.28

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それから十分程して、先に帰った竜は家の豪勢なドアの前に立っており、
鍵を開ければ、だらしなく気だるげに入っていった。


「ただいま」


「おかえりなさい、竜君。入学式で疲れたのかしら、元気がないわ」


あの日から、先生は毎日欠かさず家に来ては彼の帰りを迎えるようになった。
勉強を教える以上に、こうしたスキンシップを取ることのほうが多いが、
親も彼女が毎日訪問して来ても構わないようで、6時くらいまで家におり、
時には母国の手料理を振る舞ってくれる日もあった。
最初は嫌だった竜も今となっては家にいるのが当たり前になってからというもの、
必要以上に緊張せず話せるようになっていて。


「いえ、例年通りです。今日は何をされにいらしているんですか?」


しかし、視線がどこを見ても美しさを損なわない完璧に整った顔や、
今となっては親の前でも開け放たれた美味しそうな果実に、
行ったり来たり目が忙しいのはまだ直らない。


「まだ例を測れる回数じゃないでしょう?本当に面白い子なんだから。
今日はね、竜君に大事な話があって来たのよ」


そう先生は告げたのだが悪い話ではないようで、いつもの自分に自信を持っている、
大人の余裕が見られた。


「竜君だけに伝えたいことですし、ずっと玄関に立ちっぱなしも難ですから部屋で二人、話しましょう?」


ただ、何を話すのか何一つ覚えのない竜には、何を話すか予想もできないまま先生の指示に従い、
重いリュックサックも一緒に、二人で上の階に上がっていく。

1年前 No.29

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「それで、大事な話ってなんですか」


部屋に入った竜はリュックサックをテーブルの上に乗せてから、
後ろをついて来たアイリーンの方へ振り向き、
これから想像を遥かに上回ることが起きることも知らずに尋ねた。
彼女は部屋に入ってすぐ、ドアに鍵を掛けて窓やカーテンを閉め、
外から見えるものを全て遮断して竜に近づく。
彼女の不可解な行動に不安になったが、表情や態度は普段と変わらなかった。


「言っても信じてもらえないでしょうから、まずは体に教えるわ」


そう話すとアイリーンは竜をその長い左指で指し、
スマートフォンの画面をスワイプする様に、上へ滑らせる。
そして、直ぐに竜は身体を縮めて蹲った。
今自分の身に起きていることが全く信じられず、口は開いたままで喉を詰まらせ下を向く。

体が宙にいた。
普段よりもずっと高いところから部屋全体を見下ろす光景は、違和感の塊でしかない。
足元を見ると地面には着いておらず、堪らず手足をじたばたさせてるのだが、何も起きず。
何かに全身を支えてもらっているような感触が僅かにあり、
足を広げても立っていた時と同じ姿勢の位置で立っていることが出来る。
上を向くと、頭が天井に当たる鈍い音がした。


「私はね、竜君。人間じゃないの。」

1年前 No.30

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声も出せない竜を見つめ、怖じることなく堂々とそう口にしてから、
空中に立った竜を指したままの指を、今度は地面に向けてゆっくり滑らせると、
竜の体が指の動きに合わせるように低速で降下し、柔らかな地面に足が着いた。
降ろされたのは、床でなく自分のベッドの上だ。
着地したと同時に尻餅をついたがベッドから立ち上がって、
唖然としていた竜は恐る恐る口を利いた。


「にっ、人間じゃないって…!じゃあ、なんなんですか!?」


彼の頭の中にあるのは今起こったばかりの超常現象と、
彼女の人間じゃないという言葉から未知との接触への恐怖。
竜の心境を察したアイリーンはなんとも思っていないのか、
艶めく笑みを浮かべ声を掛けながら彼に歩み寄っていく。


「私はヴァンパイアなの。貴方には吸血鬼と言えば、私がどんなモノなのかより伝わるかしら」


冷静で毅然としているのにアイリーンの口から発せられるものは、この上なく現実離れしている。
吸血鬼。何より分かり易いからとそう丁寧に言い直すのは、その単語に重要性が在るから。
だが、その言葉を受け入れることなど、誰だってこれっぽっちもできやしないだろう。


「吸血鬼って…ああ、あなたは、人の血を吸って生きてるとでも!」


たじろぎ、声は震えているいるものの、竜は言いたい事ははっきりと言う。
アイリーンは竜の目の前で立ち止まり、両手で彼の肩に手を掛けたかと思うと、
竜の足はふにゃりと力が抜けてきちんと敷かれたシーツと、
端まで畳まれた布団ののったベッドの上に座ってしまった。
思考もふわふわと雲のようにどこか浮ついている。
それにも気づいているようで気づいていない程、変だった。
するとアイリーンはすかさず、竜の前で膝立ちをして魅惑の谷間を、
彼の目の前に恥らうことなく曝け出す。少し顔を傾けてしまえば、
その胸の谷間に青少年の竜の視線は釘付けにされ、思わず唾を飲む。
ひとたび鼻から息を吸うと、甘くて少し鼻に付く香水の芳香がなだれ込んでくる。
恐怖心など初めからなかったように揉み消され、到底彼女の話など、耳に入ってこない。
視線を奪われているうちに、アイリーンはゆっくりと首の後ろに手を回し、
直接彼の耳元へと囁き掛ける。彼女の目線は、惚けた顔の竜を色目で見つめる。


「ええ、勿論。さっき貴方に使った『あれ』は、
本当なら人の生き血を吸わなければ、できないことなのよ?
ああ、それから私達は空想と違って、
身体中の血を飲み干すようなことは決してしないわ、だから安心してね?
皆、口に合う唯一の血を、たった一度きりしか味わえないなんて、嫌だもの……」


凄まじい美貌を備えたアイリーン先生が、生温かい吐息と媚びるような声色で、
言葉を耳に送り込んでくる。その一言一言がとても心地よく聞こえた。
まるで、揺り籠の中で母親にただただ一向にあやされるだけの、赤子のような気分だ。
これは誘惑なのだろうか?いや、今はそんな事などどうでも良いように彼は思う。
彼の股間には熱が集まって膨らみ、変に気持ち良くなり、思考は飽和していた。
ただ背中に手を回されて胸を見つめるだけで、自然と竜は気持ち良くなっていき、
だらしない声を抑えきれずに漏らしてしまう。


「あっ、あぁっ……」

11ヶ月前 No.31

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11ヶ月前 No.32

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「人間の血ってね、興奮したり快楽を得ていればいるほど美味しくなるから、
私達は性行為の最中に吸血するのが殆どなの。
でも、18歳未満の子と性行為するのって、こっちの世界じゃよく思われないでしょう?
大衆の流れに乗れないのは嫌よ、私。だから印だけつけたの。
一度吸血された人間の血は、最初に吸血した者しか美味しくないから」


「はぁ、薬を使うとかさっきの力を使ってすればいいような。あ、印って噛み跡のことですよね、すぐ消えたりとかしないんですか?」


竜の隣にアイリーンは腰掛けて、逐一説明していく。
話を聞いているうちにフィクションと違って、
血を吸うにも苦労しそうだと脳裏で思いながら、首を僅かに回し、
噛まれてほんのり赤みがかった右側の首の根元についている二つの点々を見つめたまま、
アイリーンに訊ねる?


「人間には見えない印だから安心してね。
それと、催淫剤や私達の力を使うと味が極端に落ち込むから、
緊急事態でない限りはそんなことできないの、解ってくれたかしら?」


吸われる側からしたら、全くもって良い迷惑だ。
いや、吸血鬼達は彼女のような美人だったら、
喜んで吸われる者もいるのではないだろうかと話を聞いていて、
感じたことを口に出さないまま、色々な思考を留めておく。
そういえば、すっかり収まった性的欲求だが、急に高まったのは彼女の仕業なんだろうか。
女性の体に全く抵抗がないことは自覚しているが、
だからといってあの危険を肌で感じた状況下で、不意に欲情する訳はない。
ちょっと考えなくても分かる。漸く察した竜はその不満を顔に表していた。


「急に不機嫌な顔してどうしたの?最も重要な話をしたいのだけど、いいかしら」


何に対して、そんな表情をしているのか分かっていながら、
アイリーンは小意地悪に尋ね、自分の言いたい要件を口にしたがるなど、
竜を自分のペースに持ち込んでいる。本当に余裕のある女性だ、自分勝手とも言うが。

11ヶ月前 No.33

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「吸血鬼に血を吸われた人間は吸血鬼になる、とか
不死身になるという話を聞いたことは?
吸血鬼マニアでなくても、大体の人間は知っているのだけれど」


「いえ、全く。初耳です」


アイリーンの質問に真顔で平然と、即答で返した竜。
吸血鬼については全くの無知ということも織り込み済みで、
それは教え甲斐がありそうなこと、と表情を乱すことなく隣にいる竜を真横から覗くように見つめる。


「竜君はフィクションよりも、リアリティの高い物語の方が好みかしら?
この疑問は吸血鬼が人間に聞かれるランキング第一位だから、知らなくても答えさせてね」


「へえ、そんなランキングがあ」


「今喋っちゃだめ。貴方の人生に強い影響を及ぼすことよ、よく聞いて。
…結論から言うと、吸血鬼且つ不老不死になる。
ただ、噛んだ吸血鬼が相手をそうさせたいと思うなら、だけど」


ちょっと前にはかなりパニックを起こしていたのだが、
もう普段通りの本筋とは逸れた部分が気になり口にしたものの、
声の大きさはさして変わりないのに、
媚びたお色気ムードなしのはっきりとした口調で言われれば、
すぐに竜は目が覚めたようにはっと驚き、一緒に口もつぐんで大人しくなる。
勉強の教え方を除いて塾講師としての風格を垣間見た、かもしれない。
驚愕な答えが返ってくると、竜は放心というよりただ、ぼんやりしていた。
不老不死という日常では使わないその言葉を、受け入れることができずにいたのだ。
不老不死なんて理論上あり得ない。人間と比べてとってもご長寿なだけで、
長い間生きてきて感覚が麻痺したのだろう。


「貴方の思う通り、なんてオーバーな表現かしらね。
ただ、最古のヴァンパイアが今年で丁度500年、未だに当時の姿のままで生存している上、
誰一人として死なないから寿命も分からない。
平均寿命が割り出せる人間とは比較できないから、現状不老不死と考えて頂戴」

10ヶ月前 No.34

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=nzfWep6ZnL

「なんで、僕の考えてることが…!」


口には出していないことを言い当てたアイリーンに竜は、
あの力を使えば、自由に人の考えを読むことができるのではないかと、
プライバシーの侵害も甚だしい行為に不安が募り、その不安を顔に表す。
その顔を見たアイリーンは、ふふと鼻で笑って竜に話す。


「私はただ、君の考えていそうなことを口にしただけよ?」


「その力っていうのは、人の心も読めるんですか」


「できるけど、今は使ってないわ。竜君を襲いたくなっちゃうもの。
君が素直になってくれれば、そんなことしなくて済むのだけれど」


今は使っていないが、使ったことはあるような口振り。
まだ血は飲まないので易々と考え無しに力は使えない筈だが、
彼女には吸血鬼の仲間がいるかもしれないし、下手に彼女から離れようとすると、
自身の周りに何か手を回しそうだし、そうなれば迷惑が掛かる。
竜は眉間にしわを寄せて、あることないこと考えていた。
ただ、彼女は我が家にとって福の神に等しい存在で、
自分の血さえもらえば、それ以上のものは必要ないらしい。


「それで、こんな私でもお嫁に貰っていただけるかしら?」


「そんな、急に言われても…18歳の誕生日までは待ってください。
すぐに返事を出せと言われても困ります!」

9ヶ月前 No.35

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8ヶ月前 No.36

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6ヶ月前 No.37
ページ: 1

 
 
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