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霊体の重力は電脳に架かる

 ( 中級者 小説投稿城 )
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彩雲の成れの果て @canyon09☆LF0Y7d52tQ/r ★mcoAHzj1rP_ZFe

前記

小説書くの、止めてて、久しぶりに書くから、あと、精神状態が(リアル生活的に)、良くないから、書く作品が、変になるかもしれない

今回の作品は、あまり気負いせず、あくまでリハビリを兼ねて楽しく書くことを目的にしています。
更新速度はあまり早くないと思います。
SFっぽい感じにしながら能力者バトル系のものを書く予定です。

以上、よろしくお願いします。
読者の感想やアドバイスが大好きなのです。

1年前 No.0
メモ2016/09/30 04:58 : ロナロネ @akatori09★Esu1a949oB_ZFe

カナハ……主人公

ページ: 1


 
 

ロナロネ @akatori09☆lUIaRtNELWxz ★Esu1a949oB_ZFe

1

カナハは痛覚の訴えで、目を覚ました。ぎょっとする酷い痛みに仰け反り、身をよじって逃れようとした。体のどこかが攣った? ベッドから落ちたのか? 怪我ではなく、体のどこか内側から襲ってくるような感じだという思いが、頭の片隅をよぎったが、そんな些細なことは今感じている苦しみの前ではどうでもよかった。
 一分か十分か、半世紀くらいか。気が遠くなるような長さに感じたが、もがき苦しんだ末に痛みは徐々に収まっていった。滝のように汗をかいていたが、すぐに冷え、疲労と寒気が残った。鈍い痛みはまだ続いている。体の内側から脈打つような間隔で、ゆっくりと、痛みの波が押しては引いていく。もう気にも留めるようなものでもなかったが、警戒心は緩まず、頭に霧がかかったような眩暈を感じつつ痛みにせっつかれながらも、何も意識せず、何も見ることなく、息を潜めて身構えるようにそのまま転がっていた。どこかで喧騒が流れているが、カナハの中では静寂が漂っていた。だが、いくら待っても恐れていた痛みはぶり返して来ることはなかった。
 恐る恐る寝返りを打とうとして、肘が固い地面にぶち当たってカナハは呻いた。安くて薄いマットレスだが、こんなコンクリートのような硬さではなかったはずだと、苛立ちを覚えた。まだ覚醒しきっていない頭のまま起き上り、そして、体を包む冷たい空気に気づいて異変を感じ、それから自分がどこに倒れていたのかに気付いて思わず言葉を失った。
 そこはいつもの狭くて古い、公営アパートメントの一室ではなかった。フロートカーの往来の騒音がひっきりなしに響くその場所は、通りから一歩引っ込んだ、建物と建物の間の、裏路地とも言い難い狭い隙間だった。見上げると、両側のビルは、天まで続いているかのようにはるか高くそびえており、遠くに小さく切り取られたような夜空が見えていた。
 少し先に大きな通りが見えていて、流線型の最新のフロートカーが音もなく次から次へと走り去っていく。なんという異国情緒でサイバネティックな光景だろう。カナハは無意識の内にここが見知ったザルドスの町ではないことに気づいていたが、理性は眼前の光景を受け入れることを拒んでいた。
 ゆっくりと立ち上がって、脈打つ痛みに顔をしかめた。さっきのような痛み方はどう考えても自然なことではない。サイバーブレイン化していれば、と思った。あるいは、せめてダメージイメージング機能のようなものがあれば。体のどこかに異常をきたしているのだろうが、どんな具合なのかさっぱり分からない。だが、今、そんなことはどうでもいいことだった。ここはどこだろう。なぜこんなところにいるのだろう。カナハはしばらく壁に寄りかかって頭を悩ませていた。思い出せる限り一番最後の記憶は仕事を終えて帰りについたところだった。薄おぼろげで随分と昔のことのように思える。頭のどこを掘り返してみてもこんな状況に陥るような理由など思いつかなかった。
 カナハは不意に自分の着ている物に気づいて狼狽した。白い布のような簡素な服を身に着けているようだった。カナハは強い警戒心を以ってその白い衣服の胸元を掴んだ。誰に着せられたか、あるいは自分で着たのか。こんなものをファッションで着る人などいないだろう。さながら病院で患者が着せられるような類のものだった。少なくともこんなものは持っていないはずだったし、医者の厄介になるような羽目にもなっていないはずだった。ますます訳が分からない。何故、こんなことになっているのか、何故何も思い出せないのか。
 考えても説明のつかないことだらけだった。しばらく迷った後、意を決し、少しよろめきながら、カナハは風の吹き込んでくる通りの方へとゆっくりと歩み出た。

 そこは映像でしか見たことがない未知の世界だった。カナハは思わず息を飲んだ。レーザービーコンで仕切られた広い道路を、輝くテールライトの軌跡を残して無数の浮いた車が走り去っていく。数えきれないほどのフロートカーが尽きることなく川の流れのように続いていく。辺りには恐ろしいほど高いビルたちが競い合うように高く高く伸びている。全面がガラス張りのものもあれば、波打つように曲面を描いているものもある。夜に違いなかったが、そうと気づかないほど辺りには光が満ちていた。見上げれば、たくさんの高架道路が張り巡らされていて、それを照らす街灯が雨明けの蜘蛛の巣にかかった雫のように光っていた。派手な恰好をした若者たちが道路端をフロートボードで勢いよく滑っていくのを気の抜けた心持で眺めていた。時々エアエクスプレスがそれらの間を縫って、駆け抜けていく。一段高い所にある青い半透明の光の通路を、他の歩行者たちが歩いていた。
「これはきっと夢なんだよ、カナハ……全部夢」
 実感を持ちたくて声に出してみた。肌に触れる大気の感触も、足下に感じるアスファルトの硬さも、確かに現実のものだった。だが、これほど非現実的なことが起こり得るだろうか。
 昼間ならまだ夏の余韻が大気に残っていたのかもしれないが、車の流れでかき乱される夜風がカナハを冷たくいじめた。カナハが今まで一度も見ることのなかった、この活気ある大都会を前にして、心にあるのは大きな孤独感のみだった。途方にくれながら、カナハは道路わきの掲示板に気付いた。
『ヴォイド・シティ 第1層 6番街 にようこそ!』
 意識が遠のきそうになるかと思った。気絶するに十分なショックだった。まるでハンマーで殴られたような衝撃を受けて、カナハは掲示板を二度見し、その意味を理解しようと努めた。さらに何度か読み直し、落ち着いてじっくりと読み直して、勘違いであることを祈った。ヴォイド・シティ。まるで抽象名詞であるかのように、知っていながらも馴染みのない名前だった。それは故郷ザルドスからはるか彼方にある巨大な都市のはずだった。多数の摩天楼が密集する技術と資産の集積地で、天空から地下まで開発された経済と文化の中心地であり、カナハの住む埃臭い田舎町からはもっとも遠い場所。ハイセンスさと未来感に溢れる別世界だった。ザルドスは頭に思い描くと、鉄と工業油、埃と錆の匂いが真っ先に頭に浮かんでくる場所、ここと比べれば世界の果ても当然だった。
『ヴォイド・シティ 第1層 6番街 にようこそ!』
 カナハは吐き気を催すような眩暈を感じていた。連続して心臓に悪い現実を次々と突きつけられて、気分が悪い。これは夢なのだろうか。いや、夢であってほしい。自分の生活をすべて遥か彼方に置き去りにして、この大都会にただ一人。見知っているものはない。
 カナハは力なく、広い歩道を歩いて行った。原因不明の鈍い痛みが相変わらず、じんじんと苛んでいたが、それ以上に孤独と不安と激しい疑念がのしかかっていた。何故、ヴォイド・シティなどにいるのだろうか。一番重要な疑問だったが全く不可解な謎でもあった。記憶のどこを漁ってもこんなところに来る理由などなかった。地方都市で細々とアグロマイトの研磨業をしている孤児などに、一生縁のない場所のはずなのだ。
 理不尽さへの怒りと、行き場のない混乱ばかりが頭の中を堂々巡りしていた。カナハは一瞬、掲示板を両手でぶん殴りたい衝動を覚えて、次の瞬間には泣き出したくなる心細さに襲われた。その間も、フロートカーの流れは果てることなく走り過ぎていき、行き来する人々はおかしな恰好をした少女には目もくれずに通り過ぎて行った。体のどこかで違和感のような痛みが脈々と響き続けている。

 何かをしなければならない、と動けるようになる気力を取り戻せたのは大分経ってからだった。掲示板によると既に夜の九時を回っているらしい。薄着のせいでひどく寒く、空腹さも感じていた
 何から始めるべきだろう?まず、体の奥の痛みは放っておくことにした。目覚めの時のあの強烈な激痛がぶり返して来たらと思うと不安だが、今は悩んでもしょうがない。こんなところに来てしまった理由やザルドスに帰る手段についても後回しにするべきだと判断した。それからこの覚えのない衣服も。目下、考えるべきは食事と夜を明かす場所の確保だった。だが、実際のところ、食事と宿泊というのがまた一つの大問題であった。金銭である。他の事に気を取られて気づかなかったが、身に着けている衣服以外、何一つ持ち物がないのだった。初め、この異常な状況においてはそれは大したことではないように思えたが、すぐ重大さに気づいて憂鬱ならざるを得なかった。現実的で深刻でしかも差し迫った問題だ。
 これはかなり頭は悩ます難題で、カナハは掲示板の前をうろうろ歩き回りながら、いくつか思いつく解決手段を列挙してみた。ザルドスの地方銀行にいくらかの預金があるが、ヴォイド・シティに支店があるとは思えなかった。物乞いの真似をするのも賢い選択ではない。ヴォイド・シティは治安の良さで知られている。警察のお世話になるのは御免だった。自分のような育ちの悪い輩はどこでも歓迎されないことはよく分かっていた。
 考えた末、カナハはいつだか聞いたあることを思い出した。ヴォイド・シティは最先端の洗練された都市として名高いが、実はその地下には下町とも言うべき、地上から排斥された下層市民が暮らす無秩序の階層が広がっているという話だ。そこでなら当面を乗り越えられる手段を得られるような気がした。ほとんど願望ではあったが、ザルドスという貧しい環境で生まれ育ったカナハにしてみれば、こんな発展した場所よりも地下の未開発地域の方がよほど救いがあるように思えた。

9ヶ月前 No.1
ページ: 1

 
 
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