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ピアノジャック!

 ( 中級者 小説投稿城 )
- アクセス(192) - ●メイン記事(15) / サブ記事 - いいね!(4)

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ajFjfrCiqO



ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪


見える……!!


音符が、音色が、メロディーが見える……
果てしなく続くその色とりどりの音たちに囲まれてわたしはここまで生きてきた。
たくさんのクレパスで思い通りに世界を描くように、真っ白なキャンパスに絵の具を落としていくように、わたしの指が鍵盤の上を駆けてゆく。
音は人を幸せにする。
雑音は人を不幸にする。


わたしは“幸せな音”に色をつけて、心地よい音楽を造り上げたいと思うのだった。



ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪ー♪



中級者の投稿城では何度目の挨拶になるでしょうか(笑)
前回の私たちにハッピーバースデー( http://mb2.jp/_kds/2545.html#S1)が完結いたしましたので新たに小説を書いていこうと思います!
もちろん更新はカメ歩行。
でもきちんと完結させます、絶対に!
よければサブ記事にアドバイスやご要望も受け付けています!

それでは、生温かい目で見守ってください。


…2015.12.8

1年前 No.0
メモ2016/01/03 12:44 : アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111★Smart-ajFjfrCiqO

[登場人物]


*ヴェルド・セレン

14歳にして天才ピアニストと言われる。が、学校1の『おてんば娘』というギャップがある。“音の色が見える”という不思議な力を持つ。


*シューマン・ロベル

14歳にしてバイオリンの名手。プライドが高く、自分と共演できるのは天才ピアニストのセレンだけだと思っており、セレンとしか共演しない。


*ティナ

セレン、ロベルのクラスメート。将来有望なオペラ歌手。ロベルが大好き。


*ヴィオラさん

ヴェルド家に勤める使用人。茶髪の三編みがトレードマーク。


(後々増えていきます)


[目次]

>>0…序奏


1.心のメトロノーム >>1>>6

>>7…間奏曲ピアノソナタ1


2.木漏れ日からのノクターン >>8

ページ: 1


 
 

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ajFjfrCiqO


1.心のメトロノーム




ホールに拍手喝采が響く。

わたしは目を瞑り天をあおいだ。拍手がピリピリと身体を震わせていくのがわかった。
「お疲れ様セレン。いい演奏だったよ」
バイオリンを小脇に抱えた少年が微笑みかけてきた。
スポットライトを浴びて、ラスボスのようなオーラをまとっている彼の名はロベル、シューマン・ロベルだ。
彼はバイオリンの名手で、今日のようにわたしのピアノとコラボレーションすることがよくあるの。
「そんなロベルこそ。今日も素敵な演奏だったわ」
「ありがとう」
ロベルがかるく手を胸にそえてお辞儀する。
わたしもドレスの裾を少し引っ張って頭を下げた。

再び拍手がまきおこる。


わたしにとって、この瞬間がなにより快感なのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



控え室ではたくさんの人が出入りしていた。
「お疲れ!ヴェルド様!!」
「ありがとう」
たくさんのクラスメートたちがわたしに花やらお菓子やらを渡す。
「ヴェルド様の演奏、本当に素晴らしいわ。」
「ロベル様のバイオリンも素敵!」
「彼は将来有望よねぇ〜」
「ね、ヴェルド様は1日にどれだけピアノの練習をしていらっしゃるの?」
「……6時間ぐらい?」
「「「まぁ!!」」」
「そんなに練習をして勉強するお時間はおありで?」
「うーん、意外とあるものなんだよ。ほら、わたし結構寝るの遅いし…」
わたしのその答えに対して、また「「まあ!」」」と声があがる。

「セレン!お母様がお呼びだぞ!」
「はぁい!ごめんなさいね、ではごきげんよう」
ドレスがふわっとなびかせてわたしはお母様のもとへ走った。

背後に「ごきげんよう」のハーモニーを聞きながら。





1年前 No.1

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ajFjfrCiqO

「お母様!なにか用件?どうしたの?」
わたしのお母様は、若いとき、ものすごい有名なバレリーナだった。
そんな時、ある舞台での主要曲の作曲を手掛けたひとりの男に一目惚れ。
って、まあその男ってのはわたしのお父様なんだけれど。
そしてわたしは音楽一家に生まれ、母のリズム感、父の音感、そして双方の音楽好きに恵まれこうして成功をおさめ続けているのだ。
「セレン、お友だちとのお喋りもいいのだけれどはやくおうちに帰ってピアノの練習をしなさい?」
「はあーい」
ひとりで先に家にかえってなさいと鍵を渡された。
間の抜けた返事をしてわたしはお母様のもとを後にする。



ステージの横を通った時だった。


ひとりと女の子がステージでスポットライトを浴びてうたっている。
芯が太く、地声で透き通った声が響きわたる。
「オペラ科の生徒かな?」

どうやら、明日の公演をする人のようだった。



……が、少し歌うたびに親か先生らしき人にすぐに止められるようだ。
「ダメ!もっと伸びやかにって言ったでしょう!?」
「La〜♪La〜La〜♪」
「ダメ!ダメダメよ!!どうしてわからない訳!?はあ……とんだ出来損ないね」
彼女が少しかわいそうだった。
わたしは早く家に帰ってピアノの練習をしないといけないのだが…
どうしても彼女の歌声を聴いていたかったのだ。
「La〜La〜〜♪」
「………!!」
晴れ晴れしい笑顔で爽やかに歌う彼女。
どんだけ「ダメ」と罵られようと、笑顔で歌っている。

はずだったのだが。

わたしには今、はっきりと見えているのだ。
  “血のように赤い怒りの色”を。

なんの話だ?

そう小馬鹿にした人も多いことでしょう。
わたしの特技はピアノと、もうひとつ。音の色を感じとることができるのです。
今だってそう。
笑顔で歌う彼女の内には罵られてイライラしている証拠がはっきりと見えたのだから。



わたしは鼻でわらってステージそでを抜け、家路へと急いだ。



1年前 No.2

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★3yfs9FP1La_Vjk

「おかえりなさいませセレン様」

わたしの目の前で大きな扉が音をたてて開く。
「ただいま。」
わたしはブーツを脱ぎ、玄関に入る。
「セレン様、今日の演奏はいかがでしたか?」
「じょうできよ」
ウインクする。
家政婦のヴィオラさん。もう何年もまえからわたしの家、ヴェルド家に勤めててわたしとも仲がいい。
小さいときから遊んでもらったりピアノの演奏を聴いてもらったり、勉強を教えてもらったりしている。
「今日もお母様にピアノの練習やれって言われちゃって…」
ヴィオラさんは三つ編みをゆらりとゆらしてほほ笑んだ。
なんともゆるい表情に心がスッと軽くなるのを感じる。
「そうでしたか…。なら午後にはセレン様が大好きなマカロンとハーブティーでもご用意しておきますよ」
マカロンとハーブティー、その言葉をきいた瞬間にわたしの目がキラキラ輝き、マフラーをとるのも忘れて、ピアノのある部屋へとむかうはめになる。

ーーーーーーーーーーーー

うちにあるグラウンドピアノは大きい。

大きい方が音がよく響くし、ダイナミックな表現ができるとお父様が言っていた。
けれども、大きすぎて部屋まるまる一つ分を使っていまい、かなり狭苦しい。
わたしは体を横にすべらせてピアノと壁のすきまをくぐると、さっそく椅子にこしかけた。
ギギギッと軋む音がする。
「ふぅ」
息をはき、リラックス。
いちれんの動作を終えてわたしは鍵盤にそっと指をのせた。
繊細ななにかを恐々とさわるように、ガラスの靴を持ったみたいに。
優しい、優しいタッチで鍵盤の上の指をうごかす。
きょう練習する曲はロベルト・シューマンの『トロイメライ』だ。
子供の情景というタイトルがつけられているだけあって、なかなか物悲しい、しかしなつかしささえ感じられる曲だ。
繊細なタッチだったものは、やがて踊るように、跳ねるようなタッチにかわってゆく。
漏れた音の間から“若葉のような黄緑色”をした音が感じられる。
ああ。
今日も絶好調だ。

わたしが3歳程度のころだ。
お父様が演奏していた曲の音を感じられるようになったの。
それが、きっかけで、わたしは音の色を漢字られるようになった。
それは人の感情と並行しているのもわかっている。


おかげで、そのおかげで、
わたしはピアニストとして成功しているのかも、しれない。

1年前 No.3

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ajFjfrCiqO

若葉色の音符が最後の音をなぞったところでわたしは綺麗に和音をつけて曲を終えた。
ピアノを弾いて味わえるもの…
達成感。
疲労感。
そして、ピアノが弾けない奴に対しての優越感…
「………!?」
今、心なかで黒々とした感情が湧きあがった気がした。
最近、こうなのだ。
自分より下な人間を天上から見下ろして優越感を得る…まるで、別なわたしがいるみたいに。
「こわ…」
身震いして再びピアノを弾きはじめる。
今から演奏するのはベートーヴェンのピアノソナタ___『月光』だ。
少し物悲しい静かなメロディーが印象的な曲で、いかに落ち着いて弾きこなせるかが大事になる。
「ふぅ」
ひと呼吸をおいてそっと鍵盤を叩いた。

……〜♪〜〜♪〜〜〜〜♪

落ち着いて弾いているつもりだった。

「あれ……?」
わたしは何か大事なものがなくなったかのような異変を感じて演奏をストップする。
グランドピアノの隙間から漏れていた音符たちはみんな“血のような赤色”たった。
「えっ……!!」
それはステージの袖からみた、あのオペラ課の生徒から発せられていた音とそっくりな色だ。
「…な、なんで?」
わたしは何にも腹をたてたり、劣等感など抱いていない。
音を見る目が鈍ってきたのだろうか?
確かにピアノからは赤色の音符が感じとれたのだ…

((ヴェルド・セレンとは…………か?))
「え?」
突然誰か男の声に話しかけられた。
((ヴェルド・セレンとは貴様のことか…?))
「……!!」
この部屋にはわたししかいない。
それどころかこのお屋敷にはわたしとヴィオラさん、女しかいないのだ。
((貴様の中には充分な××が備わっている…))
「誰なの?」
ガタタタッ!
立ち上がったせいで木製のピアノ椅子が倒れる。
部屋を見渡してわかった。
この声は「どこかから聞こえている」のではない。
わたしの頭に直接響いているのだ。

その事実がわかったとたん、わたしは怖くて絶叫した。
((…なぜそう怖がるのだ。さぁ…お前の真実の力を…!!))
「いやあぁぁぁあぁあぁ!嫌だぁぁあぁ!!」
頭に響いてくる声を拒むように、わたしはとにかく声をあらげる。

おかしくなったわたしをヴィオラさんが発見してくれたのはその数分後のことである。

1年前 No.4

削除済み @2001010111 ★3yfs9FP1La_Vjk

【記事主より削除】 ( 2015/12/26 13:50 )

1年前 No.5

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ajFjfrCiqO


目を覚ますと、真っ白な天井ときらびやかなシャンデリアが目に入ってきた。
「セレン様…!!大丈夫ですか?」
「…んっ」
ゆっくりと身体をおこす。
そこで、よくやく自分が使用人部屋のベッドに寝かされていたことを理解した。
ピアノに夢中になっていて、気がついたら音が真っ赤に染まってて…
それで、あの変な男の声が聞こえてきて…確か…
「全然大丈夫。おなかすいちゃって…」
とにかく「えへへ」と頭を掻き、照れてみる。
音の色が真っ赤に染まってて、しかも変な男の声が頭に響いてきた。
そんなことをヴィオラさんに言ったらどうなるのだろうか?
多分、
精神科に連れていかれるだろう。
それは勘弁してほしい……!!
きっと病院に入院することになって、ピアノの練習ができなくなって、お母様に怒られるんだろう。
負の連鎖じゃないか!
「おなかすいたし…ヴィオラさん、紅茶とマカロンは?」
ヴィオラさんは「はいはい」と苦笑いで、だけどどこか楽しげに厨房へと姿を消した。


使用人部屋にひとり。

わたしは勉強のあまりできない、小さな頭を必死に悩ませ先ほどの声について考えていた。
改めて、冷静になり考えるとおかしな点だらけだ。
頭に声が響くなんて科学的にありえないだろうし、聞こえたとしてもこの屋敷に現在『男』はいなないのだ。

( …幻聴…そう!!幻聴よ!!ピアノの弾きすぎなんだ、多分___ )

そういう事にした。

こんな出来事、どうせすぐに忘れるさ。
明日からまた学校とコンサートの毎日だ。


わたしはベッドに再び寄りかかり、おいしい紅茶とマカロンを待った。


1年前 No.6

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ajFjfrCiqO


〜間奏曲ピアノソナタ1〜


音楽が大好きだった。

きらびやかな音たちに囲まれて暮らすのが、自分にとって幸せなことだった。
それなのに____

自分の耳はいつから“ピアノの音”を拒むようになったのだろうか。
ピアノの次に好きだったバイオリンの音色は耳に入るのに…!!
自分は…もうピアノが弾けないのだろうか?
ああ、せめて自分の代わりにピアノが弾けるような人を…

「…?」

その時、ローテーブルの上の紙切れが視界に入る。
『天才ピアニスト ーヴェルド・セレンー 譜面を無視した独自の演奏。聴き手の心に入り込むメロディー』
どうやら、音楽会のパンフレットのようだった。
弟のものだろうか。
ヴェルド・セレン。
その名前には聞き覚えがあった。


マーベル国際音楽会最年少優勝、
ベートーヴェンピアノソナタコンクールでも最多入賞。
そのた、もろもろの音楽会やコンクールで功績を今もなお残し続けている天才少女だ。
自分自身、コンクールで彼女に負けた事すらある。
彼女のほうが年下なのに…
「…はぁ」
おもむろに伸ばした手がディスプレイに並んでいたリコーダーをつかむ。
唇にあててそっと息を吹きこむと、単純な音が響く。
ピアノの音は聞こえないのに、リコーダーの音は…聞こえるんだな。

1年前 No.7

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ajFjfrCiqO



2.木漏れ日からのノクターン

「「ごきげんようヴェルド様!」」
「ごきげんよう。」
動きにくいフリフリ制服の裾を少しだけつかみ、膝をまげてお辞儀。
「ヴェルド様、今日はテストの日ですよね。ヴェルド様は予習してこられました?」
「テスト……?」
わたしは何度か頭の中でスケジュール帳をパラパラめくったが『テスト』なんて記憶にはない。
「あら?音楽記号と読み方テスト。今日ですわよ?」
「ひっ…」
ひきつった笑みのわたしが、音に負けないはやさで教室に走ってった話はお母様に内緒ね?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この学校には『音楽』しかない。

ピアノ科
オーケストラ科
オペラ科
音楽史科

の4つの科目に分けられている。

わたしがいるのがピアノ科、ロベルはバイオリンだからオーケストラ科なのだ。
それ以外の、数学や天文学や科学や地理歴史だの体育、家庭科、技術、美術、そんなものはほとんど勉強しない。
もちろん、将来社会に役立つレベルの学習はするのだが…
ここにいるのはみんなが音楽の天才。
将来は音楽系統に進むのが無難なのだろう。

そしてわたしは……

(ぜんっぜんわからへん…!)
テストの回答用紙は白紙。
問題の意味すらわからないのだ。
(そもそもテスト今日とか知らなかったし!)
とは言っても、テストが明日でも明後日だろうと予習なんてしないのが事実なんだけど。

Q音楽用語の問題

1.ノクターンの和名称を答えよ

一問目からすっかりダメ。

こんなのでわたし天才ピアニストなんて……呼ばれてて大丈夫…?

1年前 No.8

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★3yfs9FP1La_Vjk

頭を必死になやませても、元から頭にない答えがでてくるはずもない。
考えることを放棄したわたしは「カンニング」を行うことにした。
(※良い子のみんなはマネしないでね!)

先生がボーっと窓の外を、見ているのを横目で確認。
髪の隙間から隣の席のロベルの回答をチラ見。

Q音楽用語の問題

1.ノクターンの和名称を答えよ

Answer,『夜想曲』


やそうきょく?

なんか先生が言ってたようななかったようなって感じね。
わたしは見たまんまの答えをうつした。
そしてまた回答をチラ見_________

きっとこれで、60点はいけるだろう。
わたしは耐え切れず、にやりと笑みをこぼしてしまった。



ーーーーーーーーーーーーーー


「次、ヴェルド君。」
「はい」

いよいよテスト返却。
返されたテストをみて、ガッツポーズをとる人と泣き崩れるひと、しれっと鞄にしまうひとや紙飛行機にする男子。
わたしはそれを見ながら笑顔で先生の前に立つ。
今回は(よくカンニングできたし、)いい点な気がする。

「なんだねこの点数は!?きちんと勉強したのか?ええ??ピアノが弾ければいいってもんじゃないのだよ!!聞いているのか!?ヴェルドくん!!!」
「ひぃ!」
手渡されたテストは20点。
ええ!?
想像と違う……

それもそのはずだ。
だって、ロベルの回答をカンニングしたもの以外は「すべて×」だったんだから……

ピアノだけ弾ければいいってもんじゃないのだよ、か…
先生それ結構言えてるかも。
ははは…

わたしは100点と書かれたテストをさらっと引き出しにしまうバイオリンの名手、ロベルをじと目で見ながら思った。

1年前 No.9

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★3yfs9FP1La_Vjk


テストの結果と重い足を引きずってわたしは音楽室に向かう。


今日はオーケストラ科の生徒を中心としたコンサートが開かれるらしい。

コンサートといっても、この学校のホールで開かれる演奏会のようなもの。
3年生が中心なんだけど、2年生も腕がいいひとは出れるらしい。
もちろんロベルもでる。わたしが言っていいのかわからないが、ロベルより腕が鈍い3年生なんてたくさんいると思う。
それぐらい、ロベルはすごいバイオリニストなのだ。

それはさておき、そのコンサートがあるから、今日は授業は午前中で終わり。
オーケストラ科の生徒以外は遊ぶ約束なんかしてたけど、わたしは遊んだりしないもんね。
ピアニストは忙しいんだよ。

(遊んでばっかのお前らと違って…)

「ひっ…!」

今心の中でまた黒々とした感情が渦巻いた気がした。
気のせい気のせい気のせい。
わたしは忙しいんだ。

そっと音楽室の扉を開ける。
「La〜La〜♪」
……!!
防音という壁が切り取られ、音楽室のなかからすさまじい“鉛のような無感情な色”の音が飛び出してきた。
「あら…?」
扉の外でたたずむわたしに気付いたのか、その人はゆっくりと振り向く。
…その顔に見覚えがあった。
「もしかしてあなた…ピアノ科のヴェルド・セレン…様?」
ステージの横を通りすぎたあの時。
必死に歌声を響かせていた彼女だ。
「……!君こそオペラ科の生徒だよね?わたしの事知ってるんだ…!」
普通、自分と違う科目の生徒なんて気にもとめないのがふつうだ。
それなのにこの人…わたしのこと知ってるんだ…
「この前のコンサート、聴きに行ったんです。ロベル様のバイオリンととても合ってました。」
「あっ!聴きにきてくれたんですね!」
わたしのことを『ピアノ科の生徒』ではなく『ピアニストのヴェルド・セレン』として知っているのなら納得だ。
「もしかしてピアノの練習されます?じゃあわたしはこれで…」
ストレートの金髪を揺らして、彼女は音楽室を出ようとした。
わたしとすれ違った瞬間、頭にさっきの“鉛のような色”が頭をよぎった。
あの無感情な色は、音楽に対してなにも思っていない、諦めの色だ。

「待って!」

わたしは彼女を呼び止めていた。



「あ、あの一緒に練習します?」



1年前 No.10

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ViUKTznmMP

誰かの演奏や歌にあわせる伴奏をするのは本当に久しぶりだ。
それに会ったばかりの彼女といきなり合わせるだなんて…
大丈夫かな?



彼女の名前はティナ。
この学校オペラ科の生徒でわたしと同じ14歳。
誰もが憧れるサラサラの金髪の持ち主だ。
「ティナ、始めるよ?」
「オーケィ!」
ティナ気前がよくてわたしの名前を知った瞬間、ヴェルド様からセレンに切り替え、敬語もやめた。
クラスのみんなはわたしを謙遜してかヴェルド様に敬語使いだ。
わたしは普通に慣れなれしくしてほしいのだ。
ティナみたいに。

そんな事を考えながらも鍵盤を軽くおす。
即興で入れたアレンジ版の前奏。
合わせて彼女は口を開く。

曲は『アメイジング・グレイス』アメリカで広くひたしまれていて、オペラでもよく使用される。

ピアノの固い旋律がティナの歌声をよりいっそう響かせる。
わたしの音符は愉しさを表す“桜のピンク色”。
ティナの声の音は“鉄のような無機質な色”だ。
音楽のことをどうでもいいやぁ〜と考えている場合に出やすい色。
音楽の授業中、男子がかもしだす音の色だ。

1年前 No.11

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ViUKTznmMP

わたしは耐えきれなくなって、思わずピアノ伴奏を途中で止めてしまった。
驚いたティナがピアノの方を振り向く。
「あ…ごめ…あの…」
なんと言ったらいいのか困った。

わたしには音の色が見えているの。
それであなたから出る音が無機質な鉛色で音楽を楽しんでないようだったから演奏をやめた。

そんなこと言ったらどうなる?

こいつ頭イカれてるに認定されてさようなら。
いじめのターゲットだ。

「えっえっと…ごめん緊張して楽譜が頭の中から飛んじゃった…」
あははと頭をかいてごまかしてみたが、そう簡単にはいかなかった。
「…嘘。あのヴェルド・セレンが譜面を忘れるなんてありえないもの。だって天才ピアニストよ?」
彼女はつかつかとわたしのもとに歩みよりグッと顔を近づけた。
「他に理由があるんでしょう?」
「ひっ…」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



割れるような拍手が僕らにふりそそぐ。
僕はバイオリンを抱き、一礼。

だが全く気持ちよくなかった。
セレンと一緒に演奏する時のような快感が味わえないのだ。
なにがオーケストラ科の生徒のコンクールだ。
オーケストラの勉強してるわりにはテンポも途中ずれる奴らばっかだし、譜面が全然さらえていない。
強弱もデタラメで指揮をみようとしない。
僕のなかではすでに怒りのお鍋がグラグラと煮えたぎっている。

これだから、本当に音楽をわかっているのはセレンぐらいしかいないんだ…

「“兄さん”も昔は音楽を分かってたのに…」

つぶやいた声は拍手に埋もれて消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1年前 No.12

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★3yfs9FP1La_Vjk



「音の色が見える?」
ティナは眉をグッとよせて言った。
「…うん。信じてもらえないだろうけど…」
「なら、信じないよ。」
ティナはいたずらっぽく笑って対照的に冷たい声で言い放った。
そのギャップにドキリとする。
「本当に信じてほしいならもっと自信を持たなきゃだめよ。だって本当に音の色が見えるんでしょう?」
思わず息をのんでしまう美しさだった。
彼女の瞳は、深海よりもずっとずーっと深くてすいこまれそうなのだ。
わたしはうなずくと「本当だよ。どんなものでも、音程さえあれば色付いて見えるの。」ときっぱりと言った。
ロベルにしか話していなかったのに。
お母様にもお父様にも、ヴィオラさんにも話していないのに。
ロベルだって、最初は何度か疑ったのに。
「ふーん、じゃあわたしの“怒りの色”を見破ったのも納得がいくわね」
ティナは、驚くほどあっさりと、わたしのちからを信じたのだ。

「見破れるひとに隠し事はできないわねー」
彼女はまた淡々と話しだした。

「あたし、音楽なんて好きじゃないの。もちろん歌うことも。なんでオペラ科についたのか、ってかこの学校にきたのか。理由は簡単よ。親がここに入れっていったのよ。あたしの母親は学生のころ音大を受験して失敗してるの。だからよね。あたしにこそ音楽の将来を期待しているのよ…。そのくせ、ちょっと歌ってすぐダメ出し。嫌になるに決まってるわ。」
淡々とペラペラと話す。
そうか____。
そんな理由があったのか…。
「コンクールで失敗したときなんか、その日晩御飯抜きよ信じらんない母親。」



「音楽に怒りをのせても、それは音楽じゃない。」

「え?」

いつか、音楽人物歴史典を読んだときピーンときた誰かの言葉。
それが、今のティナにぴったりなんだから。

「ティナのお母様にお伝えになって。音楽は楽しまなきゃダメなんだから!!」
いつも、素敵な音色を奏でられるように。
音楽をいつも好きでいなきゃいけないんだから……。

1年前 No.13

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ViUKTznmMP

「…音楽に怒りをのせても、それは音楽じゃない、かぁ……。」
ティナはだるそうに背伸びし、わたしを一瞥した。
「でもごめん。やっぱりあたし音楽はまだ好きになれないや。あの親と先生のせいであたしすごい苦労してるんだし。」
わたしが言葉をかけられずに固まっていると彼女は「じゃあ」と金髪を揺らしながら音楽室から去っていった。
「…ティナ……。」
しん、と静まりかえった音楽室でわたしは呆然と立ち尽くしていた。
何度かピアノの練習をしようとしたのであるが、出てくる音符が“鉛のような無機質な色”に見えてきて怖くなって演奏をやめることになる。
「…ティナが音楽が嫌いなのはティナのお母様たちがティナを必要以上に追い詰めるからよね…。」
ん?
わたしの中で沸々と闇の感情が沸き上がってくる。
「くすくすっ…ふふふ…!!」


ギャーーンッッ!!


ピアノの鍵盤を力いっぱい掌で叩きつける。
悲鳴のようないやな音が誰もいない音楽室に響きわたった。

「ティナの才能を、音楽の楽しさをぶっつぶす野郎は、排除しちゃえばいいんだよ……!!」


楽しくて楽しくて仕方がない。


はやくティナを助けてあげなきゃ。
はやく音楽の楽しさを教えてあげなきゃ。

理性を失ったわたしの頭に、また男の声が響いてくる。

((ヴェルド・セレン…ついに覚醒するか?おもしろい。この私にもその力を見せてくれ…!!))


1年前 No.14

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=ViUKTznmMP

突然ですが、諸事情によりこの小説は削除させていただきます。
勝手なことですみません。
理由は、これと類似した話を小説大賞に応募するためです。

閲覧してくださった皆さん、いいねを押してくださった方、本当にありがとうございました!!

そして身勝手な理由で削除することをお許しください。

1年前 No.15
ページ: 1

 
 
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