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友情の拳

 ( 中級者 小説投稿城 )
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石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

トラブルは絶えない。
殴り合ってでしか分かり合えない。
ケンカは、時として勝ち負け以上の結果をもたらす。
それは、一生取り返しのつかないことであったり、
はたまた、一生の友情が生まれたり。

不器用だから、そんな方法しか思い付かない少年少女たち。

それでもいいと思う。
不良にしか分からないことはいくらでもある。

何万回の言葉より、一度の殴り合いですべてが分かる。


これは、拳でしか分かり合えない者たちの、ちょっとおバカな物語。

2年前 No.0
メモ2015/02/04 23:33 : 石狩陵(いしがりりょう) @kou0724★Android-wQ7aqIfNbN

花宮健吾(はなみやけんご)反撃王者。 鈴銅翼翔高校新入生。面倒事が嫌い。卒業を目標としているが?

カウンターブローが得意。


風岡京二朗(かぜおかきょうじろう)電光石火。 新入生。チャラ男。とても温厚な性格。スピードのあるケンカが特徴。スピードスター。


月原翔介(つきはらしょうすけ)怪力大王。 新入生。一年のアタマを狙う。ケンカっ早い。

とても力が強く、攻撃力は一級品だが、素早さに欠ける。


小田可奈子(おだかなこ) 最強乙女。 新入生。名前の通り女子。

幼い頃から合気道を習っていた格闘技が好きな少女。相手の攻撃を受け流すのが得意技。

健吾のことを気にかけているが?

切替: メイン記事(17) サブ記事 (2) ページ: 1


 
 

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

鈴銅翼翔高校に入学してきた者の大半は、学力が足りないか、ケンカで一番を獲りたいかのどちらか。
別に興味がないわけじゃない。
だけど、それで卒業できなくなるくらいなら、面倒事はなるだけ関わりたくはない。
かといって、マジメにやれる気なんてとてもしない。

花宮健吾はユルく着たブレザーに身を包み、鈴銅翼翔高校入学式に来ていた。
ズボンは腰ではき、ネクタイはゆるゆる。ブレザーの前ボタンはとめない。シャツもだらりとすそを出す。おまけに髪は中学の時と同じように、金髪に染め直した。
これでもまだマシな方だ。
周りを見ると、ほとんどがネクタイなんて着用していないし、中にはスラックスだけはき、上半身は私服の者もいるし、ご丁寧に変形学生服にしてしまっている生徒もいる。
それを見ると、健吾はまだまだ浮いていない。
いや、この中でネクタイをしている方がむしろ目立つかも知れない。

校長の話は、どこの学校でも長いものだ。
健吾はあくびをして、パイプ椅子に座りながら体を伸ばす。
体育館に響く校長の話に耳を傾けている生徒は一体何人いるだろうか。
校長の言葉だけが、ただ体育館にこだまする。
面倒だなーこの入学式。
健吾はそう思って、席を立とうとした。席にキチンと座っている生徒の数なんて数えれる程度なので、別に目立つことなんてない。

だから、横の男に声をかけられたときは、少し驚いた。

髪は長く、整髪料で立てられ、カッターシャツの襟はブレザーの外に出してオープンになっている。ブレザーの前ボタンはとめられていて、ズボンはそこそこのワタリの広さのボンタン。
そんなチャラ男が、確かに健吾に向かって声をかけた。
「面倒だねーこの入学式。」

健吾は一瞬返事に戸惑ったが、「あ、ああ。」と素っ気なく返す。
「フケんの?」
チャラ男が聞いた。健吾は「まあ面倒だし。」と返すと、「もう少しで終わるじゃん。」と笑って言った。
「そのもう少しが長いんだよ。」
「本当にも少しで終わるよー?」
変に間延びしたしゃべり方が、柔和な雰囲気を出していた。
チャラ男が言うので、健吾はまた席に座った。
そのチャラ男も、椅子にはしっかり着席していた。

チャラ男が言う通り、入学式はその後、すぐに終わった。
校長が前の舞台から降りてくると同時に、健吾の横のチャラ男はまた健吾に話しかけた。
「君、名前なんてーの?」
笑って聞いてくるチャラ男。女の子に話しかける時のような話し方を、男にでもしているのかと思ったが、健吾は別に害はなさそうと判断した。
「花宮健吾。そっちは?」
「俺?風岡京二朗だよ。よろしくね。」

健吾はこの瞬間から、あらゆる事件に巻き込まれることがすでに決まっていたが、当の本人はもちろん、横にいる京二朗にも、そんなことはまだ知るよしもなかった。

2年前 No.1

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

入学式が終わって、クラスを発表されたとき、健吾は少し安心した。
知り合いがきわめて少ない健吾にとっては、京二朗が同じクラスであることは非常に喜ばしかった。
「おー。同じクラスだねー。」
間延びした京二朗の声が、教室の中に響く。
健吾は少し笑いながら、「だなー。」と返した。
周りはギラついた目つきで、周りを警戒している風だった。
京二朗は特にそんな様子もなく、いたって普通に健吾に話しかける。
「何で健吾はここに来たの?」
「んなもん、頭が悪かったからに決まってるだろが?」
「えー?そーなのー?」
京二朗は少しだけ驚いた顔で言った。
「ここに来るってことは、当然ここで腕試ししたいからと思ってた。」
健吾は特にそんなことは考えていなかった。
ただ成績が悪く、鈴銅翼翔か醒王工業しか行ける学校がなかったからだ。
担任に、「出来るだけ治安的に悪くない学校に行きたい」
と言って、薦められた学校がここ、鈴銅翼翔だっただけだ。
「皆が皆、お前らと同じと思ってんなよ。」
健吾がそう言うと、京二朗はあははと笑いながら健吾の金髪を撫でた。
「まあ、たしかにそうだよねー。」

その後のホームルームはそこそこに、入学式は終わった。
担任はそそくさと早足で教室を出て、他の生徒もぞろぞろと教室を後にする。
「健吾ー。帰ろー?」
京二朗が健吾に言う。健吾は「おー。」と返して、カバンを手に取った。
「健吾はどこに住んでんの?」
京二朗の質問に健吾は「俺かー?」と返した。
「鈴銅の駅から一駅だよ電車で。」
言うと同時に歩き出した健吾は、右肩がクラスの男と当たった。
「あっ、ごめん。」
軽く謝って、健吾は京二朗と話しながらまた歩いていった。
しかし…

「ちょっと待てやこの野郎!」
教室中に響き渡る怒声で、健吾と京二朗は立ち止まった。
髪はライオンのように立てられ、太いドカンをはき、上半身は白いロンTを着た男は、健吾をにらみつけていた。
京二朗は「ほっときなよ。」と言ったが、健吾は男に向き直り、「ホントにわりい。」ともう一度謝った。
しかし、男は引き下がらなかった。
「なめてんのかてめぇ。」
思いのほか怒っている男に健吾は思わず「あ?」と言ってしまった。
健吾と男がゆっくりと少しずつ近付いていく。健吾は右手のカバンをその場にドサッと落とした。
二人はやがて、手の届く距離まで詰め寄った。そしてにらみ合う。
「調子こいてんじゃねぇぞコラ。」
男が言うと、健吾も後戻りできないと分かり、「そりゃてめぇだよコラ。」と言ってしまった。
男がいきなり健吾の胸ぐらを掴み上げる。健吾はその手を振りほどこうともせず、「やんのか?」と聞いた。
「上等だコラァ!」
男が右腕を振るう。
健吾の身体が、2メートルほど飛んだ。そしてそのまま、机にがらがらと突っ込んだ。
男は倒れる健吾をにらんだまま、その場から動かない。
京二朗も、何も言わずにニヤニヤと笑っていた。
しばらくして、健吾がゆっくりと立ち上がる。
「あー…いって。」
立ち上がった健吾が、男とまた距離を詰める。
「殺されなきゃ分からねぇかぁ!?」
健吾が右足で男の顔を蹴りにいった。

2年前 No.2

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

しかし、健吾の蹴りは男には当たらなかった。
放たれた蹴りは、京二朗の大声で制止されたのだ。
「健吾っ!」
男の顔のギリギリで、健吾の蹴りは止まる。
男は、別段ビビった様子でもなく、じっと健吾をにらんでいた。
まだ教室に残っていた女子生徒数人が、「ケンカー?」とささやくのを聞いた健吾は、「チッ!」と舌打ちした。
「こいつらさえいなきゃてめぇなんか瞬殺なのによぉ!」
健吾は大声でそう言った後、近くの机を右足で蹴り飛ばしてから、京二朗の肩を軽く叩いた。
「帰ろうぜ。」
京二朗は何も言わず、二人で教室を出た。

「ふーん。面白い。」


「ったくよぉ!」
健吾はまだイラついているらしい。帰り道はずっとイラついた顔で歩いていた。
「あそこに人がいなきゃあんな奴半殺しだよ!」
「でもさー、あいつなかなか強そうだよ?」
「んなもんパンチ一発もらってみりゃ分かるっつーの!」
健吾はそう言って、近くの石ころをまた蹴り上げた。
京二朗は健吾に「まあまあ。」と声をかけるが、健吾はそれでも収まらなかった。
イラついた気分を抑えられない健吾は、「マジで明日にでもアイツボロボロにしてやる。」とまで言い出した。
京二朗は少し笑いながら、ポケットからタバコを取り出す。
「いきなり殴られたらそりゃまあそうなるよねー。」
京二朗はタバコに火をつけながらそう言う。
「多分だけど、あいつも狙ってるよ。」
京二朗の言葉に、健吾は地面につばを吐いて返事する。
「あいつ、絶対また健吾に突っかかってくるよ。」
「そん時は潰すまでだ。」
健吾が言うと、京二朗は煙を吐き出しながら健吾に言った。
「卒業したいんでしょ?」
その言葉を聞いて、健吾はピタリと歩くのを止めた。
「何となく分かるよ。健吾が本気で卒業したいの。」
京二朗は言ってから、健吾にさらに言った。
「ただ三年間、遊んでるわけにはいかないってことは、何となーくだけど分かってるんだよ?」
健吾はその言葉を聞いて「そうだな。」とだけ返した。
「でもよ、このままあいつになめられたまま終わるわけにはいかねえんだよ!」
健吾は言ってから、「あっ…」と小さな声を出した。
京二朗は健吾の頭を撫でながら、「うんうん。」と言った。
健吾は何故か、京二朗に心を読まれているのではないかと思った。
出会ってまだ数時間なのに、すでにその事を見抜かれていることに健吾は驚いていた。
「とにかく、明日また突っかかってきたら、そん時にまた考えよう?」
一通り健吾をなだめた後、二人はまた歩き出した。

だがその次の日、健吾と京二朗は教室に入って驚いた。
「嘘だろ?」
「まさか、こんなことになるとはねー。」

2年前 No.3

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

教室の中は、倒れている男数人と、その男たちから発せられるうめき声、たった一人、その中に肩で息をしながら立っている、昨日健吾にからんだあの男が支配していた。
男は健吾と京二朗の顔を見るなり、「よぉ。」と笑って言った。
教室の中は一瞬で緊張がビリっと張り詰めた。
「何やってんだよ?」
男をにらみながら京二朗はドスをきかせた声で聞いた。
「はっはっは!」
男の高笑い。
「こうすりゃいやでも俺に来るだろ?」
「どーゆーことか分かんないよ。」
そう言ったのは京二朗だ。
「まだ分かってねえのかよ?」
男は倒れる男たちの一人を踏みつけながら、健吾に目をやった。
「要はそこの金髪、お前を殺せればいいんだよ俺は。」
「だからって、クラスの人間ボコボコにする必要はなかっただろが?来るんなら俺んとこに直接来いや。」
健吾は男にそう言って、ネクタイを首もとからしゅるりとはずした。そして構えをとった。
「かかってこいや。」
健吾のその言葉の後、男はニヤリと笑った。
「てめぇを殺せばこのクラスのアタマだ。」
男は笑いながら言った。
二人は拳の骨をならしながら、ゆっくりと近付いていく。健吾は首の骨もこきりとならした。
やがて二人は、手の届く距離まで詰め寄った。
二人の拳が同時に発射された。

「花宮くん!ちょっとごめん!」
誰かが健吾のパンチをさばいてから、間髪入れずに今度は健吾の身体を拘束し、そのまま教室の外に連れ出していった。
「ちょちょちょ!何なんだよおい!つーかとりあえず離せよオラ!聞いてんかてめぇ!」
健吾は叫びながら、かすかにシャンプーのいい香りがすることに気が付いた。

教室の中に残った京二朗と男は、ポカンと口を開けたまま、教室の扉の方を見ていた。
やがて先に我に返った京二朗が、男に気まずそうに質問した。
「あの、君ー、名前は?」
男もまた、驚いた顔のまま、「月原…翔介…だけど。」と答えた。
「月原翔介くんね。。」
京二朗は名前をもう一度確認して、翔介の顔を見た。
「健吾を倒したところで、このクラスのアタマは獲れないよ?」
「あ?だったらてめぇからやってもいいんだぞ?」
「そう怒るなよー。」
京二朗がまた微笑みながら、翔介の肩を叩いた。
「健吾を倒した後にやってやるよ。な、翔介くん。」


校舎裏に担がれてきた健吾は、またイラついて小石を蹴り上げる。
「何なんだよお前は!?つーか女のクセによくここまで俺を担いで来れたな!?」
健吾を担いできた女は「えへへー。」と笑っている。
髪は長くてストレート、顔立ちはとても可愛らしく、この学校の生徒にしては珍しく、スカートの丈が膝よりも5センチほど下にある。
「危なかったからね、助けてあげたの。」
女はそう言ったが、健吾は頭をこりこりと掻きながら、「えへへー。じゃねんだよコラ!」と叫んだ。
「どういうつもりで割って入ってきやがった!?俺とあいつのケンカだぞ!?だいたいな、あの状況で入ってきてんじゃねぇよ!危うくてめぇのツラ殴っちまうとこだったぞ!?分かってんのか!?」
健吾はとにかく叫んだがこの女、相当根性が座っているのだろう。言ってもニコニコと笑っているだけだった。
「ん?なになにー?もしかしてー?」
「何だよ!?」
「ちょっと心配してくれてる?」
「アホか。」
「なーんだ、つまんないなー。」
そう言って、少し膨れ面になる女を見て、健吾は不覚にもドキリとした。
健吾はブレザーの内ポケットからタバコを取り出すと、箱から一本引き抜いて、それを口にくわえた。
「いきなりだけどさー?」
女が健吾に話しかける。健吾は口にタバコをくわえたまま、ポケットの中に手を突っ込んで、ライターを探していた。
「あいつ、月原翔介のこと、教えてあげよっか?」
健吾はその言葉を聞きながら、「ライター…ライター…」と小声で言った。
「聞いてる?」
「それどころじゃねえ。ライターねんだよ。」
健吾はそう言ってから、舌打ちをひとつして、「おう、お前名前は?」と女に聞いた。
「小田可奈子。よろしく。」
健吾は「ん。」とだけ言うと、まだポケットの中を探っていた。いいかげん諦めればいいとも思うが、可奈子はあえてそれを言わなかった。
「おう可奈子、ちょいコンビニ付き合えよ。ライター買いにいこうぜ。ついでにそいつのこと行きながらで良いから教えてくれよ。」
健吾は可奈子に言うと、可奈子はうなずいて、笑顔で健吾の横についてきた。
「いきなり下の名前で呼ぶ派なんだー、花宮くんって。」
「うっせぇな!俺の勝手じゃねぇか!」
健吾は少し顔が熱くなっているのが、自分でも分かっていた。
とにかく早くライターを手に入れないと、本当に気がおかしくなってしまいそうだ。
健吾は早足でコンビニへ歩いて行った。

2年前 No.4

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

「で、そのー…月原だっけか?そいつのこと知ってんのかよ?」
健吾はコンビニで買ったライターでタバコに火をつけながら可奈子に聞いた。
可奈子は公園の高い鉄棒にぶら下がりながら「うん。」と答えた。
「結構有名なワルだよ?中学の時はワル率の高い学校のアタマだったんだよ。」
「俺だって中学の時はケンカでは負けなかったよ。」
「もー!そーじゃないんだってば。」
可奈子は鉄棒から手を離すと、そのまま地面にトンと足をつけた。
「もともと、鈴銅翼翔は有名なワルが多い学校。特に、今年の一年は私でも知ってるような、名の通ったワルが三人もいるの。」
可奈子は健吾の横に座ると、地面の砂に木の枝で何かを書き始めた。どうやら、図の解説付きで教えてくれるようだ。
「有名なワルは、私が知ってるだけでこの三人。しかも全員同じクラスに、今年は固まってるの。」
地面にカリカリと名前を書いていく可奈子。どうやら、図の解説付きで教えてくれるようだ。
「まず、健吾くんがさっきケンカしてた、月原翔介。怪物並みのパワーがあって、とにかく好戦的。中学の時は、この人とケンカした人はだいたい、一発とか二発とかで倒されちゃってるって聞いたことある。」
地面の砂に「月原翔介、馬鹿力」と書かれた。
「で、私もまだ顔は見たことないけど、中学の時はこの人も有名だった。」
今度は地面に「鳥谷千里」と名前が刻まれる。
「運動神経抜群で、とても身軽。サーカス団みたいな空中攻撃がすごいらしいよ。この人も、さっきも言ったけど私たちと同じクラスにいる。健吾くん、ルチャリブレって知ってる?」
「んーっと、何だっけ?確かメキシカンプロレスだったっけ?」
「そう。ジャンプしたり、逆に恐ろしいほど身を縮めたり。身軽な彼は、華麗で派手、かつ、とても強力な空中殺法が得意。動きが全く読めないらしいの。」
地面に木の枝で鳥谷千里のところに、「予測不能」と書き込まれる。健吾はタバコをくわえたまま、「ふーん。」としか言わない。灰がタバコにたまっているのを可奈子に指摘され、健吾は灰を落とす。
「この二人は、私でもこれだけは知ってるの。それくらい、この二人は有名だよ。」
可奈子が言うと、健吾は間髪入れずに「ちょい待てよ。」と言った。健吾はタバコを手に持って、地面に書かれている二人の名前をタバコの先端で指して言った。
「じゃあ最後の一人は誰なんだよ?ここで終わらすような言い方してんじゃねぇぞ。」
可奈子は頭をこりこりと掻きながら、なにやら「うーむ…むむむ。」と小さく声を出す。
やがてしばらく考えた可奈子は、こんなことを言った。
「私も詳しくは知らないんだ。健吾くんの方が知ってるかもね。」
健吾は黙って可奈子の顔を見つめる。健吾の目は、「早く言えよ。」と言いたそうだった。
やがて、可奈子は最後の一人の名前を地面に着いた。
カリカリと音がする途中で、健吾は驚いたように目を見開いた。
「嘘だろ?」
地面に書かれている名前は、「風岡京二朗」だった。

2年前 No.5

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

「何で京二朗が?」
健吾は驚いた顔で、可奈子の顔を見た。可奈子は首を振って、分からないの意思表示をした。
「でも、間違いなく風岡くんは中学でも有名だった。私も風岡くんのことは詳しくないから。」
可奈子は言って、カリカリと地面に、京二朗の名前のところに「詳細不明」と書いた。
健吾はしばらく考えた。可奈子はその様子を見て、「どしたの?」と聞く。
「別に。早く月原の詳しいこと教えてくれよ。」
顔色から見て、焦っているようにも見えた。それだけ健吾には、京二朗が大きな存在だった。
すぐに仲良くなった友人が、まさかそんなにすごい男だとは思わなかったからだ。
「その前にひとつ。」
可奈子が人差し指を立てて聞く。
「最終的には健吾くんはどうするの?この三人とケンカして、クラスを支配するの?」
可奈子の「支配」という言葉が、健吾の心のどこかに突き刺さる。返答に迷った健吾は、「わかんねぇ。」と言った。
「売られたケンカは買うだけだ。そこまで男としてのプライドがどうとかは考えてもねえよ。」
「つまり、もう風岡くんとはケンカする必要はないわけだ。」
可奈子は言うと、首を縦に振って答える健吾。まだ吸いかけのタバコを指で飛ばして捨て、「月原のこと、教えてくれよ。」と言った。
可奈子はため息をついてから、翔介のことを話し始めた。
「月原翔介、中学離れしたパワーがすごくて、そのパワーで中学をすぐにシメた。その上打たれ強くて、もちろんケンカは無敗。キレたら相当ヤバイらしいの。加減を知らない野性動物だって言われてたこともあるくらい、月原翔介は危ないの。」
「要するに筋肉バカじゃねぇか。」
健吾のツッコミが入る。
可奈子は「んもー!」と言ってから顔を膨らませ、「なめてるとやられちゃうよ?」と付け加えた。
「あんな奴にやられねぇよ。」と健吾は言って、すくっと立ち上がって、身体を空に向かって伸ばす。
「んーーー。」
一通り身体を伸ばして、健吾は気だるく歩いていく。
「待ってよ!」
可奈子が堅碁を呼び止めた。
「何で置いていくのよ!?」
「あー、悪い。」
健吾は謝ってから、可奈子に「とりあえず、サンキュー。」とだけ言うと、すたすたと歩いていく。
可奈子は置いていかれまいと、健吾の横に走っていった。
「とりあえず、月原に勝つ方法は何となく見つけた。」
「ホントにー?」
「俺の予想が合ってればな。」
適当に返事して、健吾はもうひとつのことを考えていた。
京二朗とはいずれ闘うことになるのだろうか。と。

時間は、もうすぐ昼のチャイムが町中に響く頃だった。
健吾と可奈子は、学校まで戻ろうと足を進めていた。
健吾の目的は一つだった。

「月原翔介をブッ飛ばす!」

2年前 No.6

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

教室に帰ると、そこにいるのは京二郎だけだった。
京二郎は健吾の帰りを待っていたのだろうか。
「誰もいねぇのか?」
健吾の問いに京二郎は「いや、」と言った。どこか低く感じた京二郎の声。
「月原が片っ端から皆ボコボコにしていってる。」
健吾はそう聞いた瞬間、「どこにいるんだよ?」と聞いた。
「ここにいるぜぇ?」
健吾の背後から声がした。
健吾はとっさに身体を反転させる。
ヤバイ!
その時にはすでに遅く、健吾の身体は吹っ飛んだ。
ガードした腕がビリビリと痺れる。
京二郎は翔介の顔にハイキックを放ったが、翔介はそれをガード。
京二郎が翔介から距離をとる。
そして肺の中の空気を吐き出す。
「ぷぅー。」
ジリッ、と京二郎は後ろに下がる。
「健吾?」
京二郎は名前を呼ぶ。健吾は何事もなかったかのようにすくりと立ち上がった。
やがて健吾は首の骨をポキリポキリと鳴らしてから、京二郎に言った。
「邪魔すんなよ?」
「クックックッ、クククク。」
翔介が笑いだした。
「甘いんだよ、てめぇらは。」
その言葉の瞬間、教室に6人の男が入ってきた。ぞろぞろと足音を立て、手には鉄パイプを持つ者までいる。
「てめぇらはここで殺されるんだよ。」
健吾はぎりりと歯を食い縛った。
「汚ねぇんだよてめぇ!」
「ククク、何とでも言えよ。死んだら一緒だよ。なあ?」
翔介がそう言って、健吾との距離を詰めた。
そして、6人の手下に声を張る。
「この二人をブチ殺せぇぇ!」
「上等だよ!やってみろオラァ!」
6人の手下が迫ってきた。
健吾はその中の一人を右ストレートでブン殴ってから、翔介の前の敵に前蹴りで吹っ飛ばした。
目の前には翔介がいた。右手の拳を思い切り握りしめる。
「月原ぁぁぁ!」
翔介は何事もないようにそのパンチをガードした。
そして、もう一方の手を握りしめる。
「オッルアァァ!」
強烈なボディーブローが健吾の腹に突き刺さる。たまらず健吾は「ウグッ!」と声を出す。
「死ねよテメェ!」
翔介の蹴りが健吾の顔に放たれた。
「くっ!」
ガードの腕を上げる健吾。このままじゃやられる!
しかし、翔介の蹴りは健吾には当たらなかった。
京二郎が翔介の顔にハイキックを入れたからだ。
パアン!と軽い音がなってから、京二郎は健吾の前に立ち塞がる。
「早く立って!雑魚6人は任せといてよ!健吾はこいつだけを狙って!」
京二郎はそう言うと、襲いかかってくる男に廻し蹴りを叩き込んだ。
「早く立って!」
京二郎が叫ぶ。
そうだ、京二郎がこの6人を相手にしてくれてるんだ。
俺が月原をやらなかったら…。
健吾がぐぐっと立ち上がった。
それを見ていた京二郎がにやりと笑った。
(さあ、泣き見る番だぜ、月原!)
翔介は健吾が立ち上がるのを待っていたのだろう、「おせぇんだよ。」と言った。
「誰がお前を殺るんだよ?」
健吾が笑って言った。
「っしゃあ。続けようや。悪いけどタダじゃあ終わらねぇぞ。」
健吾がようやく構えをとった。
「テメェを殺して俺がこのクラスの頭だ!」
翔介が叫んで殴りかかる。
健吾はそのパンチをキレイにさばいて、翔介のスキを付くように右足で翔介の顔を蹴り上げた。
翔介が後ずさる。健吾は肩で息をしながら、こう言った。
「このクラスの頭だとか言ってるうちはまだまだ負けやしねぇっつーの。」
「あっ?」
「クラスの人間ボコボコにした罪はでけぇぞ?全員の前で膝付かせてやるよ!」
二人の拳が入り交じった。

2年前 No.7

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

バキィ!
振り抜かれた拳は翔介の顔をキレイに捉えた。
「なっ!?」
思わず驚き、そのスキに健吾にまた腹を蹴られた翔介は、そのまま地面に倒れ込む。
「もう一丁!」
更に右足で翔介の顔を蹴り上げ、素早く更に左足で蹴り払う。
翔介の身体は地面にドサッと倒れ込んだ。
「立てよ?」
健吾は言ってから、のしりのしりと翔介に近付く。
翔介はすぐに立ち上がって、健吾の顔に左フックを飛ばした。
健吾はそれに合わせるように左で翔介のアゴを跳ね上げた。
キレイにカウンターブローが決まる。
手応えはあった。
踏み込みも、振り抜きも完璧だったアッパーブロー。
だが、翔介の腕は健吾の胸ぐらを掴んでいた。
「うっらぁぁ!」
全力の頭突きを食らった。鼻っ柱に翔介の頭がモロに突き刺さる。
よろけた健吾に翔介は右ストレートを放つ。
よろけたとは言え、健吾は不安定な体勢から身体をひねってそれをかわした。
二人が一旦距離をとった。
「ハア…ハア…」
「この野郎、さっさと死ねや。」
翔介が健吾に言うと、健吾は「アホか。」と返事する。
「テメェみてぇな『力が全てだ!』なんてバカ野郎に俺の高校生活邪魔されたかねんだよ。消えんのはお前の方だ。」
健吾は言ってから血をぷっと吐き捨てて、構えをとった。
「オラオラ続けんぞ。」
「このクソガキがあ!」

健吾と翔介が殴り合う頃、雑魚6人の相手をしていた京二郎は、すでに4人を片付けていた。
残る敵は二人。
京二郎は肩で息をしながら、残り二人のうちの一人に向かって走っていった。
「オラァ!」
敵の蹴りを素早くかわして、京二郎はすかさずパンチを入れる。
横からもう一人が鉄パイプを降り下ろす。
その攻撃を、京二郎はバックステップでさらに素早く回避すると、その反動で一気に前進、軽く飛んで飛び膝蹴りを顔に浴びせた。
ひるんだ男の顔に、京二郎はかなりのスピードでラッシュを叩き込む。
右ストレート、左ジャブ、アッパー、エルボー、ありとあらゆる攻撃を数秒で十数発も入れる。
とどめの後ろ廻し蹴りで男の顔をキレイに蹴り払うと、男はドサッと地面に倒れた。
「くっそが!」
最後の一人が闇雲に突っかかって来るのを、京二郎はスピードブローでクロスカウンター。
鈍い音と共に、男は前のめりに顔から地面にぶっ倒れた。
6人全員が地面でうごめいていた。
「ハア…ハア…ハア…」
肩で息を整え、しばらく休もうと思った京二郎は、その場に座り込む。
「ぶっはー!きっつー!」
大声を出して、地面に尻をつける。
座り込んでから、京二郎は健吾と翔介のケンカに目をやった。
「!?!?」
京二郎は目を見開いた。
二人ともダウンしていたのだ。
思わず京二郎は「健吾!」と叫ぶ。
真っ向からカウンターで仕留めようとして失敗したのだろうか、健吾は相当足にキているようだった。
翔介はガタイもあるのだろう、健吾よりも先に立ち上がりかけていた。
京二郎は健吾に向かって叫んだ。
「立てよ健吾!このままじゃ、このままじゃこのクラスはあいつに持ってかれるんだぞ!?皆の仇、討つんじゃなかったのかよ!?」
京二郎の叫びは、教室に響き渡った。
静かになっていた教室に、京二郎の大声だけが響き、その声はすぐにかき消える。
「頼むよ健吾。お前に賭けたんだよ俺は。」
京二郎の声は半分聞こえなかった。
小声で言ったのもあったし、極限状態の健吾には届いていないだろうと思われた。
だが、
健吾の指先が、身体が、その言葉のあと、確かにピクリと反応していた。

2年前 No.8

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

「うぐっ、うおおおぉぉ!」
健吾の叫びが教室に響く。
身体をゆっくりと起こして少しずつ立ち上がる健吾。
翔介はそれを見ながら、「マジかよ。」と言った。
やがて健吾の身体が完全に立ち上がったとき、翔介はまた驚く。
「くく、どうした??続けようぜ。」
健吾の言葉に翔介は「くっそがぁぁぁ!」と叫んで殴りかかる。
健吾はそれをさばいてから、左のフックを入れるが、翔介はそれに耐え、ボディーブローで返す。
パワーはさすがに一級品。健吾はたまらず身体をくの字に曲げる。
「うらぁぁ!」
そのスキをついて、翔介はさらに拳を振り上げる。
ビュン!
翔介の拳は空振りし、健吾は右で的確なカウンターを決めた。それでも翔介は右ストレートで反撃してくる。
それをダッキングでかわして、翔介の懐へもぐり込む健吾は、そこから右で翔介の顔を下から跳ね上げた。
「うがぁぁぁ!」
健吾にそれでも蹴りかかった翔介は、さらに強烈なハイキックで、顔を蹴り飛ばされた。
「ぶふぉ。」
膝から力尽きるように、翔介はその場に崩れた。
「まだまだぁ!」
翔介の脳天に、健吾は強烈な踵落としを叩き込んだ。
翔介は地面に倒れる。
「ハァハァハァ…」
まさか、これ程カウンターブローが上手いとは、京二郎も思っていなかった。
常人離れした動体視力、攻撃に飛び込む勇気、何もかもがすごかった。
翔介はまだ立とうとしていて、健吾は「おら、立てよ?」と翔介に言った。
「テメエ、」
翔介が立ち上がる。
健吾は肩で息をしていて、身体もキツそうだった。
次の攻撃で決めないと、どんどん健吾に不利になる。一方、いきなり集中的にダメージを受けた翔介も、足は相当ガタガタとしていた。
お互いに残された体力は少し。
なら、一撃で決める。
二人が向き合う。
健吾の狙いはクロスカウンターだった。
キレイでなくて、相討ちでも、健吾は翔介に拳が届けば勝てると踏んだ。翔介は、カウンターブローも狙えない一撃を放とうとしていた。
バッ!ゴキィ!
「!?!!」
二人は驚いた。
健吾は、たまたまキレイにカウンターが決まったことに、翔介は、自分の拳が空を切ったことに。
真正面から突っ込んだ二人は、前後上下は逃げ道があるが、左右にはない。翔介はそれを見越して、真上から降り下ろすパンチを放った。
健吾はその瞬間、ダメだと思い、身体が強張った。前への前進力が一瞬途切れる。
そしてそれのおかげか、翔介の拳は健吾の目の前を空振り。
驚いた翔介の顔に、健吾が苦し紛れに右ストレートを放つ。
翔介が、今度こそ膝から力尽きた。
「ハァハァハァ…」
翔介は地面に倒れ、それから立ち上がらなかった。
「勝った、のか…?」
しばらく状況が飲み込めなかったが、健吾は確かに、翔介を殴り倒していた。
「よっしゃあぁあ!」
京二郎が、叫びながら健吾に飛びかかった。
「やったやった!倒した〜!」
京二郎はよっぽど嬉しかったのか、健吾の頭をずっと撫でていた。

2年前 No.9

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=wQ7aqIfNbN

京二郎が健吾に「よくやったねー、ホントに。」と言って頭をがしがしと撫でる。健吾はその手を払いのけた。
「分かった分かった。」
健吾が言うと、京二郎はニコッと笑った。
健吾も少し頬を緩めた。
だが、その直後、京二郎の顔つきがいきなり変わった。ほどなくして、健吾も顔を変える。
「おうおうおう、月原のやつやられてんのかよー?」
男女10人近くが、教室にぞろぞろと入ってきた。
手には鉄パイプを持っている者もいて、二人はすぐに状況が飲み込めた。
翔介に恨みを持つ連中だ。
人数を集めて、全員で翔介を暴行するつもりだったのだろう。
グループの中の男が、健吾に向かって言った。
「月原やったのあんたか??」
健吾はその口調に「文句あんのかよ?」と舌を巻いて言う。
「けっ、ねぇよ。むしろ、」
男が言葉を切って、手の中にある鉄パイプを振り上げる。
「潰してくれて助かったわ!」
男が言いながら翔介に鉄パイプを叩きつけた。
「ぐあっ!」
翔介が呻き声を上げた。
10人は、健吾たちの目の前で、翔介に暴行を加え始めた。
「オラオラ、寝てんじゃねえよ!」
グループの中の女が、翔介の胸ぐらを掴んで立ち上がらせると、別の女が翔介の顔をぶん殴った。周りの男たちは、翔介の身体が倒れないように笑いながら後ろで支えていた。
「っしゃあ、ホームラーン!」
鉄パイプが翔介のアバラあたりにフルスイングされた。
翔介はそれを食らっても、まだ倒れようとはしなかった。
翔介は、何がなんでも立っていなければならなかった。
ここで倒れれば、今ここで負けた健吾たちに助けてもらうことになる。
それだけは、翔介はプライドが許さなかった。
哀れんだ目で俺を見てろ。ヘタに助けられるより、「こいつ、かわいそー。」って目で見られてる方がな、俺も気が楽ってもんなんだよ。
しかし、翔介が思うようにはいかなかった。
それはやはり、そこに京二郎という人格者がいたからである。
「もう、許してあげてよ。」
「あっ?」
10人が一斉に京二郎を見た。
「お前らがこいつをやったからって、調子乗ってしゃしゃり出てくんじゃねぇよ。」
「本当に、もういいだろ?確かに月原はやり過ぎたのかも知れないけど、それでもここまでやるのはやっぱり違うよ!」
京二郎はそう言って、「頼む、手を引いてくれ!」と頭を下げた。
当然、今まで翔介にやられてきた連中は納得がいかなかった。
「ざっけんなよコラァ!」
女の一人が京二郎の顔をぶん殴った。京二郎が机に身体ごと突っ込んだ。
「テメエ、あたしらがどれだけこいつにやられたか分かってる!?勝手なマネしないでよ!」
京二郎は顔についた血を拭きながら、「分かってるよ。」と言った。
「でも、だからって、こんな集団で襲う、ましてや、こんなボロボロの状態を狙うなんて、ひどいだろ?」
「るっせぇんだこのチャラガキがぁぁ!」
京二郎がまた殴り倒された。

2年前 No.10

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=CLZudLt68s

どれくらい殴れたか分からない。
京二郎は袋叩きにあっていた。
「オラァ!」
京二郎は決して殴り返そうとはしなかった。
翔介がやられるべきである制裁を、まるで京二郎がかばうかのように…
健吾も同じくやられ、手酷い暴行はなおも加速しようとしている。
翔介に向けられようとしていた怒りが、憤りが、少しずつ二人を動けぬ身体へと変えられていく。
そして二人がついに力尽きるところまで来た。
「死ねやぁ!」
健吾の腹に鉄パイプが突き立てられたのを最後に、二人はついにガクリと膝を落とし込んだ。
「ゲホッ、ゲホ!」
息を詰まらせて倒れ込む健吾に、男は最後に蹴りを入れた。
「オイコラ、まだやれんだろぉが?」
京二郎の胸ぐらをつかんで起こし、さらに殴ろうとする集団に、健吾は叫ぶ。
「もうやめろ!」
それに重なるように、教室の外から声が飛んできた。
「今先生呼んできたから!」
女生徒の大声を聞いた集団は、各々に「やっべぇぞ!」と言いながら京二郎の胸ぐらを離す。
「逃げんぞ!」
ドタドタと去っていく集団。教室は健吾に京二郎、翔介と、駆けつけてきた女生徒だけになる。
「ハア…ハア…ハア…」
「痛ってぇ〜。遅いよ〜、来るのが〜。」
「つーか、マジで呼んで来たんじゃねぇだろうな可奈子??」
駆けつけてきたのは加奈子だった。
加奈子はにこりと笑いながら「呼んでないない。」と手を振った。
「あれ以上やられたら絶対二人とも死んじゃうしね。」
加奈子は言うと、京二郎は「それもそれでカッコ悪いけどね〜。」と笑う。
「ったく、恨み買うようなことするもんじゃねぇっつーんだよ、翔介。」
健吾もまた笑いながら言う。
「うるせぇよ…」
翔介がつぶやいた。
「このお節介が。」
言うと翔介は足を引きずりながら、ゆっくりと教室の外に出た。
その様子を見て三人はまた笑う。
「ったく、諦めのワリぃやっちゃな〜。」
京二郎がそう言うと、三人の笑い声が教室にこだました。
彼らは分かっていたのかもしれない。
波乱はまだ続くと。
そしてそれを一番分かっていたのは、実は健吾だった。

「なるほどねえ。」
「もしもこのままの流れで一年が固まってくれりゃあ、こっちとしちゃあやりやすいってなもんよ。」
「今年はすんなり決まってくれるってのぁ、随分助かるよ。」
「未だにこじらせてまとまっちゃいねぇのは二年くらいのもんだしよ、そろそろやらなきゃダメだろうが?」 「そうだな。」
「じゃ、やっぱりあれでいくんだな?」
「ああ、一年も春本もまとめて潰してやる。」

「俺が二年の、ひいては来年のアタマになるため、にな。」

1年前 No.11

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=CLZudLt68s

「結局どこいったんだよあいつは?」
健吾が机に突っ伏したまま言う。
あの喧嘩から三日。翔介の姿はどこにも見当たらなかった。
「まさかどっかで殺されてんじゃねぇだろうな?」
「いやいや、それはないでしょー。」
京二郎が健吾にそう言うも、一方の可奈子は首を横に振る。
「あながちなくもないんじゃないの??」
健吾は可奈子の言葉に「勘弁してくれ。」と返して、こう続けた。
「そもそも俺らは助けてやったんだぜ?礼の一つくらい言ってもバチは当たんねぇと思うけどなぁ?京二郎?」
賛同を求められた京二郎はあははと笑って目の前の紙パックのジュースに手を伸ばした。
「まあまあ、そうカリカリしてもしかたないじゃーん??そのうち顔赤くしてありがとうとか言って来るって〜。」
「だといいけどな!」
健吾はイラついたような口調で言うと、可奈子がふいに「あっ、」と言った。
京二郎が可奈子の顔を見る。
健吾は窓の外をボケッとした顔をしながら見つめていた。
京二郎が可奈子に聞く。
「どした??」
「そう言えばさ、入学式の直前に停学になった鳥谷くんって知ってる??」
「あー、前に可奈子言ってた奴なー。そいつ停学だったんか?」
健吾が視線を外から可奈子に移して言うと、京二郎が何故か顔色を変えていた。
「京二郎?」
健吾が声をかけると、京二郎は「あ、あぁ、何?」と返す。
「何?じゃねぇよ。なんだよ、いきなりあからさまに顔色変えやがって。」
「いや、なんでもないよ。」
京二郎はそう言って、席から立ち上がる。
「わりぃ、今日俺帰るね。」
いきなりの早退宣言に健吾は驚いた。
そそくさと帰りの支度をする京二郎に可奈子は聞いた。
「ちょっと京ちゃん、どしたのよ?」
「用事思い出したんだよねー。ごめんごめん。また明日ね。」
支度を終えて教室から出ようとする京二郎に健吾は「おい!昼からの授業どうすんだよ!?」と叫ぶ。
「サボりサボり〜。」
笑いながら去っていく京二郎。
可奈子は口をポカンと開けたまま、健吾の方を向いた。
「いったい何がなんなの??」
「俺に聞くんじゃねぇよ。」
健吾も京二郎の謎の行動に首をかしげていた。
「鳥谷くんって名前が出た後だったね?」
可奈子が健吾に言うと、「おう。」と返した健吾は机から立ち上がった。
「何かにうろたえてたような、そんな感じだったな。」

「昼から登校かよ?余裕なもんだな?」
下駄箱で靴をはきかえている翔介に、誰かが声をかけた。
翔介は顔をあげ、声の主をにらんだ。
茶髪、カッターシャツにネクタイをゆるく巻いた男だった。
「聞いたぜ。やられたんだってな?あはは、やるもんだねぇ、花宮って奴も。まさか翔介をやっちまうなんてよ。」
「嫌み言いに来たんならそこまでにしとけ、鳥谷。」
「いやいや、そんなんじゃねえよ。」
鳥谷と呼ばれた男は笑いながら翔介に近づく。
「悔しいだろ?今まで負けたことなかった奴が、名前すら聞いたことねぇ無名の野郎にのされちまったんだからな。」
「テメェ!」
翔介が鳥谷の胸ぐらをつかみ上げる。そして下駄箱にドンと背を叩きつけた。
「待てって。人の話は最後まで聞くもんだぜ?」
「どうせロクなことじゃねぇだろ?」
翔介はつかむ右手にさらに力を入れた。
鳥谷は少し苦しそうな顔をしながら、翔介にこう言った。
「俺とお前の、花宮と風岡へのリベンジの話だ。」
翔介の顔色が変わった。
そして翔介が鳥谷の顔を見て言う。
「リベンジ、だと?」
「ああ、悪くねぇ話だろ?」
翔介が鳥谷の胸から手を離す。そして顔をじっと見たままこう言った。
「聞かせろや。」
「へっ、そうこなくちゃな。」

1年前 No.12

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=CLZudLt68s

校舎裏のプールの入り口までつれてこられた翔介は、周りを警戒しながら鳥谷の後ろをついていく。
「おう、ここでいいか。」
鳥谷はそう言って歩くのを止め、翔介の方へ向いた。
「さて、じゃあどうするよ?」
二人は向き合って立っている。
聞いた鳥谷に翔介はため息をついてやれやれと言わんばかりだった。
「俺ぁもう別にいいんだよ。」
鳥谷の顔がピクリと反応する。
「健吾にゃもう勝てる気はしねぇ。それに、俺自身もう一年の頭とかも、どうでもよくなっちまったしな。」
「おい!」
鳥谷が声を荒げた。
「てめぇ、悔しくねぇのかよ?」
「くやしい?ねぇなそんな感情は。」
翔介は笑ったような顔で言うと、さらにこう続けた。
「あいつと全力で殴り合って、その上で負かされた。これ以上ないくらい俺としては納得してる。それに、あいつにつきゃあこれからの高校生活も楽しいんじゃねぇかってまで思い始めてよ。」
ガッ。
今度は鳥谷が翔介の胸ぐらをつかんだ。
「てめぇのそれは逃げだ、甘えだ、負けた相手への恐怖心だ!よくもそんな奴が一年の頭とるなんてフカシこいてたもんだなこの野郎!?」
翔介は特に驚く様子もなく、鳥谷に「あははは。」と笑ってから言う。
「てめぇこそ俺に何でそこまで手伝ってほしいよ?一年の頭の候補の中で、最初にやられちまったこの俺によ。」
鳥谷はさらに手に力を入れた。
「てめぇに話す義理ぁねぇんだよ。」
「話してくれなきゃ、協力する気にもならねぇなあ。」
翔介はそう言うと、鳥谷は舌打ちを一回した。
「噂じゃ鳥谷、お前中坊の頃からあのチャラい奴と仲悪いんだって?えっとー、風岡?だっけ?」
「てめぇ、」
翔介は鳥谷の顔を見てにっこりして、胸をつかみあげている鳥谷の腕をはずした。
ほどかれた腕を見ながら鳥谷は驚いた。噂通りの怪力。なぜこんな奴が無名の男に負けたのかが不思議でならなかった。
「健吾にはもう勝てる気はしねぇ。が、」
翔介はそこで一度言葉を切った。
鳥谷は黙って言葉の続きを待っていた。
「俺に風岡やらせろよ。」
「!?!?」
「お前は健吾をぶちのめして一年の頭取りゃあいい。どうだ?それがお前の頼みを飲んでやる条件だ。」
鳥谷はイラついた顔をしながらどうするべきか悩んでいた。
頭をとりたいのは事実だが、中学から京二郎との因縁があるのも確かだった。
鳥谷は当初、健吾と翔介をぶつからせ、自分は京二郎を倒し、残った健吾か翔介をその場で倒せば自分が一年の頭を取れる計画だった。
しかし、当の翔介は健吾とはもうやらないと言い出し、鳥谷は選択を迫られていた。
一年の頭か、昔からの因縁か。
翔介は鳥谷に十分な迷いを与えることに成功していた。
そしてその上でさらに、鳥谷を出し抜き、健吾と最戦することまで考えていた。つまり、鳥谷すらだまし、自分が頭になろうと。
「さあ、どうする?」
翔介の問いに、鳥谷はこう返した。
「その条件、飲んでやるよ。」
だがこのとき、翔介が裏をかこうとしているのなら、鳥谷もまた、翔介を出し抜くことを考えていた。
裏切りが常にリスクであるコンビが誕生した。
二人の目的はただひとつ。
一年の頭を狙うことだけだった。

1年前 No.13

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=purqIXZxS8

「オラォ!」
京二郎の蹴りが鳥谷の腹に刺さって、勝負は決した。
身体を埋める鳥谷はしばらく立てそうもなく、馬乗りになった京二郎が拳をゆっくりと振り上げる。
勝ちの体勢。
あとは一発ブチ込めば、事実上の決着となる。
「18勝15敗。今回は俺の勝ち。」
そう言うと京二郎は鳥谷から離れ、どさりと隣に大の字で倒れ込む。
何度となく戦った二人だが、そこには少し友情のようなものがあるようにも見える。
お互い一中学のアタマとして、看板を背負っている二人。
まだきちんとした決着がついたことはない。
先に三連勝した方が勝ち。
しかしその三連勝という記録は、二人の間では一向に樹立されていない。
何度も戦ううち、二人の間には避けて通れぬと思わせる因縁のようなものがあった。
しかしその因縁も、次に京二郎が勝てば終わり。
今回二連勝を成し遂げた京二郎とは違い、鳥谷には後がなかった。
だが、仮に鳥谷が次で勝ったとしても、二人はもう卒業してしまう。
二人が戦うことはもうなくなるのである。

「おい。」
鳥谷の声が京二郎に向けられる。
「お前、高校はどうすんよ?」
突飛な質問に京二郎は一瞬困った顔をするが、ややあってこう返した。
「行くかな〜?」
これは正直な気持ちだった。
勉学が苦手なこともあり、働くことも視野に入れていた京二郎は、高校への進学も迷っていたのだ。
「俺ぁ行くぜ。」
「へー。どこ行くの?」
「さぁな。俺のアタマでは入れるとこなんかあんのかねぇ。」
鳥谷の言葉に京二郎も共感したように笑い声をあげた。
「お互いバカだもんね〜。」
「ブチ殺すぞてめぇコノヤロウ!?」
寝転んだまま京二郎の胸ぐらをつかんだ鳥谷は叫ぶ。
京二郎がまだ笑っているのを見て、鳥谷も思わずふっと笑う。

「お互い高校行ったらよぉ、ソッコーでアタマ取ってまたやんぞ。てめぇとの決着はまだまだつけさせねぇぞ。」
鳥谷は言ってから、むくりとゆっくり身体を起こす。
京二郎はまだその場に寝転んだまま。鳥谷の声に「上等じゃん。」と返した。

「アタマとったらまただ。アタマ同士で徹底的にやろうじゃねえか。」


気が付けば駅の階段を少しばかり通りすぎていた。
頭をコリコリとかいて、京二郎はため息をつく。

あのときの約束は、すでに果たせそうにないことは分かっていた。
「アタマ同士で徹底的にやろうじゃねえか。」
同じ学校に進学したと分かってしまった以上、それはアタマを取り合う喧嘩に変わる。
ましてや京二郎はすでに鈴堂翼翔のアタマを狙う来もさらさらなかった。
健吾に託した一年のアタマ、上の奴らの実力もある程度把握できる。
しかも鳥谷も同じ学校にいるとなると、その必要性すらなくなってしまったのだ。
そこまでしてやる意味はどこにある?
かと言って、じゃあそれを無視して3年間過ごすのも、お互いできないことも分かっている。
中学以来の因縁、落としどころはここしかない。
負ける気はしなかった。
勝つ自信はある。
だが、同時に因縁に終止符を打つことにもなり、過去のことをキレイサッパリ忘れられるか?
決着がついたあとはどうなる?
仲よしこよし?ギクシャクしたまま卒業?
考えれば考えるほど、京二郎は困っていく。
しかも、今まで何度も繰り返し戦った相手だ。
100%勝つ保証もない。
停学が解けたと言うなら、見つけ次第喧嘩。
ゴングはそう遠くはない。

階段を上っていると、前から数人の男たちが歩いてきた。
鈴堂翼翔の制服。
胸元のバッジを見ると二年生だった。
「おう、真ん中歩いてんじゃねぇよ一年坊。」
相手は四人。
京二郎はすみませんと言って端に寄ると四人は舌打ちしてすれ違う。
午後から学校に行くのだろうか?
京二郎は下っていく2年生を見ていたが、四人の中の一人が京二郎に振り返る。
目が合った。
悪い予感がする。
「なに見てんだコラ?」
「いや、何でもないです。」
予感的中。
再度謝ってみるも、しかし上級生の気は収まらない。
「ちょっと来ぉよおめぇ。」
四人が降りた階段を上ってくる。
一人が京二郎の肩に腕をかけると、そのまま駅構内のトイレへ連れていった。

1年前 No.14

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=purqIXZxS8

午後の授業をサボった健吾は校舎裏の駐輪場でボケッとした顔でタバコをふかしていた。
京二郎が途中で帰ったのが気がかりで、探しに行こうかとも思ったが、それも面倒になってやめた。
どうせ明日になればいつも通り登校してくるだろう。
無理に探して詮索するのもいかがなものか。
そう考えて校舎裏で時間を潰すことにしたのだ。
だが、やはり引っ掛かっていた。
鳥谷の名前を聞いた直後から京二郎がおかしくなったのは分かっている。
でもなんでなんだ?
考えても答えは出ず、3本目のタバコを地面に落とす。
壁にもたれてボケッとした顔でまた健吾は考える。
翔介がもし、また突っかかってきたら?
一人の京二郎を狙ったら、京二郎に勝ち目はない。
いやいや、考えすぎか。
でも今日はまだ翔介の姿は見ていない。
もし万が一…

「やめやめ。教室戻ろ。」
立ち上がって健吾は歩き始め、そしてまた考える。
何を言い訳に教室に戻るか。


公衆トイレに転がる四人の男を京二郎は上から見下ろす。
うめき声をあげながら倒れる四人と肩で息をして拳から血を滴らせる京二郎。
ブラブラと痛そうに拳を振りながら京二郎は公衆トイレから立ち去ろうとする。
「待てやぁ!」
一人の男が京二郎を呼び止める。
京二郎は振り返ると気怠くため息をつく。
「てめぇ、二年にここまでやって、ただで済むと思うなよ!」
男が京二郎に叫ぶ。
「てめぇら一年ごと、絶対ブッツブしてやっからよぉ!覚悟しとけよぉ!」
「勝ってから言ってほしいよそう言うの。」
笑っ言うが、目は本気だった。
ゾクリとする男だったが、虚勢なのか、「上等じゃねぇか!こいよオラァ!」と叫び続ける。
ため息をつく京二郎。
そのまま歩を四人に向きを変える。
「じゃあ、しかたないけど。」
京二郎がそう言ったとき、公衆トイレの入り口から声が聞こえた。
「もういいだろ?」
京二郎は声の方へ振り返るが、その瞬間に突然京二郎に足が飛んできた。
無警戒だった京二郎は1oも動けなかったが、蹴りは顔の横で寸止めされる。
冷や汗が垂れる京二郎。
少し長めの金髪でブレザーを着、ボンタンをはいた男がそこにいた。
「俺の下だ。勘弁してくんねぇか?」
金髪が言うと、京二郎は「そうですね。すんません。」とだけ言って立ち去ろうとする。
「おう、お前一年坊だべ?」
去り際に聞かれ、京二郎は振り返りもせずそうだと答える。
「俺ぁ二年のアタマ取るつもりなんだがよぉ、今年の一年はイキがいいのが多いじゃねぇか。」
今の二年は二つの派閥で対立しているのは小耳に挟んでいた。
おそらくどちらかの派閥のアタマなのだろう。
「それがなんですか?」
京二郎が聞き返すと、金髪があははと笑って京二郎近付く。
京二郎も振り返ると、冷めた口調でこう言った。
「ならこの人たちくらいちゃんとくだらないことしないように教育してもらいないですかね。」
さらに笑い声を大きくして、金髪の男は京二郎の肩に腕を回す。
「俺、上本哲也ってんだ。二年だ。」
「なんだ、二年ですか。」
上本と名乗る男は京二郎に手を回したまま、あははと笑いながら言った。
「今日のところはこっちが悪いからな、一応謝るわ。すまねぇな。」
「いえ。」
「でもな、」
上本の言葉が一瞬途切れる。

「次はねぇぞ、小僧。」

一瞬だが、ビリっとしたオーラを感じた。
これが二年なんだと改めて思う。
だが、それもほんの一瞬。
京二郎から手を離した上本は笑いながら「いっていいよ。」とだけ言う。
「失礼します。」
京二郎は言ってから今度こそ公衆トイレから出る。
手に血がついているが隠して電車に乗ればいいだろうと、京二郎はホームで電車を待つ。


「あれが、一年のアタマ候補ねぇ。」
ニヤリとする上本。

「ますますやらなきゃなんねえなぁ。」

1年前 No.15

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=purqIXZxS8

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1年前 No.16

石狩陵(いしがりりょう) @kou0724 ★Android=purqIXZxS8

振り上げられた拳はキレイにカスミの顔を射抜き、それが開始の合図になる。
可奈子は間髪入れず左足で蹴りを出す。
カスミはそれをアバラと腕でガッチリ掴んだかと思うと、あいた左手でお返しのパンチを入れた。
バランスを崩して後ろへ倒れそうになるが、左足はカスミが掴んだままだ。
倒れることもできず、さらにカスミは可奈子の右足を蹴り払った。
掴んでいた足を離して、カスミは倒れる可奈子にさらに蹴りを入れる。
倒れながらもガードを崩さない可奈子を容赦なく踏みつけ、それもすぐに10発を越える。
カスミは踏みつけ攻撃を止めず、可奈子の選択肢を確実に減らそうとしていた。
このまま動けない可奈子を攻撃し続ければ、必ずガードを解く瞬間がある。
そこに一発、ズドンと顔を蹴ればもう勝負は見えている。
しかし、可奈子はガードを崩さず攻撃を受け、チャンスとタイミングを窺っていた。
周りの2年はもう勝負がついたかのようにニヤニヤとしているのが可奈子にも分かった。

倍で返してやる。

「死ねよぉ!」
いい加減にくたばらない可奈子にイラついてきたのだろう、蹴りの攻撃力が増す代わりに蹴りのテンポは確実に落ちていた。
もう何十と蹴り続けたが、カスミは手応えを感じておらず、むしろそれでも可奈子を倒せないことに焦りを感じていた。
そのチャンスを逃さなかった。
可奈子は踏みつけられると同時に、ガードを崩さずにカスミの足を蹴り払った。
「わっ!」
軸足を蹴られて倒れるカスミ。
可奈子は一瞬で起き上がると、倒れたカスミの上に乗るやすぐに馬乗りになった。
「このっ!」
カスミが抵抗するが、可奈子はそれをものともせずに拳を振り上げ、スナップをきかせてカスミの顔を横からフックのように弾き飛ばす。
一瞬抵抗するのを止めたカスミの顔に、今度は全力で真っ直ぐ拳を打ち落とした。
「ぎゃあはあはあはあ!!!」
聞きなれないよく分からない奇声をあげるカスミを見て、可奈子は馬乗りを解いて立ち上がる。
2発目に打ち込んだストレートはさすがに効いたようだ。
カスミは倒れながらうめき、可奈子は手をプラプラさせて痛みをまぎらわせる。
「どうですか?小娘じゃないでしょ?」
可奈子が言うと、2年の女たちは言葉を失った。
6人の中で一番強いのはカスミだ。
そのカスミがやられたとなれば、そうなるのも無理はない。

「こんの…」
カスミがゆっくりと起き上がる。
可奈子はまだ立つのかと呆れ半分にカスミを見た。
足をふらふらにさせ、おしゃれなパーカーは血に染まっている。
可奈子はカスミに向き合うと、深呼吸一つおいて構えをとった。
空手か、柔道か、何かしらの格闘技の構え。
「カッコつけんなよぉ!」
カスミがヤケクソ気味に右拳を振り上げて可奈子に突進してくる。
放たれる拳。
それをパシンと左手で外側へ弾くと、弾いた腕を右手で掴む。
可奈子は掴んだ腕をグイグイ引っ張ると、カスミは可奈子の操るままに引っ張られていく。

ブン!
腕を大きく回す。
カスミの身体が空中で回る。
一回転、二回転、三回転目でカスミが見たものは、コンクリートの床だった。
ヤバイ。
しかし成す術もなく、カスミは床に背中から叩きつけられた。
呼吸ができず苦しみ、のたうちまわるカスミに、可奈子は冷たい目で言い放った。

「なめんじゃないわよメスブタ。」

1年前 No.17
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